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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-13
(45)【発行日】2025-03-24
(54)【発明の名称】成形装置、及び金属パイプ
(51)【国際特許分類】
   B21D 26/033 20110101AFI20250314BHJP
   B21D 26/047 20110101ALI20250314BHJP
   B21C 37/15 20060101ALI20250314BHJP
   B21C 37/20 20060101ALI20250314BHJP
   B21D 19/08 20060101ALI20250314BHJP
【FI】
B21D26/033
B21D26/047
B21C37/15 B
B21C37/20
B21D19/08 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022581268
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 JP2022001126
(87)【国際公開番号】W WO2022172687
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2024-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2021019159
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】雑賀 雅之
(72)【発明者】
【氏名】上野 紀条
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-083785(JP,A)
【文献】特開2006-035301(JP,A)
【文献】特開2002-282965(JP,A)
【文献】特開2016-221556(JP,A)
【文献】特開2001-259754(JP,A)
【文献】特開2003-181545(JP,A)
【文献】特開2002-192253(JP,A)
【文献】特開平06-226339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 26/033 - 26/047
B21D 19/00 - 19/08
B21D 51/12
B21D 51/16
B21C 37/15
B21C 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ付きの金属パイプを成形する成形装置であって、
前記金属パイプを成形する成形型と、を備え、
前記成形型は、断面視において、第1の方向に互いに対向する第1の型、及び第2の型を有し、前記第1の型、及び前記第2の型の少なくとも何れか一方の方が前記第1の方向に移動すると共に、前記第1の方向と交差する第2の方向において、金属パイプ材料の少なくとも一方側に配置される第3の型を有し、
前記第1の型、及び前記第2の型の少なくとも一方は、前記第2の方向に分割され、前記第2の方向に前記金属パイプ材料の一部を挟むことでフランジ部を形成する、成形装置。
【請求項2】
前記第1の型、及び前記第2の型の少なくとも一方は、前記第2の方向に前記金属パイプ材料の一部を挟むことでフランジ部を形成する第1の部分及び第2の部分を有する、請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記第1の型、及び前記第2の型は、いずれも、前記第1の部分及び前記第2の部分を有する、請求項2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記第1の型における前記第1の部分及び前記第2の部分と、前記第2の型における前記第1の部分及び前記第2の部分は、前記第2の方向において互いに異なる位置に前記フランジ部を形成する、請求項3に記載の成形装置。
【請求項5】
前記第1の部分及び前記第2の部分は、前記金属パイプの前記第2の方向における一方の側面と同位置に前記フランジ部を形成する、請求項2~4の何れか一項に記載の成形装置。
【請求項6】
前記第1の型、及び前記第2の型の少なくとも一方は、前記第2の部分との間で前記金属パイプ材料の他の一部を挟むことで他のフランジ部を形成する第3の部分を有する、請求項2~5の何れか一項に記載の成形装置。
【請求項7】
