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特許7651370溶存ガス除去装置とこれを用いた純水製造装置、及び溶存ガス除去方法
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  • 特許-溶存ガス除去装置とこれを用いた純水製造装置、及び溶存ガス除去方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】溶存ガス除去装置とこれを用いた純水製造装置、及び溶存ガス除去方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/20 20230101AFI20250318BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20250318BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20250318BHJP
【FI】
C02F1/20 A
B01D19/00 101
C02F1/42 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021079033
(22)【出願日】2021-05-07
(65)【公開番号】P2022172805
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】西島 裕人
(72)【発明者】
【氏名】菅原 勝則
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-090127(JP,A)
【文献】特開2000-350903(JP,A)
【文献】特開平03-077683(JP,A)
【文献】特開2017-064580(JP,A)
【文献】特開平09-253642(JP,A)
【文献】特開平10-277534(JP,A)
【文献】特開2004-074130(JP,A)
【文献】特開2006-234650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20- 1/26
C02F 1/30- 1/38
B01D 19/00-19/04
C02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶存ガスを含む被処理水が供給される内部空間を備え、前記内部空間に供給された前記被処理水中から前記溶存ガスを分離する複数のガス分離装置と、
前記複数のガス分離装置で共用され、前記内部空間を減圧して前記溶存ガスを吸引除去する複数の吸引装置であって、前記ガス分離装置毎に前記複数の吸引装置との接続及び切り離しが可能である複数の吸引装置と、
前記複数のガス分離装置の各々の前記内部空間の真空度を測定する複数の圧力計と、
前記複数の圧力計で測定された前記複数のガス分離装置の各々の前記内部空間の前記真空度に応じて、前記吸引装置の運転台数と前記吸引装置の吸込能力の少なくともいずれかを制御する制御装置と、
を有する、溶存ガス除去装置。
【請求項2】
前記複数の吸引装置の各々は真空ポンプを有し、
前記制御装置は、前記ガス分離装置の前記内部空間の前記真空度に応じて、前記真空ポンプの回転数を調整する、請求項1に記載の溶存ガス除去装置。
【請求項3】
溶存ガスを含む被処理水が供給される内部空間を備え、前記内部空間に供給された前記被処理水中から前記溶存ガスを分離する複数のガス分離装置と、
各々が前記複数のガス分離装置に接続可能とされ、前記内部空間を減圧して前記溶存ガスを吸引除去する複数の吸引装置と、
前記ガス分離装置の前記内部空間の真空度を測定する圧力計と、
前記圧力計で測定された前記ガス分離装置の前記内部空間の前記真空度に応じて、前記吸引装置の運転台数と前記吸引装置の吸込能力の少なくともいずれかを制御する制御装置と、
を有し、
前記複数の吸引装置の各々は真空ポンプを有し、
前記制御装置は、前記ガス分離装置の前記内部空間の前記真空度に応じて、前記真空ポンプの回転数を調整し、
前記複数のガス分離装置は第1のガス分離装置を含み、
前記制御装置は2基以上の前記吸引装置で前記第1のガス分離装置の前記内部空間を減圧し、その後前記第1のガス分離装置の前記内部空間の前記真空度に応じて、前記吸引装置の運転台数と前記真空ポンプの回転数の少なくともいずれかを制御し、
