IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エクセルシャノンの特許一覧

<>
  • 特許-合成樹脂製開口枠における下枠部材 図1
  • 特許-合成樹脂製開口枠における下枠部材 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-13
(45)【発行日】2025-03-24
(54)【発明の名称】合成樹脂製開口枠における下枠部材
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/30 20060101AFI20250314BHJP
   E06B 1/70 20060101ALI20250314BHJP
   E06B 7/14 20060101ALI20250314BHJP
【FI】
E06B1/30
E06B1/70 Z
E06B7/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021145245
(22)【出願日】2021-09-07
(65)【公開番号】P2023038487
(43)【公開日】2023-03-17
【審査請求日】2024-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】300088186
【氏名又は名称】株式会社エクセルシャノン
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100217869
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 邦久
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 義澄
(72)【発明者】
【氏名】高田 和規
(72)【発明者】
【氏名】吉村 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】内山 雅大
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-32678(JP,U)
【文献】特開2021-105290(JP,A)
【文献】実開昭63-17294(JP,U)
【文献】特開2014-5645(JP,A)
【文献】特開2005-48514(JP,A)
【文献】特開2007-113194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-1/70
E06B 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の開口に固定される合成樹脂製開口枠における下枠部材であって、下段底壁部、該下段壁部の内側縁から上方に延びる下段内側壁部、該下段内側壁部の上端縁から内側に延びる上段底壁部、該上段底壁部から上方に延びる縦仕切壁部、該下段底壁部の外側縁から、該下段内側壁部の上端を超えて、上方に延びる下段外側壁部、該下段外側壁部の上端縁から内側に延びる下段上壁部、及び該下段上壁部の内側縁から上方に延びる上段外側壁部を備えた下枠部材において、
該上段外側壁部と該上段外側壁部よりも内側に位置する該縦仕切壁部との間には、上下方向に間隔をおいて両者間を接続する少なくとも2個の断熱壁部が配設されており、
該下段外側壁部の下端部には少なくとも1個の排水孔が形成されており、
該断熱壁部の各々には上下方向に整合して位置する少なくとも1個の排水孔が形成されている、
ことを特徴とする下枠部材。
【請求項2】
該下段外側壁部に形成されている該排水孔と該断熱壁部の各々に形成されている該排水孔とは長手方向において整合して位置する、請求項1記載の下枠部材。
【請求項3】
該上段外側壁部の上端縁と該縦仕切壁部の上端縁との間には長手方向に連続して延在する開口が存在する、請求項1又は2記載の下枠部材。
【請求項4】
該下段底壁部及び該上段底壁部は実質上水平に延在し、該上段外側壁部及び該縦仕切壁部は実質上鉛直に延在し、該断熱壁部の各々は実質上水平に延在する、請求項1から3までのいずれかに記載の下枠部材。
【請求項5】
