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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】固体電解質電池、及び輸送機器
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20250318BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20250318BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20250318BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20250318BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20250318BHJP
   H01M 50/548 20210101ALN20250318BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M50/129
H01M50/105
H01M50/121
H01M50/548 301
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023529587
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2022013717
(87)【国際公開番号】W WO2022264601
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2021100580
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「先進・革新蓄電池材料評価技術開発(第2期)」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】菅原 亮
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-195475(JP,A)
【文献】特開2009-199761(JP,A)
【文献】特開2009-146657(JP,A)
【文献】特開2009-181897(JP,A)
【文献】特開平11-149910(JP,A)
【文献】特開2019-121558(JP,A)
【文献】国際公開第2012/164723(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587
H01M10/36-10/39
H01M50/10-50/198
H01M50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層と負極層、及び前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を有する充放電体と、前記充放電体を収容する外装体と、一端が前記外装体の外部に露出され、他端が前記正極層、或いは前記負極層に電気的に接続された集電体とを有すると共に、前記外装体が、前記充放電体を外側から覆い絶縁性を備えた第一の樹脂を含む熱溶着層と、前記熱溶着層の外側に積層され、前記第一の樹脂よりも融点が高く絶縁性を備えた第二の樹脂を含む耐熱層と、前記耐熱層の外側に積層され、金属を含む金属層とから形成され、前記充放電体の周囲に前記熱溶着層が溶着することで前記充放電体が前記外装体によって密封されている固体電解質電池であって、
前記充放電体の周囲と前記熱溶着層とが溶着された状態で、
前記正極層の側面に向けて方向転換する前記外装体と前記正極層の側面の間には、前記正極層の側面と前記外装体とが接触するのを防ぐ空間が設けられ、
前記負極層の側面に向けて方向転換する前記外装体と前記負極層の側面の間には、前記負極層の側面と前記外装体とが接触するのを防ぐ空間が設けられている
ことを特徴とする固体電解質電池。
【請求項2】
請求項1に記載の固体電解質電池であって、
前記正極層の側面に向けて方向転換して曲がる前記外装体の曲げ角度が鈍角とされ、
前記負極層の側面に向けて方向転換して曲がる前記外装体の曲げ角度が鈍角とされている
ことを特徴とする固体電解質電池。
【請求項3】
請求項1に記載の固体電解質電池であって、
前記耐熱層の前記第二の樹脂は、エンジニアリングプラスチック、或いはスーパーエンジニアリングプラスチックからなる耐熱性樹脂である、
ことを特徴とする固体電解質電池。
【請求項4】
請求項3に記載の固体電解質電池であって、
前記エンジニアリングプラスチックは、ナイロン、ポリアミド、または、ポリエチレンテレフタレートのいずれか1つである
ことを特徴とする固体電解質電池。
【請求項5】
請求項3に記載の固体電解質電池であって、
前記スーパーエンジニアリングプラスチックは、ポリイミド、或いはポリエーテルイミドである
ことを特徴とする固体電解質電池。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の固体電解質電池であって、
前記充放電体は、前記正極層、前記負極層、及び前記固体電解質層からなる組が、複数組だけ組み合わされている
ことを特徴とする固体電解質電池。
【請求項7】
固体電解質電池の電力によって回転される電動モータによって走行する輸送機器であって、前記固体電解質電池は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された前記固体電解質電池である
