IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星電子株式会社の特許一覧

特許7651296共重合体、ならびに当該共重合体を用いるエレクトロルミネッセンス素子材料およびエレクトロルミネッセンス素子
<>
  • 特許-共重合体、ならびに当該共重合体を用いるエレクトロルミネッセンス素子材料およびエレクトロルミネッセンス素子 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】共重合体、ならびに当該共重合体を用いるエレクトロルミネッセンス素子材料およびエレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20250318BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20250318BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20250318BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20250318BHJP
   H10K 50/11 20230101ALI20250318BHJP
   H10K 50/115 20230101ALI20250318BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20250318BHJP
   H10K 50/14 20230101ALI20250318BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20250318BHJP
   H10K 50/18 20230101ALI20250318BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20250318BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20250318BHJP
   H10K 85/30 20230101ALI20250318BHJP
【FI】
C08G61/12
H05B33/14 Z
H05B33/22 D
H10K50/10
H10K50/11
H10K50/115
H10K50/12
H10K50/14
H10K50/15
H10K50/17
H10K50/18
H10K59/10
H10K85/10
H10K85/30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020212454
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098834
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石井 寛人
(72)【発明者】
【氏名】藤山 高広
(72)【発明者】
【氏名】辻 雅司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 文昭
(72)【発明者】
【氏名】小西 悠作
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 直俊
(72)【発明者】
【氏名】キム テホ
(72)【発明者】
【氏名】チョン テヨン
(72)【発明者】
【氏名】クォン ハイル
(72)【発明者】
【氏名】チャ スンミン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヒョスク
(72)【発明者】
【氏名】チャン ウンジュ
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104675(JP,A)
【文献】国際公開第2020/171190(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0136779(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111704624(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0027030(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08G 61/12
H05B 33/14
H10K 50/00 - 102/20
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構成単位を有する共重合体:
【化1】

上記式(1)中
、非置換の炭素数3~5分岐のアルキル基または-Y-N(Ar)(Ar)を表し、この際、Yは、非置換のフェニレン基を表し、ArおよびArは、それぞれ独立して、2個の炭素数1~3のアルキル基で置換されたフルオレニル基、または非置換のビフェニル基を表し;
は、2個のフェニル基が互いに結合してフルオレン環を形成し;
は、炭素原子(C)を表し;
Arは、下記式(5)から選択される基であり:
【化2】

上記式(5)中、
Qは、-CR -を表し、この際、R およびR は、それぞれ独立して、非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基を表し;
*は、主鎖を形成する結合部位である
【請求項2】
前記式(1)で表される構成単位は、下記式(1’)で表される構成単位である、請求項1に記載の共重合体:
【化3】

上記式(1’)中、R およびAr は、前記式(1)で表される構成単位における定義と同様である。
【請求項3】
下記共重合体P-1または下記共重合体P-2である、請求項1または2に記載の共重合体。
【化4】
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の共重合体を含むエレクトロルミネッセンス素子材料。
【請求項5】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される1層以上の有機膜と、を備えるエレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機膜の少なくとも1層は、請求項1~3のいずれか1項に記載の共重合体を含む、エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記共重合体を含む前記有機膜が、正孔輸送層または正孔注入層である、請求項5に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記有機膜が半導体ナノ粒子または有機金属錯体を含む発光層を有する、請求項5または6に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体、ならびに当該共重合体を用いるエレクトロルミネッセンス素子材料およびエレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)は、研究開発が活発に進められている。特に、EL素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子や書き込み光源アレイとしての用途が有望視されている。EL素子は、陽極と陰極との間に数ナノメートルから数百ナノメートルの薄膜を有する発光素子である。また、EL素子は、通常、正孔輸送層、発光層、電子輸送層などをさらに有する。
【0003】
このうち、発光層の材料としては、蛍光発光材料、りん光発光材料がある。りん光発光材料は、蛍光発光材料と比較し、高い発光効率が見込まれる材料である。また、広い色域を網羅するために、RGB光源は半値幅の狭い発光スペクトルが要求される。特に青色は深い青が要求されるが、長寿命かつ色純度の観点を満足できる素子は見出されていないのが現状である。
【0004】
これらの問題を解決する方法として、発光材料に無機発光物質である「量子ドット」を用いる発光デバイスがある(特許文献1)。量子ドット(quantum dot;QD)は、数ナノメートルの大きさの結晶構造を有する半導体物質であって、数百から数千個程度の原子で構成されている。量子ドットは、大きさが非常に小さいため、単位体積当たりの表面積が広い。このため、大部分の原子がナノ結晶の表面に存在し、量子閉じ込め(quantum confinement)効果などを示す。このような量子閉じ込め効果により、量子ドットは、その大きさを調節することだけで発光波長を調節することができ、優れた色純度および高いPL(photoluminescence)発光効率などの特性を有するため、多くの関心を集めている。量子ドット発光素子(quantum dot light emitting diode;QD LED)は、量子ドット発光層を間において両側に正孔輸送層(hole transport layer;HTL)および電子輸送層(electron transport layer;ETL)を含む3層構造の素子が基本素子として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-199067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の正孔輸送材料を用いたエレクトロルミネッセンス素子(特に量子ドットエレクトロルミネッセンス素子)では、十分な性能(特に発光効率および耐久性)を達成することができなかった。
【0007】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、エレクトロルミネッセンス素子(特に量子ドットエレクトロルミネッセンス素子)の発光効率および耐久性(発光寿命)を向上できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、特定の構造を有する高分子を用いることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、上記目的は、下記式(1)または(2)で表される構成単位を有する共重合体によって達成できる。
【0010】
【化1】
【0011】
上記式(1)または(2)中、
は、置換されたもしくは非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換されたもしくは非置換の環形成炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基、置換されたもしくは非置換の環形成原子数5以上30以下の1価の芳香族複素環基、または-Y-N(Ar)(Ar)を表し、この際、Yは、置換されたもしくは非置換の環形成炭素数6以上30以下の2価の芳香族炭化水素基を表し、ArおよびArは、それぞれ独立して、置換されたもしくは非置換の環形成炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基、または置換されたもしくは非置換の環形成原子数5以上30以下の1価の芳香族複素環基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、置換されたもしくは非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換されたもしくは非置換の炭素数1以上20以下のアルコキシ基、置換されたもしくは非置換の環形成炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基、または置換されたもしくは非置換の環形成原子数5以上30以下の1価の芳香族複素環基を表し、2個のRおよび2個のRは、それぞれ、互いに同一であってもまたは異なってもよく、2個のRおよび2個のRは、それぞれ、互いに結合して環を形成してもよく;
およびXは、それぞれ独立して、炭素原子(C)またはケイ素原子(Si)を表し;
Arは、置換されたもしくは非置換の環形成炭素数6以上30以下の2価の芳香族炭化水素基、または置換されたもしくは非置換の環形成原子数5以上30以下の2価の芳香族複素環基を表す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発光効率および耐久性(発光寿命)に優れるエレクトロルミネッセンス素子(特に量子ドットエレクトロルミネッセンス素子)が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係るエレクトロルミネッセンス素子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の側面では、本発明は、下記式(1)または(2)で表される構成単位を有する共重合体を提供する:
【0015】
【化2】
【0016】
上記式(1)または(2)中、
