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特許7651698コモンモードフィルタおよび端末デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-17
(45)【発行日】2025-03-26
(54)【発明の名称】コモンモードフィルタおよび端末デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20250318BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20250318BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20250318BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20250318BHJP
   H01F 27/36 20060101ALI20250318BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F27/00 160
H01F27/29 123
H01F27/32 101
H01F27/36 101
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023530507
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 CN2021131422
(87)【国際公開番号】W WO2022105822
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】202011311813.4
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100132481
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 克豪
(74)【代理人】
【識別番号】100115635
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 郁大
(72)【発明者】
【氏名】狄 ▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】王 天▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】武 ▲竜▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 辰▲鈞▼
(72)【発明者】
【氏名】周 ▲倹▼▲軍▼
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/132666(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 27/00
H01F 27/29
H01F 27/32
H01F 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモンモードフィルタであって、複数のコイルグループと、複数のケーブル孔と、互いに平行な第1の磁気層、第2の磁気層、および複数のコイル層とを備え、前記複数のコイルグループは、少なくとも第1のコイルグループ、第2のコイルグループ、および第3のコイルグループを含み、前記複数のケーブル孔は、少なくとも第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔を含み、前記複数のコイル層は、第1のコイル層、少なくとも1つの中間コイル層、および第2のコイル層を含み、少なくとも第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルは、各コイル層に配設され、
前記第1のコイル層、前記中間コイル層、および前記第2のコイル層は、前記第1の磁気層と前記第2の磁気層との間に連続して積層され、
前記第1のコイルグループは、各コイル層において前記第1のケーブルを含み、前記第2のコイルグループは、各コイル層において前記第2のケーブルを含み、前記第3のコイルグループは、各コイル層において前記第3のケーブルを含み、
前記第1のケーブル孔は、前記第1のコイルグループの複数の第1のケーブルを接続するように構成され、前記第2のケーブル孔は、前記第2のコイルグループの複数の第2のケーブルを接続するように構成され、前記第3のケーブル孔は、前記第3のコイルグループの複数の第3のケーブルを接続するように構成され、
同じコイル層における前記第1のケーブル、前記第2のケーブル、および前記第3のケーブルのうちの少なくとも2つは、平行に巻かれ、
全てのコイルグループから前記第1の磁気層および前記第2の磁気層までの距離は、同位相で一致する、コモンモードフィルタ。
【請求項2】
コモンモードフィルタであって、複数のコイルグループと、複数のケーブル孔と、互いに平行な第1の磁気層、第2の磁気層、および複数のコイル層とを備え、前記複数のコイルグループは、少なくとも第1のコイルグループ、第2のコイルグループ、および第3のコイルグループを含み、前記複数のケーブル孔は、少なくとも第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔を含み、前記複数のコイル層は、第1のコイル層、少なくとも1つの中間コイル層、および第2のコイル層を含み、少なくとも第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルは、各コイル層に配設され、
前記第1のコイル層、前記中間コイル層、および前記第2のコイル層は、前記第1の磁気層と前記第2の磁気層との間に連続して配設され、前記第1のコイルグループは、各コイル層において前記第1のケーブルを含み、前記第2のコイルグループは、各コイル層において前記第2のケーブルを含み、前記第3のコイルグループは、各コイル層において前記第3のケーブルを含み、
前記第1のケーブル孔は、前記第1のコイルグループの複数の第1のケーブルを接続するように構成され、前記第2のケーブル孔は、前記第2のコイルグループの複数の第2のケーブルを接続するように構成され、前記第3のケーブル孔は、前記第3のコイルグループの複数の第3のケーブルを接続するように構成され、
同じコイル層における前記第1のケーブル、前記第2のケーブル、および前記第3のケーブルのうちの少なくとも2つは、平行に巻かれ、同じコイルグループのケーブル幅は、以下の場合、すなわち、
前記第1のケーブルの幅および前記第2のケーブルの幅は各々、第1のケーブル幅であり、前記第3のケーブルの幅は、第2のケーブル幅であり、前記第1のケーブル幅は、前記第2のケーブル幅とは異なる、または、
前記第1のケーブルの幅、前記第2のケーブルの幅、および前記第3のケーブルの幅は、全て異なり、前記第1のケーブルの前記幅は、第1のケーブル幅であり、前記第2のケーブルの前記幅は、第2のケーブル幅である
のうちのいずれか1つを満た
全てのコイルグループから前記第1の磁気層および前記第2の磁気層までの距離は、同位相で一致する、コモンモードフィルタ。
【請求項3】
前記第1のケーブル幅および前記第2のケーブル幅は、
W1=p1×W2を満たし、W1は、前記第1のケーブル幅であり、W2は、前記第2のケーブル幅であり、p1は、比率係数であり、p1∈[0.5、0.8]またはp1∈[2、3]である請求項2に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項4】
前記第1のコイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には第1の相対的位置関係が存在し、前記第2のコイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には第2の相対的位置関係が存在し、前記中間コイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には中間の相対的位置関係が存在し、
前記第1の相対的位置関係、前記第2の相対的位置関係、および前記中間の相対的位置関係は、同じであり、隣接するコイル層における第1のケーブルの接続のための前記第1のケーブル孔、隣接するコイル層における第2のケーブルの接続のための前記第2のケーブル孔、および隣接するコイル層における第3のケーブルの接続のための前記第3のケーブル孔の中心線は全て、全てのコイル層に対して垂直な同じ断面上に位置する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項5】
前記第1のコイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には第1の相対的位置関係が存在し、前記第2のコイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には第2の相対的位置関係が存在し、前記中間コイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には中間の相対的位置関係が存在し、
前記第1の相対的位置関係、前記第2の相対的位置関係、および前記中間の相対的位置関係は、同じであり、前記第1のコイルグループの複数の第1のケーブルの第1の合計長さ、前記第2のコイルグループの複数の第2のケーブルの第2の合計長さ、および前記第3のコイルグループの複数の第3のケーブルの第3の合計長さは、同じである請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項6】
前記第1のコイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には第1の相対的位置関係が存在し、前記第2のコイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には第2の相対的位置関係が存在し、前記中間コイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には中間の相対的位置関係が存在し、
前記第1の相対的位置関係、前記第2の相対的位置関係、および前記中間の相対的位置関係は、異なり、前記第1のコイルグループの複数の第1のケーブルの第1の合計長さ、前記第2のコイルグループの複数の第2のケーブルの第2の合計長さ、および前記第3のコイルグループの複数の第3のケーブルの第3の合計長さは、同じである請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項7】
前記コモンモードフィルタは、少なくとも1つの基準接地構造をさらに含み、前記基準接地構造は、全ての第1のケーブル、全ての第2のケーブル、および全ての第3のケーブルから絶縁され、前記基準接地構造は、前記第1の磁気層と前記第2の磁気層との両方から絶縁される請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項8】
前記基準接地構造は、第1の補助層と第2の補助層とを含み、
前記第1の補助層は、前記第1のコイル層と前記第1の磁気層との間に位置し、前記第1のコイル層における前記第1のケーブル、前記第2のケーブル、および前記第3のケーブルに対応する第1の基準接地ケーブルは、前記第1の補助層において配設され、
前記第2の補助層は、前記第2のコイル層と前記第2の磁気層との間に位置し、前記第2のコイル層における前記第1のケーブル、前記第2のケーブル、および前記第3のケーブルに対応する第2の基準接地ケーブルは、前記第2の補助層において配設される請求項7に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項9】
前記基準接地構造は、第1の付随基準接地ケーブル、中間付随基準接地ケーブル、および第2の付随基準接地ケーブルを含み、
前記第1のコイル層における前記第1のケーブル、前記第2のケーブル、および前記第3のケーブルの1つまたは複数の第1のターゲットケーブルの第1の付随基準接地ケーブルは、前記第1のコイル層において配設され、前記第1の付随基準接地ケーブルは、前記第1のターゲットケーブルの片側または両側に位置し、
前記中間コイル層における前記第1のケーブル、前記第2のケーブル、および前記第3のケーブルの1つまたは複数の中間ターゲットケーブルの中間付随基準接地ケーブルは、前記中間コイル層に配設され、前記中間付随基準接地ケーブルは、前記中間ターゲットケーブルの片側または両側に位置し、
前記第2のコイル層における前記第1のケーブル、前記第2のケーブル、および前記第3のケーブルの1つまたは複数の第2のターゲットケーブルの第2の付随基準接地ケーブルは、前記第2のコイル層に配設され、前記第2の付随基準接地ケーブルは、前記第2のターゲットケーブルの片側または両側に位置する請求項7に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項10】
前記第1の付随基準接地ケーブル、前記中間付随基準接地ケーブル、および前記第2の付随基準接地ケーブルは、接続される請求項9に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項11】
前記基準接地構造は、以下の金属基準接地層、すなわち、
前記第1のコイル層と前記第1の磁気層との間に位置する第1の金属基準接地層と、
前記第2のコイル層と前記第2の磁気層との間に位置する第2の金属基準接地層と、
前記第1のコイル層と前記中間コイル層との間に位置する第3の金属基準接地層であって、前記第3の金属基準接地層を通過する第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔を収容する第1の収容孔が提供された、第3の金属基準接地層と、
前記第2のコイル層と前記中間コイル層との間に位置する第4の金属基準接地層であって、前記第3の金属基準接地層を通過する前記第1のケーブル孔、前記第2のケーブル孔、および前記第3のケーブル孔を収容する第2の収容孔が提供された、第4の金属基準接地層と、
中間金属基準接地層であって、1つまたは複数の中間金属基準接地層が存在し、各中間金属基準接地層は、2つの中間コイル層間に位置し、前記第3の金属基準接地層を通過する前記第1のケーブル孔、前記第2のケーブル孔、および前記第3のケーブル孔を収容する第3の収容孔が提供される、中間金属基準接地層と
のうちの少なくとも1つを含む請求項7乃至10のいずれか一項に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項12】
複数の金属基準接地層が存在する場合、前記複数の金属基準接地層は、基準接地孔を通じて接続され、前記基準接地孔は、前記第1のコイル層、前記第2のコイル層、および前記中間コイル層のうちの1つまたは複数に配設される請求項11に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項13】
前記コモンモードフィルタは、互いに平行な第3の磁気層および第4の磁気層をさらに備え、
前記第1のコイル層、前記中間コイル層、および前記第2のコイル層は、前記第3の磁気層と前記第4の磁気層との間に位置し、前記第3の磁気層は、前記第1の磁気層および前記第2の磁気層に対して垂直であり、前記第4の磁気層は、前記第1の磁気層および前記第2の磁気層に対して垂直である請求項1乃至12のいずれか一項に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項14】
前記コモンモードフィルタは、互いに平行な第5の磁気層および第6の磁気層をさらに備え、
前記第1のコイル層、前記中間コイル層、および前記第2のコイル層は、前記第5の磁気層と前記第6の磁気層との間に位置し、前記第5の磁気層は、前記第1の磁気層、前記第2の磁気層、前記第3の磁気層、および前記第4の磁気層に対して垂直であり、前記第6の磁気層は、前記第1の磁気層、前記第2の磁気層、前記第3の磁気層、および前記第4の磁気層に対して垂直である請求項13に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項15】
前記基準接地構造は、金属基準接地コーティング層を含み、前記金属基準接地コーティング層は、前記コモンモードフィルタの表面をコーティングする請求項7乃至12のいずれか一項に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項16】
前記基準接地構造は、各コイルグループの端子に接続されるパッドおよび金属基準接地片を含み、
各パッドの一部は、前記コモンモードフィルタの第1の側面に位置し、各パッドの別の部分は、前記コモンモードフィルタ上にあり、かつ、前記第1の側面に接続される複数の第2の側面のうちの1つに位置し、
前記金属基準接地片は、複数のパッド間に位置し、前記コモンモードフィルタの前記第1の側面の領域の少なくとも一部とパッドを有する前記第2の側面とを囲む請求項7乃至12のいずれか一項に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項17】
