(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】溶存酸素除去装置及び溶存酸素除去方法
(51)【国際特許分類】
B01D 19/00 20060101AFI20250317BHJP
A23L 2/76 20060101ALI20250317BHJP
C02F 1/20 20230101ALI20250317BHJP
【FI】
B01D19/00 F
A23L2/76
C02F1/20 Z
(21)【出願番号】P 2020048891
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000187149
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・ガスプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 正之
(72)【発明者】
【氏名】森 亮太
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-135834(JP,A)
【文献】特開平01-317586(JP,A)
【文献】特開2011-245472(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029663(WO,A1)
【文献】特開2000-107512(JP,A)
【文献】特開2012-135735(JP,A)
【文献】特開2000-325767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00
C02F 1/20
C02F 1/68
A23L 2/76
B01F 21/00
B01F 23/23 - 23/2375
B01F 25/20 - 25/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細気泡発生装置に液体を供給する液体供給ラインと、前記微細気泡発生装置に酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスを供給するガス供給ラインと、前記液体に前記ガスを微細気泡として含有させることにより、微細気泡含有液体を生成する前記微細気泡発生装置と、前記微細気泡含有液体中の溶存酸素を分離する分離容器と、前記分離容器に接続され、前記溶存酸素を分離した分離液体を外部へ供給する分離液体供給ラインとを含み、
前記微細気泡発生装置は、前記ガスと前記液体を混合する混合器と、前記混合器で混合された混合流体を複数個のノズル部に供給する混合流体供給ラインと、少なくとも前記液体供給ラインから供給された液体又は前記混合器で混合された前記混合流体のいずれかを昇圧する昇圧ポンプと、前記混合流体供給ラインに接続されるとともに、前記分離容器の前記液体内に併設状態で設けられ、昇圧された前記混合流体を噴射し、せん断することで微細気泡を発生させる前記複数個のノズル部とで構成され、
前記微細気泡は、個数を基準とした粒子径分布における最頻粒子径が1000nm以下である溶存酸素除去装置。
【請求項2】
前記微細気泡含有液体に含有される前記微細気泡の濃度が1.5億個/mL以上であることを特徴とする請求項1に記載の溶存酸素除去装置。
【請求項3】
前記分離容器内の前記微細気泡含有液体が循環する循環ラインを更に備え、前記循環ラインは、循環管路と、前記循環管路の中途に設けられた循環ポンプと、前記循環管路に設けられた絞り部とで構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の溶存酸素除去装置。
【請求項4】
前記液体は、飲料であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の溶存酸素除去装置。
【請求項5】
前記液体は、ボイラー水であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の溶存酸素除去装置。
【請求項6】
液体を微細気泡発生装置に供給する液体供給工程と、酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスを前記微細気泡発生装置に供給するガス供給工程と、前記液体供給工程で供給された前記液体内に前記ガス供給工程で供給された前記ガスを微細気泡として含有させる微細気泡含有液体生成工程と、前記微細気泡含有液体生成工程で生成された微細気泡含有液体の内部に溶存する酸素を除去する溶存酸素除去工程とで構成され、
