(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 13/02 20060101AFI20250319BHJP
F01P 3/18 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
B60K13/02 A
F01P3/18 G
(21)【出願番号】P 2021140094
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】都築 洋久
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069746(JP,A)
【文献】特開2016-083991(JP,A)
【文献】特開2019-065803(JP,A)
【文献】米国特許第09902254(US,B1)
【文献】特開2018-103871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00-15/10
F02M 53/00
F01P 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を利用して動力を発生する、車体へ取付けられたエンジンを冷却するラジエーターと、
前記ラジエーターの前方に配置されたオイルクーラーと、
前記エンジンの側へ入っていく前記燃料を冷却する第一燃料クーラーと、
前記エンジンの側から出てくる前記燃料を冷却する第二燃料クーラーと、
前記第一燃料クーラーおよび前記第二燃料クーラーの下方に配置されたベースプレート部材と、
前記車体の左側部に配置された左壁プレート部、および前記車体の右側部に配置された右壁プレート部を有する壁プレート部材と、
を備えており、
前記第一燃料クーラーの少なくとも一部は、前記オイルクーラーの前方に配置されており、
前記第二燃料クーラーの少なくとも一部は、前記オイルクーラーの上方に配置されており、
前記第一燃料クーラーへ接続された第一燃料パイプ部材、および前記第二燃料クーラーへ接続された第二燃料パイプ部材を、前記左壁プレート部と前記右壁プレート部との間において、前記ベースプレート部材の下側へ引入れるための孔が、前記ベースプレート部材に設けられており、
前記第一燃料パイプ部材および前記第二燃料パイプ部材は、前記ベースプレート部材の上方では前記ラジエーターにより前記エンジンから隔離されており、前記ベースプレート部材の下方ではクランクプーリーカバーにより前記エンジンから隔離されており、
前記第一燃料パイプ部材、および前記エンジンへ接続された前記第二燃料パイプ部材を、車体左右方向を基準として、前記壁プレート部材の外側へ引出すための孔が、前記壁プレート部材に設けられており、
前記エンジンは、前記左壁プレート部と前記右壁プレート部との間において配置されており、
前記壁プレート部材の前記外側へ引出された前記第一燃料パイプ部材、および前記壁プレート部材の前記外側へ引出されて前記エンジンへ接続された前記第二燃料パイプ部材は、前記車体左右方向を基準として、冷却水ドレインホースの内側を通って配索されていることを特徴とする
作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用トラクターなどのような作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用トラクターなどのような作業車両が、知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述された従来の農業用トラクターなどのような作業車両については、エンジン環境性能などに応じた良好な冷却機能の効率的な実現は必ずしも十分でない。
【0005】
本発明は、上述された従来の課題を考慮し、エンジン環境性能などに応じた良好な冷却機能を効率的に実現することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、燃料を利用して動力を発生する、車体へ取付けられたエンジンを冷却するラジエーターと、
前記ラジエーターの前方に配置されたオイルクーラーと、
前記エンジンの側へ入っていく前記燃料を冷却する第一燃料クーラーと、
前記エンジンの側から出てくる前記燃料を冷却する第二燃料クーラーと、
前記第一燃料クーラーおよび前記第二燃料クーラーの下方に配置されたベースプレート部材と、
前記車体の左側部に配置された左壁プレート部、および前記車体の右側部に配置された右壁プレート部を有する壁プレート部材と、
を備えており、
前記第一燃料クーラーの少なくとも一部は、前記オイルクーラーの前方に配置されており、
前記第二燃料クーラーの少なくとも一部は、前記オイルクーラーの上方に配置されており、
前記第一燃料クーラーへ接続された第一燃料パイプ部材、および前記第二燃料クーラーへ接続された第二燃料パイプ部材を、前記左壁プレート部と前記右壁プレート部との間において、前記ベースプレート部材の下側へ引入れるための孔が、前記ベースプレート部材に設けられており、
前記第一燃料パイプ部材および前記第二燃料パイプ部材は、前記ベースプレート部材の上方では前記ラジエーターにより前記エンジンから隔離されており、前記ベースプレート部材の下方ではクランクプーリーカバーにより前記エンジンから隔離されており、
