(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】分析チップの製造装置、分析チップの製造装置の作動方法及び分析チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20250319BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20250319BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20250319BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20250319BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20250319BHJP
【FI】
G01N35/10 C
G01N37/00 102
G01N35/04 A
G01N33/53 M
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2021518972
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2021009148
(87)【国際公開番号】W WO2021182434
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2024-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2020040795
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020216604
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧井 有樹
(72)【発明者】
【氏名】薙野 邦久
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-021558(JP,A)
【文献】特開2006-201035(JP,A)
【文献】特開2006-242729(JP,A)
【文献】特開2003-098172(JP,A)
【文献】特開2005-214733(JP,A)
【文献】国際公開第2005/085848(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00~35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の選択結合性物質がそれぞれ個別に塗布される複数の凸部を有する基板を備える分析チップの製造装置であって、
中心軸のまわりに回転する回転テーブルであって、前記選択結合性物質が未塗布の基板が載置される回転テーブルと、
前記選択結合性物質を前記基板上の各凸部に点着させる複数の点着部材を有し、前記回転テーブルの上部に平行に位置する走査平面を移動可能な点着ヘッドと、
前記回転テーブルの回転及び前記点着ヘッドの前記走査平面の移動、並びに前記基板上の凸部への前記選択結合性物質の塗布を、前記基板ごとに制御する制御部と、
を備え、
前記基板上の複数の凸部及び前記点着ヘッドに配置された前記複数の点着部材の少なくとも一部は、いずれも直線上に配列されており、
前記点着ヘッドは、前記走査平面において、互いに交差する二方向に移動可能であり、
前記制御部は、
前記点着ヘッドに配置された前記複数の点着部材を通過する直線と平行な第1の配列方向と、前記点着ヘッドが移動可能な一の方向とがなす第1の角度を演算し、
前記回転テーブルに載置された基板上に配列された複数の凸部を通過する直線と平行であり、前記中心軸から外側に向かって形成される第2の配列方向と、前記点着ヘッドが移動可能な前記一の方向とがなす第2の角度を演算し、
前記第1の角度と前記第2の角度との差が最小になるように前記回転テーブルを回転させる、
ことによって、
前記回転テーブルの中心軸方向からみて、前記点着ヘッドの各点着部材と当該各点着部材に対応する前記基板上の凸部とが重なり合う位置に、前記回転テーブルを回転
させ、各凸部に前記選択結合性物質を塗布させる、
ことを特徴とする分析チップの製造装置。
【請求項2】
前記点着ヘッドを撮像する第1の撮像部と、
前記回転テーブルに載置された前記基板を撮像する第2の撮像部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1の撮像部が撮像した第1の画像に基づいて、前記第1の配列方向を検出し、
前記第2の撮像部が撮像した第2の画像に基づいて、前記第2の配列方向を検出する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の分析チップの製造装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1の画像に基づいて前記点着ヘッドの前記複数の点着部材の位置を検出することによって、前記第1の配列方向を検出する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の分析チップの製造装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2の画像に基づいて前記基板上の複数の凸部の位置を検出することによって、前記第2の配列方向を検出する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の分析チップの製造装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第2の画像に基づいて前記基板上に形成される標識部を検出することによって、前記第2の配列方向を検出する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の分析チップの製造装置。
【請求項6】
前記回転テーブルには、複数の前記基板が載置され、
各基板は、前記回転テーブルの前記中心軸が通過する位置とは異なる位置に載置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の分析チップの製造装置。
【請求項7】
複数の前記回転テーブルが設けられ、
各回転テーブルには、一つの前記基板が載置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の分析チップの製造装置。
【請求項8】
前記回転テーブルに載置された基板には、前記回転テーブルの前記中心軸が通過する、
ことを特徴とする請求項
7に記載の分析チップの製造装置。
【請求項9】
前記回転テーブルの前記中心軸は、前記基板の重心を通過する、
ことを特徴とする請求項
8に記載の分析チップの製造装置。
【請求項10】
各回転テーブルを各々の中心軸のまわりに回転自在に保持する保持テーブル、
を備えることを特徴とする請求項
7に記載の分析チップの製造装置。
【請求項11】
複数種類の選択結合性物質がそれぞれ個別に塗布される複数の凸部を有する基板を備える分析チップの製造装置であって、中心軸のまわりに回転する回転テーブルであって、前記選択結合性物質が未塗布の基板が載置される回転テーブルと、前記選択結合性物質を前記基板上の各凸部に点着させる複数の点着部材を有し、前記回転テーブルの上部に平行に位置する走査平面を移動可能な点着ヘッドと、前記回転テーブルの回転及び前記点着ヘッドの前記走査平面の移動並びに各凸部への前記選択結合性物質の塗布を制御する制御部と、を備える製造装置の作動方法であって、
前記基板上の複数の凸部及び前記点着ヘッドに配置された前記複数の点着部材の少なくとも一部は、いずれも直線上に配列されており、
前記点着ヘッドは、前記走査平面において、互いに交差する二方向に移動可能であり、
前記制御部が、
