IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

特許7651373アンテナ装置及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイス
<>
  • 特許-アンテナ装置及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイス 図1
  • 特許-アンテナ装置及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイス 図2
  • 特許-アンテナ装置及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイス 図3
  • 特許-アンテナ装置及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイス 図4
  • 特許-アンテナ装置及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイス 図5
  • 特許-アンテナ装置及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイス 図6
  • 特許-アンテナ装置及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイス 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】アンテナ装置及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/00 20060101AFI20250318BHJP
【FI】
H01Q7/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021086647
(22)【出願日】2021-05-24
(65)【公開番号】P2022179866
(43)【公開日】2022-12-06
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】梶木屋 翔磨
(72)【発明者】
【氏名】千代 憲隆
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-195049(JP,A)
【文献】特開2014-099805(JP,A)
【文献】特開2012-010410(JP,A)
【文献】特開2013-098846(JP,A)
【文献】特開2015-095656(JP,A)
【文献】特開2013-128093(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0381802(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02775632(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0130291(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0280322(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1、第2及び第3ターンを含む第1コイルパターンと、
前記第1コイルパターンとコイル軸方向に重なる第2コイルパターンと、
前記第1コイルパターンが形成された第1基材と、
前記第2コイルパターンが形成された第2基材と、
前記第1基材の一方及び他方の表面にそれぞれ設けられ、前記第1基材を介して対向する一対のキャパシタ電極パターンと、
前記第2基材の一方又は他方の表面に設けられ、前記第2コイルパターンを囲む第3コイルパターンと、を備え、
前記第1、第2及び第3ターンの開口部は、前記コイル軸方向から見て第1方向における開口幅が前記第1方向と直交する第2方向における開口幅よりも大きい形状を有し、
前記第2ターンの開口部の前記第2方向における開口幅は、前記第1ターンの開口部の前記第2方向における開口幅よりも大きく、
前記第3ターンの開口部の前記第2方向における開口幅は、前記第2ターンの開口部の前記第2方向における開口幅よりも大きく、且つ、前記第1ターンの開口部の前記第1方向における開口幅よりも小さく、
前記第1コイルパターンの前記第2及び第3ターンは、前記第2コイルパターンと前記コイル軸方向に重なる区間と重ならない区間を有し、
前記第1コイルパターンは、一端及び他端が前記一対のキャパシタ電極パターンに接続されることにより閉回路を構成し、
前記第1コイルパターンは、前記第3ターンよりも外側に位置し、前記コイル軸方向から見て少なくとも一部が前記第3コイルパターンと重なる第4ターンをさらに含む、アンテナ装置。
【請求項2】
前記第4ターンの開口部は、前記コイル軸方向から見て前記第1方向における開口幅が前記第2方向における開口幅よりも大きい形状を有し、