該断熱壁部の一方は該上段外側壁部と該縦仕切壁部との上下方向中間部間を実質上水平に延在し、該断熱壁部の他方は、該下段上壁部の内側縁と該上段外側壁部の下端縁との接続領域から該縦仕切壁部まで実質上水平に延在している、請求項1から4までのいずれかに記載の下枠部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の窓又は扉が装備される開口に固定される合成樹脂製開口枠における下枠部材に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1及び2に開示されている如く、建造物には窓又は扉が装備される開口が配設され、かかる開口には開口枠が固定され、そしてこの開口枠に窓又は扉が装着される。断熱性等の点から開口枠は塩化ビニルの如き適宜の合成樹脂から形成されているのが好都合である。合成樹脂製開口枠は、通常、次のとおりにして製造される。合成樹脂材料を押出成形することによって所要断面形状を有する細長い部材を形成し、細長い部材を所要長さに切断して枠部材、即ち上枠部材、下枠部材及び一対の側枠部材を形成する。枠部材の両端は、例えば45度でよい角度で傾斜する傾斜面である。上枠部材の両端は一対の側枠部材の上端に溶着され、下枠部材の両端は一対の側枠部材の下端に溶着され、かくして全体として矩形状の開口枠が形成される。
【0003】
断熱特性を向上せしめるために、開口枠を構成する枠部材には外形を規定する外壁部に加えて外壁部間を延在する断熱壁部を配設することが望ましく、通常、下枠部材における配設位置を基準にして説明すると、底壁部と上壁部との間を鉛直方向に延びる縦断熱壁部と、外側壁と縦仕切壁部との間を水平方向に延びる横断熱壁部が付加的に配設される。下記特許文献1及び2に開示されている通り、通常、底壁部はその全体に渡って単一平面状に延在せしめられているが、建造物の躯体の構造上からの要請に応じて近時においては底壁部に段差が存在する形態、即ち下段底壁部、この下段底壁部の内側縁から上方に延びる下段内側壁部、及び下段内側壁部の上端縁から内側に延びる上段底壁部を有する形態、の開口枠も実用に供させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016―160620号公報
【文献】特開2019―2235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、開口枠を構成する下枠部材においては、開口枠に進入する雨水を排出するための適宜の排出孔を形成することが必要であるが、底壁部に段差が存在する下枠部材の場合、上記縦断熱壁部に所要の排水孔を形成することが不可能ではないにしても著しく困難である。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、底壁部に段差が存在する形態であるにも拘わらず、所要断熱特性を達成するための断熱壁部が配設されていると共に、所要の排水孔が充分容易に形成される、新規且つ改良された下枠部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討の結果、上側外側壁部と仕切壁部との間に、上下方向に間隔をおいて両者間を接続する少なくとも2個の断熱壁部を配設し、かかる断熱壁部の各々に上下方向に整合して位置する排水孔を形成することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する下枠部材として、
建造物の開口に固定される合成樹脂製開口枠における下枠部材であって、下段底壁部、該下段壁部の内側縁から上方に延びる下段内側壁部、該下段内側壁部の上端縁から内側に延びる上段底壁部、該上段底壁部から上方に延びる縦仕切壁部、該下段底壁部の外側縁から、該下段内側壁部の上端を超えて、上方に延びる下段外側壁部、該下段外側壁部の上端縁から内側に延びる下段上壁部、及び該下段上壁部の内側縁から上方に延びる上段外側壁部を備えた下枠部材において、
該上段外側壁部と該上段外側壁部よりも内側に位置する該縦仕切壁部との間には、上下方向に間隔をおいて両者間を接続する少なくとも2個の断熱壁部が配設されており、
該下段外側壁部の下端部には少なくとも1個の排水孔が形成されており、
該断熱壁部の各々には上下方向に整合して位置する少なくとも1個の排水孔が形成されている、
ことを特徴とする下枠部材が提供される。
【0009】