前記第1の部分及び前記第2の部分は、前記第1の方向に対して傾斜するフランジ部を形成する、請求項2~6の何れか一項に記載の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形装置、及び金属パイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属パイプの成形に用いられる成形装置が知られている。例えば、下記特許文献1には、互いに対になる下型及び上型を有する成形金型と、成形金型の間に保持された金属パイプ材料内に流体を供給する流体供給部と、を備える成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-220141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のような成形装置は、金属パイプ材料の横方向の両側を上型及び下型で押し潰すことによって、フランジ付きの金属パイプを成形する場合がある。このような成形装置においては、フランジ付きの金属パイプの強度・剛性を更に向上することが求められていた。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、フランジ付きの金属パイプの強度・剛性を向上できる成形装置、及び強度・剛性を向上できる金属パイプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る成形装置は、フランジ付きの金属パイプを成形する成形装置であって、金属パイプを成形する成形型と、を備え、成形型は、断面視において、第1の方向に互いに対向する第1の型、及び第2の型を有すると共に、第1の方向と交差する第2の方向において、金属パイプ材料の少なくとも一方側に配置される第3の型を有し、第1の型、及び第2の型の少なくとも一方は、第2の方向に分割され、第2の方向に金属パイプ材料の一部を挟むことでフランジ部を形成する。
【0007】
成形装置において、成形型は、断面視において、第1の方向に互いに対向する第1の型、及び第2の型を有すると共に、第1の方向と交差する第2の方向において、金属パイプ材料の少なくとも一方側に配置される第3の型を有する。第1の型及び第2の型は、金属パイプのうち、第1の方向におけるパイプ部の形状を形成することができる。また、第3の型は、金属パイプのうち、第2の方向におけるパイプ部の形状を形成することができる。ここで、第1の型、及び第2の型の少なくとも一方は、第2の方向に分割され、第2の方向に金属パイプ材料の一部を挟むことでフランジ部を形成する。従って、第1の型と第2の型とが対向する方向である第1の方向に突出するようなフランジ部を成形することが可能となる。これにより、使用時に金属パイプに作用する荷重の方向に合わせて強度・剛性を確保できるフランジ部を形成することが可能となる。以上により、フランジ付きの金属パイプの強度・剛性を向上できる。
【0008】
第1の型、及び第2の型の少なくとも一方は、第2の方向に金属パイプ材料の一部を挟むことでフランジ部を形成する第1の部分及び第2の部分を有してよい。これにより、第1の型と第2の型とが対向する方向である第1の方向に突出するようなフランジ部を成形することが可能となる。
【0009】
第1の型、及び第2の型は、いずれも、第1の部分及び第2の部分を有してよい。これにより、パイプ部に対して、第1の方向における両側にフランジ部を形成して、金属パイプの強度・剛性を向上できる。
【0010】
第1の型における第1の部分及び第2の部分と、第2の型における第1の部分及び第2の部分は、第2の方向において互いに異なる位置にフランジ部を形成してよい。この場合、パイプ部の第1の方向の一方側と他方側にて、第2の方向において、フランジ部で強度・剛性を上げる位置を調整することができる。また、金属パイプに負荷される荷重方向による金属パイプの変形挙動も制御することもできる。
【0011】
第1の部分及び第2の部分は、金属パイプの第2の方向における一方の側面と同位置にフランジ部を形成してよい。この場合、フランジ部の位置が、位置的に端にしかつかないような形状制限がある場合や、金属パイプに負荷される荷重方向による金属パイプの変形挙動も制御することもできる。
【0012】
第1の型、及び第2の型の少なくとも一方は、第2の部分との間で金属パイプ材料の他の一部を挟むことで他のフランジ部を形成する第3の部分を有してよい。この場合、フランジ部の数を増加させて強度・剛性を高めることができる。
【0013】
第1の部分及び第2の部分は、第1の方向に対して傾斜するフランジ部を形成してよい。この場合、剛性を高めることができ、金属パイプに負荷される荷重方向による成形体の変形挙動も、さらに好ましい方向に制御できる。
【0014】
本開示に係る金属パイプは、断面視において長手方向に広がる中空のパイプ部と、パイプ部から長手方向と直交する短手方向の少なくとも一方へ突出するフランジ部と、を有する。
【0015】
この金属パイプでは、パイプ部のうち、断面視において長手方向に延びる壁部から、短手方向へ突出するようなフランジ部を形成することができる。従って、長手方向の荷重に対して、金属パイプの強度及び剛性を向上することができる。
【0016】
金属パイプは、パイプ部から短手方向の両方へ突出する一対のフランジ部を有してよい。これにより、金属パイプの強度・剛性を向上できる。
【0017】
一対のフランジ部は、長手方向において互いに異なる位置に形成されてよい。この場合、パイプ部の短手方向の一方側と他方側にて、長手方向においてフランジ部で強度・剛性を上げる位置を調整することができる。