前記第4ターンの前記第1方向に延在する区間と前記第3ターンの前記第1方向に延在する区間の前記第2方向におけるギャップは、前記第3ターンの前記第1方向に延在する区間と前記第2ターンの前記第1方向に延在する区間の前記第2方向におけるギャップよりも狭い、請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記一対のキャパシタ電極パターンは、前記コイル軸方向から見て前記第3ターンの前記第1方向に延在する区間と前記第2ターンの前記第1方向に延在する区間の前記第2方向におけるギャップに配置されている、請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアンテナ装置と、
前記第3コイルパターンに接続される通信回路と、
前記第2コイルパターンに接続される送電回路と、を備えるワイヤレス電力伝送デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はアンテナ装置及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、非接触でICカードとデータ通信を行うリーダ/ライタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-298095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたリーダ/ライタのアンテナコイルは円形であることから、ICカードに内蔵されたアンテナコイルの位置によっては、通信が不安定になるという問題があった。
【0005】
したがって、本開示は、ICカードに内蔵されたアンテナコイルの位置に関わらず良好な通信特性を得ることが可能なアンテナ装置及びこれを備えるワイヤレス電力伝送デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施態様によるアンテナ装置は、少なくとも第1、第2及び第3ターンを含む第1コイルパターンを備え、第1、第2及び第3ターンの開口部は、コイル軸方向から見て第1方向における開口幅が第1方向と直交する第2方向における開口幅がよりも大きい形状を有し、第2ターンの開口部の第2方向における開口幅は、第1ターンの開口部の第2方向における開口幅よりも大きく、第3ターンの開口部の第2方向における開口幅は、第2ターンの開口部の第2方向における開口幅よりも大きく、且つ、第1ターンの開口部の第1方向における開口幅よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ICカードに内蔵されたアンテナコイルの位置に関わらず良好な通信特性を得ることが可能なアンテナ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態によるアンテナ装置1の構造を説明するための略断面図である。
図2図2は、第1基材10の一方の表面11に形成された導体パターンの形状を示す略平面図である。
図3図3は、第1基材10の他方の表面12に形成された導体パターンの形状を示す略平面図であり、第1基材10の一方の表面11側から見た状態、つまり、第1基材10を透過して見た状態を示している。
図4図4は、第2基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの形状を示す略平面図である。
図5図5は、第2基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの形状を示す略平面図であり、第2基材20の一方の表面21側から見た状態、つまり、第2基材20を透過して見た状態を示している。
図6図6は、アンテナ装置1の機能を説明するための模式図である。
図7図7は、アンテナ装置1を用いたワイヤレス電力伝送デバイス90のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施形態によるアンテナ装置1の構造を説明するための略断面図である。
【0011】
図1に示すように、一実施形態によるアンテナ装置1は、PETフィルムなどからなる第1基材10及び第2基材20と、第1基材10の一方の表面に設けられた第1コイルパターンCP1と、第2基材20の一方及び他方の表面21,22に設けられた第2コイルパターンCP2及び第3コイルパターンCP3と、磁性シート30とを備えている。第1コイルパターンCP1と第3コイルパターンCP3はNFC(近距離無線通信)用のアンテナコイルであり、第2コイルパターンCP2はワイヤレス電力伝送用の送電コイルである。第1コイルパターンCP1と第2コイルパターンCP2は、コイル軸方向に重なりを有している。第1~第3コイルパターンCP1~CP3のコイル軸方向はz方向であり、第1基材10、第2基材20及び磁性シート30は、z方向に重なるようこの順に配置される。つまり、第2基材20は、第1基材10と磁性シート30との間に配置され、磁性シート30と第1基材10のz方向における距離は、磁性シート30と第2基材20のz方向における距離よりも離れている。
【0012】
図2は、第1基材10の一方の表面11に形成された導体パターンの形状を示す略平面図である。
【0013】
