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特許7651692グラフェンオキシドのアルカリ塩を含むコーティング組成物及び前記コーティング組成物から製造されたコーティング層
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】グラフェンオキシドのアルカリ塩を含むコーティング組成物及び前記コーティング組成物から製造されたコーティング層
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20250318BHJP
   C01B 32/23 20170101ALI20250318BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20250318BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20250318BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20250318BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20250318BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20250318BHJP
   C09D 183/08 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
C09D201/00
C01B32/23
C09D5/08
C09D7/20
C09D7/61
C09D163/00
C09D183/04
C09D183/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023524890
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2021078292
(87)【国際公開番号】W WO2022084119
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】20203402.1
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】シュテリンベルガー,カール-ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】カイル,パトリク
(72)【発明者】
【氏名】ピオンテク,ズザンネ
(72)【発明者】
【氏名】ショトル,イェルゲン
(72)【発明者】
【氏名】フェリクザニー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ハグラー,ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ファフィレク,ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ペルンコプフ,ヴァルター
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108047618(CN,A)
【文献】特表2016-504262(JP,A)
【文献】特表2020-533424(JP,A)
【文献】特表2016-500714(JP,A)
【文献】特表2021-523864(JP,A)
【文献】特表2013-542903(JP,A)
【文献】CHAVALI, Kalyani S. et al.,Graphene-based intumescent flame retardant on cotton fabric,JOURNAL OF MATERIAL SCIENCE,2020年07月08日,vol. 55, no. 29,pages 14197-14210
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C01B 32/23
C09D 5/08
C09D 7/20
C09D 7/61
C09D 163/00
C09D 183/04
C09D 183/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 1価金属イオンとしてリチウムを含有する少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)、
b) 少なくとも1つのバインダーB及び/又は少なくとも1つのシラン化合物SC、及び
c) 少なくとも1つの溶媒S1
を含むコーティング組成物。
【請求項2】
前記コーティング組成物が、前記1価金属イオンを含有する少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)を、0.1ppm~5質量%の総量で含有し、前記総量は前記コーティング組成物の総質量に対するものである、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのバインダーBが、(i)ポリ(メタ)アクリレート、(ii)ポリウレタン、(iii)直鎖又は分岐ポリエステル又はポリアミド変性ポリエステル、(iv)ポリエーテル、(v)ポリエポキシド、(vi)フェノキシ樹脂、(vii)前記したポリマーのコポリマー、及び(vi)これらの混合物からなる群より選択される、請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記コーティング組成物が、前記少なくとも1つのバインダーBを、1~40固形分質量%の総量で含み、前記総量は前記コーティング組成物の総量に対するものである、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記シラン化合物SCが、一般式(I)
NH-R-Y-R-Si(R3-x(R (I)
(式中、
、Rは、互いに独立して、1~10個の炭素原子を含有するアルキレン基であり、
は、1~4個の炭素原子を含有するアルコキシ基であり、
は、1~4個の炭素原子を含有するアルキル基又は1~4個の炭素原子を含有するアルコキシ基であり、
Yは、酸素、硫黄又はNR基であり、Rは水素又は1~4個の炭素原子を含有するアルキル基であり、そして
xは、0~1である)
を有する、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのシラン化合物SCを、2~20体積%の総量で含み、前記総量は前記コーティング組成物の総体積に対するものである、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記溶媒S1が、水、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素、ケトン、エステル、又はこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの溶媒S1を10~95質量%の総量で含有し、前記総量は前記コーティング組成物の総質量に対するものである、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
以下の工程:
(a) 1価金属イオンとしてリチウムを含有する少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)の分散体Dを少なくとも1つの溶媒S2中に調製する工程、及び
(b) 工程(a)で調製した分散体Dを、少なくとも1つのバインダーB及び/又は少なくとも1つのシラン化合物SC及び少なくとも1つの溶媒S1を含有する混合物に添加する工程
を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のコーティング組成物を調製する方法。
【請求項10】
前記分散体Dが、前記リチウムを含有する少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)を、0.05~5質量%の総量で含有し、前記総量は前記分散体の総質量に対するものである、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記分散体Dが、0.1~10質量%の総量で添加され、前記総量は調製されたコーティング組成物の総質量に対するものである、請求項又は10に記載の方法。
【請求項12】
以下の工程:
(i) 請求項1からのいずれか一項に記載のコーティング組成物又は請求項から11のいずれか一項に記載の方法によって調製されたコーティング組成物を、基材(S)上に直接適用する工程、
(ii) 前記コーティング組成物を硬化させることにより、工程(i)で適用されたコーティング組成物からフィルムを形成する工程、及び
(iii) 任意に、工程(ii)で形成されたコーティング層に少なくとも1つのさらなるコーティング組成物を適用し、前記コーティング組成物を硬化させる工程
を含む、少なくとも1つのコーティング層を基材(S)上に形成する方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法により製造されたコーティング層又は多層コーティング(MC)。
【請求項14】
組成物の防食性を改善するために、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有する少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)を、前記組成物中に使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有する少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)、少なくとも1つのバインダーB及び/又はシラン化合物SC及び少なくとも1つの溶媒S1を含むコーティング組成物に関するものである。さらに、本発明は、本発明のコーティング組成物を製造する方法、本発明のコーティング組成物を使用して基材上の少なくとも1つのコーティング層を製造する方法、及び前記方法によって得られたコーティング層又は多層コーティングに関するものである。最後に、本発明は、コーティング組成物の防食性を向上させるために、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシドを前記コーティング組成物中に使用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属材料の腐食は、今日まで満足に解決されていない問題である。腐食とは、金属材料がその大気周囲環境、より詳細には酸素及び水と電気化学的に反応することであり、これは材料に著しい変化及び損傷をもたらす。前記損傷の結果、金属構成要素の機能が損なわれ、そして修理又は交換が必要となる。従って、腐食の経済的な意味、ひいては腐食に対する保護は、非常に重要である。
【0003】
このような理由から、金属産業の実質的に全ての分野(例として、機械工学及び装置、自動車産業(車両建造)、航空及び航空宇宙産業、造船産業、電気産業、精密機械産業、建設産業及び家電/「白物」)において、特に自動車産業及び航空産業の分野において、腐食制御が非常に重要視されている。特に後者の分野では、金属基材は大気条件、場合によっては極端な大気条件にさらされる構成要素として、非常に広範囲に使用されている。
【0004】
車両の仕上げ及び航空産業では、金属基材は一般的に、高価な多層コーティング手順に供される。これは、自動車製造及び航空産業の要求(例えば効果的な腐食制御が含まれる)を満たすことを可能とするために必要である。
【0005】
一般に、金属基材には、腐食から該基材を保護し、そして上に重なるコーティング層との付着性を向上させる、化成コーティングがまず適用される。例には、鋼基材のリン酸塩処理、又はアルミニウム基材又はアルミニウム合金のクロメート処理が含まれ、例えばAA2024、AA5083、AA6111、AA6014、AA6061及びAA7075などの2000~7000シリーズのアルミニウム合金が挙げられる。後者は、その非常に良好な処理特性、その低密度及び同時に物理的応力に対する耐性から、主として航空産業で応用されている。しかし同時に、この材料は有害な糸状腐食の傾向があり、しばしば大気中の高湿度と相まって基材コーティングに物理的損傷を与えた後、腐食が基材コーティングの下に糸状に伝播し、そして金属基材に糸状の腐食損傷を生じさせる。そのため、効果的な腐食制御が重要である。
【0006】
前処理及び適切な化成被覆製造に続いて、通常、腐食からさらに保護するためのプライマーコートが適用される。このプライマーコートは有機ポリマーマトリックスをベースとし、そして後述するさび止め顔料をさらに含むことがある。自動車産業の文脈では、このプライマーコートは一般的に電着塗装コーティング、より詳細にはカソード電着被覆(EDコートとしても知られる)を構成する。航空機産業においては、特殊なエポキシ樹脂ベースのプライマーが通常用いられる。自動車仕上げ部門では、その後、一般的には、被覆された基材の表面に依然として存在する任意の凹凸を補正し、そして石跳ねによる損傷からカソード電着被覆を保護するために、サーフェーサーコーティングが適用される。最後の工程でトップコートが適用されるが、これは2つの別々に適用される被覆、すなわちベースコート及びクリアコートで構成される。
【0007】
金属基材の防食に有効な、現在でも使用されている1つの形態は、クロメート化合物である。クロメート化合物は、例えば、金属基材の表面前処理(クロメート処理とも呼ばれる)の一部として、化成被覆に含有される。同様に、クロメート塩(例えば、バリウムクロメート、亜鉛クロメート、ストロンチウムクロメート)の形態のクロメート化合物が、有機ポリマー樹脂をベースとするさび止めコーティング組成物、好ましくはプライマー、プライマー-サーフェーサー又はフィラー中のさび止め顔料として、頻繁に使用される。
【0008】
化成被覆中のクロメート化合物の防食効果は、金属表面(例えばアルミニウム)のエッチングと同時に比例的にクロメート化合物が3価クロムに還元されることによって達成され、一方で、低溶解性の不動体化被覆は、アルミニウム(III)/クロム(III)/クロム(VI)オキシド水和物を含有して防食効果を達成する。
【0009】
しかしながら、関連する問題は、クロメート化合物の高い毒性と発がん性影響である。従って、クロメート化合物を自動車、家電及び航空産業で回避すると同時に、腐食からの適切な保護を維持することが、産業界の対応する部門における長年の需要である。
【0010】
クロメート化合物を回避すると同時に腐食からの適切な保護を維持するための1つの可能なアプローチの例として、様々な遷移金属のオキソアニオン(及び/又はその塩)、例えばMoO 2-、MnO 及びVO の使用が挙げられる。また、ランタノイドカチオン、又は異なる有機種、例えば、ベンゾトリアゾール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、キノリン誘導体又はホスフェート誘導体の使用も知られている。作用機序は複雑であり、そして現在でも完全には解明されていない。これは、腐食している金属表面上に不動態酸化物/水酸化物被覆が形成されることから、或る特定の金属カチオン(例えばCu(II))の錯形成まで多岐にわたり、その結果、特定の腐食形態(例としてアルミニウム-銅合金の糸状腐食)を抑制することができる。
【0011】
