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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】植物ハウス構造
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/24 20060101AFI20250317BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20250317BHJP
   E04H 5/08 20060101ALI20250317BHJP
【FI】
A01G9/24 B
E04B1/76 200B
E04B1/76 500D
E04H5/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024215393
(22)【出願日】2024-12-10
【審査請求日】2024-12-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512043360
【氏名又は名称】日本遮熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】野口 修平
(72)【発明者】
【氏名】野口 彩乃
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特許第7599764(JP,B1)
【文献】特開2003-321881(JP,A)
【文献】特許第7515945(JP,B1)
【文献】特許第7408204(JP,B1)
【文献】特開2019-103465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/24
E04B 1/76
E04H 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニール内装材と、前記ビニール内装材の外側に設けられた外装材と、前記ビニール内装材と前記外装材との間に形成された通気層と、側壁を構成する前記外装材の下側に形成され、前記通気層と連通された側壁吸気口及び妻壁を構成する前記外装材の下側に形成され、前記通気層と連通された妻壁吸気口と、を有する二重構造の植物ハウス構造において、
前記ビニール内装材の頂部には空気が流出入するための開口部が形成され、
前記外装材の頂部に形成された第一排気口の外側に、前記通気層を流れる空気の通気量を調整する第一通気開閉装置がカバー材で覆われた状態で取り付けられ、前記側壁吸気口から吸気された空気が前記通気層を上昇し、前記吸気された空気の一部が前記開口部を介して前記ビニール内装材の内部に流入し、前記吸気された空気の残りが前記第一排気口及び前記第一通気開閉装置を介して前記外装材の外側に排出され、
前記妻壁の上側に形成された第二排気口に、前記通気層を流れる空気の通気量を調整する第二通気開閉装置が取り付けられ、前記妻壁吸気口から吸気された空気が前記通気層を上昇し、前記第二通気開閉装置及び前記第二排気口から前記外装材の外側に排出される、
ことを特徴とする植物ハウス構造。
【請求項2】
前記第一通気開閉装置及び前記第二通気開閉装置は、複数の基材開口部を有する基材と、前記基材開口部の形成方向に移動可能な開閉部材と、前記開閉部材に接続され、形状記憶合金で構成されるスプリング部材と、を有し、
前記スプリング部材が、前記通気層内の温度又は前記ビニール内装材の内部の温度を感知し、収縮することで、前記基材開口部が開閉する、
ことを特徴とする請求項1に記載の植物ハウス構造。
【請求項3】
前記外装材は、アルミ箔を使用した遮熱材又はビニール製シート材で構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の植物ハウス構造。
【請求項4】
前記外装材が、ビニール製シートとアルミ箔を使用した遮熱材とを交互につなぎ合わされたシート材又はアルミ箔を使用した遮熱材が内側に取り付けられたビニール製シート材であり、
生産植物の種類に応じて、前記遮熱材の面積が異なる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の植物ハウス構造。
【請求項5】
前記外装材が、内側に遮熱材が取り付けられた薄型太陽光パネルである、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の植物ハウス構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を利用し光合成を行う一方、暑さや寒さから植物を守り、二酸化炭素を含んだ空気が年間を通して安定して、かつゼロエネルギーでハウス内に供給される事で、植物の品質や生産性が向上するだけでなく、大幅な省エネシステムが構築された植物ハウスを提供する。
【背景技術】
【0002】
