(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】支援システム、分析装置、分析方法、支援装置、支援方法、分析プログラム、及び支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0601 20230101AFI20250318BHJP
【FI】
G06Q30/0601 330
(21)【出願番号】P 2020152287
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 亜季子
(72)【発明者】
【氏名】隅田 聡
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 公亮
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-077269(JP,A)
【文献】特開2020-095395(JP,A)
【文献】特開2002-288216(JP,A)
【文献】特開2001-222586(JP,A)
【文献】特開2009-205365(JP,A)
【文献】特開2016-062276(JP,A)
【文献】特開2007-172340(JP,A)
【文献】特開2002-189880(JP,A)
【文献】特開2017-204249(JP,A)
【文献】特開平06-075651(JP,A)
【文献】特開2013-239160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
ユーザが購入しようとする商品
が設置される空間とは直接関係しない商品又は表現に対するユーザの印象又は嗜好を問う質問を含むアンケートに対するユーザの回答を取得する工程と、
前記アンケートに対する回答に基づいてユーザの感性又は嗜好に合っ
た商品が設置される空間を選出するための選出基準に基づいて、取得された回答から、前記ユーザの感性又は嗜好に合っ
た空間を選出する工程と、
選出され
た空間を前記ユーザに提示する工程と、
を実行させる支援プログラム。
【請求項2】
前記選出基準は、前記アンケートに対する回答からユーザの感性を数値化するための算出基準を含む請求項1に記載の支援
プログラム。
【請求項3】
コンピュータに、
ユーザが購入しようとする商品とは直接関係しない商品又は表現に対するユーザの印象又は嗜好を問う質問を含むアンケートに対するユーザの回答を取得する工程と、
前記アンケートに対する回答に基づいてユーザの感性又は嗜好に合った商品又は商品が設置される空間を選出するための選出基準に基づいて、取得された回答から、前記ユーザの感性又は嗜好に合った商品又は空間を選出する工程と、
選出された商品又は空間を前記ユーザに提示する工程と、
を実行させ、
前記選出基準は、前記アンケートに対する回答からユーザの感性を数値化するための算出基準を含み、
前記アンケートに含まれる質問に対する複数の回答の選択肢のそれぞれに対して、物の状態又は印象を形容する物理形容語又は人間の感性を表す感性語のスコアが割り当てられており、前記算出基準は、ユーザが回答した選択肢に割り当てられたスコアに基づいてユーザの感性を数値化す
る
支援
プログラム。
【請求項4】
前記算出基準は、ユーザが回答した選択肢に割り当てられた物理形容語又は人間の低次感性を表す感性語のスコアに基づいてユーザの高次感性を数値化する請求項3に記載の支援
プログラム。
【請求項5】
コンピュータに、
ユーザが購入しようとする商品とは直接関係しない商品又は表現に対するユーザの印象又は嗜好を問う質問を含むアンケートに対するユーザの回答を取得する工程と、
前記アンケートに対する回答に基づいてユーザの感性又は嗜好に合った商品又は商品が設置される空間を選出するための選出基準に基づいて、取得された回答から、前記ユーザの感性又は嗜好に合った商品又は空間を選出する工程と、
選出された商品又は空間を前記ユーザに提示する工程と、
を実行させ、
前記選出
する工程において、前記ユーザの感性又は嗜好に合った複数の空間の候補を選出し、
前記提示
する工程において、前記選出
する工程において選出された複数の空間の画像を前記ユーザに提示し、
前記選出
する工程において、前記複数の空間のうち前記ユーザにより選択された空間に合った複数の商品の候補を選出し、
前記提示
する工程において、前記選出
する工程において選出された複数の商品の候補に関する情報を前記ユーザに提示す
る
支援
プログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