さらなるアプローチは、いわゆるナノコンテナ材料及び/又は層構造材料、例えば、有機シクロデキストリン又は無機材料、例えばゼオライト、アルミナナナノチューブ及びスメクタイトの使用である。また、ハイドロタルサイト成分及び層状複水酸化物材料も使用されている。後者は、一般的な技術文献では、通常「LDH」という略称で呼ばれる。それらは文献上ではしばしば理想化された一般式[M 2+ (1-x) 3+x(OH)x+[A (x/y)nH2O]又は同様の実験式で記述される。これらの式において、Mは2価の金属カチオンを、Mは3価の金属カチオンを、そしてAは価数xのアニオンを表す。天然由来のLDHの場合、これらは一般的に無機アニオン、例えばカーボネート、クロリド、ニトレート、ヒドロキシド及び/又はブロミドである。合成LDHには、様々なさらなる有機及び無機アニオンが存在することもある。上記の一般式では、結晶水も考慮されている。ハイドロタルサイトの場合、2価のカチオンはMg2+であり、3価のカチオンはAl3+であり、そしてアニオンはカーボネートであるが、後者は少なくとも割合的にヒドロキシドイオン又は他の有機及び無機のアニオンで置換されてもよい。ハイドロタルサイト及びLDHは、ブルサイト(Mg(OH))と同様の層状構造を有し、一般に結晶水を含有するインターカレーションされたアニオンの負に帯電した層が、正に帯電した3価の金属カチオンの存在により、正に帯電した金属ヒドロキシド層の各対の間に存在する。上記の式で、LDH層構造は、それに応じて配置された括弧によって説明される。隣接する2つの金属ヒドロキシド層の間には、非共有結合性、イオン性及び/又は極性の相互作用によって、様々な薬剤、例えば上記で言及したさび止め剤をインターカレーションさせることができる。
【0012】
先に記載したナノコンテナ材料及び/又はLDH材料は、ポリマーバインダー、例えば化成コーティング材料及び/又はプライマー材料をベースにした対応するコーティング材料に直接組み込むことができる。化成コーティングを完全に置き換える試みも行われており、この場合、対応するプライマーを金属に直接適用することになる。このようにして、コーティングの手順の複雑さが減るので、費用対効果も向上する。
【0013】
近年の研究では、優れた耐薬品性、機械的強度、ガス及び腐食性イオンに対する不透過性により、グラフェン、1原子又は数層の厚さの結晶性グラファイトシート、又はグラフェンオキシドを腐食保護コーティングに組み込むことに焦点が当てられている。グラフェンと比較して、グラフェンオキシドはより多くの酸素含有有機官能基を表面に有し、エポキシ樹脂などのいくつかの有機樹脂との適合性及び接合面構造を増加させる。しかし、有機コーティングへのグラフェンオキシドの組み込みが自動車、航空、家電及び建設産業における防食の要件を完全に満たしていることは証明されていない。
【0014】
よって有利であるのは、有毒化合物、例えばクロム及び他の重金属化合物、さらにフルオロ化合物及びホスフェート含有化合物を使用しなくても優れた防食を有するコーティング組成物であろう。当該コーティング組成物は、優れた貯蔵安定性を有し、且つ一般的に使用される適用装置に適用可能でなければならない。さらに、当該組成物は、化成層を事前に使用せずに金属上に直接適用するだけでなく、さらなるコーティング層を適用して多層コーティングを製造することができるように、金属基材と、下層の及び/又は上層の任意のコーティング層とに対して優れた付着性を有するべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
よって本発明の目的は、有毒化合物、例えばクロム及び他の重金属化合物、フルオロ化合物及びホスフェート含有化合物を使用しなくても優れた防食を有するコーティング組成物を提供することであった。当該コーティング組成物は優れた貯蔵安定性を有し、且つ一般的に使用される適用装置に適用可能でなければならない。さらに、当該コーティング組成物は、高いポットライフと、基材だけでなく、下層の及び/又は上層の任意のコーティング層に対して優れた付着性を有するべきである。よって当該コーティング組成物は、一般的に使用されるコーティング組成物、例えばフィラー、ベースコート及び/又はトップコート組成物を用いて、如何なる問題もなくオーバーコートできなければならない。さらに、当該コーティング組成物は十分な可撓性を有するコーティング層をもたらし、本発明のコーティング組成物から得られたコーティング層に亀裂を生じさせずにコーティング基材が変形できるようでなければならない。
【0016】
上記の目的は、特許請求の範囲に記載の主題によって、また以下の記述に記載された、その主題の好ましい実施形態によって実現される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って、本発明の第1の主題は、
a) リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有する少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)、
b) 少なくとも1つのバインダーB及び/又は少なくとも1つのシラン化合物SC、及び
c) 少なくとも1つの溶媒S1
を含むコーティング組成物である。
【0018】
上記で特定されたコーティング組成物は、以下で本発明のコーティング組成物とも称され、よって本発明の主題である。本発明のコーティング組成物の好ましい実施形態は、以下の記述から、また従属請求項からも明らかである。
【0019】
先行技術に照らして、リチウムイオン及び/又はカリウムイオンを含有するグラフェンオキシド(以下、グラフェンオキシド塩と呼ぶ)を使用することによって、本発明の基礎となる目的を達成できることは、当業者にとって驚くべきことであり、予測不可能であった。前記グラフェンオキシド塩を、少なくとも1つのバインダー(すなわち有機コーティング組成物)及び/又は少なくとも1つのシラン化合物を含む液体コーティング組成物(以下、化成コーティングとも呼ぶ)に組み込むと、グラフェンオキシドを含むコーティング組成物、又はバインダー及び/又はシラン化合物のみを含むコーティング組成物と比較して、防食性が著しく改善される結果となる。グラフェンオキシド塩が存在するにもかかわらず、本発明のコーティング組成物は傑出した貯蔵安定性と高いポットライフを有し、そして一般的に使用される適用具、例えば空気圧又は静電噴霧ガン、ローラー塗布、又はコイルコーティングによって適用することができる。さらに、本発明のコーティング組成物は、基材に対して優れた付着性を示すので、基材に直接適用することができ、化成コーティング層をあらかじめ適用する必要がない。さらに、本発明のコーティング組成物は、さらなる下層の及び/又は上層のコーティング層に対する優れた付着性も有するので、多層コーティング系を調製する方法におけるプライマー、プライマー-サーフェーサー又はフィラーとして容易に好適なものとなる。さらに、本発明のコーティング組成物から得られたコーティング層の可撓性は、グラフェンオキシド塩の添加によって否定的に損なわれることがないので、被覆された基材の屈曲時に、本発明のコーティング組成物が生成するコーティング層の亀裂形成を低減する。
【0020】
本発明のさらなる主題は、以下の工程:
(a) リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含む少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)の分散体Dを少なくとも1つの溶媒S2中に調製する工程、及び
(b) 工程(a)で調製した分散体Dを、少なくとも1つのバインダーB及び/又は少なくとも1つのシラン化合物SC及び少なくとも1つの溶媒S1を含有する混合物に添加する工程
を含む、本発明のコーティング組成物を製造するための方法である。
【0021】
本発明の別の主題は、以下の工程:
(i) 本発明のコーティング組成物又は本発明の方法によって調製されたコーティング組成物を、基材(S)上に直接適用する工程、
(ii) 前記コーティング組成物を硬化させることにより、工程(i)で適用されたコーティング組成物からフィルムを形成する工程、及び
(iii) 任意に、工程(ii)で形成されたコーティング層に少なくとも1つのさらなるコーティング組成物を適用し、前記コーティング組成物を硬化させる工程
を含む、基材(S)上に少なくとも1つのコーティング層を形成する方法である。
【0022】
本発明のさらに別の主題は、本発明の方法によって製造されたコーティング層又は多層コーティング(MC)である。
【0023】
本発明の最後の主題は、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有する少なくとも1つのグラフェンオキシドを、コーティング組成物において使用して、前記コーティング組成物の防食性を改善することである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
或る特定の特徴変数を決定するために、本発明の文脈において用いられる測定方法は、実施例セクションで見出すことができる。明らかに別段の指示がない限り、これらの測定方法を用いて、それぞれの特徴変数が決定される。本発明の文脈において、有効な公定期間の任意の指示なく公定基準が参照される場合、該参照は黙示的に出願日に有効である基準の版であり、又はその時点で任意の有効な版がない場合には最新の版である。
【0025】
用語「グラフェンオキシド」は一般に、以下の一般構造(A)
【化1】
を有する酸化されたグラフェンを指す。
【0026】
このように、少なくとも1つの1価金属イオンを含むグラフェンオキシドは、少なくとも1つのカルボン酸基が、少なくとも1つの1価の金属の対イオンを有する少なくとも1つのカルボキシレート基に変換されているグラフェンオキシドを指す。
【0027】
本発明の文脈において報告されるあらゆる膜厚は、乾燥膜厚として理解されるべきである。従ってこれは各場合とも硬化したフィルムの厚さである。よって、コーティング材料が特定の膜厚で適用されると報告される場合、これはコーティング材料が硬化後に記載の膜厚になるように適用されることを意味する。
【0028】
本発明のコーティング組成物:
本発明のコーティング組成物は、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有する少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)、少なくとも1つのバインダーB及び/又は少なくとも1つのシラン化合物SC及び少なくとも1つの溶媒S1を含む。従って本発明のコーティング組成物は、好ましくは、23℃で液体のコーティング組成物である。
【0029】
少なくとも1つの1価リチウムイオン及び/又はカリウムイオンを含有するグラフェンオキシド:
グラフェン及びグラフェンオキシドの調製について、最新技術では様々な方法が記載されている。基本的には、「トップダウン」アプローチと「ボトムアップ」アプローチの2つに分けることができる。最初の技術では、出発材料としてのグラファイトを機械的、電気化学的、又は熱的に剥離して酸化し、グラフェンオキシドを得る。最もよく用いられる「トップダウン」技術はHummers法及び修正Hummers法であり、硫酸、ナトリウムニトレート又はカリウムペルマンガネートのような強酸化剤を触媒と組み合わせて用いる。さらなる「トップダウン」技術は電気化学的アプローチであり、使用する電解液の異なるイオン種をグラファイト層にインターカレーションさせる電流を適用することで剥離が達成される。
【0030】
本発明のコーティング組成物に含有される、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシド(GO-M)は、好ましくは、グラフェンオキシドにそれぞれの金属塩溶液を加え、超音波処理、ろ過及び残留物の乾燥を行うことによって得られる。そしてグラフェンオキシドは、好ましくは、グラフェンのロッドをNaOH溶液に入れ、2電極システムを用いてアニオン電流を適用して剥離を行う2段階電気化学的剥離法によって調製される。後続の工程では、硫酸水溶液中でアニオン電解を行い、グラフェンオキシドを得る。
【0031】
1価金属イオンは、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される。特に好ましくは、1価金属イオンはリチウムである。リチウムイオンを含有するグラフェンオキシド(すなわち、リチウムイオンで官能化されたグラフェンオキシド)の使用により、有機コーティング組成物又は化成コーティング組成物の優れた防食性が得られる。
【0032】
驚くべきことに、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシド(GO-M)、好ましくはリチウムイオンを含有するグラフェンオキシドを含む、有機コーティング組成物及び化成コーティング組成物の優れた防食性は、当該組成物中に少量の前記グラフェンオキシド(GO-M)が組み込まれれば既に達成される。コーティング組成物は、好ましくは、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有する少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)、好ましくは少なくとも1つのリチウムイオンを含有するグラフェンオキシドを、0.1ppm~5質量%、より好ましくは0.5~2質量%、さらにより好ましくは0.1ppm~1質量%、さらにより好ましくは0.1ppm~500ppm、さらにより好ましくは0.3~50ppm、非常に好ましくは0.35~1ppmの総量で含有し、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対するものである。
【0033】
バインダーB、シラン化合物SC:
本発明の水性コーティング組成物は、第2の必須の成分(b)として、少なくとも1つのバインダーB及び/又は少なくとも1つのシラン化合物SCを含む。
【0034】
バインダーB:
本発明の文脈における、且つDIN EN ISO4618:2007-03に準拠する「バインダー」は、顔料及びフィラーを含まないコーティング組成物の不揮発性成分である。しかしこの表現は、以下で主として特定の物理的硬化性ポリマーに関連して用いられ、これは任意に熱硬化性であってもよく、例としてポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート及び/又は記載のポリマーのコポリマーが挙げられる。よって本発明の意味における用語「バインダー」は、硬化剤又はバインダーを架橋させてフィルム形成を行うために使用する架橋剤を包含しない。本発明の文脈におけるコポリマーは、様々なポリマーから形成されたポリマー粒子を指す。これには、互いに共有結合したポリマーと、異なるポリマーが互いに付着によって結合したものとの両方が明確に含まれる。2種の結合の組合せもまた、この定義に含まれる。
【0035】
本発明の文脈において、用語「物理的硬化」は、ポリマー溶液又はポリマー分散体からの溶媒の蒸発によるフィルム形成を意味する。典型的には、この硬化に架橋剤は必要ではない。
【0036】
本発明の文脈において、用語「熱硬化」は、バインダー(外部架橋)と組み合わせて、自己架橋バインダー又は分離架橋剤のいずれかを使用する、コーティングフィルムの熱開始架橋を示す。架橋剤は、バインダー中に存在する反応性官能基を補う反応性官能基を含むので、バインダー及び架橋剤の反応時に、巨視的に架橋されたコーティングフィルムが形成される。
【0037】
本発明のコーティング組成物中に存在するバインダー成分は、常に少なくとも一部の物理的硬化を示す。従って、コーティング組成物が熱硬化性であるバインダー成分を含むと言われる場合、これは無論、一部の物理的硬化も含んだ硬化を排除するものではない。
【0038】
