(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】圧電被覆のための堆積処理
(51)【国際特許分類】
C23C 14/06 20060101AFI20250318BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20250318BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20250318BHJP
H10N 30/076 20230101ALI20250318BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20250318BHJP
H10N 30/097 20230101ALI20250318BHJP
【FI】
C23C14/06 N
C23C14/06 A
H10N30/20
H10N30/30
H10N30/076
H10N30/853
H10N30/097
(21)【出願番号】P 2021522406
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(86)【国際出願番号】 EP2019075035
(87)【国際公開番号】W WO2020083576
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-08-01
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】518031387
【氏名又は名称】エヴァテック・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ボリス・トライチェヴスキー
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-353672(JP,A)
【文献】特開昭63-023305(JP,A)
【文献】特開2018-181870(JP,A)
【文献】米国特許第05232571(US,A)
【文献】米国特許第05985759(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C
H10N
H01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高度に配向された結晶材料を含む圧電被覆を堆積させるための方法であって、少なくとも以下の一連の処理ステップ、すなわち、
第1の真空処理室内に平坦な基板を提供するステップと、
物理的気相エッチング(PVE)によって前記基板の一方の表面をエッチングするステップと、
第1の金属堆積ステップにおいて、スパッタリングによって、第1の金属層(Me1)を前記エッチングされた基板表面に堆積させるステップであって、前記第1の金属層(Me1)が、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つを主成分として含む、ステップと、
後続の化合物堆積ステップの化合物堆積温度T
COMPより少なくとも50℃高い焼鈍温度T
Aで焼鈍するステップにおいて、前記金属層(Me1)を焼鈍するステップと、
第1の化合物堆積ステップにおいて、反応性スパッタリングによって、第1の化合物層(Comp1)を温度T
COMPで前記金属層(Me1)の外側面に堆積させるステップであって、前記第1の化合物層が、金属もしくは合金としてのアルミニウム(Al)、または、アルミニウム(Al)、およびクロム(Cr)、スカンジウム(Sc)、マグネシウム(Mg)、ハフニウム(Hf)のうちの少なくとも1つと、非金属としての窒素(N)とを主成分として含む、ステップと、
第2の金属堆積ステップにおいて、スパッタリングによって、第2の金属層(Me2)を前記第1の化合物層の外側面に堆積させるステップであって、前記第2の金属層(Me2)が、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つを主成分として含む、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記PVEステップと前記第1の金属堆積ステップとの間で、シード層(Seed)が金属スパッタリングまたは反応性スパッタリングによって提供され、前記シード層はAlN、AlScN、AlCrN、またはチタン(Ti)のうちの1つとして堆積させられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の金属層(Me1)はモリブデン(Mo)層として堆積させられることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物層はAlN、AlScN、AlCrN、またはAlMgHfNのうちの1つであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物堆積ステップの処理温度T
COMPについて、
200℃≦T
COMP≦500℃
が有効であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記焼鈍ステップの焼鈍温度T
Aについて、
T
A<500℃、T
A≦600℃、T
A≦700℃、T
A≦800℃、またはT
A≦1000℃
が有効であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
