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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】産業車両用の燃料電池ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04291 20160101AFI20250318BHJP
   B60L 50/72 20190101ALI20250318BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20250318BHJP
【FI】
H01M8/04291
B60L50/72
H01M8/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022007084
(22)【出願日】2022-01-20
(65)【公開番号】P2023106000
(43)【公開日】2023-08-01
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】頭川 天洋
(72)【発明者】
【氏名】明本 斉
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-174665(JP,A)
【文献】特開2021-121991(JP,A)
【文献】特開2008-270134(JP,A)
【文献】特開2009-110714(JP,A)
【文献】特開2005-141976(JP,A)
【文献】特開2005-228499(JP,A)
【文献】特開2005-100775(JP,A)
【文献】特開2005-71958(JP,A)
【文献】特開2020-135944(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102020101529(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池から排出されたアノードオフガスが流入し、前記アノードオフガスに含まれる生成水を前記アノードオフガスから分離する気液分離器と、
前記気液分離器で分離された前記生成水を貯留する貯水タンクと、
前記気液分離器の内底面に開口し、かつ前記貯水タンクの天井面に開口する排水口であって、前記気液分離器の内部空間と前記貯水タンクの内部空間を上下方向に連通させる前記排水口と、を有し、産業車両の車体に搭載される産業車両用の燃料電池ユニットであって、
前記貯水タンクの内部空間にて前記生成水の液面を、前記排水口に対向する対向領域と、前記対向領域と異なるその他の領域とに区切る壁部を有するとともに、
前記対向領域と前記その他の領域とを連通させる連通部を有することを特徴とする産業車両用の燃料電池ユニット。
【請求項2】
前記壁部は、前記天井面から前記貯水タンクのタンク底面に向けて延出し、
前記連通部は、前記壁部の下端と前記タンク底面との間に画定された隙間である請求項1に記載の産業車両用の燃料電池ユニット。
【請求項3】
前記壁部は、前記排水口を囲む筒状である請求項1又は請求項2に記載の産業車両用の燃料電池ユニット。
【請求項4】
前記壁部は、前記産業車両の前後方向に前記排水口を挟む第1壁部及び第2壁部を含む請求項1又は請求項2に記載の産業車両用の燃料電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両用の燃料電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
産業車両用の燃料電池ユニットは、燃料電池を有する。燃料電池は、産業車両の車両負荷に供給する電力を発電する。燃料電池は、アノードに供給される水素と、カソードに供給される酸素と、を化学反応させることにより発電する。燃料電池は、水素と酸素とが化学反応することにより生成水を生成する。
【0003】
産業車両用の燃料電池ユニットは、気液分離器と、貯水タンクを有する。気液分離器は、アノードオフガスに含まれる生成水を分離する。気液分離器は、貯水タンクよりも鉛直方向の上側に配置される。
【0004】
気液分離器の内部空間と貯水タンクの内部空間とは排水部によって連通している。気液分離器によって分離された生成水は、排水部を通じて貯水タンクに落下する。貯水タンクは、気液分離器によって分離された生成水を貯留する。
【0005】