ユーザが購入しようとする商品とは直接関係しない商品又は表現に対するユーザの印象又は嗜好を問う質問を含むアンケートに対するユーザの回答を取得する工程と、
前記アンケートに対する回答に基づいてユーザの感性又は嗜好に合った商品又は商品が設置される空間を選出するための選出基準に基づいて、取得された回答から、前記ユーザの感性又は嗜好に合った商品又は空間を選出する工程と、
選出された商品又は空間を前記ユーザに提示する工程と、
を実行させ、
前記選出
する工程において、前記空間に設置される複数の種類の商品の複数の候補をそれぞれ選出し、いずれかの種類の商品が前記ユーザにより選択されると、それ以外の種類の商品の候補を選出し直
す
支援
プログラム。
【請求項7】
前記アンケートは、物或いは空間の画像又は言葉に対するユーザの印象又は嗜好を問う質問を更に含む請求項1から
6のいずれかに記載の支援
プログラム。
【請求項8】
前記選出基準は、嗜好の傾向ごとに分類された複数のカテゴリのいずれにユーザが属するかを判定し、判定されたカテゴリに応じた商品を選出するための基準を含む請求項1から
7のいずれかに記載の支援
プログラム。
【請求項9】
前記選出基準は、数値化されたユーザの感性と、商品又は空間に割り当てられたスコアとの類似度を算出し、算出された類似度の高い商品を選出するための基準を含む請求項1から
8のいずれかに記載の支援
プログラム。
【請求項10】
前記提示
する工程において、前記アンケートに対する前記ユーザの回答に基づいて分析された前記ユーザの感性又は嗜好に関する情報を前記ユーザに提示する
請求項1から9のいずれかに記載の支援
プログラム。
【請求項11】
アンケートに対する回答に基づいてユーザの感性又は嗜好に合っ
た商品が設置される空間を選出するための選出基準を生成するために、選択対象の商品
が設置される空間とは直接関係しない商品又は表現に対するユーザの印象又は嗜好を問う質問を含むアンケートに対する複数のユーザの回答を収集する回答収集部と、
前記回答収集部により収集された回答を分析することにより、前記選出基準を生成する選出基準生成部と、
を備える分析装置。
【請求項12】
コンピュータに、
アンケートに対する回答に基づいてユーザの感性又は嗜好に合っ
た商品が設置される空間を選出するための選出基準を生成するために、選択対象の商品
が設置される空間とは直接関係しない商品又は表現に対するユーザの印象又は嗜好を問う質問を含むアンケートに対する複数のユーザの回答を収集する工程と、
収集された回答を分析することにより、前記選出基準を生成する工程と、
を実行させる分析方法。
【請求項13】
ユーザが購入しようとする商品
が設置される空間とは直接関係しない商品又は表現に対するユーザの印象又は嗜好を問う質問を含むアンケートに対するユーザの回答を取得する回答取得部と、
前記アンケートに対する回答に基づいてユーザの感性又は嗜好に合っ
た商品が設置される空間を選出するための選出基準に基づいて、前記回答取得部により取得された回答から、前記ユーザの感性又は嗜好に合っ
た空間を選出する選出部と、
前記選出部により選出され
た空間を前記ユーザに提示する提示部と、
を備える支援装置。
【請求項14】
コンピュータに、
ユーザが購入しようとする商品
が設置される空間とは直接関係しない商品又は表現に対するユーザの印象又は嗜好を問う質問を含むアンケートに対するユーザの回答を取得する工程と、
前記アンケートに対する回答に基づいてユーザの感性又は嗜好に合っ
た商品が設置される空間を選出するための選出基準に基づいて、取得された回答から、前記ユーザの感性又は嗜好に合っ
た空間を選出する工程と、
選出され
た空間を前記ユーザに提示する工程と、
を実行させる支援方法。
【請求項15】
コンピュータに、
アンケートに対する回答に基づいてユーザの感性又は嗜好に合っ
た商品が設置される空間を選出するための選出基準を生成するために、選択対象の商品
が設置される空間とは直接関係しない商品又は表現に対するユーザの印象又は嗜好を問う質問を含むアンケートに対する複数のユーザの回答を収集する工程と、
収集された回答を分析することにより、前記選出基準を生成する工程と、
を実行させる分析プログラム。
【請求項16】
ユーザの感性に関する情報を収集して分析する分析装置と、
前記分析装置による分析結果に基づいてユーザの感性又は嗜好に合った商品
が設置される空間の選択を支援する支援装置と、
を備え、
前記分析装置は、
選択対象の商品
が設置される空間とは直接関係しない商品又は表現に対するユーザの印象又は嗜好を問う質問を含むアンケートに対する複数のユーザの回答を収集する回答収集部と、