前記微細気泡発生装置は、前記ガスと前記液体を混合する混合器と、前記混合器で混合された混合流体を複数個のノズル部に供給する混合流体供給ラインと、少なくとも
液体供給ラインから供給された液体又は前記混合器で混合された前記混合流体のいずれかを昇圧する昇圧ポンプと、前記混合流体供給ラインに接続されるとともに、分離容器の前記液体内に併設状態で設けられ、昇圧された前記混合流体を噴射し、せん断することで微細気泡を発生させる前記複数個のノズル部とで構成され、
前記微細気泡は、個数を基準とした粒子径分布における最頻粒子径が1000nm以下である溶存酸素除去方法。
【請求項7】
前記微細気泡含有液体に含有される前記微細気泡の濃度が1.5億個/mL以上であることを特徴とする請求項6に記載の溶存酸素除去方法。
【請求項8】
前記溶存酸素除去工程では、前記微細気泡含有液体内の溶存酸素濃度が所定の濃度以下となるように前記微細気泡含有液体を循環させる循環工程を行うことを特徴とする請求項6又は請求項7のいずれかに記載の溶存酸素除去方法。
【請求項9】
前記液体は、飲料であることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の溶存酸素除去方法。
【請求項10】
前記液体は、ボイラー水であることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の溶存酸素除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブルを用いて飲料等の液体中に溶存する酸素を除去する酸素除去装置及び酸素除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体中の溶存酸素を除去する方法等としては、「工業プロセスで使用するプロセス液の溶存酸素を除去する脱酸素方法において、プロセス液の送液路中に液化窒素の気化ガスを噴出させてプロセス液中に窒素ガスの微小気泡を形成したのち、このプロセス液を超音速状態の気液混合流体とし、プロセス液中に溶存している酸素を窒素気泡中に吸収させるようにした液体中からの脱酸素方法」が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、微細気泡を用いるものとしては「飲料を脱気し、溶存気体濃度を低下させる第1の脱気工程と、 脱気された飲料に窒素ガスによる超微細気泡を生成する窒素バブル生成工程と、 窒素ガスによる超微細気泡を含有する飲料を加熱殺菌する加熱殺菌工程とを含む、飲料製造方法」が知られている(特許文献2)。
【0004】
これら方法により、既存の脱気方法に比べ効率よく脱気処理を行うことができるが、これら方法は、プロセス水を超音速状態の気液混合流体とする必要や、他の溶存酸素除去装置と微細気泡発生装置とを併用する必要があるため、装置が大型、高コストになる等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-184811号公報
【文献】特開2018-102293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、装置が大型かつ高コストになることなく、より簡便かつ低コストで脱気効率に優れた溶存酸素除去装置及び溶存酸素除去方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の溶存酸素除去装置は、微細気泡発生装置に液体を供給する液体供給ラインと、前記微細気泡発生装置に酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスを供給するガス供給ラインと、前記液体に前記ガスを微細気泡として含有させることにより、微細気泡含有液体を生成する前記微細気泡発生装置と、前記微細気泡含有液体中の溶存酸素を分離する分離容器と、前記分離容器に接続され、前記溶存酸素を分離した分離液体を外部へ供給する分離液体供給ラインとを含み、前記微細気泡発生装置は、前記ガスと前記液体を混合する混合器と、前記混合器で混合された混合流体を複数個のノズル部に供給する混合流体供給ラインと、少なくとも前記液体供給ラインから供給された液体又は前記混合器で混合された前記混合流体のいずれかを昇圧する昇圧ポンプと、前記混合流体供給ラインに接続されるとともに、前記分離容器の前記液体内に併設状態で設けられ、昇圧された前記混合流体を噴射し