は、置換されたもしくは非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換されたもしくは非置換の環形成炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基、置換されたもしくは非置換の環形成原子数5以上30以下の1価の芳香族複素環基、または-Y-N(Ar)(Ar)を表し、この際、Yは、置換されたもしくは非置換の環形成炭素数6以上30以下の2価の芳香族炭化水素基を表し、ArおよびArは、それぞれ独立して、置換されたもしくは非置換の環形成炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基、または置換されたもしくは非置換の環形成原子数5以上30以下の1価の芳香族複素環基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、置換されたもしくは非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換されたもしくは非置換の炭素数1以上20以下のアルコキシ基、置換されたもしくは非置換の環形成炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基、または置換されたもしくは非置換の環形成原子数5以上30以下の1価の芳香族複素環基を表し、2個のRおよび2個のRは、それぞれ、互いに同一であってもまたは異なってもよく、2個のRおよび2個のRは、それぞれ、互いに結合して環を形成してもよく;
およびXは、それぞれ独立して、炭素原子(C)またはケイ素原子(Si)を表し;
Arは、置換されたもしくは非置換の環形成炭素数6以上30以下の2価の芳香族炭化水素基、または置換されたもしくは非置換の環形成原子数5以上30以下の2価の芳香族複素環基を表す。
【0017】
本明細書において、「下記式(1)で表される構成単位」を「構成単位(1)」または「本発明に係る構成単位(1)」とも称する。同様にして、本明細書において、「下記式(2)で表される構成単位」を「構成単位(2)」または「本発明に係る構成単位(2)」とも称する。
【0018】
第2の側面では、本発明に係る共重合体を含むエレクトロルミネッセンス素子材料を提供する。
【0019】
第3の側面では、本発明は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される1層以上の有機膜と、を備えるエレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機膜の少なくとも1層が本発明に係る共重合体を含む、エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【0020】
本明細書において、エレクトロルミネッセンス素子を、単に「LED」とも称する。量子ドットエレクトロルミネッセンス素子を、単に「QLED」とも称する。有機エレクトロルミネッセンス素子を、単に「OLED」とも称する。
【0021】
本発明者らは、発光効率および耐久性(発光寿命)に優れるエレクトロルミネッセンス素子(特に量子ドットエレクトロルミネッセンス素子)について、鋭意検討を行った。その結果、上記式の構成単位を有することによって、発光効率および耐久性(発光寿命)をバランスよく両立できる物質が得られることを知得した。詳細には、式(1)または(2)の構成単位では、主鎖のカルバゾール環と側鎖のベンゼン環とがX(式(1))またはXおよびX(式(2))で架橋されている。このような架橋構造により、励起状態およびアニオン状態における、主鎖のカルバゾール環の窒素原子と、上記窒素原子が結合する側鎖のベンゼン環の炭素原子と、のC-N結合の結合解離エネルギーが高くなり、正孔や電子の共存下でも物質が分解されにくいまたは分解されない。高いホール耐性が維持され、素子寿命に影響する励起子耐性および電子耐性が強化される。ゆえに、本発明に係る共重合体をエレクトロルミネッセンス素子に使用することにより、耐久性(発光寿命)を向上できる。
【0022】
また、上記したような架橋構造をとることにより、主鎖のカルバゾール環の窒素原子と、上記窒素原子が結合する側鎖のベンゼン環の炭素原子と、のC-N結合軸の二面角が狭くなる。このため、共重体が積層(パッキング)されやすく密に存在できるため、ホール(正孔)の移動度が高くなる。ゆえに、本発明に係る共重合体をエレクトロルミネッセンス素子に使用することにより、正孔輸送層から発光層へのホール(正孔)の移動度を向上でき、発光効率を向上できる。
【0023】
したがって、本発明に係る共重合体は優れた励起子耐性及び電子耐性、ならびに高いホール移動度を示す。ゆえに、本発明に係る共重合体を用いて作製されるエレクトロルミネッセンス素子は、発光効率および耐久性(長い発光寿命)をバランスよく発揮できる。また、本発明に係る共重合体は、駆動電圧の上昇を抑制できる。ゆえに、本発明に係る共重合体を用いて作製されるエレクトロルミネッセンス素子は、低駆動電圧で高い発光効率を発揮できる。加えて、本発明に係る共重合体は、成膜性および溶媒溶解性に優れるため、湿式(塗布)法での成膜が可能である。ゆえに、本発明に係る共重合体を用いることによって、エレクトロルミネッセンス素子の大面積化、高生産性が可能となる。上記効果は、本発明に係る共重合体がEL素子、特にQLEDの正孔輸送層または正孔注入層に適用される場合に、効果的に発揮できる。
【0024】
なお、上記メカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら拘泥されるものではない。
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、各図面は説明の便宜上誇張されて表現されており、各図面における各構成要素の寸法比率が実際とは異なる場合がある。また、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明した場合では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で測定する。
【0027】
本明細書において「置換」とは、特に定義しない限り、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヒドロキシル基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、チオール基(-SH)、シアノ基(-CN)で置換されていることを指す。なお、ある基が置換される場合、置換された構造がさらに置換される前の定義に含まれるような置換の形態は除外される。例えば、置換基がアルキル基である場合、置換基としてのこのアルキル基はさらにアルキル基で置換されることはない。
【0028】
ここで、置換基としてのアルキル基としては、直鎖もしくは分岐のいずれでよいが、好ましくは炭素数1以上20以下の直鎖もしくは炭素数3以上20以下の分岐のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3-ジメチルブチル基、1-イソプロピルプロピル基、1,2-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、1,4-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2-メチル-1-イソプロピルプロピル基、1-エチル-3-メチルブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-メチル-1-イソプロピルブチル基、2-メチル-1-イソプロピル基、1-tert-ブチル-2-メチルプロピル基、n-ノニル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、n-デシル基、イソデシル基、n-ウンデシル基、1-メチルデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基などが挙げられる。
【0029】
置換基としてのシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0030】
置換基としてのヒドロキシアルキル基としては、例えば、上記アルキル基が1以上3以下(好ましくは1以上2以下、特に好ましくは1)の水酸基で置換されるもの(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基)が例示される。
【0031】
置換基としてのアルコキシアルキル基としては、例えば、上記アルキル基が1以上3以下(好ましくは1以上2以下、特に好ましくは1)の上記アルコキシ基で置換されるものが例示される。
【0032】
置換基としてのアルコキシ基としては、直鎖もしくは分岐のいずれでよいが、好ましくは炭素数1以上20以下の直鎖もしくは炭素数3以上20以下の分岐のアルコキシ基が挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、3-エチルペンチルオキシ基などが挙げられる。
【0033】
置換基としてのシクロアルコキシ基としては、例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0034】
置換基としてのアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、1-ヘプテニル基、2-ヘプテニル基、5-ヘプテニル基、1-オクテニル基、3-オクテニル基、5-オクテニル基などが挙げられる。
【0035】
置換基としてのアルキニル基としては、例えば、アセチレニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンテチル基、2-ペンテチル基、3-ペンテチル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、1-ヘプチニル基、2-ヘプチニル基、5-ヘプチニル基、1-オクチニル基、3-オクチニル基、5-オクチニル基などが挙げられる。
【0036】
置換基としてのアリール基としては、炭素数6以上30以下のアリール基が挙げられる。例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基などが挙げられる。
【0037】
置換基としてのアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
【0038】
置換基としてのアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基などが挙げられる。
【0039】
置換基としてのシクロアルキルチオ基としては、例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基などが挙げられる。
【0040】
置換基としてのアリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基などが挙げられる。
【0041】
置換基としてのアルコキシカルボニル基としては、例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0042】
置換基としてのアリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0043】
[共重合体]
本発明の共重合体は、下記式(1)で表される構成単位(構成単位(1))または下記式(2)で表される構成単位(構成単位(2))を有する。構成単位(1)または(2)を有する共重合体は、優れた励起子耐性及び電子耐性、ならびに高いホール移動度を有する。このため、本発明に係る共重合体を(特に正孔輸送層または正孔注入層に)有するエレクトロルミネッセンス素子(特に量子ドットエレクトロルミネッセンス素子)は、発光効率および耐久性(発光寿命)をバランスよく両立できる。また、高電流効率化および低駆動電圧化を達成できる。本発明の共重合体は、式(1)の構成単位(構成単位(1))1種を含むものであっても、または2種以上の構成単位(1)を含むものであってもよい。なお、複数の構成単位(1)は、ブロック状に存在しても、ランダム状に存在してもよい。同様にして、本発明の共重合体は、式(2)の構成単位(構成単位(2))1種を含むものであっても、または2種以上の構成単位(2)を含むものであってもよい。なお、複数の構成単位(2)は、ブロック状に存在しても、ランダム状に存在してもよい。または、本発明の共重合体は、1種以上の式(1)の構成単位(構成単位(1))および1種以上の式(2)の構成単位(構成単位(2))を組み合わせて含むものであってもよい。この際、本発明の共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。好ましくは、本発明の共重合体は、式(1)の構成単位(構成単位(1))を有する。
【0044】
【化3】
【0045】
上記式(1)および式(2)において、構成単位X(上記式(1)または式(2)の「-Ar-」を含まない左側の構成単位;以下、同様)は、本発明に係る共重合体を構成する。なお、2種以上の構成単位(1)または(2)が存在する場合、各構成単位(1)または(2)中の「構成単位X」は、それぞれ、同じであってもまたは異なるものであってもよい。同様にして、上記式(1)または式(2)中の「-Ar-」の構成単位は、本発明に係る共重合体を構成する。なお、2種以上の構成単位(1)または(2)が存在する場合、各構成単位(1)または(2)中の「-Ar-」は、それぞれ、同じであってもまたは異なるものであってもよい。
【0046】
