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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスの配索構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20250318BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20250318BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
H02G3/04 087
H02G3/30
B60R16/02 623U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021004954
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109563
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 良
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-154596(JP,A)
【文献】実開平06-062718(JP,U)
【文献】特開2012-133926(JP,A)
【文献】特開2015-065099(JP,A)
【文献】特開2019-110617(JP,A)
【文献】特開2000-308231(JP,A)
【文献】特開2007-174852(JP,A)
【文献】特開2004-242435(JP,A)
【文献】実開昭58-022031(JP,U)
【文献】実開平02-037514(JP,U)
【文献】特開2002-176716(JP,A)
【文献】特開2017-175799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 3/30
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディパネルにおける配索経路に配索されるワイヤハーネスの配索構造であって、
前記ワイヤハーネスは、
複数のケーブルが樹脂によって一体化された幹線と、
前記幹線の外周を覆うように装着される直線状に形成された筒状のプロテクタと、
を備え、
前記プロテクタは、
長尺形状に形成され、挿通孔を有する矩形状の断面形状を有して、4つの側面を備え、
4つの前記側面のうち、互いに隣接する第1側面及び第2側面の各々に、複数の係合凸部が一定の間隔をあけて設けられ、前記第1側面及び前記第2側面以外の互いに隣接する第3側面及び第4側面の各々に、前記係合凸部と同一間隔をあけて複数の係合凹部が設けられ、
複数の前記幹線が、前記プロテクタの前記係合凸部を前記係合凹部に嵌め込むことにより一体化されて前記ボディパネルにおける直線状の配索経路に沿って配索され
前記プロテクタとして、第1のプロテクタ、第2のプロテクタ、第3のプロテクタ及び第4のプロテクタを備え、
前記第1~前記第4のプロテクタの各々について、長手方向に垂直な幅方向の長さが、長手方向に垂直な高さ方向の長さより大きく、
前記第2のプロテクタの幅方向の長さが前記第1のプロテクタの幅方向の長さと等しく、前記第2のプロテクタの高さ方向の長さが前記第1のプロテクタの高さ方向の長さより小さく、
前記第3のプロテクタの幅方向の長さが前記第1のプロテクタの高さ方向の長さと等しく、
前記第4のプロテクタの幅方向の長さが前記第1のプロテクタの幅方向の長さの半分と等しい、
ワイヤハーネスの配索構造。
【請求項2】
前記プロテクタに取り付けられ、前記プロテクタが装着された前記幹線を前記ボディパネルに固定する固定部材を備え、
前記固定部材は、前記プロテクタの前記係合凹部または前記係合凸部に係合可能な係合凸部または係合凹部を有する、
請求項1に記載のワイヤハーネスの配索構造。
【請求項3】
前記幹線は、前記プロテクタから露出した部分が屈曲されて配索される、
請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネスの配索構造。
【請求項4】
前記幹線は、押出成形によって複数の前記ケーブルの外周に長さ方向にわたって前記樹脂が被覆されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のワイヤハーネスの配索構造。