好適なバインダーBの選択及び組み合わせは、製造されるコーティング系の所望の及び/又は要求される特性に従って行う。選択の別の基準は、所望の及び/又は要求される硬化条件、より詳細には硬化温度である。当業者は、そのような選択をどのように行うべきかを熟知しており、それに応じて適応することができる。本発明のコーティング組成物が水性コーティング組成物である場合には、イオン性又は非イオン性に安定化されたポリマーがバインダーBとして使用される。アニオン性に安定化されたポリマーは、アニオン基及び/又は官能基で変性されたポリマーであることが知られており、これらは中和剤によってアニオンに変換することができ(例としてカルボキシレート基及び/又はカルボン酸基)、水中での溶解又は分散を容易にする。非イオン性安定化ポリマーは、ポリオキシアルキレン基で変性されて、その水溶性又は水分散性を高めるポリマーである。好適なバインダーBは、(i)ポリ(メタ)アクリレート、より詳細にはヒドロキシ官能性及び/又はカルボキシレート官能性及び/又はアミン官能性のポリ(メタ)アクリレート、(ii)ポリウレタン、より詳細にはヒドロキシ官能性及び/又はカルボキシレート官能性及び/又はアミン官能性のポリウレタン、(iii)直鎖又は分岐ポリエステル又はポリアミド変性ポリエステル、より詳細には直鎖又は分岐ポリエステルポリオール、(iv)ポリエーテル、より詳細にはポリエーテルポリオール、(v)ポリエポキシド、(vi)フェノキシ樹脂、(vii)記載したポリマーのコポリマー、及び(vi)これらの混合物からなる群、好ましくはポリエポキシド、直鎖又は分岐ポリエステル及び/又はポリエステルポリウレタンコポリマーより選択される。
【0039】
好適なヒドロキシル官能性ポリマー及び/又は樹脂は、30~400mgKOH/固形分1g、より好ましくは100~300KOH/固形分1gのヒドロキシル価を有し、これはDIN53240-2:2007-11に準拠して決定されたものである。純粋なポリ(メタ)アクリレートの場合、OH価はまた、使用されるOH官能性モノマーに基づく計算によって十分な精度で決定できる。酸価は0~30mgKOH/固形分1gであってよく、これはDIN EN ISO2114:2006-11に準拠して決定されたものである。
【0040】
ヒドロキシル官能性ポリマー及び/又は樹脂のガラス転移温度は、DSC測定によりDIN EN ISO11357-2:2014-07に準拠して測定され、好ましくは-150℃~100℃、より好ましくは-120℃~80℃である。
【0041】
好適なポリエステルポリオールは、例えばEP-A-0994117及びEP-A-1273640に記載されている。1つ以上の実施形態において、ポリウレタンポリオールは、ポリエステルポリオールプレポリマーと好適なジ-又はポリイソシアネートとの反応によって調製され、例えば、EP-A-1273640に記載されている。好適なポリシロキサンポリオールは、例えばWO-A-01/09260に記載されており、そこに記載されているポリシロキサンポリオールは、他のポリオール、より詳細には高いガラス転移温度を有するものと好ましくは組み合わせて用いられる。
【0042】
好適なポリ(メタ)アクリレートポリオールは、質量平均分子量Mを1,000~20,000g/モル、より詳細には1,500~10,000g/モルで有し、これらは各場合ともポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されたものである。
【0043】
前記ポリ(メタ)アクリレートポリオールは、好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシル官能性モノマー、及び任意にさらなるモノマー、例えばアルキル(メタ)アクリレート及び/又はビニル芳香族モノマー及び/又は酸官能性不飽和モノマーを含有する。好適なヒドロキシ官能性モノマーは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばより詳細には2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びこれらの混合物である。好適なアルキル(メタ)アクリレートは、例えば、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート又はラウリル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート又はシクロヘキシル(メタ)アクリレート及びこれらの混合物である。好適なビニル芳香族モノマーは、例えば、ビニルトルエン、アルファ-メチルスチレン又は特に、スチレン、アクリル酸又はメタクリル酸のアミド又はニトリル、ビニルエステル又はビニルエーテルである。好適な酸官能性不飽和モノマーは、例えば、アクリル酸及び/又はメタクリル酸である。
【0044】
第1の特に好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのバインダーBは、ポリエポキシドから選択される。本発明の意味でのポリエポキシドは、平均して1分子あたり少なくとも1つのエポキシ基を含むポリマーである。本発明により使用することができるポリエポキシドは、好ましくは、グリシジルエーテル、例えばビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、ビスフェノール-F-ジグリシジルエーテル、エポキシド-ノバラク、エポキシド-o-クレゾール-ノボラク、1,3-プロパン-、1,4-ブタン-又は1,6-ヘキサン-ジグリシジルエーテル及びポリアルキレンオキシドグリシジルエーテル、グリシジルエステル、例えばジグリシジルヘキサヒドロフタレート、グリシジルアミン、例えばジグリシジルアニリン又はテトラグリシジルメチレンジアニリン、脂環式エポキシド、例えば3,4-エポキシシクロヘキシルエポキシエタン、又は3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、及びグリシジルイソシアヌレート、例えばトリスグリシジルイソシアヌレートからなる群より選択されるものである。これらの化合物は、鎖に沿ってヒドロキシル基を含有し、末端にエポキシド基を含有する。エポキシ樹脂がエポキシド基により及びヒドロキシル基により架橋する能力は、その鎖長によって変化する。エポキシド基による架橋の能力は、鎖長及びモル質量が大きくなるにつれて低下するが、ヒドロキシル基による架橋の能力は、鎖長が大きくなるにつれて上昇する。本発明の文脈において、最終的には、当業者にそれ自体既知のあらゆるエポキシ樹脂を使用することが可能であり、例として、以下に特定される市販のエポキシ樹脂が挙げられ、これらは有機溶媒又は水中の溶液又は分散体として得られる。特に好ましくは、少なくとも1つのバインダーBは、100~400g/当量、好ましくは150~350g/当量、非常に好ましくは200~300g/当量のエポキシ当量(EEW)を有し、これらはDIN EN ISO3001:1999-11に準拠して決定されたものである。
【0045】
少なくとも1つのバインダーBがポリエポキシドから選択される場合、少なくとも1つのバインダーBが2つの異なるポリエポキシドの混合物から選択されることが特に好ましく、ここで第1のポリエポキシドB1は0.5~2Pa*sの動粘度(ASTMD445-06に準拠して決定)を有し、そして第2のポリエポキシドB2は800~1400mPa*sの動的粘度(DIN EN ISO3219:1994-10に準拠して500 1/sのせん断速度及び23℃で決定)を有する。前記ポリエポキシドの混合物の使用は、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシド(GO-M)、好ましくは少なくとも1つのリチウムイオンで官能化されたグラフェンオキシドと組み合わせて、高い貯蔵安定性、ポットライフ、基材に対する付着性及び層間付着性に悪影響を与えることなく、優れた防食性をもたらす。
【0046】
この種のエポキシ樹脂は、例えば有機溶媒又は水中の溶液又は分散体の形態で、Cytec社から商品名Beckopoxとして、又はMomentive社から商品名Epikoteとして得られる。
【0047】
第2の特に好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのバインダーBは、直鎖及び/又は分岐ポリエステル、好ましくは直鎖ポリエステルから選択される。直鎖及び分岐ポリエステルの組み合わせを使用すると、前記ポリエステル間の比率の変更によってコーティング組成物の可撓性を調整することが可能になるので、被覆された基材の特定の意図された用途に本発明のコーティング組成物を適合させることが可能となる。
【0048】
この点に関して、少なくとも1つの直鎖ポリエステルは、好ましくは、2,000~30,000g/モル、より好ましくは2,500~25,00g/モル、さらにより好ましくは3,000~20,000g/モル、非常に好ましくは3,000~17,000g/モルの質量平均分子量を有し、これらはDIN EN ISO16014-5に準拠して決定されたものである。
【0049】
バインダーBがポリエステルから選択される場合、コーティング組成物が少なくとも2つの異なる直鎖ポリエステルP1及びP2を含み、ポリエステルP1が、2,000~9,000g/モル、好ましくは3,000~6,000g/モルの質量平均分子量を有し、そして直鎖ポリエステルP2が、10,000~20,000g/モル、好ましくは14,000~16,000g/モルの質量平均分子量を有する場合が好ましく、質量平均分子量は各場合ともDIN EN ISO16014-5に準拠して決定されたものである。
【0050】
少なくとも1つの直鎖ポリエステルP1の少なくとも1つのポリエステルP2に対する好適な質量比は、例えば、2:1~1:2、好ましくは2:1~1:1である。
【0051】
少なくとも1つの直鎖ポリエステルは、好ましくは、20~100mgKOH/g、好ましくは30~80mgKOH/g、より好ましくは40~70mgKOH/gのヒドロキシル価を有し、これらはDIN53240-3:2016-03に準拠して決定されたものである。
【0052】
好適な直鎖ポリエステルは、30~80℃、好ましくは40~70℃、より好ましくは45~65℃のガラス転移温度Tを有し、これらはDIN EN ISO11357-2:2014に準拠して示差走査熱量測定によって測定されたものである。
【0053】
このような直鎖ポリエステルは、例えば、商品名Dynapol L205(Degussa社)及びUralac SH970(DSM社)で市販されている。
【0054】
有利には、コーティング組成物は、少なくとも1つのバインダーB、好ましくは少なくとも1つのポリエポキシド又は少なくとも1つの直鎖ポリエステルを、1~40固形分質量%、好ましくは5~30固形分質量%、非常に好ましくは15~20固形分質量%の総量で含み、これらは各場合ともコーティング組成物の総量に対するものである。前述の量のバインダーを使用することにより、基材上への十分で安定したフィルム形成が保証される。
【0055】
シラン化合物SC:
本発明のコーティング組成物が化成コーティングである場合、これは好ましくは少なくとも1つのシラン化合物SCを含有する。
【0056】
前記シラン化合物SCは、好ましくは、少なくとも1つの第1級アミノ基及び少なくとも1つの加水分解性アルコキシ基を含むシラン化合物から選択される。
【0057】
特に好ましいシラン化合物SCは、一般式(I)
NH-R-Y-R-Si(R3-x(R (I)
(式中、
、Rは、互いに独立して、1~10個の炭素原子を含有するアルキレン基であり、
は、1~4個の炭素原子を含有するアルコキシ基であり、
は、1~4個の炭素原子を含有するアルキル基又は1~4個の炭素原子を含有するアルコキシ基であり、
Yは、酸素、硫黄又はNR基であり、Rは水素又は1~4個の炭素原子を含有するアルキル基であり、そして
xは、0~1である)
を有する。
【0058】
好ましくは、RはCアルキレン基であり、及び/又はRはCアルキレン基である。
【0059】
さらに、一般式(I)中のRは、1個の炭素原子を含有するアルコキシ基であり、そしてxは0である。
【0060】
一般式(I)中のYは、NH基である。
【0061】
特に好ましいシラン化合物SCは、(3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランであり、すなわちRはCアルキレン基、RはCアルキレン基、Rは1個の炭素原子を含有するアルコキシ基、xは0、そしてYはNH基である。
【0062】
コーティング組成物は、好ましくは、少なくとも1つのシラン化合物SC、好ましくは一般式(I)のシラン化合物を、2~20体積%、より好ましくは5~15体積%の総量で含み、これらは各場合ともコーティング組成物の総体積に対するものである。前述の量のシラン化合物SCを、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシド(GO-M)と組み合わせて使用すると、コーティング組成物で処理した基材に優れた付着性だけでなく防食性ももたらすコーティング組成物が得られる。
【0063】
溶媒S1:
本発明の水性コーティング組成物は、第3の必須成分(c)として、少なくとも1つの溶媒S1を含む。
【0064】
好適な溶媒S1は、水、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素、ケトン、エステル、又はこれらの混合物からなる群より選択される。溶媒S1が水から選択される場合、コーティング組成物は水性コーティング組成物である。本発明のコーティング組成物が溶媒ベースのコーティング組成物である場合、それは少なくとも1つの有機溶媒S1を含む。有機溶媒は、本発明のコーティング組成物の架橋を阻害しない、及び/又は本発明のコーティング組成物の他の構成成分と化学反応を起こさないものが使用される。従って当業者は、好適な溶媒をその既知の溶解度及びその反応性に基づいて、容易に選択することができる。特に好ましい有機溶媒S1は、キシレン及び/又はメトキシプロパノール又は脂肪族炭化水素及びメトキシプロピルアセテート及びブチルジグリコールアセテート及び二塩基酸エステルから選択される。
【0065】
本発明のコーティング組成物は、好ましくは、23℃の温度で液体のコーティング組成物である。従ってコーティング組成物は、有利には、少なくとも1つの溶媒S1を10~95質量%、好ましくは20~90質量%、非常に好ましくは25~60質量%の総量で含有し、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対するものである。
【0066】
架橋剤CL:
前述の好ましいバインダーBは、一般にそれ自体ではフィルム形成特性を有しないので、このような樹脂が用いられる場合には、対応する架橋剤が追加的に使用される。よって本発明のコーティング組成物は、好ましくは、少なくとも1つの架橋剤CLをさらに含む。前記架橋剤CLは、好ましくは、アミノ樹脂、非ブロックポリイソシアネート、ブロックポリイソシアネート、ポリカルボジイミド、フェナルカミン(phenalkamine)硬化剤、ポリアミノアミド樹脂、メラミン樹脂、カルボン酸基を含む樹脂、ベータ-ヒドロキシアルキルアミド、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン及びこれらの混合物からなる群、非常に好ましくはフェナルカミン硬化剤及び/又はポリアミノアミド樹脂及び/又はブロック又は芳香族ポリイソシアネート及び/又はメラミン樹脂より選択される。
【0067】
