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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/778 20230101AFI20250319BHJP
   H10F 39/18 20250101ALI20250319BHJP
   H10F 39/12 20250101ALI20250319BHJP
   H04N 25/46 20230101ALI20250319BHJP
   H04N 25/704 20230101ALI20250319BHJP
【FI】
H04N25/778
H10F39/18 A
H10F39/12 D
H04N25/46
H04N25/704
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020173870
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2022065350
(43)【公開日】2022-04-27
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】木下 朗
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-133087(JP,A)
【文献】特開2013-055425(JP,A)
【文献】特開2010-259027(JP,A)
【文献】特開2013-007998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/778
H10F 39/18
H10F 39/12
H04N 25/46
H04N 27/704
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロレンズを透過した光を光電変換して電荷を生成する第1光電変換部、第2光電変換部、および第3光電変換部と、
前記第1光電変換部、前記第2光電変換部、および前記第3光電変換部の少なくとも1つで生成された電荷に基づく信号を出力する出力部と、
第1出力信号として、前記第1光電変換部および前記第2光電変換部で生成された電荷に基づく信号を出力し、第2出力信号として、前記第3光電変換部で生成された電荷に基づく信号を出力するよう前記出力部を制御する第1制御と、第1出力信号として、前記第1光電変換部で生成された電荷に基づく信号を出力し、第2出力信号として、前記第2光電変換部および前記第3光電変換部で生成された電荷に基づく信号を出力するよう前記出力部を制御する第2制御とを行う制御部と、
を備え、
前記第1光電変換部は前記マイクロレンズの光軸方向と交差する第1方向の端部に配置され、前記第2光電変換部および前記第3光電変換部は前記第1方向の中央部に配置され、
前記第1光電変換部の前記第1方向の幅は、前記第2光電変換部および前記第3光電変換部の前記第1方向の幅よりも大きい、撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記制御部は、前記第1制御において前記出力部を制御して、前記第1出力信号として前記第1光電変換部および前記第2光電変換部で生成された電荷を加算した電荷に基づく信号を出力させ、前記第2制御において前記出力部を制御して、前記第2出力信号として前記第2光電変換部および前記第3光電変換部で生成された電荷を加算した電荷に基づく信号を出力させる撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像装置において、
前記第1光電変換部、前記第2光電変換部、および前記第3光電変換部の少なくとも1つで生成された電荷を蓄積する蓄積部を備え、
前記出力部は、前記第1光電変換部で生成された電荷を前記蓄積部に転送する第1転送部と、前記第2光電変換部で生成された電荷を前記蓄積部に転送する第2転送部と、前記第3光電変換部で生成された電荷を前記蓄積部に転送する第3転送部とを有し、
前記制御部は、前記第1制御において前記第1転送部および前記第2転送部を制御して、前記第1光電変換部および前記第2光電変換部で生成された電荷を前記蓄積部に転送させ、前記第2制御において前記第2転送部および前記第3転送部を制御して、前記第2光電変換部および前記第3光電変換部で生成された電荷を前記蓄積部に転送させる撮像装置。
【請求項4】
請求項3に記載の撮像装置において、
前記出力部は、前記第1制御において、前記第1出力信号として前記第1光電変換部および前記第2光電変換部で生成され、前記蓄積部で加算された電荷に基づく信号を出力し、前記第2制御において、前記第2出力信号として前記第2光電変換部および前記第3光電変換部で生成され、前記蓄積部で加算された電荷に基づく信号を出力する撮像装置。
【請求項5】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記制御部は、前記第1制御において前記出力部を制御して、前記第1光電変換部で生成された電荷に基づく第1信号と前記第2光電変換部で生成された電荷に基づく第2信号とを加算した信号を前記第1出力信号として出力させ、前記第2制御において前記出力部を制御して、前記第2信号と前記第3光電変換部で生成された電荷に基づく第3信号とを加算した信号を前記第2出力信号として出力させる撮像装置。
【請求項6】
請求項5に記載の撮像装置において、
前記出力部は、前記第1信号を出力する第1出力部と、前記第2信号を出力する第2出力部と、前記第3信号を出力する第3出力部とを有し、
前記制御部は、前記第1制御において前記第1出力部および前記第2出力部を制御して、前記第1信号および前記第2信号を加算させ前記第1出力信号を出力させ、前記第2制御において前記第2出力部および前記第3出力部を制御して、前記第2信号および前記第3信号を加算させ前記第2出力信号を出力させる撮像装置。
【請求項7】
請求項6に記載の撮像装置において、
前記出力部は、前記第1出力部からの前記第1信号、前記第2出力部からの前記第2信号、および前記第3出力部からの第3信号の少なくとも1つが出力される信号線を有し、
前記制御部は、前記第1制御において、前記第1出力部および前記第2出力部を制御して前記第1信号および前記第2信号を前記信号線に出力させ、前記出力部を制御して前記信号線に出力された信号を加算して前記第1出力信号として出力させ、前記第2制御において前記第2出力部および前記第3出力部を制御して、前記第2信号および前記第3信号を前記信号線に出力させ、前記出力部を制御して前記信号線に出力された信号を加算して前記第2出力信号として出力させる、撮像装置。
【請求項8】
請求項5または6に記載の撮像装置において、
前記出力部は、前記第1信号が出力される第1信号線と、前記第2信号が出力される第2信号線と、前記第3信号が出力される第3信号線と、前記第1信号、前記第2信号および前記第3信号の少なくとも2つを加算する加算部とを有し、
前記制御部は、前記第1制御において前記加算部を制御して、前記第1信号線に出力された前記第1信号および前記第2信号線に出力された前記第2信号を加算させて前記第1出力信号として出力させ、前記第2制御において前記加算部を制御して、前記第2信号線に出力された前記第2信号および前記第3信号線に出力された前記第3信号を加算させて前記第2出力信号として出力させる、撮像装置。
【請求項9】
請求項8に記載の撮像装置において、
前記加算部は、前記第1信号線と前記第2信号線とを接続可能な第1接続部と、前記第2信号線と前記第3信号線とを接続可能な第2接続部とを有し、
前記制御部は、前記第1制御において第1接続部を制御して、前記第1信号線と前記第2信号線とを接続させ、前記第2制御において第2接続部を制御して、前記第2信号線と前記第3信号線とを接続させる撮像装置。
【請求項10】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記第1光電変換部で生成された電荷に基づくアナログ信号を第1デジタル信号に、前記第2光電変換部で生成された電荷に基づくアナログ信号を第2デジタル信号に、前記第3光電変換部で生成された電荷に基づくアナログ信号を第3デジタル信号に変換する変換部を備え、
前記制御部は、前記第1制御において前記出力部を制御して、前記第1デジタル信号と前記第2デジタル信号とを加算した信号を前記第1出力信号として出力させ、前記第2制御において前記出力部を制御して、前記第2デジタル信号と前記第3デジタル信号とを加算した信号を前記第2出力信号として出力させる撮像装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記第1光電変換部、前記第2光電変換部、および前記第3光電変換部は、同じマイクロレンズを透過した光を光電変換して電荷を生成する撮像装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記第1光電変換部、前記第2光電変換部、および前記第3光電変換部は、前記第1方向に沿って設けられている撮像装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記マイクロレンズを透過した光を光電変換して電荷を生成する第4光電変換部を備え、
