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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】高温超電導線材の接続構造
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/82 20230101AFI20250319BHJP
   H01F 6/06 20060101ALI20250319BHJP
   H01R 4/68 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
H10N60/82
H01F6/06 140
H01R4/68
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021075647
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022169922
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-10-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業「高温超電導線材接合技術の超高磁場NMRと鉄道き電線への社会実装」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大木 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】永石 竜起
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0145049(KR,A)
【文献】国際公開第2018/211765(WO,A1)
【文献】特開平06-040775(JP,A)
【文献】特表2013-503422(JP,A)
【文献】特開2005-085612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/82
H01F 6/06
H01R 4/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1高温超電導線材と、
前記第1高温超電導線材に超電導接続されている第2高温超電導線材とを備え、
前記第1高温超電導線材と前記第2高温超電導線材との間の接続部において前記第1高温超電導線材の第1長手方向と前記第2高温超電導線材の第2長手方向とが互いに交差するように、前記第2高温超電導線材は、前記第1高温超電導線材に対して配置されており
前記第1高温超電導線材は、第1主面を含む第1基板と、前記第1主面上に形成されている第1中間層と、前記第1中間層上に形成されている第1高温超電導層とを含み、
前記第2高温超電導線材は、第2主面を含む第2基板と、前記第2主面上に形成されている第2中間層と、前記第2中間層上に形成されている第2高温超電導層とを含み、
前記第2高温超電導層は、前記第1高温超電導層に超電導接合されており、
前記第1基板及び前記第1中間層は、第1のIAD基板であり、
前記第2基板及び前記第2中間層は、第2のIAD基板である、高温超電導線材の接続構造。
【請求項2】
第1高温超電導線材と、
前記第1高温超電導線材に超電導接続されている第2高温超電導線材とを備え、
前記第1高温超電導線材と前記第2高温超電導線材との間の接続部において前記第1高温超電導線材の第1長手方向と前記第2高温超電導線材の第2長手方向とが互いに交差するように、前記第2高温超電導線材は、前記第1高温超電導線材に対して配置されており、
前記第1高温超電導線材は、第1主面を含む第1基板と、前記第1主面上に形成されている第1中間層と、前記第1中間層上に形成されている第1高温超電導層とを含み、
前記第2高温超電導線材は、第2主面を含む第2基板と、前記第2主面上に形成されている第2中間層と、前記第2中間層上に形成されている第2高温超電導層とを含み、
前記第2高温超電導層は、前記第1高温超電導層に超電導接合されており、
前記第1主面の平面視における前記第1基板の第1圧延方向と前記第1高温超電導層の第1結晶軸の第1方向との間の第1角度は、前記第2主面の平面視における前記第2基板の第2圧延方向と前記第1結晶軸に対応する前記第2高温超電導層の第2結晶軸の第2方向との間の第2角度と異なっており、
前記接続部において、前記第1高温超電導層の前記第1結晶軸の前記第1方向は、前記第2高温超電導層の前記第2結晶軸の前記第2方向に沿っている、高温超電導線材の接続構造。
【請求項3】
前記第2角度と前記第1角度との間の差は、5°より大きくかつ175°未満である、請求項に記載の高温超電導線材の接続構造。
【請求項4】
前記第2角度と前記第1角度との間の差は、15°以上かつ165°以下である、請求項に記載の高温超電導線材の接続構造。
【請求項5】
前記第2角度と前記第1角度との間の差は、30°以上かつ150°以下である、請求項に記載の高温超電導線材の接続構造。
【請求項6】
前記第1基板及び前記第1中間層は、第1のIAD基板であり、
前記第2基板及び前記第2中間層は、第2のIAD基板である、請求項から請求項のいずれか一項に記載の高温超電導線材の接続構造。
【請求項7】
前記第1高温超電導線材の前記第1長手方向と前記第2高温超電導線材の前記第2長手方向との間の角度は、5°より大きくかつ175°未満である、請求項1に記載の高温超電導線材の接続構造。
【請求項8】
前記第1高温超電導線材の前記第1長手方向と前記第2高温超電導線材の前記第2長手方向との間の角度は、15°以上かつ165°以下である、請求項1に記載の高温超電導線材の接続構造。
【請求項9】
