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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/044 20060101AFI20250319BHJP
【FI】
G06F3/044 140
G06F3/044 128
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024505908
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2022046576
(87)【国際公開番号】W WO2023171075
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2022037453
(32)【優先日】2022-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松田 厚志
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/187397(WO,A1)
【文献】特開2017-004136(JP,A)
【文献】特開2016-201113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極の裏側に設けられた弾性誘電体と、
前記第1電極との間に前記弾性誘電体を挟んで設けられた第2電極と、
前記第1電極の表側に位置する操作面に対する検出対象物の近接、接触、及び押圧を前記第1電極の出力に基づいて検出する検出部と、
前記第2電極に隣接して設けられる第3電極と
を含み、
前記第3電極は、前記検出部により前記検出対象物の押圧が検出される際に一定電位に保持される、入力装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記第1電極の絶対自己容量に基づいて前記検出対象物の近接又は接触を検出するとともに、前記第1電極と前記第2電極との間の相互容量に基づいて前記検出対象物による押圧を検出する請求項に記載の入力装置。
【請求項3】
前記第1電極、前記第2電極、及び前記第3電極は、前記検出部により前記検出対象物の近接又は接触が検出される際に、いずれも同一周波数、同位相の交流電圧が印加される、請求項に記載の入力装置。
【請求項4】
前記第1電極及び前記第3電極は、前記検出部により前記検出対象物の押圧が検出される際に一定電位に保持され、
前記第2電極は、前記検出部により前記検出対象物の押圧が検出される際に、所定の交流電圧が印加される、請求項に記載の入力装置。
【請求項5】
前記第3電極は、前記第2電極の周囲を取り囲むように設けられている、請求項1に記載の入力装置。
【請求項6】
前記第1電極の面積は、前記第2電極の面積より大きく、
平面視において、前記第1電極の外縁のすべては、前記第2電極の外縁よりも外側に配置される、請求項1記載の入力装置。
【請求項7】
前記第1電極及び前記第2電極は、互いに相似形の電極形状を有しており、中心位置同士が平面視で一致している、請求項に記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、指示体によるタッチ位置を検出するセンサ電極が形成された、平面視にて矩形状のタッチセンサ基板と、前記タッチセンサ基板における一方の面に固定され、前記指示体により押圧されるカバーパネルと、前記カバーパネルにおける前記指示体により押圧される面とは反対側の面の表示領域外に形成された第1電極と、前記タッチセンサ基板における前記一方の面の表示領域外に形成された第2電極とを備える、タッチパネルがある。
【0003】
平面視にて前記第1電極と前記第2電極の少なくとも一部が重なっており、前記第2電極は、前記タッチセンサ基板の少なくとも1つのコーナー部に形成されると共に、前記センサ電極とは電気的に分離されており、前記カバーパネルにおける前記指示体により押圧される面が押圧されたときの前記第1電極と前記第2電極との間の距離の変化を、前記第1電極と前記第2電極との間の静電容量の変化として測定することで、前記指示体により前記カバーパネルを介して前記タッチセンサ基板が押圧された圧力を検出し、前記カバーパネルにおける前記第1電極の外周側に形成されたグランド電極をさらに備える(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-125158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のタッチパネルは、タッチ位置を検出するためのセンサ電極と、押圧を検出するための第1電極及び第2電極とが別々であるため、部品点数が多く、構成が簡易ではない。
【0006】
