(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】光ファイバ切断装置及び光ファイバ切断方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/25 20060101AFI20250318BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
G02B6/25
B26D3/00 601Z
(21)【出願番号】P 2021017672
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2020088057
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】橘 侑子
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 諒
(72)【発明者】
【氏名】神田 佳治
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-6403(JP,U)
【文献】特開昭61-4004(JP,A)
【文献】実開平5-73603(JP,U)
【文献】特開2000-292639(JP,A)
【文献】特開平11-271538(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0278025(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/245-6/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス部及び前記ガラス部を被覆する被覆部を有する複数の光ファイバをその長手方向に直交する第一直交方向に一列に並べた状態で把持するファイバホルダと、
前記ファイバホルダから延びる複数の前記光ファイバの前記ガラス部を挿通させる挿通孔を有する整列部材と、
前記ファイバホルダを載置する第一載置部、及び、前記第一載置部に対して間隔をあけて位置し、前記整列部材を載置する第二載置部を有する基台と、
前記基台に対して前記第一載置部及び前記第二載置部の間で前記第一直交方向に移動させることで、複数の前記ガラス部の表面を加傷する刃部材と、
を備え、
前記挿通孔の内面は、前記挿通孔に位置する複数の前記ガラス部が前記第一直交方向に一列に並ぶように、かつ、前記挿通孔に位置する複数の前記ガラス部を押圧しないように形成され、
前記整列部材は、前記基台に対して着脱不能に取り付けられており、
前記整列部材は、前記基台に対して、前記長手方向及び前記第一直交方向に直交する第二直交方向に移動するように取り付けられている、
光ファイバ切断装置。
【請求項2】
ガラス部及び前記ガラス部を被覆する被覆部を有する複数の光ファイバをその長手方向に直交する第一直交方向に一列に並べた状態で把持するファイバホルダと、
前記ファイバホルダから延びる複数の前記光ファイバの前記ガラス部を挿通させる挿通孔を有する整列部材と、
前記ファイバホルダを載置する第一載置部、及び、前記第一載置部に対して間隔をあけて位置し、前記整列部材を載置する第二載置部を有する基台と、
前記基台に対して前記第一載置部及び前記第二載置部の間で前記第一直交方向に移動させることで、複数の前記ガラス部の表面を加傷する刃部材と、
を備え、
前記挿通孔の内面は、前記挿通孔に位置する複数の前記ガラス部が前記第一直交方向に一列に並ぶように、かつ、前記挿通孔に位置する複数の前記ガラス部を押圧しないように形成され、
前記整列部材は、係止凹部を有し、
前記基台の前記第二載置部は、前記整列部材の前記係止凹部に挿入される係止突起を有し、
前記整列部材は、前記基台に対して着脱自在である、
光ファイバ切断装置。
【請求項3】
ガラス部及び前記ガラス部を被覆する被覆部を有する複数の光ファイバをその長手方向に直交する第一直交方向に一列に並べた状態で把持するファイバホルダと、
前記ファイバホルダから延びる複数の前記光ファイバの前記ガラス部を挿通させる挿通孔を有する整列部材と、
前記ファイバホルダを載置する第一載置部、及び、前記第一載置部に対して間隔をあけて位置し、前記整列部材を載置する第二載置部を有する基台と、
前記基台に対して前記第一載置部及び前記第二載置部の間で前記第一直交方向に移動させることで、複数の前記ガラス部の表面を加傷する刃部材と、
を備え、
前記挿通孔の内面は、前記挿通孔に位置する複数の前記ガラス部が前記第一直交方向に一列に並ぶように、かつ、前記挿通孔に位置する複数の前記ガラス部を押圧しないように形成され、
前記整列部材は、前記基台に対して着脱不能に取り付けられており、
前記整列部材は、前記基台に対して、前記第一直交方向に平行する支点軸を中心に回転するように取り付けられている、
光ファイバ切断装置。
【請求項4】
前記整列部材は、
複数のガラス部を載置する載置面を有する載置台と、
前記載置面に対して前記長手方向及び前記第一直交方向に直交する第二直交方向に間隔をあけて配置されることで前記載置面との間に前記挿通孔を形成する第一位置と、前記載置面を開放する第二位置との間で移動可能とされた蓋部材と、
を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバ切断装置。
【請求項5】
前記蓋部材は、前記載置台に対して前記第一位置と前記第二位置との間で回転移動可能に連結されている、
請求項4に記載の光ファイバ切断装置。
【請求項6】
前記長手方向及び前記第一直交方向に直交する第二直交方向における前記挿通孔の高さ寸法は、前記ガラス部の直径寸法よりも大きく、かつ、前記直径寸法の2倍よりも小さい、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光ファイバ切断装置。
【請求項7】
ファイバホルダ、挿通孔を有する整列部材、及び刃部材を備える光ファイバ切断装置を準備し、
前記ファイバホルダを用いて、ガラス部及び前記ガラス部を被覆する被覆部を有する複数の光ファイバをその長手方向に直交する第一直交方向に一列に並べた状態で把持し、
前記ファイバホルダから延びる複数の前記光ファイバの前記ガラス部を前記挿通孔に挿通させ、
前記ファイバホルダを固定した状態で前記ファイバホルダから離間するように前記整列部材のみを移動させ、または、前記ファイバホルダ及び前記整列部材が互いに離間するように前記ファイバホルダ及び前記整列部材の両方を移動させ、
前記ファイバホルダと前記整列部材との間に位置する複数の前記ガラス部の部位が前記第一直交方向に一列に並ぶように、複数の前記ガラス部を整列させ、
前記刃部材を用いて、複数の前記ガラス部の表面を加傷する、
