(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】人力駆動車用の制御装置
(51)【国際特許分類】
B62M 6/50 20100101AFI20250317BHJP
B62M 25/08 20060101ALI20250317BHJP
B62K 25/08 20060101ALI20250317BHJP
B62J 1/00 20060101ALI20250317BHJP
【FI】
B62M6/50
B62M25/08
B62K25/08 A
B62J1/00 C
(21)【出願番号】P 2020219527
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】謝花 聡
(72)【発明者】
【氏名】井上 暁
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 信吾
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-268854(JP,A)
【文献】特開2013-047085(JP,A)
【文献】特開2020-001566(JP,A)
【文献】特開2013-216176(JP,A)
【文献】特開2018-070001(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02724925(EP,A1)
【文献】中国実用新案第207274902(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/50
B62M 25/08
B62K 25/08
B62J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車に推進力を付与するモータを制御する制御部を備え、
前記人力駆動車は、変速機を含み、
前記変速機は、前記人力駆動車において人力駆動力の伝達経路に設けられ、かつ、変速比を変更するように構成され、
前記制御部は、前記変速機の現在の前記変速比に関する第1情報と、前記人力駆動車の第1走行状態および前記人力駆動車の第1走行環境の少なくとも1つに対応する前記変速比に関する第2情報とが異なる場合、
前記モータによるアシストレベル、前記モータの出力の最大値、および、前記モータの出力の少なくとも1つを増加させる第1処
理を実行する、制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1情報と、前記第2情報とが異なる場合、かつ、前記第1処理を実行しない場合、前記モータによる前記アシストレベル、前記モータの出力の最大値、および、前記モータの出力の前記少なくとも1つを減少させる第2処理を実行する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1情報と、前記第2情報とが異なる場合、前記人力駆動車の第2走行状態および前記人力駆動車の第2走行環境の少なくとも1つに応じて、前記第1処理または前記第2処理を実行する、請求項
2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記変速機を制御するように構成され、
前記第1情報が前記第2情報とは異なる場合、前記第1情報が、前記第2情報に一致するように前記変速機を制御する、請求項1
から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記変速機を制御するように構成され、
前記第1情報が前記第2情報とは異なる場合、前記第1情報が、前記第2情報に一致するように前記変速機を制御する第3処理を実行し、
前記第1処理を実行する場合、前記第1処理を実行した後に前記第3処理を実行し、前記第1情報が、前記第2情報に一致すると、前記第2処理を実行し、
前記第2処理を実行する場合、前記第2処理を実行した後に前記第3処理を実行し、前記第1情報が、前記第2情報に一致すると、前記第1処理を実行する、請求項
2または
3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記変速機を制御するように構成され、
前記第1情報が前記第2情報とは異なる場合、前記第1情報が、前記第2情報に一致するように前記変速機を制御する第3処理を実行し、
前記第1情報が前記第2情報とは異なる場合、前記人力駆動車の第3走行状態および前記人力駆動車の第3走行環境の少なくとも1つに応じて、前記第1処理および前記第3処理の順番、または、前記第2処理および前記第3処理の順番を変更するように構成される、請求項
2または
3に記載の制御装置。
【請求項7】
人力駆動車用の制御装置であって、
人力駆動車に推進力を付与するモータ、および、前記人力駆動車において人力駆動力の伝達経路に設けられ、かつ、変速比を変更する変速機を制御するように構成される制御部を含み、
前記制御部は、
前記モータの制御状態および前記変速比の両方を変更する場合、前記人力駆動車の第4走行状態および前記人力駆動車の第4走行環境の少なくとも1つに応じて、前記モータの制御状態を変更する第1変更処理と、前記変速比を変更する第2変更処理との順番を変更する、制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記人力駆動車の車速の減少に応じて、前記モータによるアシストレベル、前記モータの出力の最大値、および、前記モータの出力の少なくとも1つを増加させる、請求項
7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記人力駆動車の車速の減少に応じて、前記モータによるアシストレベル、前記モータの出力の最大値、および、前記モータの出力の少なくとも1つを減少させる、請求項
7に記載の制御装置。
【請求項10】
前記人力駆動車の第4走行状態および前記人力駆動車の第4走行環境の少なくとも1つは、前記人力駆動車の車速に関する情報を含む、請求項
7から
9のいずれか一項に制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記モータの制御状態および前記変速比の両方を変更する場合、かつ、前記人力駆動車の車速が減少する場合、前記モータの制御状態を変更した後、前記変速機によって前記変速比を変更させる、請求項
10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記モータの制御状態および前記変速比の両方を変更する場合、かつ、前記人力駆動車の車速が減少する場合、前記変速比を変更した後、前記モータの制御状態を変更する、請求項
10に記載の制御装置。
【請求項13】
前記人力駆動車の車速が減速する前記場合は、前記人力駆動車の進行方向における前記人力駆動車の減速度が第1減速度以上になる場合を含む、請求項
11または
12に記載の制御装置。
【請求項14】
人力駆動車用の制御装置であって、
人力駆動車に推進力を付与するモータと、前記人力駆動車の人力駆動力の伝達経路に設けられ、かつ、変速比を変更する変速機と、を制御するように構成される制御部を含み、
前記制御部は、
第1変速条件が満たされる場合、前記モータによるアシストレベルを減少させた状態、または、前記モータによる
前記アシストレベルを維持した状態において、前記変速機によって前記変速比を変更させ、
前記第1変速条件とは異なる第2変速条件が満たされる場合、前記モータによる前記アシストレベルを増加させた状態において、前記変速機によって前記変速比を変更させる、制御装置。
【請求項15】
前記第1変速条件および前記第2変速条件の一方は、前記人力駆動車の車速が減少する場合に満たされる、請求項
14に記載の制御装置。
【請求項16】
前記第1変速条件および前記第2変速条件の少なくとも1つは、前記人力駆動車の進行方向における前記人力駆動車の減速度が、第2減速度以上の場合に満たされる、請求項
14または
15に記載の制御装置。
【請求項17】
前記第1変速条件および前記第2変速条件の他方は、前記人力駆動車の進行方向における前記人力駆動車の減速度が、第2減速度未満の場合に満たされる、請求項
15または
16に記載の制御装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記人力駆動車の車速に関する情報に応じて、前記人力駆動車用のコンポーネントを制御するように構成され、
前記コンポーネントは、
少なくとも1つのサスペンション装置、および、
アジャスタブルシートポストの少なくとも1つを含む、請求項1から
17のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項19】
前記コンポーネントは、前記少なくとも1つのサスペンション装置を含み、
前記少なくとも1つのサスペンション装置は、フロントサスペンション装置を含み、
前記制御部は、前記人力駆動車の進行方向における前記人力駆動車の減速度が第3減速度以上の場合、前記フロントサスペンション装置の硬さを増加させるように前記フロントサスペンション装置を制御する、請求項
18に記載の制御装置。
【請求項20】
前記コンポーネントは、前記アジャスタブルシートポストを含み、
前記制御部は、前記人力駆動車の進行方向における前記人力駆動車の減速度が第4減速度以上の場合、前記アジャスタブルシートポストの長さを減少させるように前記アジャスタブルシートポストを制御する、請求項
