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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】プロテクタ
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/015 20060101AFI20250318BHJP
【FI】
A41D13/015 103
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021126718
(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公開番号】P2023021686
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2024-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊東 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】新海 達也
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-6515(JP,A)
【文献】特開平11-241206(JP,A)
【文献】特開2021-45942(JP,A)
【文献】特開2017-196782(JP,A)
【文献】国際公開第2019/078341(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/08
B32B3/00-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の身体を保護するためのプロテクタであって、
複数のセルが並設された樹脂製の1枚の中空板材からなる衝撃吸収材を備え、
前記衝撃吸収材には、前記衝撃吸収材を折り曲げるための薄肉のヒンジ部が設けられていることを特徴とするプロテクタ。
【請求項2】
前記ヒンジ部の端部を含む前記衝撃吸収材の周縁を被覆する被覆材を備え、
前記ヒンジ部の端部における前記被覆材が重なる部分には、前記ヒンジ部の中央部よりも幅の広い幅広部が設けられている請求項1に記載のプロテクタ。
【請求項3】
前記幅広部における少なくとも曲げ方向の内側となる面は、平坦面である請求項2に記載のプロテクタ。
【請求項4】
前記ヒンジ部の端部を含む前記衝撃吸収材の周縁を被覆する被覆材を備え、
前記ヒンジ部の端部における前記被覆材が重なる部分には、切り欠きが設けられている請求項1に記載のプロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のセルが並設された樹脂製の中空板材が開示されている。特許文献1の中空構造体は、着用者の胸部を保護する胸部用プロテクタとして利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-154947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
胸部用プロテクタ等のプロテクタの衝撃吸収性を効率的に発揮させるためには、使用者の身体にプロテクタを密着させるようにしてプロテクタを装着することが好ましい。この発明の目的は、樹脂製の中空板材を用いたプロテクタに関して、体格が異なる多数の使用者に対する装着時の密着性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するプロテクタは、使用者の身体を保護するためのプロテクタであって、複数のセルが並設された樹脂製の1枚の中空板材からなる衝撃吸収材を備え、前記衝撃吸収材には、前記衝撃吸収材を折り曲げるための薄肉のヒンジ部が設けられている。
【0006】
上記構成によれば、ヒンジ部にて衝撃吸収材を容易に折り曲げることができる。これにより、使用者の胸等の装着部位が大きい場合には、ヒンジ部における衝撃吸収材の折り曲げ度合いを小さくし、装着部位が小さい場合には、ヒンジ部における衝撃吸収材の折り曲げ度合いを大きくするというように、使用者の体格に合わせて衝撃吸収材の形状を変更できる。したがって、体格が異なる様々な使用者に対して衝撃吸収材をフィットさせることが容易であり、装着時の密着性が向上する。
【0007】
上記プロテクタにおいて、前記ヒンジ部の端部を含む前記衝撃吸収材の周縁を被覆する被覆材を備え、前記ヒンジ部の端部における前記被覆材が重なる部分には、前記ヒンジ部の中央部よりも幅の広い幅広部が設けられていることが好ましい。
【0008】
プロテクタには、端部の保護や意匠性の向上を目的として衝撃吸収材の周縁を被覆する被覆材が設けられる場合がある。こうした被覆材を上記プロテクタに設けると、ヒンジ部を曲げた際に、被覆材における曲げ方向の内側に位置する部分が詰まってしまうことにより、衝撃吸収材をスムーズに折り曲げることが難しくなる。そこで、上記構成では、ヒンジ部の端部における被覆材が重なる部分に幅広部を設けている。幅広部を設けることにより、ヒンジ部を折り曲げた際に、被覆材における曲げ方向の内側に位置する部分が入り込むスペースを大きく確保することができる。その結果、ヒンジ部を曲げた際の被覆材の詰まりが抑制されて、ヒンジ部をよりスムーズに折り曲げることができる。
