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特許7650676レーダ信号処理装置、レーダ装置、レーダ信号処理方法およびレーダ信号処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】レーダ信号処理装置、レーダ装置、レーダ信号処理方法およびレーダ信号処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/34 20060101AFI20250317BHJP
【FI】
G01S13/34
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021017895
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022120872
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】中谷 文弥
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-106854(JP,A)
【文献】特開2010-025901(JP,A)
【文献】国際公開第2005/109033(WO,A1)
【文献】特開2004-347362(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0280854(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号と、受信信号とのビート信号に基づいて生成された処理信号から、異なる複数の時間範囲に基づいて抽出した抽出ビート信号を複数生成する抽出信号生成部と、
複数の前記抽出ビート信号を、距離と振幅との関係を示す振幅データに変換する変換部と、
複数の前記振幅データを統合した統合データを生成する統合データ生成部とを備え、
前記抽出信号生成部は、前記処理信号から、通過時間域が異なる複数の窓関数を乗ずることにより前記抽出ビート信号を複数生成する、レーダ信号処理装置。
【請求項2】
前記統合データ生成部は、前記距離ごとに複数の前記振幅データのいずれか1つの前記振幅を選択することにより前記統合データを生成する、請求項に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項3】
前記抽出信号生成部は、時間的に連続した前記時間範囲に基づいて抽出した前記抽出ビート信号を複数生成する、請求項1または請求項2に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項4】
前記抽出信号生成部は、前記抽出ビート信号の1つとして、複数の前記時間範囲を包含する前記時間範囲に基づいて抽出した前記抽出ビート信号を生成する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項5】
複数の前記窓関数は、形状の設計が同じものを含む、請求項に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のレーダ信号処理装置と、
前記送信信号を送信する送信部と、
送信された前記送信信号が物標により反射された信号である反射信号を受信する受信部とを備える、レーダ装置。
【請求項7】
前記送信部は、回転するアンテナを介して前記送信信号を送信し、
前記受信部は、回転するアンテナを介して前記反射信号を受信する、請求項に記載のレーダ装置。
【請求項8】
レーダ信号処理装置におけるレーダ信号処理方法であって、
送信信号と、受信信号とのビート信号に基づいて生成された処理信号から、異なる複数の時間範囲に基づいて抽出した抽出ビート信号を複数生成し、
複数の前記抽出ビート信号を、距離と振幅との関係を示す振幅データに変換し、
複数の前記振幅データを統合した統合データを生成し、
前記処理信号から、通過時間域が異なる複数の窓関数を乗ずることにより前記抽出ビート信号を複数生成する、レーダ信号処理方法。
【請求項9】
レーダ信号処理装置において用いられるレーダ信号処理プログラムであって、
送信信号と、受信信号とのビート信号に基づいて生成された処理信号から、異なる複数の時間範囲に基づいて抽出した抽出ビート信号を複数生成する処理と、
複数の前記抽出ビート信号を、距離と振幅との関係を示す振幅データに変換する処理と、
複数の前記振幅データを統合した統合データを生成する処理とをコンピュータに実行させるためのプログラムであり
前記処理信号から、通過時間域が異なる複数の窓関数を乗ずることにより前記抽出ビート信号を複数生成する、レーダ信号処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ信号処理装置、レーダ装置、レーダ信号処理方法およびレーダ信号処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビート信号から干渉波を除去する技術が知られている。たとえば、特許文献1(米国特許第9442191号明細書)には、以下のようなレーダシステムが開示されている。すなわち、レーダシステムは、互いに並列な信号処理回路である第1信号処理経路および第2信号処理経路の各々において、ビート信号のコピーから干渉を除去し、異なる周波数応答を有する複数の窓関数から少なくとも1つの窓関数を選択してビート信号に適用し、ビート信号を時間領域から周波数領域に変換する。そして、レーダシステムは、第1信号処理経路の出力および第2信号処理経路の出力を組み合わせて出力ビート信号を生成する。ここで、レーダシステムにおける第1信号処理経路および第2信号処理経路の各々において、他の並列の信号処理経路とは異なる干渉除去方法および窓関数が適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9442191号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、ビート信号から干渉波を除去することにより、当該ビート信号に基づいて生成されるパワースペクトルにおけるレンジサイドローブが増大し、物標を正確に検知することができない場合がある。