、せん断することで微細気泡を発生させる前記複数個のノズル部とで構成され、前記微細気泡は、個数を基準とした粒子径分布における最頻粒子径が1000nm以下であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の溶存酸素除去装置の前記微細気泡含有液体に含有される前記微細気泡の濃度が1.5億個/mL以上であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の溶存酸素除去装置は、前記分離容器内の前記微細気泡含有液体が循環する循環ラインを更に備え、前記循環ラインは、循環管路と、前記循環管路の中途に設けられた循環ポンプと、前記循環管路に設けられた絞り部とで構成されることを特徴とする。
【0010】
【0011】
請求項4に記載の溶存酸素除去装置の前記液体は、飲料であることを特徴とする。
請求項5に記載の溶存酸素除去装置の前記液体は、ボイラー水であることを特徴とする。
請求項6に記載の溶存酸素除去方法は、液体を微細気泡発生装置に供給する液体供給工程と、酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスを前記微細気泡発生装置に供給するガス供給工程と、前記液体供給工程で供給された液体内に前記ガス供給工程で供給された前記ガスを微細気泡として含有させる微細気泡含有液体生成工程と、前記微細気泡含有液体生成工程で生成された微細気泡含有液体の内部に溶存する酸素を除去する溶存酸素除去工程とで構成され、前記微細気泡発生装置は、前記ガスと前記液体を混合する混合器と、前記混合器で混合された混合流体を複数個のノズル部に供給する混合流体供給ラインと、少なくとも液体供給ラインから供給された液体又は前記混合器で混合された前記混合流体のいずれかを昇圧する昇圧ポンプと、前記混合流体供給ラインに接続されるとともに、分離容器の前記液体内に併設状態で設けられ、昇圧された前記混合流体を噴射し、せん断することで微細気泡を発生させる前記複数個のノズル部とで構成され、前記微細気泡は、個数を基準とした粒子径分布における最頻粒子径が1000nm以下であることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の溶存酸素除去方法の前記微細気泡含有液体に含有される前記微細気泡の濃度が1.5億個/mL以上であることを特徴とする。
請求項8に記載の溶存酸素除去方法の前記溶存酸素除去工程では、前記微細気泡含有液体内の溶存酸素濃度が所定の濃度以下となるように前記微細気泡含有液体を循環させる循環工程を行うことを特徴とする。
請求項9に記載の溶存酸素除去方法の前記液体は、飲料であることを特徴とする。
請求項10に記載の溶存酸素除去方法の前記液体は、ボイラー水であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1及び請求項6に記載の各発明においては、酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスを微細気泡状態で液体中に含有させることにより、より高効率な脱酸素処理をすることができる。
(2)個数を基準とした粒子径分布における最頻粒子径が1000nm以下の微細気泡とすることにより、気泡が水面へ浮上する速度を非常に遅くすることができ、使用するガスの量を減らすことができる。
(3)請求項2及び請求項7に記載の各発明も前記(1)~(2)と同様な効果が得られるとともに、微細気泡の濃度を高くすることにより、脱酸素処理の効率をより高くすることができる。
(4)請求項3及び請求項8に記載の発明も前記(1)~(3)と同様な効果が得られるとともに、溶存酸素濃度が低下した液体を循環させて、さらに微細気泡を含有させ脱酸素処理を行うことができる。
したがって、液体中の酸素濃度をより低下させることができる。
(5)請求項4及び請求項9に記載の各発明も前記(1)~(4)と同様な効果が得られるとともに、食品衛生上危険性の低い脱酸素処理を行うことができる。
(6)請求項5及び請求項10に記載の各発明も前記(1)~(4)と同様な効果が得られるとともに、溶存酸素を除去することにより、ボイラーの腐食を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1乃至
図6は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図7及び