前記複数のコイルグループは、第4のコイルグループをさらに含み、前記複数のケーブル孔は、第4のケーブル孔をさらに含み、第4のケーブルは、各コイル層にさらに配設され、前記第4のコイルグループは、各コイル層において第4のケーブルを含み、前記第4のコイルグループの複数の第4のケーブルは、前記第4のケーブル孔を通じて接続され、同じコイル層における前記第1のケーブル、前記第2のケーブル、前記第3のケーブル、および前記第4のケーブルのうちの少なくとも2つは、平行に巻かれる請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項18】
同じコイル層における前記第1のケーブル、前記第2のケーブル、および前記第3のケーブルは、誘電体を通じて分離され、異なるコイル層は、前記誘電体を通じて分離される請求項1乃至17のいずれか一項に記載のコモンモードフィルタ。
【請求項19】
前記誘電体の材料は、セラミック材料であり、前記コイルグループおよび前記ケーブル孔の材料は、金属材料である請求項18に記載のコモンモードフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電子技術の分野に関し、特に、コモンモードフィルタおよび端末デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2020年11月20日に中国国家知識産権局に出願され、「COMMON-MODE FILTER AND TERMINAL DEVICE」と題された中国特許出願第202011311813.4号の優先権を主張し、この中国特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0003】
携帯電話、スマートタブレット、およびポータブルコンピュータなどの端末製品が、ますます小型化し、薄型化するにつれて、無線周波数アンテナから、マルチメディアシステム、例えば、カメラ(Camera)またはディスプレイ(Display)において使用される高速データ伝送インターフェース(例えば、Mobile Industry Processor Interface、略してMIPI)アライアンス、サーデス(SERializer(シリアライザ)/DESerializer(デシリアライザ)の略称)インターフェース、またはエンベデッドデジタルオーディオおよびビデオをサポートする伝送インターフェース(Embedded Display Port、略してeDP)までの空間距離は、ますます小さくなり、無線周波数アンテナとインターフェースとの間の結合も、より強くなる。結果的に、MIPIなどの高速データ伝送方式は、無線周波数システムに対してより大きな干渉を引き起こし、無線周波数伝送パワーによって影響を与えられる可能性が高くなる。これは、携帯電話などの端末製品上の無線周波数とマルチメディアシステムとの間の電磁両立性に影響を与える重要な要因になる。無線周波数と、高速差動データ伝送モジュール、例えば、MIPI、サーデス、およびeDPなどとの間の共存の問題を解決するために、高いコモンモード抑制、低い長手方向の伝達損失、および良好な対称性を備えたコモンモードフィルタが必要とされ、関連する技術におけるコモンモードフィルタが不十分な対称性を有し、コモンモードノイズを差動モードノイズに変換しやすいという問題を解決するが、これは、コモンモード干渉ノイズに対するコモンモードフィルタのフィルタリング効果を低減する。
【発明の概要】
【0004】
これを考慮して、高い対称性および低い長手方向の伝達損失を備えたコモンモードフィルタと、端末デバイスとが提案される。
【0005】
第1の態様によれば、本出願の一実施形態は、コモンモードフィルタを提供する。コモンモードフィルタは、複数のコイルグループ、複数のケーブル孔、ならびに第1の磁気層、第2の磁気層、および互いに平行な複数のコイル層を含む。複数のコイルグループは、少なくとも第1のコイルグループ、第2のコイルグループ、および第3のコイルグループを含み、複数のケーブル孔は、少なくとも第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔を含み、複数のコイル層は、第1のコイル層、少なくとも1つの中間コイル層、および第2のコイル層を含み、少なくとも第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルは、各コイル層に配設される。第1のコイル層、中間コイル層、および第2のコイル層は、第1の磁気層と第2の磁気層との間に連続して積層される。第1のコイルグループは、各コイル層において第1のケーブルを含み、第2のコイルグループは、各コイル層において第2のケーブルを含み、第3のコイルグループは、各コイル層において第3のケーブルを含む。第1のケーブル孔は、第1のコイルグループの複数の第1のケーブルを接続するように構成され、第2のケーブル孔は、第2のコイルグループの複数の第2のケーブルを接続するように構成され、第3のケーブル孔は、第3のコイルグループの複数の第3のケーブルを接続するように構成される。同じコイル層における第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルのうちの少なくとも2つは、平行に巻かれる。このようにして、全てのコイルグループから第1の磁気層および第2の磁気層までの距離は、同位相で一致し、その結果、異なるコイルグループ間の対称性が改善され、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失が低減される。
【0006】
第2の態様によれば、本出願の一実施形態は、コモンモードフィルタを提供する。コモンモードフィルタは、複数のコイルグループ、複数のケーブル孔、ならびに第1の磁気層、第2の磁気層、および互いに平行な複数のコイル層を含む。複数のコイルグループは、少なくとも第1のコイルグループ、第2のコイルグループ、および第3のコイルグループを含み、複数のケーブル孔は、少なくとも第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔を含み、複数のコイル層は、第1のコイル層、少なくとも1つの中間コイル層、および第2のコイル層を含み、少なくとも第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルは、各コイル層に配設される。第1のコイル層、中間コイル層、および第2のコイル層は、第1の磁気層と第2の磁気層との間に連続して配設される。第1のコイルグループは、各コイル層において第1のケーブルを含み、第2のコイルグループは、各コイル層において第2のケーブルを含み、第3のコイルグループは、各コイル層において第3のケーブルを含む。第1のケーブル孔は、第1のコイルグループの複数の第1のケーブルを接続するように構成され、第2のケーブル孔は、第2のコイルグループの複数の第2のケーブルを接続するように構成され、第3のケーブル孔は、第3のコイルグループの複数の第3のケーブルを接続するように構成される。同じコイル層における第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルのうちの少なくとも2つは、平行に巻かれ、同じコイルグループのケーブル幅は、第1のケーブルの幅および第2のケーブルの幅は各々、第1のケーブル幅であり、第3のケーブルの幅は、第2のケーブル幅であり、第1のケーブル幅は、第2のケーブル幅とは異なる場合、または、第1のケーブルの幅、第2のケーブルの幅、および第3のケーブルの幅は全て異なり、第1のケーブルの幅は、第1のケーブル幅であり、第2のケーブルの幅は、第2のケーブル幅である場合のうちのいずれか1つを満たす。第1のケーブル幅および第2のケーブル幅は、W1=p1×W2を満たし、ただし、W1は、第1のケーブル幅であり、W2は、第2のケーブル幅であり、p1は、比率係数であり、p1∈[0.5、0.8]またはp1∈[2、3]である。
【0007】
前述の配設によれば、全てのコイルグループから第1の磁気層および第2の磁気層までの距離は、同位相で一致し、その結果、異なるコイルグループ間の対称性が改善され、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失が低減される。また、各コイルグループのケーブル幅は、予め設定された幅比率関係に基づいて設定されるので、異なるコイルグループにおける複数のケーブルの異なる合計長さによって引き起こされるインピーダンス差異、加工技術によって引き起こされる異なるコイルグループの異なるケーブル厚さ、およびケーブル孔の位置設定によって引き起こされる異なるコイルグループにおけるケーブルの一致しない位相は、さらに改善され得る。異なるコイルグループのケーブル幅は、幅比率関係を調整することによって調整され得、その結果、異なるコイルグループは、同様のまたは同じ特性インピーダンスを有し、異なるコイルグループ間の対称性が改善され、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失が低減される。
【0008】
第1の態様および第2の態様によれば、コモンモードフィルタの第1の可能な実装において、第1のコイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には第1の相対的位置関係が存在し、第2のコイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には第2の相対的位置関係が存在し、中間コイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には中間の相対的位置関係が存在する。第1の相対的位置関係、第2の相対的位置関係、および中間の相対的位置関係は、同じであり、隣接するコイル層における第1のケーブルの接続のための第1のケーブル孔、隣接するコイル層における第2のケーブルの接続のための第2のケーブル孔、および隣接するコイル層における第3のケーブルの接続のための第3のケーブル孔の中心線は全て、全てのコイル層に対して垂直な同じ断面上に位置する。このようにして、全てのコイルグループから第1の磁気層および第2の磁気層までの距離は、同位相で一致し、各コイル層において、異なるコイルグループのケーブル間の相対的位置関係は同じであり、その結果、異なるコイルグループ間の対称性がさらに改善され、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失がさらに低減される。
【0009】
第1の態様および第2の態様によれば、コモンモードフィルタの第2の可能な実装において、第1のコイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には第1の相対的位置関係が存在し、第2のコイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には第2の相対的位置関係が存在し、中間コイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には中間の相対的位置関係が存在する。第1の相対的位置関係、第2の相対的位置関係、および中間の相対的位置関係は異なり、第1のコイルグループの複数の第1のケーブルの第1の合計長さ、第2のコイルグループの複数の第2のケーブルの第2の合計長さ、および第3のコイルグループの複数の第3のケーブルの第3の合計長さは、同じである。このようにして、全てのコイルグループから第1の磁気層および第2の磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、各コイル層における異なるコイルグループのケーブル間の相対的位置関係は変化し、その結果、異なるコイルグループのケーブルの合計長さは同じである。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0010】
第1の態様および第2の態様によれば、コモンモードフィルタの第3の可能な実装において、第1のコイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には第1の相対的位置関係が存在し、第2のコイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には第2の相対的位置関係が存在し、中間コイル層における第1のケーブルと、第2のケーブルと、第3のケーブルとの間には中間の相対的位置関係が存在する。第1の相対的位置関係、第2の相対的位置関係、および中間の相対的位置関係は同じであり、第1のコイルグループの複数の第1のケーブルの第1の合計長さ、第2のコイルグループの複数の第2のケーブルの第2の合計長さ、および第3のコイルグループの複数の第3のケーブルの第3の合計長さは同じである。このようにして、全てのコイルグループから第1の磁気層および第2の磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、各コイル層における異なるコイルグループのケーブル間の相対的位置関係が同じであることに基づいて、異なるコイル層におけるケーブルの長さは変化し、その結果、異なるコイルグループのケーブルの合計長さは同じである。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0011】
第1の態様、第2の態様、第1の可能な実装、第2の可能な実装、または第3の可能な実装によれば、コモンモードフィルタの第4の可能な実装において、コモンモードフィルタは、基準接地構造をさらに含み、基準接地構造は、全ての第1のケーブル、全ての第2のケーブル、および全ての第3のケーブルから絶縁され、基準接地構造は、第1の磁気層と第2の磁気層との両方から絶縁される。基準接地構造を配設することによって。
【0012】
第4の可能な実装によれば、コモンモードフィルタの第5の可能な実装において、基準接地構造は、第1の補助層と第2の補助層とを含む。
【0013】
第1の補助層は、第1のコイル層と第1の磁気層との間に位置し、第1のコイル層における第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルに対応する第1の基準接地ケーブルは、第1の補助層において配設される。
【0014】
第2の補助層は、第2のコイル層と第2の磁気層との間に位置し、第2のコイル層における第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルに対応する第2の基準接地ケーブルは、第2の補助層において配設される。このようにして、全てのコイルグループから第1の磁気層および第2の磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、基準接地ケーブルを含む第1の補助層および第2の補助層を配設することによって、異なるコイルグループは、同様の接地インピーダンスを有する。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0015】
第4の可能な実装によれば、コモンモードフィルタの第6の可能な実装において、基準接地構造は、第1の付随基準接地ケーブル、中間付随基準接地ケーブル、および第2の付随基準接地ケーブルを含む。第1のコイル層における第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルの1つまたは複数の第1のターゲットケーブルの第1の付随基準接地ケーブルは、第1のコイル層において配設され、第1の付随基準接地ケーブルは、第1のターゲットケーブルの片側または両側に位置する。
【0016】
中間コイル層における第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルの1つまたは複数の中間ターゲットケーブルの中間の付随基準接地ケーブルは、中間コイル層に配設され、中間付随基準接地ケーブルは、中間ターゲットケーブルの片側または両側に位置する。
【0017】
第2のコイル層における第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルの1つまたは複数の第2のターゲットケーブルの第2の付随基準接地ケーブルは、第2のコイル層に配設され、第2の付随基準接地ケーブルは、第2のターゲットケーブルの片側または両側に位置する。このようにして、全てのコイルグループから第1の磁気層および第2の磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、付随基準接地ケーブルを配設することによって、異なるコイルグループが、同様の接地インピーダンスを有する。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0018】
第6の可能な実装によれば、コモンモードフィルタの第7の可能な実装において、第1の付随基準接地ケーブル、中間付随基準接地ケーブル、および第2の付随基準接地ケーブルは、接続される。このようにして、第4の可能な実装と比較して、この可能な実装は、異なるコイルグループが同様の接地インピーダンスを有することをさらに確実にする。
【0019】
第4の可能な実装によれば、コモンモードフィルタの第8の可能な実装において、基準接地構造は、以下の金属基準接地層、すなわち、
第1のコイル層と第1の磁気層との間に位置する第1の金属基準接地層と、
第2のコイル層と第2の磁気層との間に位置する第2の金属基準接地層と、
第1のコイル層と中間コイル層との間に位置する第3の金属基準接地層であって、第3の金属基準接地層を通過する第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔を収容する第1の収容孔が提供された、第3の金属基準接地層と、