前記出力部は、前記第1光電変換部、前記第2光電変換部、前記第3光電変換部、および前記第4光電変換部の少なくとも1つで生成された電荷に基づく信号を出力し、
前記制御部は、前記第1制御において、前記第1出力信号として、前記第1光電変換部および前記第2光電変換部で生成された電荷に基づく信号を出力し、前記第2出力信号として、前記第3光電変換部および前記第4光電変換部で生成された電荷に基づく信号を出力するよう前記出力部を制御し、前記第2制御において、前記第1出力信号として、前記第1光電変換部で生成された電荷に基づく信号を出力し、前記第2出力信号として、前記第2光電変換部および前記第3光電変換部で生成された電荷に基づく信号を出力するよう前記出力部を制御し、
前記第1光電変換部および前記第4光電変換部は前記第1方向の両端部に配置され、前記第2光電変換部および前記第3光電変換部は前記第1方向の中央部に配置され、
前記第4光電変換部の前記第1方向の幅は、前記第2光電変換部および前記第3光電変換部の前記第1方向の幅よりも大きい、
撮像装置。
【請求項14】
請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記撮像装置は、光学系による像を撮像するとともに、
さらに、前記第1光電変換部および前記第2光電変換部で生成された電荷に基づく前記第1出力信号と前記第3光電変換部で生成された電荷に基づく前記第2出力信号とに基づいて、または前記第1光電変換部で生成された電荷に基づく前記第1出力信号と前記第2光電変換部および前記第3光電変換部で生成された電荷に基づく前記第2出力信号とに基づいて、前記光学系による像が前記撮像装置の撮像面に合焦するよう前記光学系の位置を制御する位置制御部を備える撮像装置。
【請求項15】
請求項14に記載の撮像装置において、
前記制御部は、前記光学系の瞳距離と、前記光学系の絞り値と、前記第1光電変換部、前記第2光電変換部、および前記第3光電変換部の前記撮像装置の撮像面における位置との少なくとも1つに基づいて、前記第1制御または前記第2制御を行う撮像装置。
【請求項16】
請求項13に記載の撮像装置において、
前記撮像装置は、光学系による像を撮像するとともに、
さらに、前記第1光電変換部および前記第2光電変換部で生成された電荷に基づく前記第1出力信号と前記第3光電変換部および前記第4光電変換部で生成された電荷に基づく前記第2出力信号とに基づいて、または前記第1光電変換部で生成された電荷に基づく前記第1出力信号と前記第2光電変換部および前記第3光電変換部で生成された電荷に基づく前記第2出力信号とに基づいて、前記光学系による像が前記撮像装置の撮像面に合焦するよう前記光学系の位置を制御する位置制御部を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像光学系の合焦状態を検出するために、撮像素子上の1つのマイクロレンズを透過した光を複数の光電変換部で分割して受光し、複数の光電変換部が光電変換した信号を読み出す撮像装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-7998号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によると、撮像装置は、マイクロレンズを透過した光を光電変換して電荷を生成する第1光電変換部、第2光電変換部、および第3光電変換部と、前記第1光電変換部、前記第2光電変換部、および前記第3光電変換部の少なくとも1つで生成された電荷に基づく信号を出力する出力部と、第1出力信号として、前記第1光電変換部および前記第2光電変換部で生成された電荷に基づく信号を出力し、第2出力信号として、前記第3光電変換部で生成された電荷に基づく信号を出力するよう前記出力部を制御する第1制御と、第1出力信号として、前記第1光電変換部で生成された電荷に基づく信号を出力し、第2出力信号として、前記第2光電変換部および前記第3光電変換部で生成された電荷に基づく信号を出力するよう前記出力部を制御する第2制御とを行う制御部と、を備え、前記第1光電変換部は前記マイクロレンズの光軸方向と交差する第1方向の端部に配置され、前記第2光電変換部および前記第3光電変換部は前記第1方向の中央部に配置され、前記第1光電変換部の前記第1方向の幅は、前記第2光電変換部および前記第3光電変換部の前記第1方向の幅よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】撮像装置の構成を模式的に示す断面図。
図2】撮像素子を撮像面側から見た平面図。
図3】画素の拡大図。図3(a)は光電変換部を撮像面側から見た平面図。図3(b)は画素の断面図。
図4】撮像素子を構成する回路の一例を示す回路図。
図5図5(a)は、撮像素子の中央近傍に配置された画素の、光電変換部と射出瞳との位置関係を説明する断面図。図5(b)は、図5(a)の場合における撮像光学系の絞り面での、絞りと、光電変換部の実像との位置関係を示す図。
図6図6(a)は、撮像光学系の瞳距離が撮像素子の設計上の瞳距離と概ね等しい場合の、中央近傍から離れて配置された画素の光電変換部と射出瞳との位置関係を説明する断面図。図6(b)は、図6(a)の場合における撮像光学系の絞り面での、絞りと、光電変換部の実像との位置関係を示す図。
図7図7(a)は、撮像光学系の瞳距離が撮像素子の設計上の瞳距離より長い場合の、中央近傍から離れて配置された画素の光電変換部と射出瞳との位置関係を説明する断面図。図7(b)は、図7(a)の場合における撮像光学系の絞り面での、絞りと、光電変換部の実像との位置関係を示す図。
図8図8(a)は、撮像光学系の瞳距離が撮像素子の設計上の瞳距離より短い場合の、中央近傍から離れて配置された画素の光電変換部と射出瞳との位置関係を説明する断面図。図8(b)は、図8(a)の場合における撮像光学系の絞り面での、絞りと、光電変換部の実像との位置関係を示す図。
図9】撮像素子を構成する回路の変形例1を示す回路図。
図10】撮像素子を構成する回路の変形例2を示す回路図。
図11】撮像素子を構成する回路の変形例3を示す回路図。
図12】撮像素子を構成する回路の変形例4を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の撮像装置1の構成を模式的に示す断面図である。撮像装置1は、撮像光学系2、撮像素子6、撮像制御部5、レンズ駆動部4、表示部7、および操作部8を備える。
撮像光学系2は、撮像素子6の撮像面に被写体像を結像させる。撮像光学系2は、前群レンズ2a、中群レンズ2b、および後群レンズ2cを含み、さらに絞り3を有している。前群レンズ2a、中群レンズ2b、および後群レンズ2cは、いずれも複数のレンズから構成されていても良い。
【0007】
一例として、中群レンズ2bは撮像光学系2の焦点調節を行うためのレンズとなっている。中群レンズ2bは、z方向に平行な光軸O方向に移動可能に構成されている。
なお、以降の各図に示したx方向、y方向およびz方向は、それぞれ図1に示したx方向、y方向およびz方向と同一である。
【0008】
レンズ駆動部4は、不図示のアクチュエータを有する。レンズ駆動部4は、このアクチュエータにより、中群レンズ2bを光軸O方向に移動させ、絞り3を開閉する。レンズ駆動部4は、中群レンズ2bの移動用と絞り3を開閉用とに別々のアクチュエータを有していても良い。
操作部8は、ユーザが操作するレリーズボタンや操作スイッチ等を含み、カメラボディ2の外装面に設けられる。ユーザは、操作部8を操作することにより、撮影指示や撮影条件の設定指示等を行う。撮影条件の設定指示には、撮像素子6上のどの部分に形成されている像に対して、合焦状態の検出を行うかについての指示も含まれる。操作部8は、ユーザの操作に応じた操作信号を撮像制御部5に伝達する。
【0009】
撮像素子6は、被写体像を撮像して信号を出力する。撮像制御部5は、撮像素子6等の各部を制御する。撮像制御部5は、撮像素子6により出力された画像信号に画像処理等を施して画像データを生成する。撮像制御部5は、不図示の記録媒体に画像データを記録したり、表示部7に画像データに基づく画像を表示したりする。表示部7は、例えば液晶パネル等の表示部材を有する表示装置である。
【0010】
