(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】車両の運転支援システム及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/10 20120101AFI20250318BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20250318BHJP
B60W 30/182 20200101ALI20250318BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20250318BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20250318BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20250318BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20250318BHJP
【FI】
B60W50/10
B60W60/00
B60W30/182
G08G1/00 D
G08G1/09 E
G16Y10/40
G16Y40/20
(21)【出願番号】P 2021039821
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 能英瑠
(72)【発明者】
【氏名】岡田 朋之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 智大
(72)【発明者】
【氏名】今西 宏文
(72)【発明者】
【氏名】澄川 瑠一
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/203694(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0101914(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザにより設定可能な制御条件に基づいて車両の自動運転を制御する車両の運転支援システムにおいて、
車種ごとの情報として記憶された複数のユーザ全体の前記制御条件の設定の分布に対する個々のユーザの設定の相対的な位置づけを示す評価情報に基づいて、前記車両の自動運転の前記制御条件を算出する制御条件算出部と、
前記制御条件算出部により算出された前記制御条件に基づいて前記車両の自動運転を制御する自動運転制御部と、
を備える、車両の運転支援システム。
【請求項2】
前記制御条件算出部は、
前記複数のユーザ全体の前記制御条件の設定の分布が正規分布を示す場合、前記個々のユーザの設定のパーセンタイルを前記評価情報として用いて前記制御条件を算出し、
前記複数のユーザ全体の前記制御条件の設定の分布が正規分布でない場合、1パーセンタイルから前記分布のピークまでの領域、あるいは、前記分布のピークから100パーセンタイルまでの領域における、前記個々のユーザの設定の相対位置を前記評価情報として
用いて前記制御条件を算出する、請求項1に記載の車両の運転支援システム。
【請求項3】
前記評価情報は、法定車速又は走行位置に関連付けられた走行シーンごとに求められる、請求項1又は2に記載の車両の運転支援システム。
【請求項4】
前記複数のユーザ全体の前記制御条件の設定の分布は車種ごとに求められ、
前記制御条件算出部は、
前記個々のユーザが使用する車種についての前記複数のユーザ全体の前記制御条件の設定の分布のデータが蓄積されていない場合、前記個々のユーザが使用する車種に類似する車種として登録された車種の前記複数のユーザ全体の前記制御条件の設定の分布のデータに基づいて求められる前記評価情報を用いて前記制御条件を算出する、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両の運転支援システム。
【請求項5】
車両の自動運転の制御条件を算出する情報処理装置において、
車種ごとの情報として記憶された複数のユーザ全体の前記制御条件の設定の分布に対する個々のユーザの設定の相対的な位置づけを示す評価情報に基づいて、前記車両の自動運転の前記制御条件を算出する制御条件算出部を備える、情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の自動運転を制御する車両の運転支援システム及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の自動運転に関する技術の実用化が進められている。車両の自動運転中に搭乗者が快適さを感じたり危険を感じたりする走行状態は、搭乗者によって様々と考えられる。このため、車両の自動運転制御を実行する際に、搭乗者等のユーザの運転に対する性向に応じた制御条件に基づいて車両の駆動系を制御するように構成された自動運転の制御装置がある。
【0003】
例えば特許文献1には、ドライバが車両を手動で運転している間に車間距離と速度とを定期的に取得し、速度に応じてユーザが保つ車間距離を検出して車間距離のユーザ情報とするとともに、ブレーキ操作を検知するごとにそのときの車間距離と速度とを取得し、車速ごとにブレーキ操作を行う車間距離のユーザ情報として、クラウドサーバのユーザ情報データベースに格納し、車両のコントロールユニットが当該ユーザ情報をダウンロードして、当該ユーザに安心感を与える車間距離やブレーキ操作時期を実現するよう自動運転を制御するシステムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ドライバが運転する車両を変えた場合にも、そのドライバに応じた自動運転の態様が当該車両に対して容易に設定できる自動運転装置が開示されている。具体的に、特許文献2に記載の自動運転装置の媒体取得部は、自動運転の態様を指示する態様情報を、対象車両の車内に持ち込まれた携帯型記憶媒体から取得し、態様設定部は、媒体取得部が取得した態様情報を参照して、自動運転制御部が実行する自動運転の態様を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-043268号公報
【文献】特開2017-100659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車両の性能は、スポーツ志向のセダン、SUV(Sports Utility Vehicle)、軽自動車等の車種によって異なるため、自動運転の制御条件が同じであっても実現される車両性能が異なる場合がある。また、自動運転の制御条件の設定値は、車種あるいは車両メーカ等によって異なる場合がある。例えば制御条件の設定に使用する車間距離やブレーキ操作時期(TTC:Time to Collision)等の物理値、あるいは、設定段階数は、車種あるいは車両メーカ等によって異なる場合がある。このため、特許文献1及び2に開示されたシステムでは、ユーザ情報データベースに記憶されたユーザ情報や、携帯型記憶媒体に記憶された情報に基づいて自動運転を制御した場合に、ユーザが違和感を覚えるおそれがある。
【0007】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、車両のユーザの好みに合わせて様々な車両の自動運転制御を容易に実行可能な車両の運転支援システム及び情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、ユーザにより設定可能な制御条件に基づいて車両の自動運転を制御する車両の運転支援システムにおいて、複数のユーザ全体の制御条件の設定の分布に対する個々のユーザの設定の相対的な位置づけを示す評価情報に基づいて、車両の自動運転の制御条件を算出する制御条件算出部と、制御条件算出部により算出された制御条件に基づいて車両の自動運転を制御する自動運転制御部と、を備える車両の運転支援システムが提供される。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本開示の別の観点によれば、車両の自動運転の制御条件を算出する情報処理装置において、複数のユーザ全体の制御条件の設定の分布に対する個々のユーザの設定の相対的な位置づけを示す評価情報に基づいて、車両の自動運転の制御条件を算出する制御条件算出部を備える情報処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本開示によれば、車両のユーザの好みに合わせて様々な車両の自動運転制御を容易に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態に係る車両の運転支援システムの構成例を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係る車両の運転支援システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】蓄積される制御条件設定情報のデータの例を示す説明図である。