例えば、特許文献1には、貯水タンクからの生成水の漏出を抑制する方法が開示されている。特許文献1の燃料電池装置は、貯水タンクの一例としての水タンクを備える。水タンクは、燃料電池と接続されている。また、燃料電池装置は、第1の排水管と、第2の排水管と、第3の排水管と、第4の排水管と、を備える。
【0006】
第1の排水管の上端部、及び第2の排水管の上端部は、燃料電池の左領域に設けられた管接続口に接続されている。第1の排水管の下端部、及び第2の排水管の下端部は、水タンクの右領域に設けられた管接続口に接続されている。第3の排水管の上端部、及び第4の排水管の上端部は、燃料電池の右領域に設けられた管接続口に接続されている。第3の排水管の下端部、及び第4の排水管の下端部は、水タンクの左領域に設けられた管接続口に接続されている。
【0007】
例えば、燃料電池装置の左側が下になり、燃料電池装置の右側が上になるように傾くと、水タンク内の右領域上端部にはエアポケットが生じる。すると、水タンクの右領域に存在する管接続口は、エアポケットに開口した状態となる。したがって、水タンク内の水は、第1の排水管及び第2の排水管内に流入しない。このため、液面よりも下側となる燃料電池の左領域へ、水タンクから水が漏出することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-63920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
産業車両の移動時などに加速度が発生したとき、貯水タンクは傾かないが、貯水タンクの内部空間にて生成水の液面が傾く。すると、加速度が発生する前に比べて、液面の高くなった箇所が発生する。特許文献1の燃料電池装置は、加速度が発生したときの液面の傾きについては全く考慮されていない。このため、液面の高くなった箇所にて、水が排水管内に流入して水タンクから燃料電池へ漏出する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するための産業車両用の燃料電池ユニットは、燃料電池と、前記燃料電池から排出されたアノードオフガスが流入し、前記アノードオフガスに含まれる生成水を前記アノードオフガスから分離する気液分離器と、前記気液分離器で分離された前記生成水を貯留する貯水タンクと、前記気液分離器の内底面に開口し、かつ前記貯水タンクの天井面に開口する排水口であって、前記気液分離器の内部空間と前記貯水タンクの内部空間を上下方向に連通させる前記排水口と、を有し、産業車両の車体に搭載される産業車両用の燃料電池ユニットであって、前記貯水タンクの内部空間にて前記生成水の液面を、前記排水口に対向する対向領域と、前記対向領域と異なるその他の領域とに区切る壁部を有するとともに、前記対向領域と前記その他の領域とを連通させる連通部を有することを要旨とする。
【0011】
これによれば、産業車両の発進、停止、及び旋回の際、燃料電池ユニットに加速度が発生する。加速度の発生に伴い、貯水タンクの内部空間で液面が変動して液面に傾きが生じる。このとき、壁部によって、対向領域と、その他の領域とに液面が区切られている。このため、液面が区切られていない場合と比べると、対向領域の液面、及びその他の領域の液面の各々の高さは低くなる。その結果、貯水タンクに貯留された生成水が、排水口を通じて気液分離器に漏出することを抑制できる。なお、対向領域と、その他の領域とが連通部によって連通しているため、対向領域と、その他の領域とで液面の高さが異なることはない。
【0012】
産業車両用の燃料電池ユニットについて、前記壁部は、前記天井面から前記貯水タンクのタンク底面に向けて延出し、前記連通部は、前記壁部の下端と前記タンク底面との間に画定された隙間であってもよい。
【0013】
これによれば、加速度が発生していない状態では、連通部によって、対向領域の液面と、その他の領域の液面とを同じ高さにできる。つまり、対向領域と、その他の領域とで、液面の高さが偏る事を無くすことができる。
【0014】
産業車両用の燃料電池ユニットについて、前記壁部は、前記排水口を囲む筒状であってもよい。
産業車両には、車体の前後方向、車幅方向を含め全方位に加速度が発生する。このとき、排水口は、壁部によって全方位から囲まれている。このため、対向領域の液面が全方位に高くなることを抑制できる。
【0015】
産業車両用の燃料電池ユニットについて、前記壁部は、前記産業車両の前後方向に前記排水口を挟む第1壁部及び第2壁部を含んでもよい。