ビニールハウスによる植物の生産は従来から利用されているが、気温の上昇につれて内部温度が上昇し、高温障害で萎れや枯れが発生し生産が低下している。暑さ対策や省エネを目的として、ビニールの代わりに遮熱材を使用した農業用ハウスもある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の農業用ハウスは、太陽光の入射側から、着色され、輻射熱に対して高透過率の第一樹脂層と、輻射熱に対して高反射率の第一金属箔と、第一接着層と、樹脂フィルムとが順次積層されている遮熱材で被覆されて構成されている。遮熱材は、輻射熱に対して高反射率の第一金属箔が屋外側となるように農業用ハウスに設けられ、太陽光からの輻射熱を反射し、輻射熱が農業用ハウスの内部に侵入することを効率的に阻止でき、農業用ハウスの屋内の温度が急速に上昇することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-103465号公報(日本遮熱出願)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そもそもビニールハウスは、栽培環境を外部気象条件と切り離すことが出来、風雨などの自然環境を排除し気温変動を少なくする事により、年間を通して作物を栽培できる様にしたものである。しかし、近年の気温上昇は激しく、気温が30℃を超えると高温障害を起こし、植物が萎れたり枯れたりして生産性は大幅に低下している。ビニールハウスに日除けネットを掛けて使用している所もあるが、充分な対策にはなっていない。
【0006】
特許文献1の発明のように、暑さ対策や省エネを目的に、ビニールの代わりにアルミ箔を使用した遮熱シートを使用した植物ハウスもある。ビニールの代わりに、アルミ箔を使用した遮熱シートを使用すると太陽からの輻射熱は完全に阻止してしまうので、植物は光合成が出来ない。そこで、このような植物ハウスでは太陽光の代わりにLEDを使用しているが、太陽光の様に種々の波長が使用される訳では無く、充分満足が得られている状態とは言えない。また、植物ハウス全体を遮熱シートで覆うと、太陽からの熱エネルギーは無くなるので、その分保温エネルギーの費用は増大する。
【0007】
本発明は、これらの問題を解決する為に発明され、暑さや寒さから植物を守り、新鮮な空気を安定して、かつゼロエネルギーで供給できる植物ハウス構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る植物ハウス構造は、ビニール内装材と、ビニール内装材の外側に設けられた外装材と、ビニール内装材と外装材との間に形成された通気層と、側壁を構成する外装材の下側に形成され、通気層と連通された側壁吸気口及び妻壁を構成する外装材の下側に形成され、通気層と連通された妻壁吸気口と、を有する二重構造の構造であり、ビニール内装材の頂部には空気が流出入するための開口部が形成され、外装材の頂部に形成された第一排気口の外側に、通気層を流れる空気の通気量を調整する第一通気開閉装置がカバー材で覆われた状態で取り付けられ、側壁吸気口から吸気された空気が通気層を上昇し、吸気された空気の一部が開口部を介してビニール内装材の内部に流入し、吸気された空気の残りが排気口及び第一通気開閉装置を介して外装材の外側に排出され、妻壁の上側に形成された第二排気口に、通気層を流れる空気の通気量を調整する第二通気開閉装置が取り付けられ、妻壁吸気口から吸気された空気が通気層を上昇し、第二通気開閉装置及び第二排気口から外装材の外側に排出されることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る植物ハウス構造は、第一通気開閉装置及び第二通気開閉装置は、複数の基材開口部を有する基材と、基材開口部の形成方向に移動可能な開閉部材と、開閉部材に接続され、形状記憶合金で構成されるスプリング部材と、を有し、スプリング部材が通気層内の温度又はビニール内装材の内部の温度を感知し、収縮することで、基材開口部が開閉することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る植物ハウス構造は、外装材がアルミ箔を使用した遮熱材又はビニール製シート材で構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る植物ハウス構造は、外装材がビニール製シートとアルミ箔を使用した遮熱材とを交互につなぎ合わされたシート材又はアルミ箔を使用した遮熱材が内側に取り付けられたビニール製シート材であり、生産植物の種類に応じて、遮熱材の面積が異なることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る植物ハウス構造は、外装材が内側に遮熱材が取り付けられた薄型太陽光パネルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る植物ハウス構造は、側壁吸気口から吸気された空気が通気層を上昇し、その空気の一部が開口部を介してビニール内装材の内部に流入し、残りの空気が排気口及び第一通気開閉装置を介して外装材の外側に排出される。そのため、植物の生育に必要な二酸化炭素が自動的に供給できるシステムである。したがって、昼間に植物ハウスを開閉したりする必要もなく労力が大幅に低減できる。
【0014】
