(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20250319BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250319BHJP
C08K 3/16 20060101ALI20250319BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K3/013
C08K3/16
C08K3/34
(21)【出願番号】P 2021575827
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2021003889
(87)【国際公開番号】W WO2021157605
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2020017635
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亨
(72)【発明者】
【氏名】福井 康治
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/046541(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/135215(WO,A1)
【文献】特開2008-069190(JP,A)
【文献】特表2013-532748(JP,A)
【文献】特表2018-523729(JP,A)
【文献】特開2011-202069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)、耐衝撃材(B)及び無機化合物(C)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂(A)が、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)を含み、
耐衝撃材(B)の100重量部に対する、無機化合物(C)の含有量が、1.60~3.00重量部である、
ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の合計100重量部に対する脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の含有量が、5.00~40.00重量部である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
無機化合物(C)が、ハロゲン化金属(C-1)とハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)との組み合わせであり、無機化合物(C)の100重量部に対するハロゲン化金属(C-1)の含有量が、10~90重量部である、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
無機化合物(C)が、ハロゲン化金属とタルクとを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
JIS K 6920に準じて、96%硫酸中濃度1重量%、25℃で測定した脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の相対粘度が1.8~5.0である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
JIS K 6920に準じて、96%硫酸中濃度1重量%、25℃で測定した脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の相対粘度が1.8~5.0である、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
無機化合物(C)が、ハロゲン化金属(C-1)とハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)との組み合わせであり、ハロゲン化金属(C-1)が、ハロゲン化アルカリ金属とハロゲン化銅とのとの組み合わせである、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項8】
無機化合物(C)が、ハロゲン化金属(C-1)とハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)との組み合わせであり、ハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)が、タルク、マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、クレー、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、水酸化アルミニウム、ドロマイト、カオリン、シリカ、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、水酸化マグネシウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維及び硼素繊維からなる群より選択される1種以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】
無機化合物(C)が、ハロゲン化金属(C-1)とハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)との組み合わせであり、ポリアミド樹脂組成物の合計100重量部に対する、ハロゲン化金属(C-1)の含有量は、0.25~0.30重量部である、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項10】
無機化合物(C)が、ハロゲン化金属(C-1)とハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)との組み合わせであり、ポリアミド樹脂組成物の合計100重量部に対する、ハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)の含有量は、0.05~0.10重量部である、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項11】
無機化合物(C)が、ハロゲン化金属(C-1)とハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)との組み合わせであり、ハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)の平均粒子径は、2~18μmである、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項12】