これによれば、液面を産業車両の前後方向に区切ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、貯水タンクから気液分離器への生成水の漏出を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】産業車両を示す側面図である。
図2】産業車両用の燃料電池ユニットを示す概略構成図である。
図3】気液分離器及び貯水タンクを示す斜視図である。
図4】気液分離器及び貯水タンクを示す図3の4-4線断面図である。
図5】気液分離器及び貯水タンクを示す図3の5-5線断面図である。
図6】気液分離器及び貯水タンクの作用を説明する図である。
図7】気液分離器及び貯水タンクの別例を示す斜視図である。
図8】気液分離器及び貯水タンクを示す図7の8-8線断面図である。
図9】気液分離器及び貯水タンクのその他の別例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、産業車両用の燃料電池ユニットを具体化した一実施形態を図1図6にしたがって説明する。
<燃料電池フォークリフト100>
図1に示すように、産業車両としての燃料電池フォークリフト100は、車体101と、車両負荷102と、を有する。以下の説明において、前後左右上下は、燃料電池フォークリフト100を基準にした前後左右上下である。前後方向Xは、燃料電池フォークリフト100の進行方向ともいえる。左右方向Yは、燃料電池フォークリフト100の車幅方向ともいえる。上下方向Zは燃料電池フォークリフト100の高さ方向ともいえる。
【0019】
車両負荷102の一例は、走行モータ103及び荷役モータ104である。走行モータ103は、車体101の駆動輪105を駆動させる。荷役モータ104は、荷役装置106を駆動させる。車体101は、燃料電池ユニット10の収容部107を有する。燃料電池ユニット10は、収容部107に収容されることにより、車体101に搭載されている。
【0020】
<燃料電池ユニット10>
図2に示すように、燃料電池ユニット10は、燃料電池スタック11、水素タンク12、及びエアコンプレッサ13、を有する。また、燃料電池ユニット10は、アノードガス供給路16、カソードガス供給路17、アノードオフガス排出路18、及びカソードオフガス排出路19を有する。燃料電池ユニット10は、気液分離器30、貯水タンク50、及び排水口70を有する。
【0021】
<燃料電池スタック11>
燃料電池としての燃料電池スタック11は、複数の燃料電池セルをスタック化したものである。燃料電池セルは、固体分子型燃料電池である。燃料電池スタック11は、アノードガスである水素ガス、及びカソードガスである酸化剤ガスが供給されることによって発電する。酸化剤ガスは、空気である。
【0022】
<水素タンク12、エアコンプレッサ13>
水素タンク12は、水素ガスを貯蔵する。エアコンプレッサ13は、空気を圧縮する。
<アノードガス供給路16>
アノードガス供給路16は、燃料電池スタック11の図示しないアノードと水素タンク12を接続する。水素タンク12に貯留されているアノードガスは、水素タンク12から燃料電池スタック11に向けてアノードガス供給路16を流動する。
【0023】
<カソードガス供給路17>
カソードガス供給路17は、燃料電池スタック11の図示しないカソードとエアコンプレッサ13を接続する。エアコンプレッサ13によって圧縮された空気は、カソードガス供給路17に供給される。エアコンプレッサ13によって圧縮された空気は、エアコンプレッサ13から燃料電池スタック11に向けてカソードガス供給路17を流動する。
【0024】
<アノードオフガス排出路18>
アノードオフガス排出路18は、燃料電池スタック11の図示しないアノードと気液分離器30を接続する。燃料電池スタック11のアノードから排出されたアノードオフガスは、燃料電池スタック11のアノードから気液分離器30に向けてアノードオフガス排出路18を流動する。アノードオフガスは、燃料電池スタック11で未反応の水素ガスと、水素と酸素とが反応したときに生成された生成水を主に含む。
【0025】
<カソードオフガス排出路19>
カソードオフガス排出路19は、燃料電池スタック11の図示しないカソードと気液分離器30を接続する。カソードオフガスは、燃料電池スタック11から気液分離器30に向けてカソードオフガス排出路19を流動する。カソードオフガスは、燃料電池スタック11で未反応の酸素を含む空気と、水素と酸素とが反応したときに生成された生成水を主に含む。