バインダーBとしてエポキシ樹脂を使用する場合、少なくとも1つの架橋剤CLは、好ましくは、フェナルカミン及び/又はポリアミノアミド化合物から選択される。フェナルカミン及びポリアミノアミドは、2つ以上のアミノ基を有する有機化合物の総称「ポリアミン」の一般クラスに属し、例としてジアミン又はトリアミンが挙げられる。この場合の化合物は、アミノ基の他に、脂肪族又は芳香族の親構造を有する、すなわち、例えば、アミノ基及び脂肪族基、又はアミノ基及び芳香族基からなる(脂肪族又は芳香族ポリアミン)。ポリアミンは、無論、脂肪族及び芳香族単位、そしてさらに、任意に、さらなる官能基を含有してもよい。脂肪族ポリアミンの例として、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、3,3’,5-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2-シクロヘキシルジアミン、及びイソホロンジアミンが挙げられる。芳香族アミンの例として、メチレンジアニリン、及び4,4-ジアミノジフェニルスルホンが挙げられる。一般名称「ポリアミン」は同様に、例えば脂肪族又は芳香族ポリアミン(いわゆるベースポリアミン)から、そのアミノ基の少なくとも一部を他の有機化合物と反応させることにより調製されて、化合物の反応性及び/又は溶解性などの様々な特性に影響を与える、及び/又は問題のコーティング組成物から製造されたコーティングの特性(例えば表面硬度)に影響を与える有機化合物も包含する。従ってこのような化合物は付加物を構成し、そしてこれが少なくとも2つのアミノ基を依然として含有する場合は、ポリアミン付加物又は変性ポリアミンとして定義される。これは無論、前述のポリアミンよりも分子量が大きいので、健康への悪影響も低減されている。このようなポリアミン付加物は、脂肪族及び/又は芳香族ポリアミンとポリエポキシドとの反応生成物を構成することが多く、例として、上述のエポキシ樹脂、又は個別の二官能性化合物、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルが挙げられるが、この場合、エポキシド基と比較してアミノ基の化学量論的過剰が使用される。これらの付加物は、実際のコーティング組成物でエポキシ樹脂を硬化させるために使用される。1つの既知の例は、ベースポリアミンとしての3,3’,5-トリメチルヘキサメチレンジアミンと、エポキシ樹脂としてのビスフェノールAジグリシジルエーテルとの反応生成物である。同様に、一般名称「ポリアミン」に包含されるのは、例えば従来のポリアミノアミドであり、これらは、例えばベースポリアミンとして前述のポリアミン及びポリカルボン酸、より詳細にはジカルボン酸の縮合によって調製されるポリマーである。
【0068】
1つ以上の実施形態において、少なくとも1つの架橋剤CL、好ましくはポリアミンは、100~300mgKOH/固形分1g、好ましくは140~200mgKOH/固形分1gのアミン価を有し、これらはDIN16945:1989-03に準拠して決定されたものである。
【0069】
さらに好ましくは、少なくとも1つの架橋剤CL、好ましくはポリアミンが、15~400g/固形分当量、より詳細には150~300g/固形分当量の活性H等価質量(活性水素(NH基)、すなわち、第1級及び第2級アミノ基上の水素1モル当たりのポリアミンの質量)を有する場合が、さらに好ましい(第1級及び第2級アミン基の決定の方法により、ASTM D2073に準拠して測定)。
【0070】
エポキシ樹脂の反応剤及び/又は架橋剤としてのこのようなポリアミン又はポリアミン付加物、或いはポリアミノアミドは、例えばCytec社から商品名Beckopoxで、或いはCardolite社から商品名Cardolite(例えばCardolite NC-562)で得られる。
【0071】
OH官能性樹脂、例えばポリエステル又はOH官能性ポリウレタンがバインダーBとして使用される場合、少なくとも1つの架橋剤CLは、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートをベースとする遊離及び/又はブロックポリイソシアネート及び/又はメラミン樹脂から選択される。そのようなブロックポリイソシアネートは、好ましくは、110~185℃、非常に好ましくは135~155℃の脱ブロック温度を有するので、180~240℃の硬化温度で完全に脱ブロックすることができる。好適なポリイソシアネートには、限定するものではないが、アルキレンポリイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、4-及び/又は2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキン(イソホロンジイソシアネート)、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、3-イソシアナト-メチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、例えば2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4-及び/又は2,6-ジイソシアナトトルエン、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらポリイソシアネートの混合物が含まれる。一般に、平均で3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートが使用され、これらはジイソシアネートの誘導体又は付加物であってよい。有用なポリイソシアネートは、過剰量のイソシアネートと水、ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン、ソルビトール又はペンタエリスリトール)との反応により、又はイソシアヌレートが生成されるイソシアネートのそれ自身との反応により得られる。さらに、ビウレット基含有ポリイソシアネート、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート、ウレタン基含有ポリイソシアネート、カルボジイミド基含有ポリイソシアネート、アロファネート基含有ポリイソシアネート、及びウレジオン基含有ポリイソシアネートを使用することができる。特に好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートをベースとするブロックポリイソシアネートが使用される。
【0072】
少なくとも1つのブロックポリイソシアネートは、好ましくは、4~12%、より好ましくは4~10%、非常に好ましくは4.6~8.6%のNCO含量を有し、これは各場合とも固形分含量に対するものである。
【0073】
メラミン樹脂は、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール及び/又はブタノール、好ましくはメタノールでエーテル化したメラミン樹脂から選択され、そして平均で0.05~3個、好ましくは0.07~2.5個、非常に好ましくは0.08~2個のイミノ基を含有する。
【0074】
好ましくは、コーティング組成物は、少なくとも1つの架橋剤CLを1~30質量%、好ましくは5~20質量%、非常に好ましくは10~15質量%の総量で含有し、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対するものである。前述の架橋剤を記載の量で使用すると、本発明のコーティング組成物の十分な架橋が得られ、それ故リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシド(GO-M)の腐食阻害特性が支持される。
【0075】
硬化触媒:
硬化時間を早めるために、本発明のコーティング組成物は、少なくとも1つの硬化触媒をさらに含むことができる。
【0076】
好適な硬化触媒は、官能化フェノール、スズ(IV)化合物、ビスマス化合物、ブロック又は非ブロックスルホン酸化合物及びこれらの混合物からなる群、好ましくは2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール又はスズ(IV)アルコキシレート及び/又はスルホン酸化合物より選択される。好適なスルホン酸化合物は、ジノニルナフタリンモノスルホン酸、ジノニルナフタリンジスルホン酸及び/又はドセシルベンゼンスルホン酸から選択される。
【0077】
コーティング組成物は、好ましくは、少なくとも1つの硬化触媒を0.05~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%、非常に好ましくは0.3~2.5質量%の総量で含有し、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対するものである。
【0078】
顔料/フィラー:
本発明のコーティング組成物は、少なくとも1つの顔料及び/又はフィラーをさらに含むことができる。顔料は、当業者に既知の着色顔料、効果顔料、及び腐食阻害顔料から選択することができる。
【0079】
用語「顔料」は、例えばDIN55945(日付:2001年10月)から当業者には公知である。本発明の意味における「顔料」は、好ましくは、それらを取り囲む媒体、例えば本発明のコーティング組成物中に実質的に、好ましくは完全に不溶性である粉末又は板状体の化合物を指す。本明細書で定義する顔料は、少なくともその屈折率において「フィラー」とは異なり、これは顔料については≧1.7である。
【0080】
好適な顔料は、好ましくは、有機及び無機の色付与顔料(黒色及び白色顔料を含む)、効果顔料及びこれらの混合物からなる群より選択される。
【0081】
好適な無機色付与顔料の例は、白色顔料、例えば亜鉛白、硫化亜鉛又はリトポン、黒色顔料、例えばカーボンブラック、鉄マンガンブラック、又はスピネルブラック、有彩顔料、例えば酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン、コバルトグリーン又はウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルー又はマンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット又はコバルトバイオレット及びマンガンバイオレット、赤色酸化鉄、カドミウムスルホセレニド、モリブデートレッド又はウルトラマリンレッド、褐色酸化鉄、混合ブラウン、スピネル相及びコランダム相又はクロムオレンジ、又は黄色酸化鉄、ニッケルチタン黄、クロムチタン黄、硫化カドミウム、硫化カドミウム亜鉛、クロム黄、又はビスマスバナデートである。さらなる無機色付与顔料の例は、例えば、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、特にベーマイト、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及びこれらの混合物である。好適な有機色付与顔料の例は、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾール顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、インダントロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、チオインジゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料、又はアニリンブラックである。効果顔料には、金属効果顔料だけでなく、真珠光沢顔料等が含まれる。
【0082】
用語「フィラー」は、例えばDIN55945(日付:2001年10月)から当業者には公知である。本発明の意味における「フィラー」は、好ましくは、本発明のコーティング組成物中に実質的に不溶性、好ましくは完全に不溶性である物質を指し、より詳細には体積を増大させるために使用される。本発明の意味における「フィラー」は、少なくともその屈折率において「顔料」とは異なり、これはフィラーについては<1.7である。当業者に既知の任意の慣用的なフィラーを使用してよい。好適なフィラーの例は、カオリン、ドロマイト、カルサイト、チョーク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、グラファイト、シリケート、例えばマグネシウムシリケート、より詳細には対応するフィロシリケート、例えばヘクトライト、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク及び/又はマイカ、シリカ、より詳細にはヒュームドシリカ、ヒドロキシド、例えばアルミニウムヒドロキシド又はマグネシウムヒドロキシド、又は有機フィラー、例えば布地(textile)繊維、セルロース繊維、ポリエチレン繊維、又はポリマー粉末である。さらなる詳細については、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag、1998年、第250頁以降、「Filler」を参照されたい。
【0083】
上記顔料及びフィラーは本発明のコーティング組成物に好適に用いることができるが、このような環境上問題となる元素、例えばPb、Cd、Cr、Cu、Mo、Hg、Se又はZnを含有する顔料はあまり好ましくなく、そして最も好ましくは、本発明のコーティング組成物には含まれない。
【0084】
少なくとも1つの顔料及び/又はフィラーは、好ましくは、10~70質量%、より好ましくは20~60質量%、非常に好ましくは35~50質量%の総量で含有され、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対するものである。1つ以上の顔料及び/又はフィラーが本発明のコーティング組成物中に存在する場合、前述の量は、前記コーティング組成物中に含有されるあらゆる顔料及び/又はフィラーの量の合計に対するものである。
【0085】
本発明のコーティング組成物が、少なくとも1つの着色顔料、例えば二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛又は有機顔料を含有する場合、かかる顔料は、好ましくは、5~20質量%、より好ましくは5~15質量%、非常に好ましくは7.5~質量%の総量で存在し、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対するものである。
【0086】
腐食阻害顔料の好適な量は、2~10質量%、好ましくは4~8質量%、非常に好ましくは4~6質量%であり、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対するものである。
【0087】
コーティング組成物は、好ましくは、顔料対バインダーの比を10:1~1:10、より好ましくは6:1~1:6、さらにより好ましくは5:1~1:2、非常に好ましくは7:3又は2:1~1:2で含む。
【0088】
添加剤:
コーティング組成物は、水性及び溶媒ベースのコーティング組成物において一般的に使用される、少なくとも1つの添加剤をさらに含有することができる。好適なコーティング添加剤は、(i)UV吸収剤、(ii)光安定剤、例えばHALS化合物、ベンゾトリアゾール又はオキサラニリド、(iii)レオロジー改質剤、例えば垂れ制御剤(尿素結晶改質樹脂)、有機増粘剤及び無機増粘剤、(iv)フリーラジカル捕捉剤、(v)滑剤、(vi)重合阻害剤、(vii)消泡剤、(viii)湿潤剤、(ix)フッ素化合物、(x)付着促進剤、(xi)レベリング剤、(xii)フィルム形成助剤、例えばセルロース誘導体、(xiii)難燃剤、及び(xiv)これらの混合物からなる群より選択される。
【0089】
好適な湿潤剤の例は、ポリカルボン酸ポリマー、高分子量ブロックコポリマー、アクリルコポリマー、不飽和ポリアミナミド、カルボン酸エステル及びこれらの混合物である。湿潤剤は、典型的には、0.1~1.5質量%、好ましくは0.2~0.5質量%の総量で含有され、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対するものである。
【0090】
好適な消泡剤は、消泡特性を有するシリコンフリーポリマー、ポリメチルアルキルシロキサン、ポリシロキサン、アクリル樹脂、及びこれらの混合物である。消泡剤は、典型的には、0.1~1.5質量%、非常に好ましくは0.25~0.75質量%の総量で含有され、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対するものである。
【0091】
上記のさらなる添加剤は、好ましくは慣用的な量、例えばコーティング組成物の総質量に対して0.1~20質量%で使用する。
【0092】