【請求項5】
前記プロテクタは、周方向にわたって形成された溝状のくびれ部が長さ方向へ等間隔に設けられて複数のブロックに区分されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載のワイヤハーネスの配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの配索構造及びプロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数本のワイヤハーネス相互の交錯部等において、各ワイヤハーネスを覆う合体プロテクタを相互に係合合体させて一体化させ、この一体化させたプロテクタ集合体を車体パネルへ固定することが記載されている。また、特許文献2には、ワイヤハーネスを収容する同形のプロテクタを積み重ねて一体化することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-242435号公報
【文献】実開平6-62716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両に搭載されるネットワークシステムとして、電装インフラボックス、ドメインコントローラあるいはゾーンECU等の制御ボックスで制御される集中制御型アーキテクチャを備えたものがある。
【0005】
このような車載ネットワークシステムでは、例えば、上位制御ボックス同士を繋ぐ太い電線束や上位制御ボックスと下位制御ボックスとを繋ぐやや太い電線束などの断面形状が異なる各種のバリエーションの幹線を有し、これらが同一ルート上に配索される場合がある。このため、同一ルート上に幹線を配索させる部分では、各種のバリエーションの幹線毎にプロテクタを設計して作製しなければならず、コストアップを招いてしまう。
【0006】
また、各種のバリエーションの幹線を無作為に束ねると、配索経路の途中で幹線同士の交差や重なりが発生し、幹線の長さが足りなくなることがある。このため、配索経路の長さに対して幹線の線長交差を大きく確保しなければならず、材料費が嵩んでしまう。また、線長公差を大きくとることで幹線に余長が生じた場合、この余長部分をプロテクタ内に押し込んで収容させなければならず、配索作業が煩雑になる。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストを抑えつつ、複数の幹線を容易に配索させることが可能なワイヤハーネスの配索構造提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスの配索構造、下記(1)~()を特徴としている。
(1) 車両のボディパネルにおける配索経路に配索されるワイヤハーネスの配索構造であって、
前記ワイヤハーネスは、
複数のケーブルが樹脂によって一体化された幹線と、
前記幹線の外周を覆うように装着される直線状に形成された筒状のプロテクタと、
を備え、
前記プロテクタは、
長尺形状に形成され、挿通孔を有する矩形状の断面形状を有して、4つの側面を備え、
4つの前記側面のうち、互いに隣接する第1側面及び第2側面の各々に、複数の係合凸部が一定の間隔をあけて設けられ、前記第1側面及び前記第2側面以外の互いに隣接する第3側面及び第4側面の各々に、前記係合凸部と同一間隔をあけて複数の係合凹部が設けられ、
複数の前記幹線が、前記プロテクタの前記係合凸部を前記係合凹部に嵌め込むことにより一体化されて前記ボディパネルにおける直線状の配索経路に沿って配索され
前記プロテクタとして、第1のプロテクタ、第2のプロテクタ、第3のプロテクタ及び第4のプロテクタを備え、
前記第1~前記第4のプロテクタの各々について、長手方向に垂直な幅方向の長さが、長手方向に垂直な高さ方向の長さより大きく、
前記第2のプロテクタの幅方向の長さが前記第1のプロテクタの幅方向の長さと等しく、前記第2のプロテクタの高さ方向の長さが前記第1のプロテクタの高さ方向の長さより小さく、
前記第3のプロテクタの幅方向の長さが前記第1のプロテクタの高さ方向の長さと等しく、
前記第4のプロテクタの幅方向の長さが前記第1のプロテクタの幅方向の長さの半分と等しい、
ワイヤハーネスの配索構造。
【0009】
