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特許7651552抗CD73抗体及び変異体に関連する方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】抗CD73抗体及び変異体に関連する方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20250318BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20250318BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250318BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250318BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250318BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250318BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250318BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250318BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250318BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250318BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250318BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250318BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20250318BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
C07K16/28
C07K16/40
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K45/00 101
G01N33/543 545A
G01N33/53 D
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022505389
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 CN2020102678
(87)【国際公開番号】W WO2021017892
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】201910683287.5
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522033726
【氏名又は名称】上海復宏漢霖生物技術股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENLIUS BIOTECH, INC.
【住所又は居所原語表記】Room 330, Complex Building, No.222 Kangnan Road, China (Shanghai) Pilot Free Trade Zone, Pudong District, Shanghai 201210, China
(73)【特許権者】
【識別番号】522033737
【氏名又は名称】上海復宏漢霖生物製薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENLIUS BIOPHARMACEUTICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1 (Building D), No.1289, Yishan Road, Xuhui District, Shanghai 200233, China
(73)【特許権者】
【識別番号】522033748
【氏名又は名称】上海復宏漢霖生物医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENLIUS BIOLOGICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 617, Building 29, No.1, Lane 618, Dingyuan Road, Songjiang District, Shanghai 201616, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】姜 偉東
(72)【発明者】
【氏名】陳 奕穎
(72)【発明者】
【氏名】曾 ▲チー▼鈴
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-501197(JP,A)
【文献】特表2017-537620(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110555(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/215535(WO,A1)
【文献】Cancer Research,2016年,Vol.76, No.10,pp.3045-3056
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12P 1/00-41/00
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、抗CD73抗体:
)SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDR-L1、b)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及びc)SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖(LC)可変ドメイン配列及び、)SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むCDR-H1、b)SEQ ID NO:32のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及びc)SEQ ID NO:41のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)配列
ii)SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDR-L1、b)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及びc)SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列及び、)SEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含むCDR-H1、b)SEQ ID NO:32のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及びc)SEQ ID NO:41のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)配列;
ii))SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDR-L1、b)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及びc)SEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列及び、)SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むCDR-H1、b)SEQ ID NO:34のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及びc)SEQ ID NO:41のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)配列;
v))SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDR-L1、b)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及びc)SEQ ID NO:23のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列及び、)SEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含むCDR-H1、b)SEQ ID NO:35のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及びc)SEQ ID NO:44のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)配列;
)SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDR-L1、b)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及びc)SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列及び、)SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むCDR-H1、b)SEQ ID NO:34のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及びc)SEQ ID NO:45のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)配列;
vi)SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含むCDR-L1、b)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及びc)SEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列及び、)SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むCDR-H1、b)SEQ ID NO:35のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及びc)SEQ ID NO:41のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)配列;
vii))SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、b)SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及びc)SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列及び、)SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むCDR-H1、b)SEQ ID NO:36のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及びc)SEQ ID NO:45のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)配列;
(viii)SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDR-L1、b)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及びc)SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列及び、)SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むCDR-H1、b)SEQ ID NO:36のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及びc)SEQ ID NO:45のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)配列;
x))SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDR-L1、b)SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及びc)SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖(LC)可変ドメイン配列及び、)SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むCDR-H1、b)SEQ ID NO:32のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及びc)SEQ ID NO:45のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)配列;または
)SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDR-L1、b)SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及びc)SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖(LC)可変ドメイン配列及び、)SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むCDR-H1、b)SEQ ID NO:37のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及びc)SEQ ID NO:45のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)配列。
【請求項2】
)抗CD73抗体のLCはSEQ ID NO:81のアミノ酸配列を含み、抗CD73抗体のVHはSEQ ID NO:99のアミノ酸配列を含む;
i)抗CD73抗体のVLはSEQ ID NO:84のアミノ酸配列を含み、抗CD73抗体のVHはSEQ ID NO:102のアミノ酸配列を含む;
ii)抗CD73抗体のVLはSEQ ID NO:85のアミノ酸配列を含み、抗CD73抗体のVHはSEQ ID NO:103のアミノ酸配列を含む;
v)抗CD73抗体のVLはSEQ ID NO:86のアミノ酸配列を含み、抗CD73抗体のVHはSEQ ID NO:104のアミノ酸配列を含む;
)抗CD73抗体のVLはSEQ ID NO:87のアミノ酸配列を含み、抗CD73抗体のVHはSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含む;
vi)抗CD73抗体のVLはSEQ ID NO:88のアミノ酸配列を含み、抗CD73抗体のVHはSEQ ID NO:106のアミノ酸配列を含む;
vii)抗CD73抗体のVLはSEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含み、抗CD73抗体のVHはSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含む;
viii)抗CD73抗体のVLはSEQ ID NO:90のアミノ酸配列を含み、抗CD73抗体のVHはSEQ ID NO:108のアミノ酸配列を含む;
x)抗CD73抗体のVLはSEQ ID NO:91のアミノ酸配列を含み、抗CD73抗体のVHはSEQ ID NO:109のアミノ酸配列を含む;
(x抗CD73抗体のVLはSEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含み、抗CD73抗体のVHはSEQ ID NO:110のアミノ酸配列を含む;
(x)抗CD73抗体のLCはSEQ ID NO:95のアミノ酸配列を含み、抗CD73抗体のVHはSEQ ID NO:108のアミノ酸配列を含む;または
(xi)抗CD73抗体のLCはSEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含み、抗CD73抗体のVHはSEQ ID NO:109のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗CD73抗体。
【請求項3】
a)SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含むCDR-L1、b)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及びc)SEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列、及びa)SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むCDR-H1、b)SEQ ID NO:35のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及びc)SEQ ID NO:41のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む、請求項1に記載の抗CD73抗体。
【請求項4】
抗CD73抗体のVLはSEQ ID NO:88のアミノ酸配列を含み、抗CD73抗体のVHはSEQ ID NO:106のアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の抗CD73抗体。
【請求項5】
a)SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDR-L1、b)SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及びc)SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖(LC)可変ドメイン配列、及びa)SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むCDR-H1、b)SEQ ID NO:37のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及びc)SEQ ID NO:45のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む、請求項1に記載の抗CD73抗体。
【請求項6】
抗CD73抗体のLCはSEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含み、抗CD73抗体のVHはSEQ ID NO:109のアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の抗CD73抗体。
【請求項7】
Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、Fv断片、二重抗体及びリニア抗体からなる群から選択される抗原結合断片を含む、請求項1または2に記載の抗CD73抗体。
【請求項8】
抗CD73抗体は多重特異性抗体である、請求項1または2に記載の抗CD73抗体。
【請求項9】
療剤または標識に抱合される、請求項1または2に記載の抗CD73抗体。
【請求項10】
放射性同位元素、蛍光色素、または酵素に抱合される、請求項1または2に記載の抗CD73抗体。
【請求項11】
請求項1~1のいずれか一項に記載の抗CD73抗体をコードする、単離された核酸分子。
【請求項12】
請求項1に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項13】
請求項1に記載の発現ベクターを含む、細胞。
【請求項14】
請求項1に記載の細胞を培養すること及び、細胞培養物から抗CD73抗体を回収することを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の抗CD73抗体を産生する方法。
【請求項15】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗CD73抗体および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項16】
D37タンパク質に結合した抗CD73抗体を検出することにより者由来の試料中にD73タンパク質を検出する方法において使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CD73抗体を含む剤
【請求項17】
抗CD73抗体は免疫組織化学的アッセイ(IHC)又はELISAアッセイに使用される、請求項1に記載の使用するための剤
【請求項18】
被験者において癌を治療することにおいて使用するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
癌は黒色腫、NSCLC、頭頸部癌、尿路上皮癌、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、胃癌、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、非ホジキンリンパ腫の原発性縦隔B細胞リンパ腫(NHL PMBCL)、中皮腫、卵巣癌、肺癌、食道癌、鼻咽頭癌(NPC)、胆道癌、結腸直腸癌、乳癌、子宮頸癌、甲状腺癌、前立腺癌、膀胱癌、膵臓癌、唾液腺癌及びCD73発現悪性腫瘍からなる群から選択される、請求項18に記載の使用するための組成物。
【請求項20】
被験者において線維症を治療することにおいて使用するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
該被験者に、抗腫瘍剤、化学療法剤、増殖阻害剤、細胞傷害性薬物及び免疫治療剤からなる群から選択された治療剤をさらに投与する請求項18、19または20に記載の使用するための組成物。
【請求項22】
該被験者に、放射線療法及び/又は外科手術をさらに投与する、請求項18、19または20に記載の使用するための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、全体的に抗CD73抗体、変異体もしくは突然変異体、又はこれらの抗原結合断片、及びそれらを用いてヒト癌を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CD73(エクト-5’-ヌクレオチダーゼ(NT5E、EC 3.1.3.5)と呼ばれる)は、大部分の組織に見出されたグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)連結70-kDa細胞表面酵素(Zhang B.、Cancer Res.[癌研究]、70(16):6407~6411(2010))である。CD73(最初にリンパ球分化抗原と定義される)は、Tリンパ球の共シグナル伝達分子の作用を果たし、かつリンパ球と内皮との結合に必要な接着分子の作用を果たすと考えられている。最近の研究から分かるように、CD73は、上皮細胞のイオン輸送及び体液輸送、虚血プレコンディショニング、組織傷害、血小板機能、低酸素症及び血液漏出(Zhang B.、Cancer Res.[癌研究]、70(16):6407~6411(2010))を含む様々な生理的反応を制御することができる。
【0003】
細胞外アデノシンの免疫抑制効果は既に証明された(Stagg J.ら、Oncogene[癌遺伝子]、29(39):5346~5358(2010))。アデノシンとその受容体との相互作用は、ナチュラルキラー(NK)細胞の細胞傷害性、マクロファージの食作用、T細胞の細胞傷害性及びサイトカイン放出を含む大部分の免疫細胞機能を阻害することができる(Goto T.ら、J.Immunol.[免疫学会誌]、130(3):1350~1355(1983)、Ohta A.ら、J.Immunol.[免疫学会誌]、183(9):5487~5493(2009))。アデノシンシグナルの伝達を遮断することにより、免疫療法を改善することができる。CD73はアデノシンシグナルの伝達に関与する重要な分子である。CD73は、アデノシン一リン酸(AMP)(CD39によるアデノシン三リン酸(ATP)の加水分解の経路に由来する生成物)をアデノシンに加水分解することで腫瘍微小環境に影響を与える(Allard B.ら、Immunol.Rev.[免疫学レビュー]、276(1):121~144(2017)、Resta R.ら、Immunol.Rev.[免疫学レビュー]、161:95~109(1998))。CD73アデノシン軸は、免疫腫瘍学における最も有望な経路の1つを構成する。
【0004】
研究報告には、CD73が細胞-細胞及び細胞-基質の相互作用に関与し、かつCD73が薬剤耐性及び発癌促進に関与することが報告された(Spychala J.、Pharmacol.Ther.[薬理と治療]、87(2-3):161~173(2000))。CD73は、複数種の癌細胞において過剰発現され(Gao ZW.ら、Biomed.Res.Int.[国際生物医学研究]、2014:460654(2014))、かつ該発現がいくつかの癌の予後不良又は患者生存に関連することが証明された(Loi S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA[米国科学アカデミー紀要]、110(27):11091-11096(2013)、Turcotte M.ら、Cancer Res.[癌研究]、75(21):4494~4503(2015)、Xiong L.ら、Cell Tissue Res.[細胞組織研究]、355(2):365~374(2014))。いくつかの例において、抗CD73モノクローナル抗体(mAb)による治療は、転移及び腫瘍血管新生を阻害することができる(Allard B.ら、Int.J.Cancer[国際癌雑誌]、134(6):1466~1473(2014)、Terp MG.ら、J.Immunol.[免疫学会誌]、191(8):4165~4173(2013))。また、研究者は、癌におけるCD73-アデノシンの免疫抑制効果を証明し、CD73又はアデノシン受容体を標的にして遮断することにより抗腫瘍免疫を効果的に促進し、かつ第一世代免疫チェックポイント阻害薬の活性を強化することができると考えている(Allard D.ら、Immunotherapy[免疫療法]、8(2):145~163(2016))。
【0005】
近年、CD73を標的にすることは、前臨床モデルにおいて有利な抗腫瘍効果を達成し、そしてCD73の遮断と他の免疫調節剤の使用との組み合わせ治療は特に魅力的な治療選択肢である(Antonioli L.ら、Trends Cancer[癌傾向]、2(2):95~109(2016))。抗CD73 mAbとの組み合わせは、抗CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4)mAb及び抗PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)mAbの抗腫瘍活性を顕著に強化することができる。(Allard B.ら、Clin.Cancer Res.[臨床癌研究]、19(20):5626~5635(2013))。
【0006】
しかしながら、CD73に対する研究が進展し、かつ該タンパク質を利用して臨床利益を得るにもかかわらず、依然としてCD73に対する効果的で、安全で強力な抗体薬剤を開発する必要がある。本発明は、これらの需要及び他の需要を満たす。
【発明の概要】
【0007】
本発明の1つ以上の目的に基づいて、本明細書で具現化され広く説明されたように、本発明は、一態様において抗CD73抗体、変異体、突然変異体、及び/又はこれらの抗原結合断片、それらを作製する方法、それらを含む医薬組成物、及びそれらを用いてヒト被験者を治療する方法に関する。例えば、開示された抗CD73抗体、及び親和性変異体及び/又は突然変異体、又はこれらの抗原結合断片は、CD73発現、CD73過剰発現及び/又は異常CD73機能に関連する疾患(例えば癌又は線維症)の治療において単独で使用できるか又は他の薬剤と組み合わせて使用できる。本明細書で提供される抗体は、さらに、患者に抗CD73抗体、及び/又は親和性変異体/突然変異体、又はこれらの抗原結合断片を投与し、かつ該患者由来の試料(例えば、インビボ又はインビトロ)中にCD73タンパク質に結合した抗CD73抗体、及び/又は変異体/突然変異体、又はこれらの抗原結合断片を検出することにより、又は、抗CD73抗体、及び/又は変異体/突然変異体、又はこれらの抗原結合断片を患者由来の試料に接触させ、かつCD73タンパク質に結合した抗CD73抗体、及び/又は親和性変異体/突然変異体、又はこれらの抗原結合断片を定性的又は定量的に検出することにより、患者又は患者の試料中にCD73タンパク質を検出するために用いられる。
【0008】
本発明は、抗CD73抗体及び変異体、及び/又はこれらの抗原結合断片を提供する。いくつかの実施例では、本発明は、少なくとも18種の抗CD73抗体、変異体及び/又はこれらの抗原結合断片、すなわち、抗CD73抗体、及び/又は変異体N1、変異体N1変異体(N1#2、N1#2-P、N1#9及びN1#9-PH)、変異体N2、変異体N4、変異体N4変異体(N4#1、N4#4、N4#4-3、N4#5、N4#6、N4#6-2、N4#6-3、N4#6-3-P、N4#6-4、N4#6-4-P及びN4#6-5)を提供する。以下の配列表には、これら(18種)の抗CD73抗体及び/又はその変異体のそれぞれの軽鎖及び重鎖の核酸及び/又は核酸でコードされたアミノ酸配列が示されている。以下の表1及び2には、それぞれ、各抗CD73抗体及び/又はその変異体の各軽鎖(CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3)及び各重鎖(CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3)のCDR配列が示されている。
【0009】
【表1】
【0010】
【表2-1】
【表2-2】
【0011】
いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、本発明の抗CD73抗体は、その可変ドメインの1つ以上のCDRのN-グリコシル化部位に1つ以上の突然変異を含む。
【0012】
得られた脱グリコシル化抗体は、親の非脱グリコシル化抗体と同様の機能を保持している。
【0013】
いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、本発明の抗CD73抗体は、全長IgG抗体であり、軽鎖は、上記軽鎖可変領域及びヒト抗体軽鎖定常領域からなり、重鎖は、上記重鎖可変領域及びヒト抗体重鎖定常領域からなる。
【0014】
いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、本発明の抗CD73抗体は、全長IgG抗体であり、軽鎖は、上記軽鎖可変領域及びSEQ ID NO.115に示すようなヒト抗体軽鎖定常領域からなり、重鎖は、上記重鎖可変領域及びSEQ ID NO.112、113又は114に示すようなヒト抗体重鎖定常領域からなる。
【0015】
いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、本発明の抗CD73抗体は、全長IgG抗体であり、
(抗体変異体N1#2-P)軽鎖は、SEQ ID NO.93に示すとおりであり、重鎖は、SEQ ID NO.116に示すとおりであり、或いは
(抗体変異体N1#9-PH)軽鎖は、SEQ ID NO.94に示すようであり、重鎖はSEQ ID NO.117に示すとおりであり、或いは
((抗体変異体N4#6-3-P)軽鎖は、SEQ ID NO.95に示すとおりであり、重鎖は、SEQ ID NO.118に示すとおりであり、或いは
(抗体変異体N4#6-4-P)軽鎖は、SEQ ID NO.96に示すとおりであり、重鎖は、SEQ ID NO.119に示すとおりである。
【0016】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0017】
いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、抗CD73抗体は、ヒトIgGのFc配列を含む。いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、Fv断片、二重抗体及びリニア抗体からなる群から選択される。いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、抗体は、多重特異性抗体である。
【0018】
いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、抗CD73抗体、変異体又はこれらの抗原結合断片は、治療剤に抱合される。いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、抗CD73抗体、変異体又はこれらの抗原結合断片は、標識に抱合される。いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、標識は、放射性同位元素、蛍光色素及び酵素からなる群から選択される。
【0019】
本発明は、上記実施例のいずれかに係る(又は適用されるような)抗CD73抗体、変異体、突然変異体又はこれらの抗原結合断片をコードする、単離された核酸分子を提供する。上記実施例のいずれかに係る(又は適用されるような)核酸分子をコードする発現ベクターをさらに提供する。上記実施例に係る(又は適用されるような)発現ベクターを含む細胞をさらに提供する。本発明は、抗CD73抗体、変異体又はこれらの抗原結合断片を産生する方法を提供し、該方法は、上記実施例のいずれかに係る(又は適用されるような)細胞を培養することと、細胞培養物から抗体又はその抗原結合断片を回収することと、を含む。いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、哺乳動物細胞は、CHO細胞である。いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、細胞は、安定な哺乳動物細胞株である。いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、安定な哺乳動物細胞株は、CHO細胞株である。
【0020】
いくつかの実施例では、細胞表面にヒトCD73に特異的に結合し、かつ可溶性又は膜結合性のヒトCD73タンパク質のエクト-5’-ヌクレオチダーゼの活性を中和することができる単離抗体は提供される。抗体は、CD73の細胞内在化を誘導することができる。
【0021】
いくつかの実施例では、可溶性又は膜結合性のヒトCD73タンパク質に結合し、かつその酵素活性を阻害するすることができる抗体を提供し、上記抗体は、CD73を発現する細胞に内在化されない。
【0022】
本発明は、上記実施例のいずれかに係る(又は適用されるような)抗CD73抗体、変異体、突然変異体又はこれらの抗原結合断片を含む組成物、及び薬学的に許容される担体を提供する。
【0023】
本発明は、上記実施例のいずれかに係る(又は適用されるような)抗CD73抗体、変異体、突然変異体又はこれらの抗原結合断片を試料に接触させ、かつCD73タンパク質に結合した抗CD73抗体を検出することにより患者由来の試料中にCD73タンパク質を検出する方法を提供する。いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、抗CD73抗体、変異体又はこれらの抗原結合断片は、免疫組織化学的アッセイ(IHC)又はELISA測定に使用される。
【0024】
上記実施例のいずれかに係る(又は適用されるような)組成物を有効な量で被験者に投与することを含む、被験者の癌を治療する方法をさらに提供する。癌を治療するために用いられる、上記実施例のいずれかに係る(又は適用されるような)抗CD73抗体、変異体、突然変異体又はこれらの抗原結合断片を含む組成物をさらに提供する。癌(例えばCD73の発現に関連する癌)を治療するための薬物の製造における上記実施例に係る(又は適用されるような)抗CD73抗体、変異体、突然変異体又はこれらの抗原結合断片の用途を提供する。
【0025】
いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、癌は、黒色腫、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌、TNBC)、胃癌、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、非ホジキンリンパ腫の原発性縦隔B細胞リンパ腫(NHL PMBCL)、中皮腫、卵巣癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌(NSCLC))、食道癌、鼻咽頭癌(NPC)、胆道癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌及び唾液腺癌から選択される。いくつかの実施例では、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、被験者に、抗腫瘍剤、化学療法剤、増殖阻害剤及び細胞傷害性薬物からなる群から選択された治療剤をさらに投与する。いくつかの実施例において、上記実施例のいずれかによれば(又は適用されるように)、被験者に、放射線療法及び/又は手術をさらに施行する。
【0026】
以下の図面及び詳細な説明を研究することにより、本発明の他のシステム、方法、特徴及び利点は、当業者にとって自明であるか又は明らかになる。全てのこの追加されるシステム、方法、特徴及び利点は、本明細書内に含まれ、本発明の範囲内であり、かつ添付の請求項により保護されると意図されている。また、説明された実施例の全ての任意選択かつ好ましい特徴及び修正は、本明細書で教示された本発明の全ての態様に適用できる。また、添付の特許請求の範囲の個体特徴は、説明された実施例の全ての任意選択かつ好ましい特徴及び修正と共に、互いに組み合わせ、かつ交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下の図面を参照して、本発明の多くの態様をよりよく理解することができる。
図1A】ナイーブファージのパニングにより選択された抗CD73リードN1、N2及びN4の軽鎖(図1A)(図1Aは、それぞれ、出現順にSEQ ID NO.79~81を示す)及び重鎖可変領域(図1B)(図1Bは、それぞれ、出現順にSEQ ID NO.97~99を示す)のアミノ酸配列アライメントを示す。ヒトCD73-ECD/HisでヒトFabナイーブファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることにより、CD73酵素の結合及び遮断活性を有する3つの選択された抗体リードが同定された。次に、これらの選択された可変配列をヒトIgG1 Fcの主鎖のL234F、L235E、P331S突然変異体にクローニングすることにより、全長抗体とした。本明細書において抗体リードの配列アライメントを列挙し、かつKabatに定義されたCDR(相補性決定領域)に下線を加えて太字で標識する。
図1B】ナイーブファージのパニングにより選択された抗CD73リードN1、N2及びN4の軽鎖(図1A)(図1Aは、それぞれ、出現順にSEQ ID NO.79~81を示す)及び重鎖可変領域(図1B)(図1Bは、それぞれ、出現順にSEQ ID NO.97~99を示す)のアミノ酸配列アライメントを示す。ヒトCD73-ECD/HisでヒトFabナイーブファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることにより、CD73酵素の結合及び遮断活性を有する3つの選択された抗体リードが同定された。次に、これらの選択された可変配列をヒトIgG1 Fcの主鎖のL234F、L235E、P331S突然変異体にクローニングすることにより、全長抗体とした。本明細書において抗体リードの配列アライメントを列挙し、かつKabatに定義されたCDR(相補性決定領域)に下線を加えて太字で標識する。
図2A】選択された抗体のCD73への結合を示す。選択された抗体と、組換えヒトCD73タンパク質(ELISA法による(図2A))、CD73を発現するヒト腫瘍細胞MDA-MB-231(ヒト乳癌)細胞(図2B)、及びNCI-H292(ヒト肺粘液性類表皮癌)細胞(図2C)(フローサイトメトリー法による)との結合を試験した。抗CD73 ref-1抗体及びHLX01(抗CD20)を、それぞれ陽性対照及び陰性対照として用いた。
図2B】選択された抗体のCD73への結合を示す。選択された抗体と、組換えヒトCD73タンパク質(ELISA法による(図2A))、CD73を発現するヒト腫瘍細胞MDA-MB-231(ヒト乳癌)細胞(図2B)、及びNCI-H292(ヒト肺粘液性類表皮癌)細胞(図2C)(フローサイトメトリー法による)との結合を試験した。抗CD73 ref-1抗体及びHLX01(抗CD20)を、それぞれ陽性対照及び陰性対照として用いた。
図2C】選択された抗体のCD73への結合を示す。選択された抗体と、組換えヒトCD73タンパク質(ELISA法による(図2A))、CD73を発現するヒト腫瘍細胞MDA-MB-231(ヒト乳癌)細胞(図2B)、及びNCI-H292(ヒト肺粘液性類表皮癌)細胞(図2C)(フローサイトメトリー法による)との結合を試験した。抗CD73 ref-1抗体及びHLX01(抗CD20)を、それぞれ陽性対照及び陰性対照として用いた。
図3A】可溶性CD73酵素活性及び細胞CD73酵素活性に対する抗CD73リードの作用を示す。抗CD73抗体が組換えヒトCD73タンパク質及び細胞表面CD73の酵素活性を阻害する能力を試験した。組換えCD73タンパク質(図3A)及びNCI-H292細胞(図3B)を、抗CD73抗体、ATP及びAMPと共にインキュベートした。CellTiter-Gloアッセイを用いて試料中のAMP濃度を決定した。ルミネセンス読取値は、CD73酵素活性を示す。抗CD73 ref-1抗体及びAPCPを陽性対照として用い、HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。
