(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】行動支援システム、行動支援方法及び行動支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/063 20230101AFI20250317BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20250317BHJP
G16H 20/00 20180101ALI20250317BHJP
【FI】
G06Q10/063
G06Q50/10
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2021133148
(22)【出願日】2021-08-18
(62)【分割の表示】P 2021069120の分割
【原出願日】2021-04-15
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】522325919
【氏名又は名称】株式会社Godot
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】森山 健
(72)【発明者】
【氏名】鈴井 豪
【審査官】貝塚 涼
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-305988(JP,A)
【文献】特開2019-075001(JP,A)
【文献】特開2020-140360(JP,A)
【文献】特開2001-022837(JP,A)
【文献】特開2017-045142(JP,A)
【文献】特開2004-318503(JP,A)
【文献】特開2016-189059(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187933(WO,A1)
【文献】特開2016-081519(JP,A)
【文献】特許第6810496(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の行動要因にそれぞれ対応付けて、行動変容を促すための複数のメッセージを記憶する記憶部と、
対象者に関する対象者情報と前記複数の行動要因それぞれについて前記対象者の状態が前記行動変容のために十分であるか否かを示す状態情報とのペアを訓練データとして利用した教師有り学習に基づく機械学習モデルに対して、特定の対象者に関する対象者情報を入力して、前記複数の行動要因それぞれについて前記特定の対象者の状態が前記行動変容のために十分であるか否かを示す状態情報を予測する予測部と、
前記予測された状態情報によって前記複数の行動要因のうちの一以上の行動要因について前記特定の対象者の状態が前記行動変容のために十分ではないことが示される場合、前記記憶部において前記一以上の行動要因に対応付けられた一以上のメッセージを選択し、該一以上のメッセージと、前記一以上の行動要因に対応付けられていないメッセージを含む複数のメッセージから成るメッセージセットを生成する生成部と、
前記メッセージセット内の前記複数のメッセージの前記特定の対象者に対する出力を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記特定の対象者に対して、前記一以上の行動要因に対応付けられていない前記メッセージと、前記一以上の行動要因に対応づけられた前記一以上のメッセージと、を出力する、
行動支援システム。
【請求項2】
前記出力されたメッセージに対する前記特定の対象者からのレスポンス情報を取得する取得部を更に備え、
前記予測部は、前記レスポンス情報に基づいて前記状態情報を更新し、
前記制御部は、前記更新された状態情報に基づいて、前記特定の対象者に対して送信する後続のメッセージを更新する、
請求項1に記載の行動支援システム。
【請求項3】
前記制御部は、探索的ランダム化比較試験(RCT)の実施結果に関するRCT情報、前記行動変容のための環境に関する環境情報、前記対象者からのレスポンスに関するレスポンス情報、及び、前記予測部によって前記対象者情報に基づいて予測される行動変容確率の少なくとも一つに基づいて、前記特定の対象者に対する前記複数のメッセージの出力を制御する、
請求項1又は請求項2に記載の行動支援システム。
【請求項4】
前記RCT情報は、前記複数のメッセージを出力する時間帯の順位付け、頻度の順位付け、前記対象者情報及び/又は前記状態情報と前記メッセージセットとの相性、前記メッセージセット内の前記複数のメッセージの出力順序の順位付け、の少なくとも一つを示す、
請求項3に記載の行動支援システム。
【請求項5】
前記対象者情報は、前記対象者の属性、前記対象者の行動履歴、前記対象者の前記行動変容が無い場合におけるリスク、及び、前記対象者からの回答の少なくとも一つを示す、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の行動支援システム。
【請求項6】
前記複数の行動要因は、経験的態度、手段的態度、指示的規範、記述的規範、行動コントロール感、自己効力感、知識、技術、行動の重要性、環境上の制約、習慣化の少なくとも二つを含む、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の行動支援システム。
【請求項7】
行動支援装置が、対象者に関する対象者情報
と複数の行動要因それぞれについて前記対象者の状態
が行動変容のために十分であるか否かを示す状態情報とのペアを訓練データとして利用した教師有り学習に基づく機械学習モデルに対して、特定の対象者に関する対象者情報を入力して、前記複数の行動要因それぞれについて前記特定の対象者の状態が前記行動変容のために十分であるか否かを示す状態情報を予測する工程と、