無機化合物(C)が、ハロゲン化金属(C-1)とハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)との組み合わせであり、ハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)がタルクであり、前記タルクの平均粒子径は、10~14μmである、請求項1~11のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を含む、成形品。
【請求項14】
ガスと接触する成形品である、請求項13に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、ガスバリア性に優れた樹脂として知られており、各種用途としてガスバリア性を有するポリアミド樹脂組成物が求められている。特許文献1には、ポリアミド6、ポリアミド6/66、及び耐衝撃材(無水マレイン酸変性EBR)からなるポリアミド樹脂組成物が、ガスバリア性に優れ、低温での耐衝撃性に優れていることが開示されている。また、特許文献2には、脂肪族ポリアミド、3種以上のモノマーからなる脂肪族共重合ポリアミド、耐衝撃材、及び酸化防止剤を含むポリアミド樹脂が、ブロー成形性に優れる溶融粘度・機械物性・熱溶着性を発現することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-191871号公報
【文献】国際公開第2017/135215号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に開示されているようなポリアミド樹脂組成物は、成形品において、水素ガスに対するガスバリア性と低温(-40℃)での引張破壊呼びひずみとを両立させることは、困難な場合があった。よって、本発明の課題は、成形品において低い水素ガス透過係数を有し、かつ、低温(-40℃)での引張破壊呼びひずみが良好であるポリアミド樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の[1]~[6]に関する。
[1]ポリアミド樹脂(A)、耐衝撃材(B)及び無機化合物(C)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂(A)が、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)を含み、
耐衝撃材(B)の100重量部に対する、無機化合物(C)の含有量が、1.60~3.00重量部である、
ポリアミド樹脂組成物。
[2]脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の合計100重量部に対する脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の含有量が、5.00~40.00重量部である、[1]のポリアミド樹脂組成物。
[3]無機化合物(C)が、ハロゲン化金属(C-1)とハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)との組み合わせであり、無機化合物(C)の100重量部に対するハロゲン化金属(C-1)の含有量が10~90重量部である、[1]又は[2]のポリアミド樹脂組成物。
[4]無機化合物(C)が、ハロゲン化金属とタルクとを含む、[1]~[3]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
[5]JIS K 6920に準じて、96%硫酸中濃度1重量%、25℃で測定した脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の相対粘度が1.8~5.0である、[1]~[4]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
[6]JIS K 6920に準じて、96%硫酸中濃度1重量%、25℃で測定した脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の相対粘度が1.8~5.0である、[1]~[5]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、成形品において低い水素ガス透過係数を有し、かつ、低温(-40℃)での引張破壊呼びひずみが良好であるポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0008】
[ポリアミド樹脂組成物]
ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)、耐衝撃材(B)及び無機化合物(C)を含み、ポリアミド樹脂(A)が、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)を含み、耐衝撃材(B)の100重量部に対する、無機化合物(C)の含有量が、1.60~3.00重量部である。耐衝撃材と無機化合物(タルクや無機耐熱剤など)を特定の重量比とすることにより、低い水素ガス透過係数及び低温での良好な引張破壊呼びひずみの両方を発現することができる。ここで、「低温での良好な引張破壊呼びひずみ」とは、-40℃での良好な引張破壊呼びひずみを意味する。また、ポリアミド樹脂組成物は、成形品において低い水素ガス透過係数を有するため、ポリアミド樹脂組成物の成形品は、ガスバリア性に優れる。
【0009】
≪ポリアミド樹脂(A)≫
ポリアミド樹脂(A)は、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)を含む。脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)を組合せることで、成形品の良好なガスバリア性と、低温での優れた耐衝撃性を与えることができる。
【0010】
<脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)>
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、1種であるポリアミド樹脂を意味する。ここで、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分としては、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との組み合わせ、ラクタム又はアミノカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸の組み合わせである場合は、1種の脂肪族ジアミンと1種の脂肪族ジカルボン酸の組合せで1種のモノマー成分とみなすものとする。
【0011】