ことを特徴とする輸送機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種産業機器に使用される二次電池に係り、特に固体電解質電池、固体電解質電池の製造方法、及び輸送機器に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンを吸蔵/放出することができる正極及び負極を含む電解質電池は、高エネルギー密度な電池として、電気自動車、電力蓄電、及び情報機器など様々な分野に広く普及している。
【0003】
一方で、単位重量又は単位体積当たりの放電容量が大きくなればなるほど、安全性が問題となり、より一層優れた安全性を有する電池が要求され、最近では固体電解質電池が開発されている。固体電解質電池は、これまでの有機系電解液の代わりに、固体電解質を用いる電池である。固体電解質電池は有機系電解液を使用しないため、単位重量又は単位体積当たりの放電容量が大きくなっても発火の可能性が少なく、安全性の高い電池である。
【0004】
このような固体電解質電池においては、電極活物質層(以下、正極層、及び負極層と表記する)と固体電解質層との密着性を向上させるために、平板プレスやロールプレスにより加圧を行うことが知られている。しかしながら、正極層、負極層、固体電解質層の表面には、微細な突起やへこみ(いわゆるキャビティ)があり、平板プレスやロールプレスでは、均一に表面を加圧することが困難である。このため、正極層及び負極層と、固体電解質層との密着性を十分に高められないという課題がある。
【0005】
このような課題に対応するため、例えば、国際公開第2012/164723号(特許文献1)には、正極層、負極層、並びに正極層、及び負極層の間に形成された固体電解質層を有する充放電体を封入した外装体を、液圧、或いはガス圧によって等方向(充放電体全体を囲む方向)から加圧する等方圧プレスを行うことが示されている。
【0006】
ここで、特許文献1における等方圧プレスは、等方圧プレスを温間状態で行う温間等方圧プレス(Warm Isostatic Press:WIP)であり、その最高温度条件はガスを使用する場合で120℃としてある。このように、充放電体を封入した外装体を温間等方圧プレスによって加圧することによって、正極層及び負極層と、固体電解質層との密着性を向上でき、各層間の抵抗を小さくする固体電解質電池を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2012/164723号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した充放電体を封入した外装体には、ラミネートシートが用いられることがあり、このラミネートシートは例えば、充放電体を外側から覆う熱溶着層、この熱溶着層を外側から覆う金属層、及び必要に応じて金属層を外側から覆う保護層から構成されている。熱溶着層は、ポリプロピレン、ポリエチレン等が使用され、金属層は、アルミニウム等が使用されている。また、保護層は種々の合成樹脂から必要な合成樹脂が選択されて使用されている。
【0009】
そして、このような外装体に覆われた充放電体を、温間等方圧プレスで加圧すると、液圧によって等方向から加圧されるので、正極層及び負極層と、固体電解質層との密着性を十分に高めることができ、各層間の抵抗を小さくすることができる。
【0010】
ところが、温間等方圧プレスによって高温でプレスを行うと、熱溶着層が過度に軟化する、或いは溶融してしまい、この状態でラミネートシートが加圧されるので、熱溶着層に欠損が発生する。特に、充放電体の形状変化部分においてこの傾向が強い。
【0011】
このため、熱溶着層の欠損領域で、ラミネートシートを構成する金属層と、正極層、或いは負極層と電気的に接続した金属製の集電箔、集電タブ等が電気的に接触して内部短絡が発生する恐れがある。
【0012】
したがって、温間等方圧プレスに適した構成の固体電解質電池が要請されている。また、内部短絡の発生を抑制しながら、更に正極層及び負極層と、固体電解質層との密着性を十分に高めることができ、各層間の抵抗を小さくすることができる固体電解質電池の製造方法が要請されている。
【0013】
本発明の第1の目的は、内部短絡の発生を抑制できる温間等方圧プレスに適した固体電解質電池を提供することにある。
【0014】
本発明の第2の目的は、正極層及び負極層と、固体電解質層との密着性を十分に高めて、各層間の抵抗を小さくすることができる固体電解質電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の特徴は、
正極層と負極層、及び正極層と負極層との間に配置された固体電解質層を有する充放電体と、充放電体を収容する外装体と、一端が外装体の外部に露出され、他端が正極層、或いは負極層に電気的に接続された集電体とを有する固体電解質電池であって、外装体が、
充放電体を外側から覆い絶縁性を備えた第一の樹脂を含む熱溶着層と、熱溶着層の外側に積層され、第一の樹脂よりも融点が高く絶縁性を備えた第二の樹脂を含む耐熱層と、耐熱層の外側に積層され、金属を含む金属層とから形成され、充放電体の周囲に熱溶着層が溶着することで充放電体が外装体によって密封されている、ところにある。
【0016】
本発明の第2の特徴は、
正極層及び負極層と、正極層と負極層との間に配置された固体電解質層と、正極層に電気的に接続された正極集電箔と、負極層に電気的に接続された負極集電箔とからなる充放電体を有する固体電解質電池の製造方法であって、
