(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】バスバーユニットの製造方法、バスバーユニット、モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 15/142 20250101AFI20250319BHJP
H02K 3/52 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
H02K15/142
H02K3/52 E
(21)【出願番号】P 2021025475
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】神里 良
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-212537(JP,A)
【文献】特開2010-011658(JP,A)
【文献】特開2014-176208(JP,A)
【文献】特開2019-050670(JP,A)
【文献】特開2019-149912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/12
H02K 3/52
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにおけるコイルと外部電源との接続に適用可能なバスバーユニットの製造方法であって、
前記バスバーユニットは、板状導電体からなる
複数のバスバーと、前記バスバーから発生する磁気を遮蔽する薄板状のシールドと、前記バスバーおよび前記シールドを保持するバスバーホルダとを備え、
前記
複数のバスバー
のそれぞれは、板面を上下方向に向けた姿勢で前記バスバーホルダに保持される円弧状のバスバー本体部と、前記バスバーを板厚方向に貫通する複数のバスバー貫通孔と
、前記バスバー本体部の互いに異なる端部からそれぞれ延びるコイル配線部および外部電源配線部と、側面から幅方向に突出する幅広部とを有し、
前記複数のバスバーの
前記外部電源配線部は、上下方向から見て、前記バスバー本体部の端部から外周側へ直線状に延び、前記外部電源配線部の幅方向に並んで配置され、
前記幅方向に並ぶ複数の前記外部電源配線部のうち、前記複数の外部電源配線部が並ぶ方向の端に配置される前記外部電源配線部は、隣の前記外部電源配線部に対向する側面から突出する第1の幅広部を有し、
前記幅方向に並ぶ複数の前記外部電源配線部のうち、前記複数の外部電源配線部が並ぶ方向の端に配置されず、前記幅方向に隣り合って配置される2本の前記外部電源配線部は、互いに対向する側面から突出する第2の幅広部をそれぞれ有し、
前記互いに対向する側面から突出する前記第2の幅広部は、前記外部電源配線部が延びる方向から見て互いに重なり、
前記シールドは、上下方向から見て複数の前記バスバー貫通孔と重なる部位を有し、
前記バスバーユニットを製造する工程は、
前記バスバーおよび前記シールドをインサート成形する金型を準備する工程と、
前記金型内に前記バスバーと前記シールドとを位置決めする第1工程と、
前記第1工程後に、前記金型内に樹脂を射出して前記バスバーホルダを成形する第2工程と、
を有し、
前記第1工程は、
前記金型の下型上面から上側へ延びる複数の第1位置決めピンを、前記複数のバスバー貫通孔に差し込むことで、前記バスバーを前記第1位置決めピンに保持させる工程と、
前記シールドを、前記シールドの下面と前記第1位置決めピンの先端とを接触させた状態で前記金型内に配置する工程と、
前記金型の上型下面から下側へ延びる第2位置決めピンを、前記シールドの上面に接触させ、前記シールドを上下方向に位置決めする工程と、
前記上型下面から下側へ延びる第3位置決めピンを、前記バスバーの上面に接触させ、前記バスバーを上下方向に位置決めする工程と、
を有する、
バスバーユニットの製造方法。
【請求項2】
前記第2の幅広部には、複数の貫通孔が設けられる、請求項1に記載のバスバーユニットの製造方法。
【請求項3】
前記シールドは、前記シールドを板厚方向に貫通するシールド貫通孔を有し、
前記金型は、前記下型上面から上側へ延びる、または前記上型下面から下側へ延びる、第4位置決めピンを有し、
前記第1工程は、前記第4位置決めピンを前記シールド貫通孔に差し込む工程を有する、
請求項1
または2に記載のバスバーユニットの製造方法。
【請求項4】
前記バスバーは、前記バスバー本体部の両端にそれぞれ前記バスバー貫通孔を有する、
請求項1
から3のいずれか1項に記載のバスバーユニットの製造方法。
【請求項5】
前記バスバーは、前記バスバー本体部の互いに異なる端部からそれぞれ延びるコイル配線部および外部電源配線部を有し、
前記外部電源配線部は、上下方向から見て、前記バスバー本体部の端部から外周側へ直線状に延び、前記外部電源配線部の幅方向に並んで配置され、
前記バスバーは、前記外部電源配線部を板厚方向に貫通するバスバー貫通孔を有する、
請求項1から
4のいずれか1項に記載のバスバーユニットの製造方法。
【請求項6】
前記バスバーホルダは、上下方向に延びる内孔を有する環状であり、
前記バスバーは、前記内孔の中心軸を中心とする周方向において、複数の前記外部電源配線部が位置するコネクタ部の中央位置から±45度以内の範囲に前記バスバー貫通孔を有する、
請求項
5に記載のバスバーユニットの製造方法。
【請求項7】
前記バスバーは、前記バスバーの側面から幅方向に突出する幅広部を有する、
請求項1から
6のいずれか1項に記載のバスバーユニットの製造方法。
【請求項8】
前記バスバーは、前記幅広部に前記バスバー貫通孔を有する、
請求項
7に記載のバスバーユニットの製造方法。
【請求項9】
前記バスバーは、前記バスバーが屈曲する部位に前記幅広部を有する、
請求項
7または
8に記載のバスバーユニットの製造方法。
【請求項10】
モータにおけるコイルと外部電源との接続に適用可能なバスバーユニットであって、
板状導電体からなる複数のバスバーと、前記バスバーから発生する磁気を遮蔽する薄板状のシールドと、前記バスバーおよび前記シールドを保持するバスバーホルダとを備え、
前記複数のバスバーのそれぞれは、板面を上下方向に向けた姿勢で前記バスバーホルダに保持される円弧状のバスバー本体部と、前記バスバーを板厚方向に貫通する複数のバスバー貫通孔と
、前記バスバー本体部の互いに異なる端部からそれぞれ延びるコイル配線部および外部電源配線部と、側面から幅方向に突出する幅広部とを有し、
前記複数のバスバーの前記外部電源配線部は、上下方向から見て、前記バスバー本体部の端部から外周側へ直線状に延び、前記外部電源配線部の幅方向に並んで配置され、
前記幅方向に並ぶ複数の前記外部電源配線部のうち、前記複数の外部電源配線部が並ぶ方向の端に配置される前記外部電源配線部は、隣の前記外部電源配線部に対向する側面から突出する第1の幅広部を有し、
前記幅方向に並ぶ複数の前記外部電源配線部のうち、前記複数の外部電源配線部が並ぶ方向の端に配置されず、前記幅方向に隣り合って配置される2本の前記外部電源配線部は、互いに対向する側面から突出する第2の幅広部をそれぞれ有し、
前記互いに対向する側面から突出する前記第2の幅広部は、前記外部電源配線部が延びる方向から見て互いに重なり、
前記シールドは、上下方向から見て複数の前記バスバー貫通孔と重なる部位を有し、
前記バスバーホルダは、
前記バスバーホルダの下面に開口して上側へ延び、前記バスバー貫通孔を通って前記シールドの下面に達する複数の第1ピン挿入穴と、
前記バスバーホルダの上面に開口して下側へ延び、前記シールドの上面に達する第2ピン挿入穴と、
前記バスバーホルダの上面に開口して下側へ延び、前記バスバーの上面に達する第3ピン挿入穴と、
を有する、
バスバーユニット。
【請求項11】
前記複数のバスバーは、
U相用バスバー群を構成する第1U相用バスバーおよび第2U相用バスバーと、
V相用バスバー群を構成する第1V相用バスバーおよび第2V相用バスバーと、
W相用バスバー群を構成する第1W相用バスバーおよび第2W相用バスバーと、
を含む、
請求項
10に記載のバスバーユニット。
【請求項12】
上下方向に延びる中心軸回りに回転可能なロータと、前記ロータの径方向外側に位置する環状のステータと、前記ステータの上側に位置し前記ロータの回転位置を検出する回転位置検出ユニットと、を備えるモータであって、
前記ステータは、コイルおよびステータコアを有するステータ本体と、前記ステータコアと前記回転位置検出ユニットとの間に位置する請求項
10または
11に記載のバスバーユニットと、を有する、
モータ。
【請求項13】
