(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】音響カップリング材及び音響カップリング材の装着方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20250318BHJP
【FI】
A61B8/00
(21)【出願番号】P 2020160767
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2019177475
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591038325
【氏名又は名称】株式会社デントロケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 靖志
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-111330(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0199027(US,A1)
【文献】特開平04-109937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部分に超音波振動子を含み、超音波を送受信するセンサ面を有する略直方体形状のセンサ部と、前記センサ部の長手方向の一方端に接続され、前記センサ部の長手方向と交差する方向に延びるハンドル部とを有する口腔内検査用のプローブに取り付け可能なゲル状の音響カップリング材であって、
寒天またはアガロースを含有する天然高分子材料からなり、
前記センサ部を収容可能な中空部と、
前記中空部に前記センサ部を挿入するための開口部と、
前記中空部に前記センサ部が収容された状態で前記音響カップリング材を前記センサ部に係止する係止部とを有し、
前記音響カップリング材は、1つの面の一部に前記開口部が設けられた略直方体形状を有しており、
前記開口部は、前記センサ部の前記センサ面と対向する面に対応する上壁部の一部に設けられ、前記中空部と連通しており
、前記プローブの前記センサ部の前記センサ面より面積が小さくなるように形成され、
前記係止部は、前記音響カップリング材の前記上壁部のうち、前記開口部と隣接し、かつ、前記中空部の周壁を構成している一部により構成されていることを特徴とする、音響カップリング材。
【請求項2】
全ての角部が曲面状に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の音響カップリング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内を超音波検査する際に、口腔内検査に用いるプローブと被検査部位との間に介在させる音響カップリング材及び音響カップリング材の装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科や口腔外科の分野において、舌癌の診断や、骨移植やインプラント術前・術後の確認などで、X線検査と併用して超音波検査が行われる場合がある。口腔内には歯牙や歯茎部など硬組織で形成される凹凸が多数存在しているため、プローブを被検査部位に直接密着させることは困難である。また、口腔内は常に唾液により湿潤しているので、クッション性が無く唾液で流れやすいジェルは不向きであり、高分子ゲルからなるクッション性を持つシート状の音響カップリング材の使用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-176197号公報
【文献】特開2013-123605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
口腔内の超音波検査にシート状の音響カップリング材を使用する場合、例えば短冊状に成型した音響カップリング材をプローブのセンサ面に重ね合わせ、ラップフィルム等を用いて音響カップリング材をプローブのセンサ面に密着させる必要がある。したがって、従来、シート状の音響カップリング材をプローブに装着する作業に手間と熟練を要するという問題があった。
【0005】
それ故に、本発明は、口腔内検査に用いるプローブに容易に装着可能な音響カップリング材及び音響カップリング材剤の装着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様に係る音響カップリング材は、先端部分に超音波振動子を含むセンサ部が設けられた、口腔内検査に用いるプローブに取り付け可能なゲル状の音響カップリング材であって、ゲル状の高分子材料からなり、センサ部を収容可能な中空部と、中空部にセンサ部を挿入するための開口部とを有することを特徴とするものである。
【0007】
