(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】フォトレジスト用樹脂、フォトレジスト用樹脂の製造方法、フォトレジスト用樹脂組成物、及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
C08F 20/10 20060101AFI20250317BHJP
C08F 6/00 20060101ALI20250317BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20250317BHJP
【FI】
C08F20/10
C08F6/00
G03F7/039 601
(21)【出願番号】P 2021529952
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2020023972
(87)【国際公開番号】W WO2021002212
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2019122971
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】江口 明良
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-120157(JP,A)
【文献】特開2005-060511(JP,A)
【文献】特開2006-036894(JP,A)
【文献】特開2008-050483(JP,A)
【文献】特開2013-036034(JP,A)
【文献】特許第5363844(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/181311(WO,A1)
【文献】特開2011-213773(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136596(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
G03F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂からなるフォトレジスト用樹脂であって、
樹脂固形分濃度が5重量%となる様にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解した時に、平成15年度厚生労働省告示第261号日本水道協会「上水試験法」に記載された方法を用いて測定したポリスチレン換算濁度が30以下であり、
下記式(a1)
[式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示し、Aは単結合又は連結基を示す。R
2
はメチル基を示す。R
3
はエチル基を示す。R
a
は環Z
1
に結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシ基を示す。pは0~3の整数を示す。環Z
1
は炭素数3~20の脂環式炭化水素環を示す。]
で表される重合単位、下記式(a1’)
[式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示し、Aは単結合又は連結基を示す。R
2
及びR
3
は同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。なお、R
2
及びR
3
は互いに結合して環を形成していてもよい。R
a
は環Z
1
に結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシ基を示す。pは0~3の整数を示す。環Z
1
はシクロヘキサン環を示す。]
で表される重合単位、及び、下記式(a2)
[式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示し、Aは単結合又は連結基を示す。R
4
はイソプロピル基を示す。R
a
は環Z
1
に結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシ基を示す。pは0~3の整数を示す。環Z
1
は炭素数3~20の脂環式炭化水素環を示す。]
で表される重合単位からなる群より選択される少なくとも1種の重合単位を含む、フォトレジスト用樹脂。
【請求項2】
下記式(b1)~(b5)
【化2】
[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示し、Aは単結合又は連結基を示す。Xは非結合、メチレン基、エチレン基、酸素原子、又は硫黄原子を示す。Yはメチレン基、又はカルボニル基を示す。Zは、2価の有機基を示す。V
1~V
3は、同一又は異なって、-CH
2-、[-C(=O)-]、又は[-C(=O)-O-]を示す。ただし、V
1~V
3のうち少なくとも1つは[-C(=O)-O-]である。R
8~R
14は、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよいアルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシ基、又はシアノ基を示す。]
で表される重合単位からなる群より選択される少なくとも1種の重合単位を含む、請求項1に記載のフォトレジスト用樹脂。
【請求項3】
さらに、下記式(c1)
【化3】
[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。Aは単結合又は連結基を示す。R
bは保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシ基、又はシアノ基を示す。qは1~5の整数を示す。環Z
2は炭素数6~20の脂環式炭化水素環を示す。]
で表される重合単位(ただし、前記式(a1)
及び前記式(a1’)で表される重合単位に相当するものを除く)を含む、請求項1又は2に記載のフォトレジスト用樹脂。
【請求項4】
重合開始剤の存在下、単量体又は単量体を含む溶液を滴下して単量体を重合させる工程と、前記重合工程後の反応液に含まれる樹脂固形分に対して10ppm以上の重合禁止剤を添加する工程とを含む請求項1~3のいずれか1項に記載のフォトレジスト用樹脂の製造方法。
【請求項5】
重合禁止剤がハイドロキノン類、フェノール類、ベンゾキノン類、及びN-オキシル化合物類からなる群より選択される少なくとも1つである請求項4に記載のフォトレジスト用樹脂の製造方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のフォトレジスト用樹脂と、感放射線性酸発生剤とを少なくとも含有するフォトレジスト用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のフォトレジスト用樹脂組成物を基板に塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を露光し、次いでアルカリ溶解する工程を少なくとも含むパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単量体、樹脂、樹脂組成物、及びパターン形成方法に関する。本願は、2019年7月1日に日本に出願した、特願2019-122971号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造において、パターン形成のためのリソグラフ技術は飛躍的な革新を遂げている。当初、リソグラフにおける露光はi線やg線が使用され、パターンの線幅も広いものであったため製造される半導体の容量は低かった。しかし、近年の技術開発により、波長の短いKrFエキシマレーザーや、さらに短波長であるArFエキシマレーザーの使用が可能となり、その線幅も飛躍的に微細なものとなっている。
【0003】
KrFエキシマレーザーによる露光ではノボラック系又はスチレン系樹脂が使用されていたが、上記樹脂は芳香族基を含むためArFエキシマレーザーによるレーザー光を吸収してしまうという問題があった。このため、ArFエキシマレーザーによる露光では芳香族基を含む樹脂の代わりに芳香族基を含まない樹脂(例えば、脂環式骨格を有する樹脂)が使用されている。ArFエキシマレーザーによる露光において使用される樹脂は、主にアクリル系樹脂である。これは、保護基で保護した(メタ)アクリル酸をモノマー単位として含むアクリル系樹脂と感放射線性酸発生剤とを含有する脂組成物を使用した場合に、露光により発生した酸により前記の保護基が脱離してカルボキシル基となり、アルカリ可溶性となる機構を応用したものである。
【0004】
アクリル系樹脂を製造する方法としては、(メタ)アクリレート化合物を含む単量体、ラジカル重合開始剤、及び必要に応じて連鎖移動剤を使用したラジカル重合法が一般的である。このような重合法としては、例えば、下記の滴下重合法が知られている(特許文献1及び2)。
[1]単量体を予備加熱して滴下する方法
[2]単量体を一定温度に保持した重合溶媒中に滴下する方法
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-269855号公報