光ファイバ切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ切断装置及び光ファイバ切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一列に並べた複数の光ファイバをまとめて切断する光ファイバ切断装置が開示されている。特許文献1の光ファイバ切断装置では、切断した複数の光ファイバの端面を揃えるために、複数の光ファイバを光ファイバ設置V溝部の複数のV溝に各々収納することで、複数の光ファイバを一列に整列させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実際に複数の光ファイバをまとめて切断する際には、複数の光ファイバから被覆を除去して複数のガラス部を露出させ、これら複数のガラス部を切断する。露出した複数のガラス部は、互いに交差したり、光ファイバの長手方向及び複数の光ファイバの整列方向に直交する方向に重なったりしやすい。このため、複数のガラス部を特許文献1のように複数のV溝に各々収納することは難しい。また、隣り合う二つのガラス部が、被覆除去用の液体(例えば、アルコール)の表面張力や静電気による誘電分極によって互いに引き寄せられてV溝から抜けてしまうこともある。したがって、特許文献1の光ファイバ切断装置では、複数のガラス部を一列に整列させることが難しい、という問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、簡単に複数のガラス部を一列に整列させることが可能な光ファイバ切断装置及び光ファイバ切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る光ファイバ切断装置は、ガラス部及び前記ガラス部を被覆する被覆部を有する複数の光ファイバをその長手方向に直交する第一直交方向に一列に並べた状態で把持するファイバホルダと、前記ファイバホルダから延びる複数の前記光ファイバの前記ガラス部を挿通させる挿通孔を有する整列部材と、前記ファイバホルダを載置する第一載置部、及び、前記第一載置部に対して間隔をあけて位置し、前記整列部材を載置する第二載置部を有する基台と、前記基台に対して前記第一載置部及び前記第二載置部の間で前記第一直交方向に移動させることで、複数の前記ガラス部の表面を加傷する刃部材と、を備える。前記挿通孔の内面は、前記挿通孔に位置する複数の前記ガラス部が前記第一直交方向に一列に並ぶように、かつ、前記挿通孔に位置する複数の前記ガラス部を押圧しないように形成されている。前記整列部材は、前記基台に対して着脱不能に取り付けられている。前記整列部材は、前記基台に対して、前記長手方向及び前記第一直交方向に直交する第二直交方向に移動するように取り付けられている。
【0007】
本発明の一態様に係る光ファイバ切断装置は、ガラス部及び前記ガラス部を被覆する被覆部を有する複数の光ファイバをその長手方向に直交する第一直交方向に一列に並べた状態で把持するファイバホルダと、前記ファイバホルダから延びる複数の前記光ファイバの前記ガラス部を挿通させる挿通孔を有する整列部材と、前記ファイバホルダを載置する第一載置部、及び、前記第一載置部に対して間隔をあけて位置し、前記整列部材を載置する第二載置部を有する基台と、前記基台に対して前記第一載置部及び前記第二載置部の間で前記第一直交方向に移動させることで、複数の前記ガラス部の表面を加傷する刃部材と、を備える。前記挿通孔の内面は、前記挿通孔に位置する複数の前記ガラス部が前記第一直交方向に一列に並ぶように、かつ、前記挿通孔に位置する複数の前記ガラス部を押圧しないように形成されている。前記整列部材は、係止凹部を有する。前記基台の前記第二載置部は、前記整列部材の前記係止凹部に挿入される係止突起を有する。前記整列部材は、前記基台に対して着脱自在である。
【0008】
本発明の一態様に係る光ファイバ切断装置は、ガラス部及び前記ガラス部を被覆する被覆部を有する複数の光ファイバをその長手方向に直交する第一直交方向に一列に並べた状態で把持するファイバホルダと、前記ファイバホルダから延びる複数の前記光ファイバの前記ガラス部を挿通させる挿通孔を有する整列部材と、前記ファイバホルダを載置する第一載置部、及び、前記第一載置部に対して間隔をあけて位置し、前記整列部材を載置する第二載置部を有する基台と、前記基台に対して前記第一載置部及び前記第二載置部の間で前記第一直交方向に移動させることで、複数の前記ガラス部の表面を加傷する刃部材と、を備える。前記挿通孔の内面は、前記挿通孔に位置する複数の前記ガラス部が前記第一直交方向に一列に並ぶように、かつ、前記挿通孔に位置する複数の前記ガラス部を押圧しないように形成されている。前記整列部材は、前記基台に対して着脱不能に取り付けられている。前記整列部材は、前記基台に対して、前記第一直交方向に平行する支点軸を中心に回転するように取り付けられている。
【0009】
上記の光ファイバ切断装置では、複数の光ファイバをファイバホルダで把持し、ファイバホルダから延びる複数のガラス部を整列部材の挿通孔に挿通させた状態で、ファイバホルダ及び整列部材を互いに離す方向に移動させるだけで、ファイバホルダと整列部材との間に位置する複数のガラス部の部位を簡単に第一直交方向に一列に整列させることができる。
【0010】
本発明の一態様に係る光ファイバ切断装置においては、前記整列部材は、複数のガラス部を載置する載置面を有する載置台と、前記載置面に対して前記長手方向及び前記第一直交方向に直交する第二直交方向に間隔をあけて配置されることで前記載置面との間に前記挿通孔を形成する第一位置と、前記載置面を開放する第二位置との間で移動可能とされた蓋部材と、を備えてもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る光ファイバ切断装置においては、前記蓋部材は、前記載置台に対して前記第一位置と前記第二位置との間で回転移動可能に連結されてもよい。
【0012】
本発明の一態様に係る光ファイバ切断装置においては、前記長手方向及び前記第一直交方向に直交する第二直交方向における前記挿通孔の高さ寸法は、前記ガラス部の直径寸法よりも大きく、かつ、前記直径寸法の2倍よりも小さくてもよい。
【0013】
本発明の一態様に係る光ファイバ切断方法は、ファイバホルダ、挿通孔を有する整列部材、及び刃部材を備える光ファイバ切断装置を準備し、前記ファイバホルダを用いて、ガラス部及び前記ガラス部を被覆する被覆部を有する複数の光ファイバをその長手方向に直交する第一直交方向に一列に並べた状態で把持し、前記ファイバホルダから延びる複数の前記光ファイバの前記ガラス部を前記挿通孔に挿通させ、前記ファイバホルダを固定した状態で前記ファイバホルダから離間するように前記整列部材のみを移動させ、または、前記ファイバホルダ及び前記整列部材が互いに離間するように前記ファイバホルダ及び前記整列部材の両方を移動させ、前記ファイバホルダと前記整列部材との間に位置する複数の前記ガラス部の部位が前記第一直交方向に一列に並ぶように、複数の前記ガラス部を整列させ、前記刃部材を用いて、複数の前記ガラス部の表面を加傷する。
