(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】積層不織布及びこれを備えた吸収性物品
(51)【国際特許分類】
D06M 13/256 20060101AFI20250318BHJP
D04H 1/4374 20120101ALI20250318BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20250318BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
D06M13/256
D04H1/4374
B32B5/26
A61F13/511 300
(21)【出願番号】P 2021049728
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】副島 裕基
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-314825(JP,A)
【文献】特開2003-250836(JP,A)
【文献】特開2020-125451(JP,A)
【文献】特開2019-002099(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121673(WO,A1)
【文献】特開2009-268559(JP,A)
【文献】特開2016-112174(JP,A)
【文献】特開2022-148158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 - 15/715
D04H 1/00 - 18/04
B32B 1/00 - 43/00
A61F 13/15 - 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1繊維層と、これに積層された第2繊維層との少なくとも2層を有する積層不織布であって、
前記第2繊維層は、前記第1繊維層よりも嵩密度が高く、
前記第2繊維層は、前記第1繊維層よりも構成繊維の繊度が小さく、
前記第2繊維層に、以下の化合物A及び化合物B
並びにリン酸エステル型のアニオン界面活性剤及びシリコーン化合物が配されている、積層不織布。
化合物A:炭素数12以上22以下のヒドロキシアルカンスルホン酸塩
化合物B:炭素数12以上22以下の内部オレフィンスルホン酸塩
【請求項2】
前記第1繊維層の構成繊維の繊度は、前記第2繊維層の構成繊維の繊度に対する比(前記第1繊維層の構成繊維の繊度/前記第2繊維層の構成繊維の繊度)が、1.01以上8.00以下である、請求項1に記載の積層不織布。
【請求項3】
前記第2繊維層に、前記化合物Aとして、以下の化合物A1及び化合物A2の一方又は双方が配されている、請求項1又は2に記載の積層不織布。
化合物A1:炭素数が16であるヒドロキシアルカンスルホン酸塩
化合物A2:炭素数が18であるヒドロキシアルカンスルホン酸塩
【請求項4】
前記第1繊維層に、ジアルキルスルホン酸及びベタイン型界面活性剤の何れか一方又は双方が配されている、請求項1~3の何れか1項に記載の積層不織布。
【請求項5】
前記第2繊維層は、螺旋状の捲縮繊維を含んでいる、請求項1~
4の何れか1項に記載の積層不織布。
【請求項6】
前記第1繊維層により形成された第1面、及び該第1面とは反対側に位置する第2面を有し、該第1面側に突出する複数の凸部を有している、請求項1~
5の何れか1項に記載の積層不織布。
【請求項7】
前記第1繊維層及び前記第2繊維層が一体化された複数の接合部を有している、請求項1~
6の何れか1項に記載の積層不織布。
【請求項8】
請求項1~
7の何れか1項に記載の積層不織布を備えた、吸収性物品。
【請求項9】
吸収体と、該吸収体よりも肌対向面側に配された表面シートとを具備しており、
前記表面シートとして、前記積層不織布を備え、前記第1繊維層側の面が肌対向面となるように配されている、請求項
8に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層不織布及びこれを備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の吸収性物品は、主な吸液部位となる吸収体と、表面シート等の繊維シートを具備することが一般的である。繊維シートにおける液残りを抑制して、吸収性物品の着用感を向上させる観点から、吸収性物品が備える繊維シートに、繊維処理剤を適用する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、(ポリ)アミンのカチオン化物(a)と、エステル(b)と、ジアルキルスルホサクシネート塩(c)と、アルキルホスフェート塩(d)と、トリアルキルグリシン誘導体及び(アルキルアミド基含有アルキル)ジアルキルグリシン誘導体から選ばれた少なくとも1種のグリシン誘導体(e)と、ポリオキシアルキレン変性シリコーン(f)とを所定の含有量で含む透水性付与剤を適用したシートが開示されている。
【0003】
また、本出願人は、先に、複数の繊維層が複数の接合部で一体化された不織布であって、該不織布における一方の面側の繊維層が、螺旋状捲縮繊維及び非螺旋状繊維を含み、他方の面側の繊維層が、液膜開裂剤を含有した凸部を有する不織布を提案した(特許文献2)。
【0004】
また、吸収性物品の技術分野とは別に、本出願人は、先に、硬質表面、布表面、皮膚表面、毛髪表面などの種々の固体表面を対象とする親水化処理剤として、内部オレフィンスルホン酸塩、多価金属イオン、及び水を含有し、該内部オレフィンスルホン酸塩及び該多価金属イオンのモル比が所定範囲内である、親水化処理剤組成物を提案した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-247128号公報
【文献】特開2019-002099号公報
【文献】特開2020-125451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
良好な着用感を得る観点から、生理用ナプキン等の吸収性物品には、経血等の液体を吸収した後であっても良好なドライ性を有することが求められている。特許文献1~2は、不織布表面の液残りの抑制効果に改善の余地があった。
特許文献3に記載の親水化処理剤組成物は、硬質表面などの種々の固体表面に対して、優れた親水化能力を発揮する。しかしながら、同文献には、当該親水化処理剤組成物を吸収性物品の構成部材に用いた場合に、吸収性物品の種々の性能に有用であるか否かの検討までは開示されていない。
【0007】
したがって本発明の課題は、表面の液残りを抑制して、ドライ性に優れる積層不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1繊維層と、これに積層された第2繊維層との少なくとも2層を有する積層不織布に関する。
前記第2繊維層は、前記第1繊維層よりも嵩密度が高いことが好ましい。
前記第2繊維層に、以下の化合物A及び化合物Bが配されていることが好ましい。
化合物A:炭素数12以上22以下のヒドロキシアルカンスルホン酸塩
化合物B:炭素数12以上22以下の内部オレフィンスルホン酸塩
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層不織布によれば、不織布表面の液残りを抑制して、ドライ性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明に係る積層不織布の一実施形態を示す拡大断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る積層不織布の別の実施形態を示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明に係る積層不織布のさらに別の実施形態を示す斜視図であり、
図3(b)は、該積層不織布の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る積層不織布のさらに別の実施形態を示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明に係る積層不織布のさらに別の実施形態を示す斜視図であり、
図5(b)は、該積層不織布の断面図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明に係る積層不織布のさらに別の実施形態を示す斜視図であり、
図6(b)は、該積層不織布の凸部における断面図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明に係る積層不織布のさらに別の実施形態を示す斜視図であり、
図7(b)は該積層不織布の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の積層不織布をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の積層不織布の一実施形態が示されている。
図1に示す積層不織布10は、第1繊維層11と、これに積層された第2繊維層12とを有している。これら第1繊維層11と第2繊維層12とは隣接して配置されている。本実施形態の積層不織布10は、第1繊維層11及び第2繊維層12からなる2層構造を有するが、本発明の積層不織布は、少なくとも2層を有していればよく、3層以上の積層構造を有していてもよい。
本実施形態の積層不織布10は、第1面F1及びこれと反対側に位置する第2面F2を有している。第1面F1及び第2面F2それぞれは、積層不織布10の厚み方向Zと直交する面である。第1繊維層11は、不織布10の第1面F1を形成し、第2繊維層12は、不織布10の第2面F2を形成している。
【0012】
本実施形態の積層不織布10は、第1繊維層11及び第2繊維層12が一体化された複数の接合部13を有している。すなわち第1繊維層11及び第2繊維層12は、複数の接合部13によって部分的に接合されている。接合部13は、熱を伴うか又は伴わないエンボス加工をする方法、又は超音波エンボス加工をする方法等によって形成できる。斯かるエンボス加工で接合部13を形成した場合、接合部13は積層不織布10の構成繊維が他の部位よりも高密度化した部分となる。接合部13は、エンボス加工に代えて、接着剤を用いた接着により形成してもよい。
【0013】
接合部13の平面視形状は特に制限されず、円形、楕円形、三角形若しくは矩形又はこれらの組み合わせ等であってもよく、直線や曲線等の線状に形成してもよい。
後述するドライ性をより向上させる観点から、接合部13は、平面方向に散点状に配置されていることが好ましい。
【0014】
本実施形態の接合部13は、エンボス加工によって形成されており、積層不織布10の構成繊維が他の部位よりも厚みが小さく且つ密度が大きくなっている。本実施形態の接合部13は、積層不織布10の第1面F1側において他の部位よりも相対的に凹んでおり、該他の部位が接合部13よりも第1面F1側に突出している。これにより、積層不織布10は第1面F1側に凹凸を有している。すなわち、積層不織布10は、第1面F1側に突出する複数の凸部14と、第2面F2側に凹む複数の凹部15とを有している。