第2のコイル層と中間コイル層との間に位置する第4の金属基準接地層であって、第3の金属基準接地層を通過する第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔を収容する第2の収容孔が提供された、第4の金属基準接地層と、
中間金属基準接地層であって、1つまたは複数の中間金属基準接地層が存在し、各中間金属基準接地層は、2つの中間コイル層間に位置し、第3の金属基準接地層を通過する第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔を収容する第3の収容孔が提供される、中間金属基準接地層と
のうちの少なくとも1つを含む。このようにして、全てのコイルグループから第1の磁気層および第2の磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、別の可能な実装におけるコモンモードフィルタと比較して、この可能な実装におけるコモンモードフィルタは、金属基準接地層を配設し、その結果、異なるコイルグループが同様の接地インピーダンスを有する。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0020】
第8の可能な実装によれば、コモンモードフィルタの第9の可能な実装において、複数の金属基準接地層が存在する場合、複数の金属基準接地層は、基準接地孔を通じて接続され、基準接地孔は、第1のコイル層、第2のコイル層、および中間コイル層のうちの1つまたは複数に配設される。また、第6の可能な実装と比較して、この可能な実装は、異なるコイルグループの接地インピーダンス間の差異をさらに低減することができる。
【0021】
第1の態様、第2の態様、または前述の9つの可能な実装のうちのいずれか1つによれば、コモンモードフィルタの第10の可能な実装において、コモンモードフィルタは、互いに平行な第3の磁気層および第4の磁気層をさらに含む。第1のコイル層、中間コイル層、および第2のコイル層は、第3の磁気層と第4の磁気層との間に位置し、第3の磁気層は、第1の磁気層および第2の磁気層に対して垂直であり、第4の磁気層は、第1の磁気層および第2の磁気層に対して垂直である。このようにして、全てのコイルグループから第1の磁気層、第2の磁気層、第3の磁気層、および第4の磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、第1の磁気層および第2の磁気層のみを含む手法で配設されたコモンモードフィルタと比較して、このコモンモードフィルタは、複数のコイルグループが二次元において同じ磁気環境内に存在することを可能にする。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0022】
第10の可能な実装によれば、コモンモードフィルタの第11の可能な実装において、コモンモードフィルタは、互いに平行な第5の磁気層および第6の磁気層をさらに含む。
【0023】
第1のコイル層、中間コイル層、および第2のコイル層は、第5の磁気層と第6の磁気層との間に位置し、第5の磁気層は、第1の磁気層、第2の磁気層、第3の磁気層、および第4の磁気層に対して垂直であり、第6の磁気層は、第1の磁気層、第2の磁気層、第3の磁気層、および第4の磁気層に対して垂直である。このようにして、全てのコイルグループから第1の磁気層、第2の磁気層、第3の磁気層、第4の磁気層、第5の磁気層、および第6の磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、第1の磁気層および第2の磁気層のみを含む手法、ならびに第1の磁気層、第2の磁気層、第3の磁気層、および第4の磁気層のみを含む手法で配設されたコモンモードフィルタと比較して、このコモンモードフィルタは、複数のコイルグループが三次元立体空間において同じ磁気環境内に存在することを可能にする。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0024】
第4の可能な実装によれば、コモンモードフィルタの第12の可能な実装において、基準接地構造は、金属基準接地コーティング層を含み、金属基準接地コーティング層は、コモンモードフィルタの表面をコーティングする。このようにして、全てのコイルグループから磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、第1の態様における手法で配設されたコモンモードフィルタと比較して、このコモンモードフィルタは、複数のコイルグループが同じ基準接地環境内に存在すること、および三次元立体空間において同じ接地インピーダンスを有することを可能にする。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0025】
第4の可能な実装によれば、コモンモードフィルタの第13の可能な実装において、基準接地構造は、各コイルグループの端子に接続されるパッドおよび金属基準接地片をさらに含む。各パッドの一部は、コモンモードフィルタの第1の側面に位置し、各パッドの別の部分は、コモンモードフィルタ上にあり、かつ、第1の側面に接続される複数の第2の側面のうちの1つに位置する。金属基準接地片は、複数のパッド間に位置し、コモンモードフィルタの第1の側面の領域の少なくとも一部とパッドを有する第2の側面とを囲む。このようにして、全てのコイルグループから磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、第1の態様における手法で配設されたコモンモードフィルタと比較して、このコモンモードフィルタは、異なるコイルグループがパッド位置において同様の接地インピーダンスを有することを可能にする。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0026】
第3の態様によれば、本出願の一実施形態は、端末デバイスを提供し、端末デバイスは、第1の態様、第2の態様、または前述の13個の可能な実装のうちのいずれか1つによるコモンモードフィルタを含む。
【0027】
本出願におけるこれらの態様または他の態様は、以下の(複数の)実施形態における説明において、より明確に、かつ、より分かりやすくなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本明細書に含まれ、本明細書の一部を構成し得る添付の図面は、本明細書と共に、本出願の例示的な実施形態、または特徴および態様を示し、本出願の原理を解説するために使用される。
【0029】
図1a】関連する技術におけるコモンモードフィルタのケーブル構造の概略図である。
図1b】関連する技術におけるコモンモードフィルタのケーブル構造の概略図である。
図1c】関連する技術におけるコモンモードフィルタのケーブル構造の概略図である。
図1d】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの三次元図である。
図1e】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの主要図である。
図1f】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの側面図である。
図1g】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの上面図である。
図1h】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。
図2a】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。
図2b】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。
図2c】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタのコイル層の構造の概略図である。
図3a】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。
図3b】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。
図4】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。
図5a】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。
図5b】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。
図6a】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。
図6b】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。
図6c】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。
図7a】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。
図7b】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。
図7c】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。
図8a】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。
図8b】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。
図9a】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。
図9b】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。
図10a】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。
図10b】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。
図11a】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。
図11b】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。
図12a】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの三次元図である。
図12b】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの図である。
図12c】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの図である。
図12d】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの図である。
図13a】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの三次元図である。
図13b】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの図である。
図13c】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの図である。
図13d】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの図である。
図14a】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。
図14b】本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの複数のコイル層の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本出願の様々な例示的な実施形態、特徴、および態様は、添付の図面を参照して、以下に詳細に説明される。添付の図面における同じ参照符号は、同じ機能または同様の機能を有する要素を表す。実施形態の様々な態様は、添付図面において例示されているが、添付図面は、特に指定のない限り、必ずしも比例して描かれているとは限らない。
【0031】
本明細書における「例示的な」という特定の用語は、「例もしくは実施形態、または例示として使用される」ことを意味する。「例示的な」として説明されるいかなる実施形態も、必ずしも他の実施形態より優れているものまたはより良好なものとして解説されるとは限らない。
【0032】
また、本出願をより良好に説明するために、以下の特定の実装は、多くの特定の詳細を提供する。当業者は、本出願がいくつかの特定の詳細なしに実装されてもよいことを理解するべきである。いくつかの例において、当業者によって周知の方法、手段、構成要素、および回路は、本出願の主な目的を強調するために、詳細に説明されない。
【0033】
関連する技術において、コモンモードインダクタ(コモンモードフィルタの一種)は、通常、2つのコイルを含む。2つのコイルは、同じ量の巻きおよび同位相を有し、同じ鉄心の周りに平行に巻かれる。コモンモードコイルは同位相で巻かれるので、等振幅の位相反転差動モード電流が、コモンモードインダクタを流れる場合、差動モード電流は、コイルにおいて互いに反対の磁界を生成することができ、その結果、磁界は互いに相殺され、インダクタンス効果を低減する。コモンモードインダクタは、通常、差動モード電流を減衰させず、差動モード電流に影響を及ぼす主な要因は、コモンモードインダクタコイルの抵抗である。等振幅の同相コモンモード電流が、コモンモードインダクタを流れる場合、コモンモード電流は同じ方向であるので、コモンモードインダクタコイルにおいてコモンモード電流によって生成された磁界も、同じ方向であり、その結果、コモンモードインダクタコイルのインダクタンスリアクタンスが増加され、コイルは高いインピーダンスを示す。このようにして、強いダンピング効果が生み出され、その結果、コモンモード電流が減衰されることが可能であり、フィルタリングする効果が達成されることが可能である。2つを超えるケーブル(すなわち、2つを超えるコイル)を有するコモンモードフィルタは、高速データ伝送において広い適用見込みを有する。例えば、C-PHYインターフェース(PHYは、ポート物理層、英語ではPort Physical Layerの略称であり、C-PHYは、MIPIにおいて指定されるポート物理層についての標準である)のデータ伝送モードにあるMIPI(Mobile Industry Processor Interface、モバイル産業プロセッサインターフェース)に適応したコモンモードフィルタは、3つのコイルから構成され、3つのコイルは、2つのコイル間の結合および差動を通じてコモンモードノイズをフィルタリングすることができる。関連する技術において、図1a、図1b、および図1cは、関連する技術におけるコモンモードフィルタのケーブル構造の概略図である。「A」、「B」、および「C」と表記されたケーブルは、3つの異なるコイルグループのケーブルである。図1aに示されるように、3つのコイルグループのケーブルは、正三角形に配置され、「A」および「B」のコイルグループのケーブルは、同じ層に存在し、「C」のコイルグループのケーブルは、別個の層に存在する。このようにして、フェライトから3つのコイルグループのケーブルまでの距離は異なり、異なるコイルグループ間に異なる位相をもたらす。差動電流信号がコモンモードフィルタを流れ、2つのコイル間で差動動作を行う場合、コモンモード電流を完全に相殺することは困難であり、その結果、コモンモード電流の一部は、差動モード電流へ変換される。結果的に、差動モードノイズが形成される。図1bに示されるように、3つのコイルグループのケーブルも、正三角形に配置され、「A」、「B」、および「C」のコイルグループのケーブルは全て、異なる層に存在する。このようにして、フェライトから3つのコイルグループのケーブルまでの距離は異なり、異なるコイルグループ間に異なる位相をもたらす。結果的に、コモンモード電流が差動モード電流へ変換されるという問題が存在する。図1cに示されるように、「A」、「B」、および「C」のコイルグループのケーブルは、異なる層に存在し、1つのコイルグループのケーブルは、2つの層において巻かれる。このようにして、フェライトから3つのコイルグループのケーブルまでの距離は異なり、異なるコイルグループ間に異なる位相をもたらす。結果的に、コモンモード電流が差動モード電流へ変換されるという問題が存在する。要約すると、関連する技術における、2つを超えるケーブルを有するコモンモードフィルタ構成要素は、不十分な対称性の問題を有しており、コモンモードノイズは、差動モードノイズへ変換されやすく、その結果、コモンモード干渉ノイズに対するフィルタのフィルタリングする効果が低減される。一般に、コモンモードフィルタのコモンモードから差動モードへの変換の特性は、長手方向の伝達損失と称される。どのようにコモンモードフィルタに高い対称性および低い長手方向の伝達損失を提供するかは、至急解決されるべき技術的問題である。前述の技術的問題を解決するために、本出願は、コモンモードフィルタを提供する。
【0034】
