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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】モーターコアの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20250101AFI20250318BHJP
【FI】
H02K15/03
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021509599
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013724
(87)【国際公開番号】W WO2020196768
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-08-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019062103
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平松 朋子
(72)【発明者】
【氏名】星野 彰教
【合議体】
【審判長】小宮 慎司
【審判官】河本 充雄
【審判官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-282392号公報(JP,A)
【文献】特開2016-123227号公報(JP,A)
【文献】特開2014-138533号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K15/02
H02K15/03
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋼板を積層し、前記鋼板の積層方向に延びる磁石収容部を有する積層体を製造する積層体製造工程と、
前記複数の鋼板の積層方向に延びる永久磁石を、前記磁石収容部内に配置する磁石配置工程と、
常温で固体であり、常温よりも高い第1温度において軟化し、前記第1温度に保持されている状態では硬化することがなく、前記第1温度より高い第2温度にて硬化する合成樹脂材を用いて、前記永久磁石を前記磁石収容部内に固定する固定工程と、
を含むモーターコアの製造方法であって、
前記固定工程は、
前記合成樹脂材の温度を前記第1温度に設定して、前記合成樹脂材を軟化させた状態に保持可能な加熱装置を有する容器及びノズルを備えた注入装置を用いて、前記容器内の軟化状態にある合成樹脂材の一部を前記ノズルから前記磁石収容部に注入する注入工程と、
前記注入装置の前記容器内及び前記ノズル内に残存している前記合成樹脂材が軟化した状態のまま、前記ノズルを前記積層体から退避させた後に、前記積層体に注入された合成樹脂材の温度を前記第2温度に上昇させて、前記合成樹脂材を硬化させる硬化工程と、
を含む、モーターコアの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のモーターコアの製造方法において、
前記積層体は、複数の前記磁石収容部を有し、
前記注入工程は、前記複数の磁石収容部のうちの第1の磁石収容部に前記注入装置のノズルから前記容器内の前記軟化した合成樹脂材の一部を注入し、前記第の磁石収容部から前記ノズルを退避させた後に、第2の磁石収容部に前記注入装置のノズルから前記容器及び前記ノズル内に残存している前記合成樹脂材を注入する工程を含む、モーターコアの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のモーターコアの製造方法において、
前記注入工程よりも前に、前記積層体の温度が前記第1温度より高く、且つ前記第2温度より低くなるように、前記積層体を加熱し、
前記注入工程において、前記注入装置のノズルを前記積層体の前記磁石収容部の開口端に当接させ、前記軟化した合成樹脂材を注入する、モーターコアの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1つに記載のモーターコアの製造方法において、
前記注入工程において、前記合成樹脂材の注入圧力が所定の圧力より大きくなったとき、前記積層体の貫通孔への前記合成樹脂材の注入を停止する、モーターコアの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうちのいずれか1つに記載のモーターコアの製造方法において、
前記注入装置は、前記合成樹脂材を前記容器から排出させる駆動装置を備え、
前記注入工程において、前記磁石収容部に前記軟化した合成樹脂材が満たされた後、前記注入装置の駆動装置の駆動方向を反転させてから前記注入装置を前記積層体から退避させる、モーターコアの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちのいずれか1つに記載のモーターコアの製造方法において、
