(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】エレベーター
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20250317BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20250317BHJP
【FI】
B66B7/00 B
B66B5/00 D
(21)【出願番号】P 2023576446
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 JP2022002860
(87)【国際公開番号】W WO2023144918
(87)【国際公開日】2023-08-03
【審査請求日】2024-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金山 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】村田 祐輔
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/116467(WO,A1)
【文献】特開2015-151213(JP,A)
【文献】国際公開第2022/013939(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/216201(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/179179(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00- 7/12
B66B 5/00- 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路に巻上機および制御盤が設けられるエレベーターにおいて、
乗りかごの位置を検出し、かごドア用敷居および乗場ドア用敷居に隣接して設けられる非接触型位置検出装置と、
非接触型速度検出器を備えるロープレスガバナシステムによって作動される電動非常止め装置と、
を備え、
前記昇降路において、前記乗りかごを案内する第1ガイドレールの両側に位置する第1空間および第2空間、ならびに前記乗りかごを案内する第2ガイドレールの両側に位置する第3空間および第4空間を有し、
前記第1空間と前記第2空間と前記第3空間と前記第4空間の内、一空間に前記制御盤が設けられ、他の一空間に前記巻上機および釣合おもりが設けられ、
前記第1空間と前記第2空間と前記第3空間と前記第4空間の内、前記一空間および前記他の一空間以外の空間に保守専用機器が常設されることを特徴とするエレベーター。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーターにおいて、
前記制御盤は前記第1空間に設けられ、前記巻上機および前記釣合おもりは前記第2空間に設けられることを特徴とするエレベーター。
【請求項3】
昇降路に巻上機および制御盤が設けられるエレベーターにおいて、
乗りかごの位置を検出し、かごドア用敷居および乗場ドア用敷居に隣接して設けられる非接触型位置検出装置と、
非接触型速度検出器を備えるロープレスガバナシステムによって作動される電動非常止め装置と、
を備え、
前記昇降路において、前記乗りかごを案内する第1ガイドレールの両側に位置する第1空間および第2空間、ならびに前記乗りかごを案内する第2ガイドレールの両側に位置する第3空間および第4空間を有し、
前記第1空間と前記第2空間と前記第3空間と前記第4空間の内、一空間に前記制御盤が設けられ、他の一空間に前記巻上機および釣合おもりが設けられ、
前記制御盤は前記第1空間に設けられ、前記巻上機および前記釣合おもりは前記第2空間に設けられ、
前記第4空間に保守専用機器が常設されることを特徴とするエレベーター。
【請求項4】
請求項
3に記載のエレベーターにおいて、
前記保守専用機器は、前記昇降路の底部近傍に設けられるピット梯子であることを特徴とするエレベーター。
【請求項5】
請求項
4に記載のエレベーターにおいて、
前記第4空間は前記第3空間よりも乗場に近いことを特徴とするエレベーター。
【請求項6】
請求項1に記載のエレベーターにおいて、
前記釣合おもりは前記巻上機の下方に位置し、
前記巻上機および前記釣合おもりは、前記昇降路の上方から見て互いにオーバーラップするように配置されることを特徴とするエレベーター。
