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  • 特許-フィルムヒータ 図1A
  • 特許-フィルムヒータ 図1B
  • 特許-フィルムヒータ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】フィルムヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20250317BHJP
【FI】
H05B3/20 312
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024559016
(86)(22)【出願日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2024027042
【審査請求日】2024-10-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595042623
【氏名又は名称】タチバナテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 敏雪
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 正博
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-173585(JP,A)
【文献】特開昭62-126579(JP,A)
【文献】特開2000-146207(JP,A)
【文献】特開平08-273809(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107660006(CN,A)
【文献】特開平11-016669(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092459(WO,A1)
【文献】特開2022-042677(JP,A)
【文献】実開昭63-052292(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/20-3/38
H05B 3/84-3/86
F24D 13/00-15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱絶縁性フィルムと、
前記耐熱絶縁性フィルムの上に設けられ、電圧が印加されることでヒータパターンとして機能する金属箔であって、前記ヒータパターンは金属箔部分が空き部分よりも広い金属箔と、
前記金属箔の上に設けられた黒色フィルムと
を備え、
前記黒色フィルムは、シート状の当該黒色フィルムの形状によって設けられた複数の内部に空気が存在する凸部と、前記凸部以外の平坦部と、前記凸部の各々に少なくとも1つ設けられた孔とを有し、前記平坦部において前記金属箔が設けられた部材に接触しており、前記凸部において前記金属箔が設けられた部材から離れており、前記凸部は、前記金属箔が設けられた部材と前記凸部の頂部との間の断熱機能を発揮するとともに、当該凸部の内部の空気と外気とが前記孔を介して流通することで当該凸部内の温度を下げる機能を発揮するように構成されている、
赤外線放射型のフィルムヒータ。
【請求項2】
前記黒色フィルムは、カーボンブラックを含有することで黒色化されている、請求項1に記載のフィルムヒータ。
【請求項3】
前記黒色フィルムは、前記凸部と前記凸部との間の前記平坦部に指先が面状の広さをもって触れないような形状を有する、請求項1に記載のフィルムヒータ。
【請求項4】
前記凸部の各々の面方向の大きさは、2mm以上8mm以下であり、前記凸部の配置の密度は、20mm四方に1個以上である、請求項1に記載のフィルムヒータ。
【請求項5】
前記凸部の高さは、1mm以上5mm以下である、請求項1に記載のフィルムヒータ。
【請求項6】
前記凸部に設けられた前記孔の大きさは、1μm以上150μm以下である、請求項1に記載のフィルムヒータ。
【請求項7】
前記耐熱絶縁性フィルム及び前記金属箔によって形成された金属箔ヒータの上かつ前記黒色フィルムの下に設けられた耐熱性かつ絶縁性を有する樹脂層をさらに備える、請求項1に記載のフィルムヒータ。
【請求項8】
前記金属箔ヒータと前記黒色フィルムとは、前記樹脂層を形成する耐熱性の接着剤によって接着されている、請求項7に記載のフィルムヒータ。
【請求項9】