前記回答収集部により収集された回答を分析することにより、前記アンケートに対する回答に基づいてユーザの感性又は嗜好に合っ
た商品が設置される空間を選出するための選出基準を生成する選出基準生成部と、
を備え、
前記支援装置は、
前記アンケートに対するユーザの回答を取得する回答取得部と、
前記選出基準に基づいて、前記回答取得部により取得された回答から、前記ユーザの感性又は嗜好に合っ
た空間を選出する選出部と、
前記選出部により選出され
た空間を前記ユーザに提示する提示部と、
を備える支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、商品の購入者を支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
顧客の趣味嗜好に適した生活空間をつくるために、顧客の趣味嗜好を把握するための様々な方法が用いられている。例えば、特許文献1には、ライフスタイルへの要望を問うアンケート結果から、顧客に合った暮らしのコンセプトを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、顧客自身が自分の感性やライフスタイルを把握していない場合が多いため、特許文献1に記載された方法では、顧客に本当に適しているものを提案したり、潜在的なニーズを引き出したりすることができないことを、本発明者らは課題として認識した。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、商品を購入しようとするユーザの利便性を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の支援システムは、ユーザの感性に関する情報を収集して分析する分析装置と、分析装置による分析結果に基づいてユーザの感性又は嗜好に合った商品の選択を支援する支援装置と、を備え、分析装置は、選択対象の商品とは直接関係しない商品又は表現に対するユーザの印象又は嗜好を問う質問を含むアンケートに対する複数のユーザの回答を収集する回答収集部と、回答収集部により収集された回答を分析することにより、アンケートに対する回答に基づいてユーザの感性又は嗜好に合った商品又は商品が設置される空間を選出するための選出基準を生成する選出基準生成部と、を備え、支援装置は、アンケートに対するユーザの回答を取得する回答取得部と、選出基準に基づいて、回答取得部により取得された回答から、ユーザの感性又は嗜好に合った商品又は空間を選出する選出部と、選出部により選出された商品又は空間をユーザに提示する提示部と、を備える。
【0007】
本開示の別の態様は、分析装置である。この装置は、アンケートに対する回答に基づいてユーザの感性又は嗜好に合った商品又は商品が設置される空間を選出するための選出基準を生成するために、選択対象の商品とは直接関係しない商品又は表現に対するユーザの印象又は嗜好を問う質問を含むアンケートに対する複数のユーザの回答を収集する回答収集部と、回答収集部により収集された回答を分析することにより、選出基準を生成する選出基準生成部と、を備える。
【0008】
本開示のさらに別の態様は、分析方法である。この方法は、コンピュータに、アンケートに対する回答に基づいてユーザの感性又は嗜好に合った商品又は商品が設置される空間を選出するための選出基準を生成するために、選択対象の商品とは直接関係しない商品又は表現に対するユーザの印象又は嗜好を問う質問を含むアンケートに対する複数のユーザの回答を収集する工程と、収集された回答を分析することにより、選出基準を生成する工程と、を実行させる。
【0009】
本開示のさらに別の態様は、支援装置である。この装置は、ユーザが購入しようとする商品とは直接関係しない商品又は表現に対するユーザの印象又は嗜好を問う質問を含むアンケートに対するユーザの回答を取得する回答取得部と、アンケートに対する回答に基づいてユーザの感性又は嗜好に合った商品又は商品が設置される空間を選出するための選出基準に基づいて、回答取得部により取得された回答から、ユーザの感性又は嗜好に合った商品又は空間を選出する選出部と、選出部により選出された商品又は空間をユーザに提示する提示部と、を備える。
【0010】
本開示のさらに別の態様は、支援方法である。この方法は、コンピュータに、ユーザが購入しようとする商品とは直接関係しない商品又は表現に対するユーザの印象又は嗜好を問う質問を含むアンケートに対するユーザの回答を取得する工程と、アンケートに対する回答に基づいてユーザの感性又は嗜好に合った商品又は商品が設置される空間を選出するための選出基準に基づいて、取得された回答から、ユーザの感性又は嗜好に合った商品又は空間を選出する工程と、選出された商品又は空間をユーザに提示する工程と、を備える。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係る商品購入支援システムの構成を示す図である。