【請求項7】
請求項1に記載のエレベーターにおいて、
前記制御盤および前記巻上機は、前記昇降路の頂部近傍に設けられることを特徴とするエレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻上機および制御盤が昇降路内に設置されるエレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
巻上機および制御盤が昇降路内に設置される機械室レスエレベーター(例えば、特許文献1参照)は、機械室を設けるスペースを取れない駅舎などにおいて、広く設置されている。また、機械室レスエレベーターは、機械室を設けることが利用可能空間に影響する中低層ビルにおいても広く設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械室エレベーターにおいては、機械室を有するエレベーターと同様に、ガバナ装置や、位置検出センサの被検出体となる遮へい板などの機器が、昇降路内に設置される。このため、さらなる省スペース化や保守専用機器(例えば、ピット梯子)の常設が難しい。
【0005】
そこで、本発明は、巻上機および制御盤が昇降路内に設置されながらも、さらなる省スペース化や保守専用機器の常設が可能なエレベーターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明によるエレベーターは、昇降路に巻上機および制御盤が設けられるものであって、乗りかごの位置を検出し、かごドア用敷居および乗場ドア用敷居に隣接して設けられる非接触型位置検出装置と、非接触型速度検出器を備えるロープレスガバナシステムによって作動される電動非常止め装置と、を備え、昇降路において、乗りかごを案内する第1ガイドレールの両側に位置する第1空間および第2空間、ならびに乗りかごを案内する第2ガイドレールの両側に位置する第3空間および第4空間を有し、第1空間と第2空間と第3空間と第4空間の内、一空間に制御盤が設けられ、他の一空間に巻上機および釣合おもりが設けられ、さらに、次のいずれかの手段を備える。
第1の手段は、第1空間と第2空間と第3空間と第4空間の内、一空間および他の一空間以外の空間に保守専用機器が常設されることである。
第2の手段は、制御盤は第1空間に設けられ、巻上機および釣合おもりは第2空間に設けられ、第4空間に保守専用機器が常設されることである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、巻上機および制御盤が昇降路内に設置されるエレベーターを、さらに省スペース化することができる。また、巻上機および制御盤が昇降路内に設置されるエレベーターにおいて、保守専用機器を常設できる空間を確保できる。
【0008】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施例であるエレベーターの概略構成を示す昇降路内高さ方向構成図である。
【
図2】本実施例のエレベーターを乗りかごの上方から見た場合の平面図である。
【
図3】本実施例における電動非常止め装置の概略的構成の一例を示す、乗りかごおよび電動非常止め装置の正面図である。
【
図4】本実施例における電動非常止め装置の概略的構成の他の例を示す、乗りかごおよび電動非常止め装置の正面図である。
【
図5】乗りかご用ガイドレール2A(
図2)の露出表面の画像の一例を示す模式図である。
【
図6】本実施例における非接触型位置検出装置の概略的構成の一例を示す、乗りかごの一部および乗場ら一部の側面図である。
【
図7】本実施例における非接触型位置検出装置の概略的構成の他の例を示す、乗りかごの一部および乗場ら一部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、下記の実施例により、図面を用いながら説明する。各図において、参照番号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示している。
【0011】
図1は、本発明の一実施例であるエレベーターの概略構成を示す昇降路内高さ方向構成図である。また、