【0009】
上記プロテクタにおいて、前記幅広部における少なくとも曲げ方向の内側となる面は、平坦面であることが好ましい。
上記構成によれば、ヒンジ部を曲げた際に、被覆材における曲げ方向の内側に位置する部分が入り込むスペースを更に大きく確保することができ、ヒンジ部をよりスムーズに折り曲げることができる効果が向上する。
【0010】
上記プロテクタにおいて、前記ヒンジ部の端部を含む前記衝撃吸収材の周縁を被覆する被覆材を備え、前記ヒンジ部の端部における前記被覆材が重なる部分には、切り欠きが設けられていることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、切り欠きを設けることにより、ヒンジ部を曲げた際に、被覆材における曲げ方向の内側に位置する部分が入り込むスペースを大きく確保することができる。その結果、ヒンジ部を曲げた際の被覆材の詰まりが抑制されて、ヒンジ部をよりスムーズに曲げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプロテクタによれば、体格が異なる多数の使用者に対する装着時の密着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】プロテクタの斜視図である。
図2】プロテクタの正面図である。
図3図1の3-3線断面図である。
図4図2の4-4線断面図である。
図5】ヒンジ部を折り曲げた状態における幅広部の周囲の部分断面図である。
図6】中空板材の部分斜視図である。
図7】(a)はシート材形成工程の説明図、(b)、(c)は折畳み工程の説明図である。
図8】(a)はコア層の部分斜視図、(b)は(a)のβ-β線断面図、(c)は(a)のγ-γ線断面図である。
図9】変更例のプロテクタの部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のプロテクタを具体化した一実施形態を説明する。
本実施形態のプロテクタは、使用者の身体を保護するためのプロテクタであり、例えば、胸部ガード、ボディープロテクター、フットガード、すね当て、膝ガード等のスポーツ用の防具や作業者用の防具として用いられる。本実施形態では、一例として、胸部ガードとして適用されるプロテクタについて説明する。
【0015】
図1~3に示すように、プロテクタは、1枚の中空板材からなる衝撃吸収材10を備えている。衝撃吸収材10は、一枚の平板状の中空板材に対して曲げ加工及び圧縮加工を行うことにより製造される。
【0016】
図6に示すように、中空板材10aは、複数のセルSが並設されたコア層20と、コア層20の上下両面に接合されたスキン層30とを備えている。コア層20は、複数のセルSを区画する側壁部23と、側壁部23の上端縁に接合されてセルSの上端を閉塞するように設けられた上壁部21と、側壁部23の下端縁に接合されてセルSの下端を閉塞するように設けられた下壁部22とを備えている。複数のセルSは、側壁部23で区画されることによって、中空板材10aの厚さ方向に延びる六角柱状に構成されている。コア層20は、上壁部21と下壁部22とを備えることによって複数のセルSを内包しており、中空状となっている。コア層20の上面に接合されたスキン層30は、コア層20の上壁部21に対して、図示しない接着層を介して接合されている。コア層20の下面に接合されたスキン層30は、コア層20の下壁部22に対して、図示しない接着層を介して接合されている。
【0017】
コア層20、スキン層30、及び接着層は、熱可塑性樹脂製である。コア層20及びスキン層30を構成する熱可塑性樹脂は、従来周知のものであってその材質は特に限定されない。例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。コア層20及びスキン層30を構成する熱可塑性樹脂は、いずれも同じ材質であることが好ましい。本実施形態では、いずれもポリプロピレン樹脂製とされている。なお、上記の熱可塑性樹脂には、エラストマーやブタジエン等の添加剤が含有されていてもよい。
【0018】
コア層20とスキン層30を接合する接着層を構成する熱可塑性樹脂も従来周知のものであってその材質は特に限定されない。例えば、オレフィン系、ポリエステル系、ウレタン系のものが挙げられる。接着層は、コア層20及びスキン層30を構成する熱可塑性樹脂より低融点の樹脂であることが好ましい。本実施形態では、官能基をポリオレフィンに導入して接着性を付与した変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン等の変性ポリオレフィン系樹脂(変性樹脂)で構成されている。
【0019】
中空板材10aの厚さは、特に限定されないが、5~30mmであることが好ましい。
コア層20を構成する上壁部21、下壁部22、及び側壁部23の各厚さは、0.2mm~0.3mmであることが好ましい。
【0020】