よって、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)としては、1種の脂肪族ジアミンと1種の脂肪族ジカルボン酸との組合せからなる脂肪族ホモポリアミド樹脂、ラクタムからなる脂肪族ホモポリアミド樹脂、又はアミノカルボン酸からなる脂肪族ホモポリアミド樹脂が挙げられる。ここで、脂肪族ジアミンの炭素原子数は、2~20であることが好ましく、4~12であることが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の炭素原子数は、2~20であることが好ましく、6~12であることが特に好ましい。ラクタムの炭素原子数は、6~12であることが好ましい。アミノカルボン酸の炭素原子数は、6~12であることが好ましい。
【0012】
脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン等が挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等が挙げられる。
【0013】
脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の組合せとして、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の組合せ、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の組合せ、ヘキサメチレンジアミンとドデカンジオン酸の組合せ等が挙げられ、これらの組合せの等モル塩が好ましく用いられる。
【0014】
ラクタムとしては、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。また、アミノカルボン酸としては6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。ラクタムは、生産性の観点から、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム又はドデカンラクタムであることが好ましい。
【0015】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の具体例としては、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリエナントラクタム(ポリアミド7)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリラウリルラクタム(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンアゼラミド(ポリアミド59)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンオキサミド(ポリアミド122)等が挙げられる。
【0016】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)は、生産性の観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11及びポリアミド12からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、ポリアミド6及び/又はポリアミド66であることが特に好ましい。
【0017】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の相対粘度は特に制限されないが、JIS K 6920に準じて、96%硫酸中濃度1重量%の脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)について、25℃で測定した相対粘度が1.8~5.0であることが好ましく、1.8~4.5であることが特に好ましい。相対粘度の測定は、上記内容で測定されるのが好ましいが、それぞれの脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の相対粘度とその混合比が判明している場合、それぞれの相対粘度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)全体の相対粘度とすることができる。
【0018】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0019】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0020】
<脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)>
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、2種以上であるポリアミド樹脂を意味する。よって、脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)としては、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との組合せ、ラクタム及びアミノカルボン酸からなる群から選択される2種以上のモノマーの共重合体である脂肪族共重合ポリアミド樹脂が挙げられる。
【0021】
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)を構成するモノマー成分としては、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)において前記したモノマー成分が挙げられる。
【0022】
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の具体例としては、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(ポリアミド6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカン酸共重合体(ポリアミド6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/66/612)、ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/カプロラクタム共重合体(ポリアミド66/6)等が挙げられる。
【0023】
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)は、生産性の観点から、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12及びポリアミド6/66/12からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、ポリアミド6/66であることが特に好ましい。
【0024】