前記複数のガス分離装置は第2のガス分離装置をさらに含み、
前記制御装置は、前記第1のガス分離装置の稼働を止めた後前記第1のガス分離装置の前記内部空間が負圧となっている間に、2基以上の吸引装置で前記第1及び第2のガス分離装置の前記内部空間を減圧し、その後前記第1及び第2のガス分離装置の前記内部空間の前記真空度に応じて、前記吸引装置の運転台数と前記真空ポンプの回転数の少なくともいずれかを制御する、溶存ガス除去装置。
【請求項4】
溶存ガスを含む被処理水が供給される内部空間を備え、前記内部空間に供給された前記被処理水中から前記溶存ガスを分離する複数のガス分離装置と、
各々が前記複数のガス分離装置に接続可能とされ、前記内部空間を減圧して前記溶存ガスを吸引除去する複数の吸引装置と、
前記ガス分離装置の前記内部空間の真空度を測定する圧力計と、
前記圧力計で測定された前記ガス分離装置の前記内部空間の前記真空度に応じて、前記吸引装置の運転台数と前記吸引装置の吸込能力の少なくともいずれかを制御する制御装置と、
を有し、
前記複数の吸引装置の各々は真空ポンプを有し、
前記制御装置は、前記ガス分離装置の前記内部空間の前記真空度に応じて、前記真空ポンプの回転数を調整し、
前記複数のガス分離装置は第1のガス分離装置を含み、
前記制御装置は2基以上の前記吸引装置で前記第1のガス分離装置の前記内部空間を減圧し、その後前記第1のガス分離装置の前記内部空間の前記真空度に応じて、前記吸引装置の運転台数と前記真空ポンプの回転数の少なくともいずれかを制御し、
前記複数のガス分離装置は第2のガス分離装置をさらに含み、
前記制御装置は、前記第1のガス分離装置の稼働を止めた後前記第1のガス分離装置の前記内部空間が負圧となっている間に、全ての前記吸引装置で前記第1及び第2のガス分離装置の前記内部空間を減圧し、その後前記第1及び第2のガス分離装置の前記内部空間の前記真空度に応じて、前記吸引装置の運転台数と前記真空ポンプの回転数の少なくともいずれかを制御する、溶存ガス除去装置。
【請求項5】
前記複数の吸引装置の各々は前記真空ポンプに接続されたインバータを有し、
前記制御装置は、前記ガス分離装置の前記内部空間の前記真空度に応じて、前記真空ポンプの回転数を調整するように前記インバータを制御する、請求項2から4のいずれか1項に記載の溶存ガス除去装置。
【請求項6】
前記複数のガス分離装置は第1のガス分離装置を含み、
前記制御装置は2基以上の前記吸引装置で前記第1のガス分離装置の前記内部空間を減圧し、その後前記第1のガス分離装置の前記内部空間の前記真空度に応じて、前記吸引装置の運転台数と前記真空ポンプの回転数の少なくともいずれかを制御する、請求項2に記載の溶存ガス除去装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の溶存ガス除去装置と、
前記溶存ガス除去装置の前記ガス分離装置の前段に設けられた陽イオン交換装置と、
前記溶存ガス除去装置の前記ガス分離装置の後段に設けられた陰イオン交換装置と、
を有する、純水製造装置。
【請求項8】
複数のガス分離装置のうちの少なくとも一つのガス分離装置の内部空間に溶存ガスを含む被処理水を供給することと、
前記複数のガス分離装置で共用された複数の吸引装置であって、前記ガス分離装置毎に前記複数の吸引装置との接続及び切り離しが可能である前記複数の吸引装置のうちの2基以上の吸引装置によって、前記少なくとも一つのガス分離装置の前記内部空間を減圧して、前記内部空間に供給された前記被処理水中から前記溶存ガスを吸引除去することと、
前記少なくとも一つのガス分離装置の真空度に応じて、前記吸引装置の運転台数と前記吸引装置の吸込能力の少なくともいずれかを制御することと、
