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特許7651071動的環境におけるコネクテッド自動運転車両のための大域的マルチ車両意思決定システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-14
(45)【発行日】2025-03-25
(54)【発明の名称】動的環境におけるコネクテッド自動運転車両のための大域的マルチ車両意思決定システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20250317BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20250317BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G08G1/00 C
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2024526019
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2022014754
(87)【国際公開番号】W WO2023007849
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】17/389,722
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クイリネン,リエン
(72)【発明者】
【氏名】ディ・カイラノ,ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ラビクマール,シュリージット
(72)【発明者】
【氏名】バガット,アクシャイ
(72)【発明者】
【氏名】ゼイノ,エヤド
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-129804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G08G 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台または複数台の無制御車両(NCV)と、1つまたは複数のコンフリクトゾーンと、1つまたは複数のコンフリクトのない道路区間とを含む相互に接続された交通網にある1台または複数台のコネクテッド自動運転および/または半自動車両(CAV)についてのリアルタイムのモーションプランニングおよび調整を提供するための大域的マルチ車両意思決定システムであって、
路側機(RSU)を介してインフラストラクチャセンシング信号を取得し、1つまたは複数の所望の目的地に向かうコネクテッド自動運転車両(CAV)の状態および計画されている今後のルーティング情報についてのタイプ1フィードバック信号を取得し、無制御車両(NCV)の状態および予測される今後のルーティング情報についてのタイプ2フィードバック信号を取得するように構成された受信部を備え、
前記受信部は、シッピングヤード管理システムとデータ通信を行うように構成され、前記シッピングヤード管理システムは、マッピング情報、1台もしくは複数台のCAVの長期計画されている今後のルーティング情報、ならびに/または1つもしくは複数のNCVの短期予測される今後のルーティング情報を提供するために前記大域的マルチ車両意思決定システムに接続される集中型タスク割り当て、ジョブスケジュール管理、マッピングおよびナビゲーションシステムを含み、
前記マッピング情報と、大域的マルチ車両意思決定プログラムを含むコンピュータにより実行可能なプログラムとを記憶するように構成された少なくとも1つのメモリと、
前記少なくとも1つのメモリと接続されており、処理ステップを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサとを備え、前記処理ステップは、
前記インフラストラクチャセンシング信号、前記タイプ1フィードバック信号、前記タイプ2フィードバック信号、および前記マッピング情報に基づいて大域的混合整数計画(MIP)問題を定式化するステップを備え、
前記MIP問題は、優先順位がより高い1つまたは複数の車両の走行時間および/または待ち時間に対して比較的大きな重み値を選択することによって、シッピングヤードの前記相互に接続された交通網内でタスクを実行する前記車両のそれぞれの間の優先順位の階層を保証する重み付き多目的最小化を実行し、
前記処理ステップは、さらに、
記MIP問題を解くことによって、相互に接続された交通網における各CAVおよび各NCVのモーションプランを計算するステップを備え、
前記モーションプランは、1つもしくは複数のトラック、1人もしくは複数人の交通誘導員、または1人もしくは複数人のヤードジョッキーについて計算され、前記1つもしくは複数のトラック、前記1人もしくは複数人の交通誘導員、または前記1人もしくは複数人のヤードジョッキーのそれぞれは、カーゴを効率よく積み込むまたは荷下ろしするためのシッピングヤード内のルートに沿った制御車両または無制御車両のいずれかであり、
前記処理ステップは、さらに、
交通網内の計画されている今後のルートまたは予測される今後のルートに沿った各道路区間における各CAVおよび各NCVにとって最適な一連の進入時間および脱出時間ならびに一連の平均速度を計算するステップと、
予測時間範囲にわたるCAV毎の速度分布および/または1つもしくは複数の計画的停止を計算するステップとを含み、
前記CAVのそれぞれに、前記相互に接続された交通網における各CAVの多層誘導および制御アーキテクチャに前記速度分布および/または前記1つもしくは複数の計画的停止を送信するように構成された送信部をさらに備える、大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項2】
前記無制御車両(NCV)は、前記大域的マルチ車両意思決定システムが制御できない1台もしくは複数台の人が運転する車両および/または1台もしくは複数台の(半)自動運転車両を含み得る、請求項1に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項3】
前記コンフリクトゾーンは、前記相互に接続された交通網の複数の道路区間にある複数の車線を物理的につなげることができる1つもしくは複数の合流部、および/または1つもしくは複数の交通交差点を含み得る、請求項1に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項4】
前記受信部は、V2X(Vehicle-To-Everything)通信を利用して、1台もしくは複数台のCAVおよび/または1つもしくは複数のRSUから前記タイプ1フィードバック信号を取得する、請求項1に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項5】
前記受信部は、V2X(Vehicle-to-everything)通信を利用して、1つもしくは複数のNCVおよび/または1つもしくは複数のRSUから前記タイプ2フィードバック信号を取得する、請求項1に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項6】
前記大域的マルチ車両意思決定プログラムは、1つまたは複数のMEC(モバイルエッジコンピュータ)が備える1つまたは複数のプロセッサによって後退ホライズン実装で実行される、請求項1に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項7】
前記大域的マルチ車両意思決定プログラムは、クラウドベースのコンピューティングシステムが備える1つまたは複数のプロセッサによって後退ホライズン実装で実行される、請求項1に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項8】
集中型タスク割り当て、マッピングおよびナビゲーションシステムは、前記マッピング情報、1台もしくは複数台のCAVについての前記長期計画されている今後のルーティング情報、および/または1つもしくは複数のNCVについての前記短期予測される今後のルーティング情報を提供するために前記大域的マルチ車両意思決定システムに接続される、請求項1に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項9】
自転車および歩行者を含む動的交通参加者についての安全性制約は、CAV毎の前記多層誘導および制御アーキテクチャにおけるモーションプランニングおよび/または車両制御のための車載モジュールによって守られる、請求項1に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項10】
前記インフラストラクチャセンシング信号は、たとえば、レンジファインダー、レーダー、ライダー、およびカメラを含む1つまたは複数のセンサーからの信号を含み得る、請求項1に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項11】
CAVの前記タイプ1フィードバック信号に含まれる前記状態情報、およびNCVの前記タイプ2フィードバック信号に含まれる前記状態情報は、各車両の現在地、現在のヨー角、および/または現在の速度を含み得る、請求項1に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項12】
前記マッピング情報は、コンフリクトのない道路区間の位置データ、1つもしくは複数の合流部および/または1つもしくは複数の交通交差点を含んだコンフリクトゾーンの位置データ、ならびに、前記交通網の前記道路区間のそれぞれおよび前記コンフリクトゾーンのそれぞれの中にある1つまたは複数の走行車線の位置データを含む、請求項1に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項13】
前記タイプ1フィードバック信号および前記タイプ2フィードバック信号に含まれる前記計画されている今後のルーティング情報または前記予測される今後のルーティング情報は、車両毎に、前記車両が現在位置する前記道路区間および走行車線から始まる、所望の目的地に向かう一連の今後の道路区間およびこれらの道路区間内の今後の走行車線を含む、請求項12に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項14】
前記MIP問題は、MILP(混合整数線形計画)またはMIQP(混合整数二次計画)問題であり、前記最適化変数は、前記交通網の前記道路区間およびコンフリクトゾーンのそれぞれにおける前記CAVのそれぞれおよび前記NCVのそれぞれの進入時間変数および脱出時間変数、逆平均速度変数、ならびに1つまたは複数の二値最適化変数を含む、請求項1に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項15】
前記MIP問題は、前記CAVおよび/またはNCVのそれぞれについての車両の動的等式制約ならびに1つまたは複数の速度制限制約を含む、請求項14に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項16】
前記MIP問題は、前記CAVのそれぞれおよび前記NCVのぞれぞれの前記計画されている今後のルートまたは前記予測される今後のルートにある後続道路区間からの脱出時と進入時の順序を守らせるための車両ルーティング不等式制約を含む、請求項14に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項17】
前記MIP問題は、車両のペアが同じコンフリクトゾーンのコンフリクトする走行車線を同じ時間に走行することを禁止することを徹底することによって前記モーションプランにおける潜在的な衝突を回避するための1つまたは複数の安全性制約を、前記交通網の前記コンフリクトゾーンのそれぞれについて含む、請求項14に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項18】
前記安全性制約は、たとえば、前記MIP問題の混合整数線形不等式制約のセットでのBig-M定式化に基づいて、1つの二値最適化変数を前記交通網における車両のペア毎および前記コンフリクトゾーンのそれぞれに用いて施行される、請求項17に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項19】
前記MIP問題は、同じ道路区間内の同じ走行車線を走行すると計画または予測される車両の任意のペア間の順序を固定することを守らせるための1つまたは複数の占有期間制約を前記交通網にある前記道路区間のそれぞれについて含む、請求項14に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項20】
前記占有期間制約は、たとえば、前記MIP問題の混合整数線形不等式制約のセットでのBig-M定式化に基づいて、1つの二値最適化変数を前記交通網における車両のペア毎および前記道路区間のそれぞれに用いて施行される、請求項19に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項21】