前記第1高温超電導線材の前記第1長手方向と前記第2高温超電導線材の前記第2長手方向との間の角度は、30°以上かつ150°以下である、請求項1に記載の高温超電導線材の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高温超電導線材の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2013-235699号公報(特許文献1)は、第1高温超電導線材と第2高温超電導線材とが互いに超電導接続されている高温超電導線材の接続構造を開示している。この高温超電導線材の接続構造では、第1高温超電導線材と第2高温超電導線材との間の接続部において、第1高温超電導線材と第2高温超電導線材とは互いに真っすぐに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-235699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、高温超電導線材の配線の自由度を向上させることができる高温超電導線材の接続構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の高温超電導線材の接続構造は、第1高温超電導線材と、第1高温超電導線材に超電導接続されている第2高温超電導線材とを備える。第1高温超電導線材と第2高温超電導線材との間の接続部において第1高温超電導線材の第1長手方向と第2高温超電導線材の第2長手方向とが互いに交差するように、第2高温超電導線材は、第1高温超電導線材に対して配置されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、高温超電導線材の配線の自由度を向上させることができる高温超電導線材の接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施の形態の高温超電導線材の接続構造の概略平面図である。
図2図2は、実施の形態の高温超電導線材の接続構造の、図1に示される断面線II-IIにおける概略断面図である。
図3図3は、実施の形態の高温超電導線材の接続構造の、図1に示される断面線III-IIIにおける概略断面図である。
図4図4は、実施の形態の高温超電導線材の接続構造の、図1に示される断面線IV-IVにおける概略断面図である。
図5図5は、第1高温超電導層及び第2高温超電導層の結晶構造を示す図である。
図6図6は、実施の形態の高温超電導線材の接続構造の製造方法のフローチャートを示す図である。
図7図7は、第1高温超電導線材と第2高温超電導線材とを準備する工程のフローチャートを示す図である。
図8図8は、第1高温超電導線材と第2高温超電導線材とを互いに超電導接続する工程のフローチャートを示す図である。
図9図9は、実施の形態の第1変形例の高温超電導線材の接続構造の概略平面図である。
図10図10は、実施の形態の第2変形例の高温超電導線材の接続構造の概略平面図である。
図11図11は、実施の形態の第3変形例の高温超電導線材の接続構造の概略平面図である。
図12図12は、実施の形態の高温超電導線材の接続構造を適用した、実施の形態の高温超電導線材の配線構造の第一の例の概略図である。
図13図13は、実施の形態の高温超電導線材の接続構造を適用した、実施の形態の高温超電導線材の配線構造の第二の例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0009】
(1)本開示に係る高温超電導線材の接続構造は、第1高温超電導線材と、第1高温超電導線材に超電導接続されている第2高温超電導線材とを備える。第1高温超電導線材と第2高温超電導線材との間の接続部において第1高温超電導線材の第1長手方向と第2高温超電導線材の第2長手方向とが互いに交差するように、第2高温超電導線材は、第1高温超電導線材に対して配置されている。
【0010】
そのため、高温超電導線材の配線の自由度を向上させることができる。
【0011】
(2)上記(1)に係る高温超電導線材の接続構造では、第1高温超電導線材の第1長手方向と第2高温超電導線材の第2長手方向との間の角度は、5°より大きくかつ175°未満である。
【0012】
そのため、高温超電導線材の配線の自由度を向上させることができる。
【0013】
(3)上記(1)に係る高温超電導線材の接続構造では、第1高温超電導線材の第1長手方向と第2高温超電導線材の第2長手方向との間の角度は、15°以上かつ165°以下である。
【0014】
そのため、高温超電導線材の配線の自由度を向上させることができる。
【0015】
(4)上記(1)に係る高温超電導線材の接続構造では、第1高温超電導線材の第1長手方向と第2高温超電導線材の第2長手方向との間の角度は、30°以上かつ150°以下である。
【0016】
そのため、高温超電導線材の配線の自由度を向上させることができる。
【0017】
(5)上記(1)から(4)のいずれかに係る高温超電導線材の接続構造では、第1高温超電導線材は、第1主面を含む第1基板と、第1主面上に形成されている第1中間層と、第1中間層上に形成されている第1高温超電導層とを含む。第2高温超電導線材は、第2主面を含む第2基板と、第2主面上に形成されている第2中間層と、第2中間層上に形成されている第2高温超電導層とを含む。第2高温超電導層は、第1高温超電導層に超電導接合されている。
【0018】
そのため、高温超電導線材の配線の自由度を向上させることができる。
【0019】
(6)上記(5)に係る高温超電導線材の接続構造では、第1主面の平面視における第1基板の第1圧延方向と第1高温超電導層の第1結晶軸の第1方向との間の第1角度は、第2主面の平面視における第2基板の第2圧延方向と第1結晶軸に対応する第2高温超電導層の第2結晶軸の第2方向との間の第2角度と異なっている。第1高温超電導線材と第2高温超電導線材との間の接続部において、第1高温超電導層の第1結晶軸の第1方向は、第2高温超電導層の第2結晶軸の第2方向に沿っている。