【
図2】実施の形態に係る感性情報分析装置の機能ブロックを示す図である。
【
図4】
図4(a)(b)(c)は、感性情報分析装置が実施するアンケートの例を示す図である。
【
図5】実施の形態に係る商品購入支援装置の機能ブロックを示す図である。
【
図6】商品購入支援装置により提示された表示画面の例を示す図である。
【
図7】商品購入支援装置により提示された表示画面の例を示す図である。
【
図8】商品購入支援装置により提示された表示画面の例を示す図である。
【
図9】商品購入支援装置により提示された表示画面の例を示す図である。
【
図10】実施の形態に係る分析方法の手順を示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態に係る支援方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施の形態として、ユーザの感性や嗜好に合った商品の選択を支援する技術について説明する。本実施の形態の支援システムは、物、空間、言葉などに対するユーザの印象や嗜好を問う質問を含むアンケートを実施し、アンケートに対するユーザの回答に基づいて数値化されたユーザの感性に合った商品を自動選択(選出)してユーザに提示する。これにより、ユーザは、簡単なアンケートに回答するだけで、多数の商品の中から自分の感性や嗜好に合った商品を発見することができる。また、本実施の形態の支援システムによれば、ユーザが住宅を購入したり、生活空間をリフォーム又はリノベーションしたり、生活空間に配置される複数の商品を同時に購入したりする場合に、ユーザの感性や嗜好に合った複数の商品を提案することにより、ユーザに適した感性価値の高い生活空間を提供することができる。
【0014】
図1は、実施の形態に係る支援システム10の構成を示す。支援システム10は、ユーザの感性に関する情報を収集して分析する感性情報分析装置100と、感性情報分析装置100による分析結果に基づいてユーザの感性又は嗜好に合った商品の選択を支援する商品購入支援装置200と、ユーザが使用するユーザ端末300と、商品に関する情報を提供する商品情報提供装置400と、それらを接続する通信手段の一例であるインターネット20とを含む。
【0015】
感性情報分析装置100は、ユーザの感性に関する情報を収集するためのアンケートを実施し、複数のユーザからアンケートに対する回答を収集する。感性情報分析装置100は、収集した回答を分析することにより、アンケートに対する回答に基づいてユーザの感性又は嗜好に合った商品を選出するための選出基準を生成する。感性情報分析装置100は、生成した選出基準を商品購入支援装置200に提供する。
【0016】
商品購入支援装置200は、ユーザの感性に関する情報を取得するためのアンケートを実施し、ユーザ端末300からアンケートに対する回答を取得する。商品購入支援装置200は、感性情報分析装置100から取得した選出基準に基づいて、取得された回答から、ユーザの感性又は嗜好に合った商品又は商品が設置される空間を選出してユーザ端末300に提示する。
【0017】
商品情報提供装置400は、商品購入支援装置200からユーザ端末300に提示される商品に関する情報をユーザ端末300に提供する。商品情報提供装置400は、ウェブサーバとして構成されてもよく、ウェブページを介して商品に関する情報をユーザ端末300に提供してもよい。
【0018】
図2は、実施の形態に係る感性情報分析装置100の機能ブロックを示す。各ブロックは、ハードウェア的には、CPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等により実現される。ここでは、それらの連携により実現される機能ブロックを描いている。これらの機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェアの組合せにより様々な態様で実現できる。以降のブロック図も同様である。
【0019】
感性情報分析装置100は、通信部102、制御部110、及び記憶装置150を備える。通信部102は、インターネット20を介した、他の装置との間の通信を制御する。通信部102は、有線又は無線の任意の通信技術を用いて、他の装置との間で通信を行ってもよい。
【0020】