本出願において提供されるコモンモードフィルタは、複数のコイルグループ、複数のケーブル孔、ならびに、互いに平行な第1の磁気層、第2の磁気層、第1のコイル層、中間コイル層、および第2のコイル層を含む。第1のコイル層、中間コイル層、および第2のコイル層は、第1の磁気層と第2の磁気層との間に連続して配設される。コイルグループの数量は、少なくとも3つであってよく、各コイルグループの複数のケーブルは、各コイル層において別個に分散される。同じコイル層における異なるコイルグループのケーブルの長さ、ケーブル間の相対的位置関係、およびケーブル幅比率が設定されて、高い対称性および低い長手方向の伝達損失を有するコモンモードフィルタを取得する。コイルグループの数量、コイル層の数量、ならびに、異なる使用要件を有するコモンモードフィルタのケーブル孔の数量および位置などの構造レイアウト設定は、対応して調整され得る。当業者は、要件に基づいて設定を行ってよく、これは本出願において限定されない。コモンモードフィルタにおけるコイルグループのレイアウトを直感的にかつ明確に説明するために、以下は、「3つのコイルグループがコモンモードフィルタにおいて配設される」例を説明のために使用し、「A」、「B」、および「C」はそれぞれ、3つのコイルグループを表す。コイルグループの数量が3つを超える場合、当業者は、「コモンモードフィルタにおいて3つのコイルグループを配設する」レイアウト設定を参照して、対応する調整を行ってよく、詳細は、本出願において説明されない。
【0035】
図1dは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの三次元図である。図1eは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの主要図である。図1fは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの側面図である。図1gは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの上面図である。図1hは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。図1hは、図1fにおける点線ボックス領域s3のロケーションに沿って区分を実行することによって取得された断面図である。本出願におけるコイルグループのケーブルレイアウトについての理解を容易にするために、コイルグループに関連付けられた部分のみが、断面図図1hに示されている。図1eにおける点線ボックス領域s2、図1fにおける点線ボックス領域s3、および図1gにおける点線ボックス領域s1は、コモンモードフィルタの同じ空間領域に対応する。
【0036】
本出願の一実施形態は、コモンモードフィルタを提供する。図1hに示されるように、コモンモードフィルタは、複数のコイルグループ(ただし、異なるコイルグループのケーブル間の差異は、図1hに示されていない)、複数のケーブル孔、ならびに、互いに平行な第1の磁気層11、第2の磁気層12、および複数のコイル層を含み、複数のコイル層は、第1のコイル層21、第2のコイル層22、および1つまたは複数の中間コイル層23(ただし、図1hにおいて、複数の中間コイル層は例として使用される)を含む。少なくとも第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルは、各コイル層上に配設される。複数のコイルグループは、少なくとも第1のコイルグループA、第2のコイルグループB、および第3のコイルグループCを含む(ただし、図1hは、同じコイル層における異なるコイルグループのケーブルの相対的位置関係を限定しないので、図1hは、第1のコイルグループA、第2のコイルグループB、および第3のコイルグループCを異なる形で示さないが、図2a、図3a、図5a、図6a、図6b、図7a、図14aにおける例示への参照が行われ得る)。複数のケーブル孔は、少なくとも第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔(図1hに図示せず)を含む。
【0037】
第1のコイル層21、中間コイル層23、および第2のコイル層22は、第1の磁気層11と第2の磁気層12との間に連続して配設される。
【0038】
第1のコイルグループAは、全てのコイル層において第1のケーブルを含む。具体的には、第1のコイルグループAは、第1のコイル層21において第1のケーブルを含み、第2のコイル層22において第1のケーブルを含み、中間コイル層23において第1のケーブルを含む。第2のコイルグループBは、全てのコイル層において第2のケーブルを含む。具体的には、第2のコイルグループBは、第1のコイル層21において第2のケーブルを含み、第2のコイル層22において第2のケーブルを含み、中間コイル層23において第2のケーブルを含む。第3のコイルグループCは、全てのコイル層において第3のケーブルを含む。具体的には、第3のコイルグループCは、第1のコイル層21において第3のケーブルを含み、第2のコイル層22において第3のケーブルを含み、中間コイル層23において第3のケーブルを含む。
【0039】
第1のケーブル孔は、第1のコイルグループの複数の第1のケーブルを接続するように構成され、第2のケーブル孔は、第2のコイルグループの複数の第2のケーブルを接続するように構成され、第3のケーブル孔は、第3のコイルグループの複数の第3のケーブルを接続するように構成される。同じコイル層における第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルのうちの少なくとも2つは、平行に巻かれる。
【0040】
本出願のこの実施形態において、異なるコイルグループは、互いに絶縁される。誘電体などの絶縁材料の絶縁層が、各ケーブル表面に対して追加され得る。代替として、異なるコイルグループ間の絶縁は、同じコイル層の異なるケーブル間に間隔を配設することによって実装され、誘電体などの絶縁材料は、隣接するコイル層間に配設される。例えば、絶縁材料は、樹脂材料、セラミック材料、高分子材料等であってよい。当業者は、要件に基づいて、異なるコイルグループ間の相互絶縁を実装する手法を設定し得る。これは、本出願において限定されない。
【0041】
本出願のこの実施形態において、各中間コイル層において配設される第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔は、互いに接続されず、または互いに接しておらず、互いに絶縁されて、異なるコイルグループ間の相互絶縁を確実にする。第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔内に充填される材料は、金属であり、これは、対応するコイルグループのケーブル材料と完全に同じであってよい。例えば、材料は、良好な導電性を有する金属、例えば、銅、銀、金、およびタングステンなどである。代替として、異なる金属が、対応するコイルグループのケーブルに対して使用されてよい。例えば、コイルグループのケーブル材料は、銅金属であり、ケーブル孔内の充填材料は、銀金属である。これは、本出願において限定されない。
【0042】
本出願のこの実施形態において、第1の磁気層11および第2の磁気層12の材料は、フェライトなどの磁性材料、例えば、合金、モノマー、酸化物であって、Fe、Co、Ni、またはMnなどの元素を含む酸化物などであってよい。これは、本出願において限定されない。また、第1の磁気層11、第2の磁気層12、および複数のコイル層(第1のコイル層21、第2のコイル層22、および1つまたは複数の中間コイル層23を含む)における隣接する層は、互いに絶縁される。隣接する層間の絶縁は、絶縁層等を追加することによって実装され得る。絶縁層の材料は、樹脂材料、セラミック材、または高分子材料などの絶縁材料であってよい。これは、本出願において限定されない。第1の磁気層および第2の磁気層は、厚さ、長さ、および幅などの空間サイズを有して提供され、第1の磁気層および第2の磁気層の厚さ、長さ、および幅は、加工技術、長手方向の伝達損失、差動モード損失、リターン損失、インピーダンスインジケータパラメータ等の限定に基づいて設定され得る。これは、本出願において限定されない。しかしながら、コモンモードフィルタの構造を単純化し、ケーブルを強化し、コモンモードフィルタにおける層間の位置関係を確実にするために、第1の磁気層および第2の磁気層のサイズは、本出願の添付の図面において詳細に説明されない。しかしながら、これは、本出願の限定として考慮されることはできない。
【0043】
本出願のこの実施形態において、同じコイル層における複数のケーブルのうちの少なくとも2つが平行に巻かれることは、2本以上のケーブルが平行に巻かれることを含み得る。図2b、図2c、および図3bの各々に示されるように、各コイル層における複数のケーブルは、平行に巻かれる。同じコイル層における複数のケーブルのうちの少なくとも2つが平行に巻かれることは、以下を含み得る。平行に巻かれるケーブルにおける各ケーブルの全部または一部は、「平行に巻かれる全てのケーブル」の巻きに加わり、平行に巻かれるケーブルにおける各ケーブルの別の一部は、「平行に巻かれる全てのケーブル」における1つまたは複数の他のケーブルの巻きに平行に加わる。このようにして、同じコイル層における各ケーブルから第1の磁気層までの距離は一致し、各ケーブルから第2の磁気層までの距離も一致する(ただし、同じコイル層における複数のケーブルから第1の磁気層までの距離と、同じコイル層における複数のケーブルから第2の磁気層までの距離とは、異なる)。同じコイル層における少なくとも2つのケーブルが平行に巻かれることは、同じコイル層において平行に巻かれる必要があるケーブルが平行に巻かれることを意味する。平行に巻かれたケーブルは、同位相を有する。
【0044】
例えば、以下の図2bおよび図2cに示されるように、各コイル層における複数のケーブルは全て、平行に巻かれ、各ケーブルの全長は、複数のケーブルの巻きに平行に加わる。以下の図3bに示されるように、各コイル層における複数のケーブルは、平行に巻かれる。しかしながら、異なるケーブル長さに起因して、いくつかのケーブルは、同じコイル層における他の全てのケーブルとの平行な巻きに全長で加わることができない。「同じコイル層における他の全てのケーブルとの平行な巻き」に加わらない残りの長さは、全長が使い果たされるまで、残りのケーブルのうちの1つまたは複数と平行に巻かれ続ける。ケーブルが、コイル層において最も長いケーブルである場合、ケーブルの残りの長さは、いかなる平行な巻きにおいても使用されることができない。例えば、「第1の層」において、第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcは、平行に巻かれるが、第2のケーブルbの全長のみが、3つのケーブルの平行な巻きに加わる。第3のケーブルcの一部は、3つのケーブルの平行な巻きに加わり、第3のケーブルcの別の部分は、第2のケーブルbとの平行な巻きに加わり、第3のケーブルcの最後の部分は、平行な巻きに加わらない。図4に示されるように、各コイル層における全てのケーブルが平行に巻かれるが、異なるケーブル長さの制限に起因して、「第6の層」において、第2のケーブルbの小さい部分のみが、3つのケーブルの平行な巻きに加わり、残りの部分は、第3のケーブルcと平行に巻かれ
【0045】
コモンモードフィルタの実際の製造処理において、複数のコイル層、第1の磁気層、および第2の磁気層は、直接接触し、互いに密着して取り付けられることが留意されるべきである。本出願の添付の図面において提供される例において、異なる層間の距離は、コモンモードフィルタの構造をより明確に例示するために使用されているにすぎず、本出願において限定されない。
【0046】
図1hに示される手法でコモンモードフィルタを配設することによって、少なくとも第1のコイルグループ、第2のコイルグループ、および第3のコイルグループを含む全てのコイルグループから第1の磁気層および第2の磁気層までの距離は、同位相で一致し、その結果、異なるコイルグループ間の対称性が改善され、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失が低減される。
【0047】
図2aは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。図2bは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。図2aは、図1hにおける点線ボックス領域s3のロケーションに沿って区分を実行することによって取得された断面図である。本出願におけるコイルグループのケーブルレイアウトについての理解を容易にするために、コイルグループに関連付けられた部分のみが、断面図図2aに示されている。可能な実装において、各コイル層において、異なるコイルグループのケーブル間の相対的位置関係は、同じである。同じコイル層において、全てのコイルグループのケーブル孔の中心線は、コイル層に対して垂直な同じ断面に位置する。同じコイル層における各ケーブルの異なるセグメントは、断面に対して垂直であり、断面に平行であり、または断面に位置し得る。第1のコイル層21において、第1のコイルグループAに所属する第1のケーブルと、第2のコイルグループBに所属する第2のケーブルと、第3のコイルグループCに所属する第3のケーブルとの間には、第1の相対的位置関係が存在する。第2のコイル層において、第1のコイルグループAに所属する第1のケーブルと、第2のコイルグループBに所属する第2のケーブルと、第3のコイルグループCに所属する第3のケーブルとの間には、第2の相対的位置関係が存在する。中間コイル層において、第1のコイルグループAに所属する第1のケーブルと、第2のコイルグループBに所属する第2のケーブルと、第3のコイルグループCに所属する第3のケーブルとの間には、中間の相対的位置関係が存在する。図2aおよび図2bに示されるように、第1の相対的位置関係、第2の相対的位置関係、および中間の相対的位置関係は、同じであり、隣接するコイル層におけるケーブルの接続のためのものである第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Ccの中心線は全て、全てのコイル層に対して垂直な同じ断面に位置する。図2bにおいてケーブル上に配設された「円形点線ボックス」は、ケーブルに対して接続されるケーブル孔の位置である。
【0048】
図2bに示されるように、各コイル層において、「a」、「b」、および「c」と表記されたケーブルはそれぞれ、ケーブルが位置するコイル層の第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルである。具体的には、第1のケーブルは「a」と表記され、第2のケーブルは「b」と表記され、第3のケーブルは「c」と表記される。この場合において、第1のコイルグループAの複数のケーブルは、第1のコイル層、すなわち「第1の層」、中間コイル層、すなわち第2の層から第5の層、および第2のコイル層、すなわち第6の層において、「a」と表記されるケーブルである。第2のコイルグループBの複数のケーブルは、第1のコイル層、すなわち「第1の層」、中間コイル層、すなわち第2の層から第5の層、および第2のコイル層、すなわち「第6の層」において、「b」と表記されるケーブルである。第3のコイルグループCの複数のケーブルは、第1のコイル層、すなわち「第1の層」、中間コイル層、すなわち第2の層から第5の層、および第2のコイル層、すなわち「第6の層」において、「c」と表記されるケーブルである。
【0049】
この実装において、第1の相対的位置関係、第2の相対的位置関係、および中間の相対的位置関係は、ケーブル間の隣接関係また近隣関係を指し得る。図2bに示されるように、「第1の相対的位置関係、第2の相対的位置関係、および中間の相対的位置関係は、同じである」とは、第1のコイル層、すなわち「第1の層」、中間コイル層、すなわち「第2の層から第5の層」、および第2のコイル層、すなわち「第6の層」の各々において、相対的位置関係は、第1のケーブルaが最も外側にあり、第3のケーブルcが最も内側にあり、第2のケーブルbが第1のケーブルaと第3のケーブルcとの間にあること、すなわち、3つのケーブルが「a-b-c」の位置関係にあることを意味する。
【0050】
この実装においては、図2bに示されるように、中間コイル層23における「第3の層」と、「第2の層および第3の層における各コイルグループにおけるケーブル接続を実装するための第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Cc」とが、例として使用される。第1のコイルグループAに対応する第1のケーブル孔Aa、第2のコイルグループBに対応する第1のケーブル孔Bb、および第3のコイルグループCに対応する第1のケーブル孔Ccは、「第3の層」に、および「第3の層」と「第2の層」との間に配設される。第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Ccの中心線(すなわち、図2bに示される破線)は、同じ断面Mに位置し、断面Mは、全てのコイル層に対して垂直である。しかしながら、「第3の層」における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcは各々、複数の異なるセグメントを有する。「第3の層」における第1のケーブルaを例として使用することによって、第1のケーブルaは、セグメントa1、a2、a3、a4、およびa5を含み、ただし、セグメントa1は、断面Mに対して垂直であり、セグメントa2は、断面Mに平行であり、セグメントa3は、断面Mに対して垂直であり、セグメントa4は、断面Mに平行であり、セグメントa5は、断面Mに対して垂直である。同様に、「第1の層および第2の層における各コイルグループのケーブル接続のための第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Cc」、「第3の層および第4の層における各コイルグループのケーブル接続のための第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Cc」、「第4の層および第5の層における各コイルグループのケーブル接続のための第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Cc」、ならびに「第5の層および第6の層における各コイルグループのケーブル接続のための第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Cc」の中心線も、対応する断面に位置する。