図2に示すように、第1基材10の一方の表面11には、第1コイルパターンCP1を構成する導体パターン51,52と、キャパシタ電極パターンCE1が形成されている。導体パターン51は、略矩形状に周回する第1ターンT1、第2ターンT2及び第3ターンT3を含み、その一端及び他端は、第1基材10を貫通するスルーホール導体53,54にそれぞれ接続されている。第1ターンT1は第1コイルパターンCP1の最内周ターンであり、その開口部のy方向における開口幅はY1であり、x方向における開口幅はX1である。x方向は例えば第1方向であり、y方向は例えば第2方向である。第2ターンT2は第1ターンT1の外周に位置し、その開口部のy方向における開口幅はY2であり、第1ターンT1の開口幅Y1よりも大きい(Y2>Y1)。第3ターンT3は第2ターンT2の外周に位置し、その開口部のy方向における開口幅はY3であり、第2ターンT2の開口幅Y2よりも大きく(Y3>Y2)、第1ターンT1の開口幅X1よりも小さい(Y3<X1)。このように、第2ターンT2及び第3ターンT3の開口部のx方向における開口幅は、第1ターンT1の開口幅X1とほぼ同じである。したがって、第1ターンT1、第2ターンT2及び第3ターンT3はいずれも、x方向に延在する区間が長辺であり、y方向に延在する区間が短辺である横長形状を有している。
【0014】
導体パターン52は第4ターンT4を構成し、その一端及び他端は、第1基材10を貫通するスルーホール導体55,56にそれぞれ接続されている。第4ターンT4についても、x方向に延在する区間が長辺であり、y方向に延在する区間が短辺である横長形状を有している。第4ターンT4は第1コイルパターンCP1の最外周ターンであり、その開口部のy方向における開口幅はY4であり、第3ターンT3の開口幅Y3よりも大きい(Y4>Y3)。第4ターンT4の開口部のx方向における開口幅は、第1ターンT1の開口幅X1とほぼ同じである。キャパシタ電極パターンCE1は、z方向から見て第2ターンT2の長辺と第3ターンT3の長辺の間に形成されるy方向のギャップに配置されるとともに、スルーホール導体57に接続される。
【0015】
図3は、第1基材10の他方の表面12に形成された導体パターンの形状を示す略平面図であり、第1基材10の一方の表面11側から見た状態、つまり、第1基材10を透過して見た状態を示している。
【0016】
図3に示すように、第1基材10の他方の表面12には、第1コイルパターンCP1を構成する導体パターン61,62と、キャパシタ電極パターンCE2が形成されている。導体パターン61の両端はスルーホール導体53,55に接続されており、これにより導体パターン51の一端と導体パターン52の一端が短絡される。また、導体パターン62の両端はスルーホール導体54,57に接続されており、これにより導体パターン51の他端とキャパシタ電極パターンCE1が短絡される。キャパシタ電極パターンCE2は、z方向から見てキャパシタ電極パターンCE1と重なる位置に配置されるとともに、スルーホール導体56に接続される。これにより、導体パターン52の他端がキャパシタ電極パターンCE2に短絡される。
【0017】
キャパシタ電極パターンCE1,CE2は、第1基材10を介して対向することにより第2キャパシタC2(図7参照)を構成する。そして、第1コイルパターンCP1は、一端及び他端が一対のキャパシタ電極パターンCE1,CE2に接続されることにより、外部回路に接続されない閉回路を構成する。第1コイルパターンCP1の共振周波数は、キャパシタ電極パターンCE1,CE2の面積によって調整することができる。なお、本実施形態では、第1基材10の他方の表面12が磁性シート30の表面と対向する向きで配置されているが、第1基材10の一方の表面11が磁性シート30の表面と対向する向きで配置されていても構わない。
【0018】
図4は、第2基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの形状を示す略平面図である。
【0019】
図4に示すように、第2基材20の一方の表面21には、第2コイルパターンCP2を構成するスパイラル状の導体パターン100と、第3コイルパターンCP3を構成する導体パターン41,42が形成されている。
【0020】
第2コイルパターンCP2を構成する導体パターン100は、ターン110,120,130,140,150,160からなる6ターン構成であり、ターン110が最外周に位置し、ターン160が最内周に位置する。このうち、ターン110,120,130,140,150は、スパイラル状の3本のスリットによって径方向に4分割されている。一方、ターン160は、スパイラル状の1本のスリットによって径方向に2分割されている。これにより、ターン110はライン111~114に4分割され、ターン120はライン121~124に4分割され、ターン130はライン131~134に4分割され、ターン140はライン141~144に4分割され、ターン150はライン151~154に4分割され、ターン160はライン161,162に2分割される。
【0021】
