(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】球状アルミナ粒子分散体の製造方法、並びに、視野角改善光学フィルム用球状アルミナ粒子分散体、視野角改善光学フィルム用塗膜形成樹脂組成物及び視野角改善光学フィルム
(51)【国際特許分類】
C01F 7/026 20220101AFI20250318BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20250318BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20250318BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20250318BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20250318BHJP
C09C 1/40 20060101ALI20250318BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20250318BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20250318BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
C01F7/026
B05D3/12 Z
B05D7/24 303A
B05D7/24 303B
B05D7/24 303H
C08K3/22
C08L101/02
C09C1/40
C09D7/61
C09D17/00
C09D201/00
(21)【出願番号】P 2021070447
(22)【出願日】2021-04-19
【審査請求日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2020077748
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000180058
【氏名又は名称】山陽色素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】小川 修平
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102827500(CN,A)
【文献】特開2011-154327(JP,A)
【文献】特開平08-146525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 7/00 - 7/778
B05D 3/12
B05D 7/24
C08K 3/22
C08L 101/02
C09C 1/40
C09D 7/61
C09D 17/00
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状アルミナ粒子、分散剤及び溶剤を含む球状アルミナ粒子分散体の製造方法であって、
前記球状アルミナ粒子の原料となる原料アルミナ粒子、ノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤から選択される少なくとも一種を含む分散剤並びに溶剤を含む液を、平均粒子径0.10mm未満のビーズとともに分散処理を行って、前記球状アルミナ粒子が、平均粒子径が1~10μmの球形のアルミナ粒子により実質的に構成されるように、原料アルミナ粒子を分散する工程を含
み、
前記球形のアルミナ粒子の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置により測定され、
前記球形のアルミナ粒子とは、前記分散処理の結果、欠損した形状の不定形の形状のアルミナ粒子が含まれないことを意味する、球状アルミナ粒子分散体の製造方法。
【請求項2】
前記分散剤が、ノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤を含む請求項1記載の球状アルミナ粒子分散体の製造方法。
【請求項3】
前記カチオン型分散剤が、アミン型高分子分散剤である請求項2記載の球状アルミナ粒子分散体の製造方法。
【請求項4】
前記原料アルミナ粒子の平均粒子径が1~10μmである請求項1~3の何れか一項に記載の球状アルミナ粒子分散体の製造方法。
【請求項5】
球状アルミナ粒子の原料となる原料アルミナ粒子、ノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤から選択される少なくとも一種を含む分散剤並びに溶剤を含む液を、平均粒子径0.10mm未満のビーズとともに分散処理を行って、前記球状アルミナ粒子が、平均粒子径が1~10μmの球形のアルミナ粒子により実質的に構成されるように、原料アルミナ粒子を分散する球状アルミナ粒子分散体調製工程、
該球状アルミナ粒子分散体調製工程で得られた球状アルミナ粒子分散体に塗膜形成成分を添加して撹拌処理する塗膜形成組成物調製工程、
を含
み、
前記球状アルミナ粒子の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置により測定され、
前記球形のアルミナ粒子とは、前記分散処理の結果、欠損した形状の不定形の形状のアルミナ粒子が含まれないことを意味する、塗膜形成組成物の製造方法。
【請求項6】