図3B】可溶性CD73酵素活性及び細胞CD73酵素活性に対する抗CD73リードの作用を示す。抗CD73抗体が組換えヒトCD73タンパク質及び細胞表面CD73の酵素活性を阻害する能力を試験した。組換えCD73タンパク質(図3A)及びNCI-H292細胞(図3B)を、抗CD73抗体、ATP及びAMPと共にインキュベートした。CellTiter-Gloアッセイを用いて試料中のAMP濃度を決定した。ルミネセンス読取値は、CD73酵素活性を示す。抗CD73 ref-1抗体及びAPCPを陽性対照として用い、HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。
図4】抗CD73リードによって媒介されるCD73内在化を示す。抗CD73抗体処理の後に、フローサイトメトリー法によりCD73の細胞表面発現を測定した。抗CD73 ref-1抗体及びHLX01(抗CD20)を、それぞれ陽性対照及び陰性対照として用いた。
図5A】異なるIgG Fc領域を有する選択された抗体のCD73への結合を示す。さらに、N1、N2及びN4の可変配列をヒト野生型又はC219S突然変異体IgG2 Fcの主鎖にクローニングした。フローサイトメトリー法によりN1(図5A)、N2(図5B)、N4(図5C)の異なるIgGアイソタイプと、CD73を発現するヒトMDA-MB-231細胞との結合を試験した。抗CD73 ref-1抗体及びHLX01(抗CD20)を、それぞれ陽性対照及び陰性対照として用いた。
図5B】異なるIgG Fc領域を有する選択された抗体のCD73への結合を示す。さらに、N1、N2及びN4の可変配列をヒト野生型又はC219S突然変異体IgG2 Fcの主鎖にクローニングした。フローサイトメトリー法によりN1(図5A)、N2(図5B)、N4(図5C)の異なるIgGアイソタイプと、CD73を発現するヒトMDA-MB-231細胞との結合を試験した。抗CD73 ref-1抗体及びHLX01(抗CD20)を、それぞれ陽性対照及び陰性対照として用いた。
図5C】異なるIgG Fc領域を有する選択された抗体のCD73への結合を示す。さらに、N1、N2及びN4の可変配列をヒト野生型又はC219S突然変異体IgG2 Fcの主鎖にクローニングした。フローサイトメトリー法によりN1(図5A)、N2(図5B)、N4(図5C)の異なるIgGアイソタイプと、CD73を発現するヒトMDA-MB-231細胞との結合を試験した。抗CD73 ref-1抗体及びHLX01(抗CD20)を、それぞれ陽性対照及び陰性対照として用いた。
図6A】細胞CD73酵素活性に対する異なるIgG Fc領域を有する抗CD73リードの作用を示す。異なるIgGアイソタイプを有する抗CD73リードN1(図6A)、N2(図6B)、N4(図6C)が細胞CD73酵素活性を阻害する能力を試験した。MDA-MB-231細胞を、抗CD73抗体と共にインキュベートした。ATP、AMP及びCellTiter-Glo試薬を加えてルミネセンスを記録した。酵素活性アッセイではAPCPを陽性対照として用いた。
図6B】細胞CD73酵素活性に対する異なるIgG Fc領域を有する抗CD73リードの作用を示す。異なるIgGアイソタイプを有する抗CD73リードN1(図6A)、N2(図6B)、N4(図6C)が細胞CD73酵素活性を阻害する能力を試験した。MDA-MB-231細胞を、抗CD73抗体と共にインキュベートした。ATP、AMP及びCellTiter-Glo試薬を加えてルミネセンスを記録した。酵素活性アッセイではAPCPを陽性対照として用いた。
図6C】細胞CD73酵素活性に対する異なるIgG Fc領域を有する抗CD73リードの作用を示す。異なるIgGアイソタイプを有する抗CD73リードN1(図6A)、N2(図6B)、N4(図6C)が細胞CD73酵素活性を阻害する能力を試験した。MDA-MB-231細胞を、抗CD73抗体と共にインキュベートした。ATP、AMP及びCellTiter-Glo試薬を加えてルミネセンスを記録した。酵素活性アッセイではAPCPを陽性対照として用いた。
図7A】異なるIgG Fc領域を有する抗CD73抗体によって媒介されるCD73内在化を示す。細胞と、N1(図7A)、N2(図7B)及びN4(図7C)を有する異なるIgGアイソタイプの細胞とをインキュベートした後、フローサイトメトリー法によりCD73の細胞表面発現を測定した。抗CD73 ref-1抗体及びHLX01(抗CD20)を、それぞれ陽性対照及び陰性対照として用いた。
図7B】異なるIgG Fc領域を有する抗CD73抗体によって媒介されるCD73内在化を示す。細胞と、N1(図7A)、N2(図7B)及びN4(図7C)を有する異なるIgGアイソタイプの細胞とをインキュベートした後、フローサイトメトリー法によりCD73の細胞表面発現を測定した。抗CD73 ref-1抗体及びHLX01(抗CD20)を、それぞれ陽性対照及び陰性対照として用いた。
図7C】異なるIgG Fc領域を有する抗CD73抗体によって媒介されるCD73内在化を示す。細胞と、N1(図7A)、N2(図7B)及びN4(図7C)を有する異なるIgGアイソタイプの細胞とをインキュベートした後、フローサイトメトリー法によりCD73の細胞表面発現を測定した。抗CD73 ref-1抗体及びHLX01(抗CD20)を、それぞれ陽性対照及び陰性対照として用いた。
図8A】MDA-MB-231(ヒトトリプルネガティブ乳癌)異種移植マウスモデルにおける抗CD73リードの腫瘍増殖阻害活性を示す。マウス(n=5匹のマウス/群)の皮下にMDA-MB-231細胞を移植した。腫瘍を接種した後の14日に、移植された腫瘍のサイズが150~300mmに達すると、第1の用量の被験物質を投与した。指定時間内に5mg/kgの抗体を用いて、マウスを腹腔内で処理した。腫瘍増殖曲線は、図8Aに示される。45日目の個体腫瘍体積は、図8Bに示される。全てのデータ点は、いずれも平均値±SEMである。
図8B】MDA-MB-231(ヒトトリプルネガティブ乳癌)異種移植マウスモデルにおける抗CD73リードの腫瘍増殖阻害活性を示す。マウス(n=5匹のマウス/群)の皮下にMDA-MB-231細胞を移植した。腫瘍を接種した後の14日に、移植された腫瘍のサイズが150~300mmに達すると、第1の用量の被験物質を投与した。指定時間内に5mg/kgの抗体を用いて、マウスを腹腔内で処理した。腫瘍増殖曲線は、図8Aに示される。45日目の個体腫瘍体積は、図8Bに示される。全てのデータ点は、いずれも平均値±SEMである。
図9】親和性成熟したN1及びN4変異体由来の軽鎖可変領域のアミノ酸配列アライメントを示す。インビトロファージディスプレイに基づく親和性成熟実験から、より優れたCD73結合親和性及び可溶性CD73酵素遮断活性を有するN1及びN4変異体を同定した。Kabatに定義されたCDR(相補性決定領域)に下線を加えて太字で標識する。図9は、それぞれ、出現順にSEQ ID NO.82~85、88、86~87及び89~92を示す。
図10】親和性成熟したN1及びN4変異体由来の重鎖可変領域のアミノ酸配列アライメントを示す。インビトロファージディスプレイに基づく親和性成熟実験から、より優れたCD73結合親和性及び可溶性CD73酵素遮断活性を有するN1及びN4変異体を同定した。Kabatに定義されたCDR(相補性決定領域)に下線を加えて太字で標識する。次に、これらの選択された可変配列をヒトIgG2 Fcの主鎖にクローニングすることにより、全長抗体とした。図10は、それぞれ、出現順にSEQ ID NO.100~103、106、104~105及び107~110を示す。
図11A】N1及びN4変異体のCD73への結合を示す。フローサイトメトリー法により、選択された変異体と、CD73を発現するヒトMDA-MB-231(図11A)及びNCI-H292細胞(図11B)との結合を試験した。HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。
図11B】N1及びN4変異体のCD73への結合を示す。フローサイトメトリー法により、選択された変異体と、CD73を発現するヒトMDA-MB-231(図11A)及びNCI-H292細胞(図11B)との結合を試験した。HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。
図12】固定化CD73酵素活性に対するN1及びN4変異体の作用を示す。N1及びN4変異体が固定化CD73酵素活性を阻害する能力を試験した。抗CD73抗体及びCD73タンパク質をインキュベートした後、ATP、AMP及びCellTiter-Glo試薬を加えてルミネセンスを記録した。抗CD73 ref-1抗体及び抗CD73 ref-2を陽性対照として用い、HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。
図13】N1及びN4変異体によって媒介されるCD73内在化を示す。NCI-H292細胞を、N1及びN4変異体と共にインキュベートし、かつフローサイトメトリー法によりCD73の細胞表面発現を測定した。抗CD73 ref-1抗体及び抗CD73 ref-2抗体を陽性対照として用い、HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。
図14】N1及びN4トップ変異体の軽鎖のアミノ酸配列アライメントを示す。Kabatに定義されたCDR(相補性決定領域)に下線を加えて太字で標識する。図14は、それぞれ、出現順にSEQ ID NO.93~96を示す。
図15】N1及びN4トップ変異体の重鎖可変領域のアミノ酸配列アライメントを示す。Kabatに定義されたCDR(相補性決定領域)に下線を加えて太字で標識する。次に、これらの配列をヒトIgG2 Fcの主鎖にクローニングすることにより、全長抗体とした。図15は、それぞれ、出現順にSEQ ID NO.111、101、及び108~109を示す。
図16A】N1及びN4トップ変異体のCD73結合能力を示す。ELISA法により抗CD73抗体と組換えヒトCD73タンパク質との結合を試験し(図16A)、そしてフローサイトメトリー法によりCD73抗体と、CD73を発現するヒト腫瘍細胞MDA-MB-231(図16B)及びNCI-H292(図16C)との結合を試験した。抗CD73 ref-1抗体及び抗CD73 ref-2抗体を陽性対照として用い、HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。
図16B】N1及びN4トップ変異体のCD73結合能力を示す。ELISA法により抗CD73抗体と組換えヒトCD73タンパク質との結合を試験し(図16A)、そしてフローサイトメトリー法によりCD73抗体と、CD73を発現するヒト腫瘍細胞MDA-MB-231(図16B)及びNCI-H292(図16C)との結合を試験した。抗CD73 ref-1抗体及び抗CD73 ref-2抗体を陽性対照として用い、HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。
図16C】N1及びN4トップ変異体のCD73結合能力を示す。ELISA法により抗CD73抗体と組換えヒトCD73タンパク質との結合を試験し(図16A)、そしてフローサイトメトリー法によりCD73抗体と、CD73を発現するヒト腫瘍細胞MDA-MB-231(図16B)及びNCI-H292(図16C)との結合を試験した。抗CD73 ref-1抗体及び抗CD73 ref-2抗体を陽性対照として用い、HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。
図17A】可溶性CD73酵素活性(図17A)及び細胞表面CD73酵素活性(図17B図17C)に対するN1及びN4トップ変異体の作用を示す。抗CD73抗体が組換えヒトCD73タンパク質及び細胞表面CD73酵素活性を阻害する能力を試験した。組換えCD73タンパク質(図17A)、MDA-MB-231(図17B)、NCI-H292(図17C)細胞を、抗CD73抗体と共にインキュベートした。ATP、AMP及びCellTiter-Gloを加えてルミネセンスを記録した。抗CD73 ref-1抗体、抗CD73 ref-2抗体及びAPCPを陽性対照として用いた。HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。
図17B】可溶性CD73酵素活性(図17A)及び細胞表面CD73酵素活性(図17B図17C)に対するN1及びN4トップ変異体の作用を示す。抗CD73抗体が組換えヒトCD73タンパク質及び細胞表面CD73酵素活性を阻害する能力を試験した。組換えCD73タンパク質(図17A)、MDA-MB-231(図17B)、NCI-H292(図17C)細胞を、抗CD73抗体と共にインキュベートした。ATP、AMP及びCellTiter-Gloを加えてルミネセンスを記録した。抗CD73 ref-1抗体、抗CD73 ref-2抗体及びAPCPを陽性対照として用いた。HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。
図17C】可溶性CD73酵素活性(図17A)及び細胞表面CD73酵素活性(図17B図17C)に対するN1及びN4トップ変異体の作用を示す。抗CD73抗体が組換えヒトCD73タンパク質及び細胞表面CD73酵素活性を阻害する能力を試験した。組換えCD73タンパク質(図17A)、MDA-MB-231(図17B)、NCI-H292(図17C)細胞を、抗CD73抗体と共にインキュベートした。ATP、AMP及びCellTiter-Gloを加えてルミネセンスを記録した。抗CD73 ref-1抗体、抗CD73 ref-2抗体及びAPCPを陽性対照として用いた。HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。
図18A】N1及びN4トップ変異体によって媒介されるCD73内在化を示す。MDA-MB-231(図18A)及びNCI-H292(図18B)細胞を、抗CD73N1及びN4変異体と共にインキュベートした。インキュベートした後に、フローサイトメトリー法によりCD73の細胞表面発現を測定した。抗CD73 ref-1及び抗CD73 ref-2抗体を陽性対照として用い、HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。
図18B】N1及びN4トップ変異体によって媒介されるCD73内在化を示す。MDA-MB-231(図18A)及びNCI-H292(図18B)細胞を、抗CD73N1及びN4変異体と共にインキュベートした。インキュベートした後に、フローサイトメトリー法によりCD73の細胞表面発現を測定した。抗CD73 ref-1及び抗CD73 ref-2抗体を陽性対照として用い、HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。
図19A】N1及びN4トップ変異体による、T細胞の活性に対するAMPの阻害効果の反転を示す。単離されたヒトT細胞を、CD3/CD28ビーズ、AMP及び連続希釈された抗体と共に37℃で4日間培養した。CD3 T細胞の増殖後に、CellTiter-Gloアッセイを行い(図19A)、かつヒトIFN-γ ELISA MAX(登録商標) Deluxeキット(図19B)を用いてIFN-γ分泌を測定した。抗CD73 ref-1及び抗CD73 ref-2抗体を陽性対照として用い、HLX04(抗VEGF)を陰性対照として用いた。
図19B】N1及びN4トップ変異体による、T細胞の活性に対するAMPの阻害効果の反転を示す。単離されたヒトT細胞を、CD3/CD28ビーズ、AMP及び連続希釈された抗体と共に37℃で4日間培養した。CD3 T細胞の増殖後に、CellTiter-Gloアッセイを行い(図19A)、かつヒトIFN-γ ELISA MAX(登録商標) Deluxeキット(図19B)を用いてIFN-γ分泌を測定した。抗CD73 ref-1及び抗CD73 ref-2抗体を陽性対照として用い、HLX04(抗VEGF)を陰性対照として用いた。
図20】MDA-MB-231(ヒトトリプルネガティブ乳癌)異種移植マウスモデルにおけるN1及びN4トップ変異体の腫瘍増殖阻害活性を示す。マウス(n=5匹のマウス/群)の皮下にMDA-MB-231細胞を移植した。腫瘍を接種した後の7日に、移植された腫瘍のサイズが約100mmに達すると、第1の用量の被験物質を投与した。1週間に2回、10mg/kg及び2mg/kgの抗体を用いて、マウスを腹膜内で処理し、5~6週間持続した。全てのデータ点は、いずれも平均値±SEMである。
図21】NCI-H292(ヒト肺粘液性類表皮癌)異種移植マウスモデルにおけるN1及びN4トップ変異体の腫瘍増殖阻害活性を示す。マウス(n=5匹のマウス/群)の皮下にNCI-H292細胞を移植した。腫瘍を接種した後の3日に第1の用量の被験物質を投与した。1週間に2回、50、10及び2mg/kgの抗体を用いて、マウスを腹膜内で処理し、3週間持続した。全てのデータ点は、いずれも平均値±SEMである。
図22】NCI-H292異種移植腫瘍における細胞CD73酵素活性に対するN1及びN4トップ変異体の作用を示す。N1及びN4トップ変異体がNCI-H292異種移植モデルにおいてCD73酵素活性を阻害する能力を試験した。抗体で処理する前の4日に、マウス(n=4匹のマウス/群)の皮下にNCI-H292細胞を移植した。0日目に、腹腔内に抗体、APCP及びプラセボを注射した。抗体を投与した後の1、3及び7日目に腫瘍を切除した。CellTiter-Gloアッセイにより腫瘍におけるCD73酵素活性を測定した。
図23A】MDA-MB-231異種移植腫瘍におけるCD73発現及び細胞CD73酵素活性に対するN1及びN4トップ変異体の作用を示す。抗CD73抗体がMDA-MB-231異種移植モデルにおいて表面CD73発現を低下させ、かつCD73酵素活性を阻害する能力を試験した。抗体で処理する前の7日に、マウス(n=4匹のマウス/群)の皮下にMDA-MB-231細胞を移植した。0日目に、抗体及びプラセボを注射した。抗体を投与した後の1、3及び7日目に腫瘍を収集した。染色の平均蛍光強度(MFI)によりCD73発現を測定し(図23A)、かつCellTiter-Gloアッセイにより腫瘍におけるCD73酵素活性を測定した(図23B)。
図23B】MDA-MB-231異種移植腫瘍におけるCD73発現及び細胞CD73酵素活性に対するN1及びN4トップ変異体の作用を示す。抗CD73抗体がMDA-MB-231異種移植モデルにおいて表面CD73発現を低下させ、かつCD73酵素活性を阻害する能力を試験した。抗体で処理する前の7日に、マウス(n=4匹のマウス/群)の皮下にMDA-MB-231細胞を移植した。0日目に、抗体及びプラセボを注射した。抗体を投与した後の1、3及び7日目に腫瘍を収集した。染色の平均蛍光強度(MFI)によりCD73発現を測定し(図23A)、かつCellTiter-Gloアッセイにより腫瘍におけるCD73酵素活性を測定した(図23B)。
図24A】N1及びN4トップ変異体と、マウス及びサルのCD73を発現する細胞との交差結合を示す。フローサイトメトリー法により抗CD73抗体と、CD73を発現するマウス乳癌4T1細胞(図24A)及びサル腎上皮LLC-MK2細胞(図24B)との結合を試験した。HLX01を陰性対照として用いた。
図24B】N1及びN4トップ変異体と、マウス及びサルのCD73を発現する細胞との交差結合を示す。フローサイトメトリー法により抗CD73抗体と、CD73を発現するマウス乳癌4T1細胞(図24A)及びサル腎上皮LLC-MK2細胞(図24B)との結合を試験した。HLX01を陰性対照として用いた。
【0028】
本発明の他の利点は、一部が以下の説明で列挙され、一部が該説明から明らかになるか又は本発明の実践により理解され得る。添付の特許請求の範囲に具体的に指摘された要素と組み合わせにより本発明の利点を実現と達成する。理解すべきことは、前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、いずれも例示的及び説明的なものに過ぎず、特許請求された本発明を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
一態様では、本発明は、抗CD73抗体、変異体、突然変異体、及び/又はこれらの抗原結合断片、それらを作製する方法、それらを含む医薬組成物、及びそれらを用いてヒト被験者を治療する方法に関する。本発明は、CD73に特異的に結合し、かつマクロファージ媒介の食作用を誘導することにより腫瘍増殖を阻害する抗CD73抗体をさらに提供する。開示された抗体は、臨床症状(例えば癌又は線維症)を治療するための一般的な抗CD73モノクローナル抗体より優れた有効性及び/又は抗腫瘍活性を示す。免疫抱合体、(本明細書で記載された)新規な抗CD73抗体、それらの親和性変異体又はこれらの抗原結合断片をコードする核酸、及び組成物(例えば医薬組成物)をさらに提供する。
【0030】
いくつかの実施例では、本発明は、少なくとも18種の抗CD73抗体、変異体及び/又はこれらの抗原結合断片、すなわち、表1及び表2に指定された抗CD73抗体、変異体及び/又は突然変異体を提供する。以下に開示された配列-配列表部分には、これらの抗CD73抗体、その変異体及び/又は突然変異体のそれぞれの軽鎖及び重鎖の核酸及び/又は核酸でコードされたアミノ酸配列が示されている。表1及び2には、それぞれ、各抗CD73抗体、その変異体及び/又は突然変異体の各軽鎖(CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3)及び各重鎖(CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3)のCDR配列が示されている。
【0031】
本発明は、新規な抗CD73抗体、親和性変異体及び/又は突然変異体又はこれらの抗原結合断片を用いて試料(例えばインビボ又はインビトロ試料)におけるCD73を検出する方法、及び/又は、CD73発現、CD73過剰発現及び/又は異常CD73機能(例えば癌又は線維症)に関連する臨床症状又は疾患を治療するために用いられる、このような抗体、変異体及び/又は突然変異体又はこれらの抗原結合断片を含む組成物をさらに提供する。他の実施例では、開示された抗CD73抗体、親和性変異体及び/又は突然変異体又はこれらの抗原結合断片は、CD73発現、CD73過剰発現及び/又は異常CD73機能に関連する疾患(例えば癌又は線維症)の治療において他の薬剤と組み合わせて使用できる。本発明は、癌治療に用いられる薬物の製造におけるこのような抗体、変異体又はこれらの抗原結合断片の用途をさらに提供する。
【0032】
本明細書で提供される抗体は、さらに、患者に抗CD73抗体、及び/又はそれらの親和性変異体/突然変異体、又はこれらの抗原結合断片を投与し、かつ該患者由来の試料(例えば、インビボ又はインビトロ)中にCD73タンパク質に結合した抗CD73抗体、及び/又は変異体/突然変異体、又はこれらの抗原結合断片を検出することにより、又は、抗CD73抗体、及び/又は変異体/突然変異体、又はこれらの抗原結合断片を患者由来の試料に接触させ、かつCD73タンパク質に結合した抗CD73抗体、及び/又は親和性変異体/突然変異体、又はこれらの抗原結合断片を定性的又は定量的に検出することにより、患者又は患者の試料中にCD73タンパク質を検出するために用いられる。
【0033】
以上の説明及び関連図面に示された教示に基づいて、開示された組成物及び方法が属する分野の当業者は、本明細書で開示された多くの修正及び他の実施例を想到する。したがって、本発明は、開示された具体的な実施例に限定されるものではなく、改良及び他の実施例が添付の特許請求の範囲内に含まれることを理解すべきである。当業者は、本明細書で記載された態様の多くの変形や修正を認識する。これらの変形や修正は、本発明の教示に含まれると共に本願の特許請求の範囲に含まれることを意図する。
【0034】
本明細書で特定の用語が採用されるが、それらは一般的及び説明的な意味で用いられ、限定を目的とするものではない。
【0035】
当業者にとって明らかなように、本発明の明細書を読んだ場合に、本明細書で記述と示された個別の実施例は、離散的な構成成分及び特徴を有し、これらの成分及び特徴は、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく任意の他の複数の実施例の特徴と単離するか又は組み合わせることができる。
【0036】
記載されたイベントの順に、又は論理的に実行可能な任意の他の順に、記載された任意の方法を行うことができる。すなわち、特に明確に説明しない限り、本明細書で説明された任意の方法又は態様を、特定の順にそのステップを実行するように解釈することを意図しない。したがって、方法の請求項において、特許請求の範囲又は明細書でこれらのステップが特定の順に限定されると具体的に説明していない場合、いかなる態様も順を推定することを意図しない。これは、ステップ又は操作フローの配置に関する論理、文法構成又は句読点から由来した明確な意味又は明細書で記載された態様の数又はタイプを含む、解釈のための任意の可能な非表現基礎に当てはまる。
【0037】
特許出願及び刊行物を含む、本明細書で引用された全ての参照文献は、いずれも引用によりその全体にわたって本明細書に組み込まれる。本明細書で説明されたこれらの刊行物の本願の提出日より前の開示内容のみが提供される。本明細書は、本発明が先の本発明によりこのような刊行物に先行する権利がないことを承認すると解釈されるべきではない。また、本明細書で提供される出版日は、実際の出版日と異なる可能性があるため、独立して確認する必要がある。
【0038】
本発明の態様が具体的な法定分類(例えばシステムの法定種類)において特許請求と説明することができるが、これは単に便利上のものであり、当業者であれば、いかなる法定分類においても本発明の各態様を説明しかつ特許要求することができることを理解すべきである。
【0039】
さらに理解すべきことは、本明細書で用いられる用語は、具体的な態様を説明することのみを目的とし、限定するものではない。他の定義がない限り、本明細書で用いられる全ての技術及び科学的用語は、開示された組成物及び方法が属する分野の当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。さらに理解されるように、用語(例えば、一般的な辞書に定義されたそれらの用語)は、それが明細書及び関連分野の文脈において一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書に明確に定義しない限り、理想化又はあまり正式的な意味として解釈されるべきではない。
【0040】
本発明の様々な態様を説明する前に、他の指示がない限り、以下の定義を提供し、かつ以下の定義を使用すべきである。他の用語は、本発明の他の箇所で定義されてよい。
【0041】
定義
理解すべきことは、本明細書で記載された本発明の態様及び実施例は、「「態様及び実施例」を含む」こと、「「態様及び実施例」からなる」こと、及び「基本的に「態様及び実施例」からなる」ことを含む。
【0042】
本明細書で用いられる「含む」は、記載された特徴、整数、ステップ又は構成要素の存在を特定するものと解釈されるべきであり、1つ以上の特徴、整数、ステップ又は構成要素又はそれらの群の存在又は添加を排除するものではない。また、用語「により」、「含有(comprising、comprises、comprised of)」、「含む(including、includes、included)」、「関する(involving、involves、involved)」及び「例えば」のそれぞれは、その開放された非限定的な意味で使用され、かつ交換して使用できる。また、用語「含有」は、用語「基本的に...からなる」及び「...からなる」がカバーする実施例及び態様を含むことを意図する。同様に、用語「基本的に...からなる」は、用語「...からなる」がカバーする実施例を含むことを意図する。
【0043】
注意すべきことは、比率、濃度、量及び他の数値データは、本明細書において範囲の形式で示すことができる。さらに理解されるように、各範囲の端点は、他の端点に対していずれも重要であり、かつ他の端点から独立する。さらに理解されるように、本明細書において多くの値が開示され、各値が、値自体に加えて、「約」その特定の値としても本明細書に開示される。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。本明細書において、「約」ある特定の値から、及び/又は、「約」他の特定の値までという範囲を表すことができる。同様に、先行詞「約」を用いて値を近似値として表す場合、該特定の値が別の態様を形成することが理解されよう。例えば、値「約10」が開示されている場合、「10」も開示されている。
【0044】
範囲を表す場合、他の態様では、1つの特定の値から、及び/又は、他の特定の値までを含む。例えば、
説明された範囲が限界値の1つ又は2つを含む場合、それらの含まれた限界値の1つ又は2つを排除する範囲も本発明に含まれ、例えば、フレーズ「x~y」は、「x」から「y」までの範囲、及び「x」より大きく「y」より小さい範囲を含む。該範囲は、上限値として表されてよく、例えば、「約x、y、z以下」であり、そして「約x」、「約y」及び「約z」の特定の範囲、「xより小さい」範囲、「yより小さい」範囲及び「zより小さい」範囲を含むと解釈されるべきである。同様に、フレーズ「約x、y、z以上」は、「約x」、「約y」及び「約z」の特定の範囲、「xより大きい」範囲、「yより大きい」範囲及び「zより大きい」範囲を含むと解釈されるべきである。また、フレーズ「約「x」~「y」」において、「x」及び「y」は、数値であり、「約「x」~約「y」」を含む。
【0045】
理解すべきことは、この範囲の形式は、便利かつ簡潔の目的で使用されるため、範囲限界として明確に記載された数値を含むだけでなく、各数値及び部分範囲が明確に説明されるように該範囲内にカバーされた全ての単独数値又は部分範囲を含むと柔軟に解釈されるべきである。説明のために、「約0.1%~5%」の数値範囲は、約0.1%~約5%という明確に記載された値を含むだけではなく、指定された範囲内の単独の値(例えば、約1%、約2%、約3%及び約4%)、及び部分範囲(例えば、約0.5%~約1.1%、約0.5%~約2.4%、約0.5%~約3.2%及び約0.5%~約4.4%、並びに他の可能な部分範囲)を含むと解釈されるべきである。
【0046】
本明細書で用いられる用語「約」、「程度」、「...であるか又は約...である」及び「基本的」は、議論された量又は値が正確な値であってもよく、本特許請求の範囲又は教示に記載される等価結果又は効果を提供する値であってもよいことを意味する。本明細書における「約」値又はパラメータの引用は、当業者が容易に知ることができる対応する値の一般的な誤差範囲を意味する。すなわち、理解すべきことは、量、サイズ、配合方法、パラメータ及び他の数や性質は、正確なものではなく、正確である必要もなく、(必要に応じて)近似値であり、及び/又は、該値より大きいか又はより小さい場合もあり、公差、変換係数、四捨五入、測定誤差など、及び当業者に知られている他の要素を反映して等価結果又は効果を達成することができる。いくつかの場合に、等価結果又は効果を達成する値を合理的に決定することができない。このような例では、特に断らない限り、本明細書で用いられる「約」及び「...であるか又は約...である」は、一般的に理解されるように、±10%以内に変動する公称値を意味する。一般的に、量、サイズ、配合方法、パラメータ又は他の数や特徴は、明確に説明するか否かにかかわらず、「約」、「程度」、「...であるか又は約...である」である。理解すべきことは、定量値の前に「約」、「程度」、「...であるか又は約...である」を使用する時に、特に断らない限り、パラメータは、さらに特定の定量値自体を含む。すなわち、本明細書における「約」値又はパラメータの引用は、該値又はパラメータ自体の態様を含む(かつ説明する)。例えば、「約X」に関する説明は、「X」の説明を含む。
【0047】
本明細書で用いられる用語「任意選択の」又は「任意選択に」は、後述するイベント又は状況が発生してもよいし、発生しなくてもよいことを意味し、かつ該説明は、上記イベント又は状況が発生した実施例及び発生しない実施例を含む。
【0048】
本明細書で用いられる「CD73」及び「CD-73」は、交換して使用でき、かつ8個のエクソンを含むヒト遺伝子によりコードされた細胞表面酵素を意味し、該ヒト遺伝子の細胞遺伝学的位置が3q13.12であり、そして塩基対の分子位置が染色体6(ホモサピエンス注釈リリース(Homo sapiens Annotation Release)109、GRCh38.p12)に85、449、584-85、495、791である。CD73タンパク質は、5’-ヌクレオチダーゼ(Zn+2を補助因子として利用する)を有する酵素(EC分類:3.1.3.5)である。該タンパク質は、細胞外ヌクレオチドを膜透過性ヌクレオシドに加水分解することができ、かつ核塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド及び核酸代謝の調節に関与する。該タンパク質は、主にGPIアンカーを介してプラズマ膜上の細胞内位置に関連する。ヒトCD73タンパク質は、選択的スプライシングにより産生された2種のアイソタイプを有する。典型的なアイソタイプ(UniProtKB識別子P21589)は、574個のアミノ酸を含み、かつ約63kDaの分子量を有する。CD73は、エクト-5’-ヌクレオチダーゼ及び5’-ヌクレオチダーゼとも呼ばれる。CD73遺伝子の突然変異は、関節及び動脈の石灰化、すなわち遺伝性動脈及び関節多発性石灰化症候群に関連する。
【0049】
本明細書で用いられる「治療(treatment又はtreating)」は、有益な又は所望の結果を得るための方法(臨床結果を含む)である。本発明の目的のために、有益な又は所望の臨床結果は、疾患から生じる1つ以上の症状の緩和、疾患の程度の減少、疾患の安定化(例えば、疾患の悪化の予防又は遅延)、疾患の広がり(例えば、転移)の予防又は遅延、疾患の再発の予防又は遅延、疾患の進行の遅延又は緩徐、病状の軽減、疾患の寛解(部分又は全体)、疾患の治療に必要とされる1つ以上の他の薬物の用量の減少、疾患の進行の遅延、生活の質の向上又は改善、体重の増加、及び/又は生存期間の延長という1種以上の結果を含むが、それらに限定されない。「治療」には、癌の病理学的結果(例えば、腫瘍の体積など)の減少も包含される。本明細書で提供される方法には、これらの治療態様のうちのいずれか1つ以上が考慮される。
【0050】
用語「再発」、「回帰」又は「再燃」は、病気の消失の臨床的評価後の癌又は疾患の再発を意味する。遠隔転移又は局所再発の診断は、再発と考えられ得る。
【0051】
用語「難治性」又は「耐性」は、治療に応答しない癌又は疾患を意味する。
【0052】
用語「補助療法」は、一次療法、通常、外科手術後に付与される療法を意味する。癌又は疾患の補助療法は、免疫療法、化学療法、放射線療法又はホルモン療法を含み得る。
【0053】
用語「維持療法」は、前の治療の効果を維持することを助けるための予定された再処置を意味する。一般的には、維持療法は、癌の寛解を保つのを助けるため、又は疾患の進行に関わらず特定の療法に対する応答を延長させるために付与される。
【0054】
用語「浸潤性癌」は、組織層を超えて広がった(正常な周辺組織へと開始した)癌を意味する。浸潤性癌は、転移性であってもよいし、転移性でなくてもよい。
【0055】
用語「非浸潤性癌」は、非常に早期の癌又は元の組織を超えて広がっていない癌を意味する。
【0056】
腫瘍学における用語「無増悪生存期間」は、癌が増殖しない治療期間及び後の時間の長さを意味する。無増悪生存期間は、患者が完全な応答もしくは部分的な応答を経た時間、ならびに患者が安定な疾患を経た時間を含む。
【0057】
腫瘍学における用語「進行性疾患」は、腫瘍における質量増加又は広がりのいずれかにより、治療開始から20%以上の腫瘍増殖を意味し得る。
【0058】
「障害」は、被験者(例えば、ヒトなどの哺乳動物)における、CD73発現、CD73過剰発現及び/又は異常CD73機能に関連する任意の臨床症状を意味し、被験者が、開示された抗CD73抗体、その変異体、突然変異体及び/又は断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物を使用する治療又は予防から利益を得ることができる。例えば、哺乳動物は、CD73過剰発現に苦しむか又はCD73過剰発現の予防を必要とする。これは、哺乳動物を議論された障害にかかりやすくするそれらの病理学的状態を含む慢性及び急性障害又は疾患を含む。本明細書で治療対象の障害の非限定的な実施例は、開示された癌(例えば頭頸部癌、咽頭癌、結腸直腸癌、肺癌など)又は線維症(特発性肺線維症を含む)を含む。
【0059】
本明細書で用いられる「腫瘍」は、悪性であれ、良性であれ、全ての腫瘍細胞の成長及び増殖、及び全ての前癌性及び癌性の細胞及び組織を意味する。
【0060】
用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、具体的には、天然ポリペプチドに特異的に結合し、及び/又は本発明の生物学的活性又は免疫学的活性を示す限り、例えば、単一のモノクローナル抗体(作用薬、拮抗薬及び中和抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体及び抗体断片(以下を参照)を網羅する。1つの実施例によれば、抗体は、標的タンパク質のオリゴマー型、例えば三量体型に結合する。別の実施例によれば、抗体はタンパク質に特異的に結合し、本発明のモノクローナル抗体(例えば本発明の沈着抗体など)は、該結合を阻害することができる。語句抗体の「機能的断片又は類似体」は、参照される抗体と同様に定性的な生物学的活性を有する化合物である。例えば、本発明の抗体の機能的断片又は類似体は、CD73に特異的に結合することができる抗体であってよい。1つの実施例では、抗体は、CD73を発現する癌細胞のマクロファージによって媒介される食作用を誘導することができる。
【0061】
「単離された抗体」は、自然環境の構成成分から同定、単離及び/又は回収された抗体である。その自然環境の混入成分は、抗体の診断又は治療用途に干渉する物質であり、酵素、ホルモン及び他のタンパク質又は非タンパク質溶質を含み得る。好ましい実施例では、抗体は、(1)例えばLowry法により決定されたように抗体の重量で95%より大きくなり、最も好ましくは重量で99%より大きくなるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを用いて、N末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度になるまで、又は(3)クマシーブルー又は好ましくは銀染色を用いて還元又は非還元条件でSDS-PAGEにより決定された均一性を取得するまで、精製される。単離された抗体は、抗体の自然環境の少なくとも1種の構成成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツの抗体を含む。しかしながら、一般的には、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップにより、作製される。
【0062】
基本的な4鎖抗体単位は、2本の同じ軽(L)鎖と2本の同じ重(H)鎖からなるヘテロ四量体糖タンパク質である(IgM抗体は、5個の基本的なヘテロ四量体単位とJ鎖と呼ばれるさらなるポリペプチドからなり、したがって10個の抗原結合部位を含む一方、分泌型IgA抗体は、重合して2~5個の基本的な4鎖単位とJ鎖を含む多価構成を形成することができる)。IgGの場合、4鎖単位は、一般的に約150000ダルトンである。各軽(L)鎖は、1つの共有結合性ジスルフィド結合により重(H)鎖に連結されているが、2本のH鎖は、1つ以上のジスルフィド結合(H鎖アイソタイプに依存する)により互いに連結されている。各H鎖及びL鎖は、規則的な間隔の鎖間ジスルフィド架橋をさらに有する。各H鎖は、N末端において、可変ドメイン(VH)、続いてα及びγ鎖のそれぞれについて3つの定常ドメイン(CH)、及びμ及びεアイソタイプについて4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端において、可変ドメイン(VL)を有し、そのもう一方の末端に定常ドメイン(CL)を有する。VLはVHと整列され、CLは、重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列される。特定のアミノ酸残基は、軽鎖と重鎖との可変ドメインの間に界面を形成すると考えられている。VHとVLは一緒にペアになって、単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology[基礎・臨床免疫学]、第8版、Daniel P.Stitesら、Appleton&Lange[アップルトン&ラング出版社]、Norwalk[ノーウォーク]、CT[コネチカット州]、1994、第71ページ及び第6章を参照する。
【0063】
任意の脊椎動物種に由来するL鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κ及びλと呼ばれる2つの明らかに異なるタイプのうちの1つに分けることができる。その重鎖(CH)の定常ドメインのアミノ酸配列により、免疫グロブリンを異なるクラス又はアイソタイプに分けることができる。免疫グロブリンには、それぞれα、δ、γ、ε及びμと命名される重鎖を有する、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMという5つのクラスが存在する。CH配列及び機能における比較的小さい差異に基づいて、γ及びαクラスは、さらにサブクラスに分類され、例えば、ヒトは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2というサブクラスを発現する。
【0064】
用語「可変」は、可変ドメインの一定の部分が抗体の間の配列に関して広範囲で異なるということを意味する。Vドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗体の特定の抗原に対する特異性を定義する。しかしながら、変異性は、可変ドメインの110個のアミノ酸にわたって均一に分布しない。逆に、V領域は、15~30個のアミノ酸の、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変なセグメントからなり、これらのセグメントは、「超可変領域」と呼ばれる短い領域(各領域の長さが9~12個のアミノ酸である)で仕切られる。天然の重鎖及び軽鎖の各々の可変ドメインは、主に3つの超可変領域により連結されたβシート構造を用いる4つのFRを含み、この3つの超可変領域の連結により、βシート構造を連結するループを形成し、いくつかの場合にβシート構造の一部を形成する。各鎖における超可変領域は、FRにより、密接に近接して一体に保持され、かつ超可変領域が他の鎖に由来する場合に、抗体の抗原結合部位の形成に役立つ(Sequences of Proteins of Immunological Interest[免疫学的意義のある蛋白質の配列]、第5版、Elvin A.Kabatら、Public Health Service[公衆衛生局]、National Institutes of Health[国立衛生研究所]、Bethesda[ベセスダ]、MD[メリーランド州]、1991を参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)における抗体の関与などの様々なエフェクター機能を示す。