【
図4】制御条件の設定が正規分布を示す場合の評価情報の例を示す説明図である。
【
図5】制御条件の設定が正規分布でない場合の評価情報の例を示す説明図である。
【
図6】同実施形態に係る運転支援装置のデータ蓄積処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】同実施形態に係るサーバのデータ蓄積処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】同実施形態に係る運転支援装置の自動運転制御処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】同実施形態に係るサーバの評価情報算出処理手順を示すフローチャートである。
【
図10】評価情報データの一例を示す説明図である。
【
図11】同実施形態に係るサーバの制御条件算出処理手順を示すフローチャートである。
【
図12】推奨制御条件データの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<1.運転支援システムの概要>
はじめに、
図1を参照して、本開示の一実施形態に係る車両の運転支援システムの概要を説明する。
図1は、本実施形態に係る運転支援システム100の概略構成の一例を示す模式図である。
【0014】
運転支援システム100は、四輪自動車等の車両1A,1B上で用いられる運転支援装置50a,50bと、運転支援装置50a,50bと通信可能に構成されたサーバ10と、携帯機器30a,30bとを含む。なお、本開示の技術の理解を容易にするために2台の車両1A,1Bを図示して説明するが、サーバ10と接続可能な車両は2台に限られるものではなく、その台数は制限されない。
【0015】
本実施形態に係る運転支援システム100を適用な車両1A,1Bは、手動運転及び自動運転での走行が可能に構成されている。手動運転時には、ドライバの運転操作に基づいて車両1A,1Bの走行制御が実行される。また、自動運転時には、ドライバ(ユーザ)により調節可能な自動運転の制御条件に基づいて車両1A,1Bの走行制御が実行される。自動運転は、主として車両制御システムが車両1A,1Bの走行環境を監視しながら運転タスクを実施するレベルの自動運転であってもよく、主としてドライバが車両1A,1Bの走行環境を監視しながら車両制御システムが特定条件下で自動ブレーキ制御、先行車両追従制御(ACC:Adaptive Cruise Control)及び車線維持制御を実施するレベルの自動運転であってもよい。自動運転の制御条件としては、例えば目標車速、最大加速度、先行車両との目標車間距離、及び、旋回時の車輪の舵角の変化速度等が挙げられる。ドライバは、走行エリアや走行環境等に応じて制御条件を調節することができる。
【0016】
運転支援システム100では、自動運転モードにおいて、データ蓄積処理及び制御条件設定処理が行われる。各車両1A,1Bに搭載される運転支援装置50a,50bは、各車両1A,1Bが自動運転モードで走行している間、データ蓄積処理として、所定のタイミングで、自動運転の制御条件の設定情報(制御条件設定情報)及び地図データ上の車両1の位置情報(車両位置情報)を、ユーザを識別するための情報(ユーザ識別情報)及び車種を識別するための情報(車種情報)とともにサーバ10へ送信する。サーバ10は、各運転支援装置50a,50bから送信される制御条件設定情報、車両位置情報、ユーザ識別情報及び車種情報を取得し、制御条件設定情報を走行シーンの情報、ユーザ識別情報及び車種情報に関連付けて記憶する。走行シーンの情報は、車両位置情報に基づいて特定される道路の法定速度、及び、一般道、都市高速又は都市間高速等の道路の種別の情報を含む。
【0017】
また、各車両1A,1Bに搭載される運転支援装置50a,50bは、各車両1A,1Bが自動運転モードに設定された際に、自動運転の制御条件の設定処理を実行する。運転支援装置50a,50bは、使用する車両1A,1Bに適用可能な個々のユーザの制御条件の設定に関する評価情報が携帯機器30a,30bに保存されている場合には、当該評価情報に基づいて算出される制御条件に基づいて自動運転の制御条件を設定する。また、運転支援装置50a,50bは、上記の評価情報が携帯機器30a,30bに保存されていない場合、個々のユーザの制御条件の設定に関する評価情報をサーバ10から取得し、当該評価情報に基づいて算出される制御条件に基づいて自動運転の制御条件を設定する。
【0018】
サーバ10は、運転支援装置50a,50bから評価情報の送信要求があったときに、送信元の車両1A,1Bと同車種あるいは類似する車種の車両1について蓄積されたデータに基づいて、送信元の車両1A,1Bのユーザの評価情報を算出し、運転支援装置50a,50bへ返信する。また、サーバ10は、運転支援装置50a,50bから推奨する制御条件の送信要求があったときに、送信元の車両1A,1Bと同車種あるいは類似する車種の車両1について蓄積されたデータに基づいて自動運転の制御条件を算出し、運転支援装置50a,50bへ返信する。そして、運転支援装置50a,50bは、サーバ10から送信される制御条件に基づいて自動運転の制御条件を設定し、当該制御条件に基づいて車両1A,1Bの自動運転を制御する。
【0019】
評価情報は、複数のユーザ全体の制御条件の設定の分布に対する個々のユーザの設定の相対的な位置づけを示す情報である。この評価情報は、車種ごとに、かつ、法定車速又は走行位置に関連付けられた走行シーンごとに、個々のユーザについて求められる。例えば評価情報は、同車種あるいは類似する車種の車両1を利用する複数のユーザが、同じ走行シーンにおいて設定した目標車速の設定値(以下、「設定車速」ともいう)の分布に対して、個々のユーザの設定車速がどの程度の位置づけになるかを示す情報を含む。また、評価情報は、同車種あるいは類似する車種の車両1を利用する複数のユーザが、同じ走行シーンにおいて設定した車速に応じた目標車間距離の設定値(以下、「設定車間距離」ともいう)の分布に対して、個々のユーザの設定車間距離がどの程度の位置づけになるかを示す情報を含む。同様に、評価情報は、同車種あるいは類似する車種の車両1を利用する複数のユーザが、同じ走行シーンにおいて設定した車速に応じた舵角の変化速度の設定値の分布に対して、個々のユーザの舵角の変化速度の設定値がどの程度の位置づけになるかを示す情報を含んでもよい。
【0020】
本実施形態に係る運転支援システム100は、このような評価情報に基づいて自動運転の制御条件を設定することにより、自動運転制御の開始時に、制御条件の設定に要するユーザの手間を少なくして、ユーザの運転に対する志向に沿った自動運転の制御条件を車種及び走行シーンに応じて設定することができる。また、本実施形態に係る運転支援システム100は、ユーザが使用する車両を変えた場合であっても、運転に対するユーザの志向に沿った自動運転の制御条件を車種及び走行シーンに応じて設定することができる。したがって、制御条件の設定に要するユーザの手間を少なくして、様々な車両の自動運転制御をユーザの好みに合わせて容易に実行することができる。
【0021】
以下、本実施形態に係る運転支援システム100として、先行車両追従制御(以下、「ACC制御」ともいう)を実行可能な車両1の運転を支援する運転支援システムを例に採って具体的に説明する。ACC制御の実行中、先行車両が存在しない場合には、設定された目標車速を維持するように車両1の走行制御が実行され、先行車両が存在する場合には、車速に応じた目標車間距離を維持するように車両の走行制御が実行される。ただし、上述のとおり、本開示の技術を適用可能な運転支援システムは、ACC制御を実行可能な車両の運転支援システムに限られず、主として車両制御システムが車両の走行環境を監視しながら運転タスクを実施する自動運転等、あらゆるレベルの自動運転制御を実行可能な車両の運転支援システムであってよい。