【0018】
フランジ部は、パイプ部の長手方向における一方の側面と同位置に形成されてよい。この場合、対象方向からの負荷(曲げ荷重的な負荷)に対して同一の応力発生状態となり、強度的にバランスの取れた形状とすることができる。
【0019】
パイプ部には、長手方向において互いに異なる位置に、短手方向の少なくとも一方へ突出するフランジ部が複数形成されてよい。この場合、フランジ部の数を増加させて強度・剛性を高めることができる。
【0020】
フランジ部は、短手方向に対して傾斜してよい。この場合、垂直方向よりは剛性及び強度的には劣ることがあったとしても、付属部品との接合において、ある傾斜角を有しているほうが利便性が高く、設計的な要求に対応可能となる場合がある。また、荷重の方向とフランジ部の傾斜により変形の挙動を最適化できる可能性もある。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、フランジ付きの金属パイプの強度・剛性を向上できる成形装置、及び強度・剛性を向上できる金属パイプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の実施形態に係る成形装置の概略図である。
図2】ノズルが金属パイプ材料をシールした時の様子を示す断面図である。
図3】金属パイプの概略斜視図である。
図4】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図5】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図6】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図7】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図8】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図9】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図10】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図11】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図12】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図13】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図14】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図15】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図16】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図17】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図18】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図19】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図20】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図21】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図22】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
図23】成形金型による成形の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る成形装置1の概略図である。図1に示すように、成形装置1は、ブロー成形によって中空形状を有する金属パイプを成形する装置である。本実施形態では、成形装置1は、水平面上に設置される。成形装置1は、成形金型2(成形型)と、駆動機構3と、保持部4と、加熱部5と、流体供給部6と、冷却部7と、制御部8と、を備える。なお、本明細書において、金属パイプは、成形装置1での成形完了後の中空物品を指し、金属パイプ材料40は、成形装置1での成形完了前の中空物品を指す。金属パイプ材料40は、焼入れ可能な鋼種のパイプ材料である。また、水平方向のうち、成形時において金属パイプ材料40が延在する方向を「延在方向」と称し、延在方向と直交する方向を「横方向(第2の方向)」と称する場合がある。
【0025】