本発明の一実施態様に係る音響カップリング材の装着方法は、先端部分に超音波振動子を含むセンサ部が設けられ、センサ部がセンサ面と、センサ面に接続される周壁面とを有する口腔内検査用プローブに、ゲル状の音響カップリング材を装着する方法ものであって、センサ部のセンサ面と、センサ面に隣接する周壁面の一部と、周壁面の一部と対向する周壁面の他の一部とを覆うように音響カップリング材を配置し、音響カップリング材のうち、周壁面の一部及び他の一部を覆う部分と、音響カップリング材で覆われていない周壁面の残りの部分とを取り囲むように伸縮性のバンドを取り付けて、音響カップリング材をセンサ部に固定するものである。
【0008】
また、本発明の他の実施態様に係る音響カップリング材の装着方法は、先端部分に超音波振動子を含むセンサ部が設けられた口腔内検査用プローブに、ゲル状の音響カップリング材を装着する方法であって、平板部と、平板部の一方面から突出する突出部とを有する音響カップリング材を、平板部の他方面がセンサ部のセンサ面に接触し、かつ、突出部がセンサ面と重なるように、音響カップリング材をセンサ面上に配置し、音響カップリング材の平板部の外周縁に沿う部分の全周をセンサ面側に押圧するように伸縮性のバンドを取り付けて、音響カップリング材をセンサ部に固定するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、口腔内検査に用いるプローブに容易に装着可能な音響カップリング材及び音響カップリング材剤の装着方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】口腔内検査に用いるプローブの一例及び第1の実施形態に係る音響カップリング材の斜視図
【
図2】
図1に示したプローブの側面図、並びに、
図1に示した音響カップリング材の側面図及び平面図
【
図3】第1の実施形態に係る音響カップリング材の装着方法を説明するための図
【
図4】第2の実施形態に係る音響カップリング材の装着方法を説明するための図
【
図5】第3の実施形態に係る音響カップリング材の装着方法を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、口腔内検査に用いるプローブの一例及び第1の実施形態に係る音響カップリング材の斜視図であり、
図2は、
図1に示したプローブの側面図、並びに、
図1に示した音響カップリング材の側面図及び平面図である。
【0012】
実施形態に係る音響カップリング材1は、口腔内検査に用いるプローブ2に取り付け可能なゲル状の部材である。
図1及び
図2(a)に示すプローブ2は、一例として、先端部分のセンサ部3と、センサ部3に接続されるハンドル部4とを備える。
図1及び
図2(a)に示すプローブ2は、ホッケー型あるいはホッケースティック型プローブと呼ばれる場合もある。センサ部3は、略直方体形状を有しており、圧電素子(超音波振動子)や音響レンズ、音響整合層等から構成されるセンサを内部に備えている。センサ部3は、超音波検査時に被験者の口腔内に挿入される部分であり、センサ面5から超音波を送信または受信する。ハンドル部4は、センサ部3の長手方向の一方端に接続されており、センサ部3の長手方向と交差する方向に延びる。ハンドル部4は、超音波検査時に使用者に把持される部分である。
【0013】
音響カップリング材1は、天然高分子材料と水とを主成分とするゲル状の部材であり、口腔内の超音波検査時に、口腔内の被検査部位とプローブ2のセンサ面5との間に介在させることにより、被検査部位に対するプローブ2の密着性を向上させる。
【0014】
図1、
図2(b)及び(c)に示すように、音響カップリング材1は、全体として略直方体形状を有する。音響カップリング材1には、センサ部3を収容可能な中空部11と、中空部11にセンサ部3を挿入するための開口部12とが設けられる。中空部11は、センサ部3の外形と略同一形状を有する空間である。音響カップリング材1は、弾力を有するので、中空部11をセンサ部3の外形より小さく構成しても良い。開口部12は、音響カップリング材1の上壁部13の一部に設けられており、中空部11と連通している。平面視した状態(
図2(c)の状態)において、開口部12は、センサ部3のセンサ面5より面積が小さくなるように形成されている。音響カップリング材1の上壁部13のうち、開口部12と隣接し、かつ、中空部11の周壁を構成している一部は、プローブ2のセンサ部3を中空部11に収容した状態において、音響カップリング材1をセンサ部3に係止する係止部として機能するが、この点については後述する。
【0015】
また、本実施形態に係る音響カップリング材1では、全ての角部(外面及び中空部11の頂点部分及び辺部分)が曲面状に形成されている。音響カップリング材1をプローブに装着した場合、センサ面5から出射された超音波及び被検査部位からの超音波エコーは、音響カップリング材1内を全方向に伝搬可能となるので、音響カップリング材1の外面の各面から超音波を送受信可能となる。本実施形態に係る音響カップリング材1のように、全ての角部を曲面状に形成しておけば、音響カップリング材1の外面の隣接する面を連続した面として使用することができる。したがって、口腔内検査時に被検査部位に接触させる音響カップリング材1の部位に制約がなくなるため、被検査部位の位置や形状等にかかわらず、検査がしやすくなるという利点がある。