19に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人力駆動車用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている人力駆動車用の制御装置は、人力駆動力に対するモータによるアシスト力の比率が予め定める比率になるようにモータを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的の1つは、人力駆動車に推進力を付与するモータを好適に制御する人力駆動車用の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車に推進力を付与するモータを制御する制御部を備え、前記人力駆動車は、変速機を含み、前記変速機は、前記人力駆動車において人力駆動力の伝達経路に設けられ、かつ、変速比を変更するように構成され、前記制御部は、前記変速機の現在の前記変速比に関する第1情報と、前記人力駆動車の第1走行状態および前記人力駆動車の第1走行環境の少なくとも1つに対応する前記変速比に関する第2情報と、が異なる場合、前記モータによるアシストレベル、前記モータの出力の最大値、および、前記モータの出力の少なくとも1つを増加させる第1処理、または、前記モータによるアシストレベル、前記モータの出力の最大値、および、前記モータの出力の前記少なくとも1つを減少させる第2処理、を実行する。
第1側面の制御装置によれば、現在の変速比と、第1走行状態および第1走行環境の少なくとも1つに対応する変速比と、に応じて、第1処理または第2処理を実行することによって、人力駆動車に推進力を付与するモータを好適に制御できる。
【0006】
本開示の第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記制御部は、前記第1情報と、前記第2情報とが異なる場合、前記人力駆動車の第2走行状態および前記人力駆動車の第2走行環境の少なくとも1つに応じて、前記第1処理または前記第2処理を実行する。
第2側面の制御装置によれば、人力駆動車に推進力を付与するモータをさらに好適に制御できる。
【0007】
本開示の第1または第2側面に従う第3側面の制御装置において、前記制御部は、前記変速機を制御するように構成され、前記第1情報が前記第2情報とは異なる場合、前記第1情報が、前記第2情報に一致するように前記変速機を制御する。
第3側面の制御装置によれば、第1走行状態および第1走行環境の少なくとも1つに対して好適な変速比に変更できる。
【0008】
本開示の第1または第2側面に従う第4側面の制御装置において、前記制御部は、前記変速機を制御するように構成され、前記第1情報が前記第2情報とは異なる場合、前記第1情報が、前記第2情報に一致するように前記変速機を制御する第3処理を実行し、前記第1処理を実行する場合、前記第1処理を実行した後に前記第3処理を実行し、前記第1情報が、前記第2情報に一致すると、前記第2処理を実行し、前記第2処理を実行する場合、前記第2処理を実行した後に前記第3処理を実行し、前記第1情報が、前記第2情報に一致すると、前記第1処理を実行する。
第4側面の制御装置によれば、変速前に、モータによるアシストレベル、モータの出力の最大値、および、モータの出力の少なくとも1つが増加する場合は、変速後に、モータによるアシストレベル、モータの出力の最大値、および、モータの出力の少なくとも1つを減少させる。第4側面の制御装置によれば、変速前に、モータによるアシストレベル、モータの出力の最大値、および、モータの出力の少なくとも1つが減少する場合は、変速後に、モータによるアシストレベル、モータの出力の最大値、および、モータの出力の少なくとも1つを増加させる。
【0009】
本開示の第1または第2側面に従う第5側面の制御装置において、前記制御部は、前記変速機を制御するように構成され、前記第1情報が前記第2情報とは異なる場合、前記第1情報が、前記第2情報に一致するように前記変速機を制御する第3処理を実行し、前記第1情報が前記第2情報とは異なる場合、前記人力駆動車の第3走行状態および前記人力駆動車の第3走行環境の少なくとも1つに応じて、前記第1処理および前記第3処理の順番、または、前記第2処理および前記第3処理の順番を変更するように構成される。
第5側面の制御装置によれば、第3走行状態および第3走行環境の少なくとも1つに対して好適な順番によって、モータおよび変速機を制御できる。
【0010】
本開示の第6側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、人力駆動車に推進力を付与するモータ、および、前記人力駆動車において人力駆動力の伝達経路に設けられ、かつ、変速比を変更する変速機を制御するように構成される制御部を含み、前記制御部は、前記モータの制御状態および前記変速比の両方を変更する場合、前記人力駆動車の第4走行状態および前記人力駆動車の第4走行環境の少なくとも1つに応じて、前記モータの制御状態を変更する第1変更処理と、前記変速比を変更する第2変更処理との順番を変更する。
第6側面の制御装置によれば、第4走行状態および第4走行環境の少なくとも1つに対して好適な順番によって、モータおよび変速機を制御できる。
【0011】
本開示の第6側面に従う第7側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の車速の減少に応じて、前記モータによるアシストレベル、前記モータの出力の最大値、および、前記モータの出力の少なくとも1つを増加させる。
第7側面の制御装置によれば、人力駆動車の車速の減少する場合に、モータによるアシストレベル、モータの出力の最大値、および、モータの出力の少なくとも1つが増加するため、ライダの負荷を低減できる。
【0012】
本開示の第6側面に従う第8側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の車速の減少に応じて、前記モータによるアシストレベル、前記モータの出力の最大値、および、前記モータの出力の少なくとも1つを減少させる。
第8側面の制御装置によれば、人力駆動車の車速の減少する場合に、モータによるアシストレベル、モータの出力の最大値、および、モータの出力の少なくとも1つが減少するため、ライダが人力駆動車を停止させやすくなる。
【0013】
本開示の第6から第8側面のいずれか1つに従う第9側面の制御装置において、前記人力駆動車の第4走行状態および前記人力駆動車の第4走行環境の少なくとも1つは、前記人力駆動車の車速に関する情報を含む。
第9側面の制御装置によれば、人力駆動車の車速に対して好適な順番によって、モータの制御状態を変更する第1変更処理と、変速比を変更する第2変更処理とを実行できる。
【0014】
本開示の第9側面に従う第10側面の制御装置において、前記制御部は、前記モータの制御状態および前記変速比の両方を変更する場合、かつ、前記人力駆動車の車速が減少する場合、前記モータの制御状態を変更した後、前記変速機によって前記変速比を変更させる。
第10側面の制御装置によれば、車速が減少する場合、モータの制御状態を変更した後、変速機によって変速比を変更させるため、ライダの負荷を低減できる。
【0015】
本開示の第9側面に従う第11側面の制御装置において、前記制御部は、前記モータの制御状態および前記変速比の両方を変更する場合、かつ、前記人力駆動車の車速が減少する場合、前記変速比を変更した後、前記モータの制御状態を変更する。
第11側面の制御装置によれば、車速が減少する場合、変速比を変更した後、モータの制御状態を変更するため、変速機の変速動作にモータが与える影響を低減できる。
【0016】
本開示の第10または第11側面に従う第12側面の制御装置において、前記人力駆動車の車速が減速する前記場合は、前記人力駆動車の進行方向における前記人力駆動車の減速度が第1減速度以上になる場合を含む。
第12側面の制御装置によれば、人力駆動車の進行方向における人力駆動車の減速度が第1減速度以上の場合に、モータの制御状態を変更する第1変更処理と、変速比を変更する第2変更処理とが実行されるので、走破性を向上できる。
【0017】
本開示の第13側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、人力駆動車に推進力を付与するモータと、前記人力駆動車の人力駆動力の伝達経路に設けられ、かつ、変速比を変更する変速機と、を制御するように構成される制御部を含み、前記制御部は、第1変速条件が満たされる場合、前記モータによるアシストレベルを減少させた状態、または、前記モータによるアシストレベルを維持した状態において、前記変速機によって前記変速比を変更させ、前記第1変速条件とは異なる第2変速条件が満たされる場合、前記モータによる前記アシストレベルを増加させた状態において、前記変速機によって前記変速比を変更させる。
第13側面の制御装置によれば、第1変速条件が満たされる場合と、第2変速条件が満たされる場合と、のそれぞれにおいて、モータによるアシストレベル、モータの出力の最大値、および、モータの出力の少なくとも1つを好適な状態として、変速比を変更できる。
【0018】
本開示の第13側面に従う第14側面の制御装置において、前記第1変速条件および前記第2変速条件の一方は、前記人力駆動車の車速が減少する場合に満たされる。
第14側面の制御装置によれば、車速が減少する場合に、第1変速条件が満たされる場合と、第2変速条件が満たされる場合とのそれぞれにおいて、モータによるアシストレベル、モータの出力の最大値、および、モータの出力の少なくとも1つを好適な状態として、変速比を変更できる。
【0019】
