(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】異常診断装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20250317BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20250317BHJP
G06N 3/02 20060101ALI20250317BHJP
【FI】
G05B23/02 T
G05B23/02 301X
G06N20/00
G06N3/02
(21)【出願番号】P 2024502827
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 JP2022041955
(87)【国際公開番号】W WO2023162364
(87)【国際公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2022029736
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西納 修一
(72)【発明者】
【氏名】新保 健一
(72)【発明者】
【氏名】植松 裕
【審査官】田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-110327(JP,A)
【文献】国際公開第2021/117810(WO,A1)
【文献】特許第6851558(JP,B1)
【文献】特開2012-137934(JP,A)
【文献】特開平04-133164(JP,A)
【文献】国際公開第2021/157327(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/131666(WO,A1)
【文献】特開2015-100766(JP,A)
【文献】特開2007-148611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00 - 23/02
G06N 20/00
G06N 3/02
B25J 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象に関する診断情報であるデータの特徴量と診断結果との関係を学習した機械学習モデルを診断モデルとして記憶する診断モデル格納部と、
異常診断時において前記診断情報であるデータから抽出した特徴量と前記診断モデルとを用いて前記診断対象の診断結果を推定する異常診断部と、
複数の診断知識項目を保持する定義部と、
過去の異常事例について前記診断モデルを実行した診断過程を反映する処理情報と前記診断知識項目との関係を学習した機械学習モデルを説明提示モデルとして記憶する説明提示モデル格納部と、
前記異常診断部が前記診断情報について前記診断モデルを実行した際の処理情報と前記説明提示モデルとを用いて、前記異常診断部が出力した診断結果に関する診断知識項目を推定する説明提示部と、
前記異常診断部が推定した前記診断対象の診断結果と前記説明提示部が推定した診断知識項目とをあわせて画面上に表示する表示部と、
を備え
、
前記診断モデル格納部に格納する前記診断モデルは、ニューラルネットワークであり、
前記処理情報は、前記診断情報について前記ニューラルネットワークを実行した際の中間層のベクトル情報であることを特徴とする異常診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の異常診断装置であって、
前記診断結果は、前記診断対象の異常の有無や度合い、または要因、または取るべき対策であることを特徴とする異常診断装置。
【請求項3】
請求項1記載の異常診断装置であって、
前記定義部に保持される診断知識項目は、作業者が人手で前記診断対象を診断する場合の確認項目と前記診断対象の診断結果との関係情報であることを特徴とする異常診断装置。
【請求項4】
請求項1記載の異常診断装置であって、
前記診断対象に関する過去の診断情報と対応する診断結果とを格納する異常履歴格納部と、
前記定義部から前記異常履歴格納部に格納されている前記過去の診断情報についての診断知識項目を得る診断知識項目取得部と、
前記異常診断部が前記過去の診断情報について前記診断モデルを実行した際の処理情報と前記診断知識項目取得部によって取得された診断知識項目とを用いて前記説明提示モデルを学習する学習部と、
をさらに備えることを特徴とする異常診断装置。
【請求項5】
請求項1記載の異常診断装置であって、
前記表示部は、前記診断知識項目として、作業者が人手で前記診断対象を診断する場合の処理のフローを画面上に表示することを特徴とする異常診断装置。
【請求項6】
異常診断装置を用いて診断対象の異常を診断する異常診断方法であって、
前記異常診断装置は、診断モデル格納部、定義部、説明提示モデル格納部、異常診断部、説明提示部及び表示部を備え、
前記診断モデル格納部は、前記診断対象に関する診断情報であるデータの特徴量と診断結果との関係を学習した機械学習モデルを診断モデルとして記憶しており、
