(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】射出成形機、制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/50 20060101AFI20250317BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20250317BHJP
B22D 17/32 20060101ALI20250317BHJP
【FI】
B29C45/50
B29C45/76
B22D17/32 Z
(21)【出願番号】P 2021148831
(22)【出願日】2021-09-13
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】三谷 聡麻
(72)【発明者】
【氏名】小末 将吾
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-014057(JP,A)
【文献】特開2000-355035(JP,A)
【文献】特開2019-166702(JP,A)
【文献】特開昭59-229271(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135403(WO,A1)
【文献】特開2020-189459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B22D 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にノズルを有するシリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられたスクリュと、
該スクリュを駆動する駆動装置と、
前記駆動装置の動作を制御する制御装置と
を備え、
前記駆動装置は、
回転可能に設けられたボールねじ軸と、該ボールねじ軸に螺合され該ボールねじ軸の回転に伴い進退されるナットとを有し、該ナットの進退移動により前記スクリュを前記軸方向に駆動させるボールねじを備え、
前記制御装置は、
前記ボールねじ軸を前記ナットが移動できる全ストローク範囲のうち、一部のストローク範囲だけが使用される成形条件において、成形工程サイクルにおける前記ナットの進退移動範囲が分散するように、成形工程サイクルにおける射出前のスクリュ位置及び射出後のスクリュ位置を逐次移動させる
射出成形機。
【請求項2】
先端部にノズルを有するシリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられたスクリュと、
該スクリュを駆動する駆動装置と、
前記駆動装置の動作を制御する制御装置と
を備え、
前記駆動装置は、
回転可能に設けられたボールねじ軸と、該ボールねじ軸に螺合され該ボールねじ軸の回転に伴い進退されるナットとを有し、該ナットの進退移動により前記スクリュを前記軸方向に駆動させるボールねじを備え、
前記制御装置は、
前記ボールねじ軸の摩耗箇所を監視しており、前記ナットの進退移動範囲と、前記摩耗箇所とが重ならないように、射出前及び射出後のスクリュ位置を決定し、
成形工程サイクルにおける前記ナットの進退移動範囲が分散するように、成形工程サイクルにおける射出前のスクリュ位置及び射出後のスクリュ位置を逐次移動させる
射出成形機。
【請求項3】
先端部にノズルを有するシリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられたスクリュと、
該スクリュを駆動する駆動装置と、
前記駆動装置の動作を制御する制御装置と
を備え、
前記駆動装置は、
回転可能に設けられたボールねじ軸と、該ボールねじ軸に螺合され該ボールねじ軸の回転に伴い進退されるナットとを有し、該ナットの進退移動により前記スクリュを前記軸方向に駆動させるボールねじを備え、
前記制御装置は、
成形難易度に係るデータを取得し、
成形難易度が所定値未満である場合、成形工程サイクルにおける前記ナットの進退移動範囲が分散するように、成形工程サイクルにおける射出前のスクリュ位置及び射出後のスクリュ位置を逐次移動させる
射出成形機。
【請求項4】
前記制御装置は、
射出前及び射出後のスクリュ位置を所定量ずつ移動させることにより、前記ナットの移動可能範囲内で前記進退移動範囲を往復させる
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記制御装置は、
射出前及び射出後のスクリュ位置をランダムに決定する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項6】
成形品の状態を示す物理量データを取得し、
取得した前記物理量データに基づいて、成形品の不良度を算出し、
成形品の不良度が閾値以上である場合、成形機に設定された成形条件を変更する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項7】
回転可能に設けられたボールねじ軸と、該ボールねじ軸に螺合され該ボールねじ軸の回転に伴い進退されるナットとを備え、該ナットの進退移動により射出成形機のスクリュを駆動する駆動装置の動作を制御する制御方法であって、
前記ボールねじ軸を前記ナットが移動できる全ストローク範囲のうち、一部のストローク範囲だけが使用される成形条件において、成形工程サイクルにおける前記ナットの進退移動範囲が分散するように、成形工程サイクルにおける射出前のスクリュ位置及び射出後のスクリュ位置を逐次移動させる
制御方法。
【請求項8】
回転可能に設けられたボールねじ軸と、該ボールねじ軸に螺合され該ボールねじ軸の回転に伴い進退されるナットとを備え、該ナットの進退移動により射出成形機のスクリュを駆動する駆動装置の動作を制御する制御方法であって、
前記ボールねじ軸の摩耗箇所を監視することにより、前記ナットの進退移動範囲と、前記摩耗箇所とが重ならないように、射出前及び射出後のスクリュ位置を決定し、
成形工程サイクルにおける前記ナットの進退移動範囲が分散するように、成形工程サイクルにおける射出前のスクリュ位置及び射出後のスクリュ位置を逐次移動させる
制御方法。
【請求項9】
回転可能に設けられたボールねじ軸と、該ボールねじ軸に螺合され該ボールねじ軸の回転に伴い進退されるナットとを備え、該ナットの進退移動により射出成形機のスクリュを駆動する駆動装置の動作を制御する制御方法であって、