後続の処理ステップが真空システムの異なる処理室において適用されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記焼鈍ステップは別個の焼鈍炉において適用されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
さらなる処理ステップが別個の処理システムにおいて適用されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記さらなる処理ステップは、前記化合物層(Comp1)が堆積させられる前に前記金属層(Me1)の表面をエッチングするステップを含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記焼鈍ステップの後、さらなるPVEステップがそれぞれの金属表面に適用されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記PVEステップおよび前記さらなるPVEステップのうちの少なくとも1つは誘導結合プラズマエッチング(ICPE)を含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記圧電被覆の体積応力が-500~+500MPaの範囲で設定されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の堆積方法を含む、被覆基板を製作するための方法であって、前記圧電被覆が圧電特性を有する、方法。
【請求項15】
前記基板はウェーハであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記被覆基板は、マイクロホン、電気周波数フィルタ、センサ、またはアクチュエータのために使用される圧電装置の一部であることを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
被覆基板であって、被覆が、
プレエッチングされた基板表面における第1のスパッタ堆積および焼鈍金属層(Me1)であって、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つを主成分として含む金属層(Me1)と、
前記金属層(Me1)の外側面における第1の反応性スパッタ堆積化合物層(Comp1)であって、金属もしくは合金としてのアルミニウム(Al)、または、アルミニウム(Al)、およびクロム(Cr)、スカンジウム(Sc)、マグネシウム(Mg)、ハフニウム(Hf)のうちの少なくとも1つと、非金属としての窒素(N)とを主成分として含む化合物層と、
前記第1の化合物層(Comp1)の外側面における第2のスパッタ堆積金属層(Me2)であって、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つを主成分として含む金属層(Me2)と
を備える圧電被覆であり、
以下の金属特性、すなわち、
前記焼鈍金属層(Me1)および前記堆積された状態の化合物層(Comp1)の少なくとも一方の
特性X線ラインの半値全幅A(FWHM
A)が、焼鈍ステップのない堆積された状態の被覆のそれぞれの半値全幅B(FWHM
B)より少なくとも0.1°小さいこと、
誘電損失角δの損失tanδが、焼鈍ステップのない堆積された状態の被覆のそれぞれの損失tanδより少なくとも3×10
-4小さいこと、
のうちの少なくとも1つが当てはまることを特徴とする、被覆基板。
【請求項18】
スパッタリングシード層(Seed)が前記基板表面と前記第1の金属層(Me1)との間に提供され、前記シード層はAlN、AlScN、AlCrN、Ti、またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項17に記載の基板。
【請求項19】
前記化合物層はAlN、AlScN、AlCrN、AlMgHfN、またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項17または18に記載の基板。
【請求項20】
前記シード層(Seed)は前記第1の化合物層と同じ材料であることを特徴とする、請求項18または19に記載の基板。
【請求項21】
前記化合物層はAlNまたはAlScNであり、AlNまたはAlScNの回析パターンにおける<002>X線ラインのFWHMが1.5°以下であることを特徴とする、請求項17から20のいずれか一項に記載の基板。
【請求項22】
前記金属層(Me1)および前記金属層(Me2)の少なくとも一方が、モリブデン(Mo)であり、Mo回析パターンにおける<110>X線ラインのFWHMが2.1°以下であることを特徴とする、請求項17から21のいずれか一項に記載の基板。
【請求項23】
前記被覆の前記損失tanδが1.3×10
-3以下であることを特徴とする、請求項17から22のいずれか一項に記載の基板。
【請求項24】
前記被覆基板は、マイクロホンのための膜、周波数フィルタ、センサ、アクチュエータ、または、このような装置のための中間物であることを特徴とする、請求項17から23のいずれか一項に記載の基板。
【請求項25】