前記定義部は、複数の診断知識項目を保持しており、
前記説明提示モデル格納部は、過去の異常事例における前記診断モデルを実行した診断過程を反映する処理情報と前記診断知識項目との関係を学習した機械学習モデルを説明提示モデルとして記憶しており、
前記異常診断部は、異常診断時において前記診断情報であるデータから抽出した特徴量と前記診断モデルとを用いて前記診断対象の診断結果を推定し、
前記説明提示部は、前記異常診断部が前記診断情報について前記診断モデルを実行した際の処理情報と前記説明提示モデルとを用いて、前記異常診断部が出力した診断結果に関する診断知識項目を推定し、
前記表示部は、前記異常診断部が推定した前記診断対象の診断結果と前記説明提示部が推定した診断知識項目とをあわせて画面上に表示
し、
前記診断モデル格納部に格納する前記診断モデルは、ニューラルネットワークであり、
前記処理情報は、前記診断情報について前記ニューラルネットワークを実行した際の中間層のベクトル情報であることを特徴とする異常診断方法。
【請求項7】
請求項
6記載の異常診断方法であって、
前記異常診断装置は、異常履歴格納部、診断知識項目取得部及び学習部をさらに備え、
前記異常履歴格納部は、前記診断対象に関する過去の診断情報と対応する診断結果とを格納しており、
前記診断知識項目取得部は、前記定義部から前記異常履歴格納部に格納されている前記過去の診断情報についての診断知識項目を得、
前記学習部は、前記異常診断部が前記過去の診断情報について前記診断モデルを実行した際の処理情報と前記診断知識項目取得部によって取得された診断知識項目とを用いて前記説明提示モデルを学習する、
ことを特徴とする異常診断方法。
【請求項8】
請求項
6記載の異常診断方法であって、
前記表示部は、前記診断知識項目として、作業者が人手で前記診断対象を診断する場合の処理のフローを画面上に表示することを特徴とする異常診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異常診断装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象の異常度や異常要因などをデータから推定する異常診断装置では、その診断理由の説明を提示する技術(以下、説明提示技術)として、特許文献1に記載の技術がある。この公報には、「検査対象物を含む画像から複数の特徴量を抽出する抽出手段と、前記抽出された特徴量に基づいて、前記検査対象物の異常度を判定する判定手段と、前記画像から、前記特徴量それぞれのスコアを表す複数のスコアマップを生成するマップ生成手段と、前記判定手段により判定される異常度に対する前記特徴量それぞれの寄与度に基づいて、前記複数のスコアマップを統合することにより、前記検査対象物が異常であると判定された根拠となる欠陥を表す欠陥表示画像を生成する画像生成手段と、を備える」という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異常診断の結果を説明する説明提示技術が異常診断の理由を提示することで、異常診断装置の利用者(以下、作業者と称す)は診断結果の正当性判断や診断レポート作成などに役立てることができる。
【0005】
しかし、従来の説明提示技術では、作業者が持つ異常に関する診断知識と装置の提示する説明が対応しない場合に、作業者にとって説明が理解しがたいものとなる課題がある。
【0006】
例えば、特許文献1では、診断に寄与した特徴量を用いて説明を提示する。特徴量は異常診断の対象に関するデータであり、例えば、異常診断の対象から取得した画像やセンサデータ、あるいはそれらに変形を加えたものであり、設計方法は多様である。特徴量は異常診断装置の設計者が異常診断の精度を高めるように設計されるなど、必ずしも作業者が理解しやすいものに設計されるとは限らない。よって、特許文献1の方法では、作業者が説明を理解することができるのは、特徴量に関する知識を作業者が保有する場合に限られてしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決して、作業者の診断知識と対応付けて診断理由の説明を提示することで、作業者が理解容易な説明提示を可能にする異常診断装置及びその方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した従来技術の課題を解決するために、本発明では、異常診断装置を、診断対象に関する診断情報であるデータの特徴量と診断結果との関係を学習した機械学習モデルを診断モデルとして記憶する診断モデル格納部と、異常診断時において診断情報であるデータから抽出した特徴量と診断モデルとを用いて診断対象の診断結果を推定する異常診断部と、複数の診断知識項目を保持する定義部と、過去の異常事例について診断モデルを実行した診断過程を反映する処理情報と診断知識項目との関係を学習した機械学習モデルを説明提示モデルとして記憶する説明提示モデル格納部と、異常診断部が診断情報について診断モデルを実行した際の処理情報と説明提示モデルとを用いて、異常診断部が出力した診断結果に関する診断知識項目を推定する説明提示部と、異常診断部が推定した診断対象の診断結果と説明提示部が推定した診断知識項目とをあわせて画面上に表示する表示部とを備えて構成し、診断モデル格納部に格納する診断モデルは、ニューラルネットワークであり、処理情報は、診断情報についてニューラルネットワークを実行した際の中間層のベクトル情報とする。