成形難易度に係るデータを取得し、
成形難易度が所定値未満である場合、成形工程サイクルにおける前記ナットの進退移動範囲が分散するように、成形工程サイクルにおける射出前のスクリュ位置及び射出後のスクリュ位置を逐次移動させる
制御方法。
【請求項10】
回転可能に設けられたボールねじ軸と、該ボールねじ軸に螺合され該ボールねじ軸の回転に伴い進退されるナットとを備え、該ナットの進退移動により射出成形機のスクリュを駆動する駆動装置の動作を、コンピュータに制御させるためのコンピュータプログラムであって、
前記ボールねじ軸を前記ナットが移動できる全ストローク範囲のうち、一部のストローク範囲だけが使用される成形条件において、成形工程サイクルにおける前記ナットの進退移動範囲が分散するように、成形工程サイクルにおける射出前のスクリュ位置及び射出後のスクリュ位置を逐次移動させる
処理を前記コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項11】
回転可能に設けられたボールねじ軸と、該ボールねじ軸に螺合され該ボールねじ軸の回転に伴い進退されるナットとを備え、該ナットの進退移動により射出成形機のスクリュを駆動する駆動装置の動作を、コンピュータに制御させるためのコンピュータプログラムであって、
前記ボールねじ軸の摩耗箇所を監視することにより、前記ナットの進退移動範囲と、前記摩耗箇所とが重ならないように、射出前及び射出後のスクリュ位置を決定し、
成形工程サイクルにおける前記ナットの進退移動範囲が分散するように、成形工程サイクルにおける射出前のスクリュ位置及び射出後のスクリュ位置を逐次移動させる
処理を前記コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項12】
回転可能に設けられたボールねじ軸と、該ボールねじ軸に螺合され該ボールねじ軸の回転に伴い進退されるナットとを備え、該ナットの進退移動により射出成形機のスクリュを駆動する駆動装置の動作を、コンピュータに制御させるためのコンピュータプログラムであって、
成形難易度に係るデータを取得し、
成形難易度が所定値未満である場合、成形工程サイクルにおける前記ナットの進退移動範囲が分散するように、成形工程サイクルにおける射出前のスクリュ位置及び射出後のスクリュ位置を逐次移動させる
処理を前記コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機、制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、成形材料を溶融して射出する射出装置及び型締装置を備える。射出装置は、先端部にノズルを有する加熱シリンダと、当該加熱シリンダ内に周方向と軸方向とに回転可能に配されたスクリュとを備える。スクリュは駆動機構によって回転方向と軸方向とに駆動する。駆動機構は、射出用サーボモータの回転駆動力をスクリュの軸方向への駆動力に変換して伝達するボールねじを備える(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、成形条件によっては、ボールねじ軸をナットが移動できる全ストローク範囲のうち、一部のストローク範囲だけが使用されることがある。ナットの移動範囲が特定範囲に集中すると、グリスの潤滑性が低下し、ボールねじ軸に溜まる熱量の偏り等が生じる。このような短射出ストロークの成形条件は、全ストローク範囲を使用する成形条件に比べて不利である。長期的には、ボールねじ軸の一部分だけが摩耗又は破損した状態になりやすく、ボールねじの寿命が短くなる傾向にある。
【0005】
本開示の目的は、短射出ストロークの成形条件であっても、潤滑性の低下及び発熱部位の偏りを防ぎ、ボールねじの寿命を延長させることができる射出成形機、制御方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る射出成形機は、スクリュを駆動する駆動装置と、制御装置とを備え、前記駆動装置は、回転可能に設けられたボールねじ軸及びナットとを有し、該ナットの進退移動により前記スクリュを前記軸方向に駆動させるボールねじを備え、前記制御装置は、成形工程サイクルにおける前記ナットの進退移動範囲が分散するように、成形工程サイクルにおける射出前のスクリュ位置及び射出後のスクリュ位置を逐次移動させる。
【0007】
本発明の一態様に係る制御方法は、ボールねじ軸及びナットを備え、該ナットの進退移動により射出成形機のスクリュを駆動する駆動装置の動作を制御する制御方法であって、成形工程サイクルにおける前記ナットの進退移動範囲が分散するように、成形工程サイクルにおける射出前のスクリュ位置及び射出後のスクリュ位置を逐次移動させる。
【0008】
本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、ボールねじ軸及びナットを備え、該ナットの進退移動により射出成形機のスクリュを駆動する駆動装置の動作を、コンピュータに制御させるためのコンピュータプログラムであって、成形工程サイクルにおける前記ナットの進退移動範囲が分散するように、成形工程サイクルにおける射出前のスクリュ位置及び射出後のスクリュ位置を逐次移動させる処理を前記コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、短射出ストロークの成形条件であっても、潤滑性の低下及び発熱部位の偏りを防ぎ、ボールねじの寿命を延長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る射出成形機の構成例を示す模式図である。
【
図2】実施形態1に係る射出成形機の駆動装置の構成例を示す断面図である。
【
図3】実施形態1に係るプロセッサの処理手順を示すフローチャートである。
【
図4A】実施形態1に係る制御方法における進退移動範囲変更前の状態を示す説明図である。
【
図4B】実施形態1に係る制御方法における進退移動範囲変更前の状態を示す説明図である。
【
図5A】実施形態1に係る制御方法における進退移動範囲変更後の状態を示す説明図である。
【
図5B】実施形態1に係る制御方法における進退移動範囲変更後の状態を示す説明図である。
【
図6】実施形態2に係るプロセッサの処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態3に係る射出成形機の構成例を示す模式図である。