【0022】
<2.運転支援システムの構成>
まず、本実施形態に係る運転支援システム100の構成例について具体的に説明する。なお、以下の説明において、自動運転の制御条件として、ACC制御の目標車速及び目標車間距離を設定する場合を例に採って説明する。
【0023】
(2-1.携帯機器)
携帯機器30は、運転支援装置50と通信可能に構成され、ユーザによって持ち運び可能な端末機器である。携帯機器30は、例えばスマートホンやタブレット型コンピュータ等の携帯型の機器、あるいは、腕時計型の機器等のウェアラブル型の機器であってよい。携帯機器30は、有線又は無線の通信手段を介して運転支援装置50と通信可能に構成される。中でも、容易に通信可能な接続状態とすることができることから、通信手段は、ブルートゥース(登録商標)通信に代表される近距離無線通信であることが好ましい。
【0024】
携帯機器30は、通信部31、制御部33及び記憶部35を含む。このうち、通信部31は、運転支援装置50と通信するためのネットワークインタフェースである。制御部33は、CPU(Central Processing Unit)等の一つ又は複数のプロセッサを含み、携帯機器30の動作を制御する。記憶部35は、プロセッサと通信可能に接続されたRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の一つ又は複数の記憶素子を含み、種々のデータを記憶する。
【0025】
本実施形態において、制御部33は、運転支援装置50から送信される、ACC制御の制御条件の設定に関するユーザの評価情報を取得し、記憶部35に記憶させる。また、制御部33は、運転支援装置50からユーザの評価情報を読み出すための信号を受信した場合、記憶部35に記憶されている評価情報を運転支援装置50へ送信する。求められた評価情報に該当する評価情報が記憶部35に記憶されていない場合、制御部33は、該当する評価情報が存在しないことを示す信号を運転支援装置50へ送信する。
【0026】
(2-2.サーバ)
サーバ10は、例えば移動体通信等の無線通信ネットワーク5を介して各車両1の運転支援装置50と通信可能に構成されている。サーバ10は、例えばクラウドコンピューティング技術を利用したサーバであってもよい。本実施形態において、サーバ10は、自動運転の制御条件を算出する制御条件算出部を備えた情報処理装置としての機能を有する。
【0027】
サーバ10は、通信部11、制御部13及び記憶部15を含む。このうち、通信部11は、運転支援装置50と通信するためのネットワークインタフェースである。制御部13は、CPU等の一つ又は複数のプロセッサを含み、サーバ10の動作を制御する。記憶部15は、プロセッサと通信可能に接続されたRAM又はROM等の一つ又は複数の記憶素子、あるいは、HDD(Hard Disk Drive)やCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、SSD(Solid State Drive)、USB(Universal Serial Bus)フラッシュ、ストレージ装置等の記憶媒体を含み、種々のデータを記憶する。
【0028】
本実施形態において、制御部13は、データ収集部21、評価情報算出部23及び制御条件算出部25を含む。データ収集部21、評価情報算出部23及び制御条件算出部25は、プロセッサによるソフトウェアプログラムの実行により実現される機能である。なお、データ収集部21、評価情報算出部23及び制御条件算出部25の一部又は全部が、ハードウェアにより構成されてもよい。
【0029】
データ収集部21は、データ蓄積処理として、運転支援装置50から送信される制御条件設定情報、車両位置情報、ユーザ識別情報及び車種情報を取得し、制御条件設定情報を走行シーンの情報、ユーザ識別情報及び車種情報に関連付けて記憶部15に記憶させる。制御部13は、車両位置情報に基づいて道路の法定車速及び道路の種別の情報を特定し、これらの情報を走行シーンの情報とする。車両の走行位置の法定車速及び道路の種別は、例えば記憶部15に記憶させた地図データに基づいて特定することができるが、他の方法により特定されてもよい。また、制御部13は、車種情報として、例えば車名の情報とともに、車種に応じて分類される車両性能のクラスの情報を記憶部15に記憶させる。車両性能のクラスは、例えばセダン、ワゴン車、ミニバン等のボディタイプにより分類されてもよく、普通乗用車、軽自動車(小排気量車両)等の排気量により分類されてもよく、エコカー、スポーツカー等の走行性能によりに分類されてもよく、さらにはこれらの複数の組み合わせにより分類されてもよい。
【0030】
図3は、運転支援装置50から送信される制御条件設定情報、車両位置情報、ユーザ識別情報及び車種情報に基づいて記憶部15に記憶されるデータの例を示す。記憶されるデータは、それぞれユーザ識別情報、車種情報、走行シーンの情報及び制御条件設定情報を含む。つまり、記憶部15には、制御条件設定情報のデータベース(以下、「制御条件設定情報データベース」ともいう)が形成される。車種情報は、車名及び車両性能の情報を含む。車種情報は、カーメーカーの情報を含んでもよい。走行シーンの情報は、法定速度及び道路種別の情報を含む。走行シーンの情報は、自動運転のレベルに応じて車線数、道路幅、時間帯(昼間、夕方、夜間)の情報を含んでもよい。また、走行シーンの情報は、渋滞時、通学時間帯の通学路、夕方の商店街等の走行環境の情報を含んでもよい。制御条件設定情報は、設定車速及び設定車間距離の情報を含む。制御条件設定情報は、最大加速度の設定値の情報を含んでもよい。制御条件設定情報データベースは、その他にもドライバの運転に対する志向が反映される適宜の情報を含んでもよい。
【0031】
図3に例示されているように、同じユーザであっても、使用する車種又は走行シーンによって、法定車速に対する目標車速の志向あるいは車速に応じた目標車間距離の志向は異なり得る。また、同じ車種の車両1を使用する場合であっても、ユーザがエコロジー運転を重視する傾向にあるかスポーツ走行を重視する傾向にあるかによって、法定車速に対する目標車速の志向あるいは車速に応じた目標車間距離の志向は異なり得る。同様に、走行シーンが同じ場合であっても、ユーザがエコロジー運転を重視する傾向にあるかスポーツ走行を重視する傾向にあるかによって、法定車速に対する目標車速の志向あるいは車速に応じた目標車間距離の志向は異なり得る。
【0032】
また、評価情報算出部23は、運転支援装置50からドライバ(以下、「対象ユーザ」ともいう)の評価情報の送信を要求する信号(以下、「評価情報要求信号」)を受信した場合、記憶部15に形成された制御条件設定情報データベースを参照し、走行シーンごとに評価情報を算出する。運転支援装置50から送信される評価情報要求信号は、対象ユーザのユーザ識別情報と、車両1の車種情報(以下、「使用車種情報」ともいう)とを含む。評価情報算出部23は、制御条件設定情報データベースから、使用車種情報に該当する車種に対応するデータを抽出し、走行シーンごとに対象ユーザの評価情報を算出する。
【0033】
具体的に、評価情報算出部23は、抽出したデータを走行シーンごとに分類し、それぞれの走行シーンについて、すべてのユーザの設定車速又は設定車間距離の分布に対する対象ユーザの設定車速又は設定車間距離の位置づけを示す評価情報を求める。評価情報算出部23は、例えば法定速度が60km/hの一般道、法定速度が40km/hの一般道、法定速度が80km/hの都市高速、法定速度が120km/hの都市間高速等の走行シーンのそれぞれについて、対象ユーザの評価情報を求める。本実施形態では、パーセンタイルを用いて評価情報を求める例を説明する。
【0034】
図4及び
図5は、パーセンタイルPtを用いて評価情報Pを求める例を示す説明図である。
図4は、複数のユーザ全体の制御条件の設定値が正規分布を示す場合の評価情報Pの求め方を示し、
図5は、複数のユーザ全体の制御条件の設定値が正規分布でない場合の評価情報Pの求め方の例を示す。
【0035】