スキン層30の厚さは、0.2~1.0mmであることが好ましい。コア層20及びスキン層30の厚さがこの範囲であると、曲げ加工を行う際の成形性を向上させることができる。また、コア層20の各壁部の厚さ及びスキン層30の厚さは、同程度の厚さであること、又はコア層20の方が薄いことが好ましい。なお、コア層20の各壁部の厚さ及びスキン層30の厚さはそれぞれ、後述する、コア層20を形成する樹脂シート材100の厚さ、及びスキン層30を構成するシートの厚さである。
【0021】
図2に示すように、衝撃吸収材10は、正面視において、上辺11を上底とし、下辺12を下底とした上側が幅の広い略多角形状であるとともに、上辺11又は下辺12に沿う方向の中央側が、表面側(図2における紙面前面側)に突出するように湾曲した形状をなしている。また、衝撃吸収材10における正面視多角形の角部は、R面取りされて曲線状に構成されている。以下では、図2における紙面前面側をプロテクタの表面とし、紙面裏側に位置する面をプロテクタの裏面として説明する。
【0022】
図2及び図3に示すように、衝撃吸収材10の周縁には、全周に亘って表裏両面に薄肉の周縁部13が形成されている。周縁部13は、衝撃吸収材10を構成する中空板材10aを部分的に圧縮してなる中空構造の薄肉部分である。周縁部13の厚さは、例えば、衝撃吸収材10の一般部分、即ち、周縁部13及び後述するヒンジ部14を除く部分よりも薄い厚さ、例えば、0.1~0.7mm薄い厚さである。
【0023】
図1~3に示すように、衝撃吸収材10には、上辺11から下辺12に向かって直線状に延びる二本のヒンジ部14が設けられている。二本のヒンジ部14は、上辺11から下辺12に向かって互いの間の距離が徐々に狭くなるように上下方向線L1に対して傾斜して配置されている。
【0024】
ヒンジ部14は、衝撃吸収材10を構成する中空板材10aを部分的に圧縮してなる薄肉部分である。ヒンジ部14の厚さは、ヒンジ部14にて衝撃吸収材10を曲げることが可能な厚さに設定される。ヒンジ部14の厚さは、例えば、0.2~0.7mmであり、0.4~0.6mmが好ましい。
【0025】
図3に示すように、ヒンジ部14の表面側の面である第1面14aは、衝撃吸収材10の表面において、厚さ方向に凹む平坦面である。ヒンジ部14の裏面側の面である第2面14bは、衝撃吸収材10の裏面において、厚さ方向に凹む平坦面である。衝撃吸収材10の厚さ方向において、ヒンジ部14は、衝撃吸収材10の表面寄りに位置している。すなわち、ヒンジ部14の第2面14bは、第1面14aよりも大きく凹んでいる。これにより、ヒンジ部14にて衝撃吸収材10を裏面側に容易に曲げることができる。
【0026】
図2及び図4に示すように、ヒンジ部14の両端部、即ち、ヒンジ部14における衝撃吸収材10の周縁部13に重なる部分には、ヒンジ部14の中央部よりも幅の広い幅広部15が設けられている。図3に示すヒンジ部14の中央部の幅H1は、例えば、0.2~2.0mmであり、好ましくは0.4~0.6mmである。また、図4に示す幅広部15の幅H2は、例えば、ヒンジ部14の中央部の幅H1の1.1~1.5倍である。
【0027】
図1~3に示すように、衝撃吸収材10は、二本のヒンジ部14によって、紙面左右方向に並ぶ三つの領域A,B,Cに区画される。衝撃吸収材10の領域A,B,Cはそれぞれ、上辺11又は下辺12に沿う方向の中央側が、表面側に突出するように湾曲した形状をなしている。また、領域A,B,Cの湾曲形状は、上下方向線L1に沿って略一定の曲率となるように構成されている。
【0028】
図1~3に示すように、衝撃吸収材10の周縁部13には、その全周に亘って、断面コ字状に衝撃吸収材10の周縁を被覆する被覆材16が取り付けられている。周縁部13に被覆材16を取り付けた状態において、衝撃吸収材10の一般部分の表面と被覆材16の表面とはほぼ面一となる。
【0029】
被覆材16は、衝撃吸収材10の端縁の保護や意匠性の向上を目的として設けられている。被覆材16としては、例えば、織布、不織布、網布等の布材や、皮、ゴム、樹脂等がシート状に形成されたものを用いることができる。
【0030】
上記布材は、天然繊維、合成繊維のいずれの構成であってもよい。天然繊維としては、例えば、木綿、麻、リネン、絹、カシミヤ等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ビニロン等が挙げられる。皮としては、天然皮革、合成皮革のいずれの構成であってもよい。
【0031】
衝撃吸収材10の周縁部13に被覆材16を取り付ける方法は特に限定されない。例えば、糸を用いて被覆材16を縫い付けてもよいし、接着剤を用いて被覆材16を接着してもよいし、被覆材16を溶着してもよい。図面においては、一例として、糸を用いて被覆材16を周縁部13に縫い付けた場合を図示している。
【0032】
次に、プロテクタの製造方法について説明する。
プロテクタの製造方法は、中空板材10aにより構成される衝撃吸収材10を製造する板材製造工程と、板材製造工程により得られた衝撃吸収材10の周縁部13に被覆材16を取り付ける被覆工程とを有する。
【0033】
(板材製造工程)
板材製造工程は、シート材形成工程と、折畳み工程と、接合工程と、成形工程と、切断工程とを有する。
【0034】
[シート材形成工程]