【0051】
本出願における図2b、図3b、図4図5b、図6c、図7b、図7c、および図14bにおいては、複数のコイルグループにおけるケーブルの巻き手法を単純化するために、および巻構造を明確に説明するために、各コイル層の第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルの巻きの数量は、2未満であることが留意されるべきである。実際の生産および製造において、各コイル層の第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルの巻きの数量は、1回または複数回の任意の数量であってよい。また、先端放電および直角曲げによって引き起こされる応力問題を回避するために、ならびに差動モード損失およびコモンモードフィルタのリターン損失をより小さくするために、巻き期間中のケーブルの角部位置は、(以下の図2cに示されるような)円弧形状にされ得る。
【0052】
この実装において、複数のコイル層の数量は、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失、差動モード損失、リターン損失、およびインピーダンスインジケータパラメータの限定に基づいて設定され得る。
【0053】
この実装において、2つの隣接するコイル層(第1のコイル層および隣接する中間コイル層、第2のコイル層および隣接する中間コイル層、または2つの隣接する中間コイル層)間のコイルグループのケーブル接続のために必要とされる第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Ccは、2つのコイル層のうちのいずれか1つに配設されてよく、または2つのコイル層間に配設されてよい。代替として、第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Ccは、各コイル層を通って延びてよい。異なるコイル層における第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Ccに対応する接続位置(ケーブル孔がコイル層に接触する位置)は、同じであってよく、または異なってよい。第1のコイルグループ、第2のコイルグループ、および第3のコイルグループにおけるケーブルの電気接続は、第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Ccを使用することによって実装されることが可能であることが確実にされるという条件で、第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Ccの位置は、実際の要件に基づいて設定され得る。これは、本出願において限定されない。例えば、第1のコイル層と隣接する中間コイル層との間のコイルグループにおけるケーブル間の電気的接続のために必要とされる第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Ccは、中間コイル層に配設されてよく、第1のコイル層に配設されてよく、または第1のコイル層と中間コイル層との間に配設されてよい。第2のコイル層と隣接する中間コイル層との間のコイルグループにおけるケーブル間の電気的接続のために必要とされる第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Ccは、中間コイル層に配設されてよく、第2のコイル層に配設されてよく、または中間コイル層と第2のコイル層との間に配設されてよい。2つの隣接する中間コイル層間のコイルグループにおけるケーブル間の接続のために必要とされる第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Ccは、2つの中間コイル層のうちのいずれか1つに配設されてよく、または2つの中間コイル層間に配設されてよい。実際には、異なるコイル層は直接接触し、互いに密着して取り付けられることが留意されるべきである。本出願の図2bにおいて提供される例において、第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Ccの長さは、コイル層の厚さよりもはるかに長く、その結果、コモンモードフィルタの構造が、より明確に示されている。コモンモードフィルタにおける第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Ccの実際の長さは、限定されない。
【0054】
図2aおよび図2bに示される手法でコモンモードフィルタを配設することによって、全てのコイルグループから第1の磁気層および第2の磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、図1hに示される手法で配設されたコモンモードフィルタと比較して、このコモンモードフィルタの各コイル層において、異なるコイルグループのケーブル間の相対的位置関係は同じであり、その結果、異なるコイルグループ間の対称性がさらに改善され、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失がさらに低減される。
【0055】
本出願のこの実施形態において、異なるコイルグループの各ケーブルは、厚さおよび幅を有し、同じコイル層における隣接するケーブル間にはケーブル間隔も存在し得る。また、ケーブルの厚さおよび幅、ならびにケーブル間隔は、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失、差動モード損失、リターン損失、インピーダンスインジケータパラメータ、加工技術等の限定に基づいて設定され得る。端末デバイスに対して使用されるコモンモードフィルタの外観の長さ、幅、および厚さは、0.1mmから1mmであり、すなわち、コモンモードフィルタによって占有される三次元空間の長さ、幅、および高さは、0.1mmから1mmである。コモンモードフィルタの長さ、幅、および厚さが1mmである例が使用される。コモンモードフィルタが、低温セラミック(Low Temperature Co-fired Ceramic、略してLTCC)、薄膜積層技術、および集積受動素子(Integrated Passive Device、略してIPD)技術などの技術を使用する場合、技術の制限、コモンモードフィルタのサイズ、長手方向の伝達損失、差動モード損失、リターン損失、およびインピーダンスに起因して、ケーブル幅は、5μmから30μmであり、ケーブル間隔は、5μmから30μmである。コモンモードフィルタが、印刷技術または電気メッキ技術を使用することによって処理および製造される場合、ケーブル厚さは、0.1μmから10μmであり得る。当業者は、コモンモードフィルタの実際の設計要件に基づいて、ケーブル厚さ、ケーブル幅、およびケーブル間隔を設定し得る。これは、本出願において限定されない。コモンモードフィルタが使用される場合、コモンモードフィルタのインピーダンスが小さいこと、すなわち、差動モード損失が小さいこと、言いかえれば、差動モード電流が失われないことが確実にされることが必要であることが考慮される。そのため、コモンモードフィルタが製造される場合、ケーブル層間の距離は、浮遊容量の存在を回避するように十分に大きくするべきであり、ケーブルは、過度な直流抵抗を回避するように十分に厚くするべきである。また、コモンモードフィルタは、特定のフィルタリング周波数帯域も有するべきであり、フィルタリング周波数帯域制御は、一般に、強磁性材料を追加することによって実装される。具体的には、強磁性材料は、コモンモードフィルタの上面および下面に対して追加される。強磁性材料は、損失角の正接を有し、これは周波数と関数関係にある。いくつかの周波数においては、損失角の正接値が大きい。コモンモードノイズ電流がコモンモードフィルタを流れる場合、コモンモード電流によって生成された磁界は、熱エネルギーの形態で、強磁性材料中に放散される。また、本出願において提供されるコモンモードフィルタは、独立して製造され得る。製造されるコモンモードフィルタのサイズは大きく、ケーブル厚さおよびケーブル幅に関するコモンモードフィルタの設計要件をできる限り満たし得る。コモンモードフィルタは、様々な製造技術を使用することによって製造されてよく、コモンモードフィルタの製造は、低いリソースコスト、低い時間コスト、および高い信頼性を有する。
【0056】
可能な実装において、コモンモードフィルタの各コイル層における異なるケーブルのケーブル幅は、予め設定された幅比率関係に基づいて設定される。
【0057】
幅比率関係は、以下の関係のうちのいずれか1つを含み得る。複数のコイルグループは、1つまたは複数のターゲットコイルグループと、少なくとも2つの同じ幅のコイルグループとを含み、異なる同じ幅のコイルグループのケーブルは、同じ第1のケーブル幅を有し、各ターゲットコイルグループのケーブルの第2のケーブル幅と第1のケーブル幅との間には、異なる第1の幅比率関係が存在する、複数のコイルグループは、1つまたは複数のターゲットコイルグループと、少なくとも2つの同じ幅のコイルグループとを含み、異なる同じ幅のコイルグループのケーブルは、同じ第1のケーブル幅を有し、異なるターゲットコイルグループのケーブルは、同じ第2のケーブル幅を有し、第2のケーブル幅と第1のケーブル幅との間には、第2の幅比率関係が存在する、全てのコイルグループのケーブルのケーブル幅が、互いに異なり、異なるコイルグループのケーブルのケーブル幅間には、第3の幅比率関係が存在する、または、各コイル層における異なるケーブルのケーブル幅間には、対応する第4の幅比率関係が存在する。
【0058】
各コイルグループのケーブルのケーブル幅は、異なるコイル層におけるコイルグループの全てのケーブルの幅であり得る。同じコイルグループの異なるケーブルは、同じケーブル幅を有するように設定されてよく、または同じコイルグループの異なるケーブルは、完全に同じではないケーブル幅、または互いに異なるケーブル幅を有するように設定されてよい。同じコイルグループの異なるケーブルが、同じケーブル幅を有する場合において、幅比率関係が設定されるとき、同じ幅のコイルグループの第1のケーブル幅が最初に決定されてよく、次いで、ターゲットコイルグループのケーブル幅が、幅比率関係に基づいて調整される。第1のケーブル幅W1と第2のケーブル幅W2との間の幅比率関係は、W1=p1×W2であり、p1は、比率係数であり、p1∈[0.5、0.8]またはp1∈[2、3]である。同じコイル層における複数のケーブルは、完全に同じではないケーブル幅を有するようにさらに設定され得る。基準ケーブルは、最初に、複数のケーブルから決定され得る。基準ケーブルのケーブル幅w1と他のケーブルのケーブル幅w2との間の第4の比率関係は、w1=p1×w2であり、ただし、p1は、比率係数であり、1∈[0.5、0.8]または1∈[2、3]である。
【0059】
このようにして、各コイルグループのケーブル幅は、予め設定された幅比率関係に基づいて設定されるので、異なるコイルグループにおける複数のケーブルの異なる合計長さによって引き起こされるインピーダンス差異、加工技術によって引き起こされる異なるコイルグループの異なるケーブル厚さ、およびケーブル孔の位置設定によって引き起こされる異なるコイルグループにおけるケーブルの一致しない位相が、さらに改善され得る。異なるコイルグループのケーブル幅は、幅比率関係を調整することによって調整されてよく、その結果、異なるコイルグループは、同様または同じ特性インピーダンスを有し、異なるコイルグループ間の対称性が改善され、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失が低減される。ケーブルの厚さが同じである場合、より小さなケーブル幅は、より大きなインピーダンスに対応する。インピーダンス値は、ケーブルの断面積に反比例するので、ケーブル幅が小さいほど、ケーブルの断面積は小さい。
【0060】
幅比率関係を設定する異なる手法を簡単に説明するために、以下は、説明のために、複数のコイルグループが第1のコイルグループA、第2のコイルグループB、および第3のコイルグループCを含む例を使用する。図2cは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタのコイル層の構造の概略図である。図2cと図2bとの間の差異は、図2cにおいて、ケーブル幅が設定されており、ケーブル配線角部が円弧形状に設定されていることにある。そのため、図2cは、第1のコイル層「第1の層」のケーブルのみを示す。1つのターゲットコイルグループのみがあり、複数のコイルグループにおいて、「1つのターゲットコイルグループ」を除いた全てのコイルグループは、同じ幅のコイルグループである。図2cに示されるように、複数のコイルグループが、第1のコイルグループA、第2のコイルグループB、および第3のコイルグループCを含む場合、第1のコイルグループA、第2のコイルグループB、および第3のコイルグループCのうちのいずれか1つが、ターゲットコイルグループとして選択されてよく、他のコイルグループは、同じ幅のコイルグループである。例えば、第3のコイルグループCは、ターゲットコイルグループであり、第1のコイルグループAおよび第2のコイルグループBは、同じ幅のコイルグループである。この場合において、W1a=W1b=p1*W2c、かつp1∈[0.5、0.8]である。第1のコイルグループAの第1のケーブルa、第2のコイルグループBの第2のケーブルb、および第3のコイルグループCの第3のケーブルcは、外側から内側へ連続して配設され、巻きの数量は1より大きいので、第1のケーブルaのケーブル幅および第2のケーブルbのケーブル幅が、低減され得る。しかしながら、インピーダンスは、第3のケーブルcのケーブル幅を増加させることによって調整されることができない。これは、第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcが同じケーブル間隔および同じ結合状態を有することが確実にされる場合、第3のケーブルcの幅を増加させることは、第3のケーブルcと第1のケーブルaとを互いに近づけ、第3のケーブルcと第1のケーブルaとの間の接続によって引き起こされる短絡さえ引き起こすからである。
【0061】
本出願の以下の実施形態の説明において、実際には、図3b、図4図5b、図6c、図7b、図7c、図8a、図9a、図10a、図11a、および図14bに示されるケーブルは全て、図2bに示される厚さおよび幅を有するケーブルである。しかしながら、コモンモードフィルタの構造を単純化し、ケーブルを強化し、コモンモードフィルタの層間の位置関係を確実にするために、図3b、図4図5b、図6c、図7b、図7c、図8a、図9a、図10a、図11a、および図14bにおいて、幅を有する「線」のみが、ケーブルを例示するために使用される。
【0062】
本出願のこの実施形態において図2bに示される例において、第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Ccの直径は、第1のケーブル孔Aa、第2のケーブル孔Bb、および第3のケーブル孔Ccに接続されるケーブルの幅と同じである。実際には、ケーブル孔の直径は、(レーザドリルまたはフォトリソグラフィ技術などの)加工技術、ケーブル間の電気的接続要件、およびケーブルの幅に基づいて設定され得る。ケーブル孔の直径は、ケーブル孔に接続されたケーブルの幅よりも大きくてよく、小さくてよく、または等しくてよい。これは、本出願において限定されない。同様に、図3b、図4図5b、図6c、図7b、図7c、図8a、図9a、図10a、図11a、および図14bにおける、中間コイル層における各ケーブルの2つの端部、第1のコイル層における各ケーブルの1つの端部、および第2のコイル層における各ケーブルの1つの端部は各々、ケーブル孔(すなわち、図に示される異なるグレイスケールの円)を有して描かれている。ケーブル孔の位置を簡単に示すために、ケーブル孔の直径は、ケーブル孔に対して接続されるケーブルの幅よりも大きい。しかしながら、実際上、ケーブル孔の直径は、ケーブル孔に対して接続されるケーブルの幅よりも大きくてよく、小さくてよく、または等しくてよい。言いかえれば、図2b、図3b、図4図5b、図6c、図7b、図7c、図8a、図9a、図10a、図11a、および図14bに示される、ケーブル孔の直径とケーブル孔に対して接続されるケーブルの幅との間のサイズ関係は、本出願において限定されない。
【0063】