を有する、溶存ガス除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶存ガス除去装置とこれを用いた純水製造装置、及び溶存ガス除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2床3塔式(2B3T)と呼ばれる純水製造装置が知られている。このタイプの純水製造装置では、陽イオン交換装置とガス分離装置と陰イオン交換装置とが、被処理水の流れに沿って上流から下流に向けて、この順で配置されている。陽イオン交換装置で被処理水中の陽イオン成分が除去され、ガス分離装置で被処理水中の溶存ガスが除去され、陰イオン交換装置で陰イオン成分が除去される。溶存ガスはそれ自体が不純物であるため、ガス分離装置で除去される。特に二酸化炭素は、一部が水に溶けて弱酸性の炭酸水(H++HCO3 -)となるため、二酸化炭素を除去することで陰イオン交換装置の負荷を下げることができる。ガス分離装置は一般に、ガス分離装置の内部空間を減圧して溶存ガスを吸引除去する吸引装置と組み合わせて使用され、本明細書ではこれらを総称して溶存ガス除去装置と呼ぶ。特許文献1には、吸引装置として真空ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-77683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2B3Tと呼ばれる純水製造装置は複数の系列を有することがある。すなわち、各々が一つの陽イオン交換装置と一つのガス分離装置と一つの陰イオン交換装置とを備える複数の系列が、一つの純水製造装置に設けられることがある。これによって、必要とする処理水量応じて、純水製造装置の処理能力を調整することが容易となる。しかし、個々の系列は互いに独立して作動するように構成されるため、吸引装置はそれぞれのガス分離装置に対して専用に設けられる。従って、吸引装置の設置スペースやコストは純水製造装置の系列の数に依存し、削減が困難である。
【0005】
本発明は複数のガス分離装置を備え、吸引装置の台数の削減が可能な溶存ガス除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の溶存ガス除去装置は、溶存ガスを含む被処理水が供給される内部空間を備えた複数のガス分離装置を有する。複数のガス分離装置は内部空間に供給された被処理水中から溶存ガスを分離する。溶存ガス除去装置は複数の吸引装置を有する。複数の吸引装置は複数のガス分離装置で共用され、内部空間を減圧して溶存ガスを吸引除去する。ガス分離装置毎に複数の吸引装置との接続及び切り離しが可能である。溶存ガス除去装置は複数のガス分離装置の各々の内部空間の真空度を測定する複数の圧力計と、複数の圧力計で測定された複数のガス分離装置の各々の内部空間の真空度に応じて、吸引装置の運転台数と吸引装置の吸込能力の少なくともいずれか制御する制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数のガス分離装置を備え、吸引装置の台数の削減が可能な溶存ガス除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
図2図1に示す純水製造装置の溶存ガス除去装置の概略構成図である。
図3】ステップ1における溶存ガス除去装置の作動を示す概念図である。
図4】ステップ2における溶存ガス除去装置の作動を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の溶存ガス除去装置100とこれを用いた純水製造装置1、及び溶存ガス除去方法の実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態に係る純水製造装置1の概略構成図を、図2図1に示す純水製造装置1の溶存ガス除去装置100の概略構成図を示している。純水製造装置1は各種プラント、超純水製造装置等において、単独でまたは他の水処理装置と組み合わせて使用される。
【0010】
被処理水は純水製造装置1の上流に設けられた入口ラインL1を通して、純水製造装置1に供給される。純水製造装置1は2つの系列(A系列、B系列)を有している。入口ラインL1は第1の母管L2Aと第2の母管L2Bとに分岐している。A系列は第1のガス分離装置3Aと、第1のガス分離装置3Aの前段に設けられた第1の陽イオン交換装置2Aと、第1のガス分離装置3Aの後段に設けられた第1の陰イオン交換装置4Aと、を有し、これらは第1の母管L2A上に配置されている。B系列は第2のガス分離装置3Bと、第2のガス分離装置3Bの前段に設けられた第2の陽イオン交換装置2Bと、第2のガス分離装置3Bの後段に設けられた第2の陰イオン交換装置4Bと、を有し、これらは第2の母管L2B上に配置されている。第1の母管L2Aと第2の母管L2Bは純水製造装置1の下流で合流して出口ラインL3を形成している。純水製造装置1で処理された処理水は出口ラインL3を通して下流側に搬送される。A系列とB系列は同じ構成を有しているため、これらを区別する必要がない場合、第1のガス分離装置3Aと第2のガス分離装置3Bをガス分離装置3と呼び、第1の陽イオン交換装置2Aと第2の陽イオン交換装置2Bを陽イオン交換装置2と呼び、第1の陰イオン交換装置4Aと第2の陰イオン交換装置4Bを陰イオン交換装置4と呼び、第1の母管L2Aと第2の母管L2Bを母管L2と呼ぶことがある。