図4に示すように、複数のユーザ全体の制御条件の設定の分布が正規分布を示す場合、評価情報算出部23は、対象ユーザの設定のパーセンタイルPtを評価情報Pとする。具体的に、法定速度が60km/hの一般道において、複数のユーザによる設定車速の1パーセンタイル1Ptが40km/h、100パーセンタイル100Ptが80km/hであり、ユーザ全体の設定車速の分布が正規分布を示すとする。この場合において、対象ユーザの設定車速が55km/hであるとすると、当該55km/hのパーセンタイルである30パーセンタイル30Ptを、法定速度が60km/hの一般道での当該対象ユーザの設定車速の評価情報P_vとする。
【0036】
同様に、法定速度が60km/hの一般道において、複数のユーザによる設定車間距離の1パーセンタイル1Ptが10m、100パーセンタイル100Ptが30mであり、ユーザ全体の設定車間距離の分布が正規分布を示すとする。この場合において、対象ユーザの設定車間距離が16mであるとすると、当該16mのパーセンタイルである20パーセンタイル20Ptを、法定速度が60km/hの一般道での当該対象ユーザの設定車間距離の評価情報P_dとする。
【0037】
一方、
図5に示すように、複数のユーザ全体の制御条件の設定の分布が正規分布でない場合、評価情報算出部23は、1パーセンタイル1Ptから分布のピークまでの領域、あるいは、分布のピークから100パーセンタイル100Ptまでの領域における、対象ユーザの設定の相対位置を評価情報Pとする。設定車速を例に採って具体的に説明すると、法定速度が60km/hの一般道において、複数のユーザによる設定車速の1パーセンタイル1Ptが40km/h、100パーセンタイル100Ptが70km/hであり、ユーザ全体の設定車速の分布が正規分布でないとする。この場合において、対象ユーザの設定車速が47km/hであるとすると、対象ユーザの設定車速は分布のピーク(=60km/h)よりも小さい値であるため、評価情報算出部23は、1パーセンタイル1Ptから分布のピークまでの領域における対象ユーザの設定車速の相対位置を評価情報P_vとする。具体的に、評価情報算出部23は、1パーセンタイル1Ptに相当する40km/hから分布のピークに相当する60km/hまでの領域の大きさaに対する、1パーセンタイル1Ptから対象ユーザの設定車速47km/hまでの領域の大きさbの割合(b/a)を評価情報P_v=X(0.35)とする。
【0038】
同様に、対象ユーザの設定車速が64km/hであるとすると、対象ユーザの設定車速は分布のピーク(=60km/h)よりも大きい値であるため、評価情報算出部23は、分布のピークから100パーセンタイル100Ptまでの領域における対象ユーザの設定車速の相対位置を評価情報P_vとする。具体的に、評価情報算出部23は、分布のピークに相当する60km/hから100パーセンタイル100Ptに相当する70km/hまでの領域の大きさaに対する、100パーセンタイル100Ptから対象ユーザの設定車速64km/hまでの領域の大きさbの割合(b/a)を評価情報P_v=Y(0.6)とする。
【0039】
なお、上記の例において、複数のユーザ全体の制御条件の設定の分布が正規分布でない場合の評価情報P=X(b/a)は、対象ユーザの設定値が分布のピークよりも小さいことを示し、評価情報P=Y(b/a)は、対象ユーザの設定値が分布のピークよりも大きいことを示す。
【0040】
図示しないものの、評価情報算出部23は、複数のユーザ全体の設定車間距離の分布が正規分布でない場合についても、同じ方法により評価情報P_dを算出する。また、評価情報算出部23は、走行シーンごとに設定車速の評価情報P_v及び設定車間距離の評価情報P_dを算出する。
【0041】
複数のユーザ全体の設定の分布が正規分布であるか否かの判定は、あらかじめ設定された適宜の判定処理により行われる。例えば、評価情報算出部23は、車速あるいは車間距離の設定値の正規Q-Qプロット(Quantile-Quantile Plot)を利用し、プロットしたデータが標準正規分布直線上に載っている割合に基づいて推定される正規分布との適合度が所定値以上になっている場合に、当該設定の分布が正規分布であると判定することができる。あるいは、評価情報算出部23は、車速あるいは車間距離の設定値の分布を近似曲線として表したときの歪度あるいは尖度が所定値以下になっている場合に、当該設定の分布が正規分布であると判定することができる。そのほか、複数のユーザ全体の設定の分布が正規分布であるか否かの判定は、公知のデータ処理の手法にしたがって行われてもよい。
【0042】
このとき、複数のユーザ全体の制御条件設定情報のデータに関し、制御条件設定情報データベースに、使用車種情報に対応する車種についてのデータが十分でない場合、例えば蓄積されたデータ数があらかじめ設定されたデータ数に達していない場合、評価情報算出部23は、当該車種に類似する車種として登録された車種についてのデータを用いて評価情報を算出してもよい。例えば評価情報算出部23は、使用車種情報に対応する車種についてのデータがあらかじめ設定されたデータ数に達していない場合、当該車種と同じ車両性能として分類された他の車種のデータを含めて評価情報を算出する。これにより、対象ユーザが使用する車両(以下、「使用車両」ともいう)1と同程度の車両性能を有する車種のデータに基づいて対象ユーザの運転に対する志向を反映した評価情報を算出することができる。
【0043】
また、対象ユーザの制御条件設定情報のデータに関し、制御条件設定情報データベースに、使用車種情報に対応する車種についての対象ユーザのデータが存在しない場合、評価情報算出部23は、評価情報要求信号とともに運転支援装置50から送信される、対象ユーザが過去に使用車両1において設定した制御条件設定情報を用いて評価情報を算出してもよい。
【0044】
また、対象ユーザの制御条件設定情報のデータに関し、制御条件設定情報データベースに、使用車種情報に対応する車種についての対象ユーザのデータが存在しない場合、評価情報算出部23は、当該車種に類似する車種として登録された車種についての対象ユーザのデータを用いて評価情報を算出してもよい。例えば評価情報算出部23は、当該車種と同じ車両性能として分類された他の車種についての対象ユーザのデータを含めて評価情報を算出する。また、当該車種と同じ車両性能として分類された他の車種のデータが存在しない場合、評価情報算出部23は、車両性能が異なる車種についての対象ユーザのデータを含めて評価情報を算出してもよい。これにより、車種は異なるものの、対象ユーザの運転に対する志向を反映した評価情報を算出することができる。
【0045】
評価情報算出部23は、運転支援装置50から対象ユーザの評価情報要求信号を受信した場合、記憶部15に形成された制御条件設定情報データベースを参照し、上記の例にしたがって走行シーンごとに対象ユーザの評価情報を算出し、運転支援装置50へ送信する。
【0046】
また、制御条件算出部25は、運転支援装置50から評価情報及び使用車種情報とともに制御条件の情報の送信を要求する信号(以下、「制御条件要求信号」ともいう)を受信した場合、記憶部15に形成された制御条件設定情報データベースを参照し、使用車種情報に該当する車種の制御条件設定情報の分布のデータに基づいて評価情報に対応する設定値を求める。本実施形態では、当該車種のユーザ全体の設定車速及び設定車間距離の分布が正規分布を示す場合、制御条件算出部25は、評価情報P_v,P_dとしてのパーセンタイルPtに対応する推奨車速及び推奨車間距離をそれぞれ求める。また、当該車種のユーザ全体の設定車速及び設定車間距離の分布が正規分布でない場合、制御条件算出部25は、評価情報P_v,P_dとして求められた割合X(b/a)又はY(b/a)の情報に基づいて推奨車速及び推奨車間距離をそれぞれ求める。制御条件算出部25は、すべての走行シーンについての推奨車速及び推奨車間距離をそれぞれ算出する。
【0047】
評価情報を算出する場合と同様に、制御条件設定情報データベースに、使用車種情報に対応する車種についてのデータが十分でない場合、制御条件算出部25は、当該車種に類似する車種として登録された車種についてのデータを用いて制御条件を算出してもよい。
【0048】
制御条件算出部25は、すべての走行シーンについての制御条件を算出した後、算出した推奨車速及び推奨車間距離の情報を運転支援装置50へ送信する。
【0049】
(2-3.運転支援装置)
車両1上で用いられる運転支援装置50は、有線又は無線の通信手段を介して携帯機器30と通信可能に構成されている。また、運転支援装置50は、無線通信ネットワーク5を介してサーバ10と通信可能に構成されている。