前記基板は、多層を備え、前記多層は、前記金属層と前記化合物層とを交互に備え、前記金属層はN+1個であり、前記化合物層はN個であり、Nは1から10の整数であることを特徴とする、請求項17から24のいずれか一項に記載の基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の高度に配向された微細構造を伴う材料を含む被覆を堆積させるための方法と、請求項20に記載の被覆基板とに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロホン、電気周波数フィルタ、超音波発生機、センサ、およびアクチュエータなどの圧電装置の小型化がなおも進行しているため、特には圧電層および圧電被覆といった圧電材料の材料特性が益々重要になっている。このような特性は、θ/2θのX線解析パターンによって示され、ロッキング曲線の狭い半値全幅(FWHM)の値で表現される均一で高度に配向された微細構造、ならびに、小さいtanδ値などによって表現される小さい誘電損失特性である。圧電応答は、圧電AIN膜を他の金属で合金化することで向上させることができ、それによってAINの六面構造がなおも保持されることは良く知られている。産業用の使用のための最も有望な材料は、43at%のSc濃度までのScである。他の知られている材料はCrおよびMgHfである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それぞれの被覆が少なくとも1つ備える薄い圧電層の材料特性を向上させ、向上した被覆を基板に提供するための方法を提供することが本発明の目的である。背景技術で言及したような圧電層材料に関連して、本発明は、本発明の例および実施形態が、実行可能性の理由により特定の材料を通じて検討され得るという事実にも拘わらず、このような最先端の材料の向上に向けられていることは言及しておかなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そのため、高度に配向された結晶構造を伴う材料を含む被覆を堆積させるための方法であって、少なくとも以下の一連の処理ステップ、すなわち、
- 第1の真空処理室内に平坦な基板を提供するステップと、
- 物理的気相エッチング(PVE)によって基板の一方の表面をエッチングするステップと、
- 第1の金属堆積ステップにおいて、スパッタリングによって、後続の化合物層のための結晶学的成長に関してベース層であり、被覆の機能性に関してベース電極である第1の金属層(Me1)を、エッチングされた基板表面に堆積させるステップと、
- 第1の後続の化合物堆積ステップの化合物堆積温度TCOMPより少なくとも50℃高い焼鈍し温度TAで焼鈍するステップにおいて、金属層(Me1)を焼鈍するステップと、
- 第1の化合物堆積ステップにおいて、反応性スパッタリングによって、第1の化合物層(Comp1)を温度TCOMPで金属層(Me1)の外側面に堆積させるステップと、
- 第2の金属堆積ステップにおいて、スパッタリングによって、第2の金属層(Me2)を第1の化合物層の外側面に堆積させるステップと、
を含む方法が開示されている。
【0005】
本発明の方法のさらなる実施形態では、PVEステップと第1の金属堆積ステップとの間で、シード層(Seed)が金属スパッタリングまたは反応性スパッタリングによって提供される。
【0006】
さらに、さらなる化合物堆積ステップにおける反応性スパッタリングによって第2の金属層(Me2)の外側面に堆積させられる少なくとも1つのさらなる化合物層(CompN)であって、Nは1から10の間の整数である、少なくとも1つのさらなる化合物層(CompN)と、
さらなる金属堆積ステップにおけるスパッタリングによってそれぞれのさらなる化合物層の外側面に堆積させられる少なくとも1つのさらなる金属層(MeN+1)とを備える多層の堆積が、ベース層Me1またはシードおよびMe1の焼鈍ステップを含む発明的に堆積させられたベース被覆を利用できる。ベース被覆は、ベース層とMe2を伴うComp1とを備える。
【0007】
さらなる実施形態では、第2の金属堆積ステップおよびさらなる金属堆積ステップの1つは、それぞれのさらなる化合物層(CompN)が堆積させられる前に、それぞれの後続の焼鈍ステップが続く。
【0008】
金属層の材料に関連して、金属層は、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つを主成分として含むように堆積させることができ、主成分の合計は、それぞれの層材料の原子比率の少なくとも80%、90%、またはさらには約100%になる。代替で、堆積された状態の金属層は、潜在的な他の合金化または妨害する成分が全体の量の0.5%未満を表すことを意味するそれぞれの成分または混合物から成ってもよい。少なくとも第1の金属層(Me1)は、この意味において、モリブデン(Mo)の1つとして堆積させられ得る。
【0009】
少なくとも1つの化合物層の材料に関連して、材料は、金属もしくは合金としてのアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、スカンジウム(Sc)、マグネシウム(Mg)、ハフニウム(Hf)、AlSc、AlCr、およびMgHfのうちの少なくとも1つと、非金属としての窒素(N)とを主成分として含み得る。代替で、化合物層は、潜在的な他の合金化または妨害する成分が全体の量の0.5%未満を表すことをここでも意味する、与えられているような定義内で、AlN、AlScN、AlCrN、またはAlMgHfNから成ってもよい。後続の化合物層Comp1、Comp2、・・・CompNは異なる圧電材料のものであってもよいが、同じ材料を使用することで、処理をより容易に取り扱いおよび制御することができ、例えば同じ被覆/スパッタ室の複数の使用によって、機器のコストをより低く保てる。
