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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】衝突回避制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20250317BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20250317BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W30/09
G08G1/16 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020210622
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022097184
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】玉木 智
【審査官】西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-028841(JP,A)
【文献】特開2018-144569(JP,A)
【文献】特開2015-203923(JP,A)
【文献】特開2020-175794(JP,A)
【文献】国際公開第2020/194018(WO,A1)
【文献】特開平11-053694(JP,A)
【文献】特開2005-182310(JP,A)
【文献】特開2011-209919(JP,A)
【文献】特開2012-014257(JP,A)
【文献】特開2014-026332(JP,A)
【文献】特開2015-170233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B60T 7/12- 8/1769
B60T 8/32- 8/96
G05D 1/00- 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて、前記車両と物体との衝突を回避する制御を行う装置であって、
前記車両の位置を推定する位置推定手段と、
前記車両の周辺の対象領域に存在する物体を認識する物体認識手段と、
前記車両の移動経路が前記位置推定手段により推定される位置からその前方の交差点を折進する経路であり、前記物体認識手段により認識される物体が前記交差点に向けて移動する移動体であって、前記交差点内で前記車両が前記移動体と衝突する可能性があると判断した場合、前記車両が前記交差点内に進入しないよう、前記車両を減速ないしは停止させる車速調整手段と、を含み、
前記対象領域は、前記車両から前記交差点の手前までの領域および前記車両から後方の一定長さの領域を含み、
前記車速調整手段は、
高精度地図上において、前記移動体が移動する経路と前記車両の前記移動経路とが前記交差点内で交わり、かつ、前記車両と前記移動体とが前記移動体が移動する予測経路と前記車両の前記移動経路との交点に同時に到着すると予測される場合、前記車両と前記移動体とが衝突する可能性があると判断し、
前記車両の減速のみで、前記車両が前記交差点に進入するまでに、前記移動体が前記予測経路と前記移動経路との前記交点を通過し終えるか否かを判断し、前記移動体が前記交点を通過し終えると判断した場合、前記車両を減速のみさせて停止させない減速処理を行い、前記移動体が前記交点を通過し終えないと判断した場合、前記車両を減速させて停止させる停止処理を行う、衝突回避制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて、車両と物体との衝突を回避する制御を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されて、車両と物体との衝突の可能性を判定し、衝突の可能性が高い場合に、車両を減速ないしは停止させて、その衝突を回避する衝突回避制御が知られている。
【0003】