前記金属箔は、電圧が印加されたときに所定の発熱が得られる電気抵抗値を有するように除去する加工によって形成された形状を有する、請求項1に記載のフィルムヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線放射型のフィルムヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば寒冷地用の電気自動車の暖房として、間接加熱型の足元用ヒータ等が使われることがある。このようなヒータには、構造的に丈夫であって軽量で熱容量が小さいフィルムヒータが使われることがある。フィルムヒータの一例は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
さらに、速暖性能がよりよい赤外線放射膜を有するフィルムヒータが知られている。このような赤外線放射型フィルムヒータ50の断面構造の一例を図2に示す。この赤外線放射型フィルムヒータ50は、例えば次のように製造される。すなわち、この赤外線放射型フィルムヒータ50には、ポリイミド樹脂51がラミネートされた銅箔52が格子状のパターンにエッチング処理された、いわゆるフレキシブル・プリント基板が用いられる。このフレキシブル・プリント基板の上の銅箔52以外の領域に、ポリイミド接着剤54が選択的に塗布され、乾燥処理が行われる。それらの上に、カーボンナノチューブ等を含む赤外線放射塗料が塗布され、乾燥処理が行われることで、黒色膜55が形成される。さらにその上に接着層付のポリイミドカバーフィルム59が配置される。これらが段階的な加熱と加圧によって熱融着され、赤外線放射型フィルムヒータ50が形成される。
【0004】
この赤外線放射型フィルムヒータ50では、格子状のエッチングによってある程度高電気抵抗にされた銅箔52とカーボンナノチューブを含む黒色膜55とが、電気的に並列に接続されている。黒色膜55は平面方向の熱伝導率が非常に高い。その結果、黒色膜55の面内抵抗値の不均一さは格子状の銅箔52によって緩和されるとともに、ヒータ面内の温度の分布は均一化される。
【0005】
このような赤外線放射型フィルムヒータ50は優れた性能を有している。しかしながら、この赤外線放射型フィルムヒータ50は、速暖性を確保するために135℃程度で使用したいところ、ヒータに直接触れてしまった場合に火傷等が生じないように、単体では100℃~105℃程度でしか使用できず、速暖性を十分に発揮できないことがある。また、黒色膜55に含まれるカーボンナノチューブや、ポリイミドカバーフィルム59に用いられるラミネート用ポリイミド塗料等の材料は高価である。また、この赤外線放射型フィルムヒータ50は、互いに膨張係数が異なる4~5層の積層構造を有する。このため、その製造の加圧熱融着工程において、ゆっくり段階的に昇温及び降温を行っても、この赤外線放射型フィルムヒータ50は湾曲しやすく、また、各層間に気泡が生じやすい。また、製造工程に要する時間が長くて生産効率が低く、赤外線放射型フィルムヒータ50は高価格になりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開2004-14178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、簡単な構造を有して安価でありながら、湾曲等せずに良好な仕上り形状を有し、高い速暖性能を発揮する、優れた赤外線放射型のフィルムヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、フィルムヒータは、耐熱絶縁性フィルムと、前記耐熱絶縁性フィルムの上に設けられた金属箔と、前記金属箔の上に設けられた黒色フィルムとを備え、前記黒色フィルムは、断熱機能を発揮するように構成された凸部と、前記凸部の各々に少なくとも1つ設けられた孔とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた赤外線放射型のフィルムヒータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、一実施形態に係るフィルムヒータの構成例の概略を示す模式的な平面図であり、ヒータパターンが形成されている面を示す図である。
図1B図1Bは、一実施形態に係るフィルムヒータの構成例の概略を示す模式的な断面図であり、図1Aに示すIB-IB線に沿った部分断面の概略を模式的に示す図である。
図2図2は、従来技術に係る赤外線放射型フィルムヒータの断面構造の一例の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、赤外線放射型のフィルムヒータに関する。このフィルムヒータは、様々な用途に用いられ得る。このフィルムヒータは、例えば電気自動車の足元ヒータとして用いられ得る。
【0012】
図1Aは、本実施形態に係るフィルムヒータ10の構成例の概略を示す模式的な平面図であり、ヒータパターンが形成されている面を示す図である。図1Bは、本実施形態に係るフィルムヒータ10の構成例の概略を示す模式的な断面図であり、図1Aに示すIB-IB線に沿った部分断面の概略を模式的に示す図である。
【0013】
