(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/092 20060101AFI20250318BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
A61M25/092 500
A61M25/00 600
A61M25/00 552
(21)【出願番号】P 2022528784
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2021020269
(87)【国際公開番号】W WO2021246292
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2024-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2020097338
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木佐 俊哉
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/098788(WO,A1)
【文献】特表2017-518122(JP,A)
【文献】特開2014-117399(JP,A)
【文献】特開2014-128675(JP,A)
【文献】特許第3232308(JP,B2)
【文献】特開2013-103131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/092
A61M 25/00
A61B 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端と近位端とを有し、長手方向に延在する内腔を有するシャフトと、
遠位端と近位端とを有し、前記遠位端が前記シャフトの遠位端部に固定され、前記近位端が前記シャフトの近位端部に配置され、前記シャフトの内腔に延在する第1ワイヤ及び第2ワイヤと、
前記長手方向において前記シャフトの内腔を、前記第1ワイヤが配置される第1部と、前記第2ワイヤが配置される第2部に分離するように前記シャフトの内腔に配置されている板バネと、
前記長手方向に延在し、前記第1ワイヤ及び前記第2ワイヤが配置されている内腔を有し、前記板バネの近位端が固定されており、前記板バネより近位側に配置されている支持部材と、
前記第1ワイヤが配置されている内腔を有する第1コイルと、を有しており、
前記第1コイルは、前記支持部材の遠位端より遠位側であって前記第1部内に配置されており前記第2部内には配置されておらず
、
前記第1コイルは、前記板バネの近位端側に少なくとも2箇所で固定されており、前記第1コイルと前記板バネが固定されている部分である第1固定部と、前記第1固定部より近位側に位置し前記第1コイルと前記板バネが固定されている部分である第2固定部と、前記第1固定部と前記第2固定部との間に位置し前記板バネに固定されていない部分である中間非固定部とを有しており、
前記第1コイルは、自然状態における全長L
1と最大圧縮時の全長L
C1とを有し、その比であるL
C1/L
1は0.9以上である前記第1コイルとを有するカテーテル。
【請求項2】
前記支持部材は、チューブ又はコイルである請求項
1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記第1コイルは、非圧縮である請求項1
又は2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記第1コイルと前記板バネとが固定されている部分は、前記第1コイルの前記板バネの一方面に面する面に位置する請求項1~
3のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記第1コイルの非固定部であって、前記長手方向の長さが最も長い非固定部は、前記長手方向の自然状態における長さが、前記第1コイルの自然状態における全長L
1の50%以上である請求項1~
4のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記第1コイルは、前記第1コイルの遠位端と前記第1固定部との間に、前記第1コイルと前記板バネとを固定する固定部を有していない遠位側非固定部をさらに有する請求項1~
5のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項7】
さらに、第2コイルを備え、前記第2コイルは、前記第1ワイヤが配置されている内腔を有し、前記第1部内であって前記第1コイルよりも遠位側に配置されている請求項1~
6のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記第2コイルは、自然状態における全長L
2と最大圧縮時の全長L
C2とを有し、その比L
C2/L
2は0.9よりも小さい請求項
7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記第1コイルの曲げ剛性は、前記第2コイルの曲げ剛性よりも大きく、前記第1コイルの曲げ剛性と前記第2コイルの曲げ剛性との差は50%以下である請求項
7又は
8に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記第1コイルは、らせん状に巻かれた第1コイルワイヤを含み、
前記第2コイルは、らせん状に巻かれた第2コイルワイヤを含み、
前記第1コイルのピッチ間隔は、前記第2コイルのピッチ間隔よりも小さい請求項
7~
9のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記第1コイルのコイルワイヤ径及びコイル径は、前記第2コイルのコイルワイヤ径及びコイル径と同じである請求項
10に記載のカテーテル。
【請求項12】
さらに、第3コイルを備え、前記第3コイルは、前記第2ワイヤが配置されている内腔を有し、前記第2部に配置されて
おり、前記第3コイルは、自然状態における全長L
3
と最大圧縮時の全長L
C3
