IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宇部興産機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-型締装置および型開力監視方法 図1
  • 特許-型締装置および型開力監視方法 図2
  • 特許-型締装置および型開力監視方法 図3
  • 特許-型締装置および型開力監視方法 図4
  • 特許-型締装置および型開力監視方法 図5
  • 特許-型締装置および型開力監視方法 図6
  • 特許-型締装置および型開力監視方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】型締装置および型開力監視方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/66 20060101AFI20250319BHJP
   B29C 33/22 20060101ALI20250319BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20250319BHJP
   B22D 17/26 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
B29C45/66
B29C33/22
B29C45/76
B22D17/26 J
B22D17/26 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021136101
(22)【出願日】2021-08-24
(65)【公開番号】P2023030781
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2024-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004347
【氏名又は名称】弁理士法人大場国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】小野 英伸
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-137542(JP,A)
【文献】特開2003-266502(JP,A)
【文献】特開2010-162805(JP,A)
【文献】国際公開第2020/241090(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/66
B29C 33/22
B29C 45/76
B22D 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定盤と可動盤を介して固定金型と可動金型の型開閉および型締めを行う、クロスヘッドを備えるトグルリンク機構と、
前記トグルリンク機構の駆動源であるサーボモータと、
前記サーボモータの動作を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記固定金型から前記可動金型を離間させる型開き動作において、
前記型開き動作の際に実際に生じる実型開力と予め設定される第1許容型開力とを比較し、
前記実型開力は、前記サーボモータに発生する実トルクと前記クロスヘッドの現在位置とに基づいて求められる、ことを特徴とする型締装置。
【請求項2】
前記第1許容型開力は、
前記固定盤に前記固定金型を取り付ける取付手段および前記可動盤に前記可動金型を取り付ける前記取付手段の強度に基づいて設定される、
請求項1に記載の型締装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記実型開力と前記第1許容型開力との比較結果に基づいて、前記サーボモータの動作を停止させるか、または警告を発する、
請求項1または請求項2に記載の型締装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記クロスヘッドの現在位置が金型タッチ位置より後方へ移動した所定のタイミング以降においては、
前記実型開力と比較する対象を、前記第1許容型開力よりも小さい第2許容型開力に切り替える、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の型締装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記実型開力と前記第2許容型開力との比較結果に基づいて、前記サーボモータの動作を停止させるか、または警告を発する、
請求項に記載の型締装置。
【請求項6】
サーボモータの駆動力によりトグルリンク機構のクロスヘッドを移動させて、固定金型から可動金型を離間させる型開き動作において、
前記サーボモータに発生する実トルクと前記クロスヘッドの現在位置とに基づいて実型開力を算出する型開力算出工程と、
前記型開力算出工程で算出された前記実型開力と、予め設定された第1許容型開力とを比較する型開力比較工程と、
を備えることを特徴とする、型開力監視方法。
【請求項7】
固定盤と可動盤を介して固定金型と可動金型の型開閉および型締めを行う、クロスヘッドを備えるトグルリンク機構と、
前記トグルリンク機構の駆動源であるサーボモータと、
前記サーボモータの動作を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記固定金型から前記可動金型を離間させる型開き動作において、