上下方向に延びる中心軸回りに回転可能なロータと、前記ロータの径方向外側に位置する環状のステータと、前記ステータの上側に位置し前記ロータの回転位置を検出する回転位置検出ユニットと、を備えるモータであって、
前記ステータは、コイルおよびステータコアを有するステータ本体と、前記ステータコアと前記回転位置検出ユニットとの間に位置するバスバーユニットとを有し、
前記バスバーユニットは、板状導電体からなる
複数のバスバーと、前記バスバーから発生する磁気を遮蔽する薄板状のシールドと、前記バスバーおよび前記シールドを保持するバスバーホルダとを有し、
前記
複数のバスバー
のそれぞれは、板面を上下方向に向けた姿勢で前記バスバーホルダに保持される円弧状のバスバー本体部と、前記バスバーを板厚方向に貫通する複数のバスバー貫通孔と、前記バスバー本体部の互いに異なる端部からそれぞれ延びるコイル配線部および外部電源配線部と、
側面から幅方向に突出する幅広部とを有し、
前記外部電源配線部は、上下方向から見て、前記バスバー本体部の端部から外周側へ直線状に延び、前記外部電源配線部の幅方向に並んで配置され、
前記複数のバスバーの前記外部電源配線部は、上下方向から見て、前記バスバー本体部の端部から外周側へ直線状に延び、前記外部電源配線部の幅方向に並んで配置され、
前記幅方向に並ぶ複数の前記外部電源配線部のうち、前記複数の外部電源配線部が並ぶ方向の端に配置される前記外部電源配線部は、隣の前記外部電源配線部に対向する側面から突出する第1の幅広部を有し、
前記幅方向に並ぶ複数の前記外部電源配線部のうち、前記複数の外部電源配線部が並ぶ方向の端に配置されず、前記幅方向に隣り合って配置される2本の前記外部電源配線部は、互いに対向する側面から突出する第2の幅広部をそれぞれ有し、
前記互いに対向する側面から突出する前記第2の幅広部は、前記外部電源配線部が延びる方向から見て互いに重なり、
前記シールドは、上下方向から見て複数の前記バスバー貫通孔と個々に重なる複数の貫通孔遮蔽部を有し、
複数の前記貫通孔遮蔽部のうち、一部の前記貫通孔遮蔽部は、前記外部電源配線部に位置し、他の一部の前記貫通孔遮蔽部は、前記バスバー本体部または前記コイル配線部に位置する、
モータ。
【請求項14】
前記バスバーホルダは、上下方向に延びる内孔を有する環状であり、
前記内孔の中心軸を中心とする周方向において、複数の前記外部電源配線部が位置するコネクタ部の中央位置から±45度以内の範囲に前記貫通孔遮蔽部が位置する、
請求項13に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバーユニットの製造方法、バスバーユニット、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
外部電源端子とコイルを接続するバスバーユニットを備えるモータが知られる。特許文献1には、バスバーと、絶縁性樹脂からなる位置決め部材とを、交互に積層させたバスバーユニットが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の構成では、位置決め部材によってバスバーを平面方向に位置決め可能であるが、バスバーと位置決め部材が積層される方向の位置決めは難しい。また、位置決め専用の部材を複数用意する必要があるため、部品点数が多く、部品自体のコストも高いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様によれば、モータにおけるコイルと外部電源との接続に適用可能なバスバーユニットの製造方法が提供される。前記バスバーユニットは、板状導電体からなるバスバーと、前記バスバーから発生する磁気を遮蔽する薄板状のシールドと、前記バスバーおよび前記シールドを保持するバスバーホルダとを備える。前記バスバーは、板面を上下方向に向けた姿勢で前記バスバーホルダに保持される円弧状のバスバー本体部と、前記バスバーを板厚方向に貫通する複数のバスバー貫通孔とを有する。前記シールドは、上下方向から見て複数の前記バスバー貫通孔と重なる部位を有する。
前記バスバーユニットを製造する工程は、前記バスバーおよび前記シールドをインサート成形する金型を準備する工程と、前記金型内に前記バスバーと前記シールドとを位置決めする第1工程と、前記第1工程後に、前記金型内に樹脂を射出して前記バスバーホルダを成形する第2工程と、を有する。
前記第1工程は、前記金型の下型上面から上側へ延びる複数の第1位置決めピンを、前記複数のバスバー貫通孔に差し込むことで、前記バスバーを前記第1位置決めピンに保持させる工程と、前記シールドを、前記シールドの下面と前記第1位置決めピンの先端とを接触させた状態で前記金型内に配置する工程と、前記金型の上型下面から下側へ延びる第2位置決めピンを、前記シールドの上面に接触させ、前記シールドを上下方向に位置決めする工程と、前記上型下面から下側へ延びる第3位置決めピンを、前記バスバーの上面に接触させ、前記バスバーを上下方向に位置決めする工程と、を有する。
【0006】
本発明の1つの態様によれば、モータにおけるコイルと外部電源との接続に適用可能なバスバーユニットが提供される。板状導電体からなるバスバーと、前記バスバーから発生する磁気を遮蔽する薄板状のシールドと、前記バスバーおよび前記シールドを保持するバスバーホルダとを備える。前記バスバーは、板面を上下方向に向けた姿勢で前記バスバーホルダに保持される円弧状のバスバー本体部と、前記バスバーを板厚方向に貫通する複数のバスバー貫通孔とを有する。前記シールドは、上下方向から見て複数の前記バスバー貫通孔と重なる部位を有する。前記バスバーホルダは、前記バスバーホルダの下面に開口して上側へ延び、前記バスバー貫通孔を通って前記シールドの下面に達する複数の第1ピン挿入穴と、前記バスバーホルダの上面に開口して下側へ延び、前記シールドの上面に達する第2ピン挿入穴と、前記バスバーホルダの上面に開口して下側へ延び、前記バスバーの上面に達する第3ピン挿入穴と、を有する。
【0007】
本発明の1つの態様によれば、上下方向に延びる中心軸回りに回転可能なロータと、前記ロータの径方向外側に位置する環状のステータと、前記ステータの上側に位置し前記ロータの回転位置を検出する回転位置検出ユニットと、を備えるモータが提供される。前記ステータは、コイルおよびステータコアを有するステータ本体と、前記ステータコアと前記回転位置検出ユニットとの間に位置するバスバーユニットとを有する。前記バスバーユニットは、板状導電体からなるバスバーと、前記バスバーから発生する磁気を遮蔽する薄板状のシールドと、前記バスバーおよび前記シールドを保持するバスバーホルダとを有する。前記バスバーは、板面を上下方向に向けた姿勢で前記バスバーホルダに保持される円弧状のバスバー本体部と、前記バスバーを板厚方向に貫通する複数のバスバー貫通孔と、前記バスバー本体部の互いに異なる端部からそれぞれ延びるコイル配線部および外部電源配線部と、を有する。前記シールドは、上下方向から見て複数の前記バスバー貫通孔と個々に重なる複数の貫通孔遮蔽部を有する。前記外部電源配線部は、上下方向から見て、前記バスバー本体部の端部から外周側へ直線状に延び、前記外部電源配線部の幅方向に並んで配置される。複数の前記貫通孔遮蔽部のうち、一部の前記貫通孔遮蔽部は前記外部電源配線部に位置し、他の一部の前記貫通孔遮蔽部は、前記バスバー本体部または前記コイル配線部に位置する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の1つの態様によれば、専用部品を用いることなくシールドとバスバーを正確に位置決め可能としたバスバーユニットの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】
図3は、バスバーユニットを上側から見た平面図である。
【
図4】
図4は、バスバーユニットを下側から見た平面図である。
【
図5】
図5は、バスバー群を上側から見た平面図である。
【
図6】
図6は、バスバー群とシールドを下側から見た平面図である。
【
図7】
図7は、バスバー群とシールドを上側から見た平面図である。
【
図8】
図8は、バスバーユニットの製造工程を示す金型の断面図である。
【
図9】
図9は、バスバーユニットの製造工程を示す金型の断面図である。
【
図10】
図10は、バスバーユニットの製造工程を示す金型の断面図である。
【
図11】
図11は、バスバーユニットの製造工程を示す金型の断面図である。
【
図12】
図12は、バスバーユニットの製造工程を示す金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
実施形態のモータ1について、
図1から
図5を参照して説明する。
本実施形態では、
