IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーピー ケルコ オーワイの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】超低分子量多糖を含む洗剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/37 20060101AFI20250318BHJP
   C11D 1/02 20060101ALI20250318BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
C11D3/37
C11D1/02
C11D1/66
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019516461
(86)(22)【出願日】2017-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2017074520
(87)【国際公開番号】W WO2018060262
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】62/400,752
(32)【優先日】2016-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/519,687
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500034099
【氏名又は名称】シーピー ケルコ オーワイ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】マルコ カンニアイネン
(72)【発明者】
【氏名】ピルッコ-リーナ ハッカレイネン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリース ハンゼン
【合議体】
【審判長】門前 浩一
【審判官】弘實 由美子
【審判官】村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第1642505(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1790236(EP,A1)
【文献】特開2024-106009(JP,A)
【文献】特開2024-125746(JP,A)
【文献】CP Kelco U.S.Inc, CMC Book, Carboxymethylcellulose(CMC) 1st Edition, 米国, CP Kelco U.S.Inc, 2009, 発行日, 9, https://www.scribd.com/document/469678026/cellulosecmcbook-pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗剤組成物であって、
前記組成物の総重量を基準として、多糖および5重量%~70重量%の界面活性剤系を含む洗剤組成物であって;前記多糖が、カルボキシメチルセルロース成分、アニオン性セルロース誘導体、およびそれらの混合物、からなる群より選択され;前記多糖が、1,000ダルトン~40,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有し;前記洗剤組成物が、80,000ダルトンより大きい分子量ピークを有する任意の多糖を含まない、洗剤組成物。
【請求項2】
前記多糖が1,000Da~30,000Daの重量平均分子量を有する、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項3】
前記多糖がカルボキシメチルセルロース成分である、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項4】
前記カルボキシメチルセルロース成分が以下である、請求項3に記載の洗剤組成物:
a)カルボキシメチルセルロースナトリウム;または
b)修飾カルボキシメチルセルロース;または
c)疎水性修飾カルボキシメチルセルロース;または
d)カチオン性修飾カルボキシメチルセルロース;または
e)硫酸-もしくはスルホン酸-修飾カルボキシメチルセルロース。
【請求項5】
前記カルボキシメチルセルロース成分が、約0.2~約1.5の置換度を有する、請求項3に記載の洗剤組成物。
【請求項6】
前記多糖が、前記洗剤組成物中に、前記洗浄組成物の約0.005重量%~約10重量%の濃度で存在する、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤系が、前記洗剤組成物中に、前記洗剤組成物の約10重量%~約40重量%の濃度で存在する、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤系が、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、またはアニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との組み合わせを含む、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤系中のアニオン性界面活性剤対非イオン性界面活性剤の重量比が2~1である、請求項8に記載の洗剤組成物。
【請求項10】
前記洗剤組成物がセルロース繊維構造化剤を含まない、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項11】
前記洗剤組成物が液体形態または粒子形態である、請求項1に記載の洗剤組成物。
【請求項12】
洗濯洗剤組成物であって、
前記洗剤組成物の0.005重量%~10重量%の濃度のカルボキシメチルセルロース成分と、前記洗剤組成物の5重量%~70重量%の濃度の界面活性剤系とを含む洗濯洗剤組成物であって;前記カルボキシメチルセルロース成分が約1,000Da~40,000Daの範囲の重量平均分子量を有し、前記洗濯洗剤組成物が約80,000Daより大きい分子量ピークを有する任意の多糖を含まず、前記洗濯洗剤組成物が液体形態である、洗濯洗剤組成物。