フィルムヒータ10は、耐熱絶縁性フィルム1と、耐熱絶縁性フィルム1の上に設けられた金属箔2とを有する。金属箔2は、ヒータパターンを有している。フィルムヒータ10が常用100℃を超えるEVの足元ヒータとして用いられるとき、耐熱絶縁性フィルム1は、例えば、ポリイミド(PI)樹脂を用いて形成されている。金属箔2は、例えば、ステンレス鋼(SUS)を用いて形成されている。耐熱絶縁性フィルム1には、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等が用いられてもよい。金属箔2には、銅、ニクロム等が用いられてもよい。これらの材料は、例えばヒータの動作温度帯に応じて選択され得る。例えば、耐熱絶縁性フィルム1の厚さは25μm程度であり、金属箔2の厚さは30μm程度である。
【0014】
耐熱絶縁性フィルム1及び金属箔2は、安定性と経済性とに優れている電子回路配線用のいわゆるフレキシブル・プリント基板と同様に作製され得る。すなわち、例えば厚さ30μmのSUSの薄膜に、例えばPI樹脂を25μmの厚さでラミネートさせて耐熱絶縁性フィルム1が形成される。その後、SUSの薄膜が所定の抵抗値や温度分布になるように、SUSの薄膜の一部が除去される加工が施されることで金属箔2が形成される。SUSの薄膜の一部が除去される加工として、例えばエッチング加工が行われ得る。
【0015】
なお、金属箔2の厚さは、求められる電気抵抗値と形状等により決められる。面内の温度分布を均一にするため、金属箔2のパターン部は、極力空き部分が少なくなるように形成されることが好ましい。金属箔2のパターン部の両端部には、金属箔2に電圧を印加するために電源に接続される接続部2aが設けられている。
【0016】
耐熱絶縁性フィルム1として難接着性のPETフィルム、PENフィルム等が用いられるとき、耐熱絶縁性フィルム1及び金属箔2は、例えば次のように作製されてもよい。すなわち、金属箔2の表面が熱融着性樹脂でラミネート処理される。また、PETフィルム、PENフィルム等の耐熱絶縁性フィルム1の表面がコロナ放電処理により活性化される。耐熱絶縁性フィルム1と金属箔2のラミネート処理面とが熱融着される。
【0017】
耐熱絶縁性フィルム1の厚さが不足して機械的強度が弱い場合等には、例えば、上述のPI樹脂のラミネート層に、さらに物性が異なるPIフィルムが熱融着されてもよい。
【0018】
本実施形態では、SUS箔にPI樹脂がラミネートされることで形成された、PI樹脂の耐熱絶縁性フィルム1とSUS箔の金属箔2とを有するいわゆるSUSエッチングヒータが用いられ得る。このような耐熱絶縁性フィルム1及び金属箔2を含む構造体を、ここでは、金属箔ヒータ3と称することにする。
【0019】
また、本実施形態では、図1Aに示すように、耐熱絶縁性フィルム1上のヒータパターンを形成する金属箔2の外周部には、静電容量型のタッチセンサの電極を構成するタッチセンサ電極8が設けられている。タッチセンサ電極8は、例えば金属箔2と同じSUS箔で形成されている。タッチセンサ電極8は、金属箔2を略一周するように、直線状のパターンを有している。金属箔2のヒータパターンとタッチセンサ電極8とは、同じ金属箔から同時に形成され得る。
【0020】
図1Bに示すように、金属箔ヒータ3の上には樹脂層4が設けられている。樹脂層4には、接着剤が用いられ得る。この接着剤は、加熱・冷却のサイクルに対して膨張・収縮が大きい熱可塑性の接着剤よりも、薄くても接着力があり熱収縮性がある熱硬化型の接着剤が好ましい。樹脂層4に用いられる接着剤は、汎用の熱硬化型接着剤のうち、耐熱性が高いエポキシ系の接着剤が好ましい。エポキシ系の接着剤は、ポリイミド系の接着剤よりも安価である。また、エポキシ系の接着剤は、硬化条件が簡素であり、製造に掛かる時間も比較的短い。
【0021】
金属箔ヒータ3の表面に設けられた樹脂層4の厚さは、例えば、厚さ10μm~30μm程度である。金属箔2が外部から遮断されるように、また、金属箔2の絶縁性が確保されるように、樹脂層4の厚さは、例えば、15μm程度であることが好ましい。
【0022】
図1Bに示すように、樹脂層4の上には黒色フィルム5が配置され接着されている。黒色フィルム5は、赤外線放射機能を発揮する黒色化されたフィルムである。黒色フィルム5は、樹脂の基材にカーボンが添加されたもので形成されている。黒色フィルム5には、例えば、耐熱性に優れたPI樹脂が用いられ得る。黒色フィルム5には、比較的安価なPET樹脂、PEN樹脂等が用いられてもよい。黒色フィルム5においてカーボンは、赤外線の放射を担っており、電気伝導を担わない。したがって、安価なカーボンブラックが使用され得る。高価で安全規格が厳しいカーボンナノチューブが用いられる必要はない。すなわち、黒色フィルム5は、カーボンブラックを含有することで黒色化されている。カーボンに代えて、例えば黒色のセラミックといった他の材料が用いられてもよい。ただし、赤外線放射効率、材料の入手容易性、価格等の条件において、カーボンブラックは好ましい材料である。