球状アルミナ粒子の原料となる原料アルミナ粒子、ノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤から選択される少なくとも一種を含む分散剤並びに溶剤を含む液を、平均粒子径0.10mm未満のビーズとともに分散処理を行って、前記球状アルミナ粒子が、平均粒子径が1~10μmの球形のアルミナ粒子により実質的に構成されるように、原料アルミナ粒子を分散する球状アルミナ粒子分散体調製工程、
該球状アルミナ粒子分散体調製工程で得られた球状アルミナ粒子分散体に塗膜形成成分を添加して混合する塗膜形成組成物調製工程、
該塗膜形成組成物調製工程で得られた塗膜形成組成物を基材表面に塗布して塗膜を形成し、硬化させ硬化膜を形成する硬化膜形成工程、
を含
み、
前記球状アルミナ粒子の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置により測定され、
前記球形のアルミナ粒子とは、前記分散処理の結果、欠損した形状の不定形の形状のアルミナ粒子が含まれないことを意味する、硬化膜の製造方法。
【請求項7】
前記硬化膜は視野角改善光学フィルム用である、請求項6記載の硬化膜の製造方法。
【請求項8】
平均粒子径が1~10μmの球形のアルミナ粒子により実質的に構成される球状アルミナ粒子、ノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤から選択される少なくとも一種を含む分散剤並びに溶剤を含
み、
前記球状アルミナ粒子の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置により測定され、
前記球形のアルミナ粒子とは、欠損した形状の不定形の形状のアルミナ粒子が含まれないことを意味する、視野角改善光学フィルム用球状アルミナ粒子分散体。
【請求項9】
前記分散剤が、ノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤を含む請求項8記載の視野角改善光学フィルム用球状アルミナ粒子分散体。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の視野角改善光学フィルム用球状アルミナ粒子分散体及び塗膜形成成分を含む、視野角改善光学フィルム用塗膜形成組成物。
【請求項11】
アルコール類を含む請求項10記載の視野角改善光学フィルム用塗膜形成組成物。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の視野角改善光学フィルム用塗膜形成組成物の硬化膜である視野角改善光学フィルム。
【請求項13】
波長900nmと波長350nmにおける白色光の透過率の比(900nm/350nm)が3.10未満であり、
硬化膜の表面に対する入射角が0°における白色光の透過光強度が2900以上、かつ、前記入射角が5°における白色光の透過光強度が430以上である、
請求項12記載の視野角改善光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状アルミナ粒子分散体の製造方法、並びに、視野角改善光学フィルム用球状アルミナ粒子分散体、視野角改善光学フィルム用塗膜形成樹脂組成物及び視野角改善光学フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、テレビ、携帯端末の表示装置等として近年広く用いられている。しかし、液晶表示装置は、斜め方向から見た場合、階調反転、色ズレ、コントラスト比の低下が発生することが知られている。この改善策として、(1)液晶表示装置の液晶パネルと偏光板の間に位相差フィルムを配置する方法、(2)液晶パネルの表面に光散乱層を配置する方法が知られている(例えば、特許文献1)。このうち(2)の方法は、(1)の方法に比べて視野角特性を改善する効果に優れるとされている。しかし、(2)の方法によっても視野角特性を十分に改善するには至っていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、液晶パネルの表面に設けられる光散乱層の視野角特性を改善することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前述の(2)の方法のように、液晶パネルの表面に配置される光散乱層の視野角特性を改善することを検討した。光散乱層は一般に、バックライトからの光を透過可能なポリマー中にその光を散乱させる光散乱剤等を分散させたフィルムにより構成される。そのため、視野角特性を向上即ち視野角を広くするには、バックライトからの光の透過性を確保するとともに、その光を光散乱剤により従来よりも良好に散乱させることで視野角を向上させることを着想した。そして、鋭意検討を行ったところ、その実現のためには、光散乱剤の粒子径を小さくして均一に分散させることが有効であることを着想したが、光散乱剤となる微粒子を分散する際に、不定形の微粒子が多く存在すると、光散乱層でレイリー散乱が生じて特定の波長(特に、波長900nm)の光が強調されることが分かった。
【0006】
さらに検討を行ったところ、光散乱剤となる特定の粒子を分散する際に、所定の大きさのビーズを用いて分散処理を行うことで、不定形の微粒子の生成を抑制性し、球形の微粒子により実質的に構成することが可能で、その結果、光散乱層でレイリー散乱が生じることを抑制可能であることを見出した。また、特定の分散剤を用いることで、光散乱剤である特定の微粒子の凝集を抑制することが可能で、その結果として、光散乱層で光散乱剤の均一な分散を確保可能であることを見出した。つまり、光散乱剤である微粒子を実質的に球状とし、かつ、この球形の微粒子の光散乱層での分散性を確保することで、レイリー散乱を抑制すると同時に光散乱効果を従来よりも向上させ、視野角特性の改善された光散乱層を形成することが可能であることを見出した。