撮像制御部5は、さらに、公知の位相差検出方式により撮像光学系2の自動焦点調節(AF)に必要な焦点検出処理を行う。具体的には、撮像制御部5は、撮像光学系2による像が撮像素子6の撮像面上に結像するための中群レンズ2bの合焦位置を検出する。撮像制御部5は、撮像素子6から出力される一対の焦点検出信号に基づき、第1及び第2の像の像ズレ量を検出する。撮像制御部5は、検出した像ズレ量に基づいて、中群レンズ2bの現在の位置と合焦位置とのずれ量(デフォーカス量)を算出する。そして、中群レンズ2bがデフォーカス量に応じて駆動されることにより、焦点調節が自動で行われる。
【0011】
なお、焦点調節を行うための中群レンズ2bが、絞り3よりも撮像素子6側に配置されていても良い。
また、撮像光学系2の焦点調節は、撮像光学系2を構成する前群レンズ2a、中群レンズ2b、および後群レンズ2cの全体を、光軸O方向に駆動して行うものであっても良い。
【0012】
(撮像素子)
図2(a)は、撮像素子6を撮像面側から、すなわち図1の+Z側から見た図である。撮像素子6は、半導体基板12と、半導体基板12上に図2のx方向およびy方向に配列される複数の画素10を有している。図2では一部を省略して描いているが、画素10は、x方向およびy方向にそれぞれ例えば1000個以上に渡って多数配列されていても良い。
【0013】
複数の画素10が配列された領域(撮像領域)の、図中の左端には水平制御部HCが設けられ、図中の上端には垂直制御部VCが設けられている。水平制御部HCおよび垂直制御部VCを併せて、または個々に、制御部CUとも呼ぶ。
【0014】
複数の画素10のそれぞれは、異なる3波長の光の中のいずれかに対する分光感度が高い。Rと付記された画素10は赤色光に対する分光感度が高く、Gと付記された画素10は緑色光に対する分光感度が高く、Bと付記された画素10は青色光に対する分光感度が高い。これらのRGBの各画素10は、例えばベイヤー配列で撮像領域内に配列されている。
【0015】
撮像素子6の中の複数の画素のうち、y方向に1列に並ぶ複数の画素10を画素列11と呼ぶ。図2では、1つの画素列11に相当する部分を破線で囲っている。1つの画素列11内の複数の画素10は、それぞれ2つの信号線である信号線VL1および信号線VL2に接続されている。
信号線VL1および信号線VL2の-y方向の端部には、画素10で生成されたアナログの光電変換信号をそれぞれデジタル信号に変換する変換部である、AD変換回路AD1およびAD変換回路AD2が接続されている。
AD変換回路AD1およびAD変換回路AD2により変換されたデジタル信号は、データレーンDLに出力され、出力端子OPから撮像素子6の外部に出力される。
【0016】
図3は、撮像素子6の1つの画素10の断面を示す図である。図3(a)は、画素10に含まれる半導体基板12に形成された光電変換部PD1~PD4を撮像面側から見た平面図であり、図3(b)は画素10の断面図を示す。
半導体基板12は、一例として、フォトダイオード等の光電変換部PD1~PD4が形成されている上層基板12aと、後述する各種の配線やトランジスタの少なくとも一部が形成されている下層基板12bとが積層されたものである。上層基板12aと下層基板12bとは、バンプを介して電気的に接続されていても良い。
【0017】
上層基板12aの上(+z方向)には、撮像する光を透過する誘電体膜13が形成されている。誘電体膜13の上には、上述の青色光、緑色光または赤色光のいずれかを優先的に透過するカラーフィルタ14が形成されている。カラーフィルタ14の上方には、撮像する光を光電変換部PD1~PD4に集光するマイクロレンズ15が形成されている。
上方(+z方向)から画素10に照射される光は、マイクロレンズ15により屈折され、カラーフィルタ14により透過光の波長が概ね選択された後、誘電体膜13を透過して、マイクロレンズ15の屈折作用により光電変換部PD1~PD4に集光される。
なお、本明細書では、複数の画素10のそれぞれに含まれるマイクロレンズ15の頂点(+z側の端部)を結ぶ平面を、撮像素子6の「撮像面」と言う。
【0018】
光電変換部PD1~PD4は、上層基板12a中に形成されたフォトダイオードであっても良く、上層基板12aよりも上方(+z側)に形成された有機膜による光電変換部であっても良い。
なお、光電変換部PD1~PD4の分光感度自体が、複数の画素10のそれぞれで異なる場合には、カラーフィルタ14を省略しても良い。
【0019】
図3(a)および図3(b)に示したように、画素10は一例として、上層基板12a内のx方向の異なる位置に、それぞれy方向に延びた4つの光電変換部PD1~PD4を有している。後述するように、4つの光電変換部PD1~PD4には、撮像光学系2の絞り3により開口内のそれぞれ異なる位置を通過した光が入射する。また、光電変換部PD1~PD4のうちの、x方向の両端に配置された光電変換部PD1、PD4のx方向の幅は、中央に配置された光電変換部PD2、PD3のx方向の幅よりも大きい。従って、光電変換部PD1、PD4の面積は、光電変換部PD2、PD3の面積よりも大きい。
【0020】
図4は、撮像素子6を構成する回路の一例を示す回路図である。図3(a)および図3(b)では図示を省略したが、画素10は、多くのMOSトランジスタ(後述する転送トランジスタTX1~TX4、選択トランジスタST1、ST2、増幅トランジスタSF1、SF2、リセットトランジスタRT1、RT2等)を含んでいる。以下では、各MOSトランジスタのソースまたはドレインのうちの一方を「一端」と呼び、他方を「他端」と呼ぶ。
【0021】
4つの光電変換部PD1~PD4のそれぞれには、転送トランジスタが接続される。第1光電変換部PD1には転送トランジスタTX1の一端が接続されている。第2光電変換部PD2には転送トランジスタTX2aおよびTX2bの各一端が接続されている。第3光電変換部PD3には、転送トランジスタTX3aおよびTX3bの各一端が接続されている。第4光電変換部PD4には転送トランジスタTX4の一端が接続されている。
【0022】
転送トランジスタTX1、転送トランジスタTX2a、および転送トランジスタTX3aの各他端は、第1蓄積部FD1に接続されている。一方、転送トランジスタTX2b、転送トランジスタTX3b、および転送トランジスタTX4の各他端は、第2蓄積部FD2に接続されている。第1蓄積部FD1および第2蓄積部FD2は、一例としてフローティングディフュージョン領域であり、上層基板12aの下層基板12b側の表面の近傍に形成されたpn接合によるキャパシタンスC1、C2をそれぞれ有している。
【0023】
転送トランジスタTX1、転送トランジスタTX2a、および転送トランジスタTX3aのゲートには、それぞれ制御線T11、T21、T31が接続され、制御線T11、T21、T31を経由して、撮像素子6の水平制御部HCからの制御信号が入力される。
これにより、水平制御部HC(制御部CU)は、3つの光電変換部PD1~PD3のそれぞれにおいて光電変換により生成された電荷を、転送トランジスタTX1、TX2a、TX3aにより、第1蓄積部FD1に転送するか否かを制御することができる。
【0024】
転送トランジスタTX2b、転送トランジスタTX3b、および転送トランジスタTX4のゲートには、それぞれ制御線T22、T32、T42が接続され、制御線T22、T32、T42を経由して、撮像素子6の水平制御部HCからの制御信号が入力される。
これにより、水平制御部HC(制御部CU)は、3つの光電変換部PD2~PD4のそれぞれにおいて光電変換により生成された電荷を、転送トランジスタTX2b、TX3b、TX4により、第2蓄積部FD2に転送するか否かを制御することができる。
【0025】
転送トランジスタTX1を第1転送部と、転送トランジスタTX2aおよびTX2bを第2転送部と、転送トランジスタTX3aおよびTX3bを第3転送部と、転送トランジスタTX4を第4転送部と、それぞれ解釈することができる。
また、第1蓄積部FD1と第2蓄積部FD2とを、併せてまたは個別に、蓄積部と解釈することができる。
【0026】
第1蓄積部FD1は、増幅トランジスタSF1のゲートに接続されている。増幅トランジスタSF1の一端には電源電圧VDDが供給され、増幅トランジスタSF1の他端は、選択トランジスタST1の一端に接続されている。選択トランジスタST1のゲートには、選択線HLが接続され、選択線HLを経由して撮像素子6の水平制御部HCからの制御信号が入力される。選択トランジスタST1の他端は、信号線VL1に接続されている。
【0027】
第2蓄積部FD2は、増幅トランジスタSF2のゲートに接続されている。増幅トランジスタSF2の一端には電源電圧VDDが供給され、増幅トランジスタSF2の他端は、選択トランジスタST2の一端に接続されている。選択トランジスタST2のゲートには、選択線HLが接続され、選択線HLを経由して撮像素子6の水平制御部HCからの制御信号が入力される。選択トランジスタST2の他端は、信号線VL2に接続されている。
【0028】