【0009】
また、上記した課題を解決するために、本発明では、異常診断装置を用いて診断対象の異常を診断する異常診断方法において、異常診断装置は、診断モデル格納部、定義部、説明提示モデル格納部、異常診断部、説明提示部及び表示部を備え、診断モデル格納部は、診断対象に関する診断情報であるデータの特徴量と診断結果との関係を学習した機械学習モデルを診断モデルとして記憶しており、定義部は、複数の診断知識項目を保持しており、説明提示モデル格納部は、過去の異常事例における診断モデルを実行した診断過程を反映する処理情報と診断知識項目との関係を学習した機械学習モデルを説明提示モデルとして記憶しており、異常診断部は、異常診断時において診断情報であるデータから抽出した特徴量と診断モデルとを用いて診断対象の診断結果を推定し、説明提示部は、異常診断部が診断情報について診断モデルを実行した際の処理情報と説明提示モデルとを用いて、異常診断部が出力した診断結果に関する診断知識項目を推定し、表示部は、異常診断部が推定した診断対象の診断結果と説明提示部が推定した診断知識項目とをあわせて画面上に表示し、診断モデル格納部に格納する診断モデルは、ニューラルネットワークであり、処理情報は、診断情報についてニューラルネットワークを実行した際の中間層のベクトル情報とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業者の既存知識と対応付けて診断理由の説明を提示することで、作業者が理解容易な説明を提示できる。
【0011】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る異常診断装置の概略の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る説明提示モデル実行部で実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3A】本発明の第一の実施形態に係る診断知識の例を示す図で、確認項目が異常振動である場合の確認項目と診断結果の関係を示す図である。
【
図3B】本発明の第一の実施形態に係る診断知識の例を示す図で、確認項目がモーター電流高周波異常である場合の確認項目と診断結果の関係を示す図である。
【
図3C】本発明の第一の実施形態に係る診断知識の例を示す図で、確認項目が位置誤差と閾値との大小関係である場合の確認項目と診断結果の関係を示す図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態に係る説明提示画面の例を示す画面の正面図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態に係る異常診断プロセスと説明提示プロセスの処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図6】本発明の第二の実施形態に係る説明提示画面の例を示す画面の正面図である。
【
図7】本発明の第三の実施形態に係る異常診断装置の概略の構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明の第三の実施形態に係る学習部における学習の処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図9】情報処理装置のハードウェア構成を示す概略図である。
【
図10】本発明の第一または第二の実施形態に係る異常診断装置において、ストレージ装置に格納されるプログラム及びデータの例を示す図である。
【
図11】本発明の第三の実施形態に係る異常診断装置において、ストレージ装置に格納されるプログラム及びデータの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
取得データと過去事例に基づくAI(Artificial Intelligence)の診断で異常の有無や程度・要因を特定する異常診断装置では、診断結果の正当性判断や診断レポート作成の参考とするために診断理由の説明を提示することが求められる。本発明では、診断モデルの処理情報から作業者が人手診断時に参照していた確認項目とその確認結果を予測する説明提示モデルを用いて、人手診断時の確認項目と対応付けて対処方法を含めた診断の理由を示すことで、作業者に理解容易な説明を提示するようにする。
【0014】
すなわち、本発明では、異常診断装置に異常診断に関する診断知識を定義した定義部を備えて、対象の異常度や異常要因などを特徴量から推定する診断モデルの処理情報を取得し、処理情報から診断知識項目を予測する説明提示モデルによって、診断知識と紐づけて診断モデルの診断理由の説明を提示するように構成し、作業者の既存知識と対応付けて対処方法を含めた診断理由の説明を提示することで、作業者が理解容易な説明を提示できるようにしたものである。