特許文献1に記載の技術を超えて、ビート信号に基づいて物標をより正確に検知することが可能な技術が望まれる。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、ビート信号に基づいて物標をより正確に検知することが可能なレーダ信号処理装置、レーダ装置、レーダ信号処理方法およびレーダ信号処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係るレーダ信号処理装置は、送信信号と、受信信号とのビート信号に基づいて生成された処理信号から、異なる複数の時間範囲に基づいて抽出した抽出ビート信号を複数生成する抽出信号生成部と、複数の前記抽出ビート信号を、距離と振幅との関係を示す振幅データに変換する変換部と、複数の前記振幅データを統合した統合データを生成する統合データ生成部とを備える。
【0007】
このように、ビート信号に基づく処理信号から、異なる複数の時間範囲に基づいて抽出した抽出ビート信号を複数生成し、複数の抽出ビート信号を振幅データにそれぞれ変換し、複数の振幅データを統合した統合データを生成する構成により、たとえば干渉成分を除去するために振幅がゼロに置換されたビート信号が含まれない抽出ビート信号に基づく振幅データを用いて統合データを生成することができるので、ビート信号の一部の振幅がゼロに置換されることによる統合データにおけるレンジサイドローブの増大を抑制し、レンジサイドローブが小さい統合データに基づいて物標をより正確に検知することができる。したがって、ビート信号に基づいて物標をより正確に検知することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ビート信号に基づいて物標をより正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るレーダ装置の構成を示す図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係るレーダ装置における信号処理部の構成を示す図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る信号処理部における窓関数/FFT処理部の構成を示す図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る信号処理部における窓関数/FFT処理部が干渉除去部から受けるビート信号の一例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る信号処理部における窓関数/FFT処理部が干渉除去部から受けるビート信号の一例を示す図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る信号処理部の窓関数/FFT処理部において用いられる窓関数の一例を示す図である。
図7図7は、本発明の実施の形態に係る信号処理部の窓関数/FFT処理部において生成される振幅データの一例を示す図である。
図8図8は、本発明の実施の形態に係る信号処理部の窓関数/FFT処理部において生成される統合データの一例を示す図である。
図9図9は、本発明の実施の形態に係る信号処理部の窓関数/FFT処理部において生成される統合データの一例を示す図である。
図10図10は、本発明の実施の形態に係る信号処理部の窓関数/FFT処理部において生成される統合データの一例を示す図である。
図11図11は、本発明の実施の形態に係る信号処理部の窓関数/FFT処理部において生成される統合データの一例を示す図である。
図12図12は、本発明の実施の形態に係るレーダ装置が統合データの生成を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0011】
[構成および基本動作]
<レーダ装置>
図1は、本発明の実施の形態に係るレーダ装置の構成を示す図である。
【0012】
図1を参照して、レーダ装置300は、レーダ部201と、表示処理部202とを備える。レーダ部201は、信号発生部110と、送信部120と、送信アンテナ130と、受信アンテナ140と、受信部150と、ミキサ部160と、A/D(Analog to Digital)変換部170と、信号処理部100とを備える。信号処理部100は、レーダ信号処理装置の一例である。たとえば、レーダ装置300は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式のレーダ装置であり、船舶に搭載される。レーダ装置300は、船舶が監視する領域である検知対象エリアにおける物標の有無およびレーダ装置300と物標との間の距離を示すエコー画像を、図示しない表示装置に表示する処理を行う。
【0013】
レーダ部201は、検知対象エリアを複数に分割した領域である分割対象エリアにおける物標の検知結果を示すエコーデータを表示処理部202へ出力する。送信アンテナ130および受信アンテナ140は、送信アンテナ130による電波の放射方向の方位角が所定のスイープ期間Tごとに所定角度ずつ変化するように回転する。レーダ部201は、スイープ期間Tごとの複数の分割対象エリアにおけるエコーデータを表示処理部202へそれぞれ出力する。
【0014】
表示処理部202は、レーダ部201から受けた複数のエコーデータに基づいて、検知対象エリアにおけるエコー画像を表示装置に表示する処理を行う。
【0015】
<レーダ部>
信号発生部110は、所定パターンのアナログ信号を繰り返し生成して送信部120へ出力する。より詳細には、信号発生部110は、スイープ期間Tおいて、たとえばFM-CW方式の変調方式を用いて生成した、周波数が単位時間あたりに所定量増加するアナログ信号を送信部120へ出力する。具体的には、たとえば、信号発生部110は、電圧発生部と、VCO(Voltage-Controlled Oscillator)とを含む。電圧発生部は、スイープ期間Tにおいて、大きさが一定の割合で増加するFM変調電圧を生成してVCOへ出力する。VCOは、電圧発生部から受けるFM変調電圧の大きさに応じた周波数を有するアナログ信号を生成して送信部120へ出力する。