【請求項13】
前記多糖が1,000Da~30,000Daの重量平均分子量を有する、請求項12に記載の洗濯洗剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
80,000ダルトンより大きい分子量を有するカルボキシメチルセルロース(CMC)(すなわち、従来のカルボキシメチルセルロース)は、土壌懸濁液プロファイルを改善するだけでなく、再付着防止、スケール防止、および軟水化などの他の利点を伸ばすために、洗濯洗剤製品に組み込まれる。従来のカルボキシメチルセルロースも、レオロジーおよび泡制御のために、他の洗剤系に組み込まれる。残念なことに、これらの従来のカルボキシメチルセルロースは、界面活性剤の相性に関して著しい制限を有する。結果として、洗剤製品は通常界面活性剤系であることを考えると、これらの従来のカルボキシメチルセルロースは、曇り、ゲル化、および/もしくは相分離のために透明性ならびに/または安定性の喪失をもたらし、それにより液体洗剤製品におけるそれらの使用を制限することがある。これらの影響を最小限に抑えるために、微細繊維状セルロースなどの構造化剤が添加され、および/または従来のカルボキシメチルセルロースが超微細粉砕を受けることになり、その両方が製造費用、時間および複雑さを増大させており、例えば、米国特許第7,842,658号、国際公開第2014/052317号、米国特許公開第2008/0108541号、および米国特許第8,642,529号を参照。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
したがって、界面活性剤系とより相性が良く、それにより組成物全体に対する前述の望ましくない効果のいくつかまたは全てを改善する、カルボキシメチルセルロースまたはそのセルロース誘導体を有する改良された洗剤組成物が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0003】
カルボキシメチルセルロース成分、アニオン性セルロース誘導体、またはそれらの混合物から選択される多糖、ならびに界面活性剤系を含む洗剤組成物であって;多糖が、約1,000ダルトン(Da)~80,000Da以下の分子量を有する洗剤組成物が提供される。洗剤組成物の約0.005重量%~約10重量%の濃度のカルボキシメチルセルロース成分と、洗剤組成物の約0.01重量%~約70重量%の濃度の界面活性剤系とを含む洗濯洗剤組成物であって;カルボキシメチルセルロース成分が約1,000Da~80,000Da以下の重量平均分子量を有し、カルボキシメチルセルロース成分の任意の分子量ピークが約80,000Da以下であり、洗濯洗剤組成物が液体形態である洗濯洗剤組成物も提供される。カルボキシメチルセルロース成分、アニオン性セルロース誘導体、およびそれらの混合物からなる群より選択される多糖の、洗剤における使用であって;多糖が、約1,000ダルトン~80,000ダルトン以下の平均分子量を有する使用も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0004】
改良された洗剤組成物、特に、カルボキシメチルセルロース成分、アニオン性セルロース誘導体、またはそれらの混合物から選択され、約1,000Da~80,000Da以下の重量平均分子量(Mw)を有する特定の多糖、および界面活性剤系を含む洗剤組成物が開発された。
【0005】
本明細書で使用される場合、洗剤組成物は、粉末または液体洗濯洗剤、粉末または液体食器洗い洗剤、液体ハンドソープ、および粉末または液体工業用洗剤を含む。
【0006】
本明細書で使用される場合、文脈上別段の指示がない限り、分子量(Mw)は重量平均分子量である。
【0007】
本明細書で使用される場合、「超低分子量」は、約1,000ダルトン(Da)~80,000ダルトン(Da)以下の分子量(Mw)を意味する。
【0008】
本明細書で使用される場合、「従来の」は、80,000Daより大きい分子量(Mw)を意味する。
【0009】
値または範囲は、本明細書では、「約」として、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと表現され得る。そのような値または範囲が表現されるとき、開示される他の態様は、列挙された特定の値を、ある特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を使用して値が近似値として表される場合、その特定の値は別の態様を形成することが理解されよう。多くの値が本明細書に開示されており、各値は、その値自体に加えて、「約」その特定の値としても本明細書に開示されていることがさらに理解されよう。態様では、「約」を使用して、例えば、列挙値の10%以内、列挙値の5%以内、または列挙の2%以内を意味することができる。
【0010】
洗剤組成物および製造方法のいくつかの態様が、本明細書に説明されている。態様の異なる工程、構成要素、および特徴のパラメーターは、別々に説明されるが、他の態様も当業者によって理解されることを可能にするために、この特許請求の範囲の説明と一貫して組み合わされてもよい。本明細書で使用される様々な用語は、以下の説明においても同様に定義される。文脈上別段の指示がない限り、濃度および百分率は重量パーセントである。
【0011】
単一の理論に縛られるわけではないが、カルボキシメチルセルロース成分、アニオン性セルロース誘導体、またはそれらの混合物などの特定の多糖の分子量を下げると、有機溶媒、塩、および界面活性剤などの他の成分との相性が変わると考えられる。従来の多糖ではなく、超低分子量多糖を洗剤に使用することによって、本発明者らは、改善された透明性および安定性などの特性を有する液体洗剤組成物を配合する能力を発見した。
【0012】
さらに、洗剤組成物が液体形態である場合、超低分子量多糖は、組成物中に部分的にまたは完全に溶解していてもよく、したがって組成物内で活性状態にある。洗浄サイクルが開始すると、超低分子量多糖が、最初に分解してその活性状態になる必要なしに再付着防止を与え始めることができるため、これは有利である。すなわち、超低分子量多糖は、洗浄温度とは無関係に、洗浄サイクルの開始時に機能的になる能力があり得る。