前記MIP問題は、たとえば、前記交通網における前記車両のそれぞれの走行時間、待ち時間、および/またはエネルギー消費の重み付き組合せを最小化するために、1つまたは複数の目的項の重み付き和を含む重み付き多目的最小化を実行する、請求項14に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項22】
前記MIP問題は、分枝限定法、分枝切除法、または分枝価格法最適化アルゴリズムを用いて解くことができる、請求項1に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【請求項23】
前記モーションプランは、たとえば、整数丸め方式、実現可能性ポンプ法、近似最適化アルゴリズム、または機械学習技術の使用に基づいて前記MIP問題に対する実行可能であるが最適に満たない解を計算するために、ヒューリスティック最適化アルゴリズムを用いて計算される、請求項1に記載の大域的マルチ車両意思決定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、最適化による制御に関し、特に、交通網内の動的環境におけるコネクテッド自動運転車両のための、最適化による大域的マルチ車両意思決定およびモーションプランニングの方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動交通機関システムは、半自動の場合さえ、交通事故の削減およびより効率的な道路網の利用につながる。そのため、CAV(コネクテッド自動運転車両)は、安全性および交通の流れを改善できる大きな可能性を示しており、その結果、輻輳、走行時間、排気ガス、およびエネルギー消費を削減できる大きな可能性を示している。これは数十年にわたって分かっていたことだが、成功した開発のほとんどは、センシング、コンピューティング、コントロール、およびコネクティビティにおける技術の進歩のおかげで近年達成されてきた。走行中のシナリオは、多くの場合、非常に動的である、すなわち、車両参加者およびそれらの挙動が素早く大きく変化するが、V2V(Vehicle-To-Vehicle)およびV2I(Vehicle-To-Infrastructure)通信(略してV2X(Vehicle-To-Everything)通信としても知られている)は、特定の計画エリアにあるすべての車両についてのリアルタイム情報にアクセスできるようにすることによって、高度で効率的なプランニングおよび意思決定を可能にする。
【0003】
通常であれば多層誘導および制御アーキテクチャが車載される必要のある自動運転のためのプランニングおよび制御に大きな進展があった。最上位レベルでは、インテリジェントナビゲーションシステムが、現在の車両の位置から要求された目的地までの交通網を通るルートを見つける。たとえば、設定された到達可能性または形式言語および最適化と組み合わせてオートマンを利用して、意思決定部が、ルート計画、現在の環境状況、およびその他の交通参加者の挙動から判断して、いつでも適切な運転挙動を選択してくれる。車線追従、車線変更、または停止を含む目標挙動から判断して、モーションプランニングアルゴリズムが、下位のフィードバックコントローラがリアルタイムで追跡できる動的に実行可能かつ安全な軌道を計算する。普及している手法では、サンプリングベースのモーションプランナーとMPC(モデル予測制御)との組合せが基準追跡に用いられる。CAVの場合、誘導および制御アーキテクチャは、標準の自動運転の誘導および制御アーキテクチャと同様であるように見えるかもしれないが、モジュールの一部は、インフラストラクチャ、たとえば、MEC(モバイルエッジコンピュータ)で実装され、エリアにある複数の車両に決定を提供し得、その他のモジュールは、相変わらず個々に各車両上に実装される。
【0004】
協調エージェントの調整によって、交通網にとって社会的に最適な挙動に到達できるようになる。一例では、交差点での自動交通管理についてのFCFS(First Come,First Serve)ポリシーについて説明する。最近では、非線形最適化またはMILP(混合整数線形計画)を利用した、交差点を制御するための調整法が提案されている。後者は、相互に接続された交差点のグリッドをスケジュール管理するための分散型MILPアルゴリズムまで拡張されている。これに加えて、CAVが高速道路の進入路に合流するためのMILPベースの手法が提案された。CAVを調整するための別の技術は、最近の研究において見つけることができる。また、当該研究では、交差点の制御問題と合流の制御問題とは、本質的に非常に類似していることも指摘されている。高度な大域的マルチ車両意思決定システムを開発することが求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、CAVのための大域的マルチ車両意思決定およびモーションプランニングに焦点を当てる。当該大域的マルチ車両意思決定およびモーションプランニングに焦点は、従来の車両、すなわち、手操作によって走行中の車両(NCV(無制御車両)とも称する)が存在している場合であっても、各自動運転車両で別個に実装された局所的モーションプランニングおよび追跡システムに、目標および操作情報を提供する。本発明の実施の形態は、交差点と合流部の両方を含んだ一般化されたコンフリクトゾーンから構成される相互に接続されたネットワークにある車両のためのMILPベースの大域的マルチ車両意思決定システムを含む。全自動運転車両を調整するための従来技術とは異なり、本発明は、CAVと人が運転するNCVの両方が混在する交通を含んだより現実的なシナリオに焦点を当てる。この目的のために、混在する交通シナリオにおいて人が運転する車両が交差点を横断するためには、物理的な信号機および/または標準的な優先ルールが必要である。提案する制約付き最適化方法は、上位アルゴリズムからのリアルタイムな一連の車両ルーティング情報から判断して、人および物の移動を直接組み込む。
【0006】
本発明の実施の形態は、従来の車両、すなわち、手操作によって走行中の車両(NCV(無制御車両)とも称する)が存在している場合であっても、交差点と合流部の両方を含んだ一般化されたコンフリクトゾーンから構成される相互に接続されたネットワークにあるCAV(コネクテッド自動運転車両)のための大域的マルチ車両意思決定およびモーションプランニングのための混合整数最適化方法に基づく。提案する手法は、すべての制御車両にわたる全体的な時間およびエネルギー効率を最適化しつつ、コンフリクトゾーンの安全性制約および道路区間の占有期間制約の下、所望の目的地に向かう車両毎の予測ウィンドウにおける目標速度ならびに道路区間への目標進入時間および目標脱出時間から構成されるスケジュールを計算する。従来技術における既存の手法とは対照的に、提案するシステムおよび方法は、以下に対応する。
●複数のコンフリクトゾーン、すなわち、1つまたは複数の合流部および/または交差点を含んだ交通網。
●車両毎の位置、速度、および進行方向がV2X通信を通じて入手可能であるが、複数の相互に接続されたコンフリクトゾーンからなる局所エリアでは車両の一部のみが制御される、自動運転車両と人が運転する車両とが混在する交通。
●複数の目的、たとえば、走行時間、待ち時間、およびエネルギー効率の最適化に基づいた、大域的マルチ車両意思決定およびモーションプランニング。
●人および物を輸送するための今後のルーティング情報を利用した、CAVのための粒度の粗い高位のモーションプランニング。
【0007】
本発明のいくつかの実施の形態は、多層誘導および制御アーキテクチャに基づく。多層誘導および制御アーキテクチャでは、V2Xコネクティビティを利用するために、一部のモジュールが各CAV上に実装され、その他のモジュールは、インフラストラクチャ、たとえば、モバイルエッジコンピュータにおいて集中的に動作する。具体的には、各CAVでは、車線追従、車線変更、または停止などの行動を表す目標挙動から判断して、車両コントローラがリアルタイムで追跡できる動的に実行可能かつ安全な軌道をモーションプランニングアルゴリズムが計算する。いくつかの実施の形態は、各CAVにおける、確率的サンプリングベースのモーションプランナー、および基準追跡のためのMPCアルゴリズムに基づく。
【0008】
完全自動運転車両とは異なり、本発明の実施の形態は、CAVの場合、モーションプランニングアルゴリズムのための目標挙動は、車載の意思決定アルゴリズムによって車両毎に別個に計算されるべきではなく、むしろ、大域的マルチ車両意思決定モジュールにおいてすべての車両について同時に計算されるべきである、という認識に基づく。具体的には、マッピングおよびナビゲーションモジュールからの環境についてのリアルタイム情報、たとえば、複数の相互に接続されたコンフリクトゾーンからなる局所エリアにあるCAVのそれぞれについてのリアルタイムの状態およびルーティング情報から判断して、大域的マルチ車両意思決定モジュールがその局所エリアにあるすべてのCAVの目標挙動を同時に決定する。なお、CAV毎のルーティング情報は、集中型マッピングおよびナビゲーションモジュールによって計算されてもよく、ローカルCAV毎の車載のマッピングおよびナビゲーションモジュールによって個々に計算されてもよい。
【0009】
本発明の実施の形態は、コンフリクトゾーンである1つまたは複数の道路区間およびコンフリクトのないゾーンである1つまたは複数の道路区間から構成される道路区間のネットワーク内にある車両の調整およびスケジュール管理を行う。コンフリクトゾーンの例は、複数の車線および/または道路区間をつなぐ交差点および/または合流部である。コンフリクトのないゾーンの例は、一方向の交通または複数方向の交通のいずれかを許可する1つまたは複数の車線から構成される標準的な道路区間である。
【0010】
本発明の実施の形態は、大域的マルチ車両意思決定モジュール向けの情報は、CAVおよびNCVの両方にあるセンサーによって取得されるデータ、および、場合によってはインフラストラクチャにある追加のセンサーによって取得されるデータが車両とインフラストラクチャとの間で通信、すなわち、V2X通信されることによって入手可能である、という認識に基づく。具体的には、V2X通信から大域的マルチ車両意思決定システムへの入力情報は、以下を含み得る。
●大域的意思決定モジュールによって考慮される、道路区間毎およびコンフリクトゾーン毎、すなわち、合流地点および/または交差点についての車線情報を含む、交通網のマッピング情報。
●たとえば、現在地、進行方向、および速度を含む、車両毎の、すなわち、交通網の局所エリアにあるCAVとNCVの両方の車両の現在の状態。
●NCV毎の、NCVが現在位置する道路区間から始まる、その所望の目的地に向かう一連の今後の道路区間として規定される場合によっては短期のルート予測。ルート予測におけるルートの長さ、すなわち、道路区間の数は、入手可能な情報に応じて固定であってもよく、時間によって変化してもよい。
●CAV毎の、CAVが現在位置する道路区間から始まる、その所望の目的地に向かう一連の今後の道路区間として決定される、比較的長期のルート計画。計画ルートの長さ、すなわち、今後のルート計画に含まれる道路区間の数は、CAV毎のマッピングおよびナビゲーションモジュールから入手可能な情報によっては、固定であってもよく、時間によって変化してもよい。
●CAV毎の、およびその今後の計画ルートに含まれる道路区間毎の、たとえば、人および/または物を輸送するためのそのルートに沿った道路区間毎の計画的停止期間のセット。
【0011】
同様に、大域的マルチ車両意思決定システムからの出力情報は、以下を含み得る。
●CAV毎の、交通網におけるその今後の計画ルートに沿った道路区間についての一連の予測平均速度。
●CAV毎の、交通網におけるその今後の計画ルートに沿った道路区間についての一連の予測進入時間。
●CAV毎の、交通網におけるその今後の計画ルートに沿った道路区間についての一連の予測脱出時間。
【0012】
大域的マルチ車両意思決定システムが入手可能な情報に応じて、すべての車両の予測ウィンドウの長さ、すなわち、ルートの長さは、一定の長さと決められてもよく、車両毎に個々に決められてもよく、時間によって変化する長さと決められてもよく、車両毎に異なると決められてもよい。
【0013】
本発明の実施の形態は、インフラストラクチャシステムによっては、各NCVのルートについて正確な予測を取得することは困難な課題であろう、という認識に基づく。このため、本発明のいくつかの実施の形態では、大域的マルチ車両意思決定モジュールは、直近の情報に基づいた後退ホライズン式で実装される。本発明の実施の形態は、たとえば、次のコンフリクトゾーンまではNCVのおおよその短期のルート予測で十分であり、予測における矛盾は後退ホライズン法の内発的フィードバック機構によって調整可能である、という認識に基づく。たとえば、1~2秒の更新期間があれば、NCVの挙動についての間違った予測を考慮して十分高速な更新を提供しつつ、大域的マルチ車両意思決定システムのリアルタイム計算が可能である。
【0014】
本発明のいくつかの実施の形態は、たとえば、自転車および歩行者を含むその他の交通参加者の存在は、CAV毎の多層誘導および制御アーキテクチャにおける車載モジュール、たとえば、モーションプランニングおよび/または車両制御アルゴリズムによって障害物として処理され得る、という認識に基づく。大域的マルチ車両意思決定システムの計算コストよりも比較的小さい計算コストで済むので、モーションプランニングおよび車両制御アルゴリズムは、たとえば、自転車および歩行者を含むその他の交通参加者の挙動の予期しない変化に対して素早い反応時間を有するために比較的高速のサンプリングレートで動作できる。たとえば、車両制御アルゴリズムは、多くの場合、50~100ミリ秒の更新期間で実行される。