図3aは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。図3bは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。図3aは、図1fにおいて点線ボックス領域s3のロケーションに沿って区分を実行することによって取得された断面図である。本出願におけるコイルグループのケーブルレイアウトについての理解を容易にするために、コイルグループに関連付けられた部分のみが、断面図図3aに示されている。可能な実装において、異なるコイルグループの合計巻き長さは、同様であり、合計長さは、同じコイルグループにおける複数のケーブルの長さの和であり、各コイル層における異なるコイルグループのケーブル間の相対的位置関係は、異なる。図3aおよび図3bに示されるように、第1のコイル層21において、第1のコイルグループAに所属する第1のケーブルと、第2のコイルグループBに所属する第2のケーブルと、第3のコイルグループCに所属する第3のケーブルとの間には、第1の相対的位置関係が存在する。第2のコイル層において、第1のコイルグループAに所属する第1のケーブルと、第2のコイルグループBに所属する第2のケーブルと、第3のコイルグループCに所属する第3のケーブルとの間には、第2の相対的位置関係が存在する。中間コイル層において、第1のコイルグループAに所属する第1のケーブルと、第2のコイルグループBに所属する第2のケーブルと、第3のコイルグループCに所属する第3のケーブルとの間には、中間の相対的位置関係が存在する。第1の相対的位置関係、第2の相対的位置関係、および中間の相対的位置関係は、異なり、第1のコイルグループAの複数のケーブルの第1の合計長さ、第2のコイルグループBの複数のケーブルの第2の合計長さ、および第3のコイルグループCの複数のケーブルの第3の合計長さは、同じである。
【0064】
この実装において、コモンモードフィルタの実際の加工処理において、第1の合計長さ、第2の合計長さ、および第3の合計長さは、加工技術によって影響を受け、この3つは、実際には完全に同じになることはあり得ない。そのため、本出願において、「第1の合計長さ、第2の合計長さ、および第3の合計長さは、同じである」とは、理論的な状態であり、実際に製造されるコモンモードフィルタにおける「第1の合計長さ、第2の合計長さ、および第3の合計長さ」は、基本的に同じであり、おおよそ等しい。代替として、長さ差異は、コモンモードフィルタに関連するインジケータ要件、例えば、差動モード損失、長手方向の伝達損失、および各コイルグループにおける複数のケーブルの必要とされる合計巻き長さなどに基づいて設定されてよく、その結果、第1の合計長さ、第2の合計長さ、および第3の合計長さの間での実際の長さ差異は、上記の長さ差異以下になって、異なるコイルグループにおけるケーブルの合計巻き長さが、できる限り同じになることを確実にし、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善する。より小さな長さ差異は、異なるコイルグループの合計巻き長さがより近く(具体的には、第1の合計長さ、第2の合計長さ、および第3の合計長さが、より近く)、異なるコイルグループ間の対称性がより良好であることを示す。
【0065】
この実装において、図3aおよび図3bに示されるように、各コイル層における異なるコイルグループのケーブル間の相対的位置関係は、異なる。「第1の層」(第1のコイル層21)における、第1のケーブルaと、第2のケーブルbと、第3のケーブルcと間の相対的位置関係は、「a-b-c」であってよく、「第2の層」(中間コイル層23)における、第1のケーブルaと、第2のケーブルbと、第3のケーブルcとの間の相対的位置関係は、「c-a-b」であり、「第3の層」(中間コイル層23)における、第1のケーブルaと、第2のケーブルbと、第3のケーブルcとの間の相対的位置関係は、「b-c-a」であり、「第4の層」(中間コイル層23)における、第1のケーブルaと、第2のケーブルbと、第3のケーブルcとの間の相対的位置関係は、「c-a-b」であり、「第5の層」(中間コイル層23)における、第1のケーブルaと、第2のケーブルbと、第3のケーブルcとの間の相対的位置関係は、「b-c-a」であり、「第6の層」(第2のコイル層22)における、第1のケーブルaと、第2のケーブルbと、第3のケーブルcとの間の相対的位置関係は、「a-b-c」である。すなわち、複数のコイル層において、第1のケーブルaと、第2のケーブルbと、第3のケーブルcとの間に同じ相対的位置関係を有する複数の層は、「第1の層および第6の層」である。しかしながら、全てのコイル層における、第1のケーブルaと、第2のケーブルbと、第3のケーブルcとの間の相対的位置関係は、完全に同じではない。例えば、第1の層および第6の層、第3の層および第5の層、ならびに第2の層および第4の層における、第1のケーブルaと、第2のケーブルbと、第3のケーブルcとの間の相対的位置関係は、別個に同じであり、その他の異なる層における相対的位置関係は、異なる。
【0066】
この実装において、複数のコイル層の数量、および各コイルグループの巻き長さの和は、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失、リターン損失、およびインピーダンスインジケータパラメータの限定に基づいて設定され得る。これは、本出願において限定されない。
【0067】
図3aおよび図3bに示される手法でコモンモードフィルタを配設することによって、全てのコイルグループから第1の磁気層および第2の磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、図2aおよび図2bに示される手法で配設されたコモンモードフィルタと比較して、このコモンモードフィルタにおいて、各コイル層における異なるコイルグループのケーブル間の相対的位置関係は、変更され(具体的には、第1の相対的位置関係、第2の相対的位置関係、および中間の相対的位置関係が、変更され)、その結果、異なるコイルグループのケーブルの合計長さは、同様である。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0068】
可能な実装において、図4は、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。図4図3aおよび図3bとに示される複数のコイル層において異なるコイルグループを配設する手法間の差異は、ケーブル間の相対的位置関係が異なる形で配設されることにある。図4に示されるように、第1の相対的位置関係、第2の相対的位置関係、および中間の相対的位置関係は、同じであり、第1のコイルグループの複数のケーブルの第1の合計長さ、第2のコイルグループの複数のケーブルの第2の合計長さ、および第3のコイルグループの複数のケーブルの第3の合計長さは、同じである。
【0069】
この実装において、図4に示されるように、各コイル層における、第1のケーブルaと、第2のケーブルbと、第3のケーブルcとの間の相対的位置関係は、同じである(すなわち、第1の相対的位置関係、第2の相対的位置関係、および中間の相対的位置関係は、同じである)。しかしながら、異なるコイルグループ間の合計巻き長さが同じであるという要件を満たすために、同じコイルグループの第1のケーブル、第2のケーブル、および/または第3のケーブルの巻き長さは、1周以上であってよく、または1周未満であってよい。言いかえれば、同じコイル層における第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルの長さは、限定されない。
【0070】
図4に示される手法でコモンモードフィルタを配設することによって、全てのコイルグループから第1の磁気層および第2の磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、図2aおよび図2bに示される手法で配設されたコモンモードフィルタと比較して、このコモンモードフィルタでは、各コイル層における異なるコイルグループのケーブル間の相対的位置関係は同じであることに基づいて、異なるコイル層におけるケーブルの長さが変更され、その結果、異なるコイルグループのケーブルの合計長さは、同じである。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0071】
図2a、図2b、図3a、図3b、および図4において提供される、いくつかのコモンモードフィルタに基づいて、本出願において、コモンモードフィルタは、基準接地構造をさらに含み得る。基準接地構造は、第1のケーブルの各々、第2のケーブルの各々、および第3のケーブルの各々から絶縁され、基準接地構造は、第1の磁気層と第2の磁気層との両方から絶縁される。基準接地構造は、接地ピンへの接続、空気接続、フローティング接続等を通じて、各コイルグループにおけるケーブルの「基準接地」となり得る。これは、本出願において限定されない。基準接地構造を配設することによって、異なるコイルグループは、同様の接地整合インピーダンスまたは同一整合インピーダンスさえ有し得、その結果、異なるコイルグループ間の対称性がさらに改善され、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失が低減される。
【0072】
基準接地構造の実装は、手法1から手法4の以下の実装を含み得る。コモンモードフィルタにおいて、手法1から手法4のうちの1つまたは複数の手法が、基準接地構造を配設するために選択され得る。
【0073】
手法1:基準接地構造は、以下に説明される「金属基準接地層」などの、コモンモードフィルタ内部に位置する1つまたは複数の内部基準接地層であってよい。
【0074】
手法2:基準接地構造は、コモンモードフィルタ内部に位置する、1つまたは複数の内部基準接地導電ケーブル層であってよく、隣接するコイル層におけるケーブルのために「基準接地」を提供する少なくとも1つの基準接地ケーブルは、基準接地導電ケーブル層に配設される。対応する基準接地導電ケーブル層は、各コイル層に対して設定されてよく、対応する基準接地導電ケーブル層は、いくつかのコイル層に対して設定されてよく、または、対応する基準接地導電ケーブル層は、いくつかのコイル層に対して設定され、全てのコイル層のための「基準接地」として使用されてよい。例えば、以下に説明される「第1の補助層および第2の補助層」は、全てのコイル層のための「基準接地」である。

【0075】
手法3:基準接地構造は、コモンモードフィルタのコイル層に位置する1つまたは複数の付随基準接地ケーブル、例えば、以下に説明される「第1の付随基準接地ケーブル、中間付随基準接地ケーブル、および第2の付随基準接地ケーブル」などであってよい。
【0076】
手法4:基準接地構造は、コモンモードフィルタの表面に位置する表面基準接地構造、例えば、以下に説明される「金属基準接地コーティング層」または「金属基準接地片」などであってよい。
【0077】
基準接地構造が、コイルグループのケーブルに対して基準接地を提供することができることが確実にされるという条件で、当業者は、要件に基づいて、基準接地構造のコモンモードフィルタにおける位置、構造、サイズ等を設定し得ることが理解され得る。異なるコイルグループは、同様のまたは同じ接地整合インピーダンスさえ有することができる。これは、本出願において限定されない。
【0078】
図5aは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。図5bは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。図5aは、図1cにおける点線ボックス領域s3のロケーションに沿って区分を実行することによって取得された断面図である。本出願におけるコイルグループのケーブルレイアウトについての理解を容易にするために、コイルグループに関連付けられた部分のみが、断面図図5aに示されている。可能な実装において、図5aおよび図5bに示されるように、基準接地構造は、第1の補助層31と第2の補助層32とを含み得る。第1の補助層31は、第1のコイル層21と第1の磁気層11との間に位置し、第1の補助層31は、絶縁媒体を使用することによって第1のコイル層21から分離されて、第1の補助層31が第1のコイル層21に対して電気的に接続されることを防止する。第1の補助層31には、第1のコイル層21における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcに別個に対応する第1の基準接地ケーブル41が提供される。具体的には、第1の基準接地ケーブル41は、第1のコイル層21における第1のケーブルaの基準接地ケーブルセグメントDa、第1のコイル層21における第2のケーブルbの基準接地ケーブルセグメントDb、および第1のコイル層21における第3のケーブルcの基準接地ケーブルセグメントDcを含む。第2の補助層32は、第2のコイル層22と第2の磁気層12との間に位置する。同様に、第2の補助層32は、絶縁媒体を使用することによって第2のコイル層22から分離されて、第2の補助層32が第2のコイル層22に対して電気的に接続されることを防止する。第2の補助層32には、第2のコイル層22における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcに別個に対応する第2の基準接地ケーブル42が提供される。具体的には、第2の基準接地ケーブル42は、第2のコイル層22における第1のケーブルaの基準接地ケーブルセグメントFa、第2のコイル層22における第2のケーブルbの基準接地ケーブルセグメントFb、および第2のコイル層22における第3のケーブルcの基準接地ケーブルセグメントFcを含む。
【0079】
この実装において、第1の補助層31および第2の補助層32は、補助層孔を通じて電気的に接続され得る。第1の補助層31および第2の補助層32は、磁気層とコイル層との間で「浮いて」いてもよく、すなわち、これらの補助層は、電気的に接続される必要はない。これらの補助層が補助層孔を通じて電気的に接続される場合、補助層孔は、コイル層における任意のケーブルまたはケーブル孔に対して電気的に接続されることができない。
【0080】
コモンモードフィルタにおける第1の補助層31および第2の補助層32の設定についての説明を容易にするために、「図3aおよび図3b」のみが、図5aおよび図5bにおける第1の補助層31および第2の補助層32を追加する設定を説明するための例として使用される。当業者は、図5aおよび図5bにおける第1の補助層31および第2の補助層32の設定に従って、「図2aおよび図2b」ならびに「図4」におけるコモンモードフィルタに対して、第1の補助層31および第2の補助層32を追加し得る。詳細は、本明細書において再度説明されない。
【0081】
この実装において、図5aおよび図5bに示されるように、第1の基準接地ケーブル41および第2の基準接地ケーブル42における基準接地ケーブルセグメントの位置およびレイアウトは、対応するケーブルの位置およびレイアウトと同じであり、異なるコイルグループが同様の接地インピーダンスを有することを確実にする。
【0082】
図5aおよび図5bに示される手法でコモンモードフィルタを配設することによって、全てのコイルグループから第1の磁気層および第2の磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、図3a、図3b等において、第1の補助層および第2の補助層を追加しない手法(すなわち、図2a、図2b、図4等に対応する手法)で配設されたコモンモードフィルタと比較して、基準接地ケーブルを含む第1の補助層および第2の補助層を配設することによって、異なるコイルグループが、同様の接地インピーダンスを有する。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0083】
図2a、図2b、図3a、図3b、および図4において提供される、いくつかのコモンモードフィルタに基づいて、図6aおよび図6bは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図であり、図6cは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。図6aおよび図6bは、図1fにおける点線ボックス領域s3のロケーションに沿って区分を実行することによって取得された断面図である。本出願におけるコイルグループのケーブルレイアウトについての理解を容易にするために、コイルグループに関連付けられた部分のみが、断面図図6aおよび図6bに示されている。可能な実装において、図6a、図6b、および図6cに示されるように、基準接地構造は、第1の付随基準接地ケーブル、中間付随基準接地ケーブル、および第2の付随基準接地ケーブルを含み得る。第1のコイル層21における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcにおける1つまたは複数のケーブルの第1の付随基準接地ケーブル51は、第1のコイル層21において配設され、第1の付随基準接地ケーブル51は、第1のターゲットケーブルの片側または両側に位置する。中間コイル層23における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcのうちの1つまたは複数の中間ターゲットケーブルの中間付随基準接地ケーブル53は、中間コイル層23において配設され、中間付随基準接地ケーブル53は、中間ターゲットケーブルの片側または両側に位置する。第2のコイル層22における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcのうちの1つまたは複数の第2のターゲットケーブルの第2の付随基準接地ケーブル52は、第2のコイル層22において配設され、第2の付随基準接地ケーブル52は、第2のターゲットケーブルの片側または両側に位置する。第1の付随基準接地ケーブル、中間付随基準接地ケーブル、および第2の付随基準接地ケーブルの材料と、ケーブルの材料とは、同じタイプの金属であってよく、または異なるタイプの金属であってよい。
