(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】トルク計および計測システム
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20250318BHJP
【FI】
G01L3/10 311
(21)【出願番号】P 2021105104
(22)【出願日】2021-06-24
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】小田 洋司
(72)【発明者】
【氏名】宮田 徹
(72)【発明者】
【氏名】袈裟丸 定
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-321335(JP,A)
【文献】特開2017-207451(JP,A)
【文献】特開昭60-038632(JP,A)
【文献】再公表特許第2015/108153(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/00-3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転シャフトと、第2回転シャフトと、前記第1回転シャフトと前記第2回転シャフトの間で伝達されるトルクを検出するトルク計とを備えた計測システムであって、
前記トルク計は、第1円盤部と、第2円盤部と、第1円盤部と第2円盤部を連結する起歪部と、前記起歪部に生じる歪みを検出する歪み検出手段とを備え、
前記第1回転シャフトの端部には、前記第1円盤部とボルトで連結されたフランジである第1フランジが設けられており、
前記第2回転シャフトの端部には、前記第2円盤部とボルトで連結されたフランジである第2フランジが設けられており
前記第1フランジの前記第1円盤部と対向する面の、前記第1円盤部を連結するボルトが挿入されたボルト孔もしくはネジ穴の周囲の領域の少なくとも一部の部分は、当該第1フランジと前記第1円盤部とが軸方向に当接する箇所が、当該部分のみとなるように、前記第1円盤部方向に突出した形状を有していることを特徴とする計測システム。
【請求項2】
請求項1記載の計測システムであって、
前記第2フランジの前記第2円盤部と対向する面の、前記第2円盤部を連結するボルトが挿入されたボルト孔もしくはネジ穴の周囲の領域の少なくとも一部の部分は、当該第2フランジと前記第2円盤部とが軸方向に当接する箇所が、当該部分のみとなるように、前記第2円盤部方向に突出した形状を有していることを特徴とする計測システム。
【請求項3】
第1回転シャフトと、第2回転シャフトと、前記第1回転シャフトと前記第2回転シャフトの間で伝達されるトルクを検出するトルク計とを備えた計測システムであって、
前記トルク計は、第1円盤部と、第2円盤部と、第1円盤部と第2円盤部を連結する起歪部と、前記起歪部に生じる歪みを検出する歪み検出手段とを備え、
前記第1回転シャフトの端部には、前記第1円盤部とボルトで連結されるフランジである第1フランジが設けられており、
前記第2回転シャフトの端部には、前記第2円盤部とボルトで連結されるフランジである第2フランジが設けられており
当該計測システムは、孔を有する環状の部材である第1環状部材を有し、
当該第1環状部材は、前記第1フランジと前記第1円盤部とが軸方向に直接当接しないように前記第1フランジと前記第1円盤部との間に配置されており、
前記第1フランジと前記第1円盤部とを連結するボルトは、前記第1フランジと前記第1円盤部との間において前記第1環状部材の孔に通された形態で、前記第1フランジと前記第1円盤部を連結していることを特徴とする計測システム。
【請求項4】
請求項3記載の計測システムであって、
孔を有する環状の部材である第2環状部材を有し、
当該第2環状部材は、前記第2フランジと前記第2円盤部とが軸方向に直接当接しないように前記第2フランジと前記第2円盤部との間に配置されており、