【0065】
本明細書で用いられる用語「CDR」又は「相補性決定領域」は、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの可変領域内に見出される非連続抗原結合部位を意味することを意図する。これらの特定の領域は、既に、Kabat EA.ら、J.Biol.Chem.[生物化学ジャーナル]、252(19):6609~6616(1977)、Sequences of Proteins of Immunological Interest[免疫学的意義のある蛋白質の配列]、第5版、Elvin A.Kabatら、Public Health Service[公衆衛生局]、National Institutes of Health[国立衛生研究所]、Bethesda[ベセスダ]、MD[メリーランド州]、1991、Chothia C.ら、J.Mol.Biol.[分子生物学ジャーナル]、196(4):901~917(1987)、及びMacCallum RM.ら、J.Mol.Biol.[分子生物学ジャーナル]、262(5):732~745(1996)に記載されており、これらの定義は、相互に比較したときのアミノ酸残基の重複又は部分集団を含む。それにも関わらず、抗体又は移植した抗体又はその変異体のCDRを意味する定義のいずれの適用も、本明細書で定義され、用いられる用語の範囲内であるものとされる。上記各参考文献のように定義されたCDRを含むアミノ酸残基は、比較として下記表4に示される。
【0066】
【表4】
【0067】
本明細書で用いられる用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体、すなわち少量で存在しうる可能性のある天然に存在する突然変異を除いて同一である集団を含む各抗体を意味する。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位に対して高度に特異的である。さらに、ポリクローナル抗体製剤(異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む)とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体が混入することなく合成できる点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、いずれか特定の方法による抗体の産生が必要とされるものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に有用であるモノクローナル抗体は、Kohler G.ら、Nature[自然]、256(5517):495~497(1975)に最初に記載されたハイブリドーマ法で作製でき、又は細菌、真核動物又は植物細胞において組換えDNA方法を用いて作製できる(例えば、米国特許第4816567号を参照)。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson T.ら、Nature[自然]、352(6336):624~628(1991)、Marks JD.ら、J.Mol.Biol.[分子生物学ジャーナル]、222(3):581~597(1991)、及び例えば以下の実施例に記載された技術を用いてを用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0068】
本明細書のモノクローナル抗体は、本発明の生物学的活性を示す限り、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来するか又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同性を有する一方、この又はこれらの鎖の残りの部分が、別の種に由来するか、別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体及びこのような抗体の断片における対応する配列と同一であるか又は相同性を有する「キメラ」抗体を含む(米国特許第4816567号、及びMorrison SL.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA[米国科学アカデミー紀要]81(21):6851~6855(1984)を参照)。本明細書の目的のキメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿など)に由来する可変ドメイン抗原結合配列を含む「霊長類化」抗体、及びヒト定常領域配列を含む。
【0069】
「インタクト」な抗体は、抗原結合部位と、CL及び少なくとも重鎖定常ドメインCH1、CH2及びCH3とを含む抗体である。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列の定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体であってよい。好ましくは、インタクトな抗体は、1種以上のエフェクター機能を有する。定常ドメイン(定常領域)は、好ましくはヒト抗体定常領域であり、より好ましくはヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3又はヒトIgG4抗体定常領域であり、選択可能な重鎖定常領域の具体的な配列は、SEQ ID NO:112、113又は114に示すとおりであり、選択可能な軽鎖定常領域の具体的な配列は、SEQ ID NO:115に示すとおりである。
【0070】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部を含み、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片、二重抗体、リニア抗体(米国特許第5641870号の実施例2、Zapata G.ら、Protein Eng.[タンパク質工学]、8(10):1057~1062(1995)を参照)、一本鎖抗体分子、抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。表現「リニア抗体」は、一般的に、Zapata G.ら、Protein Eng.[タンパク質工学]8(10):1057-1062(1995)に記載された抗体を意味する。簡単に説明すると、これらの抗体は、相補的な軽鎖ポリペプチドと共に抗原結合領域のペアを形成するタンデムFdセグメントのペア(VH-CH1-VH-CH1)を含む。リニア抗体は、二重特異性又は単一特異性であり得る。
【0071】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片、残りの「Fc」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片を産生する(この名称は、容易に結晶化する能力を反映する)。Fab断片は、L鎖全体と、H鎖の可変領域ドメイン(VH)と、1本の重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)とからなる。各Fab断片は、抗原結合に関して一価であり、すなわち単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、二価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合で連結されたFab断片にほぼ相当し、まだ抗原に架橋結合することができる単一の大きなF(ab’)2断片を産生する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシル末端に他の残基を有する点でFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を保有するFab’についての本明細書における名称である。F(ab’)2抗体断片は、元々、Fab’断片のペア(ヒンジシステインをそれらの間に有する)として産生された。抗体断片の他の化学的カップリングもまた公知である。
【0072】
Fc断片は、ジスルフィド結合によって一緒に保持された2本のH鎖のカルボキシル末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域における配列によって決定され、その領域はまた、あるタイプの細胞に見出されるFc受容体(FcR)によって認識される一部である。
【0073】
「変異体Fc領域」は、少なくとも本明細書で定義されるような「アミノ酸修飾」により、天然配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。
【0074】
好ましくは、変異体Fc領域は、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域と比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域において約1~約10個のアミノ酸置換、好ましくは、約1~約5個のアミノ酸置換を有する。1つの実施例では、本明細書における変異体Fc領域は、天然配列Fc領域と少なくとも約80%の相同性、少なくとも約85%の相同性、少なくとも約90%の相同性、少なくとも約95%の相同性又は少なくとも約99%の相同性を有する。別の実施例では、本明細書における変異体Fc領域は、親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、少なくとも約85%の相同性、少なくとも約90%の相同性、少なくとも約95%の相同性又は少なくとも約99%の相同性を有する。
【0075】
用語「Fc領域を含むポリペプチド」は、Fc領域を含む抗体又はイムノアドヘシン(本明細書の他の定義を参照)などのポリペプチドを意味する。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムによると残基447)は、例えば、ポリペプチドの精製中に、又はポリペプチドをコードする核酸を組換え的に操作することによって除去されていてよい。したがって、本開示のFc領域を有するポリペプチド(抗体を含む)を含む組成物は、全てのK447残基が除去されたポリペプチド集団、K447残基が除去されていないポリペプチド集団、又はK447残基を有するポリペプチドとポリペプチドを有さないポリペプチドの混合物を有するポリペプチド集団を含んでよい。
【0076】
抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因し得る生物学的活性を意味し、抗体アイソタイプにより変動する。抗体エフェクター機能の例は、C1q結合、補体依存性細胞傷害性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体の下流調節、及びB細胞活性化を含む。「天然配列Fc領域」は、天然に存在するFc領域のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む。Fc配列の例は、例えば、Sequences of Proteins of Immunological Interest[免疫学的意義のある蛋白質の配列]、第5版、Elvin A.Kabatら、Public Health Service[公衆衛生局]、National Institutes of Health[国立衛生研究所]、Bethesda[ベセスダ]、MD.[メリーランド州]、1991に記載されるが、これらに限定されない。
【0077】
「Fv」は、インタクトな抗原認識部位及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。該断片は、緊密に非共有結合的に会合した1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインとの二量体からなる。この2つのドメインの折り畳み構造から、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3つのループ)を生じる。
【0078】
しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異性を有する3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても、インタクトな結合部位より低い親和性ではあるが、抗原を認識し、かつ結合する能力を有する。
【0079】
「一本鎖Fv」(「sFv」又は「scFv」とも略称される)は、単一のポリペプチド鎖に連結されたVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするVHとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの総説については、A.Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies[モノクローナル抗体の薬理学]第113巻、Rosenburg及びMoore編、Springer-Verlag[シュプリンガー・フェアラーク出版社]、ニューヨーク、1994、第269~315ページにおける「Antibodies from Escherichia coli[大腸菌由来の抗体]」、又はAhmad ZA.ら、Clin.Dev.Immunol.[臨床と発生免疫学]、2012:980250(2012)を参照する。
【0080】
用語「二重抗体」は、Vドメインの鎖内ではなく鎖間ペアが達成され、二価断片、すなわち、2つの抗原結合部位を有する断片を産生するように、VH及びVLドメイン間に、短いリンカー(約5~10残基)を有するsFv断片(前段落を参照)を構築することによって作製された小さな抗体断片を意味する。二重特異性二重抗体は、2つの「交差」sFv断片のヘテロ二量体であり、2つの抗体のVHとVLドメインは異なるポリペプチド鎖に存在する。二重抗体は、例えば、EP 404097、WO 93/11161、及びHollinger P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA[米国科学アカデミー紀要]90(14):6444~6448(1993)により詳細に記載されている。
【0081】
非ヒト(例えば、げっ歯動物)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト抗体に由来する最小配列を含むキメラ抗体である。多くの場合、ヒト化抗体は、受容体超可変領域からの残基が、非ヒト種(例えばマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類)からの、所望の抗原特異性、親和性及び容量を有する超可変領域(ドナー抗体)の残基で置換される、ヒト免疫グロブリン(受容体抗体)である。いくつかの実施例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基で置換される。
【0082】
また、ヒト化抗体は、受容体抗体又はドナー抗体で見出されない残基を含み得る。これらの修飾は抗体の能力をさらに高めるためになされる。一般的には、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的に2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変ループの全て又は実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全て又は実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部、典型的には、ヒト免疫グロブリンの少なくとも一部を任意選択に含む。さらなる詳細については、Jones PT.ら、Nature[自然]、321(6069):522~525(1986)、Riechmann L.ら、Nature[自然]、332(6162):323~329(1988)、及びPresta LG、Curr.Opin.Biotechnol.[バイオテクノロジーに関する現在の評価]、3(4):394~398(1992)を参照する。
【0083】
本明細書で同定されたポリペプチド及び抗体配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」又は「相同性」は、(任意の保存的置換を配列同一性の一部として考慮して)配列を整列した後、比較されるポリペプチド中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的で、当該技術分野の技術における様々な方式で、例えば公衆に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用してアライメントを実現することができる。当業者は、比較される配列の全長の範囲で最大アライメントを実現するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメント測定用の適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書の目的のために、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いてアミノ酸配列同一性(%)の値を生成する。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、ジーネンテック社(Genentech、Inc.)によって作成され、かつソースコードは、既にアメリカ合衆国著作権局(U.S.Copyright Office)(コロンビア特別区(Washington D.C.)、20559)においてユーザ文書と共に提出された(アメリカ合衆国著作権登録番号TXU510087で登録される)。ALIGN-2プログラムは、カリフォルニア州サウスサンフランシスコのジーネンテック社(Genentech、Inc.)により公衆に入手可能である。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム(好ましくはデジタルUNIXV4.0D)で使用されるように、コンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、いずれもALIGN-2プログラムにより設定され、かつ不変である。
【0084】
用語「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体Fc領域に結合する受容体を説明する。1つの実施例では、本発明のFcRは、IgG抗体に結合するFcR(γ受容体)であり、かつFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング型を含む。FcγRII受容体は、類似するアミノ酸配列(これらの配列は主にその細胞質ドメインにおいて異なる)を有するFcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)を含む。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を含む(Daeron M、Annu.Rev.Immunol.[免疫学の年次レビュー]、15:203~234(1997)を参照)。該用語は、アロタイプ、例えば、FcγRIIIA-Phe158、FcγRIIIA-Val158、FcγRIIA-R131及び/又はFcγRIIA-H131というFcγRIIIAアロタイプを含む。FcRsは、Ravetch JV.ら、Annu.Rev.Immunol.[免疫学の年次レビュー]、9:457~492(1991)、Capel PJ.ら、Immunomethods[免疫方法]、4(1):25~34(1994)、及びde Haas M.ら、J.Lab.Clin.Med.[実験と臨床医学ジャーナル]、126(4):330~341(1995)に総説される。本明細書の用語「FcR」は、将来同定されるFcRを含む他のFcRをカバーする。該用語は、母体IgGの胎児への移行を担当する新生児受容体FcRnをさらに含む(Guyer RL.ら、J.Immunol.[免疫学会誌]、117(2):587~593(1976)及びKim JK.ら、Eur.J.Immunol.[欧州免疫学会誌]、24(10):2429~2434(1994)を参照)。
【0085】
用語「FcRn」は、新生児Fc受容体(FcRn)を意味する。FcRnは、構造上に主要組織適合性複合体(MHC)と類似し、かつβ2-ミクログロブリンに非共有結合的に結合したα鎖からなる。新生児Fc受容体FcRnの様々な機能は、Ghetie V.ら、Annu.Rev.Immunol.[免疫学の年次レビュー]、18:739-766(2000)に総説される。FcRnは、母親から後代への免疫グロブリンIgGの受動送達及び血清IgGレベルの調節に役割を果たす。FcRnは、サルベージ受容体として作用することができ、細胞内及び細胞を渡って、インタクトな形態で飲作用IgGに結合し、輸送し、デフォルトの分解経路からそれらを救う。
【0086】
ヒトIgG Fc領域の「CH1ドメイン」(「H1」ドメインの「C1」とも呼ばれる)は、一般的に、約アミノ酸118から約アミノ酸215まで伸長する(EUナンバリングシステム)。
【0087】
「ヒンジ領域」は、一般的に、ヒトIgG1のGlu216からPro230までの伸長として定義される(Burton DR.、Mol.Immunol.[分子免疫学]、22(3):161~206(1985))。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間S-S結合を形成する最初と最後のシステイン残基を同一位置に配置することによってIgG1配列と整列されてよい。
【0088】
Fc領域の「低ヒンジ領域」は、一般的に、ヒンジ領域のすぐC末端にある残基の範囲、すなわち、Fc領域の残基233~239として定義される。これまでの報告では、FcR結合は、一般的に、IgG Fc領域の低ヒンジ領域におけるアミノ酸残基を起因とされた。
【0089】
ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」(「H2」ドメインの「C2」とも呼ばれる)は、一般的に、約アミノ酸231から約アミノ酸340まで伸長する。CH2ドメインは、別のドメインと密接にペアにならないため、特異的である。むしろ、2つのN-連結分岐炭化水素鎖は、インタクトな天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に挿入されている。炭水化物は、ドメイン-ドメイン間のペアのための置換を提供し、かつCH2ドメインの安定性に役立つことができることが予測されている(Burton DR.、Mol.Immunol.[分子免疫学]、22(3):161~206(1985))。
【0090】
「CH3ドメイン」(「C2」又は「H3」ドメインとも呼ばれる)は、Fc領域におけるC末端からCH2ドメインまでの残基の範囲(すなわち、約アミノ酸残基341から抗体配列のC末端までの範囲(典型的に、IgGのアミノ酸残基446又は447)を含む。
【0091】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的な「エフェクター機能」は、C1q結合、補体依存性細胞傷害性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)の下流調節などを含む。このようなエフェクター機能は、一般的に、Fc領域を結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わせることを必要とし、例えば、本明細書で開示された様々なアッセイを用いて測定することができる。
【0092】
「C1q」は、免疫グロブリンのFc領域に対する結合部位を含むポリペプチドである。C1qは、2つのセリンプロテアーゼC1r及びC1sと共に複合体C1(補体依存性細胞傷害性(CDC)経路の第1の構成成分である)を形成する。ヒトC1qは、例えば、カリフォルニア州(CA)のサンディエゴ(San Diego)のクウィデル社(Quidel)から商業的に購入することができる。
【0093】
用語「結合ドメイン」は、別の分子に結合するポリペプチドの領域を意味する。FcRの場合、結合ドメインは、Fc領域の結合を担当しているそのポリペプチド鎖の一部(例えば、そのα鎖)を含み得る。1つの有用な結合ドメインは、FcRα鎖の細胞外ドメインである。
【0094】
(「変化した」FcR結合親和性又はADCC活性を有する)変異体IgG Fcを有する抗体は、親ポリペプチド又は天然配列Fc領域を含むポリペプチドと比較して高まったか又は低下したFcR結合活性(例えば、FcγR又はFcRn)及び/又はADCC活性を有するものである。FcRに対して「高まった結合性を示す」変異体Fcは、親ポリペプチド又は天然配列IgG Fcより高い親和性(例えば、より低い見掛けのKd又はIC50値)を有する少なくとも1つのFcRに結合する。いくつかの実施例によれば、親ポリペプチドと比較した結合性の改善度合いは、約3倍、好ましくは約5倍、10倍、25倍、50倍、60倍、100倍、150倍、200倍、500倍であり、又は約25%~1000%の結合性の改善度合いである。FcRに対して「低下した結合性を示す」ポリペプチド変異体は、親ポリペプチドより低い親和性(例えば、より高い見掛けのKd又は高いIC50値)を有する少なくとも1つのFcRに結合する。親ポリペプチドと比較した結合性の低下度合いは、約40%又はそれ以上の結合性の低下度合いであってよい。
【0095】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」又は「ADCC」は、一定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌型Igが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞を、抗原を有する標的細胞に特異的に結合させ、続いて該標的細胞を細胞毒によって死滅させることを可能にする細胞傷害の形態を意味する。抗体は、細胞傷害性細胞を「装備し」、このような死滅に絶対的に必要とされる。ADCCを媒介するための一次細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現する一方、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch JV.ら、Annu.Rev.Immunol.[免疫学の年次レビュー]9:457~492(1991)の第464ページの表3にまとめられる。目的の分子のADCC活性を評価するために、インビトロADCCアッセイ(例えば、米国特許第5500362号又は第5821337号又は下記の実施例に記載のもの)が行われてもよい。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。代替可能又は追加的に、目的の分子のADCC活性は、インビボ、例えば、動物モデル、例えばClynes R.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA[米国科学アカデミー紀要]95(2):652~656(1998)に開示されているような動物モデルにおいて評価されてよい。
【0096】
(「高まったADCCを示す」か、又はヒトエフェクター細胞の存在下で野生型IgG Fcを有するポリペプチド又は親ポリペプチドより効果的に抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を媒介する)変異体Fc領域を含むポリペプチドは、アッセイにおいて変異体Fc領域を有するポリペプチドと野生型Fc領域を有するポリペプチド(又は親ポリペプチド)の量が実質的に同一である場合、インビトロ又はインビボでADCC媒介時に実質的により効果的であるものである。一般的に、このような変異体は、当該技術分野で公知のいずれかのインビトロADCCアッセイ、例えば、(動物モデルなどにおける)ADCC活性を決定するためのアッセイ又は方法を用いて同定される。1つの実施例では、好ましい変異体は、ADCCの媒介時に野生型Fc(又は親ポリペプチド)より約5倍から約100倍(例えば、約25から約50倍)効果的である。
【0097】
「補体依存性細胞傷害性」又は「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を意味する。古典的補体経路の活性化は、補体系の第1の構成成分(C1q)の(適切なサブクラスの)抗体(該抗体がその同族抗原に結合した)への結合によって開始する。補体活性化を評価するために、(例えば、Gazzano-Santoro H.ら、J.Immunol.Methods[免疫学方法ジャーナル]、202(2):163~171(1997)に記載されているような)CDCアッセイが行われてよい。Fc領域アミノ酸配列が変化し、C1q結合能力が高まったか又は低下したポリペプチド変異体は、米国特許第6194551 B1号及びWO 99/51642に記載されている。これらの特許公報の内容は、引用により本明細書に明確に組み込まれる(Idusogie EE.ら、J.Immunol.[免疫学会誌]、164(8):4178~4184(2000)をさらに参照)。
【0098】
本明細書で開示された抗CD73抗体(又はその断片)又は組成物の「有効な量」は、具体的に記載される目的を達成するために十分な量である。「有効な量」は、記載される目的に関して経験的に公知の方法によって決定することができる。用語「治療上有効な量」は、哺乳動物(患者とも称される)における疾患又は障害を「治療する」ために有効である本明細書で開示された抗CD73抗体(又は変異体又はこれらの抗原結合断片)又は組成物の量を意味する。癌の場合、本明細書で開示された抗CD73抗体(又は変異体又はこれらの抗原結合断片)又は組成物の治療上有効な量は、癌細胞の数を減少させ、腫瘍のサイズ又は重量を減少させ、癌細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(すなわち、ある程度まで遅延させ、好ましくは停止させ)、腫瘍の転移を阻害し(すなわち、ある程度まで遅延させ、好ましくは停止させ)、腫瘍の増殖をある程度まで阻害し、及び/又は癌に関連する1つ以上の症状をある程度まで軽減させることができる。ある程度まで、本明細書で開示された抗CD73抗体(又は変異体又はこれらの抗原結合断片)又は組成物は、存在する癌細胞の増殖を阻害し及び/又は存在する癌細胞を死滅させることができ、細胞阻害性及び/又は細胞傷害性であり得る。1つの実施例では、治療上有効な量は、増殖阻害量である。別の実施例では、治療上有効な量は、患者の生存率を高める量である。別の実施例では、治療上有効な量は、患者の無増悪生存期間を改善する量である。
【0099】
本発明の抗CD73抗体(又は変異体又はこれらの抗原結合断片)又は本明細書で開示された組成物の「増殖阻害量」は、細胞(特に、腫瘍、例えば、癌細胞)の増殖をインビトロ又はインビボで阻害することができる量である。腫瘍の細胞増殖を阻害するための本開示のポリペプチド、抗体、拮抗薬又は組成物の「増殖阻害量」は、経験的に公知の方法又は本明細書で提供される実施例によって決定することができる。
【0100】
本発明の抗CD73抗体(変異体又はこれらの抗原結合断片)又は組成物の「細胞傷害量」は、インビトロ又はインビボで細胞(特に、腫瘍、例えば、癌細胞)を破壊することができる量である。腫瘍の細胞増殖を阻害するための本発明の抗CD73抗体(又は変異体又はこれらの抗原結合断片)又は組成物の「細胞傷害量」は、経験的に公知の方法によって決定することができる。
【0101】
本発明の抗CD73抗体(又は変異体又はこれらの抗原結合断片)又は組成物の「増殖阻害量」は、細胞(特に、腫瘍、例えば、癌細胞)の増殖をインビトロ又はインビボで阻害することができる量である。腫瘍の細胞増殖を阻害するための本開示の抗CD73抗体(又は変異体又はこれらの抗原結合断片)又は組成物の「増殖阻害量」は、経験的に公知の方法又は本明細書で提供される実施例によって決定することができる。
【0102】
本明細書で用いられる「薬学的に許容される」又は「薬理学的に適合な」は、生物学的又は不所望のものではない物質、例えば、あまり望ましくない生物学的効果を生じることなく、又は組成物の他の構成成分のいずれとも有害な形で相互作用することなく、患者に投与される医薬組成物に取り込まれ得る物質を意味する。薬学的に許容される担体又は賦形剤は、好ましくは、要求される毒性学及び製造試験の標準基準を満たし、及び/又は米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug administration)によって作成された不活性成分ガイドに含まれる。
【0103】
用語「検出」は、物質の存在又は非存在を決定するか、又は物質(例えば、CD73)の量を定量化することを含むものとされる。したがって、該用語は、定性的及び定量的決定のための本発明の物質、組成物及び方法の用途を意味する。一般的に、検出のために用いられる特定の技術は、本発明の実施に不可欠ではない。
【0104】
例えば、本発明に係る「検出」は、CD73遺伝子産物、mRNA分子、又はCD73ポリペプチドの存在又は非存在を観察することと、CD73ポリペプチドのレベル又は標的に結合する量の変化と、CD73ポリペプチドの生物学的機能/活性の変化と、を含んでよい。いくつかの実施例では、「検出」は、野生型CD73レベル(例えば、mRNA又はポリペプチドレベル)を検出することを含んでよい。検出は、対照と比較して10%~90%のいずれかの値、又は30%~60%のいずれかの値、又は100%以上の変化(増加又は減少)を定量することを含んでよい。検出は、2倍~10倍のいずれかの値(限界値を含む)を含め、又はその以上(例えば、100倍)の変化を定量することを含んでよい。
【0105】
用語「標識」は、本明細書で用いられる場合、抗体に直接的又は間接的に抱合されている検出可能な化合物又は組成物を意味する。標識は、それ自体により検出可能であってもよく(例えば、放射性同位元素標識又は蛍光標識)、又は酵素標識の場合、検出可能な基質化合物又は組成物の化学変化を触媒してもよい。
【0106】
抗CD73抗体及び親和性変異体/突然変異体
本発明は、本明細書で開示されたCD73受容体に結合する抗体に関する。開示された抗CD73抗体、及びそれらの親和性変異体及び/又は突然変異体、又はこれらの抗原結合断片は、様々な治療方法及び診断方法で用いることができる。抗CD73抗体は、CD73に結合するのに十分な親和性及び特異性を有する抗体である。いくつかの実施例では、開示された抗CD73抗体(又はその変異体もしくは突然変異体、又はこれらの抗原結合断片)は、CD73発現に関連する疾患又は症状を標的にして干渉する過程において治療剤として使用することができる。様々な態様では、開示された抗CD73抗体(又は変異体/突然変異体、又はこれらの抗原結合断片)は、他のタンパク質との最小結合を示す。いくつかの実施例では、好ましくは、開示された抗CD73抗体(又は変異体/突然変異体又はこれらの抗原結合断片)は、ヒト又は組換えヒト化抗CD73モノクローナル抗体である。
【0107】
特定の理論に束縛されるものではないが、開示された抗CD73抗体、及びそれらの親和性変異体及び/又は突然変異体、又はこれらの抗原結合断片は、CD73を発現する細胞におけるCD73の内在化を増加させることにより、開示された抗CD73抗体、及びそれらの親和性変異体及び/又は突然変異体、又はこれらの抗原結合断片に結合する細胞上のプラズマ膜上のCD73タンパク質の量を減少させることができると思量される。したがって、プラズマ膜上のCD73タンパク質の量の減少は、CD73に関連する5’-ヌクレオチダーゼの活性の低下に関連する。いくつかの態様では、再び特定の理論に束縛されるものではないが、5’-ヌクレオチダーゼの活性が低下するため、CD73に関連する5’-ヌクレオチダーゼの活性の低下(内在化が増加した)は、腫瘍部位で強化された免疫細胞機能により腫瘍細胞の増殖を減少させることができると思量される。
【0108】
本明細書で開示されたように、開示された抗CD73抗体、及びそれらの親和性変異体及び/又は突然変異体、又はこれらの抗原結合断片は、CD73発現に関連する他の臨床症状(例えば、特発性肺線維症を含む線維症)において有益な作用を有する。特定の理論に束縛されるものではないが、開示された抗CD73抗体、及びそれらの親和性変異体及び/又は突然変異体、又はこれらの抗原結合断片は、CD73を発現する適切な細胞のCD73タンパク質が減少する(それに応じて、5’-ヌクレオチダーゼの活性が低下する)ため、他のこのような臨床症状において患者(例えば、線維症(特発性肺線維症を含む))に対して積極的な臨床利益を有すると思量される。
【0109】
いくつかの実施例では、抗CD73抗体は、本明細書で開示された抗体のうちのいずれか1つのCDR、可変重鎖領域及び/又は可変軽鎖領域を含む。
【0110】
本発明は、抗CD73抗体、それらの親和性変異体/突然変異体、及び/又はこれらの抗原結合断片を提供する。いくつかの実施例では、本発明の特定の抗CD73抗体、その1種以上の親和性変異体/1種以上の突然変異体、及び/又はこれらの1種以上の抗原結合断片は、軽鎖(LC)可変ドメイン配列(上記表1に列挙された特異性CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3配列を含む)及び重鎖(HC)可変ドメイン配列(上記表2に列挙された特異性CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3配列を含む)を含む。本発明の各特定の抗CD73抗体、その1種以上の親和性変異体/1種以上の突然変異体、及び/又はこれらの1種以上の抗原結合断片の各軽鎖及び重鎖の核酸及びそのアミノ酸配列は、以下の配列表に提供される。本発明は、重鎖及び軽鎖可変ドメインならびに本明細書に言及されたCDRが全ての可能なペアとなる組み合わせで組み合わされて大量の抗CD73抗体、及びそれらの1種以上の親和性変異体/1種以上の突然変異体、及び/又は1種以上の抗原結合断片を生成することを提供する。
【0111】
いくつかの実施例では、1つ以上のアミノ酸置換は、1つ以上の保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施例では、アミノ酸置換は、抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない。例えば、開示された抗体と標的CD73との結合親和性を実質的に低下させない保存的変化(例えば、本明細書で提供される保存的置換)がなされ得る。抗CD73抗体変異体の結合親和性は、下記実施例に記載の方法を用いて評価することができる。
【0112】
保存的置換は、「保存的置換」の表題として表5に示される。より実質的変換は、「例示的な置換」の表題として表4において、アミノ酸側鎖クラスに関して下記にさらに記載されるように提供される。アミノ酸置換は、目的の抗体に導入され、その生成物が、所望の活性(例えば、CD73結合の保持/改善、免疫原性の低下、或いはADCC又はCDCの改善)についてスクリーニングされ得る。
【0113】
【表5】
【0114】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスに交換することを必要とする。例示的な置換の変異体は、親和性成熟抗体であり、(例えば、本明細書に開示された方法などの)ファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を用いて都合よく生成され得る。簡単に言えば、1つ以上のCDR残基を突然変異させ、変異体抗体をファージ上にディスプレイし、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。変化(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するために、HVRにおいて行われてよい。このような変化は、HVR「ホットスポット」(すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で突然変異するコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury、Methods Mol.Biol.[分子生物学方法]207:179~196(2008))、及び/又はSDR(a-CDR)で行われる場合があり、得られた変異体VH又はVLの結合親和性について試験される。二次ライブラリーを構築し、二次ライブラリーから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom HR、Methods in Mol.Biol.[分子生物学方法]178:1~37(2002)、Antibody Phage Display[抗体ファージディスプレイ](Philippa O’Brien、 R.A.、Humana Press[ヒューマナ出版社]、Totowa[トトワ]、NJ[ニュージャージー州]、2001)に記載されている。
【0115】
親和性成熟のいくつかの実施例では、多様性は、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング又はオリゴヌクレオチド定方向突然変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。そして、二次ライブラリーが産生される。続いて、このライブラリーは、所望の親和性を有する任意の抗体変異体を同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、1回に4~6個の残基)をランダム化するHVR定方向法に関する。抗原結合に関するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発法又はモデリングを用いて特異的に同定されてもよい。
【0116】