【0011】
陽イオン交換装置2はカチオン樹脂やカチオンモノリスが充填された塔であり、被処理水に含まれるカチオン成分を除去する。ガス分離装置3は被処理水中の酸素、二酸化炭素(炭酸ガス)などの溶存ガスを除去する。陰イオン交換装置4はアニオン樹脂やアニオンモノリスが充填された塔であり、被処理水に含まれるアニオン成分を除去する。前述したとおり、ガス分離装置3は二酸化炭素を除去するため、後段の陰イオン交換装置4の負荷を下げることができる。
【0012】
ガス分離装置3は溶存ガスを含む被処理水が供給される内部空間31を有し、内部空間31に供給された被処理水から溶存ガスを分離する。ガス分離装置3の上部と底部にそれぞれ、母管L2が接続されている。ガス分離装置3の入口に入口弁(第1の弁V1及び第2の弁V2)が設けられている。内部空間31の上部には被処理水を散水するための散水ノズル32が設けられている。散水ノズル32の下には気液接触材33が設けられている。散水ノズル32と気液接触材33は被処理水の表面積を増大させ、溶存ガスの除去効率を高める。第1のガス分離装置3Aと第2のガス分離装置3Bの頂部、すなわち内部空間31の頂部にはそれぞれ、第1のガス排出ラインL4Aと第2のガス排出ラインL4Bが接続されている。第1及び第2のガス排出ラインL4A,L4Bは後述する第1~第3の吸引装置14A~14Cに接続されている。ガス分離装置3の内部空間31は第1~第3の吸引装置14A~14Cによって負圧にされる。
【0013】
陽イオン交換装置2でカチオン成分を除去された被処理水は、散水ノズル32を通って、ガス分離装置3の上部から内部空間31に供給される。被処理水は内部空間31中を滴下し、気液接触材33の内部をさらに下降しながら溶存ガスが除去され、内部空間31の底部から排出される。溶存ガスを除去された被処理水は陰イオン交換装置4に供給される。
【0014】
第1のガス排出ラインL4Aと第2のガス排出ラインL4Bにはそれぞれ、第1のガス分離装置3Aと第2のガス分離装置3Bの内部空間31の真空度を測定する第1の圧力計5Aと第2の圧力計5Bが設けられている。第1の圧力計5Aと第2の圧力計5Bはできるだけ第1のガス分離装置3Aと第2のガス分離装置3Bの近傍に設けることが好ましい。第1の圧力計5Aと第2の圧力計5Bはそれぞれ、第1のガス分離装置3Aと第2のガス分離装置3Bの内部空間31に設けることもできる。
【0015】
第1のガス排出ラインL4Aと第2のガス排出ラインL4Bにはそれぞれ、第1のデミスターポット6Aと第2のデミスターポット6Bが設けられている。第1及び第2のデミスターポット6A,6Bは吸引ガスに含まれる水滴が衝突して分離される衝突分離材(図示せず)を有している。分離された水滴はそれぞれ、第1の戻り管L5Aと第2の戻り管L5Bを通って第1のガス分離装置3Aと第2のガス分離装置3Bに戻される。
【0016】
第1~第3の吸引装置14A~14Cは第1のガス分離装置3Aと第2のガス分離装置3Bに接続可能に設けられている。接続可能とは接続と切り離しが可能という意味である。第1~第3の吸引装置14A~14Cの各々は、第1のガス分離装置3Aと第2のガス分離装置3Bの各々と接続可能であり、且つ第1のガス分離装置3Aと第2のガス分離装置3Bの各々から切り離し可能である。この機能を実現するため、第1のガス排出ラインL4Aと第2のガス排出ラインL4Bは合流して共通ガス排出ラインL6を形成し、共通ガス排出ラインL6は第1~第3の分岐管L7A~L7Cに分岐し、第1~第3の分岐管L7A~L7Cにそれぞれ、第1~第3の吸引装置14A~14Cが接続されている。また、第1のガス排出ラインL4Aと第2のガス排出ラインL4Bにはそれぞれ第3の弁V3と第4の弁V4が設けられており、これらを操作することで、第1及び第2のガス分離装置3A,3Bと第1~第3の吸引装置14A~14Cとの接続と切り離しが可能となっている。
【0017】
