(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 13/14 20060101AFI20250317BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20250317BHJP
【FI】
H01H13/14 Z
C03C21/00 101
(21)【出願番号】P 2024503272
(86)(22)【出願日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2023006840
(87)【国際公開番号】W WO2023163128
(87)【国際公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2022029745
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】村重 毅
(72)【発明者】
【氏名】日野 高文
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-59685(JP,A)
【文献】特開2020-129299(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0033923(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0218640(US,A1)
【文献】米国特許第5747757(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化ガラスからなるガラス層と、
前記ガラス層の裏面側に配置されたスイッチ部と、を有し、
前記ガラス層の厚さは、100μm以上200μm以下であり、
前記スイッチ部は、上下に可動する接点を含む複数の接点を備え、
前記ガラス層が押されると、前記ガラス層が弾性変形して複数の前記接点の導通と非導通とが切り替わる、スイッチ装置。
【請求項2】
前記ガラス層は、圧縮応力層を有する化学強化ガラスである、請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記ガラス層は、圧縮応力が600MPa以上である、請求項2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記ガラス層と前記スイッチ部との間にフレームが介在し、
前記フレームは、固定部と、固定部に対して弾性支持部で支持された可動部と、を有し、
前記ガラス層が押されると、前記ガラス層が弾性変形して前記可動部を可動させ、複数の前記接点の導通と非導通とが切り替わる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記ガラス層の裏面側に、前記ガラス層を支持する支持部を有する、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
前記支持部は、前記スイッチ部の一部又は全部である、請求項5に記載のスイッチ装置。
【請求項7】
前記支持部は、前記スイッチ部の外側に配置される、請求項
5に記載のスイッチ装置。
【請求項8】
前記ガラス層と前記スイッチ部との間に接合層が介在する、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のスイッチ装置。
【請求項9】
前記ガラス層と前記スイッチ部との間に樹脂層が介在する、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品のインプットの手法として電気的な接触を機械的に制御するスイッチが多く用いられている。このようなスイッチとして、例えば、特許文献1に示すタクトスイッチが挙げられる。この種のスイッチでは、摺動タイプのボタンはオン/オフを自己認識できるため、タッチ式に比べて誤動作を招かない特長を有すると考えられる。
【0003】