図7(a)に示すように、シート材形成工程では、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを所定の形状に加熱成形することにより樹脂シート材100が形成される。樹脂シート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120がその幅方向(X方向)に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向(Y方向)の全体に亘って形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部121の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
【0035】
また、膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
【0036】
なお、こうした第1膨出部121及び第2膨出部122は、シートの塑性を利用してシートを部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、樹脂シート材100は、真空成形法や圧縮成形法等の周知の成形方法によって1枚のシートから成形することができる。
【0037】
[折畳み工程]
図7(b)及び図7(c)に示すように、折畳み工程では、上述のように構成された樹脂シート材100を、境界線P、Qに沿って折り畳むことでコア層20が形成される。具体的には、樹脂シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてX方向に圧縮する。そして、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がX方向に連続して形成されていくことによりコア層20が形成される。コア層20を形成する樹脂シート材100の厚みは、スキン層30の厚みと同程度又はスキン層30の厚みより薄く形成されている。
【0038】
図7(c)に示すように、樹脂シート材100を圧縮するとき、第1膨出部121の上面と側面とによってコア層20の上壁部21が形成されるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とによってコア層20の下壁部22が形成される。
【0039】
図8(a)に示すように、折り畳み工程によって形成されたコア層20の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1及び第2セルS2が存在する。図8(b)に示すように、第1セルS1においては、側壁部23の上部に2層構造の上壁部21が設けられている。この2層構造の上壁部21の各層は互いに接合されている。第1セルS1においては、側壁部23の下部に1層構造の下壁部22が設けられている。
【0040】
図8(b)の断面図に示すように、第1セルS1の側壁部23と上壁部21との境界部分は、微視的には、直線状に上方へ延びる側壁部23から湾曲しながら上壁部21に繋がった状態となっている。つまり、側壁部23と上壁部21との間には湾曲部分23eが形成されている。
【0041】
一方、図8(c)に示すように、第2セルS2においては、側壁部23の上部に1層構造の上壁部21が設けられている。また、第2セルS2においては、側壁部23の下部に2層構造の下壁部22が設けられている。この2層構造の下壁部22の各層は互いに接合されている。
【0042】
図8(c)の断面図に示すように、第1セルS1の側壁部23と上壁部21との境界部分は、微視的には、直線状に上方へ延びる側壁部23から湾曲しながら上壁部21に繋がった状態となっている。つまり、側壁部23と上壁部21との間には湾曲部分23eが形成されている。
【0043】
なお、図8(c)に示すように、上壁部21における第1膨出部121の上面と側面とが折り重なって2層構造を形成する部分、及び下壁部22における第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なって2層構造を形成する部分がそれぞれ重ね合わせ部131となる。
【0044】
また、第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱形状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側壁部23を構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側壁部23を構成する。そして、第2膨出部122の上面同士の当接部位、及び膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が、第1側壁部23bと第2側壁部23cとからなる2層構造をなす側壁部23となる。なお、こうした折り畳み工程を実施するに際して、樹脂シート材100を加熱処理して軟化させた状態としておくことが好ましい。
【0045】