成形金型2は、金属パイプ材料40を金属パイプに成形する型であり、上下方向(第1の方向)に互いに対向する下側の金型11(第1の型)及び上側の金型12(第2の型)を備える。また、成形金型2は、横方向に互いに対向する一対の横側の金型14A,14B(第3の型)を備える(図4参照)。金型11,12,14A,14Bの詳細な形状等については、後述する。下側の金型11及び上側の金型12は、鋼鉄製ブロックで構成される。下側の金型11は、ダイホルダ等を介して基台13に固定される。上側の金型12は、ダイホルダ等を介して駆動機構3のスライドに固定される。
【0026】
駆動機構3は、下側の金型11及び上側の金型12の少なくとも一方を移動させる機構である。図1では、駆動機構3は、上側の金型12のみを移動させる構成を有する。駆動機構3は、下側の金型11及び上側の金型12同士が合わさるように上側の金型12を移動させるスライド21と、上記スライド21を上側へ引き上げる力を発生させるアクチュエータとしての引き戻しシリンダ22と、スライド21を下降加圧する駆動源としてのメインシリンダ23と、メインシリンダ23に駆動力を付与する駆動源24と、を備えている。
【0027】
保持部4は、下側の金型11及び上側の金型12の間に配置される金属パイプ材料40を保持する機構である。保持部4は、成形金型2の延在方向における一端側にて金属パイプ材料40を保持する下側電極26及び上側電極27と、成形金型2の延在方向における他端側にて金属パイプ材料40を保持する下側電極26及び上側電極27と、を備える。延在方向の両側の下側電極26及び上側電極27は、金属パイプ材料40の端部付近を上下方向から挟み込むことによって、当該金属パイプ材料40を保持する。なお、下側電極26の上面及び上側電極27の下面には、金属パイプ材料40の外周面に対応する形状を有する溝部が形成される。下側電極26及び上側電極27には、図示されない駆動機構が設けられており、それぞれ独立して上下方向へ移動することができる。
【0028】
加熱部5は、金属パイプ材料40を加熱する。加熱部5は、金属パイプ材料40へ通電することで当該金属パイプ材料40を加熱する機構である。加熱部5は、下側の金型11及び上側の金型12の間にて、下側の金型11及び上側の金型12から金属パイプ材料40が離間した状態にて、当該金属パイプ材料40を加熱する。加熱部5は、上述の延在方向の両側の下側電極26及び上側電極27と、これらの電極26,27を介して金属パイプ材料へ電流を流す電源28と、を備える。なお、加熱部5は、成形装置1の前工程に配置し、外部で加熱をするものであっても良い。
【0029】
流体供給部6は、下側の金型11及び上側の金型12の間に保持された金属パイプ材料40内に高圧の流体を供給するための機構である。流体供給部6は、加熱部5で加熱されることで高温状態となった金属パイプ材料40に高圧の流体を供給して、金属パイプ材料40を膨張させる。流体供給部6は、成形金型2の延在方向の両端側に設けられる。流体供給部6は、金属パイプ材料40の端部の開口部から当該金属パイプ材料40の内部へ流体を供給するノズル31と、ノズル31を金属パイプ材料40の開口部に対して進退移動させる駆動機構32と、ノズル31を介して金属パイプ材料40内へ高圧の流体を供給する供給源33と、を備える。駆動機構32は、流体供給時及び排気時にはノズル31を金属パイプ材料40の端部にシール性を確保した状態で密着させ(図2参照)、その他の時にはノズル31を金属パイプ材料40の端部から離間させる。なお、流体供給部6は、流体として、高圧の空気や不活性ガスなどの気体を供給してよい。また、流体供給部6は、金属パイプ材料40を上下方向へ移動する機構を有する保持部4とともに、加熱部5を含めて同一装置としても良い。
【0030】
図2(a)は、保持部4、加熱部5、及び流体供給部6の構成要素をユニット化した加熱膨張ユニット50を示す概略側面図である。図2(b)は、ノズル31が金属パイプ材料40をシールした時の様子を示す断面図である。
【0031】
図2(a)に示すように、加熱膨張ユニット50は、上述の下側電極26及び上側電極27と、各電極26,27を搭載した電極搭載ユニット51、上述のノズル31及び駆動機構32と、昇降ユニット52と、ユニットベース53と、を備える。電極搭載ユニット51は、昇降フレーム54と、電極フレーム56,57と、を備える。電極フレーム56,57は、各電極26,27を支持して移動させる駆動機構60の一部として機能する。駆動機構32は、ノズル31を駆動させ、電極搭載ユニット51と共に昇降する。駆動機構32は、ノズル31を保持するピストン61と、ピストンを駆動させるシリンダ62とを備えている。昇降ユニット52は、ユニットベース53の上面に取り付けられる昇降フレームベース64と、これらの昇降フレームベース64によって、電極搭載ユニット51の昇降フレーム54に対して昇降動作を付与する昇降用アクチュエータ66とを備えている。昇降フレームベース64は、ユニットベース53に対する昇降フレーム54の昇降動作をガイドするガイド部64a,64bを有する。昇降ユニット52は、保持部4の駆動機構60の一部として機能する。加熱膨張ユニット50は、上面の傾斜角度が異なる複数のユニットベース53を有し、これらを交換することにより、下側電極26及び上側電極27、ノズル31、電極搭載ユニット51、駆動機構32、昇降ユニット52の傾斜角度を一括的に変更調節することを可能としている。