とを有し、その比であるL
C3
/L
3
は0.9よりも小さい請求項1~
11のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項13】
第2コイルを備え、前記第2コイルは、前記第1ワイヤが配置されている内腔を有し、前記第1部の前記第1コイルよりも遠位側に配置されており、
第3コイルを備え、前記第3コイルは、前記第2ワイヤが配置されている内腔を有し、前記第2部に配置されており、
前記第3コイルは、自然状態における全長L
3
と最大圧縮時の全長L
C3
とを有し、その比であるL
C3
/L
3
は0.9よりも小さく、
内腔を有し前記シャフト
の内腔内に配置される保護チューブをさらに有しており、前記保護チューブは、前記内腔に前記板バネ、前記第1コイル、前記第2コイル、及び前記第3コイルが配置されている請求項1~
12のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記第1コイルは、前記第1固定部及び前記第2固定部が、溶接、はんだ、接着、又は圧接により固定されている請求項1~
13のいずれか一項に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端部が湾曲可能なカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓内の電位を測定したりペーシングを行ったりするために、遠位部に複数の電極を有する電極カテーテルが用いられている。このような電極付きのカテーテルの中には、心臓内の所望の部位にカテーテル遠位部を容易に配置することができるように、ハンドル操作によって遠位部が湾曲可能なものがある。このようなカテーテルは、一般的に、カテーテルの先端内部に固定されたプルワイヤを引くことでカテーテル遠位部を湾曲させることができる。さらに、カテーテルをカテーテルの長手方向を中心に一方側、他方側の両側に湾曲させるために、2本のプルワイヤを備えたカテーテルが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、カテーテルチューブの内腔に操作ワイヤが配置された複数の操作用チューブを備え、操作用チューブが複数の部分チューブに分割されていることにより、カテーテルの先端部分が途中で折れ曲がりのない滑らかな湾曲形状に変形することができる先端偏向操作可能カテーテルが開示されている。また、カテーテルの先端部を湾曲させても、先端電極や、カテーテルの先端内部に配置された板バネやプルワイヤの脱落を防止できる先端偏向操作可能カテーテルや(特許文献2、3)、一方側と他方側の湾曲の形状が異なるカテーテルも提案されている(特許文献4、5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-200445号公報
【文献】特開2010-75530号公報
【文献】特開2015-100515号公報
【文献】特開2012-147971号公報
【文献】特表2017-518122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
心臓の大きさや目的に合わせて最適な部位へカテーテル遠位部を送達するためには、カテーテル遠位部が一方側、他方側のどちら側にも湾曲できるだけでなく、さらにそれぞれの湾曲径が異なる非対称湾曲タイプのカテーテルとすることが求められる。また、湾曲の非対称度合いを高めることで、カテーテル遠位部を所望の部位へ容易に送達することが可能となる。しかし、特許文献4、5のような構成では、湾曲径の非対称度合いのより高いカテーテルとすることは困難であった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、カテーテル遠位部が一方側、他方側のどちら側にも湾曲可能であり、それぞれの湾曲形状が異なる非対称湾曲タイプのカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできたカテーテルは、遠位端と近位端とを有し、長手方向に延在する内腔を有するシャフトと;遠位端と近位端とを有し、上記遠位端がシャフトの遠位端部に固定され、上記近位端がシャフトの近位端部に配置され、シャフトの内腔に延在する第1ワイヤ及び第2ワイヤと;長手方向においてシャフトの内腔を、第1ワイヤが配置される第1部と、第2ワイヤが配置される第2部に分離するようにシャフトの内腔に配置されている板バネと;長手方向に延在し、第1ワイヤ及び第2ワイヤが配置されている内腔を有し、板バネの近位端が固定されており、板バネより近位側に配置されている支持部材と;第1ワイヤが配置されている内腔を有し、支持部材の遠位端より遠位側であって第1部内に配置されている第1コイルであって、第1コイルは、板バネの近位端側に少なくとも2箇所で固定されており、第1コイルと板バネが固定されている部分である第1固定部と、第1固定部より近位側に位置し第1コイルと板バネが固定されている部分である第2固定部と、第1固定部と第2固定部との間に位置し板バネに固定されていない部分である中間非固定部とを有しており、上記第1コイルは、自然状態における全長L1と最大圧縮時の全長LC1とを有し、その比であるLC1/L1は0.9以上である上記第1コイルとを有することを特徴とするものである。
【0008】
支持部材はプロキシチューブであることが好ましい。
【0009】
第1コイルは、非圧縮であることが好ましい。
【0010】
第1コイルと板バネとが固定されている部分は、第1コイルの板バネの一方面に面する面に位置することが好ましい。
【0011】
第1コイルの非固定部であって、長手方向の長さが最も長い非固定部は、長手方向の自然状態における長さが、第1コイルの自然状態における全長L1の50%以上であることが好ましい。
【0012】
第1コイルは、第1コイルの遠位端と第1固定部との間に、第1コイルと板バネとを固定する固定部を有していない遠位側非固定部をさらに有することが好ましい。
【0013】
さらに、第2コイルを備え、第2コイルは、第1ワイヤが配置されている内腔を有し、第1部内であって第1コイルよりも遠位側に配置されていることが好ましい。