【0084】
図6aおよび図6cは、第1の付随基準接地ケーブル51が、第1のコイル層21における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcの片側(外側)に配設されること、すなわち、第1のコイル層21における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcが、第1のターゲットケーブルであること、ならびに、第2の付随基準接地ケーブル52が、第2のコイル層22における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcの片側(外側)に配設されること、すなわち、第2のコイル層22における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcが、第2のターゲットケーブルであること、ならびに、中間付随基準接地ケーブル53が、中間コイル層23における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcの片側(外側)に配設されること、すなわち、中間コイル層23における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcが、中間ターゲットケーブルであることのみを示す。図6bは、第1の付随基準接地ケーブル51が、第1のコイル層21における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcの両側に配設されること、すなわち、第1のコイル層21における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcが、第1のターゲットケーブルであること、ならびに、第2の付随基準接地ケーブル52が、第2のコイル層22における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcの両側に配設されること、すなわち、第2のコイル層22における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcが、第2のターゲットケーブルであること、ならびに、中間付随基準接地ケーブル53が、中間コイル層23における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcの両側に配設されること、すなわち、中間コイル層23における第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcが、中間ターゲットケーブルであることのみを示す。別の手法における第1の付随基準接地ケーブル51、第2の付随基準接地ケーブル52、および中間付随基準接地ケーブル53の設定については、図6a、図6b、および図6cにおいて提供される例をレイアウトについて参照されたい。詳細は、本出願において再度説明されない。
【0085】
この実装において、実際のケーブル配線処理において、各コイル層における付随基準接地ケーブルの位置、付随ケーブルの数量、ならびに付随されるべき第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルにおける特定のケーブルは、異なるコイル層における第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルのレイアウト設定によって満たされる必要があるコモンモードフィルタの使用要件に基づいて、設定され得る。すなわち、異なるコイル層における付随基準接地ケーブルの設定は、同じであってよく、または異なってよい。このようにして、異なるコイルグループの対称性が改善されることが可能であり、異なるコイルグループが同様の接地インピーダンスを有する。当業者は、実際の要件に基づいて、基準接地ケーブルが各コイル層における第1のケーブル、第2のケーブル、および第3のケーブルに対して配設されるかどうか、基準接地ケーブルが片側に配設されるか、または両側に配設されるか、ならびに、基準接地ケーブルが内側に配設されるか、または外側に配設されるかを調整し得る。これは、本出願において限定されない。
【0086】
例えば、複数のコイル層は、第1の層、第2の層、...、および第6の層であり、ただし、「第1の層」は第1のコイル層であり、「第2の層から第5の層」は中間コイル層であり、「第6の層」は第2のコイル層であると仮定される。この場合において、「第1の層」において、第1の付随基準接地ケーブル51は、第1のケーブルaの片側のみに配設されてよく、「第2の層」において、中間付随基準接地ケーブル53は、第1のケーブルaの両側のみに配設されてよく、「第3の層」において、中間付随基準接地ケーブル53は、第1のケーブルaおよび第2のケーブルbの両側のみに配設されてよく、「第4の層」において、中間付随基準接地ケーブル53は、第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcの両側のみに配設されてよく、「第5の層」において、中間付随基準接地ケーブル53は、第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcの外側のみに配設されてよく、「第6の層」において、第2の付随基準接地ケーブル52は、第1のケーブルa、第2のケーブルb、および第3のケーブルcの内側のみに配設されてよい。
【0087】
図6a、図6b、および図6cに示される手法でコモンモードフィルタを配設することによって、全てのコイルグループから第1の磁気層および第2の磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、図4等における付随基準接地ケーブルを配設しない手法(すなわち、図2a、図2b、図3a、図3b等に対応する手法)で配設されるコモンモードフィルタと比較して、第1の付随基準接地ケーブル、第2の付随基準接地ケーブル、および中間付随基準接地ケーブルを配設することによって、異なるコイルグループは、同様の接地インピーダンスを有する。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0088】
可能な実装において、異なるコイル層における付随基準接地ケーブルは、互いに接続されてよく、具体的には、第1の付随基準接地ケーブル、中間付随基準接地ケーブル、および第2の付随基準接地ケーブルは、互いに接続され、または互いに接続されなくてよい。第1の付随基準接地ケーブル、中間付随基準接地ケーブル、および第2の付随基準接地ケーブルにおける付随基準接地ケーブルの一部または全部は、異なるコイルグループの接地インピーダンスに基づいて、互いに接続されてよく、または互いに接続されなくてよい。第1の付随基準接地ケーブル、中間付随基準接地ケーブル、および第2の付随基準接地ケーブルが接続される必要がある場合、付随基準接地ケーブル間の接続は、対応するコイル層に孔を配設することによって実装されてよく、または第1の付随基準接地ケーブルと、中間付随基準接地ケーブルと、第2の付随基準接地ケーブルとの間の接続は、外部導電ケーブルを通じて実装されてよい。第1の付随基準接地ケーブル、中間付随基準接地ケーブル、および第2の付随基準接地ケーブルの材料は、金属であり得る。このようにして、第1の付随基準接地ケーブル、中間付随基準接地ケーブル、および第2の付随基準接地ケーブルを接続しない手法と比較して、この手法は、異なるコイルグループの同様の接地インピーダンスをさらに確実にすることができる。
【0089】
可能な実装において、基準接地構造は、以下の金属基準接地層、すなわち、
第1のコイル層と第1の磁気層との間に位置する第1の金属基準接地層と、
第2のコイル層と第2の磁気層との間に位置する第2の金属基準接地層と、
第1のコイル層と中間コイル層との間に位置する第3の金属基準接地層であって、第3の金属基準接地層を通過する第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔を収容する第1の収容孔が提供された、第3の金属基準接地層と、
第2のコイル層と中間コイル層との間に位置する第4の金属基準接地層であって、第3の金属基準接地層を通過する第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔を収容する第2の収容孔が提供された、第4の金属基準接地層と、
中間金属基準接地層であって、1つまたは複数の中間金属基準接地層が存在し、各中間金属基準接地層は、2つの中間コイル層間に位置し、第3の金属基準接地層を通過する第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔を収容する第3の収容孔が提供される、中間金属基準接地層と
のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0090】
この実装において、金属基準接地層の数量およびタイプは、異なるタイプの金属基準接地層が設定された後、異なるコイルグループの接地インピーダンス間の差異の大きさに基づいて、決定され得る。例えば、図2a、図2b、図3a、図3b、および図4において提供される、いくつかのコモンモードフィルタに基づいて、図7aは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図であり、図7bは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。図7aは、図1fにおける点線ボックス領域s3のロケーションに沿って区分を実行することによって取得された断面図である。本出願におけるコイルグループのケーブルレイアウトについての理解を容易にするために、コイルグループに関連付けられた部分のみが、断面図図7aに示されている。図7aおよび図7bに示されるように、コモンモードフィルタは、6つのコイル層、すなわち、「第1の層、第2の層、...、および第6の層」を含む。「第1の層」は第1のコイル層であり、「第2の層から第5の層」は中間コイル層であり、「第6の層」は第2のコイル層である。基準接地構造は、第1の金属基準接地層61、第2の金属基準接地層62、第3の金属基準接地層63、第4の金属基準接地層64、および、3つの中間金属基準接地層65を含む。第3の金属基準接地層63には、「第1の層および第2の層におけるコイルグループ間のケーブル接続」を実装するためのものである、第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔に対応する第1の収容孔630がさらに提供される。第4の金属基準接地層64には、「第5の層および第6の層におけるコイルグループ間のケーブル接続」を実装するためのものである、第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔に対応する第2の収容孔640がさらに提供される。3つの中間金属基準接地層65には、「第2の層および第3の層におけるコイルグループ間のケーブル接続」、「第3の層および第4の層におけるコイルグループ間のケーブル接続」、ならびに「第4の層および第5の層におけるコイルグループ間のケーブル接続」を実装するためのものである、第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔に対応する第3の収容孔650がさらに提供される。
【0091】
図7bに示されるように、同じ収容孔は、金属基準接地層を通過する第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔のために配設され得る(ただし、例えば、収容孔は、第1の収容孔、第2の収容孔、または第3の収容孔である)。収容孔は、第1のケーブル孔、第2のケーブル孔、および第3のケーブル孔を同時に収容し得る。代替として、対応する収容孔は、各ケーブル孔に対して配設されてよい。収容孔と収容されたケーブル孔とは、互いに絶縁され、絶縁は、誘電絶縁を使用すること、物理的な間隔を設定すること等によって実装され得る。このようにして、異なるコイル層における異なるコイルグループのケーブルは、互いに接続されない。なぜならば、それらは、金属基準接地層に接して、異なるコイルグループ間の相互絶縁を確実にするからである。
【0092】
図7aおよび図7bに示される手法でコモンモードフィルタを配設することによって、全てのコイルグループから第1の磁気層および第2の磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、図2a、図2b等において金属基準接地層を追加しない手法(すなわち、図3a、図3b、図4等に対応する手法)で配設されたコモンモードフィルタと比較して、少なくとも1つのタイプの金属基準接地層を配設することによって、異なるコイルグループは、同様の接地インピーダンスを有する。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0093】
可能な実装において、複数の金属基準接地層が存在する場合、複数の金属基準接地層は、基準接地孔を通じて接続され、基準接地孔は、第1のコイル層、第2のコイル層、および中間コイル層のうちの1つまたは複数配設され、1つまたは複数の基準接地孔が存在し得る。
【0094】
この実装において、図7cは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。図7cに示されるコモンモードフィルタと、図7bおよび図7aに示されるコモンモードフィルタとの間の差異は、図7cに示されるコモンモードフィルタのコイル層に基準接地孔212が配設されることにある。基準接地孔212の数量およびサイズは、要件に基づいて設定され得る。これは、本出願において限定されない。図7bおよび図7aに示されるコモンモードフィルタに基づいて、異なるコイルグループの接地インピーダンス間の差異は、基準接地孔を配設することによって、さらに低減されることが可能である。
【0095】
この実装において、金属基準接地層は、厚さ、長さ、および幅などの空間サイズを有して配設され、金属基準接地層の厚さ、長さ、および幅は、加工技術、長手方向の伝達損失、差動モード損失、リターン損失、インピーダンスインジケータパラメータ等の限定に基づいて設定され得る。図7bおよび図7cは、「面」のみを用いて金属基準接地層のロケーションをより明確に例示しており、その厚さは示されていない。
【0096】
図8aは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。図8bは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。図8bは、図1gにおける点線ボックス領域s4のロケーションに沿って区分を実行することによって取得された断面図である。本出願におけるコイルグループのケーブルレイアウトについての理解を容易にするために、コイルグループに関連付けられた部分のみが、断面図図8bに示されている。可能な実装において、図8aおよび図8bに示されるように、コモンモードフィルタは、互いに平行な第3の磁気層13および第4の磁気層14をさらに含み得る。第1のコイル層21、中間コイル層23、および第2のコイル層22は、第3の磁気層13と第4の磁気層14との間に位置し、第3の磁気層13は、第1の磁気層11および第2の磁気層12に対して垂直であり、第4の磁気層14は、第1の磁気層11および第2の磁気層12に対して垂直である。
【0097】
この実装において、第4の磁気層および第3の磁気層は、厚さ、長さ、および幅などの空間サイズを有して配設され、第5の磁気層および第6の磁気層の厚さ、長さ、および幅は、加工技術、長手方向の伝達損失、差動モード損失、リターン損失、インピーダンスインジケータパラメータ等の限定に基づいて設定され得る。図8aは、「面」のみを用いて第3の磁気層および第4の磁気層のロケーションをより明確に例示しており、その厚さは示されていない。第4の磁気層および第3の磁気層の材料は、フェライトなどの磁性材料であってよく、第3の磁気層および第4の磁気層の材料は、第1の磁気層および第2の磁気層の材料と同じであってよく、または異なってよい。これは、本出願において限定されない。
【0098】
図8aおよび図8bに示される手法でコモンモードフィルタを配設することによって、全てのコイルグループから第1の磁気層、第2の磁気層、第3の磁気層、および第4の磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、図1h等おいて示される、(図2a、図2b、図4等に示されるような)第1の磁気層および第2の磁気層のみを配設する手法で配設されたコモンモードフィルタと比較して、このコモンモードフィルタは、複数のコイルグループが、二次元において同じ磁気環境内に存在することを可能にする。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0099】