【0016】
送信部120は、送信信号を送信する。より詳細には、送信部120は、スイープ期間Tにおいて、信号発生部110から受けたアナログ信号に基づいてRF(Radio Frequency)帯の送信信号を生成し、生成したRF帯の送信信号を、レーダ部201の回転に伴って回転する送信アンテナ130を介して分割対象エリアへ出力する。また、送信部120は、生成したRF帯の送信信号をミキサ部160へ出力する。具体的には、たとえば、送信部120は、ミキサと、パワーアンプとを含む。当該ミキサは、信号発生部110から受けたアナログ信号に基づいて、RF帯の送信信号を生成し、生成した送信信号をパワーアンプおよびミキサ部160へ出力する。送信部120において、パワーアンプは、ミキサから受けた送信信号を増幅し、増幅後の送信信号を、送信アンテナ130を介して分割対象エリアへ出力する。
【0017】
受信部150は、送信信号が物標により反射された信号である反射信号を受信する。より詳細には、受信部150は、送信アンテナ130から送信された送信信号が分割対象エリアにおける物標によって反射された信号であるRF帯の反射信号を、レーダ部201の回転に伴って回転する受信アンテナ140を介して受信する。また、受信部150は、干渉物体が送信した干渉波を受信アンテナ140経由で受信することもある。干渉物体は、たとえば、分割対象エリア内または分割対象エリア外に位置するパルスレーダ装置等である。受信部150は、受信アンテナ140を介して受信した信号をミキサ部160へ出力する。具体的には、たとえば、受信部150は、ローノイズアンプを含む。ローノイズアンプは、受信アンテナ140を介して受信したRF帯の受信信号を増幅し、増幅後の受信信号をミキサ部160へ出力する。
【0018】
ミキサ部160は、レーダ装置300から送信される送信信号と、レーダ装置300により受信された受信信号とのビート信号を生成する。ここで、ビート信号は、送信部120により送信される送信信号の周波数成分と受信部150により受信された受信信号の周波数成分との差の周波数成分を有する信号である。より詳細には、ミキサ部160は、たとえば2つのミキサを含む。図示しない分岐部は、送信部120から出力される送信信号を分岐するとともに分岐した送信信号に90°の位相差を付与してミキサ部160における各ミキサへ出力する。また、図示しない分岐部は、受信部150から出力される受信信号を分岐してミキサ部160における各ミキサへ出力する。ミキサ部160における2つのミキサは、送信信号と受信信号とをそれぞれ乗算することにより、I信号SiおよびQ信号Sqの組からなるアナログのビート信号SAを生成してA/D変換部170へ出力する。
【0019】
A/D変換部170は、ミキサ部160から受けたアナログのビート信号SAを、I信号SiおよびQ信号Sqの組からなるデジタル信号であるビート信号SDに変換する。より詳細には、A/D変換部170は、スイープ期間Tごとに、所定のサンプリング周波数でサンプリングを行うことによりN個のI信号SiおよびN個のQ信号Sqの組からなるN個のビート信号SDを生成して信号処理部100へ出力する。Nは、2以上の整数である。
【0020】
信号処理部100は、各スイープ期間TにおいてA/D変換部170から受けたN個のビート信号SDを処理することにより、スイープ期間Tごとの分割対象エリアにおける物標の検知結果を示すエコーデータを生成する。信号処理部100は、生成したエコーデータを表示処理部202へ出力する。以下、信号処理部100がスイープ期間TにおいてA/D変換部170から受けた、サンプル番号がn番のビート信号SDを、ビート信号SD(n)とも称する。nは、1以上かつN以下の整数であり、スイープ期間Tの開始からの経過時間に対応する。ビート信号SD(n)は、サンプル番号がn番のI信号Si(n)およびサンプル番号がn番のQ信号Sq(n)の組からなる信号である。
【0021】
なお、レーダ装置300は、送信アンテナ130および受信アンテナ140の代わりに、送信アンテナ130および受信アンテナ140として機能する1つのアンテナを備える構成であってもよい。この場合、たとえば、送信部120は、サーキュレータ経由で送信信号を送信アンテナ130へ送信する。また、たとえば、受信部150は、サーキュレータ経由で受信信号を受信アンテナ140から受信する。
【0022】
<表示処理部>
表示処理部202は、信号処理部100から受けた分割対象エリアごとのエコーデータに基づいて、検知対象エリアにおけるエコーデータである統合データを生成し、生成した統合データに基づいて、検知対象エリアにおけるエコー画像を図示しない表示装置に表示する処理を行う。
【0023】
<信号処理部>
図2は、本発明の実施の形態に係るレーダ装置における信号処理部の構成を示す図である。図2を参照して、信号処理部100は、干渉除去部20と、窓関数/FFT(Fast Fourier Transform)処理部30と、絶対値/対数変換部40とを備える。
【0024】
干渉除去部20は、スイープ期間Tごとに、A/D変換部170からN個のビート信号SDを受けて、受けたビート信号SDの成分から干渉波に基づく成分である干渉成分を除去するFFT前処理を行う。たとえば、干渉除去部20は、FFT前処理において、干渉波が含まれるビート信号SD(n)を検出した場合、干渉波が含まれるビート信号SD(n)におけるI信号Si(n)およびQ信号Sq(n)の振幅をゼロに置換することにより干渉成分を除去する。干渉除去部20は、FFT前処理後のビート信号SD(n)を窓関数/FFT処理部30へ出力する。
【0025】