図2は、本実施例のエレベーターを昇降路内において乗りかごの上方から見た場合の平面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施例のエレベーターにおいて、昇降路1の頂部近傍にはマシンビーム3Bに支持される巻上機3が設置されている。乗りかご4および釣合おもり50は、主ロープ40によって、昇降路1内に吊られる。主ロープ40は、その両端部の内の一方端部がマシンビーム3Bに固定され、さらに、釣合おもり50に設けられるプーリー50A、巻上機3のシーブ3A、乗りかご4の下部に設けられるかご下プーリー4B(
図2)およびかご下プーリー4Aに、順に巻き掛けられる。図示しないが、主ロープ40の他方端部は、昇降路1の頂部近傍に固定される。
【0013】
巻上機3を駆動する駆動装置(例えば、インバータ装置)および乗りかご4の運転を制御する制御装置を筐体内に格納する制御盤30が昇降路1の頂部近傍に設置される。
【0014】
なお、本実施例において、頂部近傍は、昇降路1における、最上階床面と昇降路頂部との間の領域、すなわち、いわゆるオーバーヘッドである。
【0015】
本実施例のエレベーター装置において乗りかご4の位置を検出する非接触型位置検出装置200は、乗りかごの前方下部において、かご床面に隣接して設けられる移動部(
図2中の「200A」)と、昇降路1内において乗場床面に隣接して固定される固定部(
図2中の「200B」)とから構成される。固定部は、階床位置設定器として機能する。
【0016】
制御盤30における制御装置は、非接触型位置検出装置200からの位置検出信号と、巻上機3の回転を検出する図示しない回転検出器(例えば、ロータリーエンコーダ)からの回転検出信号とに応じて、乗りかご4の速度を制御したり、乗りかご4を各階床に着床させたりする。
【0017】
乗りかご4には、電動非常止め装置100が設けられる。電動非常止め装置100においては、乗りかご4が過速状態に陥るとき、後述するように(
図3および
図4)、制動子が電動操作器によって引き上げられる。この電動操作器は、ガバナロープを用いないロープレスガバナシステムによって作動される。このロープレスガバナシステムは、非接触型速度検出器60を有している。
【0018】
昇降路1の底部近傍すなわちピット内には、保守専用機器であるピット梯子300が常設されている。保守技術者は、ピット内で作業する時、ピット梯子300を利用して、ピットに降りる。なお、本実施例において、ピット梯子300は、保守技術者の利便性のために、最下階の乗場に隣接する空間内に常設される。本実施例においては、前述の非接触型位置検出装置200およびロープレスガバナシステムによって作動される電動非常止め装置100により、かごドアを前面とする場合における乗りかご4の側面と昇降路壁面との間の空間において、位置測定用の遮蔽板やロープ式ガバナシステムのように、昇降路の高さ方向に沿って設けられる塔内機器を削減できる。これにより、昇降路1内に、保守専用機器、本実施例ではピット梯子を常設する空間を確保することができる。
【0019】
図2に示すように、昇降路内の機器は、乗りかご4と昇降路壁面との間の空間(SP1~SP5)内に配置される(
図2中の二点鎖線参照)。
【0020】
空間SP1および空間SP2は、昇降路上方から見て、乗りかご4における奥行方向の左右両側面の内の一方側面、すなわち、本実施例ではかごドア80に向かって左側の側面と、この一方側面に隣接しかつ平行な昇降路壁面1Aとの間の空間である。また、空間SP1および空間SP2は、昇降路上方から見て、それぞれ、乗りかご用ガイドレール2Aのかごドア80側およびその反対側に位置する。
【0021】
空間SP3および空間SP4は、昇降路上方から見て、乗りかご4における奥行方向の左右両側面の内の他方側面、すなわち、本実施例ではかごドア80に向かって右側の側面と、この他方側面に隣接しかつ平行な昇降路壁面1Bとの間の空間である。また、空間SP4および空間SP3は、昇降路上方から見て、それぞれ、乗りかご用ガイドレール2Bのかごドア80側およびその反対側に位置する。
【0022】
空間SP5は、昇降路上方から見て、かごドア80に対向する乗りかご4の背面と、この背面に隣接しかつ平行な昇降路壁面1Cとの間の空間である。
【0023】
図2に示すように、巻上機3および釣合おもり50は、空間SP2内に位置する。このような狭い空間内に巻上機3を設けられるように、巻上機3として、本実施例では、薄型の巻上機が適用される。釣合おもり50は、空間SP2内において、巻上機3の下方に位置する。巻上機3および釣合おもり50は、空間SP2内において、昇降路上方から見て互いにオーバーラップするように配置される。
【0024】
空間SP2内において、主ロープ40(
