(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 29/04 20060101AFI20250317BHJP
F01P 3/18 20060101ALI20250317BHJP
【FI】
F02B29/04 F
F01P3/18 G
F02B29/04 K
(21)【出願番号】P 2022036966
(22)【出願日】2022-03-10
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平尾 友
(72)【発明者】
【氏名】松尾 真也
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-309944(JP,A)
【文献】特開2010-127143(JP,A)
【文献】特開2012-107519(JP,A)
【文献】特開2018-105193(JP,A)
【文献】特開2019-100217(JP,A)
【文献】実開昭60-127427(JP,U)
【文献】実開平04-017284(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0251232(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0360438(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102005017973(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 3/18
F02B 29/04
F02B 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に並んで配置される2つの気筒列と、
過給機と、
前記2つの気筒列に共用され、前記過給機に接続されるインタークーラと、
を備え、
前記インタークーラは、
冷却液が流れる冷却液流路と、
前記過給機からの吸気が流れる吸気流路と、
を有し、
前記冷却液流路は、前記冷却液の流れに沿う第1方向の一方側に前記冷却液の入口と出口とを有し、
前記吸気流路は、前記吸気の流れに沿う第2方向の一方側に前記吸気の入口、他方側に前記吸気の出口を有
し、
前記第1方向は、左右方向である、エンジン。
【請求項2】
前記インタークーラは、
左右方向に延びる筒状の本体部と、
前記冷却液流路を用いて構成され、前記本体部の左右の端部に配置される一対の保持部に保持される熱交換部と、
前記本体部の左右方向一方側に配置され、前記一対の保持部の一方を覆う第1蓋部と、
前記前記本体部の左右方向他方側に配置され、前記一対の保持部の他方を覆う第2蓋部と、
を有し、
前記第1蓋部は、内部に前記冷却液の入口と出口とを構成する空間を有し、
前記第2蓋部は、前記冷却液の入口から前記熱交換部を介して入った前記冷却液を前記冷却液の出口に向かわせる折り返し部を構成する内部空間を有する、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記吸気流路は、前記吸気が前記第2方向の一方側と他方側とを1回通るように構成されている、請求項1又は2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記吸気流路は、前記吸気が前記第2方向の一方側から他方側に到達した後に、前記第2方向の一方側に向けて折り返し、更に前記第2方向の他方側に折り返すことを少なくとも一回行うように構成されている、請求項1又は2に記載のエンジン。
【請求項5】
前記第1方向と前記第2方向とは交差する、請求項1から4のいずれか1項に記載のエンジン。
【請求項6】
前記過給機は、前記2つの気筒列のそれぞれに対して1つずつ設けられ、
前記インタークーラは、2つの前記過給機から前記吸気を供給される、請求項1から5のいずれか1項に記載のエンジン。
【請求項7】
前記2つの気筒列の間に位置するバンク内エリアに少なくとも一部が配置され、前記吸気の出口部分と接続される吸気マニホールドと、
前記気筒列の前記バンク内エリアとは反対面側に配置される排気マニホールドと、
を備える、請求項1から6のいずれか1項に記載のエンジン。
【請求項8】
前記吸気の入口は、前記インタークーラの下方に配置され、
前記吸気の出口は、前記インタークーラの上方に配置される、請求項1から7のいずれか1項に記載のエンジン。
【請求項9】
前記インタークーラの、前記冷却液流路を用いて構成される熱交換部は、
左右方向に延びる複数の管を
束ねた多管式冷却構造を備える、請求項1から8のいずれか1項に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インタークーラを有するV型エンジンが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示されるV型エンジンは、一対のバンクを有する。そして、各バンクのシリンダヘッドの上方に、インタークーラがそれぞれ配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対のバンクのそれぞれに対してインタークーラを設ける構成とすると、例えば、部品点数の増加により、コストアップまたはエンジンサイズの大型化が生じることが懸念される。また、一対のバンクのそれぞれに対してインタークーラを設ける構成では、例えば、2つのインタークーラの間で冷却液の流量又は流速に差が生じ易くなり、バンク間で冷却性能に差が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、2つの気筒列およびインタークーラを備えるエンジンに適した技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的なエンジンは、互いに並んで配置される2つの気筒列と、過給機と、前記2つの気筒列に共用され、前記過給機に接続されるインタークーラと、を備える。前記インタークーラは、冷却液が流れる冷却液流路と、前記過給機からの吸気が流れる吸気流路と、を有する。前記冷却液流路は、前記冷却液の流れに沿う第1方向の一方側に前記冷却液の入口と出口とを有する。前記吸気流路は、前記吸気の流れに沿う第2方向の一方側に前記吸気の入口、他方側に前記吸気の出口を有する。
【発明の効果】
【0007】
例示的な本発明によれば、2つの気筒列およびインタークーラを備えるエンジンにおいて、部品点数の削減を図ることができる。また、例示的な本発明によれば、2つの気筒列の間で、インタークーラによる吸気の温度の調整に差が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】エンジンが備えるシリンダブロック、ヘッドブロック、および、ヘッドカバーで構成される部分を抽出して示す概略斜視図
【
図3】エンジンが備えるシリンダブロック部分の概略断面図