これにより、水平制御部HC(制御部CU)は、4つの光電変換部PD1~PD4において光電変換により生成され第1蓄積部FD1および第2蓄積部FD2に蓄積されている電荷に基づく信号の、信号線VL1およびVL2への出力を制御することができる。
【0029】
第1蓄積部FD1には、リセットトランジスタRT1の一端が接続され、リセットトランジスタRT1の他端には電源電圧VDDが供給されている。リセットトランジスタRT1のゲートにはリセット線RLが接続され、リセット線RLを経由して適当なタイミングで撮像素子6の水平制御部HCからの制御信号が入力され、第1蓄積部FD1内の電圧が、電源電圧VDDにリセットされる。
【0030】
第2蓄積部FD2には、リセットトランジスタRT2の一端が接続され、リセットトランジスタRT2の他端には電源電圧VDDが供給されている。リセットトランジスタRT2のゲートにはリセット線RLが接続され、リセット線RLを経由して適当なタイミングで撮像素子6の水平制御部HCからの制御信号が入力され、第1蓄積部FD2内の電圧が、電源電圧VDDにリセットされる。
【0031】
信号線VL1および信号線VL2には、信号線VL1および信号線VL2を通じて画素10に電流を供給する電流源CSがそれぞれ接続されている。また上述のとおり、信号線VL1および信号線VL2には、それぞれAD変換回路AD1およびAD変換回路AD2が接続されている。AD変換回路AD1およびAD変換回路AD2には、垂直制御部VC(制御部CU)からの制御線S01およびS02がそれぞれ接続されている。
【0032】
AD変換回路AD1およびAD変換回路AD2は、制御線S01およびS02を介して制御部CUから送られる制御信号に基づいてAD変換を行い、デジタルに変換された信号を、それぞれデータレーンDL1およびデータレーンDL2に出力する。
本実施形態の撮像素子においても、いわゆるデジタル相関二重サンプリングにより、信号を読み出ることができる。デジタル相関二重サンプリングにおける、転送トランジスタTX1~TX4、リセットトランジスタRT1、RT2、AD変換回路AD1、AD2等の動作のタイミングは、通常のCMOSイメージセンサにおけるタイミングと同様であるので、説明は省略する。
【0033】
(合焦状態検出)
以下、図5から図8を参照して、第1実施形態の撮像装置1における合焦状態の検出について説明する。
図5(a)は、撮像素子6の中央近傍に配置された画素10の光電変換部PD1~PD4と、射出瞳3aとの位置関係を説明する断面図である。射出瞳3aとは、撮像素子6側から撮像光学系2の後群レンズ2c(絞り3よりも撮像素子6側に配置されている全てのレンズ)を介して見た、絞り3の虚像を言う。射出瞳3aと絞り3とは、共役である。
【0034】
図5(b)は、撮像光学系2において絞り3が配置されているxy平面(以下、「絞り面」と呼ぶ)における、絞り3と、光電変換部PD1~PD4のそれぞれの実像PDI1~PDI4との位置関係を示す図である。図5(b)では、絞り3の開口部の周縁部を、絞り3として示している。
半導体基板12上の光電変換部PD1~PD4は、後群レンズ2cおよびマイクロレンズ15を介して、絞り3および射出瞳3aと概ね共役な位置に配置されている。従って、絞り面には光電変換部PD1~PD4のそれぞれの実像PDI1~PDI4が形成される。
【0035】
実際の撮像光は、被写体から撮像光学系2を通って画素10に至るので、図5(b)の実像PDI1~PDI4のそれぞれの内部を透過した光が、画素10内の光電変換部PD1~PD4にそれぞれ結像されることになる。
従って、画素10内の-x側に配置されている光電変換部PD1および光電変換部PD2には、それぞれ撮像光学系2の絞り3の開口内の+x側の実像PDI1および実像PDI2を透過した光が入射する。また、画素10内の+x側に配置されている光電変換部PD3および光電変換部PD4には、撮像光学系2の絞り3の開口内の-x側の実像PDI3および実像PDI4を透過した光が入射する。
【0036】
図2に示した撮像素子6内の画素10は、いずれも図3(a)および図3(b)に示した、x方向に分割された複数の光電変換部PD1~PD4を有している。従って、撮像装置1は、図2のx方向に並ぶ複数の画素10に含まれる光電変換部PD1~PD4のそれぞれが生成した電荷に基づく出力信号から、公知の位相差検出法を使用して、撮像光学系2が撮像素子6上に形成する像の合焦状態を検出することができる。
【0037】
(撮像素子上の中央近傍の画素10を用いる場合)
図5(a)および図5(b)に示した例は、上述のとおり、撮像素子6の中央近傍に配置された画素10を示している。すなわち、画素10は、撮像光学系2の光軸の近傍に配置されている。従って、画素10に入射する撮像光TLのうち、絞り3の中央部を通過する主光線PR1は、撮像素子6の撮像面に垂直に入射する。この結果、主光線PR1は、光電変換部PD1~PD4のx方向およびy方向の中心に入射する。すなわち、主光線PR1は、x方向については、光電変換部PD2と光電変換部PD3の間の位置に入射する。
【0038】
すなわち、撮像光学系2の絞り3の開口内の、+x側を透過した光は光電変換部PD1と光電変換部PD2とに入射し、-x側を透過した光は光電変換部PD3と光電変換部PD4とに入射する。
従って、光電変換部PD1と光電変換部PD2が生成した電荷に基づく出力信号と、光電変換部PD3と光電変換部PD4が生成した電荷に基づく出力信号とから、公知の位相差検出法を使用して、撮像素子6上の像の合焦状態を、正確に検出することができる。
【0039】
従って、撮像素子6の中央近傍に配置された画素10を用いて合焦状態を検出する場合には、制御部CUは、撮像素子6の中央近傍の画素10に対し、光電変換部PD1と光電変換部PD2が生成した電荷に基づく出力信号を第1出力信号として出力させる。そして、光電変換部PD3と光電変換部PD4が生成した電荷に基づく出力信号を第2出力信号として出力させる。
【0040】
具体的には、制御部CUは、光電変換部PD1~PD4で生成された電荷を転送する際に、図4に示した画素10内の回路の制御線T11、制御線T21、制御線T32、および制御線T42には、ハイレベルの制御信号を送る。一方、制御線T31、および制御線T22には、ローレベルの制御信号を送る。
これにより、光電変換部PD1と光電変換部PD2が生成した電荷は、第1蓄積部FD1に転送され、ここで加算され、光電変換部PD3と光電変換部PD4が生成した電荷は、第2蓄積部FD2に転送され、ここで加算される。
【0041】
上述のとおり、第1蓄積部FD1に蓄積された電荷は、増幅トランジスタSF1により増幅された信号として信号線VL1に出力され、AD変換回路AD1でAD変換され、出力端子OPから第1出力信号として出力される。一方、第2蓄積部FD2に蓄積された電荷は、増幅トランジスタSF2により増幅された信号として信号線VL2に出力され、AD変換回路AD2でAD変換され、出力端子OPから第2出力信号として出力される。
撮像制御部5は、撮像素子6の出力端子OPから出力されるx方向に並ぶ複数の画素10からの第1出力信号および第2出力信号に基づいて、それらの出力信号間の位相差(像ズレ量)を検出し、合焦状態を検出する。
【0042】
(撮像素子上のx方向の中央以外の画素10を用いる場合)
撮像素子6の中央近傍から+x方向に離れて配置されている画素10には、撮像光TL全体が、撮像素子6の撮像面に対して傾いて入射する。撮像光TLの主光線(PR1~PR4)の入射角(撮像素子6の撮像面の法線PLに対する傾き角)は、光軸Oから画素10までの距離に概ね比例し、撮像光学系2の像面から射出瞳3aまでの距離(以下、「瞳距離」と呼ぶ。)に概ね反比例する。
【0043】
従って、撮像素子6の中央近傍から+x方向に離れて配置されている画素10においては、傾いて入射する主光線PR2が、光電変換部PD1~PD4の中央に入射するように、マイクロレンズ15のx方向の位置を所定量だけシフトして配置する。
ただし、撮像光学系2がズームレンズの場合には、撮像光学系2の焦点距離を変動させると、瞳距離も変動する場合が多い。また、レンズ交換式の撮像装置の場合には、撮像光学系2の交換により、瞳距離も変動する場合が多い。
従って、瞳距離の変動に伴い、主光線PR2を、常に光電変換部PD1~PD4の中央に入射させることができるわけではない。
【0044】
(撮像光学系の瞳距離が、設計上の瞳距離と概ね等しい場合)
図6(a)は、撮像光学系2の瞳距離が撮像素子6の設計上の瞳距離と概ね等しい場合における、中央近傍から+x方向に離れて配置された画素10の光電変換部PD1~PD4と、射出瞳3aとの位置関係を説明する断面図である。図6(b)は、図5(b)と同様の図であって、絞り面における、絞り3と、図6(a)に示した画素10の光電変換部PD1~PD4のそれぞれの実像PDI1~PDI4との位置関係を示す図である。
【0045】