【0026】
<気液分離器30>
気液分離器30には、燃料電池スタック11から排出されたカソードオフガスが流入する。気液分離器30は、カソードオフガスに含まれる生成水を、カソードオフガスから分離する。また、気液分離器30には、燃料電池スタック11から排出されたアノードオフガスが流入する。気液分離器30は、アノードオフガスに含まれる生成水を、アノードオフガスから分離する。
【0027】
図3図4及び図5に示すように、気液分離器30は、アノードオフガス流入口38と、カソードオフガス流入口39と、ガス排出口40と、第1連通口41と、を有する。
気液分離器30は、前後方向Xに長手が延びる直方体状である。気液分離器30は、左右方向Yに短手が延びる直方体状である。
【0028】
気液分離器30は、上下方向Zに対向する底板31と天板32を有する。底板31及び天板32の各々は長四角板状である。底板31及び天板32の長縁は前後方向Xに延びる。底板31及び天板32の短縁は左右方向Yに延びる。底板31と天板32の上下方向Zの間隔は、前後方向X及び左右方向Yに一定であってもよいし、前後方向X及び左右方向Yの少なくとも一方において、一端から他端に向けて変化していてもよい。
【0029】
底板31は、板厚方向の一方面に内底面31aを有するとともに、板厚方向の他方面に外底面31bを有する。底板31の板厚方向は上下方向Zに一致する。天板32は、板厚方向の一方面に内面32aを有するとともに、板厚方向の他方面に外面32bを有する。天板32の板厚方向は上下方向Zに一致する。底板31の内底面31aと、天板32の内面32aは上下方向Zに対向する。
【0030】
気液分離器30は左右方向Yに対向する第1側板34と第2側板35を有する。第1側板34及び第2側板35の各々は長四角板状である。第1側板34及び第2側板35の長縁は前後方向Xに延びる。第1側板34及び第2側板35の短縁は上下方向Zに延びる。
【0031】
気液分離器30は前後方向Xに対向する第1端板36と第2端板37を有する。第1端板36及び第2端板37は長四角板状である。第1端板36及び第2端板37の長縁は左右方向Yに延びる。第1端板36及び第2端板37の短縁は上下方向Zに延びる。
【0032】
底板31、天板32、第1側板34、第2側板35、第1端板36、及び第2端板37は、気液分離器30を構成する板である。気液分離器30の長手方向は、底板31、天板32、第1側板34及び第2側板35の長縁の延びる方向である。
【0033】
気液分離器30の内部空間Sは、底板31と、天板32と、第1側板34と、第2側板35と、第1端板36と、第2端板37とによって画定されている。
<アノードオフガス流入口38>
アノードオフガス流入口38は、燃料電池スタック11から排出されたアノードオフガスを気液分離器30に流入させる。アノードオフガス流入口38には、アノードオフガス排出路18が接続されている。アノードオフガス流入口38は、天板32に配置されている。アノードオフガス流入口38は、天板32を板厚方向に貫通している。天板32におけるアノードオフガス流入口38の位置は、任意である。アノードオフガスに含まれる生成水は、気液分離器30の内部空間Sにおいて自重によってアノードオフガスから分離される。分離された生成水は、底板31の内底面31a上に溜まる。
【0034】
<カソードオフガス流入口39>
カソードオフガス流入口39は、燃料電池スタック11から排出されたカソードオフガスを気液分離器30に流入させる。カソードオフガス流入口39には、カソードオフガス排出路19が接続されている。カソードオフガス流入口39は、第1端板36に配置されている。カソードオフガス流入口39は、第1端板36を板厚方向に貫通している。第1端板36におけるカソードオフガス流入口39の位置は、任意である。カソードオフガスに含まれる生成水は、気液分離器30の内部空間Sにおいて自重によってカソードオフガスから分離される。分離された生成水は、底板31の内底面31a上に溜まる。
【0035】
<ガス排出口40>
ガス排出口40は、第2端板37に配置されている。ガス排出口40は、第2端板37を板厚方向に貫通する。カソードオフガスとアノードオフガスは、気液分離器30の内部空間Sで混合される。この混合により、アノードオフガスはカソードオフガスによって希釈される。気液分離器30でアノードオフガスとカソードオフガスが混合された排出ガスは、ガス排出口40を経由して排出される。したがって、気液分離器30は、アノードオフガスの希釈器を兼ねる。