図1に示すモータ1の中心軸Jが延びる方向を単に「軸方向」と呼ぶ。本実施形態において、軸方向は上下方向である。上側(+Z)は、軸方向一方側に相当し、下側(-Z)は、軸方向他方側に相当する。また、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Jに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Jから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。本実施形態において、径方向内側は径方向一方側に相当し、径方向外側は径方向他方側に相当する。また、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
なお、上下方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0012】
本実施形態のモータ1は、例えば、電動パワーステアリング装置(図示省略)に搭載される。電動パワーステアリング装置は、自動車の車輪の操舵機構に搭載される。電動パワーステアリング装置は、操舵力をモータにより軽減する装置である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のモータ1は、中心軸Jを中心とするロータ20と、ロータ20の径方向外側に配置されるステータ30と、ハウジング11と、複数のベアリング15,16と、ロータ20の回転を検出する回転位置検出ユニット60とを備える。回転位置検出ユニット60は、本実施形態ではレゾルバである。回転位置検出ユニット60は、レゾルバロータ61と、レゾルバステータ62とを有する。回転位置検出ユニット60は、レゾルバに限定されず、ホール素子やMR素子を用いる方式であってもよい。
【0014】
モータ1は、インナーロータ型のモータである。ロータ20は、ステータ30に対して中心軸Jを中心として回転する。なお特に図示しないが、モータ1は、ロータ20の回転を制御する基板を備えていてもよい。
【0015】
ハウジング11は、ロータ20およびステータ30を収容する。ハウジング11は、軸方向に延びる筒状である。ハウジング11は、周壁11aと、頂壁11bと、底壁11cと、ベアリング保持壁部11dと、を有する。周壁11aは、軸方向に延びる円筒状である。頂壁11bは、周壁11aの上側の開口を塞ぐ。底壁11cは、周壁11aの下側の開口を塞ぐ。底壁11cは、ベアリング16を保持する。ベアリング保持壁部11dは、周壁11aと固定される。ベアリング保持壁部11dは、ベアリング15を保持する。
【0016】
ロータ20は、シャフト21と、ロータコア22と、マグネット23と、を有する。シャフト21は、軸方向に延びる円柱状である。なおシャフト21は、軸方向に延びる円筒状でもよい。シャフト21は、複数のベアリング15,16により、中心軸J回りに回転可能に支持される。複数のベアリング15,16は、軸方向に互いに間隔をあけて配置され、ハウジング11に支持される。すなわち、シャフト21は、複数のベアリング15,16を介してハウジング11に支持される。
【0017】
シャフト21は、ベアリング15よりも上側に突出する。シャフト21の上端に、レゾルバロータ61が連結される。レゾルバロータ61は、シャフト21とともに中心軸J回りに回転可能である。ベアリング15を保持するベアリング保持壁部11dの上側に、レゾルバステータ62が配置される。レゾルバステータ62は、径方向外側からレゾルバロータ61を囲む環状である。レゾルバステータ62は、後述するバスバーユニット36の上側に位置する。
【0018】
ロータコア22は、軸方向に延びる筒状である。ロータコア22は、シャフト21よりも外径が大きい。ロータコア22は、シャフト21よりも軸方向の長さが小さい。ロータコア22の内周面は、シャフト21の外周面と固定される。ロータコア22は、シャフト21と圧入および接着等により固定される。ロータコア22は、軸方向において、一対のベアリング15,16間に位置する。マグネット23は、ロータコア22の外周部に固定される。
【0019】
ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間をあけて対向する。ステータ30は、ロータ20を径方向外側から周方向の全周にわたって囲う。ステータ30は、ステータコア31と、インシュレータ32と、コイル33と、バスバーユニット36と、を有する。
【0020】
ステータコア31は、中心軸Jを中心とする環状である。ステータコア31は、軸方向に延びる筒状である。ステータコア31は、ロータ20を径方向外側から囲う。ステータコア31は、軸方向に積層される複数の電磁鋼板により構成される。ステータコア31は、ハウジング11の内周面に固定される。ステータコア31とハウジング11とは、例えば焼き嵌めや圧入等により固定される。
【0021】
ステータコア31は、コアバック31aと、複数のティース31bと、を有する。コアバック31aは、中心軸Jを中心とする円筒状である。コアバック31aの径方向外側面は、周壁11aの内周面に固定される。ティース31bは、コアバック31aの径方向内側面から径方向内側に突出する。複数のティース31bは、周方向に互いに間隔をあけて配置される。各ティース31bの径方向内側面は、ロータ20の径方向外側面と隙間をあけて対向する。
【0022】
インシュレータ32は、ステータコア31に取り付けられる。インシュレータ32は、絶縁性の材料により構成される。インシュレータ32は、例えば樹脂製である。インシュレータ32は、複数のティース31bのそれぞれに取り付けられる。コイル33は、インシュレータ32を介してステータコア31に取り付けられる。コイル33は、周方向に並んで複数設けられる。
【0023】
本実施形態のモータ1は、3相モータである。3相とは、U相、V相およびW相である。3相モータの場合、U相、V相およびW相の各コイル33は、バスバーユニット36と電気的に接続される。
【0024】
バスバーユニット36は、
図1に示すように、ステータコア31の上側(+Z側)に位置する。本実施形態の場合、バスバーユニット36は、ステータコア31とベアリング保持壁部11dとの間に位置する。バスバーユニット36は、ベアリング保持壁部11dよりも上側に位置していてもよい。バスバーユニット36は、軸方向から見て、レゾルバステータ62と重なる。
【0025】
バスバーユニット36は、
図2に示すように、複数のバスバーからなるバスバー群34と、バスバー群34を保持するバスバーホルダ35とを備える。バスバー群34は、8本のバスバー341U、341V、341W、341G、342U、342V、342W、342Gを有する。本実施形態では、バスバー群34は、バスバーホルダ35にインサート成形される。
【0026】
バスバーホルダ35は、
図3に示すように、軸方向から見て円環状のホルダ本体351と、ホルダ本体351の外周面から径方向外側に突出する3本の支持脚部352と、ホルダ本体351の外周面から径方向外側に突出するコネクタ部353と、を有する。バスバーホルダ35は、中心軸Jに沿って延びる内孔35aを有する。バスバーホルダ35は樹脂製である。バスバーホルダ35の外周面から径方向外側に向かって、複数のバスバーの端部が突出する。
図5には、バスバーホルダ35に保持される配置のバスバー群34が示される。バスバー群34を構成する各バスバーは、バスバーホルダ35の内部において周方向に沿って延びており、後述の接続端子部、および後述のコイル配線部と外部電源配線部の少なくとも一部が、バスバーホルダ35の外側に露出する。
【0027】
支持脚部352は、
図2~4に示すように、ホルダ本体351の3箇所に配置される。3本の支持脚部352は、軸方向から見て、周方向に120°間隔で配置される。支持脚部352は、ホルダ本体351の外周面から径方向外側へ延び、径方向外側の端部で下側へ折れ曲がるL形である。支持脚部352の下端は、ステータコア31またはインシュレータ32に接触する。支持脚部352は、バスバーユニット36を、ステータコア31またはインシュレータ32に対して軸方向に位置決めする。支持脚部352の本数は、2本以下または4本以上であってもよい。バスバーホルダ35は、支持脚部352を備えない構成であってもよい。
【0028】
バスバーユニット36は、2系統の3相コイルに対して接続可能に構成される。
図3には、本実施形態のモータ1のコイル構成を概略的に示す。6つのコイル33は、2系統の3相コイルからなる。すなわち、モータ1は、1組のU相コイル33U、V相コイル33V、W相コイル33Wからなる第1系統コイル群331と、他の1組のU相コイル33U、V相コイル33V、W相コイル33Wからなる第2系統コイル群332と、を有する。コイル33の位置および個数は