前記型開き動作の際に実際に生じる実型開力と予め設定される第1許容型開力とを比較し、
前記コントローラは、
前記クロスヘッドの現在位置が金型タッチ位置より後方へ移動した所定のタイミング以降においては、
前記実型開力と比較する対象を、前記第1許容型開力よりも小さい第2許容型開力に切り替える、ことを特徴とする型締装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トグルリンク機構を備える型締装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トグルリンク機構を備える型締装置は、射出成形機、ダイカストマシンなどの一対の金型に型締力を生じさせる。例えば射出成形機であれば、型締力が加えられた一対の金型のキャビティに溶融樹脂を高圧で射出することより所定形状の成形品を得ることができる。型締力は、高圧の溶融樹脂が金型から漏れ出さないことを前提に設定される。
【0003】
トグルリンク機構を備える型締装置において、トグルリンク機構の駆動源として、特許文献1および特許文献2に開示されるように、サーボモータが用いられる。このサーボモータにより、一対の金型が型締めされるとともに型開きがなされる。
特許文献1は型開きの際に、型開閉用のサーボモータの出力トルク(実トルク)を監視し、その値が予め設定された上限値以上の値になったときに警告することを提案する。また、特許文献2は、型開閉のサーボモータの出力トルクがトルク上限値に達すると成形動作を停止させることを提案する。このように、特許文献1および特許文献2は、サーボモータの出力トルクを監視、評価することにより、型締装置の適切な運転を担保しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-326265号公報
【文献】特開2021-024185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、トグルリンク機構の駆動源であるサーボモータに発生するトルクと一対の金型に発生する実型開力は比例しない。そのため、実トルクの監視、および、実トルクと設定されたトルクとの比較によっては、型締装置の適切な運転を担保できないおそれがある。
【0006】
以上より、本発明は、より適切な運転を担保できる型締装置および型開力監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の型締装置は、可動盤と固定盤を介して可動金型と固定金型の型開閉および型締めを行う、クロスヘッドを備えるトグルリンク機構と、トグルリンク機構の駆動源であるサーボモータと、サーボモータの動作を制御するコントローラと、を備える。
コントローラは、固定金型から可動金型を離間させる型開き動作の過程において、型開き動作の際に実際に生じる実型開力と予め設定される第1許容型開力とを比較する。
【0008】
本発明における実型開力は、好ましくは、サーボモータに発生する実トルクとクロスヘッドの現在位置とに基づいて求められる。
【0009】
本発明における第1許容型開力は、好ましくは、固定盤に固定金型を取り付ける取付手段および可動盤に可動金型を取り付ける取付手段の強度に基づいて設定される。
【0010】
本発明におけるコントローラは、好ましくは、実型開力と第1許容型開力との比較結果に基づいて、サーボモータの動作を停止させるか、または警告を発する。本発明において、サーボモータの動作を停止することと警告を発することの双方を行ってもよい。
【0011】
本発明におけるコントローラは、好ましくは、クロスヘッドの位置が金型タッチ位置より後方へ移動した所定のタイミング以降は、実型開力と比較する対象を、第1許容型開力よりも小さい第2許容型開力に切り替える。
【0012】
本発明におけるコントローラは、好ましくは、実型開力と第2許容型開力との比較結果に基づいて、サーボモータの動作を停止させるか、または警告を発する。本発明において、サーボモータの動作を停止することと警告を発することの双方を行ってもよい。
【0013】
本発明の型開力監視方法は、サーボモータの駆動力によりトグルリンク機構のクロスヘッドを移動させて、固定金型から可動金型を離間させる型開き動作において、サーボモータに発生する実トルクとクロスヘッドの現在位置とに基づいて実型開力を算出する型開力算出工程と、型開力算出工程で算出された実型開力と、予め設定された第1許容型開力とを比較する型開力比較工程と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より適切な運転を担保できる型締装置および型開力の監視方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る型締装置の概略構成を示す側面図である。
図2図1の型締装置の概略構成を示す背面図である。
図3】第1実施形態の型締装置のコントローラの構成を示す図である。
図4】第1実施形態の型締装置における型締めの動作を示す図である。
図5】第1実施形態の型開き動作における制御手順を示す図である。
図6】型締装置における型締位置と型開力の関係の一例を示す図である。
図7】第2実施形態の型開き動作における制御手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る型締装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態に係る型開力監視方法が適用されるトグルリンク機構を備える型締装置1の一例について説明した後に、本実施形態に係る型開力監視方法について言及する。本実施形態に係る型開力監視方法は、射出成形機、ダイカスト鋳造装置など、一対の金型を型締めする装置類に広く適用される。