【0007】
本発明の第一は、球状アルミナ粒子、分散剤及び溶剤を含む球状アルミナ粒子分散体の製造方法であって、前記球状アルミナ粒子の原料となる原料アルミナ粒子、ノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤から選択される少なくとも一種を含む分散剤並びに溶剤を含む液を、平均粒子径0.10mm未満のビーズとともに分散処理を行って、前記球状アルミナ粒子が、平均粒子径が1~10μmの球形のアルミナ粒子により実質的に構成されるように、原料アルミナ粒子を分散する工程を含む、球状アルミナ粒子分散体の製造方法に関する。
【0008】
本発明の実施形態では、前記分散剤がノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤を含むものであってもよい。また、前記カチオン型分散剤が、アミン型高分子分散剤であってもよい。
【0009】
本発明の実施形態では、前記原料アルミナ粒子の平均粒子径が1~10μmであってもよい。
【0010】
本発明の第二は、球状アルミナ粒子の原料となる原料アルミナ粒子、ノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤から選択される少なくとも一種を含む分散剤並びに溶剤を含む液を、平均粒子径0.10mm未満のビーズとともに分散処理を行って、前記球状アルミナ粒子が、平均粒子径が1~10μmの球形のアルミナ粒子により実質的に構成されるように、原料アルミナ粒子を分散する球状アルミナ粒子分散体調製工程、該球状アルミナ粒子分散体調製工程で得られた球状アルミナ粒子分散体に塗膜形成成分を添加して撹拌処理する塗膜形成組成物調製工程、を含む塗膜形成組成物の製造方法に関する。
【0011】
本発明の第三は、球状アルミナ粒子の原料となる原料アルミナ粒子、ノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤から選択される少なくとも一種を含む分散剤並びに溶剤を含む液を、平均粒子径0.10mm未満のビーズとともに分散処理を行って、前記球状アルミナ粒子が、平均粒子径が1~10μmの球形のアルミナ粒子により実質的に構成されるように、原料アルミナ粒子を分散する球状アルミナ粒子分散体調製工程、該球状アルミナ粒子分散体調製工程で得られた球状アルミナ粒子分散体に塗膜形成成分を添加して混合する塗膜形成組成物調製工程、該塗膜形成組成物調製工程で得られた塗膜形成組成物を基材表面に塗布して塗膜を形成し、硬化させ硬化膜を形成する硬化膜形成工程、を含む硬化膜の製造方法に関する。
【0012】
本発明の実施形態では、前記硬化膜は視野角改善光学フィルム用であってもよい。
【0013】
本発明の第四は、平均粒子径が1~10μmの球形のアルミナ粒子により実質的に構成される球状アルミナ粒子、ノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤から選択される少なくとも一種を含む分散剤並びに溶剤を含む視野角改善光学フィルム用球状アルミナ粒子分散体に関する。本発明の実施形態では、前記分散剤がノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤を含むものであってもよい。
【0014】
本発明の第五は、前記視野角改善光学フィルム用球状アルミナ粒子分散体及び塗膜形成成分を含む、視野角改善光学フィルム用塗膜形成組成物に関する。本発明の実施形態では、アルコール類を含んでいてもよい。
【0015】
本発明の第六は、前記視野角改善光学フィルム用塗膜形成組成物の硬化膜である視野角改善光学フィルムに関する。
【0016】
本発明の実施形態に係る視野角改善光学フィルムは、波長900nmと波長350nmにおける白色光の透過率の比(900nm/350nm)が3.10未満であり、
硬化膜の表面に対する入射角が0°における白色光の透過光強度が2900以上、かつ、前記入射角が5°における白色光の透過光強度が430以上であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、液晶パネルの表面に設けられる光散乱層の視野角特性を改善する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1において得られたアルミナ粒子分散体に含まれるアルミナ粒子の電子顕微鏡の撮像を示した図である。
【
図2】比較例1において得られたアルミナ粒子分散体に含まれるアルミナ粒子の電子顕微鏡の撮像を示した図である。
【
図3】比較例2において得られたアルミナ粒子分散体に含まれるアルミナ粒子の電子顕微鏡の撮像を示した図である。
【
図4】比較例3において得られたアルミナ粒子分散体に含まれるアルミナ粒子の電子顕微鏡の撮像を示した図である。
【
図5】比較例4において得られたアルミナ粒子分散体に含まれるアルミナ粒子の電子顕微鏡の撮像を示した図である。
【