正極層及び負極層と、固体電解質層とを密着させる工程が、耐圧容器の液体に充放電体を浸漬し、液体を加圧して正極層、負極層、及び固体電解質層を密着させる温間等方圧プレスによる加圧工程であり、加圧工程における液体の温度が140℃以上で250℃以下の条件で行われる、ところにある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、内部短絡の発生を抑制できる温間等方圧プレスに適した固体電解質電池を得ることができる。
【0018】
また、本発明によれば、正極層及び負極層と、固体電解質層との密着性を十分に高めて、各層間の抵抗を小さくする固体電解質電池の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態になる固体電解質電池の外観図。
図2】充放電体の断面図。
図3図1の固体電解質電池のA-A断面図。
図4図1の固体電解質電池のB-B断面図。
図5】本発明の実施形態になる固体電解質電池の分解断面図。
図6】本発明の実施形態の変形例であり、図3に対応した断面図。
図7】温間等方圧プレスによって加圧した後の、図5に示す固体電解質電池の断面図。
図8図7に示す固体電解質電池の変形例の断面図。
図9】本発明の実施例になる固定電解質電池の製造方法の工程図。
図10図9に示す製造方法で作成した、固定電解質電池の温度と内部抵抗との関係の説明図。
図11図9に示す製造方法で作成した、固定電解質電池の圧力と内部抵抗との関係の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0021】
図1は、本発明の実施形態になる固体電解質電池10の外観図であり、以下に説明する充放電体は、例えばラミネートシートからなる二枚の外装体11間に密封収容されている。外装体11の外形は矩形状に形成されており、互いに対向する辺又は同一辺から正極集電タブ12と、負極集電タブ13が露出している。この固体電解質電池10は単位電池であり、複数の固体電解質電池10が組み合わされて二次電池を構成している。
【0022】
この二次電池は、例えば電気自動車、ハイブリッド車等の輸送機器に用いることができ、二次電池は電動モータを駆動して電気自動車、ハイブリッド車の車輪を回転させて走行するものである。以下、固体電解質電池10を、充放電ユニットとして説明する。
【0023】
次に、充放電体の構成について図2を用いて説明する。充放電体14は、正極層15と負極層16、及び正極層15と負極層16に挟まれた固体電解質層17を主な構成要素としている。固体電解質層17とは反対側の正極層15の表面には正極集電箔18が設けられ、同様に固体電解質層17とは反対側の負極層16の表面には負極集電箔19が設けられている。
【0024】
正極層15は、正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料、導電材および結着材の少なくとも一つを含有していても良い。正極活物質としては、特に限定されるものではないが、酸化物活物質、硫化物活物質を使用することができる。酸化物活物質としては、例えば、岩塩層状型活物質、スピネル型活物質、オリビン型活物質等を使用できる。硫化物活物質としては、例えば、硫化リチウム、銅シュブレル、硫化鉄、硫化コバルト、硫化ニッケル等を使用できる。
【0025】
負極層16は、負極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料、導電材および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。負極活物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、カーボン活物質、金属活物質、酸化物活物質等を使用することができる。
【0026】
固体電解質層17は、固体電解質材料を含有する層である。固体電解質材料としては、例えば、硫化物固体電解質材料、及び酸化物固体電解質材料を使用することができる。硫化物固体電解質材料は、酸化物固体電解質材料に比べて、イオン伝導性が高いものが多い点で好ましく、酸化物固体電解質材料は、硫化物固体電解質材料に比べて、化学的安定性が高い点で好ましい。
【0027】
固体電解質層17の厚みは15μm~100μm程度であり、電池のエネルギー密度を考えた場合、厚みは15μm~30μmが好ましい。本実施形態では、固体電解質層17の厚みは30μmに設定されている。
【0028】
固体電解質層17の中央領域は、電池のアクティブエリアであるため、25℃におけるリチウムイオン伝導度は、例えば1×10-7S/cm以上であり、好ましくは1×10-3S/cm以上である。
【0029】
次に、充放電ユニット10(図1に示す固体電解質電池と同様の構成)の構成について、図3及び図4を用いて説明する。尚、図3図1のA-A断面を示し、図4図1のB-B断面を示している。
【0030】
図3、及び図4において、充放電ユニット10は、充放電体14に正極集電タブ12と負極集電タブ13を電気的に接続し、これらを上側外装体11A、及び下側外装体11Bで覆って形成されている。正極集電箔18には、外装体11から露出した正極集電タブ12が電気的に接続されている。また、負極集電箔19には、外装体11から露出した負極集電タブ13が電気的に接続されている。正極集電箔18と正極集電タブ12とから「正極集電体」が形成され、負極集電箔19と負極集電タブ13とから「負極集電体」が形成されている。
【0031】
充放電体14、及び正極集電タブ12の充放電体14側の一部と負極集電タブ13の充放電体14側の一部は、外装体11A、11Bによって外側から覆われている。つまり、充放電体14は袋状の外装体11A、11B内に密封されている。尚、図3、及び図4は、温間等方圧プレスによる加圧処理が施されていない状態を示している。