【0032】
ノズル31は、金属パイプ材料40の端部を挿入可能な円筒部材である。ノズル31は、当該ノズル31の中心線が基準線SL1と一致するように、駆動機構32に支持されている。金属パイプ材料40側のノズル31の端部の供給口31aの内径は、膨張成形後の金属パイプ材料40の外径に略一致している。この状態で、ノズル31は、内部の流路63から高圧の流体を金属パイプ材料40に供給する。なお、高圧流体の一例としては、ガスなどが挙げられる。
【0033】
図1に戻り、冷却部7は、成形金型2を冷却する機構である。冷却部7は、成形金型2を冷却することで、膨張した金属パイプ材料40が成形金型2の成形面と接触したときに、金属パイプ材料40を急速に冷却することができる。冷却部7は、下側の金型11及び上側の金型12の内部に形成された流路36と、流路36へ冷却水を供給して循環させる水循環機構37と、を備える。
【0034】
制御部8は、成形装置1全体を制御する装置である。制御部8は、駆動機構3、保持部4、加熱部5、流体供給部6、及び冷却部7を制御する。制御部8は、金属パイプ材料40を成形金型2で成形する動作を繰り返し行う。
【0035】
具体的に、制御部8は、例えば、ロボットアーム等の搬送装置からの搬送タイミングを制御して、開いた状態の下側の金型11及び上側の金型12の間に金属パイプ材料40を配置する。あるいは、制御部8は、作業者が手動で下側の金型11及び上側の金型12の間に金属パイプ材料40を配置することを待機してよい。また、制御部8は、延在方向の両側の下側電極26で金属パイプ材料40を支持し、その後に上側電極27を降ろして当該金属パイプ材料40を挟むように、保持部4のアクチュエータ等を制御する。また、制御部8は、加熱部5を制御して、金属パイプ材料40を通電加熱する。これにより、金属パイプ材料40に軸方向の電流が流れ、金属パイプ材料40自身の電気抵抗により、金属パイプ材料40自体がジュール熱によって発熱する。
【0036】
制御部8は、駆動機構3を制御して上側の金型12を降ろして下側の金型11に近接させ、成形金型2の型閉を行う。その一方、制御部8は、流体供給部6を制御して、ノズル31で金属パイプ材料40の両端の開口部をシールすると共に、流体を供給する。これにより、加熱により軟化した金属パイプ材料40が膨張して成形金型2の成形面と接触する。そして、金属パイプ材料40は、成形金型2の成形面の形状に沿うように成形される。金属パイプ材料40が成形面に接触すると、冷却部7で冷却された成形金型2で急冷されることによって、金属パイプ材料40の焼き入れが実施される。
【0037】
図3を参照して、成形装置1によって成形される金属パイプ41について説明する。金属パイプ41は、中空のパイプ部41aと、フランジ部41b,41cと、を有する。断面視(図7に示す様子)において、パイプ部41aは、長手方向及び短手方向に延びる長方形状を有している。フランジ部41b,41cは、金属パイプ材料40の両端部を押し潰すことによって構成される。なお、以降の説明において、金属パイプ材料40のうち、完成後にフランジ部41b,41cとなる予定の箇所を、フランジ部40b,40cと称する(図5及び図6参照)。
【0038】
本実施形態においては、図4に示すように、金属パイプ材料40は断面視において長方形状の形状を有している。金属パイプ材料40は、断面視において、長手方向が成形装置1の横方向と平行をなし、短手方向が成形装置1の上下方向と平行をなすように、成形金型2に対して配置される。従って、完成直後の金属パイプ41も長手方向が成形装置1の横方向と平行をなし、短手方向が成形装置1の上下方向と平行をなすように、成形金型2に対して配置される(図7参照)。以降の説明においては、金属パイプ41及び金属パイプ材料40について「上」「下」「横」の語を用いる場合は、成形金型2に配置したときの姿勢を基準としているものとする。
【0039】
次に、図4を参照して、成形金型2の構成について詳細に説明する。下側の金型11は、基台13(図1参照)に設けられたベース部材150に固定される。下側の金型11は、横方向に分割され、横方向に金属パイプ材料40の下壁部の一部を挟むことでフランジ部41bを形成する第1の部分11A及び第2の部分11Bを有する。第1の部分11A及び第2の部分11Bは、上端部において横方向に平行に広がるパイプ部成形面11aと、横方向における内側において上下方向に平行に広がるフランジ部成形面11bと、を備える。パイプ部成形面11aは、金属パイプ41の下壁部を成形する成形面である。フランジ部成形面11bは、金属パイプ41の下側のフランジ部41bを成形する成形面である。第1の部分11A及び第2の部分11Bは、横方向に往復移動可能である。
【0040】