【
図5】エンジンの吸排気系を構成する部品を抽出して示した概略斜視図
【
図6】
図5に示す図から過給機および過給機の周辺の一部の部品を取り除いて後方から見た概略平面図
【
図7】
図5に示す図から過給機およびその周辺の一部の部品を取り除いて上方から見た概略平面図
【
図8】
図5に示す図から過給機およびその周辺の一部の部品を取り除いて右側方から見た概略平面図
【
図9】エンジンが備えるインタークーラの概略斜視図
【
図10】エンジンが備える2つの吸気マニホールドを示す概略斜視図
【
図11】エンジンが備えるインタークーラの概略構成を示す第1断面斜視図
【
図12】エンジンが備えるインタークーラの概略構成を示す第2断面斜視図
【
図13】エンジンが備えるインタークーラにおける冷却液と吸気の流れを説明するための図
【
図14】変形例のインタークーラの構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図面において、適宜、3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。以下の説明において、X方向を前後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向とする。なお、+X側が前側、-X側が後側とする。+Y側を右側、-Y側を左側とする。+Z側を上側、-Z側を下側とする。詳細には、
図1に示すクランク軸(出力軸)の中心線Cが延びる方向を前後方向とし、シリンダブロック1に対してフライホイール2が配置される側を後側とする。また、シリンダブロック1に対してオイルパン3が配置される側を下側として上下方向を定義する。前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と定義し、後方から前方に向かって見た場合に右となる側を右側、左となる側を左側とする。なお、これらの方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。また、本明細書では、クランク軸方向は、クランク軸の中心線Cが延びる前後方向と同じである。
【0010】
<1.エンジンの概要>
図1は、本発明の実施形態に係るエンジン100の構成を示す概略斜視図である。エンジン100は、例えば船舶に使用する舶用エンジンとして好適である。ただし、エンジン100は、舶用エンジンに限らず、他の用途に適用されてもよい。なお、エンジン100はディーゼルエンジンである。
【0011】
図1に示すように、エンジン100は、シリンダブロック1と、ヘッドブロック4と、ヘッドカバー5とを備える。
図2は、エンジン100が備えるシリンダブロック1、ヘッドブロック4、および、ヘッドカバー5で構成される部分を抽出して示す概略斜視図である。
図3は、エンジン100が備えるシリンダブロック1部分の概略断面図である。
【0012】
図2および
図3に示すように、シリンダブロック1の内部には、前後方向に延びるクランク軸6およびピストン7が配置される。シリンダブロック1の内部は、下側に配置される潤滑油を貯留するオイルパン3の内部と繋がる。クランク軸6の後端には、フライホイール2(
図1参照)が取り付けられる。フライホイール2は、クランク軸6と一体的に回転し、エンジン100の動力を取り出すために利用される。ピストン7は、詳細には、シリンダブロック1に形成されるシリンダ11内に配置される。ピストン7は、コネクティングロッド71を介してクランク軸6に連結される。
【0013】
詳細には、シリンダブロック1は、右側に配置される右シリンダ11Rと、左側に配置される左シリンダ11Lとを有する。右シリンダ11Rは、後方から見た場合に、上下方向に対して右側に傾き、斜め方向に延びる円筒状である。左シリンダ11Lは、後方から見た場合に、上下方向に対して左側に傾き、斜め方向に延びる円筒状である。右シリンダ11Rと左シリンダ11Lとは、V字状に配置される。なお、V字状に配置される一対の右シリンダ11Rと左シリンダ11Lとは、シリンダ軸が前後方向に若干ずれて配置される。本実施形態では、左シリンダ11Lが右シリンダ11Rに対して若干前方に配置される。
【0014】
シリンダブロック1は、複数の右シリンダ11Rが前後方向に並ぶ右気筒列111Rと、複数の左シリンダ11Lが前後方向に並ぶ左気筒列111Lとを有する。すなわち、エンジン100は、2つの気筒列111R、111Lを備える。2つの気筒列111R、111Lのそれぞれは、クランク軸方向に列が延びる。2つの気筒列111R、111Lは、互いに並んで配置される。なお、2つの気筒列111R、111Lは、詳細には左右方向に並ぶ。右気筒列111Rと左気筒列111Lとは、V字状のバンクを構成する。本実施形態では、右気筒列111Rを構成する右シリンダ11Rの数と、左気筒列111Lを構成する左シリンダ11Lの数は、一例として、いずれも6つである。すなわち、本実施形態のエンジン100は、V型12気筒エンジンである。
【0015】
右気筒列111Rと左気筒列111Lとのそれぞれにおいて、各シリンダ11にはヘッドブロック4が重ねて配置される。ヘッドブロック4は、シリンダブロック1に螺子を用いて締結される。詳細には、ヘッドブロック4は、右シリンダ11Rに重ねられる右ヘッドブロック4Rと、左シリンダ11Lに重ねられる左ヘッドブロック4Lとを含む。右ヘッドブロック4Rは、各右シリンダ11Rに1つずつ重ねられるために、右シリンダ11Rの数と同数存在する。左ヘッドブロック4Lは、各左シリンダ11Lに1つずつ重ねられるために、左シリンダ11Lの数と同数存在する。本実施形態では、右ヘッドブロック4Rおよび左ヘッドブロック4Lの数は、いずれも6つである。
【0016】
各ヘッドブロック4は、シリンダ11、ピストン7、および、ヘッドブロック4で構成される燃焼室にガスを供給するための吸気ポート41と、燃焼室からガスを排気する排気ポート(不図示)とを有する。なお、排気ポートは、吸気ポート41が設けられる面と反対側の面に設けられる。詳細には、右ヘッドブロック4Rは、左側の側面に吸気ポート41を有し、右側の側面に排気ポートを有する。左ヘッドブロック4Lは、右側の側面に吸気ポート41を有し、左側の側面に排気ポートを有する。
【0017】
各ヘッドブロック4の上には、ヘッドカバー5が被せられる。ヘッドカバー5は、螺子を用いてヘッドブロック4に締結される。各ヘッドカバー5は、ヘッドブロック4に配置される吸気弁および排気弁(不図示)を覆う。各ヘッドカバー5には、インジェクタ8が取り付けられる。インジェクタ8の、燃料を噴射する噴射口が設けられる一端部は、燃焼室に臨む。インジェクタ8の他端部は、ヘッドカバー5から外部に向けて突出する。
【0018】