本実施形態の積層不織布10は、第1面F1側に凹凸を有する一方、第2面F2側は平坦となっている。積層不織布10は、後述するように第2面F2側に凹凸を有してもよいが、ドライ性をより向上させる観点から、少なくとも第1面F1側に凹凸を有することが好ましい。
【0015】
本実施形態の凸部14は、内部が第1繊維層11及び第2繊維層12の各構成繊維で満たされた中実構造である。積層不織布10の凹凸による肌触りをより向上させる観点から、凸部14の最大厚みH1(
図1参照)は、凹部15の厚みH2(
図1参照)に対して好ましくは2倍以上、より好ましくは20倍以上であり、また好ましくは80倍以下、より好ましくは60倍以下である。
凸部14の最大厚みH1は、積層不織布10の最大厚みである。凹部15の厚みH2は、積層不織布10の断面を観察した際の、接合部13における厚みである。本実施形態において斯かる接合部13は、その両面が平坦となっている部分である(
図1参照)。
【0016】
積層不織布10の各部の厚みは、以下の方法で測定される。先ず、積層不織布10から、60mm×60mmの大きさを切り出し、これをサンプル片とする。次いで、温度20±2℃、相対湿度65±5%の条件下でレーザー変位計(株式会社キーエンス製、CCDレーザー変位センサーLK-085)の試料台上に直径56mmの真円形状の金属プレートを載せる。この金属プレートは、サンプル片に50Paの荷重を付与し得る。次いで、当該金属プレート上面の中心位置にレーザー照射点を合わせ、該金属プレートの高さ位置となる基準点P0を測定する。次いで、試料台上の金属プレートを一旦取り除き、該試料台上に前記のサンプル片を第2面F2側が下になるように載せる。次いで、該サンプル片の上に前記の金属プレートをサンプル片全域が重なるように載置する。このように、サンプル片に50Paの荷重をかけた状態で、金属プレート上面の中心位置にレーザー照射点を合わせ、該金属プレートの高さ位置となる測定点P1を測定する。そして、基準点P0と測定点P1との差を求め、これを凸部14の最大厚みH1とする。
【0017】
凹部15の厚みH2を測定する場合、接合部13の中心を通るように切断した積層不織布10の切断面を、後述する〔繊維層における嵩密度の測定〕と同様の方法で拡大観察することにより測定する。すなわち、前記切断面の観察視野における接合部13の厚みを測定する。接合部13が水平面(試料台)に対し斜めに傾いている場合や、該接合部13が湾曲している場合、その傾いた部分又は湾曲した部分の下に位置する構成繊維が存在しない部分は、接合部13の厚みに含まない。
以上の測定を積層不織布10における任意の6箇所で行い、これらの平均値を接合部13の厚みH2とする。
【0018】
積層不織布10における接合部13の面積率は、好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上であり、また好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下であり、好ましくは5%以上30%以下、より好ましくは7%以上20%以下である。斯かる構成により、積層不織布10における液残りをより抑制することができる。
【0019】
接合部13の面積率は、以下の測定方法により求められる。積層不織布10から、20mm×20mmの大きさのサンプル片を切り出す。温度20±2℃、相対湿度65±5%の条件下でマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX-6000)を用いて、サンプル片の平面視写真を得る。該平面視写真からサンプル片20mm×20mmの範囲に含まれる接合部13について、個数を数えるとともに、平面視したときの1個当たりの面積を測定し、その面積に個数を乗じることで、サンプル片における接合部13の総面積を求める。次いで接合部13の総面積を、サンプル片の測定面積400mm2で除した(接合部13の総面積/サンプル片の測定面積)の割合(%)を求める。以上の測定を5枚のサンプル片について行い、それらの平均値を接合部13の面積率(%)とする。
【0020】
第1繊維層11及び第2繊維層12それぞれは、繊維の集合体から構成されている。第2繊維層12は、第1繊維層11よりも嵩密度が高い。これにより、積層不織布10に繊維の密度勾配が付与されて、液体の引き込み性を高めることができる。
斯かる効果をより向上させる観点から、第1繊維層11及び第2繊維層12それぞれにおける嵩密度は、以下の範囲内であることが好ましい。
第1繊維層11における嵩密度は、第2繊維層12における嵩密度に対する比(第1繊維層11における嵩密度/第2繊維層12における嵩密度)が、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.40以上であり、また好ましくは0.90以下、より好ましくは0.80であり、また好ましくは0.30以上0.90以下、より好ましくは0.40以上0.80以下である。
第1繊維層11における嵩密度は、好ましくは0.01g/cm3以上、より好ましくは0.015g/cm3以上であり、また好ましくは0.06g/cm3以下、より好ましくは0.05g/cm3以下であり、また好ましくは0.01g/cm3以上0.06g/cm3以下、より好ましくは0.015g/cm3以上0.05g/cm3以下である。
第2繊維層12における嵩密度は、好ましくは0.02g/cm3以上、より好ましくは0.03g/cm3以上であり、また好ましくは0.08g/cm3以下、より好ましくは0.07g/cm3以下であり、また好ましくは0.02g/cm3以上0.08g/cm3以下、より好ましくは0.03g/cm3以上0.07以下である。
【0021】
〔繊維層における嵩密度の測定〕
第1繊維層11及び第2繊維層12の各繊維層の嵩密度は以下の方法により測定される。先ず、積層不織布10の切断面について、温度20±2℃、相対湿度65±5%の条件下でマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、VHX-6000)を用いて以下のように観察する。積層不織布10が凹凸を有している場合、積層不織布10の最大厚みH1を有する凸部14の頂点を通るように、該積層不織布10を切断し、該積層不織布10の第2面F2側を下にした状態で、マイクロスコープの試料台上に載せる。観察は、不織布に対し50Paの圧力がかかるように、四角形のガラス基板を該積層不織布10上に載せた状態で行う。すなわち、50Paの荷重時における積層不織布10の切断面を、マイクロスコープを用いて拡大観察する。観察時の倍率は、不織布全体の厚みが画面内に収まる倍率(50~100倍)に調整する。観察時の第1繊維層11と第2繊維層12との界面として、繊維径や繊維形状が異なる2領域の境界を定め、ガラス基板面と前記界面間の高さを第1繊維層11の厚み[mm]とし、試料台面と前記界面間の高さを第2繊維層12の厚み[mm]とする。
次いで、測定対象の積層不織布10から、接合部13以外の部分を精密ばさみを用いて丁寧に切り取り、その面積を測定する。この切り取った部分を、さらに第1繊維層11と第2繊維層12とに分離して、それぞれの質量[g]を測定する。測定した各繊維層11,12の質量を、切り取った部分の面積で除することにより、第1繊維層11の坪量[g/m2]及び第2繊維層12の坪量[g/m2]を求める。
そして、各繊維層11,12の坪量[g/m2]をその坪量に該当する繊維層の厚み[mm]で除することで、各繊維層11,12の嵩密度[g/cm3]を算出する。
以上の測定を積層不織布10における任意の6箇所で行い、これらの平均値を繊維層における嵩密度とする。
【0022】
第1繊維層11及び第2繊維層12の接合性をより向上させる観点から、第1繊維層11は熱融着性繊維を含むことが好ましい。熱融着性繊維は、熱の作用によって互いに融着する繊維であり、熱可塑性樹脂を原料とする。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
また、熱融着性繊維として、低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなる複合繊維を用いてもよい。斯かる複合繊維として、芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維を用いることができる。また、芯鞘型複合繊維としては、例えば芯が高融点PET、PPで、鞘が低融点PET、PP、PEのものが挙げられる。芯鞘型複合繊維は、同心タイプであってもよく、偏心タイプであってもよい。
【0023】
エンボス加工による接合部13の形成をより容易にする観点から、第1繊維層11における熱融着性繊維の含有割合は、第1繊維層11の全質量に対して好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、また好ましくは100質量%以下であり、また好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
第1繊維層11は、一種の繊維から構成されていてもよく、2種以上を含んで構成されていてもよい。
【0024】
積層不織布10における凹凸をより形成し易くする観点から、後述するように第2繊維層12が熱収縮性繊維を含む場合、第1繊維層11は非熱収縮性繊維を含有することが好ましく、非熱収縮性繊維からなることがより好ましい。非熱収縮性繊維は、熱収縮性を示さない繊維、及び後述する第2繊維層12に含まれる熱収縮性繊維の熱収縮開始温度では実質的に熱収縮しない繊維の双方を含む。
【0025】
本実施形態の第2繊維層12は熱収縮性繊維を含んでいる。熱収縮性繊維は、熱の付与によって収縮する、熱収縮性を有する繊維である。斯かる熱収縮性繊維は、加熱処理によって熱収縮したものであるが、依然として熱収縮性を有する。熱収縮性繊維としては、前記の熱可塑性樹脂からなり且つ熱収縮性を有するものが好適に用いられる。
第1繊維層11に非熱収縮性繊維を含ませ、第2繊維層12に熱収縮性繊維を含ませることで、熱処理により、積層不織布10の第1繊維層11に凹凸を容易に形成することができる。積層不織布10の製造方法については後述する。
【0026】
本実施形態の第2繊維層12は、熱収縮性繊維として、螺旋状の捲縮繊維を含んでいる。より具体的には潜在捲縮性繊維を含んでいる。潜在捲縮性繊維は、加熱される前においては、従来の不織布用の繊維と同様に取り扱うことができ、且つ所定温度で加熱することによって螺旋状の捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維である。潜在捲縮性繊維は、例えば、収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維からなる。その例としては、特開平9-296325号公報や特許第2759331号公報に記載のものが挙げられる。
【0027】
積層不織布10における凹凸をより形成し易くする観点から、第2繊維層12における熱収縮性繊維の含有割合は、第2繊維層12の全質量に対して好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、また好ましくは100質量%以下であり、また好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
第2繊維層12は、1種の繊維から構成されていてもよく、2種以上を含んで構成されていてもよい。