第1~第3の分岐管L7A~L7Cにはそれぞれ、第1~第3のリキッドセパレータ11A~11Cと、第1~第3の吸気フィルター12A~12Cと、第1~第3のメカニカルブースター13A~13Cと、第1~第3の吸引装置14A~14Cが配置されている。これらの設備はそれぞれ第1~第3の分岐管L7A~L7Cに、吸引ガスの流れる方向に沿って上流から下流に向けて、この順で配置されている。第1~第3のリキッドセパレータ11A~11Cは衝突分離機能を備えたフィルターであり、吸引ガス中の水滴を除去する。第1~第3のリキッドセパレータ11A~11Cは省略してもよい。第1~第3の吸気フィルター12A~12Cはポリエステルエレメントを備え、粒径5μm以上の固形物を除去する。第1~第3の吸気フィルター12A~12Cはそれぞれ、下流の第1~第3のメカニカルブースター13A~13Cと第1~第3の吸引装置14A~14Cを保護するために設けられる。第1~第3のメカニカルブースター13A~13Cは排気速度の上昇と到達圧力の低下(真空度の増加)のために設けられる。第1~第3の吸引装置14A~14Cは本実施形態では真空ポンプであるが、第1及び第2のガス分離装置3A,3Bの内部空間31を負圧にすることができる限り、スチームエジェクターなどの他の形式の装置を用いることも可能である。第1~第3の吸引装置14A~14Cは第1及び第2のガス分離装置3A,3Bの内部空間31を減圧して溶存ガスを吸引除去する。第1~第3の吸引装置14A~14Cを通った吸引ガスは外部に排気される。
【0018】
制御装置16は第1及び第2の圧力計5A,5Bでそれぞれ測定された第1及び第2ガスの分離装置3A,3Bの内部空間31の真空度に応じて、第1~第3の吸引装置14A~14Cの運転台数を制御する。また、制御装置16は、第1及び第2のガス分離装置3A,3Bの内部空間31の真空度に応じて、第1~第3の吸引装置14A~14Cの吸込能力(本実施形態では真空ポンプの回転数)を調整する。具体的には、第1~第3の吸引装置14A~14Cはそれぞれ、第1~第3の吸引装置14A~14C(本実施形態では真空ポンプ)に接続された第1~第3のインバータ15A~15Cを有している。制御装置16は、第1及び第2のガス分離装置3A,3Bの内部空間31の真空度に応じて、真空ポンプの回転数を調整するように第1~第3のインバータ15A~15Cを制御する。第1~第3のインバータ15A~15Cは交流の周波数を変化させ、真空ポンプのモータの回転数を制御する。
【0019】
第1~第3のリキッドセパレータ11A~11C、第1~第3の吸気フィルター12A~12C、第1~第3のメカニカルブースター13A~13C、第1~第3の吸引装置14A~14C、第1~第3のインバータ15A~15C、及び制御装置16は、第1及び第2のガス分離装置3A,3Bの負圧制御装置50を構成する。負圧制御装置50は一つのユニットとして構成することができるため、例えば改造工事においてユニットごと設置することができる。第1及び第2のガス分離装置3A,3Bと負圧制御装置50は純水製造装置1における溶存ガス除去装置100を構成する。
【0020】
次に、溶存ガス除去装置100の運転方法を説明する。まず、純水製造装置1のA系列だけを稼働させる方法を説明する。第1及び第2のガス分離装置3A,3Bの内部空間31は大気圧であるとする。第1の弁V1、第2の弁V2、第4の弁V4は閉じ、第3の弁V3は開けておく。この操作は純水製造装置1の制御装置(図示せず)で行うが、溶存ガス除去装置100の制御装置16で行ってもよい。次に、制御装置16は任意の2基以上、好ましくはすべての吸引装置14A~14Cを作動させ、第1のガス分離装置3Aの内部空間31を減圧する。第1のガス分離装置3Aの内部空間31の真空度が所定の閾値に達したら入口弁(第1の弁V1)を開き、A系列だけに被処理水を通水する。その後、第1のガス分離装置3Aの内部空間31の真空度に応じて、吸引装置14A~14Cの運転台数と吸引装置14A~14Cの吸込能力(本実施形態では真空ポンプの回転数)の少なくともいずれかを制御する。第1の弁V1の開度は第1のガス分離装置3Aの水位に応じて制御する。すなわち、第1のガス分離装置3Aの水位が高い場合は第1の弁V1の開度を減少させ、第1のガス分離装置3Aの水位が低い場合は第1の弁V1の開度を増加させる。
【0021】