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の相対粘度は特に制限されないが、JIS K 6920に準じて、96%硫酸中濃度1重量%の脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)について、25℃で測定した相対粘度が1.8~5.0であることが好ましく、2.0~4.5であることが特に好ましい。相対粘度の測定は、上記内容で測定されるのが好ましいが、それぞれの脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の相対粘度とその混合比が判明している場合、それぞれの相対粘度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)全体の相対粘度とすることができる。
【0025】
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の製造装置及び重合方法としては、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)において前記した製造装置及び重合方法が挙げられる。
【0026】
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0027】
<その他のポリアミド樹脂>
ポリアミド樹脂(A)は、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)以外の、その他のポリアミド樹脂(A-3)を含むことができる。その他のポリアミド樹脂(A-3)としては、脂環族、芳香族等の官能基を主鎖又は側鎖に有する、共重合体であるポリアミド樹脂が挙げられる。ここで、その他のポリアミド樹脂(A-3)を構成するモノマー成分としては、脂肪族若しくは芳香族ジアミンと脂肪族若しくは芳香族ジカルボン酸との組み合わせ、ラクタム又はアミノカルボン酸が挙げられる。その他のポリアミド樹脂(A-3)は、モノマー成分として芳香族ジアミン又は芳香族ジカルボン酸を含む共重合ポリアミド樹脂であることが好ましい。その他のポリアミド樹脂(A-3)の重合方法は、公知の方法であればよく、特に限定されるものではない。
【0028】
その他のポリアミド樹脂(A-3)を構成するジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,4-フェニレンジオキシジ酢酸、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸、ジ安息香酸、4,4’-オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
【0029】
その他のポリアミド樹脂(A-3)を構成するジアミンとしては、例えば、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン;p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンが挙げられる。
【0030】
その他のポリアミド樹脂(A-3)の具体例としては、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミン/ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体、テレフタル酸/2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン/ω-ラウロラクタムの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体(ポリアミド6T/6I)、イソフタル酸/2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン/ω-ラウロラクタムの重縮合体等が挙げられる。
【0031】
その他のポリアミド樹脂(A-3)の具体例としては、テレフタル酸成分単位40~95モル%およびイソフタル酸成分単位5~60モル%と、脂肪族ジアミンとからなるものが好ましい。その他のポリアミド樹脂(A-3)を構成するモノマー成分の好ましい組合せとしては、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩とヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の等モル塩が挙げられる。
【0032】
その他のポリアミド樹脂(A-3)は、脂肪族ジアミンとイソフタル酸およびテレフタル酸とからなるモノマー成分に由来する単位を60~99重量%で含み、脂肪族ポリアミド成分の単位を1~40重量%で含む共重合体であることが好ましい。
【0033】
その他のポリアミド樹脂(A-3)の相対粘度は、特に制限されないが、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)又は脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)において、前記した値であることが好ましい。
【0034】
その他のポリアミド樹脂(A-3)の製造装置及び重合方法としては、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)において前記した製造装置及び重合方法が挙げられる。
その他のポリアミド樹脂(A-3)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0035】
<好ましい態様>
本発明の効果を効率的に高めることができる観点から、ポリアミド樹脂(A)は、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)のみからなることが好ましい。
【0036】
≪耐衝撃材(B)≫
ポリアミド樹脂組成物は、耐衝撃材(B)を含む。耐衝撃材(B)としては、ゴム状重合体が挙げられる。耐衝撃材(B)は、ASTM D-790に準拠して測定した曲げ弾性率が500MPa以下であることが好ましい。
【0037】
耐衝撃材(B)としては、(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体等が挙げられる。耐衝撃材(B)は、エチレン/α-オレフィン系共重合体であることが好ましい。
【0038】
(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンと炭素原子数3以上のα-オレフィンとを共重合した重合体である。
炭素原子数3以上のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、 4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等が挙げられる。
【0039】