前記行動支援装置が、前記予測された状態情報によって前記複数の行動要因のうちの一以上の行動要因について前記特定の対象者の状態が前記行動変容のために十分ではないことが示される場合、前記複数の行動要因にそれぞれ対応付けて行動変容を促すための複数のメッセージを記憶する記憶部において前記一以上の行動要因に対応付けられた一以上のメッセージを選択し、該一以上のメッセージと、前記一以上の行動要因に対応付けられていないメッセージを含む複数のメッセージから成るメッセージセットを生成する工程と、
前記行動支援装置が、前記メッセージセット内の前記複数のメッセージの前記特定の対象者に対する出力を制御する工程と、を有し、
前記制御する工程において、前記行動支援装置は、前前記特定の対象者に対して、前記一以上の行動要因に対応付けられていない前記メッセージと、前記一以上の行動要因に対応づけられた前記一以上のメッセージと、を出力する、
行動支援方法。
【請求項8】
コンピュータに、
対象者に関する対象者情報
と複数の行動要因それぞれについて前記対象者の状態
が行動変容のために十分であるか否かを示す状態情報とのペアを訓練データとして利用した教師有り学習に基づく機械学習モデルに対して、特定の対象者に関する対象者情報を入力して、前記複数の行動要因それぞれについて前記特定の対象者の状態が前記行動変容のために十分であるか否かを示す状態情報を予測する工程と、
前記予測された状態情報によって前記複数の行動要因のうちの一以上の行動要因について前記特定の対象者の状態が前記行動変容のために十分ではないことが示される場合、前記複数の行動要因にそれぞれ対応付けて行動変容を促すための複数のメッセージを記憶する記憶部において前記一以上の行動要因に対応付けられた一以上のメッセージを選択し、該一以上のメッセージと、前記一以上の行動要因に対応付けられていないメッセージを含む複数のメッセージから成るメッセージセットを生成する工程と、
前記メッセージセット内の前記複数のメッセージの前記特定の対象者に対する出力を制御する工程と、を実行させ、
前記制御する工程において、前
記コンピュータは、前記特定の対象者に対して、前記一以上の行動要因に対応付けられていない前記メッセージと、前記一以上の行動要因に対応づけられた前記一以上のメッセージと、を出力すること、
を実行させるための行動支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行動支援システム、行動支援方法及び行動支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間の行動を科学的に研究した行動科学の理論に基づくアプローチをサービス開
発に活用する取り組みが、公共政策、医療、小売り業、教育等の様々な分野で広がってい
る。また、当該様々な分野における対象者の行動変容と習慣化を支援することを技術的に
実現するシステムも検討されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1記載のシステムでは、複数の対象者の行動について測定された種々のデータ
を含んだ行動データを分析し、当該行動データの分析の結果を基に、習慣化の目標として
の行動へ段階的に向かう複数のステージの基準としての指標であるステージ指標と、当該
ステージ指標に従う前記複数のステージの各々とを定義すること、隣接したステージのペ
ア毎に、当該ペアを構成する二つのステージのギャップを特定すること、各ステージペア
について、特定されたギャップが存在する理由と、低い方のステージに属する対象者に高
い方のステージへと遷移するための行動変容を起こさせるための施策との少なくとも一つ
である理由/施策を、ギャップと理由/施策との関係が定義された関係情報から特定し、
各ステージペアについて特定された理由/施策に関する処理を実行することが記載されて
いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、対象者の行動変容を促すため、対象者の行動要因に基づくナッジを利用する
ことが検討されている。行動要因とは、人間が行動を起こす要因である。しかしながら、
行動要因に基づくナッジを利用するだけでは、対象者の行動変容を効果的に促進できない
恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、行動要因に基づくナッジを利用して、対象者の行動変容をより効果
的に支援する行動支援システム、行動支援方法及び行動支援プログラムを提供することを
目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る行動支援システムは、複数の行動要因にそれぞれ対応付けて、行
動変容を促すための複数のメッセージを記憶する記憶部と、対象者に関する対象者情報に
基づいて、前記複数の行動要因それぞれについての前記対象者の状態を示す状態情報を予
測する予測部と、前記記憶部から前記状態情報に基づいて一以上のメッセージを選択し、
該一以上のメッセージを含むメッセージセットを生成する生成部と、前記メッセージセッ
ト内の前記一以上のメッセージの前記対象者に対する出力を制御する制御部と、を備える
。
【0008】
この態様によれば、複数の行動要因それぞれについての対象者の状態を示す状態情報が
予測され、当該状態情報に基づいて選択された一以上のメッセージを含むメッセージセッ
トを生成されるので、対象者の行動変容に最適なメッセージセット(すなわち、情報束)
を生成でき、行動要因に基づくナッジを利用して対象者の行動変容を促進できる。
【0009】
上記態様において、前記生成部は、前記記憶部から、前記状態情報が前記行動変容に十