前記第2フランジと前記第2円盤部とを連結するボルトは、前記第2フランジと前記第2円盤部との間において前記第2環状部材の孔に通された形態で、前記第2フランジと前記第2円盤部を連結していることを特徴とする計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸によって伝達されるトルクを計測する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転軸によって伝達されるトルクを計測する技術としては、
図10aに示すトルク計9が知られている(たとえば、特許文献1)。
図10aはトルク計9の一部を切り欠いた側面図であり、斜線のハッチングを施した部分が切り欠いた後の断面を表す。
図示するように、このトルク計9は、中空の円筒形状の中空体部91の軸方向の一端に駆動側フランジ部92を設け、他端に負荷側フランジ部93を設けたものである。中空体部91の軸方向の中央部は肉薄に形成されており、中空体部91の内周面の肉薄部分にひずみゲージ94が固定されている。
【0003】
図10bに示すように、トルク計9の駆動側フランジ部92には、駆動側の回転軸100のフランジ101がボルトによって締結され、負荷側フランジ部93には負荷側の回転軸110のフランジ111がボルトによって締結される。
【0004】
このようなトルク計9において、駆動側の回転軸100と負荷側の回転軸110との間で伝達されるトルクが、中空体部91の内周面の肉薄部分の歪みとしてひずみゲージ94によって計測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10a、bに示したトルク計9によれば、計測にヒステリシスが発生すると共に、発生するヒステリシスの特性が、駆動側の回転軸100のフランジ101の剛性や負荷側の回転軸110のフランジ111の剛性に依存して変化してしまうという問題があった。
【0007】
図11aのF1、F2は、トルク計に加える負荷トルクの、0から正の所定値までの変化と、正の所定値から負の所定値までの変化と、負の所定値から0までの変化とを連続的に行ったときの、負荷トルク-誤差の特性の例を示したものであり、ヒステリシスが発生している。
【0008】
図11aにおいて、F1はF2よりもフランジの厚さが薄い場合の特性を示しており、
図10b、cに示すように、剛性に関わる要素であるフランジ101の厚さd1やフランジ111の厚さd2が異なると、発生するヒステリシスの特性が異なったものとなる。
【0009】
また、
図11bはフランジ厚さ-感度の特性の例を示したものであり、
図10b、cに示すように剛性に関わる要素であるフランジ101の厚さd1やフランジ111の厚さd2が異なると、トルク計の計測の感度が異なるものとなってしまう。なお、
図11bは、フランジの厚さが所定の基準厚さであるときの感度を0としてフランジ厚さ-感度の特性を示したものである。
【0010】
このように、
図10a、bに示したトルク計9によれば、駆動側の回転軸100のフランジ101の剛性や負荷側の回転軸110のフランジ111の剛性に依存して感度が変化してしまうという問題もあった。
【0011】
このような計測のヒステリシスや、締結される回転軸のフランジ剛性に依存した感度やヒステリシス特性の変化が、トルク計における高精度なトルク計測の妨げとなっていた。
本発明は、より高精度なトルク計測を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題達成のために、本発明は、トルクを検出するトルク計に、第1回転シャフトのフランジである第1フランジとボルトで連結される第1円盤部と、第2回転シャフトのフランジである第2フランジとボルトで連結される第2円盤部と、第1円盤部と第2円盤部を連結する起歪部と、前記起歪部に生じる歪みを検出する歪み検出手段とを備えたものである。ただし、前記第1フランジが連結されたときに前記第1フランジと対向する前記第1円盤部の面の、当該第1円盤部と前記第1フランジとを連結するボルトが挿入されるボルト孔もしくはネジ穴の周囲の領域の少なくとも一部の部分は、前記第1フランジが連結された状態において、当該第1円盤部と前記第1フランジとが軸方向に当接する箇所が、当該部分のみとなるように、前記第1フランジ方向に突出した形状を有している。