1つ以上の具体的な実施形態において、本発明のコーティング組成物は、クロム含有腐食防止剤を全く含まない。より非常に具体的な一実施形態において、本発明のコーティング組成物は、クロム及びクロム含有物質を完全に含まない、すなわち、クロム及びクロム含有物質のわずかな痕跡及び不純物も含有せず、非常に好ましくは、前記物質の含有量は、コーティング組成物の総質量に対して0質量%である。
【0093】
本発明のコーティング組成物の特性:
本発明のコーティング組成物が噴霧により適用される組成物である場合、この組成物が好ましくは有する20℃でのDIN4カップ中のフォード粘度は、15~50秒、より好ましくは20~45秒、非常に好ましくは25~40秒である。
【0094】
本発明のコーティング組成物が浸漬コーティング組成物として配合される場合、この組成物が好ましくは有する23℃及びせん断速度150s-1での粘度は、200~1,000mPa*s、非常に好ましくは500~800mPa*sであり、これはDIN EN ISO3219:1994-10及びDIN53019-2:2001-02に準拠して決定されたものである。
【0095】
本発明のコーティング組成物がコイルコーティングに好適なプライマーコーティング組成物として配合される場合、この組成物が好ましくは有する粘度は、4mm当たり12~120sであり、これはDIN53211-4に準拠して決定されたものである。
【0096】
本発明のコーティング組成物の固形分含量は、個々の場合の要求に応じて変化させてよい。固形分含量は、主として適用に必要な粘度によって導かれ、当業者がその一般的な技術知識に基づいて調整してよい。好ましくは、本発明のコーティング組成物は、20~90質量%、より具体的には30~80質量%、そしてより詳細には40~60質量%又は50~70質量%の固形分含量を有し、これはDIN EN ISO3251:2008-06に準拠して決定されたものである。
【0097】
本発明のコーティング組成物は、プライマーコーティング組成物、プライマー-サーフェーサーコーティング組成物、フィラーコーティング組成物、化成コーティング組成物、電着コーティング組成物又は浸漬コーティング組成物として配合することができる。本発明のコーティング組成物の特定の使用に応じて、フィルム形成特性及び適用特性を特定の意図された用途に適合させるために、好適なバインダーB及び溶媒S1が選択される。
【0098】
本発明のコーティング組成物は、1成分系(1C)又は多成分系、すなわち、少なくとも2つの別個の成分を含む系として配合することができる。
【0099】
1成分(1C)系では、架橋させる成分、例えばバインダー(B)としての有機ポリマー及び架橋剤CLは、互いに並行して、すなわち一成分中に存在する。このための前提条件は、架橋させる成分が、比較的高い温度及び/又は化学線への暴露時のみに互いに反応することである。
【0100】
2成分(2C)系では、架橋させる成分、例えばバインダーBとしての有機ポリマー及び架橋剤CLは、少なくとも2つの成分中に互いに別々に存在し、コーティング組成物の適用直前に混合される。この形態は、架橋させる成分が室温であっても互いに反応する場合に選択される。
【0101】
好ましくは、本発明のコーティング組成物は、2成分(2C)系として配合される。前記系は、好ましくは、少なくともバインダーBを第1の成分中の好適な溶媒S1中に含有し、そして少なくとも1つの架橋剤CLを第2の成分中の好適な溶媒S1中に含有する。リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシド(GO-M)は、第1の成分又は第2の成分のいずれかに含有させることができる。好ましくは、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシド(GO-M)は、第1の成分中に含有される。
【0102】
本発明のコーティング組成物を調製する方法
本発明のさらなる主題は、本発明のコーティング組成物を調製する方法であり、該方法は、以下の工程:
(a) リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含む少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)の分散体Dを少なくとも1つの溶媒S2中に調製する工程、及び
(b) 工程(a)で調製した分散体Dを、少なくとも1つのバインダーB及び/又は少なくとも1つのシラン化合物SC及び少なくとも1つの溶媒S1を含有する混合物に添加する工程
を含む。
【0103】
リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有する少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)を少なくとも1つの溶媒S2中に分散させることは、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシド(GO-M)のそれぞれを、少なくとも1つの溶媒S2に添加し、そして前記リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシド(GO-M)を、例えば超音波処理によって分散させることにより、行うことができる。
【0104】
工程(a)で調製された分散体Dは、好ましくは、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有する少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)を、0.05~5質量%、より好ましくは1~4質量%、非常に好ましくは1.5~3質量%の総量で含有し、これらは各場合とも分散体の総質量に対するものである。前記量により、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシド(GO-M)を、十分に高い量で溶媒S2中に分散させることができるので、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシド(GO-M)を本発明のコーティング組成物へ組み込むことは、固形分含量の高さに著しい影響をもたらさない。
【0105】
工程(a)において、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシド(GO-M)の分散に使用される好適な溶媒S2は、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素、ケトン、エステル又はこれらの混合物、好ましくはエステル、非常に好ましくはエチルアセテートからなる群より選択される。
【0106】
好ましくは、分散体Dは、少なくとも1つの溶媒S2を95~99.95質量%、好ましくは96~99質量%、非常に好ましくは97~98.5質量%の総量で含有し、これらは各場合とも分散体の総質量に対するものである。よって本発明の方法の工程(a)で調製される分散体は、好ましくは、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシド(GO-M)及び溶媒S2からなる。
【0107】
工程(b)で添加される分散体Dの好適な総量は、0.1~10質量%、好ましくは1~7質量%、非常に好ましくは2~4質量%であり、これらは各場合とも調製されたコーティング組成物の総質量に対するものである。
【0108】
本発明のコーティング組成物について述べてきたことは、本発明の方法のさらに好ましい実施形態に関して、必要な変更を加えて適用される。
【0109】
基材(S)上に少なくとも1つのコーティング層を調製するための本発明の方法:
本発明のコーティング組成物及び本発明の方法から調製されたコーティング組成物は、基材上にコーティング層を形成するために使用することができる。
【0110】
本発明による方法では、以下の工程:
(i) 本発明のコーティング組成物又は本発明の方法によって調製されたコーティング組成物を、基材(S)上に直接適用する工程、
(ii) 前記コーティング組成物を硬化させることにより、工程(i)で適用されたコーティング組成物からフィルムを形成する工程、及び
(iii) 任意に、工程(ii)で形成されたコーティング層に少なくとも1つのさらなるコーティング組成物を適用し、前記コーティング組成物を硬化させる工程
によって、基材(S)上に少なくとも1つのコーティング層を形成する。
【0111】
基材(S)は、好ましくは、金属基材、化成コーティングで被覆された金属基材、及びこれらの混合物から選択される。本発明のコーティング組成物が少なくとも1つのシラン化合物SCを含む場合、工程(i)において金属基材が使用される場合が好ましい。本発明のコーティング組成物が少なくとも1つのシラン化合物SCを含有しない場合、工程(i)を行う前に基材に化成コーティング層を適用し、当技術分野で既知の化成コーティング組成物を使用して本発明のコーティング組成物の付着性を向上させることができる。特に好ましくは、クロムを含まない化成コーティング組成物、例えばGranodine1455又は亜鉛ホスフェートコートが本発明の方法内で使用される。化成層は、好ましくは20~300nmの厚さであり、そして例えばケムコーター(chemcoater)を介して、又は噴霧/スキージ(squeezing)によって適用することができる。
【0112】
基材(S)は、本発明の方法の工程(i)の前に、又は化成コーティングを適用する前に、任意の従来の方法で、例えば洗浄によって、前処理してよい。洗浄は機械的に、例えば、拭き取り、やすりがけ及び/又は研磨によって、及び/又は酸洗い法によって化学的に、例えば酸又はアルカリ浴中の湿潤エッチング、又は塩酸又は硫酸によって、達成することができる。有機溶媒又は水性洗浄剤を用いた洗浄も可能である。
【0113】
第1の選択肢によれば、好ましい金属基材は、アルミニウム、アルミニウム合金、例えば、より詳細には2000er、5000er、6000er又は7000erシリーズからのアルミニウム-銅合金、非常に好ましくはAA6014合金、AA6016合金、AA6022合金、AA6111合金、AA6061合金、AA7075合金及びAA5083合金、及び自動車分野で一般的に使用される非合金及び合金鋼である。基材そのものは任意の形状でよく、例えば、単純な金属パネル又は自動車の車体及びその部品などの複雑な構成要素であってもよい。
【0114】
第2の選択肢によれば、好ましい金属基材は、任意に金属コーティングで被覆され、そしてコイルコーティングプロセスで頻繁に使用される、構造鋼である。好適な金属コーティングは、亜鉛/鉄合金、亜鉛/アルミニウム合金、アルミニウム/亜鉛合金、亜鉛/マグネシウム合金、亜鉛/クロム又は亜鉛/ニッケル合金、及びアルミニウムをドープした亜鉛から選択される。
【0115】
工程(i):
本発明の方法の工程(i)において、本発明のコーティング組成物又は本発明の方法によって調製されたコーティング組成物を、基材上に直接適用する。ここで使用する「基材に直接適用する」という語句は、コーティング組成物を適用する前に、有機-ポリマーマトリックスを形成することができる他のコーティング材料、又は化成コーティング材料が、本発明の方法において適用されないことを意味する。しかしながらこれは、コーティング層、例えば先に開示した化成コーティング層を既に含んでいる基材の使用を除外するものではない。
【0116】
基材に応じて、コーティング組成物の適用は、例えば既知の技術により、例えば噴霧、ナイフコーティング、散布、注入、浸漬、含浸、トリクリング又は圧延によって行うことができる。自動車分野で使用される金属基材の場合、噴霧又はナイフコーティングの技術が用いられる。
【0117】
工程(i)で適用されるコーティング組成物がコイルコーティングプロセスで使用される場合、前記組成物は、噴霧、フローコーティング又はローラーコーティングによって適用してよい。これらの適用技術のうち、ローラーコーティングは特に有利であり、従って、本発明により好ましく使用される。ローラーコーティングにおける各適用工程は、2本以上のロールを用いて行ってよい。2~4本、及び特に2本のロールを使用することが好ましい。ローラーコーティングでは、回転するピックアップロールが本発明のコーティング材料のリザーバーに浸漬され、このようにして適用されるコーティング材料をピックアップする。この材料は、ピックアップロールによって、直接又は少なくとも1つの移送ロールを介して、回転する適用ロールに移送される。この後者のロールから、コーティング材料は両方向又は逆方向の接触転写によってコイル上に転写される。あるいは、本発明のコーティング材料は、ニップフィードとも呼ばれる2つのロールの間のギャップに直接送り込むことも可能である。本発明によれば、逆方向の接触転写、すなわちリバースローラーコーティングプロセスが有利であり、従って好ましく用いられる。
【0118】
工程(ii):
本発明の方法の工程(ii)において、適用されたコーティング組成物を既知の技術を用いて硬化させることにより、ポリマーフィルムを形成する。本発明の文脈では物理的及び熱的に硬化する系が好ましいので、物理的又は熱硬化が好ましい。特に好ましいのは、外部架橋型2C系の熱硬化である。
【0119】
第1の選択肢によれば、熱硬化は好ましくは20~25℃の温度で起こる。このかなり低い硬化温度は、エポキシ樹脂/ポリアミン系であるバインダー/架橋剤系の使用により可能である。熱硬化の期間は、特定の場合に応じて大きく変化し得、例えば5分~5日、より詳細には50~70分である。
【0120】
第2の選択肢によれば、硬化は、好ましくは、140~240℃の温度で、対流熱伝達、近赤外線又は遠赤外線の照射、及び/又は電気誘導を用いることにより起こる。前記硬化温度は、適用された本発明のコーティング組成物をその上に有する連続コイルが対流オーブンを通過して、コイルがオーブンの端部で200~240℃のピーク金属温度(PTM)に達するコイルコーティングプロセス内で好ましい。このオーブン内の滞留時間は、ベルトの速度及びコイルの材料に応じて、典型的には20~60秒である。好ましくは、30~50m、特に35~45mの長さの強制空気オーブンが使用される。強制空気の温度は、好ましくは300℃未満、特に280℃未満である。
【0121】
硬化に先立ち、個々の場合及び使用されるバインダー/架橋剤系に応じて、例えば、室温(約15及び25℃)で1~60分間のフラッシュオフ、及び/又は、例えば、わずかに上昇させた30~80℃の温度で1~60分間の乾燥を行ってよい。本発明の文脈におけるフラッシュオフ及び乾燥とは、有機溶媒及び/又は水の蒸発を意味し、その結果、乾燥しているがまだ完全に架橋していないコーティングフィルムが得られる。
【0122】
工程(ii)の後に得られた硬化コーティング層の乾燥膜厚は、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~90μm、非常に好ましくは55~75μm又は3~30μmである。本発明の方法を自動車及び航空分野で使用する基材の被覆に用いる場合、より高い15~100μmの乾燥膜厚が用いられ、一方でコイルコーティングの場合、10μm未満の乾燥膜厚が好ましい。
【0123】
工程(iii):
本発明の任意の工程(iii)において、少なくとも1つのさらなるコーティング組成物を、工程(ii)で形成された硬化したコーティングフィルム上に適用し、前記さらなるコーティング組成物を硬化させる。工程(ii)の後に得られた被覆された基材は、工程(iii)を行う前に、例えば被覆された基材に水を噴霧することによって冷却することができる。これは、工程(ii)において高い硬化温度が使用される場合に特に好ましい。
【0124】
少なくとも1つのさらなるコーティング層は、ポリマーマトリックスに基づくコーティング層を形成することができる任意の慣用的で既知のコーティング材料を適用することによって得られる。本発明のコーティングがオーバーコートされるコーティング材料についても、上述した適用方法を用いてよいが、それらが粉体コーティング材料又は電着被覆である場合は、慣用的で特別な適用方法、例えば低速コイルの場合には静電粉体噴霧、高速コイルの場合には粉雲チャンバープロセス、及びカソード電着塗装コーティングが使用される。