【0017】
〔第1実施形態〕
[型締装置1の構成:図1
第1実施形態に係る型締装置1は、図1および図2に示すように、主に、互いに平行となるように型開閉方向xに間隔を空けて並列に設けられた固定盤10および可動盤20を備える。また、型締装置1は、固定盤10および可動盤20への型締力を発生するトグルリンク機構50と、可動盤20とともにトグルリンク機構50を支持するリンクハウジング30と、を備える。固定盤10、可動盤20およびリンクハウジング30は、それぞれの四隅にタイバー3を貫通させた状態で、床面に据付けられたマシンベース2の上に載せられている。以下、それぞれの構成要素を順に説明する。なお、型締装置1において、図1に示すように型開閉方向xおよび高さ方向yが特定される。
【0018】
[固定盤10、可動盤20、リンクハウジング30:図1
固定盤10および可動盤20は、図1に示すように、それぞれ対向する面が金型取付面11,21を構成する。固定盤10の金型取付面11には固定金型13が支持され、可動盤20の金型取付面21には可動金型23が支持されている。固定金型13および可動金型23は、図示を省略するボルトなどの締結具でそれぞれ固定盤10および可動盤20に支持される。
固定盤10はマシンベース2に対して位置が固定されているのに対して、可動盤20はマシンベース2の上を固定盤10に対して型開閉方向xに進退移動可能にマシンベース2に設置されている。例えば、マシンベース2の上に設けられたガイドシューやスライドレールまたはリニアガイドなどの支持手段に可動盤20は摺動可能に載せられる。リンクハウジング30はマシンベース2に対して摺動可能に載せられる。
リンクハウジング30は、型厚駆動部35が駆動されることにより、タイバー3に案内されて、可動盤20および後述するトグルリンク機構50と一体で、マシンベース2の上を型開閉方向xに移動が可能である。
【0019】
固定盤10の、固定金型13が支持される面の反対側の中央部には、図示を省略する射出装置の射出ノズルや射出スリーブが挿入され得る可能な貫通孔が形成される。
可動盤20とリンクハウジング30は、トグルリンク機構50により連結される。トグルリンク機構50が伸張・屈曲することにより、固定盤10に対して可動盤20が型開閉方向xに接近または離間する。
【0020】
[トグルリンク機構50:図1図2
トグルリンク機構50は、図1に示すように、可動盤20とリンクハウジング30との間に架け渡された上下一対のリンク部材51,51と、型開閉方向xに移動することにより上下一対のリンク部材51,51をそれぞれ伸縮させるクロスヘッド62と、を備える。また、トグルリンク機構50は、クロスヘッド62を型開閉方向xに移動させるクロスヘッド駆動装置70を備えている。
【0021】
それぞれのリンク部材51は、可動盤20の型盤側リンク支持部材52に、リンクピン55によって一端側が揺動可能に連結されるトグルリンク54を備える。また、それぞれのリンク部材51は、リンクハウジング30のハウジング側リンク支持部材56に、リンクピン59によって一端側が揺動可能に連結されるミッドリンク58を備える。トグルリンク54の他端側とミッドリンク58の他端側はリンクピン61により互いに揺動可能に連結される。
【0022】
クロスヘッド62は、上下一対のミッドリンク58,58の間に設けられる。クロスヘッド62は、その両端にはクロスヘッドリンク63の一端がリンクピン64によって揺動可能に連結され、クロスヘッドリンク63の他端はリンクピン65によってミッドリンク58,58に揺動可能に連結される。
なお、第1実施形態において、上述したようなクロスヘッドリンク63はリンクピン65によりミッドリンク58と接続する例を示すが、これに限定することなく、例えば、クロスヘッドリンク63はミッドリンク58とトグルリンク54のリンクピン61に接続してもよい。このように、クロスヘッドリンク63の接続位置は、トグル倍率や型開閉ストローク等のトグルリンク機構50の設計段階で適宜選択される。
リンク部材51は、トグルリンク54およびミッドリンク58がそれぞれ各リンクピン55、59を中心として揺動運動し、クロスヘッド62が型開閉方向xに移動することにより伸張または屈曲するように構成されている。
【0023】
クロスヘッド駆動装置70は、図1および図2に示すように、クロスヘッド62に埋設されたボールねじナット71と、リンクハウジング30を貫通して回転可能に設けられ、ボールねじナット71が螺合されたボールねじ軸72と、を備える。また、クロスヘッド駆動装置70は、ボールねじ軸72の基端部に取り付けられるチェーン用プーリ73と、リンクハウジング30のトグルリンク機構50の取付面と反対の面側に取り付けられた型締モータ74と、を備える。また、クロスヘッド駆動装置70は、型締モータ74の回転軸に取り付けられたモータプーリ75と、チェーン用プーリ73とモータプーリ75との間に張り渡されたチェーンベルト76と、を備えている。型締モータ74の回転力はチェーンベルト76を介してボールねじ軸72に伝達される。駆動源としてのサーボモータから構成される型締モータ74はエンコーダが内蔵されており、このエンコーダによって、クロスヘッド62の移動方向、型開閉方向xの移動量および移動速度などが検知されるように構成されている。