窓関数/FFT処理部30は、スイープ期間Tごとに、干渉除去部20から受けた、FFT前処理後のN個のビート信号SD(n)に所定の窓関数を掛け合わせる窓関数処理を行い、窓関数処理後のビート信号SD(n)に対してFFT処理等の処理を行うことにより、統合データDIを生成する。窓関数/FFT処理部30は、生成した統合データDIを絶対値/対数変換部40へ出力する。窓関数/FFT処理部30による窓関数処理およびFFT処理の詳細については、後述する。
【0026】
絶対値/対数変換部40は、窓関数/FFT処理部30から受けた統合データDIの絶対値を対数変換することによりエコーデータを生成し、生成したエコーデータを表示処理部202へ出力する。
【0027】
<窓関数/FFT処理部>
図3は、本発明の実施の形態に係る信号処理部における窓関数/FFT処理部の構成を示す図である。図3を参照して、窓関数/FFT処理部30は、抽出信号生成部31と、変換部32と、統合データ生成部33とを備える。抽出信号生成部31は、窓関数処理部31A,31B,31Cを含む。変換部32は、FFT処理部32A,32B,32Cを含む。
【0028】
(抽出信号生成部)
抽出信号生成部31は、ビート信号に基づいて生成された処理信号から、異なる複数の時間範囲に基づいて抽出した抽出ビート信号Eを複数生成する。たとえば、抽出信号生成部31は、対象時間領域Taのビート信号SD(n)に基づいて、対象時間領域Taにおける互いに異なる複数の時間範囲のビート信号SD(n)にそれぞれ基づく複数の抽出ビート信号Eを生成する。対象時間領域Taのビート信号SD(n)は、処理信号の一例である。
【0029】
より詳細には、窓関数処理部31A,31B,31Cの各々は、干渉除去部20からビート信号SD(n)を受けて、受けたビート信号SD(n)の一部または全部である、所定の対象時間領域Taのビート信号SD(n)に基づいて、抽出ビート信号Eを生成する。一例として、窓関数処理部31A,31B,31Cの各々は、干渉除去部20から受けたN個のビート信号SD(n)の全部である対象時間領域Taのビート信号SD(n)に基づいて、抽出I信号Eiおよび抽出Q信号Eqの組からなる抽出ビート信号Eを生成する。
【0030】
ここで、窓関数処理部31A,31B,31Cは、干渉除去部20から、干渉成分が除去されたビート信号SD(n)として、たとえば一部のI信号Si(n)およびQ信号Sq(n)の振幅がゼロに置換されたビート信号SD(n)を受ける場合がある。
【0031】
図4および図5は、本発明の実施の形態に係る信号処理部における窓関数/FFT処理部が干渉除去部から受けるビート信号の一例を示す図である。図5は、図4における領域R1の拡大図である。図4および図5において、横軸はビート信号SD(n)のサンプル番号nの値であり、縦軸は振幅である。図4および図5における実線は、ビート信号SD(n)におけるI信号Si(n)を示している。図4および図5における破線は、ビート信号SD(n)におけるQ信号Sq(n)を示している。
【0032】
図4および図5を参照して、一例として、窓関数処理部31A,31B,31Cは、干渉除去部20から、サンプル番号nが170~175のI信号Si(n)およびQ信号Sq(n)の振幅がゼロに置換されたビート信号SD(n)を受ける。
【0033】
たとえば、窓関数処理部31A,31B,31Cは、干渉除去部20から受けたビート信号SD(n)に対して窓関数処理を行う。窓関数処理部31A,31B,31Cの各々は、ビート信号SD(n)から、通過時間域が異なる複数の窓関数Wfを乗ずることにより抽出ビート信号Eを複数生成する。すなわち、窓関数処理部31A,31B,31Cの各々は、窓関数処理において、干渉除去部20から受けたN個のビート信号SD(n)に、通過域となる時間領域である通過時間領域TPが互いに異なる窓関数Wfを乗ずることにより、抽出ビート信号Eを生成する。
【0034】
より詳細には、窓関数処理部31Aは、ビート信号SD(n)におけるI信号Si(n)およびQ信号Sq(n)に窓関数WfAを乗ずることにより、抽出I信号EiAおよび抽出Q信号EqAの組からなる抽出ビート信号Eである抽出ビート信号EAを生成する。
【0035】
また、窓関数処理部31Bは、ビート信号SD(n)におけるI信号Si(n)およびQ信号Sq(n)に窓関数WfBを乗ずることにより、抽出I信号EiBおよび抽出Q信号EqBの組からなる抽出ビート信号Eである抽出ビート信号EBを生成する。
【0036】
また、窓関数処理部31Cは、ビート信号SD(n)におけるI信号Si(n)およびQ信号Sq(n)に窓関数WfCを乗ずることにより、抽出I信号EiCおよび抽出Q信号EqCの組からなる抽出ビート信号Eである抽出ビート信号ECを生成する。
【0037】
図6は、本発明の実施の形態に係る信号処理部の窓関数/FFT処理部において用いられる窓関数の一例を示す図である。図6において、横軸はビート信号SD(n)のサンプル番号nの値であり、縦軸は窓関数Wfの窓ウェイトである。上述したように、サンプル番号nは、スイープ期間Tの開始からの経過時間に対応する。図6における実線は、窓関数処理部31Aによる窓関数処理において用いられる窓関数WfAを示している。図6における破線は、窓関数処理部31Bによる窓関数処理において用いられる窓関数WfBを示している。図6における一点鎖線は、窓関数処理部31Cによる窓関数処理において用いられる窓関数WfCを示している。
【0038】
図6を参照して、窓関数WfAの通過時間領域TPである通過時間領域TPAは、サンプル番号n=ゼロに対応する時刻t0から、サンプル番号n=Nに対応する時刻tNまでの時間である。また、窓関数WfBの通過時間領域TPである通過時間領域TPBは、サンプル番号n=ゼロに対応する時刻t0から、サンプル番号n=kに対応する時刻tkまでの時間である。また、窓関数WfCの通過時間領域TPである通過時間領域TPCは、サンプル番号n=(k+1)に対応する時刻t(k+1)から、サンプル番号n=Nに対応する時刻tNまでの時間である。ここで、kは、2以上かつN未満の整数であり、たとえばN/2に最も近い整数である。すなわち、通過時間領域TPA,TPB,TPCは、それぞれ、対象時間領域Taの全体の時間領域、対象時間領域Taの前半の時間領域、および対象時間領域Taの後半の時間領域に対応する。たとえば、複数の窓関数Wfは、形状の設計が同じものを含む。図6に示す例では、窓関数WfBおよび窓関数WfCは、通過時間領域TPB,TPCにおける形状が互いに同じである。なお、窓関数WfA,WfB,WfCの形状は、図6に示す形状に限定されず、他の形状であってもよい。