そこで、簡易な構成で検出対象物の近接、接触、及び押圧を検出可能な入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態の入力装置は、第1電極と、前記第1電極の裏側に設けられた弾性誘電体と、前記第1電極との間に前記弾性誘電体を挟んで設けられた第2電極と、前記第1電極の表側に位置する操作面に対する検出対象物の近接、接触、及び押圧を前記第1電極の出力に基づいて検出する検出部と、前記第2電極に隣接して設けられる第3電極とを含む。
【発明の効果】
【0008】
簡易な構成で検出対象物の近接、接触、及び押圧を検出可能な入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の入力装置100の平面構成を示す図である。
図2図1のA-A矢視断面を示す図である。
図3】各電極に印加する電圧を示す図である。
図4A】比較用の入力装置10のシミュレーションモデルの断面構成を示す図である。
図4B】比較用の入力装置10における電界分布のシミュレーション結果を示す図である。
図5A】比較用の入力装置10における静電容量の特性を示す図である。
図5B】比較用の入力装置10における静電容量の特性を示す図である。
図5C】比較用の入力装置10における静電容量の特性を示す図である。
図6A】実施形態の入力装置100のシミュレーションモデルの断面構成を示す図である。
図6B】入力装置100における電界分布のシミュレーション結果を示す図である。
図6C】入力装置100における静電容量の特性を示す図である。
図7】実施形態の第1変形例の入力装置100Aの断面構造を示す図である。
図8】実施形態の第2変形例の入力装置100Cを示す平面図である。
図9】実施形態の第3変形例の入力装置100Dの平面構成を示す図である。
図10図9のA-A矢視断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の入力装置を適用した実施形態について説明する。
【0011】
<実施形態>
図1は、実施形態の入力装置100の平面構成を示す図である。図2は、図1のA-A矢視断面を示す図である。以下では、XYZ座標系を定義して説明する。X軸に平行な方向(X方向)、Y軸に平行な方向(Y方向)、Z軸に平行な方向(Z方向)は、互いに直交する。また、以下では、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称す場合があるが、普遍的な上下関係を表すものではない。また、平面視とはXY面視することをいう。また、以下では構成が分かり易くなるように各部の長さ、太さ、厚さ等を誇張して示す場合がある。
【0012】
<入力装置100の構成>
入力装置100は、トップパネル101、基板102、弾性誘電体103、基板104、第1電極110、第2電極120、第3電極130、検出部140、駆動部141、及びMCU(micro controller unit)150を含む。検出部140及びMCU150は、利用者の指先FTとともに図2に示す。
【0013】
利用者は指先FTでトップパネル101の操作面(上面)に触れる(接触する)ことで入力装置100に対して操作入力を行う。指先FTは検出対象物の一例である。入力装置100は、指先FT以外でも操作可能であるが、以下では指先FTで操作するものとして説明する。
【0014】
入力装置100は、利用者の指先FTのトップパネル101の操作面への近接、接触、及び押圧を検出し、操作入力の内容を表すデータを入力装置100に接続される操作対象装置に出力する。入力装置100は、操作対象装置を遠隔操作するものであってもよく、操作対象装置に一体的に設けられたものであってもよい。また、入力装置100は、携帯可能であってもよく、壁面等に固定的に設置可能であってもよい。
【0015】
トップパネル101は、一例として、透明なガラス製又は樹脂製で上面から押されたときに撓むことが可能で、平面視において矩形状の板状部材であり、上面は利用者が指先FTを接触させて操作入力を行う操作面である。利用者はトップパネル101の上面を下方に押圧することもできる。
【0016】
第1電極110は、トップパネル101の下面側に設けられる基板102の上面に配置されている。第1電極110の上面側(上方)は、トップパネル101に面する表側であり、第1電極110の下面側(下方)は、表側とは反対の裏側である。このため、トップパネル101の上面である操作面は、第1電極110の表側に位置する。第1電極110は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極によって構成される。
【0017】
第1電極110は、一例として平面視で矩形状であり、ここでは正方形である形態について説明する。第1電極110の面積は、第2電極120の面積と等しく、平面視において、第1電極110の外縁の全体が第2電極120の外縁と一致するように配置されている。
【0018】