【0014】
この場合、第2コイルは、自然状態における全長L2と最大圧縮時の全長LC2とを有し、LC2/L2は0.9よりも小さいことが好ましい。
【0015】
第1コイルの曲げ剛性は、第2コイルの曲げ剛性よりも大きく、第1コイルの曲げ剛性と第2コイルの曲げ剛性との差は50%以下であることが好ましい。
【0016】
第1コイルはらせん状に巻かれた第1コイルワイヤを含み、第2コイルはらせん状に巻かれた第2コイルワイヤを含み、第1コイルのピッチ間隔は、第2コイルのピッチ間隔よりも小さいことが好ましい。
【0017】
第1コイルのコイルワイヤ径及びコイル径は、第2コイルのコイルワイヤ径及びコイル径と同じであることが好ましい。
【0018】
さらに、第3コイルを備え、第3コイルは、第2ワイヤが配置されている内腔を有し、第2部に配置されていることが好ましい。
【0019】
第3コイルは、自然状態における全長L3と最大圧縮時の全長LC3とを有し、LC3/L3は0.9よりも小さいことが好ましい。
【0020】
第2コイルを備え、第2コイルは、第1ワイヤが配置されている内腔を有し、第1部の第1コイルよりも遠位側に配置されており;第3コイルを備え、第3コイルは、第2ワイヤが配置されている内腔を有し、第2部に配置されており;内腔を有しシャフト内腔内に配置される保護チューブをさらに有しており、保護チューブは、内腔に板バネ、第1コイル、第2コイル、及び第3コイルが配置されていることが好ましい。
【0021】
第1コイルは、第1固定部及び第2固定部が、溶接、はんだ、接着、又は圧接により固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、カテーテル遠位部が一方側、他方側のどちら側にも湾曲可能であり、それぞれの湾曲形状が異なる非対称湾曲タイプのカテーテルを提供することができるため、カテーテル遠位部を所望の位置へ容易に送達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカテーテルの平面図を表す。
【
図2】本発明の一実施形態に係るカテーテルの平面図を表す。
【
図3】本発明の一実施形態に係るカテーテルの平面図を表す。
【
図4】
図2に示したカテーテルの遠位部の長手方向の断面図を表す。
【
図5】
図4に示したカテーテル遠位部のV-V断面図を表す。
【
図6】
図4に示したカテーテル遠位部のVI-VI断面図を表す。
【
図7】
図4に示したカテーテル遠位部のVII-VII断面図を表す。
【
図8】
図4に示したカテーテル遠位部の部分Aのシャフト内部の側面図を表す。
【
図9】本発明の一実施形態に係る第1コイルの側面図を表す。
【
図10】
図9に示した第1コイルの最大圧縮時の側面図を表す。
【
図11】本発明の他の実施形態に係る第1コイルの側面図を表す。
【
図12】本発明の他の実施形態に係るカテーテル遠位部の長手方向の断面図を表す。
【
図13】本発明のさらに他の実施形態に係るカテーテル遠位部の長手方向の断面図を表す。
【
図15】
図4に示したカテーテル遠位部のV-V断面図の別の例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施の形態に基づき本発明を説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0025】
本発明のカテーテルは、遠位端と近位端とを有し、長手方向に延在する内腔を有するシャフトと;遠位端と近位端とを有し、上記遠位端がシャフトの遠位端部に固定され、上記近位端がシャフトの近位端部に配置され、シャフトの内腔に延在する第1ワイヤ及び第2ワイヤと;長手方向においてシャフトの内腔を、第1ワイヤが配置される第1部と、第2ワイヤが配置される第2部に分離するようにシャフトの内腔に配置されている板バネと;長手方向に延在し、第1ワイヤ及び第2ワイヤが配置されている内腔を有し、板バネの近位端が固定されており、板バネより近位側に配置されている支持部材と;第1ワイヤが配置されている内腔を有し、支持部材の遠位端より遠位側であって第1部内に配置されている第1コイルであって、第1コイルは、板バネの近位端側に少なくとも2箇所で固定されており、第1コイルと板バネが固定されている部分である第1固定部と、第1固定部より近位側に位置し第1コイルと板バネが固定されている部分である第2固定部と、第1固定部と第2固定部との間に位置し板バネに固定されていない部分である中間非固定部とを有しており、上記第1コイルは、自然状態における全長L1と最大圧縮時の全長LC1とを有し、その比であるLC1/L1は0.9以上である上記第1コイルとを有する。
【0026】
上記構成を有することにより、本発明のカテーテルは、シャフトの半径方向において板バネの一方面側及び他方面側の両方にカテーテル遠位部が湾曲可能であり、板バネの一方面側に湾曲したときの湾曲形状と板バネの他方面側に湾曲したときの湾曲形状とが異なる非対称湾曲タイプのカテーテルとすることができる。このため、本発明のカテーテルは、カテーテル遠位部を血管や心臓の所望の位置へ容易に送達することが可能となる。湾曲形状が異なるとは、一方側に湾曲したときの形状と他方側に湾曲したときの形状が異なることをいい、湾曲形状が沿う円のサイズ、言い換えれば半径が異なることを含む。本発明によれば、一方面側の湾曲形状と、他方面側の湾曲形状との間のカーブ形状の差、特にサイズの差をより大きくすることができるため、血管の種々の形状のカーブに対応することができる。
【0027】
以下では、
図1~
図15を参照して、本発明の実施形態に係るカテーテルについて説明する。
図1~
図3は本発明の一実施形態にかかるカテーテルの平面図を表し、点線はシャフトの半径方向において板バネの一方面側及び他方面側にカテーテル遠位部が湾曲したときの様子を表している。
図2の点線は
図1に示した場合よりもカテーテル遠位部がさらに湾曲したときの様子を表している。
図3の点線は
図2に示した場合よりもカテーテル遠位部がさらに湾曲したときの様子を表している。
図4は