【0039】
たとえば、抽出信号生成部31は、時間的に連続した時間範囲に基づいて抽出した抽出ビート信号Eを複数生成する。すなわち、抽出信号生成部31は、時間的に連続する複数の時間範囲のビート信号(n)にそれぞれ基づく複数の抽出ビート信号Eを生成する。より詳細には、時刻t0から時刻tkまでの時間である通過時間領域TPB、および時刻t(k+1)から時刻tNまでの時間である通過時間領域TPCは、時間的にこの順に連続する時間領域である。窓関数処理部31B,31Cは、それぞれ、ビート信号SD(n)に窓関数WfB,WfCを乗ずることにより、時間的に連続する複数の時間範囲のビート信号(n)にそれぞれ基づく抽出ビート信号EB,ECを生成する。
【0040】
たとえば、抽出信号生成部31は、抽出ビート信号Eの1つとして、複数の時間範囲を包含する時間範囲に基づいて抽出した抽出ビート信号Eを生成する。すなわち、抽出信号生成部31は、複数の抽出ビート信号Eの1つとして、対象時間領域Taのビート信号SD(n)に基づく抽出ビート信号Eを生成する。より詳細には、通過時間領域TPAは、対象時間領域Taに対応する時間領域である。窓関数処理部31Aは、ビート信号SD(n)に窓関数WfAを乗ずることにより、対象時間領域Taのビート信号SD(n)に基づく抽出ビート信号EAを生成する。
【0041】
たとえば、通過時間領域TPAおよび通過時間領域TPBは、サンプル番号nが170~175に対応する時刻を含む一方で、通過時間領域TPCは、サンプル番号nが170~175に対応する時刻を含まない。すなわち、抽出ビート信号EA,EBは、振幅がゼロに置換されたI信号Si(n)およびQ信号Sq(n)を含む一方で、抽出ビート信号ECは、振幅がゼロに置換されたI信号Si(n)およびQ信号Sq(n)を含まない。
【0042】
窓関数処理部31A,31B,31Cは、それぞれ、生成した抽出ビート信号EA,EB,ECを、変換部32におけるFFT処理部32A,32B,32Cへ出力する。
【0043】
(変換部)
変換部32は、複数の抽出ビート信号Eを、距離と振幅との関係を示す振幅データDSに変換する。すなわち、変換部32は、複素信号である複数の抽出ビート信号Eを、レーダ装置300からの距離dと振幅との関係を示す振幅データDSにそれぞれ変換する。
【0044】
より詳細には、変換部32は、抽出信号生成部31から複数の抽出ビート信号Eを受けて、受けた抽出ビート信号Eに対してFFT処理を行うことにより、複素信号であるパワースペクトルPを生成する。そして、変換部32は、抽出ビート信号Eごとに生成した各パワースペクトルPにおける周波数に係数Cを掛けて周波数を距離dに変換する処理等を行うことにより、複素信号である振幅データDSを抽出ビート信号Eごとに生成する。
【0045】
具体的には、FFT処理部32Aは、窓関数処理部31Aから抽出ビート信号EAを受けて、受けた抽出ビート信号EAに対してFFT処理を行うことによりパワースペクトルPAを生成する。そして、FFT処理部32Aは、生成したパワースペクトルPAにおける周波数に係数Cを掛けて周波数を距離dに変換する処理を行うことにより、距離dと振幅との関係を示す振幅データDSAを生成する。
【0046】
また、FFT処理部32Bは、窓関数処理部31Bから抽出ビート信号EBを受けて、受けた抽出ビート信号EBに対してFFT処理を行うことによりパワースペクトルPBを生成する。そして、FFT処理部32Bは、生成したパワースペクトルPBにおける周波数に係数Cを掛けて周波数を距離dに変換するとともに、パワースペクトルPBにおけるIデータおよびQデータをそれぞれ2倍する処理を行うことにより、距離dと振幅との関係を示す振幅データDSBを生成する。ここで、窓関数WfBの通過時間領域TPBは、窓関数WfAの通過時間領域TPAの1/2であるので、パワースペクトルPBの出力は、パワースペクトルPAの1/2である。したがって、FFT処理部32Bは、窓関数Wfの通過時間領域TPの比率により生じるパワースペクトルPの比率を補償するために、パワースペクトルPBにおけるIデータおよびQデータをそれぞれ2倍する処理を行う。たとえば、FFT処理部32Bは、窓関数WfBの通過時間領域TPBが窓関数WfAの通過時間領域TPAの1/Kである場合、パワースペクトルPBの出力とパワースペクトルPAとの比率を補償するために、パワースペクトルPBにおけるIデータおよびQデータをそれぞれK倍する処理を行う。
【0047】
また、FFT処理部32Cは、窓関数処理部31Cから抽出ビート信号ECを受けて、受けた抽出ビート信号ECに対してFFT処理を行うことによりパワースペクトルPCを生成する。そして、FFT処理部32Cは、生成したパワースペクトルPCにおける周波数に係数Cを掛けて周波数を距離dに変換するとともに、FFT処理部32Bと同様に、ワースペクトルPCにおけるIデータおよびQデータをそれぞれ2倍する処理を行うことにより、距離dと振幅との関係を示す振幅データDSCを生成する。
【0048】
図7は、本発明の実施の形態に係る信号処理部の窓関数/FFT処理部において生成される振幅データの一例を示す図である。図7において、横軸は距離d[m]であり、縦軸は振幅[dB]である。図7における破線は、振幅データDSAの振幅Xaを示している。図7における一点鎖線は、振幅データDSBの振幅Xbを示している。図7における二点鎖線は、振幅データDSCの振幅Xcを示している。
【0049】
図7を参照して、振幅データDSCは、振幅データDSA,DSBと比べて、レンジサイドローブが小さい。これは、上述したように、抽出ビート信号EA,EBは、振幅がゼロに置換されたI信号Si(n)およびQ信号Sq(n)を含む一方で、抽出ビート信号ECは、振幅がゼロに置換されたI信号Si(n)およびQ信号Sq(n)を含まないからである。