【0013】
超低分子量多糖が、液体洗剤組成物中に部分的にまたは完全に溶解する能力は、それが組成物の透明性を改善することができるため、さらに有利である。従来の多糖を使用したときに曇りを引き起こすことが知られている組成物中に存在する固体多糖粒子は、超低分子量多糖を液体洗剤組成物に溶解すると、ほとんどまたは全くなくなる。さらに、超低分子量多糖の溶解性は、構造化剤を必要とせずにおよび/または超低分子量多糖を超微粉に粉砕する必要なしに、液体洗剤組成物に安定性を有利に提供する。
【0014】
場合により、超低分子量多糖はカルボキシメチルセルロース成分であり、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたは疎水性修飾CMC、カチオン修飾CMC、もしくは硫酸もしくはスルホン酸修飾CMCなどであるがこれらに限定されない修飾カルボキシメチルセルロースなどである。洗剤用途におけるカルボキシメチルセルロースおよびその修飾形態の使用の交換可能性は、その両方が参照により本明細書に組み込まれるEP2302025B1およびUS6600033に記載されているように、当該技術分野においてよく知られている。本明細書におけるカルボキシメチルセルロース(CMC)成分への言及は、それらの修飾を含むことも意味する。
【0015】
洗剤組成物は、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などであるがこれらに限定されないアニオン性セルロース誘導体を含み得る。
【0016】
超低分子量多糖へのさらなる言及は、カルボキシメチルセルロース成分、アニオン性セルロース誘導体、またはそれらの混合物から選択される前述の多糖を含むことである。
【0017】
洗剤組成物が開発され、これらの組成物は、再付着防止特性を改善しながら、透明性および安定性を維持する。本洗剤組成物は、液体または粒子形態であり得る。
【0018】
超低分子量多糖は、約1,000Da~80,000Da以下の分子量を有し得る。例えば、超低分子量多糖は、約1,000Da~約40,000Daの分子量を有する。あるいは、超低分子量多糖は、約1,000Da~約30,000Daの分子量を有し得る。あるいは、超低分子量多糖は、約1,000Da~約15,000Daの分子量を有し得る。例えば、超低分子量多糖は、1,000Da、2,000Da、3,000Da、4,000Da、5,000Da、6,000Da、7,000Da、8,000Da、9,000Da、10,000Da、11,000Da、12,000Da、13,000Da、14,000Da、15,000Da、16,000Da、17,000Da、18,000Da、19,000Da、20,000Da、21,000Da、22,000Da、23,000Da、24,000Da、25,000Da、26,000Da、27,000Da、28,000Da、29,000Da、30,000Da、31,000Da、32,000Da、33,000Da、34,000Da、35,000Da、36,000Da、37,000Da、38,000Da、39,000Da、40,000Da、41,000Da、42,000Da、43,000Da、44,000Da、45,000Da、46,000Da、47,000Da、48,000Da、49,000Da、50,000Da、51,000Da、52,000Da、53,000Da、54,000Da、55,000Da、56,000Da、57,000Da、58,000Da、59,000Da、60,000Da、61,000Da、62,000Da、63,000Da、64,000Da、65,000Da、66,000Da、67,000Da、68,000Da、69,000Da、70,000Da、71,000Da、72,000Da、73,000Da、74,000Da、75,000Da、76,000Da、77,000Da、78,000Da、79,000Da、または80,000Daの分子量を有し得る。本開示の超低分子量多糖は、これらの列挙された分子量の任意の間の分子量も有することができる。
【0019】
超低分子量多糖、特に、超低分子量CMC成分は、単峰性、二峰性または多峰性の分子量分布を有し得、それぞれの場合で分子量ピーク(MP)は80,000Da以下である。例えば、分子量ピークは、約750~60,000Daであり得る。
【0020】
場合により、超低分子量多糖および、特に超低分子量CMC成分は、洗剤組成物中に、洗剤組成物の約0.005重量%~約10重量%の濃度で存在する。例えば、超低分子量多糖は、洗剤組成物中に、洗剤組成物の約0.01重量%~約5重量%の濃度で存在する。あるいは、超低分子量多糖は、洗剤組成物中に、洗剤組成物の約0.05重量%~約2重量%の濃度で存在し得る。例えば、超低分子量多糖は、洗剤組成物中に、洗剤組成物の約0.005重量%、0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%、2重量%、2.1重量%、2.2重量%、2.3重量%、2.4重量%、2.5重量%、2.6重量%、2.7重量%、2.8重量%、2.9重量%、3重量%、3.1重量%、3.2重量%、3.3重量%、3.4重量%、3.5重量%、3.6重量%、3.7重量%、3.8重量%、3.9重量%、4重量%、4.1重量%、4.2重量%、4.3重量%、4.4重量%、4.5重量%、4.6重量%、4.7重量%、4.8重量%、4.9重量%、5重量%、5.1重量%、5.2重量%、5.3重量%、5.4重量%、5.5重量%、5.6重量%、5.7重量%、5.8重量%、5.9重量%、6重量%、6.1重量%、6.2重量%、6.3重量%、6.4重量%、6.5重量%、6.6重量%、6.7重量%、6.8重量%、6.9重量%、7重量%、7.1重量%、7.2重量%、7.3重量%、7.4重量%、7.5重量%、7.6重量%、7.7重量%、7.8重量%、7.9重量%、8重量%、8.1重量%、8.2重量%、8.3重量%、8.4重量%、8.5重量%、8.6重量%、8.7重量%、8.8重量%、8.9重量%、9重量%、9.1重量%、9.2重量%、9.3重量%、9.4重量%、9.5重量%、9.6重量%、9.7重量%、9.8重量%、9.9重量%、または10重量%の濃度で存在する。超低分子量多糖は、洗剤組成物中に、これらの列挙した百分率の任意の間の濃度で存在することもできる。
