(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】錠剤印刷装置、錠剤印刷方法
(51)【国際特許分類】
A61J 3/06 20060101AFI20250318BHJP
【FI】
A61J3/06 Q
(21)【出願番号】P 2021118149
(22)【出願日】2021-07-16
【審査請求日】2024-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平野 梓
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 素未
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-49651(JP,A)
【文献】特開2021-78677(JP,A)
【文献】特開2017-29334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤を搬送する搬送
装置と、
前記搬送
装置によって搬送される前記錠剤を撮像する撮像装置と、
前記搬送
装置によって搬送される前記錠剤の搬送方向において前記撮像装置よりも下流側で、前記錠剤に印刷を行う印刷ヘッド装置と、
前記搬送方向において前記印刷ヘッド装置よりも下流側で、前記錠剤の印刷状態を確認する印刷状態確認装置と、
前記印刷ヘッド装置による印刷処理を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記撮像装置により撮像した画像に基づき前記錠剤の位置ずれ情報を生成し、前記位置ずれ情報に基づいて前記錠剤の印刷条件を設定し、
前記制御部は、前記印刷状態確認装置の結果に基づき前記印刷ヘッド装置における吐出不良ノズルの位置を特定し、前記位置ずれ情報に基づいて設定された前記印刷条件が、前記吐出不良ノズルを使用する印刷条件である場合には、当該印刷条件を用い
る印刷を禁止する
とともに、前記位置ずれ情報に基づいて設定された前記印刷条件が、前記吐出不良ノズルを使用しない印刷条件である場合には、当該印刷条件を用いる印刷を行うように制御することを特徴とする錠剤印刷装置。
【請求項2】
前記錠剤の一方の面に印刷を行う第1の印刷装置と、
前記第1の印刷装置より下流側において、前記錠剤の他方の面に印刷を行う第2の印刷装置と、を有し、
前記撮像装置および前記印刷ヘッド装置は、前記第1の印刷装置と前記第2の印刷装置とにそれぞれ設けられ、
前記制御部は、前記第1の印刷装置に設けられる前記印刷ヘッド装置に前記吐出不良ノズルが存在し、前記印刷条件が、前記第1の印刷装置における前記印刷ヘッド装置の前記吐出不良ノズルを使用する印刷条件である場合には、前記第1の印刷装置における前記印刷ヘッド装置による印刷を禁止するとともに、前記第2の印刷装置における前記印刷ヘッド装置による印刷も行わないことを特徴とする請求項1に記載の錠剤印刷装置。
【請求項3】
前記錠剤の一方の面に印刷を行う第1の印刷装置と、
前記第1の印刷装置より下流側において、前記錠剤の他方の面に印刷を行う第2の印刷装置と、を有し、
前記撮像装置および前記印刷ヘッド装置は、
前記第1の印刷装置と
前記第2の印刷装置とにそれぞれ設けられ、
前記制御部は、前記第2の印刷装置に設けられる前記印刷ヘッド装置に前記吐出不良ノズルが存在
する場合、
前記第1の印刷装置の前記撮像装置により撮像した画像に基づき前記錠剤の位置ずれ情報を生成し、前記位置ずれ情報に基づいて前記錠剤の前記第2の印刷装置における印刷条件を設定し、前記印刷条件が、前記第2の印刷装置における前記印刷ヘッド装置の前記吐出不良ノズルを使用する印刷条件である場合には、前記第1の印刷装置の前記印刷ヘッド装置においても印刷を行わないように制御することを特徴とする請求項
1に記載の錠剤印刷装置。
【請求項4】
前記錠剤の一方の面に印刷を行う第1の印刷装置と、
前記第1の印刷装置より下流側において、前記錠剤の他方の面に印刷を行う第2の印刷装置と、
前記第1の印刷装置および前記第2の印刷装置の下流側に設けられ、前記錠剤を回収する回収装置と、を有し、
前記印刷ヘッド装置は、
前記第1の印刷装置と
前記第2の印刷装置とにそれぞれ設けられ、
前記回収装置は、前記第1の印刷装置および前記第2の印刷装置で正常に印刷を行った良品である前記錠剤を回収する良品回収装置と、前記第1の印刷装置と前記第2の印刷装置の少なくともいずれかにおいて正常に印刷が行えなかった不良品である前記錠剤を回収する不良品回収装置と、
前記吐出不良ノズルが前記第2の印刷装置に存在する場合で、
前記制御部により前記第2の印刷装置における前記印刷ヘッド装置の前記吐出不良ノズルを使用する印刷条件による印刷が禁止された結果、
前記第1の印刷装置による前記錠剤の一方の面の印刷は正常に行われ、前記錠剤の他方の面に印刷が行えなかった前記錠剤を
回収する回収装置と、を有することを特徴とする請求項1に記載の錠剤印刷装置。
【請求項5】
錠剤を搬送
装置により搬送する工程と、
前記搬送
装置により搬送される前記錠剤を撮像する撮像工程と、
前記搬送
装置によって搬送される前記錠剤の搬送方向における前記撮像工程よりも下流側において、印刷ヘッド装置により印刷を行う工程と、
前記搬送方向における前記印刷ヘッド装置よりも下流側において、前記錠剤の印刷状態を確認する印刷状態確認工程と、を有し、
前記撮像工程において撮像した画像に基づき前記錠剤の位置ずれ情報を生成し、前記位置ずれ情報に基づいて前記錠剤の印刷条件を設定し、
前記印刷状態確認工程の結果に基づき前記印刷ヘッド装置における吐出不良ノズルの位置を特定し、前記位置ずれ情報に基づいて設定された前記印刷条件が前記吐出不良ノズルを使用する印刷条件である場合に、当該印刷条件を用い
る印刷を
行わないようにするとともに、前記吐出不良ノズルを使用しない印刷条件である場合には、
当該印刷条件を用いる印刷を
行うことを特徴とする錠剤印刷方法。
【請求項6】
前記撮像工程および前記印刷を行う工程は、前記錠剤の一方の面の印刷処理を行う第1の印刷装置および前記第1の印刷装置よりも下流側において前記錠剤の他方の面に印刷処理を行う第2の印刷装置のそれぞれにおいて行われ、
前記第1の印刷装置に設けられる前記印刷ヘッド装置に前記吐出不良ノズルが存在し、前記印刷条件が、前記第1の印刷装置における前記印刷ヘッド装置の前記吐出不良ノズルを使用する印刷条件である場合には、前記第1の印刷装置における前記印刷ヘッド装置による印刷を行わないようにするとともに、前記第2の印刷装置における前記印刷ヘッド装置による印刷も行わないことを特徴とする請求項
5に記載の錠剤印刷方法。
【請求項7】
前記撮像工程および前記印刷を行う工程は、前記錠剤の一方の面の印刷処理を行う第1の印刷装置および前記第1の印刷装置よりも下流側において前記錠剤の他方の面に印刷処理を行う第2の印刷装置のそれぞれにおいて行われ、