上記(1)の構成のワイヤハーネスの配索構造によれば、複数の幹線のそれぞれに装着されたプロテクタの係合凸部と係合凹部とを係合させて一体化させることにより、これらの複数の幹線をボディパネルにおける直線状の配索経路に沿って並列に配索させることができる。また、直線状に形成された筒状のプロテクタを幹線に装着させるので、配索経路に合わせた複雑な形状のプロテクタを幹線毎に設計して作製したり、長い余長を確保する必要がなくなる。したがって、コストを抑えつつ、複数の幹線を容易に配索させることができる。
【0010】
(2) 前記プロテクタに取り付けられ、前記プロテクタが装着された前記幹線を前記ボディパネルに固定する固定部材を備え、
前記固定部材は、前記プロテクタの前記係合凹部または前記係合凸部に係合可能な係合凸部または係合凹部を有する、
上記(1)に記載のワイヤハーネスの配索構造。
【0011】
上記(2)の構成のワイヤハーネスの配索構造によれば、プロテクタの係合凹部または係合凸部に固定部材の係合凸部または係合凹部を係合させて固定部材をボディパネルに固定することにより、プロテクタが装着された幹線をボディパネルへ容易に固定して配索することができる。
【0012】
(3) 前記幹線は、前記プロテクタから露出した部分が屈曲されて配索される、
上記(1)または(2)に記載のワイヤハーネスの配索構造。
【0013】
上記(3)の構成のワイヤハーネスの配索構造によれば、幹線におけるプロテクタから露出した部分を屈曲させて容易に配索することができる。また、プロテクタから露出した部分においても樹脂によってケーブルが覆われているので、ケーブルを良好に保護することができる。
【0014】
(4) 前記幹線は、押出成形によって複数の前記ケーブルの外周に長さ方向にわたって前記樹脂が被覆されている、
上記(1)~(3)のいずれか一つに記載のワイヤハーネスの配索構造。
【0015】
上記(4)の構成のワイヤハーネスの配索構造によれば、押出成形によって幹線の複数のケーブルが長さ方向にわたって樹脂によって覆われているので、長さ方向にわたってケーブルを保護することができる。これにより、プロテクタから露出した部分を他の外装部材等で保護する必要がなくなり、軽量化とともに配索作業工数を削減できる。
【0016】
(5) 前記プロテクタは、周方向にわたって形成された溝状のくびれ部が長さ方向へ等間隔に設けられて複数のブロックに区分されている、
上記(1)~(4)のいずれか一つに記載のワイヤハーネスの配索構造。
【0017】
上記(5)の構成のワイヤハーネスの配索構造によれば、プロテクタをくびれ部で切断することにより、一つのブロックを最小単位として必要に応じて複数に分割して用いることができる。これにより、幹線を直線状に配索させる配索経路の長さに応じてプロテクタの長さを柔軟に設定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コストを抑えつつ、複数の幹線を容易に配索させることが可能なワイヤハーネスの配索構造提供できる。
【0021】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本実施形態に係る配索構造によってワイヤハーネスが配索された車両のボディパネルの斜視図である。
図2図2は、ワイヤハーネスにおけるプロテクタが装着された幹線の斜視図である。
図3図3は、プロテクタが装着された幹線の断面図である。
図4図4は、押出成形によって外周が樹脂で覆われた幹線を成形する様子を示す斜視図である。
図5図5は、幹線に装着されるプロテクタを示す図であって、(a)はプロテクタの斜視図、(b)はくびれ部で分離させたプロテクタの斜視図である。
図6図6は、各種の断面形状の幹線を示す図であって、(a)~(d)は、それぞれ幹線の断面図である。
図7図7は、各種の断面形状の幹線に装着されるプロテクタを示す図であって、(a)~(d)は、それぞれプロテクタの正面図である。
図8図8は、各種の幹線を同一ルートに配索する場合のプロテクタの組合せを示す図であって、(a)~(c)は、互いに組付けられたプロテクタの正面図である。
図9図9は、プロテクタを装着した幹線をボディパネルへ固定する固定部材の斜視図である。
図10図10は、固定部材によってボディパネルへ幹線を固定する様子を説明する図であって、(a)は固定部材のプロテクタへの装着前における側面図、(b)は固定部材のプロテクタへの装着後における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る配索構造によってワイヤハーネスが配索された車両のボディパネルの斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係るワイヤハーネスの配索構造は、例えば、車両のボディパネル1に配索されるワイヤハーネスWの配索構造である。