図3に示す形態に限られない。例えば、U相コイル33U、V相コイル33V、W相コイル33Wがそれぞれ複数のコイルで構成されていてもよい。
【0029】
バスバー群34は、
図5に示すように、第1系統バスバー群341と、第2系統バスバー群342とを有する。第1系統バスバー群341は、第1U相用バスバー341Uと、第1V相用バスバー341Vと、第1W相用バスバー341Wと、第1中性点バスバー341Gとを有する。第2系統バスバー群342は、第2U相用バスバー342Uと、第2V相用バスバー342Vと、第2W相用バスバー342Wと、第2中性点バスバー342Gとを有する。
【0030】
すなわち、バスバーユニット36は、U相用バスバー、V相用バスバーおよびW相用バスバーをそれぞれ複数本有する。より詳細には、バスバー群34は、U相用バスバー群を構成する第1U相用バスバー341Uおよび第2U相用バスバー342Uと、V相用バスバー群を構成する第1V相用バスバー341Vおよび第2V相用バスバー342Vと、W相用バスバー群を構成する第1W相用バスバー341Wおよび第2W相用バスバー342Wと、を含む。
【0031】
図3に示す第1系統コイル群331の3つのコイルは、第1系統バスバー群341に接続される。第1系統コイル群331のU相コイル33Uは、第1U相用バスバー341Uと第1中性点バスバー341Gとに接続される。第1系統コイル群331のV相コイル33Vは、第1V相用バスバー341Vと第1中性点バスバー341Gとに接続される。第1系統コイル群331のW相コイル33Wは、第1W相用バスバー341Wと第1中性点バスバー341Gとに接続される。
【0032】
第2系統コイル群332の3つのコイルは、第2系統バスバー群342に接続される。第2系統コイル群332のU相コイル33Uは、第2U相用バスバー342Uと第2中性点バスバー342Gとに接続される。第2系統コイル群332のV相コイル33Vは、第2V相用バスバー342Vと第2中性点バスバー342Gとに接続される。第2系統コイル群332のW相コイル33Wは、第2W相用バスバー342Wと第2中性点バスバー342Gとに接続される。
【0033】
図5に示すように、第1U相用バスバー341Uは、板面を軸方向に向けた姿勢で中心軸Jに直交する面内に延びる本線部41Uと、本線部41Uの一方側の端部に位置するコイル接続用の接続端子部Tcと、本線部41Uの他方側の端部に位置する外部電源接続用の接続端子部Teと、を有する。本線部41Uは、軸方向を向く板面と、軸方向に直交する方向を向く側面と、を有する。また、本線部41Uは、中心軸J回りの周方向に沿って円弧状に延びるバスバー本体部1aUと、バスバー本体部1aUの一方の端部からバスバーユニット36の外周側へ直線状に延びるコイル配線部1bUと、バスバー本体部1aUの他方の端部からバスバーユニット36の外周側へ直線状に延びる外部電源配線部1cUと、を有する。
【0034】
第2U相用バスバー342Uは、第1U相用バスバー341Uと同様に、本線部42Uと、コイル接続用の接続端子部Tcと、外部電源接続用の接続端子部Teと、を有する。本線部42Uは、軸方向を向く板面と、軸方向に直交する方向を向く側面と、を有する。本線部42Uは、中心軸J回りの周方向に沿って円弧状に延びるバスバー本体部2aUと、バスバー本体部2aUの一方の端部からバスバーユニット36の外周側へ直線状に延びるコイル配線部2bUと、バスバー本体部2aUの他方の端部からバスバーユニット36の外周側へ直線状に延びる外部電源配線部2cUと、を有する。
【0035】
第1V相用バスバー341Vは、板面を軸方向に向けた姿勢で中心軸Jに直交する面内に延びる本線部41Vと、本線部41Vの一方側の端部に位置するコイル接続用の接続端子部Tcと、本線部41Vの他方側の端部に位置する外部電源接続用の接続端子部Teと、を有する。本線部41Vは、軸方向を向く板面と、軸方向に直交する方向を向く側面と、を有する。本線部41Vは、中心軸J回りの周方向に沿って円弧状に延びるバスバー本体部1aVと、バスバー本体部1aVの一方の端部からバスバーユニット36の外周側へ直線状に延びるコイル配線部1bVと、バスバー本体部1aVの他方の端部からバスバーユニット36の外周側へ直線状に延びる外部電源配線部1cVと、を有する。
【0036】
第2V相用バスバー342Vは、第1V相用バスバー341Vと同様に、本線部42Vと、コイル接続用の接続端子部Tcと、外部電源接続用の接続端子部Teと、を有する。本線部42Vは、軸方向を向く板面と、軸方向に直交する方向を向く側面と、を有する。本線部42Vは、中心軸J回りの周方向に沿って円弧状に延びるバスバー本体部2aVと、バスバー本体部2aVの一方の端部からバスバーユニット36の外周側へ直線状に延びるコイル配線部2bVと、バスバー本体部2aVの他方の端部からバスバーユニット36の外周側へ直線状に延びる外部電源配線部2cVと、を有する。
【0037】
第1W相用バスバー341Wは、板面を軸方向に向けた姿勢で中心軸Jに直交する面内に延びる本線部41Wと、本線部41Wの一方側の端部に位置するコイル接続用の接続端子部Tcと、本線部41Wの他方側の端部に位置する外部電源接続用の接続端子部Teと、を有する。本線部41Wは、軸方向を向く板面と、軸方向に直交する方向を向く側面と、を有する。本線部41Wは、中心軸J回りの周方向に沿って円弧状に延びるバスバー本体部1aWと、バスバー本体部1aWの一方の端部からバスバーユニット36の外周側へ直線状に延びるコイル配線部1bWと、バスバー本体部1aWの他方の端部からバスバーユニット36の外周側へ直線状に延びる外部電源配線部1cWと、を有する。
【0038】
第2W相用バスバー342Wは、第1W相用バスバー341Wと同様に、本線部42Wと、コイル接続用の接続端子部Tcと、外部電源接続用の接続端子部Teと、を有する。本線部42Wは、軸方向を向く板面と、軸方向に直交する方向を向く側面と、を有する。本線部42Wは、中心軸J回りの周方向に沿って円弧状に延びるバスバー本体部2aWと、バスバー本体部2aWの一方の端部からバスバーユニット36の外周側へ直線状に延びるコイル配線部2bWと、バスバー本体部2aWの他方の端部からバスバーユニット36の外周側へ直線状に延びる外部電源配線部2cWと、を有する。
【0039】
第1中性点バスバー341Gは、板面を軸方向に向けた姿勢で中心軸Jに直交する面内に延びる本線部41Gと、本線部41Gの一方側および他方側の端部と、本線部41Gの周方向の中央部に位置する3つのコイル接続用の接続端子部Tcと、を有する。本線部41Gは、軸方向を向く板面と、軸方向に直交する方向を向く側面と、を有する。本線部41Gは、中心軸J回りの周方向に沿って円弧状に延びるバスバー本体部1aGと、バスバー本体部1aGの一方側および他方側の端部ならびに周方向中央部からバスバーユニット36の外周側へ直線状に延びる3本のコイル配線部1bGを有する。
【0040】
第2中性点バスバー342Gは、第1中性点バスバー341Gと同様に、本線部42Gと、3つのコイル接続用の接続端子部Tcとを有する。本線部42Gは、軸方向を向く板面と、軸方向に直交する方向を向く側面と、を有する。本線部42Gは、中心軸J回りの周方向に沿って円弧状に延びるバスバー本体部2aGと、バスバー本体部2aGの一方側および他方側の端部ならびに周方向中央部からバスバーユニット36の外周側へ直線状に延びる3本のコイル配線部2bGを有する。
【0041】
バスバーユニット36は、第1中性点バスバー341Gおよび第2中性点バスバー342Gを備えない構成とすることもできる。第1中性点バスバー341Gおよび第2中性点バスバー342Gを用いることで、コイル33同士を接続する渡り線の配線構造を簡素化しやすくなり、生産性向上に有利である。
【0042】
図5に示すように、バスバー群34を構成する複数のバスバーは、中心軸Jを中心とする周方向に沿って配置される。複数のバスバーのうち、第1W相用バスバー341Wと第2W相用バスバー342Wが、最も径方向内側に位置する。
第1W相用バスバー341Wの径方向外側に、第1V相用バスバー341Vと、第1中性点バスバー341Gとが配置される。第1V相用バスバー341Vの径方向外側に、第1U相用バスバー341Uが配置される。
第2W相用バスバー342Wの径方向外側に、第2V相用バスバー342Vと、第2中性点バスバー342Gとが配置される。第2V相用バスバー342Vの径方向外側に、第2U相用バスバー342Uが配置される。
【0043】