上記式(1)および式(2)において、Rは、置換されたもしくは非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換されたもしくは非置換の環形成炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基、置換されたもしくは非置換の環形成原子数5以上30以下の1価の芳香族複素環基、または-Y-N(Ar)(Ar)を表す。炭素数1以上20以下のアルキル基としては、上記「置換基」にて列挙したものと同じアルキル基が例示される。これらのうち、励起子耐性及び電子耐性、ならびにホール移動度のさらなる向上(ゆえに発光効率および耐久性(発光寿命)のさらなる向上)の観点から、アルキル基は、炭素数1以上8以下の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~5の分岐のアルキル基(イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基)であることがより好ましく、sec-ブチル基であることが特に好ましい。また、環形成炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基としては、特に制限されないが、具体的には、ベンゼン(フェニル基)、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アントラセン、アズレン、ヘプタレン、アセナフテン、フェナレン、フルオレン、フェナントリン、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、キンキフェニル、ピレン、9,9-ジフェニルフルオレン、9,9’-スピロビ[フルオレン]、9,9-ジアルキルフルオレン等の芳香族炭化水素化合物由来の1価の基が挙げられる。環形成原子数5以上30以下の1価の芳香族複素環基としては、特に制限されないが、具体的には、アクリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、ベンゾイソキノリン、フェナンスリジン、フェナントロリン、アントラキノン、フルオレノン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、イミダゾフェナンスリジン、ベンズイミダゾフェナンスリジン、アザジベンゾフラン、9-フェニルカルバゾール、アザカルバゾール、アザジベンゾチオフェン、ジアザジベンゾフラン、ジアザカルバゾール、ジアザジベンゾチオフェン、キサントン、チオキサントン、ピリジン、キノリン、アントラキノリンなどの複素環式芳香族化合物由来の1価の基が挙げられる。R(非置換形態)は、上記したような1価の芳香族炭化水素基のみであっても、上記したような1価の芳香族炭化水素基を2種以上組み合わせた構造であっても、上記したような1価の芳香族複素環基のみであっても、上記したような1価の芳香族複素環基を2種以上組み合わせた構造であっても、または上記したような1種以上の1価の芳香族炭化水素基と1種以上の1価の芳香族複素環基とを組み合わせた構造であってもよい。さらに、Rが-Y-N(Ar)(Ar)を表す際の、Yは、置換されたもしくは非置換の環形成炭素数6以上30以下の2価の芳香族炭化水素基を表す。この際、環形成炭素数6以上30以下の2価の芳香族炭化水素基としては、上記Rにおける芳香族炭化水素化合物由来の2価の基が同様にして例示される。これらのうち、励起子耐性及び電子耐性、ならびにホール移動度のさらなる向上(ゆえに発光効率および耐久性(発光寿命)のさらなる向上)の観点から、Yは、置換されたもしくは非置換のフェニレン基、置換されたもしくは非置換のフルオレニレン基、置換されたもしくは非置換のジベンゾフラニレン基、置換されたもしくは非置換のナフチレン基、置換されたもしくは非置換のジベンゾチオフェニル基を表すことが好ましく、置換されたもしくは非置換のフェニレン基(o-、m-、p-フェニレン基)、置換されたもしくは非置換のフルオレニレン基、または置換されたもしくは非置換のジベンゾフラニレン基を表すことがより好ましく、フェニレン基(特にp-フェニレン基)を表すことがさらに好ましい。また、ArおよびArは、それぞれ独立して、置換されたもしくは非置換の環形成炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基、または置換されたもしくは非置換の環形成原子数5以上30以下の1価の芳香族複素環基を表す。この際、ArおよびArは、同じであってもまたは異なるものであってもよいが、異なるものであることが好ましい。環形成炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基および環形成原子数5以上30以下の1価の芳香族複素環基としては、上記Rにおける芳香族炭化水素化合物および複素環式芳香族化合物由来の1価の基が同様にして例示される。これらのうち、励起子耐性及び電子耐性、ならびにホール移動度のさらなる向上(ゆえに発光効率および耐久性(発光寿命)のさらなる向上)の観点から、ArおよびArは、置換されたもしくは非置換のフェニル基、置換されたもしくは非置換のフルオレニル基、置換されたもしくは非置換のジベンゾフラニル基、置換されたもしくは非置換のビフェニル基、置換されたもしくは非置換のナフチレン基、置換されたもしくは非置換のスピロビフルオレニル基を表すことが好ましく、置換されたもしくは非置換のフェニル基、置換されたもしくは非置換のフルオレニル基、置換されたもしくは非置換のジベンゾフラニル基、置換されたもしくは非置換のビフェニル基を表すことがより好ましく、置換されたもしくは非置換のフルオレニル基(特に2個の炭素数1~3のアルキル基(特にメチル基)で置換されたフルオレニル基)または置換されたもしくは非置換のビフェニル基(特に非置換のビフェニル基)を表すことがさらに好ましい。
【0047】
上記式(1)または(2)において、励起子耐性及び電子耐性、ならびにホール移動度のさらなる向上(ゆえに発光効率および耐久性(発光寿命)のさらなる向上)の観点から、Rは、置換されたもしくは非置換の炭素数1以上8以下のアルキル基、または-Y-N(Ar)(Ar)を表すことが好ましい。
【0048】
上記式(1)または(2)において、RおよびRは、それぞれ独立して、置換されたもしくは非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換されたもしくは非置換の炭素数1以上20以下のアルコキシ基、置換されたもしくは非置換の環形成炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基、または置換されたもしくは非置換の環形成原子数5以上30以下の1価の芳香族複素環基を表す。この際、2個のRおよび2個のRは、それぞれ、互いに同一であってもまたは異なってもよい。また、2個のRおよび2個のRは、それぞれ、互いに結合して環を形成してもよい。炭素数1以上20以下のアルキル基および炭素数1以上20以下のアルコキシ基としては、それぞれ、上記「置換基」にて列挙したものと同じアルキル基およびアルコキシ基が例示される。環形成炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基および環形成原子数5以上30以下の1価の芳香族複素環基としては、それぞれ、上記Rにおける芳香族炭化水素化合物および複素環式芳香族化合物由来の1価の基が同様にして例示される。これらのうち、励起子耐性及び電子耐性、ならびにホール移動度のさらなる向上(ゆえに発光効率および耐久性(発光寿命)のさらなる向上)の観点から、RおよびRは、それぞれ独立して、置換されたもしくは非置換の炭素数1以上8以下のアルキル基、置換されたもしくは非置換のフェニル基を表す、または2個のRもしくは2個のRが互いに結合して環を形成することが好ましく;RおよびRは、それぞれ独立して、置換されたもしくは非置換の炭素数1以上3以下のアルキル基(特にメチル基)または非置換のフェニル基を表す、または2個のフェニル基が互いに結合してフルオレン環を形成することがより好ましく;RおよびRは、フェニル基を表わし、かつこれら2個のフェニル基が互いに結合してフルオレン環を形成することが特に好ましい。
【0049】
上記式(1)または(2)において、XおよびXは、それぞれ独立して、炭素原子(C)またはケイ素原子(Si)を表す。好ましくは、XおよびXは、炭素原子(C)を表す。
【0050】
本発明の好ましい形態では、共重合体は、上記式(1)で表される構成単位を有する。本発明の好ましい形態では、共重合体は、上記式(1)で表される構成単位を有し、この際、Rは、置換されたもしくは非置換の炭素数1以上8以下のアルキル基、または-Y-N(Ar)(Ar)を表し、この際、Yは、置換されたもしくは非置換のフェニレン基、置換されたもしくは非置換のフルオレニレン基、または置換されたもしくは非置換のジベンゾフラニレン基を表し、ArおよびArは、それぞれ独立して、置換されたもしくは非置換のフェニル基、置換されたもしくは非置換のフルオレニル基、置換されたもしくは非置換のジベンゾフラニル基、または置換されたもしくは非置換のビフェニル基を表し;Rは、それぞれ独立して、置換されたもしくは非置換の炭素数1以上8以下のアルキル基、置換されたもしくは非置換のフェニル基を表す、またはRが互いに結合して環を形成してもよく;Xは、炭素原子(C)を表す。
【0051】
本発明のより好ましい形態では、共重合体は、上記式(1)で表される構成単位を有し、この際、Rは、置換されたもしくは非置換の炭素数3~5の分岐のアルキル基(イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基)、または-Y-N(Ar)(Ar)を表し、この際、Yは、置換されたもしくは非置換のフェニレン基(o-、m-、p-フェニレン基)、置換されたもしくは非置換のフルオレニレン基、または置換されたもしくは非置換のジベンゾフラニレン基を表し、ArおよびArは、それぞれ独立して、置換されたもしくは非置換のフルオレニル基(特に2個の炭素数1~3のアルキル基(特にメチル基)で置換されたフルオレニル基)または置換されたもしくは非置換のビフェニル基((特に非置換のビフェニル基)を表し;Rは、置換されたもしくは非置換の炭素数1以上3以下のアルキル基(特にメチル基)または非置換のフェニル基を表す、または2個のフェニル基が互いに結合してフルオレン環を形成し;Xは、炭素原子(C)を表す。
【0052】
すなわち、構成単位X(上記式(1)または式(2)の「-Ar-」を含まない左側の構成単位)の好ましい例としては、下記構造がある。上記構造を有する共重合体であれば、励起子耐性及び電子耐性、ならびにホール移動度をさらに向上できる(ゆえに発光効率および耐久性(発光寿命)をさらに向上できる)。
【0053】
【化4】
【0054】
【化5】
【0055】
【化6】
【0056】
【化7】
【0057】
【化8】
【0058】
【化9】
【0059】
【化10】
【0060】
【化11】
【0061】
【化12】
【0062】
【化13】
【0063】
【化14】
【0064】
【化15】
【0065】
上記式(1)または(2)の共重合体は、上記構成単位Xに加えて、「-Ar-」の構成単位を有する。2種以上の構成単位(1)または(2)が存在する場合、各構成単位(1)または(2)中の「-Ar-」は同じであってもまたは異なるものであってもよい。ここで、Arは、置換されたもしくは非置換の環形成炭素数6以上30以下の2価の芳香族炭化水素基、または置換されたもしくは非置換の環形成原子数5以上30以下の2価の芳香族複素環基を表す。環形成炭素数6以上30以下の2価の芳香族炭化水素基および環形成原子数5以上30以下の2価の芳香族複素環基としては、上記Rにおける芳香族炭化水素化合物および複素環式芳香族化合物由来の2価の基が同様にして例示される。これらのうち、励起子耐性及び電子耐性、ならびにホール移動度のさらなる向上(ゆえに発光効率および耐久性(発光寿命)のさらなる向上)の観点から、Arが、下記式(3)~式(18)から選択される基であることが好ましい。
【0066】
【化16】
【0067】
上記式(3)~(18)において、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、置換された若しくは非置換の環形成炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基、または置換された若しくは非置換の環形成原子数5以上30以下の1価の芳香族複素環基を表す。複数のRが存在する場合、これらのRは、同じであってもまたは異なるものであってもよい。炭素数1以上20以下のアルキル基としては、上記「置換基」にて列挙したものと同じアルキル基が例示される。また、環形成炭素数6以上30以下の1価の芳香族炭化水素基および環形成原子数5以上30以下の1価の芳香族複素環基としては、上記Rにおける芳香族炭化水素化合物および複素環式芳香族化合物由来の1価の基が同様にして例示される。これらのうち、励起子耐性及び電子耐性、ならびにホール移動度のさらなる向上(ゆえに発光効率および耐久性(発光寿命)のさらなる向上)の観点から、Rは、それぞれ独立して、炭素数3以上20以下の直鎖のアルキル基、炭素数3以上20以下の分岐アルキル基または水素原子が好ましく、炭素数6以上12以下の直鎖アルキル基または水素原子であることがより好ましい。
【0068】