【0010】
一実施形態では、シード層はAlN、AlScN、AlCrN、HfMgN、またはチタン(Ti)層として堆積させられる。
【0011】
化合物層Comp1、2、・・・nを堆積させるための処理温度TCOMPは、200℃≦TCOMP≦500℃の範囲から選択され得る。少なくとも1つの焼鈍ステップの焼鈍温度TAは、配列の度合いおよび調整される材料特性に応じて、以下の値のうちの1つ以上に少なくともなるように、選択され得る。
TA≦500℃、TA≦600℃、TA≦700℃、TA≦800℃、またはTA≦1000℃
【0012】
700℃~1000℃(800℃≦TA≦1000℃)の範囲において、焼鈍は幅広い金属層(Me1)の材料に効果的であると分かっている。
【0013】
後続の処理ステップが真空システムの異なる処理室において適用され得る。しかしながら、そのため、金属堆積のような繰り返しの処理、および同じ金属もしくは化合物が使用されるときの最終的な化合物堆積、または、繰り返しの焼鈍ステップは、例えばウェーハといった基板を、真空の下で、金属堆積区画室から、それぞれの処理の要求に応じて焼鈍し区画室および化合物堆積区画室へと移送するために、中心のハンドラによってマルチチャンバ真空処理システム(MCS:multi-chamber vacuum processing system)の同じ処理区画室において実施され得る。
【0014】
代替で、焼鈍ステップおよび後続の焼鈍ステップのうちの少なくとも1つは、別個の焼鈍炉、つまり、MCSとは別の焼鈍炉で適用され、それによって、基板は、真空の雰囲気からロードロック室を介して外へ移送され、再び真空の雰囲気へと移送される必要がある。さらなる別の処理ステップが、例えば化合物層または第2の金属層が堆積させられる前、それぞれの別の処理システムを用いて導入させられてもよい。明確には、このようなさらなる処理ステップは別の焼鈍ステップの直前または直後に実施され得る。このようなさらなる処理ステップは、(正の)フォトレジストを金属表面に配置し、それをリソグラフィ処理において光に曝し、ラッカの曝された部分を溶解し、最終的に半導体表面に形成された導電路からレジストを除去するために、保護されていない金属表面部分をエッチングすることなどの下位ステップを含む、金属層(Me1)の構造化の1つであり得る。
【0015】
さらに、焼鈍ステップまたは後続の焼鈍ステップのうちの少なくとも1つの後、さらなるPVEステップがそれぞれの金属表面に適用され得る。このステップは、焼鈍ステップおよび/またはさらなる処理ステップが別の焼鈍炉または別の処理システムにおいて適用された場合には強制的であり、基板は雰囲気から真空システムへと戻すように移送される必要がある。しかしながら、驚くべきことに、表面のこのような特定のエッチングは、基板が処理サイクル全体にわたって真空の下で保たれるときであっても、有益な効果を有すると思われる。これは、PVEステップによって開始される表面精製処理と本発明者によって呼ばれており、表面精製処理は、それぞれの表面における結晶成長の不具合またはステップを等しくし、詳細に証明するためにいくらかのさらなる実験を必要とする。それによって、PVEステップおよびさらなるPVEステップのうちの少なくとも1つは誘導結合プラズマエッチング(ICPE)を含み得る。
【0016】
前述したような発明の堆積処理は、半導体産業にとって、圧電特性を有する被覆を基板に堆積させるのに特に適しており、このような基板はウェーハまたはウェーハの別個の部品とすることができ、したがってそれらは、例えばマイクロホンなどのための電気周波数フィルタ、センサ、またはアクチュエータとして使用できる、または、このような装置のための中間物を構成することができる。
【0017】
そのため、本発明のさらなる目的は、例えばより良好な結晶配向などによって向上した材料特性を有する圧電被覆を基板に提供することである。このような被覆は、
- プレエッチングされた基板表面における第1のスパッタ堆積および焼鈍金属層(Me1)と、
- 金属ベース層の外側面における第1の反応性スパッタ堆積化合物層(Comp1)と、
- 第1の化合物層(Comp1)の外側面における第2のスパッタ堆積金属層(Me2)と
を備え、
以下の金属特性、すなわち、
- 焼鈍金属層(Me1)および堆積された状態の化合物層(Comp1)の少なくとも一方の特性X線ラインの半値全幅A(FWHMA)が、焼鈍ステップのない堆積された状態の被覆のそれぞれの半値全幅B(FWHMB)より少なくとも0.1°、0.2°、または0.3°小さいこと、
- 誘電損失角δの損失tanδが、焼鈍ステップのない堆積された状態の被覆のそれぞれの損失tanδより少なくとも2×10-4、3×10-4、または4×10-4小さく、このような値は層Comp1について550nmの基準層厚さで測定されること
のうちの少なくとも1つが実現される。より厚い層または被覆の積み重ねの向上が本質的により高められることは言うまでもない。
【0018】
結晶配列を向上させるためのさらなる測定は、基板表面と第1の金属層(Me1)との間に提供されるスパッタリングシード層(Seed)に、例えば、化合物層を形成する圧電作用材料に対応するシード層を提供することである。そのため、シード層(Seed)は、化合物層およびさらなる化合物層の少なくとも一方と同じ材料のものであり得る。
【0019】
本発明のさらなる実施形態では、
- 少なくとも1つのさらなる化合物層(CompN)が第2の金属層(Me2)の外側面に堆積させられる、