本発明に係る植物ハウス構造では、アルミ箔を使用した遮熱材、空気、形状記憶合金を使用した通気開閉装置を利用したゼロエネルギーシステムである。そして、エネルギーを使用しないばかりか、人間の作業も無くした画期的な構造であり、この植物ハウス構造を構築する工法は、画期的な工法である。
【0015】
本発明に係る植物ハウス構造では、遮熱材を使用するため、輻射熱の超高速な移動速度を利用することが出来、ハウス内の室温の均一化が顕著に表れ、成育する植物の品質の安定化や生産性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る植物ハウス(通気層が壁から屋根に一体化した)の断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る植物ハウスの断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る植物ハウス構造を構成する通気開閉装置を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る植物ハウス構造を構成する通気開閉装置の開閉を説明するための図であり、(a)は閉状態を示し、(b)は開状態を示している。
図5】本発明の実施形態に係る植物ハウス構造に使用される外装材を示す図であり、(a)はビニール製シートとアルミ箔を使用した遮熱材とを交互につなぎ合わされたシート材アルミ箔を使用した遮熱材が内側に取り付けられたビニール製シート材、(b)はアルミ箔を使用した遮熱材が内側に取り付けられたビニール製シート材を示している。
図6】本発明の実施形態に係る植物ハウス構造において、ビニール製シート材の内側に遮熱材が取り付けられた外装材の屋内側に形成された通気層内の空気の移動を説明するための図である。
図7】本発明の実施形態に係る植物ハウス構造において、遮熱材の使用割合変えて構成された外装材を用いて構築された植物ハウスの斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る植物ハウス(通気層が壁から屋根に一体化した)の他の例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を実施するための最良の形態について説明する。
ビニールハウスは、屋外とハウス内とをビニールで遮断する事で、外部の気象条件の影響を少なくすることが出来、収穫時期を早めることが出来たり、或いは害虫被害を少なくできるなど種々のメリットがあり需要が増えてきた。
【0018】
近年、地球温暖化の影響を受け気温は急上昇し、夏場のビニールハウス内の温度上昇も激しく、農産物の高温被害が増加傾向にある。これに対処する為、ビニールハウスの外側に遮光ネットを掛けたりして太陽光を阻止しているが、その効果は小さく抜本的な改良にはなっていない。それは、35℃の環境に置かれた植物が仮に32℃の環境になったとしても、それほど大きな影響を受けないという事である。
【0019】
近年、ビニールハウスの素材を遮熱シートに置き換えて使用するハウスもある。ところが、アルミ箔を使用した遮熱シートを使用すると、植物の光合成を促進する最も重要な太陽光は取り入れることが出来ない。そこで、LED等の普及が増えてはいるが、植物によっては生育に十分な光が確保できないこともある。
【0020】
一方、ビニールハウス等を密封状態で使用すると、外部から充分な空気が取り入れられず、光合成に必要な二酸化炭素が不足するという問題も生じる。そこで、人為的にビニールハウスの一部を開閉して供給する事をしているが、そのメンテナンスに掛かる労力も大きい。又、生産された二酸化炭素を供給する方法もあるがコストアップになる。
【0021】
更に、植物の生産性を向上させるためには、昼夜を問わず室内環境を一定にすることが必要であり、そのためのビニールハウス内の室温コントロールも重要な問題である。最近電気料金の値上げも大きく、省エネルギー性能の高いビニールハウスが要求されている。
【0022】
本発明に係る植物ハウス構造1は、図1及び図2に示すように、ビニール内装材2と、ビニール内装材2の外側に設けられた外装材3と、ビニール内装材2と外装材3との間に形成された通気層4と、植物ハウス100の側壁5を構成する外装材3の下側に形成され、通気層4と連通された側壁吸気口5A及び植物ハウス100の妻壁6を構成する外装材3の下側に形成され、通気層4と連通された妻壁吸気口6Aと、を有する二重構造である。この植物ハウス構造1では、ビニール内装材2の頂部には空気が流出入するための開口部7が形成され、外装材3の頂部に形成された第一排気口8の外側に、通気層4を流れる空気の通気量を調整する第一通気開閉装置9がカバー材(棟カバー材)10で覆われた状態で取り付けられている。側壁吸気口5Aから吸気された空気は通気層4を上昇し、吸気された空気の一部が開口部7を介してビニール内装材2の内部に流入し、吸気された空気の残りが第一排気口8及び第一通気開閉装置9を介して外装材3の外側に排出される(図1)。また、妻壁6の上側に形成された第二排気口11に、通気層4を流れる空気の通気量を調整する第二通気開閉装置12が取り付けられ、妻壁吸気口6Aから吸気された空気が通気層4を上昇し、第二通気開閉装置12及び第二排気口11から外装材3の外側に排出される。なお、図2は、図7の概略断面図を示している。
【0023】