分ではないことを示す一以上の行動要因にそれぞれ対応付けられた前記一以上のメッセー
ジを選択してもよい。この態様によれば、対象者の行動変容により適切なメッセージセッ
ト(すなわち、情報束)を生成できる。
【0010】
上記態様において、前記制御部は、探索的ランダム化比較試験(RCT)の実施結果に
関するRCT情報、前記行動変容のための環境に関する環境情報、前記対象者からのレス
ポンスに関するレスポンス情報、及び、前記予測部によって前記対象者情報に基づいて予
測される行動変容確率の少なくとも一つに基づいて、前記対象者に対する前記一以上のメ
ッセージの出力を制御してもよい。この態様によれば、メッセージセット(すなわち、情
報束)の中からメッセージの出力が制御されるので、対象者の行動変容をより効果的に支
援できる。
【0011】
上記態様において、前記RCT情報は、前記一以上のメッセージを出力する時間帯の順
位付け、頻度の順位付け、前記対象者情報及び/又は前記状態情報と前記メッセージセッ
トとの相性、前記メッセージセット内の前記一以上のメッセージの出力順序の順位付け、
の少なくとも一つを示してもよい。
【0012】
上記態様において、前記対象者情報は、前記対象者の属性、前記対象者の行動履歴、前
記対象者の前記行動変容が無い場合におけるリスク、及び、前記対象者からの回答の少な
くとも一つを示してもよい。
【0013】
上記態様において、前記複数の行動要因は、経験的態度、手段的態度、指示的規範、記
述的規範、行動コントロール感、自己効力感、知識、技術、行動の重要性、環境上の制約
、習慣化の少なくとも二つを含んでもよい。
【0014】
本発明の他の態様に係る行動支援方法は、行動支援装置が、対象者に関する対象者情報
に基づいて、複数の行動要因それぞれについての前記対象者の状態を示す状態情報を予測
する工程と、前記行動支援装置が、前記複数の行動要因にそれぞれ対応付けて行動変容を
促すための複数のメッセージを記憶する記憶部から、前記状態情報に基づいて一以上のメ
ッセージを選択し、該一以上のメッセージを含むメッセージセットを生成する工程と、前
記行動支援装置が、前記メッセージセット内の前記一以上のメッセージの前記対象者に対
する出力を制御する工程と、を有する。
【0015】
本発明の他の態様に係る行動支援プログラムは、コンピュータに、対象者に関する対象
者情報に基づいて、複数の行動要因それぞれについての前記対象者の状態を示す状態情報
を予測する工程と、前記複数の行動要因にそれぞれ対応付けて行動変容を促すための複数
のメッセージを記憶する記憶部から、前記状態情報に基づいて一以上のメッセージを選択
し、該一以上のメッセージを含むメッセージセットを生成する工程と、前記メッセージセ
ット内の前記一以上のメッセージの前記対象者に対する出力を制御する工程と、を実行さ
せる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、行動要因に基づくナッジを利用して、対象者の行動変容をより効果的
に支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る行動支援システムの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る行動支援システム内の装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る行動支援システム内の装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るナッジメッセージの一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る対象者情報の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る状態情報の一例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係るナッジメッセージセットの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る行動支援システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一
の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0019】
(行動支援システムの構成)
<概略構成>
図1は、本実施形態に係る行動支援システムの概略構成の一例を示す図である。
図1に
示すように、行動支援システム1は、行動支援装置10、行動分析装置20及び端末30
を含む。
【0020】
行動支援装置10は、行動要因に基づくナッジを利用したメッセージ(以下、「ナッジ
メッセージ」という)を端末30に提供する情報処理装置である。行動分析装置20は、
行動支援装置10によって端末30に提供されるナッジメッセージを生成する情報処理装
置である。端末30は、行動変容の対象者が使用する端末であり、例えば、スマートフォ
ン、携帯電話、タブレット、パーソナルコンピュータ等の各種の情報機器であればよい。
端末30は、ショートメッセージ、Eメール等のメッセージの受信機能、例えば、LIN
E(登録商標)等の各種のソーシャルネットワークサービス(SNS)を利用可能である
ものとする。
【0021】
以下では、上記行動要因として統合行動モデル(Integrated Behavioral Model:IB
M)で規定される要因(「IBM要因」等とも呼ばれる)を例示するが、行動要因は、I
BM以外の行動モデルで規定される要因等、人間の行動意志に関するどのような要因であ
ってもよい。