【0013】
このようなトルク計において、前記第2フランジが連結されたときに前記第2フランジと対向する前記第2円盤部の面の、当該第2円盤部と前記第2フランジとを連結するボルトが挿入されるボルト孔もしくはネジ穴の周囲の領域の少なくとも一部の部分を、前記第2フランジが連結された状態において、当該第2円盤部と前記第2フランジとが軸方向に当接する箇所が、当該部分のみとなるように、前記第2フランジ方向に突出した形状としてよい。
【0014】
また、前記課題達成のために、本発明は、第1回転シャフトと、第2回転シャフトと、前記第1回転シャフトと前記第2回転シャフトの間で伝達されるトルクを検出するトルク計とを備えた計測システムにおいて、前記トルク計に、第1円盤部と、第2円盤部と、第1円盤部と第2円盤部を連結する起歪部と、前記起歪部に生じる歪みを検出する歪み検出手段とを備えたものである。また、前記第1回転シャフトの端部には、前記第1円盤部とボルトで連結されるフランジである第1フランジを設け、前記第2回転シャフトの端部には、前記第2円盤部とボルトで連結されるフランジである第2フランジを設け、前記第1フランジの前記第1円盤部と対向する面の、前記第1円盤部を連結するボルトが挿入されたボルト孔もしくはネジ穴の周囲の領域の少なくとも一部の部分を、当該第1フランジと前記第1円盤部とが軸方向に当接する箇所が、当該部分のみとなるように、前記第1円盤部方向に突出した形状としたものである。
【0015】
この計測システムにおいて、前記第2フランジの前記第2円盤部と対向する面の、前記第2円盤部を連結するボルトが挿入されたボルト孔もしくはネジ穴の周囲の領域の少なくとも一部の部分を、当該第2フランジと前記第2円盤部とが軸方向に当接する箇所が、当該部分のみとなるように、前記第2円盤部方向に突出した形状としてよい。
【0016】
また、前記課題達成のために、本発明は、第1回転シャフトと、第2回転シャフトと、前記第1回転シャフトと前記第2回転シャフトの間で伝達されるトルクを検出するトルク計とを備えた計測システムにおいて、前記トルク計に、第1円盤部と、第2円盤部と、第1円盤部と第2円盤部を連結する起歪部と、前記起歪部に生じる歪みを検出する歪み検出手段とを備えたものである。また、前記第1回転シャフトの端部に、前記第1円盤部とボルトで連結されるフランジである第1フランジを設け、前記第2回転シャフトの端部に、前記第2円盤部とボルトで連結されるフランジである第2フランジを設けたものである。また、当該計測システムに、孔を有する環状の部材である第1環状部材を設け、当該第1環状部材を、前記第1フランジと前記第1円盤部とが軸方向に直接当接しないように前記第1フランジと前記第1円盤部との間に配置すると共に、前記第1フランジと前記第1円盤部とを連結するボルトを、前記第1フランジと前記第1円盤部との間において前記第1環状部材の孔に通した形態で、前記第1フランジと前記第1円盤部を連結する。
【0017】
このような計測システムに、孔を有する環状の部材である第2環状部材を設け、当該第2環状部材を、前記第2フランジと前記第2円盤部とが軸方向に直接当接しないように前記第2フランジと前記第2円盤部との間に配置し、前記第2フランジと前記第2円盤部とを連結するボルトを、前記第2フランジと前記第2円盤部との間において前記第2環状部材の孔に通した形態で、前記第2フランジと前記第2円盤部を連結してもよい。
【0018】
以上のようなトルク計や計測システムによれば、第1円盤と第1フランジとが軸方向に当接する箇所や、第2円盤と第2フランジとが軸方向に当接する箇所をボルトの周辺の小さな面積の部分に集中させるので、第1フランジや第2フランジの厚さや剛性の違いや加わるトルクの大きさに応じた応力分布の変化を抑制できる。