図8は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図9及び
図10は本発明の第3の実施形態を示す説明図である。
【
図1】第1の実施形態の溶存酸素除去装置の概略説明図。
【
図3】ノズル部の傾きを示す参考説明図。(a)対向するノズル部のいずれも傾きが0°の場合の説明図。(b)対向するノズル部の一方のノズル部の傾きが40°の場合の説明図。(c)対向するノズル部が異なる向きに20°傾き、対向するノズル部から噴射される流体が40°の傾きで衝突する場合の説明図。
【
図4】ノズル部の配置状態を示す参考説明図。(a)対向するノズル部の中心軸が同軸となるように配置された場合(0mm離間)の説明図。(b)対向するノズル部の中心軸が100mm離間するように配置された場合(100mm離間)の説明図。
【
図5】微細気泡濃度と溶存酸素濃度の関係を示す表。
【
図6】第1の実施形態の溶存酸素除去方法の工程図。
【
図7】第2の実施形態の溶存酸素除去装置の概略説明図。
【
図8】第2の実施形態の溶存酸素除去方法の工程図。
【
図9】第3の実施形態の溶存酸素除去装置の概略説明図。
【
図10】第3の実施形態の溶存酸素除去方法の工程図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
図1乃至
図6に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は本発明の微細気泡、いわゆるマイクロバブルやウルトラファインバブル(UFB、直径1μm以下の大きさの気泡)を用いて主に飲料等の液体中の溶存酸素を除去する溶存酸素除去装置である。
【0016】
この溶存酸素除去装置1は、
図1に示すように、微細気泡発生装置2に液体を供給する液体供給ライン3と、前記微細気泡発生装置2に酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスを供給するガス供給ライン4と、前記液体供給ライン3から供給された前記液体に前記ガス供給ライン4から供給された前記酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスを微細気泡として含有させ、これにより微細気泡含有液体を生成する前記微細気泡発生装置2と、前記微細気泡発生装置2で生成された前記微細気泡含有液体中の溶存酸素を分離する分離容器5と、前記分離容器5に接続され、前記溶存酸素を分離した分離液体を外部へ供給する分離液体供給ライン6とを含む。
【0017】
液体供給ライン3は、液体供給源7から供給される液体を微細気泡発生装置2へ送るラインである。
【0018】
この液体供給源7は、ガスを微細気泡状で含有させる液体を供給するもので、この液体は、好ましくは飲用可能な水、清涼飲料水等の飲料が考えられる。
【0019】
また、ボイラー水中に溶存酸素が存在している場合、保護皮膜の形成が妨げられたり、酸素濃淡電池の形成等より、孔食を作る原因になる。このようにボイラー水中の溶存酸素はボイラーの腐食に影響を及ぼすため、液体としてボイラー水を液体供給源7から供給し、ボイラー水の溶存酸素を除去することも効果的である。
【0020】
この液体供給源7は、液体が収納されたタンク等でもよいし、水の場合には水道管や貯水タンク、その他、例えば湖水、井戸水、河川水、海水から浄水装置を介して得られた浄水収納タンクを液体供給源7としてもよい。
【0021】
ガス供給ライン4は、ガス供給源8から供給される酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスを微細気泡発生装置2へ送るラインである。
ガス供給源8としては、好ましくはタンク、ボンベ等や、空気の場合にはコンプレッサー等である。
【0022】
微細気泡のもととなるガスは、本実施形態においては、窒素ガスを用いているが、希ガスやPSA等でガス組成比を酸素の含有率が10vol%以下に変化させた空気等のガスも使用することができる。
【0023】
微細気泡発生装置2は、液体供給ライン3及びガス供給ライン4に接続されており、供給されたガスを前記液体に微細気泡で含有するように混合して微細気泡含有溶媒を生成し、分離容器5(二次側)へ送る装置である。
【0024】
この微細気泡発生装置2は、