【0125】
適用に次いで、同様に既知で慣用的な技術によってコーティングの硬化を行う。個々のコーティングは、毎回個々の被覆を完全に硬化させることなく連続的に適用し、その後、最後に共同硬化手順で硬化させることによっても製造できる(ウェット-オン-ウェット法)。無論、各場合とも個々の被覆を完全に硬化させることも可能である。
【0126】
本発明の方法は、好ましくは、少なくとも1つのさらなるコーティング材料を適用し硬化させて、多層コーティングを形成することを含む。自動車産業の文脈では、さらなるコーティングは、既知である通り、慣用的なサーフェーサーコート、ベースコート及びクリアコートであってよい。従って、本発明のコーティング組成物から製造される硬化コーティング層とは別に、少なくとも1つのサーフェーサーコート、ベースコート及びクリアコートも含むか、又は記載の被覆からなる多層コーティングが製造されることが好ましい。コイルコーティング又は航空産業の文脈では、少なくとも1つのさらなるコーティング組成物は、例えば、(2成分)ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ、メラミン又はフェノール樹脂系をベースとする典型的な単一被覆のトップコート組成物を構成する。従って、本発明の同様に好ましい変形例では、本発明のコーティング組成物から製造される硬化コーティング層とは別に、トップコートも含むか、又はこれら2つの被覆からなる多層コーティングが製造される。
【0127】
さらなるコーティング材料が自動車で一般的に使用されるサーフェーサーコート、ベースコート、クリアコート又はトップコート材料である場合、工程(iii)における硬化は、好ましくは、50~70℃の温度で20~40分の期間行われる。そのようなサーフェーサーコート及び/又はベースコート及び/又はクリアコート層の得られた乾燥膜厚は、各場合とも、好ましくは40~100μm、より好ましくは45~90μm、非常に好ましくは50~60μmである。
【0128】
さらなるコーティング材料がコイルコーティング又は航空産業で使用されるトップコート材料である場合、工程(iii)における硬化は、好ましくは、工程(ii)で前述したように、対流オーブンにより250~270℃(PMT)の温度で行われる。滞留時間は、好ましくは約10~30秒であり、その後、前記基材に水を噴霧することによって、被覆された基材を冷却してよい。得られたトップコート層の乾燥膜厚は、好ましくは1~15μm、好ましくは1~10μm、非常に好ましくは1~5μmである。
【0129】
本発明の被覆コイルは、製造後に巻くことができ、次いで別の場所でさらに処理することができ、あるいは、コイルコーティング操作から直接来たままでさらに処理することもできる。例えば、プラスチックでラミネートする、又は取り外し可能な保護フィルムをこれらに提供してもよい。これらは適切な大きさの部品に切断した後、成形することもできる。好適な成形方法の例には、プレス及び深絞りが含まれる。
【0130】
本発明のコーティング組成物及び該コーティング組成物を製造するための本発明の方法について述べてきたことは、本発明の方法のさらに好ましい実施形態に関して、必要な変更を加えて適用される。
【0131】
本発明のコーティング層又は多層コーティング(MC):
本発明の方法の工程(ii)又は(iii)の終了後の結果は、本発明のコーティング層又は多層コーティング(MC)である。
【0132】
本発明のコーティング組成物、コーティング組成物を製造するための本発明の方法、及び被覆された基材を製造するための本発明の方法について述べてきたことは、本発明のコーティング層又は多層コーティングのさらに好ましい実施形態に関して、必要な変更を加えて適用される。
【0133】
本発明の使用方法:
本発明の最後の主題は、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有する少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)を、組成物の防食性を改善するために前記組成物に使用する方法である。
【0134】
好ましくは、組成物はコーティング組成物であり、より好ましくは有機コーティング組成物である。
【0135】
代替の実施形態によれば、組成物は、シーラント組成物である。
【0136】
本発明のコーティング組成物、コーティング組成物を製造するための本発明の方法、被覆された基材を製造するための本発明の方法及び本発明の被覆された基材について述べてきたことは、本発明の方法のさらに好ましい実施形態に関して、必要な変更を加えて適用される。
【0137】
本発明を、特に以下の実施形態によって記載する:
実施形態1: a) リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有する少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)、
b) 少なくとも1つのバインダーB及び/又は少なくとも1つのシラン化合物SC、及び
c) 少なくとも1つの溶媒S1
を含むコーティング組成物。
【0138】
実施形態2: 1価金属イオンがリチウムである、実施形態1によるコーティング組成物。
【0139】
実施形態3: コーティング組成物が、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有する少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)、好ましくはリチウムイオンを含有するグラフェンオキシドを、0.1ppm~5質量%、好ましくは0.1ppm~1質量%、より好ましくは0.1ppm~500ppm、さらにより好ましくは0.3~50ppm、非常に好ましくは0.35~1ppmの総量で含有し、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対するものである、実施形態1又は2によるコーティング組成物。
【0140】
実施形態4: 少なくとも1つのバインダーBが、(i)ポリ(メタ)アクリレート、より詳細にはヒドロキシ官能性及び/又はカルボキシレート官能性及び/又はアミン官能性のポリ(メタ)アクリレート、(ii)ポリウレタン、より詳細にはヒドロキシ官能性及び/又はカルボキシレート官能性及び/又はアミン官能性のポリウレタン、(iii)直鎖又は分岐ポリエステル又はポリアミド変性ポリエステル、より詳細には直鎖又は分岐ポリエステルポリオール、(iv)ポリエーテル、より詳細にはポリエーテルポリオール、(v)ポリエポキシド、(vi)フェノキシ樹脂、(vii)記載したポリマーのコポリマー、及び(vi)これらの混合物からなる群、好ましくはポリエポキシド、直鎖又は分岐ポリエステル及び/又はポリエステルポリウレタンコポリマーより選択される、先行する実施形態のいずれかによるコーティング組成物。
【0141】
実施形態5: 少なくとも1つのバインダーBが、100~400g/当量、好ましくは150~350g/当量、非常に好ましくは200~300g/当量のエポキシ当量(EEW)を有し、これらはDIN EN ISO3001:1999-11に準拠して決定されたものである、先行する実施形態のいずれかによるコーティング組成物。
【0142】
実施形態6: 少なくとも1つのバインダーBが2つの異なるポリエポキシドの混合物から選択され、ここで第1のポリエポキシドB1は0.5~2Pa*sの動粘度(ASTM D445-06に準拠して決定)を有し、そして第2のポリエポキシドB2は800~1400mPa*sの動的粘度(DIN EN ISO3219:1994-10に準拠して500 1/sのせん断速度及び23℃で決定)を有する、先行する実施形態のいずれかによるコーティング組成物。
【0143】
実施形態7: 少なくとも1つのバインダーBが、直鎖及び/又は分岐ポリエステル、好ましくは直鎖ポリエステルから選択される、実施形態1から4のいずれかによるコーティング組成物。
【0144】
実施形態8: 少なくとも1つの直鎖ポリエステルが2,000~30,000g/モル、好ましくは2,500~25,00g/モル、より好ましくは3,000~20,000g/モル、非常に好ましくは3,000~17,000g/モルの質量平均分子量を有し、これらはDIN EN ISO16014-5に準拠して決定されたものである、実施形態7によるコーティング組成物。
【0145】
実施形態9: コーティング組成物が少なくとも2つの異なる直鎖ポリエステルP1及びP2を含み、ポリエステルP1が2,000~9,000g/モル、好ましくは3,000~6,000g/モルの質量平均分子量を有し、そして直鎖ポリエステルP2が10,000~20,000g/モル、好ましくは14,000~16,000g/モルの質量平均分子量を有し、質量平均分子量は各場合ともDIN EN ISO16014-5に準拠して決定されたものである、実施形態7又は8によるコーティング組成物。
【0146】
実施形態10: 少なくとも1つの直鎖ポリエステルP1の少なくとも1つのポリエステルP2に対する質量比が、2:1~1:2、好ましくは2:1~1:1である、実施形態9によるコーティング組成物。
【0147】
実施形態11: 少なくとも1つの直鎖ポリエステルが、20~100mgKOH/g、好ましくは30~80mgKOH/g、より好ましくは40~70mgKOH/gのヒドロキシル価を有し、これらはDIN53240-3:2016-03に準拠して決定されたものである、実施形態7から10のいずれかによるコーティング組成物。
【0148】
実施形態12: 少なくとも1つの直鎖ポリエステルが、30~80℃、好ましくは40~70℃、より好ましくは45~65℃のガラス転移温度Tを有し、これらはDIN EN ISO11357-2:2014に準拠して測定されたものである、実施形態7から11のいずれかによるコーティング組成物。
【0149】
実施形態13: コーティング組成物が、少なくとも1つのバインダーB、好ましくは少なくとも1つのポリエポキシド又は少なくとも1つの直鎖ポリエステルを、1~40固形分質量%、好ましくは5~30固形分質量%、非常に好ましくは15~20固形分質量%の総量で含み、これらは各場合ともコーティング組成物の総量に対するものである、先行する実施形態のいずれかによるコーティング組成物。
【0150】
実施形態14: シラン化合物SCが、少なくとも1つの第1級アミノ基及び少なくとも1つの加水分解性アルコキシ基を含むシラン化合物から選択される、先行する実施形態のいずれかによるコーティング組成物。
【0151】
実施形態15: シラン化合物SCが、一般式(I)
NH-R-Y-R-Si(R3-x(R (I)
(式中、
、Rは、互いに独立して、1~10個の炭素原子を含有するアルキレン基であり、
は、1~4個の炭素原子を含有するアルコキシ基であり、
は、1~4個の炭素原子を含有するアルキル基又は1~4個の炭素原子を含有するアルコキシ基であり、
Yは、酸素、硫黄又はNR基であり、Rは水素又は1~4個の炭素原子を含有するアルキル基であり、そして
xは、0~1である)
を有する、先行する実施形態のいずれかによるコーティング組成物。
【0152】
実施形態16: RがCアルキレン基であり、及び/又はRがCアルキレン基である、実施形態15によるコーティング組成物。
【0153】
実施形態17: Rが1個の炭素原子を含有するアルコキシ基であり、そしてxが0である、実施形態15又は16によるコーティング組成物。
【0154】
実施形態18: YがNH基である、実施形態15から17のいずれかによるコーティング組成物。
【0155】
実施形態19: 少なくとも1つのシラン化合物SC、好ましくは一般式(I)のシラン化合物を、2~20体積%、好ましくは5~15体積%の総量で含み、これらは各場合ともコーティング組成物の総体積に対するものである、先行する実施形態のいずれかによるコーティング組成物。
【0156】
実施形態20: 溶媒S1が、水、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素、ケトン、エステル、又はこれらの混合物からなる群、好ましくは水又はキシレン及び/又はメトキシプロパノール又は脂肪族炭化水素及びメトキシプロピルアセテート及びブチルジグリコールアセテート及び二塩基酸エステルから選択される、先行する実施形態のいずれかによるコーティング組成物。
【0157】
実施形態21: 少なくとも1つの溶媒S1を10~95質量%、好ましくは20~90質量%、非常に好ましくは25~60質量%の総量で含有し、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対するものである、先行する実施形態のいずれかによるコーティング組成物。
【0158】
実施形態22: アミノ樹脂、非ブロックポリイソシアネート、ブロックポリイソシアネート、ポリカルボジイミド、フェニルアルカミン硬化剤、ポリアミノアミド樹脂、メラミン樹脂、カルボン酸基を含む樹脂、ベータ-ヒドロキシアルキルアミド、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン及びこれらの混合物からなる群、非常に好ましくはフェニルアルカミン硬化剤及び/又はポリアミノアミド樹脂及び/又はブロック又は芳香族ポリイソシアネート及び/又はメラミン樹脂より好ましくは選択される、少なくとも1つの架橋剤CLをさらに含む、先行する実施形態のいずれかによるコーティング組成物。
【0159】
実施形態23: 少なくとも1つの架橋剤CLが、100~300mgKOH/固形分1g、好ましくは140~200mgKOH/固形分1gのアミン価を有し、これらはDIN16945:1989-03に準拠して決定されたものである、実施形態22によるコーティング組成物。
【0160】
実施形態24: 少なくとも1つの架橋剤CLが、15~400g/固形分当量、好ましくは150~300g/固形分当量の活性水素当量を有する、実施形態22又は23によるコーティング組成物。
【0161】
実施形態25: 少なくとも1つの架橋剤CLが、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートをベースとするブロックポリイソシアネート及び/又はメラミン樹脂より選択される、実施形態24によるコーティング組成物。
【0162】
実施形態26: 少なくとも1つのブロックポリイソシアネートが、4~12%、好ましくは4~10%、より好ましくは4.6~8.6%のNCO含量を有し、これは各場合とも固形分含量に対するものである、実施形態25によるコーティング組成物。
【0163】
実施形態27: メラミン樹脂が、メタノール、エタノール、プロパノール及び/又はブタノール、好ましくはメタノールでエーテル化したメラミン樹脂から選択され、そして平均で0.05~3個、好ましくは0.07~2.5個、非常に好ましくは0.08~2個のイミノ基を含有する、実施形態25又は26によるコーティング組成物。
【0164】
実施形態28: 少なくとも1つの架橋剤CLを1~30質量%、好ましくは5~20質量%、非常に好ましくは10~15質量%の総量で含有し、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対するものである、実施形態22から27のいずれかによるコーティング組成物。
【0165】
実施形態29: 少なくとも1つの硬化触媒をさらに含む、先行する実施形態のいずれかによるコーティング組成物。
【0166】
実施形態30: 少なくとも1つの硬化触媒が、官能化フェノール、スズ(IV)化合物、ビスマス化合物、ブロック又は非ブロックスルホン酸化合物及びこれらの混合物からなる群、好ましくは2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール又はスズ(IV)アルコキシレート及び/又はブロックジノニルナフタリンスルホン酸より選択される、実施形態29によるコーティング組成物。