【文献】特開2004-355023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の滴下重合法では、目的とするものよりも分子量の大きなアクリル系樹脂が得られる傾向がある。これは、滴下重合法においては、重合反応の終了後であっても反応系中に未反応モノマーが残存することに起因するものと考えられる。すなわち、重合反応の終了後、生成した樹脂と未反応モノマーとが経時で重合する結果、該樹脂の分子量が大きくなってしまうことが考えられる。
【0007】
一般的に樹脂は分子量が大きくなるにつれて、レジスト溶媒に溶け難くなる。例えば、アクリル系樹脂における難溶解性の樹脂(すなわち、分子量が大きい樹脂)の含有量が増えると、レジスト溶媒に溶解した場合に樹脂溶液の濁度が上昇する。また、分子量以外にも樹脂の分子量分布等の種々の特性がレジスト溶媒に対する難溶解性が向上する原因となると考えられる。本発明者らは濁度がある一定の値を示す場合に、樹脂のレジスト性能が悪化することを見出した。
【0008】
従って、本発明の目的は、レジスト溶媒に対する溶解性が高いことにより、良好なレジスト性能を発揮する樹脂、及び該樹脂の製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、高いレジスト性能を発揮する樹脂を含む組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、前記組成物を用いることにより、微細なパターンを精度よく形成することのできる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、滴下重合法による重合工程後の反応液に特定の重合禁止剤を添加することにより、得られた樹脂と未反応モノマーとの重合が抑制され、レジスト溶媒に対する溶解性が高い樹脂が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明では、アクリル系樹脂からなるフォトレジスト用樹脂であって、樹脂固形分濃度が5重量%となる様にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解した時に、平成15年度厚生労働省告示第261号日本水道協会「上水試験法」に記載された方法を用いて測定したポリスチレン換算濁度が30以下であるフォトレジスト用樹脂を提供する。
【0011】
前記樹脂は、下記式(a1)~(a4)
【化1】
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示し、Aは単結合又は連結基を示す。R
2~R
4は同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。なお、R
2及びR
3は互いに結合して環を形成していてもよい。R
5、R
6は同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。R
7は-COOR
c基を示し、前記R
cは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、又はオキセパニル基を示す。nは1~3の整数を示す。R
aは環Z
1に結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシ基を示す。pは0~3の整数を示す。環Z
1は炭素数3~20の脂環式炭化水素環を示す。)
で表される重合単位からなる群より選択される少なくとも1種の重合単位を含むことが好ましい。
【0012】
前記樹脂は、下記式(b1)~(b5)
【化2】
(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示し、Aは単結合又は連結基を示す。Xは非結合、メチレン基、エチレン基、酸素原子、又は硫黄原子を示す。Yはメチレン基、又はカルボニル基を示す。Zは、2価の有機基を示す。V
1~V
3は、同一又は異なって、-CH
2-、[-C(=O)-]、又は[-C(=O)-O-]を示す。ただし、V
1~V
3のうち少なくとも1つは[-C(=O)-O-]である。R
8~R
14は、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよいアルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシ基、又はシアノ基を示す。)
で表される重合単位からなる群より選択される少なくとも1種の重合単位を含むことが好ましい。
【0013】
前記樹脂は、下記式(c1)
【化3】
(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。Aは単結合又は連結基を示す。R
bは保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシ基、又はシアノ基を示す。qは1~5の整数を示す。環Z
2は炭素数6~20の脂環式炭化水素環を示す。)
で表される重合単位を含むことが好ましい。
【0014】
本発明では、重合開始剤の存在下、単量体又は単量体を含む溶液を滴下して単量体を重合させる工程と、前記重合工程後の反応液に含まれる樹脂固形分に対して10ppm以上の重合禁止剤を添加する工程とを含む、前記フォトレジスト用樹脂の製造方法についても提供する。
【0015】
前記重合禁止剤は、ハイドロキノン類、フェノール類、ベンゾキノン類等、及びN-オキシル化合物類からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、前記樹脂と、感放射線性酸発生剤とを少なくとも含有する樹脂組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記組成物を基板に塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を露光し、次いでアルカリ溶解する工程を少なくとも含むパターン形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の樹脂は、レジスト溶媒に対する難溶解成分が低減されたため、高いレジスト性能を発揮する。また、本発明の組成物は、レジスト溶媒に対する難溶解成分が低減された樹脂を含むため、高いレジスト性能を発揮するとともに、これを用いることにより微細なパターンを精度よく形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<樹脂>
本発明の樹脂は、アクリル系樹脂であって、樹脂固形分濃度が5重量%となる様にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解した時に、平成15年度厚生労働省告示第261号日本水道協会「上水試験法」に記載された方法を用いて測定したポリスチレン換算濁度(以下、単に「濁度」と称することがある)が30以下であることを特徴とするフォトレジスト用樹脂である。
【0020】
本発明の樹脂における濁度は30以下であれば特に限定されないが、例えば、20以下であることが好ましく、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは3以下である。
【0021】
アクリル系樹脂とは、アクリル系単量体を必須成分として含む単独又は共重合体と定義される。すなわち、アクリル系樹脂は、アクリル系単量体に由来する構成単位を必須の構成単位として含む重合体である。
【0022】
本発明の樹脂は、酸の作用によりその一部が脱離して極性基を生じる基(「酸分解性基」と称する場合がある)を有してもよい。これにより、本発明の樹脂は酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解度が上昇する。
【0023】
前記極性基としては、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシ基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基、アルコール性水酸基等が挙げられる。中でも、カルボキシ基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基が好ましい。
【0024】
前記酸分解性基としては、前記極性基の水素原子を酸で脱離する基に置換した基が好ましい。前記酸分解性基としては、例えば、-C(RI)(RII)(RIII)、-C(RIV)(RV)(ORVI)等が挙げられる。前記式中、RI~RIII、RVIは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。RIV及びRVは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。RI~RIIIのうちの少なくとも2つの基は、互いに結合して環を形成していてもよい。また、RIVとRVとは、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0025】
前記酸分解性基の炭素原子数は特に限定されないが、例えば、4以上が好ましく、より好ましくは5以上である。前記炭素原子数の上限は特に限定されないが、20が好ましい。