【0022】
<ハードウェア構成>
図2は、本実施形態に係る行動支援システム内の装置のハードウェア構成の一例を示す
図である。
図2に示すように、行動支援システム1内の各装置(例えば、行動支援装置1
0、行動分析装置20、端末30の各々)は、演算装置に相当するCPU(Central Proc
essing Unit)等のプロセッサ11と、記憶装置12と、通信装置13と、入出力装置1
4とを有する。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。
【0023】
なお、本例では、行動支援装置10及び行動分析装置20が別体の装置として示されて
いるが、一体の装置で構成されてもよい。一体の装置として構成される複数の装置は、例
えば、PLC(Programmable Logic Controller)の異なる動作として実現されてもよい
。また、行動支援装置10、行動分析装置20及び端末30の少なくとも一つが複数の装
置に分割されてもよい。
【0024】
プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、記憶装置1
2に記憶されたプログラムの実行に関する制御やデータの演算、加工を行う制御部である
。プロセッサ11は、入出力装置14及び/又は通信装置13から種々の入力データを受
け取り、入力データの演算結果を入出力装置14に出力(例えば、表示)したり、記憶装
置12に格納したり、又は、通信装置13を介して送信したりする。
【0025】
記憶装置12は、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)
、の少なくとも一つである。行動支援装置10の記憶装置12は、プロセッサ11が実行
する行動支援プログラムを記憶してもよい。当該記憶装置12は、「記憶部」等と呼ばれ
てもよい。
【0026】
通信装置13は、有線及び/又は無線ネットワークを介して通信を行う装置であり、例
えば、ネットワークカード、通信モジュール、チップ、アンテナ等を含んでもよい。行動
支援装置10及び行動分析装置20が一体の装置で構成される場合、通信装置13は、行
動支援装置10として動作するプロセスと、行動分析装置20として動作するプロセスと
の間のプロセス間通信を含んでよい。通信装置13は、「送信部」又は「受信部」等と呼
ばれてもよい。
【0027】
入出力装置14は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス及び/又はマイク等の
入力装置と、例えば、ディスプレイ及び/又はスピーカ等の出力装置とを含む。入出力装
置は、「入力部」又は「出力部」等と呼ばれてもよい。
【0028】
以上説明したハードウェア構成は一例に過ぎない。行動支援システム1内の各装置は、
図2に記載したハードウェアの一部が省略されていてもよいし、
図2に記載されていない
ハードウェアを備えていてもよい。また、
図2に示すハードウェアが1又は複数のチップ
により構成されていてもよい。
【0029】
<機能構成>
図3は、本実施形態に係る行動支援システム内の装置の機能構成の一例を示す図である
。なお、
図3は例示にすぎず、行動支援システム1内の各装置は、不図示の機能を備えて
もよいことは勿論である。
【0030】
≪行動分析装置≫
図3に示すように、行動分析装置20は、取得部201及び生成部202を備える。な
お、取得部201が実現する少なくとも一部の機能は、通信装置13を用いて実現するこ
とができる。また、取得部201及び生成部202が実現する少なくとも一部の機能は、
プロセッサ11が、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより実現する
ことができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログ
ラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-tran
sitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定さ
れないが、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。
【0031】
取得部201は、行動変容のためのプロセスに関する情報(以下、「行動プロセス情報
」という)を取得する。行動プロセス情報は、例えば、行動変容を促す分野、当該行動変
容のための介入の範囲、行動変容の成功率、行動変容の失敗率等の少なくとも一つを示す
情報を含む。例えば、行動変容を促す分野が「検診又は健診の利用」である場合、行動変
容の成功率は、検診又は健診の受診率であり、行動変容の失敗率は、検診又は健診の脱落
率であってもよい。取得部201は、行動プロセス情報を、通信装置13を介して他の装
置から取得してもよいし、上記記憶媒体を介して取得してもよい。
【0032】
生成部202は、取得部201によって取得された行動プロセス情報に基づいて、複数
のIBM要因にそれぞれ対応付けられる複数のナッジメッセージを生成する。ナッジメッ
セージは、IBM要因毎に行動変容を促すように生成される。例えば、生成部202は、
訓練済みの機械学習モデルを利用して、上記複数のナッジメッセージを生成してもよい。
当該機械学習モデルは、取得部201で取得された行動プロセス情報が入力されると、ナ
ッジメッセージを出力するように訓練される。このような機械学習モデルは、ニューラル
ネットワークとして実現され、行動プロセス情報とナッジメッセージとのペアを訓練デー
タとして利用した教師有り学習によって訓練されてもよい。
【0033】