【0167】
実施形態31: 少なくとも1つの硬化触媒を0.05~5質量%、好ましくは0.1~3質量%、非常に好ましくは0.3~2.5質量%の総量で含有し、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対するものである、実施形態29又は30によるコーティング組成物。
【0168】
実施形態32: 少なくとも1つの顔料及び/又はフィラーをさらに含む、先行する実施形態のいずれかによるコーティング組成物。
【0169】
実施形態33: 少なくとも1つの顔料及び/又はフィラーが、(i)白色顔料、例えば二酸化チタン、亜鉛白、色付酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン、(ii)黒色顔料、例えば黒色酸化鉄、鉄マンガンブラック、スピネルブラック、カーボンブラック、(iii)着色顔料、例えばウルトラマリングリーン、ウルトラマリンブルー、マンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット、マンガンバイオレット、赤色酸化鉄、モリブデートレッド、ウルトラマリンレッド、褐色酸化鉄、混合ブラウン、スピネル相及びコランダム相、黄色酸化鉄、ビスマスバナデート、(iv)フィラー顔料、例えば二酸化シリコン、酸化シリコン、酸化マグネシウム、カオリン、石英粉、酸化アルミニウム、アルミニウムヒドロキシド、天然マイカ、粘土、天然及び沈殿チョーク、タルク、硫酸バリウム、重晶石、(v)腐食阻害顔料、例えばカルシウムで変性したシリカ顔料、亜鉛ホスフェート、アルミニウムホスフェート、アルミニウムトリホスフェート、シリカマグネシウム顔料、(vi)これらの混合物からなる群より選択される、実施形態32によるコーティング組成物。
【0170】
実施形態34: 少なくとも1つの顔料及び/又はフィラーを10~70質量%、好ましくは20~60質量%、非常に好ましくは35~50質量%の総量で含み、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対するものである、実施形態32又は33によるコーティング組成物。
【0171】
実施形態35: 顔料対バインダーの比を10:1~1:10、より好ましくは6:1~1:6、さらにより好ましくは5:1~1:2、非常に好ましくは7:3又は2:1~1:2で含む、実施形態32から34のいずれかによるコーティング組成物。
【0172】
実施形態36: (i)UV吸収剤、(ii)光安定剤、例えばHALS化合物、ベンゾトリアゾール又はオキサラニリド、(iii)レオロジー改質剤、例えば垂れ制御剤(尿素結晶改質樹脂)、有機増粘剤及び無機増粘剤、(iv)フリーラジカル捕捉剤、(v)滑剤、(vi)重合阻害剤、(vii)消泡剤、(viii)湿潤剤、(ix)フッ素化合物、(x)付着促進剤、(xi)レベリング剤、(xii)フィルム形成助剤、例えばセルロース誘導体、(xiii)難燃剤、及び(xiv)これらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのコーティング添加剤をさらに含む、先行する実施形態のいずれかによるコーティング組成物。
【0173】
実施形態37: クロム及びクロム含有化合物の含有量が、コーティング組成物の総質量に対して0質量%である、先行する実施形態のいずれかによるコーティング組成物。
【0174】
実施形態38: 20℃でのDIN4カップ中のフォード粘度が15~50秒、好ましくは20~45秒、非常に好ましくは25~40秒である、先行する実施形態のいずれかによるコーティング組成物。
【0175】
実施形態39: 23℃及びせん断速度150s-1での粘度が、200~1,000mPa*s、好ましくは500~800mPa*sであり、これはDIN EN ISO3219:1994-10及びDIN53019-2:2001-02に準拠して決定されたものである、実施形態1から39のいずれかによるコーティング組成物。
【0176】
実施形態40: DIN53211-4に準拠して決定された粘度が、4mm当たり12~120sである、実施形態1から39のいずれかによるコーティング組成物。
【0177】
実施形態41: プライマーコーティング組成物、プライマー-サーフェーサーコーティング組成物、フィラーコーティング組成物、化成コーティング組成物、電着コーティング組成物又は浸漬コーティング組成物である、先行する実施形態のいずれかによるコーティング組成物。
【0178】
実施形態42: 以下の工程:
(a) リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含む少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)の分散体Dを少なくとも1つの溶媒S2中に調製する工程、及び
(b) 工程(a)で調製した分散体Dを、少なくとも1つのバインダーB及び/又は少なくとも1つのシラン化合物SC及び少なくとも1つの溶媒S1を含有する混合物に添加する工程
を含む、実施形態1から41のいずれかによるコーティング組成物を調製する方法。
【0179】
実施形態43: 分散体Dが、リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含む少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)を、0.05~5質量%、好ましくは1~4質量%、非常に好ましくは1.5~3質量%の総量で含有し、これらは各場合とも分散体の総質量に対するものである、実施形態42による方法。
【0180】
実施形態44: 溶媒S2が、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素、ケトン、エステル又はこれらの混合物、好ましくはエステル、非常に好ましくはエチルアセテートからなる群より選択される、実施形態42又は43による方法。
【0181】
実施形態45: 分散体Dが、少なくとも1つの溶媒S2を95~99.95質量%、好ましくは96~99質量%、非常に好ましくは97~98.5質量%の総量で含有し、これらは各場合とも分散体の総質量に対するものである、実施形態42から44のいずれかによる方法。
【0182】
実施形態46: 分散体Dが、0.1~10質量%、好ましくは1~7質量%、非常に好ましくは2~4質量%の総量で添加され、これらは各場合とも調製されたコーティング組成物の総質量に対するものである、実施形態42から45のいずれかによる方法。
【0183】
実施形態47: 以下の工程:
(i) 請求項1から41のいずれかによるコーティング組成物又は請求項42から46のいずれかによる方法によって調製されたコーティング組成物を、基材(S)上に適用する工程、
(ii) 前記コーティング組成物を硬化させることにより、工程(i)で適用されたコーティング組成物からフィルムを形成する工程、及び
(iii) 任意に、工程(ii)で形成されたコーティング層に少なくとも1つのさらなるコーティング組成物を適用し、前記コーティング組成物を硬化させる工程
を含む、少なくとも1つのコーティング層を基材(S)上に形成する方法。
【0184】
実施形態48: 基材(S)が、金属基材、化成コーティングで被覆された金属基材、及びこれらの混合物から選択される、実施形態47による方法。
【0185】
実施形態49: 工程(ii)における硬化を20~25℃の温度で50~70分の期間、又は140~240℃の温度で20~60秒間行う、実施形態47又は48による方法。
【0186】
実施形態50: 工程(ii)の後に得られた乾燥膜厚が、1~100μm、好ましくは2~90μm、非常に好ましくは55~75μm又は3~30μmである、実施形態47から49のいずれかによる方法。
【0187】
実施形態51: (iii)、工程(ii)で形成された硬化したコーティングフィルムに少なくとも1つのさらなるコーティング層を適用し、前記さらなるコーティング層を別個に又は同時に硬化させる、実施形態47から50のいずれかによる方法。
【0188】
実施形態52: 工程(iii)における硬化を50~70℃の温度で20~40分の期間、又は200~300℃の温度で10~30秒の期間行う、実施形態51による方法。
【0189】
実施形態53: 少なくとも1つのさらなるコーティング層の乾燥膜厚が、1~100μm、好ましくは1~90μm、非常に好ましくは50~60μm又は1~5μmである、実施形態51又は52による方法。
【0190】
実施形態54: 実施形態47から53のいずれかに記載の方法により製造されたコーティング層又は多層コーティング(MC)。
【0191】
実施形態55: リチウム、カリウム及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの1価金属イオンを含有する少なくとも1つのグラフェンオキシド(GO-M)を、組成物の防食性を改善するために前記組成物に使用する方法。
【0192】
実施形態56: 組成物がコーティング組成物であり、好ましくは有機コーティング組成物である、実施形態55による使用する方法。
【0193】
実施形態57: 組成物がシーラント組成物である、実施形態55による使用する方法。
【実施例
【0194】
本発明を、有用な実施例の使用によって、さらにより詳細に説明するが、これらの有用な実施例に決して限定されない。さらに、実施例における用語「部」、「%」、及び「比」は、別段の指示がなければ、「質量部」「質量%」及び「質量比」それぞれを示す。
【0195】
1. 決定方法
1.1 ラマン分光法
製造したグラフェンオキシドの構造は、ラマン分光法により、Horiba Jobin Yvon Lab社製ラマン分光器RAM ARAMISを用いて決定した。励起波長532nm(緑色レーザー)を使用し、露光時間は20秒で3回繰り返した。測定には10%フィルタを使用した。
【0196】
1.2 ICP-OES分析
グラフェンオキシド中に存在する1価又は多価金属イオンの濃度は、ICP-OESにより、Spectro SmartのSpectro Cirros CCD ICP-OES装置及びプログラムSmart Analyzerを用いて決定した。以下のスペクトル線を異なるカチオンに対して適用した:Ca2+=183nm、K=404nm、Li=460nm、Mg2+=279nm、Na=330nm、Zn2+=206nm、Fe2+=238nm、Al3+=396nm。
【0197】
この目的のため、少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシドそれぞれの濾過後に得られた濾液中に存在する金属イオンそれぞれの濃度を、ICP-OESを介して判定し、そして少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシドそれぞれの調製に用いた金属イオン塩溶液の濃度と比較した。少なくとも1つの1価金属イオンを含有するグラフェンオキシドそれぞれの調製に用いた金属イオン塩溶液の濃度と、濾液中の金属イオン濃度との差は、グラフェンオキシド中に存在する金属イオンの濃度に直接対応するものであった。
【0198】
1.3 DIN EN ISO9227AASSによる酢酸塩噴霧ミスト試験の判定
酢酸塩噴霧ミスト試験は、基材上のコーティングの防食性を判定するために使用した。DIN EN ISO9227(日付:2017年6月)に準拠し、酢酸塩噴霧ミスト試験を、アルミニウム基材、例えばアルミニウムAA6014について実施した。この試験において調査用試料はチャンバー内にあり、ここで5%の食塩溶液を、3.1~3.3の範囲に制御したpHで、35℃の温度で1008時間の持続時間にわたり、連続してミスト掛けした。ミストが調査試料に堆積し、塩水の腐食性膜で試料を覆った。
【0199】
DIN EN ISO9227AASSによる酢酸塩噴霧ミスト試験の前に、調査試料のコーティングに刃物による切り込みで基材まで刻み目を入れ、DIN EN ISO4628-8(日付:2013年3月1日)により、調査対象試料の膜下腐食(浸食(undermining))のレベルを調査できるようにした。DIN EN ISO9227AASSの塩噴霧ミスト試験の間に、基材は刻み目の線に沿って腐食するからである。腐食の進行プロセスの結果として、コーティングは試験の間、多かれ少なかれ浸食される。浸食の程度[mm]は、コーティングの腐食に対する耐性の尺度である。後述の結果に記載する平均浸食レベルは、2枚の異なるパネルを評価した個々の値の平均値を表し、そしてパネルの個々の値は、パネル上の5の測定点における浸食レベルの平均値である。
【0200】
2. リチウムイオンを含有するグラフェンオキシド(GO@Li)及び分散体Dの調製
2.1 リチウムイオンを含有するグラフェンオキシド(GO@Li)の調製
グラフェンオキシドは、Statron3252.1電源を用いた室温の2電極セルで、グラファイトを電気化学的に剥離して次のように製造した。まず、グラファイト棒(長さ10cm、直径1cm)と白金メッシュ電極を1M NaOH溶液に入れ、グラファイトを10分間前処理した。プラス端子がグラファイト(陽極)になるようにして、電極間に10Vの電圧を印加した。その後、溶液を0.5M硫酸に交換し、1Vと10Vの間で1Vずつ異なる印加電圧で1時間電解を行った。次いで得られた暗灰色の溶液を2時間超音波処理し、その際に濾過した(細孔径0.45μm)。残渣を集め、水で繰り返し洗浄して、60℃で乾燥させた。
【0201】
得られた残渣について、グラフェンオキシドの有無及び任意のグラファイトの有無を、1.1項で述べたラマン分光法により判定した。一般に、Gバンド(1595cm-1付近)とDバンド(1350cm-1付近)が同じ高さを持つラマンスペクトルはグラフェンオキシドを示し、一方でGバンドがDバンドより高い場合はグラファイトを示すと考えられている。残渣から得られたラマンスペクトルは、実質的に同じ強度のGバンドとDバンドを示すので、グラフェンオキシドに特徴的である。
【0202】
先に調製したグラフェンオキシド0.1gを50ml試験管に入れた。0.1M濃縮リチウム塩溶液50mlを加え、調製した混合物を24時間超音波処理した。ろ過(孔径0.45μm)後60℃で乾燥すると、リチウムイオンを含有するグラフェンオキシドが得られた。1.2項で述べたICP-OESで判定したところ、調製したグラフェンオキシドはおよそ1.8mmolのリチウムイオンを含有していた。
【0203】
2.2 GO@Liを含有する分散体Dの調製
2.1項で調製したリチウムイオンを含有するグラフェンオキシド(GO@Li)を適量のエチルアセテート中に分散させ、リチウムイオンを含むグラフェンオキシドを含有する分散体Dを溶媒S2中に調製した(分散体Dの調製に用いたGO@Li及びエチルアセテートの量は3項及び表1参照)。
【0204】
3. 化成コーティング層の調製
亜鉛めっき鋼パネルを4分間60℃で60g/lのENPREP144溶液を用いて脱脂し、その後室温で水道水で2.5分間、さらに蒸留水で2.5分間すすいだ。2.2項により調製した分散体D2.7ml(エチルアセテート1ml当たり1mgのGO@Li)と、一般式(I)(RはCアルキレン基、RはCアルキレン基、Rは炭素原子1個を含有するアルコキシ基、xは0、そしてYはNH基である)のシラン化合物SCの10V%溶液とを適切な有機溶媒中で混合して、コーティング組成物を調製した。脱脂した亜鉛めっき鋼パネルを、このコーティング組成物を用いて室温で1分間処理し、その後80℃で10分間乾燥させて、少なくとも1つのリチウムイオンで官能化されたグラフェンオキシド(GO@Li)を含有する化成コーティング層を含む鋼パネルを得た。
【0205】
4. コーティング組成物F1~F3の調製
コーティング組成物F1~F3は、組成物F1-1~F3-1のそれぞれと硬化剤Hとを混合し、そして該混合物を後述の市販製品Glasurit352-216(BASF Coatings GmbH社から入手可能)で希釈することによって調製した。
【0206】