本開示の第13または第14側面に従う第15側面の制御装置において、前記第1変速条件および前記第2変速条件の少なくとも1つは、前記人力駆動車の進行方向における前記人力駆動車の減速度が、第2減速度以上の場合に満たされる。
第15側面の制御装置によれば、人力駆動車の進行方向における人力駆動車の減速度が、第2減速度以上の場合に、モータを適切な制御状態として、変速比を変更できる。
【0020】
本開示の第14または第15側面に従う第16側面の制御装置において、前記第1変速条件および前記第2変速条件の他方は、前記人力駆動車の進行方向における前記人力駆動車の減速度が、第2減速度未満の場合に満たされる。
第16側面の制御装置によれば、人力駆動車の進行方向における人力駆動車の減速度が、第2減速度未満の場合に、モータを適切な制御状態として、変速比を変更できる。
【0021】
本開示の第1から第16側面のいずれか1つに従う第17側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の車速に関する情報に応じて、前記人力駆動車用のコンポーネントを制御するように構成され、前記コンポーネントは、少なくとも1つのサスペンション装置、および、アジャスタブルシートポストの少なくとも1つを含む。
第17側面の制御装置によれば、人力駆動車の速度に関する情報に応じて、少なくとも1つのサスペンション装置、および、アジャスタブルシートポストの少なくとも1つを制御できる。
【0022】
本開示の第17側面に従う第18側面の制御装置において、前記コンポーネントは、前記少なくとも1つのサスペンション装置を含み、前記少なくとも1つのサスペンション装置は、フロントサスペンション装置を含み、前記制御部は、前記人力駆動車の進行方向における前記人力駆動車の減速度が第3減速度以上の場合、前記フロントサスペンション装置の硬さを増加させるように前記フロントサスペンション装置を制御する。
第18側面の制御装置によれば、人力駆動車の進行方向における人力駆動車の減速度が第3減速度以上の場合、フロントサスペンション装置の硬さが増加するので、人力駆動車の姿勢が安定しやすい。
【0023】
本開示の第18側面に従う第19側面の制御装置において、前記コンポーネントは、前記アジャスタブルシートポストを含み、前記制御部は、前記人力駆動車の進行方向における前記人力駆動車の減速度が第4減速度以上の場合、前記アジャスタブルシートポストの長さを減少させるように前記アジャスタブルシートポストを制御する。
第19側面の制御装置によれば、人力駆動車の進行方向における人力駆動車の減速度が第4減速度以上の場合、アジャスタブルシートポストの長さが減少するので、ライダが足を地面につけやすくなる。
【発明の効果】
【0024】
本開示の人力駆動車用の制御装置は、モータを好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の側面図。
【
図2】第1実施形態の人力駆動車用の制御装置、を含む人力駆動車の電気的な構成を示すブロック図。
【
図3】
図2の制御部によって実行され、モータおよび変速機を制御する処理のフローチャート。
【
図4】第2実施形態の制御部によって実行され、モータおよび変速機を制御する処理のフローチャート。
【
図5】第3実施形態の制御部によって実行され、モータおよび変速機を制御する処理のフローチャート。
【
図6】第4実施形態の制御部によって実行され、モータおよび変速機を制御する処理のフローチャート。
【
図7】第5実施形態の人力駆動車用の制御装置、を含む人力駆動車の電気的な構成を示すブロック図。
【
図8】
図7の制御部によって実行され、サスペンション装置を制御する処理のフローチャート。
【
図9】
図7の制御部によって実行され、アジャスタブルシートポストを制御する処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
図1から
図3を参照して、第1実施形態の人力駆動車用の制御装置70が説明される。人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力Hによって駆動できる乗り物である。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、および、ハンドバイク、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車10が有する車輪の数は限定されない。人力駆動車10は、例えば1輪車および3輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車10は、人力駆動力Hのみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車10は、人力駆動力Hだけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するイーバイク(E-bike)を含む。イーバイクは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10を、電動アシスト自転車、かつ、マウンテンバイクとして説明する。
【0027】
人力駆動車10は、人力駆動力Hが入力されるクランク12を備える。人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪14と、車体16と、をさらに備える。少なくとも1つの車輪14は、後輪14Aと、前輪14Bと、を含む。車体16は、フレーム18を含む。クランク12は、フレーム18に対して回転可能な入力軸12Aと、入力軸12Aの軸方向の第1端部に設けられる第1クランクアーム12Bと、入力軸12Aの軸方向の第2端部に設けられる第2クランクアーム12Cと、を含む。本実施形態において、入力軸12Aは、クランク軸である。第1クランクアーム12Bには、第1ペダル20Aが連結される。第2クランクアーム12Cには、第2ペダル20Bが連結される。
【0028】
駆動機構22は、入力軸12Aに連結される第1回転体24を含む。入力軸12Aと第1回転体24とは、相対回転不能に連結されてもよく、第1ワンウェイクラッチを介して連結されていてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランク12が前転した場合に、第1回転体24を前転させ、クランク12が後転した場合に、クランク12と第1回転体24との相対回転を許容するように構成される。第1回転体24は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。駆動機構22は、第2回転体26と、連結部材28とをさらに含む。連結部材28は、第1回転体24の回転力を第2回転体26に伝達する。連結部材28は、例えば、チェーン、ベルト、または、シャフトを含む。
【0029】
第2回転体26は、後輪14Aに連結される。第2回転体26は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。第2回転体26と後輪14Aとの間には、好ましくは、第2ワンウェイクラッチが設けられている。第2ワンウェイクラッチは、第2回転体26が前転する場合に、後輪14Aを前転させ、第2回転体26が後転する場合に、第2回転体26と後輪14Aとの相対回転を許容するように構成される。
【0030】
フレーム18には、フロントフォーク30を介して前輪14Bが取り付けられる。フロントフォーク30には、ハンドルバー34がステム32を介して連結される。本実施形態では、後輪14Aが駆動機構22によってクランク12に連結されるが、後輪14Aおよび前輪14Bの少なくとも1つが、駆動機構22によってクランク12に連結されてもよい。
【0031】
人力駆動車10は、バッテリ36をさらに含む。バッテリ36は、1または複数のバッテリ素子を含む。バッテリ素子は、充電池を含む。バッテリ36は、制御装置70に電力を供給するように構成される。バッテリ36は、好ましくは、制御装置70の制御部72と電気ケーブルまたは無線通信装置を介して通信可能に接続される。バッテリ36は、例えば電力線通信(PLC;power line communication)、CAN(Controller Area Network)、または、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)によって制御部72と通信可能である。
【0032】
人力駆動車10は、人力駆動車10に推進力を付与するように構成されるモータ38を含む。モータ38は、少なくとも1つの電気モータを含む。電気モータは、例えば、ブラシレスモータである。モータ38は、ペダル20A,20Bから後輪14Aまでの人力駆動力Hの動力伝達経路、および、前輪14Bの少なくとも1つに回転力を伝達するように構成される。ペダル20A,20Bから後輪14Aまでの人力駆動力Hの動力伝達経路には、後輪14Aも含まれる。本実施形態では、モータ38は、人力駆動車10のフレーム18に設けられ、第1回転体24に回転力を伝達するように構成される。
【0033】
モータ38は、ハウジング40Aに設けられる。ハウジング40Aは、フレーム18に設けられる。ハウジング40Aは、例えばフレーム18に着脱可能に取り付けられる。モータ38およびモータ38が設けられるハウジング40Aを含んで、ドライブユニット40が構成される。ドライブユニット40には、モータ38の出力軸に接続される減速機が設けられてもよい。本実施形態では、ハウジング40Aは、入力軸12Aを回転可能に支持する。本実施形態では、モータ38と入力軸12Aとの間の動力伝達経路には、好ましくは、入力軸12Aを人力駆動車10が前進する方向に回転させた場合にクランク12の回転力のモータ38への伝達を抑制する第3ワンウェイクラッチが設けられる。後輪14Aおよび前輪14Bの少なくとも1つにモータ38を設ける場合、モータ38は、ハブに設けられて、ハブと共にハブモータを構成してもよい。