【0016】
ここで、音響カップリング材1の材料について説明する。
【0017】
従来の高分子音響カップリング材では、高分子材料として、ウレタン系樹脂等の合成樹脂が使用されたり、強度や耐久性を向上させるためにポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の材料を複数組み合わせて使用されたりしていたため、表面反射が強く出てしまい粘膜上皮層がアーチファクトによりマスクされてしまうという問題があった。また、口腔内の超音波検査では、歯や歯茎部等の硬い組織で構成される凹凸にプローブのセンサ面を密着させるため、カップリング材には弾力があることが求められる。
【0018】
本願発明者が種々検討したところ、高分子材料として天然の寒天またはアガロースを用いて作成した音響カップリング材1であれば、生体に近い水分を保持するので反射ノイズが低減され、被検査部位が粘膜上皮層等の表層部分であっても、鮮明な画像を得られることを見出した。寒天としては、精製処理された夾雑物の少ない、高純度のものを利用することが好ましく、純度の高い高純度寒天を用いることがより好ましい。また、高分子材料として、高純度寒天を更に精製したアガロースを使用することが更に好ましい。
【0019】
寒天は、テングサやオゴノリ等の紅藻類の粘液質を抽出し乾燥させたものであり、アガロースやアミロペクチン等の多糖類から構成される。アガロースは、寒天のゲル化に寄与する主成分である。テングサから製造された寒天は、透明度が高く、硬度の高いゲルを形成でき、オゴノリから製造された寒天は、多少の褐変が見られるものの、高粘度で高弾力性のゲルを形成することができるという特徴がある。ただし、オゴノリと比べてテングサの収穫量は少ないため、オゴノリ系の寒天よりもテングサ系の寒天の方が高価である。したがって、安価なオゴノリ系の寒天は食用に用いられ、高価なテングサ系の寒天は、培地や電気泳動のゲルに用いられることが多い。
【0020】
寒天の製造工程は、例えば、次の通りである。まず、収穫した海藻(紅藻類)を洗浄した後、海藻を煮沸抽出して粘液質を抽出する。次に、得られた粘液質溶液から不純物を濾過等により除去してから凝固させ、脱水及び乾燥処理を行い、乾燥物を粉砕して粉末化する。また、アガロースは、粉末化された寒天を更に純水で洗浄し、乾燥及び粉末化したものであり、寒天よりも純度(アガロース純度)を高めたものである。一般に、硫黄を含んだアガロペクチンの含有量が少ないほど高純度とされており、寒天を精製して、アガロペクチンを除去または含有量を極めて少なくしたものは、生化学分野では、寒天と区別して「アガロース」と呼ばれる。精製度の低い寒天の硫酸基の含有量が2~3%であるのに対して、アガロースの硫酸基の含有量は1%未満である。アガロースの硫酸基の含有量は、0.7%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがより好ましく、0.3%未満であることが更に好ましい。
【0021】
音響カップリング材1を構成する高分子材料として用いる寒天またはアガロースは、アガロース純度が高い(アガロペクチン含量が少ない)方が、より高い解像度のエコー画像が得られる。アガロースを用いた場合、寒天を用いた場合と比べて、エコー画像の解像度を向上させることができる。また、音響カップリング材1に用いるアガロースとして、テングサから製造した寒天を精製したアガロースを用いることがより好ましく、オゴノリから製造した寒天を精製したアガロースを用いた場合よりもエコー画像の解像度を向上させることができる。更に、寒天の製造工程における精製回数(濾過等による不純物除去の回数)や、寒天の粉末化後の洗浄回数を2回以上行うと、寒天を精製して得られるアガロースの純度を更に向上することができ、音響カップリング材1に用いた場合におけるエコー画像の解像度を向上させる点で更に好ましい。
【0022】
音響カップリング材1は、所定の濃度で水に寒天やアガロースを加熱溶解させたゾルを、型に注入し冷却してゲル化させることにより形成することができる。このとき、気泡の発生を抑制するために、シリコーン樹脂、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、植物油、キサンタンガム等で組成された消泡剤を添加することが望ましい。消泡剤の配合量は、ゾルの全質量の0.5~1.0%とすることが好ましい。ゾルに消泡剤を配合することにより、ゲル化した音響カップリング材1の内部に気泡由来の空間が発生することが低減され、超音波検査時にノイズの少ない精細な画像を取得することが可能となる。
【0023】