また共重合体は、非共役ジエン等のポリエンを共重合したものであってもよい。非共役ジエンとしては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,5-ノルボルナジエン等が挙げられる。
【0040】
(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンとα,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合した重合体である。α,β-不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸エステル単量体としては、α,β-不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等が挙げられる。
【0041】
耐衝撃材(B)として用いられる(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、並びに(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、カルボン酸及び/又はその誘導体で変性されていてもよい。耐衝撃材(B)は、不飽和カルボン酸又はその酸無水物等により酸変性された(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、並びに(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体であることが好ましい。耐衝撃材(B)が、不飽和カルボン酸又はその酸無水物等により酸変性された前記共重合体である場合、ポリアミド樹脂(A)に対して親和性を有する官能基をその分子中に含むこととなる。
【0042】
ポリアミド樹脂(A)に対して親和性を有する官能基としては、カルボキシ基、酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、エポキシ基等が挙げられる。
【0043】
ポリアミド樹脂(A)に対して親和性を有する官能基を含む化合物、すなわちカルボン酸及びその誘導体の例として、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物、マレイミド、N-エチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等が挙げられる。ポリアミド樹脂(A)に対して親和性を有する官能基を含む化合物は、無水マレイン酸であることが好ましい。
【0044】
耐衝撃材(B)における酸無水物基の含有量は、特に限定されないが、25μmol/g超200μmol/g未満であることが好ましく、25μmol/g超150μmol/g未満であることがより好ましく、25μmol/g超110μmol/g未満であることがさらに好ましく、25μmol/g超100μmol/g未満であることが特に好ましく、35μmol/g以上95μmol未満であることが特により好ましく、40~90μmol/gであることが最も好ましい。含有量が25μmol/g超過である場合、高い溶融粘度の組成物を得ることができ、ブロー成形において目標の肉厚寸法を得ることができる。また含有量が200μmol/g未満である場合、溶融粘度が高すぎず、押出機に負荷を抑えて良好に成形加工できる。耐衝撃材(B)が有する酸無水物基の含有量は、トルエン、エタノールを用いて調製した試料溶液を用いて、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1規定のKOHエタノール溶液による中和滴定で測定される。
【0045】
耐衝撃材(B)として、酸無水物基の含有量が異なる2種以上の耐衝撃材を用いる場合、耐衝撃材(B)における酸無水物基の含有量は、トルエン、エタノールを用いて調製した試料溶液を用いて、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1規定のKOHエタノール溶液による中和滴定で測定されるのが好ましいが、それぞれの耐衝撃材の酸無水物基の含有量とその混合比が判明している場合、それぞれの酸無水物基の含有量にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、耐衝撃材(B)の酸無水物量としてもよい。
【0046】
耐衝撃材(B)は、ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2160gで測定したMFRが0.1~10.0g/10分であることが好ましい。この範囲にあることで、押出成形におけるブロー成形時にパリソンの形状が不安定になることが抑制され、成形体の厚みがより均一になる傾向があるとともに、パリソンのドローダウンが大きくなりすぎず、良好なブロー成形性が得られる傾向がある。
耐衝撃材(B)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0047】
<好ましい態様>
耐衝撃材(B)が、ポリアミド樹脂(A)に対して親和性を有する官能基を有することが好ましい。
【0048】
≪無機化合物(C)≫
ポリアミド樹脂組成物は、無機化合物(C)を含む。無機化合物(C)としては、ハロゲン化金属(C-1)及びハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)が挙げられる。
【0049】
ハロゲン化金属(C-1)は、ハロゲンと金属との化合物である。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。金属としては、第1族元素(アルカリ金属)、第2族元素(アルカリ土類金属)、第3族元素~第12族元素(例えば、遷移金属)等が挙げられる。ハロゲン化金属における金属は、第1族元素(アルカリ金属)、第11族元素(銅族)の金属であることが好ましい。
【0050】
金属が第1族元素(アルカリ金属)である場合のハロゲン化金属としては、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム又は塩化ナトリウム等が挙げられる。また、金属が第11族元素(銅族)である場合のハロゲン化金属としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅等が挙げられる。
ハロゲン化金属(C-1)は、ヨウ化第一銅であることが特に好ましい。
【0051】
ハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)としては、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、リン酸金属塩、亜リン酸金属塩、炭酸金属塩、ケイ酸金属塩、チタン酸金属塩、ホウ酸金属塩、硫酸金属塩、硝酸金属塩等が挙げられる。ハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)の具体例としては、タルク、マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、クレー、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、水酸化アルミニウム、ドロマイト、カオリン、シリカ、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、水酸化マグネシウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維及び硼素繊維等が挙げられる。
ハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)は、ガス透過性がより抑制できる観点から、タルク、マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、非膨潤性雲母であることが好ましく、タルクであることが特に好ましい。
【0052】
<無機化合物(C)の特性>
無機化合物(C)がハロゲン化金属(C-1)である場合、その形状は特に限定されない。
無機化合物(C)がハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)である場合、その平均粒子径は、ガスバリア性により優れる観点から、2~18μmであることが好ましく、5~16μmであることがより好ましく、10~14μmであることが特に好ましい。本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定方法による平均粒子径である。粒子径分布測定方法に用いられる測定装置としては、株式会社島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD-7000が挙げられる。また、ハロゲン化金属以外の無機化合物が市販品である場合は、無機化合物の平均粒子径は、市販品のカタログ値を採用する。
【0053】
無機化合物(C)は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。即ち、無機化合物(C)は、1種以上のハロゲン化金属(C-1)と1種以上のハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)との組合せであってもよい。
【0054】
<好ましい態様>
ポリアミド樹脂組成物の成形体に、適度な機械的特性を付与できる観点から、無機化合物(C)は、ハロゲン化金属(C-1)とハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)との組み合わせであることが好ましく、ハロゲン化金属とタルクとを含むことがより好ましく、ハロゲン化金属とタルクとの組み合わせであることが特に好ましい。
【0055】
≪他の成分≫
ポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含むことができる。他の成分としては、可塑剤、耐熱材、発泡剤、耐候剤、有機結晶核剤、有機酸化防止剤、結晶化促進剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料等の機能性付与剤等が挙げられる。なお、他の成分は、ポリアミド樹脂(A)、耐衝撃材(B)及び無機化合物(C)ではない。
【0056】
≪含有量≫
ポリアミド樹脂組成物の合計100重量部に対する、ポリアミド樹脂(A)の含有量は、良好なガスバリア性を発現させる観点から、50重量部以上100重量部未満であることが好ましく、55~99重量部であることが好ましく、60~98重量部であることが特に好ましい。また、ポリアミド樹脂(A)の合計100重量部に対する、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の合計の含有量は、良好なガスバリア性と低温で優れた耐衝撃性を発現させる観点から、60~100重量部であることが好ましく、90~100重量部であることがより好ましく、95~100重量部であることが特に好ましい。
【0057】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の合計100重量に対する脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の含有量は、5.00~40.00重量部であることが好ましく、24.00~24.70重量部であることがより好ましく、24.10重量部以上24.70重量部未満であることがさらに好ましく、24.20~24.68重量部であることが特に好ましい。このような範囲である場合、低温で優れた耐衝撃性を発現させることができ、成形品の加工性が良くなる。なお、ポリアミド樹脂(A)が脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)のみからなる場合は、前記含有量は、ポリアミド樹脂(A)の合計100重量部に対する脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の含有量である。
【0058】
耐衝撃材(B)の100重量部に対する、無機化合物(C)の含有量は1.60~3.00重量部である。このような範囲である場合、耐衝撃材(B)による耐衝撃性の付与効果を発揮し、耐衝撃材を付与してもポリアミド樹脂が本来有している強度や耐熱性等の特性を維持でき、かつ、無機化合物(C)による、ガスバリア性の付与効果を効率的に高めることができる。また、耐衝撃材(B)の100重量部に対する、無機化合物(C)の含有量が1.60重量部未満である場合、耐衝撃材(B)に対する無機化合物(C)の量が少なくなりすぎるため、ガスバリア性が劣る。耐衝撃材(B)の100重量部に対する、無機化合物(C)の含有量は1.65~3.00重量部であることが好ましく、1.70~3.00重量部であることが特に好ましい。
【0059】
ポリアミド樹脂組成物中の、耐衝撃材(B)及び無機化合物(C)の含有量は、前記した耐衝撃材(B)の100重量部に対する、無機化合物(C)の含有量を満足する範囲であれば、特に限定されない。
【0060】
ポリアミド樹脂組成物の合計100重量部に対する、耐衝撃材(B)の含有量は、ガスバリア性及び低温での良好な引張破壊呼びひずみの観点から、5~30重量部であることが好ましく、5~25重量部であることがより好ましく、7~20重量部であることが特に好ましい。ポリアミド樹脂組成物をオートクレーブに入れ、塩酸を用いて150℃で16時間処理することで、ポリアミド成分を加水分解させることができ、未分解物成分を耐衝撃材(B)成分として取り出すことができる。
【0061】
