(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/00 20060101AFI20250317BHJP
【FI】
B60C13/00 C
(21)【出願番号】P 2021139146
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 信行
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102008037483(DE,A1)
【文献】特開2007-91155(JP,A)
【文献】特開平11-321243(JP,A)
【文献】特開2010-274882(JP,A)
【文献】特開2011-235686(JP,A)
【文献】特開2020-6863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォールに模様が設けられた空気入りタイヤにおいて、
前記サイドウォールに、螺旋状に配置された複数の基準点と、それぞれの前記基準点を中心とする円を描く複数の円形パターンとが設けられ、
前記円形パターンは、その中心となる前記基準点が前記螺旋の外側のものほど半径が大きく、
前記螺旋のより内側の前記基準点を中心とする前記円形パターンが、そのすぐ外側の前記基準点を中心とする前記円形パターンの内側に配置され、かつそれら内外の前記円形パターンが離れていること
を特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記螺旋上で隣り合う前記基準点の間の直線距離が、前記螺旋の外側におけるほど大きくなる、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記螺旋上で隣り合う前記基準点の間の直線距離が等間隔である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記螺旋上で隣り合う2つの前記基準点の間の直線距離がPのとき、それら2つの前記基準点のうち前記螺旋における外側の前記基準点を中心とする前記円形パターンの半径が、2つの前記基準点のうち前記螺旋における内側の前記基準点を中心とする前記円形パターンの半径にPより大きい値を足した長さである、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記円形パターンの断面形状が、三角形、台形、長方形又は半円を含む形である、請求項1~4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記サイドウォールにおいて、前記円形パターンが設けられた装飾領域よりタイヤ径方向外側に、タイヤ径方向へ延びる複数の凸条がタイヤ周方向に等間隔に配置された領域であって、タイヤ径方向における寸法が5mm以上12mm以下である領域が設けられた、請求項1~5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記円形パターンが、タイヤ表面に突出した凸条である、請求項1~6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、サイドウォールに模様が設けられた空気入りタイヤが知られている。模様は多数の凸条が並ぶことによって形成されている。
【0003】
従来の模様の多くは、直線状に延びる多数の凸条が等間隔に並んだものである。また、特許文献1に開示されているように、曲線状の凸条が等間隔に並んだものも知られている。いずれの模様もサイドウォールのデザイン性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、美しい模様の提案は頻繁になされているが、今までにない視覚効果を生じさせるような画期的な模様はあまり提案されていない。
【0006】
そこで本発明は、視覚効果の生じる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の空気入りタイヤは、サイドウォールに模様が設けられた空気入りタイヤにおいて、前記サイドウォールに、螺旋状に配置された複数の基準点と、それぞれの前記基準点を中心とする円を描く複数の円形パターンとが設けられ、前記円形パターンは、その前記基準点が前記螺旋の外側のものほど半径が大きく、前記螺旋のより内側の前記基準点を中心とする前記円形パターンが、そのすぐ外側の前記基準点を中心とする前記円形パターンの内側に配置され、かつそれら内外の前記円形パターンが離れていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の空気入りタイヤは、上記の特徴を備えることにより、立体感を感じられる視覚効果を生じさせる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】サイドウォールの装飾領域をタイヤ軸方向から見た図。