【0021】
超低分子量多糖、特に、超低分子量CMC成分は、液体洗剤組成物中で驚くほど高い溶解性を有することが発見された。液体洗剤組成物内に部分的にまたは完全に溶解する能力を有する超低分子量多糖類を組み込むことは、使用開始後すぐに超低分子量多糖類が機能的になることを可能にし、そのためこれは、超低分子量多糖が、従来の多糖と比較して、洗浄サイクルの早い段階で機能することを可能にするため、この溶解性の増加は有利である。したがって、超低分子量多糖を液体洗剤組成物に組み込むことによって、それゆえ洗浄サイクル時間を有利に短縮させることができる。
【0022】
さらに、超低分子量多糖の驚くほど増加した溶解性は、粉末洗剤組成物に組み込まれたときの短い活性化時間ももたらし、それによって洗浄サイクルの早い段階で機能し始める能力を有する洗剤組成物を有利に提供する。従来の多糖と比較してより短時間で活性になる能力を有する超低分子量多糖を組み込むことによって、結果として得られる粉末洗剤組成物は、それゆえに洗浄サイクル時間も短縮し得る。
【0023】
単一の理論に縛られるわけではないが、超低分子量CMC成分に関しては、その置換度を増加させることによって溶解性も改善することができるとも考えられる。超低分子量CMC成分は、約0.2~約1.5の置換度を有し得る。例えば、超低分子量CMC成分は、約0.4~約1.2の置換度を有し得る。あるいは、超低分子量CMC成分は、約0.6~約1の置換度を有し得る。例えば、超低分子量CMC成分は、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、または1.5の置換度も有し得る。超低分子量CMC成分は、これらの列挙された置換度の任意の間の範囲内の置換度を有することもできる。
【0024】
通常、置換度は、当該技術分野で知られている任意の技術によって測定され得る。例えば、本明細書に開示されているものを含む置換度は、以下の分析方法によって測定され得る:既知重量のCMCの試料を燃焼して灰にする、すなわち650℃で45分間加熱し、次いで25℃に冷却する;次いで冷却した試料を80℃の温度の蒸留水に溶解して試料混合液を形成した;次いで、試料混合液を70℃に冷却し、その後、指示薬としてメチルレッドを用いて、0.1N硫酸で滴定した。置換度(DS)は以下の式によって計算され、ここで、bは酸消費量(mL)であり、Gは試料の重量(グラム)である:
【数1】
【0025】
さらに、単一の理論に縛られるわけではないが、超低分子量CMC成分の置換度を増加させることは、洗濯洗剤内に典型的に存在する酵素による超低分子量CMC成分の劣化を最小限に抑えることもできると考えられる。それに加えて、またはその代わりに、超低分子量CMC成分のこの劣化を最小限に抑えるのを助けるために、超低分子量をさらに誘導体化、例えば、疎水性修飾してもよい。多成分液体洗剤投与系は、酵素が系の1つの区画内にあり、したがって液体洗剤の使用まで超低分子量CMC成分から分離されているように提供されてもよい。
【0026】
さらに、単一の理論に縛られるわけではないが、可溶性超低分子量多糖を液体洗剤組成物に組み込むことによって、得られる組成物の透明度が有益におよび驚くほど改善されるとも考えられる。これは、可溶性超低分子量多糖が、液体洗剤中の固体多糖粒子の存在を、排除しないにしても最小限にするためであり、そうでなければそれらは曇りを引き起こし、したがって液体洗剤組成物の全体的な透明度に悪影響を及ぼすと考えられる。例えば、洗剤組成物は、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%の高い透過率値によって表される高い透明度を、洗剤の0.1、0.2、0.3、0.4または0.5重量濃度%のCMCまたはアニオン性セルロースにおいて有し得る。例えば、洗剤の0.1、0.2、0.3、0.4または0.5重量濃度%のCMCまたはアニオン性セルロースでは、96~100%の透過率値。
【0027】
通常、本明細書に開示されている洗剤組成物の透明度は、当該技術分野で知られている任意の技術によって測定され得る。例えば、透明度は、洗剤組成物の透過率を測定することによって決定され得る。
【0028】
従来の多糖を含む液体洗剤組成物は、結果として生じる従来の多糖の相分離のために、一般に不安定であることが知られている。相分離は、他の理由の中でも、それが液体洗剤組成物全体の透明度に悪影響を及ぼすため、望ましくない。結果として、そのような洗剤および/または従来の多糖に添加される構造化剤は、超微粉砕を受ける。
【0029】
しかしながら、超低分子量多糖を含有する液体洗剤組成物では、あるとしても最小限の相分離しか起こらないことが発見された。単一の理論に縛られるわけではないが、これは超低分子量多糖が液体洗剤内で部分的または完全に可溶化する能力によるものと考えられる。結果として、従来の多糖を含有する従来の洗剤組成物とは異なり、相分離を最小限に抑えるかもしくは防止するための、およびそれに伴って洗剤組成物の透明性を維持するための構造化剤を必要としないならびに/または超低分子量多糖の超微粉砕は不要である。例えば、洗剤組成物は、マイクロファイバーセルロース、ナノファイバーセルロースまたはバクテリアセルロースなどのセルロース繊維構造化剤を含まなくてもよい。例えば、洗剤組成物は、洗剤の0.1、0.2、0.3、0.4または0.5重量濃度%のCMCまたはアニオン性セルロースにおいて、0~3、4、5、6、7、8、または9mmの相分離によって表される良好な安定性を有し得る。
【0030】
場合により、界面活性剤系は、洗剤組成物中に、洗剤組成物の約0.01重量%~約70重量%の濃度で存在する。例えば、界面活性剤系は、洗剤組成物中に、洗剤組成物の約1重量%~約40重量%の濃度で存在し得る。あるいは、界面活性剤系は、洗剤組成物中に、洗剤組成物の約10重量%~約40重量%の濃度で存在し得る。例えば、界面活性剤系は、洗剤組成物中に、洗剤組成物の0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%、46重量%、47重量%、48重量%、49重量%、50重量%、51重量%、52重量%、53重量%、54重量%、55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、60重量%、61重量%、62重量%、63重量%、64重量%、65重量%、66重量%、67重量%、68重量%、69重量%、または70重量%の濃度で存在し得る。本開示の界面活性剤系は、洗剤組成物中に、これらの列挙した百分率の任意の間の濃度でも存在することができる。