この種のスイッチの中でも、上下に可動する接点を備え、上下に摺動するスイッチは、柔軟性があって破損し難い樹脂を最表面に用いる。しかし、樹脂は、傷等により表面が劣化しやすく、溶剤等による清掃がしにくく、質感もあまりよくなく、強度も十分ではない。そこで、これらの問題を解消するスイッチ装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、上下に可動する接点を備えたスイッチ装置において、耐擦傷性、溶剤清掃性、及び質感を向上すると共に、十分な強度を有することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本スイッチ装置は、強化ガラスからなるガラス層と、前記ガラス層の裏面側に配置されたスイッチ部と、を有し、前記ガラス層の厚さは、100μm以上200μm以下であり、前記スイッチ部は、上下に可動する接点を含む複数の接点を備え、前記ガラス層が押されると、前記ガラス層が弾性変形して複数の前記接点の導通と非導通とが切り替わる。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、上下に可動する接点を備えたスイッチ装置において、耐擦傷性、溶剤清掃性、及び質感を向上すると共に、十分な強度を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るスイッチ装置を例示する断面図(その1)である。
【
図2】第1実施形態に係るスイッチ装置のフレームを例示する平面図である。
【
図3】第1実施形態に係るスイッチ装置を例示する断面図(その2)である。
【
図4】実施例及び比較例の条件及び結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
図1は、第1実施形態に係るスイッチ装置を例示する断面図(その1)である。
図1に示すように、スイッチ装置1は、支持部10と、接合層20と、フレーム30と、接合層40と、樹脂層50と、接合層60と、ガラス層70と、スイッチ部80とを有している。なお、支持部10、フレーム30、接合層40、樹脂層50、及び接合層60は、スイッチ装置1の必須の構成要素ではない。
【0011】
ガラス層70の一方の面70a側は、スイッチ装置1の最表面となる。支持部10等の他の部材や他の層は、ガラス層70の他方の面70b側(裏面側)に配置されている。スイッチ装置1は、例えば、配線基板上に実装される。
【0012】
ここで、スイッチ装置1の各部の材料等について説明する。
【0013】
[支持部]
支持部10は、ガラス層70の他方の面70b側(裏面側)に配置され、ガラス層70等を支持する。支持部10は、例えば、スイッチ部80の外側に、スイッチ部80を囲むように枠状に配置することができる。或いは、複数の支持部10をスイッチ部80の外側の任意の位置に間隔を置いて配置してもよい。支持部10は、例えば、樹脂や金属等から形成される。
【0014】
なお、スイッチ部80を構成する部品を支持部としてもよい。或いは、スイッチ部80自体を支持部としてもよい。すなわち、支持部は、スイッチ部80の一部であってもよいし、全部であってもよい。これらの場合には、
図1に示す支持部10は配置しなくてもよい。或いは、スイッチ部80の一部又は全部を支持部として用い、これとは別に、さらに
図1に示す支持部10を配置してもよい。
【0015】
[接合層]
接合層20、40、及び60としては、任意の粘着剤又は接着剤を使用できる。本明細書において、粘着剤とは、常温で接着性を有し、軽い圧力で被着体に接着する層をいう。従って、粘着剤に貼着した被着体を剥離した場合にも、粘着剤は実用的な粘着力を保持する。一方、接着剤とは、物質の間に介在することによって物質を結合できる層をいう。従って、接着剤に貼着した被着体を剥離した場合には、接着剤は実用的な接着力を有さない。
【0016】
粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマーをベースポリマーとする粘着剤が挙げられる。
【0017】
接着剤としては、例えば、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、エポキシ系接着剤が挙げられ。接着剤が熱硬化型接着剤である場合は、加熱して硬化(固化)することにより剥離抵抗力を発揮できる。又、接着剤が紫外線硬化型等の光硬化型接着剤である場合は、紫外線等の光を照射して硬化することにより剥離抵抗力を発揮できる。又、接着剤が湿気硬化型接着剤である場合は、空気中の水分等と反応して硬化し得るので、放置することによっても硬化して剥離抵抗力を発揮できる。
【0018】
なお、強度の観点から、接合層20としては接着剤または粘着剤を用い、接合層40としては粘着剤を用い、接合層60としては接着剤を用いることが好ましい。接合層20の厚みは、5μm~2mm以内が好ましい。接合層40の厚みは、粘着層の製法上、5μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上150μm以下であることがより好ましく、20μm以上100μm以下であることが更に好ましい。接合層60の厚みは、0.5μm以上25μm以下であることが好ましく、0.5μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上3μm以下であることが更に好ましい。