なお、第1実施形態において、上述したようなチェーンベルト76を用いて型締モータ74の回転力をボールねじ軸72に伝達する例を示すが、本発明はこれに限定されない。例えば、タイミングベルトや伝達歯車等の回転伝達機構を回転力の伝達機構として用いてもよいし、回転伝達機構を省略して型締モータ74とボールねじ軸72とをカップリングを用いて直結してもよい。
【0024】
[タイバー3:図1図2
複数、典型的には4本のタイバー3は、図1および図2に示すように、固定盤10、可動盤20およびリンクハウジング30の四隅を貫通して設けられ、その弾性力により固定盤10と可動盤20を介して、固定金型13および可動金型23に型締力を生じさせる。
固定盤10の金型取付面11と反対側の面の四隅には、各タイバー3の一端部と嵌合される固定ナット15が設けられる。この固定ナット15により、各タイバー3に対する型開閉方向xの相対移動と、各タイバー3の長手方向に沿う中心軸回りの回転運動と、が規制されている。リンクハウジング30の背面の四隅には、各タイバー3の他端部に形成されたねじ部(図示せず)と噛み合う駆動ナット31が設けられている。この駆動ナット31は、リンクハウジング30に回転可能に支持されると共に、型厚駆動部35により回転し、各タイバー3のねじ部を螺進するように構成されている。これにより、リンクハウジング30ならびにこれに連結されたトグルリンク機構50および可動盤20が型開閉方向xに往復移動するように構成されている。
【0025】
[型厚駆動部35:図1図2
型厚駆動部35は、図1および図2に示すように、例えば、リンクハウジング30の上面に取り付けられたダイハイトモータ36と、ダイハイトモータ36の回転軸に取り付けられたモータプーリ38と、を備える。また、型厚駆動部35は、4つの駆動ナット31の周囲部にそれぞれ取り付けられたチェーン用プーリ40と、リンクハウジング30のトグルリンク機構50の取付面と反対側の面上に回転可能に取り付けられた伝達歯車42と、を備える。さらに、型厚駆動部35は、モータプーリ38と伝達歯車42との間に張り渡されたチェーンベルト44と、4つのチェーン用プーリ40と伝達歯車42に張り渡されたチェーンベルト46とを備える。型厚駆動部35は、チェーンベルト44、46を介してダイハイトモータ36の回転力を各駆動ナット31に伝達させる。なお第1実施形態において、上述したようなチェーン式の型厚駆動部以外に、ダイハイトモータ36の回転力を各駆動ナットに伝達させるギア式の型厚駆動部を採用できる。
【0026】
[コントローラ80:図3
コントローラ80は、型厚駆動部35の駆動の制御を通じて、可動金型23を支持する可動盤20、トグルリンク機構50およびリンクハウジング30の型開閉方向xへの移動を制御する。また、コントローラ80は、クロスヘッド駆動装置70の駆動の制御を通じて、固定盤10に支持される固定金型13に対する、可動盤20に支持される可動金型23の型閉じ、型締めおよび型開きの動作を制御する。
【0027】
[コントローラ80の構成]
コントローラ80は、図3に示すように、必要な情報を表示するための表示部81と、オペレータにより操作され、例えば金型厚さ情報や型締力情報等の入力を受け付ける入力部83とを備える。また、コントローラ80は、各種の情報を記憶する記憶部85と、型締装置1の各動作の指示をする指示部87と、第1実施形態に係る処理を行う処理部89と、を備えている。第1実施形態に係る処理とは、実型開力Frを求める演算、および、求められた実型開力Frと予め定められている第1許容型開力F1との比較を含んでいる。この一連の処理は、追って図5を参照しながらより具体的に説明する。
なお、ここでは処理部89の存在を明確にするために指示部87と処理部89とを独立させているが、処理部89の機能を併せ持った指示部87とすることもできる。このコントローラ80は、コンピュータ装置で構成され、入力部83はソフトキーまたはハードキーからなり、表示部81は例えばLCD(Liquid Crystal Display)からなる。さらに、図示を省略するが音声を発するスピーカを備えることもできる。後述する警告は、表示部81およびスピーカの一方または双方から発信できる。
【0028】
[記憶部85]
記憶部85は、少なくとも以下の第1許容型開力F1と実型開力Frを算出するための演算式(1)を記憶する。記憶部85は、以下に例示される情報およびその他の情報を記憶できる。
第1許容型開力F1は、許容される型開力の範囲から選択され、実型開力Frと比較される。第1許容型開力F1は予め設定され、記憶部85に記憶される。第1許容型開力F1は、固定金型13を固定盤10に取り付けるための取付手段、可動金型23を可動盤20に取り付けるための取付手段の強度を基準にして設定される。これら取付手段の強度Rを実型開力Frが超えると、取付手段が破損してしまう。したがって、第1許容型開力F1は、少なくとも強度Rよりも小さい値が採用される必要があるが、例えば第1許容型開力F1は、好ましくは強度Rの90%、より好ましくは強度Rの80%に設定される。
【0029】
また、トグルリンク機構50を用いる型締装置1は、リンク部材51が直線状になっている型締状態を解除してリンク部材51が屈曲する状態とする際に、型締モータ74について最も大きなトルクを必要とする。
そのため、安全を優先して第1許容型開力F1を小さく設定しすぎると、正常な型開動作において、型開動作が困難になる。逆に、型締状態の解除を優先して第1許容型開力F1を大きく設定しすぎると、金型の取付手段の強度を超えるような状況が発生する可能性が高くなる。