【0034】
制御装置70は、制御部72を含む。制御部72は、予め定める制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。制御部72に含まれる演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。制御部72に含まれる演算処理装置は、相互に離れた複数の場所に設けられてもよい。例えば、演算処理装置の一部は、人力駆動車10に設けられ、演算処理装置の他の一部は、インターネットに接続されるサーバに設けられてもよい。演算処理装置が、相互に離れた複数の場所に設けられる場合、演算処理装置の各部分は、無線通信装置を介して相互に通信可能に接続される。制御部72は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。
【0035】
好ましくは、制御装置70は、記憶部74をさらに含む。記憶部74には、制御プログラムおよび制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部74は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、および、フラッシュメモリの少なくとも1つを含む。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random access memory)を含む。
【0036】
制御装置70は、好ましくは、モータ38の駆動回路76をさらに備える。駆動回路76と、制御部72とは、好ましくは、ドライブユニット40のハウジング40Aに設けられる。駆動回路76と、制御部72とは、例えば同一の回路基板に設けられてもよい。駆動回路76は、インバータ回路を含む。駆動回路76は、バッテリ36からモータ38に供給される電力を制御する。駆動回路76は、制御部72と、導電線、電気ケーブルまたは無線通信装置などを介して接続される。駆動回路76は、制御部72からの制御信号に応じてモータ38を駆動させる。
【0037】
好ましくは、人力駆動車10は、車速センサ42をさらに含む。好ましくは、人力駆動車10は、クランク回転センサ44、および、人力駆動力検出部46の少なくとも1つをさらに含む。
【0038】
車速センサ42は、人力駆動車10の車速Vに関する情報を検出するように構成される。本実施形態では、車速センサ42は、人力駆動車10の少なくとも1つの車輪14の回転速度CWに関する情報を検出するように構成される。車速センサ42は、例えば、人力駆動車10の少なくとも1つの車輪14に設けられる磁石を検出するように構成される。車速センサ42は、例えば、少なくとも1つの車輪14のうちの1つの車輪14が1回転する間に、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、1である。車速センサ42は、車輪14の回転速度CWに応じた信号を出力する。制御部72は、車輪14の回転速度CWに応じた信号と、車輪14の周長に関する情報とに基づいて人力駆動車10の車速Vを算出できる。記憶部74には車輪14の周長に関する情報が記憶される。
【0039】
車速センサ42は、例えばリードスイッチを構成する磁性リード、または、ホール素子などの磁気センサを含む。車速センサ42は、人力駆動車10のフレーム18のチェーンステイに取り付けられ、後輪14Aに取り付けられる磁石を検出する構成としてもよく、フロントフォーク30に設けられ、前輪14Bに取り付けられる磁石を検出する構成としてもよい。本実施形態において、車速センサ42は、車輪14が一回転した場合に、リードスイッチが磁石を1回検出するように構成される。車速センサ42は、人力駆動車10の車速Vに関する情報を取得できればどのような構成であってもよく、車輪14に設けられる磁石を検出する構成に限らず、例えば、ディスクブレーキに設けられるスリットを検出するように構成されてもよく、光学センサなどを含んで構成されてもよく、GPS(Global Positioning System)受信機を含んで構成されてもよい。車速センサ42がGPS受信器を含む場合、制御部72は、時間と移動距離とに応じて車速Vを算出できる。車速センサ42は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。
【0040】
クランク回転センサ44は、入力軸12Aの回転速度NCに関する情報を検出するように構成される。クランク回転センサ44は、例えば、人力駆動車10のフレーム18またはドライブユニット40に設けられる。クランク回転センサ44は、ドライブユニット40のハウジング40Aに設けられてもよい。クランク回転センサ44は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含んで構成される。周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石が、入力軸12A、入力軸12Aに連動して回転する部材、または、入力軸12Aから第1回転体24までの間の動力伝達経路に設けられる。入力軸12Aに連動して回転する部材は、モータ38の出力軸を含んでもよい。
【0041】
クランク回転センサ44は、入力軸12Aの回転速度NCに応じた信号を出力する。例えば、入力軸12Aと第1回転体24との間に第1ワンウェイクラッチが設けられない場合、磁石は、第1回転体24に設けられてもよい。クランク回転センサ44は、入力軸12Aの回転速度NCに関する情報を取得できればどのような構成であってもよく、磁気センサに代えて光学センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、またはトルクセンサなどを含んでいてもよい。クランク回転センサ44は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。
【0042】
人力駆動力検出部46は、人力駆動力Hに関する情報を検出するように構成される。人力駆動力検出部46は、例えば、人力駆動車10のフレーム18、ドライブユニット40、クランク12、または、ペダル20A,20Bに設けられる。人力駆動力検出部46は、ドライブユニット40のハウジング40Aに設けられてもよい。人力駆動力検出部46は、例えば、トルクセンサを含む。トルクセンサは、人力駆動力Hによってクランク12に与えられるトルクに応じた信号を出力するように構成される。トルクセンサは、例えば、動力伝達経路に第1ワンウェイクラッチが設けられる場合、好ましくは、第1ワンウェイクラッチよりも動力伝達経路の上流側に設けられる。トルクセンサは、歪センサ、磁歪センサ、または、圧力センサなどを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。
【0043】
トルクセンサは、動力伝達経路に含まれる部材、または、動力伝達経路に含まれる部材の近傍に設けられる。動力伝達経路に含まれる部材は、例えば、入力軸12A、入力軸12Aと第1回転体24との間において人力駆動力Hを伝達する部材、クランクアーム12B,12C、または、ペダル20A,20Bである。人力駆動力検出部46は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。人力駆動力検出部46は、人力駆動力Hに関する情報を取得できればどのような構成であってもよく、例えば、ペダル20A,20Bに与えられる圧力を検出するセンサ、または、チェーンの張力を検出するセンサなどを含んでいてもよい。
【0044】
制御部72は、人力駆動車10に推進力を付与するモータ38を制御するように構成される。好ましくは、制御部72は、人力駆動車10に入力される人力駆動力Hに応じてモータ38を制御するように構成される。人力駆動力Hは、トルクによって表されてもよく、仕事率によって表されてもよい。
【0045】
制御部72は、例えば、モータ38によるアシストレベルAが、予め定めるアシストレベルAになるようにモータ38を制御するように構成される。アシストレベルAは、人力駆動力Hに対するモータ38によるアシスト力の比率、または、クランク12の回転速度に対するモータ38によるアシスト力の比率を含む。人力駆動力Hに対するモータ38によるアシスト力の比率を、アシスト比率と記載する場合がある。制御部72は、例えば、人力駆動力Hに対して、モータ38によるアシスト力が予め定める比率になるように、モータ38を制御するように構成される。人力駆動力Hは、ユーザがクランク12を回転させることによって発生する人力駆動車10の推進力に対応する。アシスト力は、モータ38によって発生する人力駆動車10の推進力に対応する。予め定める比率は、一定ではなく、例えば、人力駆動力Hに応じて変化してもよく、入力軸12Aの回転速度NCに応じて変化してもよく、車速Vに応じて変化してもよく、人力駆動力H、入力軸12Aの回転速度NC、および、車速Vのうちのいずれか2つ、または、全てに応じて変化してもよい。
【0046】
人力駆動力Hおよびアシスト力をトルクによって表わす場合、人力駆動力Hを人力トルクHTと記載し、アシスト力をアシストトルクMTと記載する。人力駆動力Hおよびアシスト力を仕事率によって表わす場合、人力駆動力Hを人力仕事率HWと記載し、アシスト力をアシスト仕事率MWと記載する。比率は、人力駆動車10の人力トルクHTに対するアシストトルクMTのトルク比率であってもよく、人力仕事率HWに対するモータ38によるアシスト仕事率MWの比率であってもよい。