【0019】
[フレーム]
フレーム30は、ガラス層70とスイッチ部80との間に介在することができる。
図1の例では、フレーム30は、接合層20を介して、支持部10上に接合されている。
図2は、フレームを例示する平面図である。
図2に示すように、フレーム30は、固定部31と、固定部31に対して弾性支持部33で支持された可動部32とを有している。固定部31は開口部を有し、開口部内に可動部32が配置されている。固定部31と可動部32は、複数の弾性支持部33により可動自在に支持されている。なお、支持部10と接合されるのは固定部31のみであり、可動部32及び弾性支持部33は支持部10には接合されない。
【0020】
図2の例では、矩形の固定部31の略中央部に円形の開口部が形成され、開口部内に円形の可動部32が配置されている。可動部32の直径は、例えば、10mm~30mm程度とすることができる。また、
図2の例では、3つの弾性支持部33が可動部32の周方向を略3等分する位置に配置されている。ただし、固定部31や可動部32の形状、弾性支持部33の個数や接続位置は、
図2の例には限定されない。なお、弾性支持部33は、例えば、ばねである。ばねは、板ばねであってもよいし、コイルばねであってもよい。弾性支持部33は、ゴムなど、ばね以外の部材であってもよい。
【0021】
フレーム30は、例えば、樹脂や金属等により一体に形成できる。フレーム30が樹脂である場合、例えば、ABS系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の材料を用いることができる。また、フレーム30が金属である場合、例えば、アルミニウムやSUS等の材料を用いることができる。フレーム30の厚さは、例えば、0.5mm以上5mm以下とすることができる。
【0022】
[樹脂層]
樹脂層50は、ガラス層70とスイッチ部80との間に介在することができる。
図1の例では、樹脂層50は、接合層40を介して、フレーム30の固定部31上に接合されている。樹脂層50は、可撓性を有する。樹脂層50の厚さは、可撓性の観点から50μm以上150μmであることが好ましい。樹脂層50の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂やポリエチレンナフタレート系樹脂等のポリエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0023】
このように、ガラス層70の下層に樹脂層50を積層すると、樹脂層50がガラス層70の必要以上の変形を抑制し、ガラス層70の割れを抑制する効果があるとともに、適正な変形量を実現するため、ガラス層70が繰り返し弾性変形する際の耐久性を向上することができる。なお、樹脂層50の厚さを変えることで、ガラス層70の変形量を制御できる。
【0024】
ガラス層70の下層に、接合層を介して複数の樹脂層を積層してもよい。このような積層構造により、ガラス層70の割れをさらに抑制することができると共にガラス層70が繰り返し弾性変形する際の耐久性をさらに向上することができる。
【0025】
[ガラス層]
ガラス層70は、接合層60を介して樹脂層50上に積層されている。ガラス層70は、強化ガラスからなる。強化ガラスは、化学強化ガラスでも熱強化ガラスでもよいが、圧縮応力層を有する化学強化ガラスの方が熱強化ガラスよりも製造が容易である。ガラス層70は、圧縮応力が600MPa以上であることが好ましい。
【0026】
なお、化学強化とは、ガラス板の表面付近のイオンを、イオン半径の大きいイオンに置換することである。イオン交換により、ガラス板の表面に圧縮応力層が形成され、化学強化ガラスができあがる。圧縮応力層におけるガラス組成は、ガラス内部におけるガラス組成と異なる。
【0027】
化学強化ガラスにおいて、強化前のガラス板としては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス等を用いることができる。圧縮応力層の深さが必要以上に大きくなり過ぎない点では、ソーダライムガラス又はソーダシリケートガラスが好ましく、ソーダライムガラスがより好ましい。
【0028】
イオン交換は、例えば、ガラス板の表面のLiイオンをNaイオン及び/又はKイオンに置換することで行うことができる。あるいは、ガラス板の表面のNaイオンをKイオンに置換してもよい。これらのイオン交換により、ガラス板の表面に圧縮応力層が形成される。
【0029】