詳細には、ヘッドカバー5は、右ヘッドブロック4Rに被せられる右ヘッドカバー5Rと、左ヘッドブロック4Lに被せられる左ヘッドカバー5Lとを含む。右ヘッドカバー5Rは、各右ヘッドブロック4Rに被せられるために、右ヘッドブロック4Rの数と同数存在する。左ヘッドカバー5Lは、各左ヘッドブロック4Lに被せられるために、左ヘッドブロック4Lの数と同数存在する。本実施形態では、右ヘッドカバー5Rおよび左ヘッドカバー5Lの数は、いずれも6つである。なお、右ヘッドカバー5Rに配置される右インジェクタ8R、および、左ヘッドカバー5Lに配置される左インジェクタ8Lの数も、いずれも6つである。
【0019】
シリンダブロック1の右側においては、右バンクRBを構成する右シリンダ11R、右ヘッドブロック4Rおよび右ヘッドカバー5Rが右斜め上方に延びる。また、シリンダブロック1の左側においては、左バンクLBを構成する左シリンダ11L、左ヘッドブロック4Lおよび左ヘッドカバー5Lが左斜め上方に延びる。前後方向からの平面視において、右バンクRBと左バンクLBとはV字状であり、エンジン100はVバンクを有する。右バンクRBと左バンクLBとの左右方向間には、バンク内エリア200が形成される。
【0020】
図1に戻って、エンジン100は、上面カバー9と側面カバー10とを備える。上面カバー9は、例えば、結露等が原因となって内部に配置されるコントローラ26(後述の
図4等参照)等に水がかかることを防止する。側面カバー10は、例えば、ヘッドブロック4等の部品における亀裂等が原因となって燃料が飛散することを防止する。なお、
図1には、右側面に配置される側面カバー10のみが示されるが、左側面にも同様の側面カバー10が配置される。すなわち、エンジン100は、左右一対の側面カバー10を備える。
【0021】
図4は、本発明の実施形態に係るエンジン100の構成を示す概略上面図である。
図4においては、上面カバー9と一対の側面カバー10とは省略されている。
図1および
図4に示すように、エンジン100は、吸気マニホールド21および排気マニホールド22を備える。
【0022】
吸気マニホールド21は、外部から吸い込まれた空気または混合気である吸気を各シリンダ11に分配する。吸気マニホールド21は、エンジン100の上部に配置され、前後方向に延びる。詳細には、吸気マニホールド21は、右シリンダ11R用の右吸気マニホールド21Rと、左シリンダ11L用の左吸気マニホールド21Lとを含む。すなわち、エンジン100は、2つの吸気マニホールド21R、21Lを備える。
【0023】
右吸気マニホールド21Rは、前後方向に並ぶ複数の右ヘッドブロック4Rの各吸気ポート41(
図2参照)の上側に配置される。右吸気マニホールド21Rの内部と、各右シリンダ11Rとは、各吸気ポート41を介して繋がる。左吸気マニホールド21Lは、前後方向に並ぶ複数の左ヘッドブロック4Lの各吸気ポート41の上側に配置される。左吸気マニホールド21Lの内部と、各左シリンダ11Lとは、各吸気ポート41を介して繋がる。
【0024】
なお、詳細には、各吸気ポート41と各シリンダ11との間には、吸気バルブ(不図示)が介在し、吸気バルブが開いた状態となると、吸気マニホールド21の内部とシリンダ11とは連通する。
【0025】
排気マニホールド22は、各シリンダ11からの排気を集約する。排気マニホールド22は、エンジン100の側面部に配置され、前後方向に延びる。詳細には、排気マニホールド22は、右シリンダ11R用の右排気マニホールド22Rと、左シリンダ11L用の左排気マニホールド22Lとを含む。
【0026】
右排気マニホールド22Rは、前後方向に並ぶ複数の右ヘッドブロック4R(
図2参照)の右側に配置される。右排気マニホールド22Rの内部と、各右シリンダ11Rとは、右ヘッドブロック4Rの右側に設けられる排気ポート(不図示)を介して繋がる。左排気マニホールド22Lは、前後方向に並ぶ複数の左ヘッドブロック4L(
図2参照)の左側に配置される。左排気マニホールド22Lの内部と、各左シリンダ11Lとは、左ヘッドブロック4Lの左側に設けられる排気ポート(不図示)を介して繋がる。
【0027】
なお、詳細には、各排気ポートと各シリンダ11との間には、排気バルブ(不図示)が介在し、排気バルブが開いた状態となると、排気マニホールド22の内部とシリンダ11とは連通する。
【0028】
右排気マニホールド22Rで集約された排ガスは、いずれもエンジン100の右後方に配置される右過給機23Rおよび右排気出口管24Rを介して外部に排気される。左排気マニホールド22Lで集約された排ガスは、いずれもエンジン100の左後方に配置される左過給機23Lおよび左排気出口管24Lを介して外部に排気される。すなわち、エンジン100は過給機23を備える。
【0029】
右過給機23Rおよび左過給機23Lは、いずれもコンプレッサ部231とタービン部232とを有する。コンプレッサ部231は、エンジン100の外部から供給される空気等の吸気を加圧圧縮する。加圧圧縮された吸気は、インタークーラ25を介して吸気マニホールド21に供給される。タービン部232は、排気マニホールド22から供給される排ガスによって回転される。タービン部232の回転動力は、コンプレッサ部231に伝達される。すなわち、本実施形態の右過給機23Rおよび左過給機23Lは、排ガスタービンを駆動源とする、いわゆるターボチャージャである。
【0030】
吸気マニホールド21と接続されるインタークーラ25は、冷却水ポンプ(不図示)によって冷却水を供給され、吸気を冷却する。コンプレッサ部231から供給される吸気は、加圧圧縮されることにより圧縮熱が発生して温度が上昇する。インタークーラ25は、冷却水ポンプから供給される冷却水と、加圧圧縮された吸気との間で熱交換を行うことで吸気を冷却する。すなわち、インタークーラ25が設けられることにより、吸気マニホールド21に供給される吸気の温度を所望の温度に調整することができる。
【0031】
図4に示すように、右吸気マニホールド21Rと左吸気マニホールド21Lとは、エンジン100の上部において、左右方向に間隔をあけて並ぶ。
図4に示すように、上面カバー9を取り外した状態において、右吸気マニホールド21Rと左吸気マニホールド21Lとの間の空間を介して、バンク内エリア200は外部に露出する。バンク内エリア200には、例えば、エンジン100全体の制御を行うコントローラ26、および、インジェクタ8に燃料を供給する燃料ポンプ27等が配置される。
【0032】
つまり、エンジン100は、右気筒列111Rと左気筒列111Lとの間に位置するバンク内エリア200に配置されるコントローラ26を備える。また、エンジン100は、バンク内エリア200に配置される燃料ポンプ27を備える。なお、バンク内エリア200は、厳密な意味で、右気筒列111Rと左気筒列111Lとの間の空間領域であってもよい。ただし、本実施形態では、バンク内エリア200は、右気筒列111Rを含む右バンクRBと、左気筒列111Lを含む左バンクLBとの左右方向間の空間領域を広く含む。
【0033】