いくつかの実施例では、抗CD73抗体、変異体もしくは突然変異体、又はこれらの抗原結合断片は、重鎖又は軽鎖可変領域内にN-グリコシル化モチーフを欠失している場合があり、それはバッチにおいて相違を引き起こし得、その結果、機能、免疫原性又は安定性に変化をもたらす。抗体グリコシル化の分析方法は、例えば、クロマトグラフィー(例えば、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)又は液体クロマトグラフィー)、質量分析法(例えば、エレクトロスプレーイオン化質量分析法)及びキャピラリー電気泳動-硫酸ドデシルナトリウムを含むが、それらに限定されない。このような方法は例えば、Jung ST.ら、Curr.Opin.Biochnol.[バイオテクノロジーに関する現在の評価]、22(6):858~67(2011)、Varki A、Cummings RD、Esko JDら編集のEssentials of Glycobiology[糖生物学の基礎]第2版、Cold Spring Harbor[コールド・スプリング・ハーバー](ニューヨーク):Cold Spring Harbor Laboratory Press[コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社]、2009、第45章におけるCummings RD、 Etzler ME.Antibodies and Lectins in Glycan Analysis.[多糖分析における抗体及びレクチン]、Varki A、Cummings RD、Esko JDら編集のEssentials of Glycobiology.[糖生物学の基礎]第2版、Cold Spring Harbor[コールド・スプリング・ハーバー](ニューヨーク):Cold Spring Harbor Laboratory Press[コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社]、2009、第47章におけるMulloy B、Hart GW、Stanley P.Structural Analysis of Glycans.[オリゴ糖の構造分析]、Leymarie N.ら、Anal.Chem.[分析化学]、84(7):3040~3048(2012)、Fernandez DD.、European Biopharmaceutical Review[欧州バイオ製薬レビュー]第106~110ページ(2005)、及びRaju TS、Methods Mol.Biol.[分子生物学方法]、988:169~180(2013)に記載されている。
【0117】
いくつかの実施例では、特定の抗CD73抗体の突然変異体は、1つ以上のCDR領域におけるN-グリコシル化部位、例えばシークオンN-X-S/Tに1つ以上の突然変異を含む。N-グリコシル化部位に1つ以上の突然変異体を有する抗CD73抗体変異体は、N-グリコシル化部位を除去するが、同等の機能を保持する。
【0118】
いくつかの実施例では、抗CD73抗体、変異体及び/又は突然変異体、又はこれらの抗原結合断片のCD73に対する結合親和性は、CD73同族体に対する結合親和性より高い。一般的に、抗CD73抗体、及び/又は変異体、又はこれらの抗原結合断片は、CD73に「特異的に結合する」(すなわち、約1×10-7M以下、好ましくは、約1×10-8以下、最も好ましくは、約1×10-9M以下の結合親和性(Kd)の値を有する)が、CD73に対する結合親和性より少なくとも約50倍、又は少なくとも約500倍、又は少なくとも約1000倍弱い多くの非CD73に対する結合親和性を有する。CD73に特異的に結合する抗CD73抗体は、上記で定義される様々なタイプの抗体のいずれかであってよいが、好ましくはヒト化又はヒト抗体である。
【0119】
いくつかの実施例では、当該技術分野で公知の方法(例えば、ELISA、蛍光標識細胞分取(FACS)分析又は放射性免疫沈降法(RIA))によって決定されると、抗CD73抗体の非標的タンパク質への結合の程度は、抗体のCD73への結合の程度の約10%より小さい。例えば、対照分子(一般的に、結合活性を有していない類似構造の分子である)の結合と比較して分子の結合を決定することによって、特異的な結合を測定することができる。例えば、標的(例えば、過剰量の非標識標的)と類似する対照分子との競合によって、特異的な結合を決定することができる。この場合、特異的な結合は、標識された標的のプローブへの結合が過剰量の非標識標的によって競合的に阻害される場合に示される。本明細書で用いられる、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープに「特異的結合」又は「特異的に結合する」、又はそれに対して「特異的である」なる用語は、例えば、標的に対して少なくとも約10-4M、代替可能に少なくとも約10-5M、代替可能に少なくとも約10-6M、代替可能に少なくとも約10-7M、代替可能に少なくとも約10-8M、代替可能に少なくとも約10-9M、代替可能に少なくとも約10-10M、代替可能に少なくとも約10-11M、代替可能に少なくとも約10-12M、又はそれ以上のKdを有する分子によって示すことができる。1つの実施例では、用語「特異的結合」は、ある分子が、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープに、いずれの他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく結合する結合を意味する。
【0120】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)は、腫瘍細胞に対する治療抗体の作用メカニズムである。ADCCは、細胞媒介性免疫防御であり、免疫系のエフェクター細胞は、この細胞媒介性免疫防御により、標的細胞(例えば、癌細胞)を積極的に溶解し、これらの標的細胞の膜表面抗原は、特異性抗体(例えば、本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又は親和性変異体など)によって結合されている。いくつかの実施例では、抗CD73抗体及び/又は親和性変異体は、例えば、実施例に記載されたアッセイによって示されるように、対照抗CD73モノクローナル抗体と類似する抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)エフェクター機能を示す。
【0121】
例えば、いくつかの実施例では、本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はそれらの親和性変異体もしくは突然変異体のADCCエフェクター機能活性は、対照抗CD73抗体のADCCエフェクター機能活性の少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%、又は100%以上(例えば、約105%、約106%、約107%、約108%、約109%、約110%、約111%、約112%、約113%、約114%、約115%、約116%、約117%、約118%、約119%、約120%、約121%、約122%、約123%、約124%、約125%又は約130%(その数値間のいずれの範囲を含む)である。
【0122】
いくつかの実施例では、抗CD73抗体、及び/又はそれらの親和性変異体もしくは突然変異体は、対照抗CD73抗体と類似するCD73に対する結合親和性を示す。いくつかの実施例では、CD73への結合は、実施例に記載されるように、ELISAによって証明される。例えば、抗CD73抗体及び/又はそれらの親和性変異体もしくは突然変異体のCD73に対する結合親和性は、対照抗CD73抗体のCD73に対する結合親和性より約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%約96%、約97%、約98%、約99%、約100%又は100%以上(例えば、約105%、約106%、約107%、約108%、約109%、約110%、約111%、約112%、約113%、約114%、約115%、約116%、約117%、約118%、約119%、約120%、約121%、約122%、約123%、約124%、約125%又は約125%以上)高い。
【0123】
いくつかの実施例では、抗CD73抗体及び/又はそれらの親和性変異体もしくは突然変異体は、約0.1pM~200pM(0.2nM)(例えば、約0.1pM、約0.25pM、約0.5pM、約0.75pM、約1pM、約5pM、約10pM、約20pM、約30pM、約40pM、約50pM、約60pM、約70pM、約80pM、約90pM、約100pM、約110pM、約120pM、約130pM、約140pM、約150pM、約160pM、約170pM、約180pM、約190pM、又は約190pM以上(これらの数値の間のいずれの範囲も含む))のKdでヒトCD73に結合する。いくつかの実施例では、抗CD73抗体及び/又はそれらの親和性変異体もしくは突然変異体のCD73に対する結合親和性は、対照抗CD73抗体のCD73に対する結合親和性より約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%約96%、約97%、約98%、約99%、約100%又は約100%以上(例えば、約105%、約110%、約120%又は約130%)高い。いくつかの実施例では、抗CD73及び/又はその変異体もしくは突然変異体のCD73に対する結合親和性は、対照抗CD73抗体のCD73に対する結合親和性より約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3倍、約3.25倍、約3.5倍、約3.75倍、約4倍、約4.25倍、約4.5倍、約4.75倍、又は約4.75倍以上(これらの数値の間のいずれの範囲も含む)高い。
【0124】
いくつかの実施例では、対照抗CD73抗体と比較して、本明細書で提供される抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、インビボ半減期が延長した。いくつかの実施例では、本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体のインビボ半減期は、対照抗CD73抗体のインビボ半減期より短くない。
【0125】
いくつかの実施例では、本明細書で提供される抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、対照抗CD73抗体と類似する薬物動態特性を示す。いくつかの実施例では、本明細書で提供される抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、対照抗CD73抗体の血清濃度-時間プロファイルの約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は95%以上(例えば、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約99%以上)(これらの数値の間のいずれの範囲も含む)のAUC(曲線下面積)を示す。
【0126】
いくつかの実施例では、本発明の抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、ヒトIgG(例えば、ヒトIgG1又はヒトIgG4)のFc配列を含む。いくつかの実施例では、Fc配列は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)エフェクター機能(それらのFc受容体(FcR)への結合に関連する場合が多い)を欠失するように変化されているか又は他の方式により変化される。エフェクター機能を変えることができるFc配列に対する変化又は突然変異の例は多く存在する。例えば、WO00/42072、及びShieldsら、J Biol.Chem.[生物化学ジャーナル]9(2):6591~6604(2001)には、FcRへの結合が改善するか又は減少した抗体変異体が記載されている。これらの刊行物の内容は、引用により本明細書に明確に組み込まれる。本開示の抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、Fv断片、二重抗体及びリニア抗体の形態であってよい。また、本開示の抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、CD73に結合するだけではなく、1つ以上の他の突然変異体にも結合し、それらの1種以上の機能を阻害する多重特異性抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体であってよい。本開示の抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、治療剤(例えば、細胞傷害性薬物、放射性同位元素及び化学療法剤)又はイメージングにより患者の試料中又はインビボでCD73を検出するための標識(例えば、放射性同位元素、蛍光色素及び酵素)に抱合されてよい。本明細書は、毒素の抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体への抱合が含まれる他の修飾も提供する。
【0127】
本明細書には、抗CD73抗体及び/又はその変異体及び/又は突然変異体をコードする核酸分子と、CDR及び/又は重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインをコードする核酸分子を含む発現ベクターとがさらに考慮されており、これらの核酸分子を含む細胞も考慮される。本発明の抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、(例えば、FACS、免疫組織化学法(IHC)、ELISAアッセイによって)患者の試料又は患者におけるCD73タンパク質を検出するために、本明細書に記載された治療法で用いることができる。
【0128】
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、例えばハイブリドーマ法(例えば、Kohler G.ら、Nature[自然]、174(5):2453~2455(2005)を参照)を用いて作製されるか、又は組換えDNA方法(米国特許第4816567号)により製造されるか、又は以下の実施例の本明細書に記載された方法により産生されてよい。ハイブリドーマ法において、典型的にハムスター、マウス又は他の適切な宿主動物を免疫剤で免疫することにより、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生するか又は産生することができるリンパ球を誘発する。代替可能に、リンパ球は、インビトロで免疫することができる。
【0129】
免疫剤は、典型的に、ポリペプチド、目的のタンパク質の融合タンパク質、又はタンパク質を含む組成物を含む。一般的に、末梢血リンパ球(「PBL」)は、ヒト細胞が望ましい場合に用いられ、或いは脾臓細胞又はリンパ節細胞は、非ヒト哺乳動物供給源が望ましい場合に用いられる。次いで、適切な融合剤(例えば、ポリエチレングリコール)を用いてリンパ球を不死化細胞株と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Monoclonal Antibodies:principles and practice[モノクローナル抗体:原理及び実践]、James W.Goding、ニューヨーク:Academic Press[学術出版社]、1986、第59~103ページ)。不死化細胞株は、一般的に、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯動物、ウシ及びヒト骨髄腫細胞である。一般的には、ラット又はマウス骨髄腫細胞株が用いられる。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、融合されていない不死化細胞の増殖又は生存を阻害する1つ以上の物質を含有する適切な培地中で培養することができる。例えば、親細胞がヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠乏する場合、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(「HAT培地」)を含み、これらの物質は、HGPRT欠失細胞の増殖を阻害する。
【0130】
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの発現を助け、そして培地(例えば、HAT培地)に感受性を有するものである。より好ましい不死化細胞株は、マウス骨髄腫細胞株であり、例えば、Salk Institute[ソーク研究所]Cell Distribution Center[細胞分布中心]、San Diego[サンディエゴ]、California[カリフォルニア州]及びAmerican Type Culture Collection[アメリカ培養細胞系統保存機関]、Manassas[マナサス]、Virginia[バージニア州]から入手可能である。ヒトミエローマ及びマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞株もヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている(Kozbor D.ら、J.Immunol.[免疫学会誌]、133(6):3001~3005(1984)、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications[モノクローナル抗体の産生技術及び応用]、Brodeurら、Marcel Dekker、Inc.[マーセルデッカー社]:ニューヨーク、1987、第51~63ページ)。
【0131】
次いで、ハイブリドーマ細胞が培養された培地に対して、ポリペプチドに対するモノクローナル抗体の存在について測定することができる。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法によって、又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などのインビトロ結合アッセイによって決定することができる。このような技術及びアッセイは、当該技術分野で公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson PJ.ら、Anal.Biochem.[分析生物化学]、107(1):220~239(1980)のスキャッチャード(Scatchard)分析により決定することができる。
【0132】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンは、限界希釈法によってサブクローニングし、標準方法によって増殖することができる(Monoclonal Antibodies:principles and practice[モノクローナル抗体:原理及び実践]、James W.Goding、ニューヨーク:Academic Press[学術出版社]、1986、第59~103ページ)。このための適切な培地は、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)及びRPMI-1640培地を含む。代替可能に、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物のインビボで腹水として増殖することができる。
【0133】
サブクローンから分泌されるモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製方法(例えば、プロテインAセファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又は親和性ロマトグラフィー)によって、培地又は腹水から単離するか又は精製することができる。
【0134】
モノクローナル抗体はまた、当該技術分野で公知の及び/又は後に開発された組換えDNA方法によって作製することができる。従来の方法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)、本明細書で提供されるモノクローナル抗体をコードするDNAを、容易に単離し、配列決定することができる。本明細書で提供されるハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として用いられる。単離されると、DNAは、発現ベクター内に組み込まれ、次いで、これらの発現ベクターは、免疫グロブリンタンパク質を特に産生していない宿主細胞(例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞)にトランスフェクトされて、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を可能とする。また、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常領域のコード配列を、同種のマウス配列で置換することによって(Morrisonら、前出を参照)、又は非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全て又は一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合させることによって、DNAを修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本明細書で提供される抗体の定常ドメインを置換するか又は本明細書で提供される抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインを置換することにより、キメラ二価抗体を産生することができる。
【0135】
いくつかの実施例では、本発明で提供される抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、安定な哺乳動物細胞株によって発現される。いくつかの実施例では、本発明で提供される抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、約2.0グラム/リットル、約2.5グラム/リットル、約3.0グラム/リットル、約3.5グラム/リットル、約4.0グラム/リットル、約4.5グラム/リットル、約5.0グラム/リットル、約5.5グラム/リットル、約6.0グラム/リットル、約6.5グラム/リットル、約7.0グラム/リットル、又は約7.0グラム/リットル以上(これらの数値間のいずれの範囲も含む)の力価で安定な哺乳動物細胞株によって発現される。いくつかの実施例では、本発明で提供された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体を発現する安定な哺乳動物細胞株は、CHO細胞株である。
【0136】
いくつかの実施例では、抗体は、一価抗体である。一価抗体の作製方法は、当該技術分野で公知である。例えば、免疫グロブリン軽鎖及び修飾された重鎖の組換え発現に関する方法がある。一般的に、重鎖は、重鎖の架橋を生じないようにするために、Fc領域におけるいくつかの点で短くされている。代替可能に、関連するシステイン残基は、重鎖の架橋を生じないようにするために、別のアミノ酸残基で置換されているか又は削除されている。
【0137】
インビトロ方法は、一価抗体の作製にも適している。当該技術分野で公知の技術を用いて抗体の消化を行ってその断片(特に、Fab断片)を産生することができるが、それに限定されない。
【0138】
ヒト抗体及びヒト化抗体
本発明の抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、ヒト抗体である。それらは、ヒト化抗体であってもよい。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を典型的に含有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はこれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2又は抗体の他の抗原結合部分配列)である。ヒト化抗体は、受容体のCDR由来の残基が、非ヒト種(ドナー抗体)(例えば、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット又はウサギ)のCDR由来の残基で置換されているヒト免疫グロブリン(受容体抗体)を含む。いくつかの実施例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基で置換される。ヒト化抗体はまた、受容体抗体にも、導入されたCDR又はフレームワーク配列にも見出されていない残基を含んでよい。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的に2つの可変ドメインの実質的に全てを含んでよく、CDR領域の全て又は実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン共通配列のものである。ヒト化抗体はまた、好ましくは、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的には、ヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部を含む(例えば、Jones PT.ら、Nature[自然]、321(6069):522~525(1986)、Riechmann L.ら、Nature[自然]、332(6162):323~327(1988)、Presta LG、Curr.Opin.Biochnol.[バイオテクノロジーに関する現在の評価]、3(4):394~398(1992))。
【0139】
一般的には、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、一般的に、「インポート」残基と呼ばれ、典型的には、「インポート」可変ドメインから取り込まれる。1つの実施例では、Winterと共同研究者の方法に従って、基本的に、げっ歯動物CDR又はCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することによってヒト化を行う(Jones PT.ら、Nature[自然]、321(6069):522~525(1986)、Riechmann L.ら、Nature[自然]、332(6162):323~327(1988)、Verhoeyen M.ら.、Science[科学]、239(4847):1534~1536(1988))。よって、本明細書で記載された「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない分が、非ヒト種に由来する対応する配列で置換されている抗体である。実際には、ヒト化抗体は、典型的に、いくつかのCDR残基及び場合によりいくつかのFR残基が、げっ歯動物抗体における類似部位に由来する残基で置換されている抗体である。
【0140】
ヒト化の代わりに、ヒト抗体を生成することできる。例えば、現在、免疫化された後に、内在性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体の全レパートリーを産生できるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作成することができる。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失は、内在性抗体の産生の完全な阻害を引き起こすことが記載されている。ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列をこのような生殖系列突然変異マウスに導入することにより、抗原チャレンジ後にヒト抗体の産生を引き起こし、例えばJakobovits A.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA[米国科学アカデミー紀要]、90(6):2551~2555(1993)、Jakobovits A.ら、Nature[自然]、362(6417):255~258(1993)、Bruggemann M.ら、Year Immunol.[免疫学年報]、7:33~40(1993)、米国特許第5545806号、第5569825号、第5591669号、第5545807号、及びWO 97/17852を参照する。
【0141】
代替可能に、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、トランスジェニック動物、例えば、内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されたマウスに導入することによってヒト抗体を作製することができる。チャレンジ後に、ヒト抗体の産生が観察され、これは、遺伝子再構成、会合、及び抗体レパートリーを含む全ての面においてヒトで見られるものと類似する。該方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、Marks JD.ら、Biotechnology[バイオテクノロジー]、10(7):779-783(1992)、Lonberg N.ら、Nature[自然]、368(6474):856-859(1994)、Morrison SL.、Nature[自然]、368(6474):812-813(1994)、Fishwild DM.ら、Nat.Biotechnol.[ネイチャーバイオテクノロジー]、14(7):845~851(1996)、Neuberger M.、Nat.Biotechnol.[ネイチャーバイオテクノロジー]、14(7):826(1996)、Lonberg N.ら、Int.Rev.Immunol.[国際免疫学レビュー]、13(1):65~93(1995)を参照する。
【0142】
代替可能に、ファージディスプレイ技術(McCafferty J.ら、Nature[自然]、348(6301):552~554(1990))は、免疫されていないドナーに由来する免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからインビトロでヒト抗体及び抗体断片を産生するために用いることができる。該技術の1つの実施例によれば、抗体Vドメイン配列は、糸状バクテリオファージの主要又は非主要コートタンパク質遺伝子(例えば、M13又はfd)にインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能的な抗体断片としてディスプレイされる。ファージディスプレイは、様々な形式で行うことができ、例えば、以下の実施例部分に説明されるか又は例えば、Johnson KS.ら、Curr.Opin.Struct.Biol.[構造生物学における現在の意見]、3(4):564~571(1993)に総説される。いくつかの供給源のV遺伝子断片は、ファージディスプレイに用いることができる。Clackson T.ら、Nature[自然]、352(6336):624~628(1991)では、免疫化マウスの脾臓に由来するV遺伝子の小ランダムコンビナトリアルライブラリーから様々な抗オキサゾロン抗体が単離される。免疫されていないヒトドナーに由来するV遺伝子のレパートリーを構築し、基本的にMarks JD.ら、J.Mol.Biol.[分子生物学ジャーナル]、222(3):581~597(1991)、又はGriffith AD.ら、EMBO J.[EMBO会誌]12(2):725~734(1993)に記載される技術に従って、様々な抗原(自己抗原を含む)に対する抗体を単離することができる。さらに、米国特許第5565332号及び第5573905号を参照する。
【0143】
上記に記載されるように、さらに、当該技術分野で公知の方法で、インビトロで活性化されたB細胞によってヒト抗体を生成することができる。
【0144】
当該技術分野で公知の様々な技術(ファージディスプレイライブラリーを含む)を用いてヒト抗体を産生することができる。Hoogenboom HR.ら、J.Mol.Biol.[分子生物学ジャーナル]、227(2):381~388(1991)、Marks JD.ら、J.Mol.Biol.[分子生物学ジャーナル]、222(3):581~597(1991)を参照する。Coleら及びBoernerらの技術も、ヒトモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy[モノクローナル抗体と癌療法]、Coleら、Alan Liss、Inc.[アランリス社]、1985、第77ページ、及びBoerner P.ら、J.Immunol.[免疫学会誌]、147(1):86~95(1991))」の作製に用いることができる。
【0145】
多重特異性抗体
多重特異性抗体は、2種類又はそれ以上の異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒト抗体又はヒト化抗体である(例えば、少なくとも2種類の抗原に対して結合特異性を有する二重特異性抗体である)。例えば、結合特異性のうちの1つは、a5~1タンパク質に対するものであってよく、もう1つは、他のいずれかの抗原に対するものであってよい。1つの好ましい実施例によれば、他の抗原は、細胞表面タンパク質又は受容体もしくは受容体サブユニットである。例えば、細胞表面タンパク質は、ナチュラルキラー(NK)細胞受容体であってよい。よって、1つの実施例によれば、本発明の二重特異性抗体は、CD73及び例えば、第2の細胞表面受容体の両方に結合できる。
【0146】
二重特異性抗体を作製するための適切な方法は、当該技術分野で公知である。例えば、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖ペアの共発現に基づくものであり、この2つの重鎖が異なる特異性を有する(Milstein Cら、Nature[自然]、305(5934):537~540(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダム組み合わせにより、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種の異なる抗体分子の混合物を産生する可能性があるが、そのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有する。一般的に、親和性クロマトグラフィーステップによって正しい分子の精製を行う。類似の方法は、当該技術分野で、例えば、WO93/08829及びTraunecker A.ら、EMBO J.[EMBO会誌]、10(12):3655~3659(1991)に開示されている。
【0147】
所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)は、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合することができる。ヒンジ、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインに融合することが好ましい。好ましくは、これらの融合物のうちの少なくとも1種には、軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)が存在する。免疫グロブリン重鎖融合物及び(必要があれば)免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、単独の発現ベクターに挿入され、適切な宿主生物に同時トランスフェクトされる。二重特異性抗体を生成するさらなる詳細については、例えば、Suresh MR.ら、Methods Enzymol.[酵素学方法]、121:210~228(1986)を参照する。
【0148】
また、二重特異性抗体断片を組換え細胞培養物から直接作製し、単離するための様々な技術も開示されている。例えば、ロイシンジッパーを用いて二重特異性抗体を産生する(Kostelny SA.ら、J.Immunol.[免免疫学会誌]、148(5):1547~1553(1992))。Fos及びJunタンパク質に由来するロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合により2つの異なる抗体のFab’部分に連結する。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元させて単量体を形成し、次いで再度酸化して抗体ヘテロ二量体を形成する。この方法は、抗体ホモ二量体の産生に用いることもできる。Hollinger P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA[米国科学アカデミー紀要]、90(14):6444~6448(1993)に記載された「二重抗体」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替メカニズムを提供する。この断片は、リンカーによってVLに連結されたVHを含み、このリンカーがあまりに短いため、同一鎖において2つのドメインがペアになることができない。よって、1つの断片のVH及びVLドメインは、別の断片の相補的なVL及びVHドメインとペアになることにより、2つの抗原結合部位を形成する。さらに、一本鎖Fv(sFv)二量体を用いて二重特異性抗体断片を作製するための別の方法が報告されている。Gruber M.ら、J.Immunol.[免疫学会誌]、152(11):5368~5374(1994)を参照する。
【0149】
2つ以上の結合価を有する抗体が考慮される。例えば、三重特異性抗体を作製することができる(Tutt A.ら、J.Immunol.[免疫学会誌]、147(1)60~69(1991))。
【0150】
ヘテロ抱合抗体
ヘテロ抱合抗体は、2つの共有結合的に連結された抗体からなる。例えば、このような抗体は、望ましくない細胞に対して免疫系細胞を標的にし、HIV感染の治療に用いられることが提案されている。合成タンパク質化学における公知の方法(架橋剤に関する方法を含む)を用いてインビトロでこれらの抗体を作製することができることが考慮される。例えば、ジスルフィド結合交換反応を用いるか又はチオエーテル結合を形成することによって免疫毒素を構築することができる。このような目的のための適切な試薬の例は、イミノチオレート(iminothiolate)、メチル-4-メルカプトブチルイミデート(methyl-4-mercaptobutyrimidate)、及び当該技術分野で公知のものを含む。
【0151】
エフェクター機能操作
エフェクター機能に関して、例えば、癌の治療における抗体の有効性を高めるように、本明細書で提供される抗体を修飾することが望ましい。例えば、1つ以上のシステイン残基をFc領域に導入することにより、該領域において鎖間ジスルフィド結合を形成することができる。このように生成されたホモ二量体抗体は、改善された内在化能力及び/又は高まった補体媒介性細胞死滅及び抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有することができる。Caron PC.ら、J.Exp.Med.[実験医学雑誌]、176(4):1191~1195(1992)及びShopes B.、J.Immunol.[免疫学会誌]、148(9):2918~2922(1992)を参照する。さらに、当該技術分野で公知のヘテロ二官能性架橋剤を用いて、高まった抗腫瘍活性を有するホモ二量体抗体を作製することができる。代替可能に、抗体は、二重Fc領域を有するように操作されることにより、高まった補体溶解性及びADCC能力を有することができる。例えば、Stevenson GT.ら、Anticancer Drug Des.[抗癌薬物設計]、3(4):219~230(1989)を参照する。
【0152】
FcR結合を改善するように、Fc領域配列における突然変異又は変化を行ってよい(例えば、FcγR、FcRn)。1つの実施例によれば、本発明の抗体は、天然IgG又は親抗体と比較して、ADCC、CDC及び改善されたFcRn結合からなる群から選択される少なくとも1つの変化したエフェクター機能を有する。いくつかの有用な特異的突然変異の例は、例えば、Shields RL.ら、J.Biol.Chem.[生物化学ジャーナル]、276(6):6591~6604(2001)、Presta、LG.ら、Biochem.Soc.Trans.[生化学協会報告]30(4):487~490(2002)、及びWO00/42072に記載されている。
【0153】
1つの実施例によれば、Fc受容体の突然変異は、Fc領域の238、239、246、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、332、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438又は439からなる群から選択される少なくとも1つの位置の置換であり、Fc領域における残基の番号は、EUナンバリングシステムに従うものである。いくつかの実施例では、Fc受容体の突然変異は、D265A置換である。いくつかの実施例では、Fc受容体の突然変異は、N297 A置換である。さらに適切な突然変異は、当該技術分野で公知のものであり、例えば、米国特許第7332581号に示されるものである。
【0154】
免疫抱合体
本発明はまた、細胞傷害性薬物(例えば化学療法剤)、毒素(例えば、細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒又はこれらの断片)、又は放射性同位元素(すなわち、放射性抱合体)に抱合された抗体又はその変異体もしくは突然変異体を含む免疫抱合体に関する。
【0155】
使用可能な酵素活性毒及びその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacaamericana)タンパク質(PAPI、PAPII及びPAP-S)、ニガウリ(momordicacharantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecenes)を含む。様々な放射性核種は、放射性抱合抗体の産生に用いることができる。例は、212Bi、131I、131In、90Y、及び186Reを含む。このような免疫抱合体の生成に有用な例示的な化学療法剤は、本明細書の別の箇所に記載されているものを含む。
【0156】
いくつかの実施例では、本発明の抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、メイタンシン(maytansine)、メイタンシノイド(maytansinoid)又はカリケアミシン(calicheamicin)に抱合される。いくつかの実施例では、本発明の抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、メイタンシノイドDM1に抱合される。
【0157】
抗体及び細胞傷害性薬物の抱合体は、様々な二官能性タンパク質カップリング剤(例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP))、イミノチオラン(IT)、イミドエステル二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾウイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を用いて作製される。例えば、Vitetta ES.ら、Science[科学]、238(4830):1098~1104(1987)に記載されるようにリシン免疫毒素を作製することができる。炭素-14-で標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドを抗体に抱合するための例示的なキレート剤である。WO 94/11026を参照する。