【0014】
上記の光ファイバ切断方法では、複数の光ファイバをファイバホルダで把持し、ファイバホルダから延びる複数のガラス部を整列部材の挿通孔に挿通させた状態で、ファイバホルダ及び整列部材を互いに離す方向に移動させるだけで、ファイバホルダと整列部材との間に位置する複数のガラス部の部位を簡単に第一直交方向に一列に整列させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の光ファイバのガラス部をまとめて切断する際に、簡単に複数のガラス部を一列に整列させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光ファイバ切断装置を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1に示す光ファイバ切断装置において扱う複数の光ファイバの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す光ファイバ切断装置の整列部材を示す側面図である。
【
図4】
図1に示す光ファイバ切断装置により複数の光ファイバを切断する方法を説明する断面図である。
【
図5】
図1に示す光ファイバ切断装置により複数の光ファイバを切断する方法を説明する断面図である。
【
図6A】
図1に示す光ファイバ切断装置により複数の光ファイバを切断する方法を説明する断面図である。
【
図6B】
図6Aに示すファイバホルダ及び整列部材の相対移動を具体的に説明する平面図である。
【
図6C】
図6Aに示すファイバホルダ及び整列部材の相対移動を具体的に説明する平面図である。
【
図6D】
図6Aに示すファイバホルダ及び整列部材の相対移動を具体的に説明する平面図である。
【
図7】
図1に示す光ファイバ切断装置により複数の光ファイバを切断する方法を説明する断面図である。
【
図8】
図1に示す光ファイバ切断装置により複数の光ファイバを切断する方法を説明する図である。
【
図10】整列部材の第一変形例を示す側面図である。
【
図11】整列部材の第二変形例を示す側面図である。
【
図12】整列部材の第三変形例を示す側面図である。
【
図13】整列部材の第四変形例を示す側面図である。
【
図14】整列部材の第五変形例を示す側面図である。
【
図15】整列部材の第六変形例を示す側面図である。
【
図16】本発明の他の実施形態に係る光ファイバ切断装置により複数の光ファイバを切断する方法を説明する断面図である。
【
図17】
図16に示す光ファイバ切断装置により複数の光ファイバを切断する方法を説明する断面図である。
【
図18】
図16に示す光ファイバ切断装置により複数の光ファイバを切断する方法を説明する断面図である。
【
図19】本発明の他の実施形態に係る光ファイバ切断装置により複数の光ファイバを切断する方法を説明する断面図である。
【
図20】
図19に示す光ファイバ切断装置により複数の光ファイバを切断する方法を説明する断面図である。
【
図21】
図19に示す光ファイバ切断装置により複数の光ファイバを切断する方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る光ファイバ切断装置について、
図1~9を参照して説明する。
図1に示す本実施形態の光ファイバ切断装置1は、
図2に例示する複数の光ファイバ100をまとめて切断する装置である。複数の光ファイバ100は、それぞれ、ガラス部101、及び、ガラス部101を被覆する被覆部102を備える。光ファイバ切断装置1において切断する複数の光ファイバ100は、例えば、複数の光ファイバ100を一列に並べた状態で連結した多心テープ光ファイバであってもよいし、連結されていない複数の光ファイバ100であってもよい。また、光ファイバ切断装置1において切断する複数の光ファイバ100は、例えば、複数の光ファイバ100を切断する直前に一列に並べて連結した構成を有してもよい。
【0018】
本実施形態においては、光ファイバ100の長手方向をX軸方向で示している。また、光ファイバ100の長手方向に直交して複数の光ファイバ100が並ぶ第一直交方向をY軸方向で示し、光ファイバ100の長手方向及び第一直交方向に直交する第二直交方向をZ軸方向で示している。また、以下では、第一直交方向(Y軸方向)を幅方向と称し、第二直交方向(Z軸方向)を上下方向と称して説明することがある。
【0019】
図1に示すように、光ファイバ切断装置1は、ファイバホルダ2と、整列部材3と、基台4と、刃部材5と、を備える。また、光ファイバ切断装置1は、一対のクランプ6と、押し当て部材7と、を備える。一対のクランプ6は、左側に位置する第1クランプ6Lと、右側に位置する第2クランプ6Rで構成される。
【0020】
ファイバホルダ2は、
図2に例示した複数の光ファイバ100を第一直交方向に一列に並べた状態で把持する。ファイバホルダ2は、主に複数の光ファイバ100のうち被覆部102を含む部分を第二直交方向から挟むように把持する。ファイバホルダ2は、長手方向における複数の光ファイバ100の一部を把持する。複数の光ファイバ100は、ファイバホルダ2に把持された状態で長手方向や第一直交方向に移動不能に固定される。
【0021】
図1,3に示すように、整列部材3は、挿通孔31を有する。挿通孔31は、ファイバホルダ2から延びる複数の光ファイバ100のうち被覆部102から露出した複数のガラス部101を挿通させる。挿通孔31の内面は、挿通孔31に位置する複数のガラス部101が第二直交方向に重ならずに第一直交方向に一列に並ぶように形成されている。また、挿通孔31の内面は、挿通孔31に位置する複数のガラス部101を押圧しないように形成されている。
【0022】
具体的に、挿通孔31は、挿通孔31の貫通方向(X軸方向)から見て、第一直交方向に延びる細長い形状に形成されている。第一直交方向における挿通孔31の幅寸法Wは、挿通孔31に通る複数のガラス部101の直径寸法Dの合計以上である。また、第二直交方向における挿通孔31の高さ寸法Hは、ガラス部101の直径寸法Dよりも大きく、かつ、当該直径寸法Dの2倍よりも小さい。
【0023】
これにより、挿通孔31に通る複数のガラス部101は、第二直交方向に重ならずに第一直交方向に一列に並び、また、挿通孔31の内面によって押圧されることもない。そして、整列部材3は、
