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特許7651032コアセルベート量調整剤、香気持続剤、毛髪洗浄剤用香料及び毛髪洗浄剤
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  • 特許-コアセルベート量調整剤、香気持続剤、毛髪洗浄剤用香料及び毛髪洗浄剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】コアセルベート量調整剤、香気持続剤、毛髪洗浄剤用香料及び毛髪洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/35 20060101AFI20250317BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20250317BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20250317BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20250317BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20250317BHJP
【FI】
A61K8/35
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/49
A61Q13/00 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024037595
(22)【出願日】2024-03-11
【審査請求日】2024-03-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591011410
【氏名又は名称】小川香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三小田 千穂
(72)【発明者】
【氏名】坂本 響子
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-088061(JP,A)
【文献】特開2009-209159(JP,A)
【文献】特開2004-292390(JP,A)
【文献】国際公開第2017/071915(WO,A1)
【文献】特表2003-510343(JP,A)
【文献】特表2017-514001(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0197272(US,A1)
【文献】Innersense Organic Beauty, USA,Hairbath,Mintel GNPD[online],2023年01月,Internet<URL:https://portal.mintel.com>,ID#10482166, [検索日:2024.05.14], 表題部分,成分
【文献】Kao, Gernmany,Shampoo Refill,Mintel GNPD[online],2023年01月,Internet<URL:https://portal.mintel.com>,ID#10532652, [検索日:2024.05.14], 表題部分,成分
【文献】Procter & Gamble, Mexico,Dandruff Control Shampoo,Mintel GNPD[online],2024年02月,Internet<URL:https://portal.mintel.com>,ID#11518010, [検索日:2024.05.14], 表題部分,成分
【文献】Wella, Germany,Bodiying Shampoo,Mintel GNPD[online],2024年02月,Internet<URL:https://portal.mintel.com>,ID#11525916, [検索日:2024.05.14], 表題部分,成分
【文献】Cadiveu Professional, Brazil,Shampoo,Mintel GNPD[online],2023年10月,Internet<URL:https://portal.mintel.com>,ID#11166720, [検索日:2024.05.14], 表題部分,成分
【文献】Avon, Poland,2in1 Anti-Dandruff Shampoo & Conditioner,Mintel GNPD[online],2022年09月,Internet<URL:https://portal.mintel.com>,ID#9862356, [検索日:2024.05.14], 表題部分,成分
【文献】L'Oreal, France,Colour Protecting Care Shampoo,Mintel GNPD[online],2024年02月,Internet<URL:https://portal.mintel.com>,ID#11484250, [検索日:2024.05.14], 表題部分,成分
【文献】Shinsegae International, South Korea,Good Root Shampoo for Normal to Dry Scalp,Mintel GNPD [online],2023年06月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#10867078, [検索日:2024.08.14], 表題部分及び成分
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-エチル-α,α-ジメチルベンゼンプロパナール、1-(2-tert-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、安息香酸ベンジル、酢酸トリシクロデセニル、トリクロロメチルフェニルカルビニルアセテート、ゲラニオール、シクロヘキシリデン(フェニル)アセトニトリル、l-メントール、リナロール、ジヒドロミルセノール、サリチル酸ベンジル、4-(5,5,6-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)シクロヘキサノール、シトロネロール、7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン、ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド、β-イオノン、1,1,2,3,3-ペンタメチル-6,7-ジヒドロインダン-4(5H)-オン、酢酸ヘキシル、3,6-ジメチル-2,4-ジヒドロキシ安息香酸メチル、2-フェニルエチルアルコール、3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、ジヒドロジャスモン酸メチル、p-tert-酢酸ブチルシクロヘキシル、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール、ブラシル酸エチレン及び酢酸ベンジルから選択される少なくとも1種の化合物を有効成分とする、コアセルベート量調整剤。
【請求項2】