【0025】
ワイヤハーネスWは、例えば、電装インフラボックス、ドメインコントローラあるいはゾーンECU等の制御ボックスで制御される集中制御型アーキテクチャを備えた車載ネットワークシステムの配線として用いられる。
【0026】
このワイヤハーネスWは、幹線10を有している。このワイヤハーネスWの幹線10としては、例えば、上位制御ボックス2同士を繋ぐ太い幹線、上位制御ボックス2と下位制御ボックス3とを繋ぐやや太い幹線、あるいは下位制御ボックス3同士を繋ぐ細い幹線などがある。このように、ワイヤハーネスWは、断面形状の異なる複数種の幹線10を備えている。そして、ワイヤハーネスWをボディパネル1に配索する場合、断面形状の異なる複数種の幹線10が同一ルート上に配索される場合もある。
【0027】
また、ワイヤハーネスWの幹線10は、ボディパネル1の形状に合わせて直線的に配索される部分と屈曲されて配索される部分とがある。例えば、ボディパネル1のフロア4に配索される幹線10は、フロアパネル5及びクロスメンバ6の上部などで直線的に配索される直線配索部11と、フロアパネル5とクロスメンバ6との境界部分などで屈曲されて配索される屈曲配索部12とを有している。
【0028】
図2は、ワイヤハーネスにおけるプロテクタが装着された幹線の斜視図である。図3は、プロテクタが装着された幹線の断面図である。
図2及び図3に示すように、ワイヤハーネスWは、その幹線10における直線的に配索される直線配索部11にプロテクタ50が装着される。このプロテクタ50は、合成樹脂により成形されたもので、挿通孔51を有する角筒状に形成されている。直線配索部11では、幹線10がプロテクタ50の挿通孔51に通されている。これにより、幹線10は、プロテクタ50によって直線的に延在し、また、その外周がプロテクタ50によって覆われて保護される。
【0029】
幹線10は、例えば、導体21を外被22で被覆した電気ケーブル23及び光ファイバ25を外被26で被覆した光ケーブル27を有しており、これらの電気ケーブル23と光ケーブル27とが束ねられてケーブル束となっている。この幹線10は、電気ケーブル23と光ケーブル27とが並列に配置されてケーブル束とされた状態で樹脂29によって全周が覆われて一体化されている。ケーブル束の外周を覆う樹脂29としては、例えば、ウレタン等の柔軟性に優れた樹脂が用いられる。これにより、幹線10は、特に、電気ケーブル23及び光ケーブル27の配列と交差する厚さ方向へ容易に屈曲可能となっている。
【0030】
図4は、押出成形によって外周が樹脂で覆われた幹線を成形する様子を示す斜視図である。
図4に示すように、電気ケーブル23と光ケーブル27とからなるケーブル束は、ダイス30の押出口31に挿通され、このダイス30の押出口31から樹脂29とともに押し出される。これにより、ケーブル束の外周が樹脂29によって覆われて一体化された幹線10が押出成形される。
【0031】
図5は、幹線に装着されるプロテクタを示す図であって、(a)はプロテクタの斜視図、(b)はくびれ部で分離させたプロテクタの斜視図である。
図5(a)に示すように、プロテクタ50は、長尺形状に形成されており、挿通孔51を有する矩形状の断面形状を有している。このプロテクタ50には、その外周に、周方向にわたって形成された溝状のくびれ部52を有している。くびれ部52は、プロテクタ50の長さ方向へ等間隔に形成されている。これにより、プロテクタ50は、くびれ部52によって複数のブロック55に区分されている。プロテクタ50は、樹脂によって成形されており、各くびれ部52で切断可能となっている。これにより、図5(b)に示すように、プロテクタ50は、くびれ部52で切断することにより、一つのブロック55を最小単位として必要に応じて複数に分割して用いることが可能となっている。
【0032】
図3に示すように、プロテクタ50は、複数の側面のうち、互いに隣接する二側面に、複数の係合凸部61が形成されている。また、これらの二側面と反対側の二側面には、係合凸部61が嵌合されて係合される係合凹部63が形成されている。係合凸部61及び係合凹部63は、プロテクタ50の長手方向及び当該長手方向と垂直な方向(幅方向又は高さ方向)に対し同一間隔に配列されており、互いに対応する位置に形成されている。
【0033】