【0026】
前記RI~RVIのアルキル基は、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、へキシル基、オクチル基等が挙げられる。
【0027】
前記RI~RVIのシクロアルキル基は、単環式炭化水素基でも、多環式(橋かけ環式)炭化水素基でもよい。単環式炭化水素基としては炭素数3~8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。多環式炭化水素基としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アンドロスタニル基等が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0028】
前記RI~RVIのアリール基は、炭素数6~14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
【0029】
前記RI~RVIのアラルキル基は、炭素数7~12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0030】
前記RI~RVIのアルケニル基は、炭素数2~8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロへキセニル基等が挙げられる。
【0031】
前記RI~RIIIのうちの少なくとも2つの基が互いに結合して形成される環、及びRIVとRVとが結合して形成される環としては、シクロアルカン環が好ましい。前記シクロアルカン環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の単環式のシクロアルカン環;ノルボルナン環、トリシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、アダマンタン環等の多環式のシクロアルカン環が好ましい。
【0032】
なお、RI~RVIにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、及び前記シクロアルカン環は、それぞれ、置換基を有していてもよい。
【0033】
前記酸分解性基としては、中でも、t-ブチル基、t-アミル基、及び下記式(I)~(IV)で表される基が好ましい。
【0034】
【0035】
前記式(I)~(IV)中のR2~R7、Ra、n、p、及び環Z1は、それぞれ、後述の式(a1)~(a4)中のR2~R7、Ra、n、p、及び環Z1と同じものを示す。
【0036】
前記酸分解性基は、スペーサーを介して設けられていてもよい。前記スペーサーとしては、後述の式(1)中のAとして例示及び説明された連結基と同じものを示す。
【0037】
本発明の樹脂は、酸分解性基を、酸分解性基を有する重合単位として含むことが好ましい。このような酸分解性基を有する重合単位としては、例えば、下記式(1)で表される重合単位が挙げられる。
【0038】
【0039】
前記式(1)中、R1は前記酸分解性基を示す。また、前記式(1)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。前記ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。前記炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソアミル、s-アミル、t-アミル、ヘキシル基等が挙げられる。ハロゲン原子を有する炭素数1~6のアルキル基としては、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル基等の前記アルキル基を構成する水素原子の1個又は2個以上がハロゲン原子で置き換えられた基(ハロ(C1-6)アルキル基)等が挙げられる。
【0040】
前記式(1)中、Aは単結合又は連結基を示す。前記連結基としては、例えば、カルボニル基(-C(=O)-)、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-C(=O)-O-)、アミド結合(-C(=O)-NH-)、カーボネート結合(-O-C(=O)-O-)、これらが複数個連結した基、及びアルキレン基とこれらが結合した基等が挙げられる。前記アルキレン基としては、例えば、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基や、1,2-シクロペンチレン、1,3-シクロペンチレン、シクロペンチリデン、1,2-シクロへキシレン、1,3-シクロへキシレン、1,4-シクロへキシレン、シクロヘキシリデン基等の2価の脂環式炭化水素基(特に2価のシクロアルキレン基)等が挙げられる。
【0041】
前記式(1)で表される重合単位としては、中でも、下記式(a1)~(a4)で表される重合単位からなる群より選択される少なくとも1種の重合単位を含むことが好ましい。なお、前記「式(a1)~(a4)で表される重合単位からなる群より選択される少なくとも1種の重合単位」を、「モノマー単位a」と称する場合がある。
【0042】
【0043】
前記式(a1)~(a4)で表される重合単位中、Rは、前記式(1)中のRと同様に、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示し、Aは単結合又は連結基を示す。前記式(a1)~(a4)中のAとしては、中でも、単結合、アルキレン基とカルボニルオキシ基が結合した基(アルキレン-カルボニルオキシ基)が好ましい。R2~R4は同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。なお、R2及びR3は互いに結合して環を形成していてもよい。R5、R6は同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。R7は-COORc基を示し、前記Rcは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、又はオキセパニル基を示す。nは1~3の整数を示す。nが2又は3である場合、R7はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Raは環Z1に結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシ基を示す。pは0~3の整数を示す。環Z1は炭素数3~20の脂環式炭化水素環を示す。pが2又は3である場合、Raはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
前記Raにおけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソアミル、s-アミル、t-アミル、n-ヘキシル基等の炭素数1~6のアルキル基等が挙げられる。
【0045】
前記Raにおけるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、6-ヒドロキシヘキシル基等のヒドロキシC1-6アルキル基等が挙げられる。
【0046】
前記Raにおけるヒドロキシ基、及びヒドロキシアルキル基が有していてもよい保護基としては、例えば、メチル、エチル、t-ブチル基等のC1-4アルキル基;ヒドロキシ基を構成する酸素原子とともにアセタール結合を形成する基(例えば、メトキシメチル基等のC1-4アルキル-O-C1-4アルキル基);ヒドロキシ基を構成する酸素原子とともにエステル結合を形成する基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基等)等が挙げられる。
【0047】
前記Raにおけるカルボキシ基の保護基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソアミル、s-アミル、t-アミル、ヘキシル基等のC1-6アルキル基、2-テトラヒドロフラニル基、2-テトラヒドロピラニル基、2-オキセパニル基等が挙げられる。
【0048】
前記R2~R6における炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソアミル、s-アミル、t-アミル、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基等が挙げられる。中でもC1-4アルキル基が好ましく、より好ましくはC1-3アルキル基、さらに好ましくはC1-2アルキル基である。
【0049】
前記R2~R6における炭素数1~6のアルキル基が有していてもよい置換基としては例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換ヒドロキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等のC1-4アルコキシ基等)、シアノ基等が挙げられる。置換基を有する炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル基等の前記アルキル基を構成する水素原子の1個又は2個以上がハロゲン原子で置き換えられたハロ(C1-6)アルキル基、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、メトキシメチル、2-メトキシエチル、エトキシメチル、2-エトキシエチル、シアノメチル、2-シアノエチル基等が挙げられる。