図2に示すように本実施形態では、前記液体供給ライン3から供給された液体と前記ガス供給ライン4から供給された前記ガスを混合する混合器9と、前記混合器9で混合された混合流体を複数個のノズル部10供給する混合流体供給ライン11と、少なくとも前記液体供給ライン3から供給された液体又は前記混合器9で混合された前記混合流体のいずれかを昇圧する昇圧ポンプ12と、前記混合流体供給ライン11に接続されるとともに、分離容器5の前記液体内に併設状態で設けられ、昇圧された前記混合流体を噴射し、せん断することで微細気泡を発生させる前記複数個のノズル部10とで構成されている。
【0025】
なお、本実施形態においては、分離容器5が微細気泡発生装置2を構成する要素の1つとなっているが、微細気泡発生装置2とは別個に分離容器5を設けてもよい。
【0026】
混合器9は、液体供給ライン3及びガス供給ライン4にと接続されており、供給されたガスと液体を混合器9で混合して2次側(分離容器5側)へ送る。
混合器9で混合された混合流体は、前記液体供給ライン3から供給された液体に取り込んだガスの気泡を含有する状態となっている。
【0027】
混合流体供給ライン11は、混合器9の二次側と複数個のノズル部10を接続するラインであり、本実施形態では、この混合流体供給ライン11に昇圧ポンプ12が設けられている。
【0028】
昇圧ポンプ12は、本実施形態においては混合器9の二次側、すなわち、混合流体供給ライン11の混合器9と分離容器5との間に設けられており、前記混合流体を少なくとも0.3MPa以上に昇圧するものである。
【0029】
使用される昇圧ポンプ12は、液体を昇圧し、圧送できるものであればどのようなものでもよく、公知の液体用昇圧ポンプを用いることができる。
【0030】
なお、昇圧ポンプ12を用いて昇圧した後の液体又は混合流体の圧力としては、前述したように0.3MPa以上となることが望ましいが、0.3MPa未満であってもウルトラファインバブルを発生させることはできる。
【0031】
分離容器5は、本実施形態では容器状の部材で、内部に液体等の液体を保持できるものである。
この分離容器5にはその上方側に例えば管状の排出部13が接続されており、分離容器5の内部で微細気泡含有液体が生成された後、この微細気泡含有液体から脱気された酸素が前記排出部13から外部へ排出される。
【0032】
ノズル部10は、
図3及び
図4に示すようにノズル部10から噴射された混合流体がせん断されるような併設状態で設けられており、好ましくは略対向状態に配設されている。
ここで、併設状態とは、略対向状態を含むものであり、略対向状態とは、ノズル部10の中心軸が同一線上に位置する状態で向かい合った状態や中心軸が離間した状態で向かい合って配置される状態を含むものである。
【0033】
本実施形態では、略対向状態で設けられており、混合流体供給ライン11より供給された所定の圧力に昇圧された混合流体をこのノズル部10から噴射することにより、混合流体がせん断状態となり、分離容器5内の液体中にウルトラファインバブルが発生する。
【0034】
具体的には、ノズル部10は一直線上を含んで略向かい合って配置されており、
図3に示すように噴射方向が0°乃至40°の角度に傾斜させることができる。ここで、0°とは、一方のノズル部10の中心軸と、このノズルに対向する他方のノズル部10の中心軸が同軸又は平行になる角度で、この0°に対してプラス・マイナス方向(図面上では上下方向)に最大40°傾斜可能に設けられている。
【0035】
この角度は、対向するノズル部10同士のなす角度が最大40°になるように調整することが望ましく、例えば、一方のノズル部10の傾きが0°の場合には、他方のノズル部10の角度を最大で40°(上下方向に40°)となるように調整し、一方のノズル部10の傾きが20°の場合には、他方のノズル部10の角度を一方のノズル部10と逆方向の傾きで最大で20°となるように調整することが望ましい。
すなわち、対向するノズル部10から噴射される混合流体が最大で40°の傾きで衝突するように対向するノズル部10の角度を設定する。
【0036】
また、対向する複数個のノズル部10は、
図4に示すように、それぞれその中心軸に対して0mm乃至100mmに離間させて設置することができる。すなわち、ノズル部10はその中心軸の一直線上から0mm以上で100mm以下の範囲ずれて向かい合って配置されている。
【0037】
このように配置することにより、ノズル部10から噴射された混合流体同士が衝突又は近接し、効率よくせん断されることにより、ウルトラファインバブルを効率よく発生させることができる。
【0038】
ところで、このときの混合流体が前記ノズル部10を通過する際の最大流速は10m/sec乃至200m/secであることが望ましく、より好ましくは50m/sec乃至150m/secであることが望ましい。