【0036】
<第1連通口41>
第1連通口41は、底板31に配置されている。第1連通口41は、底板31の長手方向の中央より第2端板37寄りに配置されている。第1連通口41は、底板31の短手方向の中央より第2側板35寄りに配置されている。第1連通口41は、底板31を板厚方向に貫通している。第1連通口41は、底板31の内底面31a上に溜まる生成水を気液分離器30の外部へ排出可能とする。
【0037】
<貯水タンク50>
貯水タンク50は、気液分離器30で分離された生成水を貯留する。
貯水タンク50は、タンク本体51と、第2連通口59と、壁部60と、排出口61を有する。
【0038】
タンク本体51は、前後方向Xに長手が延びる直方体状である。タンク本体51は、左右方向Yに短手が延びる直方体状である。
タンク本体51は、上下方向Zに対向するタンク底板52とタンク天板53を有する。タンク底板52及びタンク天板53の各々は長四角板状である。タンク底板52及びタンク天板53の長縁は前後方向Xに延びる。タンク底板52及びタンク天板53の短縁は左右方向Yに延びる。タンク底板52とタンク天板53の上下方向Zの間隔は、前後方向X及び左右方向Yに一定であってもよいし、前後方向X及び左右方向Yの少なくとも一方において、一端から他端に向けて変化していてもよい。
【0039】
タンク底板52は、板厚方向の一方面にタンク底面52aを有する。タンク天板53は、板厚方向の一方面に天井面53aを有するとともに、板厚方向の他方面に上面53bを有する。気液分離器30の外底面31bは、タンク天板53の上面53bに接触している。気液分離器30の内部空間Sと、貯水タンク50の内部空間S1とは、底板31とタンク天板53とによって隔てられている。タンク天板53の板厚方向は上下方向Zに一致する。タンク底板52のタンク底面52aと、タンク天板53の天井面53aは上下方向Zに対向する。
【0040】
タンク本体51は左右方向Yに対向する第1タンク側板54と第2タンク側板55を有する。第1タンク側板54及び第2タンク側板55の各々は長四角板状である。第1タンク側板54及び第2タンク側板55の長縁は前後方向Xに延びる。第1タンク側板54及び第2タンク側板55の短縁は上下方向Zに延びる。
【0041】
タンク本体51は前後方向Xに対向する第1タンク端板56と第2タンク端板57を有する。第1タンク端板56及び第2タンク端板57は長四角板状である。第1タンク端板56及び第2タンク端板57の長縁は上下方向Zに延びる。第1タンク端板56及び第2タンク端板57の短縁は左右方向Yに延びる。
【0042】
貯水タンク50の内部空間S1、詳細には、タンク本体51の内部空間S1は、タンク底板52と、タンク天板53と、第1タンク側板54と、第2タンク側板55と、第1タンク端板56と、第2タンク端板57とによって画定されている。タンク底板52、タンク天板53、第1タンク側板54、第2タンク側板55、第1タンク端板56、及び第2タンク端板57は、タンク本体51を構成する板である。
【0043】
<第2連通口59>
第2連通口59は、タンク天板53に配置されている。第2連通口59は、タンク天板53の長手方向の中央より第2タンク端板57寄りに配置されている。第2連通口59は、タンク天板53の短手方向の中央に配置されている。第2連通口59は、タンク天板53を板厚方向に貫通している。第2連通口59は、タンク天板53の天井面53aに開口する。第2連通口59は、気液分離器30の第1連通口41と上下方向Zに重なり合う。
【0044】
<壁部60>
壁部60は、円筒状である。壁部60は、タンク天板53の天井面53aからタンク底板52のタンク底面52aに向けて延出する。壁部60は、第2連通口59を囲む筒状であるといえる。壁部60の内周縁は、第2連通口59の開口縁に沿う。壁部60の先端面60aは、壁部60の下端である。壁部60の先端面60aは、タンク底板52のタンク底面52aよりも上に位置する。壁部60の先端面60aは、タンク底面52aから離れている。
【0045】
<排出口61>
排出口61は、第2タンク端板57に配置されている。排出口61は、第2タンク端板57を板厚方向に貫通する。貯水タンク50に貯留された生成水は、排出口61から定期的に排出される。
【0046】
<排水口70>
排水口70は、気液分離器30の第1連通口41と、貯水タンク50の第2連通口59とが上下方向Zに重なって形成されている。排水口70は、気液分離器30の内部空間Sと貯水タンク50の内部空間S1を上下方向Zに連通させる。排水口70は、気液分離器30の内底面31aに開口し、かつ貯水タンク50の天井面53aに開口する。