図2に示したカテーテルの遠位部の長手方向の断面図を表し、点線はシャフトの半径方向において板バネの一方面側及び他方面側にカテーテル遠位部が湾曲したときの様子を表している。
図5~
図7は
図4に示したカテーテル遠位部のV-V断面図、VI-VI断面図、及びVII-VII断面図をそれぞれ表す。
図8は
図4に示したカテーテル遠位部の部分Aにおける、シャフト内腔に配置されている第1ワイヤ及び第2ワイヤ、板バネ、支持部材、及び第1コイルの側面図を表す。
図9は本発明の一実施形態に係る第1コイルの自然状態における側面図を表し、
図10は
図9に示した第1コイルの最大圧縮時の側面図を表す。
図11は本発明の他の実施形態に係る第1コイルの自然状態における側面図を表す。
図12は本発明の他の実施形態に係るカテーテル遠位部の長手方向の断面図を表し、点線はシャフトの半径方向において板バネの一方面側及び他方面側にカテーテル遠位部が湾曲したときの様子を表している。
図13は本発明のさらに他の実施形態に係るカテーテル遠位部の長手方向の断面図を表し、点線はシャフトの半径方向において板バネの一方面側及び他方面側にカテーテル遠位部が湾曲したときの様子を表している。
図14は剛性の測定方法を表す。
図15は
図4に示したカテーテル遠位部のV-V断面図の別の例を表す。
【0028】
本発明において、近位側とはシャフトの延在方向に対して使用者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対側、すなわち処置対象者側を指す。また、シャフトの延在方向を長手方向d
Lと称する。半径方向d
Rとはシャフトの延在方向に垂直な半径方向を指す。
図1~4、8、12、及び13において、図の下側が近位側であり、図の上側が遠位側である。また、
図1~4、8、12、及び13において、図の左側がシャフトの半径方向d
Rにおける板バネの一方面側であり、図の右側がシャフトの半径方向d
Rにおける板バネの他方面側である。
【0029】
図1~
図3に示すように、カテーテル1は、遠位端と近位端とを有し、長手方向d
Lに延在する内腔を有するシャフト2を有している。シャフト2の遠位端には先端部20が配置されていることが好ましく、シャフト2の近位端部にはハンドル7が配置されていることが好ましい。
【0030】
シャフト2は、遠位端から体内へ挿入され、治療部位まで送達される。このため可撓性があることが好ましく、材料として金属や樹脂を用いることができる。体内に挿入されるため、生体適合性のある材料を用いることが好ましい。シャフト2の表面には、電極やセンサなど、治療のための装置を配置することができる。シャフト2の表面に電極を備えることにより、心電位を測定する電極カテーテルや、組織を焼灼するアブレーションカテーテルとして用いることができる。
【0031】
シャフト2の内腔には、カテーテルを湾曲させるための内部構造や、例えばセンサや導線など、治療のための装置やその内部構造を配置することができる。シャフト2の内腔は、単一の内腔でもよく、部分的に複数の内腔があってもよい。本発明の湾曲のための構造は、単一の内腔に配置される。例えば、カテーテル1のシャフト遠位部2Dを湾曲させるために、湾曲させる部分を単一の内腔として、それより近位側の内腔を複数とすることができる。内腔は二重構造であってもよい。シャフトの長手方向dLの長さ、外径、厚み等は治療のために適切なサイズを選択することができる。
【0032】
シャフト2の遠位端には、先端部20が配置されることが好ましい。先端部20は、シャフト2とは別の部材であってもよいし、同じ部材であってもよい。先端部20がシャフト2とは別の部材である場合、先端部20は、シャフト2の内腔に挿入される部分やシャフトの遠位端より遠位側に突出する部分を備えていてもよい。先端部20がシャフト2と同じ部材である場合、シャフト2の遠位端部が熱融着等されることによってシャフト2の遠位端の開口が塞がれることにより、先端部20が形成されてもよい。
【0033】
シャフト2の近位側にハンドル7が配置されることが好ましく、シャフト2の近位端は、ハンドル7の内部に固定されていることが好ましい。ハンドル7内には、シャフト2の内腔から延びる導線や操作ワイヤが配置される。操作ワイヤを操作しやすいように、ハンドル7がワイヤ操作部70を含んでいてもよい。操作ワイヤの近位端をワイヤ操作部70に固定することによって、ワイヤ操作部70を操作してワイヤを牽引等し、カテーテル1の遠位端を湾曲させることができる。
【0034】
図4~
図7に示すように、カテーテル1は、シャフト2の内腔内に、遠位端と近位端とを有し、遠位端がシャフト2の遠位端部、例えば先端部20に固定され、近位端がシャフト2の近位端部、例えばハンドル7に配置され、シャフト2の内腔に延在(例えば先端部20からハンドル7まで延在)する第1ワイヤ41及び第2ワイヤ42と、遠位端と近位端とを有し、長手方向d
Lにおいてシャフト2の内腔を、第1ワイヤ41が配置される第1部21と、第2ワイヤ42が配置される第2部22に分離するように配置されている板バネ30と、遠位端と近位端とを有し、長手方向d
Lに延在し、第1ワイヤ41及び第2ワイヤ42が配置されている内腔を有し、板バネ30の近位端が固定されており、板バネ30より近位側に配置されている支持部材60と、が配置されている。
【0035】
第1ワイヤ41及び第2ワイヤ42は、カテーテル1のシャフト遠位部2Dを湾曲操作するための操作ワイヤである。第1ワイヤ41及び第2ワイヤ42は、シャフト2の内腔に配置されており、遠位端は先端部20に固定され、近位端はハンドル7に固定されていることが好ましい。第1ワイヤ41及び第2ワイヤ42としては、ステンレス鋼等の金属線材や、フッ素樹脂等の合成樹脂から形成された線材を用いることができる。第1ワイヤ41及び第2ワイヤ42は、それぞれ1本の線材であってもよく、複数の線材からなる構造を有していてもよい。
【0036】