図4は、本実施形態に係るナッジメッセージの一例を示す図である。
図4に示すように
、複数のIBM要因のそれぞれに対して、ナッジメッセージが関連付けられている。複数
のIBM要因は、例えば、経験的態度(Experiential attitude)、手段的態度(Instrum
ental attitude)、指示的規範(Injunctive norm)、記述的規範(Descriptive norm)
、行動コントロール感(Perceived control)、自己効力感(Self-efficacy)、知識(Kn
owledge)、技術(Skills)、行動の重要性(Salience of the behavior)、環境上の制
約(Environmental constraints)、習慣化(Habit)の少なくとも二つを含んでもよい。
【0034】
なお、
図4に示す各IBM要因は、例示にすぎず、図示するものに限られない。
図4に
示す少なくとも二つのIBM要因は包含されて、上位レベルのIBM要因として規定され
てもよい。例えば、上記経験的態度及び手段的態度は「態度(Attitude)」に包含され、
上記指示的規範及び記述的規範は「規範(Perceived norm)」に包含され、上記行動コン
トロール感及び自己効力感は「個人的作用(Personal Agency)」に包含され、上記知識
及び技術は「知識(Knowledge)」に包含され、行動の重要性は「重要性(Importance)
」に包含され、環境上の制約は「摩擦(Friction)」に包含されてもよい。或いは、
図4
に示す一つのIBM要因が分割されて、下位レベルの複数のIBM要因が規定されてもよ
い。ナッジメッセージは、どのレベルのIBM要因に関連付けられてもよい。
【0035】
図4に示すように、複数のIBM要因には、それぞれ、IBM要因の識別子(以下、「
IBM ID」という)及びナッジメッセージが対応付けられてもよい。なお、
図4では
、例えば、対象者として「○○市の住民」、行動変容として「特定健康診査(以下、「特
定健診」という)の受診勧奨」を想定したナッジメッセージが示される。各IBM要因に
対応付けられるナッジメッセージは、各IBM要因を考慮して対象者の行動変容を促すよ
うに生成される。なお、
図4では、各IBM要因に一つのナッジメッセージが関連付けら
れるが、各IBM要因に複数のナッジメッセージが関連付けられてもよい。また、各IB
M要因を識別するIBM IDも図示するものに限られない。
【0036】
生成部202によって生成されたナッジメッセージは、通信装置13により行動支援装
置10に送信されてもよい。又は、当該ナッジメッセージは、上記記憶媒体に出力され、
当該記憶媒体を介して行動支援装置10に入力されてもよい。
【0037】
≪行動支援装置≫
図3に示すように、行動支援装置10は、記憶部101、予測部102、生成部103
、取得部104、及び、送信制御部105を備える。なお、取得部104が実現する機能
の少なくとも一部は、通信装置13を用いて実現することができる。また、予測部102
、生成部103及び送信制御部105は、プロセッサ11が、記憶装置12に記憶された
行動支援プログラムを実行することにより実現することができる。また、当該行動支援プ
ログラムは、上記記憶媒体に格納することができる。また、記憶部101は、記憶装置1
2を用いて実現することができる。
【0038】
記憶部101は、複数のIBM要因にそれぞれ対応付けて、複数のナッジメッセージ(
例えば、
図4)を記憶する。当該複数のナッジメッセージは、行動分析装置20で生成さ
れてもよいし、又は、行動支援装置10の入出力装置14から入力されるものであっても
よい。
【0039】
記憶部101は、対象者に関する情報(以下、「対象者情報」という)、行動変容のた
めの環境に関する情報(以下、「環境情報」という)、探索的ランダム化比較試験(RC
T)の実施結果に関する情報(以下、「RCT情報」という)の少なくとも一つを記憶す
る。
【0040】
ここで、記憶部101で記憶される対象者情報は、対象者の識別情報、対象者の属性に
関する情報(以下、「属性情報」という)、対象者の行動履歴に関する情報(以下、「行
動履歴情報」という)、対象者の行動変容無しの場合におけるリスクに関する情報(以下
、「リスク情報」という)、及び、対象者からの回答に関する情報(以下、「回答情報」
という)の少なくとも一つを含んでもよい。
【0041】
図5は、本実施形態に係る対象者情報の一例を示す図である。例えば、
図5では、対象
者として「○○市の住民」、行動変容として「特定健診(例えば、検診)の受診」を想定
した対象者情報が例示される。
【0042】
図5に対象者情報には、対象者の識別情報として、例えば、対象者IDを示す情報、当
該対象者の属性情報として、例えば、年齢及び性別を示す情報、行動履歴情報として、例
えば、当該対象者の特定健診の受診歴を示す情報、リスク情報として、例えば、当該対象
者が特定の病気を罹患するリスク(以下、「罹患リスク」という)を示す情報、及び、回
答情報として、例えば、対象者に対する調査票の回答(以下、「調査票回答」という)を
示す情報が含まれてもよい。
【0043】
なお、対象者情報は、
図5に示すものに限られない。例えば、
図5では、行動履歴情報
として直近の所定数の年度の特定健診の受信歴が示されるが、対象者の行動履歴に関する
情報であればどのような情報であってもよい。また、属性情報も対象者の年齢、性別に限
られず、対象者の属性に関するどのような情報であってもよい。また、
図5に示す少なく
とも一部の情報を含まなくともよいし、対象者に関する不図示の情報を含んでもよい。
【0044】
また、記憶部101で記憶される環境情報は、例えば、特定の行政単位(例えば、〇〇