【0023】
黒色フィルム5は、例えば、樹脂粉体にカーボンブラックが混合され、二軸混練押出機によってフィルム状に成形されることで形成され得る。また、黒色フィルム5は、例えば、樹脂溶液にカーボンブラックが分散させられ、加熱ローラーによって硬化させられ、フィルム状に成形されることで形成され得る。
【0024】
黒色フィルム5の厚さは、例えば、25μm~100μmである。形状加工を考慮すると、黒色フィルム5の厚さは、例えば75μm程度であることが好ましい。PI樹脂とカーボンブラックとを含む黒色フィルム5の体積抵抗率は、赤外線放射性能と絶縁抵抗とのバランスを考慮して、1×1010Ω・cm~1×1013Ω・cm程度であり、好ましくは1×1011Ω・cm程度である。
【0025】
黒色フィルム5には、エンボス加工が施されている。黒色フィルム5のエンボス加工は、金属箔ヒータ3への接着の前に予め施されている。このエンボス加工には、頂部に針状の突起があるエンボス形状のオス型とこれに相応するメス型とを含む一対の金型が用いられる。エンボス加工において、加工対象の黒色フィルム5は、この一対の金型の間に挟まれてホットプレス等が行われる。PI樹脂が用いられている場合、ホットプレスは、成形温度が例えば300℃~370℃であり、圧力が1kg/cm~5kg/cmであるといった条件で行われる。
【0026】
黒色フィルム5は、エンボス加工により形成された凸部6を有している。この凸部6は、黒色フィルム5の全面に一様に配置されている。ただし、タッチセンサの接触感度を維持するため、タッチセンサ電極8部分には、凸部6は設けられていない。
【0027】
凸部6は、例えば、円柱形状又は円錐台形状が好ましい。凸部6の形状が角のある角柱形状である場合、オス型の押し込みによって黒色フィルム5に、皺や亀裂が入るおそれがある。このため、凸部6の形状は、角のない形状が好ましい。また、金型の抜けをスムーズにするため、凸部6の形状は、例えばテーパー角度を設けた円錐台形状であることが好ましい。
【0028】
凸部6の形状が円錐台形状の場合、底部の直径は、好ましくは2mm~8mmであり、更に好ましくは3mm~6mmである。凸部6の形状が他の形状の場合であっても、凸部の面方向の大きさは、好ましくは2mm~8mmであり、更に好ましくは3mm~6mmである。凸部6の高さは、好ましくは1mm~5mmであり、更に好ましくは、2mm~4mmである。
【0029】
黒色フィルム5における凸部6の配置の密度は、20mm四方に1個以上であることが好ましい。凸部6の底部の直径にもよるが、凸部6の配置の密度は、5mm四方~10mm四方に1個以上であることがさらに好ましい。
【0030】
また、各凸部6の頂部には、エンボス加工に用いたオス型の頂部の針状の突起によって形成された、少なくとも1つの孔7が設けられている。孔7の直径は、好ましくは1μm~150μmであり、さらに好ましくは10μm~50μmである。凸部6の各々に設けられる孔7の数は、2つ以上であってもよい。
【0031】
この孔7は、加熱により膨張した凸部6内の空気の圧力、樹脂層4に含まれる微細な気泡の膨張圧力、及び樹脂層4と黒色フィルム5との間の残留気泡の膨張圧力を逃がす役割を果たす。なお、樹脂層4と黒色フィルム5との間の残留気泡の発生は、接着工程において避けることが難しい。一方で、本実施形態のフィルムヒータ10は、比較的単純な構造を有するため、フィルムヒータ10の積層間に残る気泡は、全体として比較的少ない。また、孔7は、凸部6内と外気との換気を促し、凸部6内の温度を下げる役割を担う。また、孔7は、冷却時に収縮する空気によって凸部6が潰れることを抑止する。
【0032】
本実施形態の赤外線放射型のフィルムヒータ10では、最外層の黒色フィルム5の表面に凸部6が形成されている。凸部6の内部には空気が存在し、凸部6は断熱機能を発揮する。その結果、凸部6の頂部の温度は上昇しにくい。また、中空の凸部6の熱容量は小さい。したがって、例えば、金属箔2が135℃程度であるときに、凸部6の頂部の温度は、135℃程度よりも低くなり、黒色フィルム5の表面の凸部6の頂部に万一人の皮膚が直接触れた場合であっても、その人は高熱をほとんど感じず、通常は火傷を負うこともない。金属箔ヒータ3の温度を例えば135℃程度といった比較的高い温度まで上げることができるので、被加熱体の温度立上がり時間は比較的短くなる。
【0033】
なお、凸部6を含む黒色フィルム5は、金属箔2において発生した熱によって、主に樹脂層4に接触している黒色フィルム5の平坦部5aを介して加熱される。したがって、凸部6の大きさ及び密度は、凸部6の頂部の温度の立上がり時間、及び赤外線放射による被加熱体の温度の立上がり時間に影響を与える。