図5に示すように、第1系統バスバー群341と、第2系統バスバー群342は、軸方向に見て、中心軸Jを通る第1仮想線VL1を境界として隣り合う2つの領域にそれぞれ配置される。さらに本実施形態では、第1U相用バスバー341Uと第2U相用バスバー342Uとが、第1仮想線VL1を対称軸とする線対称の形状を有し、かつ、第1仮想線VL1を対称軸とする線対称の位置に配置される。同様に、第1V相用バスバー341Vと第2V相用バスバー342Vとは、第1仮想線VL1を対称軸として、互いに線対称の形状を有し、かつ線対称の位置に配置される。第1W相用バスバー341Wと第2W相用バスバー342Wとは、第1仮想線VL1を対称軸として、互いに線対称の形状を有し、かつ線対称の位置に配置される。第1中性点バスバー341Gと第2中性点バスバー342Gとは、第1仮想線VL1を対称軸として、互いに線対称の形状を有し、かつ線対称の位置に配置される。
【0044】
バスバーは、金属板を金型で打ち抜いたブランクを、曲げ加工することにより製造される。本実施形態では、第1仮想線VL1を挟んで対称位置に配置される2つのバスバーが、互いに線対称の形状を有するので、これら2つのバスバーを共通のブランクを用いて製造できる。すなわち、第1U相用バスバー341Uと第2U相用バスバー342Uとは共通のブランクから製造可能である。同様に、第1V相用バスバー341Vと第2V相用バスバー342V、第1W相用バスバー341Wと第2W相用バスバー342W、第1中性点バスバー341Gと第2中性点バスバー342Gも、それぞれ共通のブランクを用いて製造可能である。
【0045】
本実施形態によれば、バスバーユニット36を構成する8本のバスバーを、4種類のブランクから製造可能である。したがって、バスバーの製造に用いる金型の数を減らすことができ、効率よく低コストにバスバーを製造できる。バスバーユニット36の生産性を向上させることができる。
【0046】
また本実施形態では、互いに線対称の形状を有するバスバー同士が、第1仮想線VL1を対称軸とする線対称の位置に配置される。この構成によれば、第1系統バスバー群341と第2系統バスバー群342とが第1仮想線VL1を対称軸とする線対称の位置に配置される。バスバー群34を保持するバスバーホルダ35を真円に近い円環状にしやすく、円環状のステータコア31の上側に配置しやすい形状にできる。
【0047】
なお、本実施形態では、対となるバスバーの形状と配置の両方が第1仮想線VL1を対称軸とする線対称である構成としたが、この構成に限られない。第1U相用バスバー341Uと第2U相用バスバー342Uとは、それぞれの本線部41Uと本線部42Uとが、第1仮想線VL1に対して互いに線対称の形状を有していればよい。第1V相用バスバー341Vと第2V相用バスバー342V、第1W相用バスバー341Wと第2W相用バスバー342W、第1中性点バスバー341Gと第2中性点バスバー342Gについても同様である。本線部同士が線対称の形状を有していれば、バスバーの製造に用いるブランクの共通化が可能であり、バスバーの製造効率を高めることができる。
【0048】
本線部以外の部分である接続端子部Tc、Teは、コイル33から延びる引き出し線の位置および向きなどに応じて形状が変更される。例えば、コイル33からの引き出し線を把持するコイル接続用の接続端子部Tcの開口部の向きが、第1U相用バスバー341Uと、第2U相用バスバー342Uとの間で異なる場合もあり得る。
この場合でも、接続端子部Tc、Teを形成する部位のみ形状が異なる2つのブランクは、金属板からの打ち抜き形状を共通化し、打ち抜き後に多少の切削を行うのみで、製造可能である。よって、ブランク製造用の金型の数を削減可能である。
【0049】
本実施形態では、
図5に示すように、第1U相用バスバー341U、第2U相用バスバー342U、第1V相用バスバー341V、第2V相用バスバー342V、第1W相用バスバー341W、第2W相用バスバー342W、第1中性点バスバー341G、および第2中性点バスバー342Gは、それぞれ、軸方向から見て相互に重ならない位置に配置される。上記8本のバスバーは、径方向から見て少なくとも1つの他のバスバーと重なる位置に配置される。本実施形態の場合、上記8本のバスバーの本線部は、板面を軸方向に向けた姿勢で、共通の平面上に配置される。
この構成によれば、複数のバスバーを径方向から見て重なり合う位置に配置でき、かつ複数のバスバーは板面を軸方向に向けた姿勢で配置されるので、バスバーユニット36の軸方向の厚さを大きく低減できる。本実施形態のバスバーユニット36を用いることで、軸方向にコンパクトなステータ30およびモータ1を実現できる。
【0050】
図5に示すように、バスバー群34を構成する各バスバーは、軸方向から見て上記バスバーの側面から軸方向に直交する方向に突出する幅広部を有する。
【0051】
第1U相用バスバー341Uは、バスバー本体部1aUと外部電源配線部1cUとの交差部に、外部電源配線部1cUの側面から、外部電源配線部1cV側(
図5右側)へ突出する幅広部1dUを有する。第2U相用バスバー342Uは、バスバー本体部2aUと外部電源配線部2cUとの交差部に、外部電源配線部2cUの側面から、外部電源配線部2cV側(
図5左側)へ突出する幅広部2dUを有する。
【0052】
第1U相用バスバー341Uは、幅広部1dUの位置に、本線部41Uを板厚方向(軸方向)に貫通する2つのバスバー貫通孔H11、H12を有する。第2U相用バスバー342Uは、幅広部2dUの位置に、本線部42Uを板厚方向に貫通する2つのバスバー貫通孔H21、H22を有する。第1U相用バスバー341Uの2つのバスバー貫通孔H11、H12は、外部電源配線部1cUが延びる方向に沿って並ぶ。第2U相用バスバー342Uの2つのバスバー貫通孔H21、22は、外部電源配線部2cUが延びる方向に沿って並ぶ。バスバー貫通孔H11、H12は、バスバー群34をバスバーホルダ35にインサート成形する際に、各バスバーを金型内に固定する支持ピンが挿入される孔である。後述する他のバスバー貫通孔H13~H19およびバスバー貫通孔H23~H29も同様である。
【0053】
第1V相用バスバー341Vは、バスバー本体部1aVとコイル配線部1bVとが交差する位置の内角側の角部に幅広部1dVを有する。第1V相用バスバー341Vは、バスバー本体部1aVと外部電源配線部1cVとの交差部に、外部電源配線部1cVの側面から外部電源配線部1cW側(
図5右側)へ突出する幅広部1eVを有する。第1V相用バスバー341Vは、それぞれ幅広部1dV、1eVを板厚方向に貫通する2つのバスバー貫通孔H13、H14を有する。
【0054】
第2V相用バスバー342Vは、バスバー本体部2aVとコイル配線部2bVとが交差する位置の内角側の角部に幅広部2dVを有する。第2V相用バスバー342Vは、バスバー本体部2aVと外部電源配線部2cVとの交差部に、外部電源配線部2cVの側面から外部電源配線部2cW側(
図5左側)へ突出する幅広部2eVを有する。第2V相用バスバー342Vは、それぞれ幅広部2dV、2eVを板厚方向に貫通する2つのバスバー貫通孔H23、H24を有する。
【0055】
第1W相用バスバー341Wは、バスバー本体部1aWとコイル配線部1bWとが交差する位置の内角側の角部に幅広部1dWを有する。第1W相用バスバー341Wは、バスバー本体部1aWと外部電源配線部1cWとの交差部に、外部電源配線部1cWの側面から外部電源配線部1cV側(
図5左側)へ突出する幅広部1eWを有する。第1W相用バスバー341Wは、バスバー本体部1aWの中央部に、バスバー本体部1aWの側面から径方向外側へ突出する幅広部1fWを有する。第1W相用バスバー341Wは、それぞれ幅広部1dW、1eW、1fWを板厚方向に貫通する3つのバスバー貫通孔H15、H16、H17を有する。
【0056】
第2W相用バスバー342Wは、バスバー本体部2aWとコイル配線部2bWとが交差する位置の内角側の角部に幅広部2dWを有する。第2W相用バスバー342Wは、バスバー本体部2aWと外部電源配線部2cWとの交差部に、外部電源配線部2cWの側面から外部電源配線部2cV側(
図5右側)へ突出する幅広部2eWを有する。第2W相用バスバー342Wは、バスバー本体部2aWの中央部に、バスバー本体部2aWの側面から径方向外側へ突出する幅広部2fWを有する。第2W相用バスバー342Wは、それぞれ幅広部2dW、2eW、2fWを板厚方向に貫通する3つのバスバー貫通孔H25、H26、H27を有する。
【0057】
第1中性点バスバー341Gは、バスバー本体部1aGと、周方向一方側のコイル配線部1bGとが接続する角部から周方向外側に突出する幅広部1dGを有する。第1中性点バスバー341Gは、バスバー本体部1aGと、周方向他方側のコイル配線部1bGとが接続する角部から周方向外側に突出する幅広部1eGを有する。第1中性点バスバー341Gは、それぞれ幅広部1dG、1eGを板厚方向に貫通する2つのバスバー貫通孔H18、H19を有する。