【0030】
なお、取付手段として単純な構成であるボルトを使用する場合には、使用するボルトの破断強度とボルト本数の積により強度Rが特定される。また、取付手段が、油圧クランプやマグネットクランプであれば、それぞれのクランプの仕様として掲げられている許容荷重(許容強度)により強度Rが特定される。
【0031】
実型開力Frを算出する演算式:型開き時に型締モータ74に生ずるトルク、つまり実トルクTrに基づいて実型開力Frを算出するための演算式であり、例えば以下の式(1)が掲げられる。式(1)における金型タッチ位置(型開き位置)がクロスヘッド62の現在位置に該当する。
Fr=Tr/(1/2π)・ε・L・(1/fz)…式(1)
Tr:実トルク,ε:ベルトプーリの減速比,
L:クロスヘッド62用のボールねじ軸72のリード,
fz:設定型締力がZ(kN)のときの金型タッチ位置(型開き位置)でのトグル倍率
ベルトプーリの減速比:チェーンベルト76を介する型締モータ74とチェーン用プーリ73の間の減速比
トグル倍率:クロスヘッド62を駆動する力と、トグルリンク機構50により増大された可動盤20が動作する力との倍率
【0032】
ここで、式(1)における金型タッチ位置(型開き位置)がクロスヘッド62の現在位置に該当する。したがって、式(1)は、サーボモータである型締モータ74に生ずる実トルクTrとクロスヘッド62の現在位置に基づいて、実型開力Frを算出することを示している。
【0033】
[指示部87]
指示部87はオペレータからの指示、選択にしたがって、記憶部85に記憶されている種々の情報を読み出して、動作指令情報を生成するとともに、生成した動作指令情報を型厚駆動部35のダイハイトモータ36、クロスヘッド駆動装置70の型締モータ74などの各駆動部に向けて送信する。
また、第1実施形態における特有の動作指令情報としては、次に説明する処理部89における判定結果を受けて、警告の表示をするための指示情報を表示部81に向けて送信するのに加えて、型開き動作の停止のため指示情報を型締モータ74に送信する。
指示部87は、その他に、以下で説明される型締装置1の動作における種々の指示情報を発出する。
【0034】
[処理部89]
処理部89は、射出成形が完了して型開きの動作が始まると、実トルクTrに関するデータを受けるとともに、記憶部85から読み出していた式(1)に基づいて、実型開力Frを算出する。また、処理部89は、記憶部85から読み出していた第1許容型開力F1と算出される実型開力Frとを比較し、比較結果を指示部87に送る。
処理部89は、その他に、以下で説明される型締装置1の動作における種々の処理を行うことができる。
【0035】
[型締装置1の概略動作:図4
次に、図4を参照して型締装置1における型締力調整の一連の動作を説明する。なお、図4は型開きの状態(図4(a))から金型タッチの状態(図4(b))を経て型締めの状態まで(図4(c))を示している。
【0036】
型締装置1への金型(固定金型13および可動金型23)の取付け後は型開きの状態(図4(a))にあるが、クロスヘッド駆動装置70の型締モータ74を駆動して、可動金型23を固定金型13から所定距離に近づくまで前進させる(図示省略)。
なお、前進とは可動金型23が固定金型13に近づく向きの移動をいい、後退とは可動金型23が固定金型13から離れる向きの移動をいう。
【0037】
次に、ダイハイトモータ36を駆動させて、可動金型23を支持する可動盤20、トグルリンク機構50およびリンクハウジング30を一体として固定盤10に対して前後進させ、固定盤10とリンクハウジング30の間におけるタイバー3の長さを調整する。この長さの調整は、後述する設定型締力に対応するタイバー3の伸び量の調整を意味する。
【0038】
次に、ダイハイトモータ36を駆動させて、可動金型23を支持する可動盤20、トグルリンク機構50およびリンクハウジング30を一体として固定金型13の側に前進させると、図4(b)に示すように、可動金型23が固定金型13に接触する。これが金型タッチの状態である。例えば、ダイハイトモータ36に流れる電流が所定値に到達すると、可動金型23が固定金型13に密着したものとみなし、ダイハイトモータ36による可動金型23の前進を停止させる。このとき、トグルリンク機構50のリンク部材51は、屈曲状態が維持され、この時のクロスヘッド62の位置は金型タッチ位置と称される。
【0039】
金型タッチに至ると、型締モータ74の駆動により、クロスヘッド62を前進させて、図4(c)に示すように、可動盤20とリンクハウジング30の間でリンク部材51を直線状態に突っ張らせる。これにより、リンクハウジング30と固定盤10の間に係止されているタイバー3は所定の量λだけ伸ばされる。伸ばされたタイバー3は元に戻ろうとし、このタイバー3の伸び量λに対応する弾性回復力がトグルリンク機構50を介して可動盤20と固定盤10の間に型締力として作用し、固定金型13および可動金型23に実型締力fを生じさせる。
この実型締力fと予め設定されている設定型締力Zとを比較して、実型締力fが設定型締力Zに一致するまで、リンクハウジング30の位置の調整とリンク部材51の屈曲状態の調整を繰り返す。
【0040】
図4(c)の型締めの状態において、固定金型13と可動金型23の間に構成される成形キャビティの内部に成形対象である溶融樹脂などが充填された後に、型開きの動作が行われる。型開きの動作は、以上で説明した型閉じ、型締めの動作とは逆であり、図4(c)、図4(b)および図4(a)の順に動作する。