図1)の一方端部がマシンビーム3B(
図1)に固定される。主ロープ40(
図1)は、空間SP2内でプーリー50A(
図1)、シーブ3Aおよびかご下プーリー4Bに巻き掛けられ、さらに、乗りかご4の下部を通って、かご下プーリー4Aに巻き掛けられる。かご下プーリー4Aに巻き掛けられる主ロープ40は、空間SP3内において、上方向に延びる。上方向に延びる主ロープ40の他方端部が、空間SP3内における昇降路1の頂部近傍において、昇降路壁面1B、または乗りかご用ガイドレール2B、もしくはレールブラケット20などに固定される主ロープ固定用部材(図示せず)に固定される。
【0025】
制御盤30は、空間SP1内に配置される。制御盤30は、昇降路1の頂部近傍における昇降路壁面1Aに固定される。これにより、巻上機3と制御盤30との間の配線長が抑制される。本実施例では、制御盤30が薄型化されている。このため、制御盤30を、狭い空間SP1内に配置できる。
【0026】
なお、各制御盤30および巻上機3がともに昇降路1の頂部近傍に配置できるので、保守技術者が乗りかご4上で保守作業を行う場合、乗りかご4を移動させることなく、巻上機3および各制御盤30に対する保守作業を行える。このため、保守作業の効率が向上する。
【0027】
空間SP1内における制御盤30に格納される駆動装置によって巻上機3の電動機が回転すると、電動機に機械的に接続されるシーブ3Aが回転する。シーブ3Aの回転によって、シーブ3Aに巻き掛けられる主ロープ40が摩擦駆動されると、乗りかご4および釣合おもり50は、昇降路1内において、互いに反対方向に移動する。このとき、乗りかご4は、昇降路1内に固定される一対の乗りかご用ガイドレール2A,2Bによって案内される。また、釣合おもり50は、昇降路1内に固定される一対の釣合おもり用ガイドレール2C,2Dによって案内される。
【0028】
なお、乗りかご用ガイドレール2A,2Bは、それぞれ昇降路壁面1A,1Bに固定されるレールブラケット20によって支持される。また、釣合おもり用ガイドレール2C,2Dは、それぞれ昇降路壁面1A,1Cに固定されるレールブラケット20によって支持される。
【0029】
非接触型位置装置200の移動部200Aは、かごドア80用の敷居の下部に設けられる。また、非接触型位置装置200の固定部200Bは、乗場ドア(図示せず)用の敷居の下部に設けられる。このため、移動部200Aおよび固定部200Bから構成される非接触型位置検出装置200は、空間SP1~SP5の大きさに影響しない。
【0030】
乗りかご4の上部には、非接触型速度検出器60と、非接触型速度検出器60が出力する信号を入力する安全制御装置70が設けられる。本実施例において、非接触型速度検出器60および安全制御装置70は、ロープレスガバナシステムを構成する。
【0031】
本実施例において、非接触型速度検出器60として、画像センサが用いられる。安全制御装置70は、非接触型速度検出器60(画像センサ)が取得する乗りかご用ガイドレール2Aの表面画像に基づいて乗りかご4の昇降速度を計測する。安全制御装置70は、計測される昇降速度が第1過速度(例えば、定格速度の1.3倍を超えない速度)に達したと判定すると、巻上機の電源およびこの巻上機を制御する制御装置の電源を遮断するための指令信号を出力する。また、安全制御装置70は、計測される下降速度が第2過速度(例えば、定格速度の1.4倍を超えない速度)に達したと判定すると、電動非常止め装置100を作動するための指令信号を出力する。電動非常止め装置100が作動すると、乗りかご用ガイドレール2A,2Bの各々が一対の制動子151によって挟持されることにより、乗りかご4が非常停止される。
【0032】
本実施例においては、前述のように、移動部200Aおよび固定部200Bによって構成される非接触型位置検出装置200、並びに、非接触型速度検出器60を有するロープレスガバナシステムによって作動する電動非常止め装置100が用いられることにより、塔内機器を削減できる。
【0033】
これにより、
図2示す空間SP3ように、昇降路1内に、機器の占有度が低い空間を確保することができる。したがって、昇降路1の面積を低減することができる。また、
図2に示す空間SP4のように、保守専用機器を常設できる空間を確保できる。
【0034】
なお、本実施例では、空間SP3内には、テールコード600を支持するテールコード支持部材601が昇降路壁面1Bに固定されている。また、空間SP4内には、底部近傍において、ピット梯子300が常設される。