第1電極110は、配線を介して検出部140に接続されている。第1電極110は、第1電極110の絶対自己容量に基づいて指先FTの近接又は接触を検出するために設けられている。第1電極110の絶対自己容量は、図2に示す第1電極110と指先FTとの間の静電容量Ctである。また、第1電極110は、第2電極120との間の相互容量に基づいて指先FTによる押圧を検出するために設けられている。相互容量は、図2に示す第1電極110と第2電極120との間の静電容量Cpである。
【0019】
基板102は、第1電極110を保持する透明基板であり、トップパネル101と同様に、上面から押されたときに撓むことが可能であればよい。基板102は、一例として透明なポリイミド製の基板でよい。
【0020】
弾性誘電体103は、基板102の下方(裏側)に設けられている。基板102は、第1電極110の下方(裏側)に設けられているため、弾性誘電体103は、基板102を間に挟んだ状態で、第1電極110の下方(裏側)に設けられている。ここで、弾性誘電体103の上に基板102を設けずに、弾性誘電体103の上面に第1電極110を直接配置してもよい。すなわち、弾性誘電体103が第1電極110の下方(裏側)に設けられるとは、基板102を間に挟んだ状態で、第1電極110の下方(裏側)に間接的に設けられる場合と、基板102を間に挟まない状態で、第1電極110の下方(裏側)に直接的に設けられる場合との両方を含む意味である。また、第1電極110と弾性誘電体103との間に、基板102の代わりの絶縁層等が設けられる場合や、基板102に加えて絶縁層等の構造物が設けられる場合も含まれるものとする。
【0021】
弾性誘電体103は、透明で弾性変形可能な誘電体であり、例えばウレタン樹脂で構成される。弾性誘電体103は、平面視でトップパネル101、第1電極110、及び基板102と重なる位置に設けられており、Z方向の厚さは均一である。弾性誘電体103が弾性変形可能であるため、トップパネル101の操作面のうちの検出電極111の真上の部分を利用者が指先FTで下方に押圧すると、弾性誘電体103が撓んで収縮することにより、第1電極110及び基板102が下方に僅かに変位する。
【0022】
第2電極120は、弾性誘電体103の下方に配置される基板104の上面に設けられている。すなわち、第2電極120は、第1電極110との間に基板102及び弾性誘電体103を挟んで設けられている。第2電極120は、一例として、平面視で矩形状である。ここでは第2電極120が平面視で正方形である形態について説明する。上述のように、弾性誘電体103の上に基板102を設けずに、弾性誘電体103の上面に第1電極110を直接的に設けてもよいため、第2電極120は、第1電極110との間に弾性誘電体103を挟んで設けられていればよい。
【0023】
第2電極120及び第1電極110は、互いに相似形の電極形状を有しており、中心位置同士が平面視で一致している。また、第2電極120の面積は、第1電極110の面積と等しい。このため、第2電極120の外縁は、第1電極110の外縁と一致するように配置されている。
【0024】
第2電極120は、第1電極110との間の相互容量に基づいて指先FTによるトップパネル101の下方への押圧を検出するために設けられている。第2電極120は、一例としてITO膜のような透明な導電材料で構成される。
【0025】
第3電極130は、平面視で第2電極120の周囲を取り囲むように、基板104の上面に設けられている。換言すれば、第3電極130は、第2電極120に隣接して設けられている。第3電極130は、平面視で矩形環状である。第3電極130は、第2電極120及び第1電極110と中心位置が平面視で一致するように配置されている。
【0026】
第3電極130は、指先FTのトップパネル101の操作面への近接及び接触を検出する際に、入力装置100の周囲のグランド(接地電位の構造物)からの浮遊容量をシールドするとともに、指先FTによる押圧を検出する際に、第1電極110と第2電極120との間の相互容量を安定化させるために設けられている。第3電極130は、一例としてITO膜のような透明な導電材料で構成される。詳細は後述するが、第3電極130は、第2電極120から第3電極130へ電界を引き寄せることで第2電極120から指先FTへの電界の回り込みを低減させるために設けられている。このため、第3電極130が第2電極120に隣接して設けられているとは、第2電極120から指先FTへの電界の回り込みを第3電極130側に逃がすことで減少させることができる程、第3電極130が第2電極120の隣りで、第2電極120に近づけて配置されていることをいう。
【0027】
なお、ここでは、第3電極130が平面視で矩形環状であって、平面視で第2電極120の周囲を取り囲む形態について説明するが、第3電極130は矩形環状には限られず、また、環状ではなくてもよい。例えば、第2電極120が矩形の場合に、第3電極130は、第2電極120の四辺に沿って設けられる4つの電極等であってもよい。この場合には、第3電極130は、平面視で第2電極120の周囲の全体を取り囲んでいないが、第2電極120に隣接して設けられていることになる。