【0020】
そのため、高温超電導線材の配線の自由度を向上させることができる。また、第1高温超電導線材と第2高温超電導線材との間の接続部における臨界電流密度Jの大幅な減少が回避され得る。
【0021】
(7)上記(6)に係る高温超電導線材の接続構造では、第2角度と第1角度との間の差は、5°より大きくかつ175°未満である。
【0022】
そのため、高温超電導線材の配線の自由度を向上させることができる。
【0023】
(8)上記(6)に係る高温超電導線材の接続構造では、第2角度と第1角度との間の差は、15°以上かつ165°以下である。
【0024】
そのため、高温超電導線材の配線の自由度を向上させることができる。
【0025】
(9)上記(6)に係る高温超電導線材の接続構造では、第2角度と第1角度との間の差は、30°以上かつ150°以下である。
【0026】
そのため、高温超電導線材の配線の自由度を向上させることができる。
【0027】
(10)上記(5)から(9)のいずれかに係る高温超電導線材の接続構造では、第1基板は配向金属基板であり、第2基板及び第2中間層はIAD基板である。
【0028】
そのため、高温超電導線材の配線の自由度を向上させることができる。
【0029】
(11)上記(5)から(9)のいずれかに係る高温超電導線材の接続構造では、第1基板及び第1中間層は第1のIAD基板であり、第2基板及び第2中間層は第2のIAD基板である。
【0030】
そのため、高温超電導線材の配線の自由度を向上させることができる。
【0031】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、図面に基づいて本開示の実施の形態の詳細について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。以下に記載する実施の形態の少なくとも一部の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0032】
図1から図5を参照して、実施の形態の高温超電導線材の接続構造1を説明する。本実施の形態の高温超電導線材の接続構造1は、第1高温超電導線材10と、第2高温超電導線材20とを備える。
【0033】
図1から図3を参照して、第1高温超電導線材10は、第1基板11と、第1中間層12と、第1高温超電導層13と、第1安定化層14とを含む。
【0034】
第1基板11は、第1主面11aを含む。第1基板11は、第1圧延方向11rに沿って圧延されている。第1圧延方向11rは、例えば、第1高温超電導線材10の第1長手方向である。
【0035】
第1中間層12は、第1主面11a上に形成されている。第1中間層12は、単層で構成されてもよいし、複数層で構成されてもよい。第1中間層12は、第1基板11と第1高温超電導層13との間に設けられている。第1中間層12は、第1高温超電導層13を構成する元素との反応性が極めて低い材料で形成されている。第1中間層12は、第1高温超電導層13を構成する元素が第1基板11と反応することを防止する。そのため、第1中間層12上に形成される第1高温超電導層13の超電導特性が低下することが防止され得る。第1中間層12は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、CeO(酸化セリウム)、MgO(酸化マグネシウム)、Y(酸化イットリウム)、Al(酸化アルミニウム)、LaMnO(酸化ランタンマンガン)、GdZr(ジルコン酸ガドリニウム)またはSrTiO(チタン酸ストロンチウム)の少なくとも一つから構成されている。
【0036】
一例では、第1基板11は、配向金属基板であってもよい。配向金属基板は、金属基板の表面において、結晶方位が揃っている金属基板を意味する。配向金属基板は、例えば、SUSまたはハステロイ(登録商標)のベース金属基板上に銅層及びニッケル層などが積層されたクラッドタイプの金属基板であってもよい。別の例では、第1基板11及び第1中間層12はIAD基板であってもよい。IAD基板は、ニッケル基合金基板のような金属基板と、イオンビームアシスト蒸着(IAD)法により金属基板上に形成された配向中間層とを含む。IAD基板では、金属基板は無配向金属基板であってもよい。配向金属基板及びIAD基板は、それらの上に形成される高温超電導層を形成する結晶粒の結晶方位を揃える機能を有する。そのため、高温超電導層の臨界電流密度Jは増加する。
【0037】
第1高温超電導層13は、第1中間層12上に形成されている。第1高温超電導層13は、例えば、RE1BaCuy1(6.0≦y1≦8.0、RE1は希土類元素を表す)により構成されている。RE1は、例えば、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、ユウロピウム(Eu)、サマリウム(Sm)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)またはホルミウム(Ho)である。y1は、例えば、6.8以上7.0以下である。
【0038】
第1高温超電導層13は、図5に示されるような層状ペロブスカイト構造である結晶構造を有している。第1高温超電導層13の結晶構造は、結晶軸として、a軸、b軸及びc軸を有している。第1高温超電導層13のa軸方向13a及びb軸方向は、第1高温超電導線材10の厚さ方向に垂直である。第1高温超電導線材10の厚さ方向は、第1基板11、第1中間層12及び第1高温超電導層13の積層方向である、あるいは、第1主面11aの法線方向である。第1高温超電導層13のa軸方向13a及びb軸方向は、第1高温超電導線材10の面内方向に沿っている。第1高温超電導層13のa軸方向13a及びb軸方向は、第1主面11aの面内方向に沿っている。第1高温超電導層13のc軸方向は、第1高温超電導線材10の厚さ方向に沿っている。
【0039】