コントローラ26および燃料ポンプ27がバンク内エリア200に配置される構成とすることにより、バンク内エリア200を部品の配置に効率良く利用することができる。これにより、エンジン100の小型化を図ることができる。ただし、コントローラ26や燃料ポンプ27は、バンク内エリア200の外に配置されてもよい。
【0034】
なお、コントローラ26は、詳細には、第1コントローラ261と第2コントローラ262とを含む。ただし、コントローラ26の数は適宜変更されてよく、例えば、1つのコントローラのみで構成されてもよい。本実施形態において、第1コントローラ261と第2コントローラ262とは前後方向(クランク軸方向)に並ぶ。詳細には、第1コントローラ261は、第2コントローラ262よりも前方に位置する。第1コントローラ261と第2コントローラ262とのうち、いずれか一方がメインコントローラ、他方がサブコントローラとされる。本実施形態では、第1コントローラ261がメインコントローラであり、第2コントローラ262は、がサブコントローラである。
【0035】
メインコントローラとして構成される第1コントローラ261は、エンジン100の制御に必要な演算を実行する。エンジン100の制御に必要な演算には、例えば、燃料の噴射の制御に関わる演算や、エンジン100の停止に関わる演算等が含まれる。サブコントローラとして構成される第2コントローラ262は、第1コントローラ261と通信線(不図示)で接続され、第1コントローラ261と通信可能に設けられる。第2コントローラ262は、第1コントローラ261からの指示にしたがって制御動作を行う。
【0036】
第1コントローラ261は、右バンクRBに配置される右インジェクタ8Rの制御を行う。すなわち、第1コントローラ261と、各右インジェクタ8Rとは、電気的に接続される。また、第2コントローラ262は、左バンクLBに配置される左インジェクタ8Lの制御を行う。すなわち、第2コントローラ262と、各左インジェクタ8Lとは、電気的に接続される。
【0037】
また、燃料ポンプ27は、燃料を高圧として、右バンクRB用の高圧燃料パイプ(不図示)、および、左バンクLB用の高圧燃料パイプ(不図示)に向けて燃料を吐出する。右バンクRB用の高圧燃料パイプを通る燃料は、右バンクRBに配置される各右インジェクタ8Rに分配される。左バンクLB用の高圧燃料パイプを通る燃料は、左バンクLBに配置される各左インジェクタ8Lに分配される。各インジェクタ8は、コントローラ26による制御の下、燃料を燃焼室に噴射する。
【0038】
<2.吸排気系部品の配置の詳細>
図5は、
図1に示すエンジン100の、吸排気系を構成する部品を抽出して示した概略斜視図である。
図5に示すように、エンジン100の吸気系を構成する部品には、左右の過給機23と、左右の第1吸気連絡管28と、インタークーラ25と、左右の吸気マニホールド21とが含まれる。
【0039】
なお、右第1吸気連絡管28Rは、右過給機23Rのコンプレッサ部231とインタークーラ25とを接続する。右過給機23Rのコンプレッサ部231から供給された吸気は、右第1吸気連絡管28Rを介してインタークーラ25内に入る。左第1吸気連絡管28Lは、左過給機23Lのコンプレッサ部231とインタークーラ25とを接続する。左過給機23Lのコンプレッサ部231から供給された吸気は、左第1吸気連絡管28Lを介してインタークーラ25内に入る。詳細には、右第1吸気連絡管28Rと左第1吸気連絡管28Lとは、インタークーラ25の別々の位置に接続される。
【0040】
エンジン100の排気系を構成する部品には、左右の排気マニホールド22と、左右の排気連絡管29と、左右の過給機23と、左右の排気出口管24とが含まれる。なお、右排気連絡管29Rは、右排気マニホールド22Rの後端と、右過給機23Rのタービン部232とを接続する。右排気マニホールド22R内を通った排ガスは、右排気連絡管29Rを介して右過給機23Rのタービン部232内に入る。左排気連絡管29Lは、左排気マニホールド22Lの後端と、左過給機23Lのタービン部232とを接続する。左排気マニホールド22L内を通った排ガスは、左排気連絡管29Lを介して左過給機23Lのタービン部232内に入る。
【0041】
図6は、
図5に示す図から過給機23および過給機23の周辺の一部の部品を取り除いて後方から見た概略平面図である。
図7は、
図5に示す図から過給機23および過給機23の周辺の一部の部品を取り除いて上方から見た概略平面図である。
図8は、
図5に示す図から過給機23および過給機23の周辺の一部の部品を取り除いて右側方から見た概略平面図である。なお、過給機23の周辺の一部の部品は、過給機23に接続されるパイプ類である。パイプ類には、上述した第1吸気連絡管28、排気連絡管29、および、排気出口管24が含まれる。
【0042】
図6、
図7、および、
図8において、一点鎖線で示す矩形状の枠Wは、左右の過給機23が配置される大体の位置を示す。
図6および
図7に示す二点鎖線Sは、クランク軸6の中心線Cを含み、左右方向に対して直交する面を示す。以下、この面Sのことを単に中心面Sと表現する。また、
図6、
図7、および、
図8において、破線で囲まれた領域ERは、排気マニホールド22の領域を後方に延長した延長領域である。延長領域ERは、クランク軸方向からの平面視において排気マニホールド22の領域と一致する領域であって、排気マニホールド22から後方に延びる領域である。なお、
図6、
図7、および、
図8に示される延長領域ERの形状は、正確な形状ではなく簡略化された形状である。
【0043】
図5から
図8に示すように、エンジン100が備える2つの排気マニホールド22R、22Lは、2つの気筒列111R、111Lそれぞれに対して設けられ、2つの気筒列111R、111Lの間に位置するバンク内エリア200に面する側と反対面側に配置される。なお、上述のように、右気筒列111Rは右バンクRBを構成し、左気筒列111Lは左バンクLBを構成する(
図2参照)。別の言い方をすると、エンジン100は、気筒列111R、111Lのバンク内エリア200とは反対面側に配置される排気マニホールド22R、22Lを備える。なお、バンク内エリア200とは反対面側とは、バンク内エリア200に面する側と反対面側である。
【0044】
詳細には、右排気マニホールド22Rは、右気筒列111Rに対して、バンク内エリア200に面する側と反対面側となるエンジン100の右側面に配置される。より詳細には、右排気マニホールド22Rは、右バンクRBを構成する複数の右ヘッドブロック4R(
図2参照)に取り付けられる。左排気マニホールド22Lは、左気筒列111Lに対して、バンク内エリア200に面する側と反対面側となるエンジン100の左側面に配置される。より詳細には、左排気マニホールド22Lは、左バンクLBを構成する複数の左ヘッドブロック4L(
図2参照)に取り付けられる。
【0045】
右排気マニホールド22Rと左排気マニホールド22Lとは、中心面Sに対して概ね対称な位置に配置される。右排気マニホールド22Rと左排気マニホールド22Lとは、上下方向の高さ位置は同じである(