【0015】
提案する大域的マルチ車両意思決定モジュールの対象は、小規模から中規模の交通網、たとえば、輻輳の可能性がある複数の相互に接続されたコンフリクトゾーンからなる局所エリアである。本発明のいくつかの実施の形態は、潜在的に多くの非制御交通参加者と同じ環境で動作する潜在的に様々な数のCAVを利用した、CAVが行う人および/または物、たとえば、食料雑貨もしくは小包の輸送タスクを含む。タスク割り当て、すなわち、各CAVが達成しなければならない目的は、たとえば制約付き最適化問題の解に基づいて、別個のタスク割り当てモジュールによって実行され得る。割り当てられたタスクに基づいて、ナビゲーションモジュールは、集中的または各CAVにおいて局所的のいずれかでCAVのルートを決定し、ルート情報はリアルタイムで更新され得る。後退ホライズン計算、および実際の応用における有効性を含む計算上の扱いやすさを考慮すると、本発明の実施の形態は、最大で10個のコンフリクトゾーンといくつかの互いに接続された道路区間とから構成される局所の交通網内にある少なくとも1~10台のCAV、0~30台のNCVに対処できる。
【0016】
本発明の実施の形態は、大域的マルチ車両意思決定モジュールは、V2X通信からの入力情報から判断して、制約付き最適化問題を解いてCAV毎の粒度の粗いモーションプランを計算することによって実装され得る、という認識に基づく。本発明のいくつかの実施の形態では、制約付き最適化問題は、MIP(混合整数計画)問題、たとえば、MILP(混合整数線形計画)であってもよく、MIQP(混合整数二次計画)問題であってもよい。本発明のいくつかの実施の形態では、大域的マルチ車両意思決定システムの各サンプリング時におけるMIP問題は、たとえば、分枝限定法、分枝切除法、および分枝価格法を含む大域的最適化アルゴリズムによって解決できる。本発明のその他の実施の形態では、たとえば、丸め方式、実現可能性ポンプ法、近似最適化アルゴリズム、または機械学習の利用を含む、ヒューリスティック技術が用いて、MIPに対する実行可能であるが最適に満たない解が計算され得る。
【0017】
さらには、本発明のいくつかの実施の形態によると、1台または複数台の無制御車両(NCV)と、1つまたは複数のコンフリクトゾーンと、1つまたは複数のコンフリクトのない道路区間とを含む相互に接続された交通網にある1台または複数台のコネクテッド自動運転および/または半自動車両(CAV)についてのリアルタイムのモーションプランニングおよび調整を提供するための大域的マルチ車両意思決定システムが実装され得る。この場合、大域的マルチ車両意思決定システムは、路側機(RSU)を介してインフラストラクチャセンシング信号を取得し、1つまたは複数の所望の目的地に向かうコネクテッド自動運転車両(CAV)の状態および計画されている今後のルーティング情報についてのタイプ1フィードバック信号を取得し、無制御車両(NCV)の状態および予測される今後のルーティング情報についてのタイプ2フィードバック信号を取得するように構成された受信部と、マッピング情報と、大域的マルチ車両意思決定プログラムを含むコンピュータにより実行可能なプログラムとを記憶するように構成された少なくとも1つのメモリと、少なくとも1つのメモリと接続されており、ステップを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサとを備え得、ステップは、インフラストラクチャセンシング信号、タイプ1フィードバック信号、タイプ2フィードバック信号、およびマッピング情報に基づいて大域的混合整数計画(MIP)問題を定式化するステップと、大域的MIP問題を解くことによって、相互に接続された交通網における各CAVおよび各NCVのモーションプランを計算するステップと、交通網内の計画されている今後のルートまたは予測される今後のルートに沿った各道路区間における各CAVおよび各NCVにとって最適な一連の進入時間および脱出時間ならびに一連の平均速度を計算するステップと、予測時間範囲にわたるCAV毎の速度分布および/または1つもしくは複数の計画的停止を計算するステップとを含み、大域的マルチ車両意思決定システムは、CAVのそれぞれに、相互に接続された交通網における各CAVの多層誘導および制御アーキテクチャに速度分布および/または1つもしくは複数の計画的停止を送信するように構成された送信部をさらに備える。
【0018】
大域的マルチ車両意思決定システムのいくつかの実施の形態では、最適化問題は、1つまたは複数の目的の最適化を含み、交通網にあるすべての車両の安全性および効率のための1つまたは複数の等式制約および/または不等式制約を施行する。たとえば、制約は、車両モーションモデル、速度制約、ルート計画またはルート予測のタイミング制約、コンフリクトゾーンのおける安全性制約、およびコンフリクトのない道路区間について占有期間制約を含み得る。これらの目的は、ルート計画またはルート予測における各区間の終わりに到達するまでの走行時間を最小化することと、車両ごとの待ち時間を最小化することと、平均速度を最大化することと、エネルギー効率のために加速を最小化することとを含み得る。
【0019】
添付の図面を参照しながら、今回開示する実施の形態についてさらに説明する。図面は必ずしも縮尺通りに示されておらず、代わりに、今回開示した実施の形態の原理を説明することに全体的に重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】いくつかの実施の形態に係る、複数の相互に接続されたコンフリクトゾーンからなる局所エリアにおける交通シナリオの例、ならびに制御車両および無制御車両の大域的マルチ車両意思決定の必要性を示す図である。
図2A】いくつかの実施の形態に係る、車両の区間を横断する時間および平均速度に基づいて、複数の相互に接続されたコンフリクトゾーンからなる局所エリアにおける交通を制御する例示的な概略図を示す。
図2B】いくつかの実施の形態に係る、相互に接続されたコンフリクトゾーンからなる局所エリアにおける交通シナリオ、ならびに、たとえば人および物を輸送するための複数台のコネクテッド自動運転車両のルーティング情報を示す図である。
図3】本発明のいくつかの実施の形態に係る、大域的マルチ車両意思決定システムとマッピングおよびナビゲーションシステム、1台または複数台の制御車両および無制御車両、1つまたは複数の路側機、1人もしくは複数の同乗者、ならびに1つまたは複数のモバイルエッジコンピュータの間で起こり得るインタラクションの概略図を示す。
図4A】本発明のいくつかの実施の形態に係る、個々の制御車両それぞれのインフラストラクチャセンシング、集中型マッピングおよびナビゲーション、ならびに多層誘導および制御アーキテクチャに基づいた、大域的マルチ車両意思決定システムのフィードバックループの概略図を示す。
図4B】本発明のいくつかの実施の形態に係る、1台または複数台の制御車両の個々のナビゲーションシステムを利用した、大域的マルチ車両意思決定システムのフィードバックループの同様の概略図を示す。
図5A】本発明の実施の形態に係る、混合整数最適化問題を解くことによる、インフラストラクチャおよび/またはコネクテッド車両との通信に基づいた大域的マルチ車両意思決定システムのブロック図を示す。
図5B】本発明の実施の形態に係る、大域的マルチ車両意思決定システムの入出力の概略図を示す。
図6A】三叉路交差点を介して相互に接続された複数のコンフリクトのない道路区間から構成された交通網(局所エリア内)の例を示す図であって、道路区間のそれぞれは、1つまたは複数の走行車線から構成される。
図6B図6Aに示す相互に接続された交通網内にある2台の車両のそれぞれの可能なルートの例を示す図である。
図6C】本発明の実施の形態に係る、図6Bの交通網内に図示された車両について大域的マルチ車両意思決定システムが計算し得るモーションプランの例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態に係る、MIP(混合整数計画)最適化問題を解くことによる、大域的マルチ車両意思決定システムのブロック図である。
図8A】本発明の実施の形態に係る、大域的マルチ車両意思決定システムが解くMIP問題が守り得る等式制約および/または不等式制約の例を示す図である。
図8B】本発明の実施の形態に係る、大域的マルチ車両意思決定システムが解くMIP問題において利用され得る、コンフリクトゾーンのそれぞれについての安全性制約の例示的な定式化を示す図である。
図8C】本発明の実施の形態に係る、大域的マルチ車両意思決定システムが解くMIP問題において利用され得る、道路区間毎の占有期間制約の例示的な定式化を示す図である。
図8D】本発明の実施の形態に係る、大域的マルチ車両意思決定システムが解くMIP問題の重み付き多目的最小化において利用され得る目的の例を示す図である。
図9A】本発明のいくつかの実施の形態に係る、大域的マルチ車両意思決定の整数実行可能最適解のための探索領域のネストされたツリーを表す整数最適化変数探索ツリーの例の概略を示す図である。
図9B】本発明のいくつかの実施の形態に係る、探索領域のネストされたツリーおよび対応する上限値/下限値に基づいて整数実行可能最適意思決定の解を探索するための分枝限定混合整数最適化アルゴリズムのブロック図である。
図10】本発明のいくつかの実施の形態に係る、1つまたは複数の相互に接続されたコンフリクトゾーンからなる交通網にある1台または複数台の制御車両についてのモーションプランを計算するための大域的マルチ車両意思決定システムのブロック図を示す。
図11A】いくつかの実施の形態の原理を採用した多層誘導および制御アーキテクチャを備える車両の概略を示す図である。
図11B】本発明のいくつかの実施の形態に係る、多層誘導および制御アーキテクチャと車両のその他のコントローラとのインタラクションの概略を示す図である。
図12A】本発明のいくつかの実施の形態に係る、シッピングヤード管理システムと大域的マルチ車両意思決定システムとのインタラクションの概略を示す図である。
図12B】本発明のいくつかの実施の形態に係る、1つまたは複数の構成要素から構成されるシッピングヤード管理システムの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示のいくつかの実施の形態は、1つまたは複数の相互に接続されたコンフリクトゾーンから構成された交通網であって、動的環境、たとえば、場合によっては1台もしくは複数台の無制御車両、交通参加者、または動的障害物を含む交通網内にある1台または複数台のコネクテッド自動運転車両を制御するためのシステムおよび方法を提供する。
【0022】
図1は、いくつかの実施の形態に係る、複数の相互に接続されたコンフリクトゾーンからなる局所エリア内の、たとえば、道路区間の相互に接続された交差点における、制御車両および無制御車両の大域的マルチ車両意思決定の必要性を示す交通シナリオ(交通状態)100の例を示す。相互に接続されたコンフリクトゾーンは、物理的に相互に接続されたコンフリクトゾーンと、通信可能に相互に接続されたコンフリクトゾーンとを含む。物理的に相互に接続されたコンフリクトゾーンの例は、あるコンフリクトゾーンから別のコンフリクトゾーンに車両が進行し得る交差点または合流部である。通信可能に相互に接続されたコンフリクトゾーンの例は、通信チャネルを経由してあるコンフリクトゾーンから別のコンフリクトゾーンまでの交通情報を共有する交差点または合流部である。
【0023】
交通シナリオ100の例は、交差点102と別の交差点104とを示しており、これらの交差点は道路区間105を経由して互いに物理的に相互に接続されており、交通網は、追加の道路区間106、108、110、112、114、および116を含む。本発明の実施の形態は、コンフリクトゾーンである1つまたは複数の道路区間およびコンフリクトのないゾーンである1つまたは複数の道路区間から構成されるこのような道路区間のネットワーク内にある車両の大域的マルチ車両意思決定のためのシステムおよび方法について説明する。コンフリクトゾーンの例は、交差点102~104および/または合流部であり得、複数の車線および/または複数の道路区間をつなぐ。コンフリクトのないゾーンの例は、標準的な道路区間105~116であり、一方向または複数方向のいずれかの交通を許可する1つまたは複数の車線から構成される。
【0024】
図1は、複数の相互に接続されたコンフリクトゾーン102~104および複数の相互に接続されたコンフリクトのない道路区間105~116からなる局所エリア内にある複数の車両126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146および/またはその他の交通参加者をさらに示している。交通網にある車両、たとえば、車両126~146は、各々、自動運転車両、半自動運転車両、または人によって操作される車両のいずれかであり得る。ここからは、自動運転車および/または半自動運転車を、CAV(コネクテッド自動運転車両)、または、単に、制御車両と称し、人によって操作される車両またはその他の交通参加者を、無制御車両(NCV)と称する。車両126~146のいくつかの例として、オートバイなどの二輪車両、車などの四輪車両、またはトラックなどの五輪以上の車両などが挙げられる。