記憶装置150は、アンケート保持部151、回答保持部152、及びユーザデータベース153を備える。
【0021】
アンケート保持部151は、アンケートのデータを保持する。アンケートは、複数の質問を含み、複数の質問のそれぞれは、回答の選択肢を複数含む。選択肢のそれぞれには、物の状態又は印象を形容する物理形容語、又は人間の感性を表す感性語のスコアが割り当てられている。回答保持部152は、アンケートに対するユーザの回答を保持する。ユーザデータベース153は、アンケートに回答したユーザに関する情報を格納する。ユーザデータベース153は、ユーザの年齢、性別、職業、趣味、家族構成、居住地などの属性情報を格納してもよい。
【0022】
図3は、物理形容語及び感性語の例を示す。物理形容語は、物の状態や印象などを形容する形容詞、形容動詞などであり、例えば、「明るい」、「つやのある」、「温かみのある」などである。感性語は、人間が外界の事象などから引き起こされる感情に対応して想起される形容詞、形容動詞などである。感性語は、複数の階層に分類される。低次感性は、人間の感覚、知覚や、その認識と解釈における特徴や傾向を表し、例えば、「親近感」、「安らぎのある」、「都会的な」などである。高次感性は、複数の低次感性を統合した結果として機能する感性であり、例えば、「特別感」などである。
【0023】
低次感性は、ある対象に対して、多くの人が、程度の差こそあれ、共通して想起しうる感性であり、アンケートなどによって比較的定量化しやすい。それに対して、高次感性は、背景的知識や様々な周辺的な状況の認識の影響が強く現れるため、人によってもタイミングによっても大きく異なりうる感性であり、定量化が困難である。例えば、多くの人が、高級ホテルの浴室に対して、「都会的な」、「洗練された」、「上品な」などの感性を想起し、鄙びた旅館の浴室に対して、「親近感」、「安らぎのある」、「自然な」などの感性を想起すると考えられるが、前者の低次感性語で表される価値観と後者の低次感性語で表される価値観のいずれをどの程度重視するのかは人それぞれであるから、「特別感」について直接問う質問をしてユーザ自身に定量化させるのは困難である。また、いずれに「特別感」を感じるのかをユーザ自身が把握できていない場合もある。
【0024】
本実施の形態では、
図3に示すように、高次感性を定量化するために、高次感性を構成する複数の低次感性を表す感性語のスコアが割り当てられた回答の選択肢を含むアンケートを実施する。これにより、ユーザの高次感性を定量化して把握することができるので、ユーザの感性や嗜好に合った商品や空間を的確に選出することができる。また、ユーザは、回答が容易なアンケートに回答するだけで自分の感性や嗜好に合った商品や空間が提示されるので、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0025】
図4(a)(b)(c)は、感性情報分析装置100が実施するアンケートの例を示す。
図4(a)は、生活空間の画像を提示し、その印象を問う質問を示す。「親近感のある」、「安らぎのある」などの低次感性語や、「明るい」、「温かみのある」などの物理形容語について、「全く思わない」から「非常に思う」まで5段階の回答の選択肢が与えられる。この質問に対する回答には、同じ生活空間の画像に対するユーザごとの印象の違いが反映される。なお、回答の選択肢は、2段階、7段階など、任意の段階で与えられてもよい。
【0026】
図4(b)は、複数の言葉を提示し、希望する商品のイメージを問う質問を示す。「親近感のある」、「安らぎのある」などの低次感性語や、「明るい」、「温かみのある」などの物理形容語が回答の選択肢として与えられ、上位3つまで選択可能とされる。この質問に対する回答には、ユーザが商品の選択において重視する感性や印象が反映される。
【0027】
図4(c)は、複数の時計を提示し、好みに合う時計を問う質問を示す。複数の時計のそれぞれに、低次感性語や物理形容語のスコアが割り当てられている。例えば、高級ブランドの腕時計には、「洗練された」、「上品な」などについて高く、「親近感のある」、「凸凹した」などについて低いスコアが割り当てられる。ユーザが購入しようとしている対象商品とは直接関係しないが、ユーザの感性や嗜好が現れやすいカテゴリの商品を選択肢とすることにより、ユーザが回答しやすくすることができ、ユーザの感性や嗜好がより強く反映された回答を得ることができる。選択肢とする商品は、日常生活においてユーザによりよく使用される商品であってもよい。例えば、選択肢は、衣類、アクセサリー、日用品などであってもよい。また、選択肢は、生活空間に配置される商品であってもよい。例えば、選択肢は、カーテン、カーペット、装飾品などであってもよい。また、選択肢は、生活空間の画像や、内装材などの建材などであってもよい。また、選択肢は、商品そのものではなく、色やパターン模様など、対象商品とは直接関係しない抽象的な表現などであってもよい。