【
図8】実施形態3に係るプロセッサの処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】進退移動範囲の変更処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図10】進退移動範囲の変更処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図11】実施形態3に係る状態表示画面の一例を示す模式図である。
【
図12】実施形態4に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図13】実施形態4に係るプロセッサの処理手順を示すフローチャートである。
【
図14】実施形態5に係る調整用学習モデルを示すブロック図である。
【
図15】実施形態5に係るプロセッサの処理手順を示すフローチャートである。
【
図16】実施形態6に係るプロセッサの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る射出成形機、制御方法及びコンピュータプログラムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
図1は、実施形態1に係る射出成形機1の構成例を示す模式図である。本実施形態1に係る射出成形機1は、金型21を型締めする型締装置2と、成形材料を溶融して射出する射出装置3と、制御装置4とを備える。
【0013】
型締装置2はベッド20上に固定された固定盤22と、ベッド20上をスライド可能に設けられた型締ハウジング23と、ベッド20上を同様にスライドする可動盤24とを備える。固定盤22と型締ハウジング23は複数本、例えば4本のタイバー25、25、…によって連結されている。可動盤24は、固定盤22と型締ハウジング23の間でスライド自在に構成されている。型締ハウジング23と可動盤24の間には型締機構26が設けられている。型締機構26は、例えばトグル機構から構成されている。なお、型締機構26は、直圧式の型締機構、つまり型締シリンダによって構成してもよい。固定盤22と可動盤24にはそれぞれ固定金型27と、可動金型28が設けられ、型締機構26を駆動すると金型21が型開閉されるようになっている。
【0014】
射出装置3は、基台30上に設けられている。射出装置3は、先端部にノズル31aを有する加熱シリンダ31と、当該加熱シリンダ31内に周方向と軸方向とに回転可能に配されたスクリュ32とを備える。加熱シリンダ31の内部又は外周には、成形材料を溶融させるためのヒータが設けられている。スクリュ32は駆動装置5によって回転方向と軸方向とに駆動する。
【0015】
加熱シリンダ31の後端部近傍には、成形材料が投入されるホッパ33が設けられている。また、射出成形機1は、射出装置3を前後方向(
図1中左右方向)に移動させるノズルタッチ装置34を備える。ノズルタッチ装置34を駆動すると、射出装置3が前進して加熱シリンダ31のノズル31aが金型21にタッチするように構成されている。
【0016】
制御装置4は、型締装置2及び射出装置3の動作を制御するコンピュータであり、ハードウェア構成としてプロセッサ41、記憶部42及び操作部43等を備える。なお、制御装置4は、ネットワークに接続されたサーバ装置であっても良い。また、制御装置4は、複数台のコンピュータで構成し分散処理する構成でもよいし、1台のサーバ内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されていてもよいし、クラウドサーバを用いて実現されていてもよい。
【0017】
プロセッサ41は、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、NPU(Neural Processing Unit)等の演算回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の内部記憶装置、I/O端子等を有する。プロセッサ41は、後述の記憶部42が記憶するコンピュータプログラム(プログラム製品)42aを実行することにより、本実施形態1に係る制御方法を実施する。
【0018】
記憶部42は、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部42は、スクリュ32及びナット51bの進退移動範囲を逐次移動させる処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム42aを記憶している。また、記憶部42は、ナット51bの移動可能範囲を示す情報を記憶している。
【0019】
本実施形態1に係るコンピュータプログラム42aは、記録媒体6にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でも良い。記憶部42は、読出装置によって記録媒体6から読み出されたコンピュータプログラム42aを記憶する。記録媒体6はフラッシュメモリ等の半導体メモリである。また、記録媒体6はCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)等の光ディスクでも良い。更に、記録媒体6は、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク等であっても良い。更にまた、通信網に接続されている外部サーバから本実施形態1に係るコンピュータプログラム42aをダウンロードし、記憶部42に記憶させても良い。
【0020】
操作部43は、タッチパネル、ソフトキー、ハードキー、キーボード、マウス等の入力装置である。
【0021】
射出成形機1には、射出開始時点、金型内樹脂温度、ノズル温度、シリンダ温度、ホッパ温度、型締力、射出速度、射出加速度、射出ピーク圧力、射出ストローク等の成形条件を定める設定値が設定される。また射出成形機1には、シリンダ先端樹脂圧、逆防リング着座状態、保圧切替圧力、保圧切替速度、保圧切替位置、保圧完了位置、クッション位置、計量背圧、計量トルク等の成形条件を定める設定値が設定される。更に射出成形機1には、計量完了位置、スクリュ32後退速度、サイクル時間、型閉時間、射出時間、保圧時間、保圧圧力、保圧速度、計量時間、型開時間等の成形条件を定める設定値が設定される。そして、これらの設定値が設定された射出成形機1は、当該設定値に従って動作する。