- 少なくとも1つのさらなる金属層(MeN)がそれぞれのさらなる化合物層の外側面に堆積させられる。
【0020】
化合物層およびさらなる化合物層は、以下の材料、すなわち、AlN、AlScN、AlCrN、AlMgHfN、またはそれらの混合物を含み得る。このような化合物材料が、先に使用されたような単純化された化学式と異なる成分の化学量論性を含んでもよいことは言及しておかなければならない。そのため、例として、AlNは、1:1の割合でのAl:Nを表していると共に、準化学量論的または過化学量論的な組成も表している。例えばシード層または化合物層といった、Scを含むAlN層に関連して、層の圧電応答を強化するために、Scは5~43%から、特には10~35%の間の範囲に存在し得ることは言及しておかなければならない。
【0021】
金属層に関連して、金属層Me1、第2の金属層Me2、およびさらなる金属層Me-nのうちの少なくとも1つは、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、またはそれらの混合物とすることができ、シード層はAlN、AlScN、AlCrN、HfMgN、Ti、またはそれぞれの混合物とできる。
【0022】
AlNまたはAlScNからである化合物層またはさらなる化合物層の材料特性に関連して、AlNまたはAlScNの回析パターンにおける<002>X線ラインのFWHMが、約550nmの層厚さについて、1.5°以下、1.4°以下、またはさらには1.3°以下であり得る。
【0023】
金属層の材料特性に関連して、モリブデン(Mo)からである金属層Me1、第2の金属層Me2、およびさらなる金属層Me-nは、2.1°以下、2.0°以下、またはさらには1.9°以下であるMoの回析パターンにおける<110>X線ラインのFWHMを有することができ、FWHMは、約15~20nmの層厚さを参照し、ここでもより大きな厚さの金属層について本質的により小さくなり得る。
【0024】
それによって、Me1、Comp1、およびMe2について言及された材料および層厚さを備える被覆に言及すると、例えば後で詳細に記載されている積み重ねIタイプの被覆の損失tanδは、1.3×10-3以下、1.2×10-3以下、1.1×10-3以下、またはさらには1.0×10-3以下であり得る。
【0025】
化合物層(Comp1・・・N)の体積応力に関連して、圧電被覆の体積応力が-500~+500MPaの好ましい範囲に設定されるべきであることが分かっている。
【0026】
このような被覆基板は、マイクロホン、周波数フィルタ、センサ、アクチュエータ、または、このような装置のための中間物にも適用可能である。
【0027】
ここで、本発明は、例および図の助けを借りてさらに例示される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1では、本発明の方法の基本的な流れ図が示されている。通常の浄化ステップのような予備的な活動、または、例えばマルチチャンバ真空処理システムMCSのロードロック室もしくは別のガス抜き室の中で、現場で行われ得る200℃から400℃の間でのガス抜き処置の他に、例えば処理システムのさらなるロードロック室もしくは別の冷却室などにおける冷却のような後処理ステップは、当業者には良く知られているため示されておらず、本明細書ではさらなる説明を必要としない。
図1では、太線で描かれたすべてのステップは、太字での行為/材料に関して強制的であり、これは、基板表面のエッチングステップと、続いての、第1の導電層または電極を提供するための、第1の金属Me1の堆積ステップと、続いてのMe1の結晶構造を配列させるための焼鈍ステップと、続いての、最小のプロセスサイクルを提供して高度に配列された圧電層を本発明による高度に配向された微細構造で製作するための第1の化合物Comp1堆積ステップとを意味する。この最小層システムの配列を向上させるための追加の措置は、第1の金属層Me1のための結晶学的成長に関してベース層を形成するために、シード層(Seed)を基板の表面に直接的に提供することとすることができ、第1の金属層Me1は次にSeedに直接的に堆積させられる。それによって、シード層(Seed)はComp1、2、・・・nと同じまたは異なる材料のものとすることができる。さらに、実行可能な圧電層積み重ねIを提供するために、第2の金属層Me2が、第2の電極を形成するように第1の化合物層の外側面に提供され得る。Me1とMe2とは同じ金属または異なる金属であり得るが、同じ材料を使用することで、先に説明したような理由のため、取り扱いをより容易にする。例として、すべての金属層Me1、Me2、Me3、・・・Me-nについてMoを使用することは、すべての金属層について良好な選択肢となる。Comp1は、AlN、AlScN、AlCrN、AlHfMgN、またはそれらの混合物のうちの1つとなり得る。それぞれの材料が
図1に列記されており、それぞれの層(Seed、Me1・・・n、Comp1・・・n)の層厚さは、
図1に提供されているような範囲内で選択できる。
【0030】
加えて、Si、SiC、SiN、GaAs、またはAl2O3(サファイア)の基板またはウェーハが使用できる。Siウェーハが酸化(絶縁)またはブランク(半導体)にされ得る。5nmの酸化等価物とも呼ばれる、表面から-5nmの酸化ケイ素をエッチングするために使用されるエッチング時間は、通常は表面を準備するのに適切であり、これは金属表面にも当てはまる。エッチング処理に関連して、CH00992/18(PR1803)に詳細に記載されているようなICPEの処理および機器は最良の結果を提供し、そのため、この出願は実際の発明の一体部分として宣言される。
