IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋製罐株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-合成樹脂製容器 図1
  • 特許-合成樹脂製容器 図2
  • 特許-合成樹脂製容器 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20250319BHJP
【FI】
B65D1/02 220
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021074173
(22)【出願日】2021-04-26
(65)【公開番号】P2022168598
(43)【公開日】2022-11-08
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 玲太
(72)【発明者】
【氏名】安川 大樹
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-045153(JP,A)
【文献】特開2014-028651(JP,A)
【文献】特開2013-151323(JP,A)
【文献】特開2020-121764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、肩部、胴部、及び底部を備える合成樹脂製容器であって、
前記胴部が、胴部側面部と、前記各胴部側面部の間に位置する胴部コーナー部とを含み、
前記肩部が、前記胴部の前記各胴部側面部の上方に位置して、左右対称に横幅を徐々に狭めて前記口部の下端に連接する肩部側面部と、前記胴部の前記各胴部コーナー部の上方に位置し、かつ、前記各肩部側面部の間に位置する肩部コーナー部とを含み、
前記肩部コーナー部側に始端を有し、前記胴部コーナー部側に終端を有する凹溝部が設けられており、
前記凹溝部の始端が、前記口部と前記肩部との連接部に位置することを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記凹溝部が、溝底部の幅方向両側縁から溝側面が立ち上がる断面台形状の溝形状とされている請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記凹溝部が、始端に向かって先細り状に設けられている請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記凹溝部の終端が、前記胴部コーナー部の上端側に位置する請求項1~のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項5】
前記凹溝部が、前記肩部コーナー部の横幅方向中央部に沿って延在して、前記胴部コーナー部の横幅方向中央部に至る請求項1~のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項6】
前記肩部コーナー部の両側縁に沿って側縁溝部が設けられている請求項1~のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項7】
前記胴部コーナー部の両側縁に沿って縦溝部が設けられているとともに、前記縦溝部が、前記側縁溝部の延長線上に配設されている請求項に記載の合成樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いて、射出成形や圧縮成形などによって有底筒状のプリフォームを作製し、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形によってボトル状に成形してなる合成樹脂製容器が、各種飲料品、各種調味料等を内容物とする容器として広い分野で利用されている。
【0003】
この種の合成樹脂製容器にあっては、内容物を充填密封して出荷された後、その搬送や保管に際して、箱詰めされた状態で積み重ねられることが多々あり、そのときに軸方向に加わる荷重によって座屈変形するなどして、商品価値を損ねてしまわないようにすることが要求される(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
座屈変形の起点となり易い部位が何処になるかは、容器全体の形状と細部の形状との兼ね合いによるが、特許文献1,2では、丸形ボトルと称される容器の接地部又は胴部の座屈変形を抑制しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-189267号公報