本発明に係る植物ハウス構造1は、山形や屋根型等のビニールハウス(ビニール内装材)2の外側に、概ね100mm位の空間を空けて、同形状のビニール製の外装材(ビニール外装材)3を設けた二重構造のビニールハウスに構築される。この空間は、大気を取り込み植物の生産に適した室内の温度調整をするだけでなく、光合成に必要な二酸化炭素を運ぶ通気層4として重要な役割を持っている。ビニール内装材2の頂部には、通気層4から運ばれた新鮮な空気を取り込み、逆にビニールハウス内の不要な空気を排出する概ね300mm位の開口部7が設けられ、ビニール外装材3の頂部には余分な空気を排出する概ね200mm位の第一排気口8が形成されている。ビニール外装材3の頂部の第一排気口8よりも屋外側の片側或いは両側には、植物ハウス100内から排気される空気の排気量を決定する第一通気開閉装置9が設置されている。第一通気開閉装置9の上部には、風雨対策や密封対策でカバー材10が設けられている。
【0024】
本発明に係る植物ハウス構造1の構築は、二重構造のビニールハウスで有れば種類の形状のハウスにも対応可能であるが、種類によりビニール外装材3に形成する側壁吸気口5A及び第一排気口8の位置や開口面積を変更する。例えば、通気層4が地面付近から屋根頂部迄一体になっている山形ハウス等の場合は、側壁吸気口5Aは地面付近のビニール外装材3で、第一排気口8は棟部となる。又屋根部に通気層4を有する屋根型ハウス等の場合は、通気層4の下端付近に吸気口16を設け、第一排気口8は棟部に形成する。一方、通気層4を妻壁6等の垂直部に設けられた場合、妻壁吸気口6Aは地面付近のビニール外装材3に形成し、排気口もビニール外装材3の軒部付近に形成する。
【0025】
二重構造のビニールハウス(植物ハウス)100にとって重要なことは、ビニール製の外装材3とビニール内装材2との間に形成される通気層4である。
【0026】
第一は、植物ハウス100内の温度の調整層の役割を果たす。夏場や高温時は、屋外から室内側に熱は移動する。一方、冬や低温時は室内側から屋外に向かって移動する。即ち、通気層4には年間をとして屋外側又は屋内側の何れかの方向から熱が供給されるので、通気層4内の空気はこの熱を吸収し、更に狭い通気層4はドラフト効果も相まって常時上昇傾向にある。この通気層4の空気の流れを調整するのが第一通気開閉装置9である。この第一通気開閉装置9は、ビニール外装材3の頂部に設置した場合は植物ハウス100内の温度を感知し、植物ハウス100内の空気の排出量を調整する事により、植物ハウス100の内部全体の温度をコントロールする役割を担う。
【0027】
一方、妻壁6等の垂直部に使用する場合は、第二通気開閉装置12が通気層4内の温度を感知し開閉し、壁面を通して植物ハウス100内に出入りする熱をコントロールする。第一通気開閉装置9及び第二通気開閉装置12は、形状記憶合金のスプリング24が各部の温度を感知し、温度が18℃になると全閉、28℃で全開になる様に設計されている。従って、夏場や高温時は通気が行われる事により屋外からの熱を排出し、室内を涼しい環境にする事が出来る。一方、冬や低温時は、通気は止まり空気断熱層になり、室内を保温する事が出来る。即ち、通気層4は、排熱層でもあり空気断熱層でもある。
【0028】
第二は、二酸化炭素の安定供給層である。
壁面からハウス頂部に向けて一体化された通気層4や屋根に設けられた通気層4の場合、屋根吸気口17から取り入れられた空気は植物ハウス100の頂部に向かって流れるが、ここで重要な働きをする。新鮮な空気は、この通気層4を上昇して棟部の開口部(吸排気口)7より室内に供給されるが、同時に光合成に必要な二酸化炭素も安定供給する。二酸化炭素は、空気の1.5倍の重量があり重い為、通気層4内の室内側部分であるビニール内装材2に沿って上昇する。ビニール内装材2の頂部には開口部7が形成されており、二酸化炭素を多く含む空気は、この開口部7から植物ハウス100内に落下し、植物ハウス100の底部に滞留する。当然、植物ハウス100内の二酸化炭素の少ない空気は軽量になるので上昇し、ビニール外装材3の頂部に設置された第一通気開閉装置9を介して屋外に排出される。即ち、通気層4は、植物ハウス100に対し二酸化炭素を供給する安定供給層でもある。
【0029】
本発明に係る植物ハウス構造1で使用する第一通気開閉装置9及び第二通気開閉装置12は、図3に示すように、複数の開口部(基材開口部)21を有する第一スライド板(基材)22と、第一スライド板22の開口部21の形成方向に移動可能な第二スライド板(開閉部材)23と、第二スライド板23に接続され、形状記憶合金で構成されるスプリング24と、を有し、スプリング24が通気層4内の温度又はビニール内装材2の内部の温度を感知し、伸縮することで開口部21が開閉する。
【0030】