前記第2の印刷装置に設けられる前記印刷ヘッド装置に前記吐出不良ノズルが存在する場合、前記第1の印刷装置の前記撮像工程により撮像した画像に基づき前記錠剤の位置ずれ情報を生成し、前記位置ずれ情報に基づいて前記錠剤の前記第2の印刷装置における印刷条件を設定し、前記印刷条件が、前記第2の印刷装置における前記印刷ヘッド装置の前記吐出不良ノズルを使用する印刷条件である場合には、前記第1の印刷装置の前記印刷ヘッド装置においても印刷を行わないようにすることを特徴とする請求項5記載の錠剤印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、錠剤印刷装置、錠剤印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤に文字やマークなどの識別情報(情報の一例)を印刷するため、インクジェットヘッドを用いて印刷を行う技術が知られている。この技術を用いる錠剤印刷装置は、コンベアなどの搬送装置により錠剤を搬送し、搬送装置の上方に配置されたインクジェットヘッドの各ノズルから、インクジェットヘッド下方を通過する錠剤に向けてインクを吐出し、錠剤に識別情報を印刷する。
【0003】
ところで、インクジェットヘッドは、例えば使用頻度の低いノズルにおいては、ノズル周辺に存在するインクが時間とともに乾燥しノズルが固まったインクで塞がれて、印刷に用いるときにインクが斜めに曲がって吐出されたり、全く吐出されなかったりといった不具合(吐出不良)が生じることがある。
【0004】
このような不具合が生じたときには、錠剤の搬送を止め、錠剤の印刷を中断してインクジェットヘッドのメンテナンスを行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、インクジェットヘッドの吐出不良が起こった場合にも、効率よく印刷処理を行うことができる錠剤印刷装置、錠剤印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る錠剤印刷装置は、錠剤を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトによって搬送される前記錠剤を撮像する撮像装置と、前記搬送ベルトによって搬送される前記錠剤の搬送方向において前記撮像装置よりも下流側で、前記錠剤に印刷を行う印刷ヘッド装置と、前記搬送方向において前記印刷ヘッド装置よりも下流側で、前記錠剤の印刷状態を確認する印刷状態確認装置と、前記印刷ヘッド装置による印刷処理を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記撮像装置により撮像した画像に基づき前記錠剤の位置ずれ情報を生成し、前記位置ずれ情報に基づいて前記錠剤の印刷条件を設定し、前記制御部は、前記印刷状態確認装置の結果に基づき前記印刷ヘッド装置における吐出不良ノズルの位置を特定し、前記位置ずれ情報に基づいて設定された前記印刷条件が、前記吐出不良ノズルを使用する印刷条件である場合には、当該印刷条件を用いる前記印刷ヘッド装置による印刷を禁止するように制御することを特徴とする。
【0008】
本発明の実施形態に係る錠剤印刷方法は、錠剤を搬送ベルトにより搬送する工程と、前記搬送ベルトにより搬送される前記錠剤を撮像する撮像工程と、前記搬送ベルトによって搬送される前記錠剤の搬送方向における前記撮像工程よりも下流側において、印刷ヘッド装置により印刷を行う工程と、前記搬送方向における前記印刷ヘッド装置よりも下流側において、前記錠剤の印刷状態を確認する印刷状態確認工程と、を有し、前記撮像工程において撮像した画像に基づき前記錠剤の位置ずれ情報を生成し、前記位置ずれ情報に基づいて前記錠剤の印刷条件を設定し、前記印刷状態確認工程の結果に基づき前記印刷ヘッド装置における吐出不良ノズルの位置を特定し、前記位置ずれ情報に基づいて設定された前記印刷条件が前記吐出不良ノズルを使用する印刷条件である場合に、当該印刷条件を用いる前記印刷ヘッド装置による印刷を禁止するとともに、前記吐出不良ノズルを使用しない印刷条件である場合には、前記印刷ヘッドによる印刷を行うことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る錠剤印刷装置を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る第1の印刷装置を示す平面図である。
【
図3】第1の実施形態において吐出不良ノズルを使用する印刷が禁止されたときの フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について
図1乃至3を参照して説明する。
【0011】
(基本構成)
図1に示すように、実施の一形態に係る錠剤印刷装置1は、供給装置10と、第1の印刷装置20と、第2の印刷装置30と、回収装置40と、制御装置(制御部)50とを備えている。
【0012】
第1の印刷装置20及び第2の印刷装置30は基本的に同じ構造である。錠剤印刷装置1の各構成要素である供給装置10、第1の印刷装置20、第2の印刷装置30、回収装置40はこの順で配置され、この順に錠剤Tが搬送されつつ、供給、印刷、回収の一連の処理が行われる。この錠剤Tが搬送される経路を搬送路Pと呼ぶ。つまり、搬送路Pの上流は供給装置10側であり、下流は回収装置40側である。なお、本実施形態では、平行な二列の搬送路Pが形成される。
【0013】
供給装置10は、ホッパ11、整列フィーダ12及び受渡フィーダ13を有している。この供給装置10は、印刷対象となる錠剤Tを第1の印刷装置20に供給することが可能に構成されており、第1の印刷装置20の一端側に位置付けられている。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、整列フィーダ12に錠剤Tを順次供給する。整列フィーダ12は、供給された錠剤Tを二列に整列し、受渡フィーダ13に向けて搬送する。受渡フィーダ13は、整列フィーダ12上に二列に並ぶ各錠剤Tを錠剤Tの上側から順次吸引して保持し、保持した各錠剤Tを第1の印刷装置20まで二列で搬送して第1の印刷装置20に渡す。この供給装置10は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。整列フィーダ12及び受渡フィーダ13としては、例えば、ベルト搬送機構を用いることが可能である。
【0014】
第1の印刷装置20は、搬送装置(搬送部)21と、検出装置22と、第1の撮像装置(印刷用の撮像装置)23と、印刷ヘッド装置(印刷部)24と、第2の撮像装置(検査用の撮像装置)25と、乾燥装置26とを備えている。
【0015】
搬送装置21は、搬送ベルト21a、駆動プーリ21b、複数(