【0034】
樹脂層4には耐熱性が高いエポキシ系の接着剤といった熱硬化性樹脂が用いられることが好ましいところ、一般に熱硬化性樹脂は、加熱に対して収縮することが長期にわたって続く傾向がある。圧力を印加しながら樹脂硬化させることで、製造当初は樹脂層4を平面にすることができる。しかしながら、フィルムヒータ10の使用を続けていると時間経過とともに樹脂層4の収縮が生じ得る。これに対して、本実施形態のフィルムヒータ10では、樹脂層4に接着されている黒色フィルム5は、樹脂層4と接していない凸部6を有する。この凸部6は、黒色フィルム5が樹脂層4から受ける収縮力を緩和する機能を果たす。その結果、フィルムヒータ10全体の湾曲が抑制され得る。
【0035】
本実施形態のフィルムヒータ10は、比較的単純な構造を有する。このため、フィルムヒータ10は、軽量であり、振動や衝撃に強く、高い堅牢性を有する。また、黒色フィルム5による赤外線放射も利用することで、比較的速暖性がよく、消費電力も比較的小さい。また、フィルムヒータ10の製造工程も比較的単純であり、製造に要する時間も比較的短い。また、フィルムヒータ10は、比較的安価な汎用の材料を用いて製造することができる。例えば、フィルムヒータ10では、従来から信頼性が確保されているSUSエッチングヒータとカーボンブラックを添加したPIフィルムといった比較的安価な材料が使用され得る。したがって、フィルムヒータ10は、比較的安価に製造され得る。
【0036】
以上の通り、本実施形態のフィルムヒータ10は、速暖性、省エネルギー性、形状安定性、経済性等がよい。フィルムヒータ10の用途は多様であるが、フィルムヒータ10は、例えば電気自動車のヒータとしても高い性能を有する。
【0037】
なお、上述の実施形態では、凸部6の内部が空気である例を説明した。しかしながら、これに限らない。凸部6の内部が空気であるときよりも繰り返される加熱及び冷却の影響による凸部6の潰れに対する耐久性を向上させるため、凸部6の内部に、凸部6の形状に対応した連続気泡を有する発泡体が配置されてもよい。連続気泡発泡体としては、セラミックよりも比熱が大きい耐熱性の高分子発泡体が用いられ得る。例えば、シリコーンゴム・スポンジ、フッ素ゴム・スポンジ等が用いられ得る。
【実施例
【0038】
上述の実施形態に係るフィルムヒータ10を作製し、各種の特性を測定して評価した。
【0039】
[試料の作製]
赤外線放射型フィルムヒータの試料として、金属箔2が135℃程度となる使用を考慮したフィルムヒータ10を作製した。金属箔ヒータ3の作製のため、市販のSUS箔にPI樹脂がラミネートされたフィルムを用いた。用いたフィルムは、厚さ25μmのSUS箔の一面に厚さ35μmのPI樹脂がラミネートされた物である。このようなフィルムは、フィルムヒータ用として広く市販されている。本実施例では、150mm×210mmの大きさのフィルムを用いた。このようなフィルムを用いて、厚さ35μmのPI樹脂の耐熱絶縁性フィルム1を下地とし、その上に厚さ25μmのSUS箔の金属箔2が設けられた金属箔ヒータ3を作製した。
【0040】
金属箔ヒータ3の金属箔2のパターンの形成は、周知のエッチング法を用いて行った。すなわち、SUS箔の表面にレジスト膜で所定のパターンを形成し、エッチング液への浸漬によって不要なSUS箔を除去した。本実施例では、ヒータパターンは、空き部分が極力少ないものとした。ヒータパターンの抵抗値は、4.5Ωとした。ヒータパターンの両端部には、電源に接続される接続部2aが設けられている。
【0041】
また、ヒータパターンの外周部には、静電容量型のタッチセンサの感知用のタッチセンサ電極8を形成した。タッチセンサ電極8の幅は、5mmとした。
【0042】
黒色フィルム5には、市販されている耐熱性に優れた汎用の黒色PIフィルムを用いた。黒色フィルム5は、カーボンブラックによって黒色化されている。
【0043】
黒色フィルム5をエンボス加工用ホットプレス機の金型にセットし、凸部6を形成した。ホットプレスの条件は、温度が350℃、時間が3分間、圧力が3kg/cmとした。
【0044】
凸部6の底部直径、高さ、密度が異なる複数の試料を用意した。凸部6の底部の直径は、3mm、6mm、10mmの3種類とした。凸部6の高さは、2.5mm、3mm、4mm、6mmの4種類とした。凸部6の配置の密度は、6mm四方に1個、10mm四方に1個、18mm四方に1個の3種類とした。また、凸部6の頂部に設けられた孔7の直径が異なる複数の試料を用意した。孔7の直径は、50μm、100μm、200μmの3種類とした。これらの組合せに応じた、実施例1乃至6の6種類の試料を作製した。各部の寸法等の組合せを表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