【0025】
1つまたは複数の相互に接続されたコンフリクトゾーンおよび1つまたは複数の相互に接続されたコンフリクトのない道路区間を含んだ交通網は、周辺の局所エリアにある車両およびその他の交通参加者の状態のインフラストラクチャベースのリアルタイムセンシングのための1つまたは複数のRSU(路側機)をさらに含み得る。図1は、本発明のいくつかの実施の形態に係る、V2X(Vehicle-To-Everything)通信としても知られているV2V(Vehicle-To-Vehicle)およびV2I(Vehicle-To-Infrastructure)通信を含むIoV(車両のインターネット:Internet of Vehicles)環境を確立するための1つのRSU122および別のRSU124、コアネットワーク120、ならびにクラウドネットワーク118を示す。
【0026】
いくつかの実施の形態では、交通シナリオ100は、道路区間105~116が交差点102および104などの複数の(多くの)交差点を形成する公共の大都市圏に相当する。大都市圏では、交差点102および104での交通状況が交通の流れを決める。なぜならば、渋滞は、通常、交差点104などのコンフリクトゾーンから発生し、コンフリクトのない道路区間、たとえば、道路区間105~116までさらに伝播していくためである。1つのコンフリクトゾーン、たとえば、交差点104での変化量が交差点102(交差点104の近隣の交差点102との呼ばれる)などのその他の相互に接続されたコンフリクトゾーンまでさらに伝播するよう、相互に接続されたコンフリクトゾーン102と104とにおける交通状況は相互に依存している。
【0027】
その他の実施の形態では、交通シナリオ100は、私有の交通網に相当し得、たとえば、バレーパーキングシステムのための1つまたは複数の駐車場および相互に接続された道路区間を含む。複数の相互に接続されたコンフリクトゾーンと道路区間とを有する交通網を含む同様の交通シナリオのその他の例は、スマート配送センターおよび/またはシッピングヤードである。CAVの種類として、個人車両(たとえば、バレーパーキングシステムの場合)、トラック(たとえば、ヤード管理システムの場合)、または同乗者を拾うまたは降ろすためのシャトルなどがある。
【0028】
いくつかの実施の形態は、交通網にある様々な車両(たとえば、車両126~146のセット)間で通信を確立するために、クラウドネットワーク118と道路区間105上の車両126との通信がRSU122またはRSU124とコアネットワーク120とをマルチホップ通信が確立する方法で伝播する必要がある、という認識に基づく。本発明のいくつかの実施の形態では、車両126~146の安全なモビリティは、クラウドベースのネットワークおよび/またはエッジベースのネットワークを利用した(すなわち、クラウドネットワーク118および/またはコアネットワーク120を利用した)大域的マルチ車両意思決定システムによって制御される。本発明のいくつかの実施の形態では、大域的マルチ車両意思決定システムは、1つまたは複数のMEC(モバイルエッジコンピュータ)を用いて実装される。当該1つまたは複数のMECは、1つまたは複数のRSUの一部として組み込まれてもよく、RSU122~124、クラウドネットワーク118、および/またはコアネットワーク120に接続された別個のデバイスであってもよい。本発明の実施の形態は、交通網にある車両の大域的マルチ車両意思決定のための制約付き最適化問題の解を含み得、この解の計算は、クラウドにおいて実行されてもよく、1つまたは複数のMECにおいて実行されてもよい。
【0029】
本発明の実施の形態は、車両146などの車両の車載制御装置は、目に見える範囲外にある近隣の車両(車両142など)、歩行者、および環境状況についての情報を取得できない、という認識に基づく。たとえば、道路114上を走行している車両146は、(車両142よりも大型の)車両144が交差点102を横断した後に交差点102を横断するつもりであり、車両142(すなわち、小型車両)も交差点102に進入しているところである。このようなシナリオでは、車両142の視界は図1に示す車両144によって遮られる。車両142と車両146との通信リンクが影響を受けている場合、または車両142と車両146が異なる通信プロトコルを利用している場合、車両144のせいで車両142は車両146に気づいてもらえない。その結果、車両142と車両146は、衝突する可能性がある。
【0030】
これに加えて、本発明のいくつかの実施の形態は、クラウドネットワーク118と車両126とのマルチホップ通信によって、クラウドベースの車両制御のリアルタイムシナリオでは許容できない長い通信遅延が生じ得る、という認識に基づく。
【0031】
いくつかの実施の形態は、車両通信に対応するために様々な通信技術を利用できる、という認識に基づく。たとえば、車載ネットワークのIEEE DSRC/WAVE(Dedicated Short-Range Communications/Wireless Access in Vehicular Environments)規格ファミリー、3GPP C-V2X(Cellular-Vehicle-to-Anything)などがある。しかしながら、コストが高いことを理由に、車両(たとえば、車両126~146)が2つ以上の近距離通信技術をサポートすることは現実的ではなく、互いに通信する車両の間で互換性の問題を招いてしまう。そのため、IEEE DSRC/WAVEを装備した車両は、3GPP C-V2Xを装備したその他の車両と通信できず、3GPP C-V2Xを装備した車両は、IEEE DSRC/WAVEを装備したその他の車両と通信できない。その結果、個々の車両にある車載の多層誘導および制御アーキテクチャによるリアルタイムの制御決定の正解率に与える影響は非常に大きい。なぜならば、これらのリアルタイムの決定が交通シナリオ100の不完全な情報に基づくためである。その代わりに、本発明の実施の形態は、安全性、時間およびエネルギー効率を保証するために、交通網にある各車両からのリアルタイム情報に基づいて大域的マルチ車両意思決定モジュールを使用する。
【0032】
いくつかの実施の形態は、エッジインフラストラクチャデバイス(たとえば、RSU122およびRSU124)には、クラウドネットワークのみを利用する場合、および/または車載装置(多層誘導および制御アーキテクチャを含む)のみを利用する場合よりも、マルチ車両交通の制御において利点がある、という認識に基づく。たとえば、エッジインフラストラクチャデバイスは、交差点または合流部に設置することができ、交差点または合流部に接近する車両(たとえば、車両126~146)と直接通信できる。これに加えて、すべてのコネクテッド車両と通信できるようにするために、エッジインフラストラクチャデバイスには、複数の通信技術を装備できる。本発明のいくつかの実施の形態は、エッジインフラストラクチャデバイスは、据置き型であり、これによって、車両との信頼できる通信を提供したり、比較的高品質な環境データを収集したりすることが可能になる、という認識に基づく。
【0033】
本発明の実施の形態は、エッジインフラストラクチャデバイスは、正確な意思決定のために複数車両の交通および環境を連続して監視できる、という認識に基づく。本発明のいくつかの実施の形態では、コネクテッド車両および非コネクテッド車両の両方、自動運転車両、半自動運転車両、および人によって操作される車両、ならびに自転車および歩行者などのその他の交通参加者を含む、車両の状態および動的環境を正確に検出するために、エッジインフラストラクチャデバイスは、追加のセンサー、たとえば、レンジファインダー、レーダー、ライダー、およびカメラ、ならびにセンサーフュージョン技術を利用する。したがって、大域的マルチ車両意思決定およびモーションプランニングのためにエッジインフラストラクチャデバイスを利用することは、適切である。
【0034】
図2Aは、複数の相互に接続されたコンフリクトゾーン、すなわち、複数の相互に接続された交差点200、202a、202b、204a、および204bを含んだ交通網の例を示す。この交通網における交通の流れの全体の安全性、時間効率、およびエネルギー効率は、本発明の実施の形態に係る大域的マルチ車両意思決定システムによって制御可能である。本発明のいくつかの実施の形態では、大域的マルチ車両意思決定システムは、CAVの現在地からCAVの所望の目的地までのそのルートに沿った交通網にあるCAV毎に粒度の粗いモーションプランを計算する。粒度の粗いモーションプランは、CAV毎の現在地からその所望の目的地までのルートに沿ったコンフリクトゾーンおよびコンフリクトのない道路区間のそれぞれにおけるCAVの一連の進入時間および脱出時間ならびに一連の平均速度値を含み得る(場合によっては、CAVのルートに沿って1つまたは複数の計画的途中停止を含む)。
【0035】
本発明のいくつかの実施の形態では、大域的マルチ車両意思決定システムへの入力は、1台または複数台のCAVおよび/または1つもしくは複数のNCVとの通信からの信号を含み得、1つまたは複数のエッジインフラストラクチャデバイス、たとえば、追加のセンサーとセンサーフュージョン機能とを備えたRSUとの通信からの信号を含み得る。たとえば、図2Aでは、交差点200、202a、202b、204a、および204bのそれぞれには、RSU206、208、210、212、および214が装備されている。本発明のいくつかの実施の形態は、交通網にある車両の大域的マルチ車両意思決定のための制約付き最適化問題の解を含む。この解の計算は、クラウドにおいて実行されてもよく、1つまたは複数のMECにおいて実行されてもよい。当該1つまたは複数のMECは、1つまたは複数のRSU206、208、210、212、および214の一部として組み込まれてもよく、1つまたは複数のRSU206~214に接続された別個のデバイスであってもよい。
【0036】
図2Aに示した例示的なシナリオでは、交差点202aおよび202bでの北南方向の交通は、交差点204aおよび204bでの東西方向の交通よりも遙かに混雑している。大域的マルチ車両意思決定システムは、交差点200を横断する計画と、非常に混雑した交差点202aの南北方向に向かって進行する計画とを有する車両(たとえば、車両216)の計画されている今後のタイミングおよび速度軌道を制御する。交通網における交通の流れの全体の安全性、時間効率、およびエネルギー効率を改善するために、大域的マルチ車両意思決定システムは、交差点202aでの渋滞を緩和するため、および交通網にある車両のうち1台または複数台の総待ち時間を減らすために、車両216が交差点202aに後で着くと予測されるよう、車両216は交差点200を横断する前および/または横断した後にその速度を減速すべきであると決定し得る。
【0037】
図2Bは、複数の相互に接続された交差点および合流部からなる交通網内での、本発明のいくつかの実施の形態に基づく大域的マルチ車両意思決定システムの例示的な交通シーンを示す図である。図2Bは、CAVと称される1台または複数台の制御車両、たとえば、231、232、233、および234を有するシナリオを示す図であり、NCV235、236、237、および238などの1つまたは複数の無制御交通参加者を含む。交通網自体は、251(I1)、252(I2)、および253(I3)などの複数の相互に接続された交差点、ならびに255(M1)、256(M2)および257(M3)などの複数の相互に接続された合流部から構成され得る。本発明の実施の形態の説明において、交差点および合流部は、両方ともコンフリクトゾーンと称する。コンフリクトゾーンは、複数のコンフリクトのない道路区間によって相互に接続されている。コンフリクトのない道路区間は、各々、1つまたは複数の車線、たとえば、265(L6)、266(L47)、および267(L36)から構成され得る。これに加えて、図2Bは、場合によっては車両が交差点に入る前に特定の期間待機するための位置を示す停止線、たとえば、停止線261(S1)、262(S2)、および263(S3)を表示している。
【0038】
図2Bは、CAV、たとえば、車両231毎にルーティングまたはナビゲーションモジュールによって提供され得るルーティング情報をさらに示している。現在地240にある、所望の目的地249を有する車両231の場合、ルーティングまたはナビゲーションモジュールは、車両231について矢印241~248で示された一連の道路および曲がり角を提供する。同様に、同じ集中化されたまたは異なる個々のルーティングまたはナビゲーションモジュールは、その他の車両、たとえば、CAV232、233、および234の現在地から所望の目的地までの一連の道路および曲がり角を提供し得る。しかしながら、一連の道路および曲がり角241~248自体は、車両231のモーションプランや経路をまだ指定していないことを留意されたい。車両がどの車線を走行するのか、車両が車線変更すべきか現在の車線に留まるべきか、停止線で停止するために車両が減速を開始すべきかどうか、車両が交差点を横断してもよいかどうかなど、下すべき数多くの離散決定が存在する。さらには、車両がその最初の地点からその目的地までの移動上で達成すべき時間が決められた一連の位置および向きなど、下すべき数多くの連続決定が存在する。これらの決定は、対応する位置に車両が到達した時点での現在の交通量によって非常に左右される。これは、交通の動きが不透明であり、車両がその場所に到着する時点も不透明であるために、ルーティングモジュールにはまず分からない。