衝突回避制御には、車両の直進による前方の物体への追突の回避はもちろん、車両が交差点を折進する際に、交差点を折進前の車両と同方向に直進して横断する歩行者や2輪車などの移動体が存在する場合には、その交差点を横断する移動体との衝突を回避することが要求される。しかし、交差点を折進する車両と交差点を横断する移動体との衝突を回避する制御については、確立されたものがなく、車両メーカなどから種々の提案がなされている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-224164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、車両が交差点を折進する際に、その交差点を横断する移動体を車両との衝突の危機に直面させずに、車両と移動体との衝突を回避できる、衝突回避制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る衝突回避制御装置は、車両に搭載されて、車両と物体との衝突を回避する制御を行う装置であって、車両の位置を推定する位置推定手段と、車両の周辺の対象領域に存在する物体を認識する物体認識手段と、車両の移動経路が位置推定手段により推定される位置からその前方の交差点を折進する経路であり、物体認識手段により認識される物体が交差点に向けて移動する移動体であって、交差点内で車両が移動体と衝突する可能性があると判断した場合、車両が交差点内に進入しないよう、車両を減速ないしは停止させる車速調整手段とを含む。
【0007】
この構成によれば、車両が前方の交差点を折進する際に、交差点内で車両が移動体と衝突する可能性がある場合、車両の減速ないしは停止により、車両が交差点内に進入しない。
【0008】
交差点内での車両と移動体との衝突を回避する制御としては、たとえば、車両を交差点内における移動体の移動経路の直前で停止させる制御が考えられる。この制御では、車両が交差点内で進行方向を変えつつ(舵を切りつつ)減速して、その正面を移動体に向けて停止する。そのため、車両と移動体との衝突を回避できても、車両が移動体に迫ってくるので、移動体は、車両との衝突の危機に直面することになる。
【0009】
交差点を折進する車両と交差点を横断する移動体との衝突の可能性がある場合に、車両が交差点に進入しないことにより、車両が移動体に迫らないので、移動体を車両との衝突の危機に直面させずに、車両と移動体との衝突を回避することができる。
【0010】
車速調整手段は、高精度地図上において、移動体が移動する経路と車両の移動経路とが交差点内で交わり、かつ、車両と移動体とが交差点に同時に到着すると予測される場合、車両と移動体とが衝突する可能性があると判断してもよい。
【0011】
車両の移動経路は、高精度地図上に車両を配置して得られる情報から予め計画された経路であり、移動経路の情報には、移動経路上の各地点での目標車速が含まれる。そのため、車両が交差点に到達するまでの時間は、各地点での目標車速から精度よく求めることができる。その結果、車両と移動体とが交差点に同時に到着するか否かを精度よく予測することができ、車両と移動体との衝突の可能性を精度よく判定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両が交差点を折進する際に、その交差点を横断する移動体を車両との衝突の危機に直面させずに、車両と移動体との衝突を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る衝突回避制御装置が搭載される車両の電気的構成を示すブロック図である。
図2】自動運転ECUの機能的な構成を示すブロック図である。
図3】左折時衝突回避処理の流れを示すフローチャートである。
図4A】車両が交差点を左折する際の車両および移動体の位置を図解的に示す図であり、左折時衝突回避処理の開始時の状態を示す。
図4B】車両が交差点を左折する際の車両および移動体の位置を図解的に示す図であり、車両が交差点の直前の停止位置で停止している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
<車両の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る衝突回避制御装置が搭載される車両1の電気的構成を示すブロック図である。
【0016】
車両1は、自動運転機能を搭載しており、ユーザの運転操作によらずに自動で走行が可能である。
【0017】
車両1には、各部を制御するため、複数のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)が搭載されている。各ECUは、マイコン(マイクロコントローラユニット)を備えており、マイコンには、たとえば、CPU、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリおよびDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。
【0018】
複数のECUには、駆動ECU11、操舵ECU12、ブレーキECU13、メータECU14およびボデーECU15が含まれる。駆動ECU11、操舵ECU12、ブレーキECU13、メータECU14およびボデーECU15は、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる通信、つまりCAN通信が可能に接続されている。