図6参照)。右排気マニホールド22Rと左排気マニホールド22Lとは、前後方向の位置が若干ずれている。詳細には、右排気マニホールド22Rに対して、左排気マニホールド22Lの方が若干後方に配置されている(
図7参照)。
【0046】
右排気連絡管29Rは、右排気マニホールド22Rの後方に配置される。換言すると、右排気連絡管29Rは、少なくとも一部が右排気マニホールド22Rの延長領域ERに配置される。左排気連絡管29Lは、左排気マニホールド22Lの後方に配置される。換言すると、左排気連絡管29Lは、少なくとも一部が左排気マニホールド22Lの延長領域ERに配置される。
【0047】
エンジン100が備えるインタークーラ25は、2つの気筒列111R、111Lよりもクランク軸方向一方側に配置される。詳細には、インタークーラ25は、2つの気筒列111R、111L(
図2参照)よりも後方に配置される。インタークーラ25は、バンク内エリア200の外側に配置される。インタークーラ25は、2つの排気マニホールド22R、22Lよりも上方に配置される。換言すると、インタークーラ25は、2つの排気マニホールド22R、22Lの延長領域ERよりも上方に配置される(
図8参照)。
【0048】
エンジン100が備える2つの過給機23R、23Lは、2つの気筒列111R、111Lそれぞれに対して設けられる。すなわち、過給機23は、2つの気筒列111R、111Lのそれぞれに対して1つずつ設けられる。2つの過給機23R、23Lは、インタークーラ25と接続される。なお、2つの過給機23R、23Lのそれぞれは、インタークーラ25に直接的に接続されてもよいが、本実施形態では、好ましい形態として、第1吸気連絡管28を介してインタークーラ25に間接的に接続される。2つの過給機23R、23Lのそれぞれは、少なくとも一部が排気マニホールド22R、22Lのクランク軸方向一方側の延長領域ER上、または、延長領域ERとインタークーラ25との間に配置される。
【0049】
このような構成とすると、2つの排気マニホールド22R、22Lのそれぞれから、排気を各過給機23R、23Lのタービン部232に短い距離で導くことができる。また、2つの過給機23R、23Lのそれぞれから、吸気をインタークーラ25に短い距離で導くことができる。すなわち、2つ過給機23R、23Lを備える構成とすることによってエンジン100の性能の向上を図りつつ、エンジン100のコンパクト化を図ることができる。
【0050】
本実施形態では、
図6、
図7、および、
図8において破線枠Wで示すように、2つの過給機23R、23Lのそれぞれは、少なくとも一部が排気マニホールド22R、22Lの延長領域ERと、インタークーラ25との間の空間に配置される。2つの過給機23R、23Lは、中心面Sに対して対称となる位置に配置される。
【0051】
2つの過給機23R、23Lのそれぞれは、左右方向からの側面視において、少なくとも一部が、排気マニホールド22R、22Lの延長領域ERとインタークーラ25との上下方向間に配置される(例えば
図8参照)。詳細には、右過給機23Rは、少なくとも一部が、右排気マニホールド22Rの後方に配置される右排気連絡管29Rよりも上方に配置される。また、左過給機23Lは、少なくとも一部が、左排気マニホールド22Lの後方に配置される左排気連絡管29Lよりも上方に配置される。
【0052】
なお、2つの過給機23R、23Lのそれぞれの後端は、上方からの平面視において、インタークーラ25の後端と比較してなるべく後方に突出しないことが好ましい。後方に突出する場合には、その突出量は、過給機23R、23Lの前後方向の長さの半分より少ないことが好ましい。2つの過給機23R、23Lのそれぞれの後端は、上方からの平面視において、前後方向の位置がインタークーラ25の後端と同じか、または、インタークーラ25の後端よりも前方であることがより好ましい。
【0053】
本実施形態において、2つの過給機23R、23Lのそれぞれは、クランク軸方向からの平面視において、バンク内エリア200の外側に配置される。
図6に示すように、右過給機23Rは、クランク軸方向からの平面視において、バンク内エリア200よりも右側に配置される。左過給機23Lは、クランク軸方向からの平面視において、バンク内エリア200よりも左側に配置される。
【0054】
右排気出口管24Rは、右過給機23Rのタービン部232の後方に配置される(
図5参照)。左排気出口管24Lは、左過給機23Lのタービン部232の後方に配置される(
図5参照)。
【0055】
各過給機23R、23Lが有する吸気の出口である過給機吸気出口233(
図5参照)は、クランク軸方向において、インタークーラ25の少なくとも一部と同じ位置に配置される。過給機吸気出口233は、詳細には、各過給機23R、23Lのコンプレッサ部231の吸気の出口である。右過給機23Rの過給機吸気出口233は、コンプレッサ部231の左側面に設けられ、インタークーラ25と接続される右第1吸気連絡管28Rと連通する。左過給機23Lの過給機吸気出口233は、コンプレッサ部231の右側面に設けられ、インタークーラ25と接続される左第1吸気連絡管28Lと連通する。
【0056】
2つの過給機23R、23Lのそれぞれが有する過給機吸気出口233が、クランク軸方向において、インタークーラ25の少なくとも一部と同じ位置に配置されるために、2つの第1吸気連絡管28R、28Lの長さを短くすることができる。各過給機23R、23Lから、吸気をインタークーラ25へ効率良く導くことができる。
【0057】
過給機23に接続されるインタークーラ25は、2つの気筒列111R、111Lに共用される。気筒列ごとにインタークーラを配置する構成に比べてエンジン100の部品点数を減らすことができる。これにより、エンジン100のコストの削減を図ることができる。また、エンジン100の小型化を図ることができる。なお、本実施形態では、インタークーラ25は、2つの過給機23R、23Lから吸気を供給される。ただし、エンジンが備える過給機の数を1つとして、2つの気筒列が1つ過給機の共用する構成としてもよい。
【0058】
図9は、本発明の実施形態に係るエンジン100が備えるインタークーラ25の概略斜視図である。なお、
図9は、インタークーラ25を右斜め下方から見た場合の図である。インタークーラ25は、液冷式のインタークーラであり、冷却液の入口である冷却液入口251と、冷却液の出口である冷却液出口252とを有する。冷却液入口251から内部に入った冷却液は、内部に設けられる熱交換部(不図示)を通過して、冷却液出口252から排出される。なお、本実施形態では、冷却液は冷却水である。ただし、冷却液は、例えば不凍液等の水以外の液体であってもよい。不凍液は、例えば、純水とエチレングリコールとを所定割合で混合した液体である。
【0059】