【0039】
本開示のいくつかの実施の形態では、1台または複数台のCAV、たとえば、231~234の現在地から所望の目的地までのルートに沿った前述の離散決定および/または連続決定のうち一連の1つまたは複数の決定を含むモーションプランは、大域的マルチ車両意思決定システムによって計算され得る。本発明のいくつかの実施の形態では、大域的マルチ車両意思決定システムは、車両(V2V)間の調整を可能にするリアルタイム通信および/またはスマートインフラストラクチャシステムと車両(V2X)との通信に依拠する。本発明のいくつかの実施の形態では、大域的マルチ車両意思決定システムは、1つまたは複数の制約付き最適化問題、たとえば、制約付き混合整数計画問題を解くことによってCAV毎のモーションプランを計算する。
【0040】
いくつかの実施の形態によると、大域的マルチ車両意思決定モジュールの対象は、小規模から中規模の交通網、たとえば、複数の相互に接続されたコンフリクトゾーンからなる局所(公共または私有)エリアである。本発明のいくつかの実施の形態は、潜在的に多くの非制御交通参加者と同じ環境で動作する潜在的に様々な数のCAVを利用した、CAVが行う人および/または物の輸送タスク、たとえば、同乗者、食料雑貨もしくはその他の小包を拾ったり降ろしたりすることを含む。タスク割り当て、すなわち、各CAVが達成しなければならない目的は、たとえば潜在的に大きな制約付き(混合整数)最適化問題の解に基づいて、別個のタスク割り当てモジュールによって実行され得る。割り当てられたタスクに基づいて、ナビゲーションモジュールは、集中的または各CAVにおいて局所的のいずれかでCAV毎のルートを決定し、ルート情報はリアルタイムで更新され得る。後退ホライズン計算、および実際の応用における有効性を含む計算上の扱いやすさを考慮すると、本発明の実施の形態は、最大で10個のコンフリクトゾーンといくつかの互いに接続された道路区間とから構成されるローカル交通網内にある少なくとも1~10台のCAV、0~30台のNCVに対処できる。
【0041】
図3は、大域的マルチ車両意思決定システム300とマッピングおよびナビゲーションシステム310、1台もしくは複数台の制御車両(CAV)330および無制御車両(NCV)340、1つもしくは複数のRSU(路側機)350、1人もしくは複数の同乗者(HMI)360、ならびに/または1つもしくは複数のモバイルエッジコンピュータ(MEC)320の間で起こり得るインタラクションの概略図である。本発明のいくつかの実施の形態によると、マッピングおよびナビゲーションシステムは、集中または分散して(たとえば、CAVの一部として組み込まれているデバイス上で)CAV毎の現在地から所望の目的地または所望の一連の目的地までのリアルタイムのルーティング情報を計算する。このルーティング情報は、マッピングおよびナビゲーションモジュールから大域的マルチ車両意思決定システム311に、および/または個々のCAV331に伝送され得る。同様に、マッピングおよびナビゲーションシステムは、大域的マルチ車両意思決定システム311および/または個々のCAV331のいずれかから最新情報を受信し得る。
【0042】
本発明のいくつかの実施の形態によると、大域的マルチ車両意思決定システムは、CAVの現在地からCAVの所望の目的地までのルート、または一連の所望の目的地までのルートに沿った交通網にある粒度の粗いモーションプランをCAV毎に計算する。その後、このモーションプランは、大域的マルチ車両意思決定システムから制御車両(CAV)のそれぞれに直接332伝送される、または代わりに大域的マルチ車両意思決定システムからの最新情報をCAV330に提供する1つまたは複数のMEC301との通信によって間接的に伝送される。同様に、本発明の実施の形態によると、大域的マルチ車両意思決定システムは、CAV330、NCV340、RSU350、およびHMI360から直接伝送され得るリアルタイム情報、または301を介してMEC320から間接的に伝送されるリアルタイム情報に依拠する。本発明のいくつかの実施の形態では、MECは、交通網の局所エリアに現在存在するCAV330、NCV341、RSU351、および人間の同乗者361と通信することによって、交通網の局所エリアにある交通参加者の状態および動的環境の状態についてのリアルタイム情報を収集し得る。
【0043】
本発明のいくつかの実施の形態は、MEC320、CAV330、NCV340、RSU350、およびHMI360の数は、大域的マルチ車両意思決定システム300の各制御時間ステップで異なり得る、という認識に基づく。最も重要なことに、大域的マルチ車両意思決定システムが動作する交通網に交通参加者および潜在的同乗者が出入りすると、NCVおよびHMIの数は、大幅に変化し得る。
【0044】
【数1】
【0045】
本発明のいくつかの実施の形態は、(半)自動運転のためのプランニングおよび制御は、意思決定、モーションプランニング、車両の制御および/または推定のためのアルゴリズムならびに技術の1つまたは複数の層を含んだ多層誘導および制御アーキテクチャ(通常であれば各車両上で実装される)を用いて効果的に実装できる、という認識に基づく。たとえば、設定された到達可能性または形式言語と組み合わせたオートマンおよび車両意思決定のための最適化を用いて、CAV車両410の意思決定層411は、大域的意思決定部300からのモーションプラン、現在の環境状況、およびその他の交通参加者の挙動から判断して、すべての時点において適切な運転挙動を選択する。車線追従、車線変更、または停止のいずれかを含む、意思決定層411からの目標挙動から判断して、モーションプランニングアルゴリズム412は、比較的下位の(予測)車両コントローラ413がリアルタイムで追跡できる動的に実行可能かつ安全な動きの軌道を計算することを目的とする。意思決定、モーションプランニング、および制御のためのより上位のアルゴリズムにフィードバックを提供するために、車載センシングおよびインフラストラクチャセンシングの情報を用いたリアルタイムのセンサーフュージョンおよび推定は、各車両、たとえば、414において実行され得る。類似しているが場合によっては異なる多層誘導および制御アーキテクチャを、二番目の車両420の421~424またはN番目の車両430の431~434など、その他のCAVの(半)自動運転に利用できる。
【0046】
普及している(半)自動運転向けの手法は、411、421、および431において意思決定するためにFSM(有限ステートマシン)を利用し、412、422、および432においてサンプリングベースのモーションプランニングアルゴリズムを利用し、413、423、および433において基準軌道追跡のためにMPC(モデル予測制御)アルゴリズムを利用するという組合せを用いる。サンプリングベースのモーションプランニングのためのアルゴリズムの一例は、確率論的パーティクルフィルタを用いて入力空間をサンプリングし、1つまたは複数の運転要件に基づいてさらなる補正項を追加する。車両制御のための予測アルゴリズムの一例は、SQP(逐次二次計画)法の1つまたは複数のイテレーションを用いて線形時変MPC問題または非線形MPC問題をリアルタイムで解く。本発明のいくつかの実施の形態は、(半)自動運転のためのモーションプランニングおよび基準追跡制御に予測アルゴリズムを利用することは、大域的マルチ車両意思決定システム300が計算するモーションプランにおける予測情報の恩恵をさらに効果的に受けることができる、という認識に基づく。センサーフュージョンおよび推定のためのアルゴリズムの例は、MHE(Moving Horizon Estimation)、拡張カルマンフィルタもしくは線形回帰カルマンフィルタ、またはパーティクルフィルタに基づく。
【0047】
本発明のいくつかの実施の形態では、交通網にある複数台のコネクテッド車両に決定および/またはフィードバック情報を提供するために、多層誘導および制御アーキテクチャ411~414の様々な構成要素が各制御車両410上に実装され、大域的マルチ車両意思決定システム300、マッピングおよびナビゲーションシステム405などその他のモジュール、およびインフラストラクチャセンシング401のためのセンサーフュージョン技術の一部またはすべてがインフラストラクチャ、たとえば、クラウドにおいて、および/または1つもしくは複数のMEC(モバイルエッジコンピュータ)において実装され得る。
【0048】
本発明のいくつかの実施の形態では、コネクテッド車両および非コネクテッド車両の両方、自動運転車両、半自動運転車両、および人によって操作される車両、ならびに自転車および歩行者などのその他の交通参加者を含む、交通網における車両の状態および動的環境を正確に検出するために、インフラストラクチャセンシング401は、1つまたは複数のセンサー、たとえば、レンジファインダー、レーダー、ライダー、およびカメラ、ならびにセンサーフュージョン技術を備える1つまたは複数のRSU(路側機)に対応する。
【0049】
本発明のいくつかの実施の形態は、たとえば、自転車および歩行者を含むその他の動的交通参加者(すなわち、車両ではない)についての安全性制約は、CAV毎の多層誘導および制御アーキテクチャの車載モジュールにおける障害物回避技術によって、たとえば、モーションプランニングおよび/または車両制御アルゴリズムによって処理され得る、という認識に基づく。大域的マルチ車両意思決定システムの計算コストよりも比較的小さい計算コストで済むので、本発明のいくつかの実施の形態では、モーションプランニングおよび車両制御アルゴリズムは、たとえば、その他の車両の動的挙動および/またはその他の交通参加者の動的挙動の予期しない変化に対して素早い反応時間を有するために比較的高速のサンプリングレートで動作できる。たとえば、リアルタイムの車両制御アルゴリズムは、通常、50~100ミリ秒の更新期間で実行される。
【0050】
本発明のいくつかの実施の形態は、図4Aに示すアーキテクチャの構成要素のうち1つまたは複数の構成要素によって、異なるモデリング精度および/または異なる計算量を有する異なる車両モーションモデルが用いられ得る、という認識に基づく。たとえば、大域的マルチ車両意思決定システム300における各車両の動きを、1次元キネマティックモデルを用いて、下記のように記述できる。
【数2】
【0051】
本発明のいくつかの実施の形態は、図4Aに示す多層誘導および制御アーキテクチャの下位の構成要素によって、モデリング精度がより高く、場合によっては計算量もより高い車両モーションモデルが用いられ得る、という認識に基づく。たとえば、大域的マルチ車両意思決定システム300および/またはナビゲーションモジュール405では、1次元キネマティックモデルが用いられ得、車両410、420、および430のそれぞれの意思決定部411、421、431、モーションプランナー412、422、432、車両コントローラ413、423、433、および/または推定アルゴリズム414、424、434では、車両の動きを記述するためにより高い次元(非線形)のキネマティックモデルが用いられ得る。これに代えて、多層誘導および制御アーキテクチャの下位の構成要素のうち1つまたは複数がより高次元(非線形)の動的モデルを用いて、たとえば、(非線形)MPCベースの車両コントローラ413、423、433における力とトルクのバランスに基づいて車両の動きを記述してもよい。
【0052】
たとえば、本発明のいくつかの実施の形態では、MPCベースの車両コントローラ413、423、433において、単線軌道非線形車両モデルが用いられ得る。MPCベースの車両コントローラ413、423、433の状態は、車両の2次元の位置、縦方向の速度および横方向の速度、ヨー角、ならびにヨーレートで記述される。単線軌道車両モデルは、各アクスル上の左輪と右輪とを同列に並べる。本発明のいくつかの実施の形態では、たとえば、車両の4つの車輪間での縦方向および横方向の負荷の伝達を正確にモデル化できるよう、さらに高いモデリング精度と計算量とを有する車両モデルが複線軌道車両モデルに基づいて用いられ得る。本発明のいくつかの実施の形態では、パセイカのマジックフォーミュラを用いて、縦方向のタイヤ摩擦力と横方向のタイヤ摩擦力との非線形関係、スリップ率、および横滑角をモデル化できる。これは、タイヤ力における通常の飽和挙動を表す。組み合わさったスリップ条件の下、たとえば、摩擦円または重み付け関数を用いて縦方向のタイヤ力と横方向のタイヤ力との結合をモデル化できる。
【0053】
図4Bは、集中型ナビゲーションモジュール405を備えない代わりに、個々のナビゲーションシステム441、442、および443がCAV410、420、および430それぞれのその現在地から所望の目的地までのルート、または一連の所望の目的地までのルートを計算し得る大域的マルチ車両意思決定システム300のフィードバックループの同様の概略図である。本発明のいくつかの実施の形態では、個々のナビゲーションシステム(たとえば、441)は、対応する制御車両410上で実行され、個々のナビゲーションモジュール441~443のそれぞれからの今後の計画されているルーティング情報は、大域的マルチ車両意思決定システム300に伝送され得る。
【0054】