前記硬化工程は、前記注入装置を前記積層体から退避させて、前記積層体を前記注入装置とは別の場所にある加熱炉又は誘導加熱装置へ移送し、前記積層体に注入された合成樹脂材の温度を、前記加熱炉又は前記誘導加熱装置を用いて前記第温度に上昇させて、前記合成樹脂材を硬化させる工程を含む、モーターコアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーターコアの製造方法に関する。特に、複数の薄板(鋼板)を積層して形成された積層体であって、その積層方向延びる磁石収容部を備えた積層体を形成しておき、前記磁石収容部に永久磁石を挿入し、その永久磁石を積層体(磁石収容部内)に固定(封止)する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に記載されているように、積層体の磁石収容部に挿入された永久磁石を、熱可塑性樹脂材を用いて、前記積層体に固定(封止)する方法は知られている。また、特許文献2及び特許文献3に記載されているように、積層体の磁石収容部に挿入された永久磁石を、熱硬化性樹脂材を用いて、前記積層体に固定(封止)する方法は知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-245405号公報
【文献】特許第5357217号公報
【文献】特許第4414417号公報
【発明の概要】
【0004】
特許文献1の方法を用いた場合には、加熱されて軟化した熱可塑性樹脂材が、注入装置から磁石収容部に注入されて磁石収容部内に拡がる際に、冷却されて硬化し始める。そのため、熱可塑性樹脂材の注入圧力を比較的高く設定して、できるだけ短時間で、磁石収容部孔内に熱可塑性樹脂材を充填し、さらに、その熱可塑性樹脂材が逆流しないように、熱可塑性樹脂材が硬化するまで保圧する必要がある。したがって、熱可塑性樹脂材が磁石収容部内において硬化するまで注入装置を積層体から退避させることができない。言い換えれば、熱可塑性樹脂材の注入開始から硬化終了まで注入装置が占有される。したがって、モーターコアの生産性が低い。
【0005】
上記のように、熱可塑性樹脂材の注入圧力及び保圧力が比較的高い。そのため、積層体のうち、磁石収容部の周縁部を構成する部分の肉厚が比較的小さい場合には、熱可塑性樹脂材の注入過程又は硬化過程において、前記周縁部が変形してしまう虞がある。
【0006】
また、特許文献2又は特許文献3の方法を用いた場合には、加熱されて軟化された熱硬化性樹脂材が、注入装置から磁石収容部に注入される。ここで、一般に、熱硬化性樹脂材は、使用前の状態において固形(タブレット)であり、加熱されて一旦軟化されるとすぐに硬化反応が始まる。したがって、熱可塑性樹脂材を用いた場合と同様に、熱硬化性樹脂材の注入圧力及び保圧力を比較的高く保つ必要がある。よって、特許文献1の方法を用いた場合と同様の課題が生じる。
【0007】
また、各薄板(鋼板)の製造精度(板厚方向の寸法精度、平面度など)に起因して、積層体ごとに、その高さ寸法(複数の薄板の積層方向における寸法)が多少異なる。すなわち、積層体ごとに、磁石収容部の容積が多少異なる。そのため、磁石収容部の容積が比較的大きい場合であっても、その内部に熱硬化性樹脂材を充填できるように、想定される磁石収容部の容積(最大容積)より少し多量の熱硬化性樹脂材(タブレット)を用いる。つまり、軟化した際に、その熱硬化性樹脂材が磁石収容部から少し溢れる程度の量を用いる。磁石収容部から溢れた分の熱硬化性樹脂材は、注入装置内に残る。つまり、注入装置内にて硬化する。そのため、積層体への永久磁石の固定が終了した後、注入装置内にて硬化した合成樹脂材を取り除く必要がある。
【0008】
本発明は上記課題に対処するためになされたもので、その目的は、モーターコアの生産性を向上させることができるモーターコア製造方法を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るモーターコア(1)の製造方法は、複数の鋼板(11)を積層し、前記鋼板の積層方向に延びる磁石収容部(MHb10,MHc10,MHd10)を有する積層体(10)を製造する積層体製造工程と、前記複数の鋼板の積層方向に延びる永久磁石(30)を、前記磁石収容部内に配置する磁石配置工程と、常温で固体であり、常温よりも高い第1温度(T1)において軟化し、前記第1温度に保持されている状態では硬化することがなく、前記第1温度より高い第2温度(T2)にて硬化する合成樹脂材(Y)を用いて、前記永久磁石を前記磁石収容部内に固定する固定工程と、を含むモーターコアの製造方法であって、前記固定工程は、前記合成樹脂材の温度を前記第1温度に設定して、前記合成樹脂材を軟化させた状態に保持可能な加熱装置を有する容器及びノズルを備えた注入装置(X)を用いて、前記容器内の軟化状態にある合成樹脂材の一部を前記ノズルから前記磁石収容部に注入する注入工程と、前記注入装置の前記容器内及び前記ノズル内に残存している前記合成樹脂材が軟化した状態のまま、前記ノズルを前記積層体から退避させた後に、前記積層体に注入された合成樹脂材の温度を前記第2温度に上昇させて、前記合成樹脂材を硬化させる硬化工程と、を含む。
【0010】
本発明の一態様の前記硬化工程は、前記注入装置を前記積層体から退避させて、前記積層体を前記注入装置とは別の場所にある加熱炉又は誘導加熱装置へ移送し、前記積層体に注入された合成樹脂材の温度を、前記加熱炉又は前記誘導加熱装置を用いて前記第2温度に上昇させて、前記合成樹脂材を硬化させる工程を含む。