前述したように、ワイヤハーネスWの幹線10は、上位制御ボックス2同士を繋ぐ太い幹線10、上位制御ボックス2と下位制御ボックス3とを繋ぐやや太い幹線10あるいは下位制御ボックス3同士を繋ぐ細い幹線などを備えている。そして、断面形状の異なる複数種の幹線10が同一ルート上に配索される場合がある。各種の幹線10は、電気ケーブル23及び光ケーブル27の本数や外径に応じて幅や厚さなどが異なっている。
【0034】
図6は、各種の断面形状の幹線を示す図であって、(a)~(d)は、それぞれ幹線の断面図である。
図6(a)に示す幹線10Aは、大径の電気ケーブル23と二本の光ケーブル27とから構成された大断面の幹線である。図6(b)に示す幹線10Bは、中程度の外径の二本の電気ケーブル23と二本の光ケーブル27とから構成された中断面の幹線である。図6(c)に示す幹線10Cは、細径の二本の電気ケーブル23と二本の光ケーブル27とから構成された小断面の幹線である。図6(d)に示す幹線10Dは、細径の二本の電気ケーブル23と細径の二本の光ケーブル27とから構成された極小断面の幹線10Dである。このように、幹線10としては、それぞれ幅及び厚さが異なる各種の断面形状の幹線10A~10Dがある。
【0035】
そして、プロテクタ50は、上記のように断面形状が異なる各種の幹線10A~10Dに対応し、これらの幹線10A~10Dが挿通可能な断面形状のものがある。
【0036】
図7は、各種の断面形状の幹線に装着されるプロテクタを示す図であって、(a)~(d)は、それぞれプロテクタの正面図である。
図7(a)に示すプロテクタ50Aは、大断面の幹線10Aが挿通可能な挿通孔51を有する大型のプロテクタである。図7(b)に示すプロテクタ50Bは、中断面の幹線10Bが挿通可能な挿通孔51を有する中型のプロテクタである。図7(c)に示すプロテクタ50Cは、小断面の幹線10Cが挿通可能な挿通孔51を有する小型のプロテクタである。図7(d)に示すプロテクタ50Dは、極小断面の幹線10Dが挿通可能な挿通孔51を有する極小型のプロテクタである。
【0037】
大型のプロテクタ50A、中型のプロテクタ50B及び小型のプロテクタ50Cには、互いに隣接する二側面に複数の係合凸部61が形成され、これらの二側面と反対側の二側面に係合凹部63が形成されている。なお、極小型のプロテクタ50Dでは、複数の側面の内の一側面に、複数の係合凸部61が形成され、この一側面と反対側の側面に係合凹部63が形成されている。
【0038】
そして、プロテクタ50を備えたワイヤハーネスWにおいて、断面形状の異なる複数種の幹線10A~10Dを同一ルート上における直線配索部11に配索させる場合、それぞれの幹線10A~10Dに装着されたプロテクタ50A~50Dを互いに組付けて配索する。
【0039】
次に、直線配索部11において、断面形状の異なる複数種の幹線10を同一ルート上に配索させる場合の組合せの例を説明する。
図8は、各種の幹線を同一ルートに配索する場合のプロテクタの組合せを示す図であって、(a)~(c)は、互いに組付けられたプロテクタの正面図である。
【0040】
大断面の幹線10Aと中断面の幹線10Bとを同一ルートに配索させる場合では、幹線10Aの大型のプロテクタ50Aと、幹線10Bの中型のプロテクタ50Bとを互いに組付けて配索する。図8(a)に示すように、例えば、大型のプロテクタ50Aの上部に中型のプロテクタ50Bを重ね、プロテクタ50Aの係合凸部61をプロテクタ50Bの係合凹部63に嵌め込んで係合させる。すると、これらのプロテクタ50A,50Bが互いに重ね合わされた状態で組付けられ、同一ルート上に大断面の幹線10Aと中断面の幹線10Bとが配索可能となる。
【0041】
大断面の幹線10Aと小断面の幹線10Cとを同一ルートに配索させる場合では、幹線10Aの大型のプロテクタ50Aと、幹線10Cの小型のプロテクタ50Cとを互いに組付けて配索する。図8(b)に示すように、例えば、大型のプロテクタ50Aの側部に小型のプロテクタ50Cを沿わせ、プロテクタ50Aの係合凸部61をプロテクタ50Cの係合凹部63に嵌め込んで係合させる。すると、これらのプロテクタ50A,50Cが互いに隣接された状態で組付けられ、同一ルート上に大断面の幹線10Aと小断面の幹線10Cとが配索可能となる。
【0042】