【0035】
本実施例では、かごドア80に向かって左右両側の空間の内、一方(左側)の空間(SP1およびSP2)に、巻上機3、釣合おもり50および制御盤30が設けられる。これにより、他方(右側)の空間(SP3およびSP4)全体に低減の余地が生じる。このため、昇降路1の面積を確実に低減することができる。また、保守専用機器(ピット梯子300)を常設できる空間を確実に確保できる。なお、本実施例では、ピット梯子300は、空間SP3および空間SP4の内、乗場に隣接し、空間SP3よりも乗場に近い空間SP4内に常設される。これにより、保守作業者の利便性が向上するので、ピット内における保守作業の効率が向上する。
【0036】
次に、電動非常止め装置100の構成例について、
図3および
図4を用いて説明する。
【0037】
図3は、本実施例における電動非常止め装置100の概略的構成の一例を示す、乗りかご4および電動非常止め装置100の正面図である。
【0038】
電動操作器103は、本実施例では電磁操作器であり、乗りかご4の上部に配置される。電動操作器103は、例えば、ソレノイドもしくは電磁石によって駆動される、可動片もしくは可動杆を備えるものである。
【0039】
電動操作器103は、乗りかご4が所定の過速状態(上述の「第2過速度」)に達すると、ロープレスガバナシステムにおける安全制御装置70(
図2)からの指令信号に応じて作動し、リンク機構104を変位させて制動子151を制動状態にする。
【0040】
なお、
図3においては、制動子151を案内するガイド部材や、制動子151およびガイド部を押圧する弾性体(ばねなど)は、図示を省略している。
【0041】
リンク機構104は、電動操作器103によって駆動されるリンクシャフト140、リンクシャフト140に連動可能にリンクする引き上げロッド141を有しており、電動操作器103の作動に応じて引き上げロッド141が引き上げられる。これにより、引き上げロッド141に取り付けられる制動子151が引き上げられると、制動子151は乗りかご用ガイドレール(
図2中の「2A,2B」)を挟持する。
【0042】
図4は、本実施例における電動非常止め装置100の概略的構成の他の例を示す、乗りかご4および電動非常止め装置100の正面図である。
【0043】
図4の例では、電動操作器103は、乗りかご4の下部に配置される。電動非常止め装置100の構成および動作は、
図3の例と同様である。
【0044】
次に、本実施例のロープレスガバナシステムを構成する安全制御装置70(
図2)における速度検出手段について、
図5を用いて説明する。
【0045】
図5は、乗りかご用ガイドレール2A(
図2)の露出表面の画像の一例を示す模式図である。
【0046】
図5では、非接触型速度検出器60(画像センサ)(
図1,2)によって取得される、時刻tにおける画像I(t)と時刻t+Δt(Δt:フレーム周期)における画像I(t+Δt)を示す。いずれも、ガイドレール2Aを構成する鋼材の露出表面の画像であり、鋼材の露出表面における凹凸分布を示す輝度分布のパターンを示す。なお、時刻tから時刻t+Δtまでの間、乗りかご4は下降している。
【0047】
乗りかご4が移動しているため、
図5に示すように、画像I(t)と画像I(t+Δt)との間では、画像のずれdが生じる。なお、
図5では、乗りかご4が下降しているため、画像フレーム中で、上方向に画像のずれdが生じる。この画像のずれdは、本実施例では、画像相関法を用いて、画像I(t)と画像I(t+Δt)を比較することにより算出される。この場合、画像I(t)もしくはその一部を、画像フレーム中で、ガイドレール2Aの長手方向に沿って所定量ずつ移動しながら、移動した画像I(t)と画像I(t+Δt)との相関関数値が算出される。相関関数値が最大値となる場合の画像I(t)の総移動量が画像のずれdとされる。
【0048】
画像のずれdは、時間Δtにおける乗りかご4の移動量(
図5では下降量)に相当する。したがって、画像のずれdおよび時間Δtによって、乗りかごの速度vを計測することができる(v=d/Δt)。
【0049】
また、画像フレーム中で画像がずれる方向は、乗りかご4の移動方向(上昇、下降)を示す。したがって、画像のずれる方向に応じて画像のずれの正負を設定すれば、例えば、下方向(上昇方向)を正、上方向(下降方向)を負とすれば、Δtごとに画像のずれdを算出し、起動時のかご位置に積算すれば、現時点におけるかご位置を計測することができる。