【0012】
本発明の一態様において、前記積層体は、複数の前記磁石収容部を有し、前記注入工程は、前記複数の磁石収容部のうちの第1の磁石収容部に前記注入装置のノズルから前記容器内の前記軟化した合成樹脂材の一部を注入し、前記第の磁石収容部から前記ノズルを退避させた後に、第2の磁石収容部に前記注入装置のノズルから前記容器及び前記ノズル内に残存している前記合成樹脂材を注入する工程を含む。
【0013】
また、本発明の他の態様において、前記注入装置は、前記合成樹脂材を前記容器から排出させる駆動装置を備え、前記注入工程において、前記磁石収容部に前記軟化した合成樹脂材が満たされた後、前記注入装置の駆動装置の駆動方向を反転させてから前記注入装置を前記積層体から退避させる。
【0014】
上記のように、本発明において採用した合成樹脂材は、その温度が第1温度に保持されている状態では硬化せず、それよりも高い第2温度に達したとき硬化する。したがって、合成樹脂材が磁石収容部に注入されたとしても、この状態では、磁石収容部内において合成樹脂材は硬化しない。よって、特許文献1乃至特許文献3のモーターコアの製造方法を用いた場合とは異なり、合成樹脂材の注入圧力を比較的小さく設定できる。また、合成樹脂材の逆流を防ぐための保圧が不要である。よって、全ての磁石収容部に合成樹脂材を充填した後、即座に、注入装置を解放し、積層体を別の場所(生産ラインの下流側)へ移送し、その場所において、合成樹脂材を加熱して硬化させる硬化工程を実施することができる。すなわち、本発明によれば、1つの積層体への合成樹脂材の充填が完了すれば、合成樹脂材の硬化完了を待つことなく、即座に、注入装置を解放でき、次の積層体への合成樹脂材の充填作業を開始できる。
【0015】
本発明の一態様の前記固定工程において、前記注入工程よりも前に、前記積層体の温度が前記第1温度より高く、且つ前記第2温度より低くなるように、前記積層体を加熱し、前記注入工程において、前記注入装置のノズルを前記積層体の前記磁石収容部の開口端に当接させ、前記軟化した合成樹脂材を注入する前記積層体の温度が前記第1温度より高く、且つ前記第2温度より低くなるように、前記積層体が加熱されている。
【0016】
これによれば、注入工程において、積層体の温度が、合成樹脂材の溶融温度より高い温度であるため、合成樹脂材が溶融した状態を維持できる。また、合成樹脂材の硬化温度より低い温度であるため、合成樹脂材の硬化を抑制することができる。つまり、注入工程において、合成樹脂材の流動性が良い状態を保つことができる。
【0017】
本発明の一態様の前記注入工程において、前記合成樹脂材の注入圧力が所定の圧力より大きくなったとき、前記積層体の貫通孔への前記合成樹脂材の注入を停止する。
【0018】
これによれば、各磁石収容部内の空間(隙間)の容積と略同量(前記空間を充填するために必要且つ十分な量)の合成樹脂材を、注入装置から各磁石収容部へ注入できる。そして、磁石収容部に合成樹脂材が充填された後、積層体が加熱されて合成樹脂材が硬化されるが、その硬化工程においては、注入装置は積層体から解放(退避)されている。したがって、硬化工程において加熱された積層体の熱が注入装置に伝達さない。よって、特許文献2及び特許文献3の製造方法を用いた場合とは異なり、容器及び注入装置の内部において、合成樹脂材が硬化するという事態は生じない。そのため、注入装置内の合成樹脂材を除去するという作業が不要である。
【0019】
上記のように、本発明によれば、モーターコアの生産性を向上させることができる。
【0022】
ここで、上記特許文献2及び特許文献3には、熱硬化性合成樹脂材を用いて、永久磁石を磁石収容部内に固定する方法が開示されている。ただし、この熱硬化性合成樹脂材は、使用前において固形状態(フレーク状)であり、加熱されて一旦軟化すると、すぐに硬化反応が始まる。したがって、軟化した状態の熱硬化性合成樹脂材が磁石収容部内に完全に充填されないまま、熱硬化性合成樹脂材が硬化してしまい、永久磁石の固定強度が十分に得られない虞がある。これに対し、本発明において用いた熱硬化性合成樹脂材は、常温(使用前の状態)から加熱されて第1温度に達すると軟化するが、それよりも高い第2温度に達するまでは、軟化した状態にある。したがって、軟化した熱硬化性合成樹脂材を、比較的容易に、磁石収容部に充填することができ、永久磁石の十分な固定強度が得られる。また、熱硬化性樹脂材を、注入装置内にて軟化した状態で保有でき、1つのモーターコアの製造における余剰分を、次のモーターコアの製造に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る製造方法を用いて製造されたローターコアの斜視図である。
図2図1に示したローターコアの分解斜視図である。
図3】鉄心片の斜視図である。
図4A】鉄心片の平面図である。
図4B】鉄心片の外周縁部の一部を拡大した拡大図である。
図5】磁石収容部の長手方向(深さ方向)に垂直な断面図である。
図6】永久磁石の長手方句御に垂直な断面図である。
図7】ローターコアの中心軸に垂直な断面の外周縁部を拡大した拡大図である。
図8】中間組立品の中心軸の延設方向における端面であって、磁石収容部の開口単側の端面の外周縁部を拡大した拡大図である。