図8(b)及び図8(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側壁部23(第1側壁部23b及び第2側壁部23c)によって区画されている。この2層構造の側壁部23は、コア層20の厚み方向中央部に互いに熱溶着されていない部分である非接合部23dを有する。したがって、コア層20の各セルSの内部空間は、第1側壁部23bと第2側壁部23cの間に非接合部23dを介して他のセルSの内部空間に連通している。非接合部23dは、コア層20の厚み方向中央部、つまり、側壁部23の高さ方向の中央部に設けられており、側壁部23の上端部及び下端部では、2層構造の第1側壁部23b及び第2側壁部23cは互いに熱溶着されている。
【0046】
図8(a)に示すように、第1セルS1はX方向に沿って列を成すように並設されている。同様に、第2セルS2はX方向に沿って列を成すように並設されている。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されている。そして、これら第1セルS1及び第2セルS2により、コア層20は、全体としてハニカム構造をなしている。
【0047】
[接合工程]
接合工程では、コア層20の上面20aにスキン層30を接合し、コア層の下面20bにスキン層30を接合する。接合工程では、スキン層30として、二次加工(プレス成形)していない平坦なシートを接合する。スキン層30を構成するシートの厚みは、コア層20を形成する樹脂シート材100の厚みと同程度であること、又はコア層20を形成する樹脂シート材100よりも厚いことが好ましい。
【0048】
接合工程は、コア層20とスキン層30の間に接着層を形成した後、コア層20及びスキン層30を所定温度に加熱して行う。加熱温度は、スキン層30における接着層の融点よりも数℃~十数℃高い温度に設定される。具体的には、加熱温度は、接着層を構成する変性ポリオレフィン系接着剤(変性樹脂)の融点よりも数℃程度高く設定されている。この加熱温度は、スキン層30を構成するポリアミド樹脂を軟化せるための成形温度に対して十分に低く設定されている。また、スキン層30に熱溶着する際の加熱時間は数秒~十数秒に設定され、スキン層30の同じ箇所が過度に長時間加熱されないようになっている。したがって、スキン層30が軟化溶融するまでの高温には至らず、加熱温度を厳密に管理しなくとも、接着層のみを軟化溶融させることができる。
【0049】
コア層20に対してスキン層30を位置合わせし、所定圧をかけて仮接合させた後冷却すると、コア層20に対してスキン層30が熱溶着された平板状の中空板材10aが得られる。
【0050】
[成形工程]
成形工程では、平板状の中空板材10aを所定の形状となるようにプレス成形を行う。プレス成形は、中空板材10aの表裏両面に一対の金型を配置して、一対の金型で中空板材10aを上下両方から挟み込むことによって行う。金型の温度は、コア層20及びスキン層30を構成する熱可塑性樹脂を軟化させて所定の形状に曲げることができる温度に設定される。
【0051】
プレス成形において、中空板材10aに対して曲げ加工及び圧縮加工が行われることにより、薄肉の周縁部13及びヒンジ部14が形成されるとともに、湾曲形状の領域A,B,Cが形成される。なお、プレス成形後の中空板材10aの周縁部13の外周側には、切断工程で切断される切断代が形成される。切断代の厚さは、周縁部13の厚さよりも薄く構成されている。
【0052】
中空板材10aの周縁部13及びヒンジ部14は、一対の金型によって他の部分よりも厚さが薄くなるように圧縮される。そのため、周縁部13及びヒンジ部14は、厚さが薄くなっている分だけ、他の部分よりも密度が高くなっている。周縁部13の密度が高いことにより後述する被覆工程において、被覆材16を糸で縫い付ける際に、周縁部13に針を安定した状態で通すことが可能になる。そのため、衝撃吸収材10に被覆材16を効率良く縫い付けることができる。また、曲げ加工及び圧縮加工によって中空板材10aを湾曲させて立体構造とすると、スキン層30が延ばされて薄くなることにより、周縁部13に針を通す際の抵抗が小さくなる。
【0053】
[切断工程]
切断工程では、環状の切断刃を備える切断治具を用いる。切断刃の外形は、衝撃吸収材10の外形と略等しくなるように構成されている。切断治具を曲げ工程後の中空板材10aの切断代に上方から押し当て、切断治具を下方に押し下げることによって中空板材10aを切断代に沿って切断する。切断刃により切り出された部分が衝撃吸収材10となる。切断工程に供される中空板材10aに切断代が設けられていることにより、中空板材10aの切断を容易に行うことができる。切断工程は、切断刃を備える切断治具を用いることに代えて、レーザー、ウォータジェット、超音波カッターを用いてもよいし、金型でプレス抜きして切断してもよい。また、切断工程は、成形工程と同時に衝撃吸収材10を切り出す工程であってもよい。
【0054】
(被覆工程)
被覆工程では、切断工程によって切り出された衝撃吸収材10の周縁部13に被覆材16を取り付ける。ここでは、一例として、縫製により被覆材16を取り付ける方法について具体的に記載する。
【0055】