ライン111,121,131,141,151,161は、スパイラル状に6ターン巻回された連続的なラインであり、各ターンにおける最外周に位置する。ライン112,122,132,142,152,162は、スパイラル状に6ターン巻回された連続的なラインであり、各ターンにおいて2番目に外周に位置する。ライン113,123,133,143,153は、スパイラル状に5ターン巻回された連続的なラインであり、各ターンにおいて2番目に内周に位置する。ライン114,124,134,144,154は、スパイラル状に5ターン巻回された連続的なラインであり、各ターンにおける最内周に位置する。
【0022】
ライン111~114の外周端は、端子電極E1に共通に接続される。一方、ライン161,162,153,154の内周端は、第2基材20を貫通するスルーホール導体301~304にそれぞれ接続される。
【0023】
第3コイルパターンCP3を構成する導体パターン41,42は、第2コイルパターンCP2を構成する導体パターン100の外側に配置される。このうち、導体パターン41は約1ターン巻回された連続的なラインであり、その開口領域(内径領域)に導体パターン100が配置される。導体パターン41の一端は端子電極E3に接続され、導体パターン41の他端は第2基材20を貫通するスルーホール導体43に接続されている。また、導体パターン42の一端は端子電極E4に接続され、導体パターン42の他端は第2基材20を貫通するスルーホール導体44に接続されている。
【0024】
図5は、第2基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの形状を示す略平面図であり、第2基材20の一方の表面21側から見た状態、つまり、第2基材20を透過して見た状態を示している。
【0025】
図5に示すように、第2基材20の他方の表面22には、第2コイルパターンCP2を構成するスパイラル状の導体パターン200と、第3コイルパターンCP3を構成する導体パターン45が形成されている。なお、本実施形態では、第2基材20の他方の表面22が磁性シート30の表面と対向する向きで配置されているが、第2基材20の一方の表面21が磁性シート30の表面と対向する向きで配置されていても構わない。
【0026】
第2コイルパターンCP2を構成する導体パターン200のパターン形状は、導体パターン100のパターン形状と同一である。導体パターン200は、ターン210,220,230,240,250,260からなる6ターン構成であり、ターン210が最外周に位置し、ターン260が最内周に位置する。このうち、ターン210,220,230,240,250は、スパイラル状の3本のスリットによって径方向に4分割されている。一方、ターン260は、スパイラル状の1本のスリットによって径方向に2分割されている。これにより、ターン210はライン211~214に4分割され、ターン220はライン221~224に4分割され、ターン230はライン231~234に4分割され、ターン240はライン241~244に4分割され、ターン250はライン251~254に4分割され、ターン260はライン261,262に2分割される。
【0027】
ライン211,221,231,241,251,261は、スパイラル状に6ターン巻回された連続的なラインであり、各ターンにおける最外周に位置する。ライン212,222,232,242,252,262は、スパイラル状に6ターン巻回された連続的なラインであり、各ターンにおいて2番目に外周に位置する。ライン213,223,233,243,253は、スパイラル状に5ターン巻回された連続的なラインであり、各ターンにおいて2番目に内周に位置する。ライン214,224,234,244,254は、スパイラル状に5ターン巻回された連続的なラインであり、各ターンにおける最内周に位置する。
【0028】
ライン211~214の外周端は、スルーホール導体を介して、端子電極E2に共通に接続される。一方、ライン261,262,253,254の内周端は、スルーホール導体304,303,302,301にそれぞれ接続される。これにより、端子電極E1と端子電極E2の間には、11ターンのラインが4本並列に接続されることになる。
【0029】
第3コイルパターンCP3を構成する導体パターン45は、約1ターン巻回された連続的なラインであり、第2コイルパターンCP2を構成する導体パターン200の外側に配置される。つまり、導体パターン200は、導体パターン45の開口領域(内径領域)に配置される。導体パターン45の一端及び他端はそれぞれスルーホール導体43,44に接続される。これにより、第3コイルパターンCP3は、合計で約2ターンとなる。
【0030】
第3コイルパターンCP3は、図4において破線で示すように、一部が第1コイルパターンCP1の第4ターンT4と重なる。これにより、第1コイルパターンCP1は第3コイルパターンCP3と結合する。第1コイルパターンCP1は、第2及び第3コイルパターンCP2,CP3とは異なり、外部に接続するための端子電極を有しておらず、第1基材10の表面11,12に形成された導体パターンによって完結する閉回路を構成している。第1コイルパターンCP1は、第3コイルパターンCP3と結合することによってブースターアンテナとして機能する。つまり、本実施形態においては、第3コイルパターンCP3からなるメインアンテナと、第1コイルパターンCP1からなるブースターアンテナによって、NFCによる通信が実現される。
【0031】