本実施形態では、第1のガス分離装置3Aの内部空間31が所定の真空度に達したら、制御装置16は吸引装置14A~14Cの運転台数の制御を開始する。2基の吸引装置を稼働させた場合は、制御装置16は1基の吸引装置を停止し、残りの1基を稼働させる。3基の吸引装置を稼働させた場合は、制御装置16は2基の吸引装置を停止し、残りの1基を稼働させる。この場合、3基の吸引装置のうち1基だけを停止し、真空度が上がったらさらに1基の吸引装置を停止し、残りの1基だけを稼働させてもよい。一旦、第1のガス分離装置3Aの内部空間31の真空度が上昇した後は過大な吸入能力を必要としないため、少ない台数の吸引装置で第1のガス分離装置3Aの内部空間31の真空度の維持が可能となる。
【0022】
入口弁(第1の弁V1)を開くタイミングと吸引装置14A~14Cの運転台数の制御を開始するタイミングはどちらが先であってもよく、一致していてもよい。換言すれば、所定の真空度と所定の閾値は別々に設定することができる。第1のガス分離装置3Aの稼働中に内部空間31の真空度が低下した場合は、停止していた吸引装置を再稼働させるか、稼働中の吸引装置の真空ポンプの回転数を増加するか、もしくはこれらの両者を行う。真空ポンプの回転数の増加はインバータ15A~15Cの制御を介して行われる。内部空間31の真空度が増加した場合は、一部の吸引装置を停止させるか、稼働中の吸引装置の真空ポンプの回転数を低下させるか、もしくはこれらの両者を行う。
【0023】
上述のように、一般的にはガス分離装置3の内部空間31の真空度の変動が大きい場合は吸引装置14A~14Cの稼働台数を調整し、真空度の変動が小さい場合は吸引装置14A~14Cの吸込能力(本実施形態では真空ポンプの回転数)を調整することが好ましいが、必ずしもこの方法に限定されない。例えば、真空ポンプが許容回転数の上限付近で運転している場合は回転数を下げる余地が大きいため、真空ポンプの稼働台数を減らす代わりに真空ポンプの回転数を下げてもよい。また、吸引装置14A~14Cの稼働台数と真空ポンプの回転数を同時に調整することもできる。例えば、吸引装置14A~14Cの稼働台数を減らし、同時に真空ポンプの回転数を上げることもできるし、吸引装置14A~14Cの稼働台数を増やし、同時に真空ポンプの回転数を下げることもできる。
【0024】
第1及び第2のガス分離装置3A,3Bの内部空間31が大気圧である場合に純水製造装置1のA系列、B系列を稼働させる方法も、上述の方法と基本的には同様である。すなわち、第1及び第2のガス分離装置3A,3Bの内部空間31の真空度がある閾値に達したら入口弁(第1の弁V1、第2の弁V2)を開き、A系列とB系列に被処理水を通水する。真空ポンプの負荷が高いため、全ての真空ポンプを運転することが好ましい。
【0025】
次に、最初A系列だけを稼働させ(ステップ1)、その後A系列とB系列を稼働させる(ステップ2)方法を説明する。ステップ1は上述の通りに行う。ステップ2を行う場合は、一旦A系列の稼働を停止する。すなわち、2つの入口弁(第1の弁V1、第2の弁V2)を閉じることによって、純水製造装置1を他のシステムから隔離する。仮にA系列を稼働させながらB系列を立ち上げると、第1のガス分離装置3Aの内部空間31の真空度が急激に低下し、処理水の溶存ガス濃度が上昇する可能性がある。第3の弁V3と第4の弁V4は開いておく。
【0026】
次に、制御装置16は、2基以上の吸引装置、好ましくはすべての吸引装置14A~14Cを作動させ、第1及び第2のガス分離装置3A,3Bの内部空間31を減圧する。この操作は第1のガス分離装置3Aの稼働を止めた後、第1のガス分離装置3Aの内部空間31が負圧となっている間に行うことが好ましい。なぜなら、それによって真空ポンプの負荷が低減するからである。例えば、第1のガス分離装置3A(または第2のガス分離装置3B)の内部空間31が大気圧である場合の真空ポンプの負荷を1とする。第1のガス分離装置3Aと第2のガス分離装置3Bの内部空間31がともに大気圧である場合、真空ポンプの負荷は2である。これに対し、第1のガス分離装置3Aの内部空間31の圧力が大気圧の0.5倍で、第2のガス分離装置3Bの内部空間31が大気圧である場合の真空ポンプの負荷は1.5となる。換言すれば第1のガス分離装置3Aの内部空間31はすでに減圧された状態にあるため、それに応じて真空ポンプの負荷が低減されることになる。