図5Aは、混合整数最適制御最適化問題510を解いて交通網におけるコネクテッド(半)自動運転車両の大域的マルチ車両意思決定のためのモーションプランを計算することによる、インフラストラクチャおよび/またはコネクテッド車両との通信(V2X)に基づいた大域的マルチ車両意思決定システム300のブロック図である。大域的マルチ車両意思決定システム300への入力は、マッピング情報501、すなわち、それぞれの道路区間内にあるコンフリクトのない道路区間、コンフリクトゾーン、および走行車線の位置データ(たとえば、GPSデータ)を含み得る。これに加えて、大域的マルチ車両意思決定システム300への入力は、CAVの状態および計画されているルーティング情報505についてのフィードバック信号と、NCVの状態および予測されるルーティング情報506についてのフィードバック信号とを含み得る。本発明のいくつかの実施の形態では、後者のフィードバック信号は、センシングインフラストラクチャ(たとえば、RSU)ならびに/またはコネクテッド車両(自動運転車両、半自動運転車両、および/もしくは人によって操作される車両のいずれかであり得る)から直接または間接的に取得される。CAVの状態および計画されているルーティング情報505についてのフィードバック信号は、タイプ1フィードバック信号と称される場合がある。NCVの状態および予測されるルーティング情報506についてのフィードバック信号は、タイプ2フィードバック信号と称される場合がある。
【0055】
本発明のいくつかの実施の形態では、混合整数最適制御最適化問題に対する解510を用いて、CAV毎の今後の計画ルートおよびNCV毎の今後の予測ルートに沿った交通網内の各道路区間におけるCAV毎およびNCV毎に最適な一連の進入時間および脱出時間ならびに最適な一連の平均速度を計算できる(515)。続いて、本発明のいくつかの実施の形態では、最適な一連の時間および最適な一連の速度515を利用して、予測範囲にわたる速度分布および/または1つもしくは複数の計画的停止をCAV毎に計算できる(520)。後者の情報は、相互に接続された交通網における(半)自動運転のCAV毎の多層誘導および制御アーキテクチャに送信される(520)。
【0056】
交通網は、1台もしくは複数台の完全自動CAVおよび/または1台もしくは複数台の半自動CAVを含み得る。本発明のいくつかの実施の形態では、交通網における交通の流れの全体の安全性、時間効率、およびエネルギー効率を改善するために、各道路区間におけるCAVの進入時間および脱出時間を制御するために大域的マルチ車両意思決定システム300によって完全自動CAVの速度分布が制御され得る。本発明のいくつかの実施の形態によると、大域的マルチ車両意思決定システム300は、交通網内の今後の計画ルートに沿った1つまたは複数のコンフリクトゾーンに半自動CAVが進入することが許可されるかどうかおよび半自動CAVがいつ進入を許可されるかについて制御できるが、半自動CAVの速度分布は、大域的マルチ車両意思決定システム300によって直接制御できない。たとえば、特定の時間ステップにおいて、大域的マルチ車両意思決定システム300は、(各半自動CAVがそれ自体で決定できる速度分布を用いて)および交通交差点に安全に進入するタイミングについての大域的マルチ車両意思決定システム300からの追加情報を用いて1台または複数台の半自動CAVに交通交差点で停止するよう指示できるが、交通網の道路区間にある1台または複数台の半自動CAVの速度分布は直接制御できない。
【0057】
本発明のいくつかの実施の形態は、図5Aに記載のように、大域的マルチ車両意思決定システムにおいてCAV毎の長期今後のルート計画505を使用する。本発明のいくつかの実施の形態は、インフラストラクチャシステムによっては、各NCVのルートについて正確な今後の予測を取得することが困難であることが明らかになるであろう、という認識に基づく。このため、本発明のいくつかの実施の形態では、大域的マルチ車両意思決定システム300は、センシングインフラストラクチャ(たとえば、RSU)および/またはコネクテッド車両からの直近の情報に基づいた後退ホライズン式で実装される。本発明のいくつかの実施の形態は、NCVについてはおおよその短期の今後のルート予測506が十分であり、このルート予測は、通常、たとえば、各NCVの現在地から次のコンフリクトゾーンまでの間に比較的容易に取得でき、予測における矛盾は後退ホライズン法の内発的フィードバック機構によって調整可能である、という認識に基づく。たとえば、1~2秒の更新期間があれば、NCVの挙動についての間違った予測を考慮して、CAV毎の多層誘導および制御アーキテクチャを十分高速に更新しつつ、大域的マルチ車両意思決定システム300のリアルタイム計算が可能である(520)。
【0058】
本発明のいくつかの実施の形態は、大域的マルチ車両意思決定システム300は、V2X通信からの入力情報から判断して、制約付き最適化問題を解いて(510)CAV毎のモーションプランを計算することによって実装され得る、という認識に基づく。本発明のいくつかの実施の形態では、制約付き最適化問題は、MIP(混合整数計画)問題、たとえば、MILP(混合整数線形計画)であってもよく、MIQP(混合整数二次計画)問題であってもよい。本発明のいくつかの実施の形態では、たとえば、分枝限定法、分枝切除法、および分枝価格法を含む大域的最適化アルゴリズムによって、大域的マルチ車両意思決定システム300の各サンプリング時におけるMIP問題を解くことができる(510)。本発明のその他の実施の形態では、たとえば、丸め方式、実現可能性ポンプ法、近似最適化アルゴリズム、または(深層)機械学習の利用を含む、ヒューリスティック技術が用いて、MIPに対する実行可能であるが最適に満たない解が計算され得る。
【0059】
大域的マルチ車両意思決定システム300のいくつかの実施の形態では、制約付き最適化問題510は、1つまたは複数の目的の最適化(最小化)を含み、交通網にあるすべての車両の安全性および効率のための1つまたは複数の等式制約ならびに/もしくは不等式制約を施行する。たとえば、制約は、車両モーションモデル、速度制限制約、今後のルート計画またはルート予測のタイミング制約、コンフリクトゾーンのおける安全性制約、およびコンフリクトのない道路区間における占有期間制約を含み得る。これらの目的は、今後のルート計画またはルート予測における各区間の終わりに到達するまでの走行時間を最小化することと、車両ごとの待ち時間を最小化することと、平均速度を最大化することと、エネルギー効率のために加速を最小化することとを含み得る。
【0060】
本発明のいくつかの実施の形態では、大域的マルチ車両意思決定の混合整数最適化(最小化)問題510は、探索空間内の大域的最適解を探索して最適な制御信号を作成するB&B(分枝限定法)最適化方法を用いて解くことができる。ここで、B&B最適化は、探索空間を反復的に分割して、複数の領域からなるネストされたツリーにし、大局的に最適な(最小の)目的関数値を有する解を見つける。B&B法は、凸緩和を反復的に解いて、複数の領域からなるネストされたツリーのうち、特定の領域内にある目的関数値の下限値を計算する。1つまたは複数の領域は、対応する下限値が大域的に最適な目的関数値に対する現在既知の上限値よりも大きい場合、剪定され得る。大域的に最適な目的関数値に対する上限値は、大域的に最適な目的関数値に対する現在既知の上限値未満の目的関数値で整数実行可能解が見つかった場合、更新され得る。
【0061】
【数3】
【0062】
【数4】
【0063】
【数5】
【0064】
【数6】
【0065】
【数7】
【0066】
【数8】
【0067】
【数9】
【0068】
【数10】
【0069】
本発明のいくつかの実施の形態は、(たとえば、そのルートに沿った各道路区間における車両毎の)総走行時間の最小化と、(たとえば、1つの道路区間の終わりにあって、そのルートに沿った後続する道路区間に進入する前の車両毎の)交通網にあるCAVの総待ち時間の最小化との間には、トレードオフが存在する、という認識に基づく。具体的には、本発明のいくつかの実施の形態によると、大域的マルチ車両意思決定システムは、安全性制約および速度制限のすべてを守りつつ、そのルートに沿った各道路区間をできる限り高速で走行するようCAVに指示し得る。これでは、走行時間は比較的少なくて済むであろうが、さらに待ち時間が比較的多くなってしまうであろう。これに代えて、本発明のいくつかの実施の形態によると、総待ち時間を減らすために、大域的マルチ車両意思決定システムは、CAVがそのルートに沿った後続する道路区間に安全に進入する前に道路区間の終わりで待機する必要があると予測される場合、1台または複数台のCAVに(直ちにまたは今後)速度を落として走行するよう指示し得る。本発明のいくつかの実施の形態は、全体のエネルギー効率を最適化するために、たとえば、そのルートに沿った各車両の加速および/または減速の全体的な量の最小化など、別の目的または追加の目的を大域的マルチ車両意思決定システムが利用して交通網にあるCAV毎にモーションプランが計算され得る、という認識に基づく。
【0070】
図7は、MIP(混合整数計画)問題を解き(720)、たとえば、交通網にある制御車両および/または半制御車両それぞれの時間および速度スケジュール730から構成されるモーションプランを計算することによって、インフラストラクチャおよび/またはコネクテッド車両との通信(V2X)に基づいた大域的マルチ車両意思決定システム300のブロック図を示す。大域的マルチ車両意思決定システム300への入力は、マッピング情報501、すなわち、それぞれの道路区間内にあるコンフリクトのない道路区間、コンフリクトゾーン、および走行車線の位置データ(たとえば、GPSデータ)を含み得る。これに加えて、大域的マルチ車両意思決定システム300への入力は、交通網にある制御車両、非制御車両、および/または半制御車両のセンシングおよび(計画または予測される)ルーティング情報705についてのフィードバック信号を含み得る。図7に示すように、本発明のいくつかの実施の形態によると、結果として得られるMIP(混合整数計画)問題を作成して解く(720)ために、大域的マルチ車両意思決定システム300への入力を用いて行列およびベクトルをMIPデータで作成し、目的、等式制約、および不等式制約を規定し得る(710)。
【0071】
【数11】
【0072】
図8Aは、大域的マルチ車両意思決定システム300が解くMIP問題720が守り得る等式制約および/または不等式制約800の例を示す図である。本発明のいくつかの実施の形態では、MIP問題720は、車両の動的等式制約801、車両のルーティング不等式制約802、制御車両および/または半制御車両(CAV)の速度制限制約803、NCV(無制御車両)の速度制限制約804、コンフリクトゾーン毎の安全性制約805、ならびに交通網にある(コンフリクトするおよび/またはコンフリクトのない)道路区間毎の占有期間制約806を含み得る。
【0073】
本発明のいくつかの実施の形態では、大域的マルチ車両意思決定システムは、たとえば、CAV毎およびNCV毎の1次元キネマティックモーションモデルが下記の線形車両の動的等式制約801によって規定されるよう、最適化変数に逆速度を含んだMIP720に対する解に基づく。
【数12】
【0074】
【数13】
【0075】
【数14】
【0076】
【数15】
【0077】
【数16】
【0078】
本発明のいくつかの実施の形態では、大域的マルチ車両意思決定システムは、制御車両または半制御車両(CAV)について1つまたは複数の速度制限制約803を含んだMIP720に対する解に基づく。本発明のいくつかの実施の形態は、各CAVの速度を、たとえば、正の値と負の値との間で速度が交互する駐車操縦の場合を除いて、正の値に留まるように限定し、速度は、交通網内の道路区間毎に異なり得る速度制限の最大許容値以下に留まるように限定され得る。たとえば、逆速度変数に着目した場合、CAVの速度制限制約803は、MIP720において式で下記のように表すことができる。
【数17】
【0079】
本発明のいくつかの実施の形態では、大域的マルチ車両意思決定システムは、NCV(無制御車両)についての1つまたは複数の速度制限制約804を含んだMIP720に対する解に基づく。本発明のいくつかの実施の形態は、NCVの速度は直接制御できず、その結果、大域的マルチ車両意思決定システムは、NCV毎のその予測ルートに沿った一連の速度値を自由に選択できない、という認識に基づく。その代わりに、本発明のいくつかの実施の形態は、NCV毎の予測速度を、状態推定およびセンシングモジュールが(たとえば、センシングインフラストラクチャにおけるRSUが)提供する現在の速度値に比較的近い速度値に留まるように限定することを目的とする。
【0080】
本発明のいくつかの実施の形態では、NCVの逆速度変数は、たとえば、NCVの現在の速度値および/または加速値に基づいた、その予測ルートに沿った各道路区間にあるNCV毎の平均速度の逆平均速度の予測値に対応する。たとえば、本発明のいくつかの実施の形態は、NCVについて下記の速度制限制約804を含む。
【数18】
【0081】
【数19】
【0082】
【数20】
【0083】
【数21】
【0084】
【数22】
【0085】
図8Dは、本発明の実施の形態に係る、大域的マルチ車両意思決定システム300が解くMIP問題720における重み付き多目的最小化850に含まれ得る目的の例を示す図である。たとえば、MIP問題720における重み付き多目的最小化関数850は、次のように解釈できる。