図5,6に示すように、複数の光ファイバ100をファイバホルダ2によって把持し、かつ、ファイバホルダ2から延びる複数のガラス部101を挿通孔31に挿通させた状態で、ファイバホルダ2に対して光ファイバ100の長手方向に相対的に移動させることができる。そして、整列部材3及びファイバホルダ2のいずれか、または両方を互いに離す方向に移動させることで、ファイバホルダ2と整列部材3との間に位置する複数のガラス部101の部位が第一直交方向に一列に並ぶ。
【0024】
図3に示すように、本実施形態の整列部材3は、載置台32と、蓋部材33と、を有する。さらに、
図1、
図6A、及び
図7に示すように、整列部材3は、係止凹部35を有する。後述するように、係止凹部35には、第二載置部42の係止突起44が挿入される。係止凹部35に対する係止突起44の挿入または取り外しにより、整列部材3は、基台4に対して着脱自在である。
載置台32は、複数のガラス部101を載置する載置面32aを有する。載置面32aは、第一直交方向に延びる平坦な面であり、挿通孔31の内面の一部を構成する。具体的に、載置台32には、第二直交方向に窪む凹部321が形成されている。前述の載置面32aは、凹部321の底面からなる。本実施形態では、第一直交方向における凹部321の幅寸法が前述した挿通孔31の幅寸法Wに対応し、第二直交方向における凹部321の深さ寸法が前述した挿通孔31の高さ寸法Hに対応している。
【0025】
蓋部材33は、載置台32に対して第一位置P1と第二位置P2との間で移動可能である。第一位置P1は、蓋部材33が載置台32の載置面32aに対して第二直交方向(上側)に間隔をあけて配置されることで、載置面32aとの間に挿通孔31を形成する蓋部材33の位置である。第二位置P2は、蓋部材33が載置面32aに対向しない位置に配置されることで載置面32aを開放する蓋部材33の位置である。
蓋部材33を第一位置P1に配した状態で載置台32の載置面32aに対向する蓋部材33の対向面33aは、載置台32の載置面32aと共に整列部材3の挿通孔31の内面を形成する。蓋部材33の対向面33aは、平坦に形成されている。すなわち、蓋部材33には載置台32のような凹部が形成されていない。
【0026】
本実施形態において、蓋部材33は、載置台32に対して第一位置P1と第二位置P2との間で回転移動可能に連結されている。載置台32と蓋部材33とを相対的に回転移動可能に連結する回転軸34は、その軸線が光ファイバ100の長手方向(X軸方向)に平行するように、第一直交方向(Y軸方向)における載置台32及び蓋部材33の一方の端部に取り付けられている。
【0027】
図1に示すように、基台4は、ファイバホルダ2を載置する第一載置部41と、整列部材3を載置する第二載置部42と、を有する。第二載置部42は、整列部材3の係止凹部35に挿入される係止突起44を有する。第一載置部41及び第二載置部42は、光ファイバ100の長手方向において互いに間隔をあけて位置する。第一載置部41及び第二載置部42は、第一載置部41及び第二載置部42にファイバホルダ2及び整列部材3が載置された状態で、ファイバホルダ2と整列部材3との間隔を保持する、特に、ファイバホルダ2と整列部材3との間隔が所定値よりも小さくなることを防ぐ。具体的には、整列部材3を第二載置部42に載置する際に、第二載置部42に形成された係止突起44が整列部材3に形成された係止凹部35に挿入されることで、第二載置部42に載置された整列部材3の位置が保持される。また、第一載置部41の第二載置部42側(X軸正方向側)には係止壁部43が形成され、第一載置部41に載置されたファイバホルダ2がこの係止壁部43に当たることで、整列部材3に対するファイバホルダ2の位置を保持することができる。
本実施形態において、ファイバホルダ2及び整列部材3は、基台4に対して着脱自在となっている。
【0028】
一対のクランプ6は、基台4に設けられ、上記した第一載置部41と第二載置部42との間において光ファイバ100の長手方向に間隔をあけて配置される。一対のクランプ6は、ファイバホルダ2及び整列部材3を第一載置部41及び第二載置部42に載置した状態でファイバホルダ2と整列部材3との間に位置する複数のガラス部101を把持する。各クランプ6(第1クランプ6L及び第2クランプ6Rの各々)は、複数のガラス部101を第二直交方向(Z軸方向)から挟み込む下クランプ6A及び上クランプ6Bを有する。換言すると、第1クランプ6Lは、下クランプ6Aに相当する第1下クランプ6LAと、上クランプ6Bに相当する第1上クランプ6LBとを有する。第2クランプ6Rは、下クランプ6Aに相当する第2下クランプ6RAと、上クランプ6Bに相当する第2上クランプ6RBとを有する。下クランプ6A及び上クランプ6Bのうちガラス部101に接触する部位には、ゴム等の弾性パッドが設けられてよい。
【0029】
刃部材5は、基台4に対して上記した一対のクランプ6の間(第一載置部41と第二載置部42との間)で第一直交方向(Y軸方向)に移動させることで、一対のクランプ6の間に位置する複数のガラス部101の表面を加傷する。刃部材5は、一対のクランプ6の間に位置する複数のガラス部101の下側(Z軸負方向側)を通ることで複数のガラス部101の表面を加傷する。
【0030】
押し当て部材7は、刃部材5によって加傷された複数のガラス部101の加傷部分を押し曲げて複数のガラス部101を切断する。押し当て部材7は、上側(Z軸正方向側)から一対のクランプ6の間に配置された複数のガラス部101に押し当てることで、複数のガラス部101の加傷部分を起点として複数のガラス部101を劈開する。
【0031】
次に、本実施形態の光ファイバ切断装置1によって複数の光ファイバ100を切断する切断方法(光ファイバ切断方法)の一例について説明する。
複数の光ファイバ100を切断する際には、はじめに
図4に示すように、ファイバホルダ2によって複数の光ファイバ100を第一直交方向に一列に並べた状態で把持する。次いで
図5に示すように、ファイバホルダ2から延びる複数の光ファイバ100の部位(
図5においてファイバホルダ2の右側に位置する光ファイバ100の部位)から被覆部102を除去することで複数のガラス部101を露出させる。
【0032】
その後、ファイバホルダ2から延びる複数のガラス部101のうちファイバホルダ2の近くに位置する部位を、整列部材3の挿通孔31に挿通させる。ここで、本実施形態の整列部材3は、