これによって、トルク計の計測のヒステリシスを小さく抑えることができると共に、第1フランジや第2フランジの厚さや剛性の違いによる計測のヒステリシスや計測の感度の変化を抑制でき、トルク計測の高精度化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、より高精度なトルク計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係るトルク測定装置、計測システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るトルク計を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るトルク測定装置の回転検出の構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るトルク計への回転シャフトの連結の構造を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るトルク計のボルト孔周辺を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るトルク計のネジ穴と貫通孔の周辺を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るトルク計の他の構成例を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るトルク計の他の構成例を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るトルク計の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について説明する。
図1aに本実施形態に係るトルク測定装置の構成を示す。
図1aにおいて、
図1a1はトルク測定装置の正面図を、
図1a2はトルク測定装置の側面図を、
図1a3はトルク測定装置の背面図を表す。
図示するように、トルク測定装置は、トルク計1とステータ2より構成される。ステータ2は、円環状のリング部21を備えている。
トルク測定装置を用いて、たとえば、
図1bに示すような計測システムが構成される。
図1bの計測システムにおいて、トルク計1の正面側には第1回転シャフト3の端部に設けられたフランジである第1フランジ31が連結され、トルク計1の背面側には第2回転シャフト4の端部に設けられたフランジである第2フランジ41が連結されている。第2回転シャフト4は、エンジンや電気モータ等の駆動装置6によって回転駆動され、第1回転シャフト3はダイナモメータ等の負荷装置5に連結されており、トルク測定装置は駆動装置6と負荷装置5との間で働くトルクを測定する。ただし、第2回転シャフト4を負荷装置5に連結し、第1回転シャフト3を駆動装置6によって回転駆動する構成とすることもできる。
【0022】
ここで、計測システムにおいて、トルク計1は、ステータ2のリング部21と非接触な態様で、軸方向の一部がリング部21の中空内に位置するように、トルク計1に連結した第1回転シャフト3と第2回転シャフト4によって支持される。
【0023】
ステータ2のリング部21は、ワイヤレス給電の送電用コイルとワイヤレス通信アンテナを兼ねるワンターンのコイルを形成しており、ステータ2は、トルク計1へのワイヤレス送電と、トルク計1とのワイヤレス通信を行うことができる。
【0024】
図2にトルク計1の構成を示す。
図2a1にトルク計1の正面図を、
図2a2にトルク計1の側面図を、
図2a3にトルク計1の背面図を示す。
また、
図2a1、a3に示すように、正面からみて時計まわりに0度から360度まで進む位相角を定義するものとして、
図2bに、
図2a1に示す位相角0度の切断線A-Aによる断面図を示す。ここで、iを0から7までの整数として、位相角0+(45×i)度の切断線による断面は
図2bと同様である。
【0025】
また、
図2cに、
図2a3に示す位相角22.5度の切断線B-Bによる断面図を示す。ここで、位相角22.5+(45×i)度の切断線による断面は
図2cと同様である。
また、
図2dに、
図2a3に示す位相角11.25度の切断線C-Cによる断面図を示す。ここで、位相角11.25+(45×i)度の切断線による断面は
図2dと同様である。