【0028】
基板104は、第2電極120及び第3電極130を保持する透明基板である。基板104は、一例として基板102と同様に、透明なポリイミド製の基板であってもよいが、トップパネル101の操作面が押圧されても殆ど撓まない透明なガラス製又は樹脂製の基板であってもよい。
【0029】
なお、ここでは入力装置100の下方に液晶や有機EL(Electroluminescence)等のディスプレイパネルが配置されることを想定して、トップパネル101、第1電極110、基板102、弾性誘電体103、第2電極120、第3電極130、及び基板104が透明である形態について説明する。しかしながら、例えばディスプレイパネルが配置されないような場合には、これらは透明では無くてよい。この場合には、トップパネル101、第1電極110、第2電極120、及び第3電極130は透明ではなくて導電性を持つ材質であればよく、金属板等であってもよい。
【0030】
検出部140は、第1電極110に接続されるとともに、MCU150に接続されている。また、駆動部141は、第2電極120及び第3電極130に接続されるとともに、MCU150に接続されている。検出部140は、第1電極110の出力に基づいて、利用者の指先FTのトップパネル101の操作面への近接、接触、及び押圧を検出する。この際に、駆動部141は、第2電極120及び第3電極130に駆動用の電圧を印加する。より具体的には、検出部140は、第1電極110の絶対自己容量に基づいて指先FTの操作面への近接又は接触を検出するとともに、第1電極110と第2電極120との間の相互容量に基づいて指先FTによる操作面の押圧を検出する。このような検出部140は、一例として、IC(integrated circuit)で実現可能である。
【0031】
検出部140は、第1電極110の絶対自己容量(アナログ値)、及び、第1電極110と第2電極120との間の相互容量(アナログ値)をデジタル値に変換し、デジタル値の静電容量を表す検出データをMCU150に出力する。なお、検出部140が第1電極110に電圧を印加することと、駆動部141が第2電極120及び第3電極130に電圧を駆動することとは、時分割的に行われる。この詳細については後述する。
【0032】
MCU150は、検出部140から入力される検出データに基づいて、操作入力の内容を判定し、判定した操作入力の内容を表すデータを入力装置100に接続される操作対象装置に出力する。MCU150は、指先FTの操作面への近接又は接触の有無を判定する際には、検出部140から入力される第1電極110の絶対自己容量を表す検出データに基づいて判定を行い、指先FTによる操作面の押圧の有無を判定する際には、検出部140から入力される第1電極110と第2電極120との間の相互容量を表す検出データに基づいて判定を行う。
【0033】
また、MCU150は、第1電極110の絶対自己容量と、第1電極110及び第2電極120の間の相互容量とを検出部140が検出する際に、検出部140及び駆動部141が第1電極110、第2電極120、及び第3電極130に時分割的に印加する電圧を制御する。
【0034】
<各電極に印加する電圧>
図3は、各電極に印加する電圧を示す図である。図3には、第1電極110の絶対自己容量を表す検出データを得る際と、第1電極110と第2電極120との間の相互容量を表す検出データを得る際とにおいて、第1電極110、第2電極120、及び第3電極130に印加する電圧を示す。図3に示す電圧は、MCU150が検出部140及び駆動部141を制御することによって、第1電極110、第2電極120、及び第3電極130に印加される。検出部140は第1電極110に電圧を印加し、駆動部141は第2電極120及び第3電極130に電圧を印加する。
【0035】
第1電極110の絶対自己容量を表す検出データを得る際には、第1電極110、第2電極120、及び第3電極130に、すべて同一の周波数、振幅、及び位相を有する正弦波状の電圧(交流電圧)を印加する。
【0036】
自己容量は第1電極110だけで検出可能であるが、第1電極110だけだと、入力装置100の外部のグランドの浮遊容量まで検出してしまい、静電容量が大きくなる。この結果、検出感度を上げることが困難になる。そこで、入力装置100は、第1電極110の絶対自己容量を検出するため、第2電極120及び第3電極130にも同一の波形を有する交流電圧を印加することで、第2電極120及び第3電極130で外部のグランドからの浮遊容量を遮蔽する。
【0037】
第1電極110と、第2電極120及び第3電極130との電位差がないので、第1電極110のグランドに対する静電容量を小さくすることができ、入力装置100は、第1電極110での絶対自己容量の検出感度を向上させることができる。このようにすることで、操作面に指先FTが接触していないが非常に近づいている近接状態も検出可能になる。このように、絶対自己容量を検出する際には、第2電極120と第3電極130とはアクティブシールドとして利用する。