図6(a)に示したように、撮像素子6において中央近傍から+x方向に離れて配置されている画素10には、撮像光TL全体が、撮像素子6の撮像面に対して傾いて入射する。従って、主光線PR2も、撮像素子6の撮像面の法線PLに対して、平行ではなく、角度を持って入射する。
そこで、図6(a)の例においては、マイクロレンズ15を、光電変換部PD1~PD4に対して-x方向に所定のシフト量だけシフトした位置に配置することにより、主光線PR2を光電変換部PD1~PD4の中心に入射させている。
【0046】
このシフト量は、撮像素子6の中心から画素10までの距離と、撮像光学系2の標準的な瞳距離とに応じて決定されている。この標準的な瞳距離を、以下では「設計上の瞳距離」とも呼ぶ。
すなわち、図6(a)および図6(b)は、撮像レンズ2の瞳距離が、設計上の瞳距離と概ね等しい場合を示している。
【0047】
図6(b)に示したように、撮像レンズ2の瞳距離が設計上の瞳距離に等しい場合には、撮像光学系2の絞り3の開口内の、+x側を透過した光は光電変換部PD1と光電変換部PD2とに入射し、-x側を透過した光は光電変換部PD3と光電変換部PD4とに入射する。
従って、合焦状態の検出に、撮像素子6上のx方向の中央以外の画素10を用いる場合であっても、上述の撮像素子6上の中央付近の画素10を用いる場合と同様の検出を行うことができる。
【0048】
すなわち、制御部CUは、光電変換部PD1と光電変換部PD2が生成した電荷を第1蓄積部FD1に転送して加算し、これに基づいて第1出力信号を出力させる。また、制御部CUは、光電変換部PD3と光電変換部PD4が生成した電荷を第2蓄積部FD2に転送して加算し、これに基づいて第2出力信号を出力させる。
撮像制御部5は、第1出力信号と第2出力信号とに基づいて、合焦状態を検出する。
【0049】
(撮像光学系の瞳距離が、設計上の瞳距離より長い場合)
図7(a)は、撮像光学系2の瞳距離が撮像素子6の設計上の瞳距離より長い場合における、中央近傍から+x方向に離れて配置された画素10の光電変換部PD1~PD4と、射出瞳3aとの位置関係を説明する断面図である。図7(b)は、図5(b)と同様の図であって、絞り面における、絞り3と、図7(a)に示した画素10の光電変換部PD1~PD4のそれぞれの実像PDI1~PDI4との位置関係を示す図である。
【0050】
撮像光学系2の瞳距離が長くなると、主光線PR3の撮像面への入射角が小さくなる。その結果、図7(a)に示したとおり、設計上の瞳距離に合わせて-x方向に位置シフトしているマイクロレンズ15を備える画素10では、主光線PR3は、光電変換部PD1~PD4の中心から-x側にずれた位置に入射する。
【0051】
従って、図7(b)に示したとおり、光電変換部PD1には撮像光学系2の絞り3の+x側を透過した光が入射するものの、光電変換部PD2および光電変換部PD3には撮像光学系2の絞り3の-x側を透過した光が入射することとなる。また、光電変換部PD4には、十分な光が入射しないこととなる。
この場合、上述のように、光電変換部PD1と光電変換部PD2が生成した電荷に基づく第1出力信号と、光電変換部PD3と光電変換部PD4が生成した電荷に基づく第2出力信号とを用いても、十分な精度で合焦状態を検出することはできない。
【0052】
そこで、第1実施形態の撮像装置1では、この場合には、光電変換部PD1~光電変換部PD4の各部が生成する電荷に基づいて第1出力信号および第2出力信号を生成する制御方法を変更する。
すなわち、第1出力信号の基となる第1蓄積部FD1に転送する電荷を、撮像光学系2の絞り3の+x側を透過した光が入射する光電変換部PD1で発生した電荷に変更する。そして、第2出力信号の基となる第2蓄積部FD2に転送する電荷を、撮像光学系2の絞り3の-x側を透過した光が入射する光電変換部PD2および光電変換部PD3で発生した電荷に変更する。
【0053】
具体的には、制御部CUは、光電変換部PD1~PD4で生成された電荷を転送する際に、図4に示した画素10内の回路の制御線T11、制御線T22、および制御線T32には、ハイレベルの制御信号を送る。一方、制御線T21、制御線T31、および制御線T42には、ローレベルの制御信号を送る。
これにより、光電変換部PD1が生成した電荷が第1蓄積部FD1に転送され、光電変換部PD2と光電変換部PD3が生成した電荷が第2蓄積部FD2に転送され、加算される。
【0054】
(撮像光学系の瞳距離が、設計上の瞳距離より短い場合)
図8(a)は、撮像光学系2の瞳距離が撮像素子6の設計上の瞳距離より短い場合における、中央近傍から+x方向に離れて配置された画素10の光電変換部PD1~PD4と、射出瞳3aとの位置関係を説明する断面図である。図8(b)は、図5(b)と同様の図であって、絞り面における、絞り3と、図8(a)に示した画素10の光電変換部PD1~PD4のそれぞれの実像PDI1~PDI4との位置関係を示す図である。
【0055】
撮像光学系2の瞳距離が短くなると、主光線PR3の撮像面への入射角が大きくなる。その結果、図8(a)に示したとおり、設計上の瞳距離に合わせて-x方向に位置シフトしているマイクロレンズ15を備える画素10では、主光線PR3は、光電変換部PD1~PD4の中心から+x側にずれた位置に入射する。
【0056】
従って、図8(b)に示したとおり、光電変換部PD4には撮像光学系2の絞り3の-x側を透過した光が入射するものの、光電変換部PD2および光電変換部PD3には撮像光学系2の絞り3の+x側を透過した光が入射することとなる。また、光電変換部PD1には、十分な光が入射しないこととなる。
この場合にも、上述のように、光電変換部PD1と光電変換部PD2が生成した電荷に基づく第1出力信号と、光電変換部PD3と光電変換部PD4が生成した電荷に基づく第2出力信号とを用いても、十分な精度で合焦状態を検出することはできない。
【0057】
そこで、第1実施形態の撮像装置1では、この場合には、第1出力信号の基となる第1蓄積部FD1に転送する電荷を、撮像光学系2の絞り3の+x側を透過した光が入射する光電変換部PD2および光電変換部PD2で発生した電荷に変更する。そして、第2出力信号の基となる第2蓄積部FD2に転送する電荷を、撮像光学系2の絞り3の-x側を透過した光が入射する光電変換部PD4発生した電荷に変更する。
【0058】
具体的には、制御部CUは、光電変換部PD1~PD4で生成された電荷を転送する際に、図4に示した画素10内の回路の制御線T21、制御線T31、および制御線T42には、ハイレベルの制御信号を送る。一方、制御線T11、制御線T22、および制御線T32には、ローレベルの制御信号を送る。
これにより、光電変換部PD2と光電変換部PD3が生成した電荷が第1蓄積部FD1に転送され加算され、光電変換部PD4が生成した電荷が生成した電荷が第2蓄積部FD2に転送される。
【0059】
第1実施形態の撮像装置1では、撮像光学系の瞳距離が設計上の瞳距離よりも長い場合、または短い場合に、上述のように光電変換部PD1~光電変換部PD4の各部が生成する電荷に基づいて第1出力信号および第2出力信号を生成する制御方法を変更する。
従って、撮像光学系の瞳距離が設計上の瞳距離と異なる場合であっても、第1出力信号および第2出力信号を、それぞれ撮像光学系2の絞りの所定方向の一方の側と、他方の側とを通った光により生成された電荷に基づいて生成することができる。これにより、高精度に合焦状態を検出することができる。
【0060】
なお、上述の第1出力信号および第2出力信号を生成する制御方法の変更は、合焦状態を検出すべき画素10の撮像素子6の中心からの距離、設計上の瞳距離、および撮像光学系2の瞳距離に基づいて行う。また、合焦状態を検出する際の撮像光学系2の絞り3の絞り値にも基づいて、変更を行っても良い。
【0061】
撮像制御部5は、操作部8等から合焦状態を検出すべき画素10の位置情報の入力を受けるとともに、撮像光学系2のズーム状態や絞り値を検出し、予め記憶されているデータテーブル等を用いてズーム状態や絞り値に応じた瞳距離を算出する。撮像制御部5は、これらの情報に基づいて、撮像素子6内の合焦状態を検出すべき画素10を選定するとともに、第1出力信号および第2出力信号を生成する制御方法を決定する。
なお、撮像光学系2の瞳距離は、撮像光学系2の像高、すなわち合焦状態を検出すべき画素10の撮像素子6の中心からの距離に依っても変化する。従って、瞳距離を、画素10の撮像素子6の中心からの距離に応じて変化する関数として扱うこともできる。
【0062】
以上の第1実施形態においては、転送トランジスタTX1~TX4、第1蓄積部FD1、第2蓄積部FD2、増幅トランジスタSF1、SF2、選択トランジスタST1、ST2、信号線VL1、VL2、AD変換回路AD1、AD2、およびデータレーンDL1、DL2を、出力部と解釈することができる。
【0063】
(撮像素子を構成する回路の変形例1)