【0158】
いくつかの実施例では、本発明の抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、腫瘍の前標的化のために「受容体」(例えば、ストレプトアビジン)に抱合することができ、抗体-受容体抱合体を患者に投与し、続いて除去剤を用いて血液循環から結合していない抱合体を除去し、次いで細胞傷害性薬物(例えば、放射性ヌクレオチド)に抱合されている「リガンド」(例えば、アビジン)を投与する。
【0159】
共有結合的修飾
抗CD73抗体、その変異体、突然変異体及び断片の共有結合的修飾は、本開示の範囲内に含まれる。1つのタイプの共有結合的修飾は、ポリペプチドの標的アミノ酸残基を、ポリペプチドの選択された側鎖又はN末端もしくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることを含む。二官能性薬剤による誘導体化は、例えば、ポリペプチドを水不溶性支持基質又は表面に架橋して抗体を精製する方法において有用であり、その逆のためにも有用である。一般的な架橋剤は、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシコハク酸イミドエステル(例えば、4-アジドサリチル酸とのエステル)、ホモ二官能性イミドエステル(ジスクシンイミジルエステルを含み、例えば、3,3’-ジチオビス(スクシンイミジル-プロピオネート))、二官能性マレイミド(例えば、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタン)、及び薬剤(メチル-3-[(p-アジドフェニル)-ジチオ]プロピオイミデート)を含む。
【0160】
他の修飾には、グルタミニル及びアスパラギニル残基のそれぞれ対応するグルタミル及びアスパルチル残基への脱アミド化、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル又はスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(Proteins:Structure and Molecular Properties[タンパク質:構造及び分子特性]、Thomas E.Creighton, W.H.Freeman&Co.[W.H.フリーマン社]、San Francisco[サンフランシスコ]、1983、第79~86ページ)、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。
【0161】
ポリペプチドの別のタイプの共有結合的修飾は、当該技術分野で公知の方法(例えば、米国特許第4640835号、第4496689号、第4301144号、第4670417号、第4791192号又は第4179337号に説明される方法)で、ポリペプチドを様々な非タンパク質性重合体の1つ、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール又はポリオキシアルキレンに連結することを含む。
【0162】
キメラ分子
別の異種性ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合するポリペプチド(例えば、イムノアドヘシン又はペプチボディー)を含むキメラ分子を形成することに有利であれば、本発明の抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は修飾されてもよい。
【0163】
1つの実施例では、このようなキメラ分子は、ポリペプチドとタンパク質形質導入ドメインとの融合物を含み、該タンパク質形質導入ドメインは、ポリペプチドを、様々な組織へ、より具体的には、血液脳関門を通って標的化送達するものであり、例えば、ヒト免疫不全ウイルスTATタンパク質のタンパク質形質導入ドメインを用いる(Schwarze SR.ら、Science[科学]285(5433):1569~1572(1999))。
【0164】
いくつかの実施例では、このようなキメラ分子は、ポリペプチドと、抗タグ抗体が選択可能的に結合するエピトープを提供するタグポリペプチドとの融合物を含む。エピトープタグは、一般的に、ポリペプチドのアミノ末端又はカルボキシル末端に配置される。このようなエピトープタグ型のポリペプチドの存在は、該タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグを提供することにより、抗タグ抗体又は該エピトープタグに結合する別のタイプの親和性基質を用いて親和性精製によってポリペプチドを容易に精製することができる。様々なタグポリペプチド及びそれらの各抗体は、当該技術分野で公知である。例は、ポリ-ヒスチジン(poly-His)又はポリ-ヒスチジン-グリシン(poly-His-gly)タグ、インフルエンザHAタグポリペプチド及びその抗体12CA5(Fieldら、Mol.Cell.Biol.、[分子細胞生物学雑誌]、8(5):2159~2165(1988))、c-mycタグ及びその8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体(Evan GI.ら、Mol.Cell.Biol.[分子細胞生物学雑誌]、5(12):3610~3616(1985))、並びに単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体(Paborsky LRら、Protein Eng.、[タンパク質工学]、3(6):547~553(1990))を含む。他のタグポリペプチドは、Flag-ペプチド(Hopp TPら、Bio/Technology[バイオテクノロジー]、6:1204~1210(1988))、KT3エピトープペプチド(Martin GA.、Science[科学]、255(5041):192~194(1992))、α-チュブリンエピトープペプチド(Skinner MP.ら、J.Biol.Chem.[生物化学ジャーナル]、266(9):15163~15166(1991))、及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ(Lutz-Freyermuth C.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA[米国科学アカデミー紀要]、87(16):6393~6397(1990))を含む。
【0165】
代替の実施例では、キメラ分子は、ポリペプチドと免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定の領域との融合物を含んでよい。二価形態のキメラ分子(例えば、「イムノアドヘシン」)について、このような融合物は、IgG分子のFc領域に対するものであってよい。本発明のIg融合物は、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の代わりに、ヒトの残基94~243、残基33~53又は残基33~52の前後又はこれらのみを含むポリペプチドを含む。1つの特に好ましい実施例では、免疫グロブリン融合物は、IgG1分子のヒンジ、CH2及びCH3、又はヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を含む。免疫グロブリン融合物の産生については、当該技術分野で公知であり、例えば、米国特許第5428130号を参照する。
【0166】
免疫リポソーム
また、本発明の抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は免疫リポソームとして製剤化することができる。抗体を含有するリポゾームは、Epstein DA.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA[米国科学アカデミー紀要]、82(11):3688~3692(1985)、及びHwang KJ.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA[米国科学アカデミー紀要]、77(7):4030~4034(1980)、並びに米国特許第4485045号及び第4544545号に記載されるような当該技術分野で公知の方法によって作製される。米国特許第5013556号には、血液循環時間が延長したリポゾームが開示されている。
【0167】
特に有用なリポゾームは、逆相蒸発法によって、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEG由来のホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いて生成することができる。リポゾームを、規定の孔径を有するフィルターに通して押し出して、所望の直径を有するリポゾームが生成される本開示の抗体のFab’断片は、Martin FJ.ら、J.Biol.Chem.[生物化学ジャーナル]、257(1):286~288(1982)に記載されるように、ジスルフィド結合交換反応によりリポゾームに抱合することができる。また、リポゾーム内には、抗腫瘍剤、増殖阻害剤又は化学療法剤(例えば、ドキソルビシン(doxorubicin))が任意選択に含有されてよい。Gabizon A.ら、J.Natl.Cancer Inst.[アメリカ国立癌研究所雑誌]、81(19):1484~1488(1989)を参照する。
【0168】
抗CD73抗体、その変異体もしくは突然変異体を用いる治療
開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物を被験者(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することにより、CD73発現、CD73過剰発現又は異常CD73機能に関連する疾患、障害又は臨床症状を治療することができる。例えば、CD73発現に関連する癌は、例えば、リンパ腫、腎臓癌、肺癌、結腸癌、肝臓癌、胃癌、原発性浸出性リンパ腫、骨肉腫及び非ホジキンリンパ腫であってよいが、それらに限定されない。CD73発現に関連する疾患、障害又は臨床症状の別の例としては、特発性肺線維症を含む線維症であってよい。いくつかの実施例では、本発明は、被験者において癌又は線維症を治療するための薬物の製造における本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又は変異体/突然変異体(又はこれらの断片)の用途を提供する。いくつかの実施例では、治療対象の被験者は、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコなど)である。いくつかの実施例では、被験者は、ヒトである。いくつかの実施例では、受験者は、臨床患者、臨床試験ボランティア、実験動物などである。いくつかの実施例では、被験者は、癌又は線維症に罹っている疑いがあるか又はそのリスクがある。
【0169】
いくつかの実施例では、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物を被験者(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することにより、CD73発現に関連する癌の癌再現又は再発を治療することができる。
【0170】
いくつかの実施例では、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物を被験者(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することにより、CD73発現に関連する難治性癌又は耐性癌を治療することができる。
【0171】
いくつかの実施例では、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物を被験者(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することにより、CD73発現に関連する癌の補助療法を提供することができる。
【0172】
いくつかの実施例では、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物を被験者(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することにより、CD73発現に関連する癌の維持療法を提供することができる。
【0173】
いくつかの実施例では、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物を被験者(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することにより、CD73発現に関連する浸潤性癌を治療することができる。
【0174】
いくつかの実施例では、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物を被験者(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することにより、CD73発現に関連する非浸潤性癌を治療することができる。
【0175】
いくつかの実施例では、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物を被験者(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することにより、CD73発現に関連する癌に罹っていると診断された被験者の無増悪生存期間を増加させることができる。
【0176】
いくつかの実施例では、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片を用いて治療されたCD73発現に関連する癌は、多剤耐性(MDR)又は薬物感受性であってよい。癌の例は、癌、リンパ腫、芽腫、肉腫、血液癌及び白血病を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施例では、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片を用いて治療されたCD73発現に関連する癌は、結腸直腸癌、卵巣癌、胃癌、胆嚢癌、白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、前立腺癌、黒色腫、乳癌、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、膀胱癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、膵臓癌、膠腫、頭頸部癌、甲状腺癌、B-細胞急性リンパ球性白血病、髄芽腫、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍及び口腔扁平上皮癌を含むが、それらに限定されない。別の実施例では、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片を用いて治療されたCD73発現に関連する癌は、血液(又は造血組織)癌、膀胱癌、脳癌、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌TNBC)、中枢及び末梢神経系癌、子宮頸癌、結腸癌、頭頸部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(小細胞肺癌を含む)、食道癌、胆嚢癌、消化管癌、尿生殖器管癌、リンパ系造血器腫瘍、骨髄細胞系列造血器腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、直腸癌、胃癌、前立腺癌、皮膚癌(扁平上皮癌を含む)及び甲状腺癌を含むが、それらに限定されない。
【0177】
いくつかの実施例では、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片を用いて治療されたCD73発現に関連する癌は、血液癌であってよい。依然として別の態様では、血液癌は、白血病、骨髄腫又はリンパ腫から選択され、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、有毛細胞白血病、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、ホジキンリンパ腫、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、非ホジキンリンパ腫原発性縦隔B細胞リンパ腫(NHL PMBCL)、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、孤立性骨髄腫、限界性骨髄腫、髄外骨髄腫、小リンパ球性リンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫及び大B細胞リンパ腫を含むが、それらに限定されない。リンパ系の例示的な造血器腫瘍は、白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫及びバーキットリンパ腫を含むが、それらに限定されない。骨髄細胞系列造血器腫瘍は、急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群及び前骨髄球性白血病、線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉系由来腫瘍を含むが、それらに限定されない。
【0178】
他の実施例では、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片を用いて治療されたCD73発現に関連する癌は、脳癌又は中枢神経系癌であってよい。中枢及び末梢神経系腫瘍は、星細胞腫、神経芽細胞腫、膠腫及び神経鞘腫を含むが、それらに限定されない。他の例示的な脳癌又は中枢神経系癌は、膠腫、髄芽腫、原始神経外胚葉性腫瘍(PNET)、聴神経腫瘍、膠腫、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、CNSリンパ腫、原始神経外胚葉性腫瘍、頭蓋咽頭腫、脊索腫、髄芽腫、中枢神経芽細胞腫、中枢神経細胞腫、松果体細胞腫、松果体芽腫(pineoblastoma)、非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍、軟骨肉腫、軟骨腫、脈絡叢癌(choroid plexus carcinoma)、脈絡叢乳頭腫、頭蓋咽頭腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍、神経節細胞腫、胚細胞腫瘍、血管芽腫、血管外皮腫及び転移性脳腫瘍を含む。さらに別の態様では、膠腫は、上衣腫、星細胞腫、乏突起膠腫及び乏突起星細胞腫から選択される。さらに別の態様では、膠腫は、若年性毛様細胞性星細胞腫、上衣下巨細胞性星細胞腫、神経節膠腫、上衣下腫、多形黄色星細胞腫(pleomorphic xanthoastrocytoma)、退形成星細胞腫瘍、多形性膠芽細胞腫、脳幹部膠腫、乏突起膠腫、上衣腫、乏突起星細胞腫、毛様細胞性星細胞腫、線維形成性乳児星細胞腫、上衣下巨細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫、混合性神経膠腫、視神経膠腫、大脳膠腫症(gliomatosis cerebri)、多巣性神経膠腫(multifocal gliomatous tumor)、多中心性多形性膠芽細胞腫(multicentric glioblastoma multiforme tumor)、神経節細胞腫及び神経節膠腫から選択される。
【0179】
開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片を用いて治療されたCD73発現に関連する他の例示的な腫瘍は、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎児性腫瘍、腎芽腫、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、骨肉腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽腫、黒色腫、奇形癌、色素性乾皮症(xenoderoma pigmentosum)、角化棘細胞腫(keratoctanthoma)、甲状腺濾胞癌及びカポジ肉腫を含むが、それらに限定されない。
【0180】
癌(例えば、黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌TNBC)、胃癌、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、非ホジキンリンパ腫原発性縦隔B細胞リンパ腫(NHL PMBCL)、中皮腫、卵巣癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌)、食道癌、鼻咽頭癌(NPC)、胆道癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌)又は異常なCD73機能を示す他の疾患のいずれかのための多くの診断方法及びこれらの疾患の臨床的基準は、当該技術分野で公知である。このような方法は、例えば、免疫組織化学法、PCR、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)を含むが、それらに限定されない。異常なCD73活性又は発現のための診断方法に関するさらなる詳細は、当該技術分野で記載されている。
【0181】
開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、静脈内、筋肉内又は皮下を含む任意の適切な経路により投与されてよい。いくつかの実施例では、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、非経口投与により投与されてよい。「非経口」とは、静脈内、皮下及び筋肉内投与を意味する。
【0182】
いくつかの実施例では、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、少なくとも1種の薬剤(例えば、第2、第3又は第4の薬剤)と組み合わせて投与されてよい。該少なくとも1種の薬剤は、癌又は線維症(特発性肺線維症を含む)を治療する公知の任意の適切な薬剤であってよい。
【0183】
様々な実施例では、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、癌治療に用いられる少なくとも1種の薬剤と組み合わせて投与されてよい。様々な実施例では、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、癌治療に用いられる少なくとも1種の薬剤(例えば、オキサリプラチン、ロイコボリン、フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン、パクリタキセル(蛋白結合パクリタキセル(例えば、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセルであるが、それに限定されず、「アルブミン結合パクリタキセル(nab-paclitaxel)」と呼ばれる場合がある)、又はそれらの組み合わせ)と組み合わせて投与されてよい。
【0184】
癌治療に用いられる少なくとも1種の薬剤の別の例は、化学療法剤、免疫治療剤、癌ワクチン、抗血管新生剤、サイトカイン、ホルモン療法、遺伝子療法、生物療法及び放射線療法を含むが、それらに限定されない。例えば、癌治療に関して公知の少なくとも1種の薬剤は、公知の細胞阻害性又は細胞傷害性又は抗癌剤(例えば抗腫瘍剤)、増殖阻害剤、細胞傷害性薬物又は化学療法剤(例えば、ドセタキセル(docetaxel)、ゲフィチニブ(gefitinib)、FOLFIRI(イリノテカン(irchtecan)、5-フルオロウラシル及びフロリン酸(leucovorin))、イリノテカン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ベバズマブ(bevacizumab)(抗VEGF抗体)、FOLFOX-4、注入投与のフルオロウラシル、ロイコボリン(leucovorin)、並びにオキサリプラチン(oxaliplatin)、アファチニブ(afatinib)、ゲムシタビン(gemcitabine)、カペシタビン(capecitabine)、ペメトレキセド(pemetrexed)、チバンチニブ(tivantinib)、エベロリムス(everolimus)、CpG-ODN、ラパマイシン(rapamycin)、レナリドミド(lenalidomide)、ベムラフェニブ(vemurafenib)、エンドスタチン、ラパチニブ(lapatinib)、PX-866、Imprime PGG及びirlotinibmであってよい。
【0185】
いくつかの実施例では、抗CD73抗体及び/又は変異体/突然変異体(又はこれらの断片)は、別の薬剤に抱合される。例えば、該少なくとも1種の薬剤は、ウラシルマスタード(uracil mustard)、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(melphalan)、クロラムブシル(chlorambucil)、ピポプロマン(pipobroman)、トリエチレンメラミン(triethylenemelamine)、トリエチレンチオホスホラミン(triethylenethiophosphoramine)、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン(lomustine)、ストレプトゾシン、ダカルバジン(dacarbazine)、テモゾロミド(temozolomide)、チオテパ(thiotepa)、アルトレタミン(altretamine)、メトトレキサート(methotrexate)、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビンリン酸エステル(fludarabine phosphate)、ペントスタチン(pentostatin)、ボルテゾミブ(bortezomib)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ブレオマイシン(bleomycin)、アクチノマイシンD、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン、エピルビシン(epirubicin)、デキサメタゾン、クロファラビン、クラドリビン、pemextresed、イダルビシン(idarubicin)、パクリタキセル、ドセタキセル、イキサベピロン(ixabepilone)、ミトラマイシン(mithramycin)、ノギテカン(topotecan)、イリノテカン、ペントスタチン(deoxycoformycin)、マイトマイシン-C、L-アスパラギナーゼ、インターフェロン、エトポシド(etoposide)、テニポシド17α-エチニルエストラジオール(ethinylestradiol)、ジエチルスチルベストロール(diethylstilbestrol)、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン(dromostanolone propionate)、テストラクトン、酢酸メゲストロール、タモキシフェン(tamoxifen)、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン(triamcinolone)、クロロトリアニセン(chlorotrianisene)、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン(estramustine)、酢酸メドロキシプロゲステロン(medroxyprogesteroneacetate)、ロイプロリド、フルタミド(flutamide)、トレミフェン、ゴセレリン、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素(hydroxyurea)、アムサクリン、プロカルバジン(procarbazine)、ミトタン(mitotane)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、レバミゾール(levamisole)、ビノレルビン(navelbene)、アナストロゾール(anastrazole)、レトロゾール(letrazole)、カペシタビン、レロキサフィン(reloxafine)、ドロロキサフィン(droloxafine)、ヘキサメチルメラミン(hexamethylmelamine)、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標))、イレッサ(iressa)(ゲフィチニブ(gefinitib)、Zd1839)、XELODA(登録商標)(カペシタビン)、Tarceva(登録商標)(エルロチニブ(erlotinib)、アザシチジン(5-アザシチジン、5-AzaC)、テモゾロミド(Temodar(登録商標))、ゲムシタビン(例えば、GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビンHCl))及びバソスタチン(vasostatin)を含む。
【0186】
様々な実施例では、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、少なくとも1種の薬剤と組み合わせて投与されてよく、該少なくとも1種の薬剤は、例えば、チオテパ及びCYTOXAN(R)シクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン(improsulfan)及びピポスルファン(piposulfan)などのスルホン酸アルキル;ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン(carboquone)、メツレドーパ(meturedopa)及びウレドーパ(uredopa)などのアジリジン類(aziridines);アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホラミン(triethiylenethiophosphoramide)及びトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を含む、エチレンイミン及びメチルアメラミン類(methylamelamines);アセトゲニン類(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));δ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(R));β-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体ノギテカン(HYCAMTIN(R))、CPT-Il(イリノテカン、CAMPTOSAR(R))、アセチルカンプトテシン(acetylcamptothecin)、スコポレチン(scopolectin)及び9-アミノカンプトテシン(aaminocamptothecin )を含む);ブリオスタチン;callystatin;CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);ポドフィロトキシン(podophyllotoxin);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);テニポシド;クリプトフィシン類(cryptophycins)(具体的にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin)(合成類似体、KW-2189及びCBl-TMLを含む);エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosf amide)、ウラシルマスタードなどのメクロレタミン類;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン(nimustine)及びラニムスチン(ranimnustine)などのニトロスレアス類(nitrosureas);エネジイン抗生物質などの抗生物質類(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンγI1及びカリケアミシンωI1である(例えば、Nicolaou KC.ら、Angew Chem Int.Ed.Engl.「応用化学英文国際版」、33:183~186(1994)を参照));dynemicin Aを含むdynemicin;エスペラマイシン(esperamicin);ネオカルチノスタチン発光団(neocarzinostatin chromophore)及び関連色素蛋白エネジイン抗生物質発光団、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン(azaserine)、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、アクチノマイシンC、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン(chromomycinis)、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(R)、モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポゾーム注射(DOXIL(R))及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類(olivomycins)、ペプロマイシン(peplomycin)、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン(puromycin)、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン(streptonigrin)、ストレプトゾシン(streptozocin)、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス(ubenimex)、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR(R))、テガフール(tegafur)(UFTORAL(R))、カペシタビン(XELODA(R))、エポチロン、及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗物質;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)などの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン(ancitabine)、アザシチジン、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール(carmofur)、シタラビン、ジデオキシウリジン(dideoxyuridine)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸リプレニッシャー;アセグラトン(aceglatone);アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン;bestrabucil;ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシン及びアンサマイトシン(ansamitocins)などのメイタンシノイド;ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン(pirarubicin);ロソキサントロン(losoxantrone);2-エチルヒドラジド(ethylhydrazide);プロカルバジン;PSK(R)多糖類複合体(JHS自然製品社(JHS Natural Products)、ユージーン(Eugene)、オレゴン州(OR));ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリン(verracurin)A、ロリデン(roridin)A及びアングイデン(anguidine));ウレタン(urethane);ビンデシン(ELDISEME(R)、FILDESIN(R));ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポプロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;パクリタキセル(TAXOL(R))、パクリタキセル(ABRAXANE(TM))アルブミン設計のナノ粒子製剤、及びドセタキセル(doxetaxel)(TAXOTERE(R))などのタキソイド類;クロラムブシル(chloranbucil);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチンなどのプラチナ類似体;ビンブラスチン(VELBAN(R));プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド(ifosf amide);ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(R));オキサリプラチン;ロイコボリン;ビノレルビン(NAVELBINE(R));ノバントロン(novantrone);エダトラキセート(edatrexate);ダウノルビシン(daunomycin);アミノプテリン;イバンドロナート(ibandronate);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド類;上述したものの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体;並びに、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾロンの併用療法の略記号)、及びFOLFOX(5-FUとロイコボリンが組み合わされるオキサリプラチン(ELOXATIN(TM))による治療計画の略記号)などの、上述したものの2種以上の組み合わせを含む。
【0187】
様々な実施例では、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、少なくとも1種の薬剤と組み合わせて投与されてよく、該少なくとも1種の薬剤は、血管新生阻害剤、例えば、アンギオスタチン(プラスミノゲン断片)、抗血管新生アンチトロンビンIII、Angiozyme、ABT-627、Bay 12-9566、ベネフィン(Benefin)、ベバズマブ、BMS-275291、軟骨由来阻害剤(CDI)、CAI、CD59補体断片、CEP-7055、Col 3、コンブレタスタチン(combretastatin)A-4、エンドスタチン(コラーゲンXVIII断片)、フィブロネクチン断片、gro-β、ハロフジノン(halofuginone)、ヘパリナーゼ(heparinases)、ヘパリン六糖断片、HMV833、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、IM-862、インターフェロンα/β/γ、インターフェロン誘導タンパク質(IP-10)、インターロイキン-12、Kringle 5(プラスミノゲン断片)、マリマスタット(Marimastat)、金属プロテイナーゼ阻害剤(TIMP)、2-メトキシエストラジオール(2-methoxyestradiol)、MMI 270(CGS 27023A)、MoAb IMC-1C11、ネオバスタット(Neovastat)、NM-3、panzem、PI-88、胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤、プラスミノゲンアクチベータ阻害剤、血小板第4因子(PF4)、プリノマスタット(prinomastat)、プロラクチン16kD断片、プロリフェリン関連タンパク質(PRP)、PTK 787/ZK 222594、レチノイド、ソリマスタット(solimastat)、スクアラミン、SS 3304、SU 5416、SU6668、SU11248、テトラヒドロコルチゾール-S、テトラチオモリブデイト、サリドマイド、トロンボスポンジン-1(TSP-1)、TNP-470、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-b)、バスキュロスタチン(vasculostatin)、バソスタチン(カルレティキュリン断片)、ZD6126、ZD 6474、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)、及びビスホスホネートであるが、それらに限定されない。
【0188】
様々な実施例では、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、少なくとも1種の薬剤と組み合わせて投与されてよく、該少なくとも1種の薬剤は、シスプラチン及びドキソルビシンなどのDNA相互作用剤;エトポシドなどのトポイソメラーゼII阻害剤;CPT-11又はノギテカンなどのトポイソメラーゼI阻害剤;天然に存在するか又は合成されたパクリタキセル、ドセタキセル又はエポチロン(例えばイキサベピロン)などのチューブリン相互作用剤;タモキシフェンなどのホルモン剤;5-フルオロウラシルなどのチミジル酸合成酵素阻害剤(thymidilate synthase inhibitor);メトトレキサート、イレッサ及びOSI-774などの他のチロシンキナーゼ阻害剤などの代謝拮抗物質;血管新生阻害剤;BTK阻害剤、SYK阻害剤、ITK抑制剤、PI3-キナーゼ阻害剤、FLT3阻害剤、EGF阻害剤;PAK阻害剤、VEGF阻害剤;CDK阻害剤;SRC阻害剤;c-Kit阻害剤;Her1/2阻害剤及び成長因子受容体に対するモノクローナル抗体、例えばセツキシマブ(erbitux)(EGF)及びハーセプチン(herceptin)(Her2)及び他のプロテインキナーゼ調節剤から選択される。これらの薬剤は、ATRA、EZH2阻害剤、DNMT阻害剤、コルチコステロイド、IDH1阻害剤、IDH2阻害剤及びビタミンCのような分化剤と組み合わせて使用されてよい。
【0189】
様々な実施例では、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、癌細胞においてDNA殺傷効果を増強する小分子(PARP阻害剤、MDM2阻害剤、NAMPT阻害剤及びHSP90阻害剤を含む)と組み合わせて投与されてよい。
【0190】