【0038】
また、入力装置100は、第1電極110と第2電極120との間の相互容量を表す検出データを得る際には、第2電極120には、交流電圧(所定の交流電圧)を印加し、第1電極110及び第3電極130は一定電位に保持する。第2電極120に印加する交流電圧は、一例として、絶対自己容量を表す検出データを得るために、第1電極110、第2電極120、及び第3電極130に印加する交流電圧と同一のものである。
【0039】
第2電極120に交流電圧を印加するとともに、第1電極110を一定電位に保持して電荷の移動(電流)を検出するため、第2電極120が送信側(Tx)になり、第1電極110が受信側(Rx)になることになる。
【0040】
第1電極110及び第3電極130を一定電位に固定し、第2電極120に交流電圧を印加すると、第1電極110と第2電極120に電位差が生じるので、入力装置100は、第1電極110と第2電極120との間の相互容量による電荷の移動(電流)を測ることができる。なお、第1電極110及び第3電極130の電位が一定であればよいため、任意の直流電圧が印加されていてもよい。
【0041】
<比較用の入力装置10のシミュレーション結果>
図4Aは、比較用の入力装置10のシミュレーションモデルの断面構成を示す図である。図4Bは、比較用の入力装置10における電界分布のシミュレーション結果を示す図である。図5A図5B、及び図5Cは、比較用の入力装置10における静電容量の特性を示す図である。ここでは、実施形態の入力装置100のシミュレーション結果について説明する前に、比較用の入力装置10のシミュレーション結果と問題点について説明する。
【0042】
指先FTのZ方向の位置について、Z=0mmは指先FTが操作面に接触している位置である。Zが正の値であることは、指先FTが操作面から上方に離れていることを表し、Zが負の値であることは、指先FTが操作面を下方に押圧していることを表す。
【0043】
図4Aに示すように、比較用の入力装置10は、実施形態の入力装置100から第3電極130を取り除いた構成を有する。また、図4Aには、基板104の下側にグランド板11を示す。グランド板11は、例えば入力装置10が設置される回路基板等のグランド層等である。
【0044】
ここでは、第2電極120に交流電圧を印加するとともに、第1電極110をグランド電位に保持した状態で電界分布を計算するため、第2電極120にTx(送信側)の符号を付し、第1電極110にRx(受信側)の符号を付す。このような電圧の印加の仕方は、実施形態の入力装置100において第1電極110と第2電極120との間の相互容量を表す検出データを得るための電圧の印加の仕方に相当する。
【0045】
図4Bには、図4Aにおいて破線の四角で囲む部分における電界分布を矢印示す。Txから指先FTに向かう大きな矢印Aに沿って、第2電極120(Tx)から第1電極110(Rx)を超えて指先FTに向かう電界が多く発生しており、指先FTへの電界の回り込み量が多いことが分かる。図4Bの矢印Aと同一の矢印Aを図4Aにも示す。指先FTの電位はグランド電位であるため、第2電極120(Tx)から指先FTへの電界の回り込みが生じたためである。
【0046】
図5Aは、指先FTの位置がZ≧0の場合の指先FTのZ方向の位置に対する静電容量の変化のシミュレーション結果を示す。破線の特性は、第1電極110の絶対自己容量を表す検出データの特性を示し、実線の特性は、第1電極110と第2電極120との間の相互容量を表す検出データの特性を表す。
【0047】
図5Bは、指先FTの位置がZ<0の場合の操作面が押圧される力(N)に対する静電容量の変化のシミュレーション結果を示す。破線の特性は、第1電極110の絶対自己容量を表す検出データの特性を示し、実線の特性は、第1電極110と第2電極120との間の相互容量を表す検出データの特性を表す。図5Bにおける押圧力が0(N)の位置は、図5AにおけるZ=0mmの位置に対応する。
【0048】
図5Cは、指先FTのZ方向の位置に対する静電容量(第1電極110と第2電極120との間の相互容量)の変化のシミュレーション結果を示す。図5Cでは、指先FTのZ方向の位置は、正の値(Z=+20mm)から負の値(Z=約-1mm)に及んでいる。図5CにおけるZ≧0の区間の特性は、図5Aにおける実線の特性と同一である。図5CにおけるZ<0の区間の特性は、図5Bにおける実線の特性の横軸をZ方向の位置に変換して表したものである。
【0049】
比較用の入力装置10は、入力装置100と同様に、指先FTの操作面への近接又は接触の有無を判定する際には、検出部140から入力される第1電極110の絶対自己容量を表す検出データに基づいて判定を行い、指先FTによる操作面の押圧の有無を判定する際には、検出部140から入力される第1電極110と第2電極120との間の相互容量を表す検出データに基づいて判定を行う。