市)における住民を対象者とし、特定健診の受診を行動変容とする場合、特定健診の日時
を示す情報、当該特定健診を受信可能な医療機関を示す情報等であってもよい。また、環
境情報は、対象者に対するナッジメッセージの最大送信回数、行動変容に対する報酬に関
する情報(以下、「報酬情報」という)等を含んでもよい。報酬情報は、例えば、対象者
を「ある行政単位の住民」とし、行動変容を「特定健診の受診」とする場合、対象者に期
待される寿命延伸効果、期待される納税額等であってもよい。
【0045】
また、RCT情報は、送信日(例えば、平日、月曜日~日曜日、祝日等)の順位付け、
送信時間帯(例えば、午前中、午後、夜間等)の順位付け、送信頻度の順位付け(例えば
毎月、隔週、毎月等)、対象者情報とナッジメッセージセットとの相性、ナッジメッセー
ジセット内のナッジメッセージの送信順序、の少なくとも一つを示す情報を含んでもよい
。
【0046】
予測部102は、対象者に関する対象者情報に基づいて、上記複数のIBM要因それぞ
れについての対象者の状態を示す情報(以下、「状態情報」という)を予測する。
図6は
、本実施形態に係る状態情報の一例を示す図である。
図6に示すように、状態情報は、対
象者の状態が行動変容のために十分であるか否かをIBM要因毎に示してもよい。
【0047】
例えば、
図6に示す状態情報は、複数のIBM要因(ここでは、経験的態度、手段的態
度、指示的規範、記述的規範、行動コントロール感、自己効力感、知識及び技術、行動の
重要性、環境上の制約及び習慣化)それぞれについて、各対象者の状態が行動変容(例え
ば、特定健診の受診)のために十分であるか否かを示す。例えば、
図6の対象者ID「3
」の対象者(以下、「対象者#3」という)の状態情報は、3つのIBM要因「経験的態
度」、「知識及び技術」及び「環境上の制約」について行動変容のために十分でないこと
を示し、他のIBM要因について行動変容のために十分であることを示す。なお、対象者
の状態が行動変容のために十分でないことを示す状態情報は、不足情報と呼ばれてもよい
。また、
図6は例示にすぎず、一部の項目(例えば、IMB ID、大項目、中項目等)
が省略されてもよい。
【0048】
予測部102は、以上のような状態情報を、対象者情報に加えて取得部104で取得さ
れる対象者からのレスポンス(response)に関する情報(以下、「レスポンス情報」とい
う)、環境情報及びRCT情報の少なくとも一つに基づいて予測してもよい。また、予測
部102は、以上のような状態情報を、訓練済みの機械学習モデルを利用して生成しても
よい。当該機械学習モデルは、上記対象者情報(及び、レスポンス情報、環境情報及びR
CT情報の少なくとも一つ)が入力されると、上記状態情報を出力するように訓練される
。このような機械学習モデルは、ニューラルネットワークとして実現され、上記対象者情
報(及び、レスポンス情報、環境情報及びRCT情報の少なくとも一つ)と状態情報との
ペアを訓練データとして利用した教師有り学習によって訓練されてもよい。
【0049】
また、予測部102は、対象者に関する対象者情報に基づいて、対象者の行動変容に関
する確率(以下、「行動変容確率」という)を予測してもよい。行動変容確率は、例えば
、対象者の行動変容のための介入なしに当該対象者が行動変容を達成する確率(以下、「
非介入行動確率」)であってもよい。例えば、
図6の対象者#3の非介入行動確率は70
%であり、行動変容のための介入がなされなければ、70%の確率で行動変容が達成され
ることになる。なお、行動変容確率は、これに限られず、上記介入なしに対象者が行動変
容を達成しない確率、上記介入ありの場合に対象者が行動変容を達成する又は達成しない
確率等であってもよい。
【0050】
また、予測部102は、以上のような行動変容確率を、対象者情報に加えて取得部10
4で取得されるレスポンス情報、環境情報及びRCT情報の少なくとも一つに基づいて予
測してもよい。また、予測部102は、以上のような行動変容確率を、訓練済みの機械学
習モデルを利用して生成してもよい。当該機械学習モデルは、上記対象者情報(及び、レ
スポンス情報、環境情報及びRCT情報の少なくとも一つ)が入力されると、上記行動変
容確率を出力するように訓練される。このような機械学習モデルは、ニューラルネットワ
ークとして実現され、上記対象者情報(及び、レスポンス情報、環境情報及びRCT情報
の少なくとも一つ)と行動変容確率とのペアを訓練データとして利用した教師有り学習に
よって訓練されてもよい。
【0051】
生成部103は、予測部102によって予測された状態情報に基づいて、記憶部203
から、対象者に対する配信候補の一以上のナッジメッセージを含むセット(以下、「ナッ
ジメッセージセット」という)を選択する。具体的には、生成部103は、状態情報が行
動変容のために十分でない状態であること示すIBM要因に対応付けられたナッジメッセ
ージを少なくとも含むナッジメッセージセットを生成する。
【0052】
図7は、本実施形態に係るナッジメッセージセットの一例を示す図である。
図7に示す
ように、対象者#3に対するナッジメッセージセットは、ナッジメッセージ#1~#4を
含む。ナッジメッセージ#2~#4は、対象者#3の状態情報によって行動変容のために
十分ではない状態であることが示された3つのIBM要因「経験的態度」、「知識及び技
術」及び「環境上の制約」にそれぞれ対応付けられる。一方、ナッジメッセージ#1は、
当該IBM要因に対応付けられたものではない。このように、ナッジメッセージセットは
、状態情報が行動変容のために十分でない状態であること示すIBM要因に対応付けられ
たナッジメッセージだけでなく、他のナッジメッセージを含めてもよい。