様々な実施例では、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、1種以上の免疫治療剤(拮抗薬、抗体及び免疫調節剤を含み、HERCEPTINS、RITUXANS、OVAREX(登録商標)、PANOREX@、BEC2、IMC-C225、VITAMIN、CAMPATH@I/H、Smart MI95、LYMPHOCIDE(登録商標)、Smart I D10及びONCOLYM(登録商標)、リツキシマブ、ゲムツズマブ(gemtuzumab)又はトラスツズマブ(trastuzumab)を含むが、それらに限定されない)と組み合わせて投与されてよい。他の実施例では、免疫治療剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、LAG3、TIGIT、TIM3、CEACAM-1、ガレクチン-1、ガレクチン-9、BLTA、CD69、CD113、GPR56、2B4、CD48、PD1H、LAIR1、TIM-1、TIM-4、VISTA、GARP、CD73、CD39、A2AR、B7-1、B7-2、4-1BBL、CD137、CD28、CD28H、GITR、GITRL、ICOS、ICOS-L、OX40、OX40L、CD70、CD27、CD40、DR3を標的にする抗体又はこのような標的に対する抗体の組み合わせであってよい。いくつかの実施例では、免疫治療剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、LAG3、TIGIT、TIM3、CEACAM-1、ガレクチン-1、ガレクチン-9、BLTA、CD69、CD113、GPR56、2B4、CD48、PD1H、LAIR1、TIM-1、TIM-4、VISTA、GARP、CD73、CD39、A2AR又はそれらの組み合わせを標的にする拮抗薬、B7-1、B7-2、4-1BBL、CD137、CD28、CD28H、GITR、GITRL、ICOS、ICOS-L、OX40、OX40L、CD70、CD27、CD40、DR3又はそれらの組み合わせを標的にする作用薬、又は前述の拮抗薬及び作用薬の組み合わせであってよい。
【0191】
様々な実施例では、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、免疫細胞又は癌細胞上の細胞表面分子(EGFR、HER2、CD38、メソテリン、CD33、CD37、CD19、CD20、CD3、CD123、CD70、BAFFR、CD4、CD8、CD56、CD38を含むが、それらに限定されない)を標的にする抗体又はこのような抗体の組み合わせと組み合わせて投与されてよい。いくつかの実施例では、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、免疫細胞又は癌細胞上の細胞表面分子(EGFR、HER2を含むが、それらに限定されない)を標的にする抗体又はこのような抗体の組み合わせと組み合わせて投与されてよい。
【0192】
様々な実施例では、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、少なくとも1種の化学療法剤(例えば、アルキル化剤、代謝拮抗物質、プラチナ製剤、パクリタキセル、抗ホルモン剤、トポイソメラーゼ阻害剤、チューブリン薬剤、シグナル伝達阻害剤(例えば、キナーゼ阻害剤)及び他の化学療法剤)と組み合わせて投与されてよい。「化学療法剤」は、癌治療に有用な化学化合物である。化学療法剤の例は、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン(improsulfan)及びピポスルファン(piposulfan)などのスルホン酸アルキル;ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン(carboquone)、メツレドーパ(meturedopa)及びウレドーパ(uredopa)などのアジリジン類(aziridines);アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホラミン(triethiylenethiophosphoramide)及びトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を含む、エチレンイミン及びメチルアメラミン類(methylamelamines);アセトゲニン類(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));δ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));β-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体ノギテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン(acetylcamptothecin)、スコポレチン(scopolectin)及び9-アミノカンプトテシン(aminocamptothecin)を含む);ブリオスタチン;callystatin;CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);ポドフィロトキシン(podophyllotoxin);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);テニポシド;クリプトフィシン類(cryptophycins)(具体的にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin)(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosf amide)、ウラシルマスタードなどのメクロレタミン類;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン(nimustine)及びラニムスチン(ranimnustine)などのニトロスレアス類(nitrosureas);エネジイン抗生物質などの抗生物質類(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンγ1I及びカリケアミシンωI1(例えば、Nicolaou KCら、Angew Chem Int.Ed.Engl.「応用化学英文国際版」、33:183~186(1994)を参照));dynemicin Aを含むdynemicin;エスペラマイシン(esperamicin);並びにネオカルチノスタチン発光団(neocarzinostatin chromophore)及び関連色素蛋白エネジイン抗生物質発光団、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン(azaserine)、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、アクチノマイシンC、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン(chromomycinis)、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射(DOXIL(登録商標))、ドキソルビシンリポゾームTLC D-99(MYOCET(登録商標))、ペグ化ドキソルビシンリポソーム(CAELYX(登録商標))及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類(olivomycins)、ペプロマイシン(peplomycin)、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン(puromycin)、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン(streptonigrin)、ストレプトゾシン(streptozocin)、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス(ubenimex)、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(tegafur)(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗物質;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)などの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン(ancitabine)、アザシチジン、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール(carmofur)、シタラビン、ジデオキシウリジン(dideoxyuridine)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸リプレニッシャー;アセグラトン(aceglatone);アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン;bestrabucil;ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシン及びアンサマイトシン(ansamitocins)などのメイタンシノイド;ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン(pirarubicin);ロソキサントロン(losoxantrone);2-エチルヒドラジド(ethylhydrazide);プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS自然製品社(JHS Natural Products)、ユージーン(Eugene)、オレゴン州(Oreg));ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリン(verracurin)A、ロリデン(roridin)A及びアングイデン(anguidine));ウレタン(urethan)、ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポプロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))アルブミン設計のナノ粒子製剤、及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))などのタキソイド類;クロラムブシル(chloranbucil);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチンなどのプラチナ剤;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標))及びビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))を含む、チューブリンの重合による微小管の形成を予防するビンカ類(vincas);エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン(novantrone);エダトラキセート(edatrexate);ダウノルビシン(daunomycin);アミノプテリン;イバンドロナート(ibandronate);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);ベキサロテン(bexarotene)(TARGRETIN(登録商標))を含む、レチノイン酸などのレチノイド;クロドロン酸(例えば、BONEFOSO(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、エチドロン酸(etidronate)(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(pamidronate)(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(tiludronate)(SKELID(登録商標))又はリセドロネート(ACTONEL(登録商標))などのビスホスホネート;トロキサシタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常細胞増殖に関連するシグナル伝達経路中の遺伝子(例えば、PKC-α、Raf、H-Ras及び上皮成長因子受容体(EGF-R))の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド;ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));BAY439006(ソ
ラフェニブ、バイエル社(Bayer));SU-11248(ファイザー社(Pfizer));ペリホシン(perifosine)、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ(celecoxib)又はエトリコキシブ(etoricoxib))、プロテアソーム阻害剤(例えば、PS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI-779;チピファルニブ(ipifarnib)(R11577);sorafenib、ABT510;オブリマーセンナトリウム(oblimersen sodium)(GENASENSE(登録商標))などのBcl-2阻害剤;ピクサントロン(pixantrone);EGFR阻害剤(以下の定義を参照);チロシンキナーゼ阻害剤(以下の定義を参照);上述したものの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体;並びに、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾロンの併用療法の略記号)、及びFOLFOX(5-FUとロイコボリンが組み合わされるオキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標))による治療計画の略記号)などの、上述したものの2種以上の組み合わせを含む。
【0193】
本明細書において、化学療法剤は、癌の増殖を促進するホルモンの作用を調節し、減少させ、遮断するか又は阻害するための「抗ホルモン剤」又は「内分泌治療剤」を含む。それら自体は、ホルモンである可能性があり、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標))、4-ヒドロキシタモキシフェン、トレミフェン(FARESTON(登録商標))、ヨードキシフェン(idoxifene)、ドロロキシフェン(droloxifene)、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifene)、及びSERM3などの選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)を含む、混合作用薬/拮抗薬プロファイルを有する抗エストロゲン;フルベストラント(fulvestrant)(FASLODEX(登録商標))及びEM800などの作用薬特性を有さない純粋な抗エストロゲン(このような薬剤は、エストロゲン受容体(ER)の二量化をブロックし、DNA結合を阻害し、ERの代謝回転を増加させ、及び/又はERレベルを抑制することができる);フォルメスタン(formestane)及びエキセメスタン(AROMASIN(登録商標))などのステロイド性アロマターゼ阻害剤、及びアナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))及びアミノグルテチミドなどの非ステロイド性アロマターゼ阻害剤を含むアロマターゼ阻害剤、並びにボロゾール(vorozole)(RIVISOR(登録商標))、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、ファドロゾール(fadrozole)及び4(5)-イミダゾールを含む他のアロマターゼ阻害剤;ロイプロリド(LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標))、ゴセレリン、ブセレリン(buserelin)及びトリプテレリン(tripterelin)を含む黄体形成ホルモン放出ホルモン作用薬;酢酸メゲストロール及び酢酸メドロキシプロゲステロンなどのプロゲスチン、ジエチルスチルベストロール及びプレマリン(premarin)などのエストロゲン、並びにフルオキシメステロン、全トランス型レチノイン酸及びフェンレチニドなどのアンドロゲン/レチノイドを含む性ステロイド;オナプリストン(onapristone);抗プロゲステロン;エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(ERD);フルタミド、ニルタミド(nilutamide)及びビカルタミド(bicalutamide)などの抗アンドロゲン;上述したものの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体;及び、上述したものの2種以上の組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0194】
本明細書において、「タキソイド」は、微小管解重合機能を阻害する化学療法剤である。その例は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))アルブミン設計のナノ粒子製剤、及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))を含む。好ましいタキソイドは、パクリタキセルである。
【0195】
本明細書で用いられる用語「EGFR阻害剤」は、EGFRに結合するか又は他の方式でEGFRに直接的に相互作用してそのシグナル伝達活性を防止するか又は低下させる化合物を意味し、「EGFR拮抗薬」と代替可能に呼ばれる場合がある。このような薬剤の例は、EGFRに結合した抗体及び小分子を含む。EGFRに結合した抗体の例は、MAb 579(ATCC CRL HB 8506)、MAb 455(ATCC CRL HB 8507)、MAb 225(ATCC CRL 8508)、MAb 528(ATCC CRL 8509)(米国特許第4943533号、Mendelsohnら)及びその変異体を含み、例えば、キメラ化225(C225又はセツキシマブ(Cetuximab);ERBUTIX(登録商標)及び再成形ヒト225(H225)(WO96/40210、イムクローンシステムズ社(Imclone Systems Inc.)を参照);IMC-11F8(完全ヒトEGFR標的抗体(イムクローン社(Imclone)))、II型突然変異体EGFRに結合する抗体(米国特許第5212290号);米国特許第5891996号に記載されている、EGFRに結合したヒト化及びキメラ抗体、及び、ABX-EGF又はパニツムマブなどの、EGFRに結合したヒト抗体(WO 98/50433を参照、(アブジェニクス社(Abgenix)/アムジェン社(Amgen)));EMD 55900(Stragliotto G.ら、Eur.J.Cancer[欧州癌雑誌]32A(4):636~640(1996));EGFR結合についてEGF及びTGF-αの両方と競合する、EGFRに対するEMD7200(マツズマブ(matuzumab))ヒト化EGFR抗体(EMD社/メルク社(Merck));ヒトEGFR抗体、HuMax-EGFR(GenMab社);E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3及びE7.6.3と呼ばれ、かつ米国特許第6235883号に記載された完全ヒト抗体;MDX-447(メダレックス社(Medarex Inc));及び、mAb 806又はヒト化mAb 806(Johns TG.ら、J.Biol.Chem.[生物化学ジャーナル]279(29):30375~30384(2004))を含む。抗EGFR抗体は、細胞傷害性薬物に抱合して、免疫抱合体を生成することができる(例えば、メルクパテントGmbH(Merck Patent GmbH)のEP659439A2を参照)。EGFR拮抗薬は、小分子を含み、例えば、米国特許第5616582号、第5457105号、第5475001号、第5654307号、第5679683号、第6084095号、第6265410号、第6455534号、第6521620号、第6596726号、第6713484号、第5770599号、第6140332号、第5866572号、第6399602号、第6344459号、第6602863号、第6391874号、第6344455号、第5760041号、第6002008号及び第5747498号、並びにPCT公開WO 98/14451、WO 98/50038、WO 99/09016及びWO 99/24037に記載されている化合物である。特定の小分子EGFR拮抗薬は、OSI-774(CP-358774、エルロチニブ、TARCEVA(登録商標)ジーネンテック社(Genentech)/OSI製薬会社(OSI Pharmaceuticals));PD 183805(CI 1033、2-プロペンアミド、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-(4-モルホリノ)プロポキシル]-6-キナゾリン]-二塩酸塩、ファイザー社(Pfizer Inc.));ZD1839、ゲフィチニブ(イレッサ(IRESSA)J)4-(3′-クロロ-4′-フルオロアニリン)-7-メトキシ-6-(3-モルフォリノプロポキシル)キナゾリン、アストラゼネカ社(AstraZeneca));ZM 105180((6-アミノ-4-(3-メチルフェニル-アミノ)-キナゾリン、ゼネカ社(Zeneca));BIBX-1382(N8-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-N2-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、ベーリンガーインゲルハイム社(Boehringer Ingelheim);PKI-166((R)-4-[4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-イル]-フェノール);(R)-6-(4-ヒドロキシフェニル)-4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン);CL-387785(N-[4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6-キナゾリン]-2-ブチルアミド);EKB-569(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-3-シアノ-7-エトキシ-6-キノリニル]-4-(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド)(ワイス社(Wyeth));AG1478(サージャン社(Sugen));AG1571(SU 5271、サージャン社(Sugen));ラパチニブ(GW 572016又はN-[3-クロロ-4-[(3フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]6[5[[[2メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]-2-フラニル]-4-アミノキナゾリンなどの二重EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤、グラクソ・スミスクライン社(Glaxo-SmithKline))を含む。
【0196】
「チロシンキナーゼ阻害剤」は、チロシンキナーゼ、例えばHER受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害する分子である。このような阻害剤の例は、前述の段落に記載されたEGFR-標的薬物;小分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えばTAK165(武田薬品会社(Takeda)から入手可能である);CP-724、714(ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択性阻害剤(ファイザー社(Pfizer)及びOSI会社);二重HER阻害剤、例えばEGFRに優先的に結合するがHER2及びEGFRの両者の過剰発現細胞を阻害するEKB-569(ワイス社(Wyeth)から入手可能である);ラパチニブ(GW572016、グラクソ・スミスクライン社(Glaxo-SmithKline)から入手可能で、経口HER2及びチロシンキナーゼ阻害剤である);PKI-166(ノバルティス社(Novartis))から入手可能である);pan-HER阻害剤、例えばカネルチニブ(canertinib)(CI-1033、ファルマシア社(Pharmacia));Raf-1阻害剤、例えばRaf-1シグナル伝達を阻害するアンチセンス試薬ISIS-5132(ISIS製薬社(ISIS Pharmaceuticals)から入手可能である);非HER標的TK阻害剤、例えばイマチニブメシル酸塩(Imatinib mesylate)(グリーベック(GLEEVAC)J)(グラクソ社(Glaxo)から入手可能である);MAPK細胞外制御キナーゼI阻害剤CI-1040(ファルマシア社(Pharmacia)から入手可能である);キナゾリン類、例えばPD 153035、4-(3-クロロアニリン)キナゾリン;ピリドピリミジン類;ピリミドピリミジン類;ピロロピリミジン類、例えばCGP 59326、CGP 60261及びCGP 62706;ピラゾロピリミジン類、例えば4-(フェニルアミノ)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン;クルクミン(ディフェルロイルメタン、4,5-ビス(4-フルオロアニリン)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含有するチルホスチン(tyrphostines);PD-0183805(ワーナー・ランバート社(Warner-Lamber));アンチセンス分子(例えば、HER-コード核酸に結合したアンチセンス分子);キノキサリン類(米国特許第5804396号);チルホスチン(tryphostins)(米国特許第5804396号);ZD6474(アストラゼネカ社(Astra Zeneca));PTK-787(ノバルティス(Novartis)/シェーリング社(Schering AG));pan-HER阻害剤、例えばCI-1033(ファイザー社(Pfizer));Affinitac(ISIS 3521、Isis社/リリー会社(Lilly));イマチニブメシル酸塩(グリーベック(Gleevac)、ノバルティス(Novartis));PKI 166(ノバルティス(Novartis));GW2016(グラクソ・スミスクライン社(Glaxo SmithKline));CI-1033(ファイザー社(Pfizer));EKB-569(ワイス社(Wyeth));Semaxinib(サージャン社(Sugen));ZD6474(アストラゼネカ(AstraZeneca));PTK-787(ノバルティス(Novartis)/シェーリング社(Schering AG));INC-1C11(イムクローン社(Imclone))を含むか、又は米国特許第5804396号、国際特許公開WO 99/09016(アメリカン・サイアナミッド社(American Cyanamid))、WO 98/43960(アメリカン・サイアナミッド社(American Cyanamid))、WO 97/38983(ワーナー・ランバート社(Warner Lambert))、WO 99/06378(ワーナー・ランバート社(Warner Lambert))、WO 99/06396(ワーナー・ランバート社(Warner Lambert))、WO 96/30347(ファイザー社(Pfizer Inc.))、WO 96/33978(ゼネカ社(Zeneca))、WO 96/3397(ゼネカ社(Zeneca))、WO 96/33980(ゼネカ社(Zeneca))のいずれかに記載されるとおりである。
【0197】
様々な実施例では、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、アクチノマイシンD、カペシタビン、カルボプラチン、シスプラチン、コルヒチン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、メルファラン、メトトレキサート、マイトマイシンC、ミトキサントロン、パクリタキセル、サリドマイド、ノギテカン、ビンブラスチン及びビンクリスチンと組み合わせて投与されてよい。
【0198】
様々な実施例では、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、1種以上の他の療法又は臨床的介入(例えば放射線療法、手術、化学療法及び/又は標的療法)と組み合わせて投与されてよい。いくつかの実施例では、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、開示された癌に対する放射線療法と組み合わせて投与される。
【0199】
いくつかの実施例では、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、手術(例えば、開示された抗CD73抗体を投与する前に手術を行ってもよく、開示された抗CD73抗体を投与した後に手術を行ってもよく、及び/又は開示された抗CD73抗体を投与すると同時又はほぼ同時に手術を行ってもよい)と組み合わせて投与されてよい。
【0200】
治療対象の適応症及び当業者がよく知っている投与に関連する因子に依存し、本明細書で提供される抗CD73抗体、変異体、突然変異体又はこれらの断片は、有効な用量、例えば毒性及び副作用を最小化すると同時に該適応症を効果的に治療する用量で投与される。一般的には、最大用量、すなわち合理的な医学的判断に基づく最高安全用量の本開示の薬理学的薬剤(単独又は他の治療剤と組み合わせる)を使用することが好ましい。しかしながら、当業者であれば理解されるように、医学的理由、心理的理由又は事実上他の任意の理由で、患者は、より低い用量又は耐容可能な用量を主張する。いくつかの実施例では、有効な用量により、所望の応答は、疾患又は症状の進行、例えば癌の進行を阻害することでなる。所望の応答は、疾患の進行を一時的に緩徐化するだけである可能性があるが、より好ましくは、疾患の進行を恒久的に停止させることである。所望の応答は、当業者に知られている、任意の特定の疾患に対する一般的な診断方法によりモニターすることができる。疾患又は症状の治療に対する所望の応答は、疾患又は症状の発作を遅延させるか又は予防するかことであってもよい。
【0201】
開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物の毒性及び治療効果、例えば、LD50(50%の集団を致死させる用量)及びED50(50%の患者集団に対して治療上有効な用量)を決定するために、標準的な医薬手順により細胞培養物又は実験動物において決定することができる。毒性を示す用量と治療効果を示す用量との比率は、治療指数であり、比率LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す化合物が望ましい場合がある。毒性及び副作用を示す、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物を使用することができるが、影響される組織の部位をこのような化合物の標的にする送達システムを設計することにより、感染されていない細胞に対する潜在的な損傷を最小化して、副作用を減少させることに注意すべきである。
【0202】
細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータを用いて、ヒトでの使用のための用量の範囲を決定し得る。開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物の用量は、ほとんど又は全く毒性のないED50を含む循環濃度範囲内にあることが好ましい。用量は、該範囲内で、採用される剤形及び使用される投与経路に応じて異なる。任意の開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物に対して、最初に細胞培養アッセイから治療上有効な量を評価することができる。動物モデルにおいて用量を決定することにより、細胞培養実験で決定された、IC50を含む循環血漿濃度範囲に達することができる。該情報は、ヒトに対する有効な用量をより正確に決定するために用いることができる。例えば高速液体クロマトグラフィーにより血漿中のレベルを測定することができる。
【0203】
当該技術分野で公知の又はYamanaka K.ら、Microbiol.Immunol.[微生物免疫]45(7):507~514(2001)に記載された様々な実験動物モデル(例えば、SCIDマウスモデル又はヒト腫瘍移植片を有するヌードマウス)を使用することにより、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物の抗癌活性を決定することができる。
【0204】
開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、所望の治療又は予防活性に関して、ヒトに用いられる前に、インビトロで試験され、その後にインビボで試験されてよい。例えば、特定の治療計画の投与が指示されたか否かを決定するためのインビトロアッセイには、患者の組織試料を培養中に増殖させ、治療計画に曝露するか又は他の方法により治療計画を投与し、かつこのような治療計画の該組織試料に対する作用を観察するインビトロ細胞培養アッセイが含まれる。
【0205】
接触した細胞の低いレベルの増殖又は生存は、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物が被験者において選択された障害を効果的に治療することを示すことができる。代替可能に、腫瘍細胞株又は悪性細胞株(患者由来の培養細胞ではない)を用いて治療計画をスクリーニングしてよい。当該技術分野で公知の多くのアッセイを用いてこのような生存及び/又は増殖を評価することができ、例えば、3H-チミジンの取り込みを測定することにより、細胞を直接計数することにより、又は、公知の遺伝子、例えば原癌遺伝子又は細胞周期マーカーの転写活性の変化を検出することにより、細胞増殖を測定することができ、トリパンブルー染色法により細胞の活力を評価することができ、また、形態の変化などに基づいて分化を目視で評価することができる。
【0206】
療法に用いられる、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、ヒトで試験される前に、適切な動物モデルシステム(ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギなどを含むが、それらに限定されない)において試験されてよい。例えば、全ての内容が引用により本明細書に組み込まれるHann B.ら、Curr.Opin.Cell Biol.[細胞生物学における新観点]13(6):778~784(2001)に記載されるように、当該技術分野で公知でかつ広く使用される癌の主要動物モデルは、マウスを含む。
【0207】
また、当業者の公知の任意のアッセイは、開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物が1種以上の上述した疾患又は障害に関連する症状を治療、予防、管理又は改善する予防及び/又は治療上の有効性を評価するために使用することができる。
【0208】
当業者は、本明細書に記載された障害を治療するか又は予防するための適切な1日の用量を容易に決定することができる。開示された癌の治療について、典型的な用量は、例えば、0.001μg~1000μgの範囲であってよいが、この例示的な範囲より下又は上の用量は、本開示の範囲内である。1日の用量は、全体重の約0.1μg/kg~約100mg/kg(例えば、約5μg/kg、約10μg/kg、約100μg/kg、約500μg/kg、約1mg/kg、約50mg/kg、又は前述の数値のいずれか2つによって定義される範囲)、好ましくは、全体重の約0.3μg/kg~約10mg/kg(例えば、約0.5μg/kg、約1μg/kg、約50μg/kg、約150μg/kg、約300μg/kg、約750μg/kg、約1.5mg/kg、約5mg/kg、又は前述の数値のいずれか2つによって定義される範囲)、より好ましくは、全体重の約1μg/kg~1mg/kg(例えば、約3μg/kg、約15μg/kg、約75μg/kg、約300μg/kg、約900μg/kg、又は前述の数値のいずれか2つによって定義される範囲)、さらにより好ましくは、1日あたり全体重の約0.5~10mg/kg(例えば、約2mg/kg、約4mg/kg、約7mg/kg、約9mg/kg、又は前述の数値のいずれか2つによって定義される範囲(前述の数値間のいずれかの範囲を含む))であってよい。上述したように、治療される患者の定期的な評価によって治療又は予防上の有効性をモニターすることができる。数日又はそれ以上にわたる繰り返し投与については、症状に応じて、治療は、疾患の病状の望ましい阻害を生じるまで繰り返される。しかしながら、他の用量計画が有用であることもあり、本開示の範囲内である。望ましい用量は、組成物の単回ボーラス投与、組成物の複数回ボーラス投与又は組成物の連続注入投与によって送達することができる。
【0209】
抗CD73抗体、変異体、突然変異体又はこれらの断片を含む医薬組成物は、1日1回、2回、3回又は4回で投与されてよい。組成物はまた、1日1回より少ない頻度、例えば、1週間に6回、1週間に5回、1週間に4回、1週間に3回、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回又は6ヶ月に1回で投与されてよい。組成物はまた、徐放性製剤、例えば、一定期間にわたり使用するために組成物を徐々に放出し、組成物のより少ない頻度、例えば、1ヶ月に1回、2~6ヶ月に1回、1年に1回又は単回投与を可能にする移植片で投与されてもよい。徐放デバイス(例えば、ペレット(pellets)、ナノ粒子、微小粒子、ナノスフェア、ミクロスフェアなど)は、注射によって投与されてよい。
【0210】
抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)は、1日1回の用量で投与されてもよく、合計の1日用量は、1日2回、3回又は4回の分割用量で投与されてもよい。組成物はまた、1日1回より少ない頻度、例えば、1週間に6回、1週間に5回、1週間に4回、1週間に3回、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回又は6ヶ月に1回で投与されてよい。抗体(又はその断片)はまた、徐放性製剤、例えば、一定期間にわたり使用するために組成物を徐々に放出し、組成物のより少ない頻度、例えば、1ヶ月に1回、2~6ヶ月に1回、1年に1回又は単回投与を可能にする移植片で投与されてもよい。徐放デバイス(例えば、ペレット(pellets)、ナノ粒子、微小粒子、ナノスフェア、ミクロスフェアなど)は、注射によって投与されるか又は様々な位置に手術により移植されてよい。
【0211】
癌治療は、例えば、腫瘍退縮、腫瘍重量又はサイズの縮小、進行時間、生存期間、無増悪生存期間、全奏効率、応答期間、生活の質、タンパク質の発現及び/又は活性によって評価されてよいが、それらに限定されない。例えば、放射線学的画像による応答測定を含む、治療の有効性を決定するための方法を用いることができる。
【0212】
いくつかの実施例では、治療の有効性は、式100-(T/C×100)を用いて算出される腫瘍増殖阻害パーセント(%TGI)として測定され、式中、Tは、治療された腫瘍の平均相対腫瘍体積であり、Cは、治療されなかった腫瘍の平均相対腫瘍体積である。いくつかの実施例では、%TGIは、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%又は95%以上である。いくつかの実施例では、抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体の%TGIは、対照抗CD73抗体の%TGIと同一又はそれ以上、例えば、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍(これらの数値間のいずれかの範囲を含む)、又は対照抗CD73抗体の%TGI約2.7倍以上である。
【0213】
医薬組成物
本発明の開示された抗CD73抗体及び/又は変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)を、投与に適するように適切な担体又は賦形剤を含む医薬組成物に製造することができる。所望の純度を有する抗体(又はその断片)を、任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences[レミングトンの薬科学]第16版、Osol、A.編集(1980))と混合することにより、凍結乾燥された製剤又は水溶液の形態で抗体の適切な医薬組成物を得る。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、用いられる用量と濃度で受容体に対して無毒であり、そして緩衝液(例えば、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸);アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール、メチルパラベン又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール);低分子量(約10残基以下)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む、単糖、二糖及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。例示的な抗体製剤は、引用により本明細書に組み込まれるWO 98/56418に記載されている。皮下投与に適する凍結乾燥された医薬組成物は、WO 97/04801に記載されている。このような凍結乾燥された医薬組成物は、適切な希釈剤により高いタンパク質濃度に再構成されてよく、再構成された製剤が本明細書の治療対象の哺乳動物に皮下投与されてよい。
【0214】
いくつかの実施例では、開示された医薬組成物は、非経口又は静脈内投与に適する。いくつかの実施例では、非経口投与に適する開示された医薬組成物は、所望の被験者の血液などと等張である水性及び非水性製剤であってよく、水性及び非水性減菌懸濁液は、化合物を1つ以上の器官の血液成分を標的にするために設計される懸濁システムを含んでよい。製剤は、単位用量又は多回用量の密封容器(例えばアンプル又はバイアル)にあってよい。即時注入溶液及び懸濁液は、先に説明した種類の滅菌粉末、粒子及び錠剤から製造されてよい。非経口及び静脈内製剤は、選択された注射又は送達システムのタイプと適合するように、ミネラル及び他の材料を含んでよい。