4.1 ベースワニスF1-1、F1-2及びF1-3の調製
ベースワニスF1-1~F3-1を、以下の一般的な手順により調製した。
まず、表1の1~2番を予備混合し、そして2~4番を1000~1500rpmで攪拌しながら添加した。添加が完了した後、攪拌を10分間1500rpmで継続した。次いで、表1に記載の量による残りの材料成分を添加して、得られた混合物を高速ディゾルバー攪拌機で20分間攪拌した。その後、混合物を小型の実験室ミルで1~1.5時間、Hegmann値22~23μmまで分散させた。必要な場合は、粉砕後に追加のメトキシプロパノールを加えた(表1の13番参照)。
【0207】
【表1】
【0208】
* 発明例
1) 例示的な市販製品:Epikote834-X-80(ビスフェノールA及びエピクロロヒドリンから製造、キシレン中の80%固形分溶液、EEW=235~263g/Eq、動粘度=1Pa*s(ASTM D445-06))(Hexion社から供給)
2) 例示的な市販製品:Beckopox EM460(ビスフェノールA、フェノール及びビスフェノールAジグリシジルエーテルから製造、イソブタノール/キシレン中の60%固形分溶液、動的粘度=800~1400mPa*s(500 1s、23℃、DIN EN ISO3219))(Allnex社から供給)
3) 例示的な市販製品:Disperbyk161(メトキシプロピルアセテート/ブチルアセテート中の30%固形分)(Byk Chemie GmbH社から供給)
4) 例示的な市販製品:Schwerspat EWOノーマル(オイルナンバー=11)(Sachtleben Minerals社から供給)
5) 例示的な市販製品:Luzenac10M0(オイルナンバー=48)(Imerys Performance Additives社から供給)
6) 15.91gのエチルアセテート中0.3gのグラフェンオキシドの分散体
7) 12.81gのエチルアセテート中0.3のリチウムイオン含有グラフェンオキシド(GO@Li)の分散体
8) 例示的な市販製品:Titan Rutil R-900-28WP(オイルナンバー=15)、Titanos社から供給)
【0209】
4.2 硬化剤組成物H
硬化剤Hは、49.6グラムのCardolite NC562(付加型フェナルカミン硬化剤、固形分65%、アミン価=185、活性水素当量=174、Carodlite社から供給)、13.143グラムのMerginamid L190/70(反応性ポリアミノアミド樹脂、固形分70%、アミン価=155~185、活性水素当量=340、HOBUM Oleochemicals GmbH社から供給)、1.2グラムのジエチレントリアミン及び0.4グラムのAncamine K54(硬化触媒、トリス-2,4,6-ジメチルアミノメチルフェノール、Ebonik Industries AG社から供給)を混合することにより調製した。
【0210】
4.3 コーティング組成物F1~F3
コーティング組成物F1~F3は、ベースワニスF1-1~F1-3のそれぞれを硬化剤Hと混合し、そして各混合物を市販製品Glasurit352-216(BASF Coatings GmbH社から入手可能)で噴霧粘度が21秒(DIN4カップ、20℃)となるように希釈して調製した。
【0211】
【表2】
【0212】
* 発明例
【0213】
4.4 さらなるコーティング組成物の材料成分及び特性
4.4.1 プライマーコーティング組成物
【0214】
【表3】
【0215】
1) 例示的な市販製品:URALAC SN989S1F-60(飽和ポリエステル樹脂、30%のソルベントナフサ及び10%の1-メトキシ-2-プロパニルアセテート中60%)
2) 例示的な市販製品:Epikote834-X-80(ビスフェノールAとエピクロロヒドリンから製造されたエポキシ樹脂、キシレン中80%固形分溶液として供給)
3) 例示的な市販製品:ALBERDINGK U9000VP、35%ig i.WA又はALBERDINGK4820、35%ig i.WA(ポリウレタン分散体、OH-官能性)
4) 例示的な市販製品:ALBERDINGK AC2403、47%ig i.WA(アクリル分散体、OH官能性、固形分に対してOH含有量1.8%)
5) 例示的な市販製品:ALBERDINGK AC2486、48%ig i.WA(アクリル分散体)
6) 例示的な市販製品:Cymel303、98%ig(メラミン樹脂HMMM)
7) 例示的な市販製品:VESTANADT EP-DS1205、42%ig i.WA(ブロックイソシアネート樹脂、脂肪族、NOC含有量:固形分に対して4.6%)又はVestanat EP-DS1076(ブロックイソシアネート樹脂、脂肪族)
8) 例示的な市販製品:Desmodur BL3370(ヘキサメチレンジイソシアネートをベースとするブロック脂肪族ポリイソシアネート、70%)
9) 例示的な市販製品:Titandioxid2310
10) 例示的な市販製品:Aerosil200
11) 例示的な市販製品:Shieldex C303(カルシウムシリケート)
12) 例示的な市販製品:Heucophos ZPO(亜鉛ホスフェート)
13) 量は材料成分それぞれの固形分に対するものである。
【0216】
表3に列挙したコーティング組成物は、プライマーコーティング組成物に一般的に使用される添加剤及びフィラーをさらに含むことができる。
【0217】
上記プライマーコーティング組成物の好ましいパラメータ:
固形分含量:20~70質量%
顔料対バインダー比:1.00:0.05~2.00
粘度:1,000~10,000mPa*s
密度:1.050~1.400g/cm
【0218】
前記プライマーコーティング組成物を用いた硬化コーティング層の調製:
好適な基材:Z(溶融亜鉛メッキ鋼)、ZE(電気亜鉛メッキ鋼)、ZM(亜鉛-マグネシウム被覆鋼)
前処理:Granodine1455(pH値2.0~2.5、コーティング質量<8mgTi/m
硬化温度(PMT、ピーク金属温度):200~250℃
滞留時間:20~60秒。
【0219】
硬化したプライマー層の好ましいパラメータ:
乾燥膜厚:0.50~30.00μm
固体密度:1.05~2.00g/cm
弾性率:T-0~1(テサ引裂き)、<T-1割れなし(T-曲げで判定)
架橋(MEK-DH、OENORM EN13523-11に準拠したメチルエチルケトンに対する耐性):<50DH(硬化後、トップコートを使用した場合>100MEK-DH)
光沢度:<50/60°(つやなし-シルク-光沢)。
【0220】
4.4.2 水溶性プライマー組成物
【0221】
【表4】
【0222】
1) 例示的な市販製品:PHENODUR PW165、40WA(変性エポキシ樹脂、OH官能性、カチオン安定化)
2) 例示的な市販製品:ALBERDINGK XP27401、38%ig i.WA(アクリル分散体、OH官能性、固形分に対してOH含有量1.8%)
3) 例示的な市販製品:ALBERDINGK U9000VP、35%ig i.WA又はALBERDINGK4820、35%ig i.WA(ポリウレタン分散体、OH-官能性)
4) 例示的な市販製品:ALBERDINGK AC2403、47%ig i.WA(アクリル分散体、OH官能性、固形分に対してOH含有量1.8%)
5) 例示的な市販製品:ALBERDINGK AC2486,48%ig i.WA(アクリル分散体)
6) 例示的な市販製品:Cymel303、98%ig(メラミン樹脂HMMM)
7) 例示的な市販製品:VESTANADT EP-DS1205、42%ig i.WA(ブロックイソシアネート樹脂、脂肪族、NOC含有量:固形分に対して4.6%)又はVestanat EP-DS1076(ブロックイソシアネート樹脂、脂肪族)
8) 例示的な市販製品:BAYHYDUR BL XP2706、40%ig i.WA(ブロックイソシアネート樹脂、脂肪族、NOC含有量:固形分に対して8.6%)
9) 例示的な市販製品:Titandioxid2310
10) 例示的な市販製品:Aerosil R972
11) 例示的な市販製品:Shieldex C303(カルシウムシリケート)
12) 例示的な市販製品:Heucophos ZPO(亜鉛ホスフェート)
13) 量は材料成分それぞれの固形分に対するものである。
【0223】
表4に列挙したコーティング組成物は、プライマーコーティング組成物に一般的に使用される添加剤及びフィラーをさらに含むことができる。
【0224】
水溶性プライマーコーティング組成物の好ましいパラメータ:
固形分含量:10~50質量%
顔料対バインダー比:1.00:0.05~2.00
粘度:12~120s/4mm(DIN53211-4)
pH値:1.50~9.00
密度:1.050~1.400g/cm
【0225】
前記プライマーコーティング組成物を用いた硬化コーティング層の調製:
好適な基材:Z、ZE、ZM
任意の前処理:Granodine1455(pH値2.0~2.5、コーティング質量<8mgTi/m
硬化温度(PMT):140~250℃
滞留時間:5~60秒。
【0226】
硬化したプライマー層の好ましいパラメータ:
乾燥膜厚:0.20~20.00μm
固体密度:1.05~2.00g/cm
弾性率:T-0~1(テサ引裂き)、<T-1割れなし(T-曲げで判定)
架橋(MEK-DH):<50DH(硬化後、トップコートを使用した場合>100MEK-DH)
光沢度:<50/60°(つやなし-シルク-光沢)。
【0227】
4.4.3 トップコートコーティング組成物
【0228】
【表5】
【0229】
1) 例示的な市販製品:Dynapol LH830、60%ig(分岐飽和コポリエステル、Mw=4000g/モル)
2) 例示的な市販製品:Dynapol LH538、65%ig(分岐飽和コポリエステル、M=3000g/モル)
3) 例示的な市販製品:Dynapol UB790、60%ig(直鎖ポリウレタン樹脂、M=3000~6000)
4) 例示的な市販製品:Cymel303、98%ig(メラミン樹脂HMMM)
5) 例示的な市販製品:Desmodur BL3370、70%ig(ブロック脂肪族イソシアネート)
6) 例示的な市販製品:Vestanat EP-B1481ND、65%ig(イソシアネート架橋剤、カプロラクタムでブロックされている)
7) 例示的な市販製品:Titandioxid2310
8) 例示的な市販製品:Aerosil R972
9) 例示的な市販製品:Acematt810
10) 量は材料成分それぞれの固形分に対するものである。
【0230】
表5に列挙したコーティング組成物は、プライマーコーティング組成物に一般的に使用される添加剤及びフィラーをさらに含むことができる。
【0231】
トップコートコーティング組成物の好ましいパラメータ:
固形分含量:50~70質量%
顔料対バインダー比:1.00:0.50~1.50
粘度:1000~10000mPa*s
密度:1.100~1.350g/cm
【0232】
前記プライマーコーティング組成物を用いた硬化コーティング層の調製:
好適な基材:Z、ZE、ZM
前処理:Granodine1455(pH値2.0~2.5、コーティング質量<8mgTi/m
硬化温度(PMT):200~260℃
滞留時間:20~60秒。
【0233】
硬化したプライマー層の好ましいパラメータ:
乾燥膜厚:10.00~30.00μm
固体密度:1.30~1.80g/cm
弾性率:T-0(テサ引裂き)、<T-1割れなし(T-曲げで判定)
架橋(MEK-DH):<100DH
光沢度:20~90/60°(つやなし-光沢)。
【0234】
4.4.4 単一被覆コーティング組成物
【0235】
【表6】
【0236】
1) 例示的な市販製品:Dynapol LH830、60%ig(分岐飽和コポリエステル、M=4000g/モル)
2) 例示的な市販製品:Dynapol LH820、55%ig(分岐飽和コポリエステル、M=3000g/モル)
3) 例示的な市販製品:Dynapol L205(顆粒)(飽和ポリエステル、M=150000)
4) 例示的な市販製品:Cymel303、98%ig(メラミン樹脂HMMM)
5) 例示的な市販製品:Desmodur BL3370、70%ig(ブロック脂肪族イソシアネート)
6) 例示的な市販製品:Vestanat EP-B1481ND、65%ig(イソシアネート架橋剤、カプロラクタムでブロックされている)
7) 例示的な市販製品:Titandioxid2310
8) 例示的な市販製品:Aerosil R972
9) 例示的な市販製品:Acematt810
10) 例示的な市販製品:Shieldex C303(カルシウムシリケート)
11) 量は材料成分それぞれの固形分に対するものである。
【0237】
表6に列挙したコーティング組成物は、プライマーコーティング組成物に一般的に使用される添加剤及びフィラーをさらに含むことができる。
【0238】
単一被覆コーティング組成物の好ましいパラメータ:
固形分含量:40~70質量%
顔料対バインダー比:1.00:0.20~1.50
粘度:1000~10000mPa*s
密度:1.100~1.400g/cm
【0239】
前記プライマーコーティング組成物を用いた硬化コーティング層の調製:
好適な基材:Z、ZE、ZM
前処理:Granodine1455(pH値2.0~2.5、コーティング質量<8mgTi/m
硬化温度(PMT):200~260℃
滞留時間:20~60秒。
【0240】
硬化したプライマー層の好ましいパラメータ:
乾燥膜厚:3.00~30.00μm(前処理上に直接適用)
固体密度:1.30~1.80g/cm
弾性率:T-0(テサ引裂き)、<T-1割れなし(T-曲げで判定)
架橋(MEK-DH):<100DH
光沢度:20~90/60°(つやなし-光沢)。
【0241】
5. 多層コーティングの調製
アルミニウムパネル(AA6014)に、[噴霧装置]を用いて、コーティング組成物F1~F3それぞれの調製直後、硬化後の乾燥膜厚が60~73μmとなるようにコーティングした。コーティング後、適用したフィルムを23℃で60分間硬化させた。
【0242】
その後、ベースワニスGlasurit Reihe68white、硬化剤922-138及びレオロジー添加剤352-216(いずれもBASF Coatings GmbHの供給製品)を4:1:1の比で混合することにより、トップコーティング組成物を調製した。このトップコーティング組成物を、硬化後の乾燥膜厚が53μmとなるように[噴霧装置]を用いて適用した。コーティング後、適用したフィルムを60℃で30分間硬化させた。
【0243】
6. 酸性塩噴霧ミスト試験結果
5項で調製した被覆パネルを用いて、1.2項で述べた酸性塩水噴霧ミスト試験を行った。パネルを蒸留水で洗浄し、1時間及び24時間後にナイフで錆を除去した試験終了後の得られた結果を表7に示す。約1mmの絶対範囲の差は、評価が技術的に困難であるので、意味をなさない。
【0244】
【表7】
【0245】
1) コーティング組成物F1及びトップコート(グラフェンオキシド又はリチウムイオン含有グラフェンオキシドを含有しない)で被覆したアルミニウムパネル
2) コーティング組成物F2及びトップコート(グラフェンオキシドを含有する)で被覆したアルミニウムパネル
3) 本発明のコーティング組成物F3及びトップコート(リチウムイオンを含むグラフェンオキシドを含有する)で被覆したアルミニウムパネル
【0246】
表7から明らかなように、少なくとも1つのリチウムイオンで官能化したグラフェンオキシドを含有する本発明のコーティング組成物は、グラフェンオキシドのみを含む多層コーティング(MC2)又は如何なるグラフェンオキシドも含まない多層コーティング(MC1)と比較して、改善された防食性を有する多層コーティング(MC3)をもたらした。このように、少なくとも1つのリチウムイオンで官能化したグラフェンオキシドをプライマー又はプライマー-サーフェーサーコーティング組成物に組み込むことによって、前記プライマー又はプライマー-サーフェーサーコーティング層を含有する多層コーティングの防食性が著しく改善された。