図9】注入工程及び硬化工程の概略を示す斜視図である。
図10】注入工程におけるノズルの中心軸に沿った注入装置及び中間組立品の断面図である。
図11A】本発明の第1の変形例の注入工程における上側のエンドプレートの外周縁部を拡大した平面図である。
図11B】第1の変形例の注入工程におけるノズルの中心軸に沿った注入装置及び中間組立品の断面図である。
図12】本発明の第2の変形例の注入工程における上側のエンドプレートの外周縁部を拡大した平面図である。
図13】本発明の第3の変形例の注入工程における上側のエンドプレートの外周縁部を拡大した平面図である。
図14】本発明の第4の変形例の注入工程における上側のエンドプレートの外周縁部を拡大した平面図である。
図15】本発明の第5の変形例の注入工程における磁石収容部とノズルの位置関係を示す平面図である。
図16】本発明の第6の変形例の注入工程における磁石収容部とノズルの位置関係を示す平面図である。
図17】本発明の第7の変形例の注入工程における磁石収容部とノズルの位置関係を示す平面図である。
図18】本発明の第8の変形例の注入工程における磁石収容部とノズルの位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係るモーターコアの製造方法を用いて図1及び図2に示すローターコア1を製造する手順について説明する。なお、ローターコア1は、周知のIPMモーターのローター(回転子)に適用される。ローターコア1は、積層体10、エンドプレート20、複数の永久磁石30、及びエンドプレート40を備える。
【0025】
(積層体製造工程)
積層体10は、珪素鋼板から構成された鉄心片11(図3並びに図4A及び図4B参照)を積層して形成される。鉄心片11は、母材を打ち抜き加工して形成される。鉄心片11の中央部には円形の貫通孔THa11が形成されている。また、鉄心片11を周方向に8等分した各領域Aの外周縁部に、貫通孔THb11,THc11,THd11が設けられている。貫通孔THb11,THc11,THd11は、鉄心片11の周方向に隣接している。貫通孔THb11が貫通孔THc11と貫通孔THd11の間に配置されている。貫通孔THb11は、鉄心片11の径方向に垂直な方向且つ板厚方向に垂直な方向に延びる略矩形(等脚台形)を呈する。貫通孔THc11,THd11は、鉄心片11の径方向に垂直な方向且つ板厚方向に垂直な方向に延びる略五角形)を呈する。
【0026】
貫通孔THb11の辺のうち、鉄心編11の外周側の辺STHbには、内周側へ突出した一対の突起部PTHb,PTHbが形成されている。突起部PTHbは、辺STHbの延設方向における両端部にそれぞれ形成されている。また、貫通孔THc11,THd11の辺のうち、鉄心編11の外周側の辺STHc,STHdの延設設方向における一方の端部側の部位S1THc,S1THdであって、貫通孔THb11側に位置する部分が、貫通孔THb11とは反対側の部位S2THc,S2THdに比べて、鉄心片11の径方向における外側に位置している。すなわち、鉄心片11の平面視において、部位S1THcと部位S2THcとの境界部S12THc、及び部位S1THdと部位S2THdとの境界部S12THdに段差がそれぞれ形成されている。部位S1THc,S1THdには、内周側へ突出した突起部PTHc,PTHdがそれぞれ形成されている。突起部PTHc,PTHdは、部位S1THc,S1THdの延設方向における端部であって、貫通孔THb11側の端部にそれぞれ形成されている。
【0027】
各鉄心片11の貫通孔THa11が同軸配置され、且つ各鉄心片11の貫通孔THb11,THc11,THd11がそれぞれ同軸配置されるように、複数の鉄心片11が積層される。鉄心片11同士が、かしめ結合される。積層体10において、各鉄心片11の貫通孔THa11及び貫通孔THb11,THc11,THd11が積層体10の中心軸Cの延設方向(鉄心片11の積層方向)に平行な方向にそれぞれ連通している(図1参照)。言い換えれば、積層体10は、中心軸Cに同軸配置された貫通孔THa10(各鉄心片11の貫通孔THa11が連通した部位)を有する。さらに、積層体10は、その外周縁部にて、中心軸Cに対して平行に延びる複数の磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10(各鉄心片11の貫通孔THb11,THc11,THd11が連通した部位)を有する。磁石収容部MHb10は、突起部PTHb,PTHbが重ねられて形成された凸部PMHb,PMHbを有する(図5参照)。磁石収容部MHc10,MHd10は、突起部PTHc,PTHdがそれぞれ重ねられて形成された凸部PMHc,PMHdを有する。また、磁石収容部MHc10,MHd10は、境界部S12THc,S12THdが重ねられて形成された、壁面S12MHc,S12MHdを有する。
【0028】
磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10の延設方向(鉄心片11の積層方向)に垂直な断面CS,CS,CSの幅Wb,Wc,Wdは、略同一である(図5参照)。断面CS,CSにおける積層体10の長さLc,Ldは、断面CSの長さLbより大きい。
【0029】
(第1エンドプレート取り付け工程)