前記点着ヘッドに配置された前記複数の点着部材を通過する直線と平行な第1の配列方向と、前記点着ヘッドが移動可能な一の方向とがなす第1の角度を演算し、
前記回転テーブルに載置された基板上に配列された複数の凸部を通過する直線と平行であり、前記中心軸から外側に向かって形成される第2の配列方向と、前記点着ヘッドが移動可能な前記一の方向とがなす第2の角度を演算し、
前記第1の角度と前記第2の角度との差が最小になるように前記回転テーブルを回転させる、
ことによって、
前記回転テーブルの中心軸方向からみて、前記点着ヘッドの各点着部材と当該各点着部材に対応する前記基板上の凸部とが重なる位置への前記回転テーブルの回転
、及び各凸部に前記選択結合性物質を塗布させる処理を前記基板ごとに実行する、
ことを特徴とする分析チップの製造装置の作動方法。
【請求項12】
複数種類の選択結合性物質を、選択結合性物質が未塗布の基板上の各凸部に個別に塗布させる複数の点着部材を有し、前記基板が載置される回転テーブルの上部に平行に位置する走査平面において、互いに交差する二方向に移動可能な点着ヘッドを用いて分析チップを製造する分析チップの製造方法において、
前記基板上の複数の凸部及び前記点着ヘッドに配置された前記複数の点着部材の少なくとも一部は、いずれも直線上に配列されており、
前記点着ヘッドに配置された前記複数の点着部材を通過する直線と平行な第1の配列方向、および、前記点着ヘッドが移動可能な一の方向がなす第1の角度と、前記回転テーブルに載置された基板上に配列された複数の凸部を通過する直線と平行であり、前記中心軸から外側に向かって形成される第2の配列方向、および、前記点着ヘッドが移動可能な前記一の方向がなす第2の角度との差が最小になるような、前記基板が載置される
前記回転テーブルの中心軸方向からみて、
点着ヘッドの各点着部材と当該各点着部材に対応する前記基板上の凸部とが重なる位置への前記回転テーブルの回転
、並びに各凸部に前記選択結合性物質を塗布させる処理を前記基板ごとに実行する、
ことを特徴とする分析チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析チップの製造装置、分析チップの製造装置の作動方法及び分析チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種生物の遺伝情報解析の研究が始められている。ヒト遺伝子をはじめとして、多数の遺伝子とその塩基配列、また遺伝子配列にコードされる蛋白質及びこれら蛋白質から二次的に作られる糖鎖に関する情報が急速に明らかにされつつある。配列が明らかにされた遺伝子、蛋白質、糖鎖などの高分子体の機能は、各種の方法で調べることができる。主なものとして、核酸は、ノーザンブロッティング、あるいはサザンブロッティングのような、各種の核酸/核酸間の相補性を利用して、各種遺伝子とその生体機能発現との関係を調べることができる。蛋白質は、ウエスタンブロッティングに代表される蛋白質/蛋白質間の反応を利用し蛋白質の機能及び発現について調べることができる。
【0003】
多数の遺伝子発現を一度に解析する手法として、DNAマイクロアレイ法(分析チップ法)がある。この方法は、核酸/核酸間ハイブリダイゼーション反応に基づく核酸検出・定量法である点で原理的には上記の従来の方法と同じである。この分析チップ法は、蛋白質/蛋白質間、又は糖鎖/糖鎖間や糖鎖/蛋白質間の特異的な反応に基づく蛋白質や糖鎖の検出・定量に応用が可能である。この技術は、平板や凹凸パターンが形成された基板上に、多数のDNA断片や蛋白質、糖鎖が高密度に整列固定化されたものが用いられている。分析チップ法の具体的使用法としては、例えば、研究対象細胞の発現遺伝子等を蛍光色素等で標識した検体を、基板に形成された凸部上でハイブリダイゼーションさせ、互いに相補的な核酸(DNAあるいはRNA)同士を結合させ、その箇所を高解像度蛍光検出装置(スキャナー)で高速に読みとる方法が代表的である。また、電気化学反応に基づく電流値等の応答を検出する方法もある。このようにして、検体中のそれぞれの遺伝子量を迅速に推定できる。また、分析チップの応用分野は、発現遺伝子の量を推定する遺伝子発現解析のみならず、遺伝子の一塩基置換(Single Nucleotide Polymorphism:SNP)を検出する手段としても使用されている。
【0004】
分析チップの作製方法は、代表的に、点着部材によるスポッティング法があげられる。代表的には、予め合成したDNAを含む溶液(スポット溶液)を、ステンレス等の金属製のピンで基板上の凸部上端面に点着する方法(例えば、特許文献1を参照)や、インクジェット法によってノズルから吐出されるスポット溶液を凸部の上端面に点着する方法がある。基板には、通常数百から数万種のDNAが、マトリックスアレイ状に形成された複数の凸部のいずれかにそれぞれ塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、点着部材として複数のピンを用いて基板上の複数の凸部上端面に同時に点着しているが、基板(凸部)上にピンを配置した際に、ピンの配列方向と、基板の凸部の配列方向とがずれると、少なくとも一部の凸部にはスポット溶液が適切に点着されないおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、複数の点着部材を用いて複数の凸部に点着する際に、各凸部に確実に点着することができる分析チップの製造装置、分析チップの製造装置の作動方法及び分析チップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る分析チップの製造装置は、複数種類の選択結合性物質がそれぞれ個別に塗布される複数の凸部を有する基板を備える分析チップの製造装置であって、中心軸のまわりに回転する回転テーブルであって、前記選択結合性物質が未塗布の基板が載置される回転テーブルと、前記選択結合性物質を前記基板上の各凸部に点着させる複数の点着部材を有し、前記回転テーブルの上部に平行に位置する走査平面を移動可能な点着ヘッドと、前記回転テーブルの回転及び前記点着ヘッドの前記走査平面の移動、並びに前記基板上の凸部への前記選択結合性物質の塗布を、前記基板ごとに制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記回転テーブルの中心軸方向からみて、前記点着ヘッドの各点着部材と当該各点着部材に対応する前記基板上の凸部とが重なり合う位置に、前記回転テーブルを回転及び/又は前記点着ヘッドを移動させ、各凸部に前記選択結合性物質を塗布させる、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る分析チップの製造装置は、上記の発明において、前記基板上の複数の凸部及び前記点着ヘッドに配置された前記複数の点着部材の少なくとも一部は、いずれも直線上に配列されており、前記点着ヘッドは、前記走査平面において、互いに交差する二方向に移動可能であり、前記制御部は、前記点着ヘッドに配置された前記複数の点着部材を通過する直線と平行な第1の配列方向と、前記点着ヘッドが移動可能な一の方向とがなす第1の角度を演算し、前記回転テーブルに載置された基板上に配列された複数の凸部を通過する直線と平行であり、前記中心軸から外側に向かって形成される第2の配列方向と、前記点着ヘッドが移動可能な前記一の方向とがなす第2の角度を演算し、前記第1の角度と前記第2の角度との差が最小になるように前記回転テーブルを回転させる、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る分析チップの製造装置は、上記の発明において、前記点着ヘッドを撮像する第1の撮像部と、前記回転テーブルに載置された前記基板を撮像する第2の撮像部と、を備え、前記制御部は、前記第1の撮像部が撮像した第1の画像に基づいて、前記第1の配列方向を検出し、前記第2の撮像部が