【0215】
非経口投与のための一般的な薬学的に許容される担体は、水、適切な油、塩水、右旋性グルコース(グルコース)水溶液又は関連する糖溶液、及び、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどのグリコールを含む。非経口投与のための溶液は、好ましくは、活性成分の水溶性塩、適切な安定剤及び(必要に応じて)緩衝物質を含み、単独又は組み合わせの抗酸化剤(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はアスコルビン酸)は、適切な安定剤である。クエン酸塩及びEDTAナトリウムは、担体として用いられてよい。また、非経口溶液は、防腐剤、例えば塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン又はプロピルパラベン、又はクロロブタノールを含んでよい。適切な薬物担体は、上記で引用されたRemington[レミングトン]に記載されている。
【0216】
注射可能な製剤は、従来の形式で製造され、液体溶液又は懸濁液として、又は注射前に液体に溶解又は懸濁するのに適する固体形式として、又は乳液として製造され得る。好ましくは、当該技術分野で公知の技術によれば、適切な薬学的に許容される担体及び上述した任意選択の構成成分を用いて注射用減菌懸濁液を製剤化する。
【0217】
様々な方法で非経口投与を行うことができるが、注射器、カテーテル又は類似装置を用いて本明細書に記載された製剤の非経口投与を実現することが好ましい。製剤を全身的に注射することにより、活性薬剤が実質的に血流全体を通して伝達される。
【0218】
また、製剤を局所的に標的位置に注射し、例えば、身体の特定の部分に注射して癌又は線維症を治療することが望ましい。注射による局所投与の利点は、全身が1種以上の活性薬剤(例えば、阻害剤及び/又は治療剤)に曝露することを制限又は回避することである。注意すべきものとして、本発明の文脈において、用語「局所投与」は、領域投与、例えば、該身体領域で機能する血管に送達することにより身体の一部に対する製剤を投与することを含む。局所送達は、直接的、例えば腫瘍内送達であってよい。局所送達は、ほぼ直接的、すなわち病巣内又は腹腔内送達であってもよく、つまり腫瘍又は感染部位に十分に近い領域への送達により、阻害剤が所望の薬理学的活性を示す。したがって、局所送達が望ましい場合、薬物製剤を病巣内、腫瘍内又は腹腔内に送達することが好ましい。
【0219】
いくつかの実施例では、医薬組成物は、単位剤形である。このような形態で、組成物は、適量の活性成分を含む単位剤形に分けられる。単位剤形は、離散量の製剤、例えばバイアル又はアンプル内の凍結乾燥された粉末を含むパッケージ入り製剤であってよい。
【0220】
本明細書の医薬組成物は、治療対象の具体的な適応症に必要な1種以上の活性化合物、好ましくは補体活性を有するが互いに悪い影響を及ぼさない活性化合物をさらに含んでよい。例えば、抗腫瘍剤、増殖阻害剤、細胞傷害性薬物又は化学療法剤をさらに提供することが望ましい。このような分子は、意図する目的のために有効な量で適切に組み合わせて存在する。このような他の薬剤の有効な量は、製剤に存在する抗体の量、疾患もしくは障害もしくは治療のタイプ、及び上記に記載の他の因子に依存する。これらは、一般に、本明細書に記載された同じ用量及び投与経路、又は従来用いられる用量の約1~99%で用いられる。活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術又は界面重合によって製造されたマイクロカプセル、例えば、それぞれコロイド薬物送達系(例えば、リポゾーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションにおけるヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに封入されてよい。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences[レミングトンの薬科学]、第16版、Osol、A.編集(1980)に開示されている。
【0221】
徐放性製剤は製造されてよい。徐放性製剤の適切な例は、拮抗薬を含む固形疎水性重合体の半透過性基質を含み、これらの基質は、成形品の形態、例えば、フィルム又はマイクロカプセルである。徐放性基質の例は、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸及びエチル-L-グルタミン酸の共重合体、非分解性エチレン-ビニル、分解性乳酸-グリコール酸共重合体(例えば、LUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸-グリコール酸共重合体及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能ミクロスフェア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシル酪酸を含む。重合体(例えば、エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸)は、分子を100日にわたり放出することができる一方で、一定のハイドロゲルは、より短い時間でタンパク質を放出する。封入された抗体は、長期間体内に残ると、37℃で水分に曝露した結果として変性するか又は凝集し、その結果として、生物学的活性を失い、免疫原性が変化する可能性を生じうる。安定性のために、関連するメカニズムに応じて合理的な方法を考案することができる。例えば、凝集メカニズムがチオジスルフィド変換による分子間S-S結合形成であることが見出された場合、メルカプト残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、水分含量を調節し、適切な添加剤を使用し、特定の重合体基質組成物を開発することにより安定化させることができる。
【0222】
リポフェクチン(lipofectin)又はリポゾームは、本発明のポリペプチド及び抗体(又はこれらの断片)又は組成物を細胞に送達するために用いることができる。抗体断片が用いられる場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小阻害断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するようにペプチド分子を設計することができる。このようなペプチドは、化学的に合成され、及び/又は組換えDNA技術によって産生される。例えば、Marasco WA.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA[米国科学アカデミー紀要]90(16):7889~7893(1993)を参照する。
【0223】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術又は界面重合によって製造されたマイクロカプセル、例えば、それぞれコロイド薬物送達系(例えば、リポゾーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションにおけるヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに封入されてよい。このような技術は、Remington’s PHARMACEUTICAL SCIENCES[レミングトンの薬科学]に開示されており、前出を参照する。
【0224】
徐放性製剤は製造されてよい。徐放性製剤の適切な例は、抗体(これらの断片)を含む固形疎水性重合体の半透過性基質を含み、これらの基質は、成形品の形態、例えば、フィルム又はマイクロカプセルである。徐放性基質の例は、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸及びエチル-L-グルタミン酸の共重合体、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸共重合体(例えば、LUPRON DEPOT TM(乳酸-グリコール酸共重合体及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能ミクロスフェア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシル基酪酸を含む。重合体(例えば、エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸)は、分子を100日にわたり放出することができる一方で、一定のハイドロゲルは、より短い時間でタンパク質を放出する。封入された抗体は、長期間体内に残ると、37℃で水分に曝露した結果として変性するか又は凝集し、その結果として、生物学的活性を失い、免疫原性が変化する可能性を生じうる。安定性のために、関連するメカニズムに応じて合理的な方法を考案することができる。例えば、凝集メカニズムがチオジスルフィド変換による分子間S-S結合形成であることが見出された場合、メルカプト残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、水分含量を調節し、適切な添加剤を使用し、特定の重合体基質組成物を開発することにより安定化させることができる。
【0225】
いくつかの実施例では、製剤は、本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体を、約0.5mg/mLより高く、約1mg/mLより高く、約2mg/mLより高く、約3mg/mLより高く、約4mg/mLより高く、約5mg/mLより高く、約6mg/mLより高く、約7mg/mLより高く、約8mg/mLより高く、約9mg/mLより高く、約10mg/mLより高く、約11mg/mLより高く、約12mg/mLより高く、約13mg/mLより高く、約14mg/mLより高く、約15mg/mLより高く、約16mg/mLより高く、約17mg/mLより高く、約18mg/mLより高く、約19mg/mLより高く、約20mg/mLより高く、約21mg/mLより高く、約22mg/mLより高く、約23mg/mLより高く、約24mg/mLより高く、約25mg/mLより高く、約26mg/mLより高く、約27mg/mLより高く、約28mg/mLより高く、約29mg/mLより高く、又は約30mg/mLより高い(これらの数値間のいずれの範囲も含む)濃度で含む。
【0226】
開示された抗体を含む製剤は、該抗体又は断片の等電点値と類似しないpH(最終製剤中)を有しべきであり、例えば、製剤のpHが7であれば、pIが8~9又はそれ以上であることが適当である可能性がある。理論に束縛されるものではないが、安定性が改善された最終製剤を提供することができ、例えば、抗体又は断片を溶液中に留まると考えられる。例えば、いくつかの実施例では、pHが4.0~7.0の範囲内の開示された薬物製剤は、1mg/mL~200mg/mLの本開示の抗体及び1~100mMの緩衝液、並びに(a)0.001%~1%の界面活性剤、(b)10mM~500mMの安定剤、(c)10mM~500mMの安定剤及び5mM~500mMの等張化剤、及び/又は(d)5mM~500mMの等張化剤のうちの任意選択の1種以上を含んでよい。適切な緩衝液は、クエン酸塩、グリシン、リン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩及び重炭酸塩を含むが、それらに限定されない。例えば、pHが約6の製剤は、1~50mg/mLの抗体、20mMのL-ヒスチジHCl、240mMのトレハロース及び0.02%のポリソルベート20を含んでよい。代替可能に、pHが約5.5の製剤は、1~50mg/mLの抗体、20mMのクエン酸緩衝液、240mMのスクロース、20mMのアルギニン及び0.02%のポリソルベート20を含んでよい。
【0227】
いくつかの実施例では、抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、クエン酸塩、NaCl、酢酸塩、コハク酸塩、グリシン、ポリソルベート80(Tween 80)又は前述の組み合わせのいずれかを含む緩衝液中において、(例えば、約0.5mg/mLより高く、約1mg/mLより高く、約5mg/mLより高く、約10mg/mLより高く、約15mg/mLより高く、約20mg/mLより高く、又は約25mg/mLより高い(これらの数値間のいずれの範囲も含む)濃度で)製剤化される。いくつかの実施例では、抗CD73抗体及び/又はその変異体は、100mM~150mMのグリシンを含む緩衝液中において、(例えば、約0.5mg/mLより高く、約1mg/mLより高く、約5mg/mLより高く、約10mg/mLより高く、約15mg/mLより高く、約20mg/mLより高く、又は約25mg/mLより高い(これらの数値間のいずれの範囲も含む)濃度で)製剤化される。いくつかの実施例では、抗CD73抗体及び/又はその変異体は、約50mM~約100mMのNaClを含む緩衝液中において製剤化される。いくつかの実施例では、抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、約10mM~約50mMの酢酸塩を含む緩衝液中において、(例えば、約0.5mg/mLより高く、約1mg/mLより高く、約5mg/mLより高く、約10mg/mLより高く、約15mg/mLより高く、約20mg/mLより高く、又は約25mg/mLより高い(これらの数値間のいずれの範囲も含む)濃度で)製剤化される。いくつかの実施例では、抗CD73抗体及び/又はその変異体は、約10mM~約50mMのコハク酸塩を含む緩衝液中において製剤化される。いくつかの実施例では、抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、約0.005%~約0.02%のポリソルベート80を含む緩衝液中において、(例えば、約0.5mg/mLより高く、約1mg/mLより高く、約5mg/mLより高く、約10mg/mLより高く、約15mg/mLより高く、約20mg/mLより高く、又は約25mg/mLより高い(これらの数値間のいずれの範囲も含む)濃度で)製剤化される。いくつかの実施例では、抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、約5.1~5.6の緩衝pHを提供するように、適切な緩衝液中において製剤化される。例えば、抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体は、10mMのクエン酸、100mMのNaCl、100mMのグリシン及び0.01%のポリソルベート80を含む緩衝液中において製剤化され、該製剤は、pH=5.5である。
【0228】
いくつかの実施例では、本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体を(例えば、約0.5mg/mLより高く、約1mg/mLより高く、約5mg/mLより高く、約10mg/mLより高く、約15mg/mLより高く、約20mg/mLより高く、又は約25mg/mLより高い(これらの数値間のいずれの範囲も含む)濃度で)含む製剤(例えば、緩衝液(該緩衝液は10mMのクエン酸、100mMのNaCl、100mMのグリシン及び0.01%のポリソルベート80を含む)を含む製剤であり、該製剤は、pH=5.5である)は、室温(例えば、約20~25℃)で約0.5週間、1.0週間、1.5週間、2.0週間、2.5週間、3.5週間、4.0週間、4.5週間又は5.0週間(これらの数値間のいずれの範囲も含む)で安定である。いくつかの実施例では、本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体を(例えば、約0.5mg/mLより高く、約1mg/mLより高く、約5mg/mLより高く、約10mg/mLより高く、約15mg/mLより高く、約20mg/mLより高く、又は約25mg/mLより高い(これらの数値間のいずれの範囲も含む)濃度で)含む製剤(例えば、緩衝液(該緩衝液は10mMのクエン酸、100mMのNaCl、100mMのグリシン及び0.01%のポリソルベート80を含む)を含む製剤であり、該製剤は、pH=5.5である)は、加速的な条件下で(例えば、約37℃で保存されて)約0.5週間、1.0週間、1.5週間、2.0週間、2.5週間、3.5週間、4.0週間、4.5週間又は5.0週間(これらの数値間のいずれの範囲も含む)で安定である。
【0229】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、物理化学的不安定性に対応する断片化及び凝集の可能性を検出するために、タンパク質安定化研究で周知であり、かつ広く用いられている方法である。いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体を含む製剤は、37℃で1週間後に、SECを用いて測定されると、最初の高分子量種%に対して約1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%、0.4%、0.2%又は0.1%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)未満の高分子量種(HMWS)の増加を示す。いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体を含む製剤は、37℃で2週間後に、SECを用いて測定されると、最初の高分子量種%に対して約2.0%、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%、0.4%、0.2%又は0.1%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)未満の高分子量種の増加を示す。いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体を含む製剤は、37℃で4週間後に、SECを用いて測定されると、最初の高分子量種%に対して約3.3%、3.2%、3.1%、3.0%、2.9%、2.8%、2.7%、2.6%、2.5%、2.4%、2.2%、2.0%、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%、0.4%、0.2%又は0.1%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)未満の高分子量種の増加を示す。
【0230】
いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体を含む製剤は、37℃で1週間後に、SECを用いて測定されると、最初の低分子量種%に対して約1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%、0.4%、0.2%又は0.1%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)未満の低分子量種(LMWS)の増加を示す。いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体を含む製剤は、37℃で2週間後に、SECを用いて測定されると、最初の低分子量種%に対して約2.0%、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%、0.4%、0.2%又は0.1%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)未満の低分子量種の増加を示す。いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体を含む製剤は、37℃で4週間後に、SECを用いて測定されると、最初の低分子量種%に対して約2.4%、2.2%、2.0%、1.8%、1.6%、1.4%、1.2%、1.0%、0.8%、0.6%、0.4%、0.2%又は0.1%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)未満の低分子量種の増加を示す。
【0231】
いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体を含む製剤は、37℃で1週間後に、SECを用いて測定されると、最初の単量体%に対して約0.2%、0.4%、0.6%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%又は3.5%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)以下の単量体の増加を示す。いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体を含む製剤は、37℃で2週間後に、SECを用いて測定されると、最初の単量体%に対して約0.2%、0.4%、0.6%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%又は3.5%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)以下の単量体の増加を示す。いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体を含む製剤は、37℃で2週間後に、SECを用いて測定されると、最初の単量体%に対して約0.2%、0.4%、0.6%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%又は3.5%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)以下の単量体の増加を示す。
【0232】
陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)は、脱アミド化又は酸化などのタンパク質分解現象を検出するために、周知であり、かつ広く用いられる方法である(Moorhouse KG.ら、J.Pharm.Biomed.Anal.[医薬学と生物医学分析雑誌]16(4):593~603(1997))。分解産物は、典型的に、酸性又は塩基性物質と呼ばれる。酸性物質は、CEXの主要ピークより早期に溶離する変異体であり、塩基性物質は、CEXの主要ピークより遅れて溶離する変異体である。いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体を含む製剤の酸性ピーク画分は、CEXを用いて測定されると、37℃で1週間後に、総タンパク質の約7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%又は15%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)以下である。いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体を含む製剤の酸性ピーク画分は、CEXを用いて測定されると、37℃で2週間後に、総タンパク質の約8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%又は18%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)以下である。いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体(又は断片)を含む製剤の酸性ピーク画分は、CEXを用いて測定されると、37℃で2週間後に、総タンパク質の約8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%又は27%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)以下である。
【0233】
いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体(又は断片)を含む製剤の塩基性ピーク画分は、CEXを用いて測定されると、37℃で1週間後に、総タンパク質の約39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%又は46%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)以下である。いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体(又は断片)を含む製剤の塩基性ピーク画分は、CEXを用いて測定されると、37℃で2週間後に、総タンパク質の約39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%又は46%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)以下である。いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体(又は断片)を含む製剤の塩基性ピーク画分は、CEXを用いて測定されると、37℃で4週間後に、総タンパク質の約39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%又は46%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)以下である。
【0234】
いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体(又は断片)を含む製剤の主要ピーク画分は、CEXを用いて測定されると、37℃で1週間後に、総タンパク質の約約32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%又は46%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)以上である。いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体(又は断片)を含む製剤の塩基性ピーク画分は、CEXを用いて測定されると、37℃で2週間後に、総タンパク質の約約32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%又は46%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)以上である。いくつかの実施例では、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL又は25mg/mLの本明細書に記載された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体(又は断片)を含む製剤の塩基性ピーク画分は、CEXを用いて測定されると、37℃で4週間後に、総タンパク質の約約32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%又は46%(これらの数値間のいずれの範囲も含む)以上である。
【0235】
インビボ投与で用いられる製剤は、滅菌でなければならない。これは、例えば、滅菌濾過膜に通す濾過により容易に行われる。
【0236】
抗CD73抗体及びその変異体/突然変異体を用いる診断及びイメージング方法
CD73に特異的に結合する標識された抗CD73抗体、その変異体、突然変異体、断片、並びにその誘導体及び類似体は、CD73の発現、異常な発現及び/又は活性に関連する疾患及び/又は障害を検出し、診断し、又はモニターするための診断目的で用いることができる。例えば、本明細書で開示された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体(又はこれらの断片)は、インサイチュ、インビボ、エクスビボ及びインビトロでの診断アッセイ又はイメージングアッセイに用いることができる。CD73の発現を検出するための方法は、(a)本開示の1種以上の抗体を用いて個体の細胞(例えば、組織)又は体液におけるポリペプチドの発現を測定することと、(b)該遺伝子発現レベルを標準遺伝子発現レベルと比較し、標準発現レベルと比較して測定した遺伝子発現レベルにおける増加又は減少が異常な発現を示すことと、を含む。
【0237】
本明細書で提供されるさらなる実施例は、動物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)におけるCD73の発現又は異常な発現に関連する疾患又は障害の診断方法を含む。この方法は、哺乳動物においてCD73分子を検出することを含む。いくつかの実施例では、診断は、(a)有効な量の標識された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体(又は断片)を哺乳動物に投与することと、(b)標識された抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体(又は断片)を、CD73分子が発現される被験者の部位に優先的に集めるために(そして結合していない標識分子をバックグラウンドレベルまで除去するために)投与後一定期間待つことと、(c)バックグラウンドレベルを決定することと、(d)標識分子を被験者において検出することとを含み、バックグラウンドレベルを超える標識分子の検出は、被験者がCD73の発現又は異常な発現に関連する特定の疾患又は障害に罹っていることを示す。バックグラウンドレベルは、検出された標識分子の量と、特定の系について過去に決定された標準値とを比較することを含む、様々な方法によって決定することができる。
【0238】
本明細書で提供される抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体(又は断片)は、当業者に公知の従来の免疫組織法を用いて生物学的試料におけるタンパク質レベルを測定するために用いることができる(例えば、Jalkanenら、J.Cell.Biol.[細胞生物学雑誌]101:976~985(1985)、Jalkanenら、J.Cell.Biol.[細胞生物学雑誌]105:3087~3096(1987)を参照)。タンパク質遺伝子発現を検出するために有用な他の抗体に基づく方法は、免疫アッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及びラジオイムノアッセイ(RIA)を含む。適切な抗体アッセイ標識は、当該技術分野で公知であり、酵素標識(例えば、グルコースオキシダーゼ);放射性同位元素、例えば、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(115mIn、113mIn、112In、111In)、テクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、サマリウム(153Sm)、ルテチウム(177Lu)、ガドリニウム(159Gd)、プロメチウム(149Pm)、ランタン(140La)、イッテルビウム(175Yb)、ホルミウム(166Ho)、イットリウム(90Y)、スカンジウム(47Sc)、レニウム(186Re、188Re)、プラセオジム(142Pr)、ロジウム(105Rh)、ルテニウム(97Ru);ルミノール;及び蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ローダミン及びビオチン)を含む。
【0239】
当該技術分野で公知の技術は、本明細書で提供される標識された抗体(又はこれらの断片)に適用されてよい。このような技術は、二官能性抱合剤の使用(例えば、米国特許第5756065号、第5714631号、第5696239号、第5652361号、第5505931号、第5489425号、第5435990号、第5428139号、第5342604号、第5274119号、第4994560号、及び第5808003号を参照)を含むが、それらに限定されない。
【0240】
代替可能に又は追加的に、細胞における、CD73をコードする核酸又はmRNAのレベルを測定することができ、例えば、CD73をコードする核酸又はその相補性配列に対応する核酸に基づくプローブを用いる蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、(FISH、1998年10月に公開されたWO 98/45479を参照)、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング又はポリメラーゼ鎖反応(PCR)技術、例えば、リアルタイム定量PCR(RT-PCR)である。また、例えば、抗体に基づくアッセイ(例えば、1990年6月12日に発行された米国特許第4933294号、1991年4月18日に発行されたWO 91/05264、1995年3月28日に発行された米国特許第5401638号、及びSiasら、J.Immunol.Methods[免疫方法雑誌]132:73~80(1990)も参照)を用いて、生体液(例えば、血清)におけるシェッド抗原を測定することによってCD73の過剰発現を研究することができる。上記アッセイの他に、様々なインビボ及びエクスビボアッセイが当業者に利用可能である。例えば、哺乳動物の体内の細胞を、検出可能な標識(例えば、放射性同位元素)で任意選択に標識されている抗体に曝露することができ、そして例えば、放射能について外部走査することによって、又は抗体に以前曝露された哺乳動物から取得した試料(例えば、バイオプシー又は他の生物学的試料)を分析することによって抗体の細胞への結合を評価することができる。
【0241】
製品及びキット
様々な実施例では、本発明は、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体又はこれらの断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物、並びに(a)癌を治療する既知の少なくとも1種の薬剤、又は(b)癌を治療するための説明書を含むキットに関する。
【0242】
別の実施例では、開示された抗CD73抗体、その変異体、突然変異体及び/又は断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、癌を治療する既知の少なくとも1種の薬剤と共に製剤化される。
【0243】
また別の実施例では、開示された抗CD73抗体、その変異体、突然変異体及び/又は断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物は、癌を治療する既知の少なくとも1種の薬剤と共に包装される。
【0244】
別の実施例では、癌を治療する既知の1種の薬剤は、ホルモン治療剤である。また別の実施例では、ホルモン治療剤は、ロイプロリド、タモキシフェン、ラロキシフェン、メゲストロール、フルベストラント、トリプテレリン(triptorelin)、メドロキシプロゲステロン、レトロゾール、アナストロゾール(anastrozole)、エキセメスタン、ビカルタミド、ゴセレリン、シソーラス(histrelin)、フルオキシメステロン、エストラムスチン、フルタミド、トレミフェン、デガレリクス(degarelix)、ニルタミド、アバレリクス(abarelix)及びテストラクトン、又はその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物又は多形体からなる群から選択される1種以上である。
【0245】
別の実施例では、癌を治療する既知の少なくとも1種の薬剤は、化学療法剤である。また別の実施例では、該化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗物質剤、抗腫瘍抗生物質剤、有糸分裂阻害剤、mTOR阻害剤又は他の化学療法剤からなる群から選択される1種以上である。
【0246】
別の実施例では、該抗腫瘍抗生物質剤は、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、アクチノマイシンD、エピルビシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ペントスタチン及びバルルビシン(valrubicin)、又はその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物又は多形体からなる群から選択される1種以上である。
【0247】
別の実施例では、該代謝拮抗物質剤は、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、カペシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、ペメトレキセド、フルダラビン、ネララビン(nelarabine)、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン(decitabine)、プララトレキサート(pralatrexate)、フロクスウリジン、メトトレキサート及びチオグアニン、又はその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物又は多形体からなる群から選択される1種以上である。
【0248】
別の実施例では、該アルキル化剤は、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン、ブスルファン、ロムスチン、ダカルバジン、オキサリプラチン、イホスファミド、メクロレタミン、テモゾロミド、チオテパ、ベンダムスチン(bendamustine)及びストレプトゾシン、又はその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物又は多形体からなる群から選択される1種以上である。
【0249】
別の実施例では、該有糸分裂阻害剤は、イリノテカン、ノギテカン、ルビテカン(rubitecan)、カバジタキセル(cabazitaxel)、ドセタキセル、パクリタキセル、エトポシド(etopside)、ビンクリスチン、イキサベピロン、ビノレルビン、ビンブラスチン及びテニポシド、又はその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物又は多形体からなる群から選択される1種以上である。
【0250】
別の実施例では、該mTOR阻害剤は、エベロリムス、シロリムス(siroliumus)及びテムシロリムス(temsirolimus)、又はその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物又は多形体からなる群から選択される1種以上である。
【0251】
別の実施例では、キットは、開示された抗CD73抗体、その変異体、突然変異体及び/又は断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物と手術との組み合わせを示す説明書をさらに含む。また別の実施例では、キットは、開示された抗CD73抗体、その変異体、突然変異体及び/又は断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物と手術との組み合わせを示す説明書をさらに含み、この説明書は、少なくとも1種の化合物を投与する前に手術を行うことを示す。また別の実施例では、キットは、開示された抗CD73抗体、その変異体、突然変異体及び/又は断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物と手術との組み合わせを示す説明書をさらに含み、この説明書は、開示された抗CD73抗体、その変異体、突然変異体及び/又は断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物を投与した後に手術を行うことを示す。さらに別の実施例では、キットは、開示された抗CD73抗体、その変異体、突然変異体及び/又は断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物と手術との組み合わせを示す説明書をさらに含み、この説明書は、開示された抗CD73抗体、その変異体、突然変異体及び/又は断片、及び/又は医薬組成物を投与した後に手術を行うことを示し、そしてこの説明書は、術前の腫瘍縮小を実現するために、開示された抗CD73抗体、その変異体、突然変異体及び/又は断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物を投与することを示す。また別の実施例では、キットは、化合物と手術との組み合わせを示す説明書をさらに含み、この説明書は、開示された抗CD73抗体、その変異体、突然変異体及び/又は断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物を投与した後に手術を行うことを示し、そしてこの説明書は、開示された抗CD73抗体、その変異体、突然変異体及び/又は断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物を投与するほぼ同時に手術を行うことを示す。
【0252】
別の実施例では、キットは、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は本明細書で提供される医薬組成物と放射治療との組み合わせを示す説明書をさらに含む。また別の実施例では、キットは、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は医薬組成物と放射治療との組み合わせを示す説明書をさらに含み、この説明書は、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は医薬組成物を投与する前に放射治療を行うことを示す。また別の実施例では、キットは、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は医薬組成物と放射治療との組み合わせを示す説明書をさらに含み、この説明書は、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は医薬組成物を投与するステップの後に放射治療を行うことを示す。さらに別の実施例では、キットは、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は医薬組成物と放射治療との組み合わせを示す説明書をさらに含み、この説明書は、開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は医薬組成物を投与するステップとほぼ同時に放射治療を行うことを示す。
【0253】