【0050】
また、運転支援装置50には、直接的に又はCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Inter-Net)等の通信手段を介して、表示装置41、スピーカ42、車両駆動制御部43、入力部45、車両位置検出部47及び周囲環境検出部49が接続されている。表示装置41は、例えばインストルメントパネル内に設けられた表示機器やナビゲーションシステムの表示装置、あるいは、フロントウィンドウ上へ表示を行うHUD(ヘッドアップディスプレイ)であり、ユーザに対して種々の情報を視覚的に提示する。スピーカ42は、例えば車両1に備えられた音響システムのスピーカであり、ユーザに対して種々の情報を聴覚的に提示する。
【0051】
車両駆動制御部43は、車両の走行を制御する少なくとも一つの制御システムを含む。本実施形態に係る運転支援装置50を適用可能な車両は、少なくともACC制御を実行可能に構成されている。車両駆動制御部43は、車両の駆動力を制御するエンジン制御システムあるいはモータ制御システム及び車両の制動力を制御するブレーキシステムを含む。また、車両駆動制御部43は、エンジン又は駆動用モータから出力された出力を変速して駆動輪へ伝達するトランスミッションシステムを含んでもよい。さらに、実行可能な自動運転制御のレベルに応じて、ステアリングホイール又は操舵輪の操舵角を制御する電動ステアリングシステムを含んでもよい。
【0052】
本実施形態において、車両駆動制御部43は、運転支援装置50の自動運転制御部65から送信される目標加速度又は目標減速度の情報に基づいて車両の駆動力又は制動力を制御し、車速を設定車速に維持しながら、あるいは、先行車両との車間距離を設定車間距離に維持しながら、車両1の駆動を制御する。
【0053】
入力部45は、ユーザの操作入力を受け付け、入力された情報を運転支援装置50へ送信する。入力部45は、例えばタッチパネル式のディスプレイであってもよく、ダイヤル式の操作機器であってもよい。また、入力部45は、乗員の音声により入力を受け付ける音声認識装置であってもよく、ジェスチャにより入力を受け付ける画像認識装置であってもよい。また、入力部45は、ACC制御を実行開始するための入力を受け付け可能に構成されている。
【0054】
車両位置検出部47は、GPS(Global Positioning System)に代表されるGNSS(Global Navigation Satellite System)から送信される測位信号を受信し、車両の位置を計測する。車両位置検出部47は、GNSSの代わりに、あるいは、GNSSと併せて、準天頂衛星システム等の他のシステムから送信される測位信号を受信し、車両の位置を計測してもよい。車両位置検出部47により検出される車両位置情報は、運転支援装置50に入力される。
【0055】
周囲環境検出部49は、車両1の周囲環境を認識するための機器であり、例えばステレオカメラ、単眼カメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダセンサのうちの少なくとも一つを含んで構成される。周囲環境検出部49は、検出したデータに基づいて他車両、自転車、歩行者、道路標識、その他障害物等の車両の周囲の物体を認識するとともに、これらの物体までの距離や相対速度を算出する。本実施形態において、周囲環境検出部49は、少なくとも先行車両を認識するとともに認識した先行車両との車間距離及び相対速度を算出する。
【0056】
運転支援装置50は、第1通信部51、第2通信部53、制御部55及び記憶部57を含む。このうち、第1通信部51は、サーバ10と通信するためのネットワークインタフェースであり、第2通信部53は、携帯機器30と通信するためのネットワークインタフェースである。制御部55は、CPU等の一つ又は複数のプロセッサを含み、運転支援装置50の動作を制御する。記憶部57は、プロセッサと通信可能に接続されたRAM又はROM等の一つ又は複数の記憶素子、あるいは、HDDやCD、DVD、SSD、USBフラッシュ、ストレージ装置等の記憶媒体を含み、種々のデータを記憶する。
【0057】
制御部55は、データ送信制御部61、制御条件設定部63及び自動運転制御部65を含む。データ送信制御部61、制御条件設定部63及び自動運転制御部65は、プロセッサによるソフトウェアプログラムの実行により実現される機能である。データ送信制御部61、制御条件設定部63及び自動運転制御部65の一部又は全部は、ハードウェアにより構成されていてもよい。
【0058】
データ送信制御部61は、ACC制御が実行状態となっている間、データ蓄積処理として、所定のタイミングで、ACC制御の制御条件設定情報及び車両位置情報を、ユーザ識別情報及び車種情報とともにサーバ10へ送信する。制御条件設定情報は、設定車速及び設定車間距離の情報を含み、制御条件設定部63により設定されて記憶部57に記憶されている。ユーザ識別情報は、例えば接続中の携帯機器30から取得されて記憶部57に記憶されてもよく、ユーザにより入力されて記憶部57に記憶されてもよく、ドライバ撮影カメラによる撮像データに基づいて特定される個々のユーザに付与されて記憶部57に記憶されてもよい。車種情報は、あらかじめ記憶部57に記憶される。
【0059】
例えばデータ送信制御部61は、所定のタイミングで、その時点の設定車速及び設定車間距離の情報と、その時点で検出されている車両位置情報とを読み出すとともに、ドライバのユーザ識別情報及び車両1の車種情報を読み出し、サーバ10へ送信する。データを送信するタイミングは特に限定さるものではない。例えばデータ送信制御部61は、あらかじめ設定された時間間隔で制御条件設定情報等のデータを送信してもよく、交差点を通過するごとにデータを送信してもよく、走行シーンが変わるごとにデータを送信してもよい。交差点を通過したタイミングや走行シーンが変わったタイミングは、例えば車両位置情報及び地図データに基づいて特定されてもよく、周囲環境検出部49により認識される道路標識の表示内容あるいは車線数等に基づいて特定されてもよい。
【0060】
あるいは、データ送信制御部61は、所定のタイミングで、前回のデータ送信時以降に記憶部57に蓄積された制御条件設定情報、車両位置情報、ユーザ識別情報及び車種情報から、適宜の一つ又は複数の時刻における制御条件設定情報、車両位置情報、ユーザ識別情報及び車種情報を読み出し、サーバ10へ送信してもよい。例えばデータ送信制御部61は、ユーザが車両1の運転を終了し、車両システムの起動を停止させたときに、記憶部57に蓄積されたデータを読み出し、サーバ10へ送信してもよい。
【0061】
制御条件設定部63は、ACC制御が実行状態となっている間、目標車速及び目標車間距離を設定する。本実施形態では、制御条件設定部63は、走行シーンに応じて目標車速及び目標車間距離を設定する。
【0062】
制御条件設定部63は、運転支援装置50の記憶部57及び接続されている携帯機器30の記憶部35のいずれかに、車両1の車種に適用可能な対象ユーザの評価情報が記憶されている場合、当該評価情報及び車種情報とともに、制御条件要求信号をサーバ10へ送信する。一方、制御条件設定部63は、運転支援装置50の記憶部57及び接続されている携帯機器30の記憶部35のいずれにも、車両1の車種に適用可能な対象ユーザの評価情報が記憶されていない場合、サーバ10に対して評価情報要求信号を送信する。制御条件設定部63は、サーバ10から評価情報を受信した場合、当該評価情報を携帯機器30に送信し、携帯機器30に記憶させる。制御条件設定部63は、取得した評価情報を記憶部57に記憶させてもよい。制御条件設定部63は、取得した評価情報及び車種情報とともに、制御条件要求信号をサーバ10へ送信する。
【0063】
制御条件設定部63は、対象ユーザの評価情報及び車種情報とともに制御条件要求信号をサーバ10へ送信した後、サーバ10から返信された推奨車速及び推奨車間距離に基づいてACC制御の制御条件を設定する。また、制御条件設定部63は、サーバ10から返信された推奨車速及び推奨車間距離をそのまま制御条件の設定値としてもよいが、設定車速及び設定車間距離がユーザにより変更(調節)された場合、変更後の設定車速及び設定車間距離をACCの制御条件として設定してもよい。この場合、データ送信制御部61により所定のタイミングでサーバ10に送信される制御条件設定情報は、ユーザの意向により変更された設定車速及び設定車間距離の情報が反映される。