【文献】特開2019-189268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、角形ボトルと称される容器にあっては、コーナー部の肩部と胴部との境界付近が座屈変形の起点となり易い傾向にあることに着目し、当該部位を起点とする座屈変形を抑制すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る合成樹脂製容器は、口部、肩部、胴部、及び底部を備える合成樹脂製容器であって、前記胴部が、胴部側面部と、前記各胴部側面部の間に位置する胴部コーナー部とを含み、前記肩部が、前記胴部の前記各胴部側面部の上方に位置して、左右対称に横幅を徐々に狭めて前記口部の下端に連接する肩部側面部と、前記胴部の前記各胴部コーナー部の上方に位置し、かつ、前記各肩部側面部の間に位置する肩部コーナー部とを含み、前記肩部コーナー部側に始端を有し、前記胴部コーナー部側に終端を有する凹溝部が設けられており、前記凹溝部の始端が、前記口部と前記肩部との連接部に位置する構成としてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、角形ボトルにおけるコーナー部の肩部と胴部との境界付近を起点とする座屈変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す斜視図であり、図2は、同正面図、図3は、同平面図である。
【0011】
これらの図に示す容器1は、口部2、肩部3、胴部4、及び底部5を備えており、胴部4が概ね角筒状に形成された、一般に、角形ボトルと称される容器形状を有している。
【0012】
このような容器1は、熱可塑性樹脂を使用して、射出成形や圧縮成形などにより有底筒状に成形されたプリフォームを作製し、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形などにより所定の容器形状に成形することによって製造することができる。
【0013】
使用する熱可塑性樹脂としては、ブロー成形が可能な任意の樹脂を使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,非晶ポリアリレート,ポリ乳酸,ポリエチレンフラノエート又はこれらの共重合体などの熱可塑性ポリエステルが使用でき、特に、ポリエチレンテレフタレートなどのエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが好適に使用できる。これらの樹脂は二種以上混合してもよく、他の樹脂をブレンドしてもよい。ポリカーボネート,アクリロニトリル樹脂,ポリプロピレン,プロピレン-エチレン共重合体,ポリエチレンなども使用できる。
また、プリフォームは、単層に成形するに限らず、容器1に求められる特性に応じて、ガスバリヤー層などを含む多層に成形することもできる。
【0014】
口部2は、内容物の注入出口となる円筒状の部位であり、口部2の開口端側の側面には、図示しない蓋体を取り付けるためのネジ山2aが設けられている。
また、口部2には、周方向に沿って外方に突出する環状のネックリング2bが設けられている。ネックリング2bの直下から、概ね同一径で円筒状に垂下する首下部2cを含めて口部2というものとし、このような口部2の下端が、口部2と胴部4との間をつなぐ肩部3に連接している。
【0015】
胴部4は、容器1の高さ方向の大半を占める部位であり、上端が肩部3に連接し、下端が底部5に連接している。
ここで、高さ方向とは、口部2を上にして容器1を水平面に正立させたときに、水平面に直交する方向をいうものとし、この状態(図2に示す状態)で容器1の上下左右及び縦横の方向を規定するものとする。
【0016】
本実施形態において、概ね角筒状に形成された胴部4は、角部がR面取り状又はC面取り状に面取りされた方形状(正方形状又は長方形状;図示する例では、長方形状)の横断面形状(高さ方向に直交する断面の形状)を有しており、対向する二組の胴部側面部41と、各胴部側面部41の間に位置する面取りされた胴部コーナー部42とを含むように形成されている。
【0017】
なお、図示する例では、胴部4の長辺側に位置する胴部側面部41に符号41a、胴部4の短辺側に位置する胴部側面部41に符号41bを付して便宜上区別しているが、これらを総称して胴部側面部41というものとする。
【0018】
また、胴部4の高さ方向中央から底部5側に寄った部位には、当該部位の剛性を高めるなどの目的で、周方向に沿って延在する周溝40が設けられている。このような周溝40は適宜省略してもよいが、図示する例において、周溝40によって上下に分けられた上胴部4aと下胴部4bには、それぞれの胴部側面部41に減圧吸収パネル45a,45bが設けられている。減圧吸収パネル45a,45bは、容器1の殺菌処理を兼ねて、加熱殺菌された内容液を高温のまま充填(ホット充填)する場合に、容器内を密封した後の内圧減少に伴う容器1の不均一な形状変化を防止するためのものであり、要求される減圧吸収性能に応じて種々のパネル形状を採用することができる。
【0019】
このような胴部4と、円筒状に形成された口部2との間をつなぐ肩部3は、その横断面形状が、胴部4側から口部2側に向かって、胴部4の横断面形状(角部が面取りされた方形状の横断面形状)から、口部2の横断面形状(円形状の横断面形状)へと連続的に変化するように形成される。本実施形態にあっては、肩部3の横断面形状がこのように変化するべく、胴部4の各胴部側面部41の上方に位置して、左右対称に横幅を徐々に狭めて口部2の下端に連接する肩部側面部31と、胴部4の各胴部コーナー部42の上方に位置し、かつ、各肩部側面部31の間に位置する肩部コーナー部32とを含むように形成された肩部3によって、胴部4と口部2との間をつないでいる。