ポリアミド樹脂組成物の合計100重量部に対する、無機化合物(C)の含有量は、ガスバリア性及び低温での引張破壊呼びひずみがより良好である観点から、0.01~0.5重量部であることが好ましく、0.01~0.4重量部であることがより好ましく、0.02~0.3重量部であることが特に好ましい。また、無機化合物(C)がハロゲン化金属(C-1)とハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)との組み合わせである場合、無機化合物(C)の合計100重量部に対するハロゲン化金属(C-1)の含有量は、ガスバリア性の観点から、10~90重量部であることがより好ましく、30~85重量部であることが特に好ましい。
【0062】
[ポリアミド樹脂組成物の製造方法]
ポリアミド樹脂組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば次の方法を適用することができる。ポリアミド樹脂(A)、耐衝撃材(B)及び無機化合物(C)と、その他の成分との混合は、単軸、二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機を用いることができる。限定されない混合の具体的な方法としては、二軸押出機を使用して、全ての原材料を配合後、溶融混練する方法;一部の原材料を配合後、溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法;又は、一部の原材料を配合後、溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法等が挙げられる。
【0063】
[ポリアミド樹脂組成物の用途]
ポリアミド樹脂組成物は、特に制限されず、公知の方法を利用する成形品の製造に用いることができる。具体的には、ポリアミド樹脂組成物は、射出成形による射出成形品の製造、ブロー成形によるブロー成形品の製造、又は押出成形による押出成形品の製造に用いることができる。中でも本発明のポリアミド樹脂組成物はブロー成形によるブロー成形品の製造、押出成形による押出成形品の製造に好適である。ポリアミド樹脂からブロー成形によりブロー成形品を製造する方法は、一般的には、通常のブロー成形機を用いて、パリソンを形成した後、ブロー成形を実施することを含む。パリソン形成時の樹脂温度は、ポリアミド樹脂組成物の融点より10℃から70℃高い温度範囲であることが好ましい。
【0064】
ポリアミド樹脂から押出成形により押出成形品を製造する方法は、一般的には、ポリエチレンなどのポリオレフィンや他の熱可塑性樹脂と共押出した後、ブロー成形を行い、多層構造体を得ることを含む。ここで、ポリアミド樹脂組成物層とポリオレフィンなどの他の熱可塑性樹脂層の間に接着層を設けることも可能である。成形品が多層構造体である場合、本発明のポリアミド樹脂組成物は外層、内層のいずれにも使用し得る。
【0065】
射出成形による射出成形品、ブロー成形によるブロー成形品又は押出成形による押出成形品としては、特に限定されないが、スポイラー、エアインテークダクト、インテークマニホールド、レゾネーター、燃料タンク、ガスタンク、作動油タンク、燃料フィラーチューブ、燃料デリバリーパイプ、その他各種ホース・チューブ・タンク類などの自動車部品、電動工具ハウジング、パイプ類などの機械部品を始め、タンク、チューブ、ホース、フィルム等の電気・電子部品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品など各種用途が好適に挙げられる。
ポリアミド樹脂組成物は、ガスバリア性に優れるため、ガスと接触する成形体、たとえば、ガスに接するタンク、チューブ、ホース、フィルム等に好適に用いられる。
前記ガスの種類としては、特に制限されないが、水素、窒素、酸素、ヘリウム、メタン、ブタン、プロパン等が挙げられ、極性の小さいガスが好ましく、水素、窒素が特に好ましい。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例において使用した成分及び成形品の物性評価方法を以下に示す。
【0067】
[水素ガス透過係数]
各種試験片を射出成形にて作製して機械物性のデータ取得に使用した。
JIS K7126-1に従い、厚み2mmの試験片を用い、ガスクロマトグラフ法を採用し、15℃又は55℃、1atm、0%RHにおいて、水素ガス透過試験を行った。測定装置は、GTR-30XAD(GTRテック社製)、G6800T・F(ヤナコテクニカルサイエンス社製)を用いた。試験片は、下記溶融混錬条件及び下記射出成形条件で製造した。
【0068】
[引張破壊呼びひずみ]
ISO 527-1,2に従い、常温(23℃)及び-40℃で厚み4.0mmのISO Type-A試験片を用いて試験を行った。
以下に従って、低温(-40℃)での引張破壊呼びひずみを評価した。
○:降伏後、十分に延伸して破断
×:降伏後、直ちに破断
【0069】
[使用した成分]
1.ポリアミド樹脂(A)
(1)脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)
PA6:ポリアミド6(宇部興産(株)製:相対粘度=2.98)
(2)脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)
PA6/66:ポリアミド6/66(宇部興産(株)製:相対粘度=4.05)
実施例で使用した脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の相対粘度は、JIS K 6920に準じて、96%硫酸中濃度1重量%、25℃で測定した値である。
【0070】
2.耐衝撃材(B)
(1)Tafmer MH5020:無水マレイン酸変性エチレン・ブチレン共重合体(三井化学(株)製タフマー(登録商標)MH5020:密度ρ= 0.86)
【0071】
3.無機化合物(C)
(1)ハロゲン化金属(C-1)
CuI、KI混合物(重量比1:6)
CuI:ヨウ化第一銅(伊勢化学工業株式会社製)
KI:粉末ヨウ化カリウム(三井ファイン株式会社)
(2)ハロゲン化金属以外の無機化合物(C-2)
タルク:KHP-400(林化成株式会社製、平均粒子径11μm(カタログ値))
【0072】
[実施例1~3、比較例1~2]
表1に記載した各成分を、下記溶融混錬条件で溶融混練し、目的とするポリアミド樹脂組成物ペレットを作製した。次に得られたペレットを用いて各種試験片を製造し、各種物性を評価した。
【0073】
<溶融混錬条件>
TEX-44二軸押出機を使用
シリンダー径:44mm
L/D:35
スクリュー回転数:120rpm
【0074】
<射出成形条件>
シリンダー温度:270℃
金型温度:80℃
金型内平均射出速度:50mm/秒
冷却時間:5秒
【0075】
得られた結果を表1に示す。
【0076】
【0077】
表1の結果から明らかなとおり、実施例のポリアミド樹脂組成物は、水素ガス透過性が低く、また、引張破壊呼びひずみに優れる成形品が得られることが分かる。
比較例1の樹脂組成物は、耐衝撃材(B)の100重量部に対する、無機化合物(C)の含有量が1.60重量部未満であるため、水素ガス透過係数が高かった。
比較例2の樹脂組成物は、耐衝撃材(B)を含まないため、低温での引張破壊呼びひずみが劣っていた。