上記式(3)~(18)において、Qは、それぞれ独立して、-O-、-S-、-Se-、-CR-、-SiR-を表す。Qは、-CR-、-SiR-を表すことが好ましく、-CR-を表すことがより好ましい。Qが-CR-を表す際の、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、置換された若しくは非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換された若しくは非置換のアリール基または置換された若しくは非置換のヘテロアリール基を表す。RおよびRは、同じであってもまたは異なるものであってもよい。ここで、アルキル基およびアリール基としては、上記「置換基」にて列挙したものと同じアルキル基およびアリール基がそれぞれ例示される。また、ヘテロアリール基としては、例えば1-ピロリル基、2-ピロリル基、3-ピロリル基、ピラジニル基、2-ピリジニル基、3-ピリジニル基、4-ピリジニル基、1-インドリル基、2-インドリル基、3-インドリル基、4-インドリル基、5-インドリル基、6-インドリル基、7-インドリル基、1-イソインドリル基、2-イソインドリル基、3-イソインドリル基、4-イソインドリル基、5-イソインドリル基、6-イソインドリル基、7-イソインドリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、9-カルバゾリル基、1-アクリジニル基、2-アクリジニル基、3-アクリジニル基、4-アクリジニル基、9-アクリジニル基、1-フェナジニル基、2-フェナジニル基、1-フェノチアジニル基、2-フェノチアジニル基、3-フェノチアジニル基、4-フェノチアジニル基、10-フェノチアジニル基、1-フェノキサジニル基、2-フェノキサジニル基、3-フェノキサジニル基、4-フェノキサジニル基、10-フェノキサジニル基などが挙げられる。これらのうち、励起子耐性及び電子耐性、ならびにホール移動度のさらなる向上(ゆえに発光効率および耐久性(発光寿命)のさらなる向上)の観点から、RおよびRは、炭素数3以上20以下の直鎖または分岐のアルキル基を表すことが好ましく、炭素数6以上12以下の直鎖のアルキル基を表すことがより好ましく、炭素数7以上9以下の直鎖のアルキル基を表すことが特に好ましい。
【0069】
上記式(3)~(18)において、Zは、それぞれ独立して、-CR=、-N=、-SiR=を表し、この際、Rは、水素原子、重水素原子、置換された若しくは非置換の炭素数1以上20以下のアルキル基、置換された若しくは非置換のアリール基または置換された若しくは非置換のヘテロアリール基を表す。ここで、アルキル基およびアリール基としては、上記「置換基」にて列挙したものと同じアルキル基およびアリール基がそれぞれ例示される。また、ヘテロアリール基としては、上記RおよびRにて列挙したものと同じヘテロアリール基が例示される。
【0070】
上記式(3)~(18)において、*は、主鎖を形成する結合部位である。
【0071】
上記のうち、Arは、好ましくは式(3)、式(4)、式(5)、または式(13)で示される基であり、より好ましくはRがそれぞれ独立して炭素数3以上20以下の直鎖のアルキル基、炭素数3以上20以下の分岐アルキル基または水素原子である式(3)で示される基、またはQが-CR-であり、この際、RおよびRがそれぞれ独立して炭素数3以上20以下の直鎖または分岐アルキル基である式(5)で示される基であり、さらに好ましくはRがそれぞれ独立して炭素数6以上12以下の直鎖アルキル基または水素原子である式(3)で示される基、またはQが-CR-であり、この際、RおよびRがそれぞれ独立して炭素数6以上12以下の直鎖のアルキル基である式(5)で示される基であり、特に好ましくはQが-CR-であり、この際、RおよびRがそれぞれ独立して炭素数7以上9以下の直鎖のアルキル基である式(5)で示される基である。
【0072】
本発明に係る共重合体における構成単位(1)または(2)の組成は、特に制限されない。共重合体による、励起子耐性及び電子耐性、ならびにホール移動度のさらなる向上(ゆえに発光効率および耐久性(発光寿命)のさらなる向上)などを考慮すると、構成単位(1)または(2)は、共重合体を構成する全構成単位に対して、好ましくは85モル%以上100モル%以下、より好ましくは90モル%を超え100モル%以下であり、特に好ましくは100モル%である(本発明に係る共重合体は構成単位(1)または(2)のみから構成される)。なお、共重合体が2種以上の構成単位(1)または(2)を含む場合には、上記構成単位(1)または(2)の含有量は、構成単位(1)または(2)の合計量を意味する。また、共重合体が構成単位(1)および(2)双方を含む場合には、上記含有量は、構成単位(1)および(2)の合計量を意味する。
【0073】
本発明に係る共重合体は、構成単位(1)または(2)を必須に含むが、これらの構成単位(1)または(2)に加えて、他の構成単位を有していてもよい。ここで、他の構成単位としては、例えば、アズレン、ナフタレン、アントラセン、ターフェニレン、フェナントレンなどの化合物由来の構成単位が挙げられる。ここで、本発明に係る共重合体が他の構成単位を有する場合の、他の構成単位の組成は、特に制限されない。励起子耐性及び電子耐性、ならびにホール移動度のさらなる向上(ゆえに発光効率および耐久性(発光寿命)のさらなる向上)などを考慮すると、他の構成単位は、共重合体を構成する全構成単位に対して、好ましくは0モル%を超えて15モル%未満、より好ましくは0.5モル%以上10モル%以下である。なお、共重合体が2種以上の他の構成単位を含む場合には、上記他の構成単位の含有量は、他の構成単位の合計量を意味する。
【0074】
本発明に係る共重合体の重量平均分子量(Mw)は、本発明の目的効果が得られる限りにおいて、特に制限されるものではない。重量平均分子量(Mw)は、例えば、2,000以上500,000以下であることが好ましく、5,000以上200,000以下であることがより好ましい。このような重量平均分子量であれば、共重合体を用いて層(例えば、正孔注入層、正孔輸送層)を形成するための塗布液の粘度を適切に調節して、均一な膜厚の層を形成することが可能である。
【0075】
また、共重合体の数平均分子量(Mn)は、本発明の目的効果が得られる限りにおいて、特に制限されるものではない。数平均分子量(Mn)は、例えば、1,000以上200,000以下であることが好ましく、より好ましくは2,500以上100,000以下である。このような数平均分子量であれば、共重合体を用いて層(例えば、正孔注入層、正孔輸送層)を形成するための塗布液の粘度を適切に調節して、均一な膜厚の層を形成することが可能である。また、本実施形態の共重合体の多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、例えば、1.10以上5.00以下、好ましくは1.20以上2.00以下である。
【0076】
ここで、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)の測定は、特に制限されず、公知の方法を用いてまたは公知の方法を適宜修飾して適用できる。本明細書では、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、下記方法により測定される値を採用する。なお、ポリマーの多分散度(Mw/Mn)は、下記方法により測定された数平均分子量(Mn)で重量平均分子量(Mw)を除することによって算出される。
【0077】
(数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)の測定)
共重合体(下記の場合では、高分子材料)の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質として用いて、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー:Size Exclusion Chromatography)により、以下の条件で測定する。
【0078】
(SEC測定条件)
分析装置(SEC):株式会社島津製作所製、Prominence
カラム:ポリマーラボラトリーズ製、PLgel MIXED-B
カラム温度:40℃
流量:1.0mL/min
試料溶液の注入量:20μL(ポリマー濃度:約0.05質量%)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検出器(UV-VIS検出器):株式会社島津製作所製、SPD-10AV
標準試料:ポリスチレン。
【0079】
本実施形態に係る共重合体の主鎖の末端は、特に制限されず、使用される原料の種類によって適宜規定されるが、通常、水素原子である。
【0080】
本実施形態に係る共重合体は、公知の有機合成方法を用いることで合成することが可能である。本実施形態に係る共重合体の具体的な合成方法は、後述する実施例を参照した当業者であれば、容易に理解することが可能である。例えば、共重合体が上記式(1)の構成単位を有する場合には、本実施形態に係る共重合体は、下記式(A-1)で示される1種以上の単量体(A-1)を用いた重合反応により、または下記式(A-1)で示される1種以上の単量体(A-1)および上記他の構成単位に相当する他の単量体を用いた共重合反応により製造することができる。
【0081】
【化17】
【0082】
または、下記式(A-2)で示される1種以上の単量体(A-2)及び下記式(A-3)で示される1種以上の単量体(A-3)を用いた、または下記式(A-2)で示される1種以上の単量体(A-2)、下記式(A-3)で示される1種以上の単量体(A-3)および上記他の構成単位に相当する他の単量体を用いた共重合反応により製造することができる。
【0083】
【化18】
【0084】
【化19】
【0085】
例えば、共重合体が上記式(2)の構成単位を有する場合には、本実施形態に係る共重合体は、下記式(B-1)で示される1種以上の単量体(B-1)を用いた重合反応により、または下記式(B-1)で示される1種以上の単量体(B-1)および上記他の構成単位に相当する他の単量体を用いた共重合反応により製造することができる。
【0086】
【化20】
【0087】
または、下記式(B-2)で示される1種以上の単量体(B-2)及び下記式(B-3)で示される1種以上の単量体(B-3)を用いた、または下記式(B-2)で示される1種以上の単量体(B-2)、下記式(B-3)で示される1種以上の単量体(B-3)および上記他の構成単位に相当する他の単量体を用いた共重合反応により製造することができる。
【0088】
【化21】
【0089】
【化22】
【0090】
本発明に係る共重合体の重合に用いられる上記単量体は、公知の合成反応を適宜組み合わせて合成することができ、その構造も、公知の方法(例えば、NMR、LC-MS等)により確認できる。
【0091】
上記式(A-1)~(A-3)において、R、R、XおよびArは、上記式(1)におけるのと同様の定義である。同様にして、上記式(B-1)~(B-3)において、R、R、R、X、XおよびArは、上記式(2)におけるのと同様の定義である。Z、Z1’、Z1”、Z、Z2’およびZ2”は、それぞれ独立して、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、特に臭素原子)または下記構造の基である。なお、下記構造において、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1以上3以下のアルキル基である。好ましくは、R~Rはメチル基である。なお、上記式(A-1)~(A-3)、上記式(B-1)~(B-3)中のZおよびZ、Z1’およびZ2’、またはZ1”およびZ2”は、それぞれ、同じであってもまたは異なるものであってもよい。好ましくは、上記式(A-1)または(B-1)中、ZおよびZは異なる。上記式(A-2)または(B-2)中、Z1’およびZ2’は同じであることが好ましい。上記式(A-3)または(B-3)中、Z1”およびZ2”は同じでありかつZ1’およびZ2’とは異なることが好ましい。
【0092】
【化23】
【0093】
構成単位(1)または構成単位(2)(好ましくは構成単位(1))を有する共重合体は、高いC-N結合の結合解離エネルギー(優れた励起子耐性及び電子耐性)および狭いC-N結合軸の二面角(高いホール移動度)を有する。ゆえに、本実施形態に係る共重合体を正孔注入材料または正孔輸送材料(特に正孔輸送材料)として使用する場合には、高い発光効率および優れた耐久性(発光寿命)をバランスよく両立できる。また、本実施形態に係る共重合体は、高い三重項エネルギー準位を有し、かつ低い駆動電圧を有する。ゆえに、本実施形態に係る共重合体を正孔注入材料または正孔輸送材料(特に正孔輸送材料)として使用する場合には、低駆動電圧で高いホール移動性が達成される。ゆえに、本実施形態に係る共重合体を用いるエレクトロルミネッセンス素子(特にQLED)は発光効率および耐久性(発光寿命)に優れる。
【0094】
[エレクトロルミネッセンス素子材料]
本実施形態に係る共重合体は、エレクトロルミネッセンス素子材料として好適に用いられる。本形態によれば、優れた発光効率および耐久性(発光寿命)を有するエレクトロルミネッセンス素子材料が提供される。また、本実施形態に係る共重合体によれば高い三重項エネルギー準位(電流効率)および低い駆動電圧を有するエレクトロルミネッセンス素子材料もまた提供される。さらに、本実施形態に係る共重合体は、溶媒への高い溶解性および高い耐熱性を示す。ゆえに、湿式(塗布)法により容易に製膜(薄膜化)できる。したがって、本発明は、第2の側面では、本実施形態に係る共重合体を含むエレクトロルミネッセンス素子材料が提供される。または、本発明に係る共重合体のエレクトロルミネッセンス素子材料としての使用が提供される。
【0095】
[エレクトロルミネッセンス素子]
