(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-13
(45)【発行日】2025-03-24
(54)【発明の名称】人工ニップル兼用システム及び哺乳瓶
(51)【国際特許分類】
A61J 11/04 20060101AFI20250314BHJP
A61J 9/00 20060101ALI20250314BHJP
【FI】
A61J9/00 N
A61J9/00 Q
(21)【出願番号】P 2024212444
(22)【出願日】2024-12-05
【審査請求日】2025-01-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204882
【氏名又は名称】株式会社ダイナックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】弁理士法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】上田 千草
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-310716(JP,A)
【文献】米国特許第05029701(US,A)
【文献】米国特許第06415937(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 11/04
A61J 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1直径を有する広口ニップルに嵌合可能な第1直径を有する円孔が設けられたキャップと、
前記第1直径よりも小さい第2直径を有する細口ニップルに嵌合可能な前記第1直径より小さい第2直径を有する円孔が設けられるとともに、前記キャップの前記円孔に嵌合するドーナツ板状の調整プレートと、
を備える、人工ニップル兼用システム。
【請求項2】
前記調整プレートは、前記キャップの前記円孔に嵌合する嵌合部と、前記第1直径よりも大きい直径を有するつば部と、から構成されており、前記キャップの前記円孔に内側から係止されるようになっている、請求項1に記載された、
人工ニップル兼用システム。
【請求項3】
瓶の端面に係止されて、前記広口
ニップル及び前記細口
ニップルのフランジ部を支持するようにされるとともに、前記広口
ニップル及び前記細口
ニップルの内空に連通する円孔が設けられた内フタをさらに備える、請求項1又は請求項2に記載された、人工ニップル兼用システム。
【請求項4】
前記内フタの内面は、前記瓶の内面と前記広口
ニップル又は前記細口
ニップルの内空とを滑らかに接続する、テーパ形状又はR形状となっている、請求項3に記載された
人工ニップル兼用システム。
【請求項5】
前記調整プレートは、第1直径と第2直径の組み合わせに応じて、複数の種類を準備しておくことができる、請求項4に記載された、
人工ニップル兼用システム。
【請求項6】
前記調整プレートには、前記細口ニップルに加えて、スパウト又はストローがさらに取替可能に取り付けられるようになっている、請求項5に記載された、
人工ニップル兼用システム。
【請求項7】
請求項3に記載された人工ニップル兼用システムを備える、哺乳瓶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々なタイプの人工ニップルに適用可能な人工ニップル兼用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、乳幼児用の哺乳瓶、及び、人工ニップルには、複数のメーカーやブランドが存在しており、基本的な構成は同じであるものの、乳幼児が使用する飲み口となる人工ニップルの形状に応じて、瓶、キャップ、フード等が設計されている。
【0003】
このため、人工ニップルを選ぶ際には、必然的に人工ニップルの形状に対応した瓶やキャップを選択する必要があり、各パーツが専用化されている(例えば、特許文献1参照)。その結果として、異なるメーカーやブランドの部品を組み合わせて使用することはできなくなっている(異なるメーカーやブランドの部品を組み合わせて使用することは、メーカーからも推奨されていない)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、乳児期において、各乳児が好む人工ニップル(飲み口)を見つける際には、複数の哺乳瓶一式を購入して試用する必要がある。