【0050】
このため、比較用の入力装置10は、指先FTによる操作が何も行われていない状態から近接又は接触の有無を判定する際には、図5Aの破線の特性に基づいて近接又は接触の有無を判定することになる。指先FTが操作面に対して近づくときには、図5Aの特性を左側から右側に向けて辿るように静電容量が変化するため、比較用の入力装置10は、例えば、静電容量のカウント値が近接判定用の閾値TH1になったときに指先FTの近接を判定し、静電容量のカウント値が接触判定用の閾値TH2になったときに指先FTの接触を判定すればよい。一例として、近接判定用の閾値TH1は500であり、接触判定用の閾値TH2は1300である。なお、接触判定用の閾値TH2は、指によって静電容量値のばらつきがあるため、確実に接触判定を行うために多少低めに設定せざるを得ない。したがって、図5Aの例において示す接触判定用の閾値TH2は、Z=0mmの位置で得られるカウント値(約4100)よりも低い値に設定されており、指先FTが操作面に接触するZ=0mmの位置よりも少し手前のZ=約1mmで接触を判定することになる。
【0051】
また、近接及び接触の有無を判定した後に押圧の有無を判定する際には、図5Bに示す実線の特性に基づいて、押圧の有無を判定することになる。指先FTが操作面に接触していると判定された際の相互容量値を基準とし、押圧力が増大するにつれて静電容量が基準値に対して増大するため、測定された静電容量値と基準値との差分に応じて押圧力を算出してもよいし、押圧を判定するための閾値(例えば1000)を設けて、押圧されたことを判定してもよい。
【0052】
ところで、図5Aにおける実線の特性(第1電極110と第2電極120との間の相互容量)に示すように、Z=約1mmの位置において絶対自己容量のカウント値が接触判定用の閾値TH2(1300)に到達し、指先FTが操作面に接触していると判定された際に、相互容量のカウント値は約-250である。しかしながら、Z=0mmの位置における相互容量のカウント値は約-300まで低下している。また、図5Bに示す実線の特性(第1電極110と第2電極120との間の相互容量)では、押圧力が0Nのときにカウント値は約-300であり、相互容量が、図5AにおけるZ=約1mmの位置での相互容量のカウント値(約-250)と同一値になるのは、約0.4Nである。したがって、押圧力が0Nから約0.4Nの範囲では、測定された相互容量のカウント値が基準値を下回ってしまい、押圧力の算出ができず不感帯になっていた。
【0053】
このような不感帯が存在するため、押圧された状態から指先FTの押圧力が低下するときに、例えば、指先FTが押圧と近接を繰り返したような場合には、比較用の入力装置10は、図5A及び図5Bに示す実線の特性を用いて静電容量のカウント値に基づいて操作状態を判定しようとしても、押圧と近接の区別が困難になる。
【0054】
これは、図5Cを用いて換言すれば、押圧された状態から指先FTの押圧力が低下するときに、例えば、指先FTが押圧と近接を繰り返したような場合には、比較用の入力装置10が図5Cに示す特性を用いて静電容量値に基づいて操作状態を判定しようとしても、押圧と近接の区別が困難になるということである。図5Cの特性のZ=0mmの前後を破線の円で囲むように、Z=0mmの前後で静電容量値が落ち込んだ特性になっていて、この区間が不感帯のように振る舞うからである。このようなZ=0mmの前後における静電容量値の落ち込みは、指先FTへの電界の回り込みが原因と考えられる。すなわち、第2電極120と指との間に電界の回り込みが生じると、検出される静電容量(相互容量)は、Z=0mmの前後で指がない状態よりも減少し、さらに押圧することによって増加に転じる。したがって、上述したように押圧を判定することができず不感帯が生じていた。
【0055】
実施形態の入力装置100は、上述のような問題点を解決して、第1電極110と第2電極120との間の相互容量を用いて操作状態を判定する際に、特にZ=0mmの前後において操作状態を容易かつ正確に判定可能にする。
【0056】
<実施形態の入力装置100のシミュレーション結果>
図6Aは、実施形態の入力装置100のシミュレーションモデルの断面構成を示す図である。図6Bは、入力装置100における電界分布のシミュレーション結果を示す図である。図6Cは、入力装置100における静電容量の特性を示す図である。図6Cは、比較用の入力装置10についての図5Cの特性に相当する特性を表す。
【0057】
図6Bは、第1電極110と第2電極120との間の相互容量を表す検出データを得るために、第2電極120に交流電圧を印加し、第1電極110及び第3電極130をグランド電位に保持した状態における電界分布を示す。図6Bに示す電界分布は、図6Aにおいて破線の四角で囲む部分のものである。
【0058】