図6】実施例1及び比較例1~4の硬化膜の白色光の透過光のスペクトルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る球状アルミナ粒子分散体の製造方法は、球状アルミナ粒子、分散剤及び溶剤を含む球状アルミナ粒子分散体を製造する方法である。この製造方法は、前記球状アルミナ粒子の原料となる原料アルミナ粒子、ノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤から選択される少なくとも一種を含む分散剤並びに溶剤を含む液(以下、「原料液」と称する。)を、平均粒子径0.10mm未満のビーズとともに分散処理を行って、前記球状アルミナ粒子が、平均粒子径が1~10μmの球形のアルミナ粒子により実質的に構成されるように、原料アルミナ粒子を分散する工程を含む。
【0020】
原料アルミナ粒子は、特に限定はなく、従来公知のアルミナ粒子を使用可能であり、市販のものを使用可能である。アルミナ粒子は、アルミナを主成分とするものであればよく、他の成分が含まれていてもよい。また、表面処理がされたものであってもよい。原料アルミナの形状は特に限定はないが、球状アルミナ粒子の製造の効率の観点から、球状アルミナ粒子であるのが好ましい。原料アルミナ粒子としての球状アルミナ粒子の平均粒子径は、1~10μmが好ましい。
【0021】
原料アルミナ粒子の含量は、原料液全量中、25.0~70.0重量%が好ましく、25.0~65.0がより好ましい。
【0022】
分散剤は、ノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤から選択される少なくとも一種を含む分散剤であればよく、例えば、有効成分としてノニオン型分散剤のみを含むもの、有効成分としてカチオン型分散剤のみを含むもの、有効成分としてノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤を含むものが挙げられる。このうち、有効成分としてノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤を含むもの、即ち、ノニオン型分散剤及びカチオン型分散剤を用いるのが好ましい。特に、この2種の分散剤を用いる場合、得られる球状アルミナ粒子を、分散体及び塗膜形成組成物中でより均一に分散させることができる傾向にある。その理由は必ずしも明らかではないが、(a)ノニオン型分散剤はアルミナ粒子への吸着力が弱い、(b)カチオン型分散剤は、アルミナ粒子への吸着力が過剰に強い、(c)両者を併用する場合、アルミナ粒子に吸着したカチオン型分散剤同士の間にノニオン型分散剤が入り込んだと考えられる、との観点から、アルミナ粒子の凝集をより効果的に抑制したものと推測される。
【0023】
ノニオン型分散剤としては、特に限定はなく、公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物等が挙げられる。ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物としては、例えば、アルキルポリオキシエチレンエーテル、アルキルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンエーテル、アルキルポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンエーテル(ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー)、脂肪酸ポリオキシエチレンエステル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビトールエステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油(硬化ひまし油)、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。アルキルポリオキシエチレンエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンエステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
【0024】
カチオン型分散剤としては、特に限定はなく、公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩、アシルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アミド結合又はエステル結合又はエーテル結合を有するアンモニウム塩、イミダゾリン、イミダゾリウム塩、アミン誘導体等が挙げられる。カチオン型分散剤は低分子化合物でも高分子化合物でもよいが、アルミナ粒子の分散性の観点からは、高分子化合物が好ましい。このような高分子系分散剤としては、例えば、ポリエチレンイミン、アミノアルキル(メタ)アクリレート共重合体、ポリビニルイミダゾリン、ポリビニルピリジン誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が挙げられる。ポリビニルピリジン誘導体としては、ビニルピリジンと(メタ)アクリル酸との共重合体、ビニルピリジンと(メタ)アクリル酸とオキシエチレン基含有高分子化合物との共重合体等が挙げられる。ビニルピリジンと(メタ)アクリル酸とオキシエチレン基含有高分子化合物との共重合体としては、例えば、ビニルピリジンと(メタ)アクリル酸の共重合体とポリオキシエチレンとの共重合体等が挙げられる。このうち、アルミナ粒子の分散性の観点からは、アミン型高分子分散剤が好ましい。
【0025】
ノニオン型分散剤とカチオン型分散剤の組み合わせは、他の成分との関係等を考慮して選択することができるが、いずれも高分子系の分散剤が好ましく、両者の高分子化合物を構成するブロックが共通する構成単位を含むのがより好ましい。例えば、両分散剤が、ポリオキシエチレン鎖を有するのがさらに好ましい。