【0020】
このように形成された容器1にあっては、軸方向に加わる荷重が、肩部3の肩部コーナー部32から、胴部4の胴部コーナー部42に伝わる際に、これらが柱の如く機能して当該荷重を受けることになるが、その際、肩部3と胴部4との境界付近が座屈変形の起点となり易い傾向にある。本実施形態では、肩部コーナー部32側に始端6aを有し、胴部コーナー部42側に終端6bを有する凹溝部6を設けることによって、このような角形ボトルにおけるコーナー部32,42の肩部3と胴部4との境界付近を起点とする座屈変形を抑制できるようにしている。
【0021】
凹溝部6の形態は、特に限定されず、例えば、直線状の溝底部で溝側面が交わる断面V字状の溝形状としてもよいが、座屈変形をより有効に抑制して、軸方向に加わる荷重に対する耐荷重強度(縦圧縮強度)を向上させる上で、凹溝部6は、図示するように、所定の幅の溝底部を有し、当該溝底部の幅方向両側縁から溝側面が立ち上がる断面台形状の溝形状とするのが好ましい。
また、凹溝部6は、肩部コーナー部32側に位置する始端6aに向かって先細り状に設けられているのが好ましい。
【0022】
また、凹溝部6が肩部3の表面に沿って延在するように設けられていれば、凹溝部6の始端6aの位置は、特に限定されないが、口部2側に寄った位置に始端6aがあるのが好ましく、口部2と肩部3との連接部に始端6aが位置するのが特に好ましい。凹溝部6が肩部3と胴部4との連接部を跨いで、胴部コーナー部42側に至るように延在していれば、凹溝部6の終端6bの位置も、特に限定されないが、胴部コーナー部42の上端側に位置するのが好ましい。さらに、凹溝部6は、肩部コーナー部32の横幅方向中央部に沿って延在して、胴部コーナー部42の横幅方向中央部に至るように設けられているのが好ましい。これらの態様は、コーナー部32,42の肩部3と胴部4との境界付近を起点とする座屈変形をより有効に抑制できるように、適宜選択することができる。
【0023】
また、図示する例において、肩部3には、肩部コーナー部32の両側縁に沿って側縁溝部7が設けられている。これにより、肩部3をより薄肉に形成しながらも、肩部3の強度を確保することができるとともに、このような態様は、コーナー部32,42の肩部3と胴部4との境界付近を起点とする座屈変形を抑制する上でも有利である。そして、胴部4には、胴部4をより薄肉に形成しながらも、胴部4の強度を確保できるように、胴部コーナー部42の両側縁に沿って縦溝部8が設けられているとともに、当該縦溝部8は、肩部3に設けられた側縁溝部7の延長線上に配設されている。
【0024】
このような態様とすることで、容器1に軸方向に荷重が加わった際に、コーナー部32,42で受けた当該荷重が、肩部3に設けられた側縁溝部7と、胴部4に設けられた縦溝部8とを伝わって、縦溝部8の下端側(図示する例にあっては、周溝40の付近)まで、その途中で座屈変形を生じることなく伝搬されていくようにすることができる。その結果、座屈変形の起点となり得る部位が、肩部3と胴部4との境界付近から、縦溝部8の下端側の部位に移動することになるが、容器1をブロー成形する際の成形条件を適宜調整し、当該部位を選択的に厚肉に形成して、当該部位での座屈変形が生じ難くすることによって、容器1を全体的により薄肉に形成しながらも、縦圧縮強度をさらに向上させることが可能になる。
【実施例
【0025】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0026】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート系樹脂を用いて、重量約28gのプリフォームを射出成形により作製した。作製したプリフォームを加熱して軟化させた後、ブロー成形型にセットして、二軸延伸ブロー成形により図1等に示す容器形状となるように容器1を成形した。
容器1は720mLボトルであり、平均肉厚は約0.27mmであった。
【0027】
得られた容器1に軸方向の荷重を加え、徐々に荷重を増加させていったところ、荷重約219Nで容器1の高さが約3.6mm圧縮されたときに、コーナー部32,42の肩部3と胴部4との境界付近に座屈変位が認められた。
【0028】
[比較例1]
凹溝部6を設けなかった以外は、実施例1と同一の容器形状となるように容器を成形した。
【0029】
得られた容器に軸方向の荷重を加え、徐々に荷重を増加させていったところ、荷重約190Nで容器の高さが約3.2mm圧縮されたときに、コーナー部32,42の肩部3と胴部4との境界付近の座屈変位が認められた。
【0030】
これらの結果から、本発明によれば、角形ボトルにおけるコーナー部32,42の肩部3と胴部4との境界付近を起点とする座屈変形を抑制することができ、縦圧縮強度が向上することが確認できた。
【0031】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1 容器
2 口部
3 肩部
31 肩部側面部
32 肩部コーナー部
4 胴部
41 胴部側面部
42 胴部コーナー部
5 底部
6 凹溝部
6a 始端
6b 終端
7 側縁溝部
8 縦溝部
図1
図2
図3