好ましくは、該下段外側壁部に形成されている該排水孔と該断熱壁部の各々に形成されている該排水孔とは長手方向において整合して位置する。該上段外側壁部の上端縁と該縦仕切壁部の上端縁との間には長手方向に連続して延在する開口が存在するのが好適である。該下段底壁部及び該上段底壁部は実質上水平に延在し、該上段外側壁部及び該縦仕切壁部は実質上鉛直に延在し、該断熱壁部の各々は実質上水平に延在するのが好都合である。該断熱壁部の一方は該上段外側壁部と該縦仕切壁部との上下方向中間部間を実質上水平に延在し、該断熱壁部の他方は、該下段上壁部の内側縁と該上段外側壁部の下端縁との接続領域から該縦仕切壁部まで実質上水平に延在しているのが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の下枠部材においては、下段外側壁部の下端部における排水孔は従来の下枠部材の場合と同様に下段外側壁部の外側から穿孔工具を作用せしめることによって充分容易に形成することができ、そして上側外側壁部と縦仕切壁部との間に配設された少なくとも2個の断熱壁部における排水孔は、上側外側壁部の上端縁と縦仕切壁部の上端縁との間に存在する開口を通して少なくとも2個の断熱壁部に穿孔工具を作用せしめることによって充分容易に形成することができ、従って底壁部に段差が存在する形態にも拘わらず、所要断熱特性を達成するための断熱壁部が配設されていると共に、所要の排水孔が充分容易に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に従って構成された下枠部材を備えた開口枠における下枠部材と上枠部材を示す断面図。
図2図1に図示する下枠部材の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された下枠部材を備えた開口枠を図示している添付図面を参照して更に詳述する。
【0013】
図1を参照して説明すると、建造物の開口に固定される開口枠は、上枠部材2及び下枠部材4と共に一対の側枠部材(図示していない)から構成されている。周知の如く、上枠部材2及び下枠部材4並びに一対の側枠部材は、塩化ビニルの如き適宜の合成樹脂を押出成形して所要断面形状を有する細長い部材を形成し、かかる細長い部材を所要長さに切断することによって形成され、従って上枠部材2及び下枠部材4並びに一対の側枠部材の横断面形状は同一である。上枠部材2及び下枠部材4並びに一対の側枠部材の両端は45度でよい角度で傾斜する傾斜面である。上枠部材2の両端は一対の側枠部材の上端に溶着され、下枠部材4の両端は一対の側枠部材の下端に溶着され、かくして全体として矩形状の開口枠が構成される。例えば開口枠が建造物における窓が装備される開口に適用される場合には、上枠部材2は建造物の躯体におけるまぐさに固定され、下枠部材は躯体における窓台(図示していない)に固定され、一対の側枠部材は躯体における方立又は間柱(図示していない)に固定される。そして、図1に二点鎖線で簡略に図示する如く、開口枠には適宜の装着手段(図示していない)を介して適宜の形態の窓6が装着される。
【0014】
図1と共に図2を参照して説明を続けると、図示の下枠部材4は、好ましくは実質上水平に延在する下段底壁部8、下段底壁部8の内側縁から上方に好ましくは実質上鉛直に延びる下段内側壁部10、下段内側壁部10の上端縁から内側(室内側)に好ましくは実質上水平に延びる上段底壁部12、上段底壁部12の幅方向外側(室外側)部から上方に好ましくは実質上鉛直に延びる縦仕切壁部14、下段底壁部8の外側縁から、下段内側壁部10の上端を超えて上方に好ましくは実質上鉛直に延びる下段外側壁部16、下段外側壁部16の上端縁から内側に向って上方に幾分傾斜して延びる下段上壁部18、及び下段上壁部18の内側縁から上方に好ましくは実質上鉛直に延びる上段外側壁部20を有する。縦仕切壁部14は上段外側壁部20よりも内側に位置し、上段外側壁部20の上端縁と縦仕切壁部14の上端縁とは実質上同高であるのが好適である。下段底壁部8と上段底壁部12とによって規定される底壁部には、下段内側壁部10の上下方向長さに対応する段差Xが存在する。下枠部材4は、更に、上段底壁部12の内側他縁から上方に好ましくは実質上鉛直に延びる上段内側壁部22、縦仕切壁部14の内側縁から上段内側壁部22まで好ましくは実質上水平に延びる中間上壁部24、上段内側壁部22よりも幾分外側において中間上壁部24から上方に突出する補助縦壁部26、及び上段内側壁部22の上端と補助縦壁部26の上端との間を好ましくは実質上水平に延びる上段上壁部28を有する。補助縦壁部26の上端部は、横断面図において逆C字形状に形成されている。上段外側壁部20の上端には内側に突出する突条30が形成され、縦仕切壁部14の上端には外側に突出する突条32が形成され、突条30と突条32との間には長手方向(図1及び図2において図面に垂直な方向)に連続して延在する開口34が存在するのが好都合である。下段内側壁部10の内面には実質上水平に延びる一対の補強リブ36が形成され、縦仕切壁部14の外側面及び内側面には夫々実質上水平に延びる補強リブ38及び40が形成され、そして上段内側壁部22の外側面には実質上水平に延びる補強リブ42が形成されている。