また、高分子材料として寒天やアガロースを用いた音響カップリング材は脆いため、高分子材料がホウ酸イオンで架橋されていることが好ましい。具体的には、出来上がった寒天かアガロースのゲルを少なくとも1時間以上ホウ酸ナトリウム溶液に浸漬することにより、高分子材料を架橋し、ゲル化した音響カップリング材の強度を向上させることができる。ホウ酸ナトリウムの配合量は、ゾルの全質量の0.1~1.0%とすることが好ましく、0.1~0.3%とすることがより好ましい。
【0024】
また、高分子材料を含有するゾルには、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類を配合することが好ましい。ゾルにグリコール類を配合することにより、音響カップリング材1の保水力が向上して弾力性が高くなるため、音響カップリング材1と被検査部位と密着性を高めることができる。グリコール類の配合量は、ゾルの全質量の3.0%~8.0%とすることが好ましい。上述したグリコール類の中でも、ジプロピレングリコールを配合することが音響カップリング材1の密着性を向上させる上で最も好ましい。
【0025】
図3は、第1の実施形態に係る音響カップリング材の装着方法を説明するための図である。
【0026】
音響カップリング材1をプローブ2に装着する前段階の作業として、まず、プローブ2のセンサ部3を、消毒用アルコールを含浸させた不織布等で清拭した後、市販の超音波プローブ用ジェルをセンサ部3に塗布する。この超音波用プローブ用ジェルの塗布は、センサ部3のセンサ面5と音響カップリング材1との間の隙間を埋め、エコー画像の不鮮明さを抑制するためのものである。センサ面5と音響カップリング材1との隙間を埋めることが目的であるので、必ずしもセンサ部3の全体にジェルを塗布する必要はなく、少なくともセンサ面5にジェルを塗布すれば良い。また、ジェルに替えて、センサ面5と音響カップリング材1との隙間を水で埋めても良い。
【0027】
次に、
図3(a)及び(b)に示すように、プローブ2のセンサ部3を、音響カップリング材1の上壁部13に設けられた開口部12に挿入する。
【0028】
そして、プローブ2のセンサ部3を音響カップリング材1の中空部11内へと更に押し込み、
図3(c)に示すように、センサ部3の全体を音響カップリング材1の中空部11に収容する。音響カップリング材1は、弾力のあるゲル状の高分子材料で形成されているので、センサ部3の挿入に伴って弾性変形することができ、比較的小さい開口部12からセンサ部3を中空部11に収容することができる。
図3(c)に示す状態において、センサ部3のセンサ面5が音響カップリング材1と密着した状態となる。超音波検査時には、プローブ2に装着した音響カップリング材1の底面14を被検査部位に押し当てることにより、プローブ2のセンサ面5と被検査部位とを密着状態に結合することができる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態に係る音響カップリング材1には、センサ部3を収容可能な中空部11と、中空部11にセンサ部3を挿入するための開口部12とが設けられており、開口部12からセンサ部3を挿入して中空部11内にセンサ部3を収容する操作により、プローブ2への音響カップリング材1の装着が完了する。したがって、短冊状のシート状カップリング材をラップフィルム等を用いてプローブに固定する場合と比べて、音響カップリング材1をプローブ2に装着する作業を容易に行うことが可能となる。
【0030】
また、音響カップリング材1は、弾力のあるゲル状の部材であるので、プローブ2のセンサ面5と被検査部位との間に介在することにより、プローブ2のセンサ面5を被検査部位に密着させることができる。口腔内には、歯や歯茎等の比較的硬い組織により形成される凹凸が多数存在するため、弾力のある音響カップリング材1はプローブ2のセンサ面5と被検査部位との密着性を確保するために特に有効である。また、音響カップリング材1は、寒天またはアガロースと水を主体材料として構成されるため、超音波の反射ノイズを低減し、検査部位の鮮明なエコー画像を得ることができる。
【0031】
また、本実施形態に係る音響カップリング材1では、プローブ2のセンサ部3を挿入するための開口部12がセンサ部3のセンサ面5より小さく形成されているため、センサ部3を中空部11に収容した状態において、開口部12に隣接する中空部11の周壁の一部(本実施形態では、開口部12に隣接する上壁部13の一部)が、音響カップリング材1をプローブ2のセンサ部3に係止する係止部として機能する。具体的には、
図3(c)に示す状態において、上壁部13の一部によって、センサ面5と直交する方向における音響カップリング材1の脱離が抑制されている。このように、係止部として機能する部分を設けることにより、上述した簡易な方法により音響カップリング材1をプローブ2に装着するだけで、プローブ2に対して音響カップリング材1を保持することができる。
【0032】
(その他の変形例)