【0053】
取得部104は、対象者からのレスポンス情報を取得する。ここで、レスポンス情報は
、例えば、ナッジメッセージを閲覧した対象者からのレスポンスを示す情報であり、ナッ
ジメッセージを含むショートメッセージ(SM)やメールの閲覧の有無、行動変容に関す
る状況(例えば、特定健診の予約状況)、行動変容の結果(例えば、特定健診の受診結果
)等であってもよい。取得部104は、対象者の端末30からのレスポンス情報をリアル
タイムで取得してもよい。
【0054】
送信制御部105は、生成部103によって選択されたナッジメッセージセット内の一
以上のナッジメッセージの対象者に対する送信を制御する。送信制御部105の制御に従
って、行動支援装置10の通信装置13は、対象者の端末30に対してナッジメッセージ
を送信する。
【0055】
具体的には、送信制御部105は、記憶部101に記憶されたRCT情報、環境情報、
及び、取得部104によって取得されたレスポンス情報の少なくとも一つに基づいて、上
記一以上のナッジメッセージの対象者に対する送信を制御する。ここで、ナッジメッセー
ジの送信制御には、例えば、ナッジメッセージセット内の複数のナッジメッセージの送信
順序、各ナッジメッセージの送信日、各ナッジメッセージの送信時間帯、当該複数のナッ
ジメッセージを送信する時間間隔(送信頻度)、各ナッジメッセージの送信中止、各ナッ
ジメッセージの送信回数等の制御が含まれてもよい。
【0056】
例えば、
図7に示される対象者#3用のナッジメッセージセットの場合、送信制御部1
05は、RCT情報、環境情報及びレスポンス情報の少なくとも一つに基づいて、ナッジ
メッセージ#1、#2、#3及び#4の順番で対象者#3にナッジメッセージを送信する
ことを決定する。また、送信制御部105は、RCT情報、環境情報及びレスポンス情報
の少なくとも一つに基づいて、ナッジメッセージ#1~#4の送信日、送信時間帯、送信
間隔、送信中止及び送信回数等の少なくとも一つを決定する。
【0057】
例えば、送信制御部105は、
図7のナッジメッセージ#1~#3をそれぞれ送信した
後に、取得部104によって行動変容に肯定的なレスポンス情報が取得される場合、後続
のナッジメッセージの送信を中止してもよい。一方、ナッジメッセージに応じて否定的な
レスポンス情報が取得される場合、送信制御部105は、当該ナッジメッセージを再送し
てもよいし、後続のナッジメッセージを送信してもよい。
【0058】
このように対象者#3のナッジメッセージセットを一度に対象者#3に送信する代わり
に、ナッジメッセージセットに含まれる複数のナッジメッセージを複数回に分散させて対
象者#3に送信できる。情報量の多い一度のナッジメッセージであっても、人間は見落と
す可能性があるため、複数回のナッジメッセージの方が行動変容の促進効果が高いともい
える。したがって、ナッジメッセージを複数回に分散させて送信することで、一度きりの
ナッジメッセージでは行動変容を起こさない層の対象者に対して、行動変容の促進効果を
高めることができる。
【0059】
また、送信制御部105は、取得部104によって取得されたレスポンス情報に基づい
て更新された後続のナッジメッセージを送信してもよい。具体的には、予測部102は、
レスポンス情報に基づいて状態情報を更新し、生成部103は、更新された状態情報に基
づいてナッジメッセージセットを更新してもよい。また、対象者のレスポンス情報に基づ
いて当該対象者に送信するナッジメッセージを更新することにより、当該対象者の行動変
容の促進により効果的なナッジメッセージを送信できる。
【0060】
また、送信制御部105は、予測部102によって予測された行動変容確率に基づいて
、生成部103によって生成されたナッジメッセージセット内の一以上のナッジメッセー
ジの送信を制御してもよい。例えば、送信制御部105は、非介入行動確率が所定条件(
例えば、所定の閾値以下又は未満等)を満たす対象者に対しては、各ナッジメッセージの
送信回数を増やしたり、送信頻度を増加させたりしてもよい。一方、送信制御部105は
、非介入行動確率が所定条件(例えば、所定の閾値より大きい又は以上等)を満たす対象
者に対しては、各ナッジメッセージの送信回数を減らしたり、送信頻度を減少させたりし
てもよい。
【0061】
また、送信制御部105は、種々の要因により変化する情報(以下、「変化情報」とい
う)に基づいて、生成部103によって生成されたナッジメッセージセット内の一以上の
ナッジメッセージの送信を制御してもよい。例えば、当該変化情報は、例えば、特定のワ
クチンの入荷状況、健診又は検診の予約の空き状況、空き時間等であってもよい。また、
送信制御部105は、対象者の利便性に関する情報(例えば、対象者にとって利便性の高
い時間及び/又は場所であるか否か等)に基づいて、生成部103によって生成されたナ
ッジメッセージセット内の一以上のナッジメッセージの送信を制御してもよい。
【0062】
以上のような送信制御部105による送信制御は、資源配分問題を解くことによって実
施されてもよい。例えば、予測部102によって予想された状態情報及び行動変容確率、
記憶部101に記憶された環境情報、生成部103によって生成されたナッジメッセージ
セットの少なくとも一つを用いて、資源配分問題が初期設定されてもよい。また、送信制
御部105は、記憶部101で記憶される全ナッジメッセージ及び全対象者を環境とし、
当該全ナッジメッセージを解空間とし、各対象者に対するナッジメッセージの最大送信回
数を予算とし、対象期間中に得られる報酬の総和を累積報酬として資源配分問題を解くこ
とによって、上記送信制御を実施してもよい。
【0063】
(行動支援システムの動作)