実施例1及び2は、凸部6の配置の密度を6mm四方に1個とし、凸部6の底部直径を3mm、高さを2.5mmとした。実施例1は、孔7の直径を50μmとし、実施例2は、孔7の直径を100μmとした。なお、実施例1及び2の仕様は、安全性と熱効率に関して最も実用性が高いと見込まれるものである。
【0047】
実施例3及び4は、凸部6の配置の密度を10mm四方に1個とし、凸部6の底部直径を6mm、高さを3mmとした。実施例3は、孔7の直径を50μmとし、実施例4は、孔7の直径を100μmとした。なお、実施例3及び4は、凸部6の径を大きくして凸部6頂部の温度を更に下げられないかを確認するためのものである。
【0048】
実施例5は、凸部6の配置の密度を18mm四方に1個とし、凸部6の底部直径を10mmとした。実施例5は、凸部6の高さを4mmとし、凸部6の内部に凸部6とほぼ同じ形のシリコーンゴム・スポンジを設置し、孔7の直径を200μmとした。実施例5の仕様は、凸部6の数を減らし、黒色フィルム5の高温の平坦部5aへの指先の接触が生じやすくなったとしても、凸部6の底部直径を大きくすることで、凸部6頂部の温度を低くできないかを確認するためのものである。また、実施例5は、凸部6の内部に設置されたシリコーンゴム・スポンジによって、凸部6の頂部の凹みを抑止できるか否かを確認するためのものである。
【0049】
実施例6は、実施例5と同様に、凸部6の配置の密度を18mm四方に1個とし、凸部6の底部直径を10mmとした。実施例6は、凸部6の高さを6mmとし、孔7を設けなかった。実施例6の仕様は、凸部6の数を減らし、黒色フィルム5の高温の平坦部5aへの指先の接触が生じやすくなったとしても、凸部6の内部空間が大きければ、孔7が無くても、凸部6の頂部の温度を低くできないかを確認するためのものである。
【0050】
以上のように凸部6の仕様が異なる各黒色フィルム5を、金属箔ヒータ3の表面に接着した。接着剤には、1液エポキシ接着剤(サンユレック社製、RO-8699)を用いた。金属箔2が形成された面を上にして金属箔ヒータ3を配置し、金属箔ヒータ3の上面に約20μmの接着剤を塗布し、その上に各実施例の黒色フィルム5をその凸部6が上を向くように配置し、150℃、1時間乾燥、硬化させた。ただし、実施例5については、下側に黒色フィルム5を上側に金属箔ヒータ3を配置して接着を行った。このとき、凸部6への接着剤の侵入はわずかであり、凸部6の内部のシリコーン・スポンジの空隙は十分に確保された。
【0051】
比較例1及び2の試料は、金属箔ヒータ3に凸部6がない平らな黒色フィルム5を接着したものである。この構造は、金属箔2を135℃に加熱したときに、黒色フィルム5に触れると火傷するおそれがある構造である。金属箔ヒータ3と黒色フィルム5との接着は、上述の実施例の場合と同様にした。比較例1では、金属箔2への印加電圧などの試料の動作条件を実施例1乃至6と同条件とし、各種測定を行った。比較例2では、金属箔2への印加電圧を実施例1乃至6の場合よりも下げた動作条件で、各種測定を行った。
【0052】
[測定方法]
表1に示す各試料について、次に示す各測定を行った。
【0053】
〈平坦部への指先の接触の評価〉
使用中のフィルムヒータ10において高温になり得る金属箔ヒータ3上の黒色フィルム5の平坦部5aに、指先が触れるか否かを評価した。上述の各試料を用いた。無通電状態の各試料の黒色フィルム5に人差し指の先端を接触させ、当該人差し指の先端が黒色フィルム5の凸部6と凸部6との間の平坦部5aに面状の広さをもって触れるか否かを確認した。
【0054】
〈表面温度の測定〉
上述の各試料であるフィルムヒータ10の表面温度を測定した。フィルムヒータ10を25℃無風の空中に吊るした。
【0055】
フィルムヒータ10の発熱体である金属箔2の両端に、温度調節器を介して、直流12.5Vの電圧を印加した。フィルムヒータ10の裏面中央に微小な熱電対を接着固定し、熱電対のリード線を温度調節器に接続した。フィルムヒータ10の温度は、熱電対による測定温度に基づいて、温度調節器によって自動制御されるようにした。温度制御は、温度調節器による時間比例温度制御によって、オーバーシュートを抑制するように行われた。制御設定温度は、135℃とした。比較例2については、印加電圧を11.0Vとした。他の例と比較して電力として22%程度低いので、これに伴い、比較例2については、制御設定温度を105℃とした。
【0056】
温度測定領域を、黒色フィルム5の中央部分50mm四方の領域と黒色フィルム5の四隅部分50mm四方の4領域との5領域とした。それぞれの領域の凸部6間の平坦部5aと凸部6の頂部とを測定点とした。微小な熱電対を測温体として用い、各測定点に測温体を接触させ、デジタル温度計を用いて温度測定を行った。5領域で測定された温度の平均値を、評価対象とした。
【0057】