【0026】
ノニオン型分散剤とカチオン型分散剤の含量は、特に限定はなく、他の成分との関係等を考慮して選択することができる。ノニオン型分散剤は、原料液全量中、0.75~6.0重量%(固形分(不揮発分)基準)が好ましい。カチオン型分散剤は、原料液全量中、0.7~5.0重量%(固形分(不揮発分)基準)が好ましい。両者の混合比も、特に限定はなく、両分散剤の特性及び他の成分との関係等を考慮して選択することができる。アルミナ粒子の分散性の観点からは、両成分の配合比は、ノニオン型を多く含むほうが好ましい。
【0027】
溶剤は、後述する塗膜形成成分の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族系炭化水素、脂肪族系炭化水素、ケトン系、エステル系、グリコールエーテル系、アルコール系等の各種の有機溶剤、水等が挙げられる。このうち、環境対応の観点からは、水が特に好ましい。
【0028】
溶剤の含量(添加量)は、原料液全量中、20~40重量%が好ましい。
【0029】
原料液には、必要に応じて、他の成分を含むことができる。このような添加剤としては、例えば、消泡剤等が挙げられる。
【0030】
消泡剤は、分散処理時に発泡する場合に、抑泡、破泡を目的に用いることができる。このような消泡剤としては、例えば、シリコーン系、界面活性剤系、鉱物油系等が挙げられる。シリコーン系消泡剤の形態も特に限定はなく、例えば、(a)シリコーンオイル及びシリカ微粒子を例えばノニオン界面活性剤で乳化したO/W型エマルジョンタイプ、(b)シリコーンオイルで構成されるオイルタイプ、(c)シリコーンオイルを炭化水素系溶剤に溶解した溶液タイプ、(d)破泡性ポリシロキサン、疎水性粒子及びポリグリコールの混合物等が挙げられる。消泡剤の含量は、特に限定はないが、例えば、球状アルミナ粒子100重量部に対し、0.001~0.1重量部(固形分(不揮発分)基準)とすることができる。
【0031】
分散処理に用いるビーズの平均粒子径は0.10mm未満である。アルミナ粒子の形状を球状に維持しながら分散する、即ち、レイリー散乱を防止する観点からは、0.08mm以下が好ましく、0.06mm以下がより好ましく、0.05mm以下がさらに好ましい。アルミナ粒子を破砕せず、レイリー散乱を生じさせない観点からは、0.05mm以下が好ましい。
【0032】
ビーズの材質は、特に限定はなく、公知のものを用いることができる。例えば、ジルコニア、アルミナ、ジルコン、ガラス等が挙げられる。ビーズの投入量はバッチ式の場合にはミル内のミルベース容積に対してビーズが好ましくは40~80体積%、より好ましくは50~70体積%となるよう調整する。循環式の場合はミル容量に対して好ましくは40~80体積%、より好ましくは50~70体積%となるよう調整する。
【0033】
実施形態に係る球状アルミナ粒子分散体の製造方法では、前述の各成分を混合して原料液を調製し、この原料液中に前述のビーズを存在させて、分散処理を行う。分散処理は、ビーズミル、マスコロイダー、ボールミル、サンドミル等で行うことができる。分散処理の条件は特に限定はなく、例えば、サンドミルの場合は、25~40℃で、1500rpm~2000rpmで1~2時間行うとよい。
【0034】
分散処理後、必要に応じてビーズを除去する。ビーズは濾過等により除去することができる。また、必要に応じて、ビーズを除去する前又は後に前述の溶剤を添加することもできる。添加する溶剤は、特に限定はないが、分散処理時に用いた溶剤と同じものを用いるのが好ましい。また、溶剤を添加する場合の添加量は、適宜決定できるが、例えば、固形分の含量が、30~60重量%となるように添加することができる。このようにして、球状アルミナ粒子分散体を得ることができる。
【0035】
以上のようにして得られる球状アルミナ粒子分散体中には、原料アルミナ粒子が破壊され不定形の形状のアルミナ粒子が生成されることが抑制され、球形の粒子で実質的に構成される球状アルミナ粒子が存在するため、後述する塗膜において不定形のアルミナ粒子に起因するレイリー散乱が抑制される。また、前述の分散剤、特に所定の2種の分散剤を用いることで、所定範囲の平均粒子径の球形の粒子で実質的に構成される球状アルミナ粒子を塗膜中で均一に分散させることが可能なため、球状アルミナ粒子による光の散乱効果が良好で、視野角を大きくする効果を付与可能である。したがって、このような球状アルミナ粒子分散体は、例えば、視野角改善光学フィルム用として好適である。そして、このような球状アルミナ粒子分散体は、後述するように、これを用いて硬化膜を形成した場合に、レイリー散乱が抑制され、例えば、波長900nmと波長350nmにおける白色光の透過率の比(900nm/350nm)が3.10未満となる。
【0036】
球状アルミナ粒子の平均粒子径は、視野角改善の観点から1~10μmである。好ましくは、1~4μmである。平均粒子径は、例えば、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LA-950型など)により測定することができる。前述のように、分散体中に含まれる球状アルミナ粒子は、平均粒子径が所定範囲の球形のアルミナ粒子により実質的に構成される。ここで、「球形のアルミナ粒子」とは、真球である粒子に限ることを意図するものではなく、ビーズを用いた分散処理の結果、欠損した形状等の不定形の形状のアルミナ粒子が含まれないことを意味する。「実質的に」とは、このような不定形の形状のアルミナ粒子が全く含まれないことを意図するものではなく、後述するレイリー散乱を防止可能である程度に含まれることを許容するものである。