図9は、撮像素子6を構成する回路の変形例1の回路図を示す図であり、上述の第1実施形態の撮像装置1の撮像素子6の構成の変形例を示している。変形例1の撮像素子6の全体構成は、上述の第1実施形態と概ね同一である。従って、以下では、上述の第1実施形態との相違点について説明する。
変形例1においては、1つの画素10内に、概ね従来のCMOS撮像素子の4画素分の回路が設けられた構造となっている。
【0064】
すなわち、変形例1の画素10には、上述の第1実施形態の撮像素子6と同様に、x方向の異なる位置に4つの光電変換部PD1~PD4が形成されている。そして、4つの光電変換部PD1~PD4のそれぞれに対応して、キャパシタンスC3を有する電荷蓄積部FD3、増幅トランジスタSF3、およびリセットトランジスタRT3を含む読み出し部RU1~RU4が、それぞれ設けられている。
【0065】
読み出し部RU1~RU4内の各リセットトランジスタRT3の一端と、各増幅トランジスタSF3の一端には、電源電圧VDDが供給されている。読み出し部RU1~RU4内の各転送トランジスタTX3のゲートは1本の制御線S10により制御される。読み出し部RU1~RU4内の各リセットトランジスタRT3のゲートは1本のリセット線RLにより制御される。
各読み出し部RU1~RU4内の増幅トランジスタSF3の他端のそれぞれからは、各読み出し部RU1~RU4に接続されている光電変換部PD1~PD4により生成された電荷に基づく信号が、それぞれ信号線VL01~VL04に出力される。
【0066】
変形例1の画素10は、複数の選択トランジスタST11~ST42を有している。
選択トランジスタST11は、その一端が信号線VL01に接続され、その他端が信号線VL11に接続され、そのゲートには制御線S11が接続されている。
選択トランジスタST21は、その一端が信号線VL02に接続され、その他端が信号線VL11に接続され、そのゲートには制御線S21が接続されている。
【0067】
選択トランジスタST31は、その一端が信号線VL03に接続され、その他端が信号線VL11に接続され、そのゲートには制御線S31が接続されている。
選択トランジスタST22は、その一端が信号線VL02に接続され、その他端が信号線VL12に接続され、そのゲートには制御線S22が接続されている。
【0068】
選択トランジスタST32は、その一端が信号線VL03に接続され、その他端が信号線VL12に接続され、そのゲートには制御線S32が接続されている。
選択トランジスタST42は、その一端が信号線VL04に接続され、その他端が信号線VL12に接続され、そのゲートには制御線S42が接続されている。
【0069】
選択トランジスタST11および選択トランジスタST21は、信号線VL01と信号線VL02とを電気的に接続する接続部と解釈することもできる。同様に、選択トランジスタST22および選択トランジスタST32は、信号線VL02と信号線VL03とを電気的に接続する接続部と解釈することもできる。さらに、選択トランジスタST32および選択トランジスタST42は、信号線VL03と信号線VL04とを電気的に接続する接続部と解釈することもできる。
【0070】
信号線VL11の端部にはAD変換回路AD11および電流源CSが接続され、信号線VL12の端部にはAD変換回路AD12および電流源CSが接続されている。AD変換回路AD11およびAD変換回路AD12には、垂直制御部VC(制御部CU)からの制御線S00が接続されている。
【0071】
AD変換回路AD11およびAD変換回路AD12は、制御線S00を介して制御部CUから送られる制御信号に基づいてAD変換を行い、デジタルに変換された信号を、それぞれデータレーンDL11およびデータレーンDL12に出力する。データレーンDL11に出力された第1出力信号、データレーンDL12に出力された第2出力信号は、出力端子OPから撮像素子6の外部に出力される。
本実施形態の撮像素子においても、いわゆるデジタル相関二重サンプリングにより信号を読み出ることができる。その動作は、通常のCMOSイメージセンサにおける動作と同様であるので、説明は省略する。
【0072】
変形例1の撮像素子6においては、水平制御部HC(制御部CU)から各制御線S11~S42に送る制御信号のレベルを変更することにより、各読み出し部RU1~RU4から信号線VL11および信号線VL12への出力状態を変更することができる。
例えば、制御部CUは、制御線S11、制御線S21、制御線S32、および制御線S42にハイレベルの制御信号を送り、制御線S22、および制御線S31にローレベルの制御信号を送る。この場合、読み出し部RU1と読み出し部RU2の出力信号を加算して信号線VL11に出力させ、読み出し部RU3と読み出し部RU4の出力信号を加算して信号線VL12に出力させることができる。
【0073】
あるいは、制御部CUは、制御線S11、制御線S22、および制御線S32にハイレベルの制御信号を送り、制御線S21、制御線S31、および制御線S42にローレベルの制御信号を送る。この場合、読み出し部RU1の出力信号を信号線VL11に出力させ、読み出し部RU2と読み出し部RU3の出力信号を加算して信号線VL12に出力させることができる。
【0074】
あるいは、制御部CUは、制御線S21、制御線S31、および制御線S42にハイレベルの制御信号を送り、制御線S11、制御線S22、および制御線S32にローレベルの制御信号を送る。この場合、読み出し部RU2と読み出し部RU3の出力信号を加算して信号線VL11に出力させ、読み出し部RU4の出力信号を信号線VL12に出力させることができる。
【0075】
以上の変形例1においては、読み出し部RU1~RU4、選択トランジスタST11~ST42、信号線VL11、VL12、AD変換回路AD11、AD12、およびデータレーンDL11、DL12を、出力部と解釈することができる。
また、選択トランジスタST11~ST42を、加算部と解釈することができる。
【0076】
(撮像素子を構成する回路の変形例2)
【0077】
図10は、撮像素子6を構成する回路の変形例2の回路図を示す図であり、上述の第1実施形態の撮像装置1の撮像素子6の構成の変形例を示している。変形例2の回路の構成の多くは、上述の変形例1の回路の構成と同一であるので、同一の構成には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0078】
変形例2の画素10は、変形例2の画素10に含まれている読み出し部RU1~RU4のそれぞれに選択トランジスタST3が加わった、読み出し部RU5~RU8を有している。
各読み出し部RU5~RU8の転送トランジスタTX3の一端には、それぞれ光電変換部PD1~PD4が接続されている。
【0079】
読み出し部RU5~RU8内の選択トランジスタST3の一端は増幅トランジスタSF3の他端に接続されて、選択トランジスタST3の他端はそれぞれ信号線VL21~VL24に接続されている。
各読み出し部RU5~RU8内の選択トランジスタST3の他端から出力される信号は、各読み出し部RU5~RU8に接続されている光電変換部PD1~PD4により生成された電荷に基づく信号である。
【0080】
変形例2の撮像素子6では、各画素10内ではなく、信号線VL21~VL24の端部の近傍、すなわちAD変換回路AD11、AD12の近傍に、選択トランジスタST51~ST82が設けられている。
選択トランジスタST51は、その一端が信号線VL21に接続され、その他端が信号線VL31に接続され、そのゲートには制御線S51が接続されている。
【0081】
選択トランジスタST61は、その一端が信号線VL22に接続され、その他端が信号線VL311に接続され、そのゲートには制御線S61が接続されている。
選択トランジスタST71は、その一端が信号線VL23に接続され、その他端が信号線VL31に接続され、そのゲートには制御線S71が接続されている。
選択トランジスタST62は、その一端が信号線VL22に接続され、その他端が信号線VL32に接続され、そのゲートには制御線S62が接続されている。
【0082】
選択トランジスタST72は、その一端が信号線VL23に接続され、その他端が信号線VL32に接続され、そのゲートには制御線S72が接続されている。
選択トランジスタST82は、その一端が信号線VL24に接続され、その他端が信号線VL32に接続され、そのゲートには制御線S82が接続されている。
信号線VL31の端部にはAD変換回路AD11および電流源CSが接続され、信号線VL32の端部にはAD変換回路AD12および電流源CSが接続されている。
【0083】
変形例2の撮像素子6においては、水平制御部HC(制御部CU)から各制御線S51~S82に送る制御信号のレベルを変更することにより、各読み出し部RU5~RU8から信号線VL31および信号線VL32への出力状態を変更することができる。