【0031】
界面活性剤系は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、またはアニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との組み合わせを含み得る。
【0032】
さらに、界面活性剤系がアニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との組み合わせを含む場合、界面活性剤系中のアニオン性界面活性剤対非イオン性界面活性剤の重量比は、約2~約1となり得る。
【0033】
適切なアニオン性界面活性剤の非限定的な例には、脂肪族硫酸塩、脂肪族スルホン酸塩(例えば、C8~C22スルホン酸塩またはジスルホン酸塩)、芳香族スルホン酸塩(例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩)、アルキルスルホスクシネート、アルキルおよびアシルタウレート、アルキルおよびアシルサルコシネート、スルホ酢酸塩、アルキルリン酸塩、カルボン酸塩、イセチオン酸塩など、ならびにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0034】
適切な非イオン性界面活性剤の非限定的な例には、脂肪族アルコール、酸、アミド、またはアルキレンオキシドを有するアルキルフェノール、糖アミド、アルキル多糖など、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
界面活性剤系は、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、またはそれらの組み合わせも含み得る。あるいは、界面活性剤系はカチオン性界面活性剤を含まなくてもよい。界面活性剤系は、アニオン性、非イオン性、および両性界面活性剤を含み得る。界面活性剤系は、アニオン性および/または非イオン性界面活性剤以外のいかなる他の界面活性剤も含まないことも考えられる。
【0036】
本洗剤組成物は、インクラステーション防止剤、香料、漂白剤、腐食防止剤、消泡剤、蛍光増白剤、酵素など、またはそれらの組み合わせも含有し得る。これらの添加剤のいずれもが洗剤組成物から省かれ得ることも考えられる。
【0037】
超低分子量多糖を液体洗剤組成物に組み込むことは、洗剤組成物全体の粘度も増加させる可能性があり、それは、超低分子量多糖がそれゆえに所望の粘度プロファイルを有する洗剤組成物を、外観および/またはレオロジーの目的で投与使用のために提供できるという点で有益である。
【0038】
従来の洗剤は一般的に、アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤とのブレンドを含むことで、性能と費用対効果を最適化することが知られている。しかしながら、界面活性剤それ自体は、再付着防止特性が不十分であることが知られており、したがってこれらの従来の洗剤を使用すると、布地などの織物の灰色化を招く可能性がある。結果として、CMCなどの再付着防止剤が、これらの界面活性剤と組み合わせて使用される。CMCは、水素結合を介して綿系織物などの織物によって選択的に吸収されることによって、再付着防止剤として機能する。CMCの再付着防止特性は、負に帯電した汚れ粒子とカルボキシメチル基の負電荷との間の静電反発力によるものである。したがって、CMCは、洗剤中で、とりわけ汚れ担体として機能し、織物上への二次付着を防止する。
【0039】
超低分子量多糖を含む本液体洗剤組成物は、従来の洗剤組成物(すなわち、従来の多糖を含む洗剤組成物)および構造化剤を含む洗剤組成物と比較して、改善された再付着防止特性も有する。本粉末洗剤組成物は、従来の洗剤組成物と比較して、改善された再付着防止特性も有し得るとも考えられる。単一の理論に縛られるわけではないが、超低分子量多糖は、従来の多糖と比較して布地の表面の空洞内により容易に浸透することができ、および従来の多糖が浸透できない領域に浸透することもでき、それゆえ、洗剤組成物、少なくとも液体洗剤組成物は、改善された再付着防止特性を有すると考えられる。例えば、CMCを含まない対照と比較した場合、7単位を超える平均測定反射率によって反映されるように、再付着防止特性は高くなり得る。例えば、洗剤の0.1、0.2、0.3、0.4または0.5重量濃度%のCMCまたはアニオン性セルロースにおいて、平均測定反射率は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25を超え得る。組成物は、段落26に記載の優れた透過率、段落29に記載の相分離、および/または上記の再付着防止を有し得る。
【0040】
超低分子量多糖の特性は、洗剤組成物に使用される濃度および洗剤組成物の特性に影響を与える。分子量範囲の下端では、特定の特性を達成するために高濃度の超低分子量多糖が使用され得る。分子量範囲の上端では、特定の特性を達成するために低濃度の超低分子量多糖が使用され得る。さらに、超低分子量多糖の特性は、洗剤組成物に使用される界面活性剤濃度に影響を及ぼし得る。当業者は、有利な相分離、透過率または再付着防止の特徴について、提供されたプロトコルを使用して、これらのパラメーターを変更して洗剤を試験することができるであろう。洗剤組成物は、洗剤組成物の約0.05重量%~約2重量%の濃度の超低分子量多糖、および洗剤組成物の約10重量%~約40重量%の濃度の界面活性剤系を含み得、ここで超低分子量多糖は、約1,000Da~約30,000Daの分子量を有する。例えば、洗剤組成物は、洗剤組成物の約0.05重量%~約2重量%の濃度の超低分子量多糖、および洗剤組成物の約1重量%~約35重量%の濃度の界面活性剤系を含み得、ここで超低分子量多糖は、約30,000Da~80,000Daの分子量を有する。他の例では、洗剤組成物は、洗剤組成物の約0.1重量%~約0.3重量%の濃度の超低分子量多糖、および洗剤組成物の約0.01重量%~約30重量%の濃度の界面活性剤系を含み得、ここで超低分子量多糖は、約50,000Da~80,000Daの分子量を有する。