尚、上記の第1の実施形態では、上壁部の一部によって音響カップリング材をセンサ部に係止する係止部を構成した例を説明したが、中空部にセンサ部を収納した状態で音響カップリング材をセンサ部に係止できるものであれば、係止部の構成は特に限定されず、センサ部の形状に応じて適宜設計することができる。また、中空部の形状によっては、係止部を省略しても良い。例えば、中空部が、音響カップリング材の底面と平行な方向にセンサ部を挿入可能な形状である場合は、音響カップリング材の中空部にセンサ部を収納した状態で、底面に直交する方向におけるプローブからの音響カップリング材の離脱をある程度抑制することができるので、係止部は必ずしもなくても良い。
【0033】
また、上記の第1の実施形態では、口腔内の検査に用いるプローブとして、ホッケー型プローブを例に挙げ、ホッケー型プローブのセンサ部に対応した形状の音響カップリング材を説明した。ただし、音響カップリング材の形状は口腔内に挿入が困難な大きさでなければ特に限定されず、プローブの形状に応じて適宜設計することができる。口腔内の検査に使用可能なプローブの具体例としては、GE社製リニア型プローブL8-18I-D(型番)や、アルピニオン社製リニア型プローブIO3-12(型番)等を使用可能である。尚、口腔内の検査に使用可能なプローブは、口腔内専用のプローブと、他の医療用途のプローブとのいずれであっても良い。上記の実施形態で例示した以外のプローブに本願発明を適用する場合、音響カップリング材は、プローブのセンサ部を収容可能な形状の中空部とセンサ部を中空部に挿入するための開口部を備えていれば良く、音響カップリング材の外形は口腔内の検査に適した形状であれば特に限定されない。また、上記の実施形態で例示した以外のプローブに本願発明を適用する場合、プローブのセンサ部とハンドル部(軸部)との接続部にくびれた部分があれば、音響カップリング材に設ける開口部の位置や大きさを適宜設定することにより、当該くびれた部分で音響カップリング材をプローブに係止できる係止部を構成することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る音響カップリング材の装着方法を説明するための図である。
【0035】
本実施形態に係る装着方法は、胴部29の先端部分に超音波振動子を含むセンサ部22が設けられ、センサ部22の一部が胴部29よりも突出するように構成されたプローブ21に、シート状の音響カップリング材20を装着するためのものである。音響カップリング材20は、第1の実施形態に係る音響カップリング材と同様に作製することができる。
図4(a)に示すように、本実施形態において、プローブ21のセンサ部22は、直方体形状を有しており、超音波を送受信するセンサ面23と、センサ面23に隣接する側面24a~24dを有する。側面24a~24dは、センサ面23に接続される周壁面を構成する。
【0036】
第1の実施形態と同様に、音響カップリング材20をプローブ21に装着する前段階の作業として、まず、プローブ21のセンサ部22を、消毒用アルコールを含浸させた不織布等で清拭した後、市販の超音波プローブ用ジェルをセンサ部22に塗布する。この超音波用プローブ用ジェルの塗布は、センサ部22のセンサ面23と音響カップリング材20との間の隙間を埋め、エコー画像の不鮮明さを抑制するためのものである。センサ面23と音響カップリング材1との隙間を埋めることが目的であるので、必ずしもセンサ部22の全体にジェルを塗布する必要はなく、少なくともセンサ面23にジェルを塗布すれば良い。また、ジェルに替えて、センサ面23と音響カップリング材20との隙間を水で埋めても良い。
【0037】
次に、
図4(b)に示すように、センサ部22のセンサ面23と、センサ面23に隣接する側面24a(周壁面の一部)と、側面24aに対向する側面24c(周壁面の他の一部)とを覆うように、音響カップリング材20を配置する。
【0038】
次に、
図4(b)に示すリング状のバンド25を用いて音響カップリング材20をプローブ21に固定する。バンド25は、樹脂やゴム等の伸縮性を有する材料からなる。
図4(c)に示すように、側面24aを覆う音響カップリング材20の一部と、側面24cを覆う音響カップリング材20の他の一部と、音響カップリング材20で覆われていない側面24b及び24d(周壁面の残りの部分)とを取り囲むようにバンド25を取り付ける、これにより、音響カップリング材20がセンサ部22に固定される。
【0039】
本実施形態によれば、バンド25を用いた簡単な作業で、音響カップリング材20をプローブ21のセンサ部22に取り付けることが可能となる。
【0040】
尚、バンド25は、音響カップリング材20をプローブ21に固定できるものであれば特に限定されず、バンド25の幅や形状等は適宜設計することができる。
【0041】
また、本実施形態では、シート状の音響カップリング材20を、センサ面23、側面24a及び24cに沿わせて取り付ける例を説明したが、センサ面23と、周壁部の一部及びこれに対向する他の一部に沿うような断面U字型の形状に音響カップリング材20を予め形成しても良い。