板バネ30は、カテーテル1の湾曲方向を規定する部材であり、シャフト2の内腔に、長手方向dLにおいて、第1ワイヤ41が配置される第1部21と、第2ワイヤ42が配置される第2部22とにシャフト2の内腔を分離するように配置されている。板バネ30の近位端は支持部材60に固定される。板バネ30の遠位端はシャフト2の遠位端部に固定されていることが好ましい。シャフト2の遠位端に先端部20を設けた場合には、先端部20に固定されることが好ましい。板バネ30の遠位端は固定されていなくてもよい。板バネ30の遠位端や近位端の固定は、端部が直接固定されておらず、その付近が固定されることにより、固定されていてもよい。板バネ30の遠位端及び近位端を固定する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、はんだ等のろう付け、溶接、接着剤による接着、かしめ等による接続等が挙げられる。先端部20や支持部材60が金属である場合、レーザー溶接により固定されていることが好ましい。
【0037】
板バネ30は、遠位端と近位端を有し、長手方向dLに延在する形状である。板バネ30は、シャフト2の長手軸に沿って配置されることが好ましい。これにより、板バネ30によって、シャフト2の内腔がシャフト2の長手軸を含む一方側の第1部21と他方側の第2部22との2つに仕切られる。仕切られたシャフト2の内腔の一方の第1部21に第1ワイヤ41、他方の第2部22に第2ワイヤ42が配置される。第1ワイヤ41が配置される側の板バネ30の面を第1面31、第2ワイヤ42が配置される側の板バネ30の面を第2面32とする。板バネ30の第1面31は一方面、第2面32は他方面ということができる。
【0038】
板バネ30は板材を用いたバネであり、板バネ30を構成する材料は、ステンレス鋼、チタン、炭素鋼、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン合金等の金属が挙げられる。あるいは、板バネ30を構成する材料は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリカーボネート樹脂や、繊維強化樹脂等の合成樹脂を挙げることができる。またあるいは、板バネ30は、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム等の合成ゴムや天然ゴムで構成されていてもよい。中でも、板バネ30の材料はステンレス鋼であることが好ましい。
【0039】
支持部材60は、シャフト2の内腔において板バネ30の近位側に配置され、その内腔には第1ワイヤ41と第2ワイヤ42が配置される。支持部材60の遠位端には板バネ30の近位端が固定されている。支持部材60の近位端は、シャフト2の近位端まで伸びていてもよく、シャフトの2の途中に配置されていてもよい。支持部材60は、シャフト2の途中で異なる部材、例えばチューブ等に切り替わっていてもよい。
【0040】
支持部材60は、筒状の形状を有するプロキシチューブであってもよい。支持部材60がプロキシチューブであれば、プロキシチューブが板バネ30の近位端を受け入れ、板バネ30の一部がプロキシチューブの内腔に配置されることができる。これにより、板バネ30と支持部材60との固定を強固にすることができる。
【0041】
支持部材60は、シャフト2と同様に可撓性があることが好ましく、材料として金属や樹脂を用いることができる。なかでも金属ワイヤが巻き回されたコイルであることが好ましい。本発明のカテーテル1は、支持部材60の遠位端で内部構造が切り替わるので、支持部材60の遠位端より遠位側と近位側とでカテーテル1の硬さの変化が大きくならないように、支持部材60のサイズ、可撓性、材料を選択することが好ましい。
【0042】
本発明のカテーテル1は、板バネ30が、支持部材60の遠位端から露出している部分から、板バネ30がシャフト2の遠位端部、例えば先端部20に固定されるまでの区間において、湾曲することができる。したがって、カテーテル1の湾曲部の長さは、板バネ30の長さ、先端部20や支持部材60と板バネ30とを固定する位置によって適宜設定することができる。支持部材60は、板バネ30の湾曲に伴って簡単に変形しないことが好ましい。
【0043】
図4に示すように、カテーテル1は、第1ワイヤ41が配置されている内腔を有し、支持部材60の遠位端より遠位側に配置されている第1コイル51を備える。第1コイル51は、板バネ30の近位端側に配置され、板バネ30の近位端側に少なくとも2箇所で固定されている。板バネ30の近位端側に配置とは、板バネの近位端寄りの部分に配置されていることをいい、第1コイル51の近位端が、支持部材60の遠位端に隣接又は近接して配置されていることをいう。第1コイル51は、板バネ30の一方面31側への湾曲を規制する部材であるので、第1コイル51が板バネ30の遠位側に固定されていると、板バネ30が一方面31側へ湾曲できない状態になる。第1コイル51は、第1コイル51と板バネ30が固定されている部分である第1固定部511と、第1固定部より近位側に位置する第2固定部512と、第1固定部511と第2固定部512との間に位置し板バネ30に固定されていない部分である中間非固定部510mとを有する。
【0044】
第1コイル51は、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金等の金属ワイヤや、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ワイヤで構成することができる。第1コイル51を形成するワイヤの断面形状は、円形、四角形又はそれらの組合せとすることができる。中でも、第1コイル51は、ステンレス鋼で断面が円形のワイヤを用いた金属コイルであることが好ましい。第1コイル51のワイヤ径、コイル径、長さは必要に応じて適宜選択することができる。
【0045】
第1コイル51と板バネ30とは、溶接、はんだ、接着、又は圧接により固定されていることが好ましい。中でも、溶接による固定が好ましい。溶接により固定されていれば、はんだや接着剤等の材料を用いずに、第1固定部511及び第2固定部512を形成することができる。
【0046】