上側の金型12は、スライド21(図1参照)に設けられたベース部材151に固定される。上側の金型12は、横方向に分割され、横方向に金属パイプ材料40の上壁部の一部を挟むことでフランジ部41cを形成する第1の部分12A及び第2の部分12Bを有する。第1の部分12A及び第2の部分12Bは、下端部において横方向に平行に広がるパイプ部成形面12aと、横方向における内側において上下方向に平行に広がるフランジ部成形面12bと、を備える。パイプ部成形面12aは、金属パイプ41の上壁部を成形する成形面である。フランジ部成形面12bは、金属パイプ41の上側のフランジ部41cを成形する成形面である。第1の部分12A及び第2の部分12Bは、横方向に往復移動可能である。また、第1の部分12A及び第2の部分12Bは、スライド21(図1参照)と共にベース部材151が上下方向に往復移動することに伴って、上下方向へ往復移動可能である。
【0041】
横側の金型14Aは、横方向において、金属パイプ材料40の一方側に配置される。横側の金型14Bは、横方向において、金属パイプ材料40の他方側に配置される。金型14Aは、上下方向において、第1の部分11Aのパイプ部成形面11aと、第1の部分12Aのパイプ部成形面12aとの間に配置される。金型14Bは、上下方向において、第2の部分11Bのパイプ部成形面11aと、第2の部分12Bのパイプ部成形面12aとの間に配置される。金型14A,14Bは、横方向における内側において上下方向に平行に広がるパイプ部成形面14aを有する。金型14A,14Bは、横方向に往復移動可能であると共に、上下方向に往復移動可能である。なお、金型14A,14Bの下面は、下側の金型11のパイプ部成形面11aと面接触する。金型14A,14Bの上面は、上側の金型12のパイプ部成形面12aと面接触する。
【0042】
各部分11A,11B,12A,12B及び金型14A,14Bの横方向における移動は、同時、またはタイミングをずらして行われる。各部分11A,11B,12A,12B及び金型14A,14Bの横方向における移動は、各部材に対して個別に駆動源を設けることによってなされてもよい。または、スライド21が上側の金型12を降ろすことに伴って、各部分11A,11B,12A,12B及び金型14A,14Bが横方向に閉じるようなウェッジ機構を設けてもよい。この場合、スライド21が上側の金型12を上げるとき、各部分11A,11B,12A,12B及び金型14A,14Bが横方向に開くようなバネ機構を設けてもよい。
【0043】
次に、成形金型2による成形の手順について説明する。まず、図4に示すように、成形金型2の内部空間に金属パイプ材料40をセットする。図4に示すように、成形初期状態においては、各金型11,12,14A,14Bは、金属パイプ材料40から離間した位置に配置されている。制御部8は、図4に示す状態から上側の金型12を金属パイプ材料40から離間した位置まで降ろし、当該状態にて、金属パイプ材料40を加熱する。
【0044】
次に、図5に示すように、制御部8は、金型12、金型14A,14B、及び金属パイプ材料40を下方へ降ろす。このとき、金型12のパイプ部成形面12aが金属パイプ材料40の上壁部と接触し、金型11のパイプ部成形面11aが金属パイプ材料40の下壁部と接触し、金型14A,14Bのパイプ部成形面14aが金属パイプ材料40の側壁部と接触する。また、制御部8は、流体供給部6を制御して、金属パイプ材料40内に流体を供給することで、ブロー成形を行う(一次ブロー)。金属パイプ材料40の上下方向の両側のフランジ部40b,40cの部分は、金型11の一対のフランジ部成形面11b間に入り込み、金型12の一対のフランジ部成形面12b間に入り込むように膨張する。このとき、金属パイプ材料40の両側の側壁部は、金型14A,14Bのパイプ部成形面14aと接触することで、それ以上の横方向外側への変形が規制される。
【0045】
次に、図6に示すように、制御部8は、更に金型12及び金型14A,14Bを下方へ降ろす。これにより、金型11の部分11A,11Bと金型14A,14Bが上下方向に互いに接触し、金型12の部分12A,12Bと金型14A,14Bが上下方向に互いに接触する。
【0046】
次に、図7に示すように、制御部8は、部分11A,11Bを横方向の内側へ移動させると共に、部分12A,12Bを横方向の内側へ移動させる。これにより、部分11A,11Bのフランジ部成形面11bが、金属パイプ材料40のフランジ部40bを挟んで押し潰す。部分12A,12Bのフランジ部成形面12bが、金属パイプ材料40のフランジ部40cを挟んで押し潰す。これにより、金属パイプ41のフランジ部41b,41cが形成される。また、制御部8は、流体供給部6を制御して、金属パイプ材料40のパイプ部40a内に流体を供給することで、ブロー成形を行う(二次ブロー)。これによって、金属パイプ41のパイプ部41aが形成される。以上より、金属パイプ41が完成する。
【0047】
次に、本実施形態に係る成形装置1の作用・効果について説明する。
【0048】