図3に示すように載置台32と蓋部材33とが回転移動可能に連結されている。このため、複数のガラス部101を整列部材3の挿通孔31に挿通させる際には、はじめに蓋部材33を第二位置P2に配置した状態で、複数のガラス部101を載置台32の凹部321に入れて載置面32aに載置する。複数のガラス部101が凹部321に入ることで、複数のガラス部101を安定に載置面32aに載置することができる。その後、蓋部材33を第二位置P2から第一位置P1に移動させることで、複数のガラス部101を整列部材3の挿通孔31に挿通した状態が得られる。
【0033】
複数のガラス部101を整列部材3の挿通孔31に挿通させた後には、
図6Aに示すように、光ファイバ100の長手方向(X軸方向)においてファイバホルダ2及び整列部材3を互いに離す方向に移動させる。つまり、矢印Lに示す方向に沿ってファイバホルダ2を移動させ、矢印Rに示す方向に沿って整列部材3を移動させる。ここで、第二直交方向(Z軸方向)における挿通孔31の高さ寸法Hは、ガラス部101の直径寸法Dよりも大きく、かつ、当該直径寸法Dの2倍よりも小さい。このため、ファイバホルダ2及び整列部材3を互いに離す方向に移動させると、ファイバホルダ2と整列部材3との間に位置する複数のガラス部101の部位は、第二直交方向に重ならずに第一直交方向に一列に並ぶ(
図3,8参照)。また、整列部材3は、複数のガラス部101を把持しないため、ファイバホルダ2と整列部材3との間に位置する複数のガラス部101の部位には、ファイバホルダ2及び整列部材3に起因する応力(例えば、曲げ応力、ねじり応力、引張応力)が作用しない。
【0034】
なお、本実施形態では、
図6Aに示す矢印R、Lに示す方向に沿って、ファイバホルダ2及び整列部材3が互いに離間するようにファイバホルダ2及び整列部材3の両方を移動させている。本発明はこのような移動方法を限定しない。ファイバホルダ2を固定した状態で、ファイバホルダ2から離間するように整列部材3のみを矢印Rに示す方向に沿って移動させてもよい。整列部材3を固定した状態で、整列部材3から離間するようにファイバホルダ2のみを矢印Lに示す方向に沿って移動させてもよい。
【0035】
次に、
図6B~
図6Dを参照し、上述した
図6Aにおけるファイバホルダ2及び整列部材3の相対移動によって複数のガラス部101を整列させる方法をより具体的に説明する。
図6B~
図6Dでは、複数のガラス部101、ファイバホルダ2、整列部材3、第1クランプ6L、第2クランプ6R、及び加傷位置CPのみを示しており、光ファイバ切断装置を構成するその他の部材は省略している。加傷位置CPは、刃部材5によって複数のガラス部101を加傷する位置である。
【0036】
まず、
図6Bに示すように、複数のガラス部101が整列部材3の挿通孔31に挿通された状態で、整列部材3をファイバホルダ2と第1クランプ6Lとの間に配置する。この場合、整列部材3とファイバホルダ2との間(つまり、整列部材3の左側)では、複数のガラス部101は整列している。一方、整列部材3の右側の領域では、複数のガラス部101は、互いに重なり合った状態となっており、整列していない。特に、第1クランプ6Lと第2クランプ6Rとの間に位置する加傷位置CPでは、複数のガラス部101は、多重に重なり合っている。このような
図6Bに示す状態では、第1クランプ6Lと第2クランプ6Rとの間において複数のガラス部101が整列していないため、加傷位置CPにおいて複数のガラス部101を加傷すると、複数のガラス部101の端面が揃うようにガラス部101を切ることができない。
【0037】
次に、
図6Cに示すように、複数のガラス部101が整列部材3の挿通孔31に挿通された状態で、符号Rに示す方向に沿って、ファイバホルダ2から離れるように整列部材3をスライドさせる。つまり、
図6Bに示す状態から整列部材3を右側に向けて移動させる。これにより、整列部材3は、第1クランプ6Lを通過し(超えて)、第1クランプ6Lと第2クランプ6Rとの間の位置に達する。このような整列部材3の移動によって、複数のガラス部101の重なり状態が徐々に解消される。整列部材3が通過した後において、整列部材3とファイバホルダ2との間(つまり、整列部材3の左側)では、複数のガラス部101は互いに重なっておらず、複数のガラス部101の重なりが解消された状態、つまり、複数のガラス部101が整列した状態となる。ただし、
図6Cに示す状態では、加傷位置CPにおいて複数のガラス部101は整列していない。
【0038】
次に、
図6Dに示すように、複数のガラス部101が整列部材3の挿通孔31に挿通された状態で、符号Rに示す方向に沿って、ファイバホルダ2から更に離れるように整列部材3をスライドさせる。つまり、
図6Cに示す状態から整列部材3を右側に向けて更に移動させる。これにより、整列部材3は、第2クランプ6Rを通過し(超えて)、
図6Dの右側の位置に達する。このような整列部材3の移動によって、複数のガラス部101の重なり状態が更に解消される。つまり、第1クランプ6Lと第2クランプ6Rとの間に位置する加傷位置CPにおいて、複数のガラス部101が整列した状態が得られる。
図6Dに示す状態で、加傷位置CPにおいて複数のガラス部101を加傷(後述、
図7参照)することで、複数のガラス部101を綺麗に揃えつつ、切ることができる。
【0039】
なお、
図6B~
図6Dにおいては、ファイバホルダ2を固定させた状態で、整列部材3のみを矢印Rに示す方向に沿って移動させる場合を説明した。このような移動方法に限定されず、ファイバホルダ2及び整列部材3を互いに離す方向に相対的に移動させる方法であれば、
図6B~
図6Dと同様の作用及び効果が得られる。
【0040】
その後、
図7に示すように、ファイバホルダ2を基台4の第一載置部41に載置し、整列部材3を基台4の第二載置部42に載置する。この状態では、複数のガラス部101が第一直交方向に一列で並んだ状態で、第一載置部41から第二載置部42まで延びている。また、この状態においても、ファイバホルダ2と整列部材3との間に位置する複数のガラス部101の部位には、ファイバホルダ2及び整列部材3に起因する応力が作用しない。
【0041】
その後、ファイバホルダ2と整列部材3との間において一列に並んだ複数のガラス部101を一対のクランプ6によって把持する。これにより、整列部材3及びファイバホルダ2の間に位置する複数のガラス部101は、
図8に例示するように、第二直交方向において互いにずれないように位置する。
【0042】
そして、刃部材5を一対のクランプ6の間で第一直交方向(複数のガラス部101が並ぶ方向)に移動させて複数のガラス部101の表面を加傷する。
図8における二点鎖線は、複数のガラス部101を加傷する刃部材5の上端の軌跡Tを示している。
図8に示すように、複数のガラス部101が、第二直交方向において互いにずれずに位置することで、刃部材5による複数のガラス部101の加傷にばらつきが生じることを抑制又は防止することができる。