第1コイル51と板バネ30との固定は、第1コイル51と板バネ30との直接の固定、第1コイル51の近位端が支持部材60に接していることによる固定、又は、第1コイル51が支持部材60に溶接、はんだ、接着、又は圧接により固定されていることによって、第1コイル51と板バネ30とが間接的に固定されている状態でもよい。第2固定部512が、第1コイル51の近位端が支持部材60に接していることにより固定された固定部であってもよく、又は、第2固定部512が、第1コイル51が支持部材60に溶接、はんだ、接着、又は圧接により固定されていることによって、第1コイル51と板バネ30とが間接的に固定されている状態であってもよい。
【0047】
第1固定部511及び第2固定部512の長手方向dLにおける位置は特に限定されず、第1コイル51の表面のどこに配置されていてもよい。例えば、第1固定部511は第1コイル51の遠位端に配置されていてもよく、第2固定部512は第1コイル51の近位端に配置されていてもよい。また、図示していないが、第1固定部511及び第2固定部512以外にさらに固定部を有していてもよい。固定部の総数は2個以上であり、2個より多くの固定部を有していてもよい。少なくとも2個の固定部を設けることにより、第1コイル51を板バネ30に、最も遠位側の固定部から近位側の板バネ30が一方面31側へ湾曲しないように固定できる。シャフト2の第1コイル51が配置されている部分とそれ以外の部分との剛性の差が大きくなり過ぎないようにするために、固定部を2個とすることが好ましい。
【0048】
第1固定部511及び第2固定部512を含む第1コイル51と板バネ30の固定部の長手方向d
Lにおける長さは、適宜設定することができるが、固定部の長手方向d
Lにおける長さは短い方が好ましく、
図8に示すように、例えば、コイルを形成するワイヤ3本分くらいの長さであることが好ましい。固定部の長手方向d
Lの長さが長いと、カテーテル1が他方面32側へ湾曲する際の柔軟性が失われるおそれがある。
【0049】
図9~
図10に示すように、第1コイル51は、自然状態における全長L
1と最大圧縮時の全長L
C1とを有する。その比であるL
C1/L
1は0.9以上である。また、第1コイル51は、
図11に示すように非圧縮であることが好ましい。ここで、本発明において、非圧縮なコイルとは、密巻コイル、すなわち長手方向d
Lに圧縮されないコイルであって、自然状態におけるコイルの全長L
1と最大圧縮時のコイルの全長L
C1との比L
C1/L
1が1のものであるが、L
C1/L
1が0.9以上、0.95以上の場合も実質的に非圧縮であり、非圧縮なコイルに含まれる。第1コイル51の非圧縮性を高くするためには、L
C1/L
1は、0.95以上であることが好ましい。
【0050】
本発明の構成とすることにより、カテーテル1は、シャフト遠位部2Dが一方側、他方側のどちら側にも湾曲可能であり、それぞれの湾曲形状を異なった形状とすることができる。特に、それぞれの湾曲径が異なるものとすることができ、さらに、湾曲径の異なり具合を厳密に制御することができる。シャフト2の内腔の第1部21に配置されている第1ワイヤ41、言い換えると、板バネ30の一方面31側に配置されている第1ワイヤ41を牽引した場合、板バネ30は、一方面31側へ湾曲し、それにともないカテーテル1のシャフト遠位部2Dが一方面31側へ湾曲する。板バネ30の近位側に第1コイル51が、少なくとも2点で板バネ30と固定されており、かつ第1コイル51が非圧縮なコイルであるため、第1コイルは、板バネ30のない側、つまり一方面31方向へ湾曲することができない。非圧縮なコイルが2点で固定されているため、その2点間では、一方面への湾曲に対し第1コイル51は圧縮することができず、剛直なチューブとして機能し振舞うためである。このため、板バネ30は、先端部20に固定された部分から、第1コイル51の最も遠位側の固定部までの間の部分だけが、一方面側へ湾曲可能となる。
【0051】
もし、板バネ30と第1コイル51とが1点でしか固定されていないとすると、第1コイル51は、板バネ30の湾曲とともに一方面31側へも湾曲することができる。また、もし第1コイル51が非圧縮なコイルでないとすると、コイルは一方面側に対しても他方面側に対しても伸張可能であり、一方面側へも湾曲することができる。したがって、第1コイル51の板バネ30との2点での固定、非圧縮性のいずれが欠けても、板バネ30は遠位側から近位側までの範囲で一方面31側へ湾曲可能となる。
【0052】
一方、カテーテル1のシャフト2の内腔の第2部22に配置されている第2ワイヤ42、言い換えると、板バネ30の他方面32側に配置されている第2ワイヤ42を牽引した場合、板バネ30は、他方面32側へ湾曲し、それとともにカテーテル1のシャフト遠位部2Dが他方面32側へ湾曲する。板バネ30の一方面31側に配置されている第1コイル51は、コイルの一方面側の非固定部のコイル素線の間隔が開くことにより、板バネ30の他方面32側の湾曲に追従して、他方面32側に湾曲することができる。このため、板バネ30は、先端部20に固定された部分から、支持部材60の遠位端までの間の部分すべてで、他方面32側へ湾曲可能となる。
【0053】
第1コイル51と板バネ30とが固定されている部分は、第1コイル51の板バネ30の一方面31に面する面に位置することが好ましい。これにより、第1コイル51の板バネ30側、つまり他方面32側への湾曲が妨げられることがない。
【0054】
第1コイル51の第1固定部511と第2固定部512の間の固定部のない部分である中間非固定部510mは、長手方向dLの自然状態における長さが、第1コイル51の自然状態における全長L1の50%以上であることが好ましい。中間非固定部510mを複数有する場合は、最も長い中間非固定部510mの長手方向dLの自然状態における長さが、第1コイル51の自然状態における全長L1の50%以上であることが好ましい。中間非固定部510mを長く確保することにより、第1コイル51の一方面31側への湾曲を阻止しつつ他方面32側への湾曲を阻害しないようにすることができる。なお、第1コイル51の最も長い中間非固定部510mの長さは、長手方向dLの自然状態における長さが、第1コイル51の自然状態における全長L1の30%以上であってもよく、20%以上であってもよい。このような範囲でも第1コイル51の一方面31側への湾曲を阻止しつつ他方面32側への湾曲を阻害しないようにすることができる。特に、最も長い中間非固定部510mの遠位側の固定部が、第1コイル51の遠位側に近接する場合には、最も長い中間非固定部510mの長手方向dLの自然状態における長さが、第1コイル51の自然状態における全長L1の50%より小さくても、効果的に第1コイル51の一方面31側への湾曲を阻止することができる。