【数23】
【0086】
本発明のいくつかの実施の形態では、MIP問題720における走行時間851の最小化は、交通網にある車両毎の進入時間および/または脱出時間の最小化の加算として実行される。本発明のいくつかの実施の形態では、MIP問題720における走行時間851の最小化は、各車両が交通網におけるその所望の目的地に到着するのにかかる時間の重み付き和の最小化として実行される。たとえば、本発明のいくつかの実施の形態では、MIP問題720における走行時間の最小化851を、次のように解釈する。
【数24】
【0087】
【数25】
【0088】
本発明のいくつかの実施の形態では、交通網内の今後のルートに沿った各道路区間におけるNCVの平均速度の予測値に比較的近いままにNCV毎の速度を制約するために、MIP問題720における重み付き多目的最小化850は、たとえば、NCV(無制御車両)の速度追跡ペナルティ853の最小化を含む。たとえば、本発明のいくつかの実施の形態では、MIPの目的850は、交通網の道路区間のそれぞれにおけるNCV毎の逆速度変数の和の最小化を含む。
【数26】
【0089】
【数27】
【0090】
【数28】
【0091】
本発明のいくつかの実施の形態は、大域的マルチ車両意思決定システム300においてMIP問題720を解くために用いられる数値最適化アルゴリズムにおいて、重複する最適化変数をPre-Solveルーチンによって自動的に削除できる、という認識に基づく。本発明のいくつかの実施の形態では、MIP問題720の重複する最適化変数毎の対応する単純な上下限値を調整することによって、1つまたは複数の重複する最適化変数を特定の値に明示的に固定することができる。
【0092】
たとえば、本発明のいくつかの実施の形態では、重複する最適化変数は、例えば、下記のような単純な規則に従って固定したり、削除したりすることができる。
【数29】
【0093】
【数30】
【0094】
【数31】
【0095】
図9Aは、いくつかの実施の形態に係る、大域的マルチ車両意思決定システム300におけるMIP問題720の整数実行可能解のための探索領域から構成されるネストされたツリーを表すバイナリ決定変数探索ツリーの例の概略を示す図である。図9Aは、混合整数最適化アルゴリズムの特定のイテレーションにおける二分探索ツリー900を示すことによって、分枝限定法の概略図を示している。分枝限定法は、いくつかの実施の形態において大域的マルチ車両意思決定システムを実装するために用いられ得る。B&B(分枝限定法)法の主な概念は、元のMIP問題720の区画を逐次作成した後に、これらの区画を解くことを試みることである。ここで、各区画は、離散最適化変数探索空間の特定の領域に対応する。本発明のいくつかの実施の形態では、分枝限定法は、区画またはノードを選択し、この区画をさらに小さな区画または探索領域に分枝させるための離散最適化変数を選択し、結果として、区画または探索領域から構成されるネストされたツリーが得られる。
【0096】
【数32】
【0097】
【数33】
【0098】
図9Bは、いくつかの実施の形態に係る、探索領域のネストされたツリーおよび対応する上限値/下限値に基づいて整数実行可能最適解を探索するための分枝限定混合整数最適化アルゴリズムのブロック図を示す。いくつかの実施の形態では、図9Bに示す分枝限定混合整数最適化アルゴリズムのブロック図は、大域的マルチ車両意思決定システムを実装するために用いられ得る。分枝限定法は、行列とベクトルから構成されるMIPデータ710に基づいて、大域的マルチ車両意思決定システムの現在の時間ステップ910においてMIP(混合整数計画)の分枝探索ツリー情報を初期化する。現在の時間ステップ910をウォームスタートで初期化するために、この初期化では、前の時間ステップ912の分枝探索ツリー情報およびMIPの解情報もさらに用いられ得る。最適化アルゴリズムの主な目標は、混合整数解の目的関数値の下限値と上限値を作ることである。ステップ911では、下限値と上限値との差が特定の公差値よりも小さい場合、混合整数最適解が見つかる(955)。
【0099】
ステップ911において下限値と上限値との差が特定の公差値よりも大きく、最適化アルゴリズムによる最大実行時間にまだ達していない限り、分枝限定法は、継続して混合整数最適解を反復的に探索する(955)。分枝限定法の各イテレーションは、整数変数探索空間の次の領域または区画に対応する、ツリーの次のノードを選択することから開始し、場合によっては、Pre-Solve分枝技術に基づいて変数を固定する(915)。ノードを選択された後、対応する整数緩和問題を解き、場合によっては、Post-Solve分枝技術に基づいて変数を固定する(920)。
【0100】
整数緩和問題が実行可能解を有する場合、結果として得られる緩和の解によって、整数変数探索空間のその特定の領域または区画の目的関数値の下限値を取得できる。ステップ921において、最適な混合整数解の目的関数値の現在既知の上限値よりも目的が大きいと判断された場合、選択されたノードを剪定するか、分枝ツリーから削除する(940)。しかしながら、ステップ921では、目的が現在既知の上限値よりも低いと判断され、かつ、緩和の解が整数実行可能である場合(925)、現在既知の上限値および対応する混合整数解の推定値を、ステップ930で更新する。
【0101】
整数緩和問題に実行可能解があり、目的が現在既知の上限値よりも小さい(921)が、緩和の解は、まだ整数実行可能でない場合、目的の大域的下限値を、分枝ツリーの残りの葉ノードの目的関数値の最小値になるよう更新し得(935)、選択されたノードを、ツリーから剪定する(940)。これに加えて、離散探索空間の領域および区画に対応する結果として生じる下位問題を分枝ツリーのそのノードの子として作成して追加する(950)ために、現在のノードから開始して、特定の分枝法945に従って分枝させるための、小数値を有する離散変数が選択される。
【0102】
【数34】
【0103】
いくつかの実施の形態は、LIFO(Last-In-First-Out)バッファを用いて実装できる深度優先ノード選択法を用いた分枝限定法に基づく。次に解かれるノードは、現在のノードの子のうちの1つとして選択され、この工程は、ノードが剪定されるまで繰り返される、すなわち、ノードは、実行不可能である、最適である、または、現在既知の上限値によって決定されているかのいずれかである。この後には、逆追跡法が続く。その代わりに、いくつかの実施の形態は、分枝限定法に基づく。分枝限定法は、局所の下限値が現在最も低いノードを選択する最良優先法を用いる。いくつかの実施の形態は、整数実行可能解が見つかるまで深度優先ノード選択法が使用され、その後、分枝限定ベースの最適化アルゴリズムの後続のイテレーションにおいて最良優先ノード選択法が使用される、深度優先ノード選択法と最良優先ノード選択法とを組み合わせた方法を採用する。後者の実装は、早いうちの剪定を可能にするために分枝限定法(深度優先)の始めの早いうちに整数実行可能解を見つけて、その後、より良い実行可能解(最良優先)を見つけるための欲張り探索(Greedy Search)を実行することを目的とすることが動機となっている。
【0104】
分枝限定法は、下記の条件のうち1つまたは複数が満たされるまでイテレーションを続ける。
●プロセッサの最大実行時間に達する。
●分枝探索ツリーにあるすべてのノードが剪定されて、凸緩和を解いたり分枝したりするための新しいノードをこれ以上選択できない。
●混合整数解の目的の大域的な下限値と上限値との最適性ギャップが許容範囲未満である。
【0105】
図10は、本発明のいくつかの実施の形態に係る、1つまたは複数の相互に接続されたコンフリクトゾーンからなる交通網にある1台または複数台の制御車両のモーションプランを計算するための大域的マルチ車両意思決定システム1000のブロック図を示す。大域的マルチ車両意思決定システム1000は、クラウドにおいて、または1つもしくは複数のMEC(モバイルエッジコンピュータ)において実行される。システムは、交通網の1つまたは複数の相互に接続されたコンフリクトゾーン近くの交通情報を収集するために一連のセンサーから構成される1つまたは複数のエッジデバイス(たとえば、インフラストラクチャベースのセンシング用のRSU)または一連のセンサーに機能的に接続された1つまたは複数のエッジデバイスをさらに必要とするであろう。本発明のいくつかの実施の形態では、大域的マルチ車両意思決定システムは、交通網における今後の計画ルートに沿ったCAV(コネクテッド自動運転車両)のそれぞれに、最適な一連の進入時間ならびに脱出時間ならびに平均速度1022および/または速度分布、ならびに一連の計画的停止1024を送信するように設計されている。
【0106】
大域的マルチ車両意思決定システム1000は、意思決定システム1000をその他のシステムおよびデバイスと接続する複数のインタフェースを備える。たとえば、意思決定システム1000は、意思決定システム1000を1つ以上のデバイス1008に接続するネットワーク1006にバス1004を通して意思決定システム1000を接続するように適合されるNIC(ネットワークインタフェースコントローラ)1002を備える。このようなデバイスとして、車両、信号機、トラフィックセンサー、RSU(路側機)、MEC(モバイルエッジコンピュータ)、および同乗者のモバイル機器などが挙げられるが、これらに限定されない。意思決定システム1000は、さらに、送信インタフェース1010を備える。送信インタフェース1010は、送信部1012および/またはデバイス1008のうち1つもしくは複数を用いて、交通網における今後の計画ルートに沿ったCAV(コネクテッド自動運転車両)のそれぞれに、1つまたは複数のプロセッサ1014が決定した最適な一連の進入時間ならびに脱出時間ならびに平均速度1022および/または速度分布、ならびに一連の計画的停止1024を送信するように構成される。交通網における交通の流れの全体の安全性、時間効率およびエネルギー効率を改善するために、大域的マルチ車両意思決定システムから受信したコマンドは、CAVのそれぞれにおける多層誘導および制御アーキテクチャによって車両の動きを制御するために用いられ得る。
【0107】
ネットワーク1006を通して、大域的マルチ車両意思決定システム1000は、受信部1030に接続された受信インタフェース1028を用いてリアルタイムの交通データ1032を受信する。意思決定システム1000は、交通網にある相互に接続されたコンフリクトゾーンおよび道路区間のうち1つまたは複数についての交通情報を受信し得る。交通データ1032は、車両状態(たとえば、加速、位置、進行方向、速度)の情報と、交通網にある車両毎の計画ルートおよび/または予測される今後のルート(たとえば、一連の今後の道路区間、走行車線、所望の目的地、待ち時間)の情報とを含み得る。これに加えて、またはこれに代えて、意思決定システム1000は、1つまたは複数のデバイス1008にそれぞれの加速、速度などの状態を変更するためのコマンドを送信するように構成された制御インタフェース1034を備え得る。制御インタフェース1034は、コマンドを送信するための送信部1012および/またはその他の通信手段を使用し得る。
【0108】
本発明のいくつかの実施の形態では、HMI(ヒューマンマシンインタフェース)1040が意思決定システム1000をキーボード1036およびポインティングデバイス1038に接続する。ここで、ポインティングデバイス1038は、特に、マウス、トラックボール、タッチパッド、ジョイスティック、ポインティングスティック、スタイラス、またはタッチスクリーンを含み得る。また、意思決定システム1000は、バス1004を通して、特に、コンピュータモニタ、カメラ、テレビ、プロジェクター、またはモバイル機器など、表示装置に意思決定システム1000を接続するように適合される表示インタフェースにリンクされ得る。また、意思決定システム1000は、様々な電力配分タスクを実行するための1つ以上の機器に意思決定システム1000を接続するように適合されるアプリケーションインタフェースに接続され得る。
【0109】
意思決定システム1000は、記憶している命令を実行するように構成された1つまたは複数のプロセッサ1014と、プロセッサ(少なくとも1つのプロセッサ)1014によって実行可能な命令を記憶するメモリ(少なくとも1つのメモリ)1016とを備え得る。プロセッサ(複数可)1014は、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、コンピュータクラスタ、複数の接続されたプロセッサからなるネットワーク、または任意の数のその他の構成であり得る。メモリ1016は、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(読み出し専用メモリ)、フラッシュメモリ、またはその他の適したメモリシステムを含み得る。プロセッサ(複数可)1014は、バス1004を通して1つ以上の入力装置および出力装置に接続され得る。これらの命令は、相互に接続されたコンフリクトゾーンにおける局所エリアでの大域的マルチ車両意思決定のための方法を実装する。本発明のいくつかの実施の形態では、意思決定システム1000は、マッピング構成1018を含む。たとえば、マッピング構成1018は、交通網のそれぞれの道路区間内にあるコンフリクトのない道路区間、コンフリクトゾーン、および走行車線の位置データ(たとえば、GPSデータ)を含み得る。