【0028】
図2に戻り、制御部110は、アンケート提示部111、回答収集部112、回答分析部113、選出基準生成部114、及び選出基準提供部115を備える。
【0029】
アンケート提示部111は、アンケート保持部151から読み出したアンケートをユーザ端末300に提示する。回答収集部112は、ユーザ端末300から送信されたアンケートに対する回答を収集して回答保持部152に格納する。
【0030】
回答分析部113は、回答保持部152に保持された回答を分析する。回答分析部113は、例えば、スコアによって数値化された回答を因子分析することにより共通因子を抽出し、抽出された共通因子の因子得点をユーザのクラスタごとに算出することにより、クラスタごとの感性や嗜好の傾向を把握してもよい。例えば、「特別感」として、「非日常」を重視するクラスタAと、「上品さ」を重視するクラスタBと、「安らぎ」を重視するクラスタCなどにユーザを分類してもよい。回答分析部113は、回帰分析、重回帰分析、主成分分析、分類、クラスタリング、次元削減などの統計処理又は機械学習により回答を分析してもよい。
【0031】
選出基準生成部114は、回答分析部113による分析結果に基づいて、アンケートに対するユーザの回答から、ユーザの感性又は嗜好に合った商品又は空間を選出するための選出基準を生成する。選出基準は、アンケートに対する回答からユーザの感性を数値化するための算出基準を含んでもよい。この算出基準は、ユーザが回答した選択肢に割り当てられたスコアに基づいてユーザの感性を数値化するための数式などであってもよい。選出基準は、嗜好の傾向ごとに分類された複数のカテゴリのいずれにユーザが属するかを判定し、判定されたカテゴリに応じた商品を選出するための基準を含んでもよい。選出基準は、数値化されたユーザの感性と、商品又は空間に割り当てられたスコアとの類似度を算出し、算出された類似度の高い商品を選出するための基準を含んでもよい。
【0032】
選出基準提供部115は、選出基準生成部114により生成された選出基準を、インターネット20を介して商品購入支援装置200に提供する。
【0033】
図5は、実施の形態に係る商品購入支援装置200の機能ブロックを示す。これらの機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェアの組合せにより様々な態様で実現できる。
【0034】
商品購入支援装置200は、通信部202、制御部210、及び記憶装置250を備える。通信部202は、インターネット20を介した、他の装置との間の通信を制御する。通信部202は、有線又は無線の任意の通信技術を用いて、他の装置との間で通信を行ってもよい。
【0035】
記憶装置250は、アンケート保持部251、選出基準保持部252、及び商品情報データベース253を備える。
【0036】
アンケート保持部251は、感性情報分析装置100から提供されたアンケートのデータを保持する。選出基準保持部252は、感性情報分析装置100から提供された選出基準を保持する。商品情報データベース253は、商品情報提供装置400から提供された商品に関する情報を保持する。商品情報データベース253は、商品が配置される空間に関する情報や画像などを更に保持する。空間は、例えば、リビングルーム、寝室、浴室、トイレ、キッチン、居室などであってもよい。
【0037】
制御部210は、アンケート提示部211、回答取得部212、空間選出部213、商品選出部214、提示部215、選択受付部216、商品情報取得部217、スコア付与部218、商品分類部219、回答送信部220、選択結果送信部221、及び選出基準更新部222を備える。
【0038】
アンケート提示部211は、アンケート保持部251に保持されたアンケートの質問と回答の選択肢をユーザ端末300に提示する。回答取得部212は、ユーザ端末300からアンケートに対するユーザの回答を取得する。
【0039】
空間選出部213は、選出基準保持部252に保持された選出基準に基づいて、回答取得部212により取得された回答から、ユーザの感性又は嗜好に合った空間を選出する。提示部215は、空間選出部213により選出された空間の画像を商品情報データベース253から読み出してユーザ端末300に提示する。
【0040】