図6Bに示すように、第2電極120(Tx)から矢印Bで示すように第3電極130(GND)に向かう電界が生じていることにより、図4Bに比べると第2電極120(Tx)から指先FTに向かう電界が減少している。
【0059】
また、図6Cに示すように、指先FTのZ方向の位置に対する静電容量(第1電極110と第2電極120との間の相互容量)の変化のシミュレーション結果は、Z=0mmの前後での静電容量値の落ち込み(不感帯)が解消され、Z=0mmから指先FTが離れる方向において、略一定の値が得られている。Z座標が正の方から見ると、Z=0mmまで静電容量のカウント値は略一定であり、Z=0mmで静電容量値が急激に増大する特性が得られている。
【0060】
このように、Z=0の前後での特性が改善したのは、第2電極120の周囲に第3電極130を設け、相互容量を検出する際に第3電極130をグランド電位に保持したことにより、図6Bに示すように第2電極120から第3電極130に回り込む電界成分が生じて、第2電極120から指先FTに回り込む電界成分が低減されたからと考えられる。
【0061】
一般的に電界は、電極の端部(エッジ)で一番強くなる傾向がある。第2電極120から第3電極130に回り込む電界成分を効果的に生じさせるには、次のようにすればよい。図1及び図2に示すように、第1電極110のエッジの位置と、第2電極120のエッジの位置とは平面視で非常に近い。このため、第2電極120から第3電極130に回り込む電界成分を効果的に生じさせるには、第1電極110及び第2電極120のエッジの位置と、第3電極130の矩形環の内側のエッジの位置とを平面視で近くすればよい。
【0062】
<効果>
以上のように、入力装置100は、第1電極110と、第1電極110との間に弾性誘電体103を挟んで設けられた第2電極120と、第2電極120に隣接して設けられる第3電極130と、第1電極110の表側に位置する操作面に対する指先FTの近接、接触、及び押圧を第1電極110の出力に基づいて検出する検出部140とを含む。このため、第1電極110、第2電極120、及び第3電極130を含む簡易な構成で、第1電極110の出力に基づいて指先FTの近接、接触、及び押圧を検出することができる。
【0063】
したがって、簡易な構成で指先FTの近接、接触、及び押圧を検出可能な入力装置100を提供することができる。
【0064】
また、第3電極130は、検出部140により指先FTの押圧が検出される際に一定電位に保持されるので、第2電極120から指先FTへの電界の回り込みを第3電極130側に逃がすことで第2電極120から指先FTへの電界の回り込みを低減できる。この結果、図6Cに示すように、指先FTのZ方向の位置に対する静電容量(第1電極110と第2電極120との間の相互容量)の変化の特性は、Z=0mmの前後での静電容量のカウント値の落ち込みが解消される。このため、Z=0mmの前後で操作状態を正確に判定可能な入力装置100を提供することができる。
【0065】
また、検出部140は、第1電極110の絶対自己容量に基づいて指先FTの近接又は接触を検出するとともに、第1電極110と第2電極120との間の相互容量に基づいて指先FTによる押圧を検出する。このため、第1電極110の出力を利用して、操作面への指先FTの近接又は接触と、操作面の押圧とを検出可能で、構成が簡易な入力装置100を提供することができる。
【0066】
また、第1電極110、第2電極120、及び第3電極130は、検出部140により指先FTの近接又は接触が検出される際に、いずれも同一周波数、同位相の交流電圧が印加される。このため、第2電極120及び第3電極130をアクティブシールドとして機能させることができ、第2電極120及び第3電極130で外部のグランドからの浮遊容量を遮蔽することができる。また、第1電極110と、第2電極120及び第3電極130との電位差がないので、第1電極110のグランドに対する静電容量を小さくすることができ、第1電極110での絶対自己容量の検出感度を向上させることができる。さらに、近接状態も検出可能になる。
【0067】
また、第1電極110及び第3電極130は、検出部140により指先FTの押圧が検出される際に一定電位に保持され、第2電極120は、検出部140により指先FTの押圧が検出される際に、所定の交流電圧が印加される。このため、第1電極110と第2電極120に電位差が生じさせることができ、第1電極110と第2電極120との間の相互容量を測ることができる。そして、相互容量に基づいて押圧量を検出することができる。
【0068】
また、第3電極130は、第2電極120の周囲を取り囲むように設けられているので、第2電極120及び第3電極130をアクティブシールドとして機能させて、グランドからの浮遊容量を遮蔽する際に、より大きな遮蔽効果が得られ、第1電極110での絶対自己容量の検出感度を向上させることができる。
【0069】
また、第1電極110及び第2電極120は、互いに相似形の電極形状を有しており、中心位置同士が平面視で一致しているので、平面視で対称的な配置になり、平面視での方向による偏りが少なく、操作状態を高精度に判定可能な入力装置100を提供することができる。