上述したように、本実施形態に係る共重合体は、エレクトロルミネッセンス素子に好適に用いられる。すなわち、一対の電極と、該電極間に配置され、本実施形態の共重合体またはエレクトロルミネッセンス素子材料を含む1層以上の有機膜と、を備える、エレクトロルミネッセンス素子を提供する。このようなエレクトロルミネッセンス素子は、高い発光効率(特に低駆動電圧で優れた発光効率)および優れた耐久性(発光寿命)をバランスよく両立できる。したがって、第3の側面では、本発明は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される1層以上の有機膜と、を備えるエレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機膜の少なくとも1層は、本実施形態に係る共重合体を含む、エレクトロルミネッセンス素子が提供される。本発明の目的(または効果)は、このような本実施形態に係るエレクトロルミネッセンス素子によっても達成できる。上記態様の好ましい形態としては、エレクトロルミネッセンス素子は、上記電極間に配置され、三重項励起子からの発光が可能な発光材料を含む発光層をさらに備える。なお、本実施形態のエレクトロルミネッセンス素子は、本発明に係るエレクトロルミネッセンス素子の一例である。
【0096】
さらに、本実施形態は、一対の電極と、該電極間に配置され、本実施形態の共重合体を含む1層以上の有機膜と、を備える、エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、上記有機膜のうち少なくとも1層を塗布法により形成する、方法を提供する。また、このような方法により、本実施形態は、上記有機膜のうち少なくとも1層が塗布法により形成される、エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【0097】
本実施形態の共重合体、および本実施形態に係るエレクトロルミネッセンス素子材料(EL素子材料)(以下、一括して、「共重合体/EL素子材料」とも称する)は、有機溶媒に対する溶解性に優れる。このため、本実施形態に係る共重合体/EL素子材料は、塗布法(ウェットプロセス)による素子(特に薄膜)の製造に特に好適に用いられる。このため、本実施形態は、本実施形態の共重合体と、溶媒または分散媒と、を含有する液状組成物を提供する。このような液状組成物は、本発明に係る液状組成物の一例である。
【0098】
また、上記のように実施形態に係るエレクトロルミネッセンス素子材料が、塗布法(ウェットプロセス)による素子(特に薄膜)の製造に好適に用いられる。上記観点から、本実施形態は、本実施形態の共重合体を含有する薄膜を提供する。このような薄膜は、本発明に係る薄膜の一例である。
【0099】
また、本実施形態に係るEL素子材料は、ホール注入性およびホール移動性に優れる。このため、正孔注入材料、正孔輸送材料または発光材料(ホスト)等のいずれの有機膜の形成においても好適に利用され得る。このうち、正孔の輸送性の観点から、正孔注入材料または正孔輸送材料として好適に用いられ、正孔輸送材料として特に好適に用いられる。
【0100】
すなわち、本実施形態は、共重合体と、正孔輸送材料、電子輸送材料および発光材料からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料と、を含有する組成物を提供する。ここで、組成物に含まれる発光材料は、特に制限されないが、有機金属錯体(発光性有機金属錯体化合物)または半導体ナノ粒子(半導体無機ナノ粒子)を含有し得る。
【0101】
以下では、図1を参照して、本実施形態に係るエレクトロルミネッセンス素子について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るエレクトロルミネッセンス素子を示す模式図である。なお、本明細書において、「エレクトロルミネッセンス素子」は「EL素子」と省略する場合がある。
【0102】
図1に示すように、本実施形態に係るEL素子100は、基板110と、基板110上に配置された第1電極120と、第1電極120上に配置された正孔注入層130と、正孔注入層130上に配置された正孔輸送層140と、正孔輸送層140上に配置された発光層150と、発光層150上に配置された電子輸送層160と、電子輸送層160上に配置された電子注入層170と、電子注入層170上に配置された第2電極180とを備える。
【0103】
ここで、本実施形態の共重合体/EL素子材料は、例えば、第1電極120と第2電極180との間に配置されたいずれかの有機膜(有機層)中に含まれる。具体的には、共重合体/EL素子材料は、正孔注入材料として正孔注入層130または正孔輸送材料として正孔輸送層140または発光材料(ホスト)として発光層150に含まれることが好ましい。共重合体/EL素子材料は、正孔注入材料として正孔注入層130にまたは正孔輸送材料として正孔輸送層140に含まれることがより好ましい。共重合体/EL素子材料は、正孔輸送材料として正孔輸送層140に含まれることが特に好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、共重合体/EL素子材料を含む有機膜が、正孔輸送層、正孔注入層または発光層である。本発明のより好ましい形態では、共重合体を含む有機膜が、正孔輸送層または正孔注入層である。本発明の特に好ましい形態では、共重合体を含む有機膜が、正孔輸送層である。
【0104】
また、本実施形態の共重合体/EL素子材料を含む有機膜は、塗布法(溶液塗布法)によって形成される。具体的には、有機膜は、スピンコート(spin coat)法、キャスティング(casting)法、マイクログラビアコート(micro gravure coat)法、グラビアコート(gravure coat)法、バーコート(bar coat)法、ロールコート(roll coat)法、ワイアーバーコード(wire bar coat)法、ディップコート(dip coat)法、スプレーコート(spry coat)法、スクリーン(screen)印刷法、フレキソ(flexographic)印刷法、オフセット(offset)印刷法、インクジェット(ink jet)印刷法等の溶液塗布法を用いて製膜される。
【0105】
なお、溶液塗布法に使用する溶媒は、共重合体/EL素子材料を溶解することができるものであれば、どのような溶媒でも使用することができ、使用する共重合体の種類によって適宜選択できる。例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メチシレン、プロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ジメトキシベンゼン、アニソール、エトキシトルエン、フェノキシトルエン、イソプロピルビフェニル、ジメチルアニソール、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、シクロヘキサン等が例示できる。また、溶媒の使用量は、特に制限されないが、塗布容易性などを考慮すると、共重合体の濃度が、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下程度となるような量である。
【0106】
なお、共重合体/EL素子材料を含む有機膜以外の層の製膜方法については、特に限定されない。本実施形態の共重合体/EL素子材料を含む有機膜以外の層は、例えば、真空蒸着法にて製膜されてもよく、溶液塗布法にて製膜されてもよい。
【0107】
基板110は、一般的なEL素子で使用される基板を使用することができる。例えば、基板110は、ガラス(glass)基板、シリコン(silicon)基板などの半導体基板、または透明なプラスチック(plastic)基板等であってもよい。
【0108】
基板110上には、第1電極120が形成される。第1電極120は、具体的には、陽極であり、金属、合金、または導電性化合物等のうち仕事関数が大きいものによって形成される。例えば、第1電極120は、透明性および導電性に優れる酸化インジウムスズ(In-SnO:ITO)、酸化インジウム亜鉛(In-ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)等によって透過型電極として形成されてもよい。また、第1電極120は、上記透明導電膜に対して、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)などを積層することによって反射型電極として形成されてもよい。また、基板110上に第1電極120を形成した後、必要であれば、洗浄、UV-オゾン処理を行ってもよい。
【0109】
第1電極120上には、正孔注入層130が形成される。正孔注入層130は、第1電極120からの正孔の注入を容易にする層であり、具体的には、約10nm以上約1000nm以下、より具体的には約20nm以上約50nm以下の厚さ(乾燥膜厚;以下同様)にて形成されてもよい。
【0110】
正孔注入層130は、公知の正孔注入材料にて形成することができる。正孔注入層130を形成する公知の正孔注入材料としては、例えば、トリフェニルアミン含有ポリエーテルケトン(poly(ether ketone)-containg triphenylamine:TPAPEK)、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(4-isopropyl-4’-methyldiphenyliodonium tetrakis(pentafluorophenyl)borate:PPBI)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-(フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-ビフェニル-4,4’-ジアミン(N,N’-diphenyl-N,N’-bis-[4-(phenyl-m-tolyl-amino)-phenyl]-biphenyl-4,4’-diamine:DNTPD)、銅フタロシアニン(copper phthalocyanine)、4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”-tris(3-methylphenylphenylamino)triphenylamine:m-MTDATA)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(N,N’-di(1-naphthyl)-N,N’-diphenylbenzidine:NPB)、4,4’,4”-トリス(ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”-tris(diphenylamino)triphenylamine:TDATA)、4,4’,4”-トリス(N,N-2-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”-tris(N,N-2-naphthylphenylamino)triphenylamine:2-TNATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(polyaniline/dodecylbenzenesulphonic acid)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(poly(3,4-ethylenedioxythiophene)/poly(4-styrenesulfonate):PEDOT/PSS)、およびポリアニリン/10-カンファースルホン酸(polyaniline/10-camphorsulfonic acid)等を挙げることができる。
【0111】
正孔注入層130上には、正孔輸送層140が形成される。正孔輸送層140は、正孔を輸送する機能を備えた層であり、例えば、約10nm以上約150nm以下、より具体的には約20nm以上約50nm以下の厚さにて形成されてもよい。正孔輸送層140は、本実施形態の共重合体を用いて溶液塗布法によって製膜されることが好ましい。この方法によれば、EL素子100の耐久性(発光寿命)を延長することが可能である。また、EL素子100の性能(発光効率)を向上させることも可能である。また、EL素子100の電流効率を向上させ、駆動電圧を低減させることも可能である。また、溶液塗布法にて正孔輸送層を形成できるため、効率的に大面積にて製膜することができる。
【0112】
ただし、EL素子100のいずれかの他の有機膜が本実施形態に係る共重合体を含む場合、正孔輸送層140は、公知の正孔輸送材料にて形成されてもよい。公知の正孔輸送材料としては、例えば、1,1-ビス[(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(1,1-bis[(di-4-tolylamino)phenyl]cyclohexane:TAPC)、N-フェニルカルバゾール(N-phenylcarbazole)およびポリビニルカルバゾール(polyvinylcarbazole)などのカルバゾール(carbazole)誘導体、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(N,N’-bis(3-methylphenyl)-N,N’-diphenyl-[1,1-biphenyl]-4,4’-diamine:TPD)、4,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(4,4’,4”-tris(N-carbazolyl)triphenylamine:TCTA)、ならびにN,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(N,N’-di(1-naphthyl)-N,N’-diphenylbenzidine:NPB)等を挙げることができる。