各図に示すように、トルク計1は、中空の円筒形状の起歪部11と、起歪部11の正面側にフランジ状に設けた、中央孔のある円盤形状の第1円盤部12と、起歪部11の背面側にフランジ状に設けた、中央孔のある円盤形状の第2円盤部13と、第2円盤部13の外周面に設けられた補助フランジ14を有する。
【0026】
また、起歪部11の軸方向についての中央の部分は歪み易いように肉薄に形成されており、
図2dに示すように、この肉薄部分の位相角11.25+(45×i)度の位置にひずみゲージ15が固定されている。
【0027】
第1円盤部12は、周に沿って等位相角間隔で配置された8個のボルト孔121を有し、各ボルト孔121は位相角0+(45×i)度の位置に設けられている。
第2円盤部13は、周に沿って等位相角間隔で配置された8個のネジ穴131を有し、各ネジ穴131は位相角22.5+(45×i)度の位置に設けられている。
また、第2円盤部13は、周に沿って等位相角間隔で配置された8個の貫通孔132を有し、各貫通孔132は位相角0+(45×i)度の位置に設けられている。
第1円盤部12の外周端部には、ワイヤレス給電の受電用コイルとワイヤレス通信アンテナを兼ねるコイル16が巻き回されている。
ここで、
図1aに示すように、第1円盤部12はステータ2のリング部21の中空内に配置されており、トルク計1は、第1円盤部12の外周端部に巻き回されたコイル16を介してステータ2からワイヤレスで電力を受けることができると共に、ステータ2とのワイヤレス通信を行うことができる。
【0028】
ひずみゲージ15はコイル16に給電された電力を用いて起歪部11の歪みを検出し、ひずみゲージ15で検出された歪みはコイル16を介してワイヤレス通信によってステータ2に送信される。
【0029】
第2円盤部13の外周面に設けられた補助フランジ14を用いて、
図3aの側面図、
図3bの背面図に示すように、回転検出に用いる円環形状の歯車17をトルク計1に装備することができる。歯車17を用いて、回転検出を行う場合、ステータ2に、歯車17の歯の通過に伴う磁気的変化を検出する磁気センサ22を設け、磁気センサ22の出力からトルク計1の回転角や回転速度を算定する。ただし、歯車17に代えて、周方向にスリットを並べた円環形状の円板を、補助フランジ14を用いてトルク計1に装備し、ステータ2に、磁気センサ22に代えて、スリットの通過に伴う光学的変化を検出する光学センサを設け、光学センサの出力からトルク計1の回転角や回転速度を算定してもよい。
【0030】
次に、計測システム構成時の、第1回転シャフト3と第2回転シャフト4と、トルク計1との連結の構造について説明する。
図4aに模式的に示すように、トルク計1の正面側には、第1回転シャフト3の端部の第1フランジ31が、トルク計1の背面側には第2回転シャフト4の端部の第2フランジ41が連結され、トルク計1はひずみゲージ15によって、第2回転シャフト4と第1回転シャフト3との間で伝達されるトルクを起歪部11の歪みとして検出する。
【0031】
第1フランジ31のトルク計1への連結は、
図4bの側面図に示すようにボルトを用いて、第1円盤部12と第1フランジ31を締結することにより行う。また、第2フランジ41のトルク計1への連結は、
図4bの側面図に示すようにボルトを用いて、第2円盤部13と第2フランジ41を締結することにより行う。
【0032】
この第1回転シャフト3、第2回転シャフト4のトルク計1への連結は次の手順で行う。
まず、
図4c1に示すように、第2円盤部13の貫通孔132を通過させたボルトを第1円盤部12のボルト孔121に挿入し、ボルト孔121に挿入したボルトを、第1回転シャフト3の第1フランジ31に設けられている連結用ネジ穴311に螺合することにより、第1円盤部12と第1フランジ31を締結する。
【0033】
次に、
図4c2に示すように、第2回転シャフト4の第2フランジ41に設けられている連結用ボルト孔に挿入したボルトを、第2円盤部13のネジ穴131に螺合することにより、第2円盤部13と第2フランジ41を締結する。
【0034】
このように本実施形態に係るトルク計1は、第1フランジ31と第2フランジ41の双方のトルク計1に対する締結を背面側から行うことができる。
次に、第1円盤部12のボルト孔121の周辺を正面側から斜視したようすを