【0070】
<第1変形例>
図7は、実施形態の第1変形例の入力装置100Aの断面構造を示す図である。図7では、検出部140及びMCU150を省略する。入力装置100Aは、図2に示す入力装置100に対して、トップパネル101と弾性誘電体103との間で、平面視で第1電極110の周囲に設けられるシールド電極160を追加した構成を有する。シールド電極160は、例えば、第3電極130のように矩形環状であってもよいし、第1電極110の四辺に沿って設けられる4つの電極であってもよい。
【0071】
シールド電極160には、第3電極130と同一の電圧を印加すればよい。すなわち、第1電極110の絶対自己容量を表す検出データを得る際には、第1電極110、第2電極120、及び第3電極130に印加する交流電圧と同一の交流電圧をシールド電極160に印加すればよい。また、第1電極110と第2電極120との間の相互容量を表す検出データを得る際には、シールド電極160を第3電極130と同一の一定電位に保持すればよい。このようにすることで、第1電極110の絶対自己容量を表す検出データを得る際に、外部のグランドからの浮遊容量をより効果的に遮蔽することができ、第1電極110の検出感度がさらに上昇させることができる。
【0072】
<第2変形例>
図8は、実施形態の第2変形例の入力装置100Cを示す平面図である。入力装置100Cは、図1に示す入力装置100をX方向に長く引き延ばした構成を有する。このため、トップパネル101、弾性誘電体103、基板104、抵抗性の電極材料を使用した第1電極110、第2電極120、及び第3電極130は、X方向に引き延ばされている。
【0073】
このような入力装置100Cは、スライダとして利用可能である。指先FTのX方向位置が変わることによって、第1電極110の接続端から見た抵抗値が変化するので検出部140が検出する電荷量が変化する。このため第1電極110の両端に検出部140を置いてその電荷量の比率を求めることで、指先FTのX方向における位置を検出することができる。
【0074】
<第3変形例>
図9は、実施形態の第3変形例の入力装置100Dの平面構成を示す図である。図10は、図9のA-A矢視断面を示す図である。
【0075】
第3変形例の入力装置100Dは、図1及び図2に示す入力装置100の第1電極110の面積を第2電極120の面積より大きくしたものである。
【0076】
第1電極110は、一例として平面視で矩形状であり、ここでは正方形である。第1電極110の面積は、第2電極120の面積より大きく、平面視において、第1電極110の外縁のすべてが第2電極120の外縁よりも外側に位置するように配置されている。このため、平面視において、第2電極120の外縁は、第1電極110の外縁に内包される。
【0077】
また、第1電極110の面積は、第2電極120の面積より大きく、平面視において、第1電極110の外縁の全体が第2電極120の外縁よりも外側に配置される。例えば、第1電極110と第2電極120とは互いに相似形の電極形状を有し、その中心位置同士が平面視で一致するように構成されていてもよい。
【0078】
本変形例においては、第1電極110と第2電極120との間の相互容量を検出する際に、第3電極130を一定電位に保持することで第2電極120から指への電界の回り込みを減少させるのみならず、指に近い側の第1電極110の面積を大きくして第2電極120を完全に覆う形にすることでさらに第2電極120と指との間の電界の回り込みを減少させることができる。したがって、第1電極110と第2電極120との間の静電容量の減少がなく、不感帯が生じないので、検出部140は確実に押圧を検出する事ができる。このように第1電極110の面積が第2電極120の面積より大きい場合には、面積が等しい場合よりも電界の指への回り込みをさらに抑制することができる。
【0079】
したがって、簡易な構成で指先FTの近接、接触、及び押圧をさらに高精度に検出可能な入力装置100を提供することができる。
【0080】
以上、本開示の例示的な実施形態の入力装置について説明したが、本開示は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0081】
なお、本国際出願は、2022年3月10日に出願した日本国特許出願2022-037453に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は本国際出願にここでの参照により援用されるものとする。
【符号の説明】
【0082】
101 トップパネル
102 基板
103 弾性誘電体
104 基板
110 第1電極
120 第2電極
130 第3電極
140 検出部
150 MCU
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10