帯状の被覆材16における幅方向の両端を、それぞれ、衝撃吸収材10の周縁部13に配置する。この状態で、針穴に糸を通した針を用いて被覆材16を周縁部13に縫い付ける。周縁部13の厚さ方向に対して、針を貫通させながら縫い付けることによって、周縁部13の表裏両面に配置された被覆材16は、同時に縫い付けられる。薄肉の周縁部13に被覆材16を取り付けることにより、衝撃吸収材10の厚さ方向において、被覆材16が衝撃吸収材10の表面及び裏面から突出する高さを低くすることができる。衝撃吸収材10の周縁部13に被覆材16が取り付けられることによって、本実施形態のプロテクタが得られる。
【0056】
次に、本実施形態の作用について説明する。
プロテクタの衝撃吸収材10には、上辺11から下辺12に向かって直線状に延びる二本のヒンジ部14が設けられており、各ヒンジ部14において、衝撃吸収材10を裏面側に容易に折り曲げることができる。これにより、使用者の胸等の装着部位が大きい場合には、ヒンジ部14の折り曲げ度合いを小さくし、装着部位が小さい場合には、ヒンジ部14の折り曲げ度合いを大きくするというように、使用者の体格に合わせて衝撃吸収材10の形状を変更できる。したがって、体格が異なる様々な使用者に対して衝撃吸収材10をフィットさせることが容易であり、装着時の密着性が向上する。
【0057】
また、図1~3に示すように、衝撃吸収材10の周縁部13には、周縁部13を覆う被覆材16が取り付けられている。ここで、単純に被覆材16を取り付けた場合、ヒンジ部14を折り曲げた際に、被覆材16における曲げ方向の内側に位置する部分が詰まってしまい、ヒンジ部14をスムーズに折り曲げることが難しくなることが考えられる。そこで、本実施形態では、図4に示すように、ヒンジ部14における被覆材16に重なる部分に、ヒンジ部14の中央部よりも幅の広い幅広部15を設けることによって、ヒンジ部14の第2面14bと被覆材16との間のスペースDを大きく確保している。また、上記スペースDをより大きく確保できるように、幅広部15における曲げ方向の内側となる面である第2面14bを平坦面としている。
【0058】
図5に示すように、本実施形態のプロテクタの場合、上記スペースDが大きく確保されていることにより、ヒンジ部14を折り曲げた際に、被覆材16における曲げ方向の内側に位置する部分がスペースDに入り込みやすくなる。被覆材16がスペースDに入り込む結果、曲げ方向の内側における被覆材16の詰まりが抑制されて、ヒンジ部14をよりスムーズに折り曲げることができる。
【0059】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)プロテクタは、複数のセルSが並設された樹脂製の1枚の中空板材10aからなる衝撃吸収材10を備えている。衝撃吸収材10には、衝撃吸収材10を折り曲げるための薄肉のヒンジ部14が設けられている。
【0060】
上記構成によれば、ヒンジ部14にてプロテクタを折り曲げることによって、使用者の体格に合わせて衝撃吸収材10の形状を変更することができる。したがって、体格が異なる様々な使用者に対して衝撃吸収材10をフィットさせることが容易であり、装着時の密着性が向上する。また、プロテクタの大部分を構成する衝撃吸収材10は、中空板材10aからなるため、軽量で衝撃吸収が可能である。
【0061】
(2)プロテクタは、衝撃吸収材10の周縁部13を被覆する被覆材16を備えている。ヒンジ部14の端部における被覆材16が重なる部分には、ヒンジ部14の中央部よりも幅の広い幅広部15が設けられている。
【0062】
上記構成によれば、ヒンジ部14を折り曲げた際に、曲げ方向の内側に位置する被覆材16が入り込むスペースを大きく確保することができる。その結果、ヒンジ部14を折り曲げた際の被覆材16の詰まりが抑制されて、ヒンジ部14をよりスムーズに折り曲げることができる。
【0063】
(3)幅広部15における曲げ方向の内側となる面である第2面14bは、平坦面である。
上記構成によれば、ヒンジ部14を折り曲げた際に、曲げ方向の内側に位置する被覆材16が入り込むスペースを更に大きく確保することができる。その結果、ヒンジ部14を更にスムーズに折り曲げることができる。
【0064】
(4)衝撃吸収材10は、物体が衝突する表側に突出するように湾曲した形状であり、衝撃吸収材10が湾曲する方向に折り曲げ可能なヒンジ部14を有している。
上記構成によれば、衝撃吸収材10の湾曲した部分に物体が衝突した際に、衝撃吸収材10の湾曲形状に沿って衝撃吸収材10の表側の表面を物体が滑るように移動することにより、衝撃吸収材10に作用する衝撃力の一部をそらすことができる。なお、衝撃吸収材10に衝突する物体の形状や衝突角度などによっては、衝撃吸収材10の表面を物体が滑らずとも、衝撃吸収材10に作用する衝撃力の一部をそらす効果が得られる場合もある。
【0065】
また、ヒンジ部14にて湾曲方向と反対側に衝撃吸収材10を曲げることによって、湾曲形状の衝撃吸収材10全体を水平に近づけるように広げた状態とすることができる。これにより、運搬時等の積載率を高くすること、及び保管時に必要となるスペースを小さくすることができる。なお、衝撃吸収材10全体を水平に近づけるように広げた状態としたときの高さは、例えば、略一定の曲率で湾曲している基本状態に対して、1/5~3/5倍程度となる高さである。
【0066】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・ヒンジ部14には、ミシン目状等の連続する孔が設けられていてもよい。