【0037】
次に、本発明の実施形態に係る塗膜形成組成物の製造方法について説明する。当該実施形態では、前述のようにして得られた球状アルミナ粒子分散体を用いて、塗膜形成組成物を製造する。つまり、前述の球状アルミナ粒子分散体の製造方法は、塗膜形成組成物の製造方法における球状アルミナ粒子分散体調製工程に対応することになる。そして、当該工程で得られた球状アルミナ粒子分散体に塗膜形成成分を添加して撹拌処理する塗膜形成組成物調製工程を行う。
【0038】
塗膜形成成分としては、透明な硬化膜を形成可能な樹脂等が挙げられる。このような樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース等のセルロースアセテート系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル-スチレン共重合体、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリノルボルネン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。また、耐摩耗性、耐熱性、基材との接着性の向上を目的として樹脂被膜の硬化度を高めるため、前述の各種樹脂に適合した硬化剤等を用いてもよい。
【0039】
塗膜形成成分の含有量は、球状アルミナ粒子分散体中の球状アルミナ粒子100重量部に対して、120~280重量部(固形分(不揮発分)基準)が好ましい。
【0040】
撹拌処理は、特に限定はなく、例えば、ディスパー、シェイカー等により行うことができる。撹拌温度、時間は、成分組成に応じて適宜決定することができる。
【0041】
撹拌処理の際に、必要に応じて、さらに溶剤を添加することができる。溶剤は球状アルミナ粒子分散体を調製する際に用いるものを採用することができる。添加する溶剤は、球状アルミナ粒子分散体に含まれる溶剤に応じて適宜選択することができるが、例えば、球状アルミナ粒子分散体にアルコール類、ケトン類が含まれない場合は、後述する塗膜や硬化膜の平滑性をより向上させる観点から、使用する溶媒より表面張力の低いものを添加すると良い。添加する溶剤は、アルコール類、エーテル類、ケトン類が好ましい。アルコール類としては、製膜性の観点からは、沸点が25~83℃のものが好ましい。このようなアルコール類としては、例えば、炭素数1~3の一価のアルコール、グリコール類等が挙げられるが、球状アルミナ粒子分散体に含まれる溶剤を溶解もしくは球状アルミナ粒子分散体に含まれる溶剤と相溶する必要がある。尚、例えば、球状アルミナ粒子分散体の調製の際に水を溶剤として用い、塗膜形成組成物を調製する場合に、前述のアルコール類を添加するのが好ましい。添加する溶剤の含有量は、塗膜形成組成物中に、0.1~5.0重量%が好ましい。
【0042】
このようにして得られる塗膜形成組成物は、前述のアルミナ粒子分散体を含むため、所定のアルミナ粒子と塗膜形成成分とが均一に分散しており、所定のアルミナ粒子が均一に分散した塗膜を形成可能である。そのため、当該塗膜形成組成物は、球状アルミナ粒子による光の散乱効果が良好で、硬化膜の視野角を大きくすることが可能である。アルコール類を含む場合は視野角をより大きくすることが可能である。したがって、当該塗膜形成組成物は、例えば、視野角改善光学フィルム用として好適である。
【0043】
次に、本発明の実施形態に係る硬化膜の製造方法について説明する。当該実施形態では、前述のようにして得られた塗膜形成組成物を用いて、硬化膜を製造する。つまり、硬化膜の製造法における、球状アルミナ粒子分散体調製工程及び塗膜形成組成物調製工程は、塗膜形成組成物の製造方法と共通する。そして、当該硬化膜の製造方法では、前述の塗膜形成組成物調製工程で得られた塗膜形成組成物を基材表面に塗布して塗膜を形成し、硬化させて硬化膜を形成する(硬化膜形成工程)。
【0044】
使用可能な基材としては、透明な基材であれば特に限定はない。基材を構成する材質としては、例えば、石英ガラス、ソーダガラス、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、酢酸セルロースブチレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアクリレート、シリコーン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド等が挙げられる。
【0045】
基材の形状は、特に限定はなく、例えばフィルム状等が挙げられる。基材がフィルム状である場合、その厚さは、例えば、10~3000μmとすることができる。光学部材としての光学フィルムを構成する場合は、例えば、10~300μmとすることができる。
【0046】
塗膜形成組成物を基材表面に塗布する方法としては、従来の方法を採用することができる。例えば、リバースロールコート法、ダイコート法、コンマコータ法、ダイコータ法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法等のコート法の他、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装、カチオン電着塗装、静電塗装等を採用できる。
【0047】
塗布時の膜厚は、乾燥状態で、1~500μmとなるように塗布するのが好ましく、1~200μmがより好ましい。光学フィルム用途の場合は、例えば、1~100μmとすることができる。