【0050】
なお、乗りかご用ガイドレールには、表面に凹凸をつけるために、研磨などにより表面仕上げが施されていることが好ましい。また、非接触型速度検出器60(画像センサ)は、乗りかご用ガイドレール2Aの表面を照らす光源を備えていることが好ましい。これらにより、かご位置の計測精度が向上する。
【0051】
次に、非接触型位置検出装置200(
図1、
図2)の構成例について、
図6および
図7を用いて説明する。
【0052】
図6は、本実施例における非接触型位置検出装置200の概略的構成の一例を示す、乗りかご4の一部および乗場ら一部の側面図である。なお、
図6において、乗りかご4は、着床して、停止している。
【0053】
図6に示すように、非接触型位置検出装置200の移動部200Aは、乗りかご4が備えている、かごドア80用の敷居81の下部に固定される。また、非接触型位置検出装置200の固定部200Bは、乗場400に設けられる乗場ドア90用の敷居91の下部に固定される。
【0054】
図6の例において、移動部200Aとしては、光電センサ(発光部)および磁気センサのいずれかが適用される。固定部200Bとしては、移動部200Aが光電センサ(発光部)および磁気センサである場合、それぞれ、光電センサ(受光部)および磁石が適用される。
【0055】
図7は、本実施例における非接触型位置検出装置200の概略的構成の他の例を示す、乗りかご4の一部および乗場ら一部の側面図である。なお、
図7において、乗りかご4は、着床して、停止している。
【0056】
図7に示すように、非接触型位置検出装置200の移動部200Aは、乗りかご4が備えている、かごドア80用の敷居81の下部に、支持部201を介して固定される。また、非接触型位置検出装置200の固定部200Bは、板状部材によって構成され、乗場400に設けられる乗場ドア90用の敷居91の下部に固定される。
【0057】
図7の例において、移動部200Aとしては、光電センサ(受発光部)、誘導型の変位センもしくは近接センサ、容量型の変位センサもしくは近接センサのいずれかが適用される。移動部200Aが光電センサ(受発光部)である場合、固定部200Bとして、反射板が適用される。移動部200Aが誘導型の変位センもしくは近接センサである場合、固定部200Bとして、磁性板が適用される。移動部200Aが容量型の変位センサもしくは近接センサである場合、固定部200Bとして、導体板が適用される。
【0058】
上記実施例によれば、かごドア用敷居および乗場ドア用敷居に隣接して設けられる非接触型位置検出装置200と、非接触型速度検出器60を備えるロープレスガバナシステムによって作動される電動非常止め装置100とにより、昇降路内に配置される塔内機器が削減される。さらに、昇降路1内において、乗りかご用ガイドレール2Aの両側に位置する空間SP1およびSP2、ならびに乗りかご用ガイドレール2Bの両側に位置する空間SP3およびSP4の内、一空間内(
図2では空間SP2)に巻上機3および釣合おもり50が配置されるとともに、他の一空間内(
図2では空間SP1)に制御盤が配置される。これにより、余の空間(
図2では空間SP3およびSP4)には、低減の余地が生じるとともに、保守専用機器(
図2ではピット梯子300)を常設が可能になる。
【0059】
なお、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、削除、他の構成の追加、他の構成との置換が可能である。
【0060】
例えば、制御盤30は、空間SP1と空間SP5とに分割して配置されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 昇降路、1A,1B,1C 昇降路壁面、2A,2B 乗りかご用ガイドレール、2C,2D 釣合おもり用ガイドレール、3 巻上機、3A シーブ、3B マシンビーム、4 乗りかご、4A,4B かご下プーリー、20 レールブラケット、30 制御盤、40 主ロープ、50 釣合おもり、50A プーリー、60 非接触型速度検出器、70 安全制御装置、80 かごドア、81 敷居、90 乗場ドア、91 敷居、100 電動非常止め装置、103 電動操作器、104 リンク機構、140 リンクシャフト、141 引き上げロッド、151 制動子、200 非接触型位置検出装置、200A 移動部、200B 固定部、300 ピット梯子、400 乗場、600 テールコード、601 テールコード支持部材