大断面の幹線10Aと二本の極小断面の幹線10Dとを同一ルートに配索させる場合では、幹線10Aの大型のプロテクタ50Aと、二本の幹線10Dの極小型のプロテクタ50Dとを互いに組付けて配索する。図8(c)に示すように、例えば、大型のプロテクタ50Aの上部に極小型のプロテクタ50Dを並べて重ね、プロテクタ50Aの係合凸部61をそれぞれのプロテクタ50Dの係合凹部63に嵌め込んで係合させる。すると、プロテクタ50Aに二つのプロテクタ50Dが重ね合わされた状態で組付けられ、同一ルート上に大断面の幹線10Aと二本の極小断面の幹線10Dとが配索可能となる。
【0043】
図9は、プロテクタを装着した幹線をボディパネルへ固定する固定部材の斜視図である。図10は、固定部材によってボディパネルへ幹線を固定する様子を説明する図であって、(a)は固定部材のプロテクタへの装着前における側面図、(b)は固定部材のプロテクタへの装着後における側面図である。
【0044】
図9に示すように、プロテクタ50が装着された幹線10は、ボディパネル1に組付けられる固定部材80によってボディパネル1に固定されて配索される。固定部材80は、樹脂により成形されたもので、係止部81と、固定部82とを有している。係止部81は先細り形状に形成されており、根元部分には、押圧片83が設けられている。この固定部材80は、ボディパネル1に形成された固定孔1aに係止部81を挿し込むことにより、ボディパネル1に組付けられる。この固定部材80の係止部81を固定孔1aに挿し込むと、係止部81の根元がボディパネル1の裏側における固定孔1aの縁部を係止する。また、この状態で押圧片83がボディパネル1に押し付けられて弾性変形する。これにより、固定部材80がボディパネル1に対してがたつきなく固定される。
【0045】
図10(a)に示すように、固定部材80の固定部82は、板状に形成されており、その上面には、複数の係合凸部84が形成されている。これらの係合凸部84は、プロテクタ50の係合凹部63と同一間隔に配列されている。図10(b)に示すように、固定部材80は、固定部82に形成された係合凸部84をプロテクタ50の係合凹部63に嵌合させて互いに係合させることによりプロテクタ50に取り付けられる。
【0046】
このように、プロテクタ50が装着された幹線10は、固定部材80をプロテクタ50に取り付け、この固定部材80をボディパネル1に組付けることにより、ボディパネル1へ容易に配索することが可能となっている。
【0047】
そして、ワイヤハーネスWの幹線10は、プロテクタ50を装着した箇所が直線配索部11に配索され、プロテクタ50から露出した箇所が屈曲配索部12に配索される(図1参照)。このとき、幹線10のプロテクタ50から露出した箇所は、柔軟性に優れた樹脂29によって覆われているので、容易に屈曲させて配索経路に合わせて配索させることができる。
【0048】
以上、説明したように、本実施形態に係るワイヤハーネスWの配索構造によれば、複数の幹線10のそれぞれに装着されたプロテクタ50の係合凸部61と係合凹部63とを係合させて一体化させることにより、これらの複数の幹線10をボディパネル1における直線配索部11に沿って並列に配索させることができる。また、直線状に形成された筒状のプロテクタ50を幹線10に装着させるので、配索経路に合わせた複雑な形状のプロテクタを幹線毎に設計して作製したり、長い余長を確保する必要がなくなる。したがって、コストを抑えつつ、複数の幹線10を容易に配索させることができる。
【0049】
また、幹線10に装着されたプロテクタ50をボディパネル1に固定する固定部材80は、プロテクタ50の係合凹部63に係合可能な係合凸部84を有している。したがって、プロテクタ50の係合凹部63に固定部材80の係合凸部84を係合させて固定部材80をボディパネル1に固定することにより、プロテクタ50が装着された幹線10をボディパネル1へ容易に固定して配索することができる。
【0050】
なお、固定部材80としては、固定部82に、プロテクタ50の係合凸部61が嵌合される係合凹部を有するものでもよい。この場合、プロテクタ50の係合凸部61を固定部材80の固定部82に形成された係合凹部に嵌合させて互いに係合させることによりプロテクタ50に固定部材80が取り付けられる。
【0051】
また、本実施形態に係るワイヤハーネスWの配索構造では、幹線10におけるプロテクタ50から露出した部分を屈曲させて容易に配索することができる。しかも、プロテクタ50から露出した部分においても樹脂29によって電気ケーブル23及び光ケーブル27が覆われているので、電気ケーブル23及び光ケーブル27を良好に保護することができる。
【0052】