【0028】
また、積層不織布10における凹凸をより形成し易くする観点から、第1繊維層11に熱伸長性繊維を含ませ、第2繊維層12に非熱伸長性繊維を含ませてもよい。すなわち、第1繊維層11が熱伸長性繊維を含有し、且つ第2繊維層12が非熱伸長性繊維を含有することが好ましく、第1繊維層11が熱伸長性繊維からなり、且つ第2繊維層12が非熱伸長性繊維からなることがより好ましい。
【0029】
熱伸長性繊維は、加熱によってその長さが伸びる繊維であり、温度が90℃以上、好ましくは、110℃~140℃で伸長する繊維である。熱伸長性繊維は、熱処理により繊維が伸長する結果、非伸長性の繊維に比べて繊維空間が大きくなる。斯かる繊維としては、例えば加熱により樹脂の結晶状態が変化して伸びる繊維、あるいは捲縮加工が施された繊維であって捲縮が解除されて見かけの長さが伸びる繊維が挙げられる。
非熱伸長性繊維は、加熱によってその長さが実質的に伸びない繊維である。
熱伸長性繊維及び非熱伸長性繊維としては、例えば、特開2005-350836号公報の段落[0013]、[0037]~[0040]に記載のもの、特開2011-127258号公報の段落[0012]、[0024]~[0046]に記載のもの等を用いることができる。
【0030】
前述の密度勾配による液体の引き込み性をより向上させる観点から、第2繊維層12は、第1繊維層11よりも構成繊維の繊度が小さいことが好ましい。上記と同様の観点から、第1繊維層11及び第2繊維層12それぞれの構成繊維の繊度は、以下の範囲内であることが好ましい。
第1繊維層11の構成繊維の繊度は、第2繊維層12の構成繊維の繊度に対する比(第1繊維層11の構成繊維の繊度/第2繊維層12の構成繊維の繊度)が、好ましくは1.01以上、より好ましくは1.03以上であり、また好ましくは8.00以下、より好ましくは5.00以下であり、また好ましくは1.01以上8.00以下、より好ましくは1.03以上5.00以下である。
第1繊維層11の構成繊維の繊度は、好ましくは1.0dtex以上、より好ましくは1.5dtex以上であり、また好ましくは8.0dtex以下、より好ましくは5.0dtex以下であり、また好ましくは1.0dtex以上8.0dtex以下、より好ましくは1.5dtex以上5.0dtex以下である。
第2繊維層12の構成繊維の繊度は、好ましくは0.5dtex以上、より好ましくは1.0dtex以上であり、また好ましくは5.0dtex以下、より好ましくは4.0dtex以下であり、また好ましくは0.5dtex以上5.0dtex以下、より好ましくは1.0dtex以上4.0dtex以下である。
【0031】
繊維の繊度は、以下の方法で測定することができる。積層不織布10を50mm×100mm(面積5000mm2)の長方形状に切り出して測定用サンプルを作製する。次いで、測定用サンプルを断面視して、測定用サンプルの第1面F1から厚さ方向に0.05mm間隔を空けた位置での標準的な繊維10本を対象として繊維太さを、電子顕微鏡を用いて実測し、繊維太さ平均値Dn(μm)を算出する。次いで、測定用サンプルの第1面F1から厚さ方向に0.05mm間隔を空けた位置での標準的な繊維の構成樹脂を特定し、示差走査熱量測定器(DSC)を用いて、理論繊維存在密度Pn(g/cm3)を求める。得られた繊維太さ平均値Dn(μm)及び理論繊維存在密度Pn(g/cm3)から、繊維長さ10,000m当たりの重さ(g)を算出して、この算出された値を第1繊維層11の構成繊維の繊度(dtex)とする。
第2繊維層12の構成繊維の繊度は、第2面F2の標準的な繊維の繊維太さ及び理論繊維存在密度Pn(g/cm3)を求める点以外は、第1面F1の構成繊維の繊度と同様の方法で求めることができる。
【0032】
第1繊維層の第1面側に凸部を形成し、より効率良く体液を透過させる観点から、積層不織布10の坪量は、好ましくは10g/m2以上、より好ましくは20g/m2以上であり、また好ましくは120g/m2以下、より好ましくは100g/m2以下であり、また好ましくは10g/m2以上120g/m2以下、より好ましくは20g/m2以上100g/m2以下である。
第1繊維層における液残りをより抑制する観点から、第1繊維層11の坪量は、好ましくは5g/m2以上、より好ましくは10g/m2以上であり、また好ましくは60g/m2以下、より好ましくは50g/m2以下であり、また好ましくは5g/m2以上60g/m2以下、より好ましくは10g/m2以上50g/m2以下である。
第2繊維層側に体液をより効率良く移行させ、第1繊維層における液残りをより抑制する観点から、第2繊維層12の坪量は、好ましくは5g/m2以上、より好ましくは10g/m2以上であり、また好ましくは60g/m2以下、より好ましくは50g/m2以下であり、また好ましくは5g/m2以上60g/m2以下、より好ましくは10g/m2以上50g/m2以下である。
【0033】
積層不織布10の第2繊維層12には、アニオン界面活性剤である以下の化合物A及び化合物Bが配されている。
化合物A:炭素数12以上22以下のヒドロキシアルカンスルホン酸塩
化合物B:炭素数12以上22以下の内部オレフィンスルホン酸塩
第2繊維層12に化合物A及び化合物Bが配されることで、第1繊維層11から第2繊維層12に向かって親水度勾配が付与される。これにより、第1繊維層11から第2繊維層12に向かって液体の引き込み性を高めることができる。
【0034】
化合物A及び化合物Bは、以下の方法によって生成することができる。まず、二重結合をオレフィン鎖の内部に有するオレフィン(以下、「内部オレフィン」という。)をスルホン化することで、定量的にβ-サルトンが生成される。このβ-サルトンの一部が、γ-サルトン、オレフィンスルホン酸へと変化し、さらにこれらが中和及び加水分解工程によって、化合物A(ヒドロキシアルカンスルホン酸塩)及び化合物B(内部オレフィンスルホン酸塩)へと転換される(例えば、J. Am. Oil Chem. Soc. 69, 39(1992))。ここで得られる化合物A、すなわちヒドロキシアルカンスルホン酸塩のヒドロキシ基は、アルカン鎖の内部にある。また、化合物B、すなわち内部オレフィンスルホン酸塩の二重結合はオレフィン鎖の内部にある(後述する式(2)を参照)。つまり、「内部オレフィンスルホン酸塩」は、炭化水素基内部に二重結合を有する不飽和スルホン酸塩を意味する。なお、内部オレフィンは、二重結合の位置が炭素鎖の1位に存在する、いわゆるα-オレフィンを微量に含有する場合も含む広義の意味である。
【0035】
カーボンニュートラルの観点から、化合物A及び化合物Bは、天然油脂由来である原料の内部オレフィン(以下、「原料内部オレフィン」ともいう。)を用いて得られることが好ましい。例えば、パーム油等の天然油脂から炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールを得た後、アルミナ等の固体触媒の存在下で該脂肪族アルコールの脱水反応を行い、炭素数12以上22以下の原料内部オレフィンを得る。そして、原料内部オレフィンに対し、スルホン化、中和、及び加水分解を行った後、その生成物から化合物A及び化合物Bを単離することで、化合物A及び化合物Bを得る。
化合物A及び化合物B(内部オレフィンスルホン酸塩)の製造方法や原料内部オレフィンとしては、特開2016-183208号公報に記載のものを用いることができる。原料内部オレフィンとしては、天然油脂由来の炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールを脱水反応させたものや、天然油脂由来の炭素数14以上22以下の脂肪酸を脱一酸化炭素反応させたもの等が挙げられる。
【0036】
化合物Aは、炭素数が12以上22以下の分布を有するヒドロキシアルカンスルホン酸塩である。化合物Aは、下記式(1)により表される化合物を含有する。後述するドライ性をより向上させる観点から、化合物Aの炭素数は、好ましくは14以上、より好ましくは16以上であり、また好ましくは20以下、より好ましくは18以下であり、また好ましくは14以上20以下、より好ましくは16以上18以下である。
下記式(1)中R1及びR2の合計の炭素数は、10以上であり、好ましくは12以上、より好ましくは14以上であり、また20以下であり、好ましくは18以下、より好ましくは16以下であり、また10以上20以下であり、好ましくは12以上18以下、より好ましくは14以上16以下である。
【0037】
【化1】
式中、Xは、H、Na、K、Mg、Ca又はアンモニウムを表す。R
1及びR
2はそれぞれ独立にアルキル基を表し、両者の合計の炭素数は10以上20以下である。
【0038】
前記式(1)において、R1及びR2で表されるアルキル基は好ましくは直鎖のものである。式(1)で表される化合物においては、-SO3Xと-OHとは、隣接する炭素原子にそれぞれ結合しており、且つ-SO3Xがアルキル鎖の末端に位置することはなく、同様に-OHもアルキル鎖の末端に位置することはない。
化合物Aは、アルキル鎖における-SO3X及び-OHの結合位置が様々である複数の異性体を包含するものである。第2繊維層12には、複数の異性体のうち、1種のみが配されてもよく、2種以上の異性体が配されてもよい。
【0039】
第2繊維層12には、化合物Aとして、炭素数が一種類のヒドロキシアルカンスルホン酸塩が配されてもよく、炭素数が2種類以上のヒドロキシアルカンスルホン酸塩が配されてもよい。
【0040】
積層不織布10におけるドライ性をより向上させる観点から、第2繊維層12に、化合物Aとして、下記の化合物A1及び化合物A2の何れか一方又は双方が配されていることが好ましい。
化合物A1:炭素数が16であるヒドロキシアルカンスルホン酸塩
化合物A2:炭素数が18であるヒドロキシアルカンスルホン酸塩
すなわち、第2繊維層12には、化合物Aとして、化合物A1及び化合物A2の何れかが配されているか、あるいは化合物A1及び化合物A2の双方が配されていることが好ましい。後述する積層不織布10のドライ性をより向上させる観点から、第2繊維層12には、化合物Aとして、化合物A1及び化合物A2の何れか一方が配されていることがより好ましい。
【0041】
第2繊維層12に、化合物Aとして化合物A1及び化合物A2の双方が配されている場合、第2繊維層12側に体液をより効率良く移行させ、第1繊維層11における液残りをより抑制する観点から、第2繊維層12における化合物A1と化合物A2との含有割合の比(A1:A2)は、好ましくは2:1~1:2、より好ましくは3:2~2:3である。
【0042】
化合物Bは、炭素数が12以上22以下の分布を有する内部オレフィンスルホン酸塩である。化合物Bは、下記式(2)により表される化合物を含有する。後述するドライ性をより向上させる観点から、化合物Bの炭素数は、好ましくは14以上、より好ましくは16以上であり、また好ましくは20以下、より好ましくは18以下であり、また好ましくは14以上20以下、より好ましくは16以上18以下である。
下記式(2)中R3及びR4の合計の炭素数は、9以上であり、好ましくは11以上、より好ましくは13以上であり、また19以下であり、好ましくは17以下、より好ましくは15以下であり、また9以上19以下であり、好ましくは11以上17以下、より好ましくは13以上15以下である。
【0043】
【化2】