成形装置1において、成形金型2は、断面視において、上下方向に互いに対向する下側の金型11、及び上側の金型12を有すると共に、上下方向と交差する横方向において、金属パイプ材料40の両側に配置される金型14A,14Bを有する。金型11及び金型12は、金属パイプ41のうち、上下方向におけるパイプ部41aの形状を形成することができる。また、金型14A,14Bは、金属パイプ41のうち、横方向におけるパイプ部41aの形状を形成することができる。ここで、金型11及び金型12は、横方向に分割され、横方向に金属パイプ材料40の一部を挟むことでフランジ部41b,41cを形成する第1の部分11A,12B及び第2の部分11B,12Bを有する。従って、金型11と金型12とが対向する方向である上下方向に突出するようなフランジ部41b,41cを成形することが可能となる。これにより、使用時に金属パイプ41に作用する荷重の方向に合わせて強度・剛性を確保できるフランジ部41b,41cを形成することが可能となる。以上により、フランジ付きの金属パイプ41の強度・剛性を向上できる。
【0049】
具体的には、本実施形態に係る金属パイプ41は、断面視において長手方向に広がる中空のパイプ部41aと、パイプ部41aから長手方向と直交する短手方向の両方へ突出するフランジ部41b,41cと、を有する。
【0050】
この金属パイプ41では、パイプ部41aのうち、断面視において長手方向に延びる壁部(長辺を構成する壁部)から、短手方向へ突出するようなフランジ部41b,41cを形成することができる。金属パイプ41は車両の骨格に採用されることがあるため、金属パイプ41の長辺に荷重が作用する可能性がある。長辺にフランジ部が無いと、容易に変形してしまうが、フランジ部を形成することで、容易に変形せずに強度及び剛性を向上させることができる。また、フランジ部が長手方向に沿って形成されることで、長手方向の荷重に対して、金属パイプ41の強度及び剛性を向上することができる。
【0051】
下側の金型11、及び上側の金型12は、いずれも、第1の部分11A,12A及び第2の部分11B,12Bを有してよい。これにより、パイプ部41aに対して、上下方向における両側にフランジ部41b,41cを形成して、金属パイプ41の強度・剛性を向上できる。
【0052】
金属パイプ41は、パイプ部41aから短手方向の両方へ突出する一対のフランジ部41b,41cを有してよい。これにより、金属パイプ41の強度・剛性を向上できる。
【0053】
本開示は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0054】
例えば、図8図11に示すような成形装置1を採用してよい。また、これによって図11に示す金属パイプ41を形成してもよい。具体的には、図8図11に示す成形装置1では、下側の金型11における第1の部分11A及び第2の部分11Bと、上側の金型12における第1の部分12A及び第2の部分12Bは、横方向において互いに異なる位置にフランジ部41b,41cを形成している。これにより、図11に示すように、一対のフランジ部41b,41cは、長手方向において互いに異なる位置に形成される。この場合、パイプ部41aの上下方向(短手方向)の一方側と他方側にて、横方向(長手方向)において、フランジ部41b,41cで強度・剛性を上げる位置を調整することができる。また、金属パイプに負荷される荷重方向による金属パイプの変形挙動も制御することもできる。
【0055】
図8図11に示すように、横方向において、第1の部分11Aの方が第2の部分11Bよりも大きい。従って、図11に示すように、下側のフランジ部41bは、パイプ部41aに対して、横方向(長手方向)における金型14B側に寄った位置に形成される。上側のフランジ部41cは、パイプ部41aに対して、横方向(長手方向)における金型14A側に寄った位置に形成される。なお、図8図11における成形装置1の動作は、図4図7の動作と同様である。
【0056】
また、図12図15に示すような成形装置1を採用してよい。また、これによって図15に示す金属パイプ41を形成してもよい。具体的には、図12図15に示す成形装置1では、第1の部分11A,12A及び第2の部分11B,12Bは、金属パイプ41の横方向(長手方向)における一方の側面41dと同位置にフランジ部41b,41cを形成してよい(図15参照)。この場合、フランジ部の位置が、位置的に端にしかつかないような形状制限がある場合や、金属パイプに負荷される荷重方向による金属パイプの変形挙動も制御することもできる。また、対象方向からの負荷(曲げ荷重的な負荷)に対して同一の応力発生状態となり、強度的にバランスの取れた形状とすることができる。
【0057】
図12図15に示すように、横方向において、第1の部分11A,12Aの方が第2の部分11B,12Bよりも小さい。従って、図15に示すように、両側のフランジ部41b,41cは、パイプ部41aに対して、横方向(長手方向)における金型14A側に寄った位置に形成される。そして、パイプ部41aの横方向(長手方向)の一方の側面41dがそのまま上下方向(短手方向)に延びるようにして、フランジ部41b,41cが上下方向に突出する。なお、図12図15における成形装置1の動作は、図4図7の動作と同様である。金型14Aが上型12Aと一体でも構わないし、反対に下型11Aと一体で構成されていてもよい。