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【実施例1】
【0016】
ここでは、ロボットに対する異常診断を例に、診断モデルの診断理由について、診断知識と紐づいた説明を提示する異常診断装置について述べる。
【0017】
図1は、本発明の第一の実施形態に係る異常診断装置の構成例を示す図である。
【0018】
ロボット20は、異常診断の対象となる、把持及び組付け動作を行うロボットであり、アーム21と制御部23、電流センサ26、振動センサ24、画像センサ25を備えて構成される。
【0019】
アーム21はロボットの可動部であり、モータ22はアームを駆動するためのモータである。制御部23はアーム21に所望の動作を実現させる制御部である。制御部23ではアーム21に所望の動作を実現させるため、まず各部の目標移動量を決定し、続いてモータ22を駆動することでアーム21を制御する。例えば、制御部23は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を備える制御基板あるいはマイクロコンピュータによって構成することができる。
【0020】
振動センサ24はアーム21の振動量を計測するセンサである。画像センサ25はアーム21の移動量の実測値を計測するセンサである。電流センサ26はモータ22の電流値を計測するセンサである。
【0021】
異常診断装置10は、ロボット20に対して異常診断とその診断理由の説明提示を行う装置であり、説明提示部11、異常診断部12、説明提示モデル格納部14、定義部15、診断モデル格納部16を備えている。説明提示部11と異常診断部12と説明提示モデル格納部14とを総称して、説明提示処理部と記す場合もある。
【0022】
異常診断装置10は、
図9に示すようなプロセッサ(CPU)91、メモリ(RAM)92、ストレージ装置93、入力装置94、出力装置95、通信装置96、バス97を主要な構成として含む情報処理装置90により実現される。プロセッサ91は、メモリ92にロードされたプログラムに従って処理を実行することによって、所定の機能を提供する機能部(機能ブロック)として機能する。ストレージ装置93は、機能部として機能させるプログラムの他、機能部で使用するデータを格納する。ストレージ装置93には、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)のような不揮発性記憶媒体が用いられる。入力装置94は、キーボード、ポインティングデバイスなどであり、出力装置95はディスプレイなどである。タッチパネルを用いて入力装置94と出力装置95とを一体化してもよい。通信装置96は、ネットワークを介して他の情報処理装置と通信を可能にする。これらはバス97により互いに通信可能に接続されている。
【0023】
なお、異常診断装置10は、1台の情報処理装置で実現する必要はなく、複数台の情報処理装置で実現してもよい。また、異常診断装置10の一部、あるいはすべての機能をクラウド上のアプリケーションとして実現してもよい。
【0024】
図10にストレージ装置93に記憶されているプログラムとデータを示す。説明提示プログラム11p、異常診断プログラム12pは、それぞれメモリ92にロードされ、プロセッサ91によって実行されることにより、プロセッサ91を説明提示部11または異常診断部12として機能させる。また、説明提示モデル格納部14、定義部15、診断モデル格納部16が格納するデータは、それぞれ説明提示モデルデータベース14d、定義データベース15d、診断モデルデータベース16dとして、ストレージ装置93に記憶されている。
【0025】
異常診断部12は、ロボット20に対して異常診断処理を行う機能部であり、サブ機能部として、診断情報入力部121、特徴量抽出部122、診断モデル実行部123、出力部124を備えている。
【0026】
診断情報入力部121は、ロボット20の振動センサ24で計測された振動量、制御部23で決定された目標移動量、画像センサ25で計測された移動量実測値、電流センサ26で計測された電流値を診断情報として受け取って、特徴量抽出部へ受け渡す入力部である。
【0027】
特徴量抽出部122は診断情報入力部121より受け取った診断情報から診断モデル実行部123への入力に適したデータ形式である特徴量の抽出処理を行う機能部である。特徴量抽出処理の例としては、診断モデル実行部123が精度の高い異常診断を実現できるように、異常と相関の高いデータ形式へと変換するものがあり、電流センサに対して周波数変換を適用し高調波成分を抽出するなどの処理が考えられる。また、受け取ったデータに手を加えなくてもよい。
【0028】
診断モデル実行部123は、診断モデル格納部16から診断モデルを読み出し、特徴量抽出部122で抽出された特徴量を診断モデル格納部16から読み出した診断モデルに入力し、診断モデルを実行し、診断モデルの出力として診断結果を得る処理を行う機能部である。診断結果は、出力部124と後述する説明提示部11の説明提示モデル実行部111に出力される。