図5a1に模式的に示し、第1円盤部12のボルト孔121の周辺の断面を
図5a2に模式的に示す。
【0035】
第1円盤部12の正面側端面は、ボルト孔121の周辺を除き、軸方向を法線とする同じ平面を形成しているが、図示するように、ボルト孔121の周辺は、ボルト孔121を中央孔とする円環状に正面方向に向かって僅かに、ボルト孔121の周辺外の平面よりも突出している(凸となっている)。凸部の形状は例えば、ボルト孔121の直径はφ19、ボルト孔121の周辺の平面より突出している部分の高さは0.1mm、直径はφ29である。
【0036】
一方、第1回転シャフト3の第1フランジ31の第1円盤部12の正面側端面と対向する端面は平面に形成されている。
したがって、第1フランジ31をボルトで第1円盤部12に締結した状態において、第1フランジ31と軸方向に接触する第1円盤部12の領域は、
図5bに灰色の塗りつぶしで示したボルト孔121の周辺の領域のみとなる。
【0037】
次に、第2円盤部13のネジ穴131の周辺を背面側から斜視したようすを
図6a1に模式的に示し、第2円盤部13のネジ穴131の断面を
図6a2に模式的に示す。
第2円盤部13の背面側端面は、ネジ穴131の周辺を除き、軸方向を法線とする同じ平面を形成しているが、図示するように、ネジ穴131の周辺は、ネジ穴131を中央孔とする円環状に背面方向に向かって僅かに、ネジ穴131の周辺外の平面よりも突出している(凸となっている)。凸部の形状は例えば、ネジ穴131はM18、ネジ穴131の周辺の平面より突出している部分の高さは0.1mm、直径はφ29である。
【0038】
なお、第2円盤部13の貫通孔132の周辺は、
図6b1、
図6b2に示すように背面方向に突出していない。
一方、第2回転シャフト4の第2フランジ41の第2円盤部13の背面側端面と対向する端面は平面に形成されている。
したがって、第2フランジ41をボルトで第2円盤部13に締結した状態において、第2フランジ41と軸方向に接触する第2円盤部13の領域は、
図6cに灰色の塗りつぶしで示したネジ穴131の周辺の領域のみとなる。
【0039】
このようなトルク計1によれば、第1円盤部12と第1フランジ31とが軸方向に接触する接触領域の面積や、第2円盤部13と第2フランジ41とが軸方向に接触する接触領域の面積を、接触領域をボルト周辺の領域のみに集中させた形態で低減することができる。
【0040】
そして、本発明者らは、実験によって、このような接触領域面積の低減により、トルク計1の計測のヒステリシスが小さく抑えられると共に、第1フランジ31や第2フランジ41の厚さや剛性の違いによる計測のヒステリシスの変化が抑制されることを確認した。
【0041】
このような効果は以下の理由により得られるものと考えられる。
第1円盤部12の正面側端面の全面を接触面として第1フランジ31に当接させて、第1円盤部12と第1フランジ31とを締結した場合、加わるトルクによって第1フランジ31が変形して第1円盤部12と第1フランジ31の接触面積が変化すると、接触面積が減少するほど接触面に集中するように、第1フランジ31の応力分布が変化する。第1フランジ31の変形は加わるトルクの大きさに依存するので、第1フランジ31の応力分布も加わるトルクの大きさに応じて変化する。また、応力はトルクに抗する力として発生するため、トルクの増加時と減少時で応力変化は逆方向となる。
【0042】
このような、加わるトルクに応じた第1円盤部12と第1フランジ31の接触面積の変化に伴う、第1フランジ31の応力分布の変化と応力変化の方向の変化が、ひずみゲージ15の計測のヒステリシスを発生させている。
【0043】
一方、本実施形態のトルク計1では、第1円盤部12と第1フランジ31との接触箇所はボルトの周辺にのみ集中しており、その接触面積も小さい。したがって、加わるトルクの変化による第1円盤部12と第1フランジ31の接触面積の変化は小さく、この変化の第1フランジ31の厚さ、剛性の相違による違いも小さくなる。
【0044】
この結果、トルク計1の計測のヒステリシスを小さく抑えることができると共に、第1フランジ31の厚さや剛性の違いによる計測のヒステリシスの変化を抑制することができる。