【0043】
なお、
図2に例示するように、複数のガラス部101の一部が一列に並ばずに、第二直交方向に重なったり交差したりしている場合がある。この場合には、複数のガラス部101を一対のクランプ6で把持しても、
図9に示すように一部のガラス部101(
図9において左端のガラス部101)が他のガラス部101に対して第二直交方向にずれて位置してしまう。このため、刃部材5による複数のガラス部101の加傷にばらつきが生じてしまう。
【0044】
最後に、押し当て部材7(
図8参照)によって一対のクランプ6の間に位置する複数のガラス部101の加傷部分を押し曲げて複数のガラス部101を切断することで、光ファイバ切断方法が完了する。押し当て部材7で複数のガラス部101に押し当てた際には、刃部材5による複数のガラス部101の加傷部分を起点として複数のガラス部101が劈開することで、複数のガラス部101が切断される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバ切断装置1によれば、複数の光ファイバ100をファイバホルダ2で把持し、ファイバホルダ2から延びる複数のガラス部101を整列部材3の挿通孔31に挿通させた状態で、ファイバホルダ2及び整列部材3を互いに離す方向に移動させるだけで、ファイバホルダ2と整列部材3との間に位置する複数のガラス部101の部位を簡単に第一直交方向に一列に整列させることができる。
そして、ファイバホルダ2と整列部材3との間に位置する複数のガラス部101の部位が第一直交方向に一列に整列できることで、刃部材5を第一直交方向に移動させて複数のガラス部101を加傷する際に、複数のガラス部101の加傷にばらつきが生じることを抑制することができる。したがって、切断した複数のガラス部101の端面を揃えることができる。
【0046】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1によれば、複数のガラス部101が整列部材3によって押圧されることなく整列部材3の挿通孔31に挿通される、すなわち整列部材3は複数のガラス部101を把持しない。このため、複数の光ファイバ100をファイバホルダ2で把持し、ファイバホルダ2から延びる複数のガラス部101を整列部材3の挿通孔31に挿通させた状態で、ファイバホルダ2及び整列部材3を互いに離す方向に移動させた後の状態において、ファイバホルダ2と整列部材3との間に位置する複数のガラス部101には、ファイバホルダ2及び整列部材3に起因する応力が作用しない。これにより、刃部材5を利用してファイバホルダ2と整列部材3との間に位置する複数のガラス部101を切断しても、光ファイバ100の長手方向に対して切断されたガラス部101の端面がなす角度が垂直(90度)からずれることを抑制又は防止することができる。
【0047】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1によれば、整列部材3が基台4に対して着脱自在である。このため、一列に並ぶ複数のガラス部101の切断に際して、整列部材3の使用の有無を選択することができる。例えば、ガラス部101の直径寸法Dが大きいことなどに起因してガラス部101の剛性が高い場合には、整列部材3を用いなくてもガラス部101の剛性によって複数のガラス部101を一列に整列させることができる。整列部材3を用いない場合には、光ファイバ100を切断するための工程数を減らすことができる。
【0048】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1によれば、整列部材3は、載置面32aを有する載置台32と、載置台32に対して載置面32aを覆うことで載置台32との間に挿通孔31を形成する第一位置P1と、載置面32aを開放する第二位置P2との間で移動可能とされた蓋部材33とを備える。このため、蓋部材33を第二位置P2に配置した状態で複数のガラス部101を載置台32の載置面32aに載置した後に、蓋部材33を第二位置P2から第一位置P1まで移動させるだけで、簡単に複数のガラス部101を整列部材3の挿通孔31に挿通した状態とすることができる。すなわち、挿通孔31を形成しただけの単純な整列部材3と比較して、複数のガラス部101を整列部材3の挿通孔31に簡単に通すことができる。
【0049】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1によれば、載置台32と蓋部材33とが互いに回転移動可能に連結されていることで、載置台32と蓋部材33とが着脱不能となっている。これにより、載置台32と蓋部材33とが着脱自在である場合と比較して、載置台32及び蓋部材33の一方だけを紛失することを防ぐことができる。
【0050】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1によれば、第二直交方向における整列部材3の挿通孔31の高さ寸法Hが、ガラス部101の直径寸法Dよりも大きく、かつ、ガラス部101の直径寸法Dの2倍よりも小さい。このため、複数のガラス部101を整列部材3の挿通孔31に挿通した状態では、挿通孔31に位置する二つのガラス部101の部位が第二直交方向に重なることを確実に防ぐことができる。したがって、複数のガラス部101を挿通孔31に挿通させた状態でファイバホルダ2及び整列部材3を互いに離す方向に移動させることで、ファイバホルダ2と整列部材3との間に位置する複数のガラス部101の部位を、簡単かつ確実に第一直交方向に一列に並べることができる。
【0051】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1によれば、第二直交方向における整列部材3の挿通孔31の高さ寸法Hは、ガラス部101の直径寸法Dよりも大きい。このため、整列部材3が挿通孔31に挿通された複数のガラス部101を押圧したり把持したりすることを防止できる。これにより、ファイバホルダ2及び整列部材3を互いに離す方向に移動させて、ファイバホルダ2と整列部材3との間に位置する複数のガラス部101を一列に整列させた後の状態においては、ファイバホルダ2と整列部材3との間に位置する複数のガラス部101の部位に、これらファイバホルダ2及び整列部材3に起因する応力が作用することを防止することができる。
【0052】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0053】
本発明の実施形態に係る光ファイバ切断装置の整列部材3では、例えば、
図10に示すように、蓋部材33にのみ整列部材3の挿通孔31を構成する凹部331が形成されてもよい。この場合、第一直交方向(Y軸方向)における蓋部材33の凹部331の幅寸法が挿通孔31の幅寸法W(