第1高温超電導層13のa軸方向13aは、第1高温超電導層13を形成する複数の結晶粒のa軸方向の平均的な方向によって与えられる。第1高温超電導層13の面内配向度Δφは、例えば、6.0°以下である。高温超電導層の面内配向度Δφは、高温超電導層に対してX線回折(XRD)測定を行うことによって得られる、高温超電導層のa軸方向の分散の半値全幅(FWHM)の値である。高温超電導層の面内配向度Δφは、高温超電導層の面内方向において、高温超電導材料の結晶粒の結晶方位が揃っている程度を規定する。面内配向度Δφが小さいほど、結晶粒の結晶方位はより一層揃っており、高温超電導層の結晶配向性はより一層良い。
【0040】
図1を参照して、第1高温超電導線材10が配向金属基板を含む場合、すなわち、第1基板11が配向金属基板である場合には、第1高温超電導層13のa軸方向13aは、第1基板11の第1圧延方向11rであるとともに、第1高温超電導線材10の第1長手方向である。
【0041】
第1高温超電導線材10がIAD基板を含む場合、すなわち、第1基板11及び第1中間層12がIAD基板である場合には、IAD法におけるイオンビームの照射方向を変えることによって、第1高温超電導層13のa軸方向13aは、第1高温超電導層13の面内方向における任意の方向に設定され得る。図1を参照して、本実施の形態では、第1高温超電導層13のa軸方向13aは、第1基板11の第1圧延方向11rであるとともに、第1高温超電導線材10の第1長手方向である。しかし、第1高温超電導線材10がIAD基板を含む場合には、第1高温超電導層13のa軸方向13aは、第1基板11の第1圧延方向11r及び第1高温超電導線材10の第1長手方向に限られない。
【0042】
図2及び図3を参照して、第1安定化層14は、例えば、銅または銀のような金属で形成されている。第1安定化層14は、第1高温超電導層13上に形成されている。第1安定化層14は、第1高温超電導層13にクエンチが発生した際に、第1高温超電導層13を流れていた電流をバイパスさせて、第1高温超電導線材10の焼損を防止する。クエンチは、超電導状態から常電導状態に移行する現象である。第1安定化層14は、第1基板11上にも形成されてもよい。第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20との間の接続部2では、第1安定化層14は、第1高温超電導層13上に形成されていない。第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20との間の接続部2では、第1高温超電導層13は第1安定化層14から露出している。
【0043】
図1図2及び図4を参照して、第2高温超電導線材20は、第2基板21と、第2中間層22と、第2高温超電導層23と、第2安定化層24とを含む。
【0044】
第2基板21は、第2主面21aを含む。第2基板21は、第2圧延方向21rに沿って圧延されている。第2圧延方向21rは、例えば、第2高温超電導線材20の第2長手方向である。
【0045】
第2中間層22は、第2主面21a上に形成されている。第2中間層22は、単層で構成されてもよいし、複数層で構成されてもよい。第2中間層22は、第2基板21と第2高温超電導層23との間に設けられている。第2中間層22は、第2高温超電導層23を構成する元素との反応性が極めて低い材料で形成されている。第2中間層22は、第2高温超電導層23を構成する元素が第2基板21と反応することを防止する。そのため、第2中間層22上に形成される第2高温超電導層23の超電導特性が低下することが防止され得る。第2中間層22は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、CeO(酸化セリウム)、MgO(酸化マグネシウム)、Y(酸化イットリウム)、Al(酸化アルミニウム)、LaMnO(酸化ランタンマンガン)、GdZr(ジルコン酸ガドリニウム)またはSrTiO(チタン酸ストロンチウム)の少なくとも一つから構成されている。
【0046】
第2基板21及び第2中間層22は、例えば、IAD基板であってもよい。すなわち、第2高温超電導線材20は、例えば、IAD基板を含んでもよい。
【0047】
第2高温超電導層23は、第2中間層22上に形成されている。第2高温超電導層23は、例えば、RE2BaCuy2(6.0≦y2≦8.0、RE2は希土類元素を表す)により構成されている。RE2は、例えば、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、ユウロピウム(Eu)、サマリウム(Sm)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)またはホルミウム(Ho)である。RE2は、RE1と同じであってもよいし、RE1と異なってもよい。y2は、例えば、6.8以上7.0以下である。
【0048】
第2高温超電導層23は、図5に示されるような層状ペロブスカイト構造である結晶構造を有している。第2高温超電導層23の結晶構造は、結晶軸として、a軸、b軸及びc軸を有している。第2高温超電導層23のa軸方向23a及びb軸方向は、第2高温超電導線材20の厚さ方向に垂直である。第2高温超電導線材20の厚さ方向は、第2基板21、第2中間層22及び第2高温超電導層23の積層方向である、あるいは、第2主面21aの法線方向である。第2高温超電導層23のa軸方向23a及びb軸方向は、第2高温超電導線材20の面内方向に沿っている。第2高温超電導層23のa軸方向23a及びb軸方向は、第2主面21aの面内方向に沿っている。第2高温超電導層23のc軸方向は、第2高温超電導線材20の厚さ方向に沿っている。
【0049】
第2高温超電導層23のa軸方向23aは、第2高温超電導層23を形成する複数の結晶粒のa軸方向の平均的な方向によって与えられる。第2高温超電導層23の面内配向度Δφは、例えば、6.0°以下である。