【0050】
R2及びR3が互いに結合して環を形成している場合、前記環としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数3~12の脂環式炭化水素環が挙げられる。
【0051】
前記Rcにおける第3級炭化水素基としては、例えば、t-ブチル基、t-アミル基等が挙げられる。
【0052】
前記Rcにおける第3級炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換ヒドロキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等のC1-4アルコキシ基等)、シアノ基等が挙げられる。
【0053】
前記環Z1における炭素数3~20の脂環式炭化水素環としては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環等の3~20員(好ましくは3~15員、特に好ましくは5~12員)程度のシクロアルカン環;シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等の3~20員(好ましくは3~15員、特に好ましくは5~10員)程度のシクロアルケン環等の単環の脂環式炭化水素環;アダマンタン環;ノルボルナン環、ノルボルネン環、ボルナン環、イソボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等のノルボルナン環又はノルボルネン環を含む環;パーヒドロインデン環、デカリン環(パーヒドロナフタレン環)、パーヒドロフルオレン環(トリシクロ[7.4.0.03,8]トリデカン環)、パーヒドロアントラセン環等の多環の芳香族縮合環が水素添加された環(好ましくは完全水素添加された環);トリシクロ[4.2.2.12,5]ウンデカン環等の2環系、3環系、4環系等の橋架け炭化水素環(例えば、炭素数6~20程度の橋架け炭化水素環)等の2~6環程度の橋かけ環式炭化水素環等が挙げられる。
【0054】
前記モノマー単位aの具体例としては、下記式で表されるモノマー単位等が挙げられる。下記式で表されるモノマー単位中、Rdはメチル基又は水素原子を示し、Reはメチル基又は水素原子を示す。また、脂環式炭化水素環へのReの結合位置は特に限定されず、単数又は複数のReが脂環式炭化水素環を構成する炭素原子のうちのいずれの炭素原子に結合していてもよい。下記式で表されるモノマー単位中、Reを2個以上有する場合、2個以上の前記Reは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。モノマー単位aは、対応する不飽和カルボン酸エステルを重合に付すことにより樹脂内に導入することができる。
【0055】
【0056】
【0057】
前記式(1)で表される重合単位としては、前記モノマー単位aで表される重合単位の他に、エステル結合を構成する酸素原子がラクトン環のβ位に結合し且つラクトン環のα位に少なくとも1つの水素原子を有する、ラクトン環を含む不飽和カルボン酸エステルに相当する重合単位(ただし、後述のモノマー単位bに相当する重合単位を除く)等を用いることも可能である。
【0058】
前記式(1)で表される重合単位は1種のみであってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。前記式(1)で表される重合単位としては、前記式(a1)~(a4)で表される重合単位からなる群より選択された少なくとも1種の重合単位を含むことが好ましい。また、前記式(1)で表される重合単位は、前記式(a1)~(a4)で表される重合単位からなる群より選択された少なくとも1種の重合単位と、前記式(a1)~(a4)で表される重合単位からなる群より選択された少なくとも1種の重合単位以外の前記式(1)で表される重合単位(その他の式(1)で表される重合単位)と組み合わせて用いてもよい。前記その他の式(1)で表される重合単位としては、R1が第3級炭化水素基を有する基(例えば、t-ブチル基、t-アミル基等)である式(1)で表される重合単位が好ましい。
【0059】
また、本発明の樹脂は、[-C(=O)-O-]、[-S(=O)2-O-]、又は[-C(=O)-O-C(=O)-]を少なくとも有する脂環式骨格を含むことが好ましい。前記脂環式骨格を含むと、樹脂により高い基板密着性及び耐エッチング性を付与することができる。本発明の樹脂は、前記脂環式骨格を、前記脂環式骨格を有する重合単位として含むことが好ましい。なお、前記[-C(=O)-O-]、[-S(=O)2-O-]、又は[-C(=O)-O-C(=O)-]を少なくとも有する脂環式骨格を含む重合単位を、「モノマー単位b」と称する場合がある。
【0060】
前記モノマー単位bは、中でも、下記式(b1)~(b5)で表される重合単位からなる群より選択される少なくとも1種の重合単位を含むことが好ましい。下記式(b1)~(b5)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示し、Aは単結合又は連結基を示す。Xは非結合、メチレン基、エチレン基、酸素原子、又は硫黄原子を示す。Yはメチレン基、又はカルボニル基を示す。Zは、2価の有機基(例えば、式(a1)~(a4)で表される重合単位中のAに含まれていてもよいアルキレン基として例示及び説明されたアルキレン基(特に、炭素数1~3の直鎖状のアルキレン基)等)を示す。V1~V3は、同一又は異なって、-CH2-、[-C(=O)-]、又は[-C(=O)-O-]を示す。ただし、V1~V3のうち少なくとも1つは[-C(=O)-O-]である。R8~R14は、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよいアルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシ基、又はシアノ基を示す。
【0061】
【0062】
式(b1)~(b5)で表される重合単位中のR、Aとしては、式(a1)~(a4)で表される重合単位中のR、Aと同様の例が挙げられる。また、式(b1)~(b5)で表される重合単位中のR8~R14におけるアルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、及び保護基で保護されていてもよいカルボキシ基としては、式(a1)~(a4)で表される重合単位中のRaにおけるものと同様の例が挙げられる。
【0063】
前記R8~R14におけるフッ素原子を有するアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル基等の前記アルキル基を構成する水素原子の1個又は2個以上がフッ素原子で置き換えられた基[フルオロ(C1-6)アルキル基]等が挙げられる。
【0064】
前記式(b1)~(b4)で表される重合単位中、前記R8~R11は、それぞれ、1個又は2個以上有していてもよく、1~3個が好ましい。また、前記式(b1)~(b4)で表される重合単位中、前記R8~R11を2個以上有する場合、2個以上の前記R8~R11は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0065】
モノマー単位bの中でも、式(b1)で表され、且つR8がシアノ基、アミド基を有する基、イミド基を有する基、又はフルオロ(C1-6)アルキル基等の電子吸引性基である重合単位;式(b2)で表される重合単位;式(b3)で表され、且つYがカルボニル基である重合単位;式(b4)で表される重合単位;及び式(b5)で表される重合単位は、樹脂に優れた基板密着性、及び耐エッチング性を付与することができるとともに、アルカリ現像液への溶解性に優れ、微細パターンを高精度に形成することができる点で好ましい。
【0066】
前記式(b1)において、R8がシアノ基、アミド基を有する基、イミド基を有する基、又はフルオロ(C1-6)アルキル基等の電子吸引性基である場合、前記R8は式(b1)中の*を付した炭素原子に少なくとも結合していることが特に好ましい。
【0067】
前記モノマー単位bの具体例としては、下記式で表される重合単位等が挙げられる。下記式で表されるモノマー単位中、Rdはメチル基又は水素原子を示す。前記モノマー単位bは対応する不飽和カルボン酸エステルを重合に付すことにより樹脂内に導入することができる。
【0068】
【0069】
【0070】
本発明の樹脂は、さらに、モノマー単位cを有していてもよい。前記モノマー単位cは下記式(c1)で表される重合単位である。本発明の樹脂が重合単位としてモノマー単位cを含む場合、フォトレジスト用樹脂により高い透明性及び耐エッチング性を付与することができる。式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。Aは単結合又は連結基を示す。Rbは保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシ基、又はシアノ基を示し、中でも、ヒドロキシ基、シアノ基が好ましい。qは1~5の整数を示す。環Z2は炭素数6~20の脂環式炭化水素環を示す。qが2~5の整数である場合、2~5個のRbは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0071】