4-エチル-α,α-ジメチルベンゼンプロパナール、1-(2-tert-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、安息香酸ベンジル、酢酸トリシクロデセニル、トリクロロメチルフェニルカルビニルアセテート、ゲラニオール、シクロヘキシリデン(フェニル)アセトニトリル、l-メントール、リナロール、ジヒドロミルセノール、サリチル酸ベンジル、4-(5,5,6-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)シクロヘキサノール、シトロネロール、7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン、ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド、β-イオノン、1,1,2,3,3-ペンタメチル-6,7-ジヒドロインダン-4(5H)-オン、酢酸ヘキシル、3,6-ジメチル-2,4-ジヒドロキシ安息香酸メチル、2-フェニルエチルアルコール、3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、ジヒドロジャスモン酸メチル、p-tert-酢酸ブチルシクロヘキシル、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール、ブラシル酸エチレン及び酢酸ベンジルから選択される少なくとも1種の化合物を有効成分とする香気持続剤。
【請求項3】
コアセルベート生成量の調整によって香気を持続する、請求項2に記載の香気持続剤。
【請求項4】
アニオン性界面活性剤及びカチオン性高分子を含む毛髪洗浄剤に用いられる香料であって、請求項2又は3に記載の香気持続剤を含む、毛髪洗浄剤用香料。
【請求項5】
請求項1に記載のコアセルベート量調整剤を毛髪洗浄剤中に0.1質量%以上10質量%以下の濃度になるように含有させる、洗髪時に生成するコアセルベート量の調整方法。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の香気持続剤を毛髪洗浄剤中に0.1質量%以上10質量%以下の濃度になるように含有させる、洗浄後の毛髪における香気を持続させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコアセルベート量調整剤、香気持続剤、毛髪洗浄剤用香料及び毛髪洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプーには、泡立ちや洗浄力に優れており且つ安価なアニオン性界面活性剤が広く用いられている。しかし、アニオン性界面活性剤を用いると、頭髪の油分や頭皮の皮脂が過度に洗い落とされ、頭髪がパサついて指通りが悪くなり、洗髪時や洗髪後の頭髪の感触及び仕上がりが低下する問題がある。
そこで、洗髪時の指通り性、泡の滑り性の向上のために、シリコーンをシャンプーに配合することが行われている。
【0003】
しかし、近年、ノンシリコーンシャンプーへの需要の高まりにより、シリコーンを配合しなくても、シリコーン配合時と同様の、洗髪時の指通り性、泡の滑り性などの使用感を補うことができるコアセルベーションという技術が注目されている。
【0004】
コアセルベーションでは、一般に、シャンプー中に含まれるアニオン界面活性剤とカチオン性高分子が洗髪後、水ですすがれる過程で、不溶性の複合体(コアセルベート)が生成される。当該不溶性の複合体が毛髪表面に吸着することで、洗髪及びすすぎの際における毛髪表面の摩擦を低減し、滑らかな指通りを与えることができる。
【0005】
コアセルベーションを調整するために、特定のカチオン性高分子を使用する技術(特許文献1)、特定のアシルアミノ酸系アニオン性界面活性剤と特定のアルカノールアミンとの中和塩と、カチオン性高分子を併用する技術(特許文献2)、カチオン性高分子、会合性増粘剤、ポリオールを特定の比率で配合する技術(特許文献3)、アルキレンオキシド誘導体などの添加物を用いる技術(特許文献4)が開発されてきた。
また、洗浄剤使用時の芳香成分の制御放出技術として、コア-シェルマイクロカプセルを活用する技術(特許文献5)、リンギングゲルを使用する技術(特許文献6)、オルガノポリシロキサンを使用する技術(特許文献7)、約1μ未満の粒径を有するポリマー材料のラテックス粒子を活用する技術(特許文献8)が知られている。
【0006】
しかし、これらは特殊な組成(界面活性剤、カチオン性高分子、増粘剤や新たな添加物)や、マイクロカプセル化のような特殊な前処理を必要とし、必ずしも簡易な技術とはいえない。
【0007】
一方、特定の香料によってコアセルベートの生成量が増加する傾向があることや、毛髪洗浄剤中の当該香料がコアセルベートに取り込まれ、コアセルベートとともに毛髪への香料の付着量が増加する傾向があることが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2019-536775号公報
【文献】特表2020-169128号公報
【文献】特表2016-519159号公報
【文献】特開2013-216639号公報
【文献】特表2023-521940号公報
【文献】特開2022-105163号公報
【文献】特開平3-157318号公報
【文献】特開平6-40863号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】J. Soc. Cosmet Chem. Jpn. 51(4), 311-316, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、近年、香料への需要は多様化しており、コアセルベート量調整能、又は香気の持続性が向上するなどの芳香制御能を有する香料、及び当該香料を用いた使用感に優れた毛髪洗浄剤が求められている。
【0011】
本発明の目的は、前記の従来技術が有する問題を解決することにあり、具体的には、毛髪洗浄剤に添加するだけでコアセルベーションを効果的に促進できるコアセルベート量調整剤;コアセルベーションを効果的に促進できて被処理物における香気を持続できる香気の持続剤及び毛髪洗浄剤用香料;含有される香料の香りが持続するほか、洗髪状態の改善、具体的には、髪の指通り性の向上、きしみの改善、滑らかさの向上又はしっとり感の向上効果に優れ使用感が向上された毛髪洗浄剤を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は、有効な、洗髪時に生成するコアセルベート量の調整方法、洗浄後の毛髪における香気を持続させる方法、髪の指通り性、きしみ、滑らかさ及びしっとり感から選択されるいずれか1以上を改善する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、特定の香料がコアセルベーションを促進させることを見出し、本発明に至った。
【0014】
本発明者は、200種以上に及ぶ香料原料がコアセルベーションに及ぼす影響を調べ、26成分の香料原料がコアセルベート生成量を特に増やすことを見出した。本発明はこの知見に基づき、以下の構成を提供するものである。
〔1〕
4-エチル-α,α-ジメチルベンゼンプロパナール、1-(2-tert-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、安息香酸ベンジル、酢酸トリシクロデセニル、トリクロロメチルフェニルカルビニルアセテート、ゲラニオール、シクロヘキシリデン(フェニル)アセトニトリル、l-メントール、リナロール、ジヒドロミルセノール、サリチル酸ベンジル、4-(5,5,6-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)シクロヘキサノール、シトロネロール、7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン、ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド、β-イオノン、1,1,2,3,3-ペンタメチル-6,7-ジヒドロインダン-4(5H)-オン、酢酸ヘキシル、3,6-ジメチル-2,4-ジヒドロキシ安息香酸メチル、2-フェニルエチルアルコール、3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、ジヒドロジャスモン酸メチル、p-tert-酢酸ブチルシクロヘキシル、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール、ブラシル酸エチレン及び酢酸ベンジルから選択される少なくとも1種の化合物を有効成分とする、コアセルベート量調整剤。
〔2〕
4-エチル-α,α-ジメチルベンゼンプロパナール、1-(2-tert-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、安息香酸ベンジル、酢酸トリシクロデセニル、トリクロロメチルフェニルカルビニルアセテート、ゲラニオール、シクロヘキシリデン(フェニル)アセトニトリル、l-メントール、リナロール、ジヒドロミルセノール、サリチル酸ベンジル、4-(5,5,6-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)シクロヘキサノール、シトロネロール、7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン、ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド、β-イオノン、1,1,2,3,3-ペンタメチル-6,7-ジヒドロインダン-4(5H)-オン、酢酸ヘキシル、3,6-ジメチル-2,4-ジヒドロキシ安息香酸メチル、2-フェニルエチルアルコール、3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、ジヒドロジャスモン酸メチル、p-tert-酢酸ブチルシクロヘキシル、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール、ブラシル酸エチレン及び酢酸ベンジルから選択される少なくとも1種の化合物を有効成分とする香気持続剤。
〔3〕
コアセルベート生成量の調整によって香気を持続する、〔2〕に記載の香気持続剤。
〔4〕
アニオン性界面活性剤及びカチオン性高分子を含む毛髪洗浄剤に用いられる香料であって、〔2〕又は〔3〕に記載の香気持続剤を含む、毛髪洗浄剤用香料。
〔5〕
アニオン性界面活性剤(A)と、
カチオン性高分子(B)と、
4-エチル-α,α-ジメチルベンゼンプロパナール、1-(2-tert-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、安息香酸ベンジル、酢酸トリシクロデセニル、トリクロロメチルフェニルカルビニルアセテート、ゲラニオール、シクロヘキシリデン(フェニル)アセトニトリル、l-メントール、リナロール、ジヒドロミルセノール、サリチル酸ベンジル、4-(5,5,6-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)シクロヘキサノール、シトロネロール、7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン、ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド、β-イオノン、1,1,2,3,3-ペンタメチル-6,7-ジヒドロインダン-4(5H)-オン、酢酸ヘキシル、3,6-ジメチル-2,4-ジヒドロキシ安息香酸メチル、2-フェニルエチルアルコール、3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、ジヒドロジャスモン酸メチル、p-tert-酢酸ブチルシクロヘキシル、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール、ブラシル酸エチレン及び酢酸ベンジルから選択される少なくとも1種の化合物(C)と、を含有する毛髪洗浄剤。
〔6〕
化合物(C)を0.1質量%以上10質量%以下含有する〔5〕に記載の毛髪洗浄剤。
〔7〕
〔1〕に記載のコアセルベート量調整剤を毛髪洗浄剤中に0.1質量%以上10質量%以下の濃度になるように含有させる、洗髪時に生成するコアセルベート量の調整方法。
〔8〕
〔2〕又は〔3〕に記載の香気持続剤を毛髪洗浄剤中に0.1質量%以上10質量%以下の濃度になるように含有させる、洗浄後の毛髪における香気を持続させる方法。
〔9〕
〔5〕又は〔6〕に記載の毛髪洗浄剤で毛髪を洗浄することで、髪の指通り性、きしみ、滑らかさ及びしっとり感のいずれか1以上を改善する方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明は毛髪洗浄剤に添加するだけでコアセルベーションを効果的に促進できるコアセルベート量調整剤及びそれを用いたコアセルベーション量の調整方法を提供する。また本発明は、コアセルベーションを効果的に促進でき、毛髪への香料の付着量を高めることで香りを持続させる香気持続剤及び毛髪洗浄剤用香料を提供する。更に本発明は、洗髪に伴い生成するコアセルベート量が多いために、香りが持続するほか、洗髪状態の改善、具体的には、髪の指通り性、きしみ、滑らかさ及びしっとり感から選択されるいずれか1以上を改善して使用感が向上された毛髪洗浄剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、毛髪洗浄剤における香料の含有量とコアセルベート生成率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
<1>コアセルベート量調整剤、香気持続剤、コアセルベート量調整方法及び香気を持続させる方法
まず、本発明のコアセルベート量調整剤及び香気持続剤(以下では、これらを「本発明の剤」ともいう。)並びにコアセルベート量調整方法及び香気を持続させる方法の好ましい実施形態を説明する。
【0018】
本発明の剤は、4-エチル-α,α-ジメチルベンゼンプロパナール(以下、「化合物1」ともいう。)、1-(2-tert-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール(以下、「化合物2」ともいう。)、安息香酸ベンジル(以下、「化合物3」ともいう。)、酢酸トリシクロデセニル(以下、「化合物4」ともいう。)、トリクロロメチルフェニルカルビニルアセテート(以下、「化合物5」ともいう。)、ゲラニオール(以下、「化合物6」ともいう。)、シクロヘキシリデン(フェニル)アセトニトリル(以下、「化合物7」ともいう。)、l-メントール(以下、「化合物8」ともいう。)、リナロール(以下、「化合物9」ともいう。)、ジヒドロミルセノール(以下、「化合物10」ともいう。)、サリチル酸ベンジル(以下、「化合物11」ともいう。)、4-(5,5,6-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)シクロヘキサノール(以下、「化合物12」ともいう。)、シトロネロール(以下、「化合物13」ともいう。)、7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン(以下、「化合物14」ともいう。)、ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド(以下、「化合物15」ともいう。)、β-イオノン(以下、「化合物16」ともいう。)、1,1,2,3,3-ペンタメチル-6,7-ジヒドロインダン-4(5H)-オン(以下、「化合物17」ともいう。)、酢酸ヘキシル(以下、「化合物18」ともいう。)、3,6-ジメチル-2,4-ジヒドロキシ安息香酸メチル(以下、「化合物19」ともいう。)、2-フェニルエチルアルコール(以下、「化合物20」ともいう。)、3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン(以下、「化合物21」ともいう。)、ジヒドロジャスモン酸メチル(以下、「化合物22」ともいう。)、p-tert-酢酸ブチルシクロヘキシル(以下、「化合物23」ともいう。)、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール(以下、「化合物24」ともいう。)、ブラシル酸エチレン(以下、「化合物25」ともいう。)及び酢酸ベンジル(以下、「化合物26」ともいう。)から選択される少なくとも1種以上の化合物(以下、これらを総称して「特定化合物」ともいう。)を有効成分とする。
【0019】
4-エチル-α,α-ジメチルベンゼンプロパナール(化合物1)は、CAS番号67634-15-5の化合物である。
【0020】
1-(2-tert-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール(化合物2)は、CAS番号139504-68-0の化合物であり、1-[(2-tert-ブチルシクロヘキサン-1-イル)オキシ]ブタン-2-オールと呼ばれることもある。
【0021】
安息香酸ベンジル(化合物3)は、CAS番号120-51-4の化合物である。
【0022】
酢酸トリシクロデセニル(化合物4)は、CAS番号5413-60-5の化合物であり、トリシクロ[5.2.1.0(2.6)]デカ-3-エン-8-イル=アセタートという。
【0023】
トリクロロメチルフェニルカルビニルアセテート(化合物5)は、CAS番号90-17-5の化合物であり、2,2,2-トリクロロ-1-フェニルエチル=アセタートと呼ばれることがある。
【0024】
ゲラニオール(化合物6)は、CAS番号106-24-1の化合物であり、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オールと呼ばれることがある。
【0025】
シクロヘキシリデン(フェニル)アセトニトリル(化合物7)は、CAS番号10461-98-0の化合物であり、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリルと呼ばれることもある。
【0026】
l-メントール(化合物8)はCAS番号2216-51-5の化合物であり、(1R,2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-オールと呼ばれることもある。
【0027】
リナロール(化合物9)は、CAS番号78-70-6 の化合物であり、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オールと呼ばれることもある。
【0028】
ジヒドロミルセノール(化合物10)は、CAS番号18479-58-8の化合物であり、2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オールと呼ばれることもある。
【0029】
サリチル酸ベンジル(化合物11)は、CAS番号118-58-1の化合物である。
【0030】
4-(5,5,6-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)シクロヘキサノール(化合物12)はCAS番号66068-84-6の化合物である。
【0031】
シトロネロール(化合物13)は、CAS番号106-22-9の化合物であって、(+)体であってもよく、(-)体であってもよく、その混合物であってもよい。
【0032】
7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン(化合物14)は、CAS番号28940-11-6の化合物である。
【0033】
ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド(化合物15)は、CAS番号27939-60-2の化合物である。
【0034】
β-イオノン(化合物16)はCAS番号14901-07-6の化合物である。
【0035】
1,1,2,3,3-ペンタメチル-6,7-ジヒドロインダン-4(5H)-オン(化合物17)はCAS番号33704-61-9の化合物である。
【0036】
酢酸ヘキシル(化合物18)はCAS番号142-92-7の化合物である。
【0037】
3,6-ジメチル-2,4-ジヒドロキシ安息香酸メチル(化合物19)はCAS番号4707-47-5の化合物である。
【0038】
2-フェニルエチルアルコール(以下、「化合物20」ともいう。)はCAS番号60-12-8の化合物である。
【0039】
3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン(化合物21)はCAS番号3738-00-9の化合物である。
【0040】
ジヒドロジャスモン酸メチル(化合物22)は、CAS番号24851-98-7の化合物であり、シス体であっても、トランス体であっても、その混合物であってもよい。
【0041】
p-tert-酢酸ブチルシクロヘキシル(化合物23)は、CAS番号32210-23-4の化合物である。
【0042】
2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール(化合物24)はCAS番号63500-71-0の化合物である。
【0043】
ブラシル酸エチレン(化合物25)はCAS番号105-95-3の化合物である。
【0044】
酢酸ベンジル(化合物26)はCAS番号140-11-4の化合物である。
【0045】
本発明の剤は、特定化合物26種のうちの1種のみを含有するのであってもよく、2種以上を組み合わせで含有するものであってもよい。本発明の剤は、特定化合物26種を任意に組み合わせることができる。本発明の剤は、特定化合物26種のうち、後述する実施例の表2においてコアセルベート生成量が高いものを含有しているほど好ましいが、これに限定されず、香りの適性や商業上の理由、工業上の理由を含め任意の理由によって所望の成分を使用することができる。
【0046】
特定化合物は例えば毛髪洗浄剤中において、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.25質量%以上含有させて用いることが、コアセルベート生成促進効果に優れる点で好ましい。また多量に添加してもコアセルベート生成能が向上しづらい点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下の量を含有させて用いることが好ましい。
【0047】
特に、4-エチル-α,α-ジメチルベンゼンプロパナール(化合物1)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0048】
特に、1-(2-tert-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール(化合物2)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0049】
特に、安息香酸ベンジル(化合物3)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0050】
特に、酢酸トリシクロデセニル(化合物4)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0051】
特に、トリクロロメチルフェニルカルビニルアセテート(化合物5)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0052】
特に、ゲラニオール(化合物6)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0053】
特に、シクロヘキシリデン(フェニル)アセトニトリル(化合物7)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0054】
特に、l-メントール(化合物8)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0055】
特に、リナロール(化合物9)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0056】
特に、ジヒドロミルセノール(化合物10)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0057】
サリチル酸ベンジル(化合物11)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0058】
4-(5,5,6-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)シクロヘキサノール(化合物12)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0059】
シトロネロール(化合物13)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0060】
7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン(化合物14)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0061】
ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド(化合物15)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0062】
β-イオノン(化合物16)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0063】
1,1,2,3,3-ペンタメチル-6,7-ジヒドロインダン-4(5H)-オン(化合物17)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0064】
酢酸ヘキシル(化合物18)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0065】
3,6-ジメチル-2,4-ジヒドロキシ安息香酸メチル(化合物19)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0066】
2-フェニルエチルアルコール(以下、「化合物20」ともいう。)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0067】
3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン(化合物21)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0068】
ジヒドロジャスモン酸メチル(化合物22)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0069】
p-tert-酢酸ブチルシクロヘキシル(化合物23)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0070】
2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール(化合物24)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0071】
ブラシル酸エチレン(化合物25)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0072】
酢酸ベンジル(化合物26)は、例えば毛髪洗浄剤中に、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の量で含有させて用いられる。
【0073】
なお、本発明の剤を毛髪洗浄剤以外の化粧料又は皮膚洗浄剤に用いる場合は、特定化合物の化粧料又は皮膚洗浄剤に対する好ましい含有量は、前述した毛髪洗浄剤に対する好ましい含有量と同様である。
【0074】
本明細書で使用するとき、用語「コアセルベート」は、界面活性剤とポリマーとの間に形成される水に不溶性の複合体を意味する。この複合体は、無希釈の組成物中で可溶である場合もあれば又は不溶である場合もある。本明細書の用語「コアセルベート量の調整」とは、当該複合体が希釈された時点で溶けにくくなり、濁りを生じる不溶体が増加減することを意味する。
【0075】
後述する実施例の表2に示す通り、非特許文献1と異なり、特定化合物のLogKow値は、該特定化合物を用いた場合のコアセルベート生成量と相関がなく、該特定化合物におけるコアセルベート生成調整剤としての作用が優れたものであることは、これまで当業者が予期し得なかった。なおLogKow値は、1-オクタノール/水間の分配係数の常用対数値で、有機化合物の疎水性を示す指標である。この値が正に大きい程疎水性が高いことを表す。被験物質のLogKow値は、構造をフラグメント(原子/官能基)に分け、各原子団の値を合計して(構造補正係数を用いる場合もある)推定値を出す「フラグメント定数」法によって算出できる。本発明では、米国環境保護庁(EPA)から入手できる化学物質の物性推算ソフトウェアの1つであるEPI suiteにより計算したLogKow値を用いた。
【0076】
本明細書で使用するとき、用語「香気の持続」は本発明の剤やそれを含む組成物で処理された処理対象(例えば洗髪後の毛髪等)において香気が持続することを指す。香気の持続の態様としては、例えば香気の強度が高まることで香気が持続する態様が挙げられる。本発明の剤に係る特定化合物26種はいずれも香料又はその原料(本明細書中、まとめて「香料原料」と記載することがある。)として用いることができるが、ここでいう香気は特定化合物に由来する香気であってもよく、特定化合物以外の香料に由来するものであってもよい。香気の持続は、例えば処理対象における香料残量が増加することに伴うものであってよい。
【0077】
本発明の剤は、コアセルベートが生成されるように原液を処理対象に付着させた後に水で洗い流すタイプのパーソナルケア用組成物に用いることが好ましく、例えば、シャンプーなどの毛髪洗浄剤や、リンス、トリートメント等の毛髪洗浄剤以外の毛髪化粧料、皮膚洗浄剤に用いることが好ましい。このような組成物に用いることで、本発明の剤におけるコアセルベート生成促進効果が発揮される。中でも、コアセルベートによる髪の指通り性の向上、きしみの改善、滑らかさの向上又はしっとり感の向上効果などが得られる点で、毛髪洗浄剤又はその他の毛髪化粧料が好ましく、とりわけ、これらの効果が優れる点で毛髪洗浄剤が好ましい。
【0078】
本発明の剤は、後述する実施例に示す通り、毛髪洗浄剤等の洗浄剤又は化粧料に添加することで、コアセルベートの生成量を増大させることができ、香りの強度を高めたり、香りを持続させたりすることができる。
【0079】
例えば、本発明の剤は、「コアセルベート量の調整」「コアセルベートを形成」「香気を持続させる」「毛髪中に残りやすい」「香りが長持ちする」「洗浄剤に用いると毛髪に多く付着する」等やこれらに類する文言による広告、宣伝、販売促進又は販売が可能であり、これらの文言を用いた広告、宣伝、販売促進又は販売は本発明の剤の実施とみなすことができる。
【0080】
<2>毛髪洗浄剤
本発明の毛髪洗浄剤は、アニオン性界面活性剤(A)と、カチオン性高分子(B)と、前記特定化合物(C)を含有する。また、毛髪洗浄剤用香料は、アニオン性界面活性剤(A)、カチオン性高分子(B)を含む毛髪洗浄剤において、特定化合物(C)を香料として使用するものである。上記の通り本発明の毛髪洗浄剤は、洗髪時において、コアセルベートの生成を効果的に促進することができ、上記の通り、洗髪後の髪における香りが持続したり増強したりするほか、洗髪時の泡の滑り性向上、すすぎ時における髪のきしみ防止又は指通り性の向上の効果を得ることができる。
なお、前記の特定化合物(C)の説明及びその好ましいものや洗浄剤中の好ましい量の説明は、すべて、毛髪洗浄剤の説明に適用させることができる(以下、<3>毛髪洗浄剤用香料」以降の説明においても同様)。
【0081】
アニオン性界面活性剤(A)としては、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルアミドエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアミドエーテル硫酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸塩、N-アシル-N-アルキルアミノ酸塩、N-アシルポリペプチド塩、アルキルスルホコハク酸塩、コハク酸アルキル又はコハク酸アルケニルの塩、スルホコハク酸塩、イセチオン酸塩、タウリン塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウムから選択される1種又は2種以上が挙げられる。これらの塩の対イオンとしては、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、アルカノールアミンイオン等が挙げられる。
【0082】
毛髪洗浄剤におけるアニオン性界面活性剤(A)の含有量は、例えば、5質量%以上30質量%以下が好ましく、10質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0083】
アニオン性界面活性剤(A)と特定化合物(C)との質量比((A)/(C))は、0.5以上300以下が好ましく、1以上150以下がより好ましく、3.3以上75以下が更に好ましい。この比は、個々の特定化合物にも、特定化合物全体にも使用できる。
【0084】
カチオン性高分子(B)としては、カチオン化セルロース(例えば、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等)、カチオン性澱粉、カチオン化グァーガム(例えば、塩化O-〔2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル〕グァーガム等)、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化タラガム、ジアリル四級アンモニウム塩のホモポリマー、ジアリル四級アンモニウム塩・アクリルアミド共重合体(例えば、塩化ジメチルジアリルアンモニウムアクリルアミド共重合体等)、四級化ポリビニルピロリドン誘導体、ポリグリコールポリアミン縮合物、ビニルイミダゾリウムトリクロライド・ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウムクロライド共重合体、ビニルピロリドン・四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン・アルキルアミノアクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン・アルキルアミノアクリレート・ビニルカプロラクタム共重合体、ビニルピロリドン・メタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体、アルキルアクリルアミド・アクリレート・アルキルアミノアルキルアクリルアミド・ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、アジピン酸・ジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミン共重合体、ポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウムなどが挙げられる。
【0085】
カチオン性高分子のカチオン化度は、例えば、0.2~2.3meq/gであることが好ましく、より好ましくは0.5~2meq/gである。カチオン性高分子のカチオン化度は、ケルダール法などによるN含有率の測定値から算出された値である。なお、カチオン化度の単位であるmeq/gとは、試料1g当たりのNカチオン基のミリ当量数を示す。
【0086】
また、カチオン性高分子の重量平均分子量は、100,000~3,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは400,000~2,500,000、特に好ましくは500,000~2,000,000の範囲である。
カチオン性高分子の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリエチレングリコール換算で求めることができる。
【0087】
毛髪洗浄剤におけるカチオン性高分子(B)の含有量は、例えば0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。
【0088】
カチオン性高分子(B)と特定化合物(C)との質量比((B)/(C))は、0.001以上500以下が好ましく、0.001以上50以下がより好ましく、0.01以上10以下がより好ましく、0.02以上5以下が更に好ましい。この比は、個々の特定化合物にも、特定化合物全体にも使用できる。
【0089】
本発明の毛髪洗浄剤は、上記成分(A)~(C)に加え、通常、水を含有する。水としては、例えば、蒸留水やイオン交換水などの精製水、水道水が挙げられる。この中で好ましくは、蒸留水やイオン交換水などの精製水である。
本発明の毛髪洗浄剤における水の含有量は、好ましくは40~98質量%であり、より好ましくは50~95質量%、特に好ましくは60~90質量%である。
【0090】
その他の任意成分として、例えば、油脂類;炭化水素油;高級アルコール類;環状シリコーン、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサンなどのシリコーン化合物;エステル油;カチオン性界面活性剤;非イオン性界面活性剤;カチオン性高分子(B)以外の水溶性高分子;溶剤;pH調整剤;抗酸化剤;保湿剤、多糖類、アミノ酸、ペプチド、香料、着色料などを適宜含有させることができる。本発明の毛髪洗浄剤はシリコーン化合物を含有していてもよく、含有していなくてもよい。
【0091】
本発明の毛髪洗浄剤のpHは、特に限定されるものではないが、25℃、水で希釈せず原液の状態で、好ましくは4.5~8.0が挙げられる。
【0092】
本発明の毛髪洗浄剤において、特定化合物を含有させる方法に特に制限はない。本発明の特定化合物は、例えば油溶性であれば、他の油溶成分と混合して油相を調製し、それと水相と混合して調製すればよく、水溶性であれば、他の水溶成分及び水とを混合して水相を調製し、それと油相と混合して調製すればよい。油相と水相との混合乳化時に混合物を加温してもよい。
【0093】
<3>毛髪洗浄剤用香料
本発明の毛髪洗浄用香料は、前記特定化合物を毛髪洗浄剤に用いるものである。特定化合物やその量並びに毛髪洗浄剤については前述の説明を適宜採用できる。
【0094】
<4>髪の指通り性、きしみ、滑らかさ及びしっとり感から選択されるいずれか1以上を改善する方法
本発明の髪の指通り性、きしみ、滑らかさ及びしっとり感から選択されるいずれか1以上を改善する方法は、本発明の毛髪洗浄剤を用いて、洗髪を行うことで実施できる。特定化合物やその量並びに毛髪洗浄剤については前述の説明を適宜採用できる。髪の指通り性、きしみ、滑らかさ及びしっとり感は、例えば、すすぎ直後において毛髪を触った触感で評価できる。
【実施例
【0095】
以下、実施例に基づき、本発明を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。
〔1〕コアセルベート生成量の測定
シャンプーを希釈した際の希釈液の光透過率が高いシャンプーはコアセルベート生成量が低く、光透過率が低いシャンプーのコアセルベート生成量は高く、希釈液の光透過率の逆数とコアセルベート生成量に相関が見出された。
そこで、コアセルベート生成量を光透過率として測定した。
【0096】
下記表1に記載の処方でシャンプーを調製した。イオン交換水にNaCl及びグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドを混合して80℃に加温し攪拌した。ここにポリオキシエチレンラウリルエ一テル硫酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液を順次混合した。最後に室温まで静置した後、特定化合物を少しずつ添加し、攪拌して、ヘアシャンプーを調製した。
得られたシャンプー2.1gをイオン交換水4.9gで希釈し(シャンプー濃度が30質量%になる。)、良く混合した。混合後、下層のコアセルベート層のみを取り出し、分光光度計(島津製作所社製UV-VIS SPECTROPHOTOMETER)を用いて波長550nmにおける光透過率を測定した。
この方法で、香料原料(特定化合物)を含んだシャンプー及び香料原料の代わりにイオン交換水を配合したシャンプー(無香料シャンプー)の光透過率をそれぞれ測定し、下記の式で香料添加によるコアセルベート生成率を算出した。
【0097】
コアセルベート生成率(%)=100×[無香料シャンプーの光透過率]÷[香料原料を含んだシャンプーの光透過率]
前記の測定によって、生成率が300%になることは、特定の香料原料を使用したシャンプーのコアセルベート量が3倍に増えたことを意味している。
【0098】
【表1】
【0099】
前記の方法にて、200種類の香料原料によるコアセルベート生成率(%)を測定した。特にコアセルベート生成率が高かった香料原料26種の生成率を下記表2に示す。表2には、各化合物のLogKowを合わせて示す。
【0100】
【表2】
【0101】
これらの香料原料について、各原料特有のLogKow値、分子量、蒸気圧、官能基の種類等とコアセルベート生成率(%)との相関について検討したが、いずれも相関は見られなかった。つまり、この26種の香料原料は、シャンプーに配合してコアセルベート量を測定するという膨大な試験の結果、初めて見出されたものであった。
【0102】
次いで、コアセルベート生成率が高い表2の26種の香料原料を用いて下記表3の配合にて、フレグランス香料(実施例1はフルーティグリーン調、実施例2はフローラルマリン調の香調を有する)を調製した。
【0103】
【表3】
【0104】
表1に記載のシャンプー組成で、実施例1及び2のフレグランス香料をそれぞれ1質量%濃度になるように配合したシャンプーを作成した。前述した(コアセルベート生成量の測定)に記載の方法と同様にして、フレグランス香料の代わりにイオン交換水を使用した無香料シャンプーのコアセルベートに対する生成率(%)を測定した。結果を表4に示す。
その結果、実施例1及び2のいずれのフレグランス香料を1質量%配合することによっても、コアセルベート生成が約2倍に増加することが確認された。
【0105】
【表4】
【0106】
〔2〕指滑り性
次いで、下記表5に記載された処方のシャンプー1及び2を調製し、実施例1及び2のフレグランス香料による洗髪時の指滑り性を評価した。シャンプー2は、コアセルベーションが発生しないようにする目的で、カチオン性高分子を配合せずに調製した。
【0107】
【表5】
【0108】
洗髪時の指滑り性の評価は、以下の方法に従って官能評価を行った。
【0109】
(シャンプー使用時の毛髪の滑り性の官能評価試験)
幅5cm×長さ20cmの一束の人毛黒髪を絡まないように櫛でとかした後、上記シャンプー9gをイオン交換水21gで希釈したシャンプー希釈液(シャンプー濃度30質量%)に人毛黒髪を5分間漬け置きした。5分後、人毛黒髪を取り出し、40℃の温水500mlに浸漬し上下に5回振盪し、シャンプーをすすいだ。5回振盪後、人毛黒髪を取り出し、新しい温水に交換してすすぎを行った。これを、4回繰り返し、最後にペーパータオルで人毛黒髪の水気を吸い取り、人毛黒髪の指通り、きしみ、滑らかさ、しっとり感を評価した。
【0110】
(評価点数)
人毛黒髪を洗髪し、すすぎ後の髪の指通りの良さ、きしみの改善、滑らかさ、しっとり感を評価し、総合的に滑り性を、下記の点数で評価した。評価はパネラー11名(女性11名、平均年齢43歳)により行い、平均点を表6に示した。
【0111】
(滑り性評価点)
3点:滑り性が高い
2点:滑り性がある。
1点:わずかに滑り性がある。
0点:ほとんど滑り性がない。
【0112】
【表6】
【0113】
実施例1及び2のフレグランス香料のいずれも、コアセルベーションを促進させることですすぎ後の滑り性の向上、きしみが改善されることが確認できた。
【0114】
〔3〕香りの持続評価
毛髪の香りの持続評価は、以下の方法に従って、香り強度の評価を含めた官能評価を行った。
【0115】
(シャンプー使用時の毛髪の香りの官能評価試験)
幅5cm×長さ20cmの一束の人毛黒髪を絡まないように櫛でとかした後、上記シャンプー9gをイオン交換水21gで希釈したシャンプー希釈液(シャンプー濃度30質量%)に人毛黒髪を5分間漬け置きした。5分後、人毛黒髪を取り出し、40℃の温水500mlに浸漬し上下に5回振盪し、シャンプーをすすいだ。5回振盪後、人毛黒髪を取り出し、新しい温水に交換してすすぎを行った。これを、4回繰り返し、最後にペーパータオルで人毛黒髪の水気を吸い取り、自然乾燥して乾かした後の人毛黒髪の香り強度を評価した。
【0116】
香りの強度を、11名のパネラー(女性11名、平均年齢43歳)により、下記基準にて評価した。評価点の平均値を香り強度として点数化した。結果を表7に示す。
【0117】
(評価点数)
3点:香りが強い。
2点:香りがする。
1点:わずかに香りがする。
0点:ほとんど香りがしない。
【0118】
【表7】
【0119】
実施例1及び2のフレグランス香料のいずれも、コアセルベーションを促進させることですすぎ後の毛髪への香りの付着が向上し、強い香りを放つことが分かった。
乾燥後の人毛黒髪を無臭の部屋に2時間吊した後に、再度、官能評価を行ったところ、いずれもシャンプー1の方が香りが強く、コアセルベーションによって、香りの持続性が向上することが分かった。
【0120】
〔4〕香料配合量とコアセルベーション生成率
シャンプー1の処方で実施例1のフレグランス香料の配合量を0.1質量%、0.25質量%、0.5質量%、0.75質量%、0.9質量%及び1.0質量%にそれぞれ調整した6水準のシャンプーを調製し、上記と同様の方法でコアセルベート生成率(%)を測定した。結果を図1に示す。
【0121】
図1から分かる通り、本発明のフレグランス香料をシャンプー中に0.1質量%以上配合することで、香料によるコアセルベーションが促進され、コアセルベート生成率が上昇した。更に、香料を0.25質量%配合するとコアセルベート生成率が飽和することが明らかになった。
コアセルベーションは、アニオン性界面活性剤・カチオン性高分子の配合量、カチオン性高分子のカチオン化度などの影響も受けるが、フレグランス香料を過剰に添加してもコアセルベーションに影響を与えないことが確認できた。
したがって、洗髪時のコアセルベーションを促進させることで、洗髪時の使用感の改善、香料の付着による香りの持続性向上を図るためのシャンプー中の香料について好ましい濃度が存在することが分かった。
【0122】
以下、本発明のコアセルベート量調整剤、香気持続剤、毛髪洗浄剤用香料及び毛髪洗浄剤に該当する処方例を示す。
【0123】
処方例1
(処方例1-1:香料組成物A)
香料組成物Aとして、以下の組成物を調製した。
4-エチル-α,α-ジメチルベンゼンプロパナール 10質量部
安息香酸ベンジル 20質量部
7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン 5質量部
ジヒドロジャスモン酸メチル 65質量部
合計 100質量部
下記処方例1-2に従い、水相部として、精製水に(3)及び(4)を配合した。水相部を徐々に加熱し、約80℃になったところで(1)及び(2)を添加し、攪拌して、その後、液温を室温に戻した後、(5)を添加し攪拌してヘアシャンプーAを調製した。
(処方例1―2:シャンプーA)
(1)ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 10.5質量部
(2)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 4.5質量部
(3)塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガム 0.5質量部
(4)塩化ナトリウム 1.0質量部
(5)香料組成物A 0.5質量部
精製水 残部
合計 100質量部
【0124】
処方例2
(処方例2-1:香料組成物B)
香料組成物Bとして、以下の組成物を調製した。
1-(2-tert-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール 20質量部
トリクロロメチルフェニルカルビニルアセテート 10質量部
ジヒドロミルセノール 30質量部
シトロネロール 30質量部
2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール 10質量部
合計 100質量部
処方例2-2に従い、水相部として、精製水に(3)及び(4)を配合した。水相部を徐々に加熱し、約80℃になったところで(1)及び(2)を添加し、攪拌して、その後、液温を室温に戻した後、(5)を添加し攪拌してヘアシャンプーBを調製した。
(処方例2-2:シャンプーB)
(1)ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 10.0質量部
(2)ラウリン酸アミドプロピルベタイン 4.5質量部
(3)塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース 0.5質量部
(4)塩化ナトリウム 1.0質量部
(5)香料組成物B 0.5質量部
精製水 残部
合計 100質量部
【0125】
処方例3
(処方例3-1:香料組成物C)
香料組成物Cとして、以下の香料を用いた。
安息香酸ベンジル 10質量部
酢酸トリシクロデセニル 10質量部
シクロヘキシリデン(フェニル)アセトニトリル 30質量部
シトロネロール 30質量部
l-メントール 5質量部
ブラシル酸エチレン 10質量部
1,1,2,3,3-ペンタメチル-6,7-ジヒドロインダン-4(5H)-オン
5質量部
合計 100質量部
処方例3-2に従い、水相部として、精製水に(3)及び(4)を配合した。水相部を徐々に加熱し、約80℃になったところで、(1)及び(2)を添加し、攪拌して、その後、液温を室温に戻した後、(5)を添加し攪拌してヘアシャンプーCを調製した。
(処方例3-2:シャンプーC)
(1)ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 7.5質量部
(2)N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン
1.5質量部
(2)ラウリン酸アミドプロピルベタイン 4.5質量部
(3)塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース 0.5質量部
(4)塩化ナトリウム 1.0質量部
(5)香料組成物C 0.5質量部
精製水 残部
合計 100質量部
【0126】
処方例4
(処方例4-1:香料組成物D)
香料組成物Dとして、以下の香料を用いた。
ゲラニオール 30質量部
リナロール 30質量部
サリチル酸ベンジル 40質量部
合計 100質量部
処方例4-2に従い、水相部として、精製水に(5)及び(6)を配合した。水相部を徐々に加熱し、約80℃になったところで(1)、(2)、(3)及び(4)を添加し、攪拌して、その後、液温を室温に戻した後、(7)を添加し攪拌してヘアシャンプーDを調製した。
(処方例4-2:シャンプーD)
(1)N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム 5質量部
(2)ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム 3質量部
(3)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 7質量部
(4)ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 3質量部
(5)ポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム液 0.2質量部
(6)塩化ナトリウム 1.0質量部
(7)香料組成物D 0.5質量部
精製水 残部
合計 100質量部
【0127】
処方例5
(処方例5-1:香料組成物E)
香料組成物Eとして、以下の香料を用いた。
β―イオノン 10質量部
酢酸ヘキシル 30質量部
2-フェニルエチルアルコール 30質量部
酢酸ベンジル 30質量部
合計 100質量部
処方例5-2に従い、水相部として、精製水に(4)(5)等を配合した。水相部を徐々に加熱し、約80℃になったところで(1)(2)(3)を添加し、攪拌して、その後液温を室温に戻した後、(6)を添加し攪拌してヘアシャンプーEを調製した。
(処方例5-2:シャンプーE)
(1)テトラデセンスルホン酸ナトリウム 6.5質量部
(2)ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 4質量部
(3)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 5.5質量部
(4)塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体液 0.5質量部
(5)塩化ナトリウム 1.0質量部
(6)香料組成物E 0.5質量部
精製水 残部
合計 100質量部
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の毛髪洗浄剤は、コアセルベーションを起こしやすく、洗髪した髪のきしみ感改善の付与、指通りの向上、香料の香立ち、香気の持続性の改善などに有効な毛髪用の洗浄料として好適に使用し得る。
また、本発明のコアセルベーション量調整剤は、優れたコアセルベート生成量の増量効果を奏する。
更に、本発明の香気持続剤は、効果的に毛髪等における香りを持続させる効果を奏する。
【要約】
【課題】コアセルベート生成促進効果に優れたコアセルベート量調整剤を提供する。
【解決手段】4-エチル-α,α-ジメチルベンゼンプロパナール、1-(2-tert-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、安息香酸ベンジル、酢酸トリシクロデセニル、トリクロロメチルフェニルカルビニルアセテート、ゲラニオール、シクロヘキシリデン(フェニル)アセトニトリル、l-メントール、リナロール、ジヒドロミルセノール、サリチル酸ベンジル、4-(5,5,6-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)シクロヘキサノール等から選択される少なくとも1種の化合物を有効成分とする、コアセルベート量調整剤。
【選択図】図1
図1