前記第一燃料パイプ部材、および前記エンジンへ接続された前記第二燃料パイプ部材を、車体左右方向を基準として、前記壁プレート部材の外側へ引出すための孔が、前記壁プレート部材に設けられており、
前記エンジンは、前記左壁プレート部と前記右壁プレート部との間において配置されており、
前記壁プレート部材の前記外側へ引出された前記第一燃料パイプ部材、および前記壁プレート部材の前記外側へ引出されて前記エンジンへ接続された前記第二燃料パイプ部材は、前記車体左右方向を基準として、冷却水ドレインホースの内側を通って配索されていることを特徴とする作業車両である。
これにより、作業車両は、エンジンの側へ入っていく燃料を冷却する第一燃料クーラーと、エンジンの側から出てくる燃料を冷却する第二燃料クーラーと、を備えているので、エンジン環境性能などに応じた良好な冷却機能を効率的に実現することができる。なお、これにより、第一燃料クーラーへ接続された第一燃料パイプ部材、および第二燃料クーラーへ接続された第二燃料パイプ部材を、左壁プレート部と右壁プレート部との間において、ベースプレート部材の下側へ引入れるための孔が、ベースプレート部材に設けられているので、効率的なパイプ部材の配索を実現することもできる。また、これにより、第一燃料パイプ部材、およびエンジンへ接続された第二燃料パイプ部材を、車体左右方向を基準として、壁プレート部材の外側へ引出すための孔が、壁プレート部材に設けられているので、効率的なパイプ部材の配索を実現することもできる。
本発明に関連する第1の発明は、燃料を利用して動力を発生する、車体へ取付けられたエンジンを冷却するラジエーターと、
前記ラジエーターの前方に配置されたオイルクーラーと、
前記エンジンの側へ入っていく前記燃料を冷却する第一燃料クーラーと、
前記エンジンの側から出てくる前記燃料を冷却する第二燃料クーラーと、
を備えており、
前記第一燃料クーラーの少なくとも一部は、前記オイルクーラーの前方に配置されており、
前記第二燃料クーラーの少なくとも一部は、前記オイルクーラーの上方に配置されていることを特徴とする作業車両である。
【0007】
これにより、作業車両は、エンジンの側へ入っていく燃料を冷却する第一燃料クーラーと、エンジンの側から出てくる燃料を冷却する第二燃料クーラーと、を備えているので、エンジン環境性能などに応じた良好な冷却機能を効率的に実現することができる。
【0008】
本発明に関連する第2の発明は、前記ラジエーターの取付けに利用される支柱部材により支持された保持プレート部材を備えており、
前記第一燃料クーラーは、前記オイルクーラーとともに、前記保持プレート部材により保持されていることを特徴とする本発明に関連する第1の発明の作業車両である。
【0009】
これにより、第一燃料クーラーは、オイルクーラーとともに、保持プレート部材により保持されているので、効率的なクーラー部品点数の削減を実現することができる。
【0010】
本発明に関連する第3の発明は、前記第二燃料クーラーは、パイプ長さ方向が上下方向である上下方向冷却パイプ部、およびパイプ長さ方向が水平方向である水平方向冷却パイプ部を有することを特徴とする本発明に関連する第2の発明の作業車両である。
【0011】
これにより、第二燃料クーラーは、パイプ長さ方向が上下方向である上下方向冷却パイプ部、およびパイプ長さ方向が水平方向である水平方向冷却パイプ部を有するので、効率的なクーラー部品の空間配置を実現することができる。
【0012】
本発明に関連する第4の発明は、前記第二燃料クーラーは、少なくとも前記上下方向冷却パイプ部の位置で、前記保持プレート部材により保持されていることを特徴とする本発明に関連する第3の発明の作業車両である。
【0013】
これにより、第二燃料クーラーは、少なくとも上下方向冷却パイプ部の位置で、保持プレート部材により保持されているので、効率的なクーラー部品の保持を実現することができる。
【0014】
本発明に関連する第5の発明は、前記第一燃料クーラーおよび前記第二燃料クーラーの下方に配置されたベースプレート部材と、
前記車体の左側部に配置された左壁プレート部、および前記車体の右側部に配置された右壁プレート部を有する壁プレート部材と、
を備えており、
前記第一燃料クーラーへ接続された第一燃料パイプ部材、および前記第二燃料クーラーへ接続された第二燃料パイプ部材を、前記左壁プレート部と前記右壁プレート部との間において、前記ベースプレート部材の下側へ引入れるための孔が、前記ベースプレート部材に設けられており、
前記第一燃料パイプ部材および前記第二燃料パイプ部材は、前記ベースプレート部材の上方では前記ラジエーターにより前記エンジンから隔離されており、前記ベースプレート部材の下方ではクランクプーリーカバーにより前記エンジンから隔離されていることを特徴とする本発明に関連する第1の発明の作業車両である。
【0015】
これにより、第一燃料クーラーへ接続された第一燃料パイプ部材、および第二燃料クーラーへ接続された第二燃料パイプ部材を、左壁プレート部と右壁プレート部との間において、ベースプレート部材の下側へ引入れるための孔が、ベースプレート部材に設けられているので、効率的なパイプ部材の配索を実現することができる。