【0032】
上述したように、外装体11は、上側外装体11Aと下側外装体11Bから構成されており、充放電体14、及び正極集電タブ12の充放電体14側の一部と負極集電タブ13の充放電体14側の一部を、上側外装体11Aと下側外装体11Bで挟み込み、外側周囲を接着している。
【0033】
そして、この状態の充放電ユニットを、温間等方圧プレスによる加圧処理を実施するが、「発明が解決しようとする課題」で述べたように、温間等方圧プレスによって高温で加圧を行うと、熱溶着層が過度に軟化する、或いは溶融してしまい、この状態で外装体が加圧されるので、熱溶着層に欠損が発生する。このため、熱溶着層の欠損領域で、外装体を構成する金属層と、正極層、或いは負極層と電気的に接続した金属製の集電箔や集電タブ等が電気的に接触して内部短絡が発生する恐れがある。
【0034】
このような課題に対応するために、本実施形態では以下に述べる提案を行うものである。図5は、本実施形態になる充放電ユニットの断面を示しており、上側外装体11A、及び下側外装体11Bは少なくとも3層構造とされている。尚、充放電体14の構成は、図3に示す構成と同じ構成である。
【0035】
図5において、上側外装体11A、及び下側外装体11Bは、充放電体14から見て外側に向かって、電気絶縁性の合成樹脂(請求項でいう第一の樹脂)からなる熱溶着層20、電気絶縁性の合成樹脂(請求項でいう第二の樹脂)からなる耐熱層21、及び薄膜状の金属からなる金属層22の3層のラミネートシートによって形成されている。熱溶着層20はポリエチレンやポリプロピレンの樹脂が用いられ、金属層22は、アルミニウムが用いられている。
【0036】
この上側外装体11Aは、接着性樹脂23によって正極集電タブ12と接着され、下側外装体11Bは、接着性樹脂23によって負極集電タブ13と接着され、各々が位置決めされている。この状態で、上側外装体11Aと下側外装体11Bは、充放電体14と溶着されておらず、後述の温間等方圧プレスの実施によって、充放電体14を挟み込んで上側外装体11Aと下側外装体11Bの内側の熱溶着層20が互いに接着されるようになっている。
【0037】
ここで、熱溶着層20は、外装体11A、11Bを充放電体14に加熱溶着する目的で設けられている。また、金属層22は、外部からの水分の侵入を防ぐバリア性能の確保を目的として設けられている。そして、この熱溶着層20と金属層22の間に、耐熱層21を設けることが本実施形態の特徴となっている。
【0038】
上述したように、充放電ユニット10を温間等方圧プレスすると、耐熱層21が存在しない場合においては、外装体11の熱溶着層20が溶け、外装体11の金属層22が露出する場合がある。その露出した金属層22と、例えば、正極集電体、或いは負極集電体が接触して、充放電体ユニット10に短絡を発生する恐れがある。
【0039】
このため、本実施形態では、外装体11の金属層22の露出による内部短絡の発生を防ぐため、金属層22と熱溶着層20の間に耐熱層21を設けた構成としている。この耐熱層21は、熱溶着層20よりも耐熱性が優れているものであり、熱溶着層20が溶融する温度に達しても、耐熱層21は溶融しないで、「層」としての形態を維持する材料で作られている。
【0040】
尚、外装体11は、一般的に最外層(金属層の外側の層)に保護層が設けられるが、基本的には、必須の構成要素ではないため本実施形態では三層構造としている。もちろん、保護層を設けても良いことは言うまでもない。
【0041】
ここで、耐熱層21は、熱溶着層20に比べて耐熱性が高い(融点が高い)絶縁材料を選択することが重要である。例えば、「エンジニアリングプラスチック」や、「スーパーエンジニアリングプラスチック」といった耐熱性樹脂より選択されるのが好ましい。
【0042】
例えば、「エンジニアリングプラスチック」としては、ナイロン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等を使用することができる。また、「スーパーエンジニアリングプラスチック」としては、ポリイミドまたはポリエーテルイミド等を使用することができる。
【0043】
このような外装体11を使用して、図5に示すように、充放電体14を上下方向から挟み込んで充放電ユニット10を組み上げる。この状態で、外装体11の熱溶着層20は、熱が加えられていないので溶着されていない。尚、当然のことであるが、正極集電箔18、正極層15、固体電解質層17、負極層16、負極集電箔19の積層方向で見て、これに直交する平面である正極集電箔18の第1主面(SF)と、負極集電箔19の第2主面(SS)を覆うように、上側外装体11Aと下側外装体11Bが配置されている。
【0044】
充放電体14、及びこれを覆う外装体11からなる充放電ユニット10は、温間等方圧プレスによる加圧を実行されることになる。ここで、図5に示す充放電体14は、正極層15、負極層16、及び固体電解質層17の組み合わせが1組であるが、発生電力を大きくするため、正極層15、負極層16、及び固体電解質層17の組み合わせを複数とすることもできる。
【0045】
例えば、図6に示すように、一対の正極層15を中央にして、外側に向けて一対の固体電解質層17、及び一対の負極層16が順に配置されている。夫々の正極層15の間に正極集電箔18が挟み込まれ、更に夫々の負極層の外側に負極集電箔19が設けられている。夫々の集電箔19は負極集電タブ13によって電気的に接続されてる。この場合は、更に均一な加圧が要請されるので、温間等方圧プレスによる加圧は有効な方法である。尚、正極層15と負極層16とは入れ替えられても良いことはいうまでもない。