【0041】
本明細書に記載の洗剤組成物は、任意の既知方法を用いて製造され得る。
【0042】
例えば、本方法は、界面活性剤系に超低分子量多糖を添加して洗剤混合物を形成することを含み得、ここで界面活性剤系は、アニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤を含み、混合物中に、混合物の約0.01%~約70重量%の濃度で存在する。
【0043】
本方法は、超低分子量多糖を提供することをさらに含み得る。例えば、超低分子量多糖を提供することは、従来の分子量を有する多糖の出発物質を解重合して超低分子量多糖を形成することを含み得る。
【0044】
一般に、出発材料は、EP 382577、GB 2,281,073、EP 708113、国際公開第2005/012540号、米国特許公開第2005/020944号、米国特許公開第2010/0063269号、米国特許第6,054,511号に開示されているものなどの当該技術分野において知られている任意の技法によって解重合され得、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、出発材料は水中において過酸化水素で解重合され得、あるいは出発セルロース材料は酵素または酸で解重合される。
【0045】
超低分子量多糖は、界面活性剤系に添加されるときに、液体の形態であり得る。あるいは、超低分子量多糖は、界面活性剤系に添加されるときに、粒子形態であり得る。
【0046】
場合により、界面活性剤系は、液体の形態である。界面活性剤系が液体形態である場合、超低分子量多糖は、界面活性剤系に添加されるときに、液体形態であり得る。あるいは、界面活性剤系が液体形態である場合、超低分子量多糖は、界面活性剤系に添加されるときに、粒子形態であり得る。
【0047】
さらなる例では、界面活性剤系は、粒子形態であり得る。界面活性剤系が粒子形態である場合、超低分子量多糖は、界面活性剤系に添加されるときに、液体形態であり得る。あるいは、界面活性剤系が粒子形態である場合、超低分子量多糖は、界面活性剤系に添加されるときに、粒子形態であり得る。
【0048】
洗剤組成物は、以下の非限定的な実施例によってさらに理解され得る。
【実施例
【0049】
(プロトコル1:分子量(Mw、Mp)の測定)
CMCの分子量を、GPCmax VE GPC溶媒/試料モジュール(Viscotek)、カラムオーブン、270 Dual DetectorおよびShodex RI-71を用いて測定した。測定前に、狭義標準プルランを使用してシステムを較正した。CMC10mgを、0.1MのNaNO3+10%MeOH溶離液に1mg/mlの濃度で溶解させ、16時間混合して試験試料を形成した。試料を0.2μmフィルターに通して濾過し、濾過した試料の100マイクロリットルを2つのViscotek A600M General Mixed 300×8.0mmカラムに0.8ml/分の流速で注入した。次いで、直角光散乱、粘度および屈折率検出器(Viscotek)を用いて試料を分析した。OmniSec(Viscotek)ソフトウェアは、検出器シグナルを分子量値に変換し、重量平均分子量(Mw)およびピーク分子量(Mp)を計算した。
【0050】
(プロトコル2:透過率の測定)
溶液の透明度を、UV-VIS(Genesys 6、ThermoSpectronic)により600nmで、試料の透過率を測定することによって決定した。CMCの試料を液体洗剤に添加し、プロペラミキサーで400rpmで1時間25℃において混合し、試験試料を形成した。0.1%CMC濃度試料については、1グラム(乾燥重量)CMC/999グラム液体洗剤を使用し、0.5%CMC濃度については、5グラム(乾燥重量)CMC/995グラム液体洗剤を使用した。次いで試験試料を、40日間37℃の水浴中で貯蔵した。何らかの相分離が観察された場合、分析前に予混合試料をスパチュラで混合した。各試験試料について、CMCを含まない液体洗剤の参照試料があり、その透過率も測定し、参照として使用した。透過率(%)が大きいほど、試料はより澄んでいた。
【0051】
(プロトコル3:再付着防止特性の測定)
試料の付着防止特性を、Tergotometer(Copley Scientific、ノッティンガム、英国)を用いて測定した。市販の4種類の液体洗剤と1種類の標準液体洗剤AATCC 2003を使用した。以下の組成を有するAATCC2003液体参照洗剤WOB(Testgewebe GmbH、ブルッゲン、ドイツから入手可能)を使用した:12.0%直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムナトリウム塩、8.0%非イオン性界面活性剤、1.2%クエン酸(クエン酸ナトリウムとして)、4.0%脂肪酸(C24ナトリウム塩)、2.7%水酸化ナトリウム、0.3%キレート剤(DTPA)、8.0%安定剤(プロパンジオール)、1.0%防腐剤(ホウ砂)および製剤のバランスをとるための水。それぞれの異なる液体洗剤について、洗剤自体を含み、CMCを含まない対照試験試料を調製した。各液体洗剤の使用レベルを、以下の表に記載する:
【表1】
【0052】
各試験試料について、ポットに、18°dHの水硬度および25℃の温度の800mLの水を満たした。次いで、CMCを、液体洗剤を基準にして0.1%または液体洗剤を基準にして0.5%のいずれかでポットに添加した。8つの5cm*5cmの白い綿見本(Warwick Equest、Stanley、ダラム、英国)、0.16gのカーボンブラック、および表1に基づく液体洗剤量をポットに加えた。
【0053】
各対照試料について、ポットに、18°dHの水硬度および25℃の温度の800mLの水を満たした。8つの5cm*5cmの白い綿見本(Warwick Equest、Stanley、ダラム、英国)、0.16gのカーボンブラック、および表1に基づく液体洗剤量をポットに加えた。対照試料にはCMCを添加しなかった。