【0016】
本発明に関連する第6の発明は、前記第一燃料パイプ部材、および前記エンジンへ接続された前記第二燃料パイプ部材を、車体左右方向を基準として、前記壁プレート部材の外側へ引出すための孔が、前記壁プレート部材に設けられており、
前記エンジンは、前記左壁プレート部と前記右壁プレート部との間において配置されており、
前記壁プレート部材の前記外側へ引出された前記第一燃料パイプ部材、および前記壁プレート部材の前記外側へ引出されて前記エンジンへ接続された前記第二燃料パイプ部材は、前記車体左右方向を基準として、冷却水ドレインホースの内側を通って配索されていることを特徴とする本発明に関連する第5の発明の作業車両である。
【0017】
これにより、第一燃料パイプ部材、およびエンジンへ接続された第二燃料パイプ部材を、車体左右方向を基準として、壁プレート部材の外側へ引出すための孔が、壁プレート部材に設けられているので、効率的なパイプ部材の配索を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、エンジン環境性能などに応じた良好な冷却機能を効率的に実現することが可能な作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明における実施の形態の農業用トラクターの左側面図
【
図2】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その一)
【
図3】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その二)
【
図4】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その三)
【
図5】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その四)
【
図6】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その五)
【
図7】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その六)
【
図8】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その七)
【
図9】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その八)
【
図10】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その九)
【
図11】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その十)
【
図12】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その十一)
【
図13】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その十二)
【
図14】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その十三)
【
図15】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その十四)
【
図16】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その十五)
【
図17】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その十六)
【
図18】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その十七)
【
図19】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その十八)
【
図20】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その十九)
【
図21】本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー、ならびに第一燃料クーラーおよび第二燃料クーラー近傍の部分斜視図(その二十)
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
以下同様であるが、いくつかの構成要素は図面において示されていないこともあるし透視的にまたは省略的に示されていることもある。
【0022】
(A)はじめに、
図1から7を参照しながら、本実施の形態の農業用トラクターの構成および動作について具体的に説明する。
【0023】
ここに、
図1は本発明における実施の形態の農業用トラクターの左側面図であり、
図2から7は本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー200、ならびに第一燃料クーラー310および第二燃料クーラー320近傍の部分斜視図(その一から六)である。
【0024】
本実施の形態の農業用トラクターは、本発明における作業車両の例である。