商品選出部214は、選出基準保持部252に保持された選出基準に基づいて、回答取得部212により取得された回答から、ユーザの感性又は嗜好に合った商品を選出する。提示部215は、商品選出部214により選出された商品の情報を商品情報データベース253から読み出してユーザ端末300に提示する。
【0041】
選択受付部216は、提示部215によりユーザ端末300に提示された空間又は商品の選択候補の中からユーザにより選択された空間又は商品を受け付ける。
【0042】
商品情報取得部217は、商品情報提供装置400から商品に関する情報を取得して商品情報データベース253に格納する。
【0043】
スコア付与部218は、商品情報データベース253に情報が格納された商品に、低次感性語及び物理形容語のスコアを付与して商品情報データベース253に格納する。スコア付与部218は、担当者などからスコアの入力を受け付けて商品に付与してもよいし、商品に関する情報からスコアを自動生成するための人工知能などにより生成されたスコアを商品に付与してもよい。人工知能は、商品に関する情報と、担当者などにより付与されたスコアとを学習データとする教師あり学習により学習されてもよい。スコア付与部218は、商品に関するアンケートを実施し、アンケートに対する回答を分析することにより生成されたスコアを商品に付与してもよい。付与されたスコアは、アンケートの回答から数値化されたユーザの感性と、商品又は空間に割り当てられたスコアとの類似度を算出し、算出された類似度の高い商品を選出するために使用されてもよい。
【0044】
商品分類部219は、商品情報データベース253に情報が格納された商品を分類する。商品分類部219は、嗜好の傾向ごとに分類された複数のカテゴリのいずれにユーザが属するかを判定し、判定されたカテゴリに応じた商品を選出する選出基準が適用される場合に、商品をカテゴリごとに分類してもよい。商品分類部219は、担当者などから商品の属するカテゴリの入力を受け付けて商品を分類してもよいし、商品に関する情報からカテゴリを自動判定するための人工知能などにより判定されたカテゴリに商品を分類してもよい。人工知能は、商品に関する情報と、担当者などにより分類されたカテゴリとを学習データとする教師あり学習により学習されてもよい。
【0045】
回答送信部220は、回答取得部212により取得されたアンケートに対するユーザの回答を感性情報分析装置100に送信する。選択結果送信部221は、選択受付部216により受け付けられたユーザの選択結果を感性情報分析装置100に送信する。送信された情報は、感性情報分析装置100において、回答分析部113による更なる分析に利用されてもよいし、選出基準生成部114による選出基準の生成又は更新に利用されてもよい。また、感性情報分析装置100において、アンケートの回答の選択肢に付与されたスコアを更新するために利用されてもよい。
【0046】
選出基準更新部222は、感性情報分析装置100により更新された選出基準を感性情報分析装置100から取得し、選出基準保持部252を更新する。
【0047】
図6は、商品購入支援装置200により提示された表示画面の例を示す。空間選出部213は、アンケートに対するユーザの回答に基づいて、ユーザの感性や嗜好に合った浴室空間の色、柄、及び形状を提示する。提示部215は、アンケートに対するユーザの回答の評価結果として、回答から算出されたスコアの高い物理形容語、低次感性語を提示する。
【0048】
図7は、商品購入支援装置200により提示された表示画面の例を示す。空間選出部213は、アンケート(
図4参照)に対するユーザの回答に基づいて選出した空間を提示する。
図6は、
図7に例示する候補を選出するに至った選出過程をユーザーに提示する機能を果たす。この機能により、最終的に提示される
図7に係る提案に説得力を持たせることができる。空間選出部213は、
図7に示した表示画面において、ユーザがいずれかの選択候補の画像を選択すると、空間の選択を確定する。
【0049】
図8は、商品購入支援装置200により提示された表示画面の例を示す。商品選出部214は、ユーザにより選択が確定された空間に配置される商品を選出する。商品選出部214は、ユーザの感性や嗜好に合致し、かつ、選択が確定された空間に適した商品を商品情報データベース253から選出する。例えば、商品選出部214は、浴室空間に配置される壁パネル、床、浴槽などの商品を選出する。商品選出部214は、
図8に示した表示画面において、ユーザがいずれかの選択候補を選択すると、商品の選択を確定する。商品選出部214は、いずれかの種類の商品がユーザにより選択されると、それ以外の種類の商品の候補を選出し直してもよい。例えば、商品選出部214は、既に選択が確定された商品と同一又は類似する色、柄、形状、デザイン、物理形容語、感性語、印象などを有する商品を優先的に選出してもよい。