また、インタークーラ25は、吸気の入口であるインタークーラ吸気入口253を有する。詳細には、インタークーラ吸気入口253は、右第1吸気連絡管28Rと連通する右インタークーラ吸気入口253Rと、左第1吸気連絡管28Lと連通する左インタークーラ吸気入口253Lとを含む。右インタークーラ吸気入口253Rは、インタークーラ25の下面の右側に配置される。左インタークーラ吸気入口253Lは、インタークーラ25の下面の左側に配置される。
【0060】
インタークーラの吸気の入口であるインタークーラ吸気入口253は、各過給機23R、23Lが有する吸気の出口である過給機吸気出口233よりも上側に配置される。
図5に示すように、右過給機23Rの過給機吸気出口233部分と、右インタークーラ吸気入口253R部分とを連結する右第1吸気連絡管28Rは、湾曲した形状とされる。詳細には、右第1吸気連絡管28Rは、左方に向かうにつれて上方に向かう湾曲部を有する。左過給機23Lの過給機吸気出口233部分と、左インタークーラ吸気入口253L部分とを連結する左第1吸気連絡管28Lは、湾曲した形状とされる。詳細には、左第1吸気連絡管28Lは、右方に向かうにつれて上方に向かう湾曲部を有する。このような構成とすることにより、クランク軸方向の組付け公差を吸収し易くしすることができ、エンジン100の組立て性を向上することができる。
【0061】
図9に戻って、インタークーラ25は、インタークーラ吸気入口253から内部に入った吸気をインタークーラ25の外部に放出するインタークーラ吸気出口254を有する。インタークーラ吸気入口253からインタークーラ25の内部に入った吸気は、内部に設けられる熱交換部と熱交換を行ってインタークーラ吸気出口254からインタークーラ25の外部に放出される。
【0062】
詳細には、インタークーラ吸気出口254は、インタークーラ25の前面上方の右側に配置される右インタークーラ吸気出口254Rと、インタークーラ25の前面上方の左側に配置される左インタークーラ吸気出口254Lとを含む。すなわち、インタークーラ25は、2つの過給機23のそれぞれから供給されて内部に入った吸気を外部に放出するインタークーラ吸気出口254R、254Lを、クランク軸方向のバンク内エリア200が存在する側に有する。なお、右インタークーラ吸気出口254Rと左インタークーラ吸気出口254Lとは、中心面S(
図6等参照)に対して対称に配置される。
【0063】
図10は、本発明の実施形態に係るエンジン100が備える2つの吸気マニホールド21R、21Lを示す概略斜視図である。
図10に示すように、各吸気マニホールド21R、21Lは、直方体状の吸気マニホールド本体部211と、吸気マニホールド本体部211から下方に延びる複数の吸気分配管212とを有する。
【0064】
吸気マニホールド本体部211の後面には、吸気の入口である吸気マニホールド吸気入口213が設けられる。各吸気分配管212の下端部には、ヘッドブロック4に設けられる吸気ポート41(
図2参照)に連通する吸気マニホールド吸気出口214が設けられる。本実施形態においては、左右の気筒数は6つずつであり、右吸気マニホールド21Rおよび左吸気マニホールド21Lが備える吸気分配管212の数は、それぞれ6つである。
【0065】
なお、右吸気マニホールド21Rと左吸気マニホールド21Lとは、中心面Sに対して概ね対称な位置に配置される。右吸気マニホールド21Rと左吸気マニホールド21Lとは、上下方向の高さ位置は同じである。右吸気マニホールド21Rと左吸気マニホールド21Lとは、前後方向の位置が若干ずれている。詳細には、右吸気マニホールド21Rに対して、左吸気マニホールド21Lの方が若干前方に配置されている(
図7参照)。
【0066】
エンジン100が備える吸気マニホールド21は、バンク内エリア200に少なくとも一部が配置されることが好ましい。2つの気筒列111R、111Lのそれぞれに対して設けられる2つの吸気マニホールド21R、21Lは、少なくとも一部がバンク内エリア200に配置されることが好ましい。本実施形態では、2つの吸気マニホールド21R、21Lのそれぞれは、その一部がバンク内エリア200に配置される。詳細には、吸気分配管212の一部がバンク内エリア200に配置され、吸気マニホールド本体部211は、バンク内エリア200の上方に配置される。
【0067】
吸気マニホールド21は、インタークーラ25が有する吸気の出口部分(インタークーラ吸気出口254部分)と接続される。詳細には、右インタークーラ吸気出口254R部分と、右吸気マニホールド21Rの吸気マニホールド吸気入口213部分とは、右第2吸気連絡管30R(
図7等参照)によって接続される。すなわち、右インタークーラ吸気出口254Rと、右吸気マニホールド21Rの吸気マニホールド吸気入口213とは、右第2吸気連絡管30Rを介して連通する。左インタークーラ吸気出口254L部分と、左吸気マニホールド21Lの吸気マニホールド吸気入口213部分とは、左第2吸気連絡管30L(
図7等参照)によって接続される。すなわち、左インタークーラ吸気出口254Lと、左吸気マニホールド21Lの吸気マニホールド吸気入口213とは、左第2吸気連絡管30Lを介して連通する。
【0068】
過給機23からインタークーラ25の内部に入った吸気は、インタークーラ吸気出口254から、第2吸気連絡管30を介してバンク内エリア200の上方に配置される吸気マニホールド吸気入口213に至る。吸気マニホールド吸気入口213から吸気マニホールド本体部211内に入った吸気は、複数の吸気分配管212で各吸気ポート41に分配されて、各燃焼室に供給される。インタークーラ25の、クランク軸方向のバンク内エリア200が存在する側にインタークーラ吸気出口254が設けられているために、インタークーラ25から吸気マニホールド21へと短い距離で吸気を導くことができる。すなわち、本実施形態のエンジン100によれば、吸気を過給機23から吸気マニホールド21へと短い距離で導くことが可能である。
【0069】
インタークーラ25の吸気の入口(インタークーラ吸気入口253)は、インタークーラ25の下方に配置される。インタークーラ25の吸気の出口(インタークーラ吸気出口254)は、インタークーラ25の上方に配置される。本実施形態では、右バンクRBと左バンクLBとで構成されるVバンクの内側に吸気マニホールド21が配置され、Vバンクの外側に排気マニホールド22が配置される。このような構成では、インタークーラ25から吸気が入る吸気マニホールド21が、排気マニホールド22よりも高い位置に配置される。このために、インタークーラ25の下方に吸気の入口253を設け、上方に吸気の出口254を設けることによって、吸気の流路を無理なく構成することができる。すなわち、エンジン100をコンパクト化し易くすることができる。
【0070】
<3.インタークーラの詳細>
図11は、本発明の実施形態に係るエンジン100が備えるインタークーラ25の概略構成を示す第1断面斜視図である。