【0047】
<貯水タンク50の全体>
上記のように、壁部60は、タンク天板53の天井面53aからタンク底板52のタンク底面52aに向けて延出する。また、壁部60は、第2連通口59を囲む。壁部60は、第2連通口59の開口縁から延出する。したがって、壁部60は、排水口70の開口縁から延出するといえる。
【0048】
気液分離器30の内底面31a上に溜まった生成水は、排水口70を通じて貯水タンク50の内部空間S1に排出される。貯水タンク50の内部空間S1に排出された生成水は、タンク底面52a上に貯留される。生成水の液面Fが壁部60の先端面60aより上に位置すると、液面Fは、壁部60の内側の第1領域R1と、第1領域R1以外の第2領域R2とに区切られる。上下方向Zに液面Fを見た場合、第1領域R1は円形状である。上下方向Zに液面Fを見た場合、第2領域R2は、第1領域R1を囲む。
【0049】
壁部60は、貯水タンク50の内部空間S1にて、生成水の液面Fを、第1領域R1と、その他の第2領域R2に区切る。第1領域R1は、液面Fのうち、排水口70に対向する対向領域である。第1領域R1は、排水口70の開口形状と同じ大きさの円形状である。第2領域R2は、第1領域R1と異なるその他の領域である。
【0050】
タンク本体51のタンク長Lは、第1タンク端板56の内面と第2タンク端板57の内面との前後方向Xへの距離である。壁部60の開口幅Wは、壁部60の内周面のうち、前後方向Xに対向する面同士の前後方向Xへの距離である。したがって、開口幅Wは、第1領域R1の前後方向Xへの距離Kと同じである。この第1領域R1の距離Kは、タンク長Lより短い。
【0051】
壁部60の先端面60aは、タンク底板52のタンク底面52aから離れている。壁部60は、液面Fを区切る一方で、貯水タンク50の内部空間S1を複数の空間に区切っていない。このため、第1領域R1と第2領域R2は、連通している。よって、貯水タンク50の内部空間S1に貯留された生成水も複数に分けて貯留されている訳ではない。壁部60の先端面60aと、タンク底板52のタンク底面52aとの間には、第1領域R1と第2領域R2を連通させる隙間が形成されている。この隙間は、第1領域R1と第2領域R2を連通させる連通部71である。したがって、燃料電池ユニット10は、第1領域R1と第2領域R2を連通させる連通部71を有する。そして、連通部71は、壁部60の先端面60aと、タンク底板52のタンク底面52aとの間に画定された隙間である。
【0052】
連通部71の高さH1は、壁部60の先端面60aと、タンク底板52のタンク底面52aとの上下方向Zへの寸法である。連通部71の高さH1が低すぎると、第1領域R1と第2領域R2との間での生成水の往来が困難になる。このため、連通部71の高さH1は、20mm以上に設定されるのが好ましい。
【0053】
<作用>
燃料電池フォークリフト100の発進の際、加速度が発生する。すると、前後方向Xへの加速度が発生して、貯水タンク50の内部空間S1にて液面Fが変動して液面Fが傾く。
【0054】
図6の2点鎖線に示すように、壁部60が無い場合の液面Fの高さは、タンク長Lによって決まる。図6に示すように、壁部60の内側の第1領域R1での液面Fの高さは、距離Kによって決まる。距離Kは、タンク長Lよりも短い。このため、第1領域R1での液面Fの高さは、壁部60が無い場合の液面Fの高さより低くなる。
【0055】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)貯水タンク50は、タンク天板53から延出する壁部60を有する。壁部60は、液面Fを第1領域R1と第2領域R2に区切る。そして、第1領域R1の距離Kは、タンク長Lより短くなっている。このため、液面Fが傾いたとき、第1領域R1での液面Fの高さを、壁部60が無い場合での液面Fの高さより低くできる。その結果、貯水タンク50の生成水が排水口70を通じて気液分離器30へ漏出することを抑制できる。貯水タンク50から気液分離器30への生成水の漏出を抑制するために、燃料電池ユニット10は、壁部60のみを採用している。生成水の漏出を抑制するために、気液分離器30と貯水タンク50を接続する管を複雑に配策する等の対策が不要となる結果、燃料電池ユニット10は、体格の大型化を抑制できる。
【0056】