【
図5】凸条の断面図(断面形状が半円とその下の直線からなる形の場合)。
【
図7】凸条の断面図(断面形状が三角形の頂点が丸められた形の場合)。
【
図10】2つの凸条が近接している場所における凸条の断面図。
【
図11】変更例のサイドウォールの装飾領域をタイヤ軸方向から見た図。
【
図12】変更例のサイドウォールの装飾領域をタイヤ軸方向から見た図。
【
図13】変更例のサイドウォールの装飾領域をタイヤ軸方向から見た図。
【
図14】変更例のサイドウォールの装飾領域をタイヤ軸方向から見た図。
【
図15】装飾領域及びそのタイヤ径方向外側の領域の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態の空気入りタイヤ1は、サイドウォールの構造を除き一般的なラジアルタイヤと同様の構造を有している。
図1に実施形態の空気入りタイヤ1の断面構造が示されている。なお
図1に示されているのはタイヤ軸方向の半分のみであり、実際の空気入りタイヤ1は中心線Cに対してほぼ左右対称になっている。
【0011】
空気入りタイヤ1では、タイヤ軸方向両側にビード部9が設けられている。ビード部9は、円形に巻かれた鋼線からなるビードコアと、ビードコアの径方向外側に設けられたゴム製のビードフィラーとからなる。
【0012】
タイヤ軸方向両側のビード部9には1枚又は2枚のカーカスプライ2が架け渡されている。カーカスプライ2はタイヤ周方向に直交する方向に並べられた多数のプライコードがゴムで被覆されたシート状の部材である。カーカスプライ2は、タイヤ軸方向両側のビード部9の間で空気入りタイヤ1の骨格形状を形成するとともに、ビード部9の周りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返され巻き上げられることによりビード部9を包んでいる。また、カーカスプライ2の折り返し部分2aのタイヤ軸方向外側の場所には、ラバーチェーファー3が設けられている。
【0013】
また、カーカスプライ2のタイヤ径方向外側には1枚又は複数枚のベルト4が設けられ、ベルト4のタイヤ径方向外側にはベルト補強層5が設けられている。ベルト4はスチール製の多数のコードがゴムで被覆されて出来た部材である。ベルト補強層5は有機繊維製の多数のコードがゴムで被覆されて出来た部材である。ベルト補強層5のタイヤ径方向外側にはトレッドゴム6が設けられている。トレッドゴム6には多数の溝が設けられてトレッドパターンが形成されている。
【0014】
また、カーカスプライ2のタイヤ軸方向両側にはサイドウォールゴム7が設けられている。トレッドゴム6とサイドウォールゴム7とはバットレスにおいて重なっているが、トレッドゴム6とサイドウォールゴム7のいずれがタイヤ表面側に重なっていても良い。サイドウォールゴム7のタイヤ径方向内側の部分はビード部9の近くにまで延びており、ラバーチェーファー3の一部に被さっている。本実施形態においては、サイドウォールゴム7がタイヤ表面に現れている部分だけでなく、空気入りタイヤ1をタイヤ軸方向から見たときに目視できる範囲全体をサイドウォール10とする。
【0015】
また、カーカスプライ2の内側には空気の透過性の低いゴムからなるシート状のインナーライナー8が貼り付けられている。これらの部材の他にも、タイヤの機能上の必要に応じて、ベルト下パッドやチェーハー等の部材が設けられている。
【0016】
図1のように、タイヤ軸方向両側のサイドウォール10の少なくとも一方に、装飾領域11が設けられている。
図2のように、装飾領域11は、タイヤ回転軸を中心とする円環の形である。装飾領域11は、小径の円形の内径側線12と、大径の円形の外径側線13とに挟まれた、一定幅の領域である。内径側線12及び外径側線13は、タイヤ表面に凹、凸又は段差によって形成された線であっても良いし、実際には存在しない仮想的な線であっても良い。装飾領域11のタイヤ径方向の幅HAは、タイヤ断面高さH(空気入りタイヤ1の内径端から外径面までのタイヤ径方向の長さ)の5%以上60%以下(好ましくは10%以上35%以下)である。
【0017】
装飾領域11のタイヤ径方向の場所は、空気入りタイヤ1の最大幅の位置を含む場所である。ここで、空気入りタイヤ1の最大幅の位置とは、タイヤ軸方向一方のサイドウォール10の表面からタイヤ軸方向他方のサイドウォール10の表面までのタイヤ軸方向の長さが一番長い位置のことである。
【0018】
また、