【0041】
トグルリンク機構50において、リンク部材51が直線状態になる直前のデッドポイントを超える際、クロスヘッド62を前進させるために必要な力が最大になる。その一方、直線状態になったリンク部材51はつっぱり棒として機能し、クロスヘッド62の現在位置を保持するための駆動力は不要になるので、型締状態を維持させるための動力の供給は不要である。
【0042】
トグルリンク機構50は、屈曲状態のリンク部材51を直線状態にすることにより、タイバー3を伸長させ、この伸長分に応じた弾性力を、型締力として固定金型13と可動金型23の間に作用させ。リンク部材51の直線状態、すなわち、型締完了状態が、クロスヘッド62の型締完了位置である前進限位置が0(ゼロ)となる。
そのため、型締力調整において、設定型締力Z(一例として、タイバー3の伸長量と同等)を、リンク部材51を屈曲させた状態の、その時のクロスヘッド62の位置(高圧切替位置)で規定する。
【0043】
そして、リンク部材51を屈曲させたクロスヘッド62が高圧切替位置において、トグルリンク機構50、および、トグルリンク機構50とリンクハウジング30を、一体で移動させて、可動盤20に固定された可動金型23を、固定盤10に固定された固定金型13に接触させる。これが金型タッチや型タッチと呼称される状態である。
これにより、固定金型13および可動金型23の型厚に合わせた位置で、リンク部材51が高圧切替位置に応じた屈曲状態で、可動金型23が固定金型13に金型タッチするように調整されるため、クロスヘッド62を型締完了位置(=前進現位置)まで前進させて、リンク部材51を直線状態とすることによって、使用する固定金型13および可動金型23に対して、設定型締力を発生させることができる。
なお、上記のような型締力調整で、制御上認識される金型タッチの高圧切替位置は、型開き動作の観点から言えば、離型開始位置になる。
【0044】
すなわち、型開き動作時、クロスヘッド62を、型締完了位置から高圧切替位置である金型タッチ位置まで後退させる間は、固定金型13および可動金型23の型締方向の圧縮量が元の型厚近傍まで戻るだけであって、固定金型13から可動金型23が離れるわけではない。
そのため、型開き動作において、クロスヘッド62を、型締完了位置から高圧切替位置(金型タッチ位置)まで後退させる間において、サーボモータからなる型締モータ74に発生する実トルクTrに準じて、高い型開力が発生したとしても、可動金型23は、実質的に固定金型から離れていない。このような高い型開力が、固定金型13と可動金型23の金型取付面11,21への取付手段に直接作用することはない。
【0045】
[型開きの動作における制御手順:図5
型締装置1において、型開きの動作の際に、実型開力Frを監視する。図5を参照して、この監視を含む型開きの動作制御の手順を説明する。この手順はコントローラ80により実現される。
型開きが開始された後に、クロスヘッド62の現在位置Phに基づいて、型開きの終了か否かが判定される(図5 S103)。そのために、クロスヘッド62の現在位置Phを検出するとともに、予め定められる型開きの終了位置Peが比較される。終了位置Peまで位置が至っていなければ型開きの動作が継続され(図5 S103 N)、終了位置Peまで現在位置Phが至っていれば型開きが終了する(図5 S103 Y,S115)。
【0046】
型開きの動作が継続されると、型締モータ74に生じる実トルクTrが検出され(図5 S105)、検出された実トルクTrをコントローラ80が取得する。実トルクTrを取得したコントローラ80は、前述した式(1)を用いて実型開力Frを算出する(図5 S107,型開力算出工程)。この実トルクTrの検出および実型開力Frの算出は、クロスヘッド62が所定の型開きの終了位置Peまで継続して行われる。
実トルクTrの検出およびそれに基づく実型開力Frの算出は、時間的に連続して行うこともできるし、所定の時間間隔を空けて行うこともできる。
【0047】
コントローラ80は、算出した実型開力Frと第1許容型開力F1の大小関係を判定する(図5 S109,型開力比較工程)。具体的には、コントローラ80は実型開力Frが第1許容型開力F1を超えるか否かを監視する。
実型開力Fr≦第1許容型開力F1であれば(図5 S109 N)、コントローラ80は、型開きの終了の判定(図5 S103)、実トルクTrの検出(図5 S105)および実型開力Frの算出(図5 S107)を継続して行う。
【0048】
一方、実型開力Fr>第1許容型開力F1であれば(図5 S109 Y)、コントローラ80は、型締モータ74の駆動停止を指示する(図5 S111)とともに、警告の発出を指示する(図5 S113)。警告の一例として、例えば「実型開力Frが大きくなったために型締モータ74を停止しました。」といった文字情報を表示部81に表示することが掲げられる。また、コントローラ80が例えばスピーカを備えていれば、音声情報で警告を発することもできる。警告を認識したオペレータは、型締モータ74の駆動停止の操作を行うことができるし、そのまま型開きの動作を続けさせることができる。
【0049】
ここでは、型締モータ74の駆動停止と警告の二種類の対応を示しているが、第1実施形態はこれに限定されず、いずれか一種類の対応だけでもよい。つまり、コントローラ80は、警告をすることなく型締モータ74の停止を指示できるし、型締モータ74の停止を伴うことなく警告を指示することもできる。
【0050】
[実型開力Frと第1許容型開力F1を比較する理由]