【0055】
第1コイル51の固定部の位置を制御することによって、カテーテル1の遠位側の湾曲部の湾曲形状を制御することができる。一方面31側への湾曲は、第1ワイヤ41のシャフト2の遠位端部の固定箇所から第1コイル51の最も遠位側の固定部までの間の部分によって形成され、他方面32側への湾曲は、第2ワイヤ42のシャフト2の遠位端部の固定箇所から支持部材60の遠位端までの部分によって形成されるためである。
【0056】
第1コイル51は、第1コイル51の遠位端と第1固定部511との間に、第1コイル51と板バネ30とを固定する固定部を有していないことが好ましい。このような第1コイル51の遠位端から最も遠位側の固定部までの間である遠位側非固定部510dを有することで、第1コイル51より遠位側の湾曲可能な部分と、第1コイル51の最も遠位側の固定部より近位側の一方面31側へ湾曲しない部分との間で、湾曲の形状が極端に変化することを防ぐことができる。例えば、第1コイル51の最も遠位側の固定部が第1コイル51の遠位端にある場合、カテーテル1が第1コイル51の遠位端の部分で折れてしまうおそれがある。
【0057】
図12に示すように、カテーテル1は、さらに、第2コイル52を備えていてもよい。第2コイル52は、第1ワイヤ41が配置されている内腔を有し、シャフト2の内腔において板バネ30によって仕切られた第1部21であって、第1コイル51よりも遠位側に配置される。第2コイル52は、シャフト2の内腔内で、板バネ30などのいずれかの箇所と接していてもよいが、いずれの箇所とも固定されていないことが好ましい。
【0058】
図12に示すように、カテーテル1は、さらに、第3コイル53を備えていてもよい。第3コイル53は、第2ワイヤ42が配置されている内腔を有し、シャフト2の内腔において板バネ30によって仕切られた第2部22に配置される。第3コイル53は、シャフト2の内腔内で、板バネ30などのいずれかの箇所と接していてもよいが、いずれの箇所とも固定されていないことが好ましい。
【0059】
図示していないが、第1コイル51についての
図9及び
図10と同様に、第2コイル52は、自然状態における全長L
2と最大圧縮時の全長L
C2とを有する。L
C2/L
2は、0.9よりも小さいことがより好ましく、またL
C1/L
1よりも小さいことが好ましい。また同様に、第3コイル53は、自然状態における全長L
3と最大圧縮時の全長L
C3とを有する。L
C3/L
3は、0.9よりも小さいことがより好ましく、またL
C1/L
1よりも小さいことが好ましい。第1コイル51の自然状態における全長L
1と最大圧縮時の全長L
C1との比L
C1/L
1が、第2コイル52及び第3コイル53の比L
C2/L
2及びL
C3/L
3と同じか又はそれより小さいと、第1コイル51は、第2コイル52及び第3コイル53に比べて同じかより容易に変形しやすくなり、カテーテル1の湾曲形状の制御が難しくなる。
【0060】
第1コイル51、第2コイル52、第3コイル53の長さは、カテーテル1において、必要な湾曲の形状に応じて適宜選択することができる。第1ワイヤ41及び第2ワイヤ42は、
図12に示すように先端部20から支持部材60までの間において、一部が露出していてもよいし、
図13に示すように第1コイル51、第2コイル52、及び第3コイル53の内腔に全部が配置されていてもよい。例えば、第1コイル51や第3コイル53は、支持部材60と接するように配置することができる。あるいは、第1コイル51や第3コイル53は、支持部材60との間に少し距離を開けて配置され、第1ワイヤ41や第2ワイヤ42が露出していてもよい。これは、先端部20と、第2コイル52、第3コイル53との関係においても同様である。同様に、第1コイル51と第2コイル52は、接していてもよいし、隙間が空いていてもよい。
【0061】
図9に示すように、第1コイル51、第2コイル52、第3コイル53は、らせん状に巻かれたコイルワイヤからなる。第1コイル51、第2コイル52、第3コイル53のピッチ間隔は、適宜設定することができる。ここで、コイルのピッチ間隔とは、コイルを形成する隣り合うコイルワイヤとコイルワイヤの中心点の間隔である。ピッチ間隔は、
図9に示す第1コイル51のピッチ間隔P
1のように測定することができる。ピッチ間隔がコイルの線条の太さよりも大きいとき、コイルの線条間に隙間が空いた状態となり、コイルは圧縮することができる。このとき、自然状態におけるコイルの全長Lと最大圧縮時のコイルの全長L
Cの比L
C/Lが1よりも小さくなる。したがって、本発明において、L
C/Lは、コイルワイヤ径/ピッチ間隔に近似する。第1コイル51のL
C1/L
1が、0.9以上であるとき、第1コイル51のコイルワイヤ径/ピッチ間隔は、0.9以上である。
【0062】
カテーテル1が第2コイル52又は第3コイル53を備える場合、第2コイル52、第3コイル53のコイルワイヤ径及びコイル径は、カテーテル1において、必要な湾曲の形状に応じて適宜選択することができる。第2コイル52、第3コイル53を構成する材料は、第1コイルの材料として挙げたとおり、金属や樹脂を用いることができる。ピッチ間隔だけではなく、コイルのコイルワイヤ径、コイル径、材料などによっても、自然状態におけるコイルの全長Lと最大圧縮時のコイルの全長LCとを制御することができる。
【0063】
カテーテル1が第2コイル52又は第3コイル53を備える場合、第1コイル51のピッチ間隔P1は、第2コイル52のピッチ間隔又は第3コイル53のピッチ間隔より小さいことが好ましい。このようにピッチ間隔を設定することで、自然状態におけるコイルの全長Lと最大圧縮時のコイルの全長LCとを適切に調節し、LC2/L2及びLC3/L3をLC1/L1よりも小さくすることができる。