【0046】
図7に、温間等方圧プレスによって加圧処理された充放電ユニット10の断面を示している。図7に示しているように、温間等方圧プレスによって、上側外装体11Aと下側外装体11Bの熱溶着層20は充放電体14に溶着し、更に、充放電体14以外は互いの熱溶着層20が溶着している。このように、外装体11は、熱溶着層20により充放電体14、及び正極集電箔18、12と負極集電箔19、13を密封することになる。
【0047】
このように、本実施形態では、充放電ユニット10の全周囲から、外装体11は充放電ユニット10の周面に密着する形態で配設される構成となっている。したがって、充放電ユニット10は次のような構成となる。
【0048】
正極層15と負極層16、及び正極層15と負極層16との間に配置された固体電解質層17を有する充放電体14と、充放電体14を収容する外装体11と、一端が外装体の外部に露出され、他端が正極層15、或いは負極層16に電気的に接続された集電箔18、19とを有する充放電ユニット10であって、外装体11が、充放電体14を外側から覆い絶縁性を備えた第一の樹脂を含む熱溶着層20と、熱溶着層20を外側から覆うように積層され、第一の樹脂よりも融点が高く絶縁性を備えた第二の樹脂を含む耐熱層21と、耐熱層21を外側から覆うように積層され、金属を含む金属層22とから形成され、充放電体の周囲に熱溶着層が溶着することで充放電体が外装体によって密封されている。
【0049】
このように、本実施形態では、熱溶着層20の外側に耐熱層21を設けてあるので、温間等方圧プレスによって、熱溶着層20が溶融して欠損が発生したとしても、耐熱層21が「層」として形成されている。このため金属層22は、耐熱層21によって熱溶着層20の欠損領域まで至らず、外装体を構成する金属層22と、正極層15、或いは負極層16と電気的に接続した金属製の集電箔18、19や集電タブ12、13等が電気的に接触しないので、内部短絡が発生する恐れが抑制されることになる。
【0050】
また、全方向から加圧するため、充放電体14の主面(SF、SS)と、これに直交する側面(SL)の両面ともに、外装体11が充放電体14の形状に沿って密着している。これによって、充放電体14の外表面の全体を熱溶着層20で密封することができるので、放電ユニット10の使用時の耐衝撃性を向上でき、また、集電タブ12、13や固体電解質層17の脱落を防止できるといった顕著な作用、効果が得られる。尚、一般的な溶着封止は、外装体11の外周四辺のみを熱溶着(外装体同士の溶着、外装体と集電体の溶着)するだけであるので、本実施形態のこのような作用、効果は期待できない。
【0051】
次に本実施形態の変形例を説明する。上述した実施形態では、外装体11は充放電体14の側面(SL)に密着しており、外装体11が主面(SF、SS)から側面(SL)に方向転換するときは、ほぼ直角に近い角度で変化している。このため、振動に基づく充放電体14の位置ずれによって、正極層15や負極層16の端部が直角に曲がる部分で応力集中が発生することによる電極性能の低下や、外装体11の破損によって外部から水分や塵埃が侵入することによる充放電体14の劣化を生じることが想定される。
【0052】
このため、図7に示す変形例では、外装体11が主面(SF、SS)から側面(SL)に方向転換するときは、直角より大きい角度で側面(SL)の方向に方向転換させるようにしている。
【0053】
図8において、充放電体14を構成する正極集電箔18の主面(SF)から側面(SL)に向けて方向転換する上側外装体11Aの曲がる角度は、直角より大きい鈍角部(OA)として形成されている。同様に、充放電体14を構成する負極集電箔19の主面(SF)から側面(SL)に向けて方向転換する下側外装体11Bの曲がる角度は、直角より大きい鈍角部(OA)として形成されている。これによって、外装体11A、11Bの傾斜領域RSと充放電体14の側面(SL)の間には空間(SP)が形成されている。
【0054】
したがって、外装体11が主面(SF、SS)から側面(SL)に方向転換するとき、正極集電箔18と正極層15、及び負極集電箔19と負極層16の端部で直角に曲がる角部が、鈍角部(OA)に位置する外装体11に接触するのが抑制される。したがって、角部による応力集中が緩和され、応力が発生することによる電極性能の低下や、外装体11の破損によって外部から水分や塵埃が侵入することによる充放電体14の劣化を生じる、といった不具合を避けることができるようになる。
【0055】
ただし、充放電体14の側面(SL)と、側面(SL)に対応する外装体11のとの間に空間が形成されていれば、上述した課題は解決できる。このため、充放電体14を構成する正極集電箔18の主面(SF)から側面(SL)に向けて方向転換する上側外装体11Aの曲がる角度を鈍角部(OA)として形成しなく、側面(SL)から距離をとって空間を形成するようにして略直角に方向転換させても良いものである。下側外装体11Bも同様である。尚、空間(S)を形成する方法は種々の方法が考えられるが、簡単な方法として、内部の空気を逃さないようにして加圧することで、空間を形成することができる。
【0056】
尚、上述の説明では空気によって空間を形成することを述べたが、空気以外に絶縁性の液体や樹脂を用いて空間を代用することもできる。
【0057】
次に、本発明の実施形態である温間等方圧プレスによる充放電ユニット10の製造方法について、図9を用いて説明する。
【0058】