〈赤外線放射による被加熱体の温度上昇の測定〉
フィルムヒータ10の赤外線放射による被加熱体の温度上昇を測定した。フィルムヒータ10の動作の制御には、上述の表面温度の測定の場合と同じ温度制御システムと制御方法とを用いた。フィルムヒータ10の表面から15cm離れた空中に、フィルムヒータ10よりやや大きい黒色の布を張り、この黒色布を被加熱体とした。フィルムヒータ10の中央部に相当する黒色布の表面の温度を、遠赤外線サーモグラフィーを用いて測定した。黒色布表面の温度測定は、1秒間隔で行った。フィルムヒータ10への電力供給の開始から温度が飽和するまでの測定温度を記録した。電力供給の開始から飽和温度の90%の温度になるまでの時間を、立上がり時間とした。比較例2については、印加電圧を11.0Vとし、制御設定温度を105℃とした。
【0058】
〈凸部の高さ減少量とフィルムヒータの湾曲の測定〉
初めに、各実施例の未使用のフィルムヒータ10の試料について、凸部6の頂部の高さを、マイクロスコープを用いて測定し、記録した。測定対象の凸部6は、上述の表面温度の測定と同様に、黒色フィルム5の中央部分と黒色フィルム5の四隅部分とのそれぞれの50mm四方の5領域内の凸部6とした。
【0059】
次に、各試料について、上述の表面温度の測定と同様に、フィルムヒータ10を25℃無風の空中に吊るし、金属箔2に、温度調節器を介して、直流12.5Vの電圧を印加した。温度調節器による制御設定温度を135℃とし、通電時間を1時間、その後無通電時間を1時間としたオン-オフのサイクルを100回繰り返した。比較例に係るフィルムヒータについても、同様に100サイクルの繰り返し通電を行った。
【0060】
繰り返し通電後の各試料を、懸架状態から平面状態に移し、マイクロスコープを用いて、最初の測定と同じ凸部6の頂部の高さを測定し、記録した。最初の測定値と繰り返し通電後の測定値との差を求めた。5領域で得られた差の平均値を、評価対象とした。
【0061】
また、繰り返し通電後の各試料について、マイクロスコープを用いて、平面からの湾曲が最も大きくなった箇所の高さを測定した。ここでは、表裏を問わず周辺部の最大湾曲が上向きとなるように試料を配置して、測定を行った。
【0062】
〈フィルムヒータの耐湿試験と耐電圧試験〉
各試料を、無通電状態で40℃、95%RHの恒温恒湿槽に入れ、8時間放置した。その後、各試料を恒温恒湿槽から取出し、結露を拭き取ってから常温常湿中に1時間放置した。その後、各試料の耐電圧試験を行った。耐電圧試験では、黒色フィルム5の表面と金属箔2との間に、交流1500Vを1分間印加した。交流電圧印加後のフィルムヒータ10の絶縁破壊の有無を試験した。
【0063】
[測定結果及び評価]
各測定の結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
〈平坦部への指先の接触の評価について〉
凸部6の間隔が4mm以下である実施例1~4では、凸部6の高さが2.5mm又は3mmであるにも関わらず、黒色フィルム5の平坦部5aに指先は触れなかった。一方、凸部6の間隔が8mmである実施例5~6では、凸部6の高さが4mm又は6mmであるにも関わらず、黒色フィルム5の平坦部5aに指先が触れた。これらの結果から、凸部6の間隔が5mm程度より狭ければ、指先が黒色フィルム5の平坦部5aに触れる可能性は低いと考えられた。例えば指先を含む身体の一部が高温となる黒色フィルム5の平坦部5aに触れないように凸部6の間隔を5mm以下とするといった、安全性を考慮した凸部6の分布等の設計基準を設けることができることが明らかになった。
【0066】
〈表面温度について〉
凸部6間の平坦部5aの温度は、制御設定温度である135℃に応じた温度、すなわち、136℃±1℃程度であった。ただし、比較例2では、制御設定温度を105℃としているので、これに応じて平坦部5aの温度は、106.6℃であった。
【0067】
実施例1~4のフィルムヒータ10では、凸部6頂部の温度は、概ね110℃~113℃程度であった。すなわち、凸部6頂部の温度は、平坦部5aに比べて、21℃~26℃低かった。この温度低下について孔7が大きい方が大きい傾向がわずかに認められたものの、温度低下と孔7の径との顕著な関係は、認められなかった。
【0068】
実施例の5のフィルムヒータ10では、凸部6の内部にシリコーンゴム・スポンジが配置されている。このため、凸部6表面への熱伝導が大きくなり、凸部6頂部の温度は116℃であった。すなわち、実施例5の凸部6頂部の温度は、実施例1~4の凸部6頂部の温度よりもやや高かった。平坦部5aとの温度差も19℃と、実施例1~4の場合よりもやや小さくなった。
【0069】
また、孔7が設けられていない実施例6のフィルムヒータ10では、凸部6頂部と平坦部5aとの温度差は、10℃程度であり、実施例1~4の場合よりも顕著に小さくなった。すなわち、孔7を設けることによる凸部6の内部と外気との換気が、凸部6頂部の温度を低下させることに重要であることが明らかになった。