【0042】
また、本実施形態で示したプローブ21の形状は一例であり、センサ部22のセンサ面23を含む部分が胴部29より突出しているプローブであれば、センサ部22の周壁面を取り囲むようにバンド25を取り付け可能である。すなわち、センサ部22の形状は、直方体形状でなくてもよく、曲面の周壁面を有する柱状体であっても良い。
【0043】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係る音響カップリング材の装着方法を説明するための図である。
【0044】
本実施形態に係る装着方法は、胴部29の先端部分に超音波振動子を含むセンサ部22が設けられたプローブ21に、
図5(a)に示す音響カップリング材30を装着するためのものである。
図5(a)に示すように、本実施形態に係る音響カップリング材30は、シート状の平板部31と、平板部31の一方面の中央から突出する突出部32とを有する。平板部31の外周縁から所定範囲の部分は、突出部32の外方にフランジ状に突出している。音響カップリング材30は、第1の実施形態に係る音響カップリング材と同様に作製することができる。
【0045】
第2の実施形態と同様に、音響カップリング材30をプローブ21に装着する前段階の作業を行った後、
図5(b)に示すように、音響カップリング材30をセンサ部22のセンサ面上に配置する。この際、音響カップリング材30の平板部31の他方面(
図5(a)における下面)がセンサ面23に接触し、かつ、突出部32がセンサ面23と重なり、センサ面23の略中央に配置されるように位置合わせを行う。
【0046】
次に、
図5(b)に示すバンド27を用いて音響カップリング材30をプローブ21に固定する。本実施形態に係るバンド27は、3つのリング状部分が直列に接続された形態を有しており、矩形状の第1リング部28aと、第1リング部28aの対向する一対の辺にそれぞれ隣接する第2リング部28b及び第3リング部28cを有する。第1リング部28aは、音響カップリング材30の平板部31の一方面のうち、突出部32が設けられていないフランジ状の部分に略対応する形状を有する。バンド27は、樹脂やゴム等の伸縮性を有する材料からなる。
【0047】
バンド27は、音響カップリング材30の平板部31の外周縁に沿う部分(フランジ状の部分)の全周をセンサ面23側に押圧するように取り付けられる。具体的には、
図5(c)に示すように、第2リング部28b及び第3リング部28cを、センサ部22を周方向に取り囲むように、すなわち、センサ面23上に配置された音響カップリング材30の周縁部(平板部31の外周縁に沿う部分)、センサ部22の側面24a、センサ面23と対向する面26、側面24cを取り囲むように取り付ける。また、第1リング部28aの全体を音響カップリング材30の平板部31の外周縁に沿う部分の全周に当接させる。これにより、音響カップリング材30がセンサ部22に固定される。
【0048】
本実施形態においても、バンド27を用いた簡単な作業で、音響カップリング材30をプローブ21のセンサ部22に取り付けることが可能となる。また、本実施形態では、音響カップリング材30の平板部31の全周がセンサ面23側に押圧された状態で固定されるため、音響カップリング材30の装着状態を安定して維持することができる。
【0049】
尚、バンド27は、音響カップリング材20をプローブ21に固定できるものであれば特に限定されず、バンド27の幅や形状等は適宜設計することができる。本実施形態のように、バンド27の一部が平板部31の全周をセンサ面23側に押圧できることが好ましいが、第2リング部28b及び第3リング部28cに相当する二本のバンドで、平板部31の一対の短辺部分をセンサ面23側に押圧して固定しても良い。
【0050】
また、本実施形態では、シート状の音響カップリング材30を、センサ面23と略同形状に形成した例を説明したが、センサ面23と、周壁部の一部及びこれに対向する他の一部に沿うような断面U字型の形状に音響カップリング材30を予め形成しても良い。
【0051】
また、本実施形態で示したプローブ21の形状は一例であり、センサ部22にバンドにより音響カップリング材30を取り付けることができるものであれば、プローブ21の形状は限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、口腔内の超音波検査時に用いる音響カップリング材として利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 音響カップリング材
2 プローブ
3 センサ部
5 センサ面
11 中空部
12 開口部
13 上壁部
14 底面
20 音響カップリング材
21 プローブ
22 センサ部
23 センサ面
24a~24d 側面
25 バンド
27 バンド
30 音響カップリング材
31 平板部
32 突出部