【0050】
図9は、商品購入支援装置200により提示された表示画面の例を示す。空間に配置される全ての商品の選択が確定されると、提示部215は、確定された商品が配置された空間の画像をユーザに提示する。商品購入支援装置200は、確定された商品の情報を商品情報データベース253又は商品情報提供装置400から取得し、見積もりを作成するためのシステムに伝達して見積もりをユーザに提示させてもよい。
【0051】
図10は、実施の形態に係る分析方法の手順を示すフローチャートである。感性情報分析装置100のアンケート提示部111は、アンケートをユーザ端末300に提示し、回答収集部112は、ユーザ端末300からアンケートに対する回答を収集する(S10)。回答分析部113は、収集した回答を分析する(S12)。選出基準生成部114は、回答分析部113による分析結果に基づいて、アンケートに対するユーザの回答から、ユーザの感性又は嗜好に合った商品又は空間を選出するための選出基準を生成する(S14)。選出基準提供部115は、選出基準生成部114により生成された選出基準を商品購入支援装置200に提供する(S16)。
【0052】
図11は、実施の形態に係る支援方法の手順を示すフローチャートである。商品購入支援装置200のアンケート提示部211は、アンケートをユーザ端末300に提示し、回答取得部212は、アンケートに対するユーザの回答を取得する(S30)。空間選出部213は、選出基準に基づいて、回答取得部212により取得された回答から、ユーザの感性又は嗜好に合った空間を選出する(S32)。提示部215は、空間選出部213により選出された空間の画像をユーザに提示する(S34)。選択受付部216は、提示部215によりユーザに提示された空間の選択候補の中からユーザによる選択を受け付けて選択を確定する(S36)。
【0053】
商品選出部214は、ユーザの感性又は嗜好と、ユーザにより選択された空間に合った商品を、選出基準に基づいて選出する(S38)。提示部215は、商品選出部214により選出された商品の情報をユーザに提示する(S40)。選択受付部216は、提示部215によりユーザに提示された商品の選択候補の中からユーザによる選択を受け付けて選択を確定する(S42)。選択されていない商品が残っている場合は(S44のN)、商品選出部214は、既に選択されている商品に合わせて他の商品を再選出し(S46)、S40に戻り、提示部215は、商品選出部214により選出された商品の情報をユーザに提示する(S40)。全ての商品の選択が終了すると(S44のY)、提示部215は、選択された商品が配置された空間の画像をユーザに提示する(S48)。
【0054】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【0055】
実施の形態では、感性情報分析装置100と商品購入支援装置200が別の装置として実現される例について説明したが、これらの装置は1つの装置によって実現されてもよい。また、商品情報提供装置400と商品購入支援装置200が1つの装置によって実現されてもよい。また、感性情報分析装置100、商品購入支援装置200、及び商品情報提供装置400が1つの装置によって実現されてもよい。感性情報分析装置100、商品購入支援装置200、又は商品情報提供装置400の機能の一部又は全部が、ユーザ端末300において実行されるアプリケーションなどによって実現されてもよい。これらの装置の機能の一部又は全部が、クラウドコンピューティング、分散処理、サーバクライアントモデルなど、任意の態様で実現されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 支援システム、20 インターネット、100 感性情報分析装置、111 アンケート提示部、112 回答収集部、113 回答分析部、114 選出基準生成部、115 選出基準提供部、151 アンケート保持部、152 回答保持部、153 ユーザデータベース、200 商品購入支援装置、211 アンケート提示部、212 回答取得部、213 空間選出部、214 商品選出部、215 提示部、216 選択受付部、217 商品情報取得部、218 スコア付与部、219 商品分類部、220 回答送信部、221 選択結果送信部、222 選出基準更新部、251 アンケート保持部、252 選出基準保持部、253 商品情報データベース、300 ユーザ端末、400 商品情報提供装置。