【0110】
意思決定システム1000は、たとえば、図8A図8Dで説明するように、大域的マルチ車両意思決定システムの各時間ステップにおいて解かれるMIP(混合整数計画)問題720の制約および目的1020を含む。たとえば、MIPの制約および目的1020は、物理的な制限、車速制限、および/または安全性制約を守るように構成され得、かつ、交通網にある車両毎の走行時間、待ち時間、および/またはエネルギー消費の重み付き組合せを最小化するように構成され得る。本発明のいくつかの実施の形態では、MIPの制約および目的1020は、MILP(混合整数線形計画)またはMIQP(混合整数二次計画)問題の解につながる。MIPの解に基づいて、CAV(コネクテッド自動運転車両)毎ごとに、交通網におけるその今後の計画または予測されるルートに沿った最適な一連の進入時間ならびに脱出時間ならびに平均速度1022および/または速度分布ならびに一連の計画的停止1024が、1つまたは複数のプロセッサ1014によって決定され得る。
【0111】
図11Aは、本発明のいくつかの実施の形態に係る、多層誘導および制御アーキテクチャ1102を備えた車両1101の概略を示す図である。多層誘導および制御アーキテクチャ1102は、大域的マルチ車両意思決定システムによって計算され得る交通網の今後のルート計画および対応するモーションプランに基づいて、車両の動きを制御する。本明細書において使用するとき、車両1101は、乗用車、トラック、シャトル、バス、またはローバーなど、任意の種類の車輪付き車両であり得る。また、車両1101は、自動運転車両であってもよく、半自動運転車両であってもよい。たとえば、大域的マルチ車両意思決定システムによって計算され得るモーションプランに基づいて、いくつかの実施の形態は、車両1101の動きを制御する。動きとして、車両1101のステアリングシステム1103によって制御される車両の横の動きなどが挙げられる。本発明のいくつかの実施の形態では、ステアリングシステム1103は、多層誘導および制御アーキテクチャ1102によって制御される。これに加えて、またはこれに代えて、ステアリングシステム1103は、車両1101の(人間の)ドライバーによって制御されてもよい。
【0112】
また、車両は、エンジン1106を備え得る。エンジン1106は、多層誘導および制御アーキテクチャ1102によって直接制御されてもよく、車両1101のその他の構成要素によって制御されてもよい。また、車両は、周辺環境を検知するために1つ以上の車載センサー1104を備え得る。センサー1104として、レンジファインダー、レーダー、ライダー、およびカメラなどが挙げられる。また、車両1101は、その現在の動作量および内部状態を検知するために、1つ以上の車載センサー1105を備え得る。センサー1105として、GPS(Global Positioning System)、加速度計、慣性計測装置、ジャイロスコープ、シャフト回転センサー、トルクセンサ、たわみセンサー、圧力センサー、およびフローセンサなどが挙げられる。車載センサーは、多層誘導および制御アーキテクチャ1102に情報を提供する。たとえば、本発明のいくつかの実施の形態に係る大域的マルチ車両意思決定システムと車両1101が通信できるように、車両には、有線またはワイヤレスの通信チャネルを通して多層誘導および制御アーキテクチャ1102の通信機能を可能にするトランシーバ1106が搭載されてもよい。
【0113】
図11Bは、本発明のいくつかの実施の形態に係る、多層誘導および制御アーキテクチャ1102(すなわち、意思決定、モーションプランニング、車両制御および/または推定のためのアルゴリズムと技術の層)と車両1101のその他のコントローラ1120とのインタラクションの概略を示す図である。たとえば、いくつかの実施の形態では、車両1101のコントローラ1120は、車両1120の回転および加速をそれぞれ制御するステアリングコントローラ1125およびブレーキ/スロットルコントローラ1130である。このような場合、多層誘導および制御アーキテクチャ1102は、車両の状態1101を制御するためのコントローラ1125および1130に操作量を出力する。また、コントローラ1120は、多層誘導および制御アーキテクチャ1102の操作量をさらに処理する上位コントローラ、たとえば、レーンキープアシストコントローラ1135を含み得る。いずれの場合であっても、車両1101の動きを制御するために、コントローラ1120は、多層誘導および制御アーキテクチャ1102の出力を利用して、車両1101のハンドルおよび/またはブレーキなど、車両1101の少なくとも1つのアクチュエータを制御する。本発明のいくつかの実施の形態では、車両1101は、交通網にある複数台のCAVのうち1台であり、車両1101への入力が車両1101の加速、車両1101のエンジントルク、制動トルク、および操舵角のうち1つまたはそれらの組合せを含み得る大域的マルチ車両意思決定システムによって計算されるモーションプランに基づいて、多層誘導および制御アーキテクチャ1102は、車両1101への入力を決定する。
【0114】
図12Aは、大域的マルチ車両意思決定システム300とシッピングヤード管理システム1200とのインタラクションの概略を示す図である。大域的マルチ車両意思決定システム300とシッピングヤード管理システム1200は、シッピングヤードにある制御車両および無制御車両についての効率的なジョブスケジュール管理、モーションプランニング、および意思決定のために互いに組み合せて使用され得る。本発明のいくつかの実施の形態では、シッピングヤード管理システムは、1つまたは複数のトラックおよび/または交通誘導員(spotter)が下記のタスクのうち1つまたは複数を実行するためのタスク割り当ておよび計画ルートを計算する。
●1人または複数人のドック作業員によって1つまたは複数のトレーラーを積み込むまたは荷下ろしするための1つまたは複数のドックに向かうルート計画。
●シッピングヤードのある場所から別の場所に1つまたは複数のトレーラーを移動させるためのルート計画。
●1つまたは複数のトレーラーを持ち出したり降ろしたりするための駐車場の特定の区画に向かうルート計画。
●シッピングヤードエリアの相互に接続された交通網に進入および脱出するためのルート計画。
【0115】
本発明のいくつかの実施の形態では、シッピングヤード管理システムは、構成要素の中でも特に、予約スケジュール管理1205、セキュリティゲート管理1210、ドック管理1215、および交通誘導員スケジュール管理1220、のうち1つまたは複数を備え得る。予約スケジュール管理1205システムは、カーゴを積み込んだり荷下ろしたりするためのシッピングヤードに到着予定のトラック毎の予約を保証する。セキュリティゲート管理1210システムは、場合によってはセキュリティまたは検証処理と組み合わされて、各トラックのチェックインをドライバーがいてもいなくても行う。セキュリティゲート管理システムは、シッピングヤード管理システム1200と大域的マルチ車両意思決定システム300の両方がシッピングヤードエリアに現在存在するすべてのトラックおよびドライバーを認識していることを保証する。ドック管理1215システムは、1人または複数人のドック作業員による特定のトレーラーのカーゴの積み込みや荷下ろしにどの特定のドックを使うことができるかを決定するタスク割り当てまたはジョブスケジュール管理システムに基づく。交通誘導員スケジュール管理1220システムは、トレーラーを持ち出してシッピングヤードの特定の駐車場または特定のドックまで移動するよう特定の交通誘導員を指示するべきかどうかを決定する。
【0116】
本発明のいくつかの実施の形態では、シッピングヤード管理システムのタスク割り当て、ジョブスケジュール管理、マッピング、および/またはナビゲーションは、MIP(混合整数計画)問題の解によって実装され得る。たとえば、1つまたは複数のモバイルエッジコンピュータを用いて、タスク割り当てまたはジョブスケジュール管理のMIPは、大域的マルチ車両意思決定システムにおけるモーションプランニングのMIPとは別個に解くこともでき、合わせて解くこともできる。本発明のその他の実施の形態では、実行可能であるが最適に満たないであろうスケジュールを大幅に低いシッピングヤード管理の計算コストで計算するために、シッピングヤード管理システムのタスク割り当てまたはジョブスケジュール管理は、ヒューリスティック探索技術に基づいて実装される。
【0117】
図12Bは、セキュリティゲート1265、1つまたは複数の駐車場1260、および1つまたは複数のドック1270間で1つまたは複数の車両がシッピングヤードエリア内を走行するための相互に接続された交通網1255を備えるシッピングヤード管理システム1250の概略を示す図である。シッピングヤード管理システムは、製造工場、倉庫、または配送センターの作業場内でのトラックの移動をとりまとめることを目的とする。本発明のいくつかの実施の形態では、車両のそれぞれは、自動運転車両であってもよく、半自動運転車両(CAV)であってもよく、無制御車両(NCV)であってもよく、車両のそれぞれは、トラック1261(トレーラー1262の有無にかかわらず)、交通誘導員1263、またはヤードジョッキーのいずれかであってもよい。シッピングヤード管理システム1250は、トラック1261、トレーラー1262、交通誘導員1263、またはドック作業員1264のうち1人または複数人、ならびに駐車場1260またはドック1270のうち1つまたは複数にタスクをそれぞれ割り当てる。タスク割り当ての結果は、ドック作業員1264のうち1人もしくは複数人、ならびにトラック1261および交通誘導員1263のうち1つまたは複数、ならびに/またはトラック1261の1人もしくは複数人のドライバーおよび交通誘導員1263に伝送され得る。たとえば、ドック作業員および/またはドライバーのうち1人または複数人が保持し得るモバイル機器またはコンピュータと、シッピングヤード管理システムとの間の電子通信と組み合わせたV2X(Vehicle-To-Everything)通信機器および技術が用いられてもよい。その後、大域的マルチ車両意思決定システムは、計画または予測されるルートに沿ったCAVおよびNCVのそれぞれがシッピングヤード内でタスクを実行するための、相互に接続された交通網内の粒度の粗いモーションプランを計算する。
【0118】
本発明のいくつかの実施の形態は、シッピングヤード管理システムが車両のそれぞれに割り当てた特定のタスクにより、車両間には優先順位の階層が存在し得る、という認識に基づく。本発明のいくつかの実施の形態では、大域的マルチ車両意思決定システムは、重み付き多目的最小化に基づいたMIP問題に対する解に基づき、シッピングヤード管理システムによって決定される優先順位がより高い1つまたは複数の車両を優先するモーションプランを計算する。たとえば、優先順位がより高い1つまたは複数の車両の走行時間および/または待ち時間の重み値は、大域的マルチ車両意思決定システムにおけるMIP問題の重み付き多目的最小化では比較的大きな値と決められ得る。
【0119】
上述した本発明の実施の形態は、数多くの方法のいずれによっても実現できる。たとえば、ハードウェア、ソフトウェア、または、それらの組合せを用いて実施の形態を実現してもよい。ソフトウェアで実現された場合、1つのコンピュータ上に配置されていても複数のコンピュータ間で分散されていても、任意の適切なプロセッサまたはプロセッサの集まり上でこのソフトウェアコードを実行できる。このようなプロセッサは、1つの集積回路部品に1つ以上のプロセッサを含めた集積回路として実現されてもよい。しかし、プロセッサは、任意の適切なフォーマットの回路を用いて実現されてもよい。
【0120】
また、本明細書において概要を説明した様々な方法または工程は、様々なオペレーティングシステムまたはプラットフォームのいずれか1つを採用する1つ以上のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコーディングされてもよい。これに加えて、このようなソフトウェアは、複数の適したプログラミング言語および/もしくはプログラミングツールもしくはスクリプティングツールのいずれかを用いて書かれてもよく、または、フレームワークもしくは仮想マシン上で実行される実行可能な機械言語コードもしくは中間コードとしてコンパイルされてもよい。通常、プログラムモジュールの機能は、様々な実施の形態において所望されるように組み合わせたり分散させたりしてもよい。
【0121】
また、本発明の実施の形態は、説明を行った方法として実装されてもよい。方法の一部として実行される動作は、適切に順序付けされてもよい。したがって、例示した順序とは異なる順序で動作を実行する実施の形態が構成されてもよく、例示した実施の形態では連続した動作として示されていたとしても、一部の動作を同時に行うことを含んでもよい。
【0122】
好ましい実施の形態を例として本発明を説明したが、本発明の要旨および範囲内で様々なその他の改作および変更が行われてもよいことを理解されたい。そのため、添付の特許請求の範囲の目的は、本発明の趣旨および範囲に含まれるすべてのこのような変形例および変更例を対象として含むことである。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B