【0113】
正孔輸送層140上には、発光層150が形成される。発光層150は、蛍光、りん光等によって光を発する層であり、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット印刷法などを用いて形成される。発光層150は、例えば、約10nm以上約60nm以下、より具体的には約20nm以上約50nm以下の厚さにて形成されてもよい。発光層150の発光材料としては、公知の発光材料を用いることができる。ただし、発光層150に含まれる発光材料は、三重項励起子からの発光(すなわち、りん光発光)が可能な発光材料であることが好ましい。このような場合、EL素子100の駆動寿命をさらに向上させることができる。
【0114】
発光層150は、特に制限されず、公知の構成とすることができる。好ましくは、発光層は、半導体ナノ粒子または有機金属錯体を含む。すなわち、本発明の好ましい形態では、有機膜が半導体ナノ粒子または有機金属錯体を含む発光層を有する。なお、発光層が半導体ナノ粒子を含む場合には、EL素子は、量子ドットエレクトロルミネッセンス素子(QLED)、量子ドット発光素子または量子点発光素子である。また、発光層が有機金属錯体を含む場合には、EL素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)である。
【0115】
発光層が半導体ナノ粒子を含む形態(QLED)において、発光層は、多数の半導体ナノ粒子(量子ドット)が単一層または複数層に配列されたものである。ここで、半導体ナノ粒子(量子ドット)は、量子拘束効果を持つ所定サイズの粒子である。半導体ナノ粒子(量子ドット)の直径は、特に制限されないが、1nm以上10nm以下程度である。
【0116】
発光層に配列される半導体ナノ粒子(量子ドット)は、ウェット化学工程、有機金属化学蒸着工程、分子線エピタキシー工程または他の類似した工程等により合成することができる。中でも、ウェット化学工程は、有機溶媒に前駆体物質を入れて粒子を成長させる方法である。
【0117】
ウェット化学工程では、結晶が成長する際に、有機溶媒が自然に量子ドット結晶の表面に配位されて、分散剤の役割を果たすことで、結晶の成長が調節される。そのため、ウェット化学工程では、有機金属化学蒸着(MOCVD、Metal Organic Chemical Vapor Deposition)や、分子線エピタキシー(MBE、Molecular Beam Epitaxy)などの気相蒸着法に比べて、容易かつ低コストで、半導体ナノ粒子の成長を制御することができる。
【0118】
半導体ナノ粒子(量子ドット)は、そのサイズを調節することによって、エネルギーバンドギャップを調節できるようになり、発光層(量子ドット発光層)で多様な波長帯の光を得ることができる。したがって、複数の異なるサイズの量子ドットを使用することで、複数波長の光を出射(または発光)するディスプレイを可能にする。量子ドットのサイズは、カラーディスプレイを構成できるように、赤色、緑色、青色光が出射されるように選択できる。また、量子ドットのサイズは、多様なカラー光が白色光を出射するように組み合わせられる。
【0119】
半導体ナノ粒子(量子ドット)としては、II-VI族半導体化合物;III-V族半導体化合物;IV-VI族半導体化合物;IV族元素または化合物;及びこれらの組み合わせからなる群から選択される半導体物質等を用いることができる。
【0120】
II-VI族半導体化合物は、特に限定されないが、例えば、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnTeSe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物;及びCdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択される。
【0121】
III-V族半導体化合物は、特に限定されないが、例えば、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物;及びGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択される。
【0122】
IV-VI族半導体化合物は、特に限定されないが、例えば、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物;及びSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択されることができる。
【0123】
IV族元素または化合物は、特に限定されないが、例えば、Si、Ge、及びこれらの混合物からなる群から選択される一元素化合物;及びSiC、SiGe、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物からなる群から選択される。
【0124】
半導体ナノ粒子(量子ドット)は、均質な単一構造またはコア・シェルの二重構造を持つことができる。コア・シェルは相異なる物質を含むことができる。それぞれのコアとシェルとを構成する物質は、相異なる半導体化合物からなり得る。ただし、シェル物質のエネルギーバンドギャップは、コア物質のエネルギーバンドギャップより大きい。具体的には、ZnTeSe/ZnSe/ZnS、InP/ZnSe/ZnS、CdSe/ZnS、InP/ZnSなどの構造が好ましい。
【0125】
例えば、コア(CdSe)・シェル(ZnS)構造を持つ量子ドットを作製する場合を説明する。まず、界面活性剤として、TOPO(trioctylphosphine oxide)を使用した有機溶媒に、(CHCd(dimethylcadmium)、TOPSe(trioctylphosphine selenide)などのコア(CdSe)の前駆体物質を注入して結晶を生成させる。このとき、結晶が一定のサイズに成長するように高温で一定時間維持した後、シェル(ZnS)の前駆体物質を注入して、既に生成されたコアの表面にシェルを形成させる。これによって、TOPOでキャッピングされたCdSe/ZnSの量子ドットを作製することができる。
【0126】
また、発光層が有機金属錯体を含む形態(OLED)において、発光層150は、ホスト材料として、例えば、6,9-ジフェニル-9’-(5’-フェニル-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-3-イル)3,3’-ビ[9H-カルバゾール]、3,9-ジフェニル-5-(3-(4-フェニル-6-(5’-フェニル-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-3-イル)-1,3,5,-トリアジン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾール、9,9’-ジフェニル-3,3’-ビ[9H-カルバゾール]、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(tris(8-quinolinato)aluminium:Alq3)、4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル(4,4’-bis(carbazol-9-yl)biphenyl:CBP)、ポリ(n-ビニルカルバゾール)(poly(n-vinyl carbazole):PVK)、9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン(9,10-di(naphthalene)anthracene:ADN)、4,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(4,4’,4”-tris(N-carbazolyl)triphenylamine:TCTA)、1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン(1,3,5-tris(N-phenyl-benzimidazol-2-yl)benzene:TPBI)、3-tert-ブチル-9,10-ジ(ナフト-2-イル)アントラセン(3-tert-butyl-9,10-di(naphth-2-yl)anthracene:TBADN)、ジスチリルアリーレン(distyrylarylene:DSA)、4,4’-ビス(9-カルバゾール)-2,2’-ジメチル-ビフェニル(4,4’-bis(9-carbazole)2,2’-dimethyl-bipheny:dmCBP)などを含んでもよい。
【0127】
また、発光層150は、ドーパント材料として、例えば、ペリレン(perylene)およびその誘導体、ルブレン(rubrene)およびその誘導体、クマリン(coumarin)およびその誘導体、4-ジシアノメチレン-2-(p-ジメチルアミノスチリル)-6-メチル-4H-ピラン(4-dicyanomethylene-2-(pdimethylaminostyryl)-6-methyl-4H-pyran:DCM)およびその誘導体、ビス[2-(4,6-ジフルオロフェニル)ピリジネート]ピコリネートイリジウム(III)(bis[2-(4,6-difluorophenyl)pyridinate]picolinate iridium(III):FIrpic)、ビス(1-フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(bis(1-phenylisoquinoline)(acetylacetonate)iridium(III):Ir(piq)(acac))、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(tris(2-phenylpyridine)iridium(III):Ir(ppy))、トリス(2-(3-p-キシイル)フェニル)ピリジンイリジウム(III)などイリジウム(Ir)錯体、オスミウム(Os)錯体、白金錯体などを含んでもよい。これらのうち、発光材料が発光性有機金属錯体化合物であることが好ましい。
【0128】
発光層を形成する方法は、特に制限されない。半導体ナノ粒子または有機金属錯体を含む塗布液を塗布すること(溶液塗布法)によって形成できる。この際、塗布液を構成する溶媒としては、正孔輸送層中の材料(正孔輸送材料、特に共重合体)を溶解しない溶媒を選択することが好ましい。
【0129】
発光層150上には、電子輸送層160が形成される。電子輸送層160は、電子を輸送する機能を備えた層であり、真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェット法などを用いて形成される。電子輸送層160は、例えば、約15nm以上約50nm以下の厚さにて形成されてもよい。
【0130】
電子輸送層160は、公知の電子輸送材料にて形成されてもよい。公知の電子輸送材料としては、例えば、(8-キノリノラト)リチウム(リチウムキノレート)(Liq)、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(tris(8-quinolinato)aluminium:Alq)、および含窒素芳香環を有する化合物等を挙げることができる。含窒素芳香環を有する化合物の具体例としては、例えば、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン(1,3,5-tri[(3-pyridyl)-phen-3-yl]benzene)のようなピリジン(pyridine)環を含む化合物、2,4,6-トリス(3’-(ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(2,4,6-tris(3’-(pyridin-3-yl)biphenyl-3-yl)-1,3,5-triazine)のようなトリアジン(triazine)環を含む化合物、2-(4-(N-フェニルベンゾイニダゾリル-1-イル-フェニル)-9,10-ジナフチルアントラセン(2-(4-(N-phenylbenzoimidazolyl-1-yl-phenyl)-9,10-dinaphthylanthracene)、1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン(1,3,5-tris(N-phenyl-benzimidazol-2-yl)benzene:TPBI)のようなイミダゾール(imidazole)環を含む化合物等を挙げることができる。上記電子輸送材料は、1種を単独で使用してもまたは2種以上の混合物として使用してもよい。
【0131】
電子輸送層160上には、電子注入層170が形成される。電子注入層170は、第2電極180からの電子の注入を容易にする機能を備えた層である。電子注入層170は、真空蒸着法などを用いて形成される。電子注入層170は、約0.1nm以上約5nm以下、より具体的には約0.3nm以上約2nm以下の厚さにて形成されてもよい。電子注入層170を形成する材料として公知の材料ならば、いずれも使用することができる。例えば、電子注入層170は、(8-キノリノラト)リチウム(リチウムキノレート)((8-quinolinato)lithium:Liq)およびフッ化リチウム(LiF)等のリチウム(lithium)化合物、塩化ナトリウム(NaCl)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(LiO)、または酸化バリウム(BaO)等にて形成されてもよい。