【0031】
このようなエッチング装置は、側壁が中心軸Aの周りで輪になっている少なくとも1つの板形状の基板のための真空室を備え、その室は以下のものを含む。
- 開口の両側の間に大きな圧力差がある場合にはロードロックであり得る基板取扱開口。
- 還元ガスおよび不活性ガスのための少なくとも1つの入口。
- 室のエッチング区画室の中心下方領域において基板または加工物の指示体として形成される台であって、RF供給源であり得る第1の供給源の第1の極に連結され、それによって第1の電極を形成し、第1の加熱および冷却の手段を包囲する台。
- 対電極であり、接地にRF接続され、第1の電極を取り囲む第2の電極であって、RF接続は、ここでは、RFプラズマに曝される部品を安全に設置するように適合される導電性接続を意味する、第2の電極。このような接続の例は、後で示される同じ譲受人のWO2017/207144およびWO2017/215806において詳細に説明されており、第2の電極は、室の底、下方室部分、および台の周囲のうちの少なくとも1つを保護するために少なくとも1つの下方遮蔽体を備え、0.05Pa~0.7Paまたは0.1Pa~0.5Paである反応性イオンエッチング(RIE)が適用されるときの典型的な処理圧力範囲において0.5~5mmまたは0.8~2mmであり得る暗室距離において、第1の電極に向けて位置決めできる。
- 対電極でもあり、接地にRF接続される第3の電極であって、少なくとも1つの上方遮蔽体、および、熱的および電気的の両方で互いに接続されるスクリーン遮蔽体を備える第3の電極。それによって、スクリーン遮蔽体はエッチング区画室の周りで輪になり、第2の電極と上方遮蔽体との間で鉛直方向にあり、上方遮蔽体は真空室の上壁に装着され、これらの遮蔽体は、上壁および室側壁の少なくとも上方部によって形成される室天井の内面をエッチング在留物から保護し、それによってスクリーン遮蔽体は、中心軸Aと平行または少なくともほぼ平行にスロットが作られる。
- それによって、上方遮蔽体とスクリーン遮蔽体との少なくとも一方は、これらの遮蔽体を一定の温度の高さで恒久的に保持するように構成される少なくとも1つのさらなる加熱および/または冷却の手段を備える。
エッチング装置は、真空ポンプシステムと、上方側壁の周りで輪になる誘導コイルとをさらに備え、上方側壁は、エッチング区画室の真空密の側壁を定め、スクリーン遮蔽体を取り囲み、それによって、コイルの1つの第1の端が、MF供給源であり得る第2の電圧供給源の第1の極に接続され、コイルの1つの第2の端が、真空室のエッチング区画室内に誘導結合プラズマを生成するために設置に接続され、それによって、少なくとも真空室の上部または上方遮蔽体と台との間の領域において、少なくとも真空室の上方壁は、例えば酸化アルミニウムまたは窒化ホウ素といったセラミックから作られる、または、石英から作られる。
【0032】
エッチングシステムの基本的なバージョンにおいて、加熱および冷却の手段と、さらなるまたは後で言及される補足の加熱および/または冷却の手段とには、第1の加熱および冷却の装置によって、処理の要求に応じてそれぞれの加熱または冷却の流体が供給され得ることは言及しておかなければならない。
【0033】
例えば、体心立方<110>の配向におけるモリブデンといった、完全に異なって配向された金属Me1の表面における、例えばウルツ鉱<002>の配向でのAlNまたはAlScNの圧電化合物層のより良好でさらに配列された成長を驚くべきことに可能にする正確な現象の徹底した分析を提供しようとすることなく、第1の金属層Me1またはシード層(Seed)および第1の金属層Me1であるベース層システムの配列が、より良好に配列された圧電層Comp1のための基礎を与えることが仮定されており、これは、Me1層および最終的にはシード層の微細構造の配向だけでなく、Comp1層の配向も、Me1層の焼鈍ステップのない場合よりも高いことを意味する。このような特定の焼鈍ステップが、一度に被覆積み重ね全体を焼鈍しようとする被覆ステップの終わりに「すべて一度に」焼鈍するよりもはるかに良好な結果を確実にここでも驚くべきことに与えることは言及しておかなければならない。さらに、このような焼鈍ステップが、処理される層が例えば15~80nmまたはさらには10~50nmなど極めて薄いため、例えば30~120秒間または60~90秒間といった短さすることがとでき、焼鈍は、例えば、処理のために使用され得る被覆ウェーハの裏面における高温測定が必要な温度に達したことを示すとき、すぐに、または、目標温度において非常に短い保持時間で停止させることができる。
【0034】
第1の金属層Me1の表面をエッチングするための、または、終わりに全体の層積み重ねIを焼鈍するための追加のエッチングステップなど、単に任意選択の特徴だけが破線で示されている。しかしながら、焼鈍ステップについて、システムにおいて基板を焼鈍する代わりに基板が真空システムから締め出される場合、金属層がComp1を堆積させるために次の被覆ステップに向けて良好な状態になることを確実にするために、例えばICPEによってPVEエッチングステップを導入することが大いに薦められる。
【0035】
図1で検討されたような本発明の処理のそれぞれの下位ステップと同様に、さらなる化合物層(CompN)が第2の金属層(Me2)の外側面に堆積させることができ、それによって、それぞれのさらなる化合物層の外面における1つのさらなる金属層(Me-n)は、