【0058】
また、図16図19に示すような成形装置1を採用してよい。また、これによって図19に示す金属パイプ41を形成してもよい。具体的には、図16図19に示す成形装置1では、下側の金型11、及び上側の金型12は、第2の部分11B,12Bとの間で金属パイプ材料40の他の一部を挟むことで他のフランジ部41b,41cを形成する第3の部分11C,12Cを有してよい。この場合、図19に示すように、パイプ部41aには、横方向(長手方向)において互いに異なる位置に、上下方向(短手方向)の両側へ突出するフランジ部41b,41cが複数(ここではそれぞれ二つ)形成されてよい。この場合、フランジ部41b,41cの数を増加させて強度・剛性を高めることができる。
【0059】
図16図19に示すように、横方向において、下側の金型11が三分割されており、上側の金型12が三分割されている。第1の部分11A,12Aの方が第2の部分11B,12Bよりも小さい。従って、図19に示すように、一方の組に係るフランジ部41b,41cは、パイプ部41aに対して、横方向(長手方向)における金型14A側に寄った位置に形成される。そして、パイプ部41aの横方向(長手方向)の一方の側面41dがそのまま上下方向(短手方向)に延びるようにして、一方の組に係るフランジ部41b,41cが上下方向に突出する。また、他方の組に係るフランジ部41b,41cは、パイプ部41aに対して、横方向(長手方向)における金型14B側に寄った位置に形成される。そして、パイプ部41aの横方向(長手方向)の他方の側面41eがそのまま上下方向(短手方向)に延びるようにして、他方の組に係るフランジ部41b,41cが上下方向に突出する。なお、図16図19における成形装置1の動作は、図4図7の動作と同様である。金型14A及び金型14Bが上型12A及び12Cと一体でも構わないし、反対に下型11A及び11Cと一体で構成されていてもよい。
【0060】
また、図20図23に示すような成形装置1を採用してよい。また、これによって図23に示す金属パイプ41を形成してもよい。具体的には、図20図23に示す成形装置1では、第1の部分11A,12A及び第2の部分11B,12Bは、上下方向に対して傾斜するフランジ部41b,41cを形成する。この場合、図23に示すように、フランジ部41b,41cは、短手方向に対して傾斜するように突出する。この場合、剛性を高めることができ、金属パイプに負荷される荷重方向による成形体の変形挙動も、さらに好ましい方向に制御できる。また、垂直方向よりは剛性及び強度的には劣ることがあったとしても、付属部品との接合において、ある傾斜角を有しているほうが利便性が高く、設計的な要求に対応可能となる場合がある。また、荷重の方向とフランジ部の傾斜により変形の挙動を最適化できる可能性もある。
【0061】
図20に示すように、第1の部分11A及び第2の部分11Bのフランジ部成形面11bは、上下方向に対して傾斜した状態で広がっている。また、第1の部分12A及び第2の部分12Bのフランジ部成形面12bは、上下方向に対して傾斜した状態で広がっている。従って、図23に示すように、両側のフランジ部41b,41cは、パイプ部41aの上下の側面に対して傾斜するように突出する。なお、図20図23における成形装置1の動作は、図4図7の動作と同様である。
【0062】
なお、上述の実施形態では、STAF用の成形装置において採用される金型を例にして説明を行った。しかし、本開示に係る金型が採用される成形装置の種類は特に限定されず、流体を供給して金属パイプ材料を膨張させるタイプの成形装置であればよい。
【0063】
第1の型と第2の型の対向方向は、上下方向でなくともよく、水平方向であってもよい。
【0064】
また、各図面に示した成形装置の構成は一例に過ぎず、本願開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更してもよい。例えば、各金型の動作タイミングや接触状況などは適宜変更してよい。例えば、上述の例では、金型14A,14Bは、完全に型閉した状態では、金型11,12で挟まれるように接触した状態となるが、それまでの間には金型11,12に対してどのような接触状態であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…成形装置、2…成形金型(成形型)、11…金型(第1の型)、12…金型(第2の型)、11A,12A…第1の部分、11B,12B…第2の部分、11C,12C…第3の部分、14A,14B…金型(第3の型)、40…金属パイプ材料、41…金属パイプ、41a…パイプ部、41b,41c…フランジ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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