例えば、制御部CUは、制御線S51、制御線S61、制御線S72、および制御線S82にハイレベルの制御信号を送り、制御線S62、および制御線S71にローレベルの制御信号を送る。この場合、読み出し部RU5と読み出し部RU6の出力信号を加算して信号線VL31に出力させ、読み出し部RU7と読み出し部RU8の出力信号を加算して信号線VL32に出力させることができる。
【0084】
あるいは、制御部CUは、制御線S51、制御線S62、および制御線S72にハイレベルの制御信号を送り、制御線S61、制御線S71、および制御線S82にローレベルの制御信号を送る。この場合、読み出し部RU1の出力信号を信号線VL31に出力させ、読み出し部RU6と読み出し部RU7の出力信号を加算して信号線VL32に出力させることができる。
【0085】
あるいは、制御部CUは、制御線S61、制御線S71、および制御線S82にハイレベルの制御信号を送り、制御線S51、制御線S62、および制御線S72にローレベルの制御信号を送る。この場合、読み出し部RU2と読み出し部RU3の出力信号を加算して信号線VL31に出力させ、読み出し部RU4の出力信号を信号線VL32に出力させることができる。
【0086】
以上の変形例2においては、読み出し部RU5~RU8、選択トランジスタST51~ST82、信号線VL21~VL32、AD変換回路AD11、AD12、およびデータレーンDL11、DL12を、出力部と解釈することができる。
また、選択トランジスタST51~ST82を、加算部と解釈することができる。
【0087】
(画素を構成する回路の変形例3)
上述の第1実施形態および各変形例においては、各画素10内の光電変換部PD1~PD4で生成された電荷、または電荷に基づく信号は、アナログ信号としてその一部が加算(合成)されるものとした。しかし、光電変換部PD1~PD4で生成された電荷に基づくアナログ信号を、デジタル信号に変換したのちに、加算する構成とすることもできる。
【0088】
図11は、撮像素子6を構成する回路の変形例3の回路図を示す図であり、上述の第1実施形態の撮像装置1の撮像素子6の構成の変形例を示している。変形例3の回路の構成の多くは、上述の変形例2の回路の構成と同一であるので、同一の構成には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0089】
変形例3の各画素10は、上述の第2実施形態の撮像素子6と同様に、4つの光電変換部PD1~PD4と、そのそれぞれに接続されている4つの読み出し部RU5~RU8を含んでいる。
読み出し部RU5~RU8のそれぞれに含まれる選択トランジスタST3の各他端は、それぞれ信号線VL41~VL44の中の1つに接続されている。
【0090】
各信号線VL41~VL44の端部には、それぞれAD変換回路AD21~AD24および電流源CSが接続されている。AD変換回路AD21~AD24は、信号線VL41~VL44に出力されている各読み出し部RU5~RU8から出力されたアナログ信号を、水平制御部HC(制御部CU)から制御線S00を介して伝達される指令に従って、デジタル信号にAD変換する。
【0091】
AD変換回路AD21~AD24は、デジタル信号に変換された出力信号を、それぞれデータレーンDL21~DL24に出力する。データレーンに出力された出力信号(デジタル信号)は、出力端子OPから撮像素子6の外部に出力される。
図11において破線で囲った領域DO1については、後述する。
【0092】
AD変換回路AD21~AD24から出力されたデジタル信号に対し、撮像制御部5内で、適宜、加算等の演算が行われる。
撮像制御部5は、AD変換回路AD21~AD24から出力されたデジタル信号の総和を算出し、これを画像信号とする。
【0093】
撮像制御部5はまた、AD変換回路AD21~AD24から出力されたデジタル信号に基づいて、位相差検出方式による合焦状態の検出を行う。
合焦状態の検出において、AD変換回路AD21とAD変換回路AD22から出力されたデジタル信号の和(第1出力信号)と、AD変換回路AD23とAD変換回路AD24から出力されたデジタル信号の和(第2出力信号)との、2つの信号に基づく検出を行なっても良い。
【0094】
あるいは、合焦状態の検出において、AD変換回路AD21から出力されたデジタル信号(第1出力信号)と、AD変換回路AD22とAD変換回路AD23から出力されたデジタル信号の和(第2出力信号)との、2つの信号に基づく検出を行なっても良い。
あるいは、合焦状態の検出において、AD変換回路AD21とAD変換回路AD22から出力されたデジタル信号の和(第1出力信号)と、AD変換回路AD23から出力されたデジタル信号(第2出力信号)との、2つの信号に基づく検出を行なっても良い。
【0095】
AD変換回路AD21~AD24がそれぞれ出力するデジタル信号は、それぞれ光電変換部PD1~PD4が生成した電荷に基づく信号である。従って、合焦状態の検出において、AD変換回路AD21~AD24のいずれが出力した信号を、単独で、または加算して使用するかの制御方法の変更は、上述のように、撮像装置1の使用状態に応じて決定する。具体的には、制御方法は、合焦状態を検出すべき画素10の撮像素子6の中心からの距離、設計上の瞳距離、撮像光学系2の瞳距離、および撮像光学系2の絞り値に基づいて、決定する。
【0096】
以上の変形例3においては、読み出し部RU5~RU8、信号線VL41~VL44、AD変換回路AD21~AD24、データレーンDL21~DL24、および撮像制御部5を、出力部と解釈することができる。
【0097】
(画素を構成する回路の変形例4)
上述の変形例3においては、撮像素子6は、AD変換回路AD21~AD24がそれぞれ出力するデジタル信号を加算する加算回路を有しない構成とした。しかし、AD変換回路AD21~AD24がそれぞれ出力するデジタル信号を加算する加算回路を撮像素子6内に設けても良い。
【0098】
図12は、変形例4の撮像素子6の一部を示す図であり、図11中に破線で示した領域DO1の変形例である領域DO2を示す図である。
領域DO2は、領域DO1と同様に、4つのAD変換回路AD21~AD24と、データレーンDLの一部を含む。領域DO2は、さらに、AD変換回路AD21~AD24からのデジタル信号出力に対し演算を行う第1演算部AC1および第2演算部AC2を含んでいる。
【0099】
第1演算部AC1は、制御部CUから制御線S01を介して送られる制御信号に従って、AD変換回路AD21~AD23から出力されるデジタル信号を演算処理し、演算結果である第1出力信号をデータレーンDL1に出力する。第2演算部AC2は、制御部CUから制御線S02を介して送られる制御信号に従って、AD変換回路AD22~AD24から出力されるデジタル信号を演算処理し、演算結果である第2出力信号をデータレーンDL2に出力する。
【0100】
第1演算部AC1は、一例として、AD変換回路AD21のデジタル信号を出力する、AD変換回路AD21およびAD変換回路AD22のデジタル信号を加算して出力する、またはAD変換回路AD22およびAD変換回路AD23のデジタル信号を加算して出力する、のいずれかを選択的に実行する。
第2演算部AC2は、一例として、AD変換回路AD22およびAD変換回路AD23のデジタル信号を加算して出力する、AD変換回路AD23およびAD変換回路AD24のデジタル信号を加算して出力する、またはAD変換回路AD24のデジタル信号を出力する、のいずれかを選択的に実行する。
【0101】
以上の変形例4においては、読み出し部RU5~RU8、信号線VL41~VL44、AD変換回路AD21~AD24、第1演算部AC1、第2演算部AC2、およびデータレーンDL1、DL2を、出力部と解釈することができる。
【0102】
(第1実施形態および各変形例のさらなる変形例)
上述の第1実施形態および各変形例においては、画素10内に4個の光電変換部PD1~PD4が配置されるものとしたが、この数は4個に限らず、3個であっても良く、5個以上であっても良い。光電変換部PD1~PD4の数を変更する場合には、それに合わせて各種トランジスタや制御線の数を変更すべきことは当業者には容易に理解される。
【0103】
上述の第1実施形態および各変形例においては、特に撮像素子上の中央部の画素10を用いる場合に、4個の光電変換部PD1~PD4が生成した電荷に基づく信号を全て使用して、合焦状態を検出するものとしたが、これに限られるわけではない。
例えば、絞り3がF値の小さい、すなわち大口径比の撮像光学系2を使用する場合には、撮像光学系2のF値を実効的に大きくして(実効的に小口径比として)合焦状態を検出した方が、大デフォーカス状態においても、合焦状態を正確に検出できる場合がある。
【0104】
これに対応するために、上述の第1実施形態および各変形例において、第1出力信号を光電変換部PD2が生成した電荷に基づく信号とし、第2出力信号を光電変換部PD3が生成した電荷に基づく信号としても良い。第1実施形態および各変形例において、制御部CUは、制御線T11~制御線T42、制御線S11~制御線T82、または信号S01、S02を介して画素10に送る制御信号を制御することにより、これを行うことができる。