【0070】
以上のように、孔7を設けた凸部6を有するフィルムヒータ10の構造は、フィルムヒータ10の表面温度を大幅に下げる効果を発揮することが明らかになった。上述の凸部6間の平坦部5aに指先等が接触しないように設計された凸部6の配置と凸部6の形状とによって、例えば、金属箔2を高温にしても人が触れる可能性がある部分の温度を低く抑えることができる。したがって、このフィルムヒータ10の構造によれば、安全に金属箔2を高温にすることができることが示された。
【0071】
〈赤外線放射による被加熱体の温度上昇について〉
フィルムヒータ10の黒色フィルム5に基づく赤外線放射による被加熱体の温度上昇を測定した結果、被加熱体である黒色布の表面の飽和温度は、概ね47.5℃±1℃であった。この飽和温度は、凸部6及び孔7の有無、形状、構造の違いとは、無関係であった。黒色フィルム5が設けられていることで、黒色フィルム5による安定した赤外線放射による加熱の効果が得られていることが示された。
【0072】
また、実施例1~4の黒色布表面温度の立上り時間は、65~69秒であった。これに対して、凸部6が設けられていない比較例1の黒色布表面温度の立上り時間は、45秒であった。実施例1~4の黒色布表面温度の立上り時間は、比較例1の黒色布表面温度の立上り時間と比較して、1.5倍程度に長くなった。一方で、この程度の立上り時間の長時間化は、実用的には問題ないと考えられる。
【0073】
また、実施例5の黒色布表面温度の立上がり時間は、85秒であった。実施例5の立上がり時間が長いのは、凸部6の内部にシリコーン・スポンジを配置したため、これらの部分の熱容量が大きくなったためと考えられた。
【0074】
また、実施例6の黒色布表面温度の立上がり時間は、54秒であった。実施例6の立上がり時間が比較的短いのは、平坦部5aの面積が比較的大きく、孔7が設けられていないため、黒色フィルム5の温度上昇が比較的早かったためと考えられる。
【0075】
比較例2では、電源電圧を下げて黒色フィルム5の表面温度を107℃程度まで下げているため、他の例と比較して、立上がり時間が大幅に長くなった。
【0076】
以上のように、凸部6及び孔7を設けることにより、凸部6頂部の温度を比較的低くしつつも、電源電圧を下げずに黒色フィルム5の平坦部5aの温度を135℃と比較的高くすることで、赤外線放射による被加熱体の温度上昇を比較的速くすることができることが示された。
【0077】
また、各実施例のように、カーボンナノチューブのような高価な材料ではなく、比較的安価な汎用のカーボンブラックを使用しても、赤外線放射による十分な被加熱体の加熱効果が得られることが確認された。すなわち、汎用のカーボンブラックを使用したフィルムヒータ10は、高い経済性が得られることが明らかになった。
【0078】
〈凸部の高さ減少量とフィルムヒータの湾曲について〉
表2に結果を示すように、実施例1~4及び6において、凸部6底部直径が小さく、高さも低いほど、繰り返し通電後の凸部6の高さ減少量が小さい傾向が認められた。また、凸部6の内部にシリコーンゴム・スポンジを設置した実施例5では、凸部6の高さ減少を著しく抑制できることが認められた。
【0079】
また、繰り返し通電後のフィルムヒータ10の湾曲量は、表2に結果を示すようになった。小さな凸部6を多数設けた構造の方が、繰り返し通電後の湾曲が小さくなることが明らかになった。
【0080】
凸部6間の平坦部5aへの指先接触の防止や形状安定性等の他の特性等を考慮しながら、凸部6の寸法、形状、構造等について設計できることが明らかになった。
【0081】
〈フィルムヒータの耐湿性能と耐電圧性能について〉
何れの試料も、絶縁破壊に到らなかった。黒色フィルム5の凸部6の頂部に孔7が設けられているにも関わらず、孔7の径が、凸部6内部の分子が小さい空気と凸部6外部の分子が大きい湿気との交換を抑制することに適した大きさであるためと考えられる。また、凸部6内部に侵入した湿気も、樹脂層4に阻まれたと考えられる。これらのことから、フィルムヒータ10の絶縁耐電圧が維持されたものと考えられる。このように、凸部6の頂部の孔7は、吸湿に由来する問題を実用上引き起こさないことが明らかになった。
【0082】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。

【要約】
フィルムヒータ(10)は、耐熱絶縁性フィルム(1)と、耐熱絶縁性フィルム(1)の上に設けられた金属箔(2)と、金属箔(2)の上に設けられた黒色フィルム(5)とを備え、黒色フィルム(5)は、断熱機能を発揮するように構成された凸部(6)と、凸部(6)の各々に少なくとも1つ設けられた孔(7)とを有する。
図1A
図1B
図2