図1の例では三つ)の従動プーリ21c、モータ21d、位置検出器21e及び吸引チャンバ21fを有している。搬送ベルト21aは、無端状のベルトであり、駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cに架け渡されている。駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cは装置本体に回転可能に設けられており、駆動プーリ21bはモータ21dに連結されている。モータ21dは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。位置検出器21eは、エンコーダなどの機器であり、モータ21dに取り付けられている。この位置検出器21eは電気的に制御装置50に接続されており、検出信号を制御装置50に送信する。制御装置50は、その検出信号に基づいて搬送ベルト21aの位置や速度、移動量などの情報を得ることができる。この搬送装置21は、モータ21dによる駆動プーリ21bの回転によって各従動プーリ21cと共に搬送ベルト21aを回転させ、その搬送ベルト21a上の錠剤Tを
図1中の矢印A1の方向である搬送方向A1(時計回り方向)に搬送する。
【0016】
搬送ベルト21aの表面には、
図2に示すように、円形状の吸引孔21gが複数形成されている。これらの吸引孔21gは、それぞれ錠剤Tを搬送ベルト21a表面に吸着する貫通孔であり、二本の搬送路Pを形成するように搬送方向A1に沿って平行に二列に並べられている。各吸引孔21gは、吸引チャンバ21fに形成された吸引路を介して吸引チャンバ21f内に接続されており、その吸引チャンバ21fにより吸引力を得ることが可能になっている。吸引チャンバ21fには、ポンプなどの吸気装置が吸気管(いずれも図示せず)を介して接続されており、吸気装置の作動によって吸引チャンバ21fの内部は減圧される。なお、吸気管は、吸引チャンバ21fの側面(搬送方向A1と平行な面)の略中央に接続されている。また、吸気装置は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0017】
検出装置22は、複数の検出部22a(
図2の例では二つ)を有している。検出部22aは、供給装置10によって搬送ベルト21aにおける錠剤Tが供給される位置よりも、搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に搬送路Pごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。検出部22aは、レーザ光の投受光によって搬送ベルト21a上の錠剤Tの位置(錠剤Tの搬送方向A1の位置)を検出し、下流に位置する各装置のトリガーセンサとして機能する。検出部22aとしては、反射型レーザセンサなど各種のレーザセンサを用いることが可能である。各検出部22aは制御装置50に電気的に接続されており、制御装置50に検出信号を送信する。
【0018】
第1の撮像装置23は、複数の撮像部23a(
図2の例では二つ)を有している。撮像部23aは、検出装置22が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に搬送路Pごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この撮像部23aは、前述の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが撮像部23aの直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(印刷用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。撮像部23aとしては、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部23aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられる。
【0019】
印刷ヘッド装置24は、インクジェット方式の複数の印刷ヘッド24a(
図2の例では二つ)を有している。印刷ヘッド24aは、第1の撮像装置23が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に搬送路Pごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。印刷ヘッド24aは、複数のノズル24b(
図2の例では八つであるが、実際は数百から数千個程度)を具備し、それらのノズル24bから個別にインクを吐出する。この印刷ヘッド24aは、ノズル24bが並ぶ整列方向が水平面内で搬送方向A1と交差するように(例えば直交するように)設けられている。印刷ヘッド24aとしては、圧電素子、発熱素子または磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドを用いることが可能である。各印刷ヘッド24aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。
【0020】
第2の撮像装置25は、複数の撮像部25a(
図2の例では二つ)を有している。撮像部25aは、印刷ヘッド装置24が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に搬送路Pごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この撮像部25aは、前述の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが撮像部25aの直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(検査用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。撮像部25aとしては、前述の撮像部23aと同様、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部25aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられる。
【0021】
図1に戻り、乾燥装置26は、印刷ヘッド装置24が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、例えば、搬送装置21の下方に設けられている。この乾燥装置26は、二列の搬送路Pに共通の乾燥装置であり、搬送ベルト21a上の各錠剤Tに塗布されたインクを乾燥させる。乾燥装置26としては、エアなどの気体により乾燥を行う送風機、放射熱により乾燥を行うヒータ、あるいは、気体及びヒータを併用して温風や熱風により乾燥を行う送風機など各種の乾燥部を用いることが可能である。乾燥装置26は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0022】