【0029】
ここで診断モデル格納部16に格納されている診断モデルは、例えば学習済みのニューラルネットワークなどの機械学習モデルであり、過去の異常事例を元に、特徴量と診断結果の関係を学習した機械学習モデルが保持されている。診断結果は、診断対象の異常の有無や度合いでもよいし、推定される要因でもよい。異常に対して取るべき対策を診断結果としてもよい。
【0030】
出力部124は、診断モデル実行部から受け取った診断結果を表示部30に出力する。表示部30は
図9の出力装置95の一例である。表示部30に加えて、例えば、ストレージに保存したり、通信回線を介して外部の処理端末へ送信してもよいし、ロボット20に異常が検出された場合には図示していない警報器からアラート音を発したり、図示していない報知灯を点滅させてもよい。
【0031】
説明提示部11は、異常診断部12の診断理由の説明を提示する処理を行う機能部であり、サブ機能部として、説明提示モデル実行部111と出力部112とを備えている。
【0032】
説明提示モデル実行部111は、
図2に示すステップS201~S204を実行する処理である。
【0033】
S201:定義部15から診断知識を読みだす。ここで、定義部15は複数の診断知識項目からなる診断知識を保持する部分であって、診断知識項目とは、例えば、作業者が人手で診断を行う際の確認項目と診断結果の関係情報である。
【0034】
図3A乃至
図3Cはこのような関係情報の例であり、
図3Aの確認項目301、
図3Bの確認項目302、
図3Cの確認項目303の確認結果がそれぞれYESの場合の診断結果が、それぞれ矢印で結ばれた
図3Aの診断結果305、
図3Bの診断結果306、
図3Cの診断結果307であることを意味する。例えば、
図3Aの確認項目301と診断結果305のペアからなる関係情報は、「ロボット20の振動センサ24にて異常振動が検知された場合は、ロボットメーカに連絡する」という診断知識項目を意味する。
【0035】
S202:説明提示モデル格納部14から、説明提示モデルを読みだす。ここで、説明提示モデル格納部14には、過去の異常事例から診断モデル実行部123による診断過程を反映した処理情報と前記診断知識に含まれる診断知識項目との対応を学習した機械学習モデルが説明提示モデルとして保持されている。処理情報の例としては、診断モデル実行部123で実行される診断モデルがニューラルネットワークのとき、ニューラルネットを実行した際の中間層のベクトル情報を処理情報とすることが考えられる。処理情報と対応付けられる診断知識項目の例としては、例えば
図3Aにおける確認項目301と診断結果305のペアが上げられる。
【0036】
S203:診断モデル実行部123から、説明提示の対象となる診断についての処理情報を取得して説明提示モデル実行部111に入力し、説明提示モデル実行部111で実行して出力として処理情報に対応する診断知識項目を得る。得られた診断知識項目は、診断モデルの処理情報を反映しており、診断モデルの診断理由とみなすことが可能である。
【0037】
S204:S203で得られた診断知識項目と、定義部15より読みだした診断知識とを合わせて説明とし、出力部112へ受け渡す。
【0038】
出力部112は、説明提示モデル実行部111から受け取った説明を診断結果として表示部30に出力する。表示部30に加えて、例えば、ストレージに保存したり、通信回線を介して外部の処理端末へ送信したりしてもよい。
【0039】
図4には表示部30に説明提示画面400として、説明提示モデルを出力した例を示す。診断知識の関係情報として
図3Aに示した確認項目301と診断結果305のペアと、
図3Bに示した確認項目302と診断結果306のペア、
図3Cに示した確認項目303と診断結果307のペアを表示し、診断モデルの診断理由である診断知識項目に該当するペアを枠線31で囲むことで示している。
【0040】
図5に本実施形態における処理のフローチャートの一例を示す。
【0041】
まず異常診断部12で実行する異常診断プロセス500において、動作が開始されると診断情報入力部121にはロボット20の振動センサ24、画像センサ25、電流センサ26、制御部23のデータが入力される(S501)。特徴量抽出部122は診断情報入力部121に入力されたデータから特徴量を抽出する(S502)。
【0042】
次に、診断モデル実行部123において、特徴量抽出部122で抽出した特徴量を診断モデル格納部16から読み出した診断モデルに入力して診断結果を推定し(S503)、出力部124から表示部30に出力して、表示部30の画面に表示して(S504)処理を終了する。
【0043】
この場合、表示部30の画面には、推定した診断結果として、
図4における305,306,307とそれらに繋がる矢印が表示されていない状態で、301,302,303が、そのうちの何れかが枠線31で囲まれた状態で表示される。
【0044】