【0050】
FFT処理部32A,32B,32Cは、それぞれ、生成した振幅データDSA,DSB,DSCを統合データ生成部33へ出力する。
【0051】
(統合データ生成部)
統合データ生成部33は、複数の振幅データを統合した統合データを生成する。より詳細には、統合データ生成部33は、振幅データDSA,DSB,DSCにおける距離dごとの振幅に基づいて、距離dと振幅との関係を示す統合データDIを生成する。
【0052】
たとえば、統合データ生成部33は、距離dごとに振幅データDSA,DSB,DSCのうちのいずれか1つの振幅を選択することにより統合データDIを生成する。一例として、統合データ生成部33は、振幅データDSA,DSB,DSCの最小値取りを行うことにより、振幅データDSA,DSB,DSCの振幅の最小値の集合である統合データDIを生成する。
【0053】
より詳細には、統合データ生成部33は、以下の式(1)により表される、振幅データDSAの距離dごとの振幅絶対値ampA(d)と、以下の式(2)により表される、振幅データDSBの距離dごとの振幅絶対値ampB(d)と、以下の式(3)により表される、振幅データDSCの距離dごとの振幅絶対値ampC(d)とを算出する。
ampA(d)=(Ia)^2+(Qa)^2 ・・・ (1)
ampB(d)=(Ib)^2+(Qb)^2 ・・・ (2)
ampC(d)=(Ic)^2+(Qc)^2 ・・・ (3)
【0054】
ここで、(Ia)^2+(Qa)^2は、振幅データDSAにおけるIデータの2乗と、振幅データDSAにおけるQデータの2乗との和である。(Ib)^2+(Qb)^2は、振幅データDSBにおけるIデータの2乗と、振幅データDSBにおけるQデータの2乗との和である。(Ic)^2+(Qc)^2は、振幅データDSCにおけるIデータの2乗と、振幅データDSCにおけるQデータの2乗との和である。
【0055】
そして、統合データ生成部33は、距離dごとに、振幅絶対値ampA(d),ampB(d),ampC(d)の最小値を選択する。以下、振幅絶対値ampA(d),ampB(d),ampC(d)の最小値が振幅絶対値ampA(d)であるときの距離dを距離daとし、振幅絶対値ampA(d),ampB(d),ampC(d)の最小値が振幅絶対値ampB(d)であるときの距離dを距離dbとし、振幅絶対値ampA(d),ampB(d),ampC(d)の最小値が振幅絶対値ampC(d)であるときの距離dを距離dcとする。
【0056】
すなわち、統合データ生成部33は、振幅絶対値ampA(d),ampB(d),ampC(d)の比較結果に基づいて、距離dを距離da,db,dcのうちのいずれかに決定する。
【0057】
そして、統合データ生成部33は、振幅データDSAにおける距離daに対応する振幅、振幅データDSBにおける距離dbに対応する振幅、および振幅データDSCにおける距離dcに対応する振幅を選択し、選択した振幅からなる統合データDIを生成する。
【0058】
図8および図9は、本発明の実施の形態に係る信号処理部の窓関数/FFT処理部において生成される統合データの一例を示す図である。図9は、図8における領域R2の拡大図である。図8および図9において、横軸は距離d[m]であり、縦軸は振幅[dB]である。図8および図9における実線は、統合データDIの振幅を示している。図8および図9における破線は、振幅データDSAの振幅を示している。図8および図9における一点鎖線は、振幅データDSBの振幅を示している。図8および図9における二点鎖線は、振幅データDSCの振幅を示している。
【0059】
図8および図9を参照して、統合データ生成部33は、振幅データDSAの振幅、振幅データDSBの振幅および振幅データDSCの振幅の最小値の集合である統合データDIを生成する。
【0060】
統合データ生成部33は、生成した統合データDIを絶対値/対数変換部40へ出力する。
【0061】
図10および図11は、本発明の実施の形態に係る信号処理部の窓関数/FFT処理部において生成される統合データの一例を示す図である。図10は、図11における領域R3の拡大図である。図10および図11において、横軸は距離d[m]であり、縦軸は振幅[dB]である。図10および図11における実線は、統合データDIの振幅を示している。図10および図11における破線は、干渉が混入し、その領域がゼロに置換されたビート信号SD(n)に基づく抽出ビート信号EAに対してFFT処理等を行うことにより生成された振幅データDSA_1を示している。図10および図11における一点鎖線は、干渉が混入しておらず、ゼロに置換された領域が無い理想的なビート信号SD(n)に基づく抽出ビート信号EAに対してFFT処理等を行うことにより生成された振幅データDSA_2を示している。
【0062】
図10および図11を参照して、干渉成分が除去されたビート信号SD(n)に基づいて生成された振幅データDSA_1は、振幅データDSA_2と比べて、レンジサイドローブが大きい。一方、統合データDIは、振幅データDSA_1,DSA_2と同様のピーク形状を有しており、かつ振幅データDSA_1と比べてレンジサイドローブが小さい。したがって、本発明の実施の形態に係るレーダ装置100では、干渉成分が除去されたビート信号SD(n)に基づいて、干渉が混入していない理想的なビート信号と同様のピーク形状を保ちつつ、かつレンジサイドローブが小さい統合データDIを生成することができるので、統合データDIに基づいて物標をより正確に検知することができる。
【0063】
[動作の流れ]
本発明の実施の形態に係るレーダ装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートおよびシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。このプログラムは、外部からインストールすることができる。このプログラムは、記録媒体に格納された状態でまたは通信回線を介して流通する。
【0064】