乾燥装置26の上方を通過した錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、錠剤Tは搬送ベルト21aに保持された状態から解放され、第1の印刷装置20から第2の印刷装置30に受け渡される。
【0023】
第2の印刷装置30は、搬送装置31と、検出装置32と、第1の撮像装置(印刷用の撮像装置)33と、印刷ヘッド装置34と、第2の撮像装置(検査用の撮像装置)35と、乾燥装置36とを備えている。搬送装置31は、搬送ベルト31a、駆動プーリ31b、複数(
図1の例では、三つ)の従動プーリ31c、モータ31d、位置検出器31e及び吸引チャンバ31fを有している。なお、第2の印刷装置30を構成する各要素は、前述の第1の印刷装置20に対応する構成要素と基本的に同じ構造であるため、その説明を省略する。第2の印刷装置30の搬送方向は
図1中の矢印A2の方向である搬送方向A2(反時計回り方向)である。
【0024】
回収装置40は、不良品回収装置41と、再利用品回収装置42と、良品回収装置43とを備えている。この回収装置40は、第2の印刷装置30の乾燥装置36が設けられた位置よりも搬送方向A2の下流側に設けられている。回収装置40は、基本的に、不良品回収装置41により不良品の錠剤Tを回収し、再利用品回収装置42により再利用品(後述する)の錠剤Tを回収し、良品回収装置43により良品の錠剤Tを回収する。
【0025】
不良品回収装置41は、複数の噴射ノズル41aと、収容ボックス(回収ボックス)41bとを有している。噴射ノズル41aは搬送路Pごとに設けられており、収容ボックス41bは各搬送路Pに共通に設けられている。
【0026】
噴射ノズル41aは、搬送方向A2に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に搬送路Pごとに一つずつ並べられ、第2の印刷装置30の吸引チャンバ31f内に設けられている。噴射ノズル41aは、例えば、搬送ベルト31aに向けて気体(例えばエア)を噴射し、搬送ベルト31aから錠剤Tを落下させる。このとき、噴射ノズル41aから噴射された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔(
図2に示す吸引孔21gと同様である)を通過して錠剤Tに当たる。噴射ノズル41aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0027】
収容ボックス41bは、各噴射ノズル41aの直下であって搬送装置31の下方に設けられている。この収容ボックス41bは、噴射ノズル41aから噴射された気体により搬送ベルト31aから落下した錠剤Tを受け取って収容する。
【0028】
なお、噴射ノズル41aの設置位置は、第2の印刷装置30の吸引チャンバ31f内以外でもよく、例えば、噴射ノズル41aを搬送装置31の下方に設け、搬送ベルト31aにより搬送される錠剤Tの側面に向けて気体を噴射するようにしてもよい。このとき、噴射ノズル41aを鉛直方向に対して傾けて設けることが可能である。この場合には、噴射ノズル41aの気体噴射方向を考慮して収容ボックス41bを設けるようにする。
【0029】
再利用品回収装置42は、複数の噴射ノズル42aと、収容ボックス(回収ボックス)42bを有している。複数の噴射ノズル42aは搬送路Pごとに設けられており、収容ボックス42bは各搬送路Pに共通に設けられている。
【0030】
噴射ノズル42aは、搬送方向A2に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に搬送路Pごとに一つずつ並べられ、第2の印刷装置30の吸引チャンバ31f内に設けられている。噴射ノズル42aは、例えば、搬送ベルト31aに向けて気体(例えばエア)を噴射し、搬送ベルト31aから錠剤Tを落下させる。このとき、噴射ノズル42aから噴射された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔(
図2に示す吸引孔21gと同様である)を通過して錠剤Tに当たる。噴射ノズル42aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0031】
収容ボックス42bは、各噴射ノズル42aの直下であって搬送装置31の下方に設けられている。この収容ボックス42bは、噴射ノズル42aから噴射された気体により搬送ベルト31aから落下した錠剤Tを受け取って収容する。
【0032】
なお、噴射ノズル42aの設置位置は、第2の印刷装置30の吸引チャンバ31f内以外でもよく、例えば、噴射ノズル42aを搬送装置31の下方に設け、搬送ベルト31aにより搬送される錠剤Tの側面に向けて気体を噴射するようにしてもよい。このとき、噴射ノズル42aを鉛直方向に対して傾けて設けることが可能である。この場合には、噴射ノズル42aの気体噴射方向を考慮して収容ボックス42bを設けるようにする。
【0033】
良品回収装置43は、気体吹出部43aと、排出搬送部43bと、乾燥装置43cと、収容ボックス(回収ボックス)43dとを有している。この良品回収装置43は、再利用品回収装置42が設けられた位置よりも搬送方向A2の下流側に設けられており、気体吹出部43a、乾燥装置43c及び収容ボックス43dは各搬送路Pに共通に設けられている。
【0034】
気体吹出部43aは、第2の印刷装置30の搬送装置31の端部、すなわち搬送ベルト31aにおける下側の水平部分端部に設けられている。気体吹出部43aは、例えば、印刷処理中、常に搬送ベルト31aに向けて気体(例えばエア)を吹き出し、搬送ベルト31aから錠剤Tを落下させる。このとき、気体吹出部43aから吹き出された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔(
図2に示す吸引孔21gと同様である)を通過して錠剤Tに当たる。気体吹出部43aとしては、例えば、搬送方向A2に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に延びるスリット状の開口を有するエアブローを用いることが可能である。気体吹出部43aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0035】
ここで、不良品回収装置41および再利用品回収装置42を通過した錠剤Tは、搬送ベルト31aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト31aにおける各従動プーリ31c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、気体吹出部43aによって錠剤Tの上方から錠剤Tに気体が吹き付けられ、錠剤Tは搬送ベルト31aから落下する。気体吹出部43aを設けることで、搬送ベルト31aから錠剤Tを確実に落下させることができる。