図8は、本実施形態に係る行動支援システムの動作の一例を示すフローチャートである
。なお、
図8に示す行動支援システムの動作は一例にすぎず、図示するものに限られない
。
【0064】
図8に示すように、ステップS101において、行動支援装置10は、対象者情報に基
づいて、対象者の状態情報(例えば、
図6)を予測する。また、行動支援装置10は、対
象者情報に基づいて、行動変容確率(例えば、非介入行動確率)を予測してもよい。また
、行動支援装置10は、ステップS103による送信制御により送信されたナッジメッセ
ージに対するレスポンス情報、環境情報及びRCT情報の少なくとも一つに基づいて、状
態情報及び/又は行動変容確率を予測又は更新してもよい。
【0065】
ステップS102において、行動支援装置10は、ステップS101で予測された状態
情報に基づいて、当該対象者用のナッジメッセージセット(例えば、
図7)を生成する。
【0066】
ステップS103において、行動支援装置10は、ステップS102で生成されたナッ
ジメッセージセット内の一以上のナッジメッセージの送信を制御する。行動支援装置10
は、先に送信されたナッジメッセージに対するレスポンス情報、環境情報及びRCT情報
の少なくとも一つに基づいて、当該一以上のナッジメッセージの送信を制御してもよい。
【0067】
本実施形態に係る行動支援システム1によれば、行動要因に基づくナッジを利用して、
対象者の行動変容をより効果的に支援できる。より具体的には、上記行動支援システム1
では、複数のIBM要因それぞれについての対象者の状態を示す状態情報が予測され、当
該状態情報に基づいて選択された一以上のナッジメッセージを含むナッジメッセージセッ
トを生成される。このため、対象者の行動変容に最適なナッジメッセージセット(すなわ
ち、情報束)を生成できる。
【0068】
また、上記行動支援システム1では、
図7に例示されるようなナッジメッセージセット
を一度に対象者に送信する代わりに、ナッジメッセージセット内の複数のナッジメッセー
ジを複数回に分散させて対象者に送信することにより、対象者の行動変容の促進効果を高
めることができる。また、ナッジメッセージに対するレスポンス情報に基づいて、後続の
ナッジメッセージの送信制御及び/又は内容更新を実施することにより、当該対象者の行
動変容をより効果的に支援できる。
【0069】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定
して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件
、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができ
る。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可
能である。
【0070】
例えば、上記実施形態では、例えば、対象者として「○○市の住民」、行動変容として
「特定健診(例えば、検診)の受診」を想定したが、これに限られない。対象者は、行政
サービスの利用者に限られず、英会話や資格試験等の各種サービスの利用者であってもよ
い。また、行動変容は、行政サービスの利用に限られず、学習の継続、各種サービスの利
用等であってもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、探索的ランダム化比較試験(RCT)の実施結果に関するR
CT情報に基づいて対象者に対する一以上のメッセージの送信を制御するものとしたが、
メッセージの送信の制御に用いられる因果推論手法は、探索的RCTに限られない。当該
因果推論手法としては、例えば、傾向スコアマッチング等他の手法が用いられてもよい。
なお、探索的RCTは、試行的及び/又は小規模のRCTとも言え、当該メッセージの送
信制御に用いられるパラメータ設定のためのパイロットであれば、どのようなものであっ
てもよい。
【0072】
また、上記実施形態におけるナッジメッセージは、文字列や記号を含むテキスト形式に
限られず、音声、映像又は画像等を含む所定の情報であってもよい。また、上記実施形態
では、行動支援装置10の送信制御部105がナッジメッセージの送信を制御するものと
したが、これに限られず、行動支援装置10は、ナッジメッセージの出力(例えば、送信
だけでなく、表示、音声出力等含む)を制御する制御部を備えればよい。すなわち、上記
実施形態におけるナッジメッセージの「送信」は、表示、音声出力、出力等と言い換えら
れてもよい。また、端末30は、特定の対象者が使用する端末に限られず、不特定の対象
者向けの情報を出力するサイネージ、電子掲示板、スピーカ等であってもよい。
【0073】
例えば、行動支援装置10は、特定の空間(駅構内とか飲食店内)における人口密度が
一定水準を超え、かつ非介入行動確率が高い状況において、「人を散らす」ナッジメッセ
ージを、端末30(例えば、サイネージ、電子掲示板又はスピーカ等)に送信し、当該端
末30から出力(例えば、表示、音声出力等)させてもよい。また、行動支援装置10と
ナッジメッセージを対象者に対して出力する端末30が一体型の装置として提供されても
よく、行動支援装置10が端末30に対してナッジメッセージを送信することは、当該一
体型の装置内の内部的通信を行うことであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…行動支援システム、10…行動支援装置、20…行動分析装置、30…端末、11…
プロセッサ、12…記憶装置、13…通信装置、14…入出力装置、101…記憶部、1
02…予測部、103…生成部、104…取得部、105…送信制御部、201…取得部
、202…生成部、203…記憶部