第一通気開閉装置9は、概ね高さ60mm、幅1mの大きさで、同形状の開口部21を有する2枚の第一スライド板22と第二スライド板23を重ね、Ni-Ti系の素材で作られた形状記憶合金製のスプリング24の伸縮することにより開閉するものである。この第一通気開閉装置9の本体は、アルミ合金を使用している。開口部21は、外気温が18℃で全閉、28℃で全開となるように構成されている。具体的には、図4(a)に示すように、所定の温度になるとスプリング24が伸び、左右方向Xの右方に第二スライド板23が移動し、開口部21は第二スライド板23によって閉じられ、閉状態となる。一方、図4(b)に示すように、所定の温度まで温まるとスプリング24が縮むため、左右方向Xの左方に第二スライド板23が移動し、開口部21が開き、開状態となる。この性質を利用し、開口部21を開閉し、通気層4内の空気の出入りが調整され、結果として、通気層4内を流れる空気量が調整される。
なお、本実施形態の第二通気開閉装置12の基本構成は、第一通気開閉装置9と同様であり、サイズなどは設ける位置や目的によって、適宜決定する。
【0031】
第一通気開閉装置9及び第二通気開閉装置12は、植物ハウス100内の室温の変化に追随して24時間、365日稼働するので過酷な働きをする。この耐久性を確認する為、人口促進繰返動作耐久試験で1万回の作動を行っている。仮に、1日1往復するとすれば、概ね27年分の作動の試験になる。更に、18℃以下の寒冷時は作動しないため、30年以上の耐久性があると考えられる。
【0032】
本発明に係る植物ハウス構造1は、外装材3がアルミ箔を使用した遮熱材15又はビニール製シート材で構成することもできる。
【0033】
また、本発明に係る植物ハウス構造1は、図5に示すように、ビニール製シート3Aとアルミ箔を使用した遮熱材15とを交互につなぎ合わされた外装材(シート材)3(図5(a))又はビニール製シート3Aの内側にアルミ箔を使用した遮熱材15が取り付けられた外装材3(図5(b))で構成することができ、生産植物の種類に応じて、遮熱材15の面積が異なる。
【0034】
昨今の気温の上昇は激しく、太陽光を透過するビニールハウスの二重構造だけでは室温を低下させることは、厳しい状況になりつつある。又、この太陽からの輻射熱を阻止するためにアルミ箔を使用した遮熱材が有効であることは知られている。
【0035】
そこで、ビニール内装材2の外側に施工されるビニール外装材3の一部に、アルミ箔を使用した遮熱材15を使用する事により、室内の温度を安定化させる。アルミ箔を使用した遮熱材15は、夏は屋外から室内に照射する輻射熱を阻止し室温を低下させ、冬は逆に室内からの屋外に向かう輻射熱を阻止し室内を保温する性能を有している。
【0036】
しかしながら、遮熱材15でビニールハウスの全面を覆ってしまうと、光合成に必要な太陽光を得る事が出来なくなる。そこで、ビニール外装材3の一部にアルミ箔を使用した遮熱材15を使用する事で、効率良く植物の生産が出来るようになる。この場合、図6(a)及び(b)に示すように、アルミ箔を使用した遮熱材15の放射側である室内側に通気層4が形成されるため、夏場、遮熱材15の低放射性能がそのまま利用することが出来、植物ハウス100内の温度を大幅に低下させる事が可能である。例えば、反射率88%の遮熱材15を使用すると、室内側に放射される輻射熱の量は僅か12%となり、その効果が大きい事が解る。
【0037】
一方、冬場は室内から屋外に向かう輻射熱を88%反射し、植物ハウス100内に戻すため、この場合も植物ハウス100内の温度の低下を防止する。本発明に係る植物ハウス構造1では、光合成が目的であるから、全面に遮熱材15を使用している訳ではないが、その使い方が非常に重要である。例えば、図7に示すように、光合成に必要な太陽光が差し込む面(北面を除く)は1m置きに、ビニール製の外装材3と遮熱材15の断続使用とし、太陽光が差し込む時間と日陰になる時間を明確に分ける。これにより、植物は日蔭や日向の環境を交互に受ける事が出来、萎れたり枯れたりする事も無くなる。一方、植物ハウス100の北面は光合成には関係しない事、又冬場の寒さ対策として全面が遮熱材15で覆われている事が好ましい。
【0038】
アルミ箔を使用した遮熱材15は高価なため、ビニール製シート3Aの内側に遮熱材15を部分的に取り付けて使用することもできる。即ち、ビニール製シート3Aと遮熱材15が組み合わさった外装材3となる。そのため、屋外からの飛散物による破損やヒョウ害から遮熱材15を守る事が出来、長期的にみると大きなメリットになる。この場合も、前者同様成育する植物の種類に応じて、遮熱材15の使用割合変え、太陽光を取り入れる面積を勘案すれば良い。
【0039】
本発明に係る植物ハウス構造1において、アルミ箔を使用した遮熱材15には、アルミホイル純度99.5%、反射率88%以上のものを使用する。又、植物ハウス100は屋外に設置されるため、表面がピカピカの遮熱材15を使用すると太陽光が周囲に反射し、人間の目を傷めるだけでなく、緊急災害時の救助ヘリ等に障害を与える可能性がある。そこで、屋外側に面するアルミホイルの表面に乱反射素材を施工した遮熱材15としている。
【0040】
本発明に係る植物ハウス構造1は、内側に遮熱材15が取り付けられた薄型太陽光パネル(図示しない)を外装材3として使用することもできる。この遮熱材15が取り付けられた薄型太陽光パネルで構成される外装材3は、植物ハウス100の一部に使用し、残りは、例えば、ビニール製の外装材3を使用する。
【0041】
植物ハウス(ビニールハウス)100内の温度の安定化は、前述の通り遮熱材15を使用した吸排気システムが基本であるが、万一温度の安定化が図れない場合の冷暖房装置の稼働や室内の照明装置、各種生産設備の稼働等のための電源が必要となる。この電源のエネルギーを確保する為に、太陽光パネル(図示しない)を使用する。