図9の(A)は、充放電ユニット10の組み上げ工程である。この組み上げ工程は、正極層15、負極層16、固体電解質層17を積層し、正極集電箔18、負極集電箔19を設けた後に、正極集電タブ12、負極集電タブ13を設けて組み立てた充放電体14に、外装体11を外側から被せて、充放電ユニット10を組み上げる。尚、正極集電箔18、負極集電箔19は、外装体11の外側まで露出させ、この露出された部分に、正極集電タブ12、負極集電タブ13を後付けすることもできる。この組み上げ工程が完了すると、次の加圧工程を実施する。
【0059】
図9の(B)は、温間等方圧プレスによる加圧工程を示している。等方圧プレスとしては、例えば、液体による加圧、ガスによる加圧を行うことができる。圧媒に液体を使用する場合は、水、エチレングリコール、シリコンオイル等を使用することができる。また、圧媒にガスを使用する場合は、アルゴンガス等を使用することができる。
【0060】
等方圧プレスの場合、プレス機構の特性から付与する圧力をより高く設定しても、電極層15、16や固体電解質層17の割れが生じ難いという利点がある。本実施形態では、圧媒として液体を使用したプレス機を使用している。
【0061】
温間等方圧プレスは、耐圧容器PCに液体LQを充填し、この中に充放電ユニット10を浸漬した後に、加圧源によってプランジャPLを押し下げることで、液体LQによって充放電ユニット10の全方向から加圧している。これによって、外装体11は、充放電ユニット10の形状に沿って変形して密着することになる。尚、液体LQは温度が高いので、外装体11の熱溶着層20によって、外装体11と充放電ユニット10は、溶着されて一体化する。
【0062】
ここで、本実施形態では、液体LQの温度管理によって、正極層15、負極層16及び固体電解質層17との密着性を向上するようにしている。密着性を向上するには、一般的に加圧圧力を高めれば良いが、正極層15、負極層16及び固体電解質層17は脆い性質があるため、加圧圧力をむやみに高くできない。
【0063】
そこで、本実施形態では、液体LQの温度を高めると、正極層15、負極層16及び固体電解質層17の密着性を高めることができるという新たな知見に基づき、本実施形態においては、液体LQの温度を140°C以上に設定することを特徴としている。
【0064】
液体LQの温度を140℃以上に設定する場合、沸点の関係からシリコンオイルを用いることが最も好ましい。更に詳しくは、シリコンオイルの温度は、140℃~250℃が好ましい。高温であればある程、電極層15、16と固体電解質層17の間の密着性が高くなり、低抵抗な固体電解質電池を得ることができる。このため、生産性を考慮した場合、140℃~200℃の範囲が好ましい。
【0065】
尚、高温になると、場合によっては以下の影響を受ける恐れがある。例えば、250℃を超えると、活物質、固体電解質、バインダ、その他の構成材料の変性が起こり、特性が大きく低下する、200℃を超えると、固体電解質、バインダ、その他の構成材料の変性が起こり、特性が低下する、といった可能性が出てくる。
【0066】
したがって、好ましくは、200℃以下で管理すれば、活物質、固体電解質、バインダその他の構成材料の変性が小さくできるので、固体電解質電池の特性を向上することができるようになる。
【0067】
また、温間等方圧プレスによる加圧圧力はむやみに高くするのは望ましくなく、100MPa~1000MPaの範囲内であることが好ましい。高圧であればある程、電極層15、16と固体電解質層17の間の密着性が高くなり、低抵抗な電池を得ることができるが、加圧圧力が高すぎると、電極層15、16、固体電解質層17が損壊する、内部短絡が生じるといった不具合を発生する。
【0068】
本実施形態では、100MPa~1000MPaの範囲の加圧圧力を提案しているが、例えば100MPa以上であることが好ましく、300MPa以上であることがより好ましい。圧力が低すぎると、電極層15、16、及び固体電解質層17の密着性を十分に向上できない恐れがある。
【0069】
一方、加圧圧力は、例えば1000MPa以下であることが好ましい。1000MPaより高圧だと、場合によっては電極層15、16、固体電解質層17が損壊する、内部短絡が生じるといった不具合を発生する。また、加圧源や、耐圧容器の変更といった設備コストが高くなる恐れがある。
【0070】
また、設定された加圧圧力での保持時間は、等方圧プレスの種類(液体、ガス)によって異なるものであるが、例えば、本実施形態では10秒~10分間の範囲内であることが好ましく、1分間~5分間の範囲内であることがより好ましい。140℃という高温で長時間に亘って加圧圧力を充放電ユニット10に作用させていると、外装体11が痛む恐れがある。
【0071】
一般的に、正極層15、固体電解質層17、負極層16を積層した充放電体14を、加圧することによって密着させる手法として、平板プレスやロールプレスが知られている。平板プレスやロールプレスは等方圧プレスではないため、充放電体14を高圧でプレスすると、例えば固体電解質層17が損壊し、短絡が発生する可能性が高くなる。
【0072】
これに対して、本実施形態では、温間等方圧プレスによって、外装体11を含む充放電ユニット10を加圧することから、充放電体14を高圧で加圧しても短絡が発生する可能性を抑制することができる。このため、低抵抗な固体電解質電池を歩留り良く作製することができ、生産性に優れるという新たな効果を奏する。
【0073】
更には、温間等方圧プレスによって、充放電体14の集電体12、13、18、19を配置した充放電ユニットとし、これを外装体11の内部に密封した状態で加圧するので、そのまま製品とすることができ、生産性に優れるという作用、効果を奏する。
【0074】