式中、Xは、H、Na、K、Mg、Ca又はアンモニウムを表す。R
3及びR
4はそれぞれ独立にアルキル基を表し、両者の合計の炭素数は9以上19以下である。
【0044】
前記式(2)において、R3及びR4で表されるアルキル基は好ましくは直鎖のものである。式(2)で表される化合物においては、-SO3Xは、隣接する炭素原子に結合しており、且つ-SO3Xがアルキル鎖の末端に位置することはない。
化合物Bは、アルキル鎖における-SO3Xの結合位置が様々である複数の異性体を包含するものである。第2繊維層12には、複数の異性体のうち、1種のみが配されてもよく、2種以上の異性体が配されてもよい。
【0045】
第2繊維層12には、化合物Bとして、炭素数が一種類の内部オレフィンスルホン酸塩が配されてもよく、炭素数が2種類以上の内部オレフィンスルホン酸塩が配されてもよい。
【0046】
積層不織布10におけるドライ性をより向上させる観点から、第2繊維層12には、化合物Bとして、下記の化合物B1及び化合物B2の何れか一方又は双方が配されていることが好ましい。
化合物B1:炭素数が16である内部オレフィンスルホン酸塩
化合物B2:炭素数が18である内部オレフィンスルホン酸塩
すなわち、第2繊維層12には、化合物Bとして、化合物B1及び化合物B2の何れかが配されているか、あるいは化合物B1及び化合物B2の双方が配されていることが好ましい。積層不織布10のドライ性をより向上させる観点から、第2繊維層12には、化合物Bとして、化合物B1及び化合物B2の何れか一方が配されていることがより好ましい。
上記と同様の観点から、第2繊維層12における化合物B1と化合物B2との含有割合の比(B1:B2)は、好ましくは2:1~1:2、より好ましくは3:2~2:3である。
【0047】
第2繊維層12には、化合物A及び化合物Bが配されている。これら化合物A及び化合物Bは、第2繊維層12を構成する繊維の表面に付着した状態で存在し得る。
積層不織布10における液残りをより抑制させる観点から、第2繊維層12における化合物Bに対する化合物Aの質量比(A/B)は、好ましくは2.0以上12.0以下である。上記と同様の観点から、第2繊維層12における前記質量比(A/B)は、より好ましくは3.0以上、さらに好ましくは3.5以上、さらにより好ましくは4.0以上であり、またより好ましくは10.0以下、さらに好ましくは8.0以下、さらにより好ましくは7.0以下であり、またより好ましくは3.0以上10.0以下、さらに好ましくは3.5以上8.0以下、さらにより好ましくは4.0以上7.0以下である。
【0048】
化合物A及び化合物Bそれぞれは、その分子内に、油と馴染みやすい親油基(炭素原子数12以上22以下のアルキル鎖)と、水に馴染みやすい親水基を併せ持っている。化合物Aは、親油基の中間部に親水基を有している。本発明者らは、第1繊維層11よりも嵩密度が高い第2繊維層12に、化合物A及び化合物Bを配した場合、第1繊維層11から第2繊維層12へ液体を効果的に引き込むことを見出した。特に、経血のように高粘度の液体に対して優れた引き込み性を示すことを見出した。これにより、積層不織布10の第1面F1における液残りが抑制されるので、該第1面F1におけるドライ性が良好となる。斯かる積層不織布10を、ナプキン等の吸収性物品が具備する表面シートに用いると、経血等の液体の吸収後においてもドライ性に優れ、良好な着用感が得られる。
【0049】
第2繊維層12における化合物Aの付着率、すなわち第2繊維層12の全質量に対する化合物Aの質量の含有割合は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上であり、また好ましくは5.00質量%以下、より好ましくは2.00質量%以下であり、また好ましくは0.05質量%以上5.00質量%以下、より好ましくは0.10質量%以上2.00質量%以下である。積層不織布10の全質量は、積層不織布10そのものの質量とともに、化合物A及び化合物B等の付着物の質量を含む。
第2繊維層12における化合物Bの付着率、すなわち第2繊維層12の全質量に対する化合物Bの質量の含有割合は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上であり、また好ましくは5.00質量%以下、より好ましくは2.00質量%以下であり、また好ましくは0.01質量%以上5.00質量%以下、より好ましくは0.02質量%以上2.00質量%以下である。
【0050】
第2繊維層12における化合物A及び化合物Bを含む処理剤の付着率、すなわち第2繊維層12の全質量に対する当該処理剤の質量の含有割合は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上であり、また好ましくは10.00質量%以下、より好ましくは4.00質量%以下であり、また好ましくは0.05質量%以上10.00質量%以下、より好ましくは0.10質量%以上4.00質量%以下である。
【0051】
化合物A及び化合物Bや、後述する他の化合物が配された積層不織布10において、これら各化合物の有無や付着率、含有割合等を分析する場合は、次の手順に従って分析することが好ましい。まず、積層不織布10から、分析対象の層(第1繊維層11又は第2繊維層12)の構成繊維を取り出す。第1繊維層11の構成繊維は、積層不織布10の第1面F1から取り出し、第2繊維層12の構成繊維は第2面F2から取り出す。次いで、取り出した繊維を適切な溶媒で洗浄する。洗浄用溶媒としては、例えば、エタノールとメタノールとの混合溶媒、エタノールと水との混合溶媒が挙げられる。
次に、分析対象の不織布を洗浄するのに用いた溶媒(繊維処理剤を含む洗浄用溶媒)を乾燥させ、その残渣を定量することで、該不織布に付着していた化合物の総量が測定できる。また、この残渣について、その構成物に合わせて適切なカラム及び溶媒を選択した上で、それぞれの成分を高速液体クロマトグラフィーで分画し、さらに各画分についてMS測定、NMR測定、元素分析等を行うことで、各画分の構造を同定することができる。また、積層不織布10が高分子化合物を含む場合には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの手法を併用することで、構成成分の同定を行うことがより容易になる。
【0052】
化合物A及び化合物Bそれぞれは、例えば、以下の方法により分析することができる。前記残渣に50体積%エタノール水溶液及び石油エーテルを添加し、よく振とうし、静置後、石油エーテル相とエタノール水相とに分相する。この石油エーテル相を、ガスクロマトグラフィーを用いて下記条件により分析し、ピーク面積から内部オレフィンを定量する。また、エタノール水相を、HPLC-MSを用いて下記条件により分析し、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩(化合物A)と内部オレフィンスルホン酸塩(化合物B)を分離定量する。
【0053】
・ガスクロマトグラフィー条件
装置:Agilent 6850GC(アジレントテクノロジー社製)
カラム:Ultra Alloy UA+-1(HT)キャピラリーカラム 15m×250μm×0.15μm(フロンティア・ラボ株式会社製)
検出器:水素炎イオン検出器(FID)
インジェクション温度:300℃
ディテクター温度:350℃
He流量:3.8mL/min
【0054】
・HPLC-MS条件
HPLCによりヒドロキシアルカンスルホン酸塩と内部オレフィンスルホン酸塩を分離し、それぞれをMSにかけることでこれら化合物を同定することができる。このHPLC-MSピーク面積から、付着率や化合物A及び化合物Bの各々の含有割合を求めてもよい。
HPLC-MS装置:Agilent 1100 LC/MSD Model G1946D Mass Spectrometer(アジレントテクノロジー社製)
カラム:L-column ODS(一般財団法人化学物質評価研究機構製、粒子径5μm、4.6×150mm)
サンプル調製:メタノールで1000倍希釈
溶離液A:10mM酢酸アンモニウム水溶液
溶離液B:10mM酢酸アンモニウムメタノール溶液
グラジェント条件:開始時(溶離液A/溶離液B=30/70(体積比))→10分(30/70)→55分(0/100)→65分(0/100)→66分(30/70)→75分(30/70)
MS検出:陰イオン検出 m/z60~1600、UV240nm
【0055】
積層不織布10が、生理用品又は子ども用若しくは大人用使い捨ておむつのごとき、吸収性物品の構成部材である場合は、吸収性物品において積層不織布10と他の部材との接合に用いられている接着剤をドライヤー等の加熱手段で加熱することで溶融軟化させた後に、該積層不織布10を剥がして、該積層不織布10を取り出す。
【0056】
第2繊維層12の構成繊維に、化合物A及び化合物Bを含む処理剤が適用されることで、第2繊維層12に化合物A及び化合物Bを配することができる。処理剤を構成繊維の表面に付着させる方法(適用方法)としては、各種公知の方法を特に制限なく採用することができる。例えば、スプレーによる塗布、スロットコーターによる塗布、ロール転写による塗布、処理剤への浸漬等が挙げられる。これらの処理は、ウエブ化する前の繊維に対して行ってもよいし、繊維を各種の方法でウエブ化した後に行ってもよい。第2繊維層12の構成繊維に化合物A及び化合物Bを含む処理剤を適用することで、該構成繊維は親水化処理される。
積層不織布10における化合物A及び化合物Bの付着量(付着率)は、これら化合物A及び化合物Bを含む前記処理剤の組成や該処理剤の塗布量により調整してもよい。
【0057】
前記処理剤は、化合物A及び化合物B以外の成分を含有していてもよい。すなわち、第2繊維層12には、化合物A及び化合物Bに加えて他の化合物が配されていてもよい。この場合、他の化合物も、第2繊維層12を構成する繊維の表面に付着した状態で存在し得る。
この他の化合物について、以下に詳述する。以下の説明において、第2繊維層12における化合物A、化合物B及び他の化合物の含有割合や含有量(付着率)は、処理剤における化合物A、化合物B及び他の化合物の組成や、該処理剤の塗布量により調整してもよい。
【0058】
ドライ性をより向上させる観点から、第2繊維層12には、化合物A及び化合物Bに加え、さらにリン酸エステル型のアニオン界面活性剤及びシリコーン化合物の一方又は双方が配されていることが好ましい。リン酸エステル型のアニオン界面活性剤及びシリコーン化合物は、積層不織布10を加工する際の帯電防止性や耐摩擦性にも寄与する。
【0059】
リン酸エステル型のアニオン界面活性剤としては、例えばアルキルリン酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩等を用いることができる。アルキルリン酸エステル塩におけるアルキル基としては、炭素原子数が例えば8以上22以下の直鎖アルキル基が挙げられる。このアルキル基は、例えばポリオキシアルキレン基によって変性されていてもよい。また、アルキルエーテルリン酸エステル塩としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられる。