【0042】
本発明に係る植物ハウス100では、全体を曲げる事の出来る薄型の太陽光パネルの室内側に遮熱材15を取付けて使用し、外装材3の代替とする。遮熱材15の低放射性能はそのまま利用出来るだけでなく、太陽光パネルの日蔭効果も助長し、より効率的に植物を成育するための植物ハウス100にする事が可能である。更に、太陽光パネルは剛性が有るので、鉄フレームで構築される植物ハウス100にとっては、全体の強度向上にも大きく貢献できる。
【0043】
本発明を詳しく説明する。
植物ハウス100内で植物を成育するためには、植物ハウス100内を適正な温度に維持すること、二酸化炭素を含んだ空気、水、そして栄養素等が必要である。本発明に係る植物ハウス構造1は、植物ハウス100内を適正な温度を維持し、二酸化炭素を含んだ空気を、エネルギーを使わずに供給するものである。最大の問題は、熱量の多い太陽光を植物ハウス100内に取り込み光合成を行う一方、植物の萎れや枯れが無いような室内の温度管理、この相反する二つの要件を自然的に同時に行う事にある。
【0044】
植物ハウス構造1について、全体の構造を含めて順次説明する。
本発明に係る植物ハウス構造1は、山形や屋根型等のビニールハウスであるビニール内装材2の外側に、概ね100mm位の空間を開けて同形状のビニール外装材3を設けた二重構造のハウスである。ビニール内装材2とビニール外装材3との間の空間は、通気層4となっていて、高温時は排熱の働きをする一方、低温時は空気断熱層になり保温性を高める働きがある。又、通気層4を介して、屋外の新鮮な空気を植物ハウス100内に取り込むため、光合成に必要な二酸化炭素の供給通路でもある。ビニール内装材2の頂部には、通気層4から運ばれた新鮮な空気を植物ハウス100内に取り込み、逆に植物ハウス100内の不要な空気を排出する開口部(吸排気口)7が形成されている。この開口部7は、概ね300mmである。又、その上側に設けられるビニール外装材3の頂部には、余分な空気を排出する第一排気口8が設けられている。この第一排気口8は、概ね200mmである。
【0045】
本発明の植物ハウス構造1は、二重構造のビニールハウスで有れば種々の形状のハウスにも構築可能であるが、種類によりビニール外装材3に形成する吸気口及び排気口の位置や開口面積を変更する。例えば、通気層4が地面付近から屋根頂部迄一体になっている山形ハウス等の場合は、側壁吸気口5Aは地面付近のビニール外装材3で、第一排気口8は棟部の排気口になる。この場合、側壁吸気口5Aから取り入れられた空気は通気層4を上昇し、取り入れられた空気の一部はビニール内装材2の開口部(吸排気口)7から植物ハウス100内に流入し、取り入れられた空気の残りはビニール外装材3の第一排気口8を介して、第一通気開閉装置9より屋外に排出される。
【0046】
一方、妻壁6の垂直部に形成された通気層4の場合は、吸気口6Aは地面付近のビニール外装材3で、第二排気口11もビニール外装材3の軒部付近となる。この場合は、植物ハウス100内の温度調整が目的で、吸気口6Aから取り入れられた空気は通気層4を上昇し、第二通気開閉装置12、ビニール外装材3の第二排気口11から屋外に排出される。
【0047】
形状記憶合金を使用した第一通気開閉装置9及び第二通気開閉装置12は、外装材の棟天端に設置されハウスの大きさにより1から2列使用されていて、植物ハウス100内の温度を感知して、開閉するものである。本発明で使用する第一通気開閉装置9及び第二通気開閉装置12は、気温18℃で全閉、気温28℃で開閉する。気温が高い昼間、第一通気開閉装置9及び第二通気開閉装置12は開状態で通気層4内の空気は植物ハウス100内から屋外に排出される。一方、夜に向かって室温が低下すると徐々に閉状態になり、18℃で全閉となり通気は停止する。
【0048】
朝の太陽光は植物ハウス100に対して真横から照射されるので、短時間で植物ハウス100内の温度は上昇し、再び通気が始まる。壁と屋根の通気層4が分離されている植物ハウス100の場合、壁面の空気層は室内の温度の安定化が目的であり、屋根面の空気胴は前述の壁屋根一体型の通気層4の役割と同じである。壁面は、ビニール外装材3の地面付近に妻壁吸気口6Aが形成され、軒部に第二排気口11が設けられ、その第二排気口11の上部に形状記憶合金使用の第二通気開閉装置12が設置され、更にその上部軒部のビニール外装材3に排気口が形成されている。妻壁吸気口6Aから取り入れられた空気は、壁を上昇し、第二通気開閉装置12、更に第二排気口11を介して屋外に排出される。第二通気開閉装置12は、通気層4内の温度を感知して作動し、18℃以下では通気は完全に止まり保温状態となり、通気層4は空気断熱層となり室内を保温する。
【0049】
通気層4を形成することには、二つの目的がある。