【0058】
第2中性点バスバー342Gは、バスバー本体部2aGと、周方向一方側のコイル配線部2bGとが接続する角部から周方向外側に突出する幅広部2dGを有する。第2中性点バスバー342Gは、バスバー本体部2aGと、周方向他方側のコイル配線部2bGとが接続する角部から周方向外側に突出する幅広部2eGを有する。第2中性点バスバー342Gは、それぞれ幅広部2dG、2eGを板厚方向に貫通する2つのバスバー貫通孔H28、H29を有する。
【0059】
本実施形態によれば、バスバー群34に属する各バスバーが、軸方向から見て各バスバーの側面から軸方向に直交する方向に突出する幅広部を有することで、バスバーにバスバー貫通孔が設けられる場合でも、バスバーの電気抵抗が高くなるのを抑制できる。本実施形態において、バスバーの貫通孔は、
図5に示すバスバー貫通孔H13~H19、H23~H29のようにバスバーの幅広部に位置していてもよく、バスバー貫通孔H11、H12、H21、H22のように、幅広部1dU、2dUの近傍に位置していてもよい。バスバー貫通孔が幅広部に位置する構成とすることで、貫通孔によるバスバーの電気抵抗上昇がほぼなくなるので、支持ピン挿入用の貫通孔を任意の位置に配置できる。
【0060】
本実施形態では、第1V相用バスバー341Vの幅広部1dVおよび第2V相用バスバー342Vの幅広部2dV、並びに、第1W相用バスバー341Wの幅広部1dWおよび第2W相用バスバー342Wの幅広部2dWは、それぞれのバスバーが屈曲する角部の内側に位置する。この構成によれば、それぞれのバスバーの剛性を高めることができる。バスバーの撓みを低減でき、バスバーユニット36の歩留まり向上、およびコイル配線の不具合低減の効果が得られる。
【0061】
本実施形態では、第1V相用バスバー341Vの幅広部1dv、1eV、第2V相用バスバー342Vの幅広部2dV、2eVは、それぞれ第1V相用バスバー341V、第2V相用バスバー342Vの周方向の両端部に位置する。同様に、第1W相用バスバー341Wの幅広部1dW、1eW、第2W相用バスバー342Wの幅広部2dW、2eWは、それぞれ第1W相用バスバー341W、第2W相用バスバー342Wの周方向の両端部に位置する。
これらの構成によれば、幅広部にバスバー貫通孔を設けることで、細長いバスバーの両端部に支持ピン挿入用のバスバー貫通孔を配置できるので、比較的長いバスバーであっても、安定に保持できる。インサート成形時のバスバーの位置精度を高めることができる。バスバーユニット36の歩留まりを向上でき、コイル配線の不具合も低減できる。
【0062】
本実施形態では、第1U相用バスバー341U、第2U相用バスバー342U、第1V相用バスバー341V、第2V相用バスバー342V、第1W相用バスバー341W、および第2W相用バスバー342Wは、それぞれの本線部41U、42U、41V、42V、41W、42Wの一部に、第1仮想線VL1に沿う方向へ延びる外部電源配線部1cU、2cU、1cV、2cV、1cW、2cWを有する。外部電源配線部1cU、2cU、1cV、2cV、1cW、2cWの先端から外部電源用の接続端子部Teが延びている。複数の外部電源配線部1cU、2cU、1cV、2cV、1cW、2cWは、軸方向に見て、第1仮想線VL1に直交する方向に並ぶ。外部電源配線部1cU、2cU、1cV、2cV、1cW、2cWは、
図2~4に示すバスバーホルダ35のコネクタ部353に保持される。外部電源配線部1cU、2cU、1cV、2cV、1cW、2cWのそれぞれの先端部は、コネクタ部353からバスバーユニット36の外周側へ突出する。
【0063】
この構成によれば、複数の外部電源配線部1cU、2cU、1cV、2cV、1cW、2cWが、バスバーホルダ35の周方向の一部領域に収容されるので、外部電源配線部をコンパクトに配置できる。複数の外部電源配線部は、第1仮想線VL1に沿って並ぶので、第1系統バスバー群341の外部電源配線部1cU、1cV、1cWと第2系統バスバー群342の外部電源配線部2cU、2cV、2cWの両方を第1仮想線VL1の近傍に配置できる。2系統の外部電源へのコネクタをコンパクトに構成できる。
【0064】
図5に示すように、第1系統の外部電源配線部1cV、1cWは、互いに対向する側面から突出する幅広部1eV、1eWを有し、2つの幅広部1eV、1eWは、外部電源配線部1cV、1cWが延びる方向から見て互いに重なる。
また、第2系統においても、外部電源配線部2cV、2cWは、互いに対向する側面から突出する幅広部2eV、2eWを有し、2つの幅広部2eV、2eWは、外部電源配線部2cV、2cWが延びる方向から見て互いに重なる。
これらの構成によれば、隣り合って配置される外部電源配線部1cV、1cWの隙間に、2つの幅広部1eV、1eWが配置される。外部電源配線部2cV、2cWの隙間に、2つの幅広部2eV、2eWが配置される。幅広部1eV、1eW、2eV、2eWを効率よく配置できるので、外部電源へのコネクタをコンパクトに構成できる。また、外部電源配線部同士の幅が過度に大きくならないので、外部電源配線部同士の隙間において樹脂の成形不良が生じるのを抑制できる。
【0065】
本実施形態では、隣り合う外部電源配線部1cUと1cVとの間には、第1U相用バスバー341Uの幅広部1dUが配置される。隣り合う外部電源配線部2cUと2cVとの間には、第2U相用バスバー342Uの幅広部2dUが配置される。この構成によれば、隣り合う外部電源配線部1cU、1cV間の隙間、および隣り合う外部電源配線部2cU、2cV間の隙間が過度に大きくなるのを防ぎ、外部電源配線部同士の隙間において樹脂の成形不良が生じるのを抑制できる。
【0066】
バスバーユニット36は、軸方向から見てバスバー群34と重なるシールド37を有する。シールド37は、軸方向から見て円環状の金属薄板である。シールド37は、バスバー群34の上側(+Z側)に位置する。すなわち、シールド37は、軸方向において、バスバー群34と、レゾルバステータ62との間に位置する。シールド37は、回転位置検出ユニット60の電子回路部であるレゾルバステータ62に対して、バスバー群34から発生する磁気を遮蔽する。
【0067】
図6および
図7に示すように、軸方向から見て、シールド37の内周縁は、第1W相用バスバー341Wのバスバー本体部1aWの内周縁および第2W相用バスバー342Wのバスバー本体部2aWの内周縁よりもやや径方向内側に位置する。シールド37の外周縁は、軸方向から見て、第1U相用バスバー341Uのバスバー本体部1aUの内周縁および第2U相用バスバー342Uのバスバー本体部2aUの内周縁、並びに第1中性点バスバー341Gのバスバー本体部1aGの内周縁および第2中性点バスバー342Gのバスバー本体部2aGの内周縁とほぼ重なる。
【0068】
シールド37は、
図7に示すように、第1V相用バスバー341Vのバスバー本体部1aV、第2V相用バスバー342Vのバスバー本体部2aV、第1W相用バスバー341Wのバスバー本体部1aW、第2W相用バスバー342Wのバスバー本体部2aWを上側から覆う。シールド37は、必要に応じて、第1U相用バスバー341U、第2U相用バスバー342U、第1中性点バスバー341G、第2中性点バスバー342Gの一部を覆う大きさとすることもできる。
【0069】
図8から
図12は、バスバーユニット36の製造工程の説明図である。
図8から
図12に示すバスバーおよびシールドの断面図は、それぞれ、
図7に示すVIII-VIII線、IX-IX線、X-X線、XI-XI、XII-XII線に沿う位置における断面図であって、右側が中心軸J側に相当する。
【0070】
バスバーユニット36は、バスバー群34とシールド37とを一括してバスバーホルダ35にインサート成形することで製造される。バスバー群34は、大部分がバスバーホルダ35に埋め込まれ、端部に位置する接続端子部Tc、Teとそれらの周辺部分のみがバスバーホルダ35から露出する。シールド37は、ほぼ全体がバスバーホルダ35の内部に埋め込まれる。
【0071】
バスバーユニット36を製造する工程は、バスバー群34およびシールド37をインサート成形する金型200(
図8参照)を準備する準備工程と、金型200内にバスバー群34とシールド37とを位置決めする第1工程と、第1工程後に、金型200内に樹脂を射出してバスバーホルダ35を成形する第2工程と、を有する。
【0072】
金型200は、