【0022】
図2は、実施形態1に係る射出成形機1の駆動装置5の構成例を示す断面図である。駆動装置5は、スクリュ32を軸方向に駆動するための射出用サーボモータ50及びボールねじ51を備える。射出用サーボモータ50には、回転角を検出し、回転角を示す信号を制御装置4へ出力するエンコーダが設けられている。制御装置4はエンコーダから出力される信号に基づいて、射出用サーボモータ50の回転を制御する。射出用サーボモータ50の出力軸には、小プーリ50aが設けられている。
【0023】
ボールねじ51は、ボールねじ軸51aと、ボールねじ軸51aに螺合したナット51bとを備える。ボールねじ軸51aの基端部は、孔部及び軸受け座を有する第1プレート52にベアリング52aを介して回転可能に支持されている。ボールねじ軸51aの基端部には大プーリ50cが設けられている。小プーリ50aと、大プーリ50cは、はタイミングベルト50bにより連結されており、小プーリ50aの回転力が大プーリ50cに減速伝達され、ボールねじ軸51aが回転する。
以下、ボールねじ軸51aの基端部側の方向を(
図1中、右側)を後退方向、その反対側の方向(
図1中、左方向)を前進方向と呼ぶ。また、前進方向及び後退方向を合わせて進退方向と呼ぶ。射出用サーボモータ50が駆動して大プーリ50c及びボールねじ軸51aが回転すると、その回転方向に応じてナット51bは前進方向及び後退方向へ移動する。
【0024】
ナット51bの前進方向側の面には、ロードセル53が設けられ、ロードセル53の前進方向側の面は第2プレート54に固定されている。第2プレート54には複数の貫通孔が形成されており、貫通孔にはガイド軸55が挿通している。第2プレート54は、ガイド軸55によって案内され進退方向へ移動する。第1プレート52の前進方向側には、第3プレート56が設けられており、ガイド軸55の一端部及び他端部はそれぞれ第1プレート52及び第3プレート56に支持されている。ボールねじ軸51aが回転すると、ナット51b、ロードセル53及び第2プレート54は、ガイド軸55に沿って進退方向へ一体的に移動する。
【0025】
第2プレート54には孔部及び軸受け座が設けられており、孔部にベアリング54aを介して出力軸58が支持されている。出力軸58には可塑化用プーリ57が設けられている。可塑化用プーリ57は不図示のタイミングベルトを介して、不図示のスクリュ回転用モータに取り付けられたプーリに連結されている。出力軸58の回転中心はボールねじ軸51aの回転中心と一致している。出力軸58は、ナット51bが進退移動した際に、ボールねじ軸51aの先端部が侵入する凹部が形成されている。また、出力軸58には中心軸が一致するようにスクリュ32の一端が固定されている。第3プレート56には、スクリュ32が挿通する貫通孔が形成されている。第3プレート56の貫通孔を挿通したスクリュ32が加熱シリンダ31内を軸方向に移動できるように、加熱シリンダ31の一端部が第3プレート56に固定されている。
【0026】
成形工程サイクルの概要は以下の通りであり、制御装置4は、繰り返される成形工程サイクルにおいて、ナット51bの進退移動範囲を逐次移動させる処理を行う。射出成形に際しては、周知の型閉工程、型締工程、射出ユニット前進工程、射出工程、計量工程、射出ユニット後退工程、型開工程及びエジェクト工程が順次に行われる。
【0027】
特に計量工程においては、ホッパ33から樹脂又は低融点金属からなる成形材料が加熱シリンダ31の後方に供給される。加熱シリンダ31の後方に供給された成形材料は、ヒータによる加熱と、スクリュ32を回転させることによる剪断作用により溶融混練され、加熱シリンダ31の先端領域に送り込まれる。スクリュ32はスクリュ32の先端領域に可塑化した成形材料が溜まるにつれて、徐々に後退方向へ移動する。スクリュ32は設定された計量完了位置まで移動し、一定量の成形材料が計量される。
【0028】
射出工程においては、射出用サーボモータ50が駆動し、その回転力が、小プーリ50a、タイミングベルト50b、大プーリ50cを介してボールねじ軸51aに伝達し、ナット51b、ロードセル53、第2プレート54及びスクリュ32が前進方向へ移動する。スクリュ32の前進により、加熱シリンダ31の先端領域に溜められた成形材料がノズル31aから金型21内に射出及び充填される。スクリュ32は、設定された保圧切替位置まで移動することによって、一定量の成形材料が金型21に射出される。
【0029】
図3は、実施形態1に係るプロセッサ41の処理手順を示すフローチャートである。プロセッサ41は、操作部43を介して遷移モード又は通常モードの選択を受け付ける(ステップS111)。オペレータは手動で操作部43を操作することによって、遷移モード又は通常モードを選択することができる。遷移モードは、本実施形態1に係る制御方法を使用するモードであり、ナット51bの進退移動範囲を逐次移動させるモードである。通常モードは、本実施形態1に係る制御方法を使用しないモードであり、設定された成形条件に従ってナット51bを進退移動させるモードである。つまり、通常モードは、ナット51bの進退移動範囲を変更しないモードである。
【0030】
次いで、プロセッサ41は成形条件を設定する(ステップS112)。成形条件は、特に本実施形態1に関連する設定値として、射出前のスクリュ位置と、射出後のスクリュ位置とを含む。射出前のスクリュ位置は、射出を開始するときのスクリュ位置、又は成形材料の計量を完了したときのスクリュ位置である。射出後のスクリュ位置は、射出を終えたときのスクリュ位置、又は保圧切替位置である。プロセッサ41は成形条件に基づいて、射出成形制御に係る処理を実行する(ステップS113)。プロセッサ41は、型締装置2、射出装置3、ノズルタッチ装置34及び駆動装置5等の動作を制御することによって、型閉工程、型締工程、射出ユニット前進工程、射出工程、計量工程、射出ユニット後退工程、型開工程及びエジェクト工程を実行する。
【0031】
次いで、プロセッサ41は、遷移モードが選択されているか否かを判定する(ステップS114)。遷移モードが選択されていないと判定した場合(ステップS114:NO)、プロセッサ41は、処理をステップS113へ戻し、スクリュ32の計量完了位置及び保圧切替位置を変更することなく、成形工程サイクルを繰り返し実行する。つまり、スクリュ32の進退移動範囲を変更すること無く、成形工程サイクルが繰り替えされる。
【0032】