また、幹線10は、押出成形によって電気ケーブル23及び光ケーブル27の外周に、長さ方向にわたって樹脂29が被覆されているので、長さ方向にわたって電気ケーブル23及び光ケーブル27を保護することができる。これにより、プロテクタ50から露出した部分を他の外装部材等で保護する必要がなくなり、軽量化とともに配索作業工数を削減できる。
【0053】
また、プロテクタ50は、周方向にわたって形成された溝状のくびれ部52が長さ方向へ等間隔に設けられて複数のブロック55に区分されている。したがって、プロテクタ50をくびれ部52で切断することにより、一つのブロック55を最小単位として必要に応じて複数に分割して用いることができる。これにより、幹線10を直線状に配索させる配索経路の長さに応じてプロテクタ50の長さを柔軟に設定することができる。
【0054】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0055】
例えば、上記の実施形態においては、係合凸部61及び係合凹部63は、プロテクタ50の長手方向及び当該長手方向と垂直な方向(幅方向又は高さ方向)に対し同一間隔に配列されているが、長手方向の間隔とこれに垂直な方向の間隔とが異なっていてもよい。
【0056】
ここで、上述した本発明の実施形態に係るワイヤハーネスの配索構造及びプロテクタの特徴をそれぞれ以下[1]~[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 車両のボディパネル(1)における配索経路に配索されるワイヤハーネス(W)の配索構造であって、
前記ワイヤハーネス(W)は、
複数のケーブル(電気ケーブル23,光ケーブル27)が樹脂(29)によって一体化された幹線(10)と、
前記幹線(10)の外周を覆うように装着される直線状に形成された筒状のプロテクタ(50)と、
を備え、
前記プロテクタ(50)は、
複数の係合凸部(61)が一定の間隔をあけて設けられた側面と、
前記係合凸部(61)と同一間隔をあけて複数の係合凹部(63)が設けられた側面と、
を有し、
複数の前記幹線(10)が、前記プロテクタ(50)の前記係合凸部(61)を前記係合凹部(63)に嵌め込むことにより一体化されて前記ボディパネル(1)における直線状の配索経路に沿って配索される、
ワイヤハーネスの配索構造。
【0057】
[2] 前記プロテクタ(50)に取り付けられ、前記プロテクタ(50)が装着された前記幹線(10)を前記ボディパネル(1)に固定する固定部材(80)を備え、
前記固定部材(80)は、前記プロテクタ(50)の前記係合凹部(63)または前記係合凸部(61)に係合可能な係合凸部(84)または係合凹部を有する、
上記[1]に記載のワイヤハーネスの配索構造。
【0058】
[3] 前記幹線(10)は、前記プロテクタ(50)から露出した部分が屈曲されて配索される、
上記[1]または[2]に記載のワイヤハーネスの配索構造。
【0059】
[4] 前記幹線(10)は、押出成形によって複数の前記ケーブル(電気ケーブル23,光ケーブル27)の外周に長さ方向にわたって前記樹脂(29)が被覆されている、
上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のワイヤハーネスの配索構造。
【0060】
[5] 前記プロテクタ(50)は、周方向にわたって形成された溝状のくびれ部(52)が長さ方向へ等間隔に設けられて複数のブロック(55)に区分されている、
上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のワイヤハーネスの配索構造。
【0061】
[6] 電線の外周を覆うように装着されるプロテクタ(50)であって、
長尺形状に形成され、挿通孔(51)を有する矩形状の断面形状を有し、
複数の係合凸部(61)が、長手方向及び当該長手方向に垂直な方向に対しそれぞれ一定の間隔をあけて設けられた側面と、
長手方向及び当該長手方向に垂直な方向に対し前記係合凸部(61)とそれぞれ同一間隔をあけて複数の係合凹部(63)が設けられた側面と、を有する、
プロテクタ。
【符号の説明】
【0062】
1 ボディパネル
10 幹線
23 電気ケーブル(ケーブル)
27 光ケーブル(ケーブル)
29 樹脂
50 プロテクタ
52 くびれ部
55 ブロック
61 係合凸部
63 係合凹部
80 固定部材
84 係合凸部
W ワイヤハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10