図1では装飾領域11はトレッドゴム6とサイドウォールゴム7との界面がタイヤ表面に現れている場所を含む形で設けられている。このように、装飾領域11は、サイドウォール10の表面に段差が現れやすい場所を含む形で設けられていることが好ましい。サイドウォール10の表面に段差が現れやすい場所とは、典型的にはタイヤ構成部材の端部の場所である。そのような典型的な場所として、上記のようにトレッドゴム6とサイドウォールゴム7との界面がタイヤ表面に現れている場所の他に、例えばカーカスプライ2の巻き上げ端2b(カーカスプライ2の折り返し部分2aの端部)のタイヤ軸方向の場所等がある。
【0019】
図2に示されるように、円環状の装飾領域11の対向する2箇所にはそれぞれラベリング15が設けられている。また、2つのラベリング15に挟まれた2箇所には、それぞれ模様14が設けられている。これにより、ラベリング15と模様14とがタイヤ周方向に交互に配置されている。
【0020】
隣接するラベリング15と模様14との間を十分に空けるために、ラベリング15と模様14との間隔LB(ラベリング15の端部から模様14の端部までのタイヤ周方向の長さ)の最小値は、3mmとされる。また、模様14の面積を十分に確保するために、ラベリング15と模様14との間隔LBの最大値は、ラベリング15のタイヤ周方向の長さLA(ラベリング15のタイヤ周方向一方の端部からタイヤ周方向他方の端部までの長さ)の60%とされる。
【0021】
ラベリング15は複数の文字16がタイヤ周方向に並ぶことによって形成されている。これら複数の文字16によって、製造者名、商品名、ブランド等のいずれかが表示されている。これらの文字16は、製造者名等を表示する目的から、何の文字か明確に判別可能な形状である。また、それぞれの文字16は凹又は凸の線によって縁取られて形成されている。
【0022】
図2及び
図3のように、模様14には多数の凸条20が含まれている。サイドウォール10の表面に対して垂直な方向から見ると、1つ1つの凸条20は真円形である。大きさの異なる複数(好ましくは5つ以上)の凸条20が集まって1つの小模様25を構成している。1つの小模様25を構成する全ての凸条20は大きさが異なる。
【0023】
小模様25においては、より大きな(すなわち半径の大きな)凸条20の内側に、より小さな凸条20が配置されている。より大きな凸条20と、そのすぐ内側のより小さな凸条20とは、接触も交差もせず離れている。模様14は、複数のこのような小模様25がタイヤ周方向に並ぶことにより形成されている。小模様25のタイヤ径方向の長さ(すなわち一番大きな凸条20の直径)は装飾領域11のタイヤ径方向の幅HAの50%以上95%以下である。
【0024】
ここで凸条20とは、タイヤ表面に突出し、タイヤ表面に沿って長く延びるもののことである。この凸条20はリッジとも言われる。凸条20の長手方向に直交する方向の断面形状としては、半円(
図4)、半円とその下の直線からなる形(
図5)、三角形(
図6)、三角形の頂点が丸められた形(
図7)、台形(
図8)、長方形(
図9)等がある。ここで、三角形の頂点が丸められた形(
図7)は三角形の一種である。また、図示省略するが、これらの断面形状を若干変形させた形状、例えば
図6の三角形を傾けるようにして変形させた鋸歯形状等もあり得る。
【0025】
図2及び
図3に凸条20として描かれている線は、凸条20の幅方向の中心線(
図4~
図9にTで示す位置の線)である。また、凸条20の半径及び直径は、凸条20の幅方向の中心線に基づき求められる。なお、凸条20の半径及び直径とは、凸条20が描く真円の半径及び直径のことである。
【0026】
いずれの断面形状の凸条20においても、凸条20の高さH1は0.1mm以上0.8mm以下(好ましくは0.1mm以上0.4mm以下)である。また、いずれの断面形状の凸条20においても、凸条20の幅W1は0.1mm以上1.0mm以下である。
【0027】
凸条20は加硫成型時に使用する金型によって形成することができる。ここで、高さH1及び幅W1が小さい凸条20については、レーザ加工で細かい凹凸が形成された金型によって形成することができる。
【0028】
また、
図4及び
図5の半円の半径をRとすると、断面形状が半円と直線からなる
図5の形の凸条20の前記直線の長さH2は(凸条20の高さH1)-(半円の半径R)である。また、
図8の台形の凸条20において、上底の長さW2は、下底の長さ(すなわち凸条20の幅W1)の20%以上50%以下である。
【0029】
ところで、上記の小模様25において、螺旋状の1本の基準線(不図示)が設定されている。そしてその基準線上に複数の基準点22(