【0036】
排出搬送部43bは、不良品回収装置41、再利用品回収装置42を通過した錠剤Tを受け取り、二列又は二列以上で収容ボックス43dまで搬送する。なお、排出搬送部43bとしては、例えば、ベルト搬送機構を用いることが可能である。この排出搬送部43bのベルト(良品搬送ベルト)は、気体通過性を有する無端状のベルトである。気体通過性を有するベルトとしては、網状のベルトや複数の丸孔を有するベルトなど、複数の貫通孔を有する各種材質のベルトを用いることが可能である。排出搬送部43bは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0037】
乾燥装置43cは、上乾燥部43c1及び下乾燥部43c2を有している。この乾燥装置43cは、乾燥気体(例えば乾燥エア)を用いて上乾燥部43c1及び下乾燥部43c2によって、排出搬送部43bにより搬送される錠剤Tを乾燥させる。上乾燥部43c1は、排出搬送部43bの上方に設けられており、排出搬送部43bの上方位置から下方に向けて乾燥気体を吹き出す。下乾燥部43c2は、排出搬送部43bの内部に設けられており、排出搬送部43bの内部位置から上方に向けて乾燥気体を吹き出す。これらの上乾燥部43c1及び下乾燥部43c2は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。上乾燥部43c1及び下乾燥部43c2としては、乾燥気体により乾燥を行う装置以外にも、エアなどの気体により乾燥を行う送風機、放射熱により乾燥を行うヒータ、あるいは、気体及びヒータを併用して温風や熱風により乾燥を行う送風機など各種の乾燥部を用いることが可能である。
【0038】
収容ボックス43dは、排出搬送部43bの下流端、すなわち排出搬送部43bにおける第2の搬送装置31側と反対側の端に位置付けられ、錠剤印刷装置1の筐体の外に設けられている。この収容ボックス43dは、乾燥装置43cによりインクが乾燥した錠剤Tを排出搬送部43bから受け取って収容する。
【0039】
制御装置50は、画像処理部51と、印刷処理部52と、検査処理部(検査部)53と、記憶部54とを備えている。画像処理部51は画像を処理する。印刷処理部52は印刷に係る処理を行う(詳しくは後述する)。検査処理部53は検査に係る処理を行う。記憶部54は処理情報や各種プログラムなどの各種情報を記憶する。このような制御装置50は、供給装置10や第1の印刷装置20、第2の印刷装置30、回収装置40を制御し、また、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の検出装置22、32から送信される錠剤Tの位置情報、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の撮像装置23、25、33、35から送信される画像などを受信する。なお、動作条件は予め設定され、記憶部54に記憶されている。制御装置50は、記憶部54に記憶された動作条件に基づき、各処理部及び回収装置40を制御する。
【0040】
(印刷処理部52、検査処理部53と再利用品回収装置42による回収動作)
次に、印刷処理部52、検査処理部53と、再利用品回収装置42の回収動作について説明する。画像処理部51は、第2の撮像装置25、35によって撮像された錠剤Tの画像を処理し、検査処理部53に送る。検査処理部53は、これらの画像から吐出不良による不良品となった錠剤Tを検出し、その数をカウントする。ここで、吐出不良による不良品の錠剤とは、錠剤Tの表面に印刷された文字やマークの一部に抜けや欠け、印刷された文字やマークの一部分における着弾ずれが生じており、記憶部54に予め格納された正常印刷データと比較して検査処理部53が不良と判断したものである。このような文字やマークの抜けや欠けは、印刷ヘッド24a、34aのノズル24b、34bの一部が、固化したインクで塞がれインクが正常に吐出できなくなったことによるものであると推定できる。また、着弾ずれも同じくノズル24b、34bの一部が固化したことにより吐出圧力が印加されても通常よりも吐出されるまでに時間を要してしまうことにより通常の吐出位置からずれた位置に着弾してしまうことによって起こる。そこで検査処理部53は、このような吐出不良による不良品の錠剤Tをその他の不良品(たとえば欠けや割れなどの外観不良による不良品)の錠剤Tと区別してカウントする。第2の撮像装置25、35および検査処理部53は、印刷状態確認装置として機能する。
【0041】
検査処理部53は、吐出不良品の錠剤Tのカウントが、予め設定された個数(例えば5個)に達すると、第2の撮像装置25、35によって撮像された画像に基づき吐出不良となっているノズル24b、34bの位置(領域)を吐出不良ノズルとして特定し、印刷処理部52はこの吐出不良ノズル(単数または、複数のノズルを含む領域)を使用する印刷を禁止する。
【0042】
次に、不良品回収装置41の回収動作及び再利用品回収装置42の回収動作について説明する。再利用品回収装置42は、先に述べた吐出不良ノズルを使用する印刷を禁止されたことにより印刷が不可となった錠剤Tを回収する。動作条件に基づき、各噴射ノズル42aによるブロー(気体噴射)を行う回収動作を実行する。つまり、再利用品回収装置42によっては、印刷がされていない錠剤Tが回収される。不良品回収装置41は、先に述べた外観不良の錠剤や、印刷がなされたものの吐出不良によって不良品となったものが回収される。動作条件に基づき、不良品回収装置41は各噴射ノズル41aによるブロー(気体噴射)を行う回収動作を実行する。つまり、不良品回収装置41によっては、再度印刷処理を行って良品とすることができる可能性のないものが回収されることになる。
【0043】
検査処理部53の検査結果として対象の錠剤Tが不良品である場合、あるいは吐出不良ノズルを使用する印刷を禁止されたことにより印刷が不可となった錠剤Tが存在する場合、ブローが行われ、それぞれ不良品回収装置41、再利用品回収装置42に回収される。なお、ブローは、検出装置32の検出部(検出装置22の検出部22aと同様のものであり、「錠剤検出センサ」ともいう。)による検出結果に基づき対象の錠剤Tが噴射ノズル41a、42aの直下に到達した時点で実行される。このブローの実行は、対象の錠剤Tを搬送ベルト31aから排除するためである。
【0044】
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷処理及び検査処理について説明する。以下の印刷処理では、片面に割線が形成されている錠剤Tの両面に対して、割線に揃うように(例えば、割線の延伸方向に平行に)識別情報を印刷する両面印刷について説明する。
【0045】