【0064】
中でも、カテーテル1が第2コイル52を備える場合、第1コイル51のピッチ間隔P1は、第2コイル52のピッチ間隔より小さいことが好ましい。また、その場合に、第1コイル51のコイルワイヤ径及びコイル径は、第2コイル52のコイルワイヤ径及びコイル径と同じであることが好ましい。コイルワイヤ径とは、コイルを形成するワイヤの直径であり、コイル径とは、コイルの直径である。これにより、シャフト2の内部構造のサイズのバランスをとることができ、また、他方面32側への湾曲時の第1コイル51と第2コイル52の剛性を近い値にできるため、他方面32側への湾曲形状を円形に近づけることができる。
【0065】
第2コイル52のピッチ間隔は、第3コイル53のピッチ間隔と同じであってもよく、異なっていてもよい。第2コイル52のピッチ間隔および第3コイル53のピッチ間隔は、最大限に湾曲させたときにコイルが完全に圧縮しない程度のピッチ間隔を確保すればよい。第1コイル51が存在するため、カテーテル1の一方面31側への湾曲の湾曲径のほうが、他方面32側への湾曲の湾曲径より小さくなり、また第2コイル52が第3コイル53より短くなる。第2コイル52が第3コイル53より短いため、第2コイル52の方が完全に圧縮されやすく、この点からは、第2コイル52のピッチ間隔はより広めに設定した方がよい。第2コイル52のコイルワイヤ径及びコイル径は、第3コイル53のコイルワイヤ径及びコイル径と同じであっても異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。第2コイル52のピッチ間隔は、第3コイル53のピッチ間隔と異なることにより、カテーテル1の一方面31側への湾曲と他方面32側への湾曲の形状をより異なるものとすることができる。第1コイル51のコイルワイヤ径及びコイル径は、第2コイル52、第3コイル53のそれらと同じでもよく、異なっていてもよい。
【0066】
第1コイル51の曲げ剛性は、第2コイル52の曲げ剛性よりも大きく、第1コイル51の曲げ剛性と第2コイル52の曲げ剛性との差は50%以下であることが好ましい。これにより、シャフト遠位部2Dが板バネ30の一方面31側に湾曲する際の湾曲の形状を滑らかな湾曲とすることができる。剛性を調整する方法としては、各コイルを構成する線材の種類や量の選択、各コイルの内外径の調整、各コイルのピッチ間隔の調整等が挙げられる。
【0067】
剛性は、
図14に示すような三点曲げ試験により得ることができる。三点曲げ試験は、JIS K7171にしたがって行った。支持台601上に支点間距離Dだけ離れて配置された2つの支点602の上に剛性測定サンプル603を置き、支点間距離Dの中央に配置された圧子604を垂直方向に一定距離移動させたときの荷重Fを測定し、この荷重Fを剛性測定サンプル603の剛性とする。
【0068】
図1~
図4に示すように、上記構成を有するカテーテル1は、第1コイル51によって、シャフト遠位部2Dが板バネ30の一方面31側に湾曲したときの湾曲形状とシャフト遠位部2Dが板バネ30の他方面32側に湾曲したときの湾曲形状とを異なるものとすることができる。好ましくは、シャフト遠位部2Dが板バネ30の一方面31側に湾曲したときの湾曲径d
1を、シャフト遠位部2Dが板バネ30の他方面32側に湾曲したときの湾曲径d
2よりも小さくすることができる。ここで、湾曲径d
1とは、板バネ30の一方面31側に湾曲したシャフト遠位部2Dの第1ワイヤ41側の外側面の外接円の直径であり、シャフト遠位部2Dの湾曲が円弧の一部である場合は該円の直径である。また、湾曲径d
2とは、板バネ30の他方面32側に湾曲したシャフト遠位部2Dの第2ワイヤ42側の外側面の外接円の直径であり、シャフト遠位部2Dの湾曲が円弧の一部である場合は該円の直径である。なお、湾曲形状の外接円は、必ずしも完全な円でなくてもよい。湾曲の状態によっては、湾曲形状は外接円上の形状や、円弧ではなく、直線や曲線の組み合わせとなることがある。いずれにせよ、本発明のカテーテル1は、第1コイル51によって、一方面31側の湾曲と他方面32側の湾曲の形状を異なる形状とすることができる。
【0069】
図15に示すように、カテーテル1は、内腔を有し、シャフト2の内腔に配置される保護チューブ80をさらに有しており、保護チューブ80の内腔に板バネ30、第1コイル51、第2コイル52、及び第3コイル53が配置されていることが好ましい。保護チューブ80の形成には、シャフト2を形成する材料と同様の材料を使用することができる。保護チューブ80により、板バネ30、第1コイル51、第2コイル52、及び第3コイル53、さらには第1ワイヤ41及び第2ワイヤ42を保護することがでる。保護チューブ80は、いずれかの箇所と接していてもよいが、支持部材60に固定されていることが好ましい。これにより、保護チューブ80によって、シャフト2内におけるコイルの移動を防ぐことができる。
【0070】
本願は、2020年6月4日に出願された日本国特許出願第2020-97338号に基づく優先権の利益を主張するものである。2020年6月4日に出願された日本国特許出願第2020-97338号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0071】
1:カテーテル
2:シャフト
2D:シャフト遠位部
7:ハンドル
20:先端部
21:第1部
22:第2部
30:板バネ
31:板バネの一方面
32:板バネの他方面
41:第1ワイヤ
42:第2ワイヤ
51:第1コイル
52:第2コイル
53:第3コイル
60:支持部材
70:ワイヤ操作部
80:保護チューブ
510d:遠位側非固定部
510m:中間非固定部
511:第1固定部
512:第2固定部
601:支持台
602:支点
603:剛性測定サンプル
604:圧子
d1:板バネの一方面側に湾曲したときの湾曲径
d2:板バネの他方面側に湾曲したときの湾曲径
dL:長手方向
dR:半径方向
D:支点間距離
F:荷重
L1:第1コイルの自然状態における全長
LC1:第1コイルの最大圧縮時の全長
P1:第1コイルのピッチ間隔