そして、ブースターアンテナである第1コイルパターンCP1は、y方向における開口幅がY1である第1ターンT1と、y方向における開口幅がY2(>Y1)である第2ターンT2と、y方向における開口幅がY3(>Y2)である第3ターンT3とを有しており、第3ターンT3のy方向における開口幅Y3が第1ターンT1のx方向における開口幅X1よりも小さい。これにより、クレジットカードのように横長形状を有するICカードに対する通信特性が高められるとともに、ICカードに内蔵されたアンテナコイルのy方向位置に関わらず、良好な通信特性を得ることが可能となる。
【0032】
また、図2において破線で示すように、第1コイルパターンCP1の第1ターンT1は全区間が第2コイルパターンCP2のパターン領域とz方向に重なる一方、第1コイルパターンCP1の第2ターンT2及び第3ターンT3は第2コイルパターンCP2のパターン領域とz方向に重なる区間と重ならない区間を有している。第2コイルパターンCP2のパターン領域とは、平面視で第2コイルパターンCP2を構成する導体パターンが存在する領域であり、導体パターンの延在方向(周方向)に対して直交する方向(径方向)がパターン領域の巻幅である。これにより、第1コイルパターンCP1の平面サイズを抑えつつ、第1コイルパターンCP1と第2コイルパターンCP2の結合が小さくなることから、良好な通信特性を得ることが可能となる。
【0033】
さらに、第1ターンT1の長辺と第2ターンT2の長辺のy方向におけるギャップをG1とし、第2ターンT2の長辺と第3ターンT3の長辺のy方向におけるギャップをG2とし、第3ターンT3の長辺と第4ターンT4の長辺のy方向におけるギャップをG3とした場合、ギャップG1とギャップG2は開口幅Y1の約半分であり、互いにほぼ同じである一方、ギャップG3はギャップG1,G2よりも小さい。これにより、ICカードに内蔵されたアンテナコイルのy方向位置に関わらず、良好な通信特性を得ることができるとともに、アンテナ装置1のy方向におけるサイズを小型化することができる。また、図2に示すように、第1コイルパターンCP1の第4ターンT4は、第2コイルパターンCP2と重ならないよう、x方向における中央部においてy方向における開口幅が拡大されている。これにより、第2コイルパターンCP2との結合を抑えつつ、第3コイルパターンCP3との結合が高められる。
【0034】
また、キャパシタ電極パターンCE1,CE2は、z方向から見て、第2コイルパターンCP2のパターン領域と重なる。このように、第2コイルパターンCP2のパターン領域と重なる位置にキャパシタ電極パターンCE1,CE2を配置することにより、第2コイルパターンCP2から生じる磁束がキャパシタ電極パターンCE1,CE2に印加されにくくなり、渦電流が抑えられる。特に、キャパシタ電極パターンCE1,CE2は、z方向から見て第1コイルパターンCP1の第2ターンT2の長辺と第3ターンT3の長辺のy方向におけるギャップに配置されており、これによりキャパシタ電極パターンCE1,CE2の位置は、第2コイルパターンCP2のパターン領域の巻幅の中心位置よりも外側にオフセットしている。その結果、第2コイルパターンCP2から生じる磁束の磁束密度が最も高い開口領域とキャパシタ電極パターンCE1,CE2の距離が離れることから、渦電流が効果的に低減される。
【0035】
図6は、アンテナ装置1の機能を説明するための模式図である。
【0036】
図6に示すように、本実施形態によるアンテナ装置1と通信対象である相手側機器2を、空間3を介して対向させると、第1及び第3コイルパターンCP1,CP3によって生じる磁束φ1は、相手側機器2に含まれる第4コイルパターンCP4と鎖交し、これによってNFCによる無線通信が実現される。無線通信する信号は、端子電極E3,E4を介して第3コイルパターンCP3に供給される。メインアンテナである第3コイルパターンCP3は、図6において符号Aで示すように、第1コイルパターンCP1と結合する。これにより、ブースターアンテナである第1コイルパターンCP1にも信号が供給される。また、第2コイルパターンCP2によって生じる磁束φ2は、相手側機器2に含まれる第5コイルパターンCP5と鎖交し、これによりワイヤレスによる電力伝送が実現される。
【0037】
図7は、本実施形態によるアンテナ装置1を用いたワイヤレス電力伝送デバイス90のブロック図である。
【0038】
図7に示すワイヤレス電力伝送デバイス90は、第1~第3コイルパターンCP1~CP3を有するアンテナ装置1と、第3コイルパターンCP3に接続された通信回路91と、第2コイルパターンCP2に接続された送電回路92とを備えている。通信回路91及び送電回路92は、制御回路93に接続されている。これにより、通信ライン94を介して送受信されるデータは、NFC用の第1及び第3コイルパターンCP1,CP3を介して通信することができるとともに、電源95によって供給される電力は、ワイヤレス電力伝送用の第2コイルパターンCP2を介してワイヤレスで送電することができる。なお、本実施形態では、アンテナ装置1の第3コイルパターンCP3が通信回路91に接続されているが、第3コイルパターンCP3を省略し、第1コイルパターンCP1を通信回路91に接続することにより、第1コイルパターンCP1をメインアンテナとしてNFCによる通信を実現しても構わない。