図3参照)に対応し、第二直交方向(Z軸方向)における蓋部材33の凹部331の深さ寸法が挿通孔31の高さ寸法H(
図3参照)に対応する。
【0054】
本発明の実施形態に係る光ファイバ切断装置の整列部材3では、例えば、
図11に示すように、載置台32及び蓋部材33の両方に整列部材3の挿通孔31を構成する凹部321,331が形成されてもよい。この場合、第一直交方向(Y軸方向)における載置台32及び蓋部材33の凹部321,331の幅寸法が挿通孔31の幅寸法W(
図3参照)に対応し、第二直交方向(Z軸方向)における載置台32及び蓋部材33の凹部321,331の深さ寸法の合計が挿通孔31の高さ寸法H(
図3参照)に対応する。
【0055】
本発明の実施形態に係る光ファイバ切断装置の整列部材3では、例えば、
図12に示すように、載置台32及び蓋部材33に整列部材3の挿通孔31を構成する凹部321,331(
図11等参照)が形成されなくてもよい。すなわち、整列部材3の挿通孔31の内面は、蓋部材33を第一位置P1に配置した状態で第二直交方向(Z軸方向)において間隔をあけて対向する載置台32の平坦な載置面32a及び蓋部材33の平坦な対向面33aのみによって構成されてもよい。
【0056】
本発明の実施形態に係る光ファイバ切断装置の整列部材3では、例えば、
図13,14に示すように、載置台32の載置面32aに、複数のガイド突起37を設けてもよい。複数のガイド突起37は、第一直交方向(Y軸方向)に間隔をあけて配列されている。複数のガイド突起37は、第一直交方向に等間隔で並んでいる。これにより、複数のガラス部101を整列部材3の挿通孔31に挿通させた状態で、隣り合う二つのガラス部101の間にガイド突起37が介在することで、複数のガラス部101を第一直交方向に等間隔で並べることができる。
また、第一直交方向において隣り合うガイド突起37の間隔は、ガラス部101の直径寸法Dよりも大きい。これにより、ガラス部101が第一直交方向において隣り合う二つのガイド突起37の間に挟まれてガラス部101に応力が生じることを抑制又は防止することができる。
【0057】
図13に例示する整列部材3では、載置台32の載置面32aから第二直交方向(Z軸方向)に突出する各ガイド突起37の突出高さが、第二直交方向における挿通孔31の高さ寸法H(
図3参照)よりも小さい。この場合には、挿通孔31の内面に複数のガイド突起37が形成されていても、複数のガラス部101を容易に挿通孔31に挿通させることができる。
【0058】
一方、
図14に例示する整列部材3では、載置台32の載置面32aから第二直交方向(Z軸方向)に突出する各ガイド突起37の突出高さが、第二直交方向における挿通孔31の高さ寸法H(
図3参照)と等しい。このため、挿通孔31は、複数のガイド突起37により第一直交方向(Y軸方向)に並ぶ複数の分割孔311に分割されている。この場合には、複数のガラス部101を整列部材3の挿通孔31に挿通させた状態で、複数のガラス部101をより確実に第一直交方向に等間隔で並べることが可能となる。
【0059】
なお、
図13,14の整列部材3において、ガイド突起37は、例えば、蓋部材33の対向面33aに設けられてもよいし、載置台32の載置面32a及び蓋部材33の対向面33aの両方に設けられてもよい。また、
図13,14に例示したガイド突起37は、載置台32のみに凹部321を形成した整列部材3に限らず、蓋部材33のみに凹部331を形成した整列部材3(
図10参照)、載置台32及び蓋部材33の両方に凹部321,331を形成した整列部材3(
図11参照)、載置台32及び蓋部材33の両方に凹部321,331を形成していない整列部材3(
図12参照)に適用されてよい。
【0060】
本発明の実施形態に係る光ファイバ切断装置の整列部材3において、蓋部材33は、例えば、載置台32に対して着脱自在に設けられてもよい。すなわち、蓋部材33を載置台32に取り付けることで蓋部材33が載置台32と共に挿通孔31を形成する第一位置P1に配置され、蓋部材33を載置台32から取り外すことで蓋部材33が載置台32の載置面32aを開放する第二位置P2に配置されてもよい。
【0061】
本発明の実施形態に係る光ファイバ切断装置の整列部材3は、載置台32及び蓋部材33の二つの部品によって構成されることに限らず、例えば、
図15に示すように、単一の部品によって構成されてもよい。この場合、整列部材3の挿通孔31は、第一直交方向(Y軸方向)における整列部材3の一方側に開口しているとよい。これにより、複数のガラス部101を第一直交方向における挿通孔31の開口部312から挿通孔31に簡単に入れることができる。
また、
図15に例示するように、第二直交方向(Z軸方向)における挿通孔31の開口部312の寸法は、第一直交方向(Y軸方向)において整列部材3の外側に向かうにしたがって大きくなるように形成されてよい。これにより、複数のガラス部101をより簡単に挿通孔31の開口部312から挿通孔31に入れることができる。
【0062】
本発明の実施形態に係る光ファイバ切断装置では、例えば、
図16~21に示すように、整列部材3が、第二載置部42に載置された載置位置P3と、第二載置部42から離れた離間位置P4との間で移動可能となるように基台4に対して着脱不能に取り付けられてもよい。この場合には、整列部材3が基台4に対して着脱自在である場合と比較して、整列部材3の紛失を防ぐことができる。
【0063】
図16~18に示す光ファイバ切断装置1Cでは、整列部材3が、基台4に対して着脱不能に取り付けられている。その一方、整列部材3は、基台4に対して、第二直交方向(Z軸方向)に移動(移動可能)するように取り付けられている。第二直交方向は、長手方向(X軸方向)及び第一直交方向(Y軸方向)に直交する方向である。
図示例において、第二載置部42には、第二直交方向において上方(Z軸正方向)に延びるロッド46が設けられている。ロッド46の先端部は、ロッド46の他の部分よりも大きく形成され、整列部材3に形成された空洞38に挿入されている。空洞38は、ロッド46の先端部が空洞38から抜け出ないように、かつ、整列部材3がロッド46の長手方向(第二直交方向)において所定の距離だけ移動可能となるように形成されている。これにより、整列部材3は、第二載置部42に載置された載置位置P3(
図18参照)と、第二載置部42から離れた離間位置P4(
図16,17参照)との間で、第二直交方向に移動可能となっている。整列部材3の離間位置P4は、複数のガラス部101を挿通孔31に通した状態で、複数の光ファイバ100やこの複数の光ファイバ100を把持したファイバホルダ2が、光ファイバ切断装置1Cの各部(基台4、刃部材5、一対のクランプ6など)と干渉しない位置であるとよい。