上記のように構成された積層体10の中心軸Cの延設方向における一端面(下面)に、エンドプレート20(図2参照)が取り付けられる。エンドプレート20は、合成樹脂製である。エンドプレート20は、鉄心片11と略同一形状の板状部材である。エンドプレート20の板厚は、鉄心片11の板厚より少し大きい。エンドプレート20は、積層体10の貫通孔THa10と略同径の円形の貫通孔THa20を有するが、磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10に対応する貫通孔は有していない。
【0030】
貫通孔THa20と貫通孔THa10とが同軸配置されるように、エンドプレート20が積層体10の一端面(下面)に取り付けられる。エンドプレート20により、磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10の延設方向における一端側(下側)が塞がれる。なお、磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10の延設方向における他端側(上側)が開口されている。
【0031】
(磁石配置工程)
つぎに、磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10の延設方向における他端側(上側)から磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10内へ永久磁石30がそれぞれ挿入される。永久磁石30は、角柱状に形成されている。永久磁石30の長さは、磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10の深さより僅かに小さい。図6に示すように、永久磁石30の長手方向に垂直な断面CS30は、長方形を呈する。断面CS30の長さL30が、断面CSにおける長さLb(図5参照)より小さい。また、断面CS30の幅W20が、断面CSの幅Wb(図5参照)より小さい。
【0032】
磁石収容部MHb10において、永久磁石30は、磁石収容部MHb10の中央部に配置される(図7参照)。すなわち、各磁石収容部MHb10の中心軸と永久磁石30の中心軸とが一致している。永久磁石30は、凸部PMHb,PMHbの間に位置している。磁石収容部MHb10において、永久磁石30の断面S30における短辺の延設方向が積層体10の径方向に一致するように、永久磁石30が配置される。上記のように、磁石収容部MHb10の内寸に対して永久磁石30の外寸が小さい(図5及び図6参照)ので、永久磁石30の外周面と磁石収容部MHb10の内周面との間に隙間が形成される。
【0033】
磁石収容部MHc10,MHd10において、永久磁石30は、磁石収容部MHc10,MHd10の中央部から見て磁石収容部MHb10側に寄せられて配置される(図7参照)。すなわち、磁石収容部MHc10において、永久磁石30は、凸部PMHcと壁面S12MHcとの間に配置されている。磁石収容部MHd10において、永久磁石30は、凸部PMHdと壁面S12MHdとの間に配置されている。磁石収容部MHc10,MHd10において、永久磁石30,30の断面S30,S30における短辺の延設方向が積層体10の径方向に一致するように、永久磁石30が配置される。永久磁石30の外周面と磁石収容部MHc10,MHd10との内周面との間に隙間が形成される。
【0034】
(第2エンドプレート取り付け工程)
つぎに、積層体10の中心軸Cの延設方向における他端面に、エンドプレート40が取り付けられる(図2参照)。エンドプレート40は、合成樹脂製である。エンドプレート40は、鉄心片11と略同一形状の板状部材である。エンドプレート40の板厚は、鉄心片11の板厚より少し大きい。エンドプレート40は、積層体10の貫通孔THa10と略同径の円形の貫通孔THa40を有する。また、エンドプレート40は、磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10にそれぞれ対応した複数の円形の貫通孔THb40,THc40,THd40を有する。なお、貫通孔THb40,THc40,THd40は、テーパー加工されている。すなわち、貫通孔THb40,THc40,THd40は、エンドプレート40の一方の側面から他方の側面へ向かうに従って、それらの内径が徐々に減少している。
【0035】
貫通孔THa40と貫通孔THa10とが同軸配置され、且つ各永久磁石30の中心軸と複数の貫通孔THb40,THc40,THd40の中心軸とがそれぞれ同軸配置されるように、エンドプレート40が配置される(図8参照)。なお、エンドプレート40の前記他方の側面が積層体10の端面に当接している。このようにして、中間組立品SA(図9参照)が形成される。中間組立品SAにおいて、貫通孔THa20、貫通孔THa10及び貫通孔THa40が中心軸Cの延設方向に連通している。さらに、磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10及び貫通孔THb40,THc40,THd40が、中心軸Cの延設方向に平行な方向にそれぞれ連通している。磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10の延設方向(深さ方向)における一端側(下側)が塞がれているが、他端側(上側)は開口されている。