撮像した第2の画像に基づいて、前記第2の配列方向を検出する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る分析チップの製造装置は、上記の発明において、前記制御部は、前記第1の画像に基づいて前記点着ヘッドの前記複数の点着部材の位置を検出することによって、前記第1の配列方向を検出する、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る分析チップの製造装置は、上記の発明において、前記制御部は、前記第2の画像に基づいて前記基板上の複数の凸部の位置を検出することによって、前記第2の配列方向を検出する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る分析チップの製造装置は、上記の発明において、前記制御部は、前記第2の画像に基づいて前記基板上に形成される標識部を検出することによって、前記第2の配列方向を検出する、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る分析チップの製造装置は、上記の発明において、前記回転テーブルには、複数の前記基板が載置され、各基板は、前記回転テーブルの前記中心軸が通過する位置とは異なる位置に載置される、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る分析チップの製造装置は、上記の発明において、複数の前記回転テーブルが設けられ、各回転テーブルには、一つの前記基板が載置される、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る分析チップの製造装置は、上記の発明において、前記回転テーブルに載置された基板には、前記回転テーブルの前記中心軸が通過する、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る分析チップの製造装置は、上記の発明において、前記回転テーブルの前記中心軸は、前記基板の重心を通過する、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る分析チップの製造装置は、上記の発明において、各回転テーブルを各々の中心軸のまわりに回転自在に保持する保持テーブル、を備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る分析チップの製造装置の作動方法は、複数種類の選択結合性物質がそれぞれ個別に塗布される複数の凸部を有する基板を備える分析チップの製造装置であって、中心軸のまわりに回転する回転テーブルであって、前記選択結合性物質が未塗布の基板が載置される回転テーブルと、前記選択結合性物質を前記基板上の各凸部に点着させる複数の点着部材を有し、前記回転テーブルの上部に平行に位置する走査平面を移動可能な点着ヘッドと、前記回転テーブルの回転及び前記点着ヘッドの前記走査平面の移動並びに各凸部への前記選択結合性物質の塗布を制御する制御部と、を備える製造装置の作動方法であって、前記制御部が、前記回転テーブルの中心軸方向からみて、前記点着ヘッドの各点着部材と当該各点着部材に対応する前記基板上の凸部とが重なる位置への前記回転テーブルの回転及び/又は前記点着ヘッドの移動、並びに各凸部に前記選択結合性物質を塗布させる処理を前記基板ごとに実行する、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る分析チップの製造方法は、選択結合性物質が未塗布の基板が載置される回転テーブルの中心軸方向からみて、複数種類の前記選択結合性物質を前記基板上の各凸部に個別に塗布させる複数の点着部材を有し、前記回転テーブルの上部に平行に位置する走査平面を移動可能な点着ヘッドの各点着部材と当該各点着部材に対応する前記基板上の凸部とが重なる位置への前記回転テーブルの回転及び/又は前記点着ヘッドの移動、並びに各凸部に前記選択結合性物質を塗布させる処理を前記基板ごとに実行する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の点着部材を用いて複数の凸部にスポット溶液を点着する際に、スポット溶液を各凸部に確実に点着することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る分析チップの製造装置の構成を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施の形態に係る分析チップの製造装置における点着ヘッドの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、スポット溶液の採取について説明する図である。
【
図5】
図5は、スポット溶液の点着について説明する図である。
【
図6】
図6は、ピンの配列方向と、点着ヘッドの移動方向とがなす角度の算出について説明する図である。
【
図7】
図7は、基板の凸部の配列方向と、点着ヘッドの移動方向とがなす角度の算出について説明する図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施の形態に係る分析チップの製造装置におけるスポット溶液の点着処理について説明するフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の変形例1に係る分析チップの製造装置の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の変形例2に係る分析チップの製造装置の構成を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の変形例3に係る分析チップの製造装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面とともに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。すなわち、本発明は各図で例示された形状、大きさ及び位置関係のみに限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0024】
本発明が対象とする分析チップは、DNAやタンパク質、糖鎖などの選択制結合物質を含む溶液(本発明において、スポット溶液という。)をガラス基板やプラスチック基板等の基板に代表される担体の表面に塗布して固定化したものである。
【0025】
本発明に係る分析チップは、検体を当該分析チップの反応部に滴下し、被検物質の存在の有無や量、性状等を測定するために用いる。具体的には、担体表面に固定化された選択結合性物質と被検物質との反応により、被検物質の有無や量等を測定する、バイオチップが挙げられる。より具体的には、核酸を担体表面に固定化したDNAチップ、抗体に代表されるタンパク質を担体表面に固定化したタンパク質チップ、糖鎖を担体表面に固定化した糖鎖チップ及び細胞を担体表面に固定化した細胞チップ等が挙げられる。
【0026】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態に係る分析チップの製造装置の構成を模式的に示す図である。
図1に示す分析チップの製造装置1は、点着処理を実施する点着処理装置10と、点着処理装置10の駆動を制御する制御装置20とを備える。
【0027】
分析チップを構成する基板100は、ベース部101と、ベース部101内に形成される複数の凸部102とを備える。ベース部101は、外縁が矩形をなし、該外縁が立ち上がってなるトレイ状をなす。ベース部101の内部底面は、平板状に延び、部分的に凸部102が形成される。ベース部101の材質は、一般的なスライドガラスや同等の大きさのプラスチックが好ましく用いられる。また、基板100は、シグナル強度の検出時において基板100自体が発する光(例えば自家蛍光)を抑制するために、表面が、黒色である等、光を吸収する色や素材であることが好ましい。