【0064】
なお、設定車速は、1km/h単位で設定可能になっていてもよく、5km/hあるいは10km/h等の適宜の車速単位で設定可能になっていてもよい。また、車間距離は、一定の距離に設定されてもよく、車速に応じて変化するように設定されてもよい。車間距離が車速に応じて変化する場合、設定車間距離は、具体的な目標車間距離の値ではなく、「大・中・小」あるいは「近・中・遠」等、距離間隔を複数段階で現した基準のいずれかに設定されるようになっていてもよい。
【0065】
制御条件設定部63は、設定車速及び設定車間距離の情報を、表示装置41又はスピーカ42の少なくともいずれかを利用してユーザに提示する。例えば制御条件設定部63は、ACC制御の実行中、設定されている目標車速及び目標車間距離を常時表示装置41に表示させるとともに、目標車速及び目標車間距離の設定時あるいは変更時に、設定車速及び設定車間距離の情報を音声出力させてもよい。これにより、ユーザは、設定されている目標車速及び目標車間距離を認識することができる。
【0066】
自動運転制御部65は、制御条件設定部63により設定された設定車速及び設定車間距離に基づいてACC制御を実行する。具体的に、自動運転制御部65は、周囲環境検出部49から送信される周囲環境の情報に基づいて先行車両が認識されていない場合、車速を設定車速に維持するように車両1の目標加速度又は目標減速度を設定し、当該目標加速度又は目標減速度の情報を車両駆動制御部43へ送信する。また、自動運転制御部65は、周囲環境検出部49から送信される周囲環境の情報に基づいて先行車両が認識されている場合、先行車両との車間距離を設定車間距離に維持するように車両1の目標加速度又は目標減速度を設定し、当該目標加速度又は目標減速度の情報を車両駆動制御部43へ送信する。
【0067】
<3.運転支援システムの動作>
次に、本実施形態に係る運転支援システム100の動作をフローチャートに沿って説明する。以下、運転支援システムの動作を、データ蓄積処理と、自動運転制御処理とに分けて説明する。
【0068】
(3-1.データ蓄積処理)
図6は、運転支援装置50側で実行されるデータ蓄積処理を示すフローチャートである。
図7は、サーバ10側で実行されるデータ蓄積処理を示すフローチャートである。
【0069】
まず、運転支援装置50のデータ送信制御部61は、車両1の自動運転制御が実行状態となっているか否かを判別する(ステップS11)。本実施形態では、データ送信制御部61は、ACC制御が実行状態となっているか否かを判別する。ACC制御が実行状態でない場合(S11/No)、本ルーチンを終了してスタートへ戻る。
【0070】
一方、ACC制御が実行状態となっている場合(S11/Yes)、データ送信制御部61は、サーバ10へ制御条件設定情報等のデータを送信するか否かを判別する(ステップS13)。例えばデータ送信制御部61は、あらかじめ設定されたデータを送信するタイミングが到来した場合に、サーバ10へデータを送信すると判定する。データを送信するタイミングは、所定の時間間隔に設定されていてもよく、交差点を通過するタイミングであってもよく、走行シーンが変わるタイミングであってもよい。
【0071】
データ送信制御部61は、データを送信しない場合(S13/No)、本ルーチンを終了してスタートへ戻る。一方、データ送信制御部61は、データを送信する場合(S13/Yes)、記憶部57に記憶されている現在の制御条件設定情報及び車両位置情報を取得する(ステップS15)。制御条件設定情報は、制御条件設定部63により設定され、記憶部57に記憶された設定車速及び設定車間距離の情報を含む。また、車両位置情報は、車両位置検出部47から出力されるデータに基づいて取得される。
【0072】
次いで、データ送信制御部61は、取得した設定車速及び設定車間距離の情報及び車両位置情報を、ドライバ(対象ユーザ)のユーザ識別情報及び車種情報とともにサーバ10へ送信する(ステップS17)。ユーザ識別情報は、例えば接続中の携帯機器30から取得されて記憶部57に記憶されていてもよく、ユーザにより入力されて記憶部57に記憶されていてもよく、ドライバ撮影カメラによる撮像データに基づいて特定される個々のユーザに付与されて記憶部57に記憶されていてもよい。また、車種情報は、あらかじめ記憶部57に記憶されている。
【0073】
運転支援装置50のデータ送信制御部61は、運転支援装置50が起動している間、以上のステップS11~ステップS17の処理を繰り返し実行する。
【0074】
サーバ10のデータ収集部21は、運転支援装置50から送信される保存用データを取得する(ステップS21)。保存用データは、制御条件設定情報、車両位置情報、ユーザ識別情報及び車種情報を含む。
【0075】
次いで、データ収集部21は、取得した保存用データを記憶部15に記憶する(ステップS23)。このとき、データ収集部21は、車種情報から特定される車両1を車両性能に応じて分類して記憶する。また、データ収集部21は、車両位置情報を地図データに照らし合わせ、車両1の走行シーンを分類する。例えばデータ収集部21は、車両1が走行する道路の法定速度及び道路種別の情報を取得し、これらの法定速度及び道路種別の情報を併せて記憶する。本実施形態では、
図3に例示したように、制御条件設定情報は、ユーザ識別情報、車種情報及び走行シーンに関連付けて記憶される。
【0076】
サーバ10のデータ収集部21は、以上のステップS21~ステップS23の処理を繰り返し実行し、運転支援装置50を搭載したそれぞれの車両1から送信される保存用データを記憶部15に記憶する。これにより、サーバ10の記憶部15には、複数のユーザによるACC制御の制御条件が、ユーザ、車種及び走行シーンに関連付けて蓄積され、制御条件設定情報データベースが形成される。
【0077】
(3-2.自動運転制御処理)
図8は、運転支援装置50側で実行される自動運転制御処理を示すフローチャートである。
図9は、サーバ10側で実行される評価情報算出処理を示すフローチャートであり、
図10は、サーバ10側で実行される制御条件算出処理を示すフローチャートである。
【0078】
まず、運転支援装置50の制御条件設定部63は、上記のステップS11と同様に、車両1の自動運転制御が実行状態となっているか否かを判別する(ステップS31)。ACC制御が実行状態でない場合(S31/No)、本ルーチンを終了してスタートへ戻る。
【0079】
一方、ACC制御が実行状態である場合(S31/Yes)、制御条件設定部63は、運転支援装置50が搭載された使用車両1に適用可能な評価情報Pが保存されているか否かを判別する(ステップS33)。例えば制御条件設定部63は、運転支援装置50に接続中の携帯機器30に対してドライバ(対象ユーザ)の評価情報を読み出すための信号を送信し、携帯機器30から返信された評価情報Pを取得する。携帯機器30から、評価情報Pが携帯機器30には保存されていないことを示す信号が返信された場合、制御条件設定部63は、運転支援装置50の記憶部57に対象ユーザの評価情報Pが記憶されているか否かを判別する。記憶部57に対象ユーザの評価情報Pが記憶されている場合、当該評価情報Pを取得する。
【0080】
携帯機器30及び運転支援装置50のいずれにも使用車両1に適用可能な評価情報Pが保存されていない場合(S31/No)、制御条件設定部63は、記憶部57に記憶されている、過去にACC制御を実行したときの制御条件設定情報及び車両位置情報とユーザ識別情報及び車種情報を読み出し、これらの情報とともに評価情報要求信号をサーバ10へ送信する(ステップS35)。
【0081】
ここで、評価情報要求信号を受信したサーバ10側の処理を説明する。
図9に示すように、サーバ10の評価情報算出部23は、評価情報要求信号を受信すると(ステップS61)、サーバ10の記憶部15に記憶された制御条件設定情報データベースに、使用車種情報に該当する車種に対応するデータが十分に保存されているか否かを判別する(ステップS63)。例えば評価情報算出部23は、使用車種情報に該当する車種に対応するデータ数があらかじめ設定されたデータ数に達している場合に、該当データが十分に保存されていると判定する。このデータ数は、あらかじめ適切な値に設定される。
【0082】