第一は、二酸化炭素の安定供給である。夏場や高温時は屋外側から、冬場や寒冷時は室内側からと常時加熱された状態に有り空気は浮力を得て上昇する構造になっている。壁から屋根への一体型の通気層4の場合、図8に示すように、ビニール外装材3の地面付近に空気を取り入れる吸気口5Aが設けられ、この吸気口5Aから二酸化炭素を多く含んだ新鮮な空気が通気層4を上昇し、棟部の第一排気口8を通過し、形状記憶合金使用の第一通気開閉装置9から屋外に排出される。この時、通気層4内のビニール外装材3に近い部分では浮力により軽量な空気が、ビニール内装材2側は二酸化炭素を含んだ重い空気が同時に上昇してくる。そして、ビニール内装材2の頂部の開口部(吸排気口)7に到達すると、二酸化炭素を含んだ重い空気は室内に流入し、ハウス内の底部に滞留する。そうすると、植物ハウス100内の軽量な空気は植物ハウス100内から押し出される様に棟部の開口部7から排出される。
【0050】
一方、通気層4内の軽量な空気はビニール外装材3の第一排気口8から形状記憶合金使用の第一通気開閉装置9を介して屋外に排出させる。この様にして植物ハウス100の室内は、常時充分な二酸化炭素が供給される。通気層4を形成することにより、二酸化炭素を多く含む新鮮な空気を常時安定的にゼロエネルギーで供給するシステムが構築される。
【0051】
第二は、植物ハウス100の室内の温度の安定化である。夏場や高温時は、熱は屋外から植物ハウス100の内部に向かって熱移動する。その時、屋外からの輻射熱は透過するものもあるが、一部はビニール外装材3やビニール内装材2に吸収される。この吸収された熱は、通気層4内の空気に伝達され対流熱の形態で屋外に排出される。冬場や低温時、植物ハウス100内の熱は屋外に向かうが、通気層4内の温度が18℃になると第一通気開閉装置9及び第二通気開閉装置12に使用している形状記憶合金の温度検知器が反応して通気は停止され、今度は空気断熱層となる。この様に、昼間気温が高ければ、通気層4内の通気量が増し室内に侵入する熱を阻止、夜に向かって気温が低下すれば今度は空気断熱層に早変わりし室内を保温する。この働きを24時間365日継続するので、植物ハウス100内の環境を非常に安定させる事が出来る。
【0052】
植物ハウス(ビニールハウス)100の二重構造だけでは室内に侵入する熱量が多すぎる場合、外装材の一部にアルミ箔を使用した遮熱材15を使用する。植物の光合成に必要な太陽光は、その植物の必要量に応じた量を取り入れる事が出来、それ以外はアルミ箔を使用した遮熱材15によって阻止、植物ハウス100内への過剰な熱の進入を防ぐことも可能である。外装材3に遮熱材15を使用する場合、ビニール製シート3Aと遮熱材15を交互に使用する事により、熱の進入の強弱が出来る。例えば、ビニールハウス透過した地面の温度が35℃とすると、遮熱材15を使用した部分は25℃位になり植物の受ける熱の差は非常に大きい。植物の萎れや枯れは、地面からの水の吸収と葉などからの放出のバランスが崩れる事が大きな原因で有り、確実に温度を低下させる所謂休息を与える事でこれらの問題を解決できる。しかも、同じ植物ハウス100内では室温は同じであるから、この温度差は輻射熱の影響で遮熱材15無くしてこの様な結果を生み出す事は出来ない。植物によって光合成に必要な日射量が有り、例えば日射量が4から5時間必要な植物なら、ビニール外装材3の概ね半分に遮熱材15を用いれば良い。一方、遮熱材15を使用する事により、冬場の保温性能の向上による省エネも可能である。
【0053】
更なるメリットは、遮熱材15が輻射熱を効率よく反射させる事により、毎秒30万キロと超高速で移動する輻射熱は室温の均一性を向上させ、結果的に品質の安定化、更には植物ハウス100内での植物の生産性の向上にも繋がる。
【0054】
植物ハウス100を長期間使用する場合は、飛散物やヒョウ害などの問題も考えなければならない。この様な場合は、外装材3全体を価格の安いビニールハウス材で覆い、遮熱材15はその室内側に必要なだけ取り付ける二重外装シート構造として使用すれば良い。この様に、本発明の植物ハウス構造1を構築した植物ハウス100では、太陽光を利用した光合成と室内環境改善を同時にでき、さらにゼロエネルギーで実施できる画期的なもので、地球温暖化による温度上昇に確実に対応できる。
【0055】
別途、植物ハウス100内で使用する各種設備の動力、照明器具、補助用冷暖房機器等の電力確保のために、曲げられる薄型の太陽光パネルの室内側に遮熱材15を施工した素材を、外装材3の代替として使用する事も可能である。遮熱材15の低放射性能はそのまま利用できるだけでなく、太陽光パネルの日蔭効果も助長し室内環境の向上に繋がる。この様に、生産設備の殆どに電力が不要となり、更なる地球温暖化対策に貢献できる植物ハウス100である。
【0056】
以上の様に、太陽光を利用した光合成栽培は、太陽光という最も大きな熱を室内に取り込む一方、植物ハウス100内の環境を向上させるという相反する問題を解決しなければならない。このポイントは、以下の通りである。
【0057】
第一:太陽光を利用した光合成
(1)太陽光を取り込む:ビニールハウス使用
(2)二酸化炭素を自然的に供給する:二重構造の通気層
第二:枯れや萎れ防止
(1)断続的な日射利用:遮熱材の利用
第三:室内の温度環境の安定化
(1)全日射量の調整:遮熱の利用
(2)室温の安定化:通気開閉装置(形状記憶合金)
第四:生産性の向上
(1)室内温度の均一化:遮熱材(超高速移動の輻射熱利用の環境)
【0058】
これらの結果から、理想的な植物ハウスは以下の様な形態である事が望ましい。