遷移モードが選択されていると判定した場合(ステップS114:YES)、プロセッサ41は、移動可能な範囲内でナット51bの進退移動範囲を所定量移動させ(ステップS115)、処理をステップS113へ戻す。進退移動範囲は、例えば、計量完了位置に相当するナット51bの位置から保圧切替位置に相当するナット51bの位置までの範囲である。言い換えると、プロセッサ41は、記憶部42が記憶するナット51bの移動可能範囲を示す情報に基づいて、当該移動可能範囲内で、射出前のスクリュ位置と射出後のスクリュ位置とを所定量移動させる。具体的には、プロセッサ41は、計量完了位置及び保圧切替位置を所定量だけ増減させる。
【0033】
図4A及び
図4Bは実施形態1に係る制御方法における進退移動範囲変更前の状態を示す説明図である。
図4Aは保圧切替位置にある駆動装置5を示し、
図4Bは計量完了位置にある駆動装置5を示している。ナット51b及びスクリュ32は
図4Aに示す位置から
図4Bに示す位置へ移動する過程で成形樹脂の計量及び溶融混練が行われる。そして、
図4Bに示す位置から
図4Aに示す位置にナット51b及びスクリュ32が移動することによって可塑化した成形樹脂が金型21へ射出される。ナット51bは、ボールねじ軸51aの一部を進退移動しており、成形条件によっては、
図4Bに示すように未使用な領域が存在する。
【0034】
図5A及び
図5Bは実施形態1に係る制御方法における進退移動範囲変更後の状態を示す説明図である。
図5Aは保圧切替位置にある駆動装置5を示し、
図5Bは計量完了位置にある駆動装置5を示している。
図4A及び
図4B同様、ナット51b及びスクリュ32を移動させることによって、成形材料の計量及び射出が行われる。
図5A及び
図5Bに示す例では、ナット51bの進退移動範囲は、後退方向へ移動しており、
図4A及び
図4Bにおける未使用領域を使用して計量及び射出が行われる。計量完了位置及び保圧切替位置は共に所定量だけ同方向に移動しており、計量完了位置から保圧切替位置までの移動距離に変化は無いため、金型21へ射出される成形材料の重量は基本的に同じである。
【0035】
遷移モードが選択された成形工程サイクルにおいては、ステップS113~ステップS115の処理が切り返し実行され、ナット51b及びスクリュ32の進退移動範囲は所定量ずつ移動する。なお、プロセッサ41は、ナット51bの移動可能範囲内で、進退移動範囲を往復させるようにして、当該進退移動範囲を移動させるとよい。
【0036】
つまり、プロセッサ41は計量完了位置及び保圧切替位置を後退方向へ所定量ずつ移動させ、計量完了位置がナット51bの移動可能範囲の限界(後退方向末端)に達した場合、プロセッサ41は計量完了位置及び保圧切替位置の移動方向を変更し、前進方向へ所定量ずつ移動させる。また、プロセッサ41は、プロセッサ41は計量完了位置及び保圧切替位置を前進方向へ所定量ずつ移動させ、計量完了位置がナット51bの移動可能範囲の限界(前進方向末端)に達した場合、プロセッサ41は計量完了位置及び保圧切替位置の移動方向を変更し、後退方向へ所定量ずつ移動させる。以下、上記した方法で計量完了位置及び保圧切替位置を所定量ずつ移動させることによって、進退移動範囲を往復させることができる。
【0037】
このように構成された本実施形態1に係る射出成形機1によれば、短射出ストロークの成形条件であっても、ボールねじ軸51aの移動可能範囲内をナット51bが進退移動する構成であるため、潤滑性の低下及び発熱部位の偏りを防ぎ、ボールねじ51の寿命を延長させることができる。
【0038】
なお、本実施形態1では、計量完了位置及び保圧切替位置を同量だけ移動させる例を説明したが、成形材料の種類、進退移動範囲の位置等に応じて、射出量が変化しないよう、計量完了位置及び保圧切替位置を異なる量だけ移動させるように構成してもよい。
【0039】
(実施形態2)
実施形態2に係る射出成形機1は、ナット51bの進退移動範囲をランダムに移動させる点が実施形態1と異なる。射出成形機1のその他の構成は、実施形態1に係る射出成形機1と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0040】
図6は、実施形態2に係るプロセッサ41の処理手順を示すフローチャートである。プロセッサ41は、実施形態1と同様、モードの選択を受け付け(ステップS211)、成形条件を設定し(ステップS212)、射出成形制御に係る処理を実行する(ステップS213)。
【0041】
遷移モードが選択されていないと判定した場合(ステップS214:NO)、プロセッサ41は、処理をステップS213へ戻す。遷移モードが選択されている場合(ステップS214:YES)、プロセッサ41は、移動可能な範囲内でナット51bの進退移動範囲をランダムに決定して変更し(ステップS215)、処理をステップS213へ戻す。言い換えると、プロセッサ41は、記憶部42が記憶するナット51bの移動可能範囲を示す情報に基づいて、当該移動可能範囲内で、射出前及び射出後のスクリュ位置の相対距離を保ったまま、当該射出前及び射出後のスクリュ位置の位置をランダムに変更する。また、プロセッサ41は、計量完了位置及び保圧切替位置の相対距離を保ったまま、当該計量完了位置及び保圧切替位置の位置をランダムに変更するともいえる。計量完了位置及び保圧切替位置の相対距離は一定であるため、金型21へ射出される成形材料の重量は基本的に同じである。
【0042】
本実施形態1に係る射出成形機1によれば、実施形態1と同様、短射出ストロークの成形条件であっても、潤滑性の低下及び発熱部位の偏りを防ぎ、ボールねじ51の寿命を延長させることができる。
【0043】
(実施形態3)
実施形態3に係る射出成形機1は、ボールねじ軸51aの摩耗箇所を避けてナット51bの進退移動範囲を移動さえる点が実施形態1と異なる。射出成形機1のその他の構成は、実施形態1に係る射出成形機1と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0044】