基台4に取り付けられた整列部材3の挿通孔31の貫通方向は、整列部材3の位置(載置位置P3、離間位置P4)に関わらず、第一載置部41及び第二載置部42が並ぶ方向(X軸方向)に一致している。
【0064】
図16~18に示す光ファイバ切断装置1Cにおいて複数のガラス部101を切断する際には、はじめに上記実施形態と同様に、ファイバホルダ2によって複数の光ファイバ100を把持し(
図4参照)、ファイバホルダ2から延びる複数の光ファイバ100の部位から被覆部102を除去して複数のガラス部101を露出させる(
図5参照)。次いで
図16に示すように、整列部材3を離間位置P4に配置した状態で、複数のガラス部101のうちファイバホルダ2の近くに位置する部位を整列部材3の挿通孔31に挿通させる。
【0065】
その後、
図17に示すように、ファイバホルダ2を整列部材3から離す方向(
図17において左方向)に移動させる。ここで、基台4に取り付けられた整列部材3の挿通孔31の貫通方向は、第一載置部41及び第二載置部42が並ぶ方向に一致している。このため、ファイバホルダ2を整列部材3から離す際には、ファイバホルダ2が第一載置部41及び第二載置部42が並ぶ方向に移動する。
【0066】
図17においては、複数のガラス部101が整列部材3の挿通孔31に挿通され、かつ、整列部材3が固定された状態で、整列部材3から離すようにファイバホルダ2を移動させている。
図6B~
図6Dを参照して説明したように、ファイバホルダ2と整列部材3との相対移動に伴って、つまり、
図17に示すファイバホルダ2の移動に伴って、複数のガラス部101の重なり状態が徐々に解消される。ファイバホルダ2が通過した後において、整列部材3とファイバホルダ2との間(つまり、ファイバホルダ2の右側)では、複数のガラス部101は互いに重なっておらず、複数のガラス部101の重なりが解消された状態、つまり、複数のガラス部101が整列した状態となる。
【0067】
その後、
図18に示すように、ファイバホルダ2を第一載置部41に載置すると共に、整列部材3を離間位置P4から載置位置P3まで移動させて第二載置部42に載置する。その後は、上記実施形態と同様に、整列部材3及びファイバホルダ2の間に位置する複数のガラス部101を、一対のクランプ6で把持し、刃部材5で加傷し、押し当て部材7で押し曲げることで、切断することができる。
【0068】
図16~18に示す光ファイバ切断装置1Cでは、整列部材3が基台4に対して第二直交方向に移動可能に取り付けられている。このため、整列部材3を離間位置P4に配置した状態で、ファイバホルダ2を整列部材3に対して第一載置部41及び第二載置部42が並ぶ方向に沿って移動させることができる。これにより、ファイバホルダ2を整列部材3に対して移動させながら、第一載置部41に対するファイバホルダ2の位置合わせを容易に行うことができる。
【0069】
図19~21に示す光ファイバ切断装置1Dでは、整列部材3が、基台4に対して着脱不能に取り付けられている。その一方、整列部材3は、基台4に対して第一直交方向(Y軸方向)に平行する支点軸8を中心に回転可能に取り付けられている。支点軸8は、
図21に示すように整列部材3を載置位置P3(第一載置部41)に配置した状態で、第一載置部41及び第二載置部42が並ぶ方向(X軸方向)において整列部材3の挿通孔31よりも第一載置部41から離れて位置する。また、整列部材3が載置位置P3に配置された状態では、整列部材3の挿通孔31の貫通方向が、第一載置部41及び第二載置部42が並ぶ方向に一致する。このため、
図19,20に示すように、整列部材3を載置位置P3から離間位置P4まで回転移動させると、挿通孔31の貫通方向は、第一載置部41及び第二載置部42が並ぶ方向において第一載置部41から第二載置部42側に向かうにしたがって上方(Z軸正方向)に向かうように傾斜する。これにより、整列部材3を離間位置P4に配置した状態では、複数のガラス部101を挿通孔31に通した状態において、複数の光ファイバ100やこれを把持したファイバホルダ2が、光ファイバ切断装置1Dの各部(基台4、刃部材5、一対のクランプ6など)と干渉しない。
【0070】
図19~21に示す光ファイバ切断装置1Dにおいて複数のガラス部101を切断する際には、はじめに上記実施形態と同様に、ファイバホルダ2によって複数の光ファイバ100を把持し(
図4参照)、ファイバホルダ2から延びる複数の光ファイバ100の部位から被覆部102を除去して複数のガラス部101を露出させる(
図5参照)。次いで
図19に示すように、整列部材3を離間位置P4に配置した状態で、複数のガラス部101のうちファイバホルダ2の近くに位置する部位を整列部材3の挿通孔31に挿通させる。
【0071】
その後、
図20に示すように、ファイバホルダ2を整列部材3から離す方向(
図20において左上方向)に移動させる。具体的に、複数のガラス部101が整列部材3の挿通孔31に挿通され、かつ、整列部材3が固定された状態で、整列部材3から離すようにファイバホルダ2を左上方向に移動させている。
図6B~
図6Dを参照して説明したように、ファイバホルダ2と整列部材3との相対移動に伴って、つまり、
図20に示すファイバホルダ2の移動に伴って、複数のガラス部101の重なり状態が徐々に解消される。ファイバホルダ2が通過した後において、整列部材3とファイバホルダ2との間(つまり、ファイバホルダ2の右下側)では、複数のガラス部101は互いに重なっておらず、複数のガラス部101の重なりが解消された状態、つまり、複数のガラス部101が整列した状態となる。
【0072】
そして、
図21に示すように、整列部材3を離間位置P4から載置位置P3まで回転移動させることで、ファイバホルダ2を第一載置部41に載置すると共に、整列部材3を第二載置部42に載置する。なお、
図21に例示するように第一載置部41に載置されたファイバホルダ2が第一載置部41及び第二載置部42の配列方向(X軸方向)において位置ずれしている場合には、ファイバホルダ2を第一載置部41上で当該配列方向に移動させればよい。その後は、上記実施形態と同様に、整列部材3及びファイバホルダ2の間に位置する複数のガラス部101を、一対のクランプ6で把持し、刃部材5で加傷し、押し当て部材7で押し曲げることで、切断することができる。
【符号の説明】
【0073】
1,1C,1D…光ファイバ切断装置、2…ファイバホルダ、3…整列部材、4…基台、5…刃部材、8…支点軸、31…挿通孔、32…載置台、32a…載置面、33…蓋部材、41…第一載置部、42…第二載置部、100…光ファイバ、101…ガラス部、102…被覆部、P1…第一位置、P2…第二位置