図12は、本発明の実施形態に係るエンジン100が備えるインタークーラ25の概略構成を示す第2断面斜視図である。第1断面と第2断面とは異なる位置で切った断面である。
図11は、左右方向と直交する面に沿って切った断面を示す図である。
図12は、前後方向と直交する面に沿って切った断面を示す図である。
【0071】
図9、
図11、および、
図12に示すように、インタークーラ25は、インタークーラ本体部250と、熱交換部255と、第1インタークーラ蓋部256と、第2インタークーラ蓋部257とを備える。
【0072】
インタークーラ本体部250は、左右方向の延びる筒状である。インタークーラ本体部250の下面には、インタークーラ吸気入口253が設けられる。詳細には、インタークーラ本体部250の下面右側に右インタークーラ吸気入口253Rが設けれ、下面左側に左インタークーラ吸気入口253Lが設けられる。また、インタークーラ本体部250の前面上方には、インタークーラ吸気出口254が設けられる。詳細には、インタークーラ本体部250の前面上方の右側に右インタークーラ吸気出口254Rが設けれ、前面上方の左側に左インタークーラ吸気出口254Lが設けられる。
【0073】
熱交換部255は、インタークーラ本体部250内に配置される。熱交換部255は、内側に冷却液が流される複数の管2551を有する。複数の管2551は、左右方向に延びる。複数の管2551の左右の端部には、複数の管2551を纏めて保持する一対の端部保持部2552が配置される。複数の管2551は、左右の端面が開放された状態で一対の端部保持部2552に保持される。一対の端部保持部2552により保持されることにより、複数の管2551は束になっている。束となった複数の管2551が占める領域は、上下方向および前後方向と平行となる面内方向に広がる。束となった複数の管2551は、インタークーラ本体部250の内部空間2501の前端から後端まで広がる(
図11参照)。
【0074】
一対の端部保持部2552のそれぞれは、板状に設けられる。一対の端部保持部2552のうち、右側に配置される端部保持部2552は、インタークーラ本体部250の右側の端面を塞ぐ。また、一対の端部保持部2552のうち、左側に配置される端部保持部2552は、インタークーラ本体部250の左側の端面を塞ぐ。複数の管2551は、インタークーラ本体部250の左端部から右端部まで延びる。
【0075】
なお、本実施形態では、複数の管2551の左右方向の中間部分を支持する中間支持部2553が、インタークーラ本体部250の内部空間2501に配置される。中間支持部2553は、板状であり、インタークーラ本体部250に接触する。複数の管2551は、中間支持部2553を貫通する。本実施形態では、中間支持部2553は、左右方向に間隔をあけて2つ設けられる。ただし、中間支持部2553の数は、適宜変更されてよい。場合によっては、中間支持部2553は設けられなくてもよい。
【0076】
第1インタークーラ蓋部256は、インタークーラ本体部250の左側に配置され、一対の端部保持部2552のうちの左側に配置される端部保持部2552を左方から覆う。第1インタークーラ蓋部256は、その内部に、内部空間を上下に分ける隔壁部2561を有する。
【0077】
隔壁部2561の下側の空間が、上述の冷却液入口251を構成する。冷却液入口251は、複数の管2551のうちの一部の管2551の左端面に面する。例えば、複数の管2551のうちの下側半分に配置される管2551の左端面が、冷却液入口251に面する。
【0078】
隔壁部2561の上側の空間が、上述の冷却液出口252を構成する。冷却液出口252は、複数の管2551のうち、冷却液入口251に面する一部の管2551を除く残りの管2551の左端面に面する。例えば、複数の管2551のうちの上側半分に配置される管2551の左端面が、冷却液出口252に面する。
【0079】
第2インタークーラ蓋部257は、インタークーラ本体部250の右側に配置され、一対の端部保持部2552のうちの右側に配置される端部保持部2552を右方から覆う。第2インタークーラ蓋部257は、左方に開口するカップ形状である。複数の管2551の全ての右端面は、インタークーラ本体部250に取り付けられた第2インタークーラ蓋部257の内部空間に面する。以下、この内部空間のことを、その機能から折返し部2571と記載する。折返し部2571の詳細については後述する。
【0080】
図13は、本発明の実施形態に係るエンジン100が備えるインタークーラ25における冷却液と吸気の流れを説明するための図である。
図13は、
図12と同じ断面を示す図で、後方から前方に向かって見た図である。
図13において、白抜きの矢印は冷却液の流れを示す。
図13において、太い矢印は過給機23からの吸気の流れを示す。インタークーラ25は、冷却液が流れる冷却液流路P1と、過給機23からの吸気が流れる吸気流路P2とを有する。
【0081】
詳細には、冷却液流路P1は、冷却液が流れに沿う第1方向の一方側に冷却液の入口(冷却液入口251)と出口(冷却液出口252)とを有する。このように構成すると、インタークーラ25の内部において、冷却液を第1方向に少なくとも一回行き来させることができる。この結果、インタークーラ25内を通って2つの気筒列111R、111Lに振り分けられる吸気の温度について、温度差が生じ難くすることができる。この点の詳細については後述する。
【0082】
なお、冷却液の流れに沿う第1方向は、詳細には、冷却液の主たる流れに沿う方向であり、本実施形態では左右方向である。本実施形態では、第1方向の一方側は左側であり、他方側は右側である。
【0083】
本実施形態においては、冷却液入口251から入った冷却液は、第1方向の他方側に配置される折返し部2571を経て冷却液出口252に至る。詳細には、冷却液入口251から入った冷却液は、冷却液入口251に面する複数の管2551内を通って右向きに流れて折返し部2571に至る。折返し部2571に至った冷却液は、冷却液出口252に面する複数の管2551内を通って左向きに流れて冷却液出口252に至り、インタークーラ25の外部に排出される。すなわち、本実施形態では、インタークーラ25の内部において、冷却液が左右方向(第1方向)に一回のみ行き来する。このような構成とすると、インタークーラ25内部が複雑となることを抑制できる。
【0084】
以上からわかるように、本実施形態では、冷却液流路P1は、冷却液入口251、複数の管2551、折返し部2571、および、冷却液出口252によって構成される。
【0085】
また、吸気流路P2は、過給機23からの吸気の流れに沿う第2方向の一方側に吸気の入口(インタークーラ吸気入口253)、他方側に吸気の出口(インタークーラ吸気出口254)を有する。このような構成では、吸気の入口と出口が反対側になるために、インタークーラ25の周囲に配置する吸気系の部品を分散して配置し易くすることができる。
【0086】
なお、吸気の流れに沿う第2方向は、詳細には、吸気の主たる流れに沿う方向であり、本実施形態では上下方向である。本実施形態では、第2方向の一方側は下側であり、他方側は上側である。