使用車種情報に該当する車種に対応するデータが十分に保存されている場合(S63/Yes)、評価情報算出部23は、使用車種情報に該当する車種に対応するデータを抽出し、運転支援装置50から受信した制御条件設定情報及び車両位置情報を抽出したデータと比較して評価情報Pを算出する(ステップS65)。一方、使用車種情報に該当する車種に対応するデータが十分に保存されていない場合(S63/No)、評価情報算出部23は、使用車種情報に該当する車種に類似する車種に対応するデータを抽出し、運転支援装置50から受信した制御条件設定情報及び車両位置情報を抽出したデータと比較して評価情報Pを算出する(ステップS67)。
【0083】
本実施形態では、ステップS65又はステップS67において、複数のユーザ全体の制御条件の設定の分布が正規分布を示す場合、評価情報算出部23は、対象ユーザの制御条件の設定のパーセンタイルPtを評価情報Pとする(
図4を参照)。一方、複数のユーザ全体の制御条件の設定の分布が正規分布でない場合、評価情報算出部23は、1パーセンタイル1Ptから分布のピークまでの領域、あるいは、分布のピークから100パーセンタイル100Ptまでの領域における、対象ユーザの制御条件の設定の相対位置を評価情報Pとする(
図5を参照)。評価情報算出部23は、設定車速及び設定車間距離のそれぞれについて、走行シーンごとに評価情報P_v,P_dを算出する。次いで、評価情報算出部23は、算出した評価情報P_v,P_dを運転支援装置50へ送信する(ステップS79)。
【0084】
図10は、評価情報算出部23により算出される評価情報P_v,P_dのデータ(以下、「評価情報データ」ともいう)の一例を示す。
評価情報データは、対象ユーザのユーザ識別番号、車名及び車両性能の情報を含む車種情報を含む。また、評価情報データは、走行シーンそれぞれについての設定車速の評価情報P_vと設定車間距離の評価情報P_dとを含む。
図10に示した例では、ユーザ識別番号「ddddd」により特定される対象ユーザが車名「WWW」の普通自動車を使用する際のACC制御の制御条件の評価情報Pが求められている。かかる評価情報データでは、法定速度が40km/hの一般道において、設定車速の評価情報P_vが45パーセンタイル45Pt、設定車間距離の評価情報P_dが50パーセンタイル50Ptとなっている。また、法定速度が60km/hの一般道において、設定車速の評価情報P_vが40パーセンタイル40Pt、設定車間距離の評価情報P_dが60パーセンタイル60Ptとなっている。また、法定速度が80km/hの都市高速において、設定車速の評価情報P_vが「X(0.80)」、設定車間距離の評価情報P_dが60パーセンタイル60Ptとなっている。また、法定速度が120km/hの都市間高速において、設定車速の評価情報P_vが「X(0.75)」、設定車間距離の評価情報P_dが「Y(0.5)」となっている。
【0085】
なお、かかる評価情報データからは、対象ユーザが普通自動車を使用する際のACC制御の制御条件として、法定速度が速くなるほど設定車速を分布のピークよりも小さく設定し、かつ、設定車間距離を分布のピークよりも大きく設定する志向であることが理解される。
【0086】
図8に戻り、制御条件設定部63は、使用車両1に適用可能な評価情報P_v,P_dのデータをサーバ10から受信すると(ステップS37)、当該評価情報P_v,P_dのデータを記憶部57に記憶するとともに、携帯機器30に送信して携帯機器30に保存させる(ステップS39)。これにより、携帯機器30及び運転支援装置50のいずれにも使用車両1に適用可能な評価情報Pが保存されていなかった場合に、携帯機器30及び運転支援装置50に、使用車両1に適用可能な評価情報Pが保存される。
【0087】
次いで、制御条件設定部63は、評価情報P_v,P_d及び車種情報とともに、制御条件要求信号をサーバ10へ送信する(ステップS41)。
【0088】
ここで、制御条件要求信号を受信したサーバ10側の処理を説明する。
図11に示すように、サーバ10の制御条件算出部25は、制御条件要求信号を受信すると(ステップS71)、サーバ10の記憶部15に記憶された制御条件設定情報データベースに、使用車種情報に該当する車種に対応するデータが十分に保存されているか否かを判別する(ステップS73)。例えば制御条件算出部25は、使用車種情報に該当する車種に対応するデータ数があらかじめ設定されたデータ数に達している場合に、該当データが十分に保存されていると判定する。このデータ数は、あらかじめ適切な値に設定される。
【0089】
使用車種情報に該当する車種に対応するデータが十分に保存されている場合(S73/Yes)、制御条件算出部25は、使用車種情報に該当する車種に対応するデータを抽出し、当該車種の蓄積データに基づいて推奨制御条件を算出する(ステップS75)。具体的に、制御条件算出部25は、当該車種の蓄積データに基づいて、複数のユーザ全体の設定車速及び設定車間距離の設定の分布における対象ユーザの評価情報P_v,P_dに相当する車速及び車間距離を求め、推奨車速及び推奨車間距離とする。一方、使用車種情報に該当する車種に対応するデータが十分に保存されていない場合(S73/No)、制御条件算出部25は、使用車種情報に該当する車種に類似する車種に対応するデータを抽出し、当該類似車種の蓄積データに基づいて推奨制御条件を算出する(ステップS77)。具体的に、制御条件算出部25は、類似車種の蓄積データに基づいて、複数のユーザ全体の設定車速及び設定車間距離の設定の分布における対象ユーザの評価情報P_v,P_dに相当する車速及び車間距離を求め、推奨車速及び推奨車間距離とする。制御条件算出部25は、それぞれの走行シーンについて推奨車速及び推奨車間距離を算出する。次いで、制御条件算出部25は、算出した推奨車速及び推奨車間距離を運転支援装置50へ送信する(ステップS79)。
【0090】
図12は、制御条件算出部25により算出される推奨制御条件のデータ(以下、「推奨制御条件データ」ともいう)の一例を示す。
推奨制御条件データは、車名及び車両性能の情報を含む車種情報を含む。また、推奨制御条件データは、走行シーンそれぞれについての推奨車速の情報と推奨車間距離の情報とを含む。
図12に示した例では、対象ユーザが車名「WWW」の普通自動車を使用する際のACC制御の推奨制御条件が求められている。かかる推奨制御条件データでは、法定速度が40km/hの一般道において、推奨車速が35km/h、推奨車間距離が20mとなっている。また、法定速度が60km/hの一般道において、推奨車速が55km/h、推奨車間距離が30mとなっている。また、法定速度が80km/hの都市高速において、推奨車速が75km/h、推奨車間距離が90mとなっている。また、法定速度が120km/hの都市間高速において、推奨車速が100/km、推奨車間距離が110mとなっている。
【0091】
推奨制御条件データの各推奨車速及び推奨車間距離は、法定速度が速くなるほど設定車速を分布のピークよりも小さく設定し、かつ、設定車間距離を分布のピークよりも大きく設定する対象ユーザの運転に対する志向が反映されていることが理解される。
【0092】
図8に戻り、制御条件設定部63は、推奨制御条件のデータをサーバ10から受信すると(ステップS43)、現在の走行シーンに対応する推奨車速及び推奨車間距離の情報を対象ユーザに提示する(ステップS45)。例えば制御条件設定部63は、現在の走行シーンに対応する推奨車速及び推奨車間距離の情報を表示装置41に表示させるとともに、スピーカ42を利用して、推奨車速及び推奨車間距離を目標車速及び目標車間距離として設定することを対象ユーザに通知する。
【0093】
次いで、制御条件設定部63は、対象ユーザにより制御条件の修正操作が行われたか否かを判別する(ステップS47)。対象ユーザが制御条件の修正操作をしていない場合(S47/No)、目標車速及び目標車間距離の設定値が保持される一方、対象ユーザが制御条件の修正操作をした場合(S47/Yes)、制御条件設定部63は、目標車速及び目標車間距離の設定値を更新する(ステップS49)。なお、設定された目標車速及び目標車間距離の情報は、データ蓄積処理が実行されることによって、逐次サーバ10に送信されて蓄積される。
【0094】