図7は、実施形態3に係る射出成形機1の構成例を示す模式図である。実施形態3に係る射出成形機1は、計測部7を備える。計測部7は、例えばナット51bに設けられた振動センサ又は加速度センサであり、検出した加速度信号を制御装置4へ出力する。制御装置4のプロセッサ41は計測部7から出力された加速度信号を加速度データにAD変換して取得する。制御装置4は、加速度データに基づいてボールねじ軸51aの摩耗を検出することができる。例えば、プロセッサ41は、加速度の平均値が所定値以上である場合、ボールねじ軸51aに摩耗があると判定する。また、制御装置4は、射出用サーボモータ50のエンコーダから出力される信号を回転角データにAD変換して取得する。制御装置4は、回転角データに基づいて、ボールねじ軸51aにおけるナット51bの位置を特定することができる。プロセッサ41は、ボールねじ軸51aの摩耗に係る検出結果と、ナット51bの位置とに基づいて、摩耗箇所を特定することができる。プロセッサ41は、ボールねじ軸51aの各部で検出された加速度データ、又は加速度データに基づく摩耗度を対応付けて記憶部42に記憶するとよい。
【0045】
また、制御装置4は表示部40を備える。表示部40は、液晶パネル、有機ELディスプレイ、電子ペーパ、プラズマディスプレイ等である。表示部40は、プロセッサ41から与えられた画像データに応じた各種情報を表示する。
【0046】
図8は、実施形態3に係るプロセッサ41の処理手順を示すフローチャートである。プロセッサ41は、実施形態1と同様、モードの選択を受け付け(ステップS311)、成形条件を設定し(ステップS312)、射出成形制御に係る処理を実行する(ステップS313)。そして、プロセッサ41は、ナット51bの振動及びナット51bの位置を計測する(ステップS314)。次いで、プロセッサ41は、ボールねじ軸51aにおけるナット51bの位置及び摩耗度を算出する(ステップS315)。
【0047】
次いで、プロセッサ41は、遷移モードが選択されているか否かを判定する(ステップS316)。遷移モードが選択されていないと判定した場合(ステップS316:NO)、プロセッサ41は、処理をステップS313へ戻す。遷移モードが選択されていると判定した場合(ステップS316:YES)、プロセッサ41は、ボールねじ軸51aの摩耗箇所を避けて、進退移動範囲を決定して変更する(ステップS317)。プロセッサ41は、ボールねじ軸51aの摩耗箇所を避け、実施形態1と同様にしてナット51bの進退移動範囲を所定量ずつ移動させてもよいし、実施形態2と同様にしてナット51bの進退移動範囲をランダムに変更してもよい。
【0048】
図9は、進退移動範囲の変更処理の第1の例を示すフローチャートである。プロセッサ41は、ステップS315において算出したボールねじ軸51aにおけるナット51bの位置及び摩耗度の算出結果に基づいて、ボールねじ軸の摩耗箇所を特定する(ステップS731)。次いでプロセッサ41は、記憶部42が記憶するナット51bの移動可能範囲を示す情報と、特定された摩耗箇所を示す情報とに基づいて、摩耗箇所を除くナット51bの移動可能範囲を特定する(ステップS732)。そして、プロセッサ41は、ステップS732において特定された移動可能範囲において、進退移動範囲を所定量ずつ移動させる(ステップS733)。言い換えると、プロセッサ41は、射出前及び射出後のスクリュ位置の相対距離を保ったまま、当該移動可能範囲内において当該射出前及び射出後のスクリュ位置の位置を所定量ずつ移動させる。また、プロセッサ41は、当該移動可能範囲において計量完了位置及び保圧切替位置を所定量だけ増減させるともいえる。
【0049】
図10は、進退移動範囲の変更処理の第2の例を示すフローチャートである。プロセッサ41は、ステップS315において算出したボールねじ軸51aにおけるナット51bの位置及び摩耗度の算出結果に基づいて、ボールねじ軸の摩耗箇所を特定する(ステップS751)。次いでプロセッサ41は、記憶部42が記憶するナット51bの移動可能範囲を示す情報と、特定された摩耗箇所を示す情報とに基づいて、摩耗箇所を除くナット51bの移動可能範囲を特定する(ステップS752)。そして、プロセッサ41は、ステップS752において特定された移動可能範囲において、ナット51bの進退移動範囲をランダムに決定し変更する(ステップS753)。言い換えると、プロセッサ41は、射出前及び射出後のスクリュ位置の相対距離を保ったまま、摩耗箇所を除くナット51bの移動可能範囲において、当該射出前及び射出後のスクリュ位置の位置をランダムに変更する。また、プロセッサ41は、計量完了位置及び保圧切替位置の相対距離を保ったまま、摩耗箇所を除くナット51bの移動可能範囲において、当該計量完了位置及び保圧切替位置の位置をランダムに変更するともいえる。
【0050】
そして、プロセッサ41は、ボールねじ軸51aの摩耗箇所及びナット51bの進退移動の状態を表示部40に表示し(ステップS318)、処理をステップS313へ戻す。
【0051】
図11は、実施形態3に係る状態表示画面の一例を示す模式図である。プロセッサ41は、ステップS318において、状態表示画像8を表示部40に表示する。状態表示画像8は、ナット51bの移動可能範囲を示す移動可能範囲画像81を含む。移動可能範囲画像81は、例えば横長矩形の画像である。移動可能範囲画像81はボールねじ軸51aの摩耗状態を表示するように構成してもよい。例えば、移動可能範囲画像81はボールねじ軸51aの摩耗が進行している部分を赤色、摩耗していない部分を緑色で表示する等で表示する。色分けは一例であり、画像の明度、パターン画像の種類によって摩耗箇所を表示するように構成してもよい。摩耗の進行度合いは、振動加速度の大きさで検出してもよいし、ナット51bが移動した使用積算量によって決定してもよい。プロセッサ41は、移動可能範囲画像81に、現在のナット51bの進退移動範囲(ストローク)を示す画像、例えば矢印画像82を重畳表示する。矢印画像82は、ボールねじ軸51aに対するナット51bの進退移動の範囲と、移動可能範囲画像81に対する矢印画像82の範囲とが対応する位置に重畳表示される。また、プロセッサ41は、進退移動範囲を移動させている方向を示す遷移方向画像83を移動可能範囲画像81に重畳させる。遷移方向画像83は、例えば矢印のような画像であり、ナット51bの進退移動範囲の移動方向と矢印の向きとが一致するように移動可能範囲画像81に重畳表示される。
【0052】
実施形態3に係る射出成形機1によれば、ボールねじ軸51aの摩耗箇所を避けてナット51bの進退移動範囲を逐次移動させる構成であるため、より効果的に、潤滑性の低下及び発熱部位の偏りを防ぎ、ボールねじ51の寿命を延長させることができる。
【0053】
また、状態表示画像8により、使用者は、現在のボールねじ軸51aの状態、現在のナット51bの進退移動範囲、進退移動範囲の移動方向を視覚的に認識することができる。