図8に示すように、上下に配置される上型201と、下型202とを有する。本実施形態の場合、下型202は、上向きに開口する凹部202aを有する。上型201は、凹部202aの開口部を上側から覆う板状である。金型200は、上型201の下面201aと、下型202の上端面202bとを接触させることにより、凹部202aの開口部を封止可能である。上型201と下型202とにより囲まれる金型200の内部空間203に、バスバーホルダ35となる樹脂材料が充填される。
【0073】
第1工程では、下型202の凹部202a内に、バスバー群34と、シールド37とが配置される。
図8から
図12に示すように、凹部202aの底部側に、バスバー群34が配置され、バスバー群34の上側にシールド37が配置される。バスバー群34およびシールド37は、下型202の底面202cから上側へ延びる複数の位置決めピンと、上型201の下面201aから下側へ延びる複数の位置決めピンにより、内部空間203内の所定位置に固定される。
【0074】
金型200は、
図8に示す下型202の底面202cから上側へ延びる第1位置決めピン211と、上型201の下面201aから下側へ延びる第2位置決めピン212と、
図10に示す上型201の下面201aから下側へ延びる第3位置決めピン213と、
図9に示す下型202の底面202cから上側へ延びる第4位置決めピン214と、
図10に示す下型202の底面202cから上側へ延びる第5位置決めピン215と、
図12に示す下型202の底面202cから上側へ延びる第6位置決めピン216と、を有する。
金型200は、第1位置決めピン211から第6位置決めピン216までの6種類の位置決めピンをそれぞれ複数本有する。
【0075】
凹部202a内に設置されるバスバー群34のバスバー貫通孔H11~H19、H21~H29には、それぞれ第1位置決めピン211が挿入される。第1位置決めピン211は、円柱状である。第1位置決めピン211は、バスバー貫通孔H11~H19、H21~H29を下側から上側に向かって通り抜ける。第1位置決めピン211の上端は、バスバー貫通孔H11~H19、H21~H29の上端から上側に突出する。
【0076】
バスバー群34のうち、一部のバスバーは、
図10に示す第5位置決めピン215によって下側から支持される。第5位置決めピン215は、上下方向に延びる円柱状である。第5位置決めピン215は、
図6に示すように、第1V相用バスバー341V、第1W相用バスバー341W、第2V相用バスバー342V、第2W相用バスバー342Wのそれぞれの下面を下側から支持する。
【0077】
第5位置決めピン215は、V相用バスバーにおける円弧状のバスバー本体部1aV、2aVの周方向の中央部に配置される。
第5位置決めピン215は、W相用バスバーにおける円弧状のバスバー本体部1aW、2aWのそれぞれの2箇所に配置される。バスバー本体部1aWでは、第5位置決めピン215は、幅広部1dWと幅広部1fWの中間位置、および幅広部1eWと幅広部1fWとの中間位置に配置される。バスバー本体部2aWでは、第5位置決めピン215は、幅広部2dWと幅広部2fWの中間位置、および幅広部2eWと幅広部2fWとの中間位置に配置される。
【0078】
8本のバスバーのバスバー貫通孔H11~H19、H21~H29には、それぞれ第1位置決めピン211が挿入され、バスバー貫通孔はそれぞれのバスバーに2つ以上設けられる。この構成により、各々のバスバーは、第1位置決めピン211によって、上下方向と直交する水平方向に位置決めされる。
【0079】
凹部202a内にバスバー群34が設置された後、バスバー群34の上側に、シールド37が設置される。シールド37は、下型202の底面から上側へ延びる第1位置決めピン211と、第4位置決めピン214と、第6位置決めピン216と、上型201の上面から下側へ延びる第2位置決めピン212と、により支持される。
【0080】
図8に示すように、第1位置決めピン211は、シールド37の下面37aに下側から接触する。具体的には、
図7に示す第1V相用バスバー341Vのバスバー貫通孔H13、H14、第1W相用バスバー341Wのバスバー貫通孔H15、第2V相用バスバー342Vのバスバー貫通孔H23、H24、第2W相用バスバー342Wのバスバー貫通孔H25、を通る6本の第1位置決めピン211が、シールド37を下側から支持する。
【0081】
本実施形態の場合、シールド37を支持する6本の第1位置決めピン211は、周方向において比較的分散されて配置される。バスバー貫通孔H15、H25に通される2本の第1位置決めピン211が配置される位置は、バスバー貫通孔H14、H24に通される2本の第1位置決めピン211が配置される位置に対して、上側から見て、中心軸Jを挟んだ反対側に位置する。バスバー貫通孔H13、H23に通される2本の第1位置決めピン211は、周方向において、バスバー貫通孔H15、H25、H14、H24に通される4本の第1位置決めピン211から比較的離れた位置に配置される。この構成によれば、シールド37を下側から支持する第1位置決めピン211が、周方向において偏ることなく間隔を空けて配置されるので、シールド37が傾いたり撓んだりするのを抑制できる。
【0082】
また本実施形態では、外部電源配線部1cU、1cV、1cW、2cU、2cV、2cWに、バスバー貫通孔H11、H12、H14、H16、H21、H22、H24、H26を有する。この構成によれば、バスバーユニット36の製造時に、外部電源配線部1cU、1cV、1cW、2cU、2cV、2cWを、バスバー貫通孔H11、H12、H14、H16、H21、H22、H24、H26に挿入される第1位置決めピン211によって水平方向に固定するので、外部電源への接続端子となる外部電源配線部1cU、1cV、1cW、2cU、2cV、2cWの位置精度を高めることができる。外部電源との接続不良が生じにくいバスバーユニット36を製造できる。
【0083】
本実施形態において、バスバー群34を構成するバスバーは、中心軸Jを中心とする周方向において、複数の外部電源配線部1cU、1cV、1cW、2cU、2cV、2cWが位置するコネクタ部353の中央位置から±45度以内の範囲にバスバー貫通孔を有していてもよい。本実施形態の場合、中心軸Jは、バスバーホルダ35の内孔35aの中心軸に一致する。
図4に、中心軸Jとコネクタ部353の周方向中心位置とを結ぶ第2仮想線VL2と、第2仮想線VL2から周方向に±45°の範囲αを示す。
図4に示す範囲α内に、バスバー貫通孔が配置されていれば、第1位置決めピン211によって複数の外部電源配線部1cU、1cV、1cW、2cU、2cV、2cWの位置精度を高める効果を得ることができる。
【0084】
第1位置決めピン211がシールド37を下側から支持する位置においては、上下方向から見て、シールド37がバスバー貫通孔H13、H14、H15、H23、H24、H25を遮蔽する。すなわち、シールド37は、上下方向から見て複数のバスバー貫通孔H13、H14、H15、H23、H24、H25と個々に重なる複数の貫通孔遮蔽部を有する。そして、シールド37における複数の貫通孔遮蔽部のうち、バスバー貫通孔H14、H24を遮蔽する貫通孔遮蔽部は、外部電源配線部1cV、2cV位置し、他のバスバー貫通孔H13、H15、H23、H25を遮蔽する貫通孔遮蔽部は、バスバー本体部1aV、1aW、2aV、2aWまたはコイル配線部1bV、1bW、2bV、2bWに位置する。
【0085】
第4位置決めピン214は、
図6および
図7に示すシールド貫通孔37dに挿入される。シールド貫通孔37dは、シールド37を上下方向に貫通する孔である。シールド貫通孔37dは、上下方向から見てバスバー群34と重ならない位置に配置される。第4位置決めピン214は円柱状である。第4位置決めピン214は、
図9に示すように、下型202の底面202cから上側へ延び、シールド貫通孔37dに下側から挿入される。第4位置決めピン214の上端は、シールド37の上面よりも上側に突出する。本実施形態の場合、シールド37は、2つのシールド貫通孔37dを有する。
【0086】
第6位置決めピン216は、
図6に示すように、シールド37の下面の3箇所に位置する。第6位置決めピン216は、円柱状である。第6位置決めピン216は、
図12に示すように、下型202の底面202cから上側へ延び、シールド37の下面37aに接触する。第6位置決めピン216は、第1位置決めピン211とともにシールド37を下側から支持する。すなわち、シールド37は、合計9本の位置決めピンにより下側から支持される。第6位置決めピン216は、シールド37を支持する6本の第1位置決めピン211の周方向間隔が広くなっている位置に配置される。第6位置決めピン216により、シールド37を水平姿勢で保持しやすくなる。