【0048】
硬化条件は、塗膜形成成分等に応じて適宜決定することができる。
【0049】
以上のようにして得られる硬化膜は、前述の塗膜形成組成物を用いて形成されているため、所定のアルミナ粒子が均一に分散した塗膜(硬化前)を形成可能である。そのため、得られる硬化膜も、所定のアルミナ粒子が均一に分散されている。したがって、硬化膜は、球状アルミナ粒子による光の散乱効果が良好で、視野角が大きく改善されたものである。そのため、当該硬化膜は、例えば、視野角改善光学フィルムとして好適である。また、塗膜形成組成物にアルコール類を含有させることで、得られる硬化膜の光散乱効果や視野角特性をより向上させることが可能であり、塗膜形成組成物は視野角改善光学フィルム用として、硬化膜は視野角改善光学フィルムとして、より好適である。尚、アルミナ粒子は放熱性に優れる特性を有するため、均一に分散されている所定のアルミナ粒子による放熱効果も期待できる。そのため、硬化膜は、放熱材料としても好適である。尚、アルミナ粒子は放熱性に優れる特性を有するため、均一に分散されている所定のアルミナ粒子による放熱効果も期待できる。そのため、硬化膜は、放熱材料としても好適である。
【0050】
また、当該硬化膜は、視野角改善光学フィルムとして適用される場合、レイリー散乱抑制の観点から、波長900nmと波長350nmにおける白色光の透過率の比(900nm/350nm)が3.10未満であるのが好ましく、3.00以下であるのがより好ましく、2.50以下であるのがさらに好ましく、2.00以下であるのが特に好ましい。また、これに加えて、視野角の観点から、硬化膜の表面に対する入射角が0°における白色光の透過光強度が2900以上、かつ、前記入射角が5°における白色光の透過光強度が430以上であるのが好ましく、550以上であるのがより好ましい。これらの白色光の透過率及び透過光強度は、例えば、後述の方法で測定することができる。また、例えばアルコール類を含む塗膜形成組成物を用いて得られる硬化膜は、前記入射角が0°における白色光の透過光強度と、入射角が5°又は-5°における白色光の透過光強度との比が、アルコール類を含まない場合の硬化膜に比べて、何れも1に近くすることができる、即ち、視野角特性をより向上させることができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0052】
(実施例1、比較例1~4)
<アルミナ粒子分散体の製造(アルミナ粒子分散体調製工程)>
原料アルミナ粒子(デンカ株式会社製、DAW-0105、球形状、平均粒子径:2μm):120.00g(固形分)、ノニオン型分散剤(ビックケミー社製、DISPERBYK-193、ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物、固形分40.3%):23.16g、カチオン型分散剤(BASF社製、Efka PX4701、ポリオキシエチレン鎖を有するアクリル-ビニルピリジン共重合体、固形分100%):5.07g、シリコーン系消泡剤(ビックケミー社製、BYK-024、固形分100%):0.10g、溶剤(純水):51.67gを混合し、予備分散して原料液を調製した。原料液に、表1に示す平均粒子径を有するジルコニアビーズを366.66g(ミルのミルベース容積に対して60体積%)添加して、周速4.24m/sのバッチ式サンドミルにより25℃、80分間分散処理を行った。その後、純水を40.00g添加した後濾過を行って、ジルコニアビーズを除去し、アルミナ粒子分散体を得た。尚、表1中の「硬化膜の成分組成」において、アクリル系樹脂以外の成分は、アルミナ粒子分散体の固形分においても同じ組成比である。
【0053】
<塗膜形成組成物の製造(塗膜形成組成物調製工程)>
得られたアルミナ粒子分散体30.00gと、塗膜形成成分(日信化学工業株式会社製、ビニブラン(登録商標)717L、アクリル系樹脂、固形分23.3%)104.47gとを混合し、固形分濃度が30重量%となるように純水を添加し、撹拌し、塗膜形成組成物を得た。
【0054】
<硬化膜の製造(硬化膜形成工程)>
得られた塗膜形成組成物を、バーコーターを用いて、ウェット膜厚が37.5μmとなるようにポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャイン(登録商標)A4100)に塗布し、60℃で15分間乾燥させ硬化膜を形成した。得られた硬化膜を用いて、後述する評価を行った。
【0055】
(評価)
<アルミナ粒子の平均粒子径の測定>
得られたアルミナ粒子分散体中のアルミナ粒子の平均粒子径を、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LA-950型)を用いて測定を行った。
【0056】
<アルミナ粒子の外観観察>
得られたアルミナ粒子分散体0.2g及び蒸留水1.0gをアルミ製容器に添加して撹拌後、130℃で16時間加熱して乾燥し、観察用試料を得た。得られた観察資料を、電子顕微鏡(Thermoscinetific社製、Phenom ProX)により観察した。測定条件は、倍率が5000倍、測定モードが加速電圧15kV/マッピングモードとした。撮像を
図1~5に示す。
【0057】
<レイリー散乱評価(白色光の透過率)>