【0036】
つぎに、永久磁石30を各磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10内に固定(封止)する工程について説明する。まず、中間組立品SAが、図示しない回転テーブルに載置される。中間組立品SAと回転テーブルとが同軸配置されている。エンドプレート40が積層体10の上側に位置し、エンドプレート20が積層体10の下側に位置している(図9の左側の図を参照)。つぎに、図示しない加熱装置を用いて、積層体10の温度が、後述する第1温度T1(例えば、80℃)より高く、第2温度T2(例えば、120℃)より低くなるように、中間組立品SA(積層体10)が加熱される。
【0037】
永久磁石30を各磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10内に固定(封止)するために、本実施形態では、例えば、特開2000-239642号公報に記載されているような合成樹脂材Yを採用する。すなわち、合成樹脂材Yは、使用前(常温)において固形(フレーク状)であり、この状態から加熱されて、その温度が第1温度T1に達すると軟化する。合成樹脂材Yは、第1温度に保持されている状態では硬化することなく、第1温度T1よりも高い第2温度T2に達すると硬化する。
【0038】
上記のような合成樹脂材Yが、注入装置Xを用いて各磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10に充填される。注入装置Xは、図9及び図10に示すように、シリンダーXa、加熱装置Xb、送出装置Xcなどを備える。シリンダーXaは、筒状に形成されており、その先端部にノズルXa1が設けられている。ノズルXa1の先端部の外径は、貫通孔THb40,THc40,THd40の内径より僅かに小さい。シリンダーXaの側面部には、貫通孔THXaが設けられており、貫通孔THXaからシリンダーXa内に未使用(フレーク状)の合成樹脂材Yが投入される。加熱装置Xbは、シリンダーXaの側面部に取り付けられており、シリンダーXa内の合成樹脂材Yの温度を第1温度T1に設定して、合成樹脂材Yを軟化した状態に保持する。送出装置Xcは、スクリューXc1、駆動装置Xc2などを備える。スクリューXc1は、シリンダーXa内に収容されている。スクリューXc1とシリンダーXaとが同軸配置されている。スクリューXc1の長手方向における一端部(ノズルXa1側の端部)が尖鋭状に形成されている。スクリューXc1の長手方向における他端部が、駆動装置Xc2に接続されている。駆動装置Xc2は、電動モーター及び減速装置を含む。駆動装置Xc2は、スクリューXc1を、その中心軸線のまわりに回転させる。
【0039】
(注入工程)
まず、中間組立品SAの上方にて、ノズルXa1の中心軸と貫通孔THb40の中心軸とが一致するように、注入装置Xが配置される。なお、注入装置Xは、図示しないアクチュエータ(ロボットアーム)に支持されており、このアクチュエータにより上下方向に移動される。
【0040】
つぎに、図10に示すように、注入装置Xが下降されて、ノズルXa1の先端部が貫通孔THb40内へ挿入され、ノズルXa1の先端面が、積層体10の上端面に当接される。つぎに、注入装置Xの制御装置が、駆動装置Xc2を駆動して、スクリューXc1を正転させ、軟化した合成樹脂材YをノズルXa1から送り出させる。これにより、合成樹脂材Yが,永久磁石30の外周面と磁石収容部MHb10の内周面との間の空間(隙間)に充填される。上記の合成樹脂材Yの充填工程において、注入装置Xの制御装置は、合成樹脂材Yの注入圧力を監視している。磁石収容部MHb10内の空間(隙間)が合成樹脂材Yで満たされると、注入圧力が急上昇する。制御装置は、注入圧力が急上昇したことを検出すると、駆動装置Xc2を停止させる。これにより、磁石収容部MHb10への合成樹脂材Yの注入量が、各磁石収容部MHb10内の隙間の容積と略同等になる。なお、上記のように積層体10を加熱することにより、注入工程において、積層体10の温度が、合成樹脂材Yの溶融温度より高い温度であるため、合成樹脂材Yが溶融した状態を維持できる。また、積層体10の温度は、合成樹脂材Yの硬化温度より低い温度であるため、合成樹脂材Yの硬化を抑制することができる。つまり、注入工程において、合成樹脂材の流動性が良い状態を保つことができる。
【0041】
つぎに、制御装置は、駆動装置Xc2を駆動して、スクリューXc1を僅かに逆転させる。そして、注入装置Xが上昇されて、中間組立品SAから離間される(図11参照)。このように、スクリューXc1を僅かに逆転させておくことにより、注入装置Xを上昇させた際に合成樹脂材YがノズルXa1から垂れ落ちることを抑制できる。
【0042】
つぎに、磁石収容部MHc10の上方に注入装置Xが配置されるように、回転テーブルが、所定の角度だけ回動される。そして、上記の磁石収容部MHb10への合成樹脂材Yの充填手順と同様の手順で、磁石収容部MHc10に、合成樹脂材Yが充填される。上記の工程が繰り返し実行され、他の磁石収容部MHb10、磁石収容部MHc10及び磁石収容部MHd10に合成樹脂材Yが充填される。