【0028】
図2は、
図1に示す基板のA-A線断面図である。ベース部101の内部には、複数(本実施の形態では八つ)の凸部102が形成される。凸部102は、ベース部101の内部底面から凸状に突出する。ここで、凸部102の上端面は、平面をなし、その上端面には選択結合性物質を含むスポット溶液が点着され、選択結合性物質が固定されている。なお、凸部102の上端面は、スポット溶液中の選択結合性物質の固定化領域に相当し、スポット溶液が塗布される領域である。
【0029】
凸部102の数は、例えば二個、四個、八個、・・・等の任意の数に設定することができる。また、凸部102は、マトリックス状に配置される。本実施の形態では、八個の凸部102が、4行2列(4×2)で配置される。
【0030】
本発明における選択結合性物質とは、被検物質と直接的又は間接的に、選択的に結合しうる各種の物質を意味する。被検物質に結合しうる選択結合性物質の代表的な例としては、核酸、タンパク質、ペプチド、糖類、脂質を挙げることができる。
【0031】
選択結合性物質のうち、核酸としては、DNAやRNAが挙げられ、PNA、LNAでもよい。DNAとしては、染色体DNA、ウイルスDNA、細菌、カビ等のDNA、RNAを逆転写したcDNA、それらの一部である断片等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、RNAとしては、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、スモールRNA、マイクロRNA、それらの一部である断片等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、核酸には、化学的に合成されたDNA又はRNA等も含まれる。特定の塩基配列を有する一本鎖核酸は、該塩基配列又はその一部と相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸と選択的にハイブリダイズして結合するので、本発明で言う選択結合性物質に該当する。核酸は、生細胞等天然物由来のものであってもよいし、核酸合成装置により合成されたものであってもよい。生細胞からのDNA又はRNAの調製は、公知の方法、例えばDNAの抽出については、Blinらの方法(Blin et al.,Nucleic Acids Res.3:2303(1976))等により、また、RNAの抽出については、Favaloroらの方法(Favaloro et al.,Methods Enzymol.65:718(1980))等により行うことができる。固定化される核酸としては、鎖状若しくは環状のプラスミドDNAや染色体DNA、これらを制限酵素により若しくは化学的に切断したDNA断片、試験管内で酵素等により合成されたDNA、又は化学合成したオリゴヌクレオチド等を用いることもできる。
【0032】
タンパク質としては、抗体及びFabフラグメントやF(ab´)2フラグメントのような、抗体の抗原結合性断片、並びに種々の抗原を挙げることができる。抗体やその抗原結合性断片は、対応する抗原と選択的に結合し、抗原は対応する抗体と選択的に結合するので、「選択結合性物質」に該当する。
【0033】
糖類としては、各種単糖、オリゴ糖、多糖等の糖鎖を挙げることができる。
【0034】
脂質としては、単純脂質の他、複合脂質であってもよい。
【0035】
さらに、上記核酸、タンパク質、糖類、脂質以外の抗原性を有する物質を固定化することもできる。また、選択結合性物質として、担体の表面に細胞を固定化してもよい。
【0036】
これらの選択結合性物質のうち特に好ましいものとして、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、糖、糖鎖、脂質を挙げることができる。
【0037】
これらの選択結合性物質は、スポット溶液として、担体の表面に塗布されて固定化される。スポット溶液には、その他バッファー調整用の塩類を含むこともできる。その例としては、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液を用いることができる。
【0038】
選択結合性物質を担体表面に共有結合により固定化する場合には、スポット溶液に縮合剤を含むことができる。縮合剤としては、アミド結合を形成するためのカルボジイミド、なかでも水溶性カルボジイミドである3-(3-ジメチルアミノプロピル)-1-エチルカルボジイミド(EDC)又はその塩酸塩を好ましく用いることができる。縮合剤としてEDCを用いる場合には、スポット溶液中にEDCと塩化ナトリウムとを混合した溶液を用いることができる。
【0039】
分析チップは、被検物質との反応を行う時に、カバー等(図示しない)によって少なくともベース部101における凸部102の形成空間が封止される構造であることが好ましい。例えば、凸部102の上端面が直接カバーと接触しないように、カバー内面を凹形状に形成することができる。また、平板カバーを用いる場合には、ベース部101に形成された凹部に凸部102が設けられ、当該凹部の深さが、基板にカバーをした場合に凸部102の上端面がカバー内面に接しない深さである構造を採用することができる。この際に使用されるカバーは、ガラス、各種のポリマー(例えばポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン)、シリコーン等、いずれの材質でもよい。
【0040】
点着処理装置10は、回転テーブル11と、点着ヘッド12と、移動機構13と、第1撮像部14と、第2撮像部15と、スポット溶液保持部16と、洗浄部17と、乾燥部18とを備える。
図1に示す点着処理装置10において、左右方向をX方向(右方向を正方向とする)、上下方向をY方向(上方向を正とする)、紙面と直交する方向とZ方向(手前に向かう方向を正方向とする)とする。
【0041】
回転テーブル11は、円板状をなし、点着処理を行う基板100を載置する。回転テーブル11は、中心軸Nのまわりに回転可能である。
図1において、中心軸Nは、紙面と直交する方向(Z方向)に延びる。回転テーブル11における基板100の載置面は、XY平面と平行である。基板100は、回転テーブル11の中心軸Nが通過しない位置であって、該中心軸Nを中心とする円の周方向に並べて配置される。このため、基板100は、回転テーブル11の回転によって、中心軸Nのまわりに公転する。
【0042】
点着ヘッド12は、基板100にスポット溶液を点着する複数のピン122を保持する保持部121を有する。
図3は、本発明の一実施の形態に係る分析チップの製造装置における点着ヘッドの構成を模式的に示す斜視図である。ピン122は、保持部121から棒状をなして延びる。
図1に示す点着ヘッド12には、基板100の凸部102の数に合わせて八本のピン122が設けられる。複数のピン122は、直交する二方向に(マトリックス状に)配置される。
図1に示す基板100において、複数のピン122は、凸部102の配置に対応して4×2(本)となるように配置される。ピン122は、点着部材に相当する。
【0043】
移動機構13は、点着ヘッド12の保持部121を保持し、制御装置20の制御のもと、点着ヘッド12を移動させる。移動機構13は、駆動によって、点着ヘッド12を、X方向、Y方向及びZ方向に移動させる。具体的に、移動機構13は、点着ヘッド12を、走査平面であるXY平面上で移動させる。さらにこの走査平面は、Z方向に遷移させることが可能である。
【0044】
移動機構13は、X方向に延びる第1シャフト131と、第1シャフト131に沿ってX方向に移動する第1移動部132と、第1移動部132に保持され、Z方向に移動可能な第2移動部133と、第2移動部133からY方向に延び、点着ヘッド12をY方向に移動可能に保持する第2シャフト134とを有する。