得られた硬化膜を用いて、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製、V-670 UV/Vis/NIR Spectrophotometer)により、透過光のスペクトルを測定し、波長900nmと波長350nmにおける白色光の透過率の比(900nm/350nm)を算出した。この比が3.10未満のものは、レイリー散乱が抑制されていると評価した。評価結果を表1に示す。また、透過光のスペクトルを
図6に示す。
【0058】
【0059】
(実施例2、3、比較例5)
原料液の分散に用いるジルコニアビーズを実施例1と同じものを用い、使用する分散剤の種類及び含有量を表2とした以外は、実施例1と同様にして、球状アルミナ粒子分散体、塗膜形成組成物、硬化膜を作製した。得られた硬化膜を用い、視野角の評価を行った。尚、実施例2、3において得られたアルミナ粒子分散体中のアルミナ粒子の平均粒子径及び外管は、実施例1と同等であることを確認した。また実施例2、3で得られた硬化膜を用いて行った前述のレイリー散乱評価結果は、所定の比が3.10未満であることを確認した。表2中の「硬化膜の成分組成」において、アクリル系樹脂以外の成分は、アルミナ粒子分散体の固形分においても同じ組成比である。また、アニオン型分散剤は、サンノプコ株式会社製、SNディスパーサント5468(固形分41%)を用いた。
【0060】
<視野角評価>
株式会社ジェネシア製、GENESIA Gonioを用いて、実施例1、比較例5~7において得られた硬化膜の表面に対する入射角が0°における白色光の透過光強度、及び、前記入射角が5°における白色光の透過光強度を測定した。評価基準は、硬化膜の表面に対する入射角が0°における白色光の透過光強度が2900以上、かつ、前記入射角が5°における白色光の透過光強度が430以上であるものを良好な視野角が得られているもの、550以上であるものをより良好な視野角が得られているものと評価した。尚、入射角5°の値は、入射角が±5°における透過光強度のうち小さい値が、所定の値以上であることを要することとした。
【0061】
株式会社ジェネシア製、GENESIA Gonioの製品構成及び条件は下記のとおりである。
1.測定機
GENESIA Gonio / Far Field Profiler
1-2.光源
白色光源:日亜化学工業社製、白色LED(型番 NSPW300BS)
1-3.検出器
検出器:浜松ホトニクス社製、Siフォトダイオード(型番 S2386-5K)
1-4.測定条件
透過散乱測定
【0062】
【0063】
表1に示すように、アルミナ粒子分散体を調整する際に用いるビーズの平均粒子径が0.10mm未満の場合は、波長900nmと波長350nmにおける白色光の透過率の比(900nm/350nm)が3.10未満となり、レイリー散乱が抑制されていることが分かる。この点は、
図6(波長350mmから900mmまでのスペクトル)からも理解できる。
図6に示すように、比較例1~4では、不定形のアルミナ粒子(破砕物)によるレイリー散乱で、長波長における透過率の増加及び短波長での透過率の低下がみられるが、実施例1では、比較例よりこれらが抑制されいてることが分かる。また、
図2の比較例1では白線で囲んだ部分にみられるように、
図3~5の比較例2~4では明らかに、不定形のアルミナ粒子が存在しているのに対して、
図1の実施例1では、不定形のアルミナ粒子がほぼ観察されず、球状アルミナ粒子が、球形のアルミナ粒子により実質的に構成されていることが分かる。さらに、表2に示すように、所定のビーズを用いるとともに、特定の分散剤を用いて調製した球状アルミナ粒子分散体を用いることで、得られる硬化膜は、入射角が0°でも、±5°でも、白色光の透過光強度が所定値以上であり、視野角が向上していることが分かる。
【0064】
(実施例4)
<球状アルミナ粒子分散体の製造(球状アルミナ粒子分散体調製工程)>
実施例1と同様にして球状アルミナ粒子分散体を得た。
【0065】
<塗膜形成組成物の製造(塗膜形成組成物調製工程)>
得られた球状アルミナ粒子分散体30.00g、塗膜形成成分(日信化学工業株式会社製、ビニブラン(登録商標)717L、アクリル系樹脂、固形分23.3%)104.47g、アルコール類(サガネ物産社製、イソプロピルアルコール(IPA))1.39gを混合し、固形分濃度が29.70重量%となるように純水を添加し、撹拌し、塗膜形成組成物を得た。
【0066】
<硬化膜の製造(硬化膜形成工程)>
実施例1と同様にして、硬化膜を形成した。得られた硬化膜を用いて、前述の視野角評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0067】
(実施例5)
塗膜形成組成物の製造(塗膜形成組成物調製工程)において、アルコール類として、IPAに替えてメタノール(MeOH)(富士フィルム和光純薬社製)を用いた以外は、実施例4と同様にして硬化膜を得た。評価結果を表3に示す。
【0068】
(実施例6)
塗膜形成組成物の製造(塗膜形成組成物調製工程)において、アルコール類として、IPAに替えてエタノール(EtOH)(富士フィルム和光純薬社製)を用いた以外は、実施例4と同様にして硬化膜を得た。評価結果を表3に示す。
【0069】
【0070】
表3に示すように、塗膜形成組成物の調製時にアルコール類を添加することにより、添加しない場合(実施例1)と比較して、各値が大きくなり光散乱性がより向上し、且つ、0°と+5°又は-5°との比が1に近づいており、視野角特性がより向上していることが分かる。つまり、アルコール類により、硬化膜の光散乱フィルムとしての機能が向上していることが分かる。これは、アルコール類により塗膜の平滑性が向上し、その結果として硬化膜の表面の平滑性が向上したことによると推測される。