【0025】
まず説明されるのは、本実施の形態の農業用トラクターの基本的な構成および動作である。したがって、オイルクーラー200、ならびに第一燃料クーラー310および第二燃料クーラー320に関連する具体的な構成および動作などについては、後に詳細に説明する。
【0026】
車体10の前部のボンネット31の内部には、エンジン30が設けられている。
【0027】
エンジン30の回転動力は、運転ユニット20のフロア21の下方に設けられているトランスミッションケースの内部のさまざまなクラッチを介して伝達される。より具体的には、主変速装置および副変速装置で変速された回転動力は、左右一対の前輪40および左右一対の後輪50へ伝達される。
【0028】
エンジン30の後方には、ダッシュボードカバーおよびメーターパネル、ならびに前後進レバーとともに、ステアリングホイール23が設けられている。
【0029】
ステアリングホイール23の後方には、運転席22が設けられている。
【0030】
左側のフロア21には、ブレーキペダル連結解除ペダルおよびクラッチペダルが配置されている。右側のフロア21には、左右一対のブレーキペダルおよびアクセルペダル24が配置されている。
【0031】
車体10の後部には、作業機が、たとえば、3点リンク機構を利用して装着される。
【0032】
作業機昇降機構60は、メインシリンダー、リフトアーム、トップリンク61および左右一対のロワーリンク62、ならびに回動カバーおよびサイドカバーを有する。
【0033】
トップリンク61およびロワーリンク62の前端部は車体10の側と接続されており、トップリンク61およびロワーリンク62の後端部は作業機の側と接続されている。そして、メインシリンダーにより回動されるリフトアームの後端部は、ロワーリンク62と接続されている。
【0034】
回動カバーの回動角度は耕耘深さセンサーにより検出され、リフトアームの回動角度はリフトアームセンサーにより検出される。
【0035】
作業機の情報は、作業機と接続されたISO(International Organization for Standardization)BUS、または運転ユニット20に搭載された情報端末などのような作業機装着状況取得部を利用して取得され、コントローラーへ通知される。
【0036】
ラジエーター100は、燃料を利用して動力を発生する、車体10へ取付けられたエンジン30を冷却するラジエーターである。
【0037】
オイルクーラー200は、ラジエーター100の前方に配置されたオイルクーラーである。
【0038】
いわゆるステージ5エンジンの燃料タンクブリーザー構成においては、燃料温度基準を満足するために燃料温度を低減することが要求されるので、第一燃料クーラー310および第二燃料クーラー320を利用することにより、3気筒エンジンであるエンジン30の燃料クーラー配置箇所がエンジン入口側およびエンジン出口側の二箇所である構成が採用される。
【0039】
第一燃料クーラー310は、エンジン30の側へ入っていく燃料を冷却する燃料クーラーである。
【0040】
第二燃料クーラー320は、エンジン30の側から出てくる燃料を冷却する燃料クーラーである。
【0041】
第一燃料クーラー310を通過した燃料のエンジン30における燃残りは排気ガスの煤などのような有害物質を発生させるが、エンジンシリンダー内部へ噴射された燃料の粒子が小さいとそのような有害物質の発生は低減されるので、コモンレールエンジンであるエンジン30においては、燃料の粒子が小さくなるように、圧縮されてコモンレールに一時的に貯められた燃料のエンジンシリンダー内部への噴射が微細なノズルを通じて高圧で行われる。コモンレールに貯められたがエンジンシリンダー内部へ噴射されなかった残余の燃料は、温度が圧縮にともない上昇しているので、第二燃料クーラー320を通過して冷却された後に燃料タンク32へ戻される。
【0042】
このような第一燃料クーラー310および第二燃料クーラー320を利用する冷却は、燃料について行われる代わりに、燃料を冷却するための冷却水のような冷媒について行われてもよい。
【0043】
第一燃料クーラー310の少なくとも一部は、オイルクーラー200の前方に配置されている。
【0044】
第二燃料クーラー320の少なくとも一部は、オイルクーラー200の上方に配置されている。
【0045】
もちろん、エンジンルーム内部の狭小なスペースにおける効率的な部品配置および部品保持を安定的に実現するために、たとえば、バッテリ33とラジエーター100との間に位置する第一燃料クーラー310および第二燃料クーラー320は、車体左右方向を基準として、並列的に配置されてもよい。
【0046】
(B)つぎに、
図8から17を主として参照しながら、本実施の形態の農業用トラクターの構成および動作についてより具体的に説明する。
【0047】
ここに、
図8から17は、本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー200、ならびに第一燃料クーラー310および第二燃料クーラー320近傍の部分斜視図(その七から十六)である。
【0048】
(B1)
図8から13を主として参照しながら、保持プレート部材500などについて具体的に説明する。
【0049】