【0054】
各試料について、見本を、200rpmで撹拌しながら25℃の温度で洗浄し、その後見本を18°dHの水硬度および25℃の温度の水中ですすいだ。総洗浄時間は60分であり、総すすぎ時間は15分であった。次いで、見本を25℃で一晩乾燥させた後、アイロンをかけた。
【0055】
次いで、各見本の反射率を、Minolta CM-3600d装置(Konica)により測定した。測定前に、Minolta CM-3600dを、Inventia AB、スウェーデンからの一次参照紙(CIE Whiteness D65/10°およびISO Brightness)によって較正した。二次較正は、Hohenstein Laboratories GmbH&Co.KG、ドイツからの参照布地(CIE Whiteness D65/10°およびGanz Griesser)により行った。試験試料の各見本および対照試料の各見本の反射率を測定し、次いで平均した。次いで、試験試料と対照試料の平均測定反射率の差を計算した。差が大きいほど、布見本はより白くなり(より灰色でなく)、その結果、対照試料と比較して、試験試料の再付着防止特性がより効果的であった。その対照試料と比較して7単位未満の平均測定反射率を有する試験試料は、望ましくないと見なされた。
【0056】
(プロトコル4:液体洗剤に予め混合されたCMCでの貯蔵後の再付着防止特性効果の測定)
CMCを、AATCC2003液体参照洗剤WOBと予め混合して0.5重量%CMCの濃度にし、次いで2セットに分け、一方のセットを室温で1日間放置し(「新しい」)、他方のセットを40日間37℃で貯蔵した(「古い」)。新しいおよび古い予混合試料の両方を再付着防止特性について試験し、その結果を表3に示した。何らかの相分離が観察された場合、予混合試料をポットに投入する前に混合した。ポットに18°dHの水硬度および25℃の温度の水800mLを入れた。8つの5cm*5cmの白い綿見本(Warwick Equest、Stanley、ダラム地方、英国)、0.16gのカーボンブラック、および予混合試料をポットに加えた。そうでなければ、試験プロトコルはプロトコル3に従った。
【0057】
(プロトコル5:安定性の測定)
CMCの試料を液体洗剤に添加し、プロペラミキサーを用いて400rpmで1時間25℃で混合し、試験試料を形成した。0.1%CMC濃度試料については、1グラム(乾燥重量)CMC/999グラム液体洗剤を使用し、0.5%CMC濃度については、5グラム(乾燥重量)CMC/995グラム液体洗剤を使用した。混合試料を、40日間37℃の水浴中の密閉ガラス瓶に貯蔵した。貯蔵後、試料を室温に冷却し、スパチュラで混合した。次いで、10mLの混合試料を、15mLの遠心分離管(Duran Assistent、ドイツ)に入れた。次いで試料を、30分間5000rpmで遠心分離し(Centrifuge 5804、Eppendorf)、試料の相(固液)を分離した。固相を遠心分離管の底から測定した。ミリメートルで測定した試料の固相の量は、試料の安定性を示した。この試験において3mmより上は望ましくないレベルとみなした。
【0058】
(実施例1:30,000Da未満の分子量を有する超低分子量CMCの調製)
1507グラムの水道水を、ミキサーを備えた容器に加えた。次いで、温度を70℃に調整し、その後、100グラムの過酸化水素溶液(過酸化水素水溶液、50%活性)をその容器に添加し、混合液を形成した。次いで、974.66グラムのCMC粉末(CP Kelco Oy、アネコスキ、フィンランドによって製造された超低分子量CMC、含水量7.7%、分子量40,000Da)および追加の300グラムの過酸化水素溶液を、混合液に段階的に加え、混合液を同時にミキサーを用いて混合した。放出酸素も、窒素フラッシングにより容器の頂部から除去した。次いで、97.0グラムの焼灼剤(水酸化ナトリウム水溶液、50%活性)を混合液に添加し、それを添加して過酸化水素反応を促進させ、混合液のpHを7.0に調整した。300グラムの過酸化水素が反応したことを、残留過酸化物検出用の指示スリップを使用することによって確認した後、混合液を25℃に冷却し、4,000Daの分子量を有する超低分子量CMCを形成した。
【0059】
(実施例2:性能試験)
試料1、分子量4,000Da、分子量ピーク2,500Da、および単峰性分子量分布を有する実施例1の超低分子量CMC。
【0060】
試料2、40,000Daの超低分子量CMC、20,000Daの分子量ピーク、および単峰性分子量分布を有するCP Kelcoからの市販のCMC。
【0061】
試料3、Finnfix(登録商標)30、従来の分子量CMC、分子量90,000Da、80,000および20,000Daの分子量ピーク、ならびに二峰性分子量分布。
【0062】
試料4、Finnfix(登録商標)300、従来の分子量CMC、150,000Daの分子量、140,000および20,000Daの分子量ピーク、ならびに二峰性分子量分布。
【0063】
【表2-1】
【表2-2】

*プロトコル2に従って行われた試験
**プロトコル5に従って行われた試験
***プロトコル3に従って行われた試験
【0064】
【表3】
【0065】
表2の0.5%CMC用量レベルから分かるように、試料1は、液体洗剤の高い透明度(高い透過率値、96~100%)および良好な安定性(低い相分離、0~3mm)をもたらす。0.5%CMC使用レベルでは、試料2は、試料1と比較して40日安定性試験後に明らかにより危険な液体洗剤を与える。しかしながら、試料2の0.5%使用レベルでの安定性は、試料3および4の0.5%での安定性と比較して、40日後により良好である。さらに、試料1および2は、試料3および4と比較して、液体洗剤における0.5%の使用レベルで、同様の、およびある場合には優れた再付着防止結果を与える。
【0066】
さらに、表2の0.1%CMC用量レベルから分かるように、試料1の0.1%の使用レベルは、他の試料と比較した場合、最も高い透明度および安定性を与える。試料2の0.1%の使用レベルは、相分離がほとんどなく(1~3mm)、0.5%の使用レベルと比較して高い透明度および安定性を示す(60%より高い透過率)。さらに、試料1および2の使用レベル0.1%は、通常、試料3および4の0.1%の使用レベルと比較して、同様の、およびほとんどの場合に優れた再付着防止効果を有する。