図1の積み重ねIの種類の層を備える積み重ねIIの種類の層を形成する。すべての処理ステップが閉マルチチャンバ真空システムMCS内で適用される、つまり、基板にとって真空状態の中断がないという事実にも拘らず、第2のエッチングステップが、Comp2を堆積させる前にMe1の表面を精製するために適用されているが、これは、Comp2層の後続の成長の配列に、追加的であるが顕著とは言えない効果を与えることが分かっているためである。同様に、特定の後続の焼鈍ステップはさらなる配列を助ける。このようなより厚い被覆は、被覆の圧電応答を強化するのに有用であり、層のシーケンスMe1、2、3・・・n+1とComp1、2、3・・・nに関連して、または、層積み重ね(積み重ねI(Me1+Comp1+Me2)、積み重ねII(Me1+Comp1+Me2+Comp2+Me3)、積み重ねIII、・・・積み重ねN)の数に関連して、「複数」とされ得る。そのため、交互するMe1またはシードに加え、Me1~MeN+1およびComp1~CompNの層の多層を備える本発明の基板も製作でき、それによってNは1~20または2~10の整数とすることができる。これは、層積み重ねI~XXまたはII~Xと一致する。
【0036】
すべての被覆は、MCSの材料特定スパッタ区画室において適用される。600℃の温度までの焼鈍が、高温チャックが備えられた被覆区画室において取り扱える。より高い温度のために、焼鈍が、加熱される基板表面に向かい合う平坦なカーボンヒータを備える特定の焼鈍区画室において実施される。区画室の上部および下部は冷却反射面を備える。基板は、その外側周囲の近くで3つの指支持体によって保持されている。
【0037】
図2は、
図1に記載されているような処理で堆積された状態の本発明の被覆を示している。半値全幅FWMHおよび損失tanδの測定について、以下において詳述されているように、Me2を伴う積み重ねIの種類の被覆が、異なる焼鈍温度を伴うSiO
2ウェーハに提供されている。
図2に示されているような層の組成および厚さが使用されている。より詳細な精査のために、以下のより小さい範囲が調査された。
シード: AlNまたはAlScN、15~30nm
Me1: Mo、15~50nm
Comp1: AlNまたはAlScN、300~700nm
Me2: Mo、15~50nm
【0038】
このような層厚さ範囲が、AlN、AlScN、AlCrN、もしくはチタン(Ti)のシード層、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、もしくはそれらの混合物を主成分として有する少なくとも1つの金属層Me、AlN、AlScN、AlCrN、もしくはAlMgHfNの少なくとも1つの化合物層Compのような異なる材料の多層または層を堆積させるのにも適切であることは言及しておかなければならない。
【0039】
処理は、200mmのウェーハの処理について、PVEモジュールと、焼鈍モジュールと、Alターゲットおよび反応ガスのための入口が備えられたAlN堆積のための1つのモジュールと、Moターゲットが備えられたモリブデン堆積のための1つのモジュールとが備えられた市販のClusterline 200 II MCSにおいて実施された。モジュールは、単一のウェーハを入力ロードロック室から取り上げるために、プログラム可能なハンドルを備え、ウェーハ表面からガス抜きするための配列手段および加熱手段を有する中心のハンドラの周りに配置され、処理の要求に応じてウェーハをそれぞれの処理モジュールまたはロードロックへと送り込む/から排出する。処理の終わりにおいて、基板はハンドラによって出力ロードロック室へと戻すように提供され、出力ロードロック室は、雰囲気へと出す前に、ウェーハを冷却するための冷却手段を備える。生産における完成サイクルを加速させるために、AIN被覆のための追加のモジュールと、Mo堆積のための第2のモジュールまたは第2の焼鈍室とが提供され得る。
【0040】
後で示され、以下の表において示されているような処理パラメータが、上記の測定および
図2において検討されたように、AlNまたはAlScNシード層(シード)と、2つのMo金属層(Me1およびMe2)と、AlNまたはAlScN化合物層(Comp1)とを備える積み重ねIの種類の被覆を製作するために使用された。括弧において、積み重ねI、積み重ねII、・・・積み重ねnの種類の被覆についての層または被覆の特性の細かい調整のために適用され得る処理パラメータの範囲が提供されている。スパッタターゲットが、100kHzのパルス周波数でパルスDC供給源によって駆動され、それによって50~400kHzの範囲が適用可能である。それぞれのターゲット直径は304mmであり、ウェーハ表面とターゲット表面との間の距離は60mmである。留め付けはスパッタリングの間にウェーハに適用され、膜応力の調整のために、台がRF電位であり得る。
【0041】
【0042】
図3では、先に示したのと同じ設計の積み重ねIの種類の被覆についての特定の層の焼鈍ステップの効果が、ロッキング曲線の図を通して示されている。膜結晶化測定(θ-2θ、ロッキング曲線)が、Cu Kα線を用いるBRUKER D8 Discover X線回析(XRD)ツールにおいて実施された。一次ビーム側において、0.2mmスリットおよび2xGe単色光分光器が使用され、二次側において、1B-結晶が配置され(三軸)、使用された。FWHM値において表されたロッキング曲線が、焼鈍なしの積み重ねIIの種類の被覆について表示され、したがって、FWHM