まず、印刷に要する印刷データなどの各種情報が制御装置50の記憶部54に記憶される。そして、供給装置10のホッパ11に印刷対象の錠剤Tが多数投入されると、錠剤Tはホッパ11から整列フィーダ12に順次供給され始め、整列フィーダ12により二列に並べられて移動する。この二列で移動する錠剤Tは受渡フィーダ13により第1の印刷装置20の搬送ベルト21aに順次供給される。搬送ベルト21aは、モータ21dによる駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cの回転によって搬送方向A1に回転している。このため、搬送ベルト21a上に供給された錠剤Tは搬送ベルト21a上で二列に並んで所定の移動速度で搬送されていく。なお、搬送ベルト31aもモータ31dによる駆動プーリ31b及び各従動プーリ31cの回転によって搬送方向A2に回転している。
【0046】
第1の印刷装置20では、錠剤Tが搬送ベルト21a上に吸引保持され、搬送ベルト21a上の錠剤Tが検出装置22によって検出される。これにより、錠剤Tの位置情報(搬送方向A1の位置)が取得され、制御装置50に入力される。この錠剤Tの位置情報は、記憶部54に保存されて後処理で用いられる。次に、搬送ベルト21a上の錠剤Tが前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミングで第1の撮像装置23によって撮像され、撮像された画像が制御装置50に送信される。第1の撮像装置23から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tの位置ずれ情報(例えば、
図2におけるX方向、Y方向及びθ方向での錠剤Tの位置ずれ)が画像処理部51により生成され、記憶部54に保存される。この錠剤Tの位置ずれ情報に基づき、錠剤Tに対する印刷条件(インクの吐出位置や吐出速度など)が印刷処理部52により設定され、記憶部54に保存される。
【0047】
次いで、搬送ベルト21a上の個々の錠剤Tは、前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが印刷ヘッド装置24の下方に到達したタイミングで、前述の印刷データや印刷条件に基づいて印刷ヘッド装置24により印刷が実行される。印刷ヘッド装置24の各印刷ヘッド24aにおいて、各ノズル24bからインクが適宜吐出され、その錠剤Tの上面に文字(例えばアルファベット、片仮名、番号)やマーク(例えば記号、図形)などの識別情報が割線に揃えられて(例えば、割線の延伸方向に平行に)印刷される。
【0048】
識別情報が印刷された錠剤Tは、前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミングで第2の撮像装置25によって撮像され、撮像された画像が制御装置50に送信される。第2の撮像装置25から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tごとの印刷パターンの印刷位置を示す印刷位置情報が画像処理部51により生成され、記憶部54に保存される。その印刷位置情報に基づき、錠剤Tに対する印刷品質の良否(錠剤Tが良品であるか否か)が検査処理部53により判断され、錠剤Tごとの印刷品質の良否、割れや欠けなどの外観の良否を示す検査結果情報が記憶部54に保存される。例えば、印刷パターンが錠剤Tの所定位置に所定のパターンで印刷されているか否かが検査処理部53により判断される。印刷パターンが錠剤Tの所定位置に所定のパターンで印刷されていると判断された錠剤Tは、検査に合格した良品の錠剤Tとされる。
【0049】
検査処理部53は、検査に不合格となった錠剤Tの中で吐出不良品の錠剤Tの数をカウントし、予め設定された個数(例えば5個)に達すると、第2の撮像装置25、35によって撮像された画像に基づき吐出不良となっているノズル24b、34bの位置(領域)を吐出不良ノズルとして特定し、印刷処理部52はこの吐出不良ノズル(単数または、複数のノズルを含む領域)を使用する印刷を禁止する。
【0050】
検査後の錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、乾燥動作中の乾燥装置26の上方を通過する。このとき、錠剤Tに到達(着弾)したインクは、錠剤Tが乾燥装置26の上方を通過する間に乾燥装置26によって乾燥し、インクが乾燥した錠剤Tは搬送ベルト21aの移動に伴って搬送されていき、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近に位置する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、錠剤Tは搬送ベルト21aの下面に保持された状態から解放され、第1の印刷装置20から第2の印刷装置30に渡される。
【0051】
第2の印刷装置30でも、錠剤Tが搬送ベルト31a上に吸引保持され、前述と同じように印刷処理及び検査処理が行われる。検査後の錠剤Tは、搬送ベルト31aの移動に伴って搬送され、乾燥動作中の乾燥装置36の上方を通過する。そして、インクが乾燥した錠剤Tは不良品回収装置41に到達する。この位置で良品以外(不良品や不明品)の錠剤Tは、噴射ノズル41aによる気体の噴射(ブロー)によって搬送ベルト31aの下面から落下し、収容ボックス41bによって回収される。また、良品の錠剤T、あるいは、ブローにより搬送ベルト31aから落下しなかった良品以外の錠剤Tは、不良品回収装置41を通過し、搬送ベルト31aにおける各従動プーリ31c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり落下する。さらに、気体吹出部43aによって錠剤Tの上方から錠剤Tに気体が吹き付けられるので、錠剤Tは搬送ベルト31aから確実に落下する。搬送ベルト31aから落下した錠剤Tは、排出搬送部43bに流れ込む。
【0052】
排出搬送部43bに流れ込んだ錠剤Tは排出搬送部43bによって搬送され、その搬送途中に錠剤Tが乾燥動作中の乾燥装置43cの上乾燥部43c1及び下乾燥部43c2の間(乾燥空間)を通過する。排出搬送部43bのベルト上の錠剤Tには、上乾燥部43c1及び下乾燥部43c2から乾燥気体が吹き付けられるため、錠剤T上のインクが乾燥し、錠剤Tの乾燥状態が維持される。また、錠剤Tが排出搬送部43bより上流の搬送路Pで湿気により水分を含んでも、その錠剤Tを排出搬送部43bによる搬送中に上乾燥部43c1及び下乾燥部43c2によって確実に錠剤T上のインクを乾燥させることができる。このとき、排出搬送部43bの搬送速度は、印刷時の搬送速度に比べて非常に遅くなっているため、ベルト上の錠剤Tは十数分程度ゆっくりと乾燥気体の空間内を通過するので、錠剤Tのインクが確実に乾燥することになる。乾燥装置43cにより乾燥した錠剤Tは、排出搬送部43bにより収容ボックス43dの上方まで搬送され、排出搬送部43bの下流端から落下し、収容ボックス43dに回収される。