図9aは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。図9bは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。図9bは、図1eにおける点線ボックス領域s2のロケーションに沿って区分を実行することによって取得された断面図である。本出願におけるコイルグループのケーブルレイアウトについての理解を容易にするために、コイルグループに関連付けられた部分のみが、断面図9bに示されている。可能な実装において、図9aおよび図9bに示されるように、コモンモードフィルタが、互いに平行な第3の磁気層13および第4の磁気層14を含む場合、コモンモードフィルタは、互いに平行な第5の磁気層15および第6の磁気層16をさらに含み得る。第1のコイル層21、中間コイル層23、および第2のコイル層22は、第5の磁気層15と第6の磁気層16との間に位置し、第5の磁気層15は、第1の磁気層11、第2の磁気層12、第3の磁気層13、および第4の磁気層14に対して垂直であり、第6の磁気層16は、第1の磁気層11、第2の磁気層12、第3の磁気層13、および第4の磁気層14に対して垂直である。
【0100】
この実装において、第5の磁気層および第6の磁気層は、厚さ、長さ、および幅などの空間サイズを有して配設され、第5の磁気層および第6の磁気層の厚さ、長さ、および幅は、加工技術、長手方向の伝達損失、差動モード損失、リターン損失、インピーダンスインジケータパラメータ等の限定に基づいて設定され得る。図9aは、「面」のみを用いて第5の磁気層および第6の磁気層のロケーションをより明確に例示しており、その厚さは示されていない。第5の磁気層および第6の磁気層の材料は、フェライトなどの磁性材料であってよく、第5の磁気層および第6の磁気層の材料は、第1の磁気層、第2の磁気層、第3の磁気層、および第4の磁気層の材料と同じであってよく、または異なってよい。これは、本出願において限定されない。
【0101】
この実装において、コモンモードフィルタの電極の導出孔が、第1の磁気層、第2の磁気層、第3の磁気層、第4の磁気層、第5の磁気層、および第6の磁気層に配設されて、回路システムにおけるコモンモードフィルタの組み立ておよび電気的接続を容易にし得る。当業者は、要件に基づいて、導出孔のロケーション、サイズ等を設定し得る。これは、本出願において限定されない。
【0102】
図9aおよび図9bに示される手法でコモンモードフィルタを配設することによって、全てのコイルグループから第1の磁気層、第2の磁気層、第3の磁気層、第4の磁気層、第5の磁気層、および第6の磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、図1h等に示される、(図2a、図2b、図4等に示されるような)第1の磁気層および第2の磁気層のみを配設する手法で配設されたコモンモードフィルタと比較して、このコモンモードフィルタは、複数のコイルグループが三次元立体空間において同じ磁気環境内に存在することを可能にする。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0103】
可能な実装において、基準接地構造は、金属基準接地コーティング層を含んでよく、金属基準接地コーティング層は、コモンモードフィルタの表面をコーティングし得る。金属基準接地コーティング層は、前述の仕様におけるコモンモードフィルタに含まれる構成要素をコーティングするように構成される。金属基準接地コーティング層を追加する手法でコモンモードフィルタを配設することによって、全てのコイルグループから磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、図1h等に示される、(図2a、図2b、図4等に示されるような)金属基準接地コーティング層を配設しない手法で配設されたコモンモードフィルタと比較して、このコモンモードフィルタは、複数のコイルグループが三次元立体空間において同じ基準地上環境内に存在すること、および同じ接地インピーダンスを有することを可能にする。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0104】
例えば、図10aは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。図10bは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。図10bは、図1eにおける点線ボックス領域s2(または、図1gにおける点線ボックス領域s4)のロケーションに沿って区分を実行することによって取得された断面図である。本出願におけるコイルグループのケーブルレイアウトについての理解を容易にするために、コイルグループに関連付けられた部分のみが、断面図10bに示されている。可能な実装において、図10aおよび図10bに示されるように、金属基準接地コーティング層71は、第1の磁気層11、第2の磁気層12、および複数のコイル層をコーティングするように構成される。
【0105】
図11aは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの構造の概略図である。図11bは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。図11bは、図1eにおける点線ボックス領域s2のロケーションに沿って区分を実行することによって取得された断面図である。本出願におけるコイルグループのケーブルレイアウトについての理解を容易にするために、コイルグループに関連付けられた部分のみが、断面図11bに示されている。可能な実装において、図11aおよび図11bに示されるように、金属基準接地コーティング層71は、第1の磁気層11、第2の磁気層12、第3の磁気層13、第4の磁気層14、第5の磁気層15、および第6の磁気層16、および複数のコイル層をコーティングするように構成される。
【0106】
この実装において、基準接地構造が、金属基準接地層、第1の補助層、および第2の補助層などの部分を含む場合、これらの部分も、金属基準接地コーティング層71によってコーティングされる必要がある。
【0107】
この実装において、コモンモードフィルタの電極の導出孔は、金属基準接地コーティング層、第1の磁気層11、第2の磁気層12、第3の磁気層13、第4の磁気層14、第5の磁気層15、および第6の磁気層16に配設されて、回路システムにおけるコモンモードフィルタの組み立ておよび電気的接続を容易にし得る。当業者は、要件に基づいて、導出孔のロケーション、サイズ等を設定し得る。これは、本出願において限定されない。
【0108】
この実装において、金属基準接地コーティング層は、厚さを有して提供され、金属基準接地コーティング層の厚さは、加工技術、長手方向の伝達損失、差動モード損失、リターン損失、インピーダンスインジケータパラメータ等の限定に基づいて設定され得る。これは、本出願において限定されない。
【0109】
図12aは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの三次元図である。図12bは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの主要図である。図12cは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの側面図である。図12dは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの上面図である。図13aは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの三次元図である。図13bは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの主要図である。図13cは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの側面図である。図13dは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの上面図である。可能な実装において、図12aから図12dおよび図13aから図13dに示されるように、基準接地構造は、コモンモードフィルタの表面に位置し、各コイルグループの端子に別個に接続される(複数の)パッド81および金属基準接地片91をさらに含み得る。各コイルグループにおける第1のコイル層におけるケーブルの2つの端部のうちの1つの端部であって、別のコイル層における同じコイルグループにおけるケーブルに接続されない1つの端部が、コイルグループの端子である。各コイルグループにおける第2のコイル層におけるケーブルの2つの端部のうちの1つの端部であって、別のコイル層における同じコイルグループにおけるケーブルに接続されない1つの端部が、コイルグループの別の端子である。第1のコイルグループにおける第1のコイル層における第1のケーブルの2つの端部のうちの1つの端部であって、中間コイル層における第1のケーブルに接続されない1つの端部が、第1のコイルグループの端子である。第1のコイルグループにおける第2のコイル層における第1のケーブルの2つの端部のうちの1つの端部であって、中間コイル層における第1のケーブルに接続されない1つの端部が、第1のコイルグループの別の端子である。
【0110】
各パッド81の一部は、コモンモードフィルタの第1の側面(具体的には、図12aから図12dおよび図13aから図13dにおけるコモンモードフィルタの底面)に位置する。各パッド81の別の部分は、コモンモードフィルタの第1の側面に接続された複数の第2の側面(具体的には、図12aから図12dおよび図13aから図13dにおけるコモンモードフィルタの底面に接続された側面)のうちの1つに位置する。金属基準接地片91は、複数のパッド81間に位置し、コモンモードフィルタのパッドと共に、少なくとも第1の側面および第2の側面の一部を囲む。
【0111】
この実装において、図12aから図12dおよび図13aから図13dに示される例において、コモンモードフィルタは、3つのコイルグループと6つのパッド81とを含み、6つのパッド81の一部は、コモンモードフィルタの底面(すなわち、第1の側面)に位置し、6つのパッド81のうちの3つのパッド81(以下、パッドの第1のグループと称される)の他の部分は、コモンモードフィルタの底面に接続される前側面(すなわち、第2の側面)に位置すると仮定される。6つのパッド81のうちのその他の3つのパッド81(以下、パッドの第2のグループと称される)の他の部分は、コモンモードフィルタの底面に接続される後側面(すなわち、第2の側面)に位置する。図12aから図12dに示されるように、金属基準接地片91は、パッドの第1のグループとパッドの第2のグループとの間のみに位置し得、すなわち、金属基準接地片91の一部は、第1の側面の中間領域にあり、パッドの第1のグループおよびパッドの第2のグループを通過する。金属基準接地片91の他の部分は、コモンモードフィルタの左側および右側に別個に位置し、左側および右側の金属基準接地片91の部分の高さは、前側面および後側面のパッド81の高さと少なくとも等しい。これは、各パッドが金属基準接地片を基準接地として使用することができることを確実にする。図13aから図13dに示されるように、金属基準接地片91は、図12aから図12dに基づいて、引き続き延在し、コモンモードフィルタ全体を囲んで、各パッドが金属基準接地片を基準接地として使用することができることを確実にする。
【0112】
この実装において、金属基準接地片は、厚さおよび幅を有して提供され、金属基準接地コーティング層の厚さは、加工技術、長手方向の伝達損失、差動モード損失、リターン損失、インピーダンスインジケータパラメータ等の限定に基づいて設定され得る。これは、本出願において限定されない。
【0113】
図12aから図12dおよび図13aから図13dに示される手法でコモンモードフィルタを配設することによって、全てのコイルグループから磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、図1hに示される手法で配設されたコモンモードフィルタと比較して、このコモンモードフィルタは、異なるコイルグループがパッド位置において同様の接地インピーダンスを有することを可能にする。これは、異なるコイルグループ間の対称性をさらに改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0114】
図14aは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの断面図である。図14bは、本出願の一実施形態によるコモンモードフィルタの複数のコイル層の概略図である。図14aは、図1fにおける点線ボックス領域s3のロケーションに沿って区分を実行することによって取得された断面図である。本出願におけるコイルグループのケーブルレイアウトについての理解を容易にするために、コイルグループに関連付けられた部分のみが、断面図図14aに示されている。可能な実装において、図14aおよび図14bに示されるコモンモードフィルタと、図2aおよび図2b、図3aおよび図3b、図4図5aおよび図5b、図6aから図6c、図7aから図7c、図8aおよび図8b、図9aおよび図9b、図10aおよび図10b、図11aおよび図11b、図12aから図12d、ならびに図13aから図13dにおけるコモンモードフィルタとの間の差異は、以下の通りである。図14aおよび図14bに示されるコモンモードフィルタは、4つのコイルグループを含み、複数のコイルグループは、第4のコイルグループDをさらに含み、複数のケーブル孔は、第4のケーブル孔(図示せず、図2bおよび関連する説明におけるケーブル孔の設定を参照されたい)をさらに含み、各第4のコイルグループDは、第1のコイル層21において第4のケーブルdを含み、第2のコイル層22において第4のケーブルdを含み、中間コイル層23において第4のケーブルdを含む。第4のコイルグループDの複数のケーブルは、第4のケーブル孔を通じて接続され、同じコイル層における第1のケーブルa、第2のケーブルb、第3のケーブルc、および第4のケーブルdは、平行に巻かれる。
【0115】
図14bに示されるように、各コイル層において、「a」、「b」、「c」および「d」と表記されたケーブルはそれぞれ、ケーブルが位置するコイル層の第1のケーブル、第2のケーブル、第3のケーブル、および第4のケーブルである。具体的には、第1のケーブルは「a」と表記され、第2のケーブルは「b」と表記され、第3のケーブルは「c」と表記され、第4のケーブルは「d」と表記される。第1のコイルグループAの複数のケーブルは、第1のコイル層、すなわち「第1の層」、中間コイル層、すなわち「第2の層から第5の層」、および第2のコイル層、すなわち「第6の層」において「a」と表記されたケーブルである。第2のコイルグループBの複数のケーブルは、第1のコイル層、すなわち「第1の層」、中間コイル層、すなわち「第2の層から第5の層」、および第2のコイル層、すなわち「第6の層」において「b」と表記されたケーブルである。第3のコイルグループCの複数のケーブルは、第1のコイル層、すなわち「第1の層」、中間コイル層、すなわち「第2の層から第5の層」、および第2のコイル層、すなわち「第6の層」において「c」と表記されたケーブルである。第4のコイルグループDの複数のケーブルは、第1のコイル層、すなわち「第1の層」、中間コイル層、すなわち「第2の層から第5の層」、および第2のコイル層、すなわち「第6の層」において「d」と表記されたケーブルである。
【0116】
この実装において、図14aおよび図14bに示されるコモンモードフィルタを参照して、4つのコイルグループが調整され得、(金属基準接地コーティング層などの)別の部分が追加され得、各コイル層におけるケーブルのレイアウトが調整され得る。これは、本出願において限定されない。コイルグループにおけるケーブルのコイルグループの数量、厚さ、幅、およびケーブル間隔は、構成要素要件、加工技術限定等に基づいて設定され得る。これは、本出願において限定されない。
【0117】
図14aおよび図14bに示される手法でコモンモードフィルタを配設することによって、全てのコイルグループから磁気層までの距離は、同位相で一致する。また、図1h等に示される、(図2a、図2b、図4等に示されるような)3つのコイルグループのみを配設する手法で配設されたコモンモードフィルタと比較して、このコモンモードフィルタは、コモンモードフィルタにおけるコイルグループの数量を増加させ、異なるコイルグループ間の対称性を改善し、コモンモードフィルタの長手方向の伝達損失を低減する。
【0118】
前述の内容は、本出願の実施形態を説明するものである。前述の説明は、例であり、網羅的ではなく、開示されている実施形態に限定されない。多くの変形例およびバリエーションが、説明されている実施形態の範囲および趣旨から逸脱せずに、当業者にとって明らかになるであろう。本出願における実施形態および実施形態における特徴は、それらが互いに矛盾しないという条件で、互いに組み合わされてよい。本明細書において使用される項の選択は、実施形態原理、実際の適用、もしくは市場における技術に対する改善を最も良く解説するように、または、本明細書において開示されている実施形態を当業者が理解することを可能にするように、意図されている。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図1g
図1h
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図12a
図12b
図12c
図12d
図13a
図13b
図13c
図13d
図14a
図14b