【0072】
式(c1)で表される重合単位中のR、Aとしては、式(a1)~(a4)で表される重合単位中のR、Aと同様の例が挙げられる。また、式(c1)で表される重合単位中のRbにおける保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシ基としては、式(a1)~(a4)で表される重合単位中のRaにおけるものと同様の例が挙げられる。
【0073】
式(c1)で表される重合単位中の環Z2は炭素数6~20の脂環式炭化水素環を示し、例えば、シクロヘキサン環、シクロオクタン環等の6~20員(好ましくは6~15員、特に好ましくは6~12員)程度のシクロアルカン環;シクロヘキセン環等の6~20員(好ましくは6~15員、特に好ましくは6~10員)程度のシクロアルケン環等の単環の脂環式炭化水素環;アダマンタン環;ノルボルナン環、ノルボルネン環、ボルナン環、イソボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等のノルボルナン環又はノルボルネン環を含む環;パーヒドロインデン環、デカリン環(パーヒドロナフタレン環)、パーヒドロフルオレン環(トリシクロ[7.4.0.03,8]トリデカン環)、パーヒドロアントラセン環等の多環の芳香族縮合環が水素添加された環(好ましくは完全水素添加された環);トリシクロ[4.2.2.12,5]ウンデカン環等の2環系、3環系、4環系等の橋架け炭化水素環(例えば、炭素数6~20程度の橋架け炭化水素環)等の2~6環程度の橋かけ環式炭化水素環等が挙げられる。前記環Z2としては、中でも、ノルボルナン環又はノルボルネン環を含む環、アダマンタン環が好ましい。
【0074】
前記モノマー単位cの具体例としては、下記式で表される重合単位等が挙げられる。下記式で表される重合単位中、Rdは、メチル基又は水素原子を示す。前記モノマー単位cは、対応する不飽和カルボン酸エステルを重合に付すことにより樹脂内に導入することができる。
【0075】
【0076】
本発明の樹脂は、前記モノマー単位a、前記モノマー単位b、及び前記モノマー単位cからなる群より選択される少なくとも1つのモノマー単位を含むことが好ましい。この場合、本発明の樹脂におけるモノマー単位aの含有量は、樹脂を構成する全モノマー単位に対して、例えば、1~99モル%、好ましくは5~95モル%である。また、本発明の樹脂が前記モノマー単位bを有する場合のモノマー単位bの含有量は、樹脂を構成する全モノマー単位に対して、例えば、1~99モル%、好ましくは5~95モル%である。また、本発明の樹脂が前記モノマー単位cを有する場合のモノマー単位cの含有量は、樹脂を構成する全モノマー単位に対して、例えば、1~99モル%、好ましくは5~95モル%である。
【0077】
また、本発明の樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、例えば、1000~50000が好ましく、より好ましくは3000~20000である。本発明の樹脂の分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量との比:Mw/Mn)は3.5以下であれば特に限定されないが、例えば、1.1~3.0が好ましく、より好ましくは1.2~2.5である。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、GPCにより標準物質としてポリスチレンを用いて測定することができ、実施例にて用いた方法により測定されたものであることが好ましい。
【0078】
本発明の樹脂の酸価は特に限定されないが、例えば、0.10mmol/g以下が好ましく、より好ましくは0.05mmol/g以下、さらに好ましくは0.03mmol/g以下である。前記酸価が0.10mmol/g以下であると、樹脂中の酸分解性基が脱離せずに保護されているため、優れたレジスト性能を有し、且つ経時安定性が良好となる。なお、前記酸価の下限は特に限定されないが、例えば、0mmol/gである。
【0079】
<樹脂の製造方法>
本発明の樹脂の製造方法は特に限定されないが、例えば、滴下重合法が挙げられる。滴下重合法としては、例えば、重合開始剤の存在下、単量体又は単量体を含む溶液を滴下して単量体を重合させる工程(以下、「重合工程」と称することがある)を含む方法が挙げられる。より具体的には、[1]重合開始剤及び単量体を含む溶液を滴下する工程、[2]単量体又は単量体を含む溶液を、重合開始剤を含む溶液に対して滴下する工程等を含む方法が挙げられる。また、重合開始剤に加え、連鎖移動剤の存在下で滴下重合法を実施してもよい。単量体としては、例えば、モノマー単位a、前記モノマー単位b、前記モノマー単位cに対応する単量体を挙げることができる。
【0080】
また、本発明の樹脂の製造方法では、重合工程後の反応液に重合禁止剤を加える工程(以下、「重合抑制工程」と称することがある)を含むことが、レジスト溶媒に対する溶解性が高い樹脂が得られる点で好ましい。
【0081】
重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を使用することができ、例えば、アゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物が挙げられ、特に、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ-t-ブチルパーオキシド、イソ-ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等が好ましい。
【0082】
重合開始剤の使用量は、所望の分子量分布を有する樹脂を得るために必要な量であれば特に限定されず、例えば、単量体の総量(100重量部)に対して、0.01~30重量部、好ましくは0.2~20重量部、より好ましくは0.5~10重量部である。
【0083】
連鎖移動剤としては、ラジカル重合に使用される公知の連鎖移動剤を使用することができ、例えば、チオール(n-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、tert-ブチルメルカプタン、n-ラウリルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、トリエチレングリコールジメルカプタン等)、チオール酸及びそのエステル(メルカプトプロピオン酸、チオ安息香酸、チオグリコール酸、チオリンゴ酸等、及びこれらのアルキルエステル等)、アルコール(イソプロピルアルコール等)、アミン(ジブチルアミン等)、次亜燐酸塩(次亜燐酸ナトリウム等)、α-メチルスチレンダイマー、タービノーレン、ミルセン、リモネン、α-ピネン、β-ピネン等を挙げることができる。
【0084】
連鎖移動剤の使用量は特に限定されないが、単量体の総量(100モル)に対して、0.001~100モルが好ましく、より好ましくは0.01~50モル、さらに好ましくは0.1~30モル、特に好ましくは1~10モルである。また、単量体の総量(100重量部)に対する連鎖移動剤の使用量は特に限定されないが、0.1~100重量部が好ましく、より好ましくは0.5~50重量部、さらに好ましくは1~25重量部である。
【0085】
前記重合工程は、無溶剤で行ってもよいし、重合溶媒の存在下で行ってもよい。前記重合溶媒としては、例えば、グリコール系溶媒(前記グリコール系化合物)、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、1価アルコール系溶媒(前記1価アルコール系化合物)、炭化水素系溶媒、これらの混合溶媒等が挙げられる。グリコール溶媒としては、前記グリコール系化合物以外に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。エステル系溶媒には、乳酸エチル等の乳酸エステル系溶媒;3-メトキシプロピオン酸メチル等のプロピオン酸エステル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶媒等が挙げられる。ケトン系溶媒には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。エーテル系溶媒には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル等が挙げられる。アミド系溶媒には、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。スルホキシド系溶媒には、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。炭化水素系溶媒には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0086】
好ましい重合溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール系溶媒;乳酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0087】