【0132】
電子注入層170上には、第2電極180が形成される。第2電極180は、真空蒸着法などを用いて形成される。第2電極180は、具体的には、陰極であり、金属、合金、または導電性化合物等のうち仕事関数が小さいものによって形成される。例えば、第2電極180は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)等の金属、またはアルミニウム-リチウム(Al-Li)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)等の合金で反射型電極として形成されてもよい。第2電極180は、約10nm以上約200nm以下、より具体的には約50nm以上約150nm以下の厚さにて形成されてもよい。または、第2電極180は、上記金属材料の20nm以下の薄膜、酸化インジウムスズ(In-SnO)および酸化インジウム亜鉛(In-ZnO)などの透明導電膜によって透過型電極として形成されてもよい。
【0133】
以上、本発明に係るエレクトロルミネッセンス素子の一例として、本実施形態に係るEL素子100について説明した。本実施形態に係るEL素子100は、共重合体を含む有機膜(特に正孔輸送層または正孔注入層)を設置することにより、耐久性(発光寿命)をより向上させることができる。また、発光効率(電流効率)をより向上させ、駆動電圧を低減させることができる。
【0134】
なお、本実施形態に係るEL素子100の積層構造は、上記例示に限定されない。本実施形態に係るEL素子100は、他の公知の積層構造にて形成されてもよい。例えば、EL素子100は、正孔注入層130、正孔輸送層140、電子輸送層160および電子注入層170のうちの1層以上が省略されてもよく、また、追加で他の層を備えていてもよい。また、EL素子100の各層は、それぞれ単層で形成されてもよく、複数層で形成されてもよい。
【0135】
例えば、EL素子100は、励起子または正孔が電子輸送層160に拡散することを防止するために、正孔輸送層140と発光層150との間に正孔阻止層をさらに備えていてもよい。なお、正孔阻止層は、例えば、オキサジアゾール(oxadiazole)誘導体、トリアゾール(triazole)誘導体、または、フェナントロリン(phenanthroline)誘導体等によって形成することができる。
【0136】
さらに、本実施形態に係る共重合体は、上記QLEDまたはOLED以外のエレクトロルミネッセンス素子に適用することができる。本実施形態に係る共重合体を適用することが可能な他のエレクトロルミネッセンス素子としては、特に限定されないが、例えば、有機無機ペロブスカイト発光素子等が挙げられる。
【実施例
【0137】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0138】
合成例1
(化合物1の合成)
化合物1を下記反応に従って合成した。
【0139】
【化24】
【0140】
アルゴン置換した三つ口フラスコに、3,6-ジクロロカルバゾール(35.00g)、1-ブロモ-2-ヨードベンゼン(210.00g)、ヨウ化銅(30g)、および炭酸カリウム(38.00g)を入れ、3日間180℃で加熱攪拌した。室温(25℃)まで冷却した反応液にトルエンを加え、不溶物をろ別した。溶出液を減圧留去し、その残留物をトルエンとエタノールで再結晶を行い、化合物1(40.52g)を得た。
【0141】
合成例2
(化合物2の合成)
化合物2を下記反応に従って合成した。
【0142】
【化25】
【0143】
アルゴン置換した三つ口フラスコに、上記合成例1で得られた化合物1(20.00g)および脱水テトラヒドロフラン(THF)200mlを入れ、-48℃で10分間攪拌した。その後、n-ブチルリチウムの2.8M ヘキサン溶液(n-BuLi)を20ml滴下し、-48℃で30分攪拌した後、脱水テトラヒドロフラン20mlに溶解させたフルオレノン(20.00g)を滴下し、室温で1時間攪拌した。その後、反応溶液に水を加え酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残留物をシリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物2(20.54g)を得た。
【0144】
合成例3
(化合物3の合成)
化合物3を下記反応に従って合成した。
【0145】
【化26】
【0146】
アルゴン置換した三つ口フラスコに、上記合成例2で得られた化合物2(13.00g)および脱水ジクロロメタン(70ml)を入れ、0℃で10分間攪拌した後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BF・OEt)(6.70ml)を滴下し、室温で2時間攪拌した。その後、反応溶液に水を加えジクロロメタンで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残留物をシリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物3(8.62g)を得た。
【0147】
合成例4
(化合物4の合成)
化合物4を下記反応に従って合成した。
【0148】
【化27】
【0149】
アルゴン置換した三つ口フラスコに、上記合成例3で得られた化合物3(21.25g)および脱水ジクロロメタン(200ml)を入れ、0℃で10分間攪拌した後、臭素(2.20ml)を滴下し、室温で8時間攪拌した。その後、反応溶液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、チオ硫酸ナトリウムで洗浄した。ジクロロメタンで抽出した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残留物をジクロロメタンとメタノールで再結晶を行い、化合物4(15.24g)を得た。
【0150】
合成例5
(化合物5の合成)
化合物5を下記反応に従って合成した。
【0151】
【化28】
【0152】
アルゴン置換した三つ口フラスコに、上記合成例4で得られた化合物4(10.00g)および脱水テトラヒドロフラン(200ml)を入れ、-48℃で10分間攪拌した。その後、n-ブチルリチウムの2.8M ヘキサン溶液(n-BuLi)を10ml滴下し、-48℃で30分間攪拌後、メチルエチルケトン(MEK)10mlを滴下し、室温で1時間攪拌した。その後、反応溶液に水を加え酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残留物をシリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物5(7.67g)を得た。
【0153】
合成例6
(化合物6の合成)
化合物6を下記反応に従って合成した。
【0154】
【化29】
【0155】
アルゴン置換した三つ口フラスコに、上記合成例5で得られた化合物5(10.00g)および脱水ジクロロメタン(18ml)を入れ、0℃で10分間攪拌した後、EtSiH(4.00ml)を滴下し、0℃で10分間攪拌した。その後、トリフルオロ酢酸(TFA)(2.00ml)を滴下し、室温で2時間攪拌した。反応溶液に水を加えジクロロメタンで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残留物をシリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物6(5.42g)を得た。
【0156】
合成例7
(化合物7の合成)
特表2017-513815号公報(WO 2015/131976)の「中間体:ビフェニル-4-イル(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)[4-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]アミン」に記載の方法と同様にして、下記構造を有する化合物7を合成した。
【0157】
【化30】
【0158】
詳細には、ビフェニル-4-イル(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミン(40g)と、4-クロロヨードベンゼン(26.4g)と、をトルエン(700mL)に溶解させた。溶液を脱気し、Nで飽和させた。その後、4.4mLの1M トリ-tert-ブチルホスフィン溶液と、酢酸パラジウム(II)(0.5g)と、を上記溶液に添加し、次いで、ナトリウムtert-ブトキシド(15.9g)を添加して、反応混合物を調製した。この反応混合物を保護雰囲気下で、5時間、沸騰するまで加熱した。その後、混合物をトルエンと水との間で分画し、有機相を水で3度、洗浄し、NaSOで脱水し、ロータリー蒸発により濃縮させて、粗生成物を得た。この粗生成物をトルエンとともにシリカゲルを通して濾過した後、残された残留物をヘプタン/トルエンから再結晶化させて、ビフェニル-4-イル(4-クロロフェニル)(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミンを得た。次に、上記で得られたビフェニル-4-イル(4-クロロフェニル)(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミン(20g)と、ビス(ピナコラート)ジボラン(12.5g)と、酢酸カリウム(12.5g)と、をジオキサン(400mL)に懸濁させた。この懸濁液に、1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)錯体(1.04g)をDCMとともに添加して、反応混合物を得た。この反応混合物を還流下で16時間、加熱した。冷ました後、有機相を除去し、3度、200mLの水で洗浄し、濃縮乾固させた。残留物をトルエンから再結晶化させた。
【0159】
合成例8
(化合物8の合成)
化合物8を下記反応に従って合成した。
【0160】
【化31】
【0161】
アルゴン置換した三つ口フラスコに、上記合成例4で得られた化合物4(3.00g)、上記合成例7で得られた化合物7(3.20g)、炭酸カリウム(2.20g)、ジオキサン50mL、水25mLを加えて30分間撹拌した。その後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd[PPh)(0.30g)を加えて13時間加熱還流撹拌した。反応終了後、室温に冷却しトルエンにて抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過、濃縮した。残留物をジクロロメタンとエタノールで再結晶を行い、化合物8(4.82g)を得た。
【0162】
合成例9
(化合物9の合成)
上記合成例1において、1-ブロモ-2-ヨードベンゼンの代わりに、1-ブロモ-4-ヨードベンゼンを使用する以外は、上記合成例1と同様の操作に従って、化合物9を下記反応により合成した。
【0163】
【化32】
【0164】
合成例10
(化合物10の合成)
上記合成例5において、化合物4の代わりに、上記合成例9で得られた化合物9を使用する以外は、上記合成例5と同様の操作に従って、化合物10を下記反応により合成した。
【0165】
【化33】
【0166】
合成例11
(化合物11の合成)
上記合成例6において、化合物5の代わりに、上記合成例10で得られた化合物10を使用する以外は、上記合成例6と同様の操作に従って、化合物11を下記反応により合成した。
【0167】
【化34】
【0168】
合成例M-1
(化合物M-1の合成)
化合物M-1を下記反応に従って合成した。
【0169】
【化35】
【0170】
アルゴン置換した三つ口フラスコに、上記合成例6で得られた化合物6(5.50g)、ビスピナコールジボレート(Bipin)(10.10g)、酢酸カリウム(5.22g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd(dba))(0.92g)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos)(1.02g)、1,4-ジオキサン(200mL)を入れ、窒素雰囲気下で8時間還流した。反応液を室温まで冷却し、固体をセライトを用いてろ別した。溶媒を減圧留去し、残渣をトルエンに溶解し、活性炭およびゼオライトを加え、130℃で30分間攪拌した。セライトを用いて固体をろ別し、溶媒を減圧留去後、残留物をトルエンおよびエタノールで再結晶を行い、化合物M-1(5.02g)を得た。
【0171】
合成例M-2
(化合物M-2の合成)
化合物M-2を下記反応に従って合成した。
【0172】
【化36】
【0173】
アルゴン置換した三つ口フラスコに、上記合成例8で得られた化合物8(4.10g)、ビスピナコールジボレート(2.29g)、酢酸カリウム(1.10g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd(dba))(0.20g)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos)(0.2g)、1,4-ジオキサン(40mL)を入れ、窒素雰囲気下で8時間還流した。反応液を室温まで冷却し、固体をセライトを用いてろ別した。溶媒を減圧留去し、残渣をトルエンに溶解し、活性炭およびゼオライトを加え、130℃で30分間攪拌した。セライトを用いて固体をろ別し、溶媒を減圧留去後、残留物をトルエンとエタノールで再結晶を行い、化合物M-2(2.10g)を得た。