【0019】
駆動ECU11は、車両1の駆動装置21を制御する制御部である。駆動装置21は、エンジンを駆動源として備える構成であってもよいし、モータを駆動源として備える構成であってもよいし、エンジンおよびモータの両方を駆動源として備える構成であってもよい。駆動装置21には、必要に応じて、駆動源からの駆動力を変速して出力する変速機が含まれる。
【0020】
操舵ECU12は、車両1の操舵装置22を制御する制御部である。操舵装置22は、たとえば、電動モータのトルクをステアリング機構に付与する電動パワーステアリング装置である。ステアリング機構は、たとえば、ラックアンドピニオン式のステアリングギヤを含み、電動モータのトルクによりラック軸が車幅方向に移動すると、そのラック軸の移動に伴って左右の操向輪が左右に転舵するように構成されている。
【0021】
ブレーキECU13は、車両1の制動装置23を制御する制御部である。制動装置23は、油圧式であってもよいし、電動式であってもよい。油圧式の制動装置23は、ブレーキアクチュエータを備え、このブレーキアクチュエータの機能により、各車輪に設けられたブレーキのホイールシリンダに油圧が分配され、その油圧により各ブレーキから駆動輪を含む車輪に制動力が付与される。
【0022】
メータECU14は、車両1のメータパネル(図示せず)の各部を制御する制御部である。メータパネルには、車速やエンジン回転数を表示する計器類のほか、各種の情報を表示するための液晶ディスプレイなどの表示器が設けられている。また、メータECU14には、自動運転の緊急停止を指示するために操作される緊急停止スイッチ24が接続されている。
【0023】
ボデーECU15は、車両1のイグニッションスイッチがオフの状態でも動作の必要がある各部、たとえば、左右の各ウインカやドアロックモータなどを制御する制御部である。
【0024】
また、複数のECUには、自動運転機能のための制御部として、自動運転ECU31、ライダECU32および単眼カメラECU33が含まれる。
【0025】
自動運転ECU31は、自動運転制御の制御中枢である。自動運転ECU31は、駆動ECU11、操舵ECU12、ブレーキECU13、メータECU14およびボデーECU15とCAN通信可能に接続されている。
【0026】
自動運転ECU31には、たとえば、イーサネット規格の通信ケーブルを介して、全方位ライダ(LiDAR:Light Detection And Ranging)34が接続されている。全方位ライダ34は、360°全方位にレーザ光を照射し、探索範囲内に存在する物体からの反射光を光センサで受光して、その反射光に応じた検出信号を出力する。自動運転ECU31には、その全方位ライダ34の検出信号が入力される。
【0027】
また、自動運転ECU31には、たとえば、USB(Universal Serial Bus)規格の通信ケーブルを介して、GPS受信機35が接続されている。GPS受信機35は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)衛星からの測位信号を受信する受信機である。GPS受信機35が受信する測位信号は、GPS受信機35から自動運転ECU31に入力される。
【0028】
ライダECU32は、たとえば、イーサネット規格の通信ケーブルを介して、自動運転ECU31と通信可能に接続されている。ライダECU32には、6個のライダ36が接続されている。ライダ36は、探索範囲にレーザ光を照射し、その探索範囲内に存在する物体からの反射光を光センサで受光して、その反射光に応じた検出信号を出力する。ライダ36は、たとえば、車両1のフロントバンパの左端、中央および右端ならびにリヤバンパの左端、中央および右端にそれぞれ配置されている。ライダECU32には、各ライダ36から出力される検出信号が入力される。ライダECU32は、各ライダ36から出力される検出信号を処理し、その処理により得られるデータを自動運転ECU31に送信する。
【0029】
単眼カメラECU33は、たとえば、USB規格の通信ケーブルを介して、自動運転ECU31と通信可能に接続されている。単眼カメラECU33には、単眼カメラ37が接続されている。単眼カメラ37は、車両1の前方の探索範囲の静止画を所定のフレームレートで連続して撮影可能なカメラである。単眼カメラECU33には、単眼カメラ37から連続して出力される静止画の画信号が入力される。単眼カメラECU33は、単眼カメラ37から入力される画信号を処理し、その処理により得られる画像データを自動運転ECU31に送信する。
【0030】
<自動運転ECU>