【0050】
IAD法におけるイオンビームの照射方向を変えることによって、第2高温超電導層23のa軸方向23aは、第2高温超電導層23の面内方向における任意の方向に設定され得る。図1を参照して、本実施の形態では、第2高温超電導層23のa軸方向23aは、第2基板21の第2圧延方向21rに対して45°傾いているとともに、第2高温超電導線材20の第2長手方向に対して45°傾いている。しかし、図9から図13に示されるように、第2高温超電導線材20がIAD基板を含む場合には、第2高温超電導層23のa軸方向23aは、第2基板21の第2圧延方向21r及び第2高温超電導線材20の第2長手方向に対して45°傾いた方向に限られない。
【0051】
図2及び図4を参照して、第2安定化層24は、例えば、銅または銀のような金属で形成されている。第2安定化層24は、第2高温超電導層23上に形成されている。第2安定化層24は、第2高温超電導層23にクエンチが発生した際に、第2高温超電導層23を流れていた電流をバイパスさせて、第2高温超電導線材20の焼損を防止する。第2安定化層24は、第2基板21上にも形成されてもよい。第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20との間の接続部2では、第2安定化層24は、第2高温超電導層23上に形成されていない。第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20との間の接続部2では、第2高温超電導層23は第2安定化層24から露出している。
【0052】
図1及び図2を参照して、第2高温超電導層23は、高温超電導材料の超電導接合層40によって、第1高温超電導層13に超電導接合されている。超電導接合層40は、例えば、RE3BaCuy3(6.0≦y3≦8.0、RE3は希土類元素を表す)により構成されている。RE3は、例えば、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、ユウロピウム(Eu)、サマリウム(Sm)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)またはホルミウム(Ho)である。RE3は、RE1またはRE2の少なくとも一つと同じであってもよいし、RE1またはRE2の少なくとも一つと異なってもよい。y3は、例えば、6.8以上7.0以下である。
【0053】
第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20との間の接続部2において第1高温超電導線材10の第1長手方向と第2高温超電導線材20の第2長手方向とが互いに交差するように、第2高温超電導線材20は、第1高温超電導線材10に対して配置されている。第1高温超電導線材10の第1長手方向と第2高温超電導線材20の第2長手方向との間の角度θ(図1及び図9から図11を参照)は、0°より大きくかつ180°より小さいことを意味する。角度θは、第1高温超電導線材10の第1長手方向と第2高温超電導線材20の第2長手方向との間の二つの角度のうち、180°より小さい方の角度として定義される。
【0054】
例えば、第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20との間の接続部2において、第2高温超電導線材20は、第1高温超電導線材10に対してエッジワイズ方向に曲がっている。エッジワイズ方向は、第1高温超電導線材10の幅方向である。第1高温超電導線材10の幅方向は、第1主面11aに沿い、かつ、第1高温超電導線材10の第1長手方向に垂直な方向である。第1高温超電導線材10の幅方向は、第1主面11aの法線方向と第1高温超電導線材10の第1長手方向とに垂直な方向である。
【0055】
角度θは、5°より大きくかつ175°未満であってもよい。角度θは、15°以上かつ165°以下であってもよい。角度θは、30°以上かつ150°以下であってもよい。
【0056】
角度θは、5°より大きくかつ80°未満、または、100°より大きくかつ175°未満であってもよい。角度θは、15°以上かつ75°以下、または、105°以上かつ165°以下であってもよい。角度θは、30°以上かつ60°以下、または、120°以上かつ150°以下であってもよい。
【0057】
例えば、図1に示される本実施の形態では、角度θは45°である。図9に示される本実施の形態の第1変形例では、角度θは135°である。図10に示される本実施の形態の第2変形例では、角度θは60°である。図11に示される本実施の形態の第3変形例では、角度θは120°である。
【0058】
図1及び図9から図11を参照して、第1角度α及び第2角度βのうち少なくとも第2角度βを任意の角度に設定することによって、角度θは、任意の角度に設定され得る。第1高温超電導線材10に対する第2高温超電導線材20の配線の自由度が向上し得る。
【0059】
第1角度αは、第1主面11aの平面視における、第1基板11の第1圧延方向11rと第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向との間の角度である。第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向は、例えば、第1高温超電導層13のa軸方向13aである。第2角度βは、第2主面21aの平面視における、第2基板21の第2圧延方向21rと第1結晶軸に対応する第2高温超電導層23の第2結晶軸の第2方向との間の角度である。第1結晶軸に対応する第2高温超電導層23の第2結晶軸の第2方向は、例えば、第2高温超電導層23のa軸方向23aである。第2高温超電導層23の第2結晶軸が第1高温超電導層13の第1結晶軸に対応していることは、高温超電導層の結晶構造の結晶軸の点において、第2高温超電導層23の第2結晶軸が第1高温超電導層13の第1結晶軸と同じであることを意味する。例えば、第1高温超電導層13の第1結晶軸が第1高温超電導層13のa軸であるとき、第2高温超電導層23の第2結晶軸は第2高温超電導層23のa軸である。