【0047】
本実施形態のドライブユニット40では、クランク12が変速機を介さずに第1回転体24に接続され、かつ、モータ38の出力Mが第1回転体24に入力される。クランク12が変速機を介さずに第1回転体24に接続され、かつ、モータ38の出力Mが第1回転体24に入力される場合、人力駆動力Hは、ユーザがクランク12を回転させることによって第1回転体24に入力される駆動力に対応する。クランク12が変速機を介さずに第1回転体24に接続され、かつ、モータ38の出力Mが第1回転体24に入力される場合、アシスト力は、モータ38が回転することによって第1回転体24に入力される駆動力に対応する。モータ38の出力Mが減速機を介して第1回転体24に入力される場合は、アシスト力は、減速機の出力に対応する。
【0048】
後輪14Aにモータ38が設けられる場合、人力駆動力Hは、ユーザのみによって駆動される後輪14Aの出力に対応する。後輪14Aにモータ38が設けられる場合、アシスト力は、モータ38のみによって駆動される後輪14Aの出力に対応する。前輪14Bにモータ38が設けられる場合、人力駆動力Hは、ユーザのみによって駆動される後輪14Aの出力に対応する。前輪14Bにモータ38が設けられる場合、アシスト力は、モータ38のみによって駆動される前輪14Bの出力に対応する。
【0049】
制御部72は、アシスト力が最大値Mmax以下になるようにモータ38を制御するように構成される。モータ38の出力Mが第1回転体24に入力され、かつ、アシスト力がトルクによって表される場合、制御部72は、アシストトルクMTが最大値MTX以下になるようにモータ38を制御するように構成される。好ましくは、最大値MTXは、20Nm以上200Nm以下の範囲の値である。モータ38の出力Mが第1回転体24に入力され、かつ、アシスト力が仕事率によって表される場合、制御部72は、アシスト仕事率MWが最大値MWX以下になるようにモータ38を制御するように構成される。
【0050】
好ましくは、人力駆動車10は、加速度検出部48を備える。加速度検出部48は、人力駆動車10が前進する方向における加速度に応じた信号を出力するように構成される。加速度検出部48は、加速度センサを含んでいてもよく、車速センサ42を含んでいてもよい。加速度検出部48は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。加速度検出部48が車速センサ42を含む場合、制御部72は、車速Vを微分することによって人力駆動車10が前進する方向における加速度に関する情報を取得する。
【0051】
制御部72は、加速度検出部48の出力に応じて、人力駆動車10の進行方向における人力駆動車10の減速度Dを算出するように構成されていてもよい。減速度Dは、減速するほど大きくなる値として表される。減速度Dが大きいほど、人力駆動車10の車速Vは大きく減少する。
【0052】
人力駆動車10は、変速機56を含む。変速機56は、人力駆動車10において人力駆動力Hの伝達経路に設けられ、かつ、変速比Rを変更するように構成される。変速機56は、複数の変速ステージを有する。各変速ステージに対応する変速比Rは、相互に異なる。変速ステージの数は、例えば3から30の範囲である。変速比Rは、入力軸12Aの回転速度NCに対する駆動輪の回転速度の比率である。本実施形態では、駆動輪は後輪14Aである。変速機56は、例えばフロントディレイラ、リアディレイラ、および、内装変速機の少なくとも1つを含む。変速機56が内装変速機を含む場合、内装変速機は、例えば、後輪14Aのハブに設けられる。内装変速機は、CVTを含んでいてもよい。
【0053】
変速機56がフロントディレイラを含む場合、変速機56は、第1回転体24を含み、第1回転体24は、複数のフロントスプロケットを含む。変速機56がリアディレイラを含む場合、変速機56は、第2回転体26を含み、第2回転体26は、複数のリアスプロケットを含む。変速機56は、アクチュエータによって動作するように構成される電動変速機を含む。アクチュエータは、電気アクチュエータを含む。アクチュエータは、例えば、電気モータを含む。変速比Rと、駆動輪の回転速度NWと、入力軸12Aの回転速度NCとの関係は、式(1)によって表される。
式(1):変速比R=回転速度NW/回転速度NC
【0054】
駆動輪の回転速度NWと、入力軸12Aの回転速度NCとは、それぞれ単位時間あたりの回転数であってもよい。駆動輪の回転速度NWを、フロントスプロケットの歯数に置き換え、入力軸12Aの回転速度NCを、リアスプロケットの歯数に置き換えてもよい。
【0055】
制御部72は、変速機56の現在の変速比Rに関する第1情報と、人力駆動車10の第1走行状態および人力駆動車10の第1走行環境の少なくとも1つに対応する変速比Rに関する第2情報と、に応じて、モータ38を制御する。第1走行状態は、例えば、人力駆動車10の車速V、人力駆動車10の進行方向における人力駆動車10の加速度、および、クランク12の回転速度の少なくとも1つを含む。第1走行環境は、人力駆動車10の走行路の斜度、天気、湿度、および、明るさの少なくとも1つを含む。記憶部74には、第1走行状態および第1走行環境の少なくとも1つと、変速比Rとが対応付けられる第3情報が記憶される。第3情報は、例えばテーブルを含む。制御部72は、記憶部74に記憶される第3情報に応じて、第2情報を決定する。表1は、第3情報の一例を示す。表1では、変速比が7段階に変更可能な変速機について示している。表1において、V1<V2<V3<V4<V5<V6<V7である。表1において、R1<R2<R3<R4<R5<R6<R7である。
【0056】
【0057】
好ましくは、人力駆動車10は、変速状態検出部58を備える。変速状態検出部58は、第1情報を検出可能に構成される。変速状態検出部58は、変速機56がディレイラである場合、ディレイラの位置に応じた信号を出力する。変速状態検出部58は、変速操作装置の操作位置に応じた信号を出力するようにしてもよい。変速状態検出部58は、変速操作装置と、変速機56とが、ボーデンケーブルによって接続される場合、ボーデンケーブルの位置と、ボーデンケーブルの動作と、の少なくとも1つに応じた信号を出力するようにしてもよい。変速状態検出部58は、例えば、磁気センサ、光学センサ、または、ポテンショメータを含む。変速状態検出部58は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。
【0058】
好ましくは、制御部72は、第1情報が第2情報とは異なる場合、モータ38によるアシストレベルA、モータ38の出力Mの最大値Mmax、および、モータ38の出力Mの少なくとも1つを増加させる第1処理、または、モータ38によるアシストレベルA、モータ38の出力Mの最大値Mmax、および、モータ38の出力Mの少なくとも1つを減少させる第2処理、を実行する。
【0059】
好ましくは、制御部72は、第1情報と、第2情報とが異なる場合、人力駆動車10の第2走行状態および人力駆動車10の第2走行環境の少なくとも1つに応じて、第1処理または第2処理を実行する。好ましくは、第2走行状態は、第1走行状態と等しい。好ましくは、第2走行環境は、第1走行環境と等しい。制御部72は、第1情報と、第2情報とが異なる場合、人力駆動車10の第1走行状態および人力駆動車10の第1走行環境の少なくとも1つに応じて、第1処理または第2処理を実行する。
【0060】
好ましくは、制御部72は、変速機56を制御するように構成される。好ましくは、制御部72は、第1情報が第2情報とは異なる場合、第1情報が、第2情報に一致するように変速機56を制御する。好ましくは、制御部72は、第1情報が第2情報とは異なる場合、第1情報が、第2情報に一致するように変速機56を制御する第3処理を実行する。
【0061】
好ましくは、制御部72は、第1処理を実行する場合、第1処理を実行した後に第3処理を実行し、第1情報が、第2情報に一致すると、第2処理を実行する。好ましくは、制御部72は、第2処理を実行する場合、第2処理を実行した後に第3処理を実行し、第1情報が、第2情報に一致すると、第1処理を実行する。
【0062】
図3を参照して、制御部72がモータ38を制御する制御状態を切り替える処理が説明される。制御部72は、例えば、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して
図3に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部72は、
図3のフローチャートが終了すると、例えば、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS11からの処理を繰り返す。
【0063】
制御部72は、ステップS11において、第1情報が第2情報と異なるか否かを判定する。制御部72は、第1情報が第2情報と異ならない場合、処理を終了する。制御部72は、第1情報が第2情報と異なる場合、ステップS12に移行する。
【0064】
制御部72は、ステップS12において、第1処理を実行するか否かを判定する。制御部72は、第1処理を実行する場合、ステップS13に移行する。本実施形態では、制御部72は、例えば、第1情報に対応する変速比Rが、第2情報に対応する変速比R未満の場合、第1処理を実行する。この場合、人力駆動車10が急減速した場合に、モータによるアシスト力が不足することが抑制される。制御部72は、例えば、第1情報に対応する変速比Rが、第2情報に対応する変速比Rを超える場合、第1処理を実行してもよい。この場合、理想的な変速比Rよりも実際の変速比Rの方が大きくても、ライダの負荷の増加を抑制できる。