実トルクTrに対して許容トルクT1を予め設定しておき、実トルクTrと許容トルクT1の大小関係を判定することも想定できる。しかし、図6を参照して以下説明するように、トグルリンク機構50を用いると、トルクと金型に生ずる型開力とは比例関係にない。したがって、実トルクTrと許容トルクT1との大小関係を判定したとしても、初期の目的を達成できない。
【0051】
図6は、サーボモータからなる型締モータ74のモータトルクの上限を、定格の50%にするという制限(トルクリミット)を設定し、実際に型開き動作を行う際に発生する実型開力Frを、型締モータ74に発生する実トルクTrとクロスヘッド62の現在位置に基づき、所定の計算式により算出したグラフを示す。なお、縦軸が算出された実型開力Frで、横軸が型締位置である。この型締位置は、クロスヘッドの位置と同義である。
【0052】
図6において、原点0.00が、型締完了時のクロスヘッド62の位置で、横軸の数値が増える程、クロスヘッド62が後退することを示している。この後退とは、リンクハウジング30の側に移動して、リンク部材51が屈曲される状態をいう。
前述したように、リンク部材51が直線状態になる直前のデッドポイントを超える際、クロスヘッド62を前進させるのに最大の力が必要になる。言い換えれば、型開き動作においては、直線状態からリンク部材51を屈曲させる際のデッドポイントを超える際、型締モータ74に発生する実トルクが最大になる。
そのため、図6に示される原点0.00の近傍の高い型開力に対応して、サーボモータに発生する実トルクTrも型開き動作中最大になる。
【0053】
一方、正常な型開き動作であれば、同動作が進行するにつれて、実型開力Frは低下する。この間の実型開力Frの低下に準じて、サーボモータに発生する実トルクTrも、デッドポイントで発生した実トルクより低下していく。
【0054】
ここで、小さな型締力が設定された場合の方が、それよりも大きな型締力が設定された場合よりも、実型開力が大きくなる。このことについて図6を参照して説明する。
例えば、図6において、型締位置(クロスヘッド位置)が、2.00mmとなる点を、金型タッチ位置(高圧切替位置/離型開始位置)として型締力が設定されたものとし、これを第1型締力設定とする。
この時の型締力はクロスヘッド位置を2.00mmから前進限である0.00mmまで前進させた場合のタイバー3の伸長量に準じる。
この設定下で、型締め状態から型開き動作を実施して、クロスヘッド62を型締完了位置から高圧切替位置(金型タッチ位置)まで後退させると、高圧切替位置(金型タッチ位置)以降、固定金型13から可動金型23が実質的に離れる。先に説明したように、実型開力Frが、両金型の金型取付面11,21への取付手段に作用するのが、クロスヘッド62が、高圧切替位置(金型タッチ位置)に到達してからになり、この時の実型開力Frは図6から約500kNである。
【0055】
一方、図6において、型締位置(クロスヘッド位置)が、0.50mmとなる点を、先に説明した金型タッチ位置(高圧切替位置)として型締力が設定されたものとし、これを第2型締力設定とする。
この設定においても、型締力はクロスヘッド位置を0.50mmから前進限である0.00mmまで前進させた場合のタイバー3の伸長量に準じる。そのため、この第2型締力設定で設定される型締力が、第1型締力設定で設定される型締力よりも小さくなる。この時の実型開力は同じく図6から約1000kNと、第1型締力設定のほぼ2倍になる。
【0056】
このように、トグルリンク機構50を用いる型締装置1においては、トグル特性や型締力設定によって、サーボモータに発生する実トルクに対して、発生する実型開力が比例しない。そのため、サーボモータからなる型締モータ74に発生する実トルクTrの監視、または実トルクTrと、設定した許容上限トルクとの比較監視では、同許容上限トルクを、両金型の金型取付面11,21への取付手段の強度に関連付けて、適切に設定をすることは困難である。
【0057】
[第1実施形態の効果]
型締装置1によれば、実型開力Frが第1許容型開力F1を超えると、警告が発出され、かつ、型締モータ74の駆動が停止される。
したがって、固定盤10に取り付けられる固定金型13、可動盤20に取り付けられる可動金型23のそれぞれにおける金型取付手段の強度を超える型開力が金型取付手段に加わるのを阻止できる。これにより、金型取付手段が破損すること、金型取付手段の破損により固定金型13および可動金型23がそれぞれ固定盤10および可動盤20から落下するのを防止できる。
【0058】
〔第2実施形態〕
次に、図7を参照して、第2実施形態に係る型締装置を説明する。なお、以下では、第1実施形態の型締装置1と異なる型開き動作における制御手順に焦点を絞って第2実施形態を説明し、第1実施形態に係る型締装置1と共通する部分については説明を省略する。
【0059】
第2実施形態における型開き動作の制御手順は、図7に示すように、クロスヘッド62の現在位置Phに応じて、実型開力Frと比較されるのが、第1許容型開力F1および第2許容型開力F2のいずれか一方になる。第1許容型開力F1と第2許容型開力F2は、F1>F2の関係を有する。そして、型開きが開始されてから初期の間は第1許容型開力F1が実型開力Frとその大小が比較され、初期を過ぎて型開きの終了までの間は第2許容型開力F2が実型開力Frとその大小が比較される(図7 S109,S110)。このように、実型開力Frの比較対象を二段階にするのは、過剰な実型開力Frが生じるのは型開きを開始した直後であり、この過剰な実型開力Frに対応するために、当初は相対的に大きい第1許容型開力F1が選択され、その後の所定のタイミング以降においては相対的に小さい第2許容型開力F2が選択される。