【0039】
図7に示すように、第1コイルパターンCP1には第2キャパシタC2が接続され、第3コイルパターンCP3には第1キャパシタC1が接続されている。図7では、第2コイルパターンCP2に対して第1キャパシタC1が並列に接続されているが、これに代えて或いはこれに加えて、第1キャパシタC1を第2コイルパターンCP2に対して直列に接続しても構わない。
【0040】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0041】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0042】
本開示によるアンテナ装置は、少なくとも第1、第2及び第3ターンを含む第1コイルパターンを備え、第1、第2及び第3ターンの開口部は、コイル軸方向から見て第1方向における開口幅が第1方向と直交する第2方向における開口幅がよりも大きい形状を有し、第2ターンの開口部の第2方向における開口幅は、第1ターンの開口部の第2方向における開口幅よりも大きく、第3ターンの開口部の第2方向における開口幅は、第2ターンの開口部の第2方向における開口幅よりも大きく、且つ、第1ターンの開口部の第1方向における開口幅よりも小さい。これによれば、ICカードに内蔵されたアンテナコイルの位置に関わらず良好な通信特性を得ることが可能なアンテナ装置を提供することが可能となる。
【0043】
本開示によるアンテナ装置は、第1コイルパターンとコイル軸方向に重なる第2コイルパターンをさらに備え、第1のコイルパターンの第2及び第3ターンは、第2コイルパターンとコイル軸方向に重なる区間と重ならない区間を有していても構わない。これによれば、第1コイルパターンの平面サイズを抑えつつ、第1コイルパターンと第2コイルパターンの結合が小さくなることから、良好な通信特性を得ることが可能となる。
【0044】
本開示によるアンテナ装置は、第1コイルパターンが形成された第1基材と、第2コイルパターンが形成された第2基材と、第1基材の一方及び他方の表面にそれぞれ設けられ、第1基材を介して対向する一対のキャパシタ電極パターンと、第2基材の一方又は他方の表面に設けられ、第2コイルパターンを囲む第3コイルパターンとをさらに備え、第1コイルパターンは、一端及び他端が一対のキャパシタ電極パターンに接続されることにより閉回路を構成し、第1コイルパターンは、第3ターンよりも外側に位置し、コイル軸方向から見て少なくとも一部が第3コイルパターンと重なる第4ターンをさらに含んでいても構わない。これによれば、第3コイルパターンがメインアンテナ、第1コイルパターンがブースターアンテナとして機能する。
【0045】
また、第4ターンの開口部は、コイル軸方向から見て第1方向における開口幅が第2方向における開口幅がよりも大きい形状を有し、第4ターンの第1方向に延在する区間と第3ターンの第1方向に延在する区間の第2方向におけるギャップは、第3ターンの第1方向に延在する区間と第2ターンの第1方向に延在する区間の第2方向におけるギャップよりも狭くても構わない。これによれば、ICカードに内蔵されたアンテナコイルの第2方向位置に関わらず、良好な通信特性を得ることができるとともに、アンテナ装置の第2方向におけるサイズを小型化することができる。
【0046】
さらに、一対のキャパシタ電極パターンは、コイル軸方向から見て第3ターンの第1方向に延在する区間と第2ターンの第1方向に延在する区間の第2方向におけるギャップに配置されていても構わない。これによれば、渦電流の影響を低減することが可能となる。
【0047】
また、本開示によるワイヤレス電力伝送デバイスは、上記アンテナ装置と、第3コイルパターンに接続される通信回路と、第2コイルパターンに接続される送電回路とを備える。これによれば、ワイヤレスによる電力伝送とNFCによる通信を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 アンテナ装置
2 相手側機器
3 空間
10 第1基材
11 第1基材の一方の表面
12 第1基材の他方の表面
20 第2基材
21 第2基材の一方の表面
22 第2基材の他方の表面
30 磁性シート
41,42,45 導体パターン
43,44 スルーホール導体
51,52 導体パターン
53~57 スルーホール導体
61,62 導体パターン
90 ワイヤレス電力伝送デバイス
91 通信回路
92 送電回路
93 制御回路
94 通信ライン
95 電源
100,200 導体パターン
110,120,130,140,150,160,210,220,230,240,250,260 ターン
111~114,121~124,131~134,141~144,151~154,161,162,211~214,221~224,231~234,241~244,251~254,261,262 ライン
301~304 スルーホール導体
CE1,CE2 キャパシタ電極パターン
E1~E4 端子電極
G1~G3 ギャップ
X1,Y1~Y3 開口幅
φ1,φ2 磁束
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7