【0043】
(硬化工程)
全ての磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10に合成樹脂材Yが充填されると、中間組立品SAから注入装置Xが退避(上昇)される。そして、中間組立品SAが、電磁誘導加熱器IHへ移送され、中間組立品SAの外周面が、電磁誘導加熱器IHを用いて加熱される(図9の右側の図を参照)。これにより、全ての磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10内の合成樹脂材Yの温度が第2温度T2に達して硬化する。このようにして、各永久磁石30が磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10に固定(封止)される。
【0044】
上記のように、合成樹脂材Yは、その温度が第1温度T1に保持されている状態では硬化しない。本実施形態では、合成樹脂材Yを磁石収容部MHb10、MHc10,MHd10に充填する工程において、積層体10の温度が第1温度T1と同等に設定されている。したがって、合成樹脂材Yを磁石収容部MHb10、MHc10,MHd10に注入されたとしても、この状態では、磁石収容部MHb10、MHc10,MHd10内において合成樹脂材Yは軟化した状態のままである。よって、特許文献1乃至特許文献3のモーターコアの製造方法を用いた場合とは異なり、合成樹脂材Yの注入圧力を比較的小さく設定できる。また、合成樹脂材Yの逆流を防ぐための保圧が不要である。よって、全ての磁石収容部MHb10、MHc10,MHd10に合成樹脂材Yを充填した後、即座に、注入装置Xを解放し、中間組立品SAを別の場所(生産ラインの下流側)へ移送し、その場所において、合成樹脂材Yを加熱して硬化させることができる。すなわち、本実施形態によれば、1つの中間組立品SAへの合成樹脂材Yの充填が完了すれば、合成樹脂材Yの硬化完了を待つことなく、即座に、注入装置Xを解放でき、次の中間組立品SAへの合成樹脂材Yの充填作業を開始できる。
【0045】
また、合成樹脂材Yの注入圧力の変化に基づいて、各磁石収容部MHb10、MHc10,MHd10への合成樹脂材Yの注入作業が制御される。これによれば、各磁石収容部MHb10、MHc10,MHd10内の空間(隙間)の容積と略同量(前記空間を満たすために必要且つ十分な量)の合成樹脂材Yが、注入装置Xから各磁石収容部MHb10、MHc10,MHd10へ注入される。そして、すべての磁石収容部MHb10、MHc10,MHd10に合成樹脂材Yが充填された後、中間組立品SAが電磁誘導加熱器IHにより加熱されて合成樹脂材Yが硬化されるが、その硬化工程においては、注入装置Xは中間組立品SAから解放(退避)されている。したがって、電磁誘導加熱器IHにより加熱された中間組立品SAの熱が注入装置Xに伝達されない。よって、特許文献2及び特許文献3の製造方法を用いた場合とは異なり、注入装置X内において、合成樹脂材Yが硬化するという事態は生じない。そのため、注入装置X内から合成樹脂材Yを除去するという作業が不要である。
【0046】
上記のように、本実施形態によれば、ローターコア1の生産性を向上させることができる。
【0047】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0048】
例えば、図11Aに示すように、貫通孔THb40,THc40,THd40の内径がノズルXa1の先端部の外径より小さくてもよい。この場合、図11Bに示すように、ノズルXa1の先端面がエンドプレート40の上面に密着するように、ノズルXa1がエンドプレート40に押し当てられる。また、図12に示すように、貫通孔THb40,THc40,THd40の中心軸が、永久磁石30の中心から見て、積層体10の外周側にずれていてもよい。また、図13に示すように、貫通孔THb40,THc40,THd40の中心軸が、永久磁石30の中心から見て、積層体10の周方向にずれていてもよい。すなわち、ノズルXa1の吐出口が、永久磁石30の上方に位置しているのではなく、各磁石収容部MHb10、MHc10,MHd10内の空間(隙間)の上方に位置していても良い。なお、図12乃至図13に示した例において、ノズルXa1の先端部を貫通孔THb40,THc40,THd40に挿入可能なように、貫通孔THb40,THc40,THd40の内径がノズルXa1の先端部の外径より僅かに大きく設定されていてもよい。
【0049】
また、図14に示すように、エンドプレート40が、磁石収容部MHb10と磁石収容部MHc10との境界部に配置される貫通孔THbc40を有していてもよい。この場合、ノズルXa1から、2つの磁石収容部MHb10、MHc10に、合成樹脂材Yが同時に注入される。なお、図14に示した例において、ノズルXa1の先端部を貫通孔THbc40に挿入可能なように、貫通孔THbc40の内径がノズルXa1の先端部の外径より僅かに大きく設定されていてもよい。
【0050】