液の引き込み性をより向上させる観点から、アルキルリン酸エステル塩又はアルキルエーテルリン酸エステル塩の塩としては、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好ましく、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム又はアンモニウムから選ぶことができ、カリウム塩が好ましい。
リン酸エステル型のアニオン界面活性剤は、上述したもののうち、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
シリコーン化合物としては、例えばジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、及びアミノ変性シリコーン等が挙げられる。シリコーン化合物は、これらの一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
液の引き込み性をより向上させる観点から、第2繊維層12に、シリコーン化合物として、ポリエーテル変性シリコーンが配されていること好ましい。ポリエーテル変性シリコーンは、ポリオキシアルキレン基(ポリエーテル鎖)で変性されたシリコーンである。該ポリオキシアルキレン基としては、例えばポリオキシエチレン(POE)基、ポリオキシプロピレン(POP)基及びポリオキシブチレン(POB)基並びにこれらの基を構成する単量体から2種以上を重合して得られる基等を挙げることができる。
【0061】
上記と同様の観点から、化合物A及び化合物Bに加え、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤及びシリコーン化合物から選ばれる一種又は二種以上の剤とが、第2繊維層12に付着した状態である場合、第2繊維層12における化合物A、化合物B、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤及びシリコーン化合物の各含有量(付着率)は、以下の範囲内であることが好ましい。
第2繊維層12では、化合物A及び化合物Bの合計100質量部に対して、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤の含有割合が、好ましくは30質量部以上、より好ましくは75質量部以上であり、また好ましくは900質量部以下、より好ましくは400質量部以下であり、好ましくは30質量部以上900質量部以下、より好ましくは75質量部以上400質量部以下である。
第2繊維層12では、化合物A及び化合物Bの合計100質量部に対して、シリコーン化合物の含有割合が、好ましくは30質量部以上、より好ましくは75質量部以上であり、また好ましくは400質量部以下、より好ましくは200質量部以下であり、また好ましくは30質量部以上400質量部以下、より好ましくは75質量部以上200質量部以下である。
第2繊維層12におけるリン酸エステル型のアニオン界面活性剤の付着率は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上であり、また好ましくは2.00質量%以下、より好ましくは1.00質量%以下であり、また好ましくは0.05質量%以上2.00質量%以下、より好ましくは0.10質量%以上1.00質量%以下である。
第2繊維層12におけるシリコーン化合物の付着率は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上であり、また好ましくは1.00質量%以下、より好ましくは0.50質量%以下であり、また好ましくは0.05質量%以上1.00質量%以下、より好ましくは0.10質量%以上0.50質量%以下である。
【0062】
化合物A、化合物B、及び上述した他の化合物それぞれは、第2繊維層12の厚み方向の全域に存在していてもよく、あるいは厚み方向の一部分、例えば第2面F2側にのみ存在していてもよい。
【0063】
第1繊維層11にも、化合物Aや化合物B、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤等の化合物が配されていてもよい。この場合、各化合物は、第1繊維層11を構成する繊維の表面に付着した状態で存在し得る。各化合物は、これを含む処理剤を第1繊維層11の構成繊維に適用することで、該第1繊維層11に配される。適用方法は前述した方法を用いることができる。
【0064】
第1繊維層11にも、化合物Aや化合物Bが配される場合、第1繊維層11におけるこれら化合物の付着率は以下の範囲内であることが好ましい。
第1繊維層11における化合物Aの付着率、すなわち第1繊維層11の全質量に対する化合物Aの質量の含有割合は、好ましくは2.00質量%以下、より好ましくは1.00質量%以下であり、実質含まないことがさらに好ましい。
積層不織布10の全質量は、積層不織布10そのものの質量とともに、化合物A及び化合物B等の付着物の質量を含む。
第1繊維層11における化合物Bの付着率、すなわち第1繊維層11の全質量に対する化合物Bの質量の含有割合は、好ましくは2.00質量%以下、より好ましくは1.00質量%以下であり、実質含まないことがさらに好ましい。
化合物A又は化合物Bの含有割合について、「実質的に含まない」とは、好ましくは0.50質量%未満であることをいい、より好ましくは0.10質量%未満、さらに好ましくは0.01質量%未満であることをいう。
【0065】
第1繊維層11における化合物A及び化合物Bを含む処理剤の付着率、すなわち第1繊維層11の全質量に対する当該処理剤の質量の含有割合は、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上であり、また好ましくは4.00質量%以下、より好ましくは2.00質量%以下であり、好ましくは0.02質量%以上4.00質量%以下、より好ましくは0.10質量%以上2.00質量%以下である。
【0066】
液の引き込み性をより向上させる観点から、第1繊維層11に、前述のリン酸エステル型のアニオン界面活性剤及びシリコーン化合物の一方又は双方が配されていることが好ましい。上記と同様の観点から、第1繊維層11におけるリン酸エステル型のアニオン界面活性剤及びシリコーン化合物の各付着率は以下の範囲内であることが好ましい。
第1繊維層11におけるリン酸エステル型のアニオン界面活性剤の付着率は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上であり、また好ましくは2.00質量%以下、より好ましくは1.00質量%以下であり、また好ましくは0.05質量%以上2.00質量%以下、より好ましくは0.10質量%以上1.00質量%以下である。
第1繊維層11におけるシリコーン化合物の付着率は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上であり、また好ましくは2.00質量%以下、より好ましくは1.00質量%以下であり、また好ましくは0.05質量%以上2.00質量%以下、より好ましくは0.10質量%以上1.00質量%以下である。
【0067】
上記と同様の観点から、第1繊維層11に、ジアルキルスルホン酸及びベタイン型界面活性剤の何れか一方又は双方が配されていることが好ましい。
ジアルキルスルホン酸の具体例としては、ジオクチルスルホコハク酸、ジデシルスルホコハク酸、ジトリデシルスルホコハク酸等が挙げられ、これらの一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
ベタイン型界面活性剤としては、アルキルベタイン型界面活性剤、アミドプロピルベタイン型界面活性剤、スルホベタイン型界面活性剤、イミドゾリニウムベタイン型界面活性剤、カルボベタイン型界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤等が挙げられ、これらの一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。積層不織布10におけるドライ性をより向上させる観点から、ベタイン型界面活性剤として、カルボベタイン型界面活性剤を用いることが好ましい。
【0068】
液の引き込み性をより向上させる観点から、第1繊維層11におけるジアルキルスルホン酸及びベタイン型界面活性剤の各付着率は以下の範囲内であることが好ましい。
第1繊維層11におけるジアルキルスルホン酸の付着率は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上であり、また好ましくは1.00質量%以下、より好ましくは0.50質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以上1.00質量%以下、より好ましくは0.02質量%以上0.50質量%以下である。
第1繊維層11におけるベタイン型界面活性剤の付着率は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上であり、また好ましくは1.00質量%以下、より好ましくは0.50質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以上1.00質量%以下、より好ましくは0.02質量%以上0.50質量%以下である。
【0069】
第1繊維層11に上述した化合物を配する場合、該化合物の含有割合や含有量(付着率)は、処理剤における他の化合物の組成や、該処理剤の塗布量により調整してもよい。
また、上述した化合物それぞれは、第1繊維層11の厚み方向の全域に存在していてもよく、あるいは厚み方向の一部分、例えば第1面F1側にのみ存在していてもよい。
【0070】
親水度勾配をより容易に付与して、液の引き込み性をより向上する観点から、第1繊維層11には、第2繊維層12に比して少量の化合物A及び化合物Bが配されていることが好ましく、化合物A及び化合物Bが配されていないことがより好ましい。
【0071】
次に、本発明の積層不織布10の好適な製造方法を、
図1に示す実施形態を例に説明する。第1繊維層11が非熱収縮性繊維を含み、第2繊維層12が熱収縮性繊維を含む場合、積層不織布10は、例えば以下の方法により製造できる。先ず、第2繊維層12の構成繊維となる繊維の表面に、化合物A及び化合物Bを適用する。次いで、当該繊維からなるウエブと、非熱収縮性繊維を含むウエブとを積層し、これにエンボス加工を施して両ウエブを部分的に接合する。これにより、2個のウエブが積層した積層体が得られる。次いで、前記積層体に対し熱処理を施す。熱処理は、第2繊維層12に含まれる熱収縮性繊維の熱収縮開始温度以上の温度に設定する。斯かる熱処理には、恒温乾燥機やエアスルー熱処理機を用いることができる。この熱処理により、第2繊維層12の構成繊維を収縮させ、接合部13によって取り囲まれた領域に位置する第1繊維層11を第1面F1側に突出させて、凹凸(三次元的立体形状)を形成する。このようにして、第1面F1側に凹凸を有する、積層不織布10が得られる。
【0072】
また、第1繊維層11が熱伸長性繊維を含み、第2繊維層12が非熱伸長性繊維を含む場合、積層不織布10は、例えば以下の方法により製造できる。先ず、非熱伸長性繊維の表面に、化合物A及び化合物Bを適用する。次いで、当該非熱伸長性繊維を含むウエブと、熱伸長性繊維を含むウエブとを積層し、これにエンボス加工を施して両ウエブを部分的に接合する。これにより、2個のウエブが積層した積層体が得られる。積層体における非熱伸長性繊維を含むウエブは第2繊維層12となり、熱伸長性繊維を含むウエブは第1繊維層11となる。