【0045】
第2円盤部13と第2フランジ41についても同様であり、ヒステリシスを小さく抑えることができると共に第2フランジ41の厚さ、剛性の違いによるトルク計1のヒステリシスの変化を小さく抑制することができる。
【0046】
また、本発明者らは、実験によって、上述のような接触面積の低減により、第1フランジ31や第2フランジ41の厚さ、剛性の違いによるトルク計1の感度の変化も抑制されることを確認した。
【0047】
このような効果は以下の理由により得られるものと考えられる。
第1円盤部12の正面側端面の全面を接触面として第1フランジ31に当接させて、第1円盤部12と第1フランジ31とを締結した場合、第1フランジ31の厚さ、剛性の相違によって、締結した状態における第1円盤部12の接触面の応力分布が変化し、第1円盤部12と第1フランジ31との間のトルクの伝達経路が異なったものとなる。このために、第1フランジ31の厚さ、剛性の相違に応じて、トルクが加わったときの起歪部11の応力分布、発生する歪みの形態が異なったものとなり、異なる歪みがひずみゲージ15で検出される。この結果、第1フランジ31の厚さ、剛性の相違によって、トルク計1の感度が異なったものとなってしまう。
【0048】
一方、本実施形態のトルク計1では、第1円盤部12と第1フランジ31との接触箇所はボルト周辺にのみ集中しており、その接触面積も小さい。したがって、第1フランジ31の厚さ、剛性が相違していても、締結した状態における第1円盤部12の接触面の応力分布の変化は小さく、この結果、第1フランジ31の厚さ、剛性の違いによるトルク計1の感度の変化を小さく抑制することができる。
【0049】
第2円盤部13と第2フランジ41についても同様であり、第2フランジ41の厚さ、剛性の違いによるトルク計1の感度の変化を小さく抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上の実施形態では、第1円盤部12の正面側端面のボルト孔121の周辺を正面方向に突出させることにより、第1円盤部12と第1回転シャフト3の第1フランジ31とが軸方向に接触する領域がボルト孔121の周辺の領域のみとなるようにしたが、第1円盤部12の正面側端面のボルト孔121の周辺を突出させずに正面側端面を平面に形成し、その代わりに、
図7a1の第1回転シャフト3と第1フランジ31の模式的な斜視図や
図7a2の第1フランジ31の連結用ネジ穴311の周辺の模式的な斜視図に示すように、第1回転シャフト3の第1フランジ31の連結用ネジ穴311の周辺を背面方向に僅かに突出させることにより、第1円盤部12と第1回転シャフト3の第1フランジ31とが軸方向に接触する領域をボルト周辺の領域のみとしてもよい。
【0050】
また、以上の実施形態では、第2円盤部13の背面側端面のネジ穴131の周辺を背面方向に突出させることにより、第2円盤部13と第2回転シャフト4の第2フランジ41とが軸方向に接触する領域がネジ穴131の周辺の領域のみとなるようにしたが、これは、第2円盤部13の背面側端面のネジ穴131の周辺を突出させずに背面側端面を平面に形成し、その代わりに、
図7b1の第2回転シャフト4と第2フランジ41の模式的な斜視図や
図7b2の第2フランジ41の連結用ボルト孔の周辺の模式的な斜視図に示すように、第2回転シャフト4の第2フランジ41の連結用ボルト孔周辺を正面方向に僅かに突出させることにより、第2円盤部13と第2回転シャフト4の第2フランジ41とが軸方向に接触する領域をボルト周辺の領域のみとしてもよい。
【0051】
また、他の実施形態は、第1円盤部12の正面側端面のボルト孔121の周辺を突出させずに正面側端面を平面に形成し、その代わりに、円環部材を第1円盤部12と第1回転シャフト3の第1フランジ31との連結に用いるボルトに対してワッシャ状に用いてもよい。
【0052】
この場合には、
図8a1の模式図、
図8a2の断面図に示すように、第1円盤部12と第1フランジ31との連結に用いるボルトを、第1円盤部12の正面側端面と第1フランジ31の間において円環部材7の中央孔を通して、第1フランジ31の連結用ネジ穴311に螺合する。