NaイオンをKイオンに置換する場合は、例えば、硝酸カリウムを含む無機溶融塩に、ナトリウムを含むガラス板を接触させればよい。硝酸カリウムを含む無機溶融塩は、K2CO3、Na2CO3、KHCO3、NaHCO3、KOH及びNaOHからなる群より選ばれる少なくとも一種の塩を含むことが好ましい。
【0030】
ガラス層70の厚みは、スイッチ装置に要求されるガラス層の強度や耐久性を考慮すると、100μm以上であることが好ましい。一方、スイッチ装置に用いるガラス層は弾性変形する必要があり、十分に弾性変形できる点を考慮すると、ガラス層70の厚みは200μm以下が好ましい。
【0031】
ガラス層70の表面及び/又は裏面に、防汚層、反射防止層、導電層、反射層、加飾層等の機能層を設けてもよい。なお、本実施形態に係るスイッチ装置では、ガラス層70が最表面に位置する。ここで、『ガラス層70が最表面に位置する』とは、ガラス層70が実質的に最表面に位置することであり、上記のような付加的な層が設けられた場合であっても、本実施形態では、ガラス層70が最表面に位置すると表現する。
【0032】
[スイッチ部]
スイッチ部80は、ガラス層70の裏面側に配置される。
図1の例では、スイッチ部80は、支持部10の内側であり、かつ、フレーム30のガラス層70等とは反対側に配置されている。
【0033】
また、スイッチ部80は、上下に可動する接点を含む複数の接点を備る。
図1の例では、スイッチ部80は、タクトスイッチであり、ハウジング81と、フィルム82と、フレーム83と、ステム84と、第1接点85と、第2接点86とを有している。第1接点85及び第2接点86のうち、第2接点86が上下に可動する接点である。
【0034】
ハウジング81とフレーム83は、それぞれが枡状であり、粘着性のフィルム82を挟んで対向して配置されている。フィルム82は、例えば、ハウジング81の開口部を塞ぐように配置されている。ステム84は、上下方向に摺動自在な状態でフレーム83に保持されている。
【0035】
ハウジング81の底面には第1接点85及び第2接点86が配置されている。第2接点86は、第1接点85と離隔して第1接点85の上方に配置されている。フィルム82及び第2接点86は、弾性変形可能に構成されている。ハウジング81、フィルム82、フレーム83、及びステム84は、例えば、樹脂製である。
【0036】
図1において、第1接点85と第2接点86と電気的に接続される外部接続用端子については、図示が省略されている。スイッチ部80のステム84の上面とフレーム30の可動部32の下面との間には、0.1mm~0.2mm程度の隙間がある。なお、スイッチ部80は、タクトスイッチには限定されず、メンブレンスイッチ等であってもよい。
【0037】
図3は、第1実施形態に係るスイッチ装置を例示する断面図(その2)であり、ガラス層70の一方の面70a側が矢印方向に押された様子を示している。
【0038】
前述のようにガラス層70の厚さは、100μm以上200μm以下が好ましい。ガラス層70をこのような厚さとすることで、ガラス層70は弾性変形が可能となり、局所的に凹ませることができる。ガラス層70の一方の面70a側が押されると、樹脂層50及び接合層60と共にガラス層70が弾性変形してフレーム30の可動部32を可動させ、スイッチ部80の第1接点85と第2接点86の接触(導通)と非接触(非導通)とが切り替わる。ガラス層70は、例えば、垂直方向に0.5mm~2mm程度沈み込むように弾性変形することができる。
【0039】
図1の例では、ガラス層70が押されていないときにスイッチ部80の第1接点85と第2接点86が非接触(非導通状態)である。そのため、
図3に示すように、ガラス層70が押されて変形すると、それに伴ってスイッチ部80のステム84が押されてフィルム82及び第2接点86が弾性変形して第2接点86が第1接点85に近づき、第1接点85と第2接点86が接触して導通状態になる。ガラス層70を押す力をとり除くと、ガラス層70は
図1の状態に戻り、第1接点85と第2接点86とは再び非接触となる。
【0040】
このように、ガラス層70の厚さを100μm以上200μm以下とすることで、ガラス層70が弾性変形可能となる。これにより、ガラス層70が押されると、ガラス層70の局所的な変形に伴なってスイッチ部80の接点を上下に摺動させ、スイッチ部80の複数の接点の導通と非導通とを切り替えることができる。
【0041】
スイッチ装置1は、最表面がガラス層70であるため、最表面が樹脂である場合と比べて、耐擦傷性、溶剤清掃性、及び質感を向上することができる。また、スイッチ装置1は、ガラス層70が強化ガラスであるため、ガラス層70が未強化ガラスである場合と比べて、十分な強度及び耐久性を備えることができる。また、スイッチ装置1は、摺動タイプのスイッチであるため、押した感触が得られるとともに、誤動作が生じるおそれを低減できる。