【0174】
合成例M-3
(化合物M-3の合成)
上記合成例M-1において、化合物6の代わりに、上記合成例11で得られた化合物11を使用する以外は、上記合成例M-1と同様の操作に従って、化合物M-3を下記反応により合成した。
【0175】
【化37】
【0176】
実施例1
(共重合体P-1の合成)
アルゴン雰囲気下、上記合成例M-1で得られた化合物M-1(2.027g)、2,7-ジブロモ-9,9-ジ-n-オクチルフルオレン(1.148g)、酢酸パラジウム(6.4mg)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(51.9mg)、トルエン(64mL)、および20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(7.3g)を四つ口フラスコに加え、85℃で6時間攪拌した。次に、フェニルボロン酸(343mg)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(119mg)、20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(7.42g)を加え、6時間攪拌した。その後、イオン交換水(50mL)に溶解したN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(5.71g)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%酢酸水溶液、水で洗浄した。有機層をシリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通し、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をトルエンに溶解し、メタノールに滴下し析出させ、析出した固体をろ別、および乾燥し、共重合体P-1を得た(0.83g)。得られた共重合体P-1の重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)をSECで測定した。その結果、共重合体P-1の重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)は、それぞれ、5,200および1.57であった。
【0177】
このようにして得られた共重合体P-1は、単量体の仕込み比から以下の繰り返し単位を有すると推定される。
【0178】
【化38】
【0179】
実施例2
(共重合体P-2の合成)
アルゴン雰囲気下、上記合成例M-2で得られた化合物M-2 (1.157g)、2,7-ジブロモ-9,9-ジ-n-オクチルフルオレン(0.581g)、酢酸パラジウム(2.4mg)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(19.4mg)、トルエン(35mL)、および20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(5.4g)を四つ口フラスコに加え、85℃で6時間攪拌した。次に、フェニルボロン酸(128.2mg)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(44mg)、20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(5.4g)を加え、6時間攪拌した。その後、イオン交換水(30mL)に溶解したN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(5.71g)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%酢酸水溶液、水で洗浄した。有機層をシリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通し、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をトルエンに溶解し、メタノールに滴下し析出させ、析出した固体をろ別、および乾燥し、共重合体P-2を得た(1.01g)。得られた共重合体P-2の重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)をSECで測定した。その結果、共重合体P-2の重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)は、それぞれ、17,600および1.72であった。
【0180】
このようにして得られた共重合体P-2は、単量体の仕込み比から以下の繰り返し単位を有すると推定される。
【0181】
【化39】
【0182】
比較例1
(比較共重合体P-3の合成)
アルゴン雰囲気下、上記合成例M-3で得られた化合物M-3(1.607g)、2,7-ジブロモ-9,9-ジ-n-オクチルフルオレン(1.599g)、酢酸パラジウム(6.5mg)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(53.2mg)、トルエン(60mL)、および20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(15.03g)を四つ口フラスコに加え、85℃で6時間攪拌した。次に、フェニルボロン酸(352.7mg)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(122.8mg)、20質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(5.4g)を加え、6時間攪拌した。その後、イオン交換水(30mL)に溶解したN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(7.21g)を加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層を水、3質量%酢酸水溶液、水で洗浄した。有機層をシリカゲル/アルミナを充填したカラムクロマトグラフィーに通し、溶媒を減圧留去した。得られた液体をメタノールに滴下し、析出した固体をトルエンに溶解し、メタノールに滴下し析出させ、析出した固体をろ別、および乾燥し、比較共重合体P-3を得た(1.21g)。得られた比較共重合体P-3の重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)をSECで測定した。その結果、共重合体P-2の重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)は、それぞれ、7,400および1.85であった。
【0183】
このようにして得られた比較共重合体P-3は、単量体の仕込み比から以下の繰り返し単位を有すると推定される。
【0184】
【化40】
【0185】
実施例3
(電界発光素子1の作製)
第1電極(陽極)として、酸化インジウムスズ(ITO)が膜厚150nmでパターニングされているITO付きガラス基板を使用した。このITO付きガラス基板を、中性洗剤、脱イオン水、水及びイソプロピルアルコールを用いて順次洗浄した後、UV-オゾン処理を実施した。次に、このITO付きガラス基板上に、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)(Sigma-Aldrich製)を、乾燥膜厚が30nmになるようにスピンコート法により塗布した後、乾燥させた。その結果、厚さ(乾燥膜厚)30nmの正孔注入層がITO付きガラス基板上に形成された。
【0186】
次に、実施例1で合成した共重合体P-1(正孔輸送材料)をトルエン(溶媒)に1質量%濃度で溶解して正孔輸送層形成用塗布液(1)を調製した。上記で形成した正孔注入層上に、この正孔輸送層形成用塗布液(1)を厚さ(乾燥膜厚)が30nmになるようにスピンコート法にて塗布した後、230℃で1時間加熱して、厚さ(乾燥膜厚)30nmの正孔輸送層を正孔注入層上に形成した。
【0187】
シクロヘキサン中に、下記構造:
【0188】
【化41】
【0189】
を有するZnTeSe/ZnSe/ZnS(コア/シェル/シェル;平均直径=約10nm)の青色量子ドットを、1.0質量%となるように分散させ、量子ドット分散液を調製した。なお、正孔輸送層(特に共重合体P-1)はシクロヘキサンには溶解しない。この量子ドット分散液を、乾燥膜厚が30nmになるようにスピンコート法により上記正孔輸送層上に塗布した後、乾燥させた。その結果、厚さ(乾燥膜厚)30nmの量子ドット発光層が正孔輸送層上に形成された。なお、量子ドット分散液に紫外線を照射することにより発せられる光は、中心波長が462nm、半値幅が30nmであった。
【0190】
この量子ドット発光層を完全に乾燥させた。この量子ドット発光層上に、真空蒸着装置を用いて、リチウムキノレート(Liq)及び電子輸送材料としての1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン(TPBI)(Sigma-Aldrich製)を共蒸着させた。その結果、厚さが36nmの電子輸送層が量子ドット発光層上に形成された。
【0191】
真空蒸着装置を用いて、この電子輸送層上に、(8-キノリノラト)リチウム(リチウムキノレート)(Liq)を蒸着させた。その結果、厚さ0.5nmの電子注入層が電子輸送層上に形成された。
【0192】
上記で形成した電子注入層上に、アルミニウム(以下、Al)を真空蒸着装置にて蒸着させて、厚さが100nmの第2電極(陰極)を電子注入層上に形成した。これにより、電界発光素子1(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子1)を得た。
【0193】
実施例4
(電界発光素子2の作製)
実施例3において、共重合体P-1の代わりに、実施例2で合成した共重合体P-2を使用する以外は、実施例3と同様の操作を行い、電界発光素子2(量子ドットエレクトロルミネッセンス素子2)を作製した。
【0194】
比較例1
(比較電界発光素子1の作製)
実施例3において、共重合体P-1の代わりに、比較例1で合成した比較共重合体P-3を使用する以外は、実施例3と同様の操作を行い、比較電界発光素子1(比較量子ドットエレクトロルミネッセンス素子1)を作製した。
【0195】
[電界発光素子の評価]
上記実施例3~4にて作製した電界発光素子1~2および比較例1にて作製した比較電界発光素子1について、下記方法により、発光効率(EQE)及び発光寿命(LT90)を評価した。結果を下記表1に示す。なお、下記表1中のLT90は、比較例1の比較電界発光素子1のLT90[hr]を1とした相対値として示す。
【0196】
(発光効率)
各電界発光素子に対して、電圧を印加すると、一定の電圧で電流が流れ始め、電界発光素子が発光する。直流定電圧電源(株式会社キーエンス製、ソースメータ(source meter))を用いて、各素子に対して、徐々に電圧を増加させ、その時の電流値を計測し、発光時の輝度を輝度測定装置(Topcon製、SR-3)を用いて測定する。ここで、輝度が減衰を始めた時点で測定を終了する。各素子の面積から単位面積あたりの電流値(電流密度)を計算し、輝度(cd/m)を電流密度(A/m)にて除算することで、電流効率(cd/A)を算出する。
【0197】
また、輝度測定装置で測定した分光放射輝度スペクトルから、ランバシアン放射を行ったと仮定して、Cd/A max時の外部量子効率(EQE)(%)を算出し、発光効率を評価する。
【0198】
(発光寿命)
直流定電圧電源(株式会社キーエンス製、ソースメータ(source meter))を用いて、各電界発光素子に対して所定の電圧を加え、各量子ドットエレクトロルミネッセンス素子を発光させる。量子ドットエレクトロルミネッセンス素子の発光を輝度測定装置(株式会社Topcon製、SR-3)にて測定しつつ、徐々に電流を増加させ、輝度が280nit(cd/m)になったところで電流を一定にし、放置する。輝度測定装置で測定した輝度の値が徐々に低下し、初期輝度の90%になるまでの時間を「LT90(hr)」とする。
【0199】
【表1】
【0200】
上記表1の結果から、実施例3、4の電界発光素子1、2は、比較電界発光素子1に比して、発光効率(EQE)及び発光寿命(LT90)をバランスよく両立できることが分かる。なお、本例では、青色量子ドットエレクトロルミネッセンス素子について評価したが、赤色量子ドットエレクトロルミネッセンス素子等においても、上記と同様の結果が得られると考察される。
【0201】
以上、本発明について実施形態および実施例を挙げて説明したが、本発明は特定の実施形態、実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0202】
100…エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)、
110…基板、
120…第1電極、
130…正孔注入層、
140…正孔輸送層、
150…発光層、
160…電子輸送層、
170…電子注入層、
180…第2電極。
図1