次いで、前記積層体に対し、第1繊維層11に含まれる熱伸長性繊維の熱伸長開始温度以上の温度で熱処理を施す。熱処理には、恒温乾燥機やエアスルー熱処理機を用いることができる。斯かる熱処理により、第1繊維層11の構成繊維を伸長させ、接合部によって取り囲まれた領域に位置する第1繊維層11を第1面F1側に突出させて、凹凸(三次元的立体形状)を形成する。このようにして、第1面F1側に凹凸を有する、積層不織布10が得られる。
【0073】
本発明の積層不織布は
図1に示す実施形態に限定されない。以下に、本発明に係る積層不織布の別の実施形態について説明する。以下では、
図2~
図7に示す実施形態について、
図1に示す実施形態と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、
図1に示す実施形態についての説明が適宜適用される。
【0074】
図2に示す積層不織布10aにおいては、積層された第1繊維層11及び第2繊維層12が、複数の接合部13において互いに接合されており、且つ第1繊維層11が、接合部13以外の部位において第2繊維層12から離れる方向に突出して凸部14を形成している。これにより、凸部14は内部が中空構造になっている。接合部13は、凹部15を形成している。凸部14及び凹部15は、積層不織布10aの平面方向に散点状に配されている。より詳細には、互いに直交する二方向(
図2中、X方向及びY方向)それぞれに、凸部14及び凹部15が分散した状態に形成されており、X方向及びY方向それぞれにおいて、凸部14と凹部15とが交互に並んだ列が複数列形成されている。
【0075】
図2に示す積層不織布10aは、特開2015-112343号公報に記載の方法と同様にして、凹凸変形させた第1繊維層11を、第2繊維層12に積層し、これにエンボス加工を施して両繊維層11,12を接合することで製造できる。第1繊維層11は、周面が互いに噛み合い形状となっている第1ロールと第2ロールとの間に供給することで、凹凸形状に変形させることができる。
【0076】
図3(a)及び(b)に示す積層不織布10bは、第1面F1及び第2面F2の双方に凹凸形状を有しており、第1面F1の凹凸形状が、第2面F2の凹凸形状に対応している。より具体的には、積層不織布10bは、第1面F1側において凸部14及び凹部15と、第2面F2側において裏側凸部17及び裏側凹部16を有している。第1面F1側における凸部14は、第1面F1側に突出し且つ第2面F2側に開放された空間が形成されている。第1面F1側における凹部15は、第2面F2側に突出し且つ第1面F1側に開放された空間が形成されている。そして、第1面F1側における凹部15の第2面F2側が、該第2面側に突出する裏側凸部17となっており、第1面F1側における凸部14の第2面F2側が、該第1面側に突出する裏側凹部16となっている。
本実施形態の積層不織布10bは、
図3(b)に示すように、積層された第1繊維層11及び第2繊維層12が一体となって、第1面F1の凹凸及び第2面F2の凹凸を形成している。
【0077】
図3(a)及び(b)に示す積層不織布10bは、特開2013-124428号公報に記載の方法と同様の方法で製造できる。具体的には、凹凸形状を有し且つ通気性を有する支持体上に、熱融着性繊維を含む第1繊維層11となるウエブを配置し、該支持体とは反対側から該ウエブに熱風(以下、「第1の熱風」ともいう。)を吹き付けて、該ウエブを支持体の凹凸形状に沿って賦形させる。次いで、この賦形されたウエブに対し、該支持体上で第1の熱風よりも高温度の第2の熱風を吹き付けて、該ウエブの繊維同士を融着させることにより賦形形状を固定し、凹凸賦形された第1繊維層11を製造する。次いで、熱融着性繊維を含む第2繊維層12となるウエブを、第1繊維層11に積層し、熱風を吹き付けて、第1繊維層11の凹凸形状に沿わせながら、該ウエブの繊維同士を熱融着し、第1繊維層11及び第2繊維層12が接合されてなる積層不織布10bを製造する。
【0078】
図4に示す積層不織布10cは、第1面F1側に畝溝形状を有している。より具体的には、積層不織布10cは、凸条部14aと、該凸条部14aに比して厚みが薄い凹条部15aとを有している。凸条部14a及び凹条部15aそれぞれは、一方向(
図4中Y方向)に延びており、これらの延在方向と直交する方向(
図4中X方向)に凸条部14a及び凹条部15aが交互に並んで配されている。凸条部14aが凸部となり且つ凹条部15aが凹部となることで、積層不織布10cは、第1面F1側に凹凸形状を有する一方、第2面F2側は平坦となっている。
【0079】
図5(a)及び(b)に示す積層不織布10dは、第1面F1及び第2面F2の双方に畝溝形状を有しており、第1面F1の畝溝形状が、第2面F2の畝溝形状に対応している。より具体的には、積層不織布10dは、第1面F1側において凸条部14a及び凹条部15aと、第2面F2側において裏側凸条部17a及び裏側凹条部16aを有している。第1面F1側における凸条部14aは、第1面F1側に突出し且つ第2面F2側に開放された空間が形成されている。第1面F1側における凹条部15aは、第2面F2側に突出し且つ第1面F1側に開放された空間が形成されている。そして、第1面F1側における凹条部15aの第2面F2側が、該第2面側に突出する裏側凸条部17aとなっており、第1面F1側における凸条部14aの第2面F2側が、該第1面側に突出する裏側凹条部16aとなっている。
凸条部14a及び凹条部15a、並びに裏側凸条部17a及び裏側凹条部16aそれぞれは、一方向〔
図5(a)中Y方向〕に延びている。第1面F1側では、凸条部14a及び凹条部15aの延在方向と直交する方向〔
図5(a)中X方向〕に凸条部14a及び凹条部15aが交互に並んで配されている。これと同様に、第2面F2側では、裏側凸条部17a及び裏側凹条部16aの延在方向と直交する方向〔
図5(a)中X方向〕に裏側凸条部17a及び裏側凹条部16aが交互に並んで配されている。
本実施形態の積層不織布10dは、
図5(b)に示すように、積層した第1繊維層11及び第2繊維層12が一体となって第1面F1の畝溝形状、及び第2面F2の畝溝形状を形成している。
【0080】
図6(a)及び(b)に示す積層不織布10eは、第1面F1側に、複数の凸部14と、これを囲む線状の凹部15とを有している。斯かる凹部15は格子状に配置されており、該格子状の凹部15で区画される各領域に凸部14が形成されている。
図6(b)に、本実施形態の積層不織布10eにおける凸部14の拡大断面図を示す。斯かる実施形態では、凸部14の内部が第1繊維層11及び第2繊維層12の各構成繊維で満たされた中実構造となっており、主に第1繊維層11が第1面F1側に突出している。また、凹部15は、第1繊維層11及び第2繊維層12の各構成繊維が圧密化され接合された接合部を含んでいる。
【0081】
図7(a)及び(b)に示す積層不織布10fは、第1面F1側に、複数の凸部14と複数の凹部15とを有しており、該凸部14が千鳥格子状に配列されている。斯かる凸部14は、略円形の形状を有しており、その頂部が平面視における該凸部14の中央に位置している。また、凸部14は、第1繊維層11と第2繊維層12との間に中空の空間が形成された中空構造を有している〔
図7(b)参照〕。
【0082】
本発明の積層不織布10は、吸収性物品の構成部材として好ましく用いることができる。吸収性物品は、一般的に、体液を吸収保持する吸収体と、該吸収体よりも肌対向面側に配され、着用者の肌と接触し得る表面シートと、該吸収体よりも非肌対向面側に配された裏面シートとを備えている。
吸収性物品は、表面シートとして前述の積層不織布10を備えていることが好ましい。斯かる構成により、表面シート上に経血等の体液が残る液残りが抑制されるので、優れたドライ性が得られる。斯かるドライ性をより確実に奏させる観点から、吸収性物品において積層不織布10は、第1繊維層11側の面が肌対向面となるように配されていることが好ましい。
【0083】
前記「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面である。前記「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側に向けられる面である。つまり、肌対向面は、着用者の肌に相対的に近い側の面であり、非肌対向面は、着用者の肌から相対的に遠い側の面である。「着用時」及び「着用状態」は、通常の適正な着用位置、すなわち吸収性物品の適正な着用位置が維持されて着用された状態を意味する。
【0084】
本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。
例えば、上述した実施形態において、積層不織布10は、第1繊維層11及び第2繊維層12からなる二層構造を有するものであったが、3層以上の積層構造を有していてもよい。この場合、液の引き込み性をより向上させる観点から、第1繊維層11及び第2繊維層12の間に、他の層を有することが好ましい。
【0085】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の積層不織布及びこれを備える吸収性物品を開示する。
<1>
第1繊維層と、これに積層された第2繊維層との少なくとも2層を有する積層不織布であって、
前記第2繊維層は、前記第1繊維層よりも嵩密度が高く、
前記第2繊維層に、以下の化合物A及び化合物Bが配されている、積層不織布。
化合物A:炭素数12以上22以下のヒドロキシアルカンスルホン酸塩
化合物B:炭素数12以上22以下の内部オレフィンスルホン酸塩
【0086】
<2>
前記第2繊維層に、さらにリン酸エステル型のアニオン界面活性剤及びシリコーン化合物の一方又は双方が配されている、前記<1>に記載の積層不織布。
<3>
前記化合物Aは、下記式(1)により表される化合物を含有する、前記<1>又は<2>に記載の積層不織布。
【化3】
式中、Xは、H、Na、K、Mg、Ca又はアンモニウムを表す。R
1及びR
2はそれぞれ独立にアルキル基を表し、両者の合計の炭素数は10以上20以下である。
<4>
前記第2繊維層に、前記化合物Aとして、以下の化合物A1及び化合物A2の一方又は双方が配されている、前記<1>~<3>の何れか1に記載の積層不織布。
化合物A1:炭素数が16であるヒドロキシアルカンスルホン酸塩
化合物A2:炭素数が18であるヒドロキシアルカンスルホン酸塩
<5>
前記第2繊維層に、前記化合物A1及び前記化合物A2の双方が配されており、該第2繊維層における該化合物A1と該化合物A2との含有割合の比(A1:A2)が、2:1~1:2、好ましくは3:2~2:3である、前記<4>に記載の積層不織布。
<6>
前記化合物Bは、下記式(2)により表される化合物を含有する、前記<1>~<5>の何れか1に記載の積層不織布。
【化4】
式中、Xは、H、Na、K、Mg、Ca又はアンモニウムを表す。R
3及びR
4はそれぞれ独立にアルキル基を表し、両者の合計の炭素数は9以上19以下である。
<7>
前記第2繊維層に、前記化合物Bとして、以下の化合物B1及び化合物B2の一方又は双方が配されている、前記<1>~<6>の何れか1に記載の積層不織布。
化合物B1:炭素数が16である内部オレフィンスルホン酸塩