(2)壁部60は、タンク天板53の天井面53aからタンク底板52のタンク底面52aに向けて延出している。また、連通部71は、壁部60の先端面60aとタンク底面52aとの間に画定された隙間である。加速度が発生していない状態では、連通部71によって、第1領域R1の液面Fと、第2領域R2の液面Fとを同じ高さにできる。つまり、第1領域R1と、第2領域R2とで、液面Fの高さが偏る事を無くすことができる。
【0057】
(3)壁部60は、排水口70を囲む筒状である。燃料電池フォークリフト100には、車体101の前後方向X、左右方向Yを含め全方位に加速度が発生する。このとき、排水口70は、壁部60によって全方位から囲まれている。このため、全方位から加速度が発生しても、第1領域R1の液面Fが全方位に高くなることを抑制できる。したがって、いずれの方向から加速度が発生しても、貯水タンク50から気液分離器30への生成水の漏出を抑制できる。
【0058】
(4)壁部60は、タンク天板53の天井面53aからタンク底面52aに向けて延出している。つまり、壁部60は、貯水タンク50の内部空間S1に設けられている。そして、貯水タンク50から気液分離器30への生成水の漏出は、壁部60を用いて抑制できる。よって、貯水タンク50から気液分離器30への生成水の漏出は、貯水タンク50の外部に別途部品を設けることなく抑制できる。よって、貯水タンク50から気液分離器30への生成水の漏出は、貯水タンク50を大型化することなく抑制できる。
【0059】
(5)気液分離器30は、タンク天板53上に配置されている。排水口70は、気液分離器30の底板31に形成された第1連通口41と、貯水タンク50のタンク天板53に形成された第2連通口59とを重ねて形成されている。したがって、気液分離器30の内部空間Sと貯水タンク50の内部空間S1とをパイプなどで接続する場合と比べて、気液分離器30と貯水タンク50を含めた上下方向Zへの寸法を小さくできる。そして、気液分離器30の内部空間Sと貯水タンク50の内部空間S1との間に、底板31とタンク天板53のみが介在するだけの構造であっても、壁部60によって貯水タンク50から気液分離器30への生成水の漏出を抑制できる。つまり、気液分離器30と貯水タンク50を含めた上下方向Zへの寸法を小さくしても、貯水タンク50から気液分離器30への生成水の漏出を抑制できる。
【0060】
(6)壁部60は、排水口70の開口縁に沿って設けられている。このため、液面Fを上下方向Zに見たときの第1領域R1の大きさを、排水口70の大きさと同じにできる。よって、液面Fが傾いたとき、第1領域R1の高さを低くできる。
【0061】
(7)壁部60は、貯水タンク50から気液分離器30への生成水の漏出を抑制するために設けられる。このため、気液分離器30の外へ生成水が排出されないようにガス排出口40やカソードオフガス流入口39の配置を調節する必要がない。
【0062】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図7及び図8に示すように、燃料電池ユニット10は、第1壁部81と、第2壁部82とを有していてもよい。
【0063】
第1壁部81及び第2壁部82の各々は、長四角板状である。第1壁部81及び第2壁部82の各々は、タンク天板53の天井面53aからタンク底面52aに向けて延出している。第1壁部81及び第2壁部82の各々は、第1タンク側板54及び第2タンク側板55に掛け渡されている。つまり、第1壁部81及び第2壁部82は、タンク本体51の左右方向Yの全体に亘って設けられている。
【0064】
第1壁部81と第2壁部82は、前後方向Xに排水口70を挟む。第1壁部81は、板厚方向の一面に第1対向面81aを有する。第2壁部82は、板厚方向の一面に第2対向面82aを有する。第1対向面81aと第2対向面82aは、前後方向Xに対向する。第1対向面81aは、排水口70の開口縁に沿う。第2対向面82aは、排水口70の開口縁に沿う。
【0065】
第1壁部81の下端81b及び第2壁部82の下端82bの各々は、タンク底板52のタンク底面52aよりも上に位置する。そして、連通部83は、下端81b及び下端82bと、タンク底面52aとの間に画定されている。
【0066】