一方で、説明提示部11で実行する説明提示プロセス510においては、動作が開始されると説明提示モデル実行部111において、診断モデル実行部123で推定した診断結果の情報を取得して、説明提示モデル格納部14から読みだした説明提示モデルに入力し、対応する診断知識項目を推定する(S511)。
【0045】
出力部112は、説明提示モデル実行部111において推定された診断知識項目と定義部15から読みだした診断知識を合わせて表示部30に出力して、表示部30の画面に例えば
図4で説明したような形式で表示して(S512)、処理を終了する。
【0046】
診断の結果を
図4で説明したような、作業者が人手で診断を行う際の確認項目と診断結果とを関連付けた情報、すなわち作業者の既存の診断知識と対応付けて診断理由の説明を提示することで異常の原因とその対応策とを関連付けた情報として表示することにより、作業者が理解容易な説明を提示することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施例によれば、異常診断部で診断した診断対象物の異常に関して、作業者の既存の診断知識と対応付けて診断理由の説明を提示することができ、作業者が理解容易な説明を提示することができる。
【実施例2】
【0048】
本発明の第2の実施例として、実施例1の場合と同様にロボットに対する異常診断を例に、診断モデルの診断理由について、作業者が人手で診断する際の手順を表した診断フローに対応付けることで、複数の確認項目の組み合わせや順序までを含む診断知識と紐づいた説明を提示できる異常診断装置について説明する。
【0049】
本実施例に係る形態の異常診断装置10の構成は、実施例1で
図1を用いて説明したもので同じであるので、説明を省略する。
【0050】
実施例1では定義部15が保持する関係情報の例として
図3A乃至
図3Cに示したような異常の原因をその対策と個別に関連付けた情報を用い、
図4の説明提示画面400に示したような情報を作業者が人手で診断を行う際の確認項目と診断結果とを関連付けた情報として画面上に表示する例を示した。本実施例では、画面上に
図6に示すような異常診断フロー601を表示して、この異常診断フロー601上で異常の原因とその対策とを異常診断の処理の流れに沿って表示する例について説明する。
【0051】
即ち本実施例においては、説明提示モデル格納部14に格納する説明提示モデルにおける処理情報と対応付ける診断知識項目の例としては、
図6の説明表示画面600に示したような作業者が人手で行う場合の異常診断フロー601上の診断パス602であり、作業者が人手で診断を行う際の確認項目の順序を考慮した組み合わせとして表した診断知識項目である。すなわち、確認項目とその確認結果によって分岐し診断結果につながる診断フローである。
【0052】
本実施例においては、出力部112から出力されて表示部30に表示される情報は、
図6の説明表示画面600に示したような、作業者が人手で診断を行う際の確認項目の順序に合わせて構成された異常診断フロー601上に異常診断部12で検出した異常と説明提示部11で異常の原因に関連付けられた対策とを、異常診断結果として診断パス602のように、異常診断の処理の流れに沿って表示する。
【0053】
本実施例によれば、実施例1で説明した効果に加えて、人手で診断するときの診断フローを用いて診断の理由を説明するので、診断結果について理解しやすくすることができる。また、異常診断処理フロー上で複数の確認項目の組み合わせや順序までを含む診断知識と紐づけての診断理由の説明が可能となるので、診断結果の解釈性を高めることができる。
【実施例3】
【0054】
本発明の第3の実施例として、事前に説明提示モデルが存在しない場合に、異常履歴からの学習によって作成できる異常診断装置について説明する。
【0055】
本実施例に係る形態の異常診断装置100の構成を、
図7に示す。
図7において、実施例1で説明した
図1の異常診断装置10の構成と同じものについては、同じ番号を付してその説明を省略する。
図7に示した異常診断装置100においても、異常診断対象であるロボット20に装着した各種センサからの信号を受ける点については実施例1の
図1に示した構成と同じであるので、
図7においては、
図1に示したロボット20の構成の表示を省略している。
【0056】
異常診断装置100もまた、
図9に示すような情報処理装置90により実現され、
図11にストレージ装置93に記憶されているプログラムとデータを示す。説明提示プログラム110p、異常診断プログラム120p、学習プログラム60pは、それぞれメモリ92にロードされ、プロセッサ91によって実行されることにより、プロセッサ91を説明提示部110、異常診断部120または学習部60として機能させる。また、説明提示モデル格納部14、定義部15、診断モデル格納部16、異常履歴格納部63が格納するデータは、それぞれ説明提示モデルデータベース14d、定義データベース15d、診断モデルデータベース16d、異常履歴データベース63dとして、ストレージ装置93に記憶されている。
【0057】