また、例えば、エンドプレート20,40を廃止してもよい(図15乃至図18参照)。つまり、ノズルXa1の先端面を積層体10の端面に当接させて、合成樹脂材Yを磁石収容部MHb10、MHc10,MHd10に充填してもよい。この場合、合成樹脂材Yを注入しようとする磁石収容部MHb10、MHc10,MHd10の開口端が、ノズルXa1の先端面によって全て覆われるようにするとよい。なお、これらの場合、磁石収容部MHb10、MHc10,MHd10のうち、ノズルXa1が当接される面とは反対側の開口部が、治具を用いて塞がれる。図11A及び図11Bに示した例と同様に、ノズルXa1の中心軸が、永久磁石30の中心の上方に位置していても良い(図15参照)。なお、図15乃至図18において、ノズルXaの位置を点線で二重の円を図示している。この内側の円は、ノズルXa1の先端部にある吐出孔Xa11(合成樹脂材Yを吐出する孔)を示している。また、外側の円は、ノズルXaの先端面の外形Xa12を示している。また、図12に示した例と同様に、ノズルXa1の中心軸が、永久磁石30の中心から見て、積層体10の外周側へずれていても良い(図16参照)。また、図13に示した例と同様に、ノズルXa1の中心軸が、永久磁石30の中心から見て、積層体10の周方向へずれていても良い(図17参照)。また、図14に示した例と同様に、ノズルXa1の中心軸が、磁石収容部MHb10と磁石収容部MHc10との境界部の上方に位置していても良い(図18参照)。
【0051】
また、複数の注入装置Xを用いて、複数の磁石収容部MHb10、MHc10,MHd10に、合成樹脂材Yを同時に充填してもよい。また、硬化工程において、中間組立品SAを加熱炉に投入して、合成樹脂材Yを加熱して硬化させてもよい。また、上記実施形態は、本発明に係るモーターコアの製造方法を、ローターコア1の製造に適用した例であるが、本発明を、ステーターコアの製造に適用してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、合成樹脂製のエンドプレート20,40を採用したが、金属製(例えば、ステンレス製、アルミニウム合金製など)のエンドプレートを採用してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、エンドプレート40の貫通孔THb40,THc40,THd40はテーパー加工されている。すなわち、エンドプレート40の一方の側面から他方の側面へ向かうに従って、貫通孔THb40,THc40,THd40の内径が、徐々に減少している。これに代えて、エンドプレート40の一方の側面から他方の側面へ向かうに従って、貫通孔THb40,THc40,THd40の内径が段階的に変化していてもよい。また、貫通孔THb40,THc40,THd40の内径が、エンドプレート40の板厚方向に一定であってもよい。また、貫通孔THb40,THc40,THd40の形状は、上記実施形態に限られず、例えば、楕円形、多角形などであってもよい。これらの場合、ノズルXa1の形状を貫通孔THb40,THc40,THd40の形状に応じて変更すればよい。
【0054】
また、上記実施形態では、注入工程において、ノズルXa1の先端面が、合成樹脂材Yを注入しようとする孔(貫通孔THb40,THc40,THd40、磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10)の開口端を全て塞ぐようにしているが、開口端の一部を覆うように構成してもよい。この場合、ノズル先端面の外形Xa12は、合成樹脂材Yを注入しようとする孔の形状に応じて変更してもよい。また、ノズル先端面の吐出孔Xa11の形状および位置も、合成樹脂材Yを注入しようとする孔の形状に応じて変更してもよい。また、ノズルXaの先端部において、合成樹脂材Yの流路を分岐して、複数の吐出孔Xa11を有する構成にしてもよい。また、複数の吐出孔Xa11を有するノズルXaを用いて、同時に複数の孔(貫通孔THb40,THc40,THd40、磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10)に合成樹脂材Yを注入する構成にしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態の注入工程(磁石収容部MHb10,MHc10,MHd10に合成樹脂材Yを充填する工程)において、合成樹脂材Yの注入圧力の変化に基づいて合成樹脂材Yの注入量を制御している。これに代えて、例えば、スクリューXc1の回転量(回転回数)に基づいて、合成樹脂材Yの注入量を制御してもよい。また、注入装置Xとして、軟化した合成樹脂材Yを加圧して送り出す装置を採用してもよい。この場合には、その加圧力に基づいて、合成樹脂材Yの注入量を制御するとよい。
【0056】
上記実施形態の硬化工程において、中間組立品SAの外周面が加熱される。これに代えて、又は加えて、中間組立品SAの内周面、中心軸方向における一端面又は他端面が加熱されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
MHb10,MHc10,MHd10…磁石収容部、T1…第1温度、T2…第2温度、X…注入装置、Y…合成樹脂材、1…ローターコア、10…積層体、11…鉄心片、20,40…エンドプレート、30…永久磁石
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18