【0039】
この微細気泡含有液体に含有される微細気泡は、その粒子径が十分に小さい方が気泡の表面積の総和が増加し、効率的に液中の溶存酸素を脱気できる。
【0040】
また、気泡径の大きい泡によるバブリングによるガス置換では、ガス供給源8から供給されるガス(本実施形態においては窒素ガス)と液体との接触時間が短いことから、ガス供給源8から供給されるガスによる酸素の吸収が十分行われないうちに気泡が液面にて破裂するため、ガス供給源8から供給されるガスの使用量が多くなってしまう。気泡径をウルトラファインバブルの領域まで小さくすることにより、気泡が水面へ浮上するスピードが非常に遅くなるため、使用するガス供給源8から供給されるガスの量を少なくすることができる。
【0041】
このような作用効果を得られるため、微細気泡の個数を基準とした粒子径分布における最頻粒子径が、1000nmより小さいことが好ましく、500nmより小さいことがより好ましい。
【0042】
また、
図5に示すように、微細気泡含有液体中の微細気泡一定体積当たりの気体の体積比率が高い(濃度が高い)方が、液中の溶存酸素の脱気効率が高くなる。
【0043】
液体が飲料である場合には、その溶存酸素が1ppm以下であることが好ましく、微細気泡発生装置2で生成した微細気泡含有液体に含有される微細気泡の含有量は、微細気泡が前記液体1mL当たり1.5億個以上あることが好ましい。本実施形態においては、窒素ガスを用いているため、安全性も高めることができる。
【0044】
この微細気泡発生装置2の分離容器5では微細気泡含有液体を静置して微細気泡含有液体内の溶存酸素を除去する作業が行われる。微細気泡含有液体内に溶存する酸素は、微細気泡状となった窒素ガスに吸着され、液体の上方へ浮上して分離容器5に設けられた排出部13から外部へ排出される。
【0045】
ところで、本実施形態では、この分離容器5に収納された前記微細気泡含有液体が循環する循環ライン14が設けられており、前記循環ライン14は、分離容器5又は分離液体供給ライン6と液体供給ライン3を接続する循環管路15と、前記循環管路15の中途に設けられた循環ポンプ16と、循環管路15内の流量を調整する絞り部17とで構成されている。
【0046】
この循環ライン14を設けることにより、分離容器5の液体(微細気泡含有液体)を液体供給ライン3(混合器9の上流)へ戻して循環させることができ、溶存酸素濃度が低下した微細気泡含有液体を循環させ、この微細気泡含有液体にさらにガスを混合して高濃度の微細気泡を含有させることができるため、さらに液中の溶存酸素濃度を低下させることができる。なお、微細気泡の濃度を効率よく向上させることもできる。
【0047】
循環ラインには絞り部17が設けられているため、この絞り部17の開度により微細気泡含有液体の流量を調整し、微細気泡含有液体中の溶存酸素濃度を調整することができる。
【0048】
溶存酸素を除去した分離溶液は、分離容器5に接続された分離液体供給ライン6により外部に提供される。なお、この分離液体供給ライン6には仕切弁18を設けることが望ましい。
【0049】
本発明の溶存酸素除去方法19は、
図6に示すように、液体を微細気泡発生装置2に供給する液体供給工程20と、酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスを前記微細気泡発生装置2に供給するガス供給工程21と、前記液体供給工程20で供給された液体内に前記ガス供給工程21で供給された前記酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスを微細気泡として含有させる微細気泡含有液体生成工程22と、前記微細気泡含有液体生成工程22で生成された微細気泡含有液体の内部に溶存する酸素を除去する溶存酸素除去工程23とで構成されている。
【0050】
液体供給工程20は、液体供給源7から供給される液体を液体供給ライン3を介して微細気泡発生装置2に供給する工程である。液体としては様々な液体が考えられるが、本実施形態においては、液体として水や清涼飲料水等の飲料を用いている。
【0051】
ガス供給工程21では、ガス供給源8から供給されるガスをガス供給ライン4を介して微細気泡発生装置2に供給する工程である。供給されるガスとしては、酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスが用いられ、本実施形態においては、窒素ガスを用いている。なお希ガスやPSA等でガス組成比を酸素の含有率が10vol%以下に変化させた空気等のガスも用いることができる。