【0045】
第1撮像部14は、点着ヘッド12のピン122配設側の画像を撮像する。
第2撮像部15は、基板100の凸部102の形成面の画像を撮像する。
【0046】
第1撮像部14及び第2撮像部15は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いて構成される。第1撮像部14及び第2撮像部15の撮像視野を変更させるために、第1撮像部14及び第2撮像部15を移動可能な構成としてもよい。その場合、ピン122の配列方向や、凸部102の配列方向を検出するための画像を撮像するために、第1撮像部14及び第2撮像部15を移動させることが可能である。
【0047】
スポット溶液保持部16には、プレート161が交換可能に設けられる。プレート161には、複数(本実施の形態では八個)の穴部162が形成される。穴部162には、スポット溶液が収容されている。穴部162は、ピン122の配置に対応して配設され、移動機構13の移動によって、各穴部162にピン122が挿入される。プレート161は、ユーザが手動で交換してもよいし、機械的に交換してもよい。機械的に交換する場合、例えば、スポット溶液保持部16の下部に、スポット溶液を収容した複数のプレート161を収納する冷蔵室が設けられ、該冷蔵室から交換対象のプレート161を取り出して、スポット溶液保持部16に配置する。
【0048】
洗浄部17は、水(純水)、生理食塩水、界面活性剤を含む水溶液等の洗浄液が供給され、浸漬や撹拌等によって洗浄部17に配置されたピン122を洗浄する。
乾燥部18は、洗浄後のピンに付着した洗浄液を除去するためのもので、例えば、洗浄後のピンを挿入し、風圧によって付着した洗浄液を除去する。
【0049】
制御装置20は、駆動部21と、演算部22と、記憶部23と、制御部24とを備える。制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)や、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の一つ又は複数のプロセッサ、及びメモリを用いて構成される。
【0050】
駆動部21は、制御部24の制御信号に基づいて、点着処理装置10の各部を駆動制御する。駆動部21は、例えば、各部にパルス信号を送信して、設定された方向及び距離で回転テーブル11や移動機構13を移動させたり、第1撮像部14及び第2撮像部15に撮像処理を実行させたりする。
【0051】
演算部22は、回転テーブルの回転量や、移動機構13による点着ヘッド12の配置を決定する演算処理を実行する。演算部22は、角度算出部221と、位置決定部222とを有する。
【0052】
角度算出部221は、点着ヘッド12に配設されるピン122の配列方向と点着ヘッド12の移動方向とがなす角度、及び、基板100の凸部102の配列方向と点着ヘッド12の移動方向とがなす角度をそれぞれ算出する。
【0053】
位置決定部222は、角度算出部221が算出した角度に基づいて、回転テーブル11の回転位置、移動機構13による点着ヘッド12の移動位置を決定する。
【0054】
記憶部23は、製造装置1を動作させるための各種プログラム、及び、製造装置1の動作に必要な各種パラメータ等を含む情報を記憶する。
【0055】
制御部24は、製造装置1の各部を統括的に制御する。
【0056】
続いて、分析チップの使用方法の一例について説明する。まず、検体から核酸等の被検物質を抽出する。その後、抽出した被検物質に標識体、例えば蛍光標識体を結合させる。標識化した被検物質と、DNAチップ上の選択結合性物質とを反応させる。反応処理では、例えば32℃で数時間、攪拌処理することによって、被検物質と、凸部102の上端面に固定化されている選択結合性物質とを反応させる。撹拌処理では、例えば、回転、振動等、又はこれらの組合せで、分析チップを移動させることにより、又は、分析チップを覆うカバー内に封入された撹拌用のビーズを移動させることにより、被検物質を含む溶液を撹拌させる。
【0057】
本発明で用いられる検体としては、血液、血清、血漿、尿、便、髄液、唾液、各種組織液等の体液や、各種飲食物並びにそれらの希釈物等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
本発明で用いられる被検物質としては、測定すべき核酸、例えば、病原菌やウイルス等の遺伝子や、遺伝病の原因遺伝子等並びにその一部分、抗原性を有する各種生体成分、病原菌やウイルス等に対する抗体等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。被検物質は、例えば、核酸の場合はハイブリダイゼーション反応により、タンパク質の場合は抗原抗体反応により、それぞれ選択結合性物質と反応させることができる。
【0059】
被検物質となる核酸は、血液や細胞から抽出した核酸を蛍光物質等で標識してもよいし、該核酸を鋳型とし、PCR等の核酸増幅法によって増幅したものであってもよい。核酸増幅産物を被検物質とする場合には、蛍光物質等で標識したヌクレオシド三リン酸の存在下で増幅を行うことにより、増幅核酸を標識することが可能である。また、被検物質が抗原又は抗体の場合には、被検物質である抗原や抗体を常法により直接標識してもよいし、被検物質である抗原又は抗体を選択結合性物質と結合させた後、担体を洗浄し、該抗原又は抗体と抗原抗体反応する標識した抗体又は抗原を反応させ、担体に結合した標識を測定することもできる。また、増幅されていない核酸を被検物質とする場合は、例えばアルカリホスファターゼにより核酸の5’末端のリン酸基を除去して蛍光物質を標識した被検物質を選択結合性物質と反応させ、結合した標識を測定する方法や、選択結合性物質(捕捉プローブ)により被検物質を捕捉した後、被検物質に蛍光物質等で標識した検出プローブを結合させ、検出プローブの標識を測定する方法(サンドイッチハイブリダイゼーション法)が好適に用いられる。
【0060】
分析チップは、反応処理後、洗浄処理を行って、選択結合性物質とは未反応の物質を分析チップから除去する。洗浄処理後、チップやスライドグラス専用の一般的な遠心機を用いて、分析チップを遠心乾燥させる。
【0061】
洗浄及び乾燥処理を終えた分析チップは、被検物質を蛍光標識した場合、高解像度蛍光検出装置等を用いて画像を読み込み、シグナル強度(蛍光強度)を数値化する処理に用いられる。好適に用いられる高解像度蛍光検出装置として、3D-Gene(登録商標) Scanner(東レ株式会社製)、SureScanマイクロアレイスキャナー(アジレント・テクノロジー株式会社製)、GenePix(モレキュラーデバイス社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
続いて、分析チップ製造時のスポット溶液の点着方法について、
図3~
図8を参照して説明する。
図4は、スポット溶液の採取について説明する図である。
図5は、スポット溶液の点着について説明する図である。ピン122(点着ヘッド12)は、制御部24の制御のもと、移動機構13の駆動によって移動する。
【0063】
点着処理では、まず、スポット溶液Q
1~Q
4が収容されている各穴部162にピン122をそれぞれ挿入して(
図4の(a)参照)、ピン122の先端にスポット溶液Q
1~Q
4を付着させる(
図4の(b)参照)。
【0064】
その後、先端にスポット溶液が付着したピン122を点着対象の基板100の上部に配置し(
図5の(a)参照)、凸部102にスポット溶液を接触させることによって、スポット溶液を、ピン122から凸部102に移す(
図5の(b)参照)。
【0065】
この際、ピン122の位置と、凸部102の位置とがずれていると、スポット溶液を凸部102に適切に点着できない場合がある。本実施の形態では、ピン122の配列方向と、凸部102の配列方向とが揃う位置に、点着ヘッド12及び基板100を配置する。