単量体を含む溶液の滴下は、連続的滴下(一定時間かけて滴下する態様)であってもよく、断続的滴下(複数回に分けて分割滴下する態様)であってもよい。また、前記滴下の速度等は、滴下途中に1回以上変更してもよい。
【0088】
単量体を含む溶液の全滴下時間(前記滴下開始後から前記滴下終了時までの時間)は、重合温度及び単量体の種類等によって異なるが、一般には1~10時間、好ましくは2~9時間、さらに好ましくは3~8時間である。
【0089】
重合温度は特に限定されないが、例えば、30~150℃が好ましく、より好ましくは50~120℃、さらに好ましくは60~100℃である。なお、前記重合温度は、重合途中に前記の重合温度の範囲内において1回以上変更してもよい。
【0090】
前記重合工程では、前記滴下終了後、熟成する時間を設けてもよい。前記熟成する時間としては特に限定されないが、例えば、0.5~10時間であることが好ましく、より好ましくは1~5時間である。
【0091】
本発明では、重合抑制工程を含むことが、レジスト溶媒に対する溶解性が高い樹脂が得られる点で好ましい。すなわち、本発明では、前記重合工程により得られた反応液に特定量の重合禁止剤を添加することにより、該反応液に含まれる樹脂と未反応のモノマーとが経時で重合することを抑制し、難溶解性樹脂の生成を低減する工程を含むことが好ましい。
【0092】
前記重合抑制工程は、前記重合工程により得られた反応液を冷却せずに重合禁止剤を添加してもよいし、冷却後に重合禁止剤を添加してもよい。なお、ここでの冷却とは、例えば、反応液を室温(23℃)以下に下げることを意味する。また、冷却の方法としては、例えば、空冷や水冷等が挙げられる。
【0093】
重合禁止剤としては特に限定されないが、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン等のハイドロキノン類;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2-t-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、4-メトキシフェノール(メトキノン)等のフェノール類;p-ベンゾキノン、クロロ-p-ベンゾキノン、2,3-ジメチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジメチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジクロロ-p-ベンゾキノン、2,6-ジクロロ-p-ベンゾキノン、メトキシ-p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、テトラブロモ-p-ベンゾキノン、テトラクロロ-p-ベンゾキノン等のベンゾキノン類等;4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-カルボキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシ安息香酸、2-ヒドロキシ-2-アザアダマンタン、4-イソチオシアネート-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(2-ヨードアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-[2-[2-(4-ヨードフェノキシ)エトキシ]カルボニル]ベンゾイルオキシ-2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、2,2,6,6-テトラメチル-4-(2-プロピニルオキシ)ピペリジン1-オキシル等のN-オキシル化合物類;4-t-ブチルカテコール等のカテコール類;o-ジニトロベンゼン、m-ジニトロベンゼン、p-ジニトロベンゼン、2,4-ジニトロトルエン、1,3,5-トリニトロベンゼン、1,3,5-トリニトロアニソール、1,3,5-トリニトロトルエン等のニトロ化合物類;アンモニウムニトロソフェニルヒドロキシルアミン、アルミニウムニトロソフェニルヒドロキシルアミン等のニトロソ化合物類;ジエチルヒドロキシルアミン、ジフェニルアミン等のアミン類;フェノチアジン;1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル;塩化銅、硫酸銅、硫酸鉄等の無機系重合禁止剤を挙げることができる。この中でも、ハイドロキノン類やフェノール類はレジスト用途の原材料、すなわちレジスト用の樹脂を作製するためのモノマーに、重合抑制成分として含まれていることが一般的であるため、リソグラフィ性能への影響が低いと考えられるため好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】
重合禁止剤の使用量は特に限定されないが、例えば、重合工程後の反応液に含まれる樹脂固形分に対して10ppm以上であることが好ましく、より好ましくは50~2000ppm、さらに好ましくは100~1000ppm、最も好ましくは200~500ppmである。
【0095】
前記重合工程において生成した樹脂、又は前記重合抑制工程を経て得られた樹脂は、例えば、沈殿(再沈殿を含む)により回収することができる。例えば、重合溶液(ポリマードープ)を溶媒(沈殿溶媒)中に添加して樹脂を沈殿させるか、又は該樹脂を再度適当な溶媒に溶解させ、この溶液を溶媒(再沈殿溶媒)中に添加して再沈殿させるか、あるいはまた、重合溶液(ポリマードープ)中に溶媒(再沈殿溶媒や重合溶媒)を添加して希釈することにより目的の樹脂を得ることができる。沈殿又は再沈殿溶媒は有機溶媒及び水のいずれであってもよく、また混合溶媒であってもよい。
【0096】
沈殿又は再沈殿溶媒としては、周知乃至慣用の溶媒を用いることができ、特に限定されない。また、沈殿又は再沈殿溶媒は、前記の重合溶媒と同一の溶媒であってもよいし、異なる溶媒であってもよい。沈殿又は再沈殿溶媒としては、例えば、前記重合溶媒として例示された有機溶媒(グリコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、1価アルコール系溶媒、炭化水素系溶媒);ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素等);ニトロ化合物(ニトロメタン、ニトロエタン等);ニトリル(アセトニトリル、ベンゾニトリル等);カーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等);カルボン酸(酢酸等);これらの溶媒を含む混合溶媒等が挙げられる。
【0097】
中でも、前記沈殿又は再沈殿溶媒としては、少なくとも炭化水素(特に、ヘキサンやヘプタン等の脂肪族炭化水素)もしくは、アルコール(特に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等)を含む溶媒が好ましい。このような少なくとも炭化水素を含む溶媒において、炭化水素(例えば、ヘキサンやヘプタン等の脂肪族炭化水素)と他の溶媒(例えば、酢酸エチル等のエステル類等)との比率は、例えば、前者/後者(体積比;25℃)=10/90~99/1、好ましくは前者/後者(体積比:25℃)=30/70~98/2、さらに好ましくは前者/後者(体積比:25℃)=50/50~97/3である。
【0098】
また、前記沈殿又は再沈殿溶媒としては、アルコール(特に、メタノール)と水との混合溶媒、グリコール系溶媒(特に、ポリエチレングリコール)と水との混合溶媒も好ましい。この場合の有機溶媒(アルコール又はグリコール系溶媒)と水との比率(体積比;25℃)は、例えば、前者/後者(体積比;25℃)=10/90~99/1、好ましくは前者/後者(体積比:25℃)=30/70~98/2、さらに好ましくは前者/後者(体積比:25℃)=50/50~97/3である。
【0099】
沈殿(再沈殿を含む)で得られた樹脂は、必要に応じて、リンス処理や、樹脂を溶媒でほぐして分散させながら撹拌して洗浄する処理(「リパルプ処理」と称する場合がある)に付される。リパルプ処理後にリンス処理を施してもよい。重合により生成した樹脂を溶媒でリパルプすることや、リンスすることにより、樹脂に付着している残存モノマーや低分子量オリゴマー等を効率よく除くことができる。
【0100】
本発明の製造方法においては、中でも、前記リパルプ処理やリンス処理溶媒として、少なくとも炭化水素(特に、ヘキサンやヘプタン等の脂肪族炭化水素)、アルコール(特に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等)、又はエステル類(特に、酢酸エチル等)を含む溶媒が好ましい。
【0101】
前記沈殿(再沈殿を含む)、リパルプ処理、又はリンス処理の後、例えば、必要に応じて溶媒をデカンテーション、濾過等で溶媒を取り除き、乾燥処理を施してもよい。
【0102】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、本発明の樹脂と、感放射線性酸発生剤を少なくとも含有する。
【0103】