【0052】
液体供給工程20とガス供給工程21は略同時に行われるが、いずれか一方の工程が先に行われてもよい。
【0053】
微細気泡含有液体生成工程22では、微細気泡発生装置2を用いて液体にガスを微細気泡状態で含有させ、微細気泡含有液体を生成する。
【0054】
溶存酸素除去工程23では、分離容器5に微細気泡含有液体を収納し、微細気泡によって溶存酸素を吸着させ、微細気泡含有液体の溶存酸素濃度を所定濃度以下にする工程である。本実施形態において、分離容器5と微細気泡含有液体を生成する容器は同一のものであるため、この溶存酸素除去工程23は、微細気泡含有液体生成工程22と略同時に開始される。
【0055】
微細気泡含有液体の溶存酸素濃度をどの程度にするは、その液体によって異なるが、例えば飲料の場合には、溶存酸素濃度を1ppm以下にすることが望ましく、この溶存酸素濃度以下となるように微細気泡を含有させ、分離容器にて溶存酸素を分離する。
【0056】
本実施形態においては、溶存酸素除去工程23において、分離容器5内の液体を循環ライン14により循環させ、溶存酸素濃度を低下させる循環工程24を行う。
【0057】
この循環工程24では、分離容器5にて溶存酸素を分離し、溶存酸素濃度が低下した微細気泡含有液体を液体供給ライン3へ循環させ、混合器9においてガスを再度混合してノズル部10から噴射することで、溶存酸素濃度が低下した微細気泡含有液体に高濃度の微細気泡をさらに含有させることで、溶存酸素濃度をさらに低下させることができる。
【0058】
このように溶存酸素除去工程23で溶存酸素濃度を所定以下とした分離液体は、分離液体供給ライン6等を介して外部に提供される。
【0059】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、
図7乃至
図10に示す本発明を実施するための異なる形態について説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0060】
図7及び
図8に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、公知の微細気泡発生装置2Aを用い、前記微細気泡発生装置2Aに接続された微細気泡含有液体供給ライン25を介して分離容器5に微細気泡含有液体を供給する溶存酸素除去装置1Aにするとともに、微細気泡含有液体生成工程22後に微細気泡発生装置2Aとは独立した分離容器5にて溶存酸素の除去を行う溶存酸素除去工程23Aを行う溶存酸素除去方法19Aにした点で、このような溶存酸素除去装置1A及び溶存酸素除去方法19Aにしても前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0061】
付言すると、本実施形態の分離容器5は、微細気泡発生装置2Aで微細気泡を含有させた微細気泡含有液体を収納可能で、微細気泡に溶存酸素を吸着させて脱酸素処理を行うもので、この分離容器5の内部にはノズル部10等は設けられていない。
【0062】
図9及び
図10に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、公知の微細気泡発生装置2Aを用いるとともに、循環ライン14を有さない溶存酸素除去装置1Bにするとともに、循環工程24を行わない溶存酸素除去工程23Bを含む溶存酸素除去方法19Bにした点で、このような溶存酸素除去装置1B及び溶存酸素除去方法19Bにしても前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は微細気泡を用いて液体中の溶存酸素を除去する産業に利用される。
【符号の説明】
【0064】
1、1A、1B:溶存酸素装置、 2、2A:微細気泡発生装置、
3:液体供給ライン、 4:ガス供給ライン、
5:分離容器5:分離液体供給ライン、
7:液体供給源、 8:ガス供給源、
9:混合器、 10:ノズル部、
11:混合流体供給ライン、 12:昇圧ポンプ、
13:排出部、 14:循環ライン、
15:循環管路、 16:循環ポンプ、
17:絞り部、 18:仕切弁、
19、19A、19B:溶存酸素除去方法、
20:液体供給工程、 21:ガス供給工程、
22:微細気泡含有液体生成工程、
23、23A、23B:溶存酸素除去工程、
24:循環工程、 25:微細気泡含有液体供給ライン。