【0066】
この際、角度算出部221は、まず、点着ヘッド12に配設されるピン122の配列方向と点着ヘッド12の移動方向とがなす角度を算出する。
図6は、ピンの配列方向と、点着ヘッドの移動方向とがなす角度の算出について説明する図である。なお、第1撮像部14及び第2撮像部15は、Z方向と平行な光軸の光学系によって撮像された画像であるものとして説明する。
【0067】
角度算出部221は、第1撮像部14が撮像した、点着ヘッド12の画像を取得する。角度算出部221は、撮像画像に基づいて、ピン122の配列から、所定の方向に並ぶすべてのピン122を通過する直線LPを生成する。本実施の形態では、X方向に対して略平行に並ぶすべてのピン122を通過する直線を生成する。角度算出部221は、例えば、輪郭抽出によって各ピン122の外周の輪郭を抽出し、その輪郭の中心を求める。角度算出部221は、求めた各中心の位置に対する近似直線を求め、これを直線LPとする。角度算出部221は、直線LPと、点着ヘッド12の移動方向(ここでは、第1シャフト131の長手軸方向(X方向))と平行な直線LNとがなす角度θPを算出する。
【0068】
また、角度算出部221は、基板100の凸部102の配列方向と点着ヘッド12の移動方向とがなす角度を算出する。
図7は、基板の凸部の配列方向と、点着ヘッドの移動方向とがなす角度の算出について説明する図である。角度算出部221は、第2撮像部15が撮像した、基板100の画像を取得する。角度算出部221は、撮像画像に基づいて、凸部102の配列から、所定の方向に並ぶすべての凸部102を通過する直線L
Cを生成する。本実施の形態では、点着ヘッド12の配列方向(ここでは、点着位置に配置された際にX方向に並ぶ凸部102の配列方向)対して略平行に並ぶすべての凸部102を通過する直線を生成する。この直線が通過する凸部102の配列方向は、回転テーブル11の中心(中心軸N)から外側に向かう方向である。角度算出部221は、例えば、輪郭抽出によって各凸部102の外周の輪郭を抽出し、その輪郭の中心を求める。角度算出部221は、求めた各中心の位置に対する近似直線を求め、これを直線L
Cとする。角度算出部221は、直線L
Cと、点着ヘッド12の移動方向(ここでは、第1シャフト131の長手軸方向(X方向))と平行な直線L
Nとがなす角度θ
Cを算出する。
【0069】
位置決定部222は、角度算出部221が算出した角度θP、θCに基づいて、回転テーブル11の回転位置(点着対象の基板100の配置)、及び、移動機構13による点着ヘッド12の移動位置を決定する。位置決定部222は、角度θPと角度θCとの差分θDを算出する。この差分θDが、X方向における、ピン122の配列方向と、凸部102の配列方向とのずれに相当する。
【0070】
位置決定部222は、基準となる点着位置(例えば
図1に示す基準位置P
B)からθ
Bだけ回転テーブル11を回転させた位置を、点着対象の基板100の位置に決定する。すなわち、位置決定部222は、角度θ
Pと角度θ
Cとの差(差分θ
D)が最小となる回転テーブル11の回転角度(θ
B)を決定する。これにより、ピン122の配列方向と、凸部102の配列方向とを平行にすることができる。回転テーブル11の回転に係る特性や、移動機構13の駆動に係る特性、また凸部の配列領域、凸部上端の面積に応じて、回転角度(θ
B)を例えばθ
D±0.1°となる範囲で設定してもよい。さらに好ましくは、θ
D±0.06°となる範囲で設定してもよい。
【0071】
また、位置決定部222は、回転テーブル11の回転後の基板100の上方の位置を、点着ヘッド12を配置する位置として決定する。点着処理装置10には仮想的に座標空間が設定されており、位置決定部222は、点着位置に配置される基板100のXY座標においてZ方向に所定の距離だけ上部に位置する座標を、点着ヘッド12の位置として決定する。ここで、基板や点着ヘッド12の座標とは、各部材の代表点が位置する座標をさす。
なお、位置決定部222は、撮像画像における基板100の位置や向きに応じて、点着ヘッド12の位置(座標)を補正してもよい。
【0072】
続いて、製造装置1におけるスポット溶液の点着処理の流れについて、
図8を参照して説明する。
図8は、本発明の一実施の形態に係る分析チップの製造装置におけるスポット溶液の点着処理について説明するフローチャートである。
【0073】
まず、基板100は、表面処理が施され、その後回転テーブル11に載置される。表面処理では、選択結合性物質を基板表面に固定化するために必要な官能基導入等の処理が行われる。例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)製の基板の場合は、アルカリ性水溶液によるPMMAの側鎖の加水分解が実施される。
【0074】
製造装置1では、ピン122の配列方向を検出するため、第1撮像部14が、点着ヘッド12の画像を撮像する(ステップS101)。
【0075】
その後、角度算出部221は、点着ヘッド12の撮像画像に基づいて、ピン122の配列方向を検出する(ステップS102)。角度算出部221は、上述したようにして、ピン122の配列から、所定の方向に並ぶすべてのピン122を通過する直線L
Pを生成する(
図6参照)。
【0076】
角度算出部221は、生成した直線LPと、点着ヘッド12の移動方向と平行な直線LNとがなす角度θP(配列角度)を算出する(ステップS103)。ステップS103において算出した配列角度を記憶部23に記憶し、点着ヘッド12が交換されるまで、当該配列角度を使用することが可能である。
【0077】
ここで、制御部24は、回転テーブル11に載置された複数の基板100に対し、点着処理番号nを付す。番号nは、回転テーブル11に載置された基板100の数に相当する。番号nの最大値をn
MAXとすると、本実施の形態ではn
MAX=8となる(
図1参照)。制御部24は、点着処理対象の番号nをn=1に設定する(ステップS104)。駆動部21は、制御部24の制御のもと、回転テーブル11を回転させて、n=1の基板100を基準位置(基準位置P
B)に移動させる。なお、この際に回転テーブル11に載置される基板100は、スポット溶液が未塗布の基板である。
【0078】
ステップS105において、角度算出部221は、n番目の基板100の凸部102の配列方向の配列方向を検出する。この際、第2撮像部15は、基板100の画像を撮像する。角度算出部221は、撮像画像に基づいて、凸部102の配列から、所定の方向に並ぶすべての凸部102を通過する直線L
Cを生成する(
図7参照)。
【0079】
角度算出部221は、生成した直線LCと、点着ヘッド12の移動方向と平行な直線LNとがなす角度θCを算出する(ステップS106)。
【0080】
その後、位置決定部222が、角度算出部221が算出した角度θP、θCに基づいて、n番目の基板100の配置(回転テーブル11の回転角度)、及び、移動機構13による点着ヘッド12の配置(移動位置)を決定する(ステップS107)。位置決定部222は、基準位置PBから角度θPと角度θCとの差分θDが最小となる回転角度で回転テーブル11を回転させた位置を、点着対象の基板100の位置に決定する。また、位置決定部222は、差分θDが最小となる回転角度で回転後の基板100の上方の位置を、点着ヘッド12を配置する位置として決定し、記憶部23に記録する。
【0081】
次に、制御部24は、基板100の番号nの値を1増やす(ステップS108)。
【0082】
その後、制御部24は、再設定後の番号nが、最大値n
MAX(ここではn=8)より大きいか否かを判断する(ステップS109)。制御部24は、nがn
MAX以下であると判断した場合(ステップS109:No)、ステップS105に戻り、再設定後の番号nに対応する基板100への処理を実行する。これに対し、制御部24は、nがn