図12は、本発明の実施の形態に係るレーダ装置が統合データの生成を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【0065】
図12を参照して、まず、レーダ装置300は、ビート信号SD(n)に窓関数WfA,WfB,WfCをそれぞれ乗ずることにより、抽出ビート信号EA,EB,ECを生成する(ステップS102)。
【0066】
次に、レーダ装置300は、抽出ビート信号EA,EB,ECに対してFFT処理等を行うことにより、抽出ビート信号EA,EB,ECを振幅データDSA,DSB,DSCに変換する(ステップS104)。
【0067】
次に、レーダ装置300は、振幅データDSAの距離dごとの振幅絶対値ampA(d)と、振幅データDSBの距離dごとの振幅絶対値ampB(d)と、振幅データDSCの距離dごとの振幅絶対値ampC(d)とを算出する(ステップS106)。
【0068】
次に、レーダ装置300は、距離dごとに、振幅絶対値ampA(d),ampB(d),ampC(d)の最小値を選択することにより、距離dを距離da,db,dcのうちのいずれかに振り分ける(ステップS108)。
【0069】
次に、レーダ装置300は、振幅データDSAにおける距離daに対応する振幅、振幅データDSBにおける距離dbに対応する振幅、および振幅データDSCにおける距離dcに対応する振幅からなる統合データDIを生成する(ステップS110)。
【0070】
なお、本発明の実施の形態に係る信号処理部100では、抽出信号生成部31は、ビート信号SD(n)に、通過域となる時間領域がそれぞれ異なる窓関数WfA,WfB,WfCを乗ずることにより抽出ビート信号EA,EB,ECを生成する構成であるとしたが、これに限定するものではない。抽出信号生成部31は、窓関数WfA,WfB,WfCを用いることなく、ビート信号SD(n)の一部または全部を抽出することにより互いに異なる複数の時間範囲のビート信号SD(n)である抽出ビート信号EA,EB,ECを生成する構成であってもよい。
【0071】
また、本発明の実施の形態に係る信号処理部100では、抽出信号生成部31は、時間的に連続する複数の時間範囲のビート信号(n)にそれぞれ基づく抽出ビート信号EB,ECを生成する構成であるとしたが、これに限定するものではない。抽出信号生成部31は、一部が重複する複数の時間範囲のビート信号(n)にそれぞれ基づく抽出ビート信号EB,ECを生成する構成であってもよい。すなわち、通過時間領域TPB,TPCは、時間的に重複してもよい。ただし、抽出信号生成部31は、時間的に連続する複数の時間範囲のビート信号(n)にそれぞれ基づく抽出ビート信号EB,ECを生成する構成により、干渉除去部20において振幅がゼロに置換された同一のI信号Si(n)およびQ信号Sq(n)が抽出ビート信号EB,ECの両方に含まれることを防止することができる。
【0072】
また、本発明の実施の形態に係る信号処理部100では、抽出信号生成部31は、対象時間領域Taのビート信号SD(n)に基づく抽出ビート信号EAを生成する構成であるとしたが、これに限定するものではない。抽出信号生成部31は、抽出ビート信号EB,ECを生成する一方で、抽出ビート信号EAを生成しない構成であってもよい。すなわち、抽出信号生成部31は、窓関数処理部31Aを含まない構成であってもよい。
【0073】
また、本発明の実施の形態に係る信号処理部100では、抽出信号生成部31は、抽出ビート信号EA,EB,ECを生成する構成であるとしたが、これに限定するものではない。抽出信号生成部31は、2つまたは4つ以上の抽出ビート信号Eを生成する構成であってもよい。たとえば、抽出信号生成部31は、対象時間領域TaをM分割した互いに異なるM個の時間範囲のビート信号SD(n)にそれぞれ基づくM個の抽出ビート信号Eを生成する構成であってもよい。すなわち、抽出信号生成部31は、互いに異なる通過時間領域TPを有するM個の窓関数Wfをビート信号SD(n)にそれぞれ乗ずることによりビート信号Eをそれぞれ生成するM個の窓関数処理部を含む構成であってもよい。ここで、Mは、2以上の整数である。Mが大きいほど、ビート信号SD(n)により多くの干渉波が含まれる場合であっても、レンジサイドローブがより小さい統合データDIを生成することができる。一方、Mが小さいほど、窓関数/FFT処理部30の構成を簡易化することができる。
【0074】
また、本発明の実施の形態に係る信号処理部100では、統合データ生成部33は、振幅データDSA,DSB,DSCの振幅の最小値の集合である統合データDIを生成する構成であるとしたが、これに限定するものではない。統合データ生成部33は、振幅データDSA,DSB,DSCの振幅に対して平均値の算出等の演算処理を行うことにより統合データDIを生成する構成であってもよい。
【0075】
ところで、ビート信号に基づいて物標をより正確に検知することが可能な技術が望まれる。
【0076】
たとえば、特許文献1に記載のレーダシステムは、ビート信号から干渉波を除去する信号処理経路と、ビート信号から干渉波を除去しない信号処理経路とを備える構成である。このような構成では、ビート信号に基づいて生成されるパワースペクトルにおけるレンジサイドローブが増大し、物標を正確に検知することができない場合がある。
【0077】
これに対して、本発明の実施の形態に係る信号処理部100では、抽出信号生成部31は、送信信号と、受信信号とのビート信号に基づいて生成された処理信号から、異なる複数の時間範囲に基づいて抽出した抽出ビート信号EA,EB,ECを生成する。変換部32は、抽出ビート信号EA,EB,ECを、距離dと振幅との関係を示す振幅データDSA,DSB,DSCに変換する。統合データ生成部33は、振幅データDSA,DSB,DSCを統合した統合データDIを生成する。
【0078】