【0060】
第1角度αは、第2角度βと異なっている。第2角度βと第1角度αとの間の差は、5°より大きくかつ175°未満であってもよい。第2角度βと第1角度αとの間の差は、15°以上かつ165°以下であってもよい。第2角度βと第1角度αとの間の差は、30°以上かつ150°以下であってもよい。
【0061】
第2角度βと第1角度αとの間の差は、5°より大きくかつ80°未満、または、100°より大きくかつ175°未満であってもよい。第2角度βと第1角度αとの間の差は、15°以上かつ75°以下、または、105°以上かつ165°以下であってもよい。第2角度βと第1角度αとの間の差は、30°以上かつ60°以下、または、120°以上かつ150°以下であってもよい。
【0062】
例えば、図1に示される本実施の形態では、第1角度αは0°であり、第2角度βは45°であり、第2角度βと第1角度αとの間の差は45°である。図9に示される本実施の形態の第1変形例では、第1角度αは0°であり、第2角度βは135°であり、第2角度βと第1角度αとの間の差は135°である。図10に示される本実施の形態の第2変形例では、第1角度αは0°であり、第2角度βは60°であり、第2角度βと第1角度αとの間の差は60°である。図11に示される本実施の形態の第3変形例では、第1角度αは0°であり、第2角度βは120°であり、第2角度βと第1角度αとの間の差は120°である。
【0063】
第2主面21aの平面視において、第2高温超電導層23の第2結晶軸の第2方向は、第2基板21の第2圧延方向21rに対して傾いてもよい。第2高温超電導層23の第2結晶軸の第2方向は、例えば、第2高温超電導層23のa軸方向23aである。そのため、第1角度αが0°または90°であっても、第2角度βを第1角度αと異ならせることができる。
【0064】
第2角度βは、5°より大きくかつ175°未満であってもよい。第2角度βは、15°以上かつ165°以下であってもよい。第2角度βは、30°以上かつ150°以下であってもよい。
【0065】
第2角度βは、5°より大きくかつ80°未満、または、100°より大きくかつ175°未満であってもよい。第2角度βは、15°以上かつ75°以下、または、105°以上かつ165°以下であってもよい。第2角度βは、30°以上かつ60°以下、または、120°以上かつ150°以下であってもよい。
【0066】
例えば、図1に示される本実施の形態では、第2角度βは45°である。図9に示される本実施の形態の第1変形例では、第2角度βは135°である。図10に示される本実施の形態の第2変形例では、第2角度βは60°である。図11に示される本実施の形態の第3変形例では、第2角度βは120°である。
【0067】
第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20との間の接続部2において、第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向は、第2高温超電導層23の第2結晶軸の第2方向に沿っている。第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向は、例えば、第1高温超電導層13のa軸方向13aである。第2高温超電導層23の第2結晶軸の第2方向は、例えば、第2高温超電導層23のa軸方向23aである。本明細書において、第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向が第2高温超電導層23の第2結晶軸の第2方向に沿っていることは、第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向と第2高温超電導層23の第2結晶軸の第2方向との間の角度の絶対値が5°以下であることを意味する。第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向と第2高温超電導層23の第2結晶軸の第2方向との間の角度の絶対値は、3°以下であってもよく、1°以下であってもよい。そのため、接続部2における臨界電流密度Jの大幅な減少が回避され得る。
【0068】
図6を参照して、本実施の形態の高温超電導線材の接続構造1の製造方法を説明する。本実施の形態の高温超電導線材の接続構造1の製造方法は、第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20とを準備すること(S10)と、第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20とを互いに超電導接続すること(S20)とを備えている。
【0069】
図7を参照して、第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20とを準備すること(S10)を説明する。
【0070】
第1基板11及び第2基板21を圧延する(S11)。例えば、圧延ロールが、基板の圧延に用いられる。第1基板11は、例えば、第1基板11の第1長手方向に沿って圧延される。第1基板11の第1圧延方向11rは、例えば、第1基板11の第1長手方向である。第2基板21は、例えば、第2基板21の第2長手方向に沿って圧延される。第2基板21の第2圧延方向21rは、例えば、第2基板21の第2長手方向である。
【0071】
第1中間層12及び第2中間層22を形成する(S12)。第1中間層12は、第1基板11上に形成される。第2中間層22は、第2基板21上に形成される。中間層は、例えば、IAD法などによって形成される。
【0072】