MAXより大きいと判断した場合(ステップS109:Yes)、回転テーブル11に載置されたすべての基板100において、制御部24は、点着処理を実施する(ステップS110)。駆動部21は、点着ヘッド12をスポット溶液保持部16に移動させて、ピン122にスポット溶液を付着させる(
図4参照)。ピン122にスポット溶液を付着させた後、制御部24の制御のもと、点着対象の基板100に応じて回転テーブル11を回転させ、移動機構13によって点着ヘッド12を移動させることによって、n番目の基板100、及び、点着ヘッド12を、ステップS107において決定された位置(記憶部23に記録された位置)に配置する。制御部24は、基板100及び点着ヘッド12を配置後、点着ヘッド12をZ方向に下して、凸部102にスポット溶液を接触させて点着する(
図5参照)。制御部24は、上述した処理を、予め設定された順(例えば、n=1、2、3、・・・、n)に各基板100の点着処理を実施する。
また、ステップS109においてnがn
MAXより大きいと判断された場合(ステップS109:Yes)、ステップS110に移行する前に、記憶部23に記録した位置において、再度、第2撮像部15により凸部の配列方向の検出を行い、記憶部23に記録された位置が適切であるか否かを確認する位置確認ステップを加えることもできる。
【0083】
上述した実施の形態では、点着ヘッド12に配設されるピン122の配列方向と、基板100の凸部102の配列方向を検出し、各配列方向が揃う位置に回転テーブル11、及び点着ヘッド12を移動させて点着処理を実施するようにした。本実施の形態によれば、各ピン122の位置と、凸部102の位置との位置ずれの発生を抑制した点着処理が実施されるため、複数のピンを用いて複数の凸部にスポット溶液を点着する際に、スポット溶液を各凸部に確実に点着することができる。
【0084】
なお、上述した実施の形態において、スポット溶液との接触によって凸部の上端面にスポット溶液を付着させるピンに代えて、インクジェット法によって、内部からスポット溶液を吐出するノズルを用いて、凸部102にスポット溶液を点着するようにしてもよい。
【0085】
また、上述した実施の形態では、ピン122の画像、凸部102の画像からそれぞれの配列方向を検出する例を説明したが、保持部121やベース部101に、ピン122及び凸部102の配列方向を示す標識部を設け、この標識部を検出して各配列方向を検出するようにしてもよい。標識部は、配列方向を検出することが可能であれば、文字でもよいし、四角(□)、丸(〇)、直線(-)等の図や、これらの組み合わせであってもよい。
【0086】
また、上述した実施の形態では、ピン122の本数と、基板100の凸部102の数とが同じであり、一回の点着処理で、一つの基板100に対する点着が完了する例を説明したが、ピン122の本数が凸部102の数よりも少ない場合は、点着ヘッド12を基板100に対して往復させればよく、ピン122の本数が凸部102の数よりも多い場合は、スポット溶液保持部のプレート161が収容するスポット溶液の配置を、凸部に合せる等して、スポット溶液を付着させるピン122を制御すればよい。
【0087】
(変形例1)
次に、変形例1について、
図9を参照して説明する。
図9は、本発明の変形例1に係る分析チップの製造装置の構成を示す図である。変形例1に係る分析チップの製造装置1Aは、上述した分析チップの製造装置1の点着処理装置10に代えて、点着処理装置10Aを備える。分析チップの製造装置1Aにおいて、点着処理装置10A以外の構成は、実施の形態で説明した構成と同様である。
【0088】
点着処理装置10Aは、複数の回転テーブル11Aと、点着ヘッド12と、移動機構13と、第1撮像部14と、第2撮像部15と、スポット溶液保持部16と、洗浄部17と、乾燥部18とを備える。第1撮像部14、スポット溶液保持部16、洗浄部17および乾燥部18は、上述した実施の形態と同様である。また、移動機構13は、回転テーブル11Aの配置に応じて第1シャフト131および第2シャフト134の長さが異なる以外は、上述した実施の形態と同様である。
【0089】
回転テーブル11Aは、円板状をなし、一つの基板100を載置する。回転テーブル11Aは、制御装置20の制御のもと、中心軸N
1のまわりに回転可能である。
図9において、中心軸N
1は、紙面と直交する方向(Z方向)に延びる。回転テーブル11Aにおける基板100の載置面は、XY平面と平行である。また、回転テーブル11Aに基板100が載置された状態において、中心軸N
1は、基板100を通過する。本変形例1では、中心軸N
1が、基板100の重心を通過する例について説明するが、これに限らず、重心からずれた位置を通過してもよい。
【0090】
本変形例1において、第2撮像部15は、各回転テーブル11Aに対して移動可能に設けられる。第2撮像部15は、図示しない移動機構によって移動する。第2撮像部15は、点着ヘッド12に取り付けて、該点着ヘッド12と一緒に移動してもよいし、点着ヘッド12とは別に移動機構13に沿って移動するようにしてもよいし、移動機構13とは別の公知の移動機構を用いてもよい。
【0091】
演算部22は、基板100の画像に基づいて、回転テーブル11Aの回転量を決定する演算処理を実行する。具体的には、角度算出部221が、点着ヘッド12に配設されるピン122の配列方向(上述した直線LPに相当)と点着ヘッド12の移動方向(上述した直線LNに相当)とがなす角度θP1(上述した角度θPに相当)、及び、基板100の凸部102の配列方向(例えば上述した直線LCに相当)と点着ヘッド12の移動方向とがなす角度θC1(上述した角度θCに相当)をそれぞれ算出する。ここで、角度算出部221は、基板100の凸部102の配列方向と点着ヘッド12の移動方向とがなす角度θC1を、回転テーブル11Aごとに算出する。
【0092】
その後、位置決定部222は、角度算出部221が算出した角度に基づいて、回転テーブル11Aの中心軸N1まわりの回転角度を決定する。具体的には、位置決定部222は、角度θP1と角度θC1との差(差分θD1)を算出し、当該差分θD1が最小となる回転テーブル11Aの回転角度(θB1)を決定する。なお、本変形例1において、移動機構13による点着ヘッド12の移動位置は、第2撮像部15が撮像した基板100の画像に基づいて決定される位置である。この移動位置は、例えば基板100の輪郭を抽出し、該輪郭と点着ヘッド12との位置合わせを行って決定される。また、この移動位置は、各回転テーブル11Aの中心軸N1の位置に基づいて回転テーブル11Aごとに決定される。
【0093】
点着対象の基板100を載置する回転テーブル11Aは、制御装置20の制御のもと、位置決定部222が決定した回転角度で回転テーブル11Aを回転させる。
【0094】
移動機構13は、制御装置20の制御のもと、点着ヘッド12を、上述した移動位置に移動させる。移動機構13は、駆動によって、点着ヘッド12を、X方向、Y方向およびZ方向に移動させる。点着ヘッド12は、移動位置においてZ方向に昇降することによって、基板100の凸部102にスポット溶液が点着される。
【0095】
上述した変形例1では、点着ヘッド12に配設されるピン122の配列方向と、回転テーブル11Aに載置された基板100の凸部102の配列方向を検出し、各配列方向が揃う位置に回転テーブル11Aを回転させて点着処理を実施するようにした。本変形例1によれば、各ピン122の位置と、凸部102の位置との位置ずれの発生を抑制した点着処理が実施されるため、複数のピンを用いて複数の凸部にスポット溶液を点着する際に、スポット溶液を各凸部に確実に点着することができる。
【0096】
なお、上述した変形例1では、一つの第2撮像部15を、各回転テーブル11Aに対して移動可能に設ける構成を例に説明したが、複数設けてもよいし、第2撮像部15を各回転テーブル11Aに対して個別に設けてもよい。
【0097】
(変形例2)
次に、変形例2について、
図10を参照して説明する。