(1)全体を二重構造とし通気層を設け、通気開閉装置を利用し24時間、セロエネルギーで室温コントロールする。
(2)直射日光が取り入れられない北面等は遮熱材を全面施工し、夏場は屋外からの伝導熱を阻止し涼しい環境を、冬場は室内からの輻射熱の阻止し保温性を高める。
(3)直射日光が取り入れ面は、ビニールと遮熱材を交互に施工し、植物に休息を与える環境を作り、萎れ彼の防止をする。
(4)直射日光が取り入れ面の遮熱施工部には、遮熱施工した太陽光パネル利用、使用電力確保とハウス躯体の強度を高める。
【0059】
[試験1]
15mmの角材で製作した外寸法が縦9cm、横15cm、高20cmの箱を3個作製し、2つの箱は全面ビニールハウスで囲ったA箱、残りの1つは前面及び側面の3面をビニールで囲ったB箱である。これら箱を使用し、第一試験体は前面にB箱を、その後ろ側にA箱を密着させた。第二試験体は、全面密封のA箱のみである。この二つの試験体を1Kwの遠赤外線ヒーターの前に設置するが、両者共床から5cmの位置で、前面はヒーターから同じ位置とした。第二試験体は、通常のビニールハウスを想定しているが、第一試験体は上下が開放な箱がヒーター側、その後ろに密封の箱としたもので、通常のビニール箱の外側に9cmの通気層をもった二重構造のハウスを想定したものである。更に、両者の試験体の中央にサーモレコーダーを設置、この状態でヒーターの温度を徐々に上昇させた。
【0060】
結果1を表1及び表2に示す。
【0061】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0062】
【表2】
【0063】
[考察1]
通常のビニールハウスを想定した第二試験体の温度が、一般的なビニールハウスで栽培する植物の生育範囲と考え、最終温度を概ね30℃とした。今回の試験で、第二試験体が30,1℃の時、通気層を持った第一試験体は25.6℃で4.5℃の差があった。即ち、9cmの空気層を持たせるだけでも4.5℃の気温が下がる事が解る。
【0064】
[試験2]
15mmの角材で製作した外寸法が縦9cm、横15cm、高20cmの箱を3個作製、2つの箱は全面ビニールハウスで囲ったA箱、残りの1個は前面及び側面の3面をビニールで囲ったB箱である。この箱を使い、第一試験体は前面にB箱を、その後ろ側にA箱を密着させた。第二試験体は、全面密封のA箱のみである。この二つの試験体を1Kwの遠赤外線ヒーターの前に設置するが、両者共床から5cmの位置で、前面はヒーターから同じ位置とした。第二試験体は、通常のビニールハウスを想定しているが、第一試験体は上下が開放な箱がヒーター側、その後ろに密封の箱としたもので、通常のビニール箱の外側に9cmの通気層をもった二重構造のハウスを想定したものである。今回は更に、第一試験体前面の半分に遮熱材THB-SOW2施工し、輻射熱照射量の50%減らした時の箱内部の温度変化を調査する。両者の試験体の中央にサーモレコーダーを設置、この状態でヒーターの温度を徐々に上昇させた。
【0065】
結果2を表3及び表4に示す。
【0066】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0067】
【表4】
【0068】
[考察2]
(1)第二試験体が29,9℃の時、第一試験体は22.2℃でその差は7.7℃であった。
(2)ビニールハウス表面の遮熱施工量で、ハウス内の温度調整出来る事が解る。
【0069】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 植物ハウス構造
2 ビニール内装材
3 外装材(ビニール外装材)
3A ビニール製シート
4 通気層
5 側壁
5A 側壁吸気口(吸気口)
6 妻壁
6A 妻壁吸気口(吸気口)
7 開口部(吸排気口)
8 第一排気口(排気口)
9 第一通気開閉装置
10 カバー材(棟カバー材)
11 第二排気口(排気口)
12 第二通気開閉装置
15 遮熱材
16 吸気口
17 屋根吸気口
21 開口部(基材開口部)
22 第一スライド板(基材)
23 第二スライド板(開閉部材)
24 スプリング
100 植物ハウス
A1 低温の空気
A2 高温の空気
X 左右方向
【要約】
【課題】暑さや寒さから植物を守り、新鮮な空気を安定して、ゼロエネルギーで供給できる植物ハウス構造を提供する。
【解決手段】植物ハウス構造1は、ビニール内装材2と、外装材3と、これらの間に形成された通気層4と、外装材3に形成された側壁吸気口5A及び妻壁吸気口6Aとを有し、ビニール内装材2の頂部には吸排気口7が形成され、外装材3の頂部に形成された第一排気口8の外側に通気層4の通気量を調整する第一通気開閉装置9が取り付けられ、側壁吸気口5Aから吸気された空気が通気層4を上昇し、吸気された空気の一部が吸排気口7を介してビニール内装材2に流入し、吸気された空気の残りが第一通気開閉装置9を介して外装材3から排出され、妻壁6の上側に形成された第二排気口には第二通気開閉装置12が取り付けられ、妻壁吸気口6Aからの空気が通気層4を上昇し、第二通気開閉装置12から外装材3の外側に排出される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8