第1基板11が配向金属基板である場合、第1基板11の第1圧延方向11rによって、第1基板11の表面の結晶方位が設定される。第1基板11の表面の結晶配向性を向上させるために、第1基板11に熱を印加しながら、第1基板11を圧延してもよい。
【0073】
第1基板11及び第1中間層12がIAD基板である場合、第1基板11は、ハステロイ(登録商標)のような無配向金属基板であってもよい。第2基板21及び第2中間層22は、例えば、IAD基板である。第2基板21は、ハステロイ(登録商標)のような無配向金属基板であってもよい。IAD基板は、中間層(第1中間層12、第2中間層22)として、配向中間層とを含む。中間層(第1中間層12、第2中間層22)の配向方向は、IAD法におけるイオンビームの照射方向を変えることによって、任意の方向に設定され得る。
【0074】
第1高温超電導層13及び第2高温超電導層23を形成する(S13)。第1高温超電導層13は、第1中間層12上に形成される。第2高温超電導層23は、第2中間層22上に形成される。高温超電導層(第1高温超電導層13、第2高温超電導層23)は、例えば、パルスレーザ蒸着(PLD)法、有機金属化学気相成長(MOCVD)法または塗布熱分解法(Metal Organic Deposition(MOD)法)などを用いて、中間層(第1中間層12、第2中間層22)上に形成される。
【0075】
第1基板11が配向金属基板である場合、第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向は、第1基板11の表面の結晶方位によって規定される。第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向は、例えば、第1高温超電導層13のa軸方向13aである。図1を参照して、第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向は、第1基板11の第1圧延方向11rであるとともに、第1高温超電導線材10の第1長手方向である。
【0076】
第1基板11がIAD基板である場合、第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向は、第1中間層12の配向方向によって規定される。第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向は、例えば、第1高温超電導層13のa軸方向13aである。第2基板21がIAD基板である場合、第2高温超電導層23の第2結晶軸の第2方向は、第2中間層22の配向方向によって規定される。第2高温超電導層23の第2結晶軸の第2方向は、例えば、第2高温超電導層23のa軸方向23aである。
【0077】
IAD法におけるイオンビームの照射方向を変えることによって、高温超電導層の結晶方位は、高温超電導層の面内方向において任意の方向に設定され得る。そのため、少なくとも第2高温超電導線材20がIAD基板を含むことによって、第2主面21aの平面視における第2基板21の第2圧延方向21rと第1結晶軸に対応する第2高温超電導層23の第2結晶軸の第2方向との間の第2角度βを、第1主面11aの平面視における第1基板11の第1圧延方向11rと第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向との間の第1角度αと異ならせることができる。第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向は、例えば、第1高温超電導層13のa軸方向13aである。第1結晶軸に対応する第2高温超電導層23の第2結晶軸の第2方向は、例えば、第2高温超電導層23のa軸方向23aである。
【0078】
第2角度βと第1角度αとの間の差は、5°より大きくかつ175°未満であってもよい。第2角度βと第1角度αとの間の差は、15°以上かつ165°以下であってもよい。第2角度βと第1角度αとの間の差は、30°以上かつ150°以下であってもよい。
【0079】
第2角度βと第1角度αとの間の差は、5°より大きくかつ80°未満、または、100°より大きくかつ175°未満であってもよい。第2角度βと第1角度αとの間の差は、15°以上かつ75°以下、または、105°以上かつ165°以下であってもよい。第2角度βと第1角度αとの間の差は、30°以上かつ60°以下、または、120°以上かつ150°以下であってもよい。
【0080】
図1に示されるように、本実施の形態では、第1高温超電導層13のa軸方向13aは、第1基板11の第1圧延方向11rであるとともに、第1高温超電導線材10の第1長手方向である。第2高温超電導層23のa軸方向23aは、第2基板21の第2圧延方向21rに対して45°傾いているとともに、第2高温超電導線材20の第2長手方向に対して45°傾いている。しかし、図9から図11に示されるように、第2高温超電導層23のa軸方向23aは、第2基板21の第2圧延方向21r及び第2高温超電導線材20の第2長手方向に対して45°傾いた方向に限られない。
【0081】
第2角度βは、5°より大きくかつ175°未満であってもよい。第2角度βは、15°以上かつ75°以下、または、105°以上かつ165°以下であってもよい。第2角度βは、30°以上かつ60°以下、または、120°以上かつ150°以下であってもよい。
【0082】
第2角度βは、5°より大きくかつ80°未満、または、100°より大きくかつ175°未満であってもよい。第2角度βは、15°以上かつ75°以下、または、105°以上かつ165°以下であってもよい。第2角度βは、30°以上かつ60°以下、または、120°以上かつ150°以下であってもよい。
【0083】
第1高温超電導線材10がIAD基板を含む場合には、第1高温超電導層13のa軸方向13aは、第1基板11の第1圧延方向11rまたは第1高温超電導線材10の第1長手方向に限られない。