尚、温間等方圧プレスを実施する前に、正極層15、負極層16、及び固体電解質層17をロールプレスや平板プレスなどで事前に予備加圧して、これらの充填率を高めた状態で温間等方圧プレスを行っても良い。尚、この場合は予備加圧の圧力は、温間等方圧プレスによる加圧圧力に比べて低くして行うことが重要である。
【0075】
また、ガスによる温間等方圧プレスを実施する場合は、耐圧容器に充放電体を収納し、耐圧容器に加圧されたガスを供給して正極層、負極層、及び固体電解質層を密着させることができる。ガスの温度範囲に関しては上述の通りである。
【0076】
次に、図9の(c)に示すように、温間等方圧プレスによる加圧工程が終了すると、耐圧容器PCから充放電体ユニット10を取り出して乾燥、検品工程を実施する。この時、外装体11は、充放電ユニット10の形状に沿って密着するように形状が変化されている。
【0077】
ところで、本実施形態においては、温間等方圧プレスの圧媒を液体LQとし、これを140°C以上の温度に設定することを特徴としている。このような温度にすると、熱溶着層20が溶融する恐れが想定される。
【0078】
しかし、図7及び図8で説明したように、熱溶着層20より融点が高い耐熱層21を、熱溶着層20と金属層22の間に介装したので、仮に、熱溶着層20が欠損しても耐熱層21によって、金属層22と、正極集電箔18、或いは負極集電箔19が接触して、充放電体ユニット10に短絡を発生する恐れを避けることができる。
【0079】
言い換えれば、図5に示す充放電ユニット10を使用すれば、温間等方圧プレスの圧媒の液体LQの温度を140°C以上の温度に設定することができるようになる。
【0080】
図10は、温間等方圧プレスによる加圧工程を施した充放電ユニット10を金属板で挟み込込んで内部抵抗を測定したデータを示している。このデータは、0.1Cの電流値で、4.35VまでCCCV(定電流定電圧)充電し、その後3.0VまでCCCV放電の充放電を3回繰り返した後に、3.7Vに充電して電圧を調整し、インピーダンスアナライザでインピーダンス解析を行い、内部抵抗を求めたものである。
【0081】
このデータでわかるように、加圧圧力を980MPaで固定し、加圧される液体温度を変化させた結果、高温であるほど固体電解質池の内部抵抗が低いことを確認できる。特に、140℃以上で加熱すると、正極層15、負極層16及び固体電解質層17との密着性を向上することができ、固体電解質池の内部抵抗を十分に低くすることができる。固体電解質電池の内部抵抗が低いということは、電気自動車等に使用される二次電池を短時間で充電することができることを意味する。
【0082】
また、図11は、温間等方圧プレスによる加圧工程を施した充放電ユニット10を金属板で挟み込込んで内部抵抗を測定したデータを示している。このデータは、上述したように、0.1Cの電流値で、4.35VまでCCCV(定電流定電圧)充電し、その後3.0VまでCCCV放電の充放電を3回繰り返した後に、3.7Vに充電して電圧を調整し、インピーダンスアナライザでインピーダンス解析を行い、内部抵抗を求めたものである。
【0083】
このデータでわかるように、温度を150℃と190℃に固定し、加圧圧力を変化させた結果、高圧であるほど固体電解質池の内部抵抗が低いことを確認できる。特に、1500MPa以上で1000MPa以下であれば、正極層15、負極層16及び固体電解質層17との密着性を向上することができ、固体電解質池の内部抵抗を十分に低くすることができる。上述したように、固体電解質電池の内部抵抗が低いということは、電気自動車等に使用される二次電池を短時間で充電することができることを意味する。
【0084】
以上に説明した実施形態の特徴的な構成を以下に列挙する。これによって、本発明の特徴が明らかになる。
【0085】
(1)本発明における固体電解質電池は、正極層と負極層、及び正極層と負極層との間に配置された固体電解質層を有する充放電体と、充放電体を収容する外装体と、一端が外装体の外部に露出され、他端が正極層、或いは負極層に電気的に接続された集電体とを有する固体電解質電池であって、外装体が、充放電体を外側から覆い絶縁性を備えた第一の樹脂を含む熱溶着層と、熱溶着層の外側に積層され、第一の樹脂よりも融点が高く絶縁性を備えた第二の樹脂を含む耐熱層と、耐熱層の外側に積層され、金属を含む金属層とから形成され、充放電体の周囲に熱溶着層が溶着することで充放電体が外装体によって密封されていることを特徴とする。
【0086】
(2)本発明における固体電解質電池は、正極層の固体電解質層とは反対側に設けた正極集電箔の主面から正極層の側面に向けて方向転換する外装体と正極層の側面の間には、正極層の側面と外装体とが接触しない空間が形成され、負極層の固体電解質層とは反対側に設けた負極集電箔の主面から負極層の側面に向けて方向転換する外装体と負極層の側面の間には、負極層の側面と外装体とが接触しない空間が形成されていることを特徴とする。
【0087】
(3)本発明における固体電解質電池は、正極層の固体電解質層とは反対側に設けた正極集電箔の主面から正極層の側面に向けて方向転換する外装体は、正極層の側面に沿って溶着され、負極層の固体電解質層とは反対側に設けた負極集電箔の主面から負極層の側面に向けて方向転換する外装体は、負極層の側面に沿って溶着されていることを特徴とする。
【0088】
(4)本発明における固体電解質電池は、耐熱層の第二の樹脂が、エンジニアリングプラスチック、或いはスーパーエンジニアリングプラスチックからなる耐熱性樹脂であることを特徴とする。
【0089】
(5)本発明における固体電解質電池は、エンジニアリングプラスチックが、ナイロン、ポリアミド、または、ポリエチレンテレフタレートのいずれか1つであることを特徴とする。