【0042】
なお、最表面にガラスを用いたスイッチとして、静電容量などを用いたタイプも考えられるが、上下に摺動する動作を作り出すことは一般的な板ガラスでは困難である。そのため、押した感触が得られず、意図せずに触れただけで誤動作が生じるおそれがある。
【0043】
[実施例1]
実施例1では、
図1に示す構造のスイッチ装置を作製した。ガラス層70として、圧縮応力が600MPaの化学強化ガラスを用い、厚さは200μmとした。また、樹脂層50の材料にはPETを用い、厚さは100μmとした。また、接合層60は接着剤とし、材料にはエポキシ樹脂を用い、厚さは1μmとした。
【0044】
[実施例2]
実施例2では、ガラス層70として、圧縮応力が600MPaの化学強化ガラスを用い、厚さは150μmとした。それ以外は実施例1と同様にしてスイッチ装置を作製した。
【0045】
[実施例3]
実施例2では、ガラス層70として、圧縮応力が600MPaの化学強化ガラスを用い、厚さは100μmとした。それ以外は実施例1と同様にしてスイッチ装置を作製した。
【0046】
[比較例1]
比較例1では、ガラス層70として、圧縮応力が600MPaの化学強化ガラスを用い、厚さは300μmとした。それ以外は実施例1と同様にしてスイッチ装置を作製した。
【0047】
[比較例2]
比較例2では、ガラス層70として、圧縮応力が600MPaの化学強化ガラスを用い、厚さは50μmとした。それ以外は実施例1と同様にしてスイッチ装置を作製した。
【0048】
[比較例3]
比較例3では、ガラス層70として、未強化ガラスを用い、厚さは200μmとした。それ以外は実施例1と同様にしてスイッチ装置を作製した。
【0049】
[比較例4]
比較例4では、ガラス層70として、未強化ガラスを用い、厚さは100μmとした。それ以外は実施例1と同様にしてスイッチ装置を作製した。
【0050】
[評価1]
実施例1~3及び比較例1~4で作製したスイッチ装置について、ガラス層70を押したときにガラス層70が弾性変形してスイッチ部80を押せるか否かを確認した。具体的には、ガラス層70側から
図3の矢印方向に荷重5Nの力で押したときにスイッチ部80が非導通から導通に切り替わるか否かを確認し、切り替わった場合を〇、切り替わらなかった場合を×とした。
【0051】
[評価2]
実施例1~3及び比較例1~4で作製したスイッチ装置について、強度試験を行い、ガラス層70にクラックが入るか否かを目視で確認し、クラックが確認できなかった場合を〇、クラックが確認できた場合を×とした。強度試験は、JIS C4526-1:2021に規定されているスプリングハンマー試験に準拠して行った。なお、スプリングハンマー試験によりスイッチ装置に加えた力は、0.5Jである。
【0052】
[評価結果]
評価結果を
図4に示す。
図4の実施例1~3より、ガラス層70として圧縮応力が600MPaの化学強化ガラスを用い、かつ厚さを100μm~200μmとすることで、スイッチ部の導通と非導通を切り替えることができ、かつ十分な強度が得られることが確認できた。
【0053】
これに対して、比較例1より、ガラス層70として圧縮応力が600MPaの化学強化ガラスを用いたとしても、厚さが300μmであると、強度が高すぎて弾性変形することができず、スイッチ部の導通と非導通を切り替えることとができないことが確認できた。また、比較例2より、ガラス層70として圧縮応力が600MPaの化学強化ガラスを用いたとしても、厚さが50μmであると、十分な強度が得られないことが確認できた。また、比較例3及び4より、ガラス層70として未強化ガラスを用いると、厚さが100μm及び200μmであっても、十分な強度が得られないことが確認できた。
【0054】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0055】
本国際出願は2022年2月28日に出願した日本国特許出願2022-029745号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2022-029745号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0056】
1 スイッチ装置
10 支持部
20,40,60 接合層
30 フレーム
31 固定部
32 可動部
33 弾性支持部
50 樹脂層
70 ガラス層
70a 一方の面
70b 他方の面
80 スイッチ部
81 ハウジング
82 フィルム
83 フレーム
84 ステム
85 第1接点
86 第2接点