【0054】
なお、本実施形態3では、振動センサ又は加速度センサを用いてボールねじ軸51aの摩耗箇所を検出する例を説明したが、射出用サーボモータ50の電流値又はトルクに基づいて、ボールねじ軸51aの摩耗を検知するように構成してもよい。
【0055】
また、本実施形態3に係る移動可能範囲画像81の表示技術は、他の実施形態にも適用することができる。摩耗箇所を検出しない構成の場合、移動可能範囲画像81はボールねじ軸51aの摩耗状態を表示しないように構成し、上記同様、矢印画像82及び遷移方向画像83を表示すればよい。
【0056】
(実施形態4)
実施形態4に係る射出成形機1は、ナット51bの進退移動範囲を移動させたときの成形品の不良度に応じて成形条件を補正する点が実施形態1と異なる。射出成形機1のその他の構成は、実施形態1に係る射出成形機1と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0057】
図12は、実施形態4に係る制御装置4の構成例を示すブロック図である。実施形態4に係る射出成形機1は、計測部7を備える。計測部7は、温度計、圧力計、速度測定器、加速度測定器、位置センサ、タイマ、重量計等である。計測部7によって計測される情報は、例えば成形品から得られる成形品情報を含む。成形品情報は、例えば成形品を撮像して得たカメラ画像、レーザ変位センサにて得た成形品の変形量、光学的計測器にて得られた成形品の色度、輝度等の光学的計測値、重量計にて計測された成形品の重量、強度計測器にて計測された成形品の強度等の情報を含む。計測部7は、射出装置3及び駆動装置5、その他の周辺機器等から各部の温度、振動、圧力等の情報を取得してもよい。
【0058】
実施形態4に係る記憶部42は、不良度判定学習モデル44及び調整用学習モデル45を記憶する。プロセッサ41は、記憶部42から不良度判定学習モデル44及び調整用学習モデル45、並びにコンピュータプログラム42aを読み出して実行する。
【0059】
不良度判定学習モデル44は、例えば計測値である物理量データが入力された場合に成形品の不良度を出力するニューラルネットワークである。不良度判定学習モデル44は、入力層と、隠れ層と、出力層とを備える。入力層は、物理量データが入力される複数のノードを有する。隠れ層は、複数のノードを有する中間層を複数備え、入力側の中間層のノードは入力層のノードと結合されている。出力層は、成形品の不良度を出力するノードを有する。出力層の各ノードは、出力側の中間層のノードと結合されている。
【0060】
不良度判定学習モデル44は、例えば射出成形時に計測部7で計測された物理量データと、このときに得られた成形品の不良度とを含む訓練データを用いて機械学習させることにより生成することができる。例えば、プロセッサ41は、訓練データを用いた誤差逆伝播法、誤差勾配降下法等によって、不良度判定学習モデル44の重み係数を最適化することにより、不良度判定学習モデル44を機械学習させる。
【0061】
調整用学習モデル45は、例えば成形条件の設定値と、成形品の不良度が入力された場合に設定値の補正量を出力するニューラルネットワークである。調整用学習モデル45は、入力層と、隠れ層と、出力層とを備える。入力層は、設定値及び不良度が入力される複数のノードを有する。隠れ層は、複数のノードを有する中間層を複数備え、入力側の中間層のノードは入力層のノードと結合されている。出力層は、設定値の補正量を出力するノードを有する。出力層の各ノードは、出力側の中間層のノードと結合されている。補正対象である設定値は、例えば、VP切替位置、計量完了位置、射出速度、保圧時間、保圧圧力、保圧速度、保圧切替位置等である。
【0062】
調整用学習モデル45は、例えば成形条件の設定値と、このときに得られた成形品の不良度とを含む訓練データを用いて機械学習させることにより生成することができる。例えば、プロセッサ41は、訓練データを用いた誤差逆伝播法、誤差勾配降下法等によって、調整用学習モデル45の重み係数を最適化することにより、調整用学習モデル45を機械学習させる。
【0063】
図13は、実施形態4に係るプロセッサ41の処理手順を示すフローチャートである。プロセッサ41は、実施形態1と同様、モードの選択を受け付け(ステップS411)、成形条件を設定し(ステップS412)、射出成形制御に係る処理を実行する(ステップS413)。そして、プロセッサ41は、計測部7にて成形品の物理量等を計測し、当該成形品の状態を示す物理量データを取得する(ステップS414)。プロセッサ41は取得した物理量データを不良度判定学習モデル44に入力することによって、成形品の不良度を算出する(ステップS415)。
【0064】
次いで、プロセッサ41は、遷移モードが選択されているか否かを判定する(ステップS416)。遷移モードが選択されていないと判定した場合(ステップS416:NO)、プロセッサ41は、処理をステップS413へ戻す。遷移モードが選択されていると判定した場合(ステップS416:YES)、プロセッサ41は、移動可能な範囲内でナット51bの進退移動範囲を所定量移動させる(ステップS417)。
【0065】
次いで、プロセッサ41は、不良度が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS418)。不良度が所定値未満であると判定した場合(ステップS418:NO)、プロセッサ41は処理をステップS413へ戻す。不良度が所定値以上であると判定した場合(ステップS418:YES)、プロセッサ41は、成形条件の設定値を補正し(ステップS419)、処理をステップS413へ戻す。具体的には、プロセッサ41は、設定値及び不良度を調整用学習モデル45に入力することによって、設定値の補正量を算出し、算出した補正量を用いて成形条件の設定値を補正する。補正対象である設定値は、例えば、VP切替位置、計量完了位置、射出速度、保圧時間、保圧圧力、保圧速度、保圧切替位置等である。
【0066】
実施形態4に係る射出成形機1によれば、ナット51b及びスクリュ32の進退移動範囲を移動させることによって成形品の品質が悪化しないように成形条件を補正することができる。従って、成形品の品質に悪影響を与えること無く、潤滑性の低下及び発熱部位の偏りを防ぎ、ボールねじ51の寿命を延長させることができる。
【0067】