【0084】
第1安定化層14及び第2安定化層24を形成する(S14)。図3を参照して、第1安定化層14は、第1高温超電導層13上に形成される。図2及び図3を参照して、第1安定化層14は、第1基板11上にも形成されてもよい。図2を参照して、第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20との間の接続部2では、第1安定化層14は、第1高温超電導層13上に形成されていない。第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20との間の接続部2では、第1高温超電導層13は第1安定化層14から露出している。図4を参照して、第2安定化層24は、第2高温超電導層23上に形成される。図2及び図4を参照して、第2安定化層24は、第2基板21上にも形成されてもよい。図2を参照して、第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20との間の接続部2では、第2安定化層24は、第2高温超電導層23上に形成されていない。第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20との間の接続部2では、第2高温超電導層23は第2安定化層24から露出している。
【0085】
こうして、第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20とが準備される。
【0086】
図8を参照して、第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20とを互いに超電導接続すること(S20)を説明する。
【0087】
第1高温超電導層13または第2高温超電導層23の少なくとも一つに、高温超電導材料の微結晶を形成する(S21)。具体的には、第1安定化層14から露出している第1高温超電導層13の第1部分または第2安定化層24から露出している第2高温超電導層23の第2部分の少なくとも一つに、高温超電導材料の微結晶を形成する。微結晶は、例えば、MOD法、PLD法または電子ビーム蒸着法などによって、形成される。
【0088】
第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20とを、互いにアライメントする(S22)。例えば、第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向が第2高温超電導層23の第2結晶軸の第2方向に沿うように、第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20とを互いにアライメントする。第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向は、例えば、第1高温超電導層13のa軸方向13aである。第2高温超電導層23の第2結晶軸の第2方向は、例えば、第2高温超電導層23のa軸方向23aである。
【0089】
第1主面11aの平面視における第1基板11の第1圧延方向11rと第1高温超電導層13の第1結晶軸の第1方向との間の第1角度αと、第2主面21aの平面視における第2基板21の第2圧延方向21rと第1結晶軸に対応する第2高温超電導層23の第2結晶軸の第2方向との間の第2角度βとに応じて、第1高温超電導線材10の第1長手方向と第2高温超電導線材20の第2長手方向との間の角度θが定められる。第1角度α及び第2角度βのうち少なくとも第2角度βを任意の角度に設定することによって、角度θは任意の角度に設定され得る。第1高温超電導線材10に対する第2高温超電導線材20の配線の自由度が向上し得る。
【0090】
第1高温超電導線材10と微結晶と第2高温超電導線材20とに、圧力を加えながら、熱を加える(S23)。加熱加圧工程(S23)は、例えば、酸素を含む雰囲気下で行われる。加熱加圧工程(S23)では、微結晶が成長して、高温超電導材料の超電導接合層40になる。こうして、第1高温超電導層13と第2高温超電導層23とは、超電導接合層40を介して、互いに超電導接合される。第1高温超電導線材10と第2高温超電導線材20とは、互いに超電導接続される。
【0091】
図12及び図13を参照して、実施の形態の高温超電導線材の接続構造1を適用した高温超電導線材の配線構造5の例を説明する。高温超電導線材の配線構造5は、複数の高温超電導線材30を含む。複数の高温超電導線材30のうち互いに隣り合う二本の高温超電導線材30は超電導接続されている。複数の高温超電導線材30の接続に、本実施の形態の高温超電導線材の接続構造1が適用されている。そのため、高温超電導線材の配線構造5は、小型化され得る。図12に示されるように、本実施の形態の高温超電導線材の接続構造1を適用することによって、超電導コイルが形成されてもよい。図13に示されるように、本実施の形態の高温超電導線材の接続構造1を適用することによって、平角超電導線材によって形成された超電導コイルを含む超電導モータが形成されてもよい。
【0092】
今回開示された実施の形態及びその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
1 高温超電導線材の接続構造
2 接続部
5 高温超電導線材の配線構造
10 第1高温超電導線材
11 第1基板
11a 第1主面
11r 第1圧延方向
12 第1中間層
13 第1高温超電導層
13a a軸方向
14 第1安定化層
20 第2高温超電導線材
21 第2基板
21a 第2主面
21r 第2圧延方向
22 第2中間層
23 第2高温超電導層
23a a軸方向
24 第2安定化層
30 高温超電導線材
40 超電導接合層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13