逆に、人工ニップルは単品で購入可能であるものの、瓶を破損した場合には、哺乳瓶一式を再度購入する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、様々なタイプの人工ニップルを適用することができる、人工ニップル兼用システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の人工ニップル兼用システムは、第1直径を有する広口ニップルに嵌合可能な第1直径を有する円孔が設けられたキャップと、前記第1直径よりも小さい第2直径を有する細口ニップルに嵌合可能な前記第1直径より小さい第2直径を有する円孔が設けられるとともに、前記キャップの前記円孔に嵌合するドーナツ板状の調整プレートと、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明の人工ニップル兼用システムは、第1直径を有する広口ニップルに嵌合可能な第1直径を有する円孔が設けられたキャップと、第1直径よりも小さい第2直径を有する細口ニップルに嵌合可能な第1直径より小さい第2直径を有する円孔が設けられるとともに、キャップの円孔に嵌合するドーナツ板状の調整プレートと、を備えている。このような構成であれば、1つの瓶(容器)に、様々なタイプの人工ニップルを適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】キャップを取り外した状態の哺乳瓶の斜視図である。
【
図2】キャップを取り付けた状態の哺乳瓶の側面図である。
【
図7】人工ニップル兼用システムに広口ニップルを装着した状態の断面図である。
【
図8】人工ニップル兼用システムに細口ニップルを装着した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成要素は例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例】
【0011】
まず、
図1、
図2を用いて本発明の人工ニップル兼用システムSを備える哺乳瓶1の全体構成を説明する。本実施例の哺乳瓶1は、
図1、
図2に示すように、細口ニップルNSを取付ける場合には、ミルクを収容する容器としての円筒容器状の瓶6と、瓶6の上縁に螺合されるキャップ3と、キャップ3に調整プレート4を介して取付けられる細口ニップルNSと、キャップ3に嵌合されるフード2(
図2参照)と、から構成されている。なお、瓶6やキャップ3やフード2の素材としては、例えば合成樹脂を用いることができるが、これに限定されるものではない。例えば、瓶6の素材としてガラスを用いることもできる。
【0012】
他方、本実施例の哺乳瓶1は、
図7を用いて後述するように、広口ニップルNLを取付ける場合には、ミルクを収容する容器としての円筒容器状の瓶6と、瓶6の上縁に螺合されるキャップ3と、キャップ3に直接に取付けられる広口ニップルNLと、キャップ3に嵌合されるフード2(
図2参照)と、から構成されている。すなわち、広口ニップルNLを用いる場合には、調整プレート4は不要となる。
【0013】
より具体的に言うと、本実施例の哺乳瓶1は、
図3の分解図に示すように、ミルクを収容する容器としての円筒容器状の瓶6と、瓶6の上縁に螺合されるキャップ3と、キャップ3に調整プレート4を介して取付けられる細口ニップルNS、又は、キャップ3に直接取付けられる広口ニップルNLと、ニップルNS、NLを支持する内フタ5と、キャップ3に嵌合されるフード2(
図2参照)と、から構成されている。以下、それぞれの構成要素について説明する。
【0014】
そして、これらの構成要素のうち、少なくともキャップ3と調整プレート4とによって、本実施例の人工ニップル兼用システムSが構成されている。この人工ニップル兼用システムSは、さらに、内フタ5も備えることができる。
【0015】
フード2は、合成樹脂によって円筒容器状に形成されており、開口縁がキャップ3の嵌合部32に嵌合される。同様に、瓶6は、合成樹脂によって円筒容器状に形成されており、開口縁の周囲に雄ネジ溝が螺刻されて、キャップ3の螺合部30が嵌合される。さらに、後述するように、瓶6の開口端縁には、内フタ5の係止部50が係止される。
【0016】
キャップ3は、
図4に示すように、合成樹脂によって全体として変形した円筒状に形成されるものである。キャップ3は、具体的には、瓶6に螺合される螺合部30と、螺合部30に段差31を介して連続する縮径された嵌合部32と、から構成されている。嵌合部32には、運搬時にニップルを覆うためのフード2が嵌合される。
【0017】