【0053】
図8a2に円環部材7を黒塗りで示したように、このように円環部材7を用いても、第1円盤部12と第1フランジ31とが軸方向に接触する領域をボルト周辺の領域に限定でき、第1円盤部12と第1フランジ31との接触面積を低減することができる。
【0054】
同様に、第2円盤部13の背面側端面のネジ穴131の周辺を突出させずに背面側端面を平面に形成し、その代わりに、円環部材7を第2円盤部13と第2回転シャフト4の第2フランジ41との連結に用いるボルトに対してワッシャ状に用いてもよい。
【0055】
この場合には、
図8b1、
図8b2に示すように、第2円盤部13と第2フランジ41との連結に用いるボルトを、第2円盤部13の背面側端面と第2フランジ41の間において円環部材7の中央孔を通して、第2円盤部13のネジ穴131に螺合する。
【0056】
図8b2に円環部材7を黒塗りで示したように、このように円環部材7を用いても、第2円盤部13と第2フランジ41とが軸方向に接触する領域をボルト周辺の領域に限定でき、第2円盤部13と第2フランジ41との接触面積を低減することができる。
【0057】
以上の実施形態では、第1円盤部12と第1フランジ31とがボルト孔121の周辺でのみ接触するように構成したが、軸方向に接触する領域がボルト孔121の周辺の領域に限定される形態であれば、第1円盤部12と第1フランジ31とが接触するボルト孔121の周辺以外の領域が存在してもよい。
【0058】
このようなボルト孔121の周辺以外の第1円盤部12と第1フランジ31が接触する領域としては、第1円盤部12と第1フランジ31のセンタリングのために設けた構造において、径方向に第1円盤部12と第1フランジ31を接触させる領域などとしてよい。
【0059】
同様に、第2円盤部13と第2フランジ41がネジ穴131周辺でのみ接触するように構成したが、軸方向に接触する領域がネジ穴131の周辺の領域に限定される形態であれば、第2円盤部13と第2フランジ41とが接触するネジ穴131の周辺以外の領域が存在してもよい。
【0060】
このようなネジ穴131の周辺以外の第2円盤部13と第2フランジ41が接触する領域としては、第2円盤部13と第2フランジ41のセンタリングのために設けた構造において、径方向に第2円盤部13と第2フランジ41を接触させる領域などとしてよい。
【0061】
たとえば、
図9a1の背面図、
図9a2の背面方向から見た斜視図に示すように、第2円盤部13の中央孔の回りに背面方向に突出するリング状の突形状部81を設け、
図9b1に示すように、第1フランジ31に第1円盤部12の中央孔と嵌まり合う円形状の凸部82を設け、
図9b2に示すように、第2フランジ41に第2円盤部13の突形状部81と嵌まり合う円形状の凹部83を設け、
図9cの断面図に示すように、第1フランジ31の凸部82が第1円盤部12の中央孔に挿入される形態で両者を遊嵌して第1フランジ31と第1円盤部12のセンタリングを行い、第2円盤部13の突形状部81が第2フランジ41の凹部83に挿入される形態で両者を遊嵌して第2フランジ41と第2円盤部13のセンタリングを行うようにしてよい。
【0062】
ただし、第1フランジ31の凸部82の形状は第1フランジ31と第1円盤部12を締結したときに両者が軸方向に接しないように設定し、第2円盤部13の突形状部81と第2フランジ41の凹部83の形状は、第2フランジ41と第2円盤部13を締結したときに両者が軸方向に接しないように設定する。
【符号の説明】
【0063】
1…トルク計、2…ステータ、3…第1回転シャフト、4…第2回転シャフト、5…負荷装置、6…駆動装置、7…円環部材、9…トルク計、11…起歪部、12…第1円盤部、13…第2円盤部、14…補助フランジ、15…ひずみゲージ、16…コイル、17…歯車、21…リング部、22…磁気センサ、31…第1フランジ、41…第2フランジ、81…突形状部、82…凸部、83…凹部、91…中空体部、92…駆動側フランジ部、93…負荷側フランジ部、121…ボルト孔、131…ネジ穴、132…貫通孔、311…連結用ネジ穴。