化合物B2:炭素数が18である内部オレフィンスルホン酸塩
<8>
前記第2繊維層に、前記化合物B1及び前記化合物B2の双方が配されており、該第2繊維層における該化合物B1と該化合物B2との含有割合の比(B1:B2)が、2:1~1:2、好ましくは3:2~2:3である、前記<7>に記載の積層不織布。
<9>
前記第2繊維層における前記化合物Bに対する前記化合物Aの質量比(A/B)は、2.0以上12.0以下であり、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.5以上、さらに好ましくは4.0以上であり、また好ましくは10.0以下、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.0以下であり、また好ましくは3.0以上10.0以下、より好ましくは3.5以上8.0以下、さらに好ましくは4.0以上7.0以下である、前記<1>~<8>の何れか1に記載の積層不織布。
<10>
前記第2繊維層における前記化合物A及び前記化合物Bを含む処理剤の付着率は、0.05質量%以上、好ましくは0.10質量%以上であり、また10.00質量%以下、好ましくは4.00質量%以下であり、また0.05質量%以上10.00質量%以下、好ましくは0.10質量%以上4.00質量%以下である、前記<1>~<9>の何れか1に記載の積層不織布。
【0087】
<11>
前記第2繊維層に、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤が配されており、
前記第2繊維層における前記リン酸エステル型のアニオン界面活性剤の付着率は、0.05質量%以上、好ましくは0.10質量%以上であり、また2.00質量%以下、好ましくは1.00質量%以下であり、また0.05質量%以上2.00質量%以下、好ましくは0.10質量%以上1.00質量%以下である、前記<1>~<9>の何れか1に記載の積層不織布。
<12>
前記第2繊維層に、シリコーン化合物が配されており、
前記第2繊維層における前記シリコーン化合物の付着率は、0.05質量%以上、好ましくは0.10質量%以上であり、また1.00質量%以下、好ましくは0.50質量%以下であり、また0.05質量%以上1.00質量%以下、好ましくは0.10質量%以上0.50質量%以下である、前記<1>~<11>の何れか1に記載の積層不織布。
<13>
前記第1繊維層には、前記第2繊維層に比して少量の前記化合物A及び前記化合物Bが配されているか、又は前記化合物A及び前記化合物Bが配されていない、前記<1>~<12>の何れか1に記載の積層不織布。
<14>
前記第1繊維層における前記化合物Aの付着率は、2.00質量%以下、好ましくは1.00質量%以下であり、実質含まないことがより好ましい、前記<13>に記載の積層不織布。
<15>
前記第1繊維層に、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤が配されており、
前記第1繊維層における前記リン酸エステル型のアニオン界面活性剤の付着率は、0.05質量%以上、好ましくは0.10質量%以上であり、また2.00質量%以下、好ましくは0.50質量%以下であり、また0.05質量%以上2.00質量%以下、好ましくは0.10質量%以上0.50質量%以下である、前記<1>~<14>の何れか1に記載の積層不織布。
<16>
前記第1繊維層に、シリコーン化合物が配されており、
前記第1繊維層における前記シリコーン化合物の付着率は、0.05質量%以上、好ましくは0.10質量%以上であり、また2.00質量%以下、好ましくは0.50質量%以下であり、また0.05質量%以上2.00質量%以下、好ましくは0.10質量%以上0.50質量%以下である、前記<1>~<15>の何れか1に記載の積層不織布。
<17>
前記第1繊維層に、ジアルキルスルホン酸及びベタイン型界面活性剤の何れか一方又は双方が配されている、前記<1>~<16>の何れか1に記載の積層不織布。
<18>
前記第1繊維層における嵩密度は、前記第2繊維層における嵩密度に対する比(前記第1繊維層における嵩密度/前記第2繊維層における嵩密度)が、0.30以上0.90以下、好ましくは0.40以上0.80以下である、前記<1>~<17>の何れか1に記載の積層不織布。
<19>
前記第2繊維層は、前記第1繊維層よりも構成繊維の繊度が小さい、前記<1>~<18>の何れか1に記載の積層不織布。
<20>
前記第1繊維層の構成繊維の繊度は、前記第2繊維層の構成繊維の繊度に対する比(前記第1繊維層の構成繊維の繊度/前記第2繊維層の構成繊維の繊度)が、1.01以上8.00以下、好ましくは1.03以上5.00以下である、前記<19>に記載の積層不織布。
【0088】
<21>
前記積層不織布10の坪量は、10g/m2以上、好ましくは20g/m2以上であり、また120g/m2以下、好ましくは100g/m2以下であり、また10g/m2以上120g/m2以下、好ましくは20g/m2以上100g/m2以下である、前記<1>~<20>の何れか1に記載の積層不織布。
<22>
前記第1繊維層の坪量は、5g/m2以上、好ましくは10g/m2以上であり、また60g/m2以下、好ましくは50g/m2以下であり、また5g/m2以上60g/m2以下、好ましくは10g/m2以上50g/m2以下である、前記<1>~<21>の何れか1に記載の積層不織布。
<23>
前記第2繊維層の坪量は、5g/m2以上、好ましくは10g/m2以上であり、また60g/m2以下、好ましくは50g/m2以下であり、また5g/m2以上60g/m2以下、好ましくは10g/m2以上50g/m2以下である、前記<1>~<22>の何れか1に記載の積層不織布。
<24>
前記第2繊維層は、螺旋状の捲縮繊維を含んでいる、前記<1>~<23>の何れか1に記載の積層不織布。
<25>
前記第1繊維層が熱伸長性繊維を含有し、且つ前記第2繊維層が非熱伸長性繊維を含んでいる、前記<1>~<23>の何れか1に記載の積層不織布。
<26>
前記第1繊維層により形成された第1面、及び該第1面とは反対側に位置する第2面を有し、該第1面側に突出する複数の凸部を有している、前記<1>~<25>の何れか1に記載の積層不織布。
<27>
前記第1繊維層及び前記第2繊維層が一体化された複数の接合部を有している、前記<1>~<26>の何れか1に記載の積層不織布。
<28>
前記<1>~<27>の何れか1に記載の積層不織布を備えた、吸収性物品。
<29>
吸収体と、該吸収体よりも肌対向面側に配された表面シートとを具備しており、
前記表面シートとして、前記積層不織布を備え、前記第1繊維層側の面が肌対向面となるように配されている、前記<28>に記載の吸収性物品。
【実施例】
【0089】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。なお、実施例1及び2は参考例である。
【0090】
(i)化合物A2及び化合物B2の製造
積層不織布10の構成繊維に適用する処理剤を以下の方法により製造した。撹拌装置付きフラスコに、1-オクタデカノール(商品名:カルコール8098、パーム核油由来、花王株式会社製)7000g(25.9モル)、固体酸触媒としてγ-アルミナ(STREM Chemicals社製)700g(原料アルコールに対して10質量%)を仕込み、撹拌下、280℃にて窒素を系内に流通させながら(窒素流通量:7000mL/min)、10時間、反応を行い、C18の原料内部オレフィンを製造した。
次いで、C18の原料内部オレフィンを薄膜流下式スルホン化装置にて、SO3ガスによりスルホン化し、1分経過後にKOHで中和、加水分解してスルホン酸塩粗組成物を得た。このスルホン酸塩粗組成物を、石油エーテルを用いて洗浄、精製して、スルホン酸塩組成物を得た。得られたスルホン酸塩組成物中の化合物A2(C18ヒドロキシアルカンスルホン酸塩)の含有量は84.0質量部、化合物B2(C18内部オレフィンスルホン酸塩)の含有量は16.0質量部であった。C18原料内部オレフィン含有量は前記分析条件におけるガスクロマトグラフィーでは検出できなかった。斯かる化合物A2の一例を下記式(3)に示す。
【0091】
【0092】
(ii)化合物A1及び化合物B1の製造
1-ヘキサデカノール(商品名:「カルコール6098」、パーム核油由来、花王株式会社製)を原料にして、前記(i)と同様の方法により、C16原料内部オレフィンを製造した。
このC16原料内部オレフィンを薄膜流下式スルホン化装置にて、SO3ガスによりスルホン化し、1分経過後にKOHで中和、加水分解してスルホン酸塩粗組成物を得た。このスルホン酸塩粗組成物を、石油エーテルを用いて洗浄、精製して、スルホン酸塩組成物を得た。得られたスルホン酸塩組成物中の化合物A1(C16ヒドロキシアルカンスルホン酸塩)の含有量は85.0質量部、化合物B1(C16内部オレフィンスルホン酸塩)の含有量は15.0質量部であった。C16原料内部オレフィン含有量は前記分析条件におけるガスクロマトグラフィーでは検出できなかった。斯かる化合物A1の一例を下記式(4)に示す。
【0093】
【0094】
〔実施例1〕
実施例1では、下記の繊維S1及び繊維S2を用いて、
図1に示す積層不織布10を製造した。繊維S1を第1繊維層11の構成繊維とし、繊維S2を第2繊維層12の構成繊維とした。繊維S1は非熱収縮性繊維であり、繊維S2は熱収縮性繊維であった。
繊維S1:芯鞘型複合繊維(繊度2.4dtex、芯部ポリエチレンテレフタレート50質量%/鞘部ポリエチレン50質量%)
繊維S2:潜在捲縮性繊維〔繊度2.3dtex、ポリプロピレン(PP)50質量%/直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)50質量%のサイド・バイ・サイド型複合繊維、熱収縮開始温度60℃〕
【0095】
下記の化合物からなる処理剤を繊維S1の表面に適用した。具体的には、処理剤をイオン交換水に溶解した希釈液に繊維S1を浸漬した後、これを乾燥することで、繊維S1の表面に処理剤を適用した。
化合物C1 リン酸エステル型のアニオン界面活性剤:ポリオキシエチレンアルキルリン酸カリウム、ミヨシ油脂株式会社製、商品名「アンホレックスMP-2K」
化合物D1 シリコーン化合物:ポリエーテル変性シリコーン、信越化学工業株式会社製、商品名「KF-6012」
化合物D2 シリコーン化合物:ジメチルシリコーン、信越化学工業株式会社製、商品名「KM-903」
化合物E1 ジアルキルスルホン酸:ジオクチルスルホコハク酸、花王株式会社製、商品名「ペレックスOT-P」
化合物F1 ベタイン型界面活性剤:ステアリルベタイン、花王株式会社製、商品名「アンヒトール86B」
【0096】
前記(i)により得られたスルホン酸塩組成物(化合物A2及び化合物B2の混合物)を、処理剤とし、該処理剤を、繊維S1と同様の方法で、繊維S2の表面に適用した。
繊維S1,S2に適用した処理剤の組成、及び繊維S1,S2の質量に対する処理剤の付着率(質量%)を下記表1に示す。
【0097】