【0065】
制御部72は、ステップS13において、第1処理を実行し、ステップS14に移行する。制御部72は、ステップS14において、第3処理を実行し、ステップS15に移行する。制御部72は、ステップS15において、第1情報が第2情報に一致するか否かを判定する。制御部72は、第1情報が第2情報に一致しない場合、再びステップS15の処理を実行する。制御部72は、第1情報が第2情報に一致すると、ステップS16に移行する。
【0066】
制御部72は、ステップS16において、第2処理を実行し、処理を終了する。好ましくは、制御部72は、ステップS16において、ステップS13の第1処理を実行する前のモータ38によるアシストレベルA、モータ38の出力Mの最大値Mmax、および、モータ38の出力Mの少なくとも1つになるように、モータ38によるアシストレベルA、モータ38の出力Mの最大値Mmax、および、モータ38の出力Mの少なくとも1つを減少させる。好ましくは、制御部72は、ステップS16において、ステップS13の第2処理を実行する直前のモータ38によるアシストレベルA、モータ38の出力Mの最大値Mmax、および、モータ38の出力Mの少なくとも1つになるように、モータ38によるアシストレベルA、モータ38の出力Mの最大値Mmax、および、モータ38の出力Mの少なくとも1つを減少させる。
【0067】
制御部72は、ステップS12において、第1処理を実行しない場合、ステップS18に移行する。制御部72は、ステップS18において、第2処理を実行し、ステップS19に移行する。制御部72は、ステップS19において、第3処理を実行し、ステップS20に移行する。制御部72は、ステップS20において、第1情報が第2情報に一致するか否かを判定する。制御部72は、第1情報が第2情報に一致しない場合、再びステップS20の処理を実行する。制御部72は、第1情報が第2情報に一致すると、ステップS21に移行する。
【0068】
制御部72は、ステップS21において、第1処理を実行し、処理を終了する。好ましくは、制御部72は、ステップS21において、ステップS18の第2処理を実行する前のモータ38によるアシストレベルA、モータ38の出力Mの最大値Mmax、および、モータ38の出力Mの少なくとも1つになるように、モータ38によるアシストレベルA、モータ38の出力Mの最大値Mmax、および、モータ38の出力Mの少なくとも1つを増加させる。
【0069】
<第2実施形態>
図2および
図4を参照して、第2実施形態の制御装置70について説明する。第2実施形態の制御装置70は、
図3のフローチャートの処理に代えて
図4のフローチャートの処理を実行する点以外は第1実施形態の制御装置70と同様の構成を含む。このため、第2実施形態の制御装置70のうちの第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0070】
本実施形態では、制御部72は、第1情報が第2情報とは異なる場合、第1情報が、第2情報に一致するように変速機56を制御する第3処理を実行し、第1情報が第2情報とは異なる場合、人力駆動車10の第3走行状態および人力駆動車10の第3走行環境の少なくとも1つに応じて、第1処理および第3処理の順番、または、第2処理および第3処理の順番を変更するように構成される。
【0071】
好ましくは、人力駆動車10の第3走行状態および人力駆動車10の第3走行環境の少なくとも1つには、人力駆動車10の車速Vに関する情報を含む。制御部72は、モータ38の制御状態および変速比Rの両方を変更する場合、かつ、人力駆動車10の車速Vが減少する場合、モータ38の制御状態を変更した後、変速比Rを変更してもよい。制御部72は、モータ38の制御状態および変速比Rの両方を変更する場合、かつ、人力駆動車10の車速Vが減少する場合、変速比Rを変更した後、モータ38の制御状態を変更させてもよい。好ましくは、人力駆動車10の車速Vが減少する場合は、人力駆動車10の進行方向における人力駆動車10の減速度Dが第1減速度D1以上になる場合を含む。第1減速度D1は、好ましくは、3km/h/秒以上、かつ、8.5km/h/秒以下である。例えば、第1減速度D1は、人力駆動車10が走行している道路が、下り坂から上り坂に急激に変化する場合の減速度Dに応じて設定される。好ましくは、人力駆動車10の車速Vが減速する場合は、第1減速度D1以上かつ第5減速度D5以下の場合を含んでいてもよい。第5減速度D5は、第1減速度D1よりも大きい。第5減速度D5は、例えば、4km/h/秒以上、かつ、7km/h/秒以下である。
【0072】
例えば、制御部72は、第1処理および第3処理を実行する場合、減速度Dが第1減速度D1以上の場合、第1処理を実行してから第3処理を実行し、減速度Dが第1減速度D1よりも小さい場合、第3処理を実行してから第1処理を実行する。例えば、制御部72は、第1処理および第3処理を実行し、かつ、変速比Rを減少するように変速機56を制御する場合、減速度Dが第1減速度D1以上の場合、第1処理を実行してから第3処理を実行し、減速度Dが第1減速度D1よりも小さい場合、第3処理を実行してから第1処理を実行する。
【0073】
例えば、制御部72は、第2処理および第3処理を実行する場合、減速度Dが第1減速度D1以上の場合、第3処理を実行してから第2処理を実行し、減速度Dが第1減速度D1よりも小さい場合、第2処理を実行してから第3処理を実行する。
【0074】
図4を参照して、制御部72がモータ38および変速機56を制御する処理が説明される。制御部72は、例えば、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して
図4に示すフローチャートのステップS31に移行する。制御部72は、
図4のフローチャートが終了すると、例えば、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS31からの処理を繰り返す。
【0075】
制御部72は、ステップS31において、第1情報が第2情報と異なるか否かを判定する。制御部72は、第1情報が第2情報と異ならない場合、処理を終了する。制御部72は、第1情報が第2情報と異なる場合、ステップS32に移行する。
【0076】
制御部72は、ステップS32において、第1処理を実行するか否かを判定する。制御部72は、第1処理を実行する場合、ステップS33に移行する。本実施形態では、制御部72は、例えば、第1情報に対応する変速比Rが、第2情報に対応する変速比R未満の場合、第1処理を実行する。この場合、人力駆動車10が急減速した場合に、モータ38によるアシスト力が不足することが抑制される。制御部72は、例えば、第1情報に対応する変速比Rが、第2情報に対応する変速比Rを超える場合、第1処理を実行してもよい。この場合、理想的な変速比Rよりも実際の変速比Rの方が大きくても、ライダの負荷の増加を抑制できる。
【0077】
制御部72は、ステップS33において、第3走行状態および第3走行環境の少なくとも1つに応じて、第1処理および第3処理の順番を決定し、ステップS34に移行する。
【0078】
制御部72は、ステップS34において、第1処理および第3処理を実行し、ステップS35に移行する。制御部72は、ステップS34において、ステップS33において決定される順番に従って、第1処理および第3処理を実行する。
【0079】
制御部72は、ステップS35において、第1情報が第2情報に一致するか否かを判定する。制御部72は、第1情報が第2情報に一致しない場合、再びステップS35の処理を実行する。制御部72は、第1情報が第2情報に一致すると、ステップS36に移行する。制御部72は、ステップS36において、第2処理を実行し、処理を終了する。ステップS36の処理は、
図3のステップS16と同じ処理であるため、説明を省略する。
【0080】
制御部72は、ステップS32において、第1処理を実行しない場合、ステップS37に移行する。制御部72は、ステップS37において、第3走行状態および第3走行環境の少なくとも1つに応じて、第2処理および第3処理の順番を決定し、ステップS38に移行する。
【0081】
制御部72は、ステップS38において、第2処理および第3処理を実行し、ステップS39に移行する。制御部72は、ステップS39において、ステップS38において決定される順番に従って、第2処理および第3処理を実行する。
【0082】
制御部72は、ステップS39において、第1情報が第2情報に一致するか否かを判定する。制御部72は、第1情報が第2情報に一致しない場合、再びステップS39の処理を実行する。制御部72は、第1情報が第2情報に一致すると、ステップS40に移行する。
【0083】
制御部72は、ステップS40において、第1処理を実行し、処理を終了する。ステップS
40の処理は、
図3のステップS21と同じ処理であるため、説明を省略する。
【0084】
<第3実施形態>
図2および
図5を参照して、第3実施形態の制御装置70について説明する。第3実施形態の制御装置70は、
図3のフローチャートの処理に代えて
図5のフローチャートの処理を実行する点以外は、第
1実施形態の制御装置70と同様の構成を含む。このため、第3実施形態の制御装置70のうちの第1実施形態および第2実施形態と共通する構成については、第1実施形態および第2実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0085】