保持プレート部材500は、ラジエーター100の取付けに利用される支柱部材400により支持されたプレート部材である。
【0050】
第一燃料クーラー310は、オイルクーラー200とともに、保持プレート部材500により保持されている。
【0051】
このように、エンジン入口側の第一燃料クーラー310は、ラジエーターブラケット部材としての支柱部材400により支持された保持プレート部材500の固定ボルト具501を利用して、油圧オイルクーラーであるオイルクーラー200とともに固定される構成が採用されるので、部品点数の削減がブラケット固定ボルト共締めにより促進される。
【0052】
第二燃料クーラー320は、パイプ長さ方向が上下方向である上下方向冷却パイプ部321、およびパイプ長さ方向が水平方向である水平方向冷却パイプ部322を有する。
【0053】
このように、エンジン出口側の第二燃料クーラー320の形状はエンジン入口側の第一燃料クーラー310の周りを覆う屈曲パイプ形状であり、エンジンルーム内部の狭小なスペースにおける効率的な部品配置および部品保持を安定的に実現することができる。
【0054】
第二燃料クーラー320は、少なくとも上下方向冷却パイプ部321の位置で、保持プレート部材500により保持されている。
【0055】
このように、エンジン入口側の第一燃料クーラー310、および第一燃料クーラー310の後方に配置されたオイルクーラー200を固定する、保持プレート部材500はエンジン出口側の第二燃料クーラー320を固定する第二燃料クーラーブラケット部材としても機能するので、部品点数の削減がブラケット固定ボルト共締めにより促進される。
【0056】
(B2)
図14から17を主として参照しながら、第一燃料パイプ部材810および第二燃料パイプ部材820などについて具体的に説明する。
【0057】
ベースプレート部材600は、第一燃料クーラー310および第二燃料クーラー320の下方に配置されたプレート部材である。
【0058】
壁プレート部材700は、車体10の左側部に配置された左壁プレート部710、および車体10の右側部に配置された右壁プレート部720を有するプレート部材である。
【0059】
第一燃料クーラー310へ接続された第一燃料パイプ部材810、および第二燃料クーラー320へ接続された第二燃料パイプ部材820を、左壁プレート部710と右壁プレート部720との間において、ベースプレート部材600の下側へ引入れるための孔601が、ベースプレート部材600に設けられている。
【0060】
ラジエーターブラケット部材としての支柱部材400が立設されている、ベースプレート部材600に設けられた孔601を利用することにより、ベースプレート部材600の下方の燃料ホース配索が行われるので、温度が高いエンジンルーム内部からの引出しにともない、第一燃料クーラー310または第二燃料クーラー320で冷却された燃料の温度上昇は抑制される。
【0061】
ベースプレート部材600に設けられた4個の孔601を通って配索されている第一燃料パイプ部材810および第二燃料パイプ部材820においては孔601近傍の位置でのホース連結が行われるので、組立て容易化が実現される。
【0062】
第一燃料パイプ部材810および第二燃料パイプ部材820は、ベースプレート部材600の上方ではラジエーター100によりエンジン30から隔離されており、ベースプレート部材600の下方ではクランクプーリーカバー910によりエンジン30から隔離されている。
【0063】
ベースプレート部材600の下方の燃料ホース配索は、アクスルブラケット部材としての壁プレート部材700の左壁プレート部710と右壁プレート部720との間のアクスルブラケット空間を利用して、パワーステアリング部材940の上方で行われる。
【0064】
第一燃料パイプ部材810、およびエンジン30へ接続された第二燃料パイプ部材820を、車体左右方向を基準として、壁プレート部材700の外側へ引出すための孔721が、壁プレート部材700に設けられている。
【0065】
エンジン30は、左壁プレート部710と右壁プレート部720との間において配置されている。
【0066】
アクスルブラケット右側面フレームである、右壁プレート部720に設けられた孔721を利用することにより、ベースプレート部材600の下方の燃料ホース配索が行われるので、温度が高いエンジンルーム内部からの引出しにともない、第一燃料クーラー310で冷却された燃料の温度上昇は抑制される。
【0067】
アクスルブラケット内部プレートである、クランクプーリーカバー910を利用することにより、アクスルブラケット内部におけるクランクプーリーおよびファンベルトなどのような駆動部材との燃料ホース干渉は抑制される。
【0068】
クランクプーリーカバー910は、アクスルブラケット内部における燃料ホース配索において、このような燃料ホース干渉を抑制するのみならず、アクスルブラケット空間を通ったエンジンファン送風のラジエーター100への循環も抑制する、多機能プレートであり、部品点数の削減が促進される。
【0069】