図3参照)が設定されている。基準線が螺旋状なので、複数の基準点22は螺旋状に配置されていることになる。なお、基準線及び基準点22は、実際に装飾領域11に凹凸等によって形成されているのではく、仮想的なものである。そして、これらの基準点22のそれぞれに対して凸条20が設けられている。具体的には、円形である凸条20の中心が、それぞれの基準点22に配置されている。
【0030】
ここで、基準線上で隣り合う2つの基準点22の間の直線距離P(不図示)は、基準線の描く螺旋の外側(螺旋の中心から離れる方)ほど大きくなっている。すなわち、前記螺旋の内側(螺旋の中心に近い方)から外側に向かって順に設けられた3つの基準点22a、22b、22c(
図3参照)について考えると、内側の2つの基準点22a、22b間の直線距離P1と、外側の2つの基準点22b、22c間の直線距離P2との間には、P1<P2の関係が成立する。ただし、P2はP1の2倍以下であることが好ましい。
【0031】
凸条20の半径は、螺旋(基準線の描く螺旋)のより外側を中心とする凸条20ほど大きくなっている。そして、基準線上で隣り合う2つの基準点22のうち螺旋の内側の基準点22を中心とする凸条20(以下「内側の凸条20」とする)と、同じ2つの基準点22のうち螺旋の外側の基準点22を中心とする凸条20(以下「外側の凸条20」とする)とが離れている。また、内側の凸条20は外側の凸条20の内側に収っている。ここで、2つの凸条が離れているとは、
図10のように2つの凸条20の間に隙間があることを意味する。
【0032】
基準線上で隣り合う2つの基準点22間の直線距離がPのとき、これら2つの基準点22を中心とする2つの凸条20のうち外側の凸条20の半径r2は、同じ2つの基準点22を中心とする2つの凸条20のうち内側の凸条20の半径r1に、Pより大きい値sを足した長さであることが好ましい。それにより、外側の凸条20と内側の凸条20とが接触しなくなる。ただし、Pより大きい値sは、P×1.8以下であることが好ましい。すなわち、r1+P<r2≦r1+(P×1.8)であることが好ましい。
【0033】
上記のように、凸条20の中心となる基準点22が螺旋状に配置されているため、全ての凸条20が螺旋を描くように配置されていることとなる。小さい凸条20ほど螺旋の内側で、大きい凸条20ほど螺旋の外側となっている。また、
図3のように、内側の凸条20と外側の凸条20とが最も近接する場所である最近接場所23も、1本の螺旋を描く配置となっている。
【0034】
なお、小模様25における半径が1番小さい凸条20(以下「最小凸条20a」とする)の直径は、装飾領域11のタイヤ径方向の幅HAの10%以上50%以下の長さである。これにより、装飾領域11に十分な数の凸条20が入ることになる。
【0035】
内側の凸条20と外側の凸条20との最近接場所23から離れている場所(従って内側の凸条20と外側の凸条20とが離れている場所)では、2つの凸条20間に広い平面が存在するため、当たった光に対して、鏡面反射又はそれに近い反射が生じる。一方、内側の凸条20とその外側の凸条20との最近接場所23には影ができる。
【0036】
その結果、内側の凸条20と外側の凸条20との最近接場所23から離れている場所は明るく見え、内側の凸条20と外側の凸条20との最近接場所23は暗く見える。ただし、2つの凸条20が接触する場合はその接触場所が黒く見えるのに対し、2つの凸条20の最近接場所23はややぼやけた黒のように見える。上記の通り内側の凸条20と外側の凸条20との最近接場所23が螺旋状に配置されているため、最近接場所23を連結する淡い黒の螺旋が存在するように見える。
【0037】
図2のように、上記の最小凸条20aは、小模様25の中心(すなわち小模様25における最も半径の大きい凸条20の中心)よりもタイヤ周方向の一方側に偏って存在している。ここで偏るとは、最小凸条20aの中心が小模様25の中心から一方向へずれることを意味する。
図2のように、装飾領域11全体において、全ての最小凸条20aは、小模様25の中心よりもタイヤ周方向の一方側に偏って存在している。
図2にその偏りの方向が矢印Dで示されている。
【0038】
タイヤ軸方向両側に装飾領域11が設けられている場合は、このような凸条20の特徴がタイヤ軸方向両側の装飾領域11で共通している。
【0039】
以上のように、実施形態の空気入りタイヤ1では、サイドウォール10に、螺旋状に配置された複数の基準点22と、それぞれの基準点22を中心とする円形の複数の凸条20とが設けられている。そして、前記螺旋におけるより外側にある基準点22を中心とする凸条20ほど半径が大きくなっている、さらに、前記螺旋のより内側の基準点22を中心とする凸条20が、そのすぐ外側の基準点22を中心とする凸条20の内側に配置され、かつそれら内外の凸条20が離れている。
【0040】