【0067】
表3の結果は、再付着防止性能が、新しい状態で試験された液体洗剤およびCMCと比較して貯蔵時間後にはわずかに低いが、40日間37℃で貯蔵した後でも再付着防止性能が依然として非常に高いレベルにあることを示す(白さの増加は7単位以上である)。したがって、表2および3に示される結果に基づいて、超低分子量CMCは様々な液体洗剤と相性がよく、それは全体的に非常に良好な再付着防止特性を与え、液体洗剤の貯蔵後も再付着防止性能は高いままであると結論付けることができる。
【0068】
これらの結果に基づいて、適切な透明度および安定性を持たせるために構造化剤または超微粉砕を典型的に必要とする従来のCMCを使用するのではなく、超低分子量CMCを市販の液体洗剤に組み込むことは、適切な透明度、安定性および再付着防止特性を有する所望の液体洗剤を提供するのに有益である。
【0069】
文脈および技術的理由が許す限り、本開示の以下の番号付き実施形態、態様、および特徴は、特定の実施形態においてのみ開示され得る様々な特徴と他の開示される実施形態とを組み合わせる能力を強調して提供される。
【0070】
(態様:)
項1 カルボキシメチルセルロース成分、アニオン性セルロース誘導体、およびそれらの混合物からなる群より選択される多糖、ならびに界面活性剤系を含む洗剤組成物であって;多糖が、約1,000ダルトン~80,000ダルトン以下の重量平均分子量を有する、洗剤組成物。
項2 多糖が、約1,000Da~約40,000Daの分子量を有する、項1に記載の洗剤組成物。
項3 多糖が、約1,000Da~約30,000Daの分子量を有する、項1に記載の洗剤組成物。
項4 多糖が、約1,000Da~約15,000Daの分子量を有する、項1に記載の洗剤組成物。
項5 多糖が、約80,000Da以下の分子量ピークを有する、項1~4のいずれか一項に記載の洗剤組成物。
項6 多糖が、約750Da~約80,000Daの分子量ピークを有する、項1~4のいずれか一項に記載の洗剤組成物。
項7 多糖がカルボキシメチルセルロース成分である、項1~6のいずれか一項に記載の洗剤組成物。
項8 カルボキシメチルセルロース成分がカルボキシメチルセルロースナトリウムである、項7に記載の洗剤組成物。
項9 カルボキシメチルセルロース成分が修飾カルボキシメチルセルロースである、項7に記載の洗剤組成物。
項10 カルボキシメチルセルロース成分が疎水性修飾カルボキシメチルセルロースである、項7に記載の洗剤組成物。
項11 カルボキシメチルセルロース成分がカチオン性修飾カルボキシメチルセルロースである、項7に記載の洗剤組成物。
項12 カルボキシメチルセルロース成分が硫酸-またはスルホン酸-修飾カルボキシメチルセルロースである、項7に記載の洗剤組成物。
項13 カルボキシメチルセルロース成分が約0.2~約1.5の置換度を有する、項7~12のいずれか一項に記載の洗剤組成物。
項14 カルボキシメチルセルロース成分が約0.4~約1.2の置換度を有する、項13に記載の洗剤組成物。
項15 カルボキシメチルセルロース成分が約0.6~約1の置換度を有する、項13に記載の洗剤組成物。
項16 カルボキシメチルセルロース成分が、洗剤組成物中に、洗剤組成物の約0.005重量%~約10重量%の濃度で存在する、項1~15のいずれか一項に記載の洗剤組成物。
項17 カルボキシメチルセルロース成分が、洗剤組成物中に、洗剤組成物の約0.01重量%~約5重量%の濃度で存在する、項1~15のいずれか一項に記載の洗剤組成物。
項18 カルボキシメチルセルロース成分が、洗剤組成物中に、洗剤組成物の約0.05重量%~約2重量%の濃度で存在する、項1~15のいずれか一項に記載の洗剤組成物。
項19 界面活性剤系が、洗剤組成物中に、洗剤組成物の約0.01重量%~約70重量%の濃度で存在する、項1~18のいずれか一項に記載の洗剤組成物。
項20 界面活性剤系が、洗剤組成物中に、洗剤組成物の約1重量%~約40重量%の濃度で存在する、項1~18のいずれか一項に記載の洗剤組成物。
項21 界面活性剤系が、洗剤組成物中に、洗剤組成物の約10重量%~約40重量%の濃度で存在する、項1~18のいずれか一項に記載の洗剤組成物。
項22 界面活性剤系が、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、またはアニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との組み合わせを含む、項1~21のいずれか一項に記載の洗剤組成物。
項23 界面活性剤系中のアニオン性界面活性剤対非イオン性界面活性剤の重量比が約2~約1である、項22に記載の洗剤組成物。
項24 洗剤組成物がセルロース繊維構造化剤を含まない、項1~23のいずれか一項に記載の洗剤組成物。
項25 洗剤組成物が液体形態である、項1~24のいずれか一項に記載の洗剤組成物。
項26 洗剤組成物が粒子形態である、項1~24のいずれか一項に記載の洗剤組成物。
項27 洗剤組成物の約0.005重量%~約10重量%の濃度のカルボキシメチルセルロース成分と、洗剤組成物の約0.01重量%~約70重量%の濃度の界面活性剤系とを含む洗濯洗剤組成物であって;カルボキシメチルセルロース成分が約1,000Da~80,000Da以下の重量平均分子量を有し、カルボキシメチルセルロース成分の任意の分子量ピークが約80,000Da以下であり、洗濯洗剤組成物が液体形態である、洗濯洗剤組成物。
項28 カルボキシメチルセルロース成分の任意の分子量ピークが約750Da~約60,000Daである、項27に記載の洗濯洗剤組成物。
【0071】
上記で開示された様々な特徴および機能、またはそれらの代替物は、多くの他の異なる製品もしくは用途に組み合わせることが望ましい場合があることが理解されよう。当業者であれば、様々な現在予想されていない、または意外な代替、修正、変形、もしくは改良をその後に行うことができ、それらも以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。