【0060】
第2実施形態においては、クロスヘッド62の現在位置Phが検出されるとともに、検出される現在位置Phが切替位置Pcを超えるか否かの判定が行われる(図7 S108)。切替位置Pcは、金型タッチ点より所定距離だけ離れた位置に設定される。
クロスヘッド62の現在位置Phが切替位置Pcに達していなければ(図7 S108 N)、コントローラ80は実型開力Frと第1許容型開力F1の大小関係を判定する(図7 S109)。また、クロスヘッド62の現在位置Phが切替位置Pcに達すれば(図7 S108 Y)、コントローラ80は実型開力Frと第2許容型開力F2の大小関係を判定する(図7 S110)。実型開力Frが第1許容型開力F1を超えるか、または、実型開力Frが第2許容型開力F2を超えれば(図7 S109 Y,図7 S110 Y)、型締モータ74の停止(図7 S111)および警告(図7 S113)が実行される。
【0061】
第2許容型開力F2は、アンギュラピンやスライドコアが組み込まれた金型においては、例えば、第1許容型開力F1の80%や50%という割合で設定される。また、アンギュラピンやスライドコアなどの金型内摺動部位がない金型においては、可動盤20の摺動部の潤滑不良や、リンク部材51のリンクブッシュの摩耗や潤滑不良などによる摺動抵抗の増加などを検知して、予防保全が実施できるように第2許容型開力F2が設定されてもよい。
また、図6に示すように、実成形を行った際の、トラブルのない正常な型開き動作において発生する実型開力をクロスヘッド62の現在位置Phに応じたデータとして記録する(正常型開力データ取得工程)とともに、このデータに許容値を加えた型開力を第2許容型開力F2として設定(第2許容型開力設定工程)してもよい。
この場合、クロスヘッド62の現在位置Phに準じて発生する実型開力Frのグラフを一律の割合で上昇させた型開力を、クロスヘッド62の現在位置Phに応じた第2許容型開力F2としてもよい。
また、正常な型開き動作においては、発生する実型開力Frは漸次低下していくため、第2許容型開力F2に切り替えるタイミングにおいて発生する実型開力Frに所定の許容値を加えた型開力を以降の第2許容型開力F2として固定値を採用してもよい。
【0062】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態においても、実型開力Frと第1許容型開力F1の大小関係を判定する間は、第1実施形態と同様に、金型取付手段が破損すること、金型取付手段の破損により固定金型13および可動金型23がそれぞれ固定盤10および可動盤20から落下するのを防止できる。
また、実型開力Frと第2許容型開力F2の大小関係を判定する間は、型開き工程における動作不良の検知とこれによる予防保全ができる。つまり、切替位置Pc以降において実型開力Frが上昇する要因として、金型摺動部、可動盤20の潤滑不良、リンク部材51のブッシュの摩耗や潤滑不良などが掲げられる。そこで、切替位置Pc以降においては、摺動抵抗の増加に対応する第2許容型開力F2と実型開力Frを比較することで、予防保全を図ることができる。
【0063】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0064】
例えば、本発明は、アンギュラピンやスライドコアなど、型開きの力を利用しながら金型内のブロックを駆動させる仕組みを採用する金型にも適用できる。
この金型の場合、アンギュラピンやスライドコアなどの摺動部の潤滑不良や、この摺動部への異物の侵入などにより、正常にスライドコアの駆動ができなくなることがあると、スライドコアの上下への摺動ストローク範囲の何れかにおいて実型開力Frが過剰に増加して、アンギュラピンやスライドコアが破損するおそれがある。
【0065】
また、以上では、実型開力Frを実トルクTrに基づいて式(1)で算出して求めている。しかし、本発明はこれ以外にも、トグルリンク機構50の受圧部材、例えばタイバー3に設けられる応力検出手段、例えばロードセルを用いて実応力を直に検出するか、または、検出した実応力に基づき、実型開力を算出することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1,5 型締装置
2 マシンベース
3 タイバー
10 固定盤
11,21 金型取付面
13 固定金型
15 固定ナット
20 可動盤
23 可動金型
30 リンクハウジング
31 駆動ナット
35 型厚駆動部
36 ダイハイトモータ
38 モータプーリ
40 チェーン用プーリ
42 伝達歯車
44,46 チェーンベルト
50 トグルリンク機構
51 リンク部材
52 型盤側リンク支持部材
54 トグルリンク
55 リンクピン
56 ハウジング側リンク支持部材
58 ミッドリンク
59 リンクピン
61,64,65 リンクピン
62 クロスヘッド
63 クロスヘッドリンク
70 クロスヘッド駆動装置
71 ボールねじナット
72 ボールねじ軸
73 チェーン用プーリ
74 型締モータ
75 モータプーリ
76 チェーンベルト
80 コントローラ
81 表示部
83 入力部
85 記憶部
87 指示部
89 処理部
x 型開閉方向
y 高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7