別の実施例では、キットは、1種以上の用量の剤形をさらに含み、各用量には、治療上有効な量の開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は医薬組成物、並びに少なくとも1種の薬剤が含まれる。また別の実施例では、キットは、1種以上の用量の剤形をさらに含み、各用量には、治療上有効な量の開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は医薬組成物、並びに少なくとも1種の薬剤が含まれ、そして各用量の開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は医薬組成物は、癌を治療する既知の少なくとも1種の薬剤と共に製剤化される。さらに別の実施例では、キットは、1種以上の用量の剤形をさらに含み、各用量には、治療上有効な量の開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は医薬組成物、並びに少なくとも1種の薬剤が含まれ、そして各用量の開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は医薬組成物は、癌を治療する既知の少なくとも1種の薬剤と共に包装される。
【0254】
別の実施例では、キットは、1種以上の用量の剤形をさらに含み、各用量には、治療上有効な量の開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は医薬組成物(静脈内投与のために製剤化される)、並びに少なくとも1種の薬剤(経口投与及び/又は静脈内投与のために製剤化される)が含まれる。また別の実施例では、キットは、1種以上の用量の剤形をさらに含み、各用量には、治療上有効な量の開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は医薬組成物(静脈内投与のために製剤化される)、並びに少なくとも1種の薬剤(経口投与のために製剤化される)が含まれる。さらに別の実施例では、キットは、1種以上の用量の剤形をさらに含み、各用量には、治療上有効な量の開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は医薬組成物(静脈内投与のために製剤化される)、並びに少なくとも1種の薬剤(静脈内投与のために製剤化される)が含まれる。
【0255】
開示された抗CD73抗体、変異体、突然変異体及び/又はこれらの断片、及び/又は医薬組成物は、2種以上の構成成分(活性又は非活性成分、担体、希釈剤などであり得る)と、かつ患者又は薬物を患者に投与する人によって実際の剤形を製造するために用いられる説明書とを示すキットとして容易に提供することができる。このようなキットは、その中に含まれる全ての必要な材料及び成分を有してよく、或いはこのキットは、患者又は薬物を患者に投与する人によって独立して取得しなければならない材料又は構成成分を使用又は製造するために用いられる説明書を含んでよい。別の実施例では、キットは、患者への単位用量の投与に役立つ任意選択の構成成分、例えば、粉末形態を再構成するためのバイアル、注射用の注射器、カスタマイズされたIV送達系、インヘイラーなどを含んでよい。また、キットは、組成物を製造と投与するための説明書を含んでよい。該キットは、1つの被験者に用いられる単回使用単位用量として製造されてよく、特定の被験者に用いられる数回使用単位用量(一定用量で又は療法の進展に伴って単一化合物の効力が変化することができる)として製造されてよく、或いは該キットは、複数の患者への投与に適する数回投与用量(「バルク包装」)を含んでよい。キットの構成成分は、ボール箱、ブリスターパック、ボトル、チューブなどに入られてよい。
【0256】
別の実施例では、開示されたキットは、毎日投与計画に応じて包装されてよい(例えば、カード型包装(packaged on cards)、投与カード型包装(packaged with dosing cards)、ブリスター型包装又はブロー成形プラスチック型包装など)。このような包装により、製品の販売を促進し、かつ薬物計画に対する患者の順守性を向上させる。このような包装により、患者の困惑を減らすことができる。本開示は、使用説明書をさらに含むキットを特徴とする。
【0257】
別の実施例では、本発明は、本発明の医薬組成物の1種以上の成分が充填された1つ以上の容器を含む、薬物包装又はキットをさらに提供する。こような容器に関連するのは、薬物又は生物製品の製造、使用又は販売を管理する政府機関によって規定された形態のラベルであってよく、該ラベルは、製造、使用又は販売機関が人への投与を許可することを反映するものである。
【0258】
様々な実施例では、開示されたキットは、他の構成成分と共に包装され、共に製剤化され、及び/又は共に送達される化合物及び/又は製品をさらに含んでよい。例えば、薬物製造業者、薬物再販売業者、医師、調剤薬局(compounding shop)又は調剤師は、開示された化合物及び/又は製品、及び患者に送達される別の構成成分を含むキットを提供することができる。
【0259】
開示されたキットは、開示された製造方法、開示された用途又は治療方法及び/又は開示された組成物と共に使用することができることが考慮される。
【0260】
様々な目的のキット、例えば、任意選択に製品と組み合わせて患者においてCD73を単離又は検出するためのキットをさらに提供する。CD73を単離と精製するために、キットは、ビーズ(例えば、SEPHAROSE(登録商標)ビーズ)とカップリングする、本明細書で提供される抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体(又は断片)を含んでよい。例えば、ELISA又はウエスタンブロッティングにおいてCD73をインビトロで検出と定量するための、抗体(又はその断片)を含むキットを提供することができる。製品と同様に、キットは、容器と、容器上の又は容器に関連するラベル又は添付文書を含む。例えば、容器には、少なくとも1種の本明細書で提供される抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体(又は断片)を含む組成物が格納される。含まれ得る別の容器は、例えば、希釈剤及び緩衝液、対照抗体を格納する。ラベル及び添付文書は、組成物の記載及び所期のインビトロ又は診断用途のための説明書を提供することができる。
【0261】
本明細書で提供される別の実施例は、開示された癌を治療するための材料を含む製品である。製品は、容器と、該容器上の又は容器に関連するラベル又は添付文書を含んでよい。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、注射器などを含む。容器は、様々な材料、例えばガラス及びプラチックで製造されてよい。一般的には、容器は、症状を効果的に治療する組成物を格納し、そして減菌アクセスポートを有してよい(例えば、容器は、静脈内溶液袋、又は皮下注射針が突き刺し可能な栓を有するバイアルであってよい)。組成物うちの少なくとも1種の活性薬剤は、本明細書で提供される抗CD73抗体及び/又はその変異体もしくは突然変異体(又は断片)である。ラベル又は添付文書は、組成物が特定の症状を治療するために用いられることを示す。ラベル又は添付文書は、患者に抗体組成物を投与する説明書をさらに含む。本明細書に記載された併用療法の製品及びキットも考慮される。
【0262】
添付文書は、このような治療製品の使用に関連する適応症、用法、用量、投与、禁忌及び/又は警告についての情報を含む治療製品の販売用包装に一般的に含まれる説明書を意味する。1つの実施例では、添付文書は、組成物が癌(例えば、頭頸部癌、肺癌又は結腸直腸癌)を治療するために用いられることを示す。
【0263】
さらに、製品には、薬学的に許容される緩衝液、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸塩緩衝生理食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液を含む第2の容器がさらに含まれてよい。他の緩衝液、希釈剤、フィルター、ニードル及び注射器を含む、販売及びユーザーの立場から望まれる他の材料がさらに含まれてよい。
【0264】
現在、本発明の態様を全体的に説明し、以下の実施例は本発明のいくつかの他の態様を説明する。以下の実施例及び対応するテキスト及び図面を参照して本発明の態様を説明したが、本発明の態様をこの説明に限定することを意図していない。逆に、本発明の精神及び範囲内に含まれる全ての代替物、修正及び等価物をカバーすることを意図する。
【0265】
実施例
以下の実施例は、本明細書が特許請求している化合物、組成物、製品、装置及び/又は方法の完全な開示及び説明をどのように製造し評価するかを当業者に提供するものであり、単に本発明の例示であり、本発明の発明の範囲を限定することを意図するものではない。数字(例えば量、温度など)の正確性をできるだけ確保するが、いくつかの誤差及び偏差を考慮すべきである。また指示しない限り、部数は重量部であり、温度は℃又は環境温度であり、そして圧力は大気圧であるか又は大気圧に近い。
【表6】
【実施例1】
【0266】
抗CD73抗体及び変異体の作製
ヒトCD73-ECD/Hisを用いてヒトFabナイーブファージディスプレイライブラリーをパニングした。ストレプトアビジンでコーティングされた磁性Dynabeads(登録商標)M-280(サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific)#11205D)にカップリングされたビオチン化されたhuCD73-ECD/Hisを用いて4回パニングした後、CD73結合活性及び固定化されたCD73酵素遮断活性を有する52個の可能なクローンを選択し、かつ4種の配列(N1~N4)を決定した。その後に、選択された可変配列を、ヒトIgG1 Fc主鎖のL234F、L235E、P331S突然変異体にクローニングすることにより、インビトロ機能分析(CD73結合、CD73酵素遮断活性、抗体媒介によるCD73内在化)に用いられる全長抗体とした。さらにN1、N2及びN4のリードをヒト野生型又はC219S突然変異体IgG2 Fc主鎖にクローニングした。インビトロ有効性及びインビボ有効性試験(MDA-MB-231異種移植モデル)に基づいて、以下の親和性成熟のためにN1及びN4を選択し、かつwtIgG2主鎖を決定した。
【0267】
抗体リードN1及びリードN4を、インビトロファージディスプレイに基づく親和性成熟実験に用い、改善されたCD73結合活性性能及びCD73酵素遮断活性性能を有する別のクローンを生成した。PCRを介してリードN1のCDR-L1/CDR-L3/CDR-H3(3つのCDRに集中する)核酸ライブラリーを生成し、ファージディスプレイベクターにクローニングし、かつ大腸菌TG1細胞に形質転換して、ファージライブラリーを作成した。ビオチン化されたhuCD73-ECD/Hisを用いて3回パニングした後、結合アッセイ及び酵素遮断アッセイを介して異なる配列を有する15個のFabクローンをスクリーニングし、そして2つのFab(N1#2及びN1#9)がより高い有効性を有することを見出した。リードN4の親和性成熟について、まずCDR-L3/CDR-H1/CDR-H3核酸ライブラリーを生成してファージライブラリを作成した。3回パニングした後、結合アッセイ及び酵素遮断アッセイを介して異なる配列を有する6つのFabクローン(N4#1~N4#6)をスクリーニングした。その後に、クローンN4#1、N4#4、N4#5及びN4#6のCDR-L1/CDR-L2/CDR-H2核酸ライブラリーを作成してファージライブラリを作成した。3回パニングした後、より良好な結合活性及び酵素遮断活性を有するクローンN4#4-3、N4#6-2、N4#6-3、N4#6-4、N4#6-5を選択した。
【0268】
親和性成熟後に、N1#2、N1#9、N4#5、N4#6、N4#4-3、N4#6-2、N4#6-3、N4#6-4、N4#6-5をIgG2 Fc主鎖にクローニングすることにより、全長抗体とし、インビトロ有効性試験(CD73タンパク質結合ELISA、CD73を発現する腫瘍細胞結合、固定化及び細胞CD73酵素遮断、抗体媒介によるCD73内在化)及びインビボ有効性試験(NCI-H292異種移植モデル)を行い、クローンN1#2、N1#9、N4#6-3、N4#6-4を選択した。配列アライメント及びCMC安定性に基づいて、この4つのクローンを修飾することによりN1#2-P、N1#9-PH、N4#6-3-P、N4#6-4-Pを生成した。N1#9-PHは、より高い可溶性CD73酵素遮断有効性を有し、N4#6-3-P、N4#6-4-Pは、表面CD73内在化を誘導することができる。N1#9-PH、N4#6-3-P、N4#6-4-Pは、AMP媒介によるT細胞阻害を軽減することができ、かつインビボでMDA-MB-231異種移植に対する抗腫瘍活性を有する。また、N4#6-4-Pは、異種移植腫瘍においてCD73の下流調節を誘導し、CD73酵素活性を遮断することができ、かつNCI-H292異種移植モデルにおいて他の抗CD73抗体より高い抗腫瘍活性を有する。
【0269】
ナイーブファージのパニングにより選択された抗CD73リードN1、N2及びN4の軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列アライメントは、それぞれ図1A及び図1Bに示されている。親和性成熟したN1及びN4変異体由来の軽鎖可変領域のアミノ酸配列アライメントは図9に示されており、ここでKabatに定義されたCDR(相補性決定領域)に下線を加えて太字で標識し、そして親和性成熟したN1及びN4変異体由来の重鎖可変領域のアミノ酸配列アライメントは図10に示されており、ここでKabatに定義されたCDR(相補性決定領域)に下線を加えて太字で標識する。次に、これらの選択された可変配列を、ヒトIgG2 Fcの主鎖にクローニングすることにより、全長抗体とした。以下のヒト抗体の軽鎖定常領域及び重鎖定常領域のアミノ酸を選択することができる(本明細書の軽重鎖可変領域のアミノ酸配列を制限するものではない)。
wtIgG2アイソタイプ重鎖定常領域(SEQ ID NO:112)
mtIgG2アイソタイプ重鎖定常領域(SEQ ID NO:113)
tmtIgG1アイソタイプ重鎖定常領域(SEQ ID NO:114)
軽鎖定常領域(SEQ ID NO:115)
N1#2-P重鎖(SEQ ID NO:116)
N1#9-PH重鎖(SEQ ID NO:117)
N4#6-3-P_重鎖(SEQ ID NO:118)
N4#6-4-P重鎖(SEQ ID NO:119)。
【0270】
図14は、N1及びN4のトップ変異体の軽鎖のアミノ酸配列アライメントを示しており、ここでKabatに定義されたCDR(相補性決定領域)に下線を加えて太字で標識し、そして図15は、N1及びN4のトップ変異体の重鎖可変領域のアミノ酸配列アライメントを示しており、ここでKabatに定義されたCDR(相補性決定領域)に下線を加えて太字で標識する。次に、これらの配列を、ヒトIgG2 Fcの主鎖にクローニングすることにより、全長抗体とした。
【実施例2】
【0271】
選択された抗体のCD73結合能力
ELISAアッセイを行って、選択された抗体と組換えヒトCD73-ECD/Hisタンパク質との結合を評価する。ヤギ抗ヒトIgG Fd(又はFc)抗体を、ウェル当たりの30ngで4℃で96ウェルEIAマイクロプレートに一晩コーティングした。(PBS中の)5%スキムミルクで遮断した後に、連続希釈された抗体を加え、室温で1時間インキュベートした。結合していない抗体を除去し、ウェルを、0.05%Tween20を含む1×PBSTで3回洗浄した。ビオチンで標識されたCD73-ECD/Hisタンパク質をウェル当たりの30ngでウェルに加え、室温でさらに1時間インキュベートした。結合していないビオチンで標識されたCD73-ECD/Hisを、0.05%Tween20を含む1×PBSTで3回洗浄した。その後にアビジン-HRPをウェルに加え、室温で30分間インキュベートした。0.05%Tween20を含む1×PBSTで3回洗浄することにより過剰の第2の抗体を除去した。洗浄した後、プレートをTMBで発色させた。マイクロプレートリーダーで450nmの波長での吸光度を読み取った。
【0272】
ELISAアッセイにより選択された抗CD73抗体は組換えヒトCD73タンパク質に結合し、かつ結合データは図2Aに示されている。
【0273】
MDA-MB-231又はNCI-H292細胞を、連続希釈された抗体と共に、FACS緩衝液(2%FBSを含むPBS)において4℃で30分間インキュベートすることにより抗CD73抗体の全細胞結合能力を試験した。細胞をFACS緩衝液で洗浄し、FITCで標識されたヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体(又はPEで標識されたヤギ抗ヒトIgG Fcγ)を用いて4℃で結合をさらに30分間検出した。染色の平均蛍光強度(MFI)により、抗体と細胞表面との結合を測定した。Cytomics FC500又はCytoFLEXフローサイトメーター(ベックマン・コールター社(Beckman Coulter Inc.))を用いてフローサイトメトリー分析を行った。図2B及び図2Cは、選択された抗CD73抗体がCD73を発現するヒト腫瘍細胞MDA-MB-231(ヒト乳癌)細胞(図2B)及びNCI-H292(ヒト肺粘液性類表皮癌)細胞(図2C)に結合したことを示している。
【0274】
これらの研究において、抗CD73 ref-1抗体及びHLX01(抗CD20)をそれぞれ陽性対照及び陰性対照として用いた。これらのデータは、全ての選択された抗CD73抗体がヒトCD73組換えタンパク質及びCD73を発現するヒト腫瘍細胞に結合することができることを表明する。
【0275】
図11A~11Bは、さらに、N1、N4変異体とCD73との結合を示している。選択された変異体とCD73を発現するMDA-MB-231(図11A)及びNCI-H292(図11B)の細胞との結合をフローサイトメトリー法により試験した。HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。これらのデータは以下を表明する。親和性成熟後に、全てのN1及びN4変異体がいずれもCD73を発現するヒト腫瘍細胞に結合することができる。この2種類の細胞株において、N4変異体は、N1変異体より優れたCD73結合能力を有する。全細胞結合能力の順位付けは、N4#5、N4#6-4、N4#6-5>N4#6-2>N4#4-3、N4#6、N4#6-3、N1#9>N1#2である。
【0276】
図16A~16Cは、N1及びN4トップ変異体のCD73結合能力を示す。ELISA法により抗CD73抗体と組換えヒトCD73タンパク質との結合を試験し(図16A)、そしてフローサイトメトリー法により抗CD73抗体と、CD73を発現するヒト腫瘍細胞MDA-MB-231(図16B)及びNCI-H292(図16C)との結合を試験した。抗CD73 ref-1抗体及び抗CD73 ref-2抗体を陽性対照として用い、HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。これらのデータは以下を表明する。N4#6-3-P、N4#6-4-P及びN1#9-PHが同等の親和性により組換えCD73及びMDA-MB-231細胞上の表面CD73に結合する。N1#9-PHと、CD73を発現するNCI-H292細胞との結合は、N4#6-3-P及びN4#6-4-Pと該細胞との結合よりもやや良い。
【実施例3】
【0277】
可溶性CD73酵素活性及び細胞CD73酵素活性に対する抗CD73リードの作用
抗CD73抗体がヒト組換えCD73タンパク質及び細胞表面CD73の酵素活性を阻害する能力を試験した。AMPにより阻害されたフルオレセインのATP依存性酸化(CellTiter-Gloアッセイ、プロメガ社(Promega))を測定することにより、CD73触媒によるAMPのアデノシン及び無機リン酸塩への加水分解を分析した。15ngの組換えヒトCD73-ECD/Hisタンパク質と、連続希釈された抗CD73抗体、ATP(最終濃度100μM)及びAMP(最終濃度300μM)とを、アッセイ緩衝液(25mMのTris、5mMのMgCl、pH7.46)中に37℃でインキュベートした。反応系中に同じ体積のCellTiter-Glo試薬を加えて白い96ウェルマイクロプレートに2min混合した。10minインキュベートした後に、ルミネセンスを測定した。
【0278】
CD73を発現する細胞(5E3-1E4細胞/ウェル)を培地に再懸濁し、96ウェルマイクロプレートに入れた(又は24時間予め接種した)。各培養物に3倍(又は5倍)の連続希釈された抗体を加えた。37℃で15分間インキュベートした後、AMP(最終濃度225μM)を加え、4~20時間インキュベートした。遠心分離した後、培養上清を収集し、96ウェルマイクロプレートに入れ、最終濃度が100μMになるまでATPを加え、2minインキュベートした。同じ体積のCellTiter-Glo試薬を各ウェルに加えて2min混合した。10minインキュベートした後に、ルミネセンスを測定した。
【0279】
可溶性CD73酵素活性及び細胞CD73酵素活性に対する抗CD73リードの作用を示すデータは、それぞれ図3A及び3Bに示されている。これらのデータは、全ての選択された抗体がヒト可溶性CD73及び表面CD73の両者の酵素活性を阻害することができることを表明する。可溶性CD73酵素活性アッセイにおいて、IgGがsCD73に対して化学量論的過剰量である場合、阻害の喪失が観察された。このようないわゆる「フック効果(hook effect)」は、ターゲット抗原上に限られた結合部位を競合する同じIgG分子上のFabアームによって駆動される一価抗体結合から生じられてよい。
【0280】
異なるIgGアイソタイプを有する抗CD73リードN1、N2、N4が細胞CD73の酵素活性を阻害する能力を試験した。MDA-MB-231細胞を、抗CD73抗体と共にインキュベートした。ATP、AMP及びCellTiter-Glo試薬を加えてルミネセンスを記録した。酵素活性アッセイではAPCPを陽性対照として用いた。細胞CD73酵素活性に対する異なるIgG Fc領域を有するこれらの抗CD73リードの作用は、図6A(リードN1)、6B(リードN2)及び6C(リードN4)に示されている。
【0281】
これらのデータは以下を示す。クローンN1のwtIgG2アイソタイプは、tmtIgG1及びmtIgG2アイソタイプより優れた遮断活性を有する。クローンN2のtmtIgG1アイソタイプは、wtIgG2及びmtIgG2アイソタイプより優れた遮断活性を有する。wtIgG2アイソタイプを有するN4は、tmtIgG1及びmtIgG2アイソタイプより最適な遮断活性を示す。tmtIgG1アイソタイプは、L234F、L235E及びP331SのFc部位特異的変化を有する。
【0282】
図17A~17Cは、可溶性CD73酵素活性(図17A)及び細胞表面CD73酵素活性(図17B及び図17C)に対するN1及びN4トップ変異体の作用をさらに示す。抗CD73抗体がヒト組換えCD73タンパク質及び細胞表面CD73酵素活性を阻害する能力を試験した。組換えCD73タンパク質(図17A)、MDA-MB-231(図17B)、NCI-H292(図17C)細胞を、抗CD73抗体と共にインキュベートした。ATP、AMP及びCellTiter-Gloを加えてルミネセンスを記録した。抗CD73 ref-1抗体、抗CD73 ref-2抗体及びAPCPを陽性対照として用いた。HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。
【0283】
図17A~17Cに示されるデータは、N1#9-PHの可溶性CD73酵素活性を阻害する能力がN4#6-3-P及びN4#6-4Pよりも優れているが、N1#9-PH及びN4#6-4-Pが細胞表面CD73酵素活性に対して同等の遮断活性を示すことを表明する。
【実施例4】
【0284】
抗CD73リードによって媒介されるCD73内在化
腫瘍細胞(5E4~1E5細胞/ウェル)を培地に懸濁し、異なる濃度の抗CD73抗体と共に4時間インキュベートした。培地を除去した後に、細胞をFACS緩衝液(2%FBSを含むPBS)に懸濁し、マウス抗ヒトCD73抗体(4G4)と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で洗浄し、FITCで標識されたヤギ抗マウスIgG(H+L)抗体又はAlexa488で標識されたヤギ抗マウスIgG Fcγ抗体と共にインキュベートした。Cytomics FC500又はCytoFLEXフローサイトメーター(ベックマン・コールター社(Beckman Coulter Inc.))を用いてフローサイトメトリー分析を行った。抗CD73 ref-1抗体及びHLX01(抗CD20)を、それぞれ陽性対照及び陰性対照として用いた。
【0285】
図4に示されるデータは、N4-tmtIgG1のみがCD73内在化を誘導することができ、N1-tmtIgG1及びN2-tmtIgG1がCD73内在化を誘導することができないことを示す。
【0286】
図7は、異なるIgG Fc領域を有する抗CD73抗体によって媒介されるCD73内在化をさらに示す。細胞と、N1(図7A)、N2(図7B)及びN4(図7C)の異なるIgGアイソタイプとをインキュベートした後、フローサイトメトリー法によりCD73の細胞表面発現を測定した。抗CD73 ref-1抗体及びHLX01(抗CD20)を、それぞれ陽性対照及び陰性対照として用いた。データは、N4(N1及びN2ではない)がCD73内在化を誘導することができ、異なるIgGアイソタイプの間に明らかな差異がないことを示す。
【0287】
図13は、N1及びN4変異体によって媒介されるCD73内在化をさらに示す。NCI-H292細胞を、N1及びN4変異体と共にインキュベートし、かつフローサイトメトリー法によりCD73の細胞表面発現を測定した。抗CD73 ref-1抗体及び抗CD73 ref-2抗体を陽性対照として用い、HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。データは、親和性成熟後に、N4変異体がCD73内在化を誘導することができ、かつN1変異体が依然としてCD73内在化を誘導することができないことを示す。
【0288】
図18A及び18Bは、N1及びN4トップ変異体によって媒介されるCD73内在化をさらに示す。MDA-MB-231(図18A)、NCI-H292(図18B)細胞を、抗CD73N1及びN4変異体と共にインキュベートした。インキュベートした後に、フローサイトメトリー法によりCD73の細胞表面発現を測定した。抗CD73 ref-1抗体及び抗CD73 ref-2抗体を陽性対照として用い、HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。これらのデータは、N4#6-3-P及びN4#6-4-PがCD73を発現する2種類の癌細胞においてCD73内在化を誘導することができることを示す。
【実施例5】
【0289】
異なるIgG Fc領域を有する選択された抗体とCD73との結合
MDA-MB-231細胞を、連続希釈されたビオチンで標識された抗CD73抗体と共にFACS緩衝液(2%FBSを含むPBS)において4℃で30分間インキュベートすることにより抗CD73抗体と細胞表面CD73との結合を試験した。細胞をFACS緩衝液で洗浄し、ストレプトアビジン-FITCを用いて4℃で結合を30分間検出した。Cytomics FC500(ベックマン・コールター社(Beckman Coulter Inc.))を用いてフローサイトメトリー分析を行った。
【0290】
N1、N2及びN4の可変配列をヒト野生型又はC219S突然変異体IgG2 Fcの主鎖にクローニングした。フローサイトメトリー法によりN1(図5A)、N2(図5B)、N4(図5C)の異なるIgGアイソタイプと、CD73を発現するヒトMDA-MB-231細胞との結合を試験した。抗CD73 ref-1抗体及びHLX01(抗CD20)を、それぞれ陽性対照及び陰性対照として用いた。
【0291】
図5A~5Cに示されるデータは、CD73結合能においてN1の異なるIgGアイソタイプの間に差異がないことを示す。データは、クローンN2(tmtIgG1アイソタイプ)がwtIgG2及びmtIgG2アイソタイプより優れたCD73結合活性を有し、かつクローンN4(tmtIgG1アイソタイプ)がwtIgG2及びmtIgG2アイソタイプより優れたCD73結合活性を有することをさらに示す。
【実施例6】
【0292】
MDA-MB-231(ヒトトリプルネガティブ乳癌)異種移植マウスモデルにおける抗CD73リードの腫瘍増殖阻害活性
免疫が損なわれたNOD/SCID(非肥満糖尿病/重症複合免疫不全症)マウスを用い、異種移植マウスモデルにおいて抗ヒトCD73抗体のインビボ活性を研究した。100μLのPBSにおける、CD73を発現する合計1E7個のヒトトリプルネガティブ乳癌MDA-MB-231細胞と、100μLのマトリゲル(Matrigel)(コーニング社(Corning)、カリフォルニア州(CA)、米国)とを(1:1の比率で)混合し、雌性NOD/SCIDマウス(バイオラスコ社(Biolasco)、台北、台湾)の両側の脇腹に皮下に植え込んだ。腫瘍のサイズが150~300mm(腫瘍接種後の14日目)に達する時、1週間に2回又は指定時間に、腹腔内に5mg/kgの抗CD73抗体又は10mL/kgのプラセボを投与した。45日目まで腫瘍を観察して測定した。腫瘍の体積をTV(腫瘍の体積)=(長さ×幅)/2と定義した。
【0293】
腫瘍増殖曲線は、図8Aに示される。45日目の個体腫瘍体積は、図8Bに示される。全てのデータ点は、いずれも平均値±SEMである。データは、クローンN1、N2及びN4のtmtIgG1アイソタイプ以外に、全ての抗CD73抗体がMDA-MB-231異種移植モデルにおいて抗腫瘍活性を有し(TGI≧50%)、N1-wtIgG2、N1-mtIgG2、N2-wtIgG2、N2-mtIgG2が腫瘍増殖をほぼ完全に阻害することを証明する。
【0294】
図20は、MDA-MB-231(ヒトトリプルネガティブ乳癌)異種移植マウスモデルにおけるN1及びN4トップ変異体の腫瘍増殖阻害活性をさらに示す。マウス(n=5匹のマウス/群)の皮下にMDA-MB-231細胞を移植した。腫瘍を接種した後の7日に、移植された腫瘍のサイズが約100mmに達すると、第1の用量の被験物質を投与した。1週間に2回、10mg/kg及び2mg/kgの抗体を用いて、マウスを腹腔内で処理し、5~6週間持続した。全てのデータ点は、いずれも平均値±SEMである。これらのデータは、全てのN1及びN4トップ変異体がインビボMDA-MB-231異種移植に対して抗腫瘍活性を有し、N4#6-3-P、N4#6-4-P及びN1#9-PHが抗CD73対照抗体より優れた抗腫瘍活性を有することを証明する。
【実施例7】
【0295】
固定化CD73酵素活性に対するN1及びN4変異体の作用
N1及びN4変異体が固定化CD73酵素活性を阻害する能力を試験した。ヤギ抗ヒトIgG Fd抗体を、ウェル当たりの300ngで4℃で高い親和性で白い96ウェルマイクロプレートに一晩コーティングした。(PBS中の)5%スキムミルクで遮断した後に、連続希釈された抗体を加え、室温で1時間インキュベートした。結合していない抗体を除去し、ウェルを、0.05%Tween 20を含む1×PBSTで3回洗浄した。アッセイ緩衝液(25mMのTris、5mMのMgCl、pH7.46)における25μLの100ng/mLのCD73-ECD/Hisタンパク質をウェルに加え、室温でさらに1時間インキュベートした。66μMのATPと200μMのAMPとの混合物を25μL加え、37℃で9分間インキュベートした。同じ体積のCellTiter-Glo試薬を反応混合物に加えて(白い96ウェルマイクロプレートに)内容物を2min混合した。10minインキュベートした後に、ルミネセンスを測定した。抗CD73 ref-1抗体及び抗CD73 ref-2を陽性対照として用い、HLX01(抗CD20)を陰性対照として用いた。
【0296】
固定化CD73酵素活性に対するN1及びN4変異体の作用は、図12に示される。これらのデータは以下を示す。親和性成熟後、全てのN1及びN4変異体は、いずれもCD73酵素活性を阻害することができる。N1変異体のCD73酵素遮断活性は、N4変異体及び抗CD73 ref-2抗体より優れるが、抗CD73 ref-1抗体と同等である。固定化CD73酵素を遮断する活性について、N1#2、N1#9>N4#6-4、N4#6-5>N4#4-3、N4#6-2>N4#6-3、N4#5>N4#6である。
【実施例8】
【0297】
N1及びN4トップ変異体による、T細胞の活性に対するAMPの阻害効果の反転
CD73は、アデノシン一リン酸(AMP)を触媒して細胞外にアデノシンを生じた。アデノシンは、A2aR及びA2Q受容体を活性化することにより免疫応答(T細胞、NK細胞及び樹状細胞の免疫応答を含む)を阻害する。CD73酵素阻害及び内在化に加えて、T細胞増殖に対する抗CD73抗体によるCD73阻害の機能的作用をさらに検出した。
【0298】
MagniSortヒトT細胞濃縮キット(eBioscience社(eBioscience、Inc.))を用いて末梢血単核細胞(PBMC)からヒトT細胞を単離し、50 IU/mLの組換えヒトIL-2(eBioscience社(eBioscience、Inc.)を含む完全培地(10%FBSを含むRPMI-1640)に懸濁した。体積が100μLのT細胞(5E4細胞/反応)と、Dynabeads(登録商標)ヒトT-活性化因子CD3/CD28(サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific))とを1:0.5の細胞ビーズの比率で混合した。AMP(1mM)及び連続希釈された抗体を100μLの体積で各反応系に加えた。活性化ビーズを含まない反応系(未刺激群)、CD3/CD28ビーズのみを含む反応系(刺激群)又はCD3/CD28ビーズ及びAMPのみを含む(AMP媒介による阻害群)反応系をアッセイ対照として用いた。抗CD73 ref-1抗体、抗CD73 ref-2抗体及びAPCPを陽性対照として用いた。HLX04(抗VEGF)を陰性対照として用いた。細胞を37℃で4日間培養した。4日目に、細胞を収集し、洗浄し、新鮮なRPMI-1640培地に再懸濁した。CellTiter-GloアッセイによりT細胞増殖を分析した。培養物上清を収集してサイトカイン測定に用いた。ヒトIFN-γ ELISA MAX(登録商標) Deluxeキット(BioLegend社(BioLegend、Inc.))を用いてIFN-γのレベルを測定した。
【0299】
N1及びN4トップ変異体による、T細胞の活性に対するAMPの阻害効果の反転は、図19A及び19Bに示される。CD3 T細胞の増殖後に、CellTiter-Gloアッセイを行い(図19A)、ヒトIFN-γ ELISA MAX(登録商標) Deluxeキット(図19B)を用いてIFN-γ分泌を測定した。抗CD73 ref-1抗体、抗CD73 ref-2抗体及びAPCPを陽性対照として用いた。HLX04(抗VEGF)を陰性対照として用いた。図19A及び19Bに示されるデータは、N1及びN4トップ変異体が用量依存性方式でT細胞増殖及びIFN-γ分泌を増強することができることを表明する。データは、N4#6-3-P、N4#6-4-P及びN1#9-PHがAMP媒介によるT細胞阻害を軽減することができることをさらに示す。
【実施例9】
【0300】
NCI-H292(ヒト肺粘液性類表皮癌)異種移植マウスモデルにおけるN1及びN4トップ変異体の腫瘍増殖阻害活性
免疫が損なわれたBALB/cヌードマウスを用い、異種移植マウスモデルにおいて抗ヒトCD73抗体のインビボ活性を研究した。100μLのPBSにおける合計5E6個のNCI-H292細胞と、100μLのマトリゲル(Matrigel)(コーニング社(Corning)、カリフォルニア州(CA)、米国)とを(1:1の比率で)混合し、雄性BALB/cヌードマウス(バイオラスコ社(Biolasco)、台北、台湾)の両側の脇腹に皮下に植え込んだ。腫瘍のサイズが150~300mmに達する時、1週間に2回、腹腔内に抗CD73抗体又はプラセボを投与し、3週間持続した。1週間に2回、腫瘍を観察して測定した。腫瘍の体積をTV(腫瘍の体積)=(長さ×幅)/2と定義した。
【0301】
図21は、NCI-H292(ヒト肺粘液性類表皮癌)異種移植マウスモデルにおけるN1及びN4トップ変異体の腫瘍増殖阻害活性を示す。マウス(n=5匹のマウス/群)の皮下にNCI-H292細胞を移植した。腫瘍を接種した後の3日に第1の用量の被験物質を投与した。1週間に2回、50、10及び2mg/kgの抗体を用いて、マウスを腹腔内で処理し、3週間持続した。全てのデータ点は、いずれも平均値±SEMである。データは、N4#6-4-PがNCI-H292異種移植モデルにおいて他の抗CD73抗体より高い抗腫瘍活性を有することを証明する。
【実施例10】
【0302】
NCI-H292異種移植腫瘍における細胞CD73酵素活性に対するN1及びN4トップ変異体の作用
100μLのPBSにおける合計5E6個のNCI-H292細胞と、100μLのマトリゲル(Matrigel)(コーニング社(Corning)、カリフォルニア州(CA)、米国)とを(1:1の比率で)混合し、抗体を投与する前の4日に、雄性BALB/cヌードマウス(バイオラスコ社(Biolasco)、台北、台湾)の両側の脇腹に皮下に植え込んだ。0日目に30mg/kgの抗体、APCP及びプラセボを用いてマウスを腹腔内で処理し、1、3及び7日目に腫瘍を収集した。腫瘍細胞(2E4)をアッセイ緩衝液(25mMのTris、5mMのMgCl、pH7.46)に再懸濁し、ATP(最終濃度100μM)及びAMP(最終濃度300μM)を用いて37℃で45分間処理した。同じ体積のCellTiter-Glo試薬を反応混合物に加えて(白い96ウェルマイクロプレートに)内容物を2min混合した。10minインキュベートした後に、ルミネセンスを測定した。
【0303】
図22は、NCI-H292異種移植腫瘍における細胞CD73酵素活性に対するN1及びN4トップ変異体の作用を示す。N1及びN4トップ変異体がNCI-H292異種移植モデルにおいてCD73酵素活性を阻害する能力を試験した。抗体で処理する前の4日に、マウス(n=4匹のマウス/群)の皮下にNCI-H292細胞を移植した。0日目に、腹腔内に抗体、APCP及びプラセボを注射した。抗体を投与した後の1、3及び7日目に腫瘍を切除した。CellTiter-Gloアッセイにより腫瘍におけるCD73酵素活性を測定した。
【0304】
データは、N1及びN4トップ変異体がNCI-H292異種移植モデルにおけるCD73酵素活性を阻害することができ、N4#6-3-P及びN4#6-4-Pの、腫瘍においてCD73酵素を遮断する活性がN1#9-PH及び抗CD73対照抗体よりも優れることを証明する。
【実施例11】
【0305】
MDA-MB-231異種移植腫瘍におけるCD73発現及び細胞CD73酵素活性に対するN1及びN4トップ変異体の作用
100μLのPBSにおける合計1E7のMDA-MB-231細胞と、100μLのマトリゲル(Matrigel)(コーニング社(Corning)、カリフォルニア州(CA)、米国)とを(1:1の比率で)混合し、抗体を投与する前の7日に、雌性NOD/SCIDマウス(バイオラスコ社(Biolasco)、台北、台湾)の両側の脇腹に皮下に植え込んだ。0日目に2mg/kgの抗体及び10mL/kgのプラセボを用いてマウスを腹腔内で処理した。1、3及び7日目に腫瘍を収集した。表面CD73発現レベルを測定するために、5E4個の腫瘍細胞をFACS緩衝液(2%FBSを含むPBS)に再懸濁し、抗ヒト及び抗マウスFcR遮断試薬を用いて4℃で30分間処理した。遠心分離した後、細胞とマウス抗ヒトCD73抗体(4G4)を4℃で30分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で洗浄し、Alexa 488で標識されたヤギ抗マウスIgG Fcγ抗体と共に4℃でさらに30分間インキュベートした。CytoFLEXフローサイトメーター(ベックマン・コールター社(Beckman Coulter Inc.))を用いてフローサイトメトリー分析を行った。合計2E4個の腫瘍細胞をアッセイ緩衝液(25mMのTris、5mMのMgCl、pH7.46)に再懸濁してCD73酵素活性の測定に用いた。細胞懸濁液をATP(終濃度100μM)及びAMP(最終濃度300μM)を用いて37℃で45分間処理した。同じ体積のCellTiter-Glo試薬を反応混合物に加えて(白い96ウェルマイクロプレートに)2min混合した。10minインキュベートした後に、ルミネセンスを測定した。
【0306】
図23A及び23Bは、MDA-MB-231異種移植腫瘍におけるCD73発現及び細胞CD73酵素活性に対するN1及びN4トップ変異体の作用を示す。染色の平均蛍光強度(MFI)によりCD73発現を測定し(図23A)、CellTiter-Gloアッセイにより腫瘍におけるCD73酵素活性を測定した(図23B)。データは、プラセボ群に比べて、N4#6-4-PがMDA-MB-231異種移植マウスモデルにおける表面CD73発現を下流調節し、かつCD73酵素活性を阻害することができることを証明する。
【実施例12】
【0307】
N1及びN4トップ変異体と、マウス及びサルのCD73を発現する細胞との交差結合
4T1又はLLC-MK2細胞(1E5個の細胞/試験)と、連続希釈された抗体とをFACS緩衝液(2%FBSを含むPBS)において4℃で30分間インキュベートすることにより抗CD73抗体の結合を評価した。細胞をFACS緩衝液で洗浄し、FITCで標識されたヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体を用いて4℃で結合をさらに30分間検出した。染色の平均蛍光強度(MFI)により、抗体と細胞表面との結合を測定した。Cytomics FC500又はCytoFLEXフローサイトメーター(ベックマン・コールター社(Beckman Coulter Inc.))を用いてフローサイトメトリー分析を行った。
【0308】
図24A及び24Bは、N1及びN4トップ変異体と、マウス及びサルのCD73を発現する細胞との交差結合を示す。フローサイトメトリー法により抗CD73抗体と、CD73を発現するマウス乳癌4T1細胞(図24A)及びサル腎上皮LLC-MK2細胞(図24B)との結合を試験した。HLX01を陰性対照として用いた。これらのデータは、N1及びN4トップ変異体が、サルのCD73を発現する細胞と交差反応性を有し、N1及びN4トップ変異体が、マウスのCD73と交差結合することができないことを示す。
【0309】
前述の実施例は、単に目的を説明するために用いられ、かつ本発明の原理を明確に理解するために提供された実施形態の可能な実施例だけであり、いかなる方式で本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の精神及び原理から基本的に逸脱しない場合、上記1つ以上の実施例に対して多くの変化や修正を行うことができる。このような修正や変化は、本発明の範囲に含まれ、かつ添付の請求項によって保護される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図19A
図19B
図20
図21
図22
図23A
図23B
図24A
図24B
【配列表】
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