処理剤の適用後、繊維S1からなるウエブと繊維S2からなるウエブと積層して、これら両ウエブを積層した積層体を形成した。次いで、積層体に超音波エンボス加工を施して、散点状に配された複数の接合部13によって両ウエブを部分的に接合した。接合部13は、面積率が12.8%になるように形成した。次いで、積層体に熱風を5~10秒間通過させて、第2繊維層12の繊維S2を捲縮させて、該第2繊維層12を収縮させるとともに、接合部13間の第1繊維層11を凸状に突出させて、複数の凸部14を形成し、積層不織布10を製造した。斯かる積層不織布10は、接合部13が凹部15となり、該接合部13以外の部分が凸部14となる凹凸構造を有するものであった。
積層不織布10における第1繊維層11及び第2繊維層12それぞれの嵩密度を上述した方法により測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0098】
〔実施例2〕
実施例2では、前記(ii)により得られたスルホン酸塩組成物(化合物A1及び化合物B1の混合物)を処理剤として繊維S2(第2繊維層12の構成繊維)に適用した点以外は、実施例1と同様の方法により、積層不織布10を製造した。
【0099】
〔実施例3〕
実施例3では、前記(i)により得られたスルホン酸塩組成物(化合物A2及び化合物B2の混合物)と、化合物C1及び化合物D1とを混合したものを処理剤とし、これを繊維S2(第2繊維層12の構成繊維)に適用した。実施例3の処理剤の組成を下記表1に示す。斯かる処理剤を用いた点以外は、実施例1と同様の方法によって積層不織布10を製造した。
【0100】
〔実施例4〕
実施例4では、前記(ii)により得られたスルホン酸塩組成物(化合物A1及び化合物B1の混合物)と、化合物C1及び化合物D1とを混合したものを処理剤とし、これを繊維S2(第2繊維層12の構成繊維)に適用した。実施例4の処理剤の組成を下記表1に示す。斯かる処理剤を用いた点以外は、実施例1と同様の方法によって積層不織布10を製造した。
【0101】
〔実施例5〕
実施例5では、実施例4の繊維S2(第2繊維層12の構成繊維)に適用した処理剤を、繊維S1及び繊維S2の双方に適用した。斯かる点以外は、実施例1と同様の方法によって積層不織布10を製造した。
【0102】
〔実施例6〕
実施例6では、繊維S1、並びに下記の繊維S3及び繊維S4を用いて、
図6(a)及び(b)に示す積層不織布10eを製造した。繊維S1及び繊維S3を第1繊維層11の構成繊維とし、繊維S4を第2繊維層12の構成繊維とした。
繊維S3:熱伸長性繊維(繊度3.3dtex、芯部ポリプロピレン70質量%/鞘部ポリエチレン30質量%、熱伸長開始温度115℃)
繊維S4:非熱伸長性繊維〔繊度1.8dtex、芯部ポリエチレンテレフタレート50質量%/鞘部ポリエチレン50質量%〕
【0103】
繊維S1及び繊維S3の表面それぞれに、実施例1の繊維S1に適用した処理剤と同じものを適用した。適用方法は、実施例1と同じとした。繊維S1の質量に対する処理剤の付着率は0.48質量%であり、繊維S3の質量に対する処理剤の付着率は0.46質量%であった。下記表1には、これら繊維S1,S3における処理剤の付着率の平均を、処理剤の付着率(質量%)として示す。
また、繊維S4(第2繊維層12の構成繊維)の表面に、実施例3の繊維S2に適用した処理剤と同じものを適用した。適用方法は、実施例3と同じとした。
【0104】
処理剤の適用後、繊維S1及び繊維S3を1:1で混綿したウエブと、繊維S4からなるウエブを積層し、該混綿したウエブの側から超音波エンボス加工を施して、線状の凹部(接合部)を形成し、両ウエブが該凹部で部分的に接合された積層体を形成した。接合部13は、面積率が9.6%になるように形成した。次いで、積層体にエアスルー加工を施し、凹部以外の部分に存する熱伸長性繊維を伸長させた。これにより、第1繊維層11を凸状に突出させて、複数の凸部14を形成し、積層不織布10eを製造した。斯かる積層不織布10eは、第1繊維層11の構成繊維が第1面F1側に突出して、該第1面F1側に隆起する凸部14が形成される一方、接合部13が線状の凹部15となることで、該接合部13以外の部分が凸部14となる凹凸構造を有するものであった〔
図6(b)参照)。
【0105】
〔実施例7〕
実施例7では、実施例4の繊維S2(第2繊維層12の構成繊維)に適用した処理剤を、繊維S4に適用した。斯かる点以外は、実施例6と同様の方法によって積層不織布10eを製造した。
【0106】
〔比較例1~3〕
比較例1では、化合物E1からなる処理剤を繊維S2に適用した点以外は、実施例1と同様の方法によって積層不織布10を製造した。
比較例2では、化合物C1、化合物D1及び化合物E1からなる処理剤を繊維S2に適用した点以外は、実施例1と同様の方法によって積層不織布10を製造した。
比較例3では、化合物E1からなる処理剤を繊維S4に適用した点以外は、実施例6と同様の方法によって積層不織布10eを製造した。
【0107】
実施例1~5及び比較例1~2で得られた積層不織布10について、以下の評価方法1により積層不織布10の表面の液戻り量を評価した。
【0108】
<評価方法1>
コールドスプレーを用いて、花王株式会社製の生理用ナプキン(商品名「ロリエ しあわせ素肌」 2020年製)から吸収体を取り出した。吸収体の肌対向面上に積層不織布10を載せ、さらに該積層不織布10上に、楕円状の円筒の注液器を、該積層不織布の中央に位置するように載置した。積層不織布10は、第2繊維層12が吸収体と対向するように載置し、該積層不織布10の第1面F1(第1繊維層11)上に注液器を載置した。斯かる注液器は、長軸5.5cm、短軸3.0cmの楕円形状を有するものであり、円筒部分が注液孔として用いられるものであった。積層不織布10の上に注液器を載置した状態下に、3.0gの馬脱繊維血液(24cP)を円筒内に注入した。次いで、円筒内から馬脱繊維血液が無くなった後、50秒後に注液器を除去し、その10秒後(すなわち、注液器から馬脱繊維血液が無くなってから1分後)、積層不織布10における前記馬脱繊維血液を注入した箇所に、9.5cm×5.5cmに折り畳んだティッシュペーパー〔Kleenex(登録商標)〕を載せ、さらにそのティッシュペーパーの上に5g/cm2の荷重が付与されるようにおもりを載せた。その5秒後、荷重を解除し、ティッシュペーパーの質量(Wb)を測定して、積層不織布10の表面における液残り量を求めた。さらに、前記おもりの解除から2分後、前記馬脱繊維血液の注入とそれ以降の操作を繰り返した。すなわち、同じ積層不織布10に対し、馬脱繊維血液を注入し、該積層不織布10表面に残存する馬脱繊維血液を吸収したティッシュペーパーの質量(Wb)を測定する操作を2回行った。
積層不織布10の液残り量(mg)は、馬脱繊維血液を吸収したティッシュペーパーの質量(Wb)から、積層不織布10の上に載置する前のティッシュペーパーの質量(Wa)を差し引くことによって算出した(Wb-Wa)。以上の測定を3回繰り返し、各測定における2回目の馬脱繊維血液の注入後(すなわち、計6.0gの馬脱繊維血液を注入した後)に係る液残り量(mg)を求め、これらの平均値を求めた。測定結果を表1に示す。
本評価方法の液残り量は、着用者の肌が積層不織布10の表面に残った液によって、どの程度濡れるのかを示す指標とすることができる。積層不織布10の表面における液残り量の値が小さいほど、該不織布表面に液が残りにくく、ドライ性に優れ、液吸収後も肌触りが良好であることを意味する。
【0109】
実施例6~7及び比較例3で得られた積層不織布10dについては、以下の評価方法2により表面の液戻り量を評価した。
【0110】
<評価方法2>
コールドスプレーを用いて、花王株式会社製の生理用ナプキン(商品名「ロリエ スリムガード」 2020年製)からセカンドシートと吸収体とを取り出した。吸収体とセカンドシートとはこれらが一体化した状態で取り出した。次いで、セカンドシートの肌対向面上に積層不織布10eを載せた。次いで、積層不織布10eの上に、前述した注液器を、該積層不織布10eの中央に位置するように載置した。積層不織布10eも、第2繊維層12が吸収体と対向するように載置し、該積層不織布10eの第1面F1(第1繊維層11)上に注液器を載置した。次いで、積層不織布10e上の注液器の円筒内に、3.0gの馬脱繊維血液(24cP)を注入した。注入の3分後、3.0gの馬脱繊維血液(24cP)をさらに注入し、50秒後に注液器を除去し、その10秒後(すなわち、注液器から馬脱繊維血液が無くなってから1分後)、積層不織布10eをOHPフィルムの上に載置した。この積層不織布10eにおいて前記馬脱繊維血液を注入した箇所に、9.5cm×5.5cmに折り畳んだティッシュペーパー〔Kleenex(登録商標)〕を載せ、さらにそのティッシュペーパーの上に2.5gf/cm2(約245Pa)の荷重が付与されるようにおもりを載せ、3秒間静置した。その後、荷重を解除し、ティッシュペーパーの質量(Wb)を測定した。そして、積層不織布10eの表面における液残り量(mg)を、ティッシュペーパーの質量(Wb)から、積層不織布10eの上に載置する前のティッシュペーパーの質量(Wa)を差し引くことによって算出した(Wb-Wa)。斯かる測定を2回繰り返し、積層不織布10eの表面における液残り量の平均値を求めた。この測定結果を表1に示す。
本評価方法の液残り量も、着用者の肌が積層不織布10eの表面に残った液によってどの程度濡れるのかを示す指標とすることができる。当該液残り量の値が小さいほど、積層不織布10eの表面に液が残りにくく、ドライ性に優れ、液吸収後も肌触りが良好であることを意味する。
【0111】
前記<評価方法1>及び<評価方法2>の各測定に用いた馬脱繊維血液は、株式会社日本バイオテスト研究所製のものであった。馬脱繊維血液は、これを放置すると、粘度の高い部分(赤血球など)は沈殿し、粘度の低い部分(血漿)は、上澄みとして残る。馬脱繊維血液は、それらの粘度の高い部分及び粘度の低い部分を混合し、その混合比率を、粘度が24cP(25℃)になるよう調整した。斯かる粘度は、高粘度の経血の粘度を想定したものであった。調整には、東機産業株式会社製のTVB―10形粘度計を用いた。条件は12rpmとした。
【0112】
【0113】
表1に示す結果から明らかなとおり、化合物A及び化合物Bが配された積層不織布10を備えた実施例1~5の積層不織布10は、表面の液残り量が比較例1よりも少ない結果となり、実施例6及び7の積層不織布10dは、表面の液残り量が比較例3よりも少ない結果となった。すなわち、実施例1~7の積層不織布では、<評価方法1>及び<評価方法2>で行ったように、粘度の高い体液を繰り返し注入しても、該不織布表面に体液が残り難いことが示された。
実施例1~4の対比から、化合物A及びBとともに、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤及びシリコーン化合物を併用することが、液残り量の抑制に有効であることが示された。特に、炭素数が16である化合物A1及び化合物B1と、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤及びシリコーン化合物とを併用した実施例4では、液残り量を抑制する効果が大きい結果となった。
また、実施例4及び5の対比から、第1繊維層11に化合物A及びBを配さない方が、液残り量を抑制することが示された。
以上の結果から、本発明の積層不織布は、表面の液残りを効果的に抑制するので、良好なドライ性が得られることが示された。
【符号の説明】
【0114】
10 積層不織布
11 第1繊維層
12 第2繊維層
13 接合部
14 凸部
15 凹部