図2は、自動運転ECU31の機能的な構成を示すブロック図である。
【0031】
自動運転ECU31は、物体認識部41、自己位置推定部42、周辺情報統合部43、経路計画部44、安全確認部45および車両制御部46を備えている。これらの機能処理部は、プログラム処理によってソフトウエア的に実現されるか、または、論理回路などのハードウェアにより実現される。
【0032】
物体認識部41は、全方位ライダ34の検出信号から取得される物体(車両、歩行者、建物、縁石などの障害物)までの距離の情報と、単眼カメラ37により撮影された画像とから、車両1の周囲に存在する他の車両や歩行者などの物体を認識する。
【0033】
自己位置推定部42は、全方位ライダ34の検出信号から取得される点群データと、高精度地図のデータである高精度地図データ(点群データ)47とをマッチングさせて、車両1の位置(自己位置)を推定する。高精度地図は、高精度三次元地図であり、高精度地図データ47には、たとえば、道路の幅、区画線、路肩の線、交差点(信号)の停止線、横断歩道、標識などの情報が含まれる。高精度地図データ47は、自動運転ECU31のマイコンに内蔵されたメモリに記憶されていてもよいし、自動運転ECU31に接続されたHDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)などに記憶されていてもよい。また、自己位置推定部42は、その点群データのマッチングにより推定された自己位置と、GPS受信機35が受信した測位信号に基づく自己位置とを統合させて、自己位置の推定精度を高める。
【0034】
周辺情報統合部43には、物体認識部41による物体の認識結果と、自己位置推定部42による自己位置の推定結果と、ライダECU32(図1参照)で各ライダ36から出力される検出信号を処理して得られるデータとが入力される。また、周辺情報統合部43には、高精度地図データ47が入力される。周辺情報統合部43は、高精度地図上に車両1や車両1以外の車両および歩行者などの物体を配置した周辺情報統合地図データを作成する。そして、周辺情報統合部43は、地図情報や物体の認識情報を車両1の車内に配設されたディスプレイなどのHMI(Human Machine Interface:ヒューマンマシンインターフェース)デバイス48に出力する。
【0035】
経路計画部44には、周辺情報統合部43から周辺情報統合地図データが入力される。経路計画部44は、その周辺情報統合地図データから、車両1を目標地点に移動させるための経路およびその経路上の各地点での目標車速を計画する。そして、経路計画部44は、その計画した経路(以下、「計画経路」という。)および目標車速を含む計画経路データをHMIデバイス48に出力する。
【0036】
安全確認部45には、周辺情報統合部43から周辺情報統合地図データが入力される。また、安全確認部45には、経路計画部44から計画経路データが入力される。安全確認部45は、周辺情報統合地図データおよび計画経路データから、車両1の経路上の安全性を確認する。
【0037】
車両制御部46には、経路計画部44から計画経路データが入力される。また、車両制御部46には、安全確認部45による確認結果が入力される。車両制御部46は、計画経路データおよび車両1の経路上の安全性の確認結果に基づいて、車両1が計画経路に沿って走行するように、駆動ECU11、操舵ECU12およびブレーキECU13など、車両1の各部の動作を制御するECUに指令を出力する。
【0038】
<左折時衝突回避処理>
図3は、左折時衝突回避処理の流れを示すフローチャートである。図4Aおよび図4Bは、車両1が交差点Cを左折する際の車両1および移動体Mの位置を図解的に示す図である。
【0039】
たとえば、車両1が自動運転機能による自動運転走行時に、経路計画部44により計画された計画経路に交差点Cでの左折が含まれる場合、車両1がその交差点Cから所定距離手前の位置に到達すると、自動運転ECU31により、左折時衝突回避処理が開始されて、まず、安全確認部45により、左折前安全確認処理が行われる(ステップS11)。交差点Cは、十字路、丁字路または複数の道路が交差する部分である。交差点Cは、たとえば、道路の各側線の交差点側の端点(始端)を結ぶ線によって囲まれた部分をいい、交差点Cで交差する道路に停止線や横断歩道が設けられている場合、停止線よりも交差点Cの中央側かつ横断歩道が含まれる部分をいう。
【0040】
左折前安全確認処理では、たとえば、図4Aに二点鎖線で示されるように、車両1の車幅方向の中央からその左側の矩形状の領域を対象領域Aとして、その対象領域Aに交差点Cに向かって進行する移動体Mが物体認識部41により認識されるか否かが確認される。対象領域Aは、たとえば、車両1の車幅方向の中央から路端までの幅に設定され、車両1から交差点Cの手前までの領域および車両1から後方の一定長さの領域を含む。歩道が設けられている場合、対象領域Aは、歩道を含む。