【0087】
本実施形態では、吸気流路P2は、吸気が第2方向の一方側と他方側とを1回通るように構成されている。詳細には、右インタークーラ吸気入口253Rおよび左インタークーラ吸気入口253Lからインタークーラ本体部250の内部空間2501に入った吸気は、熱交換部255の下側から複数の管2551の間の隙間を通って熱交換部255の上側に抜ける。複数の管2551の隙間を通る際に、吸気は熱を奪われて冷却される。複数の管2551の内部を流れる冷却液は、吸気から熱を奪って温められる。熱交換部255の上側に抜けた吸気は、右インタークーラ吸気出口254Rを介して右吸気マニホールド21R内に入り、左インタークーラ吸気出口254Lを介して左吸気マニホールド21L内に入る。このように吸気の流れを下方から上方への一方行への流れとすることで、インタークーラ25内部が複雑となることを抑制できる。
【0088】
以上からわかるように、本実施形態では、吸気流路P2は、インタークーラ吸気入口253、インタークーラ本体部250の内部空間2501、および、インタークーラ吸気出口254によって構成される。
【0089】
本実施形態のインタークーラ25においては、第1方向と第2方向とは交差する。詳細には、冷却液は左右方向に流れ、吸気は上下方向に流れるために、両者の流れは交差する。このように構成すると、過給機23からの吸気が、冷却液流路P1を用いて構成される熱交換部255を必ず通過するように構成することができる。なお、場合によっては、第1方向と第2方向とは同じ方向とされてもよい。
【0090】
右インタークーラ吸気入口253Rからインタークーラ本体部250内に入った吸気は、主に右インタークーラ吸気出口254Rを経て右吸気マニホールド21R内に入る。また、左インタークーラ吸気入口253Lからインタークーラ本体部250内に入った吸気は、主に左インタークーラ吸気出口254Lを経て左吸気マニホールド21L内に入る。冷却液流路P1を流れる冷却液は、上流(冷却液入口251)から下流(冷却液出口252)に向かうにつれて温度が上昇する。このために、左吸気マニホールド21Lに入る吸気は、主に、冷却液の温度が低い低温部分と高い高温部分とを通過し、右吸気マニホールド21Rに入る吸気は、主に、冷却液の温度が前述の高温部分と低温部分との中間である中間温部分を通過することになる。この結果、右気筒列111Rと繋がる右吸気マニホールド21Rに送られる吸気と、左気筒列111Lに繋がる左吸気マニホールド21Lに送られる吸気との間で、冷却液が奪う熱エネルギーを概ね同じとすることができる。すなわち、右気筒列111Rと左気筒列111Lとの間で、インタークーラ25による吸気の温度の調整に差が生じることを抑制できる。
【0091】
なお、インタークーラ本体部250内に隔壁を配置して、インタークーラ本体部250の内部空間2501を右室と左室とに分けてもよい。このようにすれば、右インタークーラ吸気入口253Rからインタークーラ本体部250内に入った吸気の全てを、右インタークーラ吸気出口254Rへと導くことができる。また、左インタークーラ吸気入口253Lからインタークーラ本体部250内に入った吸気の全てを、左インタークーラ吸気出口254Lへと導くことができる。このようにすると、左右それぞれの吸気マニホールド21に送る吸気の温度を安定させ易くできる。
【0092】
また、本実施形態では、インタークーラ25の、冷却液流路P1を用いて構成される熱交換部255は、第1方向に延びる複数の管2551を有する多管式冷却構造を備える構成とした。このような構成では、高い冷却効率を得ることができる。ただし、インタークーラ25が備える熱交換部は、多管式冷却構造以外の構造を備える構成であってもよい。
【0093】
また、本実施形態では、吸気流路P2は、吸気が第2方向(上下方向)の一方側(下側)と他方側(上側)とを1回通る構成としたが、これと異なる構成であってもよい。
図14は、変形例のインタークーラ25Aの構成を示す模式図である。
【0094】
変形例のインタークーラ25Aも、上述の実施形態と同様に、インタークーラ本体部250A、熱交換部255A、第1インタークーラ蓋部256A、および、第2インタークーラ蓋部257Aを備える。インタークーラ本体部250Aは、左右のインタークーラ吸気入口253A、および、左右のインタークーラ吸気出口254Aを有する。第1インタークーラ蓋部256Aは、冷却液入口251Aおよび冷却液出口252Aを有する。第2インタークーラ蓋部257Aは、折返し部2571Aを有する。
図14において、太い矢印は吸気の流れを示す。
【0095】
図14に示すように、インタークーラ吸気入口253Aからインタークーラ本体部250内に入った吸気が、第2方向の一方側から他方側に到達した後に、一方側に向けて折り返し、更に他方側に折り返すことを少なくとも一回行った後に、インタークーラ吸気出口254から外部に出る構成としてもよい。
【0096】
なお、
図14に示す例では、吸気の第2方向における折返し回数は2回であるが、2回より多い偶数回であってもよい。上述の実施形態では、吸気の折返し回数は0回である。
【0097】
また、
図14に示す例では、インタークーラ本体部250A内に、内部空間2501Aを左室と右室に分ける隔壁258が設けられている。すなわち、右インタークーラ吸気入口253RAからインタークーラ本体部250A内に入った吸気は、右インタークーラ吸気出口254RAへと導かれる。また、左インタークーラ吸気入口253LAからインタークーラ本体部250A内に入った吸気は、左インタークーラ吸気出口254LAへと導かれる。
【0098】
<4.留意事項等>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【符号の説明】
【0099】
21・・・吸気マニホールド
21L・・・左吸気マニホールド
21R・・・右吸気マニホールド
22・・・排気マニホールド
22L・・・左排気マニホールド
22R・・・右排気マニホールド
23・・・過給機
23L・・・左過給機
23R・・・右過給機
25、25A・・・インタークーラ
100・・・エンジン
111・・・気筒列
111L・・・左気筒列
111R・・・右気筒列
200・・・バンク内エリア
251、251A・・・冷却液入口(冷却液の入口)
252、252A・・・冷却液出口(冷却液の出口)
253、253A・・・インタークーラ吸気入口(吸気の入口)
253L、253LA・・・左インタークーラ吸気入口
253R、253RA・・・右インタークーラ吸気入口
254、254A・・・インタークーラ吸気出口(吸気の出口)
254L、254LA・・・左インタークーラ吸気出口
254R、254RA・・・右インタークーラ吸気出口
255、255A・・・熱交換部
2551・・・管
2571、2571A・・・折返し部
P1・・・冷却液流路
P2・・・吸気流路