なお、本実施形態4ではニューラルネットワークの学習モデルを用いて成形品の不良度及び設定値の補正量を算出する例を説明したが、SVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク等のその他の公知の機械学習モデルを用いて成形品の不良度及び設定値の補正量を算出してもよい。また、ルールベースで成形品の不良度を算出し、成形条件を補正するように構成してもよい。例えば、成形品を撮像して得られる画像に対するパターンマッチング処理、成形品の重量と正常製品の重量との差分を算出する処理等により、成形品の不良度を算出するように構成してもよい。また、成形品の不良度が増加した場合、計量完了位置及び保圧切替位置の移動を停止したり、計量完了位置及び保圧切替位置を一つ前の状態に戻したりするようにしてもよい。
【0068】
また、教師有り学習により、成形条件を補正する例を説明したが、強化学習により成形条件を補正するように構成してもよい。
【0069】
更に、本実施形態ではナット51bを所定量ずつ移動させる例を説明したが、成形品の不良度に応じて、移動させる所定量を増減させてもよい。例えば、不良度が大きい程、所定量が小さくなるように制御するとよい。
【0070】
更にまた、本実施形態4は、実施形態2~3にも適用することができる。
【0071】
(実施形態5)
実施形態5に係る射出成形機1は、ナット51bの進退移動範囲の移動に応じて成形条件を補正する点が実施形態1と異なる。射出成形機1のその他の構成は、実施形態1に係る射出成形機1と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0072】
実施形態5に係る記憶部42は、調整用学習モデル545を記憶する。プロセッサ41は、記憶部42から調整用学習モデル545及びコンピュータプログラム42aを読み出して実行する。
【0073】
図14は、実施形態5に係る調整用学習モデル545を示すブロック図である。調整用学習モデル545は、例えば成形条件の設定値と、進退移動範囲の移動量とが入力された場合に設定値の補正量を出力するニューラルネットワークである。調整用学習モデル545は、入力層と、隠れ層と、出力層とを備える。入力層は、設定値及び進退移動範囲の移動量が入力される複数のノードを有する。隠れ層は、複数のノードを有する中間層を複数備え、入力側の中間層のノードは入力層のノードと結合されている。出力層は、設定値の補正量を出力するノードを有する。出力層の各ノードは、出力側の中間層のノードと結合されている。
【0074】
調整用学習モデル545は、例えば成形条件の設定値と、ナット51bの進退移動範囲の移動量と、進退移動範囲を変更する際に適した設定値の補正量とを含む訓練データを用いて機械学習させることにより生成することができる。例えば、プロセッサ41は、訓練データを用いた誤差逆伝播法、誤差勾配降下法等によって、調整用学習モデル545の重み係数を最適化することにより、調整用学習モデル545を機械学習させる。
【0075】
図15は、実施形態5に係るプロセッサ41の処理手順を示すフローチャートである。プロセッサ41は、実施形態1と同様、モードの選択を受け付け(ステップS511)、成形条件を設定し(ステップS512)、射出成形制御に係る処理を実行する(ステップS513)。遷移モードが選択されていないと判定した場合(ステップS514:NO)、プロセッサ41は、処理をステップS513へ戻す。遷移モードが選択されている場合(ステップS514:YES)、プロセッサ41は、移動可能な範囲内でナット51bの進退移動範囲を所定量移動させる(ステップS515)。そして、プロセッサ41は、進退移動範囲の移動に応じた成形条件の補正量を算出し、成形条件を補正し(ステップS516)、処理をステップS513へ戻す。具体的には、プロセッサ41は、成形条件の設定値と、進退移動範囲の移動量とを調整用学習モデル545に入力することによって、成形条件の設定値の補正量を算出する。そして、算出された補正量を用いて、成形条件の設定値を補正する。なお、補正対象の設定値には、スクリュ32の計量完了位置及び保圧切替位置が含まれる。
【0076】
実施形態5に係る射出成形機1によれば、ナット51b及びスクリュ32の進退移動範囲を移動させることによって成形品の品質が悪化しないように成形条件を補正することができる。従って、成形品の品質に悪影響を与えること無く、潤滑性の低下及び発熱部位の偏りを防ぎ、ボールねじ51の寿命を延長させることができる。
【0077】
(実施形態6)
実施形態6に係る射出成形機1は、成形難易度に応じて、ナット51bの進退移動範囲を移動させる点が実施形態1と異なる。射出成形機1のその他の構成は、実施形態1に係る射出成形機1と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0078】
図16は、実施形態6に係るプロセッサ41の処理手順を示すフローチャートである。実施形態6に係るプロセッサ41は、成形難易度に係るデータを取得する(ステップS611)。成形難易度に係るデータは、例えば成形条件に対応付けて記憶部42が記憶している。また、プロセッサ41は、操作部43を介して成形難易度に係るデータを取得してもよい。更に、プロセッサ41は、成形条件に基づいて成形難易度に係るデータを算出するように構成してもよい。プロセッサ41は、取得した成形難易度に係るデータに基づいてモードを選択する(ステップS612)。例えば、プロセッサ41は、成形難易度が閾値以上である場合、通常モードを選択し、成形難易度が閾値未満である場合、遷移モードを選択する。以下、実施形態1のステップS112~ステップS115と同様の処理を実行する(ステップS613~ステップS616)。
【0079】
実施形態6に係る射出成形機1によれば、成形難易度を考慮し、成形品の品質が悪化する可能性が低いときにナット51b及びスクリュ32の進退移動範囲を移動させ、潤滑性の低下及び発熱部位の偏りを防ぎ、ボールねじ51の寿命を延長させることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 射出成形機
2 型締装置
3 射出装置
4 制御装置
5 駆動装置
6 記録媒体
7 計測部
31 加熱シリンダ
32 スクリュ
50 射出用サーボモータ
51 ボールねじ
41 プロセッサ
51 ボールねじ
51a ボールねじ軸
51b ナット
44 不良度判定学習モデル
45,545 調整用学習モデル