B値が0℃の焼鈍温度T
Aにおいて表示されており、本発明の被覆については、特定の焼鈍ステップがMe1層の堆積の後で、後続のComp1層の堆積の前に実施された。システムのシード層が、基板表面における2つのベース層の非常に薄い構造、および、ウェーハの裏面における温度制御のため、焼鈍されないことは言うまでもない。それぞれの回析パターンにおいて、Moに関連して、(約40.5°の位置における)Mo回析パターンでの最も顕著な<110>X線ラインのFWHM値が使用されており、AlNに関連して、(約36°の位置における)最も顕著な<002>X線ラインのFWHM値が使用された。両方の材料についての測定は、すべての温度についてウェーハの中心および縁において行われた。500℃の焼鈍温度を伴うMo材料について、0.05から0.1の間のFWHM
Aの値の小さな減少だけが両方の位置にとって見られ、700℃におけるさらに穏やかな減少および800℃における急激な減少は、両方の位置について約0.5°の最先端の技術と比較しての全体的な減少を与えている。驚くべきことに、AlNについてのグラフ(下方の線の対)は、Moのグラフ(上方の線の対)を反映していないが、焼鈍が90秒後に停止させられるときの温度であった800℃の焼鈍温度において、特に焼鈍されたMo1層を伴う層の積み重ねIIについて約0.15から0.2の間の差で終わるFWHM
Aのより線形の現象を示している。同じ800℃の焼鈍ステップと、(裏面オン)において基板の裏面を冷却するための裏面ガスの供給とを伴うさらなる実験は、なおも若干良好な性能を伴う結果となった。裏面ガスによって、基板は、基板と加熱/冷却チャックとの間に導入される追加の(Ar)ガスの助けで、加熱されたチャックに熱的に結合される。ガス圧力は、典型的には5±1mbarの範囲にあり、そのため基板は留め具またはウェイトリングで固定される必要がある。
【0043】
それと共に、より良好な結晶学的配列の明確な証拠が、ベース層Me1またはシードおよびMe1の1回だけの特定の焼鈍ステップで示すことができる。
【0044】
同時に、応力および損失tanδの測定が、表2に示されている異なる試料で実施されている。ここでも、特定の焼鈍ステップが、AlNシード層におけるMo金属層を含むMe1層の堆積が完了した後に実施された。表1における結果から、以下では、AlN層の平均体積応力が、試料1~3を見ると、焼鈍ステップがMe1に適用されたときにより小さくなることが見て取れる。さらに、特定の焼鈍ステップのない試料(試料4および5)と比較して、すべての焼鈍された試料は、本質的に最大で2倍のより小さい損失tanδを示しており、ここでも、本発明の方法およびウェーハなどのそれぞれの被覆基板の大きな可能性を示している。
【0045】
【0046】
図4では、15nmのAlN(シード)と、20nmの層から最も外側の5nmの酸化物等価物をエッチングした後の15nmのMo(Me1)と、後で堆積させられた550nmのAlN(Comp1)と、15nmのMo(Me2)とを備える積み重ねIの種類の被覆を参照する、焼鈍温度に対するtanδの図が示されている。x軸において、ここではMo層である20nmの厚さのMe1の特定の焼鈍温度が示されており、y軸は、それぞれの特定の焼鈍された積み重ねIの被覆の全体の応力を示している。上方の実線は、-300MPaの平均応力を有する550nmのAlN被覆を参照しており、中間の破線は、-100MPaの平均応力を伴うそれぞれの被覆を参照しており、下方の一点鎖線は、+400MPaの平均応力を伴うそれぞれの被覆を参照している。図は、tanδが約800℃の焼鈍温度で縮小することをはっきりと示しているが、被覆の引張応力(+)が圧縮応力(-)と比較して好ましいことも示している。
【0047】
図5は、焼鈍された被覆および焼鈍されていない被覆のそれぞれの体積応力に対するtanδを示している。上方の線は、異なる応力(-300MPa、-100MPa、および+400MPa)の焼鈍されていないMe1層の値を示しており、負(-)の応力が圧縮応力であり、正(+)の応力が引張応力であり、下方の線が被覆についてのtanδ値を示しており、Me1は、829℃の温度まで、また互いに非常に近い729℃および866℃の特定の焼鈍温度に対しても-100MPaにおける中間応力値について特に焼鈍されている。それによって、ここでも、特定の焼鈍ステップの有益な影響が見て取れ、ゼロ(±100MPa)の周りの領域における値、および/または、0~+500または+100~+400MPaの低い引張応力範囲における値に圧電層の体積応力を設定する有益さも見て取れる。AlN化合物層を通して
図4および
図5に示されたのと同様の向上が、様々なSc濃度においてAlScNをComp1および/またはSeed材料として含む被覆について、それぞれの特定のMe1焼鈍ステップまたは/およびComp1の体積層応力の調節で達成できる。
【0048】
本発明の実施形態のうちの1つだけとの関連で図示または検討され、他の実施形態でさらに検討されていないようなすべての特徴が、当業者に明らかに不適当であるとすぐに認識できない限り、本発明の他の実施形態の性能も向上させるために良好に適合される特徴になると考えることができることは、言及しておかなければならない。そのため、言及されたものを除いて、特定の実施形態の特徴のすべての組合せが、このような特徴が明示的に言及されていない他の実施形態と組み合わせることができ、本発明の一部を形成することができる。