第1及び第2のガス分離装置3A,3Bの内部空間31の真空度が所定の閾値に達したら入口弁(第1の弁V1、第2の弁V2)を開き、A系列とB系列に被処理水を通水する。その後制御装置16は、第1及び第2のガス分離装置3A,3Bの内部空間31の真空度に応じて、吸引装置の運転台数と吸引装置の吸込能力(本実施形態では真空ポンプの回転数)の少なくともいずれかを制御する。具体的なやり方は上述した通りである。上述の通り、第1の弁V1の開度は第1のガス分離装置3Aの水位に応じて制御する。同様に、第2の弁V2の開度は第2のガス分離装置3Bの水位に応じて制御する。すなわち、第2のガス分離装置3Bの水位が高い場合は第2の弁V2の開度を減少させ、第2のガス分離装置3Bの水位が低い場合は第2の弁V2の開度を増加させる。
【0027】
図3(a)は比較例の溶存ガス除去装置200を、図3(b)は本実施形態の溶存ガス除去装置100を模式的に示している。太線は吸引ガスが流れている個所を示している。個々の吸引装置の容量は比較例と本実施形態で同一である。図3はA系列だけを稼働させる場合(ステップ1)を示している。比較例では、各系列のガス分離装置は専用の吸引装置と組み合わされており、各系列に2つの吸引装置14A,14Bが設けられている。本実施形態では2つの系列で共用する3つの吸引装置14A~14Cが設けられている。ステップ1において、比較例ではA系列の2つの吸引装置14A,14Bが運転されるが、B系列の吸引装置14A,14Bは運転されない。これに対して、本実施形態では3基の吸引装置14A~14Cを運転することができる。この結果、本実施形態では比較例よりも迅速に第1のガス分離装置3Aの内部空間31を減圧することができる。従って、本実施形態では、吸引装置の総基数を比較例よりも少なくしつつ、第1のガス分離装置3Aの内部空間31を比較例よりも迅速に減圧できる。また、吸引装置の総基数が減少するため、吸引装置のコスト、設置スペース、メンテナンス作業量の低減が可能となる。1台の制御装置16だけが設けられるため、系列ごとに制御装置を設ける場合と比べて制御装置の台数の低減にもつながる。本実施形態においては2基の吸引装置だけを運転することも可能で、その場合も、比較例と同じ速さで第1のガス分離装置3Aの内部空間31を減圧することができる。さらに第1のガス分離装置3Aの内部空間31が所定の真空度に達した後は、吸引装置14A~14Cの吸込能力を低減可能であるため、運転コストも削減できる。
【0028】
図4は、A系列とB系列を稼働させる場合(ステップ2)を示す、図3と同様の図である。第1のガス分離装置3Aの内部空間31は大気圧より低く、第2のガス分離装置3Bの内部空間31は大気圧に等しいとする。比較例では、A系列では内部空間31の真空度に応じて1基または2基の吸引装置14A,14Bが運転され、B系列では2基の吸引装置14A,14Bが運転される。このため、比較例では、減圧に必要な時間はB系列で決定される。本実施形態では3基の吸引装置14A~14Cが運転される。ステップ2の開始時点で第1のガス分離装置3Aの内部空間31の圧力が低い(真空度が高い)場合は、比較例の第2のガス分離装置3Bよりも早く減圧工程が終了する。
【0029】
以上説明したように、本実施形態では、2基のガス分離装置3A,3Bに対して3基の吸引装置14A~14Cが設けられているが、これらの基数は限定されない。例えば、3基以上のガス分離装置に対して、ガス分離装置の基数より多い吸引装置を設けることができる。また、より一般的には、本発明の溶存ガス除去方法によれば、複数のガス分離装置3のうちの少なくとも一つのガス分離装置3の内部空間31に溶存ガスを含む被処理水が供給され、2基以上の吸引装置によって、この少なくとも一つのガス分離装置3の内部空間31が減圧され、内部空間31に供給された被処理水中から溶存ガスが吸引除去される。そして、その後、ガス分離装置の内部空間の真空度に応じて、吸引装置の運転台数と吸引装置の吸込能力の少なくともいずれかが制御装置16によって制御される。
【符号の説明】
【0030】
1 純水製造装置
2A,2B 第1、第2の陽イオン交換装置
3A,3B 第1、第2のガス分離装置
4A,4B 第1、第2の陰イオン交換装置
5A,5B 第1、第2の圧力計
14A~14C 第1~第3の吸引装置(真空ポンプ)
15A~15C 第1~第3のインバータ
16 制御装置
31 内部空間
100 溶存ガス除去装置
図1
図2
図3
図4