このように、大きさの異なる円形の凸条20が複数設けられ、大きな凸条20の内側に小さな凸条20が設けられているため、それらの凸条20からなる小模様25が、立体感が感じられる視覚効果を生じさせるものとなっている。また、それぞれの凸条20の中心が、螺旋状に配置された基準点22に設けられているため、大きさの異なる複数の凸条20が螺旋を描くように配置されることとなり、巻き貝を見るような立体感を感じられる視覚効果が生じている。
【0041】
また、内側の凸条20が外側の凸条20に近接しており、その最近接場所23が暗く見える。そして、内側の凸条20と外側の凸条20との最近接場所23が螺旋状に配置されているため、小模様25において淡い黒の螺旋が存在するような視覚効果が生じている。
【0042】
また、螺旋上で隣り合う基準点22間の直線距離が、螺旋の外側におけるほど大きくなっている。そしてそのように配置された基準点22に対して凸条20が設けられているため、凸条20が螺旋状に配置されている様子が認識しやすくなっている。
【0043】
また、装飾領域11全体において、全ての最小凸条20aが、小模様25の中心よりもタイヤ周方向の一方側に偏って存在している。それにより全ての小模様25がタイヤ周方向の同一方向を向いているような視覚効果が生じている。
【0044】
以上の実施形態は例示であり、発明の範囲は以上の実施形態に限定されない。以上の実施形態に対し、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、様々な変更を行うことができる。
【0045】
例えば、螺旋状の1本の基準線上で隣り合う2つの基準点22の間の直線距離が、1つの小模様25における全ての基準点22間で等間隔であっても良い。
【0046】
また、小模様25内における最小凸条20aの偏りの方向として様々なパターンがあり得る。例えば
図11のように、2つの模様14の全ての最小凸条20aが、同じラベリング15(
図11においては左側のラベリング15)の方に偏っていても良い。また
図12のように、2つの模様14の全ての最小凸条20aが、より近いラベリング15の方に偏っていても良い。また
図13の上の方の模様14のように、最小凸条20aの偏りの方向がタイヤ周方向に交互になっていても良い。
図13においては、最小凸条20aが近い2つの小模様25が、一対の目玉のように見える。なお、
図11~
図13における矢印Dは最小凸条20aの偏りの方向を示している。
【0047】
また、1つの小模様25に多くの凸条20が設けられた結果、半径の大きな凸条20bが
図14のように装飾領域11内に収まらず途切れていても良い。
【0048】
また、上記実施形態では1つのサイドウォール10に対して2つの模様14が設けられているが、1つのサイドウォール10に対して1つ又は3つ以上の模様14が設けられても良い。
【0049】
また、凸条の代わりに凹条によって模様14が形成されても良い。ここで凹条とは、タイヤ表面に対して窪み、タイヤ表面に沿って長く延びるもののことである。凹条の長手方向に直交する方向の断面形状としては、三角形、台形、長方形、半円形等の様々なものがあり得る。凸条又は凹条であって、サイドウォール10の表面に対して垂直な方向から見て円形の線を描くもののことを、円形パターンと言うこととする。
【0050】
また、
図15に示すように、装飾領域11のタイヤ径方向外側に、タイヤ径方向へ延びる複数の凸条26がタイヤ周方向に等間隔に配置された帯状領域27が設けられていても良い。複数の凸条26は、タイヤ周方向に0.3mm以上1.0以下の間隔をおいて等間隔に配置されている。帯状領域27は、タイヤ周方向の一部に設けられてもよいが、タイヤ周方向の全周にわたって設けられても良い。帯状領域27は、装飾領域11の外側に隣接している。帯状領域27のタイヤ径方向の寸法は、5mm以上12mm以下であることが好ましい。
【0051】
このような帯状領域27を設けることにより、トレッドゴム6とサイドウォールゴム7の部材間の界面凹凸やベアを抑制することができる。また、凸条26を設けたことによる光の減衰効果により黒い帯状領域が形成され、装飾領域11を際立たせることができる。
【符号の説明】
【0052】
C…中心線、1…空気入りタイヤ、2…カーカスプライ、2a…折り返し部分、2b…巻き上げ端、3…ラバーチェーファー、4…ベルト、5…ベルト補強層、6…トレッドゴム、7…サイドウォールゴム、8…インナーライナー、9…ビード部、10…サイドウォール、11…装飾領域、12…内径側線、13…外径側線、14…模様、15…ラベリング、16…文字、20…凸条、20a…最小凸条、20b…大きな凸条、22…基準点、23…最近接場所、25…小模様、26…凸条、27…帯状領域