【0041】
対象領域Aに交差点Cに向かって進行する移動体Mが存在しない場合、車両1が左折を開始する前の安全が確認されたとして、左折前安全確認の結果がOKと判断される(ステップS12のYES)。この場合、車両制御部46により、左折実施処理が行われる。左折実施処理では、車両1が交差点Cを左折して進行するよう、車両制御部46により、駆動ECU11、操舵ECU12およびブレーキECU13などを介して、車両1の各部の動作が制御される(ステップS13)。左折実施処理の後、左折時衝突回避処理は終了となる。
【0042】
対象領域Aに交差点Cに向かって進行する移動体Mが存在する場合、高精度地図上において、移動体Mが交差点Cを横断すると仮定されて、移動体Mの移動経路が予測される。その予測された移動経路(以下、「予測経路」という。)が交差点Cを左折して進行する車両1の計画経路と交差点C内で交差する場合、車両1の計画経路の情報に含まれる各地点での目標車速から、車両1が計画経路と予測経路との交点に到達するまでの車両到達時間が求められる。また、移動体Mの移動速度から、移動体Mが計画経路と予測経路との交点に到達するまでの移動体到達時間が求められる。そして、車両到達時間と移動体到達時間とが比較されて、それらの差分が所定以下である場合、車両1と移動体Mとが計画経路と予測経路との交点に同時に到着することが予測され、左折前安全確認の結果がNGと判断される(ステップS12のNO)。一方、車両到達時間と移動体到達時間との差分が所定よりも大きい場合には、車両1が交差点Cを左折して進行しても、車両1と移動体Mとの衝突が生じないと判断されて、左折前安全確認の結果がOKと判断される(ステップS12のYES)。
【0043】
左折前安全確認の結果がNGである場合、経路計画部44により、車両1を減速して停車させるか否かが判断される(ステップS14)。言い換えれば、車両1を減速して停車させる停止処理を行うか、または、車両1を減速のみさせて停止させない減速処理を行うかが決定される。停止処理または減速処理のいずれを行うかは、車両1および移動体Mから交差点Cまでの各距離ならびに車両1および移動体Mの各移動速度に基づいて判断される。具体的には、車両1の減速のみで、車両1が交差点Cに進入するまでに移動体Mの予測経路と車両1の計画経路との交点を移動体Mが通過し終えるか否かが判断される。そして、移動体Mが通過し終えると判断された場合、減速処理を行うことが決定される(ステップS14のNO)。移動体Mが通過し終えないと判断された場合、停止処理を行うことが決定される(ステップS14のYES)。
【0044】
減速処理では、車両制御部46により、車両1が減速するよう、車両1の各部の動作が制御される(ステップS15:減速処理)。減速処理が行われている間、安全確認部45により、左折前安全確認処理が繰り返し行われる(ステップS11)。そして、減速処理による車両1の減速中に、対象領域Aから移動体Mの存在がなくなると、車両1が左折を開始する前の安全が確認されたとして、左折前安全確認の結果がOKと判断されて(ステップS12のYES)、車両制御部46による左折実施処理が行われる(ステップS13)。
【0045】
停止処理では、経路計画部44により、交差点Cの直前の位置が停止位置に設定されて、車両1が停止位置で一旦停止する経路が再計画される。そして、その再計画された計画経路に従って、車両制御部46により、車両1が停止位置で停止するよう、車両1の各部の動作が制御される(ステップS16:停止処理)。
【0046】
停止処理の開始後、停止処理が完了したか否か、つまり車両1が停止位置で停止したか否かが判断される(ステップS17)。停止処理が完了していない場合(ステップS17のNO)、安全確認部45により、左折前安全確認処理が再び行われる(ステップS11)。停止処理が完了する前、つまり車両1が停止する前に、対象領域Aから移動体Mの存在がなくなると、車両1が左折を開始する前の安全が確認されたとして、安全確認部45により、左折前安全確認がOKと判断される(ステップS12のYES)。この場合、車両制御部46により、左折実施処理が行われる(ステップS13)。左折実施処理の後、左折時衝突回避処理は終了となる。
【0047】
左折前安全確認処理で安全が確認されない場合(ステップS12のNO)、車両1を減速して停車させるか否かが再び判断される(ステップS14)。たとえば、移動体Mの移動速度が上昇して、車両1の減速のみで、車両1が交差点Cに進入するまでに移動体Mの予測経路と車両1の計画経路との交点を移動体Mが通過し終える状況になった場合、停止処理から減速処理に切り替えられる(ステップS14のNO)。