【0053】
ここで、前述した、検査処理部53によって吐出不良ノズルを使用する印刷が禁止された場合の印刷工程について
図3のフローチャートを用いて説明する。先に述べた順序で印刷処理が進められていくとともに、検査処理部53は、吐出不良による不良品である錠剤Tの数をカウントし、この数が所定の数を超えたか否かを判定する(S1)。吐出不良の錠剤Tが所定の個数超えた場合には(S1のY)、供給装置10の出口に備えられたシャッタ(不図示)を閉じて、第1の印刷装置20への新たな錠剤Tの供給を停止するとともに、この時点で搬送途中である錠剤Tについては印刷処理を続行する(S2)。ここで検査処理部53は、吐出不良ノズル(領域を含む)を特定し(S3)、第1の撮像装置23において順次撮像される(S4)錠剤Tの画像に基づいてそれぞれの印刷条件を設定する(S5)。この印刷条件に基づき、当該錠剤Tが吐出不良ノズルを使用して印刷をおこなうものであるか否かを判定する(S6)。吐出不良ノズルを使用する印刷である場合(S6のY)には、前述したとおり印刷を禁止する(S7)。すなわち、第1の印刷装置20の印刷ヘッド24aのノズル24bに吐出不良ノズルが存在する場合には、第1の撮像装置23によって得られた錠剤Tの位置情報に基づき印刷条件が設定された結果、印刷に吐出不良ノズルが使用されることになった錠剤Tに対しては、印刷ヘッド24a、34aによる印刷を行わない。このように、印刷ヘッド24a、34aによって印刷が行われなかった錠剤Tは、再利用品回収装置42によって回収される。吐出不良ノズルを使用しない印刷である場合(S6のN)であれば、印刷を続行する(S8)。すなわち、第1の撮像装置23によって得られた錠剤Tの位置情報に基づき印刷条件が設定された結果、印刷に吐出不良ノズルが使用されない錠剤に対しては、通常通りに印刷処理が行われ、回収装置40により回収される。このようにして印刷が続行され、予定していた生産数(搬送途中である錠剤Tすべて)の印刷を終えたら(S9のY)生産を終了する。
【0054】
第2の印刷装置30の印刷ヘッド34のノズル34bに吐出不良ノズルが存在する場合には、第2の撮像装置35の結果に基づいて吐出不良ノズルが特定され、印刷処理部52により吐出不良ノズルを使用する印刷を禁止する。第1の撮像装置33によって得られた錠剤Tの位置情報に基づき印刷条件が設定された結果、印刷に吐出不良ノズルが使用されることになった錠剤Tに対しては、印刷ヘッド34aによる印刷を行わない。このとき、第2の印刷装置30においては、第1の印刷装置20ですでに片面に印刷がなされた錠剤Tが搬送されてくる。したがって、第2の印刷装置30の印刷ヘッド34aで印刷を行わないことになったとしても、この錠剤Tは再利用品回収装置42ではなく不良品回収装置41により回収する。
【0055】
回収装置40による回収が完了し、第1の印刷装置20、第2の印刷装置30に錠剤Tが存在しない状態になると、制御装置50は、印刷ヘッド装置24、34のメンテナンスを実施する。印刷ヘッド装置のメンテナンスは、ワイパによる払拭、洗浄液への浸漬、ドレンパンに対するダミー吐出など、公知の手段によるものである。メンテナンスが完了すると、制御装置50は供給装置10の出口に備えられたシャッタを開き、通常の印刷処理を再開する。
【0056】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、吐出不良ノズルが発生した場合においても、印刷を中断して印刷ヘッド装置のメンテナンスを行うことなく、印刷を続行しつつ吐出不良ノズルに起因する不良品の発生を抑えることができるので、効率よく錠剤Tの印刷処理を行うことができる。また、印刷を行わなかった錠剤Tを他の不良品の錠剤Tと分けて再利用回収装置42にて回収するため、再度印刷に供することができる。
【0057】
ここで、従来のように、印刷不良ノズルが見つかる度に印刷ヘッド装置をメンテナンスしていた場合には、錠剤の搬送を停止し、印刷を中断し、その時点で装置内に存在する錠剤Tをすべて回収装置にて回収し、印刷ヘッド装置のメンテナンスを実施することになる。メンテナンスが完了すると再度錠剤Tを供給装置10に供給し印刷を再開する。これに対し、第1の実施形態においては、吐出不良による不良品の錠剤Tが検出されたことを契機として、問題となるノズル以外によって印刷できる錠剤Tに対しては印刷を行いつつ、その時点で錠剤印刷装置1内に存在する錠剤Tを回収することができるので、メンテナンスを行うまでの間の時間を有効に利用することができる。
【0058】
また、錠剤印刷装置1の印刷対象物の錠剤Tの直径は一般的に5~12mm程度のものが多く、一般的なインクジェットヘッドの、ノズル配列方向に延びる長さよりも短い。錠剤Tは搬送ベルト上21a、31aの搬送方向と直交する方向において印刷ヘッド24a、34aの中央付近を中心にランダムに搬送されてくる(
図2参照)。吐出不良ノズルは、一定時間ノズルを使用しなかったことで発生することが多い。つまり、ランダムに搬送された錠剤Tがたまたま使用頻度の低いノズル24b、34bが使用されて印刷されることになり、その結果印刷不良が起きると考えられる。すなわち、吐出不良ノズルとなったノズル24b、34bはもともと使用頻度の低いノズルである可能性が高く、その後もそのノズルによって印刷すべき錠剤Tが搬送されてくる可能性は比較的低いといえる。したがって、従来のように印刷不良が起こる度にメンテナンスを実施するよりも、第1の実施形態のように印刷を続行する方が著しく効率よく印刷処理を行うことができる。
【0059】
<他の実施形態>
なお、上記の実施形態においては、吐出不良による不良品である錠剤Tの数が所定の個数を上回ったときに錠剤Tの新たな供給を停止するとともに、吐出不良ノズルを特定し、このノズルを使用する印刷を禁止しつつ印刷処理を続行することを例示したが、これに限るものではない。例えば、錠剤Tの新たな供給を停止することなく、吐出不良ノズルを使用しない印刷処理を続行するようにしても良い。この場合には、吐出不良ノズルの特定をした時点で、当該ノズルを使用せずに予定生産数までの残りの錠剤を印刷した場合と、装置の運転を一時的に停止してメンテナンスを実施した場合とで、生産終了までにかかる時間を予測し、この予測時間を比較した結果、運転を一時的に停止してメンテナンスを行った方が、予測される生産終了時間が早い場合にはメンテナンスを実行しても良い。
【0060】