【0067】
・ヒンジ部14の端部における幅広部15の形成範囲を変更してもよい。例えば、上記実施形態では、ヒンジ部14における曲げ方向の内側に位置する被覆材16と重なる範囲の全体を幅広部15としていたが、ヒンジ部14における上記範囲の中に幅広部15の部分と幅広部15でない部分とが混在していてもよい。また、ヒンジ部14の両端部の一方のみに幅広部15が設けられていてもよい。
【0068】
・上記実施形態では、ヒンジ部14の第2面14bの全体を平坦面としていたが、ヒンジ部14の第2面14bのうち、幅広部15が位置する部分が位置する部分のみを平坦面としてもよい。また、ヒンジ部14の第2面14bは平坦面でなくてもよい。これらの点は、ヒンジ部14の第1面14aについても同様である。
【0069】
例えば、ヒンジ部14の延びる方向に直交する断面において、幅方向の全体が表面側に凸となる、即ち、第2面14b側に凹となる円弧状のヒンジ部14としてもよい。この場合、第1面14a及び第2面14bは共に、その全体が湾曲した曲面状となる。また、ヒンジ部14の延びる方向に直交する断面において、幅方向の両端部分が直線状であるとともに幅方向の中央部分が表面側に凸となる円弧状であるヒンジ部14としてもよい。この場合、第1面14a及び第2面14bは共に、幅方向の一端側から他端側に向かって、平面状の部分、湾曲した曲面状の部分、平面状の部分が順に並ぶ形状となる。
【0070】
・ヒンジ部14は、ヒンジ部14の延びる方向に平行な断面において、湾曲する形状であってもよい。例えば、図2に示す平面視において直線状に延びるとともに、当該直線に沿った断面において衝撃吸収材10の立体形状に沿って湾曲する形状のヒンジ部14としてもよい。
【0071】
図9に示すように、幅広部15に代えて、ヒンジ部14の端部に、衝撃吸収材10の端縁側から切り欠かれた切り欠き17を設けてもよい。この場合にも、幅広部15を設けた場合と同様に、ヒンジ部14を折り曲げた際に、被覆材16における曲げ方向の内側に位置する部分が入り込むスペースDを大きく確保することができ、ヒンジ部14をよりスムーズに折り曲げることができる。なお、切り欠き17の形成位置及び形成範囲は、幅広部15と同様である。例えば、ヒンジ部14よりも幅の広い切り欠き17とする。
【0072】
・幅広部15を備えないヒンジ部14としてもよい。この場合、一定幅のヒンジ部14としてもよいし、中央部よりも端部の幅が狭いヒンジ部14としてもよい。また、切り欠き17を備えないヒンジ部14としてもよい。
【0073】
・ヒンジ部14の中央部の幅H1は、一定幅であってもよいし、部位に応じて異なる幅であってもよい。例えば、上下方向線L1に対して、ヒンジ部14の中央部における下方の幅H1より上方の幅H1が広くなるように、ヒンジ部14を形成する。この場合、幅広部15は、中央部の上下の端部、即ち、中央部における幅広部15に繋がっている部分よりも幅が広くなるように形成される。
【0074】
・衝撃吸収材10に設けられるヒンジ部14の数は特に限定されるものではなく、1個であってもよいし、3個以上であってもよい。
・複数のヒンジ部14を設ける場合、各ヒンジ部14の延びる方向は特に限定されるものではなく、一部又は全てが異なる方向であってもよいし、全て同じ方向であってもよいし、交差していてもよい。例えば、平行に配置された複数のヒンジ部14であってもよいし、井桁状や十字状に交差するように配置された複数のヒンジ部14であってもよい。
【0075】
・薄肉のヒンジ部14は、中空板材10aを部分的に圧縮してなる構成に限定されない。例えば、ヒンジ部14が形成される線に沿って中空板材10aを部分的に切り取ってなるヒンジ部14としてもよい。具体例としては、中空板材10aの一方側のスキン層30を残すようにヒンジ部14が形成される線に沿って中空板材10aの一部を切り取り、残ったスキン層30をヒンジ部14とする。
【0076】
・衝撃吸収材10の周縁部13の幅は、適宜変更することが可能である。
・衝撃吸収材10の周縁部13は、衝撃吸収材10の一般部と同じ厚さであってもよいし、一般部よりも厚肉に形成されてもよい。また、周縁部13の周方向の部分ごとに厚さが変化する構成であってもよい。
【0077】
・中空板材10aのコア層20及びスキン層30は、透明であってもよいし、着色されていてもよい。衝撃吸収材10に対して、側壁部23が潰れる程の衝撃が加わった場合、衝撃吸収材10のコア層20は、側壁部23が座屈することにより白化する。一方、スキン層30は、面方向に延びるのみであるため白化しない。そのため、スキン層30を介してコア層20を視認できない色、例えば、黒色、濃灰色、濃紺色などの濃い色に着色されたスキン層30とした場合には、スキン層30によってコア層20の白化を目立たなくすることができ、意匠的に好ましい。
【0078】
・中空板材10aのスキン層30は、1層で構成された態様に限定されない。スキン層30は2層以上の積層体で構成されていてもよい。スキン層30は、コア層20の表裏両面に接合された態様に限定されない。スキン層30はコア層20の表裏両面における一方の面のみに接合されていてもよい。中空板材10aは、スキン層30を有していなくてもよい。
【0079】