制御部72は、モータ38および変速機56を制御するように構成される。制御部72は、モータ38の制御状態および変速比Rの両方を変更する場合、人力駆動車10の第4走行状態および人力駆動車10の第4走行環境の少なくとも1つに応じて、モータ38の制御状態を変更する第1変更処理と、変速比Rを変更する第2変更処理との順番を変更する。第1変更処理は、第1処理と同じであってもよい。第2変更処理は、第2処理と同じであってもよい。第4走行状態は、第1走行状態と同じであってもよい。第4走行環境は、第1走行環境と同じであってもよい。
【0086】
例えば、制御部72は、モータ38の制御状態および変速比Rの両方を変更する場合、人力駆動車10の車速Vの減少に応じて、モータ38によるアシストレベルA、モータ38の出力Mの最大値、および、モータ38の出力Mの少なくとも1つを増加させてもよい。
【0087】
例えば、制御部72は、モータ38の制御状態および変速比Rの両方を変更する場合、人力駆動車10の車速Vの減少に応じて、モータ38によるアシストレベルA、モータ38の出力Mの最大値、および、モータ38の出力Mの少なくとも1つを減少させてもよい。
【0088】
好ましくは、人力駆動車10の第4走行状態および人力駆動車10の第4走行環境の少なくとも1つには、人力駆動車10の車速Vに関する情報を含む。制御部72は、モータ38の制御状態および変速比Rの両方を変更する場合、かつ、人力駆動車10の車速Vが減少する場合、モータ38の制御状態を変更した後、変速機56によって変速比Rを変更させる。好ましくは、制御部72は、モータ38の制御状態および変速比Rの両方を変更する場合、かつ、人力駆動車10の車速Vが減少する場合、変速比Rを変更した後、モータ38の制御状態を変更する。好ましくは、人力駆動車10の車速Vが減速する場合は、人力駆動車10の進行方向における人力駆動車10の減速度Dが第1減速度D1以上になる場合を含む。
【0089】
例えば、制御部72は、第1変更処理および第2変更処理を実行する場合、減速度Dが第1減速度D1以上の場合、第1変更処理を実行してから第2変更処理を実行し、減速度Dが第1減速度D1よりも小さい場合、第2変更処理を実行してから第1変更処理を実行する。例えば、制御部72は、第1変更処理および第2変更処理を実行し、かつ、変速比Rを減少するように変速機56を制御する場合、減速度Dが第1減速度D1以上の場合、第1変更処理を実行してから第2変更処理を実行し、減速度Dが第1減速度D1よりも小さい場合、第2変更処理を実行してから第1変更処理を実行する。
【0090】
図5を参照して、制御部72がモータ38および変速機56を制御する処理が説明される。制御部72は、例えば、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して
図5に示すフローチャートのステップS41に移行する。制御部72は、
図5のフローチャートが終了すると、例えば、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS41からの処理を繰り返す。
【0091】
制御部72は、ステップS41において、モータ38の制御状態および変速比Rの両方を変更するか否かを判定する。制御部72は、モータ38の制御状態および変速比Rの両方を変更しない場合、または、モータ38の制御状態および変速比Rの1つのみを変更する場合、処理を終了する。
【0092】
制御部72は、ステップS41において、モータ38の制御状態および変速比Rを変更する場合、ステップS42に移行する。制御部72は、ステップS42において、第4走行状態および第4走行環境の少なくとも1つに応じて、第1変更処理と、第2変更処理との順番を決定し、ステップS43に移行する。
【0093】
制御部72は、ステップS43において、ステップS42において決定された順序に応じて第1変更処理と、第2変更処理とを実行する。制御部72は、ステップS43において、第2変更処理を開始した後、第1情報が第2情報と一致すると、第1変更処理を実行するよりも前のモータ38の制御状態になるようにモータ38の制御状態を変更してもよい。
【0094】
本実施形態において、減速度Dを、減速エネルギに置き換えてもよい。減速エネルギは、1/2×M×V2によって表される。Mは、人力駆動車10の重量であってもよく、人力駆動車10の重量とライダの体重との合計値であってもよい。人力駆動車10の重量に関する情報、または、人力駆動車10の重量とライダの体重との合計値に関する情報は、記憶部74に記憶される。第1減速度D1および第5減速度D5は、減速エネルギに対応する値に変更される。例えば、時速10kmから減速する場合と、時速35kmから減速する場合とにおいて、減速度Dは等しくても、減速エネルギが異なるので、制御部72は、減速エネルギを用いて第1処理および第3処理の順番、または、第2処理および第3処理の順番を変更するように構成されてもよい。
【0095】
<第4実施形態>
図2および
図6を参照して、第4実施形態の制御装置70について説明する。第4実施形態の制御装置70は、
図3のフローチャートの処理に代えて
図6のフローチャートの処理を実行する点以外は第1実施形態の制御装置70と同様の構成を含む。このため、第4実施形態の制御装置70のうちの第1実施形態、第2実施形態、および、第3実施形態と共通する構成については、第1実施形態、第2実施形態、および、第3実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0096】
本実施形態では、制御部72は、モータ38と、変速機56と、を制御するように構成される。制御部72は、第1変速条件が満たされる場合、モータ38によるアシストレベルAを減少させた状態、または、モータ38によるアシストレベルAを維持した状態において、変速機56によって変速比Rを変更させる。制御部72は、第1変速条件とは異なる第2変速条件が満たされる場合、モータ38によるアシストレベルAを増加させた状態において、変速機56によって変速比Rを変更させる。
【0097】
好ましくは、第1変速条件および第2変速条件の少なくとも1つは、人力駆動車10の車速Vが減少する場合に満たされる。好ましくは、第1変速条件および第2変速条件の一方は、人力駆動車10の進行方向における人力駆動車10の減速度Dが、第2減速度D2以上の場合に満たされる。好ましくは、第1変速条件および第2変速条件の他方は、人力駆動車10の進行方向における人力駆動車10の減速度Dが、第2減速度D2未満の場合に満たされる。第2減速度D2は、例えば、第1減速度D1と等しい。
【0098】
図6を参照して、制御部72がモータ38および変速機56を制御する処理が説明される。制御部72は、例えば、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して
図6に示すフローチャートのステップS51に移行する。制御部72は、
図6のフローチャートが終了すると、例えば、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS51からの処理を繰り返す。
【0099】
制御部72は、ステップS51において、変速条件が満たされるか否かを判定する。制御部72は、人力駆動車の速度が、予め定める速度以上減少する場合、変速条件が満たされると判定する。予め定める速度は、例えば、時速1kmから時速10kmの範囲の速度である。制御部72は、変速条件が満たされる場合、ステップS52に移行する。制御部72は、変速条件が満たされない場合、処理を終了する。制御部72は、ステップS52において、第1変速条件が満たされるか否かを判定する。制御部72は、第1変速条件が満たされる場合、ステップS53に移行する。制御部72は、ステップS53において、アシストレベルAを減少させた状態、または、アシストレベルAを維持した状態において、変速機56によって変速比Rを変更し、処理を終了する。
【0100】
制御部72は、ステップS53において、アシストレベルAを減少させる場合、変速比Rの変更が完了すると、アシストレベルAを増加させてもよい。好ましくは、制御部72は、ステップS53において、アシストレベルAを減少させる場合、変速比Rの変更が完了すると、アシストレベルAを減少させる前のアシストレベルAに戻す。
【0101】
制御部72は、ステップS52において、第1変速条件が満たされない場合、ステップS54に移行する。制御部72は、ステップS54において、第2変速条件が満たされるか否かを判定する。制御部72は、ステップS54において、第2変速条件が満たされる場合、ステップS55に移行する。制御部72は、ステップS55において、アシストレベルAを増加させた状態において、変速機56によって変速比Rを変更し、処理を終了する。
【0102】
制御部72は、ステップS55において、アシストレベルAを増加させる場合、変速比Rの変更が完了すると、アシストレベルAを減少させてもよい。好ましくは、制御部72は、ステップS55において、アシストレベルAを増加させる場合、変速比Rの変更が完了すると、アシストレベルAを増加させる前のアシストレベルAに戻す。好ましくは、制御部72は、ステップS55において、アシストレベルAを増加させる場合、変速比Rの変更が完了すると、アシストレベルAを増加させる直前のアシストレベルAに戻す。
【0103】
制御部72は、ステップS54において、第2変速条件が満たされない場合、ステップS56に移行する。制御部72は、ステップS56において、アシストレベルAを維持した状態において、変速機56によって変速比Rを変更し、処理を終了する。