【0015】
図1及び図2を参照して説明を続けると、上段外側壁部20と縦仕切壁部14との間には、上下方向に間隔をおいて両者間を接続する少なくとも2個の断熱壁部が配設されていることが重要である。図示の実施形態においては、上段外側壁部20と縦仕切壁部14との上下方向中間部間を好ましくは実質上水平に延在する断熱壁部44と、下段上壁部18の内側縁と上段外側壁部20の下端縁との接続領域から縦仕切壁部14まで好ましくは実質上水平に延在する断熱壁部46とが配設されている。所望ならば、上段外側壁部20と縦仕切壁部14との間に上下方向に間隔をおいて3個又はそれ以上の断熱壁部を配設することもできる。
【0016】
下段外側壁部16の下端部には少なくとも1個の排水孔が形成され、そして断熱壁部44及び46の各々には上下方向に整合して位置する少なくとも1個の排水孔が形成されていることが重要である。図示の実施形態においては、下段外側壁部16の下端部には1個の排水孔48が形成されている。そして断熱壁部44及び46の各々には1個の排水孔50及び52が形成されており、排水孔50と排水孔52とは上下方向に整合して位置していることが重要である。下段外側壁部16に形成されている排水孔48と断熱壁部44及び46に形成されている排水孔50及び52とは長手方向(図1及び図2において紙面に垂直な方向)において整合して位置している(即ち長手方向位置が合致している)のが好適である。排水孔48、50及び52の各々は円形或いは矩形の如き適宜の形状でよい。所望ならば、下段外側壁部16の下端部に長手方向に適宜の間隔をおいて2個又はそれ以上の排水孔を形成することもできる。同様に、断熱壁部44及び46の各々に、長手方向に間隔をおいて2個又はそれ以上の排水孔を形成することもできる。断熱壁部44及び46に形成される対をなす排水孔は夫々上下方向に整合して位置することが重要である。例えば上記開口34を通して下枠部材4内に進入した雨水は、排水孔50及び52並びに排水孔48を通して外部に排出される。
【0017】
下段外側壁部16の排水孔48は、図2に二点鎖線で示す如く、下段外側壁部16の外側から穿孔工具54を作用せしめることによって充分容易に形成することができる。断熱壁部44及び46の排水孔50及び52は、図2に二点鎖線で示す如く、上段外側壁部20の上端縁(図示の場合はそこに形成されている突条30)と縦仕切壁部14の上端縁(図示の場合はそこに形成されている突条32)との間に存在する開口34を通して穿孔工具56を断熱壁部44及び46に作用せしめることによって充分容易に形成することができる。
【0018】
例えば、図2に二点鎖線で示す如く、上段底壁部12の外側縁と下段上壁部18の内側縁との間を上下方向に延びる縦仕切壁58を形成した場合には、かかる縦仕切壁58に排水孔を形成することが不可能ではないにしても著しく困難である。
【0019】
以上添付図面を参照して本発明に従って構成された下枠部材の好適実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能であることは多言を要しない。
【0020】
例えば、図示の実施形態においては、上段外側壁部20の上端と縦仕切壁部14の上端との間には長手方向(図1及び図2において図面に垂直な方向)に連続して延在する開口34が存在するが、上段外側壁部20の上端と縦仕切壁部14の上端との間には両者間を接続する上壁部(図示していない)が配設されている形態(かような形態の場合にも当業者には周知の如く上段外側壁部20と縦仕切壁部14との間に雨水が進入する虞がある)の下枠部材にも本発明を適用することができる。かような形態の下枠部材の場合には、断熱壁部44及び46に排水孔50及び52を形成する際には上記上壁部を通して(従って上壁部にも対応する孔が形成される)断熱壁部44及び46に穿孔工具を作用せしめることによって排水孔50及び52を充分容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0021】
4:下枠部材
8:下段底壁部
10:下段内側壁部
12:上段底壁部
14:縦仕切壁部
16:下段外側壁部
18:下段上壁部
20:上段外側壁部
34:開口
44:断熱壁部
46:断熱壁部
48:排水孔
50:排水孔
52:排水孔
X:段差
図1
図2