燃料フィルターを介して燃料タンク32から第一燃料クーラー310へ至る第一燃料パイプ部材810、第一燃料クーラー310からエンジン30の入口へ至る第一燃料パイプ部材810、およびエンジン30の出口から第二燃料クーラー320へ至る第二燃料パイプ部材820が挿通される孔721は、このような3本のホースをまとめて配索することができる、アクスルブラケット右側面フレームに設けられた1個の長孔であり、ホース配索安定化が実現される。
【0070】
壁プレート部材700の外側へ引出された第一燃料パイプ部材810、および壁プレート部材700の外側へ引出されてエンジン30へ接続された第二燃料パイプ部材820は、車体左右方向を基準として、冷却水ドレインホース920の内側を通って配索されている。
【0071】
燃料タンク32から第一燃料クーラー310へ至る第一燃料パイプ部材810、第一燃料クーラー310からエンジン30の入口へ至る第一燃料パイプ部材810、およびエンジン30の出口から第二燃料クーラー320へ至る第二燃料パイプ部材820は、たとえば、ラジエーター100のドレインホースのような冷却水ドレインホース920と、アクスルブラケット右側外面である、右壁プレート部720の外壁面との間の空間を通って配索されているので、本機構成部品におけるホース配索安定化が実現される。
【0072】
燃料タンク32から第一燃料クーラー310へ至る第一燃料パイプ部材810、第一燃料クーラー310からエンジン30の入口へ至る第一燃料パイプ部材810、およびエンジン30の出口から第二燃料クーラー320へ至る第二燃料パイプ部材820は、油圧配管部材930と右壁プレート部720の外壁面との間の空間を通って配索されているので、本機構成部品におけるさらなるホース配索安定化が実現される。
【0073】
(C)つぎに、
図18から21を主として参照しながら、本実施の形態の農業用トラクターの構成および動作についてさらにより具体的に説明する。
【0074】
ここに、
図18から21は、本発明における実施の形態の農業用トラクターのオイルクーラー200、ならびに第一燃料クーラー310および第二燃料クーラー320近傍の部分斜視図(その十七から二十)である。
【0075】
燃料タンク32へ接続された第二燃料パイプ部材820を、車体左右方向を基準として、壁プレート部材700の外側へ引出すための孔711が、壁プレート部材700に設けられている。
【0076】
アクスルブラケット左側面フレームである、左壁プレート部710に設けられた孔711を利用することにより、ベースプレート部材600の下方の燃料ホース配索が行われるので、温度が高いエンジンルーム内部からの引出しにともない、第二燃料クーラー320で冷却された燃料の温度上昇は抑制される。
【0077】
第二燃料クーラー320から燃料タンク32へ至る第二燃料パイプ部材820、およびパワーステアリングシリンダーへ接続された2本のホース(図示省略)が挿通される孔711は、このような3本のホースをまとめて配索することができる、アクスルブラケット左側面フレームに設けられた1個の長孔であり、ホース配索安定化が実現される。
【0078】
孔711の形状は孔721の形状と同様であり、設計簡素化が促進される。
【0079】
ベースプレート部材600に設けられた孔601を通って第二燃料クーラー320から燃料タンク32へ至るように配索されている第二燃料パイプ部材820においては、上述されたように、孔601近傍の位置でのホース連結が行われるのみならず、孔601を通って配索されている第二燃料パイプ部材820は孔711へ挿通された後に燃料タンク32へ戻されるので、組立て容易化が実現される。
【0080】
さらに、孔711を通って左壁プレート部710の外側へ引出された第二燃料パイプ部材820は、油圧オイルクーラーホースおよび2本のパワーステアリングホースのようなホースも支持することができる、ステー部材950の内側を通って左壁プレート部710でしっかり押さえられるので、ホース配索安定化が実現される。
【0081】
第二燃料パイプ部材820などのさらなるホース連結が、このようなアクスルブラケット左側面フレームである、左壁プレート部710を利用することにより行われる構成も、望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明における作業車両は、エンジン環境性能などに応じた良好な冷却機能を効率的に実現することができ、農業用トラクターなどのような作業車両に利用する目的に有用である。
【符号の説明】
【0083】
10 車体
20 運転ユニット
21 フロア
22 運転席
23 ステアリングホイール
24 アクセルペダル
30 エンジン
31 ボンネット
32 燃料タンク
33 バッテリ
40 前輪
50 後輪
60 作業機昇降機構
61 トップリンク
62 ロワーリンク
100 ラジエーター
200 オイルクーラー
310 第一燃料クーラー
320 第二燃料クーラー
321 上下方向冷却パイプ部
322 水平方向冷却パイプ部
400 支柱部材
500 保持プレート部材
501 固定ボルト具
600 ベースプレート部材
601 孔
700 壁プレート部材
710 左壁プレート部
711 孔
720 右壁プレート部
721 孔
810 第一燃料パイプ部材
820 第二燃料パイプ部材
910 クランクプーリーカバー
920 冷却水ドレインホース
930 油圧配管部材
940 パワーステアリング部材
950 ステー部材