例えば、生産数が残り1万錠だった場合に、吐出不良ノズルを使用せずに印刷を続行した場合と、印刷を一時停止してメンテナンスを実施し、その後印刷を行った場合とで、いずれの方法がより早く1万錠の印刷を終えることができるかを比較する。錠剤印刷装置1は、例えば割線を有していたり楕円状の形状を有する錠剤を印刷する場合に、予め360度分の回転させた印刷パターンを記憶しており、第1の撮像装置23、33によって撮像された錠剤Tの画像から得られたθ方向の位置ずれ情報に基づいて印刷パターンを選択し、記憶部54へ保存する。この印刷パターンから、吐出不良ノズルを用いての印刷となる角度範囲を求め、この角度範囲の印刷が必要となる錠剤Tが搬送されてくる確率(すなわち、再利用品回収装置42で回収されることになる錠剤Tのパーセンテージ)を計算する。この確率(推測)は、吐出不良ノズルが検出されるまでの間に得られた錠剤のθ方向のずれの履歴から吐出不良ノズルを使用して印刷する角度範囲に該当する錠剤Tが搬送されてくる割合を求めることで算出することができる。吐出不良ノズルを使用する角度範囲のθ方向ずれを有する錠剤Tが搬送されてくる確率が、例えば2割程度だった場合には、生産効率は2割減となり、1万錠を印刷する時間はその分遅れることになる。このようにして導き出した予測生産終了時間と、一時的に印刷を停止してメンテナンスを行った場合の予測生産終了時間とを比較し、速い方を選択することができる。例えば、錠剤印刷装置1の表示装置に2つの予測生産終了時間を表示させてオペレータが選択できるようにしても良い。
【0061】
なお、上記の説明においては、固定の予定生産数が例えば1万錠だった場合を例示したが、これに限らず、ホッパ11に収容されている錠剤Tの残数によって判断するようにしても良い。例えば、ホッパ11に備えられたセンサ(不図示)により錠剤Tの残量を検知し、所定量を下回る場合には印刷を続行し、所定量を上回る場合には印刷を中断してメンテナンスを行うようにしてもよい。所定量は錠剤Tが供給、印刷、回収されるまでにかかる時間と、次に予定されている定期メンテナンスまでの時間を鑑みて予め決定される。
【0062】
また、生産効率と残量を併せて考慮して印刷の続行の可否を決定してもよい。つまり、前述した、吐出不良ノズルを使用する角度範囲に基づいて求めた生産効率が著しく低下すると予測される場合には、印刷を中断してメンテナンスを実施し、生産効率がそれほど低下しない(例えば前述の例と同じく2割程度)場合で、かつ、残量が所定量を下回る場合には印刷を続行、生産効率がそれほど低下しないものの残量が所定量を上回る場合には印刷を中断するようにしてもよい。
【0063】
このように選択可能とすることで、インクジェットヘッドの吐出不良生じた場合に、最も効率よく印刷処理を行うことができる。
【0064】
前述の説明においては、錠剤Tを二列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、その列数は一列、又は、三列や四列以上であっても良く、搬送路Pの数や搬送ベルト21a、31aの数は特に限定されるものではない。また、搬送ベルト21a、31aの吸引孔21gの形状も特に限定されるものではない。
【0065】
また、前述の説明においては、搬送路Pごとに印刷ヘッド24aを設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、一つの印刷ヘッド24aによって二列以上の錠剤Tに印刷を行うようにしても良い。
【0066】
また、前述の説明においては、インクジェット方式の印刷ヘッド24aとして、ノズル24bが一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル24bが複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いるようにしても良い。また、搬送方向A1に沿って印刷ヘッド24aを複数並べて用いるようにしても良い。
【0067】
また、前述の説明においては、乾燥装置26、36、43cを設けることを例示したが、その数は限定されるものではない。例えば、一つの乾燥装置26がなく二つの乾燥装置36、43cがあれば良く、また、二つの乾燥装置26、36がなく一つの乾燥装置43cがあれば良く、乾燥装置43cが無く乾燥装置26、36があれば良い。また、インク、錠剤Tの種類によっては乾燥装置を必要としないこともあるため、三つの乾燥装置26、36、43c全てが無くても良い。
【0068】
また、前述の説明においては、第1の印刷装置20及び第2の印刷装置30を上下に重ねて配置して、錠剤Tの両面または片面を印刷することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、第1の印刷装置20だけを設け、錠剤Tの片面だけを印刷するようにしても良い。
【0069】
また、前述の説明においては、不良品回収装置41の下流側に再利用品回収装置42が設けられることを例示したが、これに限るものではなく、不良品回収装置41の上流側に設けられるようにしても良い。
【0070】
また、前述の説明においては、第2の印刷装置30の印刷ヘッド34aにおいて吐出不良ノズルが存在する場合には、第1の印刷装置20の印刷ヘッド24aにおいて印刷を行ったあとに第2の印刷装置の印刷ヘッド34aによる印刷を行わずに不良品回収装置41において回収することを例示したが、これに限るものではなく、片面のみ印刷された錠剤Tのみを分けて回収するようにしても良い。この場合、片面のみ印刷された錠剤Tを錠剤印刷装置1に再投入し、印刷が行われていない面にのみ印刷を行うことができる。
【0071】
あるいは、第2の印刷装置30の印刷ヘッド34aに吐出不良ノズルが存在する場合、第1の印刷装置20の第1の撮像装置23によって撮像された画像に基づき錠剤Tの位置ずれ情報が生成される時点で、第2の印刷装置30の印刷ヘッド34aの吐出不良ノズルが使用されることが予測される場合には、第1の印刷装置の印刷ヘッド24aにおいても印刷を行わずに再利用品回収装置42によって回収するようにしても良い。
【0072】
ここで、前述の錠剤Tとしては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤としては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがあり、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤に含めることができる。さらに、錠剤の形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。また、印刷対象の錠剤が医薬用や飲食用である場合には、使用するインクとして可食性インクが好適である。この可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
【0073】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 錠剤印刷装置
21、31 搬送装置
23、33 第1の撮像装置
24、34 印刷ヘッド装置
25、35 第2の撮像装置
41 不良品回収装置
42 再検査品回収装置
43 良品回収装置
50 制御装置(制御部)
52 印刷処理部
53 検査処理部(検査部)
T 錠剤