・中空板材10aのコア層20とスキン層30は、接着層を介して接合されていなくてもよい。コア層20とスキン層30は、接着層を用いることなく直接接合されていてもよい。
【0080】
・中空板材10aのコア層20は、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを折畳んで形成した態様に限定されない。コア層20は、複数枚のシートを用いて形成したものであってもよい。
【0081】
・中空板材10aのコア層20は、上壁部21と、下壁部22と、側壁部23とを備えた態様に限定されない。複数のセルSが並設されていれば、コア層は、上壁部21と下壁部22の少なくともいずれか一方を有していなくてもよい。
【0082】
・中空板材10aのスキン層30の上に、別の層が更に設けられていてもよい。別の層としては、例えば、ポリプロピレン繊維シート等の合成樹脂製の繊維シート、ラミネートシートが挙げられる。また、スキン層30を省略して、コア層20の上に別の層が設けられていてもよい。この場合、別の層の端縁を含めるようにして衝撃吸収材10の周縁部13を被覆材16にて覆うことにより、当該層のめくれを抑制できる。
【0083】
・中空板材10aのセルSの形状は六角柱状に限定されない。四角柱状、八角柱状等の多角形状や円柱状としてもよい。異なる形状のセルSが混在してもよい。各セルSは隣接していなくてもよく、セルSとセルSの間に隙間(空間)が存在してもよい。
【0084】
・内部に複数のセルSが並設された中空板材10aは、本実施形態の態様に限定されない。例えば、ハーモニカ形状の複数のセルSを有する段ボールプラスチックからなる中空板材や、円柱状や円錐状の突起が設けられたシートを上下からシートで挟むことによって複数のセルSが形成された中空板材であってもよい。ハニカム形状によって複数のセルSを有する中空板材であってもよい。
【0085】
・衝撃吸収材10の形状は、適宜選択することができる。例えば、上記実施形態では、上下方向線L1に沿って湾曲する形状であったが、上下方向線L1に交差する横方向線に沿って湾曲する形状であってもよいし、上下方向線L1及び上記横方向線の両方に沿って湾曲する略半球形状であってもよい。また、平板状であってもよいし、平板状の部分と湾曲状の部分とを有する形状であってもよい。
【0086】
・被覆材16は、衝撃吸収材10の周縁部13に全周に亘って縫い付けられた態様に限定されない。衝撃吸収材10の周縁部13に部分的に縫い付けられていてもよい。
また、被覆材16を省略してもよい。この場合には、周縁部13を設けることに代えて、衝撃吸収材10の端面を丸める端末処理を行うことが好ましい。端末処理の方法としては、例えば、衝撃吸収材10の周縁における上壁部21及び下壁部22を、その先端同士が向い合うように屈曲させて、衝撃吸収材10の端面を断面半円状に丸める処理、衝撃吸収材10の周縁における上壁部21及び下壁部22の一方を他方側に屈曲させて、衝撃吸収材10の端面を断面四半円状に丸める処理が挙げられる。
【0087】
・衝撃吸収材10の表裏両面に1枚ずつ被覆材16が取り付けられていてもよい。この場合、各被覆材16は同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
・成形工程において、平板状の中空板材10aを所定の形状となるようにプレス成形する方法は、本実施形態の方法に限定されない。例えば、平板状の中空板材10aをヒータ等で加熱して軟化させたうえで、加熱していない金型で上下両方から中空板材10aを挟み込むことによって成形してもよい。この際、金型に真空孔を設けて、真空成形してもよい。
【0088】
・衝撃吸収材10の形状及び厚さは特に限定されるものではない。例えば、衝撃吸収材10の厚さを、中央側から周縁側に向かって徐々に薄くなるように変化させることにより、中央側が表面側に突出するように湾曲した形状の衝撃吸収材10としてもよい。こうした形状の衝撃吸収材10は、例えば、衝撃吸収材10を加熱して所望の湾曲形状に変形させる際に、中央側よりも周縁側を大きく引き伸ばすように変形させることにより形成できる。
【0089】
このように形成された衝撃吸収材10は、以下に記載する一以上の構成を有する。コア層20の厚さが中央側から周縁側に向かって徐々に薄くなっている。スキン層30の厚さが中央側から周縁側に向かって徐々に薄くなっている。一つのセルSの上壁部21の面積が中央側から周縁側に向かって徐々に大きくなっている。上壁部21の面積が下壁部22の面積よりも大きくなっている。コア層20のセルSの側壁部23がプロテクタの表面を構成する衝撃吸収材10の表面に対して垂直に形成されている。
【0090】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)前記中空板材は、内部に多角柱状又は円柱状をなす複数の前記セルが並設されるコア層と、該コア層の上下両面に配されるスキン層とを備える中空板材である前記プロテクタ。
【符号の説明】
【0091】
10…衝撃吸収材
13…周縁部
14…ヒンジ部
15…幅広部
16…被覆材
17…切り欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9