そして、本実施例の嵌合部32には、頂面に第1直径φ1の円孔33が形成されている。この第1直径φ1は、後述する調整プレート4の第2直径φ2よりも大きくなっており、広口ニップルNL(の「括れ部」)が嵌合するようになっている。
【0018】
調整プレート4は、
図5に示すように、合成樹脂によって全体として薄いドーナツ板形状に形成されるものである。調整プレート4は、具体的には、キャップ3の第1直径φ1の円孔33に嵌合する嵌合部41と、嵌合部41を拡径したつば部40と、から構成される。したがって、嵌合部41の直径は、第1直径φ1と略同一となっている。
【0019】
そして、本実施例の調整プレート4の頂面に第2直径φ2の円孔42が形成されている。より詳細に言うと、円孔42は、ニップルの裾野部が当接するR部42aと、ニップルの括れ部が嵌合するニップル嵌合部42bと、から構成される。この(ニップル嵌合部42bの)第2直径φ2は、前述したキャップ3の円孔33の第1直径φ1よりも小さく形成されており、細口ニップルNS(の「括れ部」)が嵌合するようになっている。
【0020】
内フタ5は、
図6に示すように、合成樹脂によって全体として変形したドーナツ形状に形成されるものである。内フタ5は、具体的には、瓶6の開口端縁に係止されるL字状(つば状)の係止部50と、キャップ3の嵌合部32内に収まるように縮径された縮径部51と、から構成されている。そして、縮径部51の内側には、ドーナツ板形状の支持面52が形成されるとともに、縮径部51と係止部50の内側には、テーパ形状又はR形状(円弧断面)の接続面53が形成されている(
図6ではR形状となっている)。
【0021】
そして、広口ニップルNLを取り付ける際には、広口ニップルNLのフランジ部の底面が支持面52に当接するように組付けられる。一方、細口ニップルNSを取り付ける際には、細口ニップルNSのフランジ部の底面が支持面52に当接するとともに、調整プレート4が縮径部51の頂面に支持されるように組付けられる。
【0022】
(組立手順)
次に、
図7及び
図8を用いて、本実施例の人工ニップル兼用システムSの作用について説明する。はじめに、広口ニップルNLを取り付ける場合について、
図7を用いて説明する。広口ニップルNLを取り付ける場合、キャップ3の円孔33に広口ニップルNLの括れ部を嵌合させておく。これと並行して、瓶6の端縁に内フタ5の係止部50を係止させておく。そして、内フタ5の支持面52に広口ニップルNLのフランジ部の底面を当接させるようにして、キャップ3を瓶6に螺合させることで、人工ニップル兼用システムSを広口ニップルNLに適用した哺乳瓶1の組立が完了する。
【0023】
次に、細口ニップルNSを取り付ける場合について、
図8を用いて説明する。細口ニップルNSを取り付ける場合、調整プレート4の円孔42に細口ニップルNSの括れ部を嵌合させておく。これと並行して、瓶6の端縁に内フタ5の係止部50を係止させておく。そして、内フタ5の支持面52に細口ニップルNSのフランジ部の底面を当接させるよう細口ニップルNS及び調整プレート4を載置する。その後、キャップ3の円孔33に調整プレート4の嵌合部41を嵌合させつつ、キャップ3を瓶6に螺合させることで、人工ニップル兼用システムSを細口ニップルNSに適用した哺乳瓶1の組立が完了する。
【0024】
(効果)
次に、本実施例の人工ニップル兼用システムSの奏する効果を列挙して説明する。
【0025】
(1)上述してきたように、本実施例の人工ニップル兼用システムSは、第1直径φ1を有する広口ニップルNLに嵌合可能な第1直径φ1を有する円孔33が設けられたキャップ3と、第1直径φ1よりも小さい第2直径φ2を有する細口ニップルNSに嵌合可能な第1直径φ1より小さい第2直径φ2を有する円孔42が設けられるとともに、キャップ3の円孔33に嵌合するドーナツ板状の調整プレート4と、を備えている。このような構成のキャップ3と調整プレート4を備えることによって、少なくとも2種類のニップルに対応することのできる、哺乳瓶1を提供することができる。
【0026】
したがって、複数のメーカーやブランドのニップル、さらに広口用、細口用のニップルを1つの哺乳瓶1に付け替えて使用することが可能であるため、異なる哺乳瓶(1)一式を複数購入する必要がなくなる。これにより、ユーザーの費用負担が軽減される。逆に言うと、ユーザーは複数のニップルを1つの哺乳瓶に組み合わせることで、好みに合ったニップルを選定でき、その結果、個々の乳幼児に最適な哺乳体験を提供できる。
【0027】