このように構成した場合、排水口70に対向する対向領域としての第1領域R1は、第1壁部81と、第2壁部82と、第1タンク側板54と、第2タンク側板55との間に形成される。第1領域R1の距離Kは、実施形態と同じであるが、左右方向Yへの第1領域R1の寸法は、実施形態より長くなる。なお、その他の領域としての第2領域R2は、第1壁部81と、第1タンク端板56と、第1タンク側板54と、第2タンク側板55との間に形成される。もう一つのその他の領域としての第3領域R3は、第2壁部82と、第2タンク端板57と、第1タンク側板54と、第2タンク側板55との間に形成される。
【0067】
そして、第1壁部81及び第2壁部82は、貯水タンク50の内部空間S1にて生成水の液面Fを、排水口70に対向する対向領域としての第1領域R1と、その他の領域としての第2領域R2及び第3領域R3とに区切る。
【0068】
○ 壁部の枚数を変更して、その他の領域の数は適宜変更してもよい。
図7及び図8に示す形態において、第1壁部81及び第2壁部82の各々は、第1タンク側板54及び第2タンク側板55に掛け渡されていなくてもよい。つまり、第1壁部81及び第2壁部82は、タンク本体51の左右方向Yの全体に亘って設けられていなくてもよい。この場合、対向領域は、第1壁部81と第2壁部82の間の第1領域R1となる。
【0069】
図7及び図8に示す形態において、第1壁部81及び第2壁部82の少なくとも一方は、排水口70の開口縁から前後方向Xに離れていてもよい。但し、距離Kが長くなりすぎることを抑制するため、開口縁からの離間距離は、150mm以下に設定されるのが好ましい。
【0070】
図9に示すように、タンク底面52aから壁部60を延出させてもよい。この場合、壁部60の先端面60aは、壁部60の上端に位置する。壁部60の先端面60aは、タンク天板53の天井面53aより下に位置する。そして、連通部71は、壁部60の先端面60aとタンク天板53の天井面53aとの間に画定される。
【0071】
○ 壁部60の内周縁は、排水口70の開口縁に沿っていなくてもよい。この場合、壁部60の内周縁は、排水口70の開口縁から離れている。但し、距離Kが長くなりすぎることを抑制するため、開口縁からの離間距離は、150mm以下に設定されるのが好ましい。
【0072】
○ 気液分離器30のガス排出口40は、天板32に配置されていてもよい。
○ 気液分離器30のアノードオフガス流入口38及びカソードオフガス流入口39の位置は変更してもよい。
【0073】
○ 気液分離器30には、アノードオフガスのみが流入してもよい。この場合、燃料電池ユニット10は、気液分離器30以外に希釈器を備えるのが好ましい。希釈器には、燃料電池スタック11から排出されたカソードオフガスが導入される。そして、希釈器は、気液分離器30から排出されたアノードオフガスをカソードオフガスで希釈する。
【0074】
○ 連通部71の高さH1は、20mm未満であってもよい。
○ 壁部60は、多角筒状であってもよい。この場合、壁部60の内周縁に排水口70の開口縁が沿うように、排水口70は多角孔状にするのが好ましい。
【0075】
○ 気液分離器30の底板31と、貯水タンク50のタンク天板53との間に連通管を介在させてもよい。この場合、排水口70は、底板31の第1連通口41と、タンク天板53の第2連通口59と、連通管とが上下方向Zに重なって形成されていてもよい。
【0076】
○ 燃料電池は、一つの燃料電池セルから構成されていてもよい。
○ 産業車両としては、荷等の搬送に用いられる牽引車、ピッキング作業に用いられるオーダーピッカー等であってもよい。
【0077】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
○ 前記壁部の内周縁は、前記排水口の開口縁から延出する。
【符号の説明】
【0078】
F…液面、R1…対向領域としての第1領域、R2…その他の領域としての第2領域、R3…その他の領域としての第3領域、S,S1…内部空間、10…燃料電池ユニット、11…燃料電池としての燃料電池スタック、30…気液分離器、31a…内底面、50…貯水タンク、52a…タンク底面、53a…天井面、60…壁部、60a…下端としての先端面、70…排水口、71,83…連通部、81…第1壁部、81b…下端、82…第2壁部、82b…下端、100…燃料電池フォークリフト、101…車体。
図1
図2
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図4
図5
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図7
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図9