図10は、本発明の変形例2に係る分析チップの製造装置の構成を模式的に示す図である。変形例2に係る分析チップの製造装置1Bは、上述した分析チップの製造装置1の点着処理装置10に代えて、点着処理装置10Bを備える。分析チップの製造装置1Bにおいて、点着処理装置10B以外の構成は、実施の形態で説明した構成と同様である。
【0098】
点着処理装置10Bは、複数の回転テーブル11Bと、回転テーブル11Bを保持する保持テーブル11Cと、点着ヘッド12と、移動機構13と、第1撮像部14と、第2撮像部15と、スポット溶液保持部16と、洗浄部17と、乾燥部18とを備える。第1撮像部14、第2撮像部15、スポット溶液保持部16、洗浄部17および乾燥部18は、上述した実施の形態と同様である。
【0099】
回転テーブル11Bは、円板状をなし、一つの基板100を載置する。回転テーブル11Bは、制御装置20の制御のもと、中心軸N
2のまわりに回転可能である。
図10において、中心軸N
2は、紙面と直交する方向(Z方向)に延びる。回転テーブル11Bにおける基板100の載置面は、XY平面と平行である。また、回転テーブル11Bに基板100が載置された状態において、中心軸N
2は、基板100を通過する。本変形例2では、中心軸N
2が、基板100の重心を通過する例について説明するが、これに限らず、重心からずれた位置を通過してもよい。
【0100】
保持テーブル11Cは、円板状をなし、各回転テーブル11Bを中心軸N
2のまわりに回転自在に保持する。保持テーブル11Cは、制御装置20の制御のもと、中心軸N
3を回転軸として回転可能である。
図10において、中心軸N
3は、紙面と直交する方向(Z方向)に延びる。保持テーブル11Cにおいて、回転テーブル11Bは、中心軸N
3の周りに配置される。この際、中心軸N
3は、回転テーブル11Bを通過しない。
保持テーブル11Cは、中心軸N
3のまわりに回転することによって、点着対象の基板100が載置された回転テーブル11Bを、第2撮像部15による撮像位置に配置する。撮像位置は、例えば、回転テーブル11Bの中心軸N
2が、基準位置P
B上に位置するように設定される。本変形例2において、第2撮像部15は、点着ヘッド12が点着を行う位置に配置された基板100の撮像を行う。
【0101】
変形例2において、演算部22は、基板100の画像に基づいて、回転テーブル11Bの回転量や、移動機構13による点着ヘッド12の配置を決定する演算処理を実行する。具体的には、変形例1と同様にして、位置決定部222が、点着位置に配置された回転テーブル11B上の基板100について、角度θP1と角度θC1との差(差分θD1)を算出し、当該差分θD1が最小となる回転テーブル11Bの回転角度(θB1)を決定する。
【0102】
点着対象の基板100を載置する回転テーブル11Bは、制御装置20の制御のもと、位置決定部222が決定した回転角度で回転テーブル11Bを回転させる。
【0103】
移動機構13は、制御装置20の制御のもと、点着ヘッド12を移動させる。移動機構13は、駆動によって、点着ヘッド12を、X方向、Y方向及びZ方向に移動させる。点着ヘッド12は、基準位置PB上に位置する回転テーブル11Bに対してZ方向に昇降することによって、基板100の凸部102にスポット溶液が点着される。
【0104】
上述した変形例2では、点着ヘッド12に配設されるピン122の配列方向と、回転テーブル11Bに載置された基板100の凸部102の配列方向を検出し、各配列方向が揃う位置に回転テーブル11Bを回転させて点着処理を実施するようにした。本変形例2によれば、各ピン122の位置と、凸部102の位置との位置ずれの発生を抑制した点着処理が実施されるため、複数のピンを用いて複数の凸部にスポット溶液を点着する際に、スポット溶液を各凸部に確実に点着することができる。
【0105】
(変形例3)
次に、変形例3について、
図11を参照して説明する。
図11は、本発明の変形例3に係る分析チップの製造装置の構成を模式的に示す図である。変形例3に係る分析チップの製造装置1Cは、上述した分析チップの製造装置1の点着処理装置10に代えて、点着処理装置10Cを備える。分析チップの製造装置1Cにおいて、点着処理装置10C以外の構成は、実施の形態で説明した構成と同様である。
【0106】
点着処理装置10Cは、複数の回転テーブル11Bと、回転テーブル11Bを保持する保持テーブル11Dと、点着ヘッド12と、移動機構13と、第1撮像部14と、第2撮像部15と、スポット溶液保持部16と、洗浄部17と、乾燥部18とを備える。回転テーブル11B、第1撮像部14、第2撮像部15、スポット溶液保持部16、洗浄部17および乾燥部18は、上述した実施の形態と同様である。
【0107】
保持テーブル11Dは、Y方向に延び、各回転テーブル11Bを中心軸N
2のまわりに回転自在に保持する。保持テーブル11Dは、制御装置20の制御のもと、回転テーブル11BをY方向に移動させる。保持テーブル11Dは、回転テーブル11Bを一方向(
図11では下方向)に移動させて、複数の基板100を、点着ヘッド12による点着位置に順次配置する。
【0108】
変形例3において、演算部22は、基板100の画像に基づいて、回転テーブル11Bの回転量や、移動機構13による点着ヘッド12の配置を決定する演算処理を実行する。具体的には、変形例1と同様にして、位置決定部222が、点着位置に配置された回転テーブル11B上の基板100について、角度θP1と角度θC1との差(差分θD1)を算出し、当該差分θD1が最小となる回転テーブル11Bの回転角度(θB1)を決定する。
【0109】
点着対象の基板100を載置する回転テーブル11Bは、制御装置20の制御のもと、位置決定部222が決定した回転角度で回転される。
【0110】
移動機構13は、制御装置20の制御のもと、点着ヘッド12を移動させる。移動機構13は、駆動によって、点着ヘッド12を、X方向、Y方向及びZ方向に移動させる。点着ヘッド12は、基準位置PB上に位置する回転テーブル11Bに対してZ方向に昇降することによって、基板100の凸部102にスポット溶液が点着される。
【0111】
上述した変形例3では、点着ヘッド12に配設されるピン122の配列方向と、回転テーブル11Bに載置された基板100の凸部102の配列方向を検出し、各配列方向が揃う位置に回転テーブル11Bを回転させて点着処理を実施するようにした。本変形例3によれば、各ピン122の位置と、凸部102の位置との位置ずれの発生を抑制した点着処理が実施されるため、複数のピンを用いて複数の凸部にスポット溶液を点着する際に、スポット溶液を各凸部に確実に点着することができる。
【0112】
回転テーブル11Bを移動させる保持テーブル11Dは、変形例2、3に係る構成に限らず、回転テーブル11BをX方向に移動させる構成や、一部が湾曲した経路で回転テーブル11Bを移動させる構成等を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明に係る分析チップの製造装置、分析チップの製造装置の作動方法、及び分析チップの製造方法は、複数のピンを用いて複数の凸部にスポット溶液を点着する際に、スポット溶液を各凸部に確実に点着するのに有用である。
【符号の説明】
【0114】
1、1A、1B、1C 分析チップの製造装置
10、10A、10B、10C 点着処理装置
11、11A、11B 回転テーブル
11C、11D 保持テーブル
12 点着ヘッド
13 移動機構
14 第1撮像部
15 第2撮像部
16 スポット溶液保持部
17 洗浄部
18 乾燥部
20 制御装置
21 駆動部
22 演算部
23 記憶部
24 制御部
100 基板
101 ベース部
102 凸部
121 保持部
122 ピン
131 第1シャフト
132 第1移動部
133 第2移動部
134 第2シャフト
161 プレート
162 穴部
221 角度算出部
222 位置決定部