【0105】
この場合において、撮像光学系2のF値を実効的に十分大きくするために(実効的に十分小口径比とするために)、4個の光電変換部PD1~PD4のうち両端以外に配置される光電変換部PD2およびPD3のx方向の幅を、両端に配置される光電変換部PD1およびPD4のx方向の幅よりも小さくしている。
【0106】
上述の第1実施形態および各変形例においては、各画素10内の複数の光電変換部PD1~PD4は、全てx方向に並んで配置されるものとした。しかし、複数の光電変換部PD1~PD4は、y方向に並んで配置されるものであっても良い。あるいは、撮像素子6内の一部の画素10においては、複数の光電変換部PD1~PD4がx方向に並んで配置され、他の画素10においては、複数の光電変換部PD1~PD4がy方向に並んで配置されていても良い。
なお、複数の光電変換部PD1~PD4がy方向に並んで配置された画素10からの出力信号を用いて、位相差検出法による合焦検出を行う場合には、y方向に並ぶ複数の画素10からの出力信号を用いて行う。
【0107】
上述の第1実施形態および各変形例のいずれにおいても、転送トランジスタTX1~TX4、選択トランジスタST1~ST82、増幅トランジスタSF1~SF3、およびリセットトランジスタRT1~RT3のそれぞれは、上層基板12aまたは下層基板12bのどちらに形成されていても良い。垂直制御部VC、水平制御部HC、AD変換回路AD1~AD24、第1演算部AC1、および第2演算部AC2も、上層基板12aまたは下層基板12bのどちらに形成されていても良い。さらに、信号線VL1~VL44、制御線S00~S82、制御線T11~T42、選択線HL、およびリセット線RLも、上層基板12aまたは下層基板12bのどちらに形成されていても良い。
【0108】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)以上の第1実施形態および各変形例の撮像装置1は、マイクロレンズ15を透過した光を光電変換して電荷を生成する第1光電変換部PD1、第2光電変換部PD2、および第3光電変換部PD3と、第1光電変換部PD1、第2光電変換部PD2、および第3光電変換部PD3の少なくとも1つで生成された電荷に基づく信号を出力する出力部(転送トランジスタTX1~TX4、選択トランジスタST11~ST82、AD変換回路AD1~AD24、第1演算部AC1、第2演算部AC2等)と、第1出力信号として、第1光電変換部PD1および第2光電変換部PD2で生成された電荷に基づく信号を出力し、第2出力信号として、第3光電変換部PD3で生成された電荷に基づく信号とを出力するよう出力部を制御する第1制御と、第1出力信号として、第1光電変換部PD1で生成された電荷に基づく信号を出力し、第2出力信号として、第2光電変換部PD2および第3光電変換部PD3で生成された電荷に基づく信号を出力するよう出力部を制御する第2制御とを行う制御部CUと、を備える。
この構成により、第1出力信号と第2出力信号とを、撮像光学系2の状態や撮像装置1の状態に応じて異なる光電変換部により生成された電荷に基づいて生成し、出力させることができる。
撮像装置1が、この第1出力信号および第2出力信号を用いて位相差検出法による合焦検出を行うことにより、合焦検出の精度を向上することができる。
【0109】
(2)さらに、制御部CUは、第1制御において出力部を制御して、第1出力信号として第1光電変換部PD1および第2光電変換部PD2で生成された電荷を加算した電荷に基づく信号を出力させ、第2制御において出力部を制御して、第2出力信号として第2光電変換部PD2および第3光電変換部PD3で生成された電荷を加算した電荷に基づく信号を出力させる構成としても良い。この構成においては、電荷を加算することにより信号の加算の精度(線形性)が向上する。
【0110】
(3)さらに、制御部CUは、第1制御において出力部を制御して、第1光電変換部で生成された電荷に基づく第1信号と第2光電変換部で生成された電荷に基づく第2信号とを加算した信号を第1出力信号として出力させ、第2制御において前記出力部を制御して、第2信号と第3光電変換部で生成された電荷に基づく第3信号とを加算した信号を前記第2出力信号として出力させる構成としても良い。
この構成においては、信号の加算は、各光電変換部で生成された電荷そのものの加算ではなく、各光電変換部で生成された電荷に基づいて生成された信号を加算することにより行なう。従って、ノイズの影響を受けにくく、各光電変換部から離れた場所で信号の加算を行なうことができる。すなわち、信号を加算する回路を、AD変換回路の近傍等の画素10内以外に配置することができ、画素10の面積を削減することができる。
【0111】
(4)さらに、第1光電変換部PD1で生成された電荷に基づくアナログ信号を第1デジタル信号に、第2光電変換部PD2で生成された電荷に基づくアナログ信号を第2デジタル信号に、第3光電変換部PD3で生成された電荷に基づくアナログ信号を第3デジタル信号に変換する変換部(AD21~23)を備え、制御部CUは、第1制御において出力部を制御して、第1デジタル信号と第2デジタル信号とを加算した信号を第1出力信号として出力させ、第2制御において出力部を制御して、第2デジタル信号と第3デジタル信号とを加算した信号を第2出力信号として出力させる構成としても良い。
この構成においては、光電変換部で生成されたアナログ信号が、デジタル信号に変換された後に加算処理されるため、ノイズの影響が低減された加算を行うことができる。
【0112】
(5)さらに、第1光電変換部PD1、第2光電変換部PD2、および第3光電変換部PD3は、同じマイクロレンズ15を透過した光を光電変換して電荷を生成する構成としても良い。この構成により、撮像装置1は、第1出力信号および第2出力信号を用いてより高精度に位相差検出法による合焦検出を行ことができる。
【0113】
(5)さらに、第1光電変換部PD1、第2光電変換部PD2、および第3光電変換部PD3は、マイクロレンズ15の光軸と交差する方向に沿って設けられている構成としても良い。この構成により、撮像装置1は、撮像光学系2の状態や撮像装置1の状態が変化しても、それに応じて、位相差検出法による合焦検出に最適な第1出力信号と第2出力信号とを生成することができる。
【0114】
(6)さらに、撮像装置は、光学系(撮像光学系2)による像を撮像するとともに、第1光電変換部PD1および第2光電変換部PD2で生成された電荷に基づく第1出力信号と第3光電変換部PD3で生成された電荷に基づく第2出力信号とに基づいて、または第1光電変換部で生成された電荷に基づく第1出力信号と第2光電変換部および第3光電変換部で生成された電荷に基づく第2出力信号とに基づいて、光学系2による像が撮像装置1の撮像面に合焦するよう光学系2の位置を制御する位置制御部(撮像制御部5、レンズ駆動部4)を備える構成としても良い。この構成により、撮像装置1は、撮像光学系2の状態や撮像装置1の状態が変化した場合であっても、光学系による像を高精度に撮像面に合焦することができる。
【0115】
(7)さらに、制御部(制御部CUまたは撮像制御部5)は、光学系2の瞳距離と、光学系2の絞り値と、第1光電変換部、第2光電変換部および第3光電変換部の撮像装置1の撮像面における位置との少なくとも1つに基づいて、第1制御または第2制御を行う構成とすることもできる。この構成により、撮像装置1は、撮像光学系2の状態や撮像装置1の状態が変化した場合であっても、光学系による像を高精度に撮像面に合焦することができる。
【0116】
上述では、種々の実施形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、各実施形態および変形例は、それぞれ単独で適用しても良いし、組み合わせて用いても良い。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0117】
1:撮像装置、2:撮像光学系、3:絞り、3a:射出瞳、4:レンズ駆動部、5:撮像制御部、6:撮像素子、7:表示部、8:操作部、10:画素、11:画素列、12:半導体基板、15:マイクロレンズ、PD1~PD4:光電変換部、HC:水平制御部、VC:垂直制御部、CU:制御部、TX1~TX4:転送トランジスタ、ST1~ST82:選択トランジスタ、SF1~SF3:増幅トランジスタ、RT1~RT3:リセットトランジスタ、AD1~AD24:AD変換回路、AC1:第1演算部、AC2:第2演算部AC2、VL1~VL44:信号線、S00~S82:制御線、T11~T42:制御線、HL:選択線、RL:リセット線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12