【0087】
凹部202a内にバスバー群34とシールド37が設置された後、上型201が下方へ移動され、閉位置に配置される。閉位置は、上型201の下面201aが下型202の上端面202bに突き当てられる位置である。上型201が閉位置に配置されることで、凹部202aの開口部が閉塞される。
【0088】
上型201は、
図8から
図11に示すように、第2位置決めピン212と、第3位置決めピン213とを有する。第2位置決めピン212および第3位置決めピン213は、いずれも上型201の下面201aから下側へ延びる円柱状のピンである。
【0089】
第2位置決めピン212は、
図8および
図12に示すように、シールド37を下側から支持する第1位置決めピン211および第6位置決めピン216と、上側から見て重なる位置に配置される。
図8および
図12に示すように、第2位置決めピン212は、第1位置決めピン211との間、および第6位置決めピン216との間に、シールド37を挟み込み、上下方向に固定する。したがって、上型201を閉位置に配置する工程は、第2位置決めピン212をシールド37の上面37bに接触させ、シールド37を上下方向に位置決めする工程である。
【0090】
第3位置決めピン213は、
図7に示すように、シールド37を下側から支持する第5位置決めピン215(
図6参照)と、上側から見て重なる位置に配置される。第3位置決めピン213は、シールド37を上下に貫通するよう切り欠かれたシールド切欠37cを通る。本実施形態の場合、シールド切欠37cは径方向内側に向かって開口する切り欠きである。
図10に示すように、第3位置決めピン213は、第5位置決めピン215との間に、バスバーを挟み込み、上下方向に固定する。したがって、上型201を閉位置に配置する工程は、第3位置決めピン213を、バスバーの上面に接触させ、バスバーを上下方向に位置決めする工程である。
【0091】
以上の第1工程により、金型200の内部空間に、バスバー群34とシールド37とが位置決めされた状態で固定される。その後の第2工程では、金型200内に樹脂を射出してバスバーホルダ35を成形する。以上の工程により、バスバーユニット36が製造される。
【0092】
本実施形態のバスバーユニット36の製造方法によれば、上型201および下型202に設けられる位置決めピンを用いて、バスバー群34とシールド37とを、上下方向および水平方向に位置決めできる。インサート部品の位置決めのための専用部品を用いることなく、バスバー群34およびシールド37が正確に位置決めされたバスバーユニット36を容易に製造することができる。
【0093】
本実施形態では、バスバー群34とシールド37の両方について、上下方向と水平方向の位置決めを可能とする構成について説明したが、シールド37の水平方向の位置決め機構を備えない構成とすることもできる。すなわち、シールド37を水平方向に位置決めする第4位置決めピン214を備えない金型200を用いてバスバーユニット36を製造してもよい。上下方向から見て十分な大きさのシールド37を用いれば、シールド37の水平方向位置が多少ずれたとしても、バスバー群34から発生する磁気を遮蔽できる。
【0094】
本実施形態の製造方法により得られるバスバーユニット36は、
図2から
図4に示すように、バスバーホルダ35の上面または下面に開口する複数のピン挿入穴を有する。
【0095】
バスバーホルダ35は、
図4に示すように、バスバーホルダ35の下面に開口して上側へ延びる複数の第1ピン挿入穴Hp1を有する。第1ピン挿入穴Hp1は、バスバーユニット36の製造過程において、第1位置決めピン211によって形成される穴である。したがって、第1ピン挿入穴Hp1は、バスバー貫通孔を通ってシールド37の下面に達する穴である。
【0096】
バスバーホルダ35は、
図3に示すように、バスバーホルダ35の上面に開口して下側へ延びる複数の第2ピン挿入穴Hp2を有する。第2ピン挿入穴Hp2は、バスバーユニット36の製造過程において、第2位置決めピン212によって形成される穴である。第2位置決めピン212は、シールド37を下側から支持する第1位置決めピン211および第6位置決めピン216と上下方向に重なる位置において、シールド37を上側から押さえるピンである。したがって、第2ピン挿入穴Hp2は、バスバーホルダ35の上面から下側へ延び、シールド37の上面37bに達する穴である。
【0097】
バスバーホルダ35は、
図3に示すように、バスバーホルダ35の上面に開口して下側へ延びる複数の第3ピン挿入穴Hp3を有する。第3ピン挿入穴Hp3は、バスバーユニット36の製造過程において、第3位置決めピン213によって形成される穴である。第3位置決めピン213は、
図10および
図11に示すように、下型202から延びる第5位置決めピン215との間でバスバーを上下に挟んで保持する。したがって、第3ピン挿入穴Hp3は、バスバーホルダ35の上面から下側へ延び、バスバーの上面に達する穴である。
【0098】
バスバーホルダ35は、
図3および
図4に示すように、バスバーホルダ35を上下に貫通する複数の第4ピン挿入穴Hp4を有する。第4ピン挿入穴Hp4は、バスバーユニット36の製造過程において、第4位置決めピン214によって形成される穴である。第4位置決めピン214は、
図9に示すように、下型202から上側へ延び、シールド貫通孔37dを通って上型201に達する。したがって、第4ピン挿入穴Hp4は、バスバーホルダ35の下面から上側へ延び、シールド貫通孔37dを通ってバスバーホルダ35の上面に抜ける穴である。なお、第4位置決めピン214は、上型201に達しない長さであってもよく、この場合には、第4ピン挿入穴Hp4は、バスバーホルダ35の下面にのみ開口する。
【0099】
バスバーホルダ35は、
図4に示すように、バスバーホルダ35の下面に開口して上側へ延びる複数の第5ピン挿入穴Hp5を有する。第5ピン挿入穴Hp5は、バスバーユニット36の製造過程において、第5位置決めピン215によって形成される穴である。第5位置決めピン215は、
図10および
図11に示すように、第3位置決めピン213との間でバスバーを上下に挟んで保持する。したがって、第5ピン挿入穴Hp5は、バスバーホルダ35の下面から上側へ延び、バスバーの下面に達する穴である。
【0100】
バスバーホルダ35は、
図4に示すように、バスバーホルダ35の下面に開口して上側へ延びる複数の第6ピン挿入穴Hp6を有する。第6ピン挿入穴Hp6は、バスバーユニット36の製造過程において、第6位置決めピン216によって形成される穴である。第6位置決めピン216は、
図12に示すように、第2位置決めピン212との間でバスバーを上下に挟んで保持する。したがって、第6ピン挿入穴Hp6は、バスバーホルダ35の下面から上側へ延び、シールド37の下面37aに達する穴である。
【0101】
上記した複数種類のピン挿入穴を備える構成によって、本実施形態の製造法により得られるバスバーユニットを特定可能である。なお、バスバーユニット36の製造工程において、第4位置決めピン214、第5位置決めピン215、第6位置決めピン216は、必要に応じて用いられる。第4位置決めピン214、第5位置決めピン215、第6位置決めピン216のいずれか1つまたは複数を用いない製造方法により得られるバスバーユニットでは、当然に、使用しない位置決めピンに対応するピン挿入穴を備えない構成となる。
【符号の説明】
【0102】
1…モータ、1aG,1aU,1aV,1aW,2aG,2aU,2aV,2aW…バスバー本体部、1bG,1bU,1bV,1bW,2bG,2bU,2bV,2bW…コイル配線部、1cU,1cV,1cW,2cU,2cV,2cW…外部電源配線部、1dG,1dU,1dv,1dV,1dW,1eG,1eV,1eW,1fW,2dG,2dU,2dV,2dW,2eG,2eV,2eW,2fW…幅広部、20…ロータ、30…ステータ、31…ステータコア、33…コイル、34…バスバー群、35…バスバーホルダ、35a…内孔、36…バスバーユニット、37…シールド、37c…シールド切欠、37d…シールド貫通孔、60…回転位置検出ユニット、200…金型、201…上型、202…下型、211…第1位置決めピン、212…第2位置決めピン、213…第3位置決めピン、214…第4位置決めピン、341U…第1U相用バスバー、341V…第1V相用バスバー、341W…第1W相用バスバー、342U…第2U相用バスバー、342V…第2V相用バスバー、342W…第2W相用バスバー、353…コネクタ部、H11~H19,H21~H29…バスバー貫通孔、Hp1…第1ピン挿入穴、Hp2…第2ピン挿入穴、Hp3…第3ピン挿入穴、J…中心軸、α…範囲