そして、フード2、キャップ3、内フタ5、瓶6、の兼用化により、1つの哺乳瓶1で、複数のメーカーやブランドが提供する広口ニップルNL・細口ニップルNSをそれぞれ取り付けて使用することが可能となる。
【0028】
さらに言えば、乳幼児の成長に伴う飲み口の好みの変化に対応するため、複数の形状や仕様のニップルを試すことが可能であり、ニップル選定の幅が広がる。この柔軟な選択肢により、成長段階に応じた授乳方法を容易に調整できる。
【0029】
(2)また、調整プレート4は、キャップ3の円孔33に嵌合する嵌合部41と、第1直径φ1よりも大きい直径を有するつば部40と、から構成されており、キャップ3の円孔33に内側から係止されるようになっている。このように、細口ニップルNSを使用する場合は、開発した専用のアタッチメント(調整プレート4)を追加することで対応可能となる。
【0030】
(3)さらに、瓶6の端面に係止されて、広口ニップルNL及び細口ニップルNSのフランジ部を支持するようにされるとともに、広口ニップルNL及び細口ニップルNSの内空に連通する円孔54が設けられた内フタ5をさらに備えるため、止水性が向上するとともに、細口ニップルNSを装着した際に瓶6内への落下を防止できる。
【0031】
(4)この内フタ5の内面は、瓶6の内面と広口ニップルNL又は細口ニップルNSの内空とを滑らかに接続する接続面53がテーパ形状又はR形状となっていることで、瓶6内の液体(ミルク)をスムーズにニッブルへ送り込むことができる。さらに、瓶6内の液体の量が少なくなった場合でも、瓶6の隅に液体が溜まって飲みにくくなることを防止できる。
【0032】
(5)また、調整プレート4は、第1直径φ1と第2直径φ2の組み合わせに応じて、複数の種類を準備しておくことで、ほとんどのタイプのニップルに適応することができる。そのため、調整プレート4以外の部品を共通して使用することができる。
【0033】
(6)また、調整プレート4には、細口ニップルNSに加えて、スパウト又はストローがさらに取替可能に取り付けられるようになっていることが好ましい。このように哺乳瓶1に取り付けるアタッチメントを変更することで、スパウトやストローマグ、さらにはコップなど、用途に応じた使い方を実現できる。これにより、乳幼児の成長やニーズに応じて、1つの製品で多機能な使用が可能となる。
【0034】
(7)そして、本実施例の哺乳瓶1は、上述(3)に記載された人工ニップル兼用システムSを備えるため、互換性のあるパーツを共通して使用することで、使い捨て哺乳瓶や不要になったパーツの廃棄量を削減でき、持続可能な製品利用による環境への配慮が可能となる。
【0035】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0036】
例えば、実施例では説明しなかったが、容器部である瓶6の容量や形状は限定されるものではない。瓶6それ自体の形状も複数の種類を準備して、他の共通の部品と組み合わせて使用することも可能である。
【0037】
さらに、実施例では説明しなかったが、瓶6やフード2の側面に目盛を設けることができる。具体的に言うと、瓶6には70度Cのお湯を入れる目盛を付け、フード2には湯ざましの水を入れる目盛を付けることで、この2つの目盛りを目安に調乳すると、簡単に人肌温度に調整することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 :哺乳瓶
2 :フード
3 :キャップ
30 :螺合部
31 :段差
32 :嵌合部
33 :円孔
4 :調整プレート
40 :つば部
41 :嵌合部
42 :円孔
42a :R部
42b :ニップル嵌合部
5 :内フタ
50 :係止部
51 :縮径部
52 :支持面
53 :接続面
6 :瓶
NL :広口ニップル
NS :細口ニップル
S :人工ニップル兼用システム
φ1 :第1直径
φ2 :第2直径
【要約】
【課題】様々なタイプの人工ニップルを適用することができる、人工ニップル兼用システムを提供する。
【解決手段】人工ニップル兼用システムSは、第1直径φ1を有する広口ニップルNLに嵌合可能な第1直径φ1を有する円孔33が設けられたキャップ3と、第1直径φ1よりも小さい第2直径φ2を有する細口ニップルNSに嵌合可能な第1直径φ1より小さい第2直径φ2を有する円孔42が設けられるとともに、キャップ3の円孔33に嵌合するドーナツ板状の調整プレート4と、を備えている。調整プレート4は、キャップ3の円孔33に嵌合する嵌合部42と、第1直径φ1よりも大きい直径を有するつば部40と、から構成されており、キャップ3の円孔33に内側から係止されるようになっている。
【選択図】
図3