感放射線性酸発生剤としては、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線による露光により効率よく酸を発生する、慣用乃至公知の化合物を使用することができ、母核と発生する酸とからなる化合物である。前記母核としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む)、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、ジスルホニルジアゾメタン化合物、ジスルホニルメタン化合物、オキシムスルホネート化合物、ヒドラジンスルホネート化合物等が挙げられる。また、前記露光により発生する酸としては、例えば、アルキルあるいはフッ化アルキルスルホン酸、アルキルあるいはフッ化アルキルカルボン酸、アルキルあるいはフッ化アルキルスルホニルイミド酸等が挙げられる。これらは1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0104】
感放射線性酸発生剤の使用量は、放射線の照射により生成する酸の強度や樹脂における各繰り返し単位の比率等に応じて適宜選択でき、例えば、樹脂100重量部に対して0.1~30重量部、好ましくは1~25重量部、さらに好ましくは2~20重量部の範囲から選択できる。
【0105】
樹脂組成物は、例えば、前記樹脂と、感放射線性酸発生剤を、レジスト用溶剤中で混合することにより調製することができる。前記レジスト用溶剤としては、前記重合溶媒として例示したグリコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、これらの混合溶媒等を使用することができる。
【0106】
樹脂組成物の樹脂濃度は、例えば、3~40重量%である。樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(例えば、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、カルボキシ基含有樹脂)等のアルカリ可溶成分、着色剤(例えば、染料)等を含んでいてもよい。
【0107】
<パターン形成方法>
本発明の樹脂組成物を基材又は基板上に塗布し、乾燥した後、所定のマスクを介して、塗膜(レジスト膜)に露光して(又は、さらに露光後ベークを行い)潜像パターンを形成し、次いでアルカリ溶解することにより、耐膨潤性に優れ且つ微細なパターンを高い精度で形成することができる。
【0108】
基材又は基板としては、シリコンウエハー、金属、プラスチック、ガラス、セラミック等が挙げられる。樹脂組成物の塗布は、スピンコータ、ディップコータ、ローラコータ等の慣用の塗布手段を用いて行うことができる。塗膜の厚みは、例えば、0.05~20μmが好ましく、より好ましくは0.1~2μmである。
【0109】
露光には、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線を利用することができる。
【0110】
露光により感放射線性酸発生剤から酸が生成し、この酸により、樹脂組成物の酸の作用によりアルカリ可溶となる重合単位(酸分解性基を有する繰り返し単位)のカルボキシ基等の保護基(酸分解性基)が速やかに脱離して、可溶化に寄与するカルボキシ基等が生成する。そのため、アルカリ現像液による現像により、所定のパターンを精度よく形成できる。
【実施例】
【0111】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフラン溶媒を用いたGPC測定(ゲル浸透クロマトグラフ)により求めた。標準試料にポリスチレンを使用し、検出器としては屈折率計(Refractive Index Detector;RI検出器)を用いた。また、GPC測定には、昭和電工(株)製カラム(商品名「KF-806L」)を3本直列につないだものを使用し、カラム温度40℃、RI温度40℃、テトラヒドロフラン流速0.8mL/分の条件で行った。分子量分布(Mw/Mn)は前記測定値より算出した。
【0112】
実施例1(樹脂A-1の作製)
還流管、撹拌子、3方コックを備えた丸底フラスコに、窒素雰囲気下、34.0gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを入れて温度を80℃に保ち、撹拌しながら、10.57g(0.0476mol)のメタクリル酸5-オキソ-4-オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン-2-イル、2.31g(0.0098mol)のメタクリル酸3-ヒドロキシアダマンタン-1-イル、3.37g(0.0122mol)のメタクリル酸1-(アダマンタン-1-イル)-1-メチルプロピル、13.75g(0.0525mol)のメタクリル酸2-イソプロピルアダマンタン-2-イル、0.75gのジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート[和光純薬工業(株)製、商品名「V-601」]、136.0gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合した溶液を6時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、反応溶液の撹拌をさらに2時間続けた。撹拌終了後、メトキノンを9mg加え、その後4時間かけて反応溶液の内温を23℃まで冷却した。その後直ちに、該反応溶液を10倍量のヘプタンと酢酸エチル9:1(重量比)の混合液(25℃)中に撹拌しながら滴下した。生じた沈殿物を濾別、減圧乾燥することにより、所望の樹脂A-1を23.2g得た。回収した樹脂をGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が10100、分子量分布(Mw/Mn)が1.8であった。
【0113】
樹脂A-1は、下記式で表される重合単位を有する。
【化14】
【0114】
実施例2(樹脂A-2の作製)
還流管、撹拌子、3方コックを備えた丸底フラスコに、窒素雰囲気下、34.0gのシクロヘキサノンを入れて温度を80℃に保ち、撹拌しながら、11.06g(0.0448mol)のメタクリル酸6-シアノ-5-オキソ-4-オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン-2-イル、15.86g(0.0605mol)のメタクリル酸2-イソプロピルアダマンタン-2-イル、3.08g(0.0157mol)のメタクリル酸1-イソプロピルシクロペンタン-1-イル、0.57gのジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート[和光純薬工業(株)製、商品名「V-601」]、136.0gのシクロヘキサノンを混合した溶液を6時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、反応溶液の撹拌をさらに2時間続けた。撹拌終了後、10分間かけて反応溶液の内温を23℃まで冷却した。その後直ちにハイドロキノンを21mg加え、精製操作まで23℃で1日保管した。保管後、該反応溶液を10倍量のヘプタンと酢酸エチル9:1(重量比)の混合液(25℃)中に撹拌しながら滴下した。生じた沈殿物を濾別、減圧乾燥することにより、所望の樹脂A-2を19.5g得た。回収した樹脂をGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が10200、分子量分布(Mw/Mn)が1.8であった。
【0115】
樹脂A-2は、下記式で表される重合単位を有する。
【化15】
【0116】
実施例3(樹脂A-3の作製)
還流管、撹拌子、3方コックを備えた丸底フラスコに、窒素雰囲気下、34.0gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを入れて温度を80℃に保ち、撹拌しながら、8.76g(0.0395mol)のメタクリル酸5-オキソ-4-オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン-2-イル、4.40g(0.0259mol)のメタクリル酸2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル、8.26g(0.0299mol)のメタクリル酸1-(アダマンタン-1-イル)-1-メチルプロピル、8.58g(0.0408mol)のメタクリル酸1-(シクロヘキサン-1-イル)-1-メチルエチル、0.90gのジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート[和光純薬工業(株)製、商品名「V-601」]、136.0gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合した溶液を6時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、反応溶液の撹拌をさらに2時間続けた。撹拌終了後、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカルを6mg加え、4時間かけて反応溶液の内温を23℃まで冷却したのち、精製操作まで23℃で1日保管した。保管後、該反応溶液を10倍量のヘプタンと酢酸エチル9:1(重量比)の混合液(25℃)中に撹拌しながら滴下した。生じた沈殿物を濾別、減圧乾燥することにより、所望の樹脂A-3を24.7g得た。回収した樹脂をGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が14800、分子量分布(Mw/Mn)が2.0であった。