このように、ビート信号に基づく処理信号から、異なる複数の時間範囲に基づいて抽出した抽出ビート信号EA,EB,ECを生成し、抽出ビート信号EA,EB,ECを振幅データDSA,DSB,DSCにそれぞれ変換し、複数の振幅データDSA,DSB,DSCを統合した統合データDIを生成する構成により、たとえば干渉成分を除去するために振幅がゼロに置換されたビート信号SD(n)が含まれない抽出ビート信号ECに基づく振幅データDSCを用いて統合データDIを生成することができるので、ビート信号SD(n)の一部の振幅がゼロに置換されることによる統合データDIにおけるレンジサイドローブの増大を抑制し、レンジサイドローブが小さい統合データDIに基づいて物標をより正確に検知することができる。したがって、ビート信号SD(n)に基づいて物標をより正確に検知することができる。
【0079】
また、本発明の実施の形態に係る信号処理部100では、抽出信号生成部31は、処理信号から、通過時間域が異なる複数の窓関数を乗ずることにより抽出ビート信号EA,EB,ECを生成する。
【0080】
このような構成により、たとえば、適切な窓関数を用いて生成した抽出ビート信号EA,EB,ECに対してフーリエ変換を行うことにより、誤差がより小さい振幅データDSA,DSB,DSCを生成することができる。
【0081】
また、本発明の実施の形態に係る信号処理部100では、統合データ生成部33は、距離dごとに振幅データDSA,DSB,DSCのいずれか1つの振幅を選択することにより統合データDIを生成する。
【0082】
このような構成により、たとえばレンジサイドローブが最も小さい振幅データDSを選択的に用いて、レンジサイドローブがより小さい統合データDIを簡単に生成することができる。
【0083】
また、本発明の実施の形態に係る信号処理部100では、抽出信号生成部31は、時間的に連続した時間範囲に基づいて抽出した抽出ビート信号EB,ECを生成する。
【0084】
このような構成により、たとえば干渉成分を除去するために振幅がゼロに置換された1つのビート信号SD(n)が抽出ビート信号EB,ECの両方に含まれることを抑制することができるので、抽出ビート信号EB,ECに基づく振幅データDSB,DSCの少なくとも一方において、当該ビート信号SD(n)の振幅がゼロに置換されることによるレンジサイドローブの増大を抑制することができる。
【0085】
また、本発明の実施の形態に係る信号処理部100では、抽出信号生成部31は、抽出ビート信号Eの1つとして、複数の時間範囲を包含する時間範囲に基づいて抽出した抽出ビート信号EAを生成する。
【0086】
このような構成により、より多くのサンプル数のビート信号SD(n)に基づく抽出データEAに基づいて、より高い距離分解能の振幅データDSAを生成することができるので、振幅データDSAを用いてより高い距離分解能の統合データDIを生成することができる。
【0087】
また、本発明の実施の形態に係る信号処理部100では、窓関数は、形状の設計が同じものを含む。
【0088】
このような構成により、窓関数の形状の違いに応じた抽出ビート信号の補正処理等を行う必要がなくなり、簡易な構成および処理で統合データDIを生成することができる。
【0089】
また、本発明の実施の形態に係るレーダ装置300は、信号処理部100と、送信部120と、受信部150とを備える。送信部120は、送信信号を送信する。受信部150は、送信された送信信号が物標により反射された信号である反射信号を受信する。
【0090】
このような構成により、ビート信号SD(n)に基づいて物標をより正確に検知するレーダ装置300を実現することができる。
【0091】
また、本発明の実施の形態に係るレーダ装置300では、送信部120は、回転する送信アンテナ130を介して送信信号を送信する。受信部150は、回転する受信アンテナ140を介して反射信号を受信する。
【0092】
このような構成により、様々な方向へ送信信号を送信して反射信号を受信することができるので、より広い範囲において物標を検知することができる。
【0093】
また、本発明の実施の形態に係るレーダ信号処理方法は、レーダ装置300に用いられる信号処理部100におけるレーダ信号処理方法である。このレーダ信号処理方法では、まず、信号処理部100が、
送信信号と、受信信号とのビート信号に基づいて生成された処理信号から、異なる複数の時間範囲に基づいて抽出した抽出ビート信号EA,EB,ECを生成する。次に、信号処理部100が、抽出ビート信号EA,EB,ECを、距離dと振幅との関係を示す振幅データに変換する。次に、信号処理部100が、振幅データDSA,DSB,DSCを統合した統合データDIを生成する。
【0094】
このように、ビート信号に基づく処理信号から、異なる複数の時間範囲に基づいて抽出した抽出ビート信号EA,EB,ECを生成し、抽出ビート信号EA,EB,ECを振幅データDSA,DSB,DSCにそれぞれ変換し、複数の振幅データDSA,DSB,DSCを統合した統合データDIを生成する方法により、たとえば干渉成分を除去するために振幅がゼロに置換されたビート信号SD(n)が含まれない抽出ビート信号ECに基づく振幅データDSCを用いて統合データDIを生成することができるので、ビート信号SD(n)の一部の振幅がゼロに置換されることによる統合データDIにおけるレンジサイドローブの増大を抑制し、レンジサイドローブが小さい統合データDIに基づいて物標をより正確に検知することができる。したがって、ビート信号SD(n)に基づいて物標をより正確に検知することができる。
【0095】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
20 干渉除去部
30 窓関数/FFT処理部
31 抽出信号処理部
31A,31B,31C 窓関数処理部
32 変換部
32A,32B,32C FFT処理部
33 統合データ生成部
40 絶対値/対数変換部
100 信号処理部
110 信号発生部
120 送信部
130 送信アンテナ
140 受信アンテナ
150 受信部
160 ミキサ部
170 A/D変換部
201 レーダ部
202 表示処理部
300 レーダ装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12