【0090】
(6)本発明における固体電解質電池は、スーパーエンジニアリングプラスチックが、ポリイミド、或いはポリエーテルイミドであることを特徴とする。
【0091】
(7)本発明における固体電解質電池は、充放電体は、正極層、負極層、及び固体電解質層からなる組が、複数組だけ組み合わされていることを特徴とする。
【0092】
(8)本発明における固体電解質電池は、固体電解質電池の電力によって回転される電動モータによって走行する輸送機器に使用される固体電解質電池であることを特徴とする。
【0093】
(9)本発明における固体電解質電池は、金属層と熱溶着層の間に、熱溶着層よりも耐熱性が優れている耐熱層を設け、熱溶着層が溶融する温度に達しても、耐熱層は溶融しないで、「層」としての形態を維持することを特徴としている。
【0094】
(10)本発明における固体電解質電池は、金属層の外側に保護層を設けていることを特徴としている。
【0095】
(11)本発明における固体電解質電池は、充放電体を構成する正極集電箔の主面から側面に向けて方向転換する上側外装体の曲がる角度は、直角より大きい鈍角部として形成され、同様に、充放電体を構成する負極集電箔の主面から側面に向けて方向転換する下側外装体の曲がる角度は、直角より大きい鈍角部として形成されていることを特徴としている。
【0096】
(12)本発明における固体電解質電池は、充放電体を構成する正極集電箔の主面から側面に向けて方向転換する上側外装体は、側面から距離をとって空間を形成するようにして略直角に方向転換させ、同様に、充放電体を構成する負極集電箔の主面から側面に向けて方向転換する下側外装体は、側面から距離をとって空間を形成するようにして略直角に方向転換させていることを特徴としている。
【0097】
(13)本発明における固体電解質電池の製造方法は、正極層及び負極層と、正極層と負極層との間に配置された固体電解質層と、正極層に電気的に接続された正極集電箔と、負極層に電気的に接続された負極集電箔とからなる充放電体を有する固体電解質電池の製造方法であって、正極層、負極層と固体電解質層とを密着させる工程が、耐圧容器の液体に充放電体を浸漬し、液体を加圧して正極層、負極層、及び固体電解質層を密着させる温間等方圧プレスによる加圧工程であり、加圧工程における液体の温度が140℃以上で250℃以下の条件で行われることを特徴とする。
【0098】
(14)本発明における固体電解質電池の製造方法は、温間等方圧プレスによる加圧工程での液体の加圧圧力は、100MPa以上1000MPa以下に設定されていることを特徴とする。
【0099】
(15)本発明における固体電解質電池の製造方法は、温間等方圧プレスによる加圧工程の実行時間は、10秒~10分間の範囲に設定されていることを特徴とする。
【0100】
(16)本発明における固体電解質電池の製造方法は、充放電体は外装体によって密封されており、外装体を含む充放電体が、温間等方圧プレスにより加圧されていることを特徴とする。
【0101】
(17)本発明における固体電解質電池の製造方法は、外装体が、充放電体を外側から覆い絶縁性を備えた第一の樹脂を含む熱溶着層と、熱溶着層を外側から覆うように積層され、第一の樹脂よりも融点が高い絶縁性を備えた第二の樹脂を含む耐熱層と、耐熱層を外側から覆うように積層され、金属を含む金属層とから形成され、加圧工程で、充放電体の周囲に熱溶着層が溶着することで充放電体が外装体によって密封されていることを特徴とする。
【0102】
(18)本発明における固体電解質電池の製造方法は、温間等方圧プレスの加圧前の状態で、上側外装体と下側外装体は、充放電体と溶着されておらず、温間等方圧プレスの実施によって、充放電体を挟み込んで上側外装体と下側外装体の内側の熱溶着層が互いに接着されることを特徴とする。
【0103】
(19)本発明における固体電解質電池の製造方法は、温間等方圧プレスによる加圧を行う前に、充放電体は平板プレス、或いはロールプレスによって予備加圧されていることを特徴とする。
【0104】
(20)本発明における固体電解質電池の製造方法は、温間等方圧プレスによる加圧圧力に比べて、予備加圧による加圧圧力が小さいことを特徴とする。
【0105】
(21)本発明における固体電解質電池の製造方法は、外装体は、正極層と正極集電箔、負極層と負極集電箔、及び固体電解質層を覆う共に、正極集電箔と負極集電箔の一部は、外装体の外側まで露出され、この露出された部分に、正極集電タブと負極集電タブが後付けで設けられることを特徴とする。
【0106】
(22)本発明における固体電解質電池の製造方法は、正極層及び負極層と、正極層と負極層との間に配置された固体電解質層と、正極層に電気的に接続された正極集電箔と、負極層に電気的に接続された負極集電箔とからなる充放電体を有する固体電解質電池の製造方法であって、正極層及び前記負極層と、固体電解質層とを密着させる工程が、耐圧容器に充放電体を収納し、耐圧容器に加圧されたガスを供給して正極層、負極層、及び固体電解質層を密着させる温間等方圧プレスによる加圧工程であることを特徴とする。
【0107】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0108】
10…固体電解質電池(充放電ユニット)、11…外装体、12…正極集電タブ、13…負極集電タブ、14…充放電体、15…正極層、16…負極層、17…固体電解質層、18…正極集電箔、19…負極集電箔、20…熱溶着層、21…耐熱層、22…金属層、PC…耐圧容器、PL…プランジャ、LQ…液体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11