【0048】
停止処理が続けられて、図4Bに示されるように、車両1が交差点Cの直前の停止位置に停止すると、停止処理が完了したと判断される(ステップS17のYES)。その後、車両制御部46により、車両1が停止位置で停止した状態が保持されるよう、車両1の各部の動作が制御される(ステップS18:停止保持処理)。
【0049】
停止保持処理の開始後、安全確認部45により、発進安全確認処理が行われる(ステップS19)。発進安全確認処理では、移動体Mの予測経路と車両1の計画経路との交点を移動体Mが通過し終えたか否かが確認される。
【0050】
移動体Mの予測経路と車両1の計画経路との交点を移動体Mが通過し終えていない場合(ステップS20のNO)、安全確認部45により、車両1の発進の際の安全確認(発進安全確認)の結果がNGと判断される(ステップS12のNO)。発進安全確認の結果がOKになるまで、つまり移動体Mの予測経路と車両1の計画経路との交点を移動体Mが通過し終えるまで、発進安全確認処理が繰り返される。
【0051】
移動体Mの予測経路と車両1の計画経路との交点を移動体Mが通過し終えると、安全確認部45により、発進安全確認の結果がOKと判断される(ステップS20のYES)。そして、車両制御部46により、左折実施処理が行われて(ステップS13)、車両1が発進する。発進後の車両1は、交差点C内に進入し、交差点Cを左折して進行する。左折実施処理の後、左折時衝突回避処理は終了となる。
【0052】
<作用効果>
以上のように、車両1が前方の交差点Cを折進する際に、交差点C内で車両1が移動体Mと衝突する可能性がある場合、車両1の減速ないしは停止により、車両1が交差点C内に進入しない。
【0053】
交差点C内での車両1と移動体Mとの衝突を回避する制御としては、たとえば、車両1を交差点C内における移動体Mの移動経路の直前で停止させる制御が考えられる。この制御では、車両1が交差点C内で進行方向を変えつつ(舵を切りつつ)減速して、その正面を移動体Mに向けて停止する。そのため、車両1と移動体Mとの衝突を回避できても、車両1が移動体Mに迫ってくるので、移動体Mは、車両1との衝突の危機に直面することになる。
【0054】
交差点Cを折進する車両1と交差点Cを横断する移動体Mとの衝突の可能性がある場合に、車両1が交差点Cに進入しないことにより、車両1が移動体Mに迫らないので、移動体Mを車両1との衝突の危機に直面させずに、車両1と移動体Mとの衝突を回避することができる。
【0055】
高精度地図上において、移動体Mが移動する計画経路と車両1の予測経路とが交差点C内で交わり、かつ、車両1と移動体Mとが交差点Cに同時に到着すると予測される場合、車両1と移動体Mとが衝突する可能性があると判断される。計画経路は、高精度地図上に車両1を配置して得られる情報から予め計画された経路であり、計画経路の情報には、計画経路上の各地点での目標車速が含まれる。そのため、車両1が交差点Cに到達するまでの時間は、各地点での目標車速から精度よく求めることができる。その結果、車両1と移動体Mとが交差点Cに同時に到着するか否かを精度よく予測することができ、車両1と移動体Mとの衝突の可能性を精度よく判定することができる。
【0056】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0057】
たとえば、前述の実施形態では、車両1が交差点Cを左折して進行する場合を取り上げたが、車両1が交差点Cを右折して進行する場合にも、左折時衝突回避処理と同様の処理が行われることにより、車両1と移動体Mとの衝突を回避することができる。この場合、左折前安全確認処理に代えて、右折前安全確認処理が行われて、車両1の車幅方向の中央からその右側の矩形状の領域を対象領域Aとして、その対象領域Aに交差点Cに向かって進行する移動体Mが物体認識部41により認識されるか否かが確認され、移動体Mが認識された場合には、車両1と移動体Mとの衝突の可能性が判断されるとよい。
【0058】
また、自動運転機能を搭載した車両1を取り上げたが、本発明は、自動運転機能を搭載せず、衝突回避制御による衝突回避機能を搭載した車両に適用されてもよい。
【0059】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1:車両
31:自動運転ECU(衝突回避制御装置)
41:物体認識部(物体認識手段)
42:自己位置推定部(位置推定手段)
45:安全確認部(車速調整手段)
46:車両制御部(車速調整手段)
47:高精度地図データ
A:対象領域
C:交差点
M:移動体
図1
図2
図3
図4A
図4B