【0117】
樹脂A-3は、下記式で表される重合単位を有する。
【化16】
【0118】
比較例1(樹脂B-1の作製)
撹拌終了後にメトキノンを加えなかったこと以外は実施例1と同様にして、所望の樹脂B-1を23.4g得た。回収した樹脂をGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が10200、分子量分布(Mw/Mn)が1.9であった。
【0119】
比較例2(樹脂B-2の作製)
反応溶液の冷却後にハイドロキノンを加えなかったこと以外は実施例2と同様にして、所望の樹脂B-2を19.6g得た。回収した樹脂をGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が10100、分子量分布(Mw/Mn)が1.8であった。
【0120】
比較例3(樹脂B-3の作製)
撹拌終了後に4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカルを加えなかったこと以外は実施例3と同様にして、所望の樹脂B-3を24.6g得た。回収した樹脂をGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が15100、分子量分布(Mw/Mn)が2.0であった。
【0121】
[濁度の評価]
樹脂A-1~3、樹脂B-1~3を、固形分濃度が5重量%となる様にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解し、樹脂溶液を作製した。前記樹脂溶液を、濁度計(型番:NDH-300A、日本電色工業(株)製)を用いて平成15年度厚生労働省告示第261号日本水道協会「上水試験法」に従ってポリスチレン換算濁度を測定した。具体的な手順は以下の通りである。
【0122】
富士フイルム和光純薬(株)製の濁度標準液(ポリスチレン)100度IIをNDH-300Aにて濁度測定を行った結果、その濁度は36.62であった。この値から、NDH-300Aでの測定値が1.00の場合のポリスチレン換算濁度は2.731であることが理解できる。すなわち、ポリスチレン換算濁度「Y」は下記式で導くことができる。式中の「X」は測定値である。
Y=2.731X
【0123】
上記式に従い、樹脂溶液のポリスチレン換算濁度を求めた。
【表1】
【0124】
評価結果から理解できる通り、本発明の樹脂(樹脂A-1~3)はポリスチレン換算濁度が低いことが明らかとなった。その一方で、樹脂B-1~3はポリスチレン換算濁度が高く、フォトレジスト用途に不向きであることが明らかになった。ここから、本発明の樹脂は微細なパターンを精度よく形成することが可能であると考えられる。
【0125】
以上のまとめとして本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
[1] アクリル系樹脂からなるフォトレジスト用樹脂であって、樹脂固形分濃度が5重量%となる様にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解した時に、平成15年度厚生労働省告示第261号日本水道協会「上水試験法」に記載された方法を用いて測定したポリスチレン換算濁度が30以下、20以下、10以下、5以下、又は3以下であるフォトレジスト用樹脂。
[2] 式(a1)~(a4)[式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示し、Aは単結合又は連結基を示す。R2~R4は同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。なお、R2及びR3は互いに結合して環を形成していてもよい。R5、R6は同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。R7は-COORc基を示し、前記Rcは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、又はオキセパニル基を示す。nは1~3の整数を示す。Raは環Z1に結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシ基を示す。pは0~3の整数を示す。環Z1は炭素数3~20の脂環式炭化水素環を示す。]で表される重合単位からなる群より選択される少なくとも1種の重合単位を含む、[1]に記載のフォトレジスト用樹脂。
[3] 前記式(a1)~(a4)で表される重合単位からなる群より選択される少なくとも1種の重合単位の含有量が、樹脂を構成する全モノマー単位に対して、1~99モル%、又は5~95モル%である、[2]に記載のフォトレジスト用樹脂。
[4] 式(b1)~(b5)[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示し、Aは単結合又は連結基を示す。Xは非結合、メチレン基、エチレン基、酸素原子、又は硫黄原子を示す。Yはメチレン基、又はカルボニル基を示す。Zは、2価の有機基を示す。V1~V3は、同一又は異なって、-CH2-、[-C(=O)-]、又は[-C(=O)-O-]を示す。ただし、V1~V3のうち少なくとも1つは[-C(=O)-O-]である。R8~R14は、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよいアルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシ基、又はシアノ基を示す。]で表される重合単位からなる群より選択される少なくとも1種の重合単位を含む、[1]~[3]のいずれか1つに記載のフォトレジスト用樹脂。
[5] 前記式(b1)~(b5)で表される重合単位からなる群より選択される少なくとも1種の重合単位の含有量が、樹脂を構成する全モノマー単位に対して、1~99モル%、又は5~95モル%である、[4]に記載のフォトレジスト用樹脂。
[6] さらに、式(c1)[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。Aは単結合又は連結基を示す。Rbは保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシ基、又はシアノ基を示す。qは1~5の整数を示す。環Z2は炭素数6~20の脂環式炭化水素環を示す。]で表される重合単位を含む、[2]~[5]のいずれか1つに記載のフォトレジスト用樹脂。
[7] 前記式(c1)で表される重合単位の含有量が、樹脂を構成する全モノマー単位に対して、1~99モル%、又は5~95モル%である、[6]に記載のフォトレジスト用樹脂。
[8] 重量平均分子量(Mw)が、1000~50000、又は3000~20000である[1]~[7]のいずれか1つに記載のフォトレジスト用樹脂。
[9] 分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量との比:Mw/Mn)が、3.5以下、1.1~3.0、又は1.2~2.5である、[1]~[8]のいずれか1つに記載のフォトレジスト用樹脂。
[10] 酸価が、0.10mmol/g以下、0.05mmol/g以下、0.03mmol/g以下である[1]~[9]のいずれか1つに記載のフォトレジスト用樹脂。
[11] 重合開始剤の存在下、単量体又は単量体を含む溶液を滴下して単量体を重合させる工程と、前記重合工程後の反応液に含まれる樹脂固形分に対して10ppm以上、50~2000ppm、100~1000ppm、又は200~500ppmの重合禁止剤を添加する工程とを含む、[1]~[10]のいずれか1つに記載のフォトレジスト用樹脂の製造方法。
[12] 重合禁止剤がハイドロキノン類、フェノール類、ベンゾキノン類等、及びN-オキシル化合物類からなる群より選択される少なくとも1つである[11]に記載のフォトレジスト用樹脂の製造方法。
[13] [1]~[12]のいずれか1つに記載のフォトレジスト用樹脂と、感放射線性酸発生剤とを少なくとも含有するフォトレジスト用樹脂組成物。
[14] [13]に記載のフォトレジスト用樹脂組成物を基板に塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を露光し、次いでアルカリ溶解する工程を少なくとも含むパターン形成方法。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の樹脂は、レジスト溶媒に対する難溶解成分が低減されたため、高いレジスト性能を発揮する。また、本発明の組成物は、レジスト溶媒に対する難溶解成分が低減された樹脂を含むため、高いレジスト性能を発揮するとともに、これを用いることにより微細なパターンを精度よく形成することができる。