【0104】
<第5実施形態>
図7から
図9を参照して、第5実施形態の制御装置70について説明する。第5実施形態の制御装置70は、
図3、
図4、
図5、および、
図6のいずれかのフローチャートの処理に加えて
図8および
図9の少なくとも1つのフローチャートの処理を実行する点以外は第1から第4実施形態のいずれかの制御装置70と同様の構成を含む。このため、第5実施形態の制御装置70のうちの第1実施形態から第4実施形態と共通する構成については、第1実施形態から第4実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0105】
制御部72は、人力駆動車10の車速Vに関する情報に応じて、人力駆動車用のコンポーネント60を制御するように構成される。コンポーネント60は、少なくとも1つのサスペンション装置62、および、アジャスタブルシートポスト64の少なくとも1つを含む。
【0106】
サスペンション装置62は、サスペンション装置62を動作させるための電動アクチュエータを含む。サスペンション装置62は、電動アクチュエータに与える電力を制御する駆動回路をさらに含む。電動アクチュエータは、電気モータを含む。電動アクチュエータに含まれる電気モータは、ソレノイドに置き換えてられてもよい。駆動回路は、制御部72からの制御信号に応じて電動アクチュエータを駆動させる。
【0107】
サスペンション装置62は、リアサスペンション装置およびフロントサスペンション装置62Aの少なくとも1つを含む。サスペンション装置62は、車輪14に加えられる衝撃を吸収する。サスペンション装置62は、油圧サスペンションであってもよく、エアサスペンションであってもよい。サスペンション装置62は、第1部分と、第1部分に嵌め込まれて第1部分と相対移動可能な第2部分とを含む。サスペンション装置62の動作状態は、例えば、第1部分と第2部分との相対移動が規制されるロック状態と、第1部分と第2部分との相対移動が許容されるロック解除状態とを含む。電動アクチュエータは、サスペンション装置62の動作状態を切り替える。サスペンション装置62のロック状態は、車輪14に強い力が加えられた場合に、第1部分と第2部分とがわずかに相対移動する状態を含み得る。サスペンション装置62の動作状態は、ロック状態およびロック解除状態に代えて、または、加えて、減衰力が異なる複数の動作状態、および、ストローク量が異なる複数の動作状態の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0108】
リアサスペンション装置は、人力駆動車10のフレーム18に設けられるように構成される。リアサスペンションは、フレーム18のフレーム本体と後輪14Aを支持するスイングアームとの間に設けられる。リアサスペンション装置は、後輪14Aに加えられる衝撃を吸収する。フロントサスペンション装置62Aは、人力駆動車10のフレーム18と前輪14Bとの間に設けられるように構成される。フロントサスペンションは、フロントフォーク30に設けられる。フロントサスペンション装置62Aは、前輪14Bに加えられる衝撃を吸収する。
【0109】
アジャスタブルシートポスト64は、電動アクチュエータを含む。アジャスタブルシートポスト64は、電動アクチュエータに与える電力を制御する駆動回路をさらに含む。電動アクチュエータは、電気モータを含む。電動アクチュエータに含まれる電気モータは、ソレノイドに置き換えてもよい。駆動回路は、制御部72からの制御信号に応じて電動アクチュエータを駆動させる。アジャスタブルシートポスト64は、シートチューブに設けられ、サドルの高さを変更するように構成される。アジャスタブルシートポスト64は、電動アクチュエータの力でシートポストが伸縮する電気式シートポスト、または、電動アクチュエータの力でバルブを制御することによって、シートポストがばねおよび空気の少なくとも一方の力によって伸び、人力を加えることによって縮む機械式シートポストを含む。機械式シートポストは、油圧式シートポスト、または、油圧および空気圧式シートポストを含む。
【0110】
コンポーネント60が、少なくとも1つのサスペンション装置62を含む場合、例えば、少なくとも1つのサスペンション装置62は、フロントサスペンション装置62Aを含み、制御部72は、人力駆動車10の進行方向における人力駆動車10の減速度Dが第3減速度D3以上の場合、フロントサスペンション装置62Aの硬さを増加させるようにフロントサスペンション装置62Aを制御する。第3減速度D3は、例えば、第1減速度D1と等しい。第3減速度D3は、第1減速度D1よりも大きな値であってもよい。
【0111】
図8を参照して、制御部72がフロントサスペンション装置62Aを制御する制御状態を切り替える処理が説明される。制御部72は、例えば、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して
図8に示すフローチャートのステップS61に移行する。制御部72は、
図8のフローチャートが終了すると、例えば、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS61からの処理を繰り返す。
【0112】
制御部72は、ステップS61において、減速度Dが第3減速度D3以上か否かを判定する。制御部72は、減速度Dが第3減速度D3以上ではない場合、処理を終了する。制御部72は、減速度Dが第3減速度D3以上の場合、ステップS62に移行する。制御部72は、ステップS62において、フロントサスペンション装置62Aの硬さを増加させるようにフロントサスペンション装置62Aを制御し、処理を終了する。制御部72は、フロントサスペンション装置62Aがロック解除状態である場合、ステップS62において、フロントサスペンション装置62Aがロック状態に変更する。
【0113】
制御部72は、人力駆動車10の進行方向における人力駆動車10の減速度Dが第3減速度D3以上、かつ、第6減速度D6以下の場合、フロントサスペンション装置62Aの硬さを増加させるようにフロントサスペンション装置62Aを制御するように構成されてもよい。第3減速度D3は、第1減速度D1と等しく、第6減速度D6は、第5減速度D5と等しい。
【0114】
コンポーネント60がアジャスタブルシートポスト64を含む場合、例えば、制御部72は、人力駆動車10の進行方向における人力駆動車10の減速度Dが第4減速度D4以上になると、アジャスタブルシートポスト64の長さを減少させるようにアジャスタブルシートポスト64を制御する。第4減速度D4は、例えば、第1減速度D1と等しい。第4減速度D4は、第1減速度D1よりも大きな値であってもよい。
【0115】
図9を参照して、制御部72がアジャスタブルシートポスト64を制御する処理が説明される。制御部72は、例えば、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して
図9に示すフローチャートのステップS63に移行する。制御部72は、
図9のフローチャートが終了すると、例えば、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS63からの処理を繰り返す。
【0116】
制御部72は、ステップS63において、減速度Dが第4減速度D4以上か否かを判定する。制御部72は、減速度Dが第4減速度D4以上ではない場合、処理を終了する。制御部72は、減速度Dが第4減速度D4以上の場合、ステップS64に移行する。制御部72は、ステップS64において、アジャスタブルシートポスト64の長さを減少させるようにアジャスタブルシートポスト64を制御し、処理を終了する。
【0117】
制御部72は、人力駆動車10の進行方向における人力駆動車10の減速度Dが第4減速度D4以上、かつ、第7減速度D7以下の場合、アジャスタブルシートポスト64の長さを減少させるようにアジャスタブルシートポスト64を制御するように構成されてもよい。第4減速度D4は、第1減速度D1と等しく、第7減速度D7は、第5減速度D5と等しい。
【0118】
<変形例>
実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用の制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用の制御装置は、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0119】
・制御部72は、
図3のステップS15に代えて、第1処理または第3処理を開始してから予め定める第1期間が経過すると、YESと判定するようにしてもよい。制御部72は、
図4ステップS35に代えて、第1処理または第3処理を開始してから予め定める第1期間が経過すると、YESと判定するようにしてもよい。
【0120】
・制御部72は、
図3のステップS20、および、
図4のステップS
39の少なくとも1つに代えてまたは加えて、第2処理または第3処理を開始してから予め定める第2期間が経過すると、YESと判定するようにしてもよい
。
【0121】
・第5実施形態の
図8および
図9のフローチャートの処理は、第1から第4実施形態とは独立して行ってもよい。
【0122】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0123】
10…人力駆動車、38…モータ、56…変速機、60…コンポーネント、62…サスペンション装置、62A…フロントサスペンション装置、64…アジャスタブルシートポスト、70…制御装置、72…制御部。