次いで、自動運転制御部65は、制御条件設定部63により設定された設定車速及び設定車間距離に基づいてACC制御を実行する(ステップS51)。具体的に、自動運転制御部65は、周囲環境検出部49から送信される周囲環境の情報に基づいて先行車両が認識されていない場合、車速を設定車速に維持するように車両1の目標加速度又は目標減速度を設定し、当該目標加速度又は目標減速度の情報を車両駆動制御部43へ送信する。また、自動運転制御部65は、周囲環境検出部49から送信される周囲環境の情報に基づいて先行車両が認識されている場合、先行車両との車間距離を設定車間距離に維持するように車両1の目標加速度又は目標減速度を設定し、当該目標加速度又は目標減速度の情報を車両駆動制御部43へ送信する。
【0095】
本実施形態に係る運転支援システム100において、運転支援装置50は、ACC制御が実行状態にされた後、評価情報をサーバ10へ送信するとともに、サーバ10により算出された推奨制御条件を受信した後、車両位置情報及び地図データから特定される走行シーンが切り替わるごとに、推奨制御条件のデータに基づいて目標車速及び目標車間距離の設定を変更する。これにより、走行シーンに応じて、ドライバの運転に対する志向を反映させた制御条件でACC制御を実行することができる。その際に、制御条件設定部63は、設定車速及び設定車間距離のデータを表示装置41に表示させるとともに、スピーカ42から、制御条件を切り替えることをユーザに伝達するアナウンスを出力させてもよい。
【0096】
<4.本実施形態による効果>
以上説明したように、本実施形態に係る運転支援システム100は、複数のユーザ全体の制御条件の設定の分布に対する個々のユーザの設定の相対的な位置づけを示す評価情報に基づいて車両1の自動運転の推奨制御条件を算出し、算出された推奨制御条件に基づいて車両1の自動運転を制御する。このため、対象ユーザが特定の車両1を使用する場合に、自動運転の制御条件の設定に要するユーザの手間を少なくして、ユーザの運転に対する志向に沿った自動運転の制御条件を設定することができる。また、対象ユーザの評価情報は、運転支援装置50だけでなく、ユーザが持ち運び可能な携帯機器30に保存されるため、対象ユーザが使用する車両を変えた場合であっても、ユーザの手間を少なくして、ユーザの運転に対するユーザの志向に沿った自動運転の制御条件を設定することができる。したがって、様々な車両の自動運転制御をユーザの好みに合わせて容易に実行することができる。
【0097】
また、本実施形態に係る運転支援システム100において、サーバ10の制御条件算出部25は、複数のユーザ全体の制御条件の設定の分布が正規分布を示す場合、個々のユーザの設定のパーセンタイルを評価情報として用いて推奨制御条件を算出する。また、制御条件算出部25は、複数のユーザ全体の制御条件の設定の分布が正規分布でない場合、1パーセンタイルから分布のピークまでの領域、あるいは、分布のピークから100パーセンタイルまでの領域における、個々のユーザの設定の相対位置を評価情報として用いて推奨制御条件を算出する。このようにパーセンタイルの情報に基づいて推奨制御条件を算出することにより、車両性能や制御条件の設定に使用する物理値あるいは設定段階数が車両1ごとに異なる場合であっても、ドライバの運転に対する志向を反映させた推奨制御条件を算出することができる。特に、制御条件の設定値が50パーセンタイルから外れるユーザほど、車両性能の違いによる制御条件のずれを抑制する効果を得ることができる。
【0098】
また、本実施形態に係る運転支援システム100において、評価情報は、走行シーンごとに求められる。したがって、ユーザの運転に対する志向が走行シーンごとに異なる場合であっても、走行シーンに応じて、ユーザの運転に対する志向を反映させた制御条件を設定することができる。
【0099】
また、本実施形態に係る運転支援システム100において、複数のユーザ全体の制御条件の設定分布は車種ごとに求められ、制御条件算出部25は、対象ユーザが使用する車種についての複数のユーザ全体の制御条件の設定の分布のデータが蓄積されていない場合、対象ユーザが使用する車種に類似する車種として登録された車種の複数のユーザ全体の制御条件の設定の分布のデータに基づいて求められる評価情報を用いて推奨制御条件を算出する。これにより、使用車両1に対応するデータが蓄積されていない場合であっても、車両性能等が類似する車種の蓄積データを用いて推奨制御条件を算出することができ、ユーザの運転に対する志向を反映させた制御条件を設定することができる。
【0100】
<5.応用例>
本実施形態に係る運転支援システム100は、ユーザが持ち運び可能な携帯機器30に保存された情報を用いて自動運転の制御条件を設定する。このため、携帯機器30に保存された評価情報以外の情報を自動運転の制御条件に反映させることもできる。
【0101】
例えば携帯機器30がユーザの体調管理機能を備えている場合、ユーザの体調に応じて評価情報あるいは制御条件を補正してもよい。例えば運転支援装置50の制御条件設定部63は、ドライバの体調が悪いほど、自動運転制御が安全運転志向になるように評価情報あるいは制御条件を補正し、衝突猶予時間を確保する。具体的に、制御条件設定部63は、設定車速が遅くなるように、あるいは、設定車間距離が拡大するように、評価情報あるいは制御条件を補正する。これにより、ドライバの反応が遅れる場合であっても、衝突を回避あるいは衝突による衝撃を緩和させることができる。体調管理機能を備えた携帯機器30は、例えば心拍計や血中酸素測定器、体温計等のセンサを有し、これらの計測データに基づいて体調の異常を判定する機能を有する携帯機器であってもよい。
【0102】
また、携帯機器30がスケジュール管理機能を備えている場合、到着予定時間と所要時間とに応じて評価情報あるいは制御条件を補正してもよい。例えば到着予定時間までに余裕が無い場合、自動運転制御を実行する区間での設定車速が速くなるように評価情報あるいは制御条件を補正する。これにより、手動運転区間において、ドライバは、余裕を持った運転操作を行うことができ、手動運転時の安全性を高めることができる。
【0103】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0104】
例えば上記実施形態に係る運転支援システム100は、運転支援装置50と通信可能なサーバ10を備え、サーバ10が評価情報及び推奨制御条件を算出する機能を有していたが、本開示はかかる例に限定されない。運転支援システムは、サーバを用いずに構成されていてもよい。この場合、運転支援装置50の記憶部57に、あらかじめ複数のユーザのデータを蓄積した制御条件設定情報データベースが格納され、運転支援装置50が、上述した評価情報算出部23及び制御条件算出部25を備えた情報処理装置としても機能する。かかる運転支援システムによれば、ユーザが持ち運び可能な携帯機器30と通信をしながら、車載の運転支援装置50が、ユーザの運転に対する志向を反映した自動運転の制御条件を設定することができ、上記実施形態に係る運転支援システム100と同様の効果を得ることができる。
【0105】
また、上記実施形態に係る運転支援システム100では、運転支援装置50は、自動運転の実行状態になったときに、使用車両1についての対象ユーザの評価情報に基づいて算出されるすべての走行シーンについての推奨制御条件をサーバ10から取得するとともに、車両1の走行シーンが切り替わるごとに推奨制御条件を提示していたが、本開示はかかる例に限定されない。例えば運転支援装置50は、車両1の走行シーンが切り替わるごとに、当該走行シーンについての推奨制御条件をサーバ10から取得して提示してもよい。
【0106】
また、以下の形態も本開示の技術的範囲に属する。
プロセッサに、
複数のユーザ全体の制御条件の設定の分布に対する個々のユーザの設定の相対的な位置づけを示す評価情報に基づいて、車両の自動運転の制御条件を算出することと、
算出された制御条件に基づいて車両の自動運転を制御することと、を含む処理を実行させるコンピュータプログラム、及び当該コンピュータプログラムを記録した記録媒体。
【符号の説明】
【0107】
1…車両、10…サーバ、13…制御部、15…記憶部、21…データ収集部、23…評価情報算出部、25…制御条件算出部、30…携帯機器、33…制御部、35…記憶部、41…表示装置、42…スピーカ、43…車両駆動制御部、45…入力部、47…車両位置検出部、49…周囲環境検出部、50…運転支援装置、55…制御部、57…記憶部、61…データ送信制御部、63…制御条件設定部、65…自動運転制御部、100…運転支援システム