本実施例に係る
図7に示した異常診断装置100においては、学習部60と異常履歴格納部63を設けた点が
図1に示した実施例1における異常診断装置10の構成と異なる。
【0058】
異常履歴格納部63は過去の異常事例を保持する格納部であって、過去の診断情報とそれ対応する診断結果が格納されている。
【0059】
異常診断部120の構成は実施例1で説明した異常診断部12と同一であるが、一部の処理が異なる。以下異なる処理についてのみ記す。
【0060】
診断情報入力部1201は、異常履歴格納部63に格納された過去の診断情報を読み取り、特徴量抽出部1202に渡す入力部である。
【0061】
診断モデル実行部1203の処理は実施例1と同一であるが、その処理情報は学習部60の説明提示モデル学習部62へと送られる。
【0062】
学習部60は、説明提示モデルを学習し、この学習した説明提示モデルを説明提示モデル格納部14に格納する処理を実行する機能部で、サブ機能部として、診断知識項目取得部61と説明提示モデル学習部62を備えている。
【0063】
診断知識項目取得部61は、定義部15から診断知識を読み出し、この読み出した診断知識に基づいて異常履歴格納部63に格納されている過去の診断情報・診断結果に対応する診断知識項目を取得する。例えば、定義部15から読み出した診断知識が
図6の異常診断フロー601の形態で、過去の診断結果が「定期メンテ対象」であるとき、その診断知識項目は、診断フロー上にてルートである「把持エラー発生」と診断結果「定期メンテ対象」を繋ぐ診断パス602として得られる。
【0064】
説明提示モデル学習部62は、説明提示モデルとして機械学習モデルを作成し、説明提示モデル格納部14へ格納する処理を実行する。機械学習モデルは、ある過去事例に対する診断モデル実行部1203の処理情報を入力として、同じ過去事例に対する診断知識項目取得部61が取得した診断知識項目を出力するように学習される。
【0065】
図8に本実施形態の学習部60における学習の処理の流れに対応するフローチャートの一例を示す。この学習処理は、実施例1で
図5を用いて説明した異常診断プロセス500及び説明提示プロセス510に先立って行う。したがって、
図8に示した処理フローは、診断情報入力部1201に、ロボット20に装着した各種センサー及び制御部からの信号の入力がない状態で実行する。
【0066】
まず、異常診断部120の診断情報入力部1201は、異常履歴格納部63から診断情報を受け取る(S801)。続いて、診断知識項目取得部61は上記診断情報と紐づいた診断結果を異常履歴格納部63から受け取り定義部15の診断知識を参照して対応する診断知識項目を取得する(S802)。
【0067】
続いて、説明提示モデル学習部62において、診断情報入力部1201で受け取った診断情報から特徴量抽出部1202で抽出した特徴量に基づいて診断モデル実行部1203で処理した処理情報と、診断情報入力部1201で受け取った診断情報に対応させて診断知識項目取得部61で取得した診断知識項目を受け取る(S803)。
【0068】
異常履歴格納部63に格納されている全ての異常履歴を参照したかをチェックし(S804)、まだ全ての異常履歴を参照していない場合には(S804でNOの場合)、S801に戻る。一方、全ての異常履歴の参照が終わった場合は(S804でYESの場合)、説明提示モデル学習部62は受け取った処理情報と診断知識項目のペア情報をもとに、診断情報から診断知識項目を推定する機械学習モデルを学習し、説明提示モデル格納部14へ格納し(S805)、処理を終了する。
【0069】
図8で説明した学習処理が終了した後、ロボット20の各種センサ24乃至26及び制御部23からの信号を診断情報入力部1201に入力した状態で、実施例1で
図5を用いて説明した異常診断プロセス500及び説明提示プロセス510を実行することにより、ロボット20の異常診断を行う。
【0070】
本実施例によれば、説明提示モデル格納部14に事前に説明提示モデルが格納されていない場合であっても、異常履歴格納部63に格納された異常履歴を参照することで、学習部60が説明提示モデルを学習して、説明提示モデル格納部14に格納することができる。
【0071】
本実施例によれば、実施例1及び実施例2で説明した効果に加えて、事前に説明提示モデルが作成されていない場合であっても機械学習により説明提示モデルを作成することができるので、説明提示モデル作成の手間を省力化することができる。
【0072】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0073】
10,100 …異常診断装置、11,110 …説明提示部、12,120 …異常診断部、14 …説明提示モデル格納部、15 …定義部、16 …診断モデル格納部、30 …表示部、60 …学習部、61 …診断知識項目取得部、62 …説明提示モデル学習部、63 …異常履歴格納部、111、1101 …